巻き線型インダクタおよびその製造方法、ならびに電源回路
【課題】基板上に実装された状態でモールド樹脂によって基板上に封止される巻き線型インダクタであって、ドラム型コアにおける破損の発生を抑制することが可能な巻き線型インダクタを得る。
【解決手段】基板50上に実装された状態でモールド樹脂60によって基板50上に封止される巻き線型インダクタ100は、焼結磁性体から形成され、巻軸部12ならびに巻軸部12の両端にそれぞれ設けられた上鍔部14および下鍔部16を含むドラム型コア10と、巻軸部12に巻回されたコイル導体20と、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる絶縁性物質30と、を備え、絶縁性物質30の熱膨張係数は、モールド樹脂60の熱膨張係数よりも小さい。
【解決手段】基板50上に実装された状態でモールド樹脂60によって基板50上に封止される巻き線型インダクタ100は、焼結磁性体から形成され、巻軸部12ならびに巻軸部12の両端にそれぞれ設けられた上鍔部14および下鍔部16を含むドラム型コア10と、巻軸部12に巻回されたコイル導体20と、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる絶縁性物質30と、を備え、絶縁性物質30の熱膨張係数は、モールド樹脂60の熱膨張係数よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き線型インダクタおよびその製造方法、ならびに電源回路に関し、特に、基板等の被実装部材上に実装された状態で所定の封止部材によって被実装部材上に封止される巻き線型インダクタおよびその製造方法、ならびにその巻き線型インダクタを備えた電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の様々な電子機器端末または小型モジュールの集積回路などには、表面実装技術が用いられる。表面実装技術においては、インダクタを含むさまざまな部品が、多層基板上または小型モジュールなどの被実装部材上に高密度に実装される。表面実装技術の採用によって、電子機器端末などの小型化が図られている。近年では、電子機器端末などの小型化に伴って、インダクタ自体の小型化および薄型化も急速に進んでいる。
【0003】
インダクタ自体の小型化および薄型化が進む中で、スイッチング方式等のDC−DCコンバータなどには、巻き線型インダクタが適用されている(下記の特許文献1,2参照)。巻き線型インダクタの適用によって、積層型インダクタおよび薄膜型インダクタを適用する場合とは異なり、電源回路に対して大電流を流すことが可能となる。
【0004】
図9から図11を参照して、基板500(図11参照)上に実装される一般的な巻き線型インダクタ100Zについて説明する。図9は、巻き線型インダクタ100Zを分解して示す斜視図である。図10は、図9中のX−Xに沿った矢視断面図である。図10においては、巻き線型インダクタ100Zの組み立てられた状態が示される。図11は、基板500上に実装された巻き線型インダクタ100Zを示す断面図である。
【0005】
図9に示すように、巻き線型インダクタ100Zは、ドラム型コア10Z、コイル導体200、およびリングコア400を備える。ドラム型コア10Zは、巻軸部120(図10参照)、ならびに巻軸部120の両端にそれぞれ設けられた上鍔部140および下鍔部160を含む。下鍔部160には、下鍔部160の外周端面および底面に沿うように、L字状の電極420および電極440(図10参照)が取り付けられる。
【0006】
図10に示すように、コイル導体200は、巻軸部120に巻回される。コイル導体200は、上鍔部140および下鍔部160の間に形成される空間180(磁気ギャップ)内に配置される。リングコア400は、空間180(磁気ギャップ)を外側から囲うように、ドラム型コア10Zに対して同心状に嵌め込まれる(図9中の矢印AR1参照)。リングコア400がドラム型コア10Zに嵌め込まれた状態では、上鍔部140の外周端面とリングコア400との間に間隙190が形成される。
【0007】
図11を参照して、巻き線型インダクタ100Zがスイッチング方式等のDC−DCコンバータなどに適用される場合、巻き線型インダクタ100Zは、基板500上に実装される。基板500上に形成された導体パターン520と巻き線型インダクタ100Zの電極420,440とは、半田540を挟んで互いに接合される。
【0008】
巻き線型インダクタ100Zは、巻き線型インダクタ100Zが基板500上に実装された状態で、モールド樹脂600、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などによって基板500上に封止される(密封処理される)。当該封止によって、電子機器800が得られる。電子機器800においては、巻き線型インダクタ100Zがモールド樹脂600などによって保護されることにより、電子機器800(巻き線型インダクタ100Z)としての強度および信頼性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−522768号公報
【特許文献2】特開2008−53670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図12を参照して、上述のとおり、巻き線型インダクタ100Zは、モールド樹脂600等によって基板500上に封止される。巻き線型インダクタ100Zを基板500上に封止する際には、モールド樹脂600等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100Zの全体を覆うように基板500上に供給される。この際、液体状のモールド樹脂600等は、間隙190を通して上鍔部140および下鍔部160の間(空間180内)にも流れ込む。モールド樹脂600等が硬化することによって、電子機器800が得られる。
【0011】
モールド樹脂600等が硬化した後、電子機器800は、熱サイクル試験、リフロー工程、または他の外部環境の変化によって、大きな温度変化が与えられる場合がある。この場合、モールド樹脂600等の封止部材は、上鍔部140と下鍔部160との間の空間180(磁気ギャップ)内においても膨張または収縮する。
【0012】
空間180内に位置するモールド樹脂600等の封止部材が膨張または収縮することによって、上鍔部140または下鍔部160には、応力が作用する(矢印AR2,矢印AR3参照)。応力の作用によって、ドラム型コア10Zの一部に割れまたは欠けなどの破損部1000が発生することがある。
【0013】
本発明は、被実装部材上に実装された状態で所定の封止部材によって被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、ドラム型コアにおける破損の発生を抑制することが可能な巻き線型インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づく巻き線型インダクタは、被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって上記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに上記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアと、上記巻軸部に巻回されたコイル導体と、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される空間を、上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる絶縁性物質と、を備え、上記絶縁性物質の熱膨張係数は、上記封止部材の熱膨張係数よりも小さい。
【0015】
好ましくは、上記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、上記絶縁性物質は、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される上記空間内において、または、上記第1鍔部および上記第2鍔部の各々の外周端面上において、上記ドラム型コアに対して巻回された状態で上記ドラム型コアに接着されている。
【0016】
好ましくは、上記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆されるとともに、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に巻回され、上記絶縁性物質は、上記接着層によって、上記コイル導体の外周上に接着されている。
【0017】
好ましくは、上記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成されるとともに、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に巻回され、上記絶縁性物質は、上記絶縁性物質の熱硬化作用によって、上記コイル導体の外周上に接着されている。
【0018】
本発明に基づく電源回路は、本発明に基づく上記の巻き線型インダクタを備える。
