説明

帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】、主に光学フィルム用基材や工程紙として満足しうる帯電防止性、光学特性、耐熱性、平滑性等を有する帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】実質的に外部粒子を含まない二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、
(A)アクリル系樹脂 60〜90質量部
(B)帯電防止剤 10〜40質量部
(C)架橋剤 1〜30質量部
(D)一次粒径が40〜100nmの粒子 1〜5質量部
から構成される帯電防止層を、インラインコート法により30〜60nmの厚さで積層したことを特徴とする帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性二軸延伸ポリエステルに関し、さらに詳しくは、光学フィルム用基材や工程紙として満足しうる帯電防止性、光学特性、平滑性、耐熱性等を有する光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(PET、PENなど)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、非晶性ポリオレフィン(非晶PO)などの透明プラスティックフィルムは、ガラスと比べて、軽量・割れにくい・曲げられるといった好適な性質を持つため、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)、電子ペーパー(EP)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用部材(光学用フィルム)の基材や工程紙として用いられている。中でも、二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、耐熱性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有する上に、他の透明プラスティックフィルムに比べて、汎用性が高く、コストメリットに大きな優位性があるため、かかる用途に好適に用いられている。
【0003】
しかし、二軸延伸ポリエステルフィルムは一般に静電気が発生しやすく、製膜工程、加工工程、製品の使用時などに塵埃が付着するという問題を有している。かかる欠点を解決するために、従来からポリエステルフィルム表面に帯電防止性を付与する検討がなされている。たとえば、特許文献1は、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に、アクリル系重合体とポリスチレンスルホン酸および/またはその塩を塗布することで耐電防止性を付与する手法を示しており、特許文献2は塗布層を均一に分散させ、外観、接着性耐スクラッチ性などに優れた積層ポリエステルフィルムを提供する手法を示している。
【特許文献1】特開昭64−9242号公報
【特許文献2】特開2003−71995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。すなわち、光学用フィルムなどの基材や工程紙として用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムには、高度な透明性とクリア感、優れた色調(低いb値)といった光学特性や、加工時にかかる熱に耐えうる耐熱性、加工品に凹凸を目立たせないための平滑性などが高度に両立して求められるが、かかる特性を達成するための具体的な手段については開示がない。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、光学フィルム用基材や工程紙として満足しうる帯電防止性、光学特性、耐熱性、平滑性等を有する光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、帯電防止層を構成する物質と組成比、帯電防止層の膜厚を好適に限定することで、特に光学フィルム用基材や工程紙として満足しうる帯電防止性、光学特性、耐熱性等を有する光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明は、実質的に外部粒子を含まない二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、
(A)アクリル系樹脂 60〜90質量部
(B)帯電防止剤 10〜40質量部
(C)架橋剤 1〜30質量部
(D)一次粒径が40〜100nmの粒子 1〜5質量部
から構成される帯電防止層を、インラインコート法により30〜60nmの厚さで積層したことを特徴とする帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、更に詳しく本発明帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムについて説明する。
【0009】
本発明の帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムは、主に、光学用に関する。光学用とは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、ブラウン管などの部材、例えば拡散シートや電磁波遮蔽フィルム、近赤外線カットフィルムといったフィルムや、反射防止フィルム、タッチパネル用透明電極フィルムといった物品の最表面に貼付されるフィルムであり、その基材や工程紙として用いられることを言う。
【0010】
かかる用途に好適に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムには優れた光学特性を要求される。すなわち、ヘイズ値は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。ヘイズは後述のとおり、ポリエステルフィルム原料や帯電防止層に混入される添加剤の量や、帯電防止層の組成配合比を本発明の範囲とすることで達成させることができる。また、全光線透過率は、帯電防止層が片面のみに積層する場合は好ましくは90%以上、帯電防止層が両面に積層する場合は好ましくは92%以上である。
【0011】
また、青味−黄味を示す透過b値は0.5以下が好ましい。全光線透過率や透過b値は後述のとおり、ポリエステルフィルム原料の色調、帯電防止層の処理面数、組成配合比率、膜厚などを本発明の範囲とすることで好適な値を得ることができる。
【0012】
かかる用途に用いられる場合、二軸延伸ポリエステルフィルム自体やそれを用いた各種加工時に塵埃が付着することは好ましくなく、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面には帯電防止層を設置する必要がある。帯電防止層の表面比抵抗は、10の13乗台Ω/□以下が好ましく、より好ましくは10の11乗台Ω/□、更に好ましくは10の9乗台Ω/□以下である。表面比抵抗は後述のとおり、帯電防止剤の種類、帯電防止層の膜厚、組成配合比などを本発明の範囲とすることで達成することができる。
【0013】
