説明

帯状部材の貼付け装置および貼付け方法

【課題】未加硫帯状部材の貼付け精度を十分高く維持しつつ、未加硫帯状部材をより高速で成型ドラムに貼着させることができる帯状部材の貼付け装置を提供する。
【解決手段】定寸切断されて搬送面上に位置決め配置された未加硫帯状部材Wを搬送するコンベアベルト2と、コンベアベルト2それ自体をストロークさせるコンベアベルトシフト手段7,8と、回動駆動されて、コンベアベルト2上の未加硫帯状部材Wを周面上に直接的もしくは間接的に貼着される成型ドラム1とを具えてなり、前記コンベアベルト2を、成型ドラム1の下方に配設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多くは空気入りタイヤの構成部材としての、ゴムを主体とする未加硫帯状部材を成型ドラム上に巻付け貼着させるとともに積層して生タイヤを成型するに用いて好適な帯状部材の貼付け装置および、その貼付け装置を用いた貼付け方法に関するものであり、とくには、未加硫帯状部材の所要の貼付け精度を確保しつつ、未加硫帯状部材の高速貼着を可能とする技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ベルトコンベアによって搬送された未加硫帯状部材を回動駆動される成型ドラムの周面上に巻付けるとともに貼着させる従来技術にあっては、ベルトコンベアの搬送速度が1m/s程度では、その未加硫帯状部材を、十分高い精度で成型ドラムに貼着させることができるも、生産性の向上を目的として、ドラム周速とともにベルトコンベアの搬送速度を増加させると、ベルトコンベアと駆動ロールとの間のスリップ、ベルトコンベアの伸縮変形等に起因する、前記帯状部材の実際の送り速度と、成型ドラムの回動周速との間の差によって、前記帯状部材に弛み変形、伸縮変形等が生じることがあり、帯状部材のこのような変形が、成型ドラム上での帯状部材の蛇行その他による、貼着精度の低下をもたらすことになるという問題があった。
【0003】
そして、このような精度の低下の問題は、樹脂製ベルトコンベアのように、駆動ロールとの間にスリップを生じ易く、また、作用する張力によって伸縮変形し易いベルトコンベアを用いる場合にあってはとくに重大であった。
【0004】
また、未加硫帯状部材の、「成型ドラムへの巻付け精度を向上できる」従来技術としては、特許文献1に開示されているような、「未加硫タイヤ部材を成形ドラムの外周面へ供給するタイヤ部材の供給装置において、前記未加硫タイヤ部材を吸着して搬送する磁石付ベルトコンベアと、同ベルトコンベアを前記成形ドラムの方向に移動可能に支持するベルトコンベア支持部材と、同ベルトコンベアを揺動して同ベルトコンベアの先端部を前記成形ドラムの外周面に対して接近、離間させるベルトコンベア駆動手段と、同ベルトコンベアの後端部下方に配設されて同ベルトコンベアの下面に吸着された未加硫タイヤ部材を所定長さに切断する切断装置とを具えていることを特徴としたタイヤ部材の供給装置。」があり、この供給装置は、「切断装置により切断された切断済み未加硫タイヤ部材を吸着保持している磁石付ベルトコンベアを前進させて、切断済み未加硫タイヤ部材の前端部を成形ドラムの巻付始端位置付近に移動させ、次いで磁石付ベルトコンベアを成形ドラムの方向に揺動させ、切断済み未加硫タイヤ部材の前端部を成形ドラムの巻付始端位置に接触させて、切断済み未加硫タイヤ部材を成形ドラムの外周面に供給する。また成形ドラムが一回転して、切断済み未加硫タイヤ部材が成形ドラムの外周面に巻付けられたら、磁石付ベルトコンベアを後退させ、次いで後続の未加硫タイヤ部材を磁石付ベルトコンベアに吸着し、次いで磁石付ベルトコンベアを駆動して、同後続の未加硫タイヤ部材の前端部を同ベルトコンベアの前端部付近まで送り、次いで切断装置を作動して、同後続の未加硫タイヤ部材を切断し、その後、上記と同じ要領で成形ドラムの外周面へ供給する。」とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−231927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、この従来技術では、回動駆動される成形ドラムに対する未加硫タイヤ部材の供給は、ベルトコンベアの、成形ドラム周速と同期した、ベルトコンベアの搬送走行によって行われることから、生産性の向上を目的としてドラム周速および、ベルトコンベアの搬送走行速度を増加させた場合は、前述したと同様の貼着精度の低下の問題が生じることになり、しかもこの従来技術では、未加硫タイヤ部材の巻付け始端を成形ドラムに圧着させた静止状態から成形ドラムの回動を開始することから、とくに、成形ドラムの回動初期に、未加硫タイヤ部材の巻付け始端近傍に、慣性力に起因する伸長変形等が発生し易く、これによる貼着精度の低下が不可避となるという問題もあった。
【0007】
そしてまた、この従来技術は、成形ドラムの周面の上側の、周面頂点位置を、未加硫タイヤ部材の巻付け始端位置とする、いわゆる上貼りタイプのものであって、磁石付ベルトコンベアに吸着された未加硫タイヤ部材を、成形ドラムの回動運動に基き、未加硫タイヤ部材への引張力の作用下で成形ドラムの外周面に巻取るものであることから、そもそも、未加硫タイヤ部材をそれほど高速では巻付けできないという構造上の問題をも抱えるものであった。
【0008】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、未加硫帯状部材の貼付け精度を十分高く維持しつつ、未加硫帯状部材をより高速で成型ドラムに貼着させることができる帯状部材の貼付け装置および、その装置を用いた貼付け方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の帯状部材の貼付け装置は、定寸切断されて搬送面上に位置決め配置された未加硫帯状部材を搬送するコンベアベルトと、コンベアベルトの搬送走行中にコンベアベルトそれ自体をストロークさせることができるコンベアベルトシフト手段と、回動駆動されて、コンベアベルト上の未加硫帯状部材を周面上に直接的もしくは間接的に貼着される成型ドラムとを具えてなり、前記コンベアベルトを、成型ドラムの下方に配設してなるものである。
【0010】
なおここで、成型ドラムは、多くは、リンク機構その他による、周面外径の所要に応じた拡縮径変形によって、ドラム周長を適宜選択できるよう構成されており、タイヤサイズの変更、成型ドラム上の成型品の、オーリングその他への引き渡し等に柔軟に対応できるものとされている。
【0011】
ここで好ましくは、前記コンベアベルトを、スチールコードで補強された、伸縮量の少ないスチールコンベアベルトとする。
【0012】
ここにおいて、コンベアベルトシフト手段は、速度およびストローク量の高精度の制御が可能なラックアンドピニオン、ボールネジもしくはシリンダで構成することができる。
【0013】
また好ましくは、コンベアベルトおよび成型ドラムのそれぞれに、未加硫帯状部材の位置決め保持のための、未加硫帯状部材の、磁気、負圧等による吸着手段を設ける。
なおここで、成型ドラムの吸着手段を負圧吸着手段としたときは、成型ドラムの周面上に、他の未加硫帯状部材を介して間接的に未加硫帯状部材を貼着させるに当って、その吸着手段を十分に機能させることは、先の貼着になる未加硫帯状部材に穿孔を設けるなどの特別細工なしには甚だ困難である。
【0014】
そして、この発明の帯状部材の貼付け方法は、定寸切断されてコンベアベルトの搬送面上に位置決め配置された未加硫帯状部材を、コンベアベルトの搬送走行と、コンベアベルトそれ自体の進出ストロークとの両者により、回動駆動されて未加硫帯状部材を周面上に直接的もしくは間接的に貼着される成型ドラムへ送給して、未加硫帯状部材を、搬送方向の先端より成型ドラムの周面上に、ドラム周面の下側から貼着させるにある。
【0015】
ここで好ましくは、タイヤ成型ドラムを、コンベアベルトの搬送速度と、コンベアベルト自体の進出ストローク速度との合算周速で回動駆動させる。
【0016】
また好ましくは、未加硫帯状部材の、コンベアベルト上への位置決め配置を、未加硫帯状部材のコンベアベルトへの吸着によって行う。
【0017】
そしてまた好ましくは、未加硫帯状部材の搬送方向先端の、成型ドラムの周面上への、たとえば直接的な貼着を、該搬送方向先端を成型ドラムの周面に吸着させて開始する。