本発明に基づく巻き線型インダクタの製造方法は、被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって上記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタの製造方法であって、焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに上記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアを準備する工程と、上記巻軸部にコイル導体を巻回する工程と、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される空間を、上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように絶縁性物質を設ける工程と、を備え、上記絶縁性物質の熱膨張係数は、上記封止部材の熱膨張係数よりも小さい。
【0019】
好ましくは、上記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、上記空間を上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように上記絶縁性物質を設ける上記工程は、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される上記空間内において、または、上記第1鍔部および上記第2鍔部の各々の外周端面上において、上記絶縁性物質を上記ドラム型コアに対して巻回する工程と、上記絶縁性物質を上記ドラム型コアに接着する工程と、を含む。
【0020】
好ましくは、上記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆され、上記空間を上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように上記絶縁性物質を設ける上記工程は、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を巻回する工程と、上記接着層によって、上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む。
【0021】
好ましくは、上記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成され、上記空間を上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように上記絶縁性物質を設ける上記工程は、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を巻回する工程と、上記絶縁性物質の熱硬化作用によって、上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被実装部材上に実装された状態で所定の封止部材によって被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、ドラム型コアにおける破損の発生を抑制することが可能な巻き線型インダクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1における電源回路を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図3】基板上に実装された実施の形態1における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図4】実施の形態2における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図5】図4中のV線によって囲まれる領域を拡大して示す断面図である。
【図6】基板上に実装された実施の形態2における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図7】実施の形態3における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図8】基板上に実装された実施の形態3における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図9】一般的な巻き線型インダクタを分解して示す斜視図である。
【図10】図9中のX−X線に沿った矢視断面図である。
【図11】基板上に実装された一般的な巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図12】基板上に実装された一般的な巻き線型インダクタに破損部が発生した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0025】
[実施の形態1]
(電源回路70)
図1を参照して、本実施の形態における電源回路70について説明する。図1は、電源回路70を示すブロック図である。電源回路70は、バッテリー71およびDC−DCコンバータ72を備える。DC−DCコンバータ72は、本実施の形態における巻き線型インダクタ100(詳細は後述する)を含む。
【0026】
DC−DCコンバータ72においては、バッテリー71、電界効果型トランジスタ73、および巻き線型インダクタ100が、この順に並んで直列接続される。電界効果型トランジスタ73と巻き線型インダクタ100との間には、ダイオード74が設けられる。電界効果型トランジスタ73のオンオフ動作は、制御回路75によって制御される。当該制御によって、DC−DCコンバータ72の出力端電圧V0が所定の電圧に保持される。
【0027】
電界効果型トランジスタ73がオンオフ動作を繰り返すと、巻き線型インダクタ100およびコンデンサ76には直流電圧が断続的に入力される。巻き線型インダクタ100およびコンデンサ76は、エネルギーを充放電する。当該充放電によって、断続的に入力された直流直流は、連続した直流電圧として出力される。
【0028】
DC−DCコンバータ72においては、電界効果型トランジスタ73のオンオフ動作のタイミングの変化に応じて、巻き線型インダクタ100には直流電圧が断続的に発生する。巻き線型インダクタ100は、巻き線型インダクタ100が充放電を繰り返すことによって、この変化に応じた磁界を発生する。本実施の形態における電源回路70は、以上のように構成される。
【0029】
(巻き線型インダクタ100)
図2を参照して、本実施の形態における巻き線型インダクタ100について説明する。図2は、巻き線型インダクタ100を示す断面図である。巻き線型インダクタ100は、ドラム型コア10、コイル導体20、絶縁性物質30、およびリングコア40を備える。
【0030】
ドラム型コア10は、フェライト等を素材とする焼結磁性体から形成される。ドラム型コア10は、巻軸部12、ならびに巻軸部12の両端にそれぞれ設けられた上鍔部14(第1鍔部)および下鍔部16(第2鍔部)を含む。巻軸部12は、円柱または角柱などの棒状に形成される。上鍔部14および下鍔部16は、円形板状または多角形板状に形成される。下鍔部16には、下鍔部16の外周端面および底面に沿うように、L字状の電極42および電極44が取り付けられる。
【0031】
コイル導体20は、巻軸部12に巻回される。コイル導体20は、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18(磁気ギャップ)内に配置される。コイル導体20の一端は、電極42に電気的に接続される(詳細は図示せず)。コイル導体20の他端は、電極44に電気的に接続される(詳細は図示せず)。
【0032】
絶縁性物質30は、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。本実施の形態においては、絶縁性物質30は、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって空間18を埋めるように設けられる。
【0033】
絶縁性物質30を構成する部材(素材)は、たとえば、ガラス繊維、または、フェノール樹脂を含む合成樹脂などである。詳細は後述されるが、絶縁性物質30を構成する部材の熱膨張係数は、巻き線型インダクタ100を基板50(図3参照)上に封止するモールド樹脂60(図3参照)の熱膨張係数よりも小さい。
【0034】
リングコア40は、空間18(磁気ギャップ)を外側から囲うように、ドラム型コア10に対して同心状に嵌め込まれる。リングコア40は、紫外線硬化樹脂などの接着剤43によって、電極42および電極44にそれぞれ接合される。リングコア40がドラム型コア10に対して固定された状態では、上鍔部14の外周端面とリングコア40との間に間隙19が形成される。
【0035】
リングコア40が空間18(磁気ギャップ)を外側から囲うように設けられることによって、この磁気ギャップからの磁束漏れが防止され、透磁率(磁気シールド性)が向上する。リングコア40の配設によって、より大きなインダクタンスを得ることが可能となるなお、リングコア40は、必要に応じて設けられるとよい。本実施の形態における巻き線型インダクタ100は、以上のように構成される。
【0036】
(巻き線型インダクタ100の実装)
図3を参照して、巻き線型インダクタ100がスイッチング方式等のDC−DCコンバータ72(図1参照)などを含む電源回路70(図1参照)に適用される場合、巻き線型インダクタ100は、基板50上に実装される。巻き線型インダクタ100は、基板50の他にも、小型モジュールなどの他の被実装部材に実装されてもよい。巻き線型インダクタ100が基板50上に実装される場合、基板50上に形成された導体パターン52と巻き線型インダクタ100の電極42,44とが、半田54を挟んで互いに接合される。
【0037】
巻き線型インダクタ100は、巻き線型インダクタ100が基板50上に実装された状態で、モールド樹脂60、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などの、所定の封止部材によって基板50上に封止される(密封処理される)。
【0038】