塗布、乾燥、蒸着など、光学用フィルムの加工時に二軸延伸ポリエステルフィルムに熱をかける工程があるため、更にはロール状態での長期保管に耐え得るため、帯電防止層は耐熱性を有する方が好ましい。本発明において、帯電防止層同士のブロッキングが開始する温度は、100℃以上であることが好ましい。耐熱性は後述のとおり、帯電防止層の組成配合比、造膜性、帯電防止層に添加する粒子の量と径、架橋剤の量などを本発明の範囲とすることで向上させることができる。
【0014】
上述の好ましいヘイズを達成するためには、原料であるポリエステルに実質的に外部粒子を含まない必要がある。なお外部粒子とは、二軸延伸ポリエステルフィルムの原料であるポリエステルに意図的に添加する粒子のことを言う。また、上述の透過b値を達成するために、原料であるポリエステルチップのb値は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4.0以下である。かかる二軸延伸ポリエステルフィルムの原料は、上記好ましいb値を有していれば特に限定される物ではないが、ジカルボン酸類としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を、グリコール類としては、エチレングリコールを選択したポリエチレンテレフタレートかポリエチレン2,6−ナフタレートが機械的強度、耐候性や耐化学薬品性、透明性などを考慮すると好ましい。ポリエステルを重合する際の触媒として、上記好ましいb値を有していれば特に限定されるものではないが、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物などを使用することが好ましい。また、フィルムの耐候性、耐熱性などの機能を持たせるため、前記ポリエステル樹脂を主体としたフィルム原料に添加剤を混入してもよい。添加剤としては特に限定されず、添加剤、例えば、着色剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤などが使用できるが、本発明の必要特性である透明性やヘイズ、色調に影響を与えないように添加量を考慮することが好ましく、実質的に添加剤も含まないことがより好ましい。
【0015】
かかる二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜方法は、例えば、溶融押出した結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5倍〜4倍程度延伸し、続いて幅方向に2.5倍〜4倍程度延伸する。さらに連続的に150℃〜250℃の加熱ゾーンに導き結晶配向を完了させ、30℃〜200℃で長手方向や幅方向に1%〜5%に弛緩させ熱寸法安定性を付与する方法である。二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、25μm〜300μmが好ましく、より好ましくは50μm〜250μmである。25μmを下回ると、基材としての腰強さが得られず、帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムのカール、シワ・折れが発生し取り扱い性が大幅に悪化するため好ましくなく、300μmを越えると、腰が強すぎて作業性が悪化し、ロール状態での巻き長さも短くなるためコストが増大するため好ましくない。
【0016】
本発明における帯電防止層の設置方法としては、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに樹脂塗液を塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させるインラインコート法である必要がある。これは、塗布・乾燥を同一工程内で実施できるコストメリットに加え、塗布後に延伸するため、本発明におけるような30〜60nmの薄膜を好適に得ることができるためである。塗布の方法は、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法などを用いることができる。形成される帯電防止層の膜厚は、塗液の濃度や塗布量等に比例する。本発明においては、後述のとおり帯電防止層の膜厚を30〜60nmの範囲に限定して制御する必要があるため、得られた帯電防止層の膜厚を後述の方法でチェックして濃度、塗布量等を微調整することが好ましい。
【0017】
上述の全光線透過率、透過b値を達成するために、帯電防止層の主成分はアクリル系樹脂である必要がある。すなわち、アクリル系樹脂の屈折率は約1.5であり二軸延伸ポリエステルフィルムの面方向平均屈折率約1.66と比べて低いため、帯電防止層が、所謂、反射防止層の役目を果たし、高透過率、低透過b値を達成しやすくなる。また、後述の帯電防止成分との造膜安定性、易接着性維持のためにもアクリル系樹脂を主成分とする必要があり、添加量は60質量部から90質量部が好ましい。アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、上記屈折率(約1.5)を満たすものであれば特に限定はなく、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマ、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマ、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマ、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマ、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)等のカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。
【0018】
本発明において帯電防止性を発現させるために帯電防止層に添加する帯電防止剤として、金属粉、酸化スズ−アンチモン系導電剤、耐電防止性を有する界面活性剤などが挙げられるが、特許文献1にある理由からポリスチレンスルホン酸および/またはその塩が好ましい。ポリスチレンスルホンの分子量は1万から30万が好ましく、より好ましくは1万から10万である。塩のアニオン成分としては、アンモニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオンなどが挙げられるが、帯電防止性や造膜性の点で、アンモニウムイオン、リチウムイオンを用いることが好ましい。帯電防止剤の添加量は、10質量部から40質量部である必要があり、より好ましくは20〜30質量部である。上記下限値より少ないと耐電防止性が低くなり、上記上限値より多いと帯電防止層の造膜性が不安定化し、凝集、亀裂等が発生しフィルムが白濁・帯電防止性が低下、耐熱性が低下しやすくなる。
【0019】
本発明において、帯電防止層を固くし、帯電防止層の耐熱性、耐擦過性などを向上させるために帯電防止層に添加する架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などが挙げられるが、上述のアクリル系樹脂との架橋性、保存性や水溶性といった取り扱い性等からメラミン系樹脂が好ましく、架橋性、水溶性、可撓性等を制御できるメチロール化メラミン樹脂がより好ましい。架橋剤の添加量は、1質量部から30質量部である必要があり、好ましくは3質量部から10質量部である。1質量部より少ないと、架橋剤による帯電防止層の硬化効果が発現せず、30質量部より大きいと、逆に造膜性が不安定化し、凝集、亀裂等が発生しフィルムが白濁・帯電防止性が低下しやすくなる。