ところでこの場合、コンベアベルトが未加硫帯状部材の吸着機能を有するときは、成型ドラム側の吸着力を、コンベアベルト側の吸着力より幾分大きくすること、未加硫帯状部材の、成型ドラムへの到達に当って、コンベアベルト側の吸着力を、低下ないしは消滅させること等によって対処することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の、帯状部材の貼付け装置では、未加硫ゴムそれ自体からなる場合の他、未加硫ゴム中に、スチールコード、有機繊維コード等の補強コードもしくは織布を埋設することもある、所定の幅の未加硫帯状部材を、コンベアベルトの搬送走行のみならず、コンベアベルトそれ自体の成型ドラムへの近接ストロークをもって搬送することで、未加硫帯状部材のトータル搬送速度を、コンベアベルトの搬送速度と、コンベアベルト自体のストローク速度との合算値として生産性を十分に高めることができるので、コンベアベルトの搬送速度の増加だけによって、生産性を高める場合に比して、コンベアベルトの搬送速度を相当遅くでき、コンベアベルトと駆動ロールとの間のスリップ、コンベアベルトの伸縮変形等に起因する、成型ドラム周面上への、未加硫帯状部材の貼着精度の低下のおそれを十分に取り除くことができる。
【0019】
なおこの場合、成型ドラムの駆動周速は、上記合算値とすることができるので、コンベアベルトの搬送速度を、帯状部材の貼着精度が低下しない範囲に抑えてなお、生産性を有効に向上させることができる。
【0020】
またこの装置は、コンベアベルトで搬送される未加硫帯状部材を、成型ドラムの周面上に、ドラムの周面の下側から貼着させる、いわゆる下貼りタイプのものであることから、該帯状部材を、コンベアベルトの搬送走行および、コンベアベルト自体のストロークと相俟って、上貼りタイプのものに比して、より高速でドラム周面上に巻付けて生産性の一層の向上を図ることができる。
【0021】
このような装置において、コンベアベルトを、スチールコードで補強した、ゴム製のスチールコンベアとした場合は、コンベアベルトの搬送速度を高めてなお、コンベアベルトと駆動ロールとの間へのスリップの発生、およびコンベアベルトの伸縮変形等による、帯状部材の貼着精度の低下を有効に抑えることができる。
【0022】
ここにおいて、コンベアベルトシフト手段を、ラックアンドピニオン、ボールネジ、シリンダーなかでも電気シリンダーによって構成するときは、コンベアベルトのシフトスロークの量および速度を十分高精度に制御して、成型ドラムの駆動周速との同期調整等を容易なものとすることができる。
【0023】
そして、コンベアベルトおよび成型ドラムのそれぞれに、未加硫帯状部材の吸着手段を設けたときは、その帯状部材に固有の粘着力だけに依存する場合に比し、未加硫帯状部材の、コンベアベルトの搬送面上での位置決め保持精度、および、成型ドラムの周面上への貼付け精度をともに十分に確保することができる。
なお、吸着手段は、帯状部材内への埋設コードがスチールコードである場合は、磁気吸着手段とすることができ、また、埋設コードがスチールコードおよび有機繊維コードである場合の他、埋設コードが存在しない場合のいずれにあっても負圧吸着手段とすることができる。
【0024】
そして、これらのいずれの場合にあっても、未加硫帯状部材の、コンベアベルトから成型ドラム周面への、円滑にして確実な引き渡しのためには、成型ドラム側の吸着力をコンベアベルト側の吸着力より幾分大きくすること、未加硫帯状部材の成型ドラムへの到達に当って、コンベアベルト側の吸着力を低下ないしは消滅させること等が好ましい。
【0025】
そしてこの発明の、帯状部材の貼付け方法では、先にも述べたように、コンベアベルトの搬送速度と、コンベアベルト自体のストローク速度とによって未加硫帯状部材の送給速度を稼ぐことで、生産性を有効に高めることができ、また、コンベアベルトの搬送速度だけを高める場合の、コンベアベルトのスリップ、伸縮変形等のおそれを取り除いて、未加硫帯状部材の貼着精度を所期した通りのものとすることができる。
【0026】