巻き線型インダクタ100を封止するモールド樹脂60などの封止部材としては、たとえば、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0039】
モールド樹脂60などによる封止によって、電子機器80が得られる。電子機器80においては、巻き線型インダクタ100がモールド樹脂60などの封止部材によって保護されることにより、電子機器80(巻き線型インダクタ100)としての強度および信頼性を向上させることができる。
【0040】
ここで、巻き線型インダクタ100を基板50上に封止する際には、モールド樹脂60等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100の全体を覆うように基板50上に供給される。この際、液体状のモールド樹脂60等は、間隙19を通して上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込もうとする。
【0041】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100においては、絶縁性物質30が、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。液体状のモールド樹脂60等は、上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)に流れ込む(侵入する)ことがない。
【0042】
上述のとおり、絶縁性物質30を構成する部材の熱膨張係数は、モールド樹脂60等の封止部材の熱膨張係数よりも小さい。モールド樹脂60等が硬化した後、電子機器80に大きな温度変化が与えられたと仮定する。この場合であっても、モールド樹脂60の熱膨張率に比べて絶縁性物質30の熱膨張率の方が小さいため、巻き線型インダクタ100においては、冒頭(図12参照)で説明したような応力が上鍔部14および下鍔部16に作用することはない(若しくは軽減される)。
【0043】
巻き線型インダクタ100によれば、上鍔部14と下鍔部16との間の空間18(磁気ギャップ)内において絶縁性物質30が膨張または収縮したとしても、ドラム型コア10の一部に割れまたは欠けなどの破損が生じることは抑制される。巻き線型インダクタ100によれば、熱変動に対しての信頼性を向上させることが可能となる。
【0044】
(巻き線型インダクタ100の製造方法)
巻き線型インダクタ100の製造方法としては、以下のとおりである。まず、フェライト等を素材とする焼結磁性体からドラム型コア10を得る。ドラム型コア10は、プレス成型または切削などによって得られる。得られたドラム型コア10の巻軸部12に対して、コイル導体20を巻回する。
【0045】
次に、絶縁性物質30が設けられる。絶縁性物質30は、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐ。絶縁性物質30としては、溶融させた状態(粘性を持った不定形状の状態)で空間18内に注入されるとよい。絶縁性物質30を注入した後、溶融状態にある絶縁性物質30を積極的に乾燥させたり、積極的に熱を付与したり、または常温下に所定の時間置いたりして、絶縁性物質30を硬化させる。
【0046】
絶縁性物質30が硬化した後、電極42,44が下鍔部16に取り付けられる。リングコア40は、ドラム型コア10に嵌め込まれた状態で、接着剤43によって固定される。以上のようにして、本実施の形態における巻き線型インダクタ100(図2参照)が得られる。
【0047】
[実施の形態2]
図4および図5を参照して、本実施の形態における巻き線型インダクタ100Aについて説明する。図4は、巻き線型インダクタ100Aを示す断面図である。図5は、図4中のV線によって囲まれる領域を拡大して示す断面図である。
【0048】
図4に示すように、巻き線型インダクタ100Aにおいては、上述の実施の形態1における巻き線型インダクタ100の絶縁性物質30(図2参照)の代わりに、糸状の部材から構成される絶縁性物質30Aが用いられる。絶縁性物質30Aを構成する部材の熱膨張係数は、巻き線型インダクタ100Aを基板50(図6参照)上に封止するモールド樹脂60(図6参照)の熱膨張係数よりも小さい。絶縁性物質30Aを構成する部材(素材)は、たとえば、ガラス繊維、または、テグスなどである。
【0049】
絶縁性物質30Aは、空間18内において、ドラム型コア10に対して巻回される。本実施の形態における絶縁性物質30Aは、互いに対向する上鍔部14の内表面14Aおよび下鍔部16の内表面16Aの双方に、それぞれ接着される。絶縁性物質30Aも、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞いでいる。
【0050】
絶縁性物質30Aを構成する部材は、熱硬化性を有しているとよい。この場合、絶縁性物質30Aは、巻軸部12に巻回されたコイル導体20の外周上に巻回された後、絶縁性物質30Aの熱硬化作用によって、コイル導体20の外周上に接着されることができる。熱硬化性を有する糸状の絶縁性物質30Aとしては、たとえば、フェノール樹脂を含む合成樹脂などを用いることができる。
【0051】
図5に示すように、絶縁性物質30Aは、芯材31と、その表面を被覆する接着層32とから構成されていてもよい。この場合、絶縁性物質30Aは、コイル導体20の外周上に巻回された後、接着層32によって、コイル導体20の外周上に接着されることができる。芯材31としては、たとえば、ガラス繊維、または、テグスなどを用いることができる。接着層32としては、たとえば、ポリイミド系接着剤を含む合成系接着剤などを用いることができる。
【0052】
(巻き線型インダクタ100Aの実装)
図6を参照して、巻き線型インダクタ100Aも、上述の実施の形態1における巻き線型インダクタ100と同様に、巻き線型インダクタ100Aが基板50上に実装された状態で、モールド樹脂60、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などの、所定の封止部材によって封止される(密封処理される)。
【0053】
モールド樹脂60などによる封止によって、電子機器80Aが得られる。電子機器80Aにおいても、巻き線型インダクタ100Aがモールド樹脂60などの封止部材によって保護されることにより、電子機器80A(巻き線型インダクタ100A)としての強度および信頼性を向上させることができる。
【0054】
巻き線型インダクタ100Aを基板50上に封止する際には、モールド樹脂60等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100Aの全体を覆うように基板50上に供給される。液体状のモールド樹脂60等は、間隙19を通して上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込もうとする。
【0055】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Aにおいては、絶縁性物質30Aが、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。液体状のモールド樹脂60等は、上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込む(侵入する)ことがない。
【0056】
上述のとおり、絶縁性物質30Aを構成する部材の熱膨張係数は、モールド樹脂60等の封止部材の熱膨張係数よりも小さい。モールド樹脂60等が硬化した後、電子機器80Aに大きな温度変化が与えられたと仮定する。この場合であっても、モールド樹脂60の熱膨張率に比べて絶縁性物質30Aの熱膨張率の方が小さいため、巻き線型インダクタ100Aにおいては、冒頭(図12参照)で説明したような応力が上鍔部14および下鍔部16に作用することはない(若しくは軽減される)。
【0057】
巻き線型インダクタ100Aによれば、絶縁性物質30Aが上鍔部14と下鍔部16との間の空間18(磁気ギャップ)内において膨張または収縮したとしても、ドラム型コア10の一部に割れまたは欠けなどの破損が生じることは抑制される。巻き線型インダクタ100Aによっても、熱変動に対しての信頼性を向上させることが可能となる。
【0058】
(巻き線型インダクタ100Aの製造方法)
巻き線型インダクタ100Aの製造方法としては、上述の実施の形態1と同様に、ドラム型コア10の巻軸部12に対して、コイル導体20を巻回する。次いで、コイル導体20の外周上に、絶縁性物質30Aを巻回する。絶縁性物質30Aは、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。
【0059】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Aの製造方法においては、コイル導体20の巻回に使用される機械と同一のものを使用して、絶縁性物質30Aを巻回することができるため、製造効率がよい。
【0060】
[実施の形態3]
図7を参照して、本実施の形態における巻き線型インダクタ100Bについて説明する。図7は、巻き線型インダクタ100Bを示す断面図である。巻き線型インダクタ100Bにおいては、上述の実施の形態2における巻き線型インダクタ100Aとは異なり、絶縁性物質30Aが空間18内には配置されない。
【0061】
本実施の形態における絶縁性物質30Aは、上鍔部14の外周端面14B上および下鍔部16の外周端面16B上において、空間18を跨ぐように巻回され、外周端面14B,16Bにそれぞれ接着されている。本実施の形態における絶縁性物質30Aも、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞いでいる。
【0062】
(巻き線型インダクタ100Bの実装)
図8を参照して、巻き線型インダクタ100Bも、上述の実施の形態1における巻き線型インダクタ100と同様に、巻き線型インダクタ100Bが基板50上に実装された状態で、モールド樹脂60、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などの、所定の封止部材によって封止される(密封処理される)。
【0063】
モールド樹脂60などによる封止によって、電子機器80Bが得られる。電子機器80Bにおいても、巻き線型インダクタ100Bがモールド樹脂60などの封止部材によって保護されることにより、電子機器80B(巻き線型インダクタ100B)としての強度および信頼性を向上させることができる。
【0064】
巻き線型インダクタ100Bを基板50上に封止する際には、モールド樹脂60等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100Bの全体を覆うように基板50上に供給される。液体状のモールド樹脂60等は、間隙19を通して上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込もうとする。
【0065】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Bにおいても、絶縁性物質30Aが、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。液体状のモールド樹脂60等は、上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込む(侵入する)ことがない。
【0066】
絶縁性物質30Aを構成する部材の熱膨張係数は、モールド樹脂60等の封止部材の熱膨張係数よりも小さい。モールド樹脂60等が硬化した後、電子機器80Bに大きな温度変化が与えられたと仮定する。この場合であっても、モールド樹脂60の熱膨張率に比べて絶縁性物質30Aの熱膨張率の方が小さいため、巻き線型インダクタ100Bにおいては、冒頭(図12参照)で説明したような応力が上鍔部14および下鍔部16に作用することはない(若しくは軽減される)。
【0067】
巻き線型インダクタ100Bにおいては、絶縁性物質30Aが空間18(磁気ギャップ)内に配置されない。空間18内には、コイル導体20が配置され、他の部分のほとんどは空洞となっている。絶縁性物質30Aが膨張または収縮したとしても、その膨張または収縮による影響は、絶縁性物質30Aと外周端面14B,l6Bとの接合部を通して上鍔部14および下鍔部16に伝達される。上鍔部14および下鍔部16に生じる応力は小さく、ドラム型コア10の一部に割れまたは欠けなどの破損が生じることはより一層抑制される。巻き線型インダクタ100Bによっても、熱変動に対しての信頼性を向上させることが可能となる。
【0068】
(巻き線型インダクタ100Bの製造方法)
巻き線型インダクタ100Bの製造方法としては、上述の実施の形態2と同様に、ドラム型コア10の巻軸部12に対して、コイル導体20を巻回する。次いで、上鍔部14および下鍔部16の各々の外周端面14B,16Bを利用して、ドラム型コア10に対して絶縁性物質30Aを巻回する。絶縁性物質30Aは、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。
【0069】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Bの製造方法においても、コイル導体20の巻回に使用される機械と同一のものを使用して、絶縁性物質30Aを巻回することができるため、製造効率が高い。
【0070】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
10,10Z ドラム型コア、12,120 巻軸部、14,140 上鍔部、14A,16A 内表面、14B,16B 外周端面、16,160 下鍔部、18,180 空間、19,190 間隙、20,200 コイル導体、30,30A 絶縁性物質、31 芯材、32 接着層、40,400 リングコア、42,44,420,440 電極、43 接着剤、50,500 基板(被実装部材)、52,520 導体パターン、54,540 半田、60,600 モールド樹脂(封止部材)、70 電源回路、71 バッテリー、72 DC−DCコンバータ、73 電界効果型トランジスタ、74 ダイオード、75 制御回路、76 コンデンサ、80,80A,80B,800 電子機器、100,100A,100B,100Z 巻き線型インダクタ、1000 破損部、AR1,AR2,AR3 矢印。
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き線型インダクタおよびその製造方法、ならびに電源回路に関し、特に、基板等の被実装部材上に実装された状態で所定の封止部材によって被実装部材上に封止される巻き線型インダクタおよびその製造方法、ならびにその巻き線型インダクタを備えた電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の様々な電子機器端末または小型モジュールの集積回路などには、表面実装技術が用いられる。表面実装技術においては、インダクタを含むさまざまな部品が、多層基板上または小型モジュールなどの被実装部材上に高密度に実装される。表面実装技術の採用によって、電子機器端末などの小型化が図られている。近年では、電子機器端末などの小型化に伴って、インダクタ自体の小型化および薄型化も急速に進んでいる。
【0003】
インダクタ自体の小型化および薄型化が進む中で、スイッチング方式等のDC−DCコンバータなどには、巻き線型インダクタが適用されている(下記の特許文献1,2参照)。巻き線型インダクタの適用によって、積層型インダクタおよび薄膜型インダクタを適用する場合とは異なり、電源回路に対して大電流を流すことが可能となる。
【0004】
図9から図11を参照して、基板500(図11参照)上に実装される一般的な巻き線型インダクタ100Zについて説明する。図9は、巻き線型インダクタ100Zを分解して示す斜視図である。図10は、図9中のX−Xに沿った矢視断面図である。図10においては、巻き線型インダクタ100Zの組み立てられた状態が示される。図11は、基板500上に実装された巻き線型インダクタ100Zを示す断面図である。
【0005】
図9に示すように、巻き線型インダクタ100Zは、ドラム型コア10Z、コイル導体200、およびリングコア400を備える。ドラム型コア10Zは、巻軸部120(図10参照)、ならびに巻軸部120の両端にそれぞれ設けられた上鍔部140および下鍔部160を含む。下鍔部160には、下鍔部160の外周端面および底面に沿うように、L字状の電極420および電極440(図10参照)が取り付けられる。
【0006】
図10に示すように、コイル導体200は、巻軸部120に巻回される。コイル導体200は、上鍔部140および下鍔部160の間に形成される空間180(磁気ギャップ)内に配置される。リングコア400は、空間180(磁気ギャップ)を外側から囲うように、ドラム型コア10Zに対して同心状に嵌め込まれる(図9中の矢印AR1参照)。リングコア400がドラム型コア10Zに嵌め込まれた状態では、上鍔部140の外周端面とリングコア400との間に間隙190が形成される。
【0007】
図11を参照して、巻き線型インダクタ100Zがスイッチング方式等のDC−DCコンバータなどに適用される場合、巻き線型インダクタ100Zは、基板500上に実装される。基板500上に形成された導体パターン520と巻き線型インダクタ100Zの電極420,440とは、半田540を挟んで互いに接合される。
【0008】
巻き線型インダクタ100Zは、巻き線型インダクタ100Zが基板500上に実装された状態で、モールド樹脂600、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などによって基板500上に封止される(密封処理される)。当該封止によって、電子機器800が得られる。電子機器800においては、巻き線型インダクタ100Zがモールド樹脂600などによって保護されることにより、電子機器800(巻き線型インダクタ100Z)としての強度および信頼性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−522768号公報
【特許文献2】特開2008−53670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図12を参照して、上述のとおり、巻き線型インダクタ100Zは、モールド樹脂600等によって基板500上に封止される。巻き線型インダクタ100Zを基板500上に封止する際には、モールド樹脂600等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100Zの全体を覆うように基板500上に供給される。この際、液体状のモールド樹脂600等は、間隙190を通して上鍔部140および下鍔部160の間(空間180内)にも流れ込む。モールド樹脂600等が硬化することによって、電子機器800が得られる。
【0011】
モールド樹脂600等が硬化した後、電子機器800は、熱サイクル試験、リフロー工程、または他の外部環境の変化によって、大きな温度変化が与えられる場合がある。この場合、モールド樹脂600等の封止部材は、上鍔部140と下鍔部160との間の空間180(磁気ギャップ)内においても膨張または収縮する。
【0012】