【0020】
本発明において、フィルムに滑り性を持たせ、帯電防止層同士のブロッキングを防止するために帯電防止層に添加する粒子としては、代表的には、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等を用いることができる。平均一次粒径としては、40nmから100nmである必要がある。40nmより小さい場合は、帯電防止層中の粒子が表面に突出せず易滑性・耐熱性・耐擦過性が悪化したり、帯電防止層中の粒子同士が凝集してフィルム表面が粗化・白濁しやすくなるので好ましくない。また、100nmより大きい場合は、帯電防止層中の粒子が帯電防止層から滑落したり、表面が粗化するため好ましくない。帯電防止層中の粒子の添加量は、1〜5質量部である必要がある。1質量部より少ないと易滑性が発現せず、ブロッキング等が発生しやすくなり、耐熱性も低下する。5質量部より多いと、帯電防止層中の粒子同士が凝集したりしてヘイズが上昇しやすくなる。
【0021】
本発明において、帯電防止層の膜厚は、30〜60nmである必要があり、好ましくは40〜60nmである。膜厚が30nmより小さいと可視光領域の反射率が全体に高くなり透過率が下がり、さらには、好ましい接着性や耐電防止性が得られない。膜厚が60nmより大きいと、可視光領域における青色領域を強く反射してしまう(図1)ため、透過b値が大きくなりフィルムが黄色く着色して見え、更には、ブロッキングしやすくなる。
【0022】
帯電防止層を設ける面数としては特に限定はない。片面だとヘイズ値が低く、ロール状態でのブロッキングは発生しにくいという好適な点もあるが、未処理面には帯電防止性が発現せず、また、全光線透過率が下がり、透過b値も上昇するという好ましくない点もある。両面だと、全光線透過率が高く、透過b値も低くなるが、ヘイズ値が片面の約2倍になるという好ましくない点もある。いずれにせよ、各種光学フィルムの加工上、帯電防止層が必要な面に設ければよい。
【0023】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法および評価方法を以下に示す。
【0024】
(1)ポリエステル原料の色調
ポリエステルチップを約10gサンプリングし、スガ試験機(株)製カラーマシン「SM−C」にて測定した。
【0025】
(2)帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムの厚み
ソニー社製、デジタルマイクロメーターを使用し、JIS−C−2151(1990)に従って測定した。
【0026】
(3)帯電防止層の厚み
帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムの断面を凍結超薄切片法にて切り出し、RuO4染色による染色超薄切片法により、日立製作所製透過型電子顕微鏡H−7100FA型を用い、加速電圧100kVにて帯電防止層部の観察、写真撮影を行った。その断面写真から帯電防止層の厚みを測定した。
【0027】
(4)帯電防止層中の粒子の一次粒径
帯電防止層表面にPt−Pdをイオンスパッタしてサンプルを調整し、日立製作所製社製走査電子顕微鏡S−800を用い、帯電防止層表面の観察し、粒子の凝集有無を確認した。さらに、写真撮影を行い、その写真から粒子の一次粒径を測定した。
【0028】
(5)ヘイズと全光線透過率
スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて、JIS−K−7105(1981)。
【0029】
(6)透過b値
JIS−Z−8722(2000)に従って、島津製作所製分光光度計「UV−2450PC」(受光部に積分球を使用)を用いて帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムの入射角0度の分光透過率を測定し、三刺激値X、Y、Zを求め、透過b値を計算した。このとき、光源はC、視野角は2度にて計算した。
【0030】
(7)表面比抵抗
JIS−C−2151(1990)に従って、アドバンテスト社製デジタル超高抵抗/微小電流計「R8340/8340A」を用いて測定した。
【0031】
(8)耐熱性(ブロッキング開始温度)
テスター産業社製ヒートシールテスター「TP−701−B」を用い、各温度にて0.4MPa下、1分間帯電防止層同士を圧着させ、ブロッキングした最低温度をブロッキング開始温度とした。
【0032】
(9)帯電防止層の密着力
帯電防止層上に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート42質量部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート30質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート28質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、シリコーン系レベリング剤(東レシリコーン社製SH−190)0.5質量部、トルエン90質量部、酢酸ブチル70質量部、イソプロピルアルコール70質量部を混合溶解したハードコート成分を、硬化後に7μmになるようにダイコーターを用いて塗布し、80℃で18秒間乾燥させ、空気中化で塗布面から12cmの高さにセットした80W/cmの強度を有する高圧水銀灯の下を10m/分の速度で通過させ硬化させたハードコート層に1mm2のクロスカットを100個入れ、ニチバン社製セロハンテープをその上に貼り付け、指で強く押し付けた後、90度方向に急速に剥離し、残存した個数により評価を行った。(◎)、(○)を密着性良好、△を使用限度とした。
◎:100/100(残存個数/測定個数)
○:80/100以上、100/100未満
△:50/100以上、80/100未満
×:50/100未満。
【0033】
(10)外観
帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムを透過光および反射光で観察し、クリア感・ムラ感を次の基準で評価した。(◎)、(○)を外観が良好、△が使用限度とした。
◎: 全く白濁感・ムラ感がなく、鮮明に透明感がある
○: 透明に見える
△: 白いモヤやムラが少しわかるもの
×: 全体に白濁感があるもの。
【0034】
(11)取り扱い性
サンプルカット、サンプル搬送時の取り扱い性を次の基準で評価した。(◎)、(○)を取り扱い性が良好、△が使用限度と判断した。
◎: 取り扱い上、全く問題なし
○: 取り扱い時、クリーン度などやや注意が必要
△: 除電装置などの補助装置がないと取り扱えない
×: 強力な除電装置やナールなど特別な装置がないと全く取り扱えない
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
(実施例1)