しかもここでは、未加硫帯状部材を、成型ドラムの周面上に、ドラム周面の下側から貼着させる、下貼りタイプの貼着態様とすることで、該帯状部材の高速貼着に十分対応することができる。
【0027】
ここで、成型ドラムを、コンベアベルトの搬送速度と、コンベアベルト自体の進出ストローク速度との合算周速で回動駆動させる場合は、速度の同期下で、未加硫帯状部材の貼着精度をより十分に確保することができる。
【0028】
なお、未加硫帯状部材の、コンベア上への位置決め配置を、未加硫帯状部材のコンベアへの吸着によって行う場合は、該帯状部材の、コンベアベルト上での意図しない位置ずれを防止して、ドラム周面上への貼着精度を高めることができる。
【0029】
また、未加硫帯状部材の搬送方向先端の、成型ドラムの周面上への貼着を、該搬送方向先端を成型ドラムの周面に吸着させて開始する場合は、該帯状部材の、ドラム周面上への貼着の開始を、常に確実に、かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の装置の実施形態を示す略線側面図である。
【図2】図1に示す装置による、未加硫帯状部材の、成型ドラム周面上への貼着状態を示す側面図である。
【図3】一の貼着作業を終えた装置の、次の作業の待機状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図中1は、所要の周速で回動駆動されて、周面上に直接的もしくは間接的に未加硫帯状部材を貼着される成型ドラム、たとえば、ベルト・トレッド成型ドラムを、2は、未加硫帯状部材を搬送するコンベアベルトをそれぞれ示し、このコンベアベルト2は、たとえば、前工程で定寸切断された、コードを含む、もしくは含まない、未加硫ゴムを主体とする未加硫帯状部材、たとえば、成型ドラム1の軸線方向長さとほぼ等しい幅を有する未加硫帯状部材Wを、搬送面上にセンタリング等されて位置決め配置されて、成型ドラム1側に向けて搬送走行する。
【0032】
また3は、コンベアベルト2を配設したコンベアベルトフレームを示し、コンベアベルト2は、このコンベアベルトフレーム3に配設したモータ4に連結されて、成型ドラム1の周面の下側を、該ドラム1の中心軸線と直交する方向へ、図では水平に走行駆動される。
そしてここでは、このようなコンベアベルトフレーム3を水平に支持するベースフレーム5を設け、このベースフレーム5に設けた駆動モータ6を、コンベアベルトフレーム3の下面に、それの長さ方向に延在させて、全長にわたって敷設したラック7と噛合するピニオン8に駆動連結して、ピニオン8と噛合するラック7、ひいては、コンベアベルト2を配設したコンベアベルトフレーム3を、図示しない直動ガイド等による摺動ガイドの作用下で、水平姿勢を維持したまた、図の左右両方向へ所要に応じて並進運動可能とする。
従ってここでは、ベースフレーム5に設けた駆動モータ6によって回転駆動されるピニオン8と、コンベアベルトフレーム3の下面に敷設されてピニオン8に噛合するラック7とが、コンベアベルト2の搬送走行から独立させて、コンベアベルトそれ自体をストロークさせるコンベアベルトシフト手段を構成することになる。
なおここで、ラック7およびピニオン8に替えて、ボールネジ、電気シリンダ等を設けることも可能であり、これらのいずれによっても、コンベアベルト自体のシフトストローク量およびシフト速度を高い精度で制御することができる。
【0033】
このように構成してなる装置では、コンベアベルト2の搬送面上の未加硫帯状部材Wを、コンベアベルト2の搬送走行によって、成型ドラム1の周面の下側に向けて、図に矢印Aで示すように水平に搬送し、これと併せて、コンベアベルトシフト手段によって、コンベアベルト2をコンベアベルトフレーム3とともに、図に矢印Bで示すように、水平方向に所要の速度で進出ストロークさせることで、コンベアベルト2の搬送走行速度をそれほど速める必要なしに、該帯状部材Wを成型ドラム1の周面上に、十分な速度で貼着させることができるので、生産性を有効に高めることができる。
【0034】
この一方で、コンベアベルト2の搬送速度をそれほど高める必要がないことから、未加硫帯状部材Wの貼着精度の低下のおそれを効果的に取り除くことができる。