空間180内に位置するモールド樹脂600等の封止部材が膨張または収縮することによって、上鍔部140または下鍔部160には、応力が作用する(矢印AR2,矢印AR3参照)。応力の作用によって、ドラム型コア10Zの一部に割れまたは欠けなどの破損部1000が発生することがある。
【0013】
本発明は、被実装部材上に実装された状態で所定の封止部材によって被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、ドラム型コアにおける破損の発生を抑制することが可能な巻き線型インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づく巻き線型インダクタは、被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって上記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに上記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアと、上記巻軸部に巻回されたコイル導体と、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される空間を、上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる絶縁性物質と、を備え、上記絶縁性物質の熱膨張係数は、上記封止部材の熱膨張係数よりも小さい。
【0015】
好ましくは、上記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、上記絶縁性物質は、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される上記空間内において、または、上記第1鍔部および上記第2鍔部の各々の外周端面上において、上記ドラム型コアに対して巻回された状態で上記ドラム型コアに接着されている。
【0016】
好ましくは、上記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆されるとともに、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に巻回され、上記絶縁性物質は、上記接着層によって、上記コイル導体の外周上に接着されている。
【0017】
好ましくは、上記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成されるとともに、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に巻回され、上記絶縁性物質は、上記絶縁性物質の熱硬化作用によって、上記コイル導体の外周上に接着されている。
【0018】
本発明に基づく電源回路は、本発明に基づく上記の巻き線型インダクタを備える。
本発明に基づく巻き線型インダクタの製造方法は、被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって上記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタの製造方法であって、焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに上記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアを準備する工程と、上記巻軸部にコイル導体を巻回する工程と、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される空間を、上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように絶縁性物質を設ける工程と、を備え、上記絶縁性物質の熱膨張係数は、上記封止部材の熱膨張係数よりも小さい。
【0019】
好ましくは、上記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、上記空間を上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように上記絶縁性物質を設ける上記工程は、上記第1鍔部および上記第2鍔部の間に形成される上記空間内において、または、上記第1鍔部および上記第2鍔部の各々の外周端面上において、上記絶縁性物質を上記ドラム型コアに対して巻回する工程と、上記絶縁性物質を上記ドラム型コアに接着する工程と、を含む。
【0020】
好ましくは、上記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆され、上記空間を上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように上記絶縁性物質を設ける上記工程は、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を巻回する工程と、上記接着層によって、上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む。
【0021】
好ましくは、上記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成され、上記空間を上記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように上記絶縁性物質を設ける上記工程は、上記巻軸部に巻回された上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を巻回する工程と、上記絶縁性物質の熱硬化作用によって、上記コイル導体の外周上に上記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被実装部材上に実装された状態で所定の封止部材によって被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、ドラム型コアにおける破損の発生を抑制することが可能な巻き線型インダクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1における電源回路を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図3】基板上に実装された実施の形態1における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図4】実施の形態2における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図5】図4中のV線によって囲まれる領域を拡大して示す断面図である。
【図6】基板上に実装された実施の形態2における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図7】実施の形態3における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図8】基板上に実装された実施の形態3における巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図9】一般的な巻き線型インダクタを分解して示す斜視図である。
【図10】図9中のX−X線に沿った矢視断面図である。
【図11】基板上に実装された一般的な巻き線型インダクタを示す断面図である。
【図12】基板上に実装された一般的な巻き線型インダクタに破損部が発生した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0025】
[実施の形態1]
(電源回路70)
図1を参照して、本実施の形態における電源回路70について説明する。図1は、電源回路70を示すブロック図である。電源回路70は、バッテリー71およびDC−DCコンバータ72を備える。DC−DCコンバータ72は、本実施の形態における巻き線型インダクタ100(詳細は後述する)を含む。
【0026】
DC−DCコンバータ72においては、バッテリー71、電界効果型トランジスタ73、および巻き線型インダクタ100が、この順に並んで直列接続される。電界効果型トランジスタ73と巻き線型インダクタ100との間には、ダイオード74が設けられる。電界効果型トランジスタ73のオンオフ動作は、制御回路75によって制御される。当該制御によって、DC−DCコンバータ72の出力端電圧V0が所定の電圧に保持される。
【0027】
電界効果型トランジスタ73がオンオフ動作を繰り返すと、巻き線型インダクタ100およびコンデンサ76には直流電圧が断続的に入力される。巻き線型インダクタ100およびコンデンサ76は、エネルギーを充放電する。当該充放電によって、断続的に入力された直流直流は、連続した直流電圧として出力される。
【0028】
DC−DCコンバータ72においては、電界効果型トランジスタ73のオンオフ動作のタイミングの変化に応じて、巻き線型インダクタ100には直流電圧が断続的に発生する。巻き線型インダクタ100は、巻き線型インダクタ100が充放電を繰り返すことによって、この変化に応じた磁界を発生する。本実施の形態における電源回路70は、以上のように構成される。
【0029】
(巻き線型インダクタ100)
図2を参照して、本実施の形態における巻き線型インダクタ100について説明する。図2は、巻き線型インダクタ100を示す断面図である。巻き線型インダクタ100は、ドラム型コア10、コイル導体20、絶縁性物質30、およびリングコア40を備える。
【0030】