実質的に添加外部粒子を含有しないb値が4.0のPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムを85℃に加熱して長手方向に3.2倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、両面に後述の塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=75/25/5/2.5(固形質量部)で構成される帯電防止層形成用水分散液を塗布した。塗布された1軸延伸フィルムをクリップで把持して予熱ゾーンに導き、100℃で乾燥、引き続き連続的に120℃の加熱ゾーンで幅方向に3.4倍延伸し、続いて230℃の加熱ゾーンで20秒間熱処理を施し、160℃〜60℃で幅方向に4%弛緩処理して結晶配向の完了した表1に示す帯電防止性二軸延伸PETフィルム(ベースの厚み100μm、帯電防止層の厚み50nm)を作成した。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、外観、取り扱い性を表1に示すが、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0036】
(実施例2)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B2/架橋剤C1/粒子D2=80/20/5/4(固形質量部)、帯電防止層の厚みを60nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0037】
(実施例3)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/塗液E1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D3=65/25/10/5/2.5(固形質量部)、帯電防止層の厚みを30nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、若干接着性と帯電防止性が低く、薄いムラ感、薄い黄味感があったものの、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして適していた。
【0038】
(実施例4)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=60/40/1/2.5(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、ブロッキング開始温度が若干低く、薄いムラ感があったものの、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして適していた。
【0039】
(実施例5)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=75/25/30/2.5(固形質量部)とし、片面のみの設置とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、若干密着力が低く、非帯電防止層面に埃がつきやすく、薄いムラ感があったものの、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして適していた。
【0040】
(実施例6)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=75/25/5/1(固形質量部)とし、片面のみの設置とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、ブロッキング開始温度が若干低く、非帯電防止層面に埃がつきやすく、若干滑りが悪いものの、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして適していた。
【0041】
(比較例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015質量%および平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005質量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を用いた以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとしては表面が粗い上に、ヘイズが高く、曇って見える外観のため不適合であった。
【0042】
(比較例2)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=95/5/5/2.5(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、帯電防止剤B1の添加量が少ないため、帯電防止性が低かった。
【0043】
(比較例3)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=50/50/5/2.5(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、帯電防止剤塩B1の添加量が多すぎて帯電防止層に微小な亀裂が入り(表面粗化・白化)、耐熱性および帯電防止性が低下した。さらに、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとしてはヘイズが高く、曇って見える外観のため不適合であった。
【0044】
(比較例4)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/塗液E1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=20/55/25/5/2.5(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、塗液E1の添加量が多すぎて帯電防止層に微小な亀裂が入り(表面粗化・白化)、耐熱性および帯電防止性が低下した。更に、塗液E1の屈折率が高く透過b値が低減せず、また、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとしてはヘイズが高く、曇って見える外観のため不適合であった。
【0045】
(比較例5)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/粒子D1=75/25/2.5(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、架橋剤の添加がないため帯電防止層が柔らかく、耐熱性および耐擦過性に劣った。
【0046】
(比較例6)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=75/25/40/2.5(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、架橋剤C1の添加量が多すぎて帯電防止層に微小な亀裂が入り(表面粗化・白化)、帯電防止性が低下した。さらに、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとしてはヘイズが高く、曇って見える外観のため不適合であった。