【0035】
このような装置において、コンベアベルト2を、スチールコードで補強した、ゴム製のスチールコンベアベルトとした場合は、コンベアベルト2の搬送速度を高めてなお、コンベアベルト2と駆動ロールとの高い摩擦力の下で、それらの間へのスリップの発生を有効に防止できるので、貼着精度の低下のない搬送速度の選択の自由度を高めることができる。また、スチールコードの高い耐張力の下で、コンベアベルト2の伸縮変形等を抑制することで、未加硫帯状部材の貼着精度の低下を有効に防止することができる。
【0036】
またこの装置において、コンベアベルト2および成型ドラム1のそれぞれに、未加硫帯状部材Wの、磁気吸着、負圧吸着等になる吸着手段を設けたときは、該帯状部材Wを、コンベアベルト2およびドラム周面に、未加硫帯状部材Wに固有の粘着力だけに依存して位置決め保持する場合に比して、未加硫帯状部材の位置決め保持精度および、ドラム周面上への貼着精度をともに向上させることができる。
【0037】
そしてこの場合は、未加硫帯状部材Wの、コンベアベルト2から成型ドラム周面への、円滑にして確実な引き渡しのためには、成型ドラム側の吸着力をコンベアベルト側の吸着力より幾分大きくすること、未加硫帯状部材Wの成型ドラム1への到達に当って、コンベアベルト側の吸着力を低下ないしは消滅させること等が好ましい。
【0038】
上述したように構造してなる装置による、この発明に係る方法の実施は、前工程で定寸切断されて、コンベアベルト2の搬送面上に位置決め配置された未加硫帯状部材Wを、モータ4の作動による、コンベアベルト2の、図1に矢印Aで示すような水平方向の、図では左側への搬送走行と、駆動モータ6の作動に基く、コンベアベルトフレーム3、ひいては、コンベアベルトそれ自体の、図1に矢印Bで示すような水平方向の、図では左側への進出ストロークとの両者により、回動駆動されて、未加硫帯状部材を周面上に直接的もしくは間接的に貼着される成型ドラム1へ送給して、未加硫帯状部材Wを、搬送方向の先端より成型ドラムの周面上に、ドラム周面の下側から、粘着によってまたは吸着によって貼着させることにより行う。
このことによれば、帯状部材Wの、成型ドラム1への送給速度を、コンベアベルトの搬送速度とコンベアベルト自体の進出ストローク速度との合算値とすることができるので、コンベアベルトの搬送速度をそれほど高めることなしに生産性を高めることができ、また、コンベアベルトの搬送速度だけを大きく高める場合の、未加硫帯状部材Wの貼着精度の低下のおそれを十分に取り除くことができる。
【0039】
加えてここでは、未加硫帯状部材Wを、ドラム周面の下側から貼着させることで、ドラム周面の上側から貼着させる場合に比し、下側コンベアベルト上で帯状部材Wを貼着待機位置に正確に位置決めできるとともに、コンベアベルト2を、成型ドラム1への貼着速度に高い精度で同期させることができるので、より高速の貼着に十分に対処させることができる。
【0040】
ところで、一の未加硫帯状部材Wを成型ドラム1の周面上に、上述したようにして貼着した場合は、コンベアベルトフレーム3の進出ストロークにより、コンベアベルト2およびコンベアベルトフレーム3は、図2に示すように進出変位することになるので、その後は、コンベアベルトフレーム3およびコンベアベルト2を、図3に示すように、ラック7およびピニオン8の噛合状態を維持しつつ、ベースフレーム5とともに、後退ストロークさせて、コンベアベルト2およびコンベアベルトフレーム3に、次の作業の開始を待機させる。
【0041】
ここで、ベースフレーム5をこのように後退ストロークさせるに当っては、ベースフレーム5それ自体を、床面9に対してシリンダーその他の並進駆動手段10によって水平にストロークさせることが、ベースフレーム5およびコンベアベルトフレーム3の小型化を図る上で好ましいが、このことは、この発明に係る装置に必須のものではない。
【0042】
そしてこの方法において、成型ドラム1を、コンベアベルト2の搬送速度と、コンベアベルト自体の進出ストローク速度との合算周速で回動駆動させる場合は、高速貼着による生産性の向上を図ることができ、また、速度の同期下で、未加硫帯状部材Wの貼着精度の低下のおそれを十分に取り除くことができる。