ドラム型コア10は、フェライト等を素材とする焼結磁性体から形成される。ドラム型コア10は、巻軸部12、ならびに巻軸部12の両端にそれぞれ設けられた上鍔部14(第1鍔部)および下鍔部16(第2鍔部)を含む。巻軸部12は、円柱または角柱などの棒状に形成される。上鍔部14および下鍔部16は、円形板状または多角形板状に形成される。下鍔部16には、下鍔部16の外周端面および底面に沿うように、L字状の電極42および電極44が取り付けられる。
【0031】
コイル導体20は、巻軸部12に巻回される。コイル導体20は、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18(磁気ギャップ)内に配置される。コイル導体20の一端は、電極42に電気的に接続される(詳細は図示せず)。コイル導体20の他端は、電極44に電気的に接続される(詳細は図示せず)。
【0032】
絶縁性物質30は、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。本実施の形態においては、絶縁性物質30は、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって空間18を埋めるように設けられる。
【0033】
絶縁性物質30を構成する部材(素材)は、たとえば、ガラス繊維、または、フェノール樹脂を含む合成樹脂などである。詳細は後述されるが、絶縁性物質30を構成する部材の熱膨張係数は、巻き線型インダクタ100を基板50(図3参照)上に封止するモールド樹脂60(図3参照)の熱膨張係数よりも小さい。
【0034】
リングコア40は、空間18(磁気ギャップ)を外側から囲うように、ドラム型コア10に対して同心状に嵌め込まれる。リングコア40は、紫外線硬化樹脂などの接着剤43によって、電極42および電極44にそれぞれ接合される。リングコア40がドラム型コア10に対して固定された状態では、上鍔部14の外周端面とリングコア40との間に間隙19が形成される。
【0035】
リングコア40が空間18(磁気ギャップ)を外側から囲うように設けられることによって、この磁気ギャップからの磁束漏れが防止され、透磁率(磁気シールド性)が向上する。リングコア40の配設によって、より大きなインダクタンスを得ることが可能となるなお、リングコア40は、必要に応じて設けられるとよい。本実施の形態における巻き線型インダクタ100は、以上のように構成される。
【0036】
(巻き線型インダクタ100の実装)
図3を参照して、巻き線型インダクタ100がスイッチング方式等のDC−DCコンバータ72(図1参照)などを含む電源回路70(図1参照)に適用される場合、巻き線型インダクタ100は、基板50上に実装される。巻き線型インダクタ100は、基板50の他にも、小型モジュールなどの他の被実装部材に実装されてもよい。巻き線型インダクタ100が基板50上に実装される場合、基板50上に形成された導体パターン52と巻き線型インダクタ100の電極42,44とが、半田54を挟んで互いに接合される。
【0037】
巻き線型インダクタ100は、巻き線型インダクタ100が基板50上に実装された状態で、モールド樹脂60、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などの、所定の封止部材によって基板50上に封止される(密封処理される)。
【0038】
巻き線型インダクタ100を封止するモールド樹脂60などの封止部材としては、たとえば、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0039】
モールド樹脂60などによる封止によって、電子機器80が得られる。電子機器80においては、巻き線型インダクタ100がモールド樹脂60などの封止部材によって保護されることにより、電子機器80(巻き線型インダクタ100)としての強度および信頼性を向上させることができる。
【0040】
ここで、巻き線型インダクタ100を基板50上に封止する際には、モールド樹脂60等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100の全体を覆うように基板50上に供給される。この際、液体状のモールド樹脂60等は、間隙19を通して上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込もうとする。
【0041】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100においては、絶縁性物質30が、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。液体状のモールド樹脂60等は、上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)に流れ込む(侵入する)ことがない。
【0042】
上述のとおり、絶縁性物質30を構成する部材の熱膨張係数は、モールド樹脂60等の封止部材の熱膨張係数よりも小さい。モールド樹脂60等が硬化した後、電子機器80に大きな温度変化が与えられたと仮定する。この場合であっても、モールド樹脂60の熱膨張率に比べて絶縁性物質30の熱膨張率の方が小さいため、巻き線型インダクタ100においては、冒頭(図12参照)で説明したような応力が上鍔部14および下鍔部16に作用することはない(若しくは軽減される)。
【0043】
巻き線型インダクタ100によれば、上鍔部14と下鍔部16との間の空間18(磁気ギャップ)内において絶縁性物質30が膨張または収縮したとしても、ドラム型コア10の一部に割れまたは欠けなどの破損が生じることは抑制される。巻き線型インダクタ100によれば、熱変動に対しての信頼性を向上させることが可能となる。
【0044】
(巻き線型インダクタ100の製造方法)
巻き線型インダクタ100の製造方法としては、以下のとおりである。まず、フェライト等を素材とする焼結磁性体からドラム型コア10を得る。ドラム型コア10は、プレス成型または切削などによって得られる。得られたドラム型コア10の巻軸部12に対して、コイル導体20を巻回する。
【0045】
次に、絶縁性物質30が設けられる。絶縁性物質30は、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐ。絶縁性物質30としては、溶融させた状態(粘性を持った不定形状の状態)で空間18内に注入されるとよい。絶縁性物質30を注入した後、溶融状態にある絶縁性物質30を積極的に乾燥させたり、積極的に熱を付与したり、または常温下に所定の時間置いたりして、絶縁性物質30を硬化させる。
【0046】
絶縁性物質30が硬化した後、電極42,44が下鍔部16に取り付けられる。リングコア40は、ドラム型コア10に嵌め込まれた状態で、接着剤43によって固定される。以上のようにして、本実施の形態における巻き線型インダクタ100(図2参照)が得られる。
【0047】
[実施の形態2]
図4および図5を参照して、本実施の形態における巻き線型インダクタ100Aについて説明する。図4は、巻き線型インダクタ100Aを示す断面図である。図5は、図4中のV線によって囲まれる領域を拡大して示す断面図である。
【0048】
図4に示すように、巻き線型インダクタ100Aにおいては、上述の実施の形態1における巻き線型インダクタ100の絶縁性物質30(図2参照)の代わりに、糸状の部材から構成される絶縁性物質30Aが用いられる。絶縁性物質30Aを構成する部材の熱膨張係数は、巻き線型インダクタ100Aを基板50(図6参照)上に封止するモールド樹脂60(図6参照)の熱膨張係数よりも小さい。絶縁性物質30Aを構成する部材(素材)は、たとえば、ガラス繊維、または、テグスなどである。
【0049】
絶縁性物質30Aは、空間18内において、ドラム型コア10に対して巻回される。本実施の形態における絶縁性物質30Aは、互いに対向する上鍔部14の内表面14Aおよび下鍔部16の内表面16Aの双方に、それぞれ接着される。絶縁性物質30Aも、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞いでいる。
【0050】
絶縁性物質30Aを構成する部材は、熱硬化性を有しているとよい。この場合、絶縁性物質30Aは、巻軸部12に巻回されたコイル導体20の外周上に巻回された後、絶縁性物質30Aの熱硬化作用によって、コイル導体20の外周上に接着されることができる。熱硬化性を有する糸状の絶縁性物質30Aとしては、たとえば、フェノール樹脂を含む合成樹脂などを用いることができる。
【0051】
図5に示すように、絶縁性物質30Aは、芯材31と、その表面を被覆する接着層32とから構成されていてもよい。この場合、絶縁性物質30Aは、コイル導体20の外周上に巻回された後、接着層32によって、コイル導体20の外周上に接着されることができる。芯材31としては、たとえば、ガラス繊維、または、テグスなどを用いることができる。接着層32としては、たとえば、ポリイミド系接着剤を含む合成系接着剤などを用いることができる。
【0052】
(巻き線型インダクタ100Aの実装)
図6を参照して、巻き線型インダクタ100Aも、上述の実施の形態1における巻き線型インダクタ100と同様に、巻き線型インダクタ100Aが基板50上に実装された状態で、モールド樹脂60、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などの、所定の封止部材によって封止される(密封処理される)。
【0053】
モールド樹脂60などによる封止によって、電子機器80Aが得られる。電子機器80Aにおいても、巻き線型インダクタ100Aがモールド樹脂60などの封止部材によって保護されることにより、電子機器80A(巻き線型インダクタ100A)としての強度および信頼性を向上させることができる。