【0047】
(比較例7)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D4=75/25/5/20(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、粒子D4の径が帯電防止層の膜厚に比べて小さい上に添加量が多すぎて帯電防止層中の粒子が凝集し(表面粗化・白化)、耐熱性が低下した。さらに、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとしてはヘイズが高く、曇って見える外観のため不適合であった。
【0048】
(比較例8)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/粒子D5=80/20/0.3(固形質量部)、帯電防止層の厚みを70nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、粒子D5の径が大きいため表面が粗化した。帯電防止層中の粒子添加量が少なく架橋剤も添加していないため、耐熱性および耐擦過性が劣った。また、帯電防止層の膜厚が若干厚いため青味サイドの光を反射し、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとしては透過b値が高く、黄色っぽく見える外観のため不適合であった。
【0049】
(比較例9)
帯電防止層の厚みを20nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、帯電防止層の膜厚が薄いため、帯電防止性があまり発現せず、さらに、接着性不良を起こした。
【0050】
(比較例10)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015質量%および平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005質量%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を用い、二軸延伸ポリエステルフィルムの膜厚を50μm、帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1=70/30(固形質量部)、帯電防止層の厚みを150nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表2に示すが、帯電防止層に架橋剤と粒子が添加されていないため耐熱性および耐擦過性が劣った上に、帯電防止層の膜厚が厚いため青味サイドの光を強く反射し、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとしては透過b値が高く、黄色っぽく見える外観のため不適合であった。
【0051】
実施例および比較例で用いた塗液、架橋剤、添加剤、粒子は下記の通りである。
塗液A1:メタクリル酸メチル(52モル%)、アクリル酸エチル(20モル%)、アクリル酸(2モル%)、N−メチロールアクリルアミド(1モル%)、エチレンオキシドの繰り返し単位が16のポリエチレングリコールモノメタクリレート(3モル%)、2−スルホエチルアクリレート(2モル%)からなるアクリル系樹脂(エマルジョン径50nm)のエマルジョン溶液
帯電防止剤B1:ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量7万)の水溶液
帯電防止剤B2:ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量1万)の水溶液
架橋剤C1:メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル社製“ニカラック”MW12LF)
粒子D1:粒子径80nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
粒子D2:粒子径100nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
粒子D3:粒子径40nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
粒子D4:粒子径20nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
粒子D5:粒子径120nmのコロイダルシリカ粒子の水分散体。
塗液E1:テレフタル酸(28モル%)、イソフタル酸(9モル%)、トリメリット酸(10モル%)、セバシン酸(3モル%)、エチレングリコール(15モル%)、ネオペンチルグリコール(18モル%)、1,4−ブタンジオール(17モル%)
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、帯電防止性、光学特性、耐熱性、平滑性等が要求される光学フィルム用基材や工程紙として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】帯電防止層を積層した二軸延伸ポリエステルフィルムの380nmから580nmにおける分光反射率の一例。
【符号の説明】
【0056】
1 帯電防止層の厚みが20nmである帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムの分光反射率
2 帯電防止層の厚みが50nmである帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムの分光反射率
3 帯電防止層の厚みが150nmである帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムの分光反射率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に外部粒子を含まない二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、
(A)アクリル系樹脂 60〜90質量部
(B)帯電防止剤 10〜40質量部
(C)架橋剤 1〜30質量部
(D)一次粒径が40〜100nmの粒子 1〜5質量部
から構成される帯電防止層を、インラインコート法により30〜60nmの厚さで積層したことを特徴とする帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
帯電防止剤がポリスチレンスルホン酸および/またはその塩であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
架橋剤がメラミン系樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−142544(P2006−142544A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332732(P2004−332732)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】