【0043】
ここで、未加硫帯状部材Wのコンベアベルト搬送面上への位置決め配置を、その未加硫帯状部材Wの、ベルト搬送面への、負圧、磁気等による吸着によって行う場合は、該帯状部材Wの粘着のみによる位置決めに比し、帯状部材Wの意図しない位置ずれを防止して成型ドラム1貼着精度をより高めることができる。
【0044】
そしてこのことは、未加硫帯状部材Wの搬送方向先端の、成型ドラム1の周面上への貼着を、該搬送方向先端を成型ドラム1の周面に吸着させて開始する場合にもまた同様であり、このことによれば、成型ドラム1の周面上に、たとえば直接的に貼着させる未加硫帯状部材Wの貼着先端部の、ドラム周面上での不測の位置ずれ等を十分に防止して、貼着精度の向上を図ることができる。
【0045】
なおここで、成型ドラム1を、たとえば、ベルト・トレッド成型ドラムとしたときは、所要の形態で延在するコードを埋設してなる所定の枚数の未加硫帯状部材Wのそれぞれを、好ましくは、貼着始端と貼着終端との突き合せ接合部がドラム周方向にオフセットした状態で、上述したところと同様にして貼着するとともに積層してベルト部材を形成し、次いで、未加硫帯状部材Wとしての未加硫トレッドゴムを、そのベルト部材の外周側に貼着させることで、ベルト・トレッドバンドを成型する。
その後は、成型ドラム1上のベルト・トレッドバンドを、図示しないオーリング等をもって外周側から把持するとともに、成型ドラム1を縮径変形させて、ベルト・トレッドバンドの支持をオーリング等に肩代わりさせ、そして、そのベルト・トレッドバンドを、オーリング等をもって次の所定の作業位置、たとえば、グリーンケースのシェーピングを行うフォーマーの外側位置へ搬送する。
【符号の説明】
【0046】
1 成型ドラム
2 ベルトコンベア
3 コンベアベルトフレーム
4 モータ
5 ベースフレーム
6 駆動モータ
7 ラック
8 ピニオン
9 床面
10 並進駆動手段
W 未加硫帯状部材
A 搬送走行方向
B 進出ストローク方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定寸切断されて搬送面上に位置決め配置された未加硫帯状部材を搬送するコンベアベルトと、コンベアベルトそれ自体をストロークさせるコンベアベルトシフト手段と、回動駆動されて、コンベアベルト上の未加硫帯状部材を周面上に直接的もしくは間接的に貼着される成型ドラムとを具えてなり、前記コンベアベルトを、成型ドラムの周面の下方に配設してなる帯状部材の貼付け装置。
【請求項2】
コンベアベルトおよび成型ドラムのそれぞれに、未加硫帯状部材の吸着手段を設けてなる請求項1に記載の帯状部材の貼付け装置。
【請求項3】
定寸切断されてコンベアベルトの搬送面上に位置決め配置された未加硫帯状部材を、コンベアベルトの搬送走行と、コンベアベルトそれ自体の進出ストロークとの両者により、回動駆動されて未加硫帯状部材を周面上に直接的もしくは間接的に貼着される成型ドラムへ送給して、未加硫帯状部材を、搬送方向の先端側から成型ドラムの周面上に、ドラム周面の下側から貼着させる帯状部材の貼付け方法。
【請求項4】
成型ドラムを、コンベアベルトの搬送速度と、コンベアベルト自体の進出ストローク速度との合算周速で回動駆動させる請求項3に記載の帯状部材の貼付け方法。
【請求項5】
未加硫帯状部材の、コンベアベルト上への位置決め配置を、未加硫帯状部材のコンベアベルトへの吸着によって行う請求項3もしくは4に記載の帯状部材の貼付け方法。
【請求項6】
未加硫帯状部材の搬送方向先端の、成型ドラムの周面上への貼着を、該搬送方向先端を成型ドラムの周面に吸着させて開始する請求項3〜5のいずれかに記載の帯状部材の貼付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76444(P2012−76444A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226763(P2010−226763)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】