【0054】
巻き線型インダクタ100Aを基板50上に封止する際には、モールド樹脂60等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100Aの全体を覆うように基板50上に供給される。液体状のモールド樹脂60等は、間隙19を通して上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込もうとする。
【0055】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Aにおいては、絶縁性物質30Aが、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。液体状のモールド樹脂60等は、上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込む(侵入する)ことがない。
【0056】
上述のとおり、絶縁性物質30Aを構成する部材の熱膨張係数は、モールド樹脂60等の封止部材の熱膨張係数よりも小さい。モールド樹脂60等が硬化した後、電子機器80Aに大きな温度変化が与えられたと仮定する。この場合であっても、モールド樹脂60の熱膨張率に比べて絶縁性物質30Aの熱膨張率の方が小さいため、巻き線型インダクタ100Aにおいては、冒頭(図12参照)で説明したような応力が上鍔部14および下鍔部16に作用することはない(若しくは軽減される)。
【0057】
巻き線型インダクタ100Aによれば、絶縁性物質30Aが上鍔部14と下鍔部16との間の空間18(磁気ギャップ)内において膨張または収縮したとしても、ドラム型コア10の一部に割れまたは欠けなどの破損が生じることは抑制される。巻き線型インダクタ100Aによっても、熱変動に対しての信頼性を向上させることが可能となる。
【0058】
(巻き線型インダクタ100Aの製造方法)
巻き線型インダクタ100Aの製造方法としては、上述の実施の形態1と同様に、ドラム型コア10の巻軸部12に対して、コイル導体20を巻回する。次いで、コイル導体20の外周上に、絶縁性物質30Aを巻回する。絶縁性物質30Aは、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。
【0059】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Aの製造方法においては、コイル導体20の巻回に使用される機械と同一のものを使用して、絶縁性物質30Aを巻回することができるため、製造効率がよい。
【0060】
[実施の形態3]
図7を参照して、本実施の形態における巻き線型インダクタ100Bについて説明する。図7は、巻き線型インダクタ100Bを示す断面図である。巻き線型インダクタ100Bにおいては、上述の実施の形態2における巻き線型インダクタ100Aとは異なり、絶縁性物質30Aが空間18内には配置されない。
【0061】
本実施の形態における絶縁性物質30Aは、上鍔部14の外周端面14B上および下鍔部16の外周端面16B上において、空間18を跨ぐように巻回され、外周端面14B,16Bにそれぞれ接着されている。本実施の形態における絶縁性物質30Aも、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞いでいる。
【0062】
(巻き線型インダクタ100Bの実装)
図8を参照して、巻き線型インダクタ100Bも、上述の実施の形態1における巻き線型インダクタ100と同様に、巻き線型インダクタ100Bが基板50上に実装された状態で、モールド樹脂60、その他の硬化剤、またはその他の固定剤などの、所定の封止部材によって封止される(密封処理される)。
【0063】
モールド樹脂60などによる封止によって、電子機器80Bが得られる。電子機器80Bにおいても、巻き線型インダクタ100Bがモールド樹脂60などの封止部材によって保護されることにより、電子機器80B(巻き線型インダクタ100B)としての強度および信頼性を向上させることができる。
【0064】
巻き線型インダクタ100Bを基板50上に封止する際には、モールド樹脂60等は、溶融した状態で、巻き線型インダクタ100Bの全体を覆うように基板50上に供給される。液体状のモールド樹脂60等は、間隙19を通して上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込もうとする。
【0065】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Bにおいても、絶縁性物質30Aが、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。液体状のモールド樹脂60等は、上鍔部14および下鍔部16の間(空間18内)にも流れ込む(侵入する)ことがない。
【0066】
絶縁性物質30Aを構成する部材の熱膨張係数は、モールド樹脂60等の封止部材の熱膨張係数よりも小さい。モールド樹脂60等が硬化した後、電子機器80Bに大きな温度変化が与えられたと仮定する。この場合であっても、モールド樹脂60の熱膨張率に比べて絶縁性物質30Aの熱膨張率の方が小さいため、巻き線型インダクタ100Bにおいては、冒頭(図12参照)で説明したような応力が上鍔部14および下鍔部16に作用することはない(若しくは軽減される)。
【0067】
巻き線型インダクタ100Bにおいては、絶縁性物質30Aが空間18(磁気ギャップ)内に配置されない。空間18内には、コイル導体20が配置され、他の部分のほとんどは空洞となっている。絶縁性物質30Aが膨張または収縮したとしても、その膨張または収縮による影響は、絶縁性物質30Aと外周端面14B,l6Bとの接合部を通して上鍔部14および下鍔部16に伝達される。上鍔部14および下鍔部16に生じる応力は小さく、ドラム型コア10の一部に割れまたは欠けなどの破損が生じることはより一層抑制される。巻き線型インダクタ100Bによっても、熱変動に対しての信頼性を向上させることが可能となる。
【0068】
(巻き線型インダクタ100Bの製造方法)
巻き線型インダクタ100Bの製造方法としては、上述の実施の形態2と同様に、ドラム型コア10の巻軸部12に対して、コイル導体20を巻回する。次いで、上鍔部14および下鍔部16の各々の外周端面14B,16Bを利用して、ドラム型コア10に対して絶縁性物質30Aを巻回する。絶縁性物質30Aは、上鍔部14および下鍔部16の間に形成される空間18を、巻軸部12の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる。
【0069】
本実施の形態における巻き線型インダクタ100Bの製造方法においても、コイル導体20の巻回に使用される機械と同一のものを使用して、絶縁性物質30Aを巻回することができるため、製造効率が高い。
【0070】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
10,10Z ドラム型コア、12,120 巻軸部、14,140 上鍔部、14A,16A 内表面、14B,16B 外周端面、16,160 下鍔部、18,180 空間、19,190 間隙、20,200 コイル導体、30,30A 絶縁性物質、31 芯材、32 接着層、40,400 リングコア、42,44,420,440 電極、43 接着剤、50,500 基板(被実装部材)、52,520 導体パターン、54,540 半田、60,600 モールド樹脂(封止部材)、70 電源回路、71 バッテリー、72 DC−DCコンバータ、73 電界効果型トランジスタ、74 ダイオード、75 制御回路、76 コンデンサ、80,80A,80B,800 電子機器、100,100A,100B,100Z 巻き線型インダクタ、1000 破損部、AR1,AR2,AR3 矢印。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって前記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、
焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに前記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアと、
前記巻軸部に巻回されたコイル導体と、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される空間を、前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる絶縁性物質と、
を備え、
前記絶縁性物質の熱膨張係数は、前記封止部材の熱膨張係数よりも小さい、
巻き線型インダクタ。
【請求項2】
前記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、
前記絶縁性物質は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される前記空間内において、または、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の外周端面上において、前記ドラム型コアに対して巻回された状態で前記ドラム型コアに接着されている、
請求項1に記載の巻き線型インダクタ。
【請求項3】
前記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆されるとともに、前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に巻回され、
前記絶縁性物質は、前記接着層によって、前記コイル導体の外周上に接着されている、
請求項2に記載の巻き線型インダクタ。
【請求項4】
前記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成されるとともに、前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に巻回され、
前記絶縁性物質は、前記絶縁性物質の熱硬化作用によって、前記コイル導体の外周上に接着されている、
請求項2に記載の巻き線型インダクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の巻き線型インダクタを備える、
電源回路。
【請求項6】
被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって前記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタの製造方法であって、
焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに前記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアを準備する工程と、
前記巻軸部にコイル導体を巻回する工程と、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される空間を、前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように絶縁性物質を設ける工程と、
を備え、
前記絶縁性物質の熱膨張係数は、前記封止部材の熱膨張係数よりも小さい、
巻き線型インダクタの製造方法。
【請求項7】
前記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、
前記空間を前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように前記絶縁性物質を設ける前記工程は、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される前記空間内において、または、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の外周端面上において、前記絶縁性物質を前記ドラム型コアに対して巻回する工程と、
前記絶縁性物質を前記ドラム型コアに接着する工程と、を含む、
請求項6に記載の巻き線型インダクタの製造方法。
【請求項8】
前記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆され、
前記空間を前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように前記絶縁性物質を設ける前記工程は、
前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を巻回する工程と、
前記接着層によって、前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む、
請求項7に記載の巻き線型インダクタの製造方法。
【請求項9】
前記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成され、
前記空間を前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように前記絶縁性物質を設ける前記工程は、
前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を巻回する工程と、
前記絶縁性物質の熱硬化作用によって、前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む、
請求項7に記載の巻き線型インダクタの製造方法。
【請求項1】
被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって前記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタであって、
焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに前記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアと、
前記巻軸部に巻回されたコイル導体と、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される空間を、前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように設けられる絶縁性物質と、
を備え、
前記絶縁性物質の熱膨張係数は、前記封止部材の熱膨張係数よりも小さい、
巻き線型インダクタ。
【請求項2】
前記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、
前記絶縁性物質は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される前記空間内において、または、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の外周端面上において、前記ドラム型コアに対して巻回された状態で前記ドラム型コアに接着されている、
請求項1に記載の巻き線型インダクタ。
【請求項3】
前記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆されるとともに、前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に巻回され、
前記絶縁性物質は、前記接着層によって、前記コイル導体の外周上に接着されている、
請求項2に記載の巻き線型インダクタ。
【請求項4】
前記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成されるとともに、前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に巻回され、
前記絶縁性物質は、前記絶縁性物質の熱硬化作用によって、前記コイル導体の外周上に接着されている、
請求項2に記載の巻き線型インダクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の巻き線型インダクタを備える、
電源回路。
【請求項6】
被実装部材上に実装された状態で、所定の封止部材によって前記被実装部材上に封止される巻き線型インダクタの製造方法であって、
焼結磁性体から形成され、巻軸部ならびに前記巻軸部の両端にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を含むドラム型コアを準備する工程と、
前記巻軸部にコイル導体を巻回する工程と、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される空間を、前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように絶縁性物質を設ける工程と、
を備え、
前記絶縁性物質の熱膨張係数は、前記封止部材の熱膨張係数よりも小さい、
巻き線型インダクタの製造方法。
【請求項7】
前記絶縁性物質は、糸状の部材から構成され、
前記空間を前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように前記絶縁性物質を設ける前記工程は、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の間に形成される前記空間内において、または、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の外周端面上において、前記絶縁性物質を前記ドラム型コアに対して巻回する工程と、
前記絶縁性物質を前記ドラム型コアに接着する工程と、を含む、
請求項6に記載の巻き線型インダクタの製造方法。
【請求項8】
前記絶縁性物質は、表面が接着層で被覆され、
前記空間を前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように前記絶縁性物質を設ける前記工程は、
前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を巻回する工程と、
前記接着層によって、前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む、
請求項7に記載の巻き線型インダクタの製造方法。
【請求項9】
前記絶縁性物質は、熱硬化性を有する部材から構成され、
前記空間を前記巻軸部の径方向の外側から内側に向かって塞ぐように前記絶縁性物質を設ける前記工程は、
前記巻軸部に巻回された前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を巻回する工程と、
前記絶縁性物質の熱硬化作用によって、前記コイル導体の外周上に前記絶縁性物質を接着する工程と、をさらに含む、
請求項7に記載の巻き線型インダクタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−222325(P2012−222325A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90192(P2011−90192)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]