説明

干渉型光ファイバセンサシステム

【課題】信号の復調を可能とする位相変化速度を向上する。
【解決手段】パルス光を出力するパルス光源1と、物理量を検知するセンシングファイバ11a、およびセンシングファイバ11aと伝搬遅延時間(τd)が等しい遅延補償ファイバ30aを有し、パルス光源1からのパルス光を干渉させる干渉計5と、干渉計5からの干渉光をサンプリングして物理量に対応する信号φを検出する検出部と、を備え、パルス光源1は、センシングファイバ11aにパルス光が入力してから出力されるまでの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、パルス光を出力し、検出部は、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、干渉光をサンプリングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな物理量を検出することが可能な干渉型光ファイバセンサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の干渉型光ファイバセンサシステムの一例として、検出する信号をセンシングファイバの歪みに変え、センシングファイバをアームとする光ファイバ干渉計を構成して信号を検出するものがある。前記干渉型光ファイバセンサシステムは、さまざまな物理量を検出することが可能あり、例えば、非特許文献1に記載の磁気信号を検出するセンサや、非特許文献2に記載の音響信号を検出するセンサなどがある。また、干渉型光ファイバセンサシステムの復調方式は、例えば、非特許文献1に示されているPGC(Phase Generated Carrier)方式や、非特許文献2に示されているヘテロダイン方式などがある。
【0003】
ここで、PGC方式を用いた従来の干渉型光ファイバセンサシステムの動作原理を、図5を用いて説明する。PGC方式は、例えば非特許文献1に記載されている復調方式(以下、従来技術1と記す)である。
パルス光源1から出力されるパルス光が光カプラ10で2つに分割され、ミラー12a、12bで反射する。この際、一方はセンシングファイバ11aを通過してセンシング光となり(経路AC)、もう一方はリファレンスファイバ11bを通過してリファレンス光となる(経路AB)。センシング光はセンシングファイバ11aを通過するときに、センシングファイバに加わる信号φで位相変調される。
光カプラ10で2つに分割されたパルス光の一方は、センシングファイバ11aの伝搬遅延τdで2つのパルスとなって伝送され、それぞれが光カプラ32で2つに分割され、ミラー31a、31bで反射する。この際、一方は遅延補償ファイバ30aを通過してから反射し、もう一方は光ファイバ30bを通過して反射してO/E変換器33に入力する。
【0004】
図5のパルス波形は、各経路を通過したパルス光の波形を示している。Aは、パルス光源1の出力であるAの位置を通過するパルス波形である。パルス光源1から出力される順に1,2,3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDEGは、O/E変換器33に入力するパルス波形Gの内、経路ABDEGを伝搬した成分である。到達する順にa1,a2,a3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDFG、パルス波形ACDEG、パルス波形ACDFGもそれぞれの経路を伝搬してO/E変換器33に入力するパルスの成分であり、到達する順に番号を付与した。
【0005】
センシングファイバ11aの往復伝搬時間(伝搬遅延時間τd)と遅延補償ファイバ30aの往復伝搬時間とを等しくすることで、パルスbi(i=1,2,3・・・)とci(i=1,2,3・・・)とが重なり干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)となる。
遅延補償ファイバ30aは圧電子34で正弦波状の歪みが加えられているため、干渉光にPGCが発生する。復調器70ではO/E変換器33から出力されるbi+ciにタイミングを合わせてサンプリングすることで出力を得て、センシングファイバ11aで検出した信号を復調する。干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)は、パルス光源1から出力した同一のパルスが分岐したパルスであるためレーザの位相雑音が最小になる。
【0006】
復調器70では、先ずPGC信号発生器40の出力周波数でO/E変換器33の出力をAM復調するAM復調器51aでsinφを得る。ここでφはセンシングファイバ11aを通過した光の位相で位相変調された信号を含んでいる。AM復調器51bではPGC信号発生器40出力周波数の2倍の周波数でO/E変換器33の出力をAM復調することでcosφを得る。得られたsinφとcosφから逆正接演算器53で逆正接を演算し、不連続点補償演算器54で逆正接演算の不連続点を連結することでφを得る。不連続点の連結は複数ある逆正接の解の中から1つ前のパルスの演算結果と比較して最も差が小さい解を選択するもので、例えば逆正接の出力が+π[rad]を越えて−π[rad]側に移ったときに2πを加えることでφが連続した出力になるように不連続点を補償するものである。
【0007】
次に、ヘテロダイン方式を用いた従来の干渉型光ファイバセンサシステムの動作原理を、図6を用いて説明する。ヘテロダイン方式は、例えば非特許文献2に記載されている復調方式(以下、従来技術2と記す)である。
パルス光源1から出力されるパルス光が光カプラ20で2つに分割され、一方のパルス光を遅延補償ファイバ20aにより遅延させ、もう一方のパルス光の周波数を光周波数シフタ22によりシフトさせてから光カプラ23で結合する。次に光カプラ10で2つに分割され、ミラー12a、12bで反射する。この際、一方はセンシングファイバ11aを通過してセンシング光となり、もう一方はリファレンスファイバ11bを通過してリファレンス光となる。センシング光はセンシングファイバ11aを通過するときに、センシングファイバに加わる信号φで位相変調される。光カプラ10に戻ったパルス光はO/E変換器33に入力する。
【0008】
図6のパルス波形は、各経路を通過したパルス光の波形を示している。Aは、パルス光源1の出力であるAの位置を通過するパルス波形である。パルス光源1から出力される順に1,2,3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDEGは、O/E変換器33に入力するパルス波形Gの内、経路ABDEGを伝搬した成分である。到達する順にa1,a2,a3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDFG、パルス波形ACDEG、パルス波形ACDFGもそれぞれの経路を伝搬してO/E変換器33に入力するパルスの成分であり、到達する順に番号を付与した。
【0009】
光カプラ10に戻ったパルス光の内、経路ABDFGを伝搬した成分と経路ACDEGを伝搬した成分が干渉して干渉パルスとなる。
干渉させるパルス光の一方を周波数シフトさせたことで、O/E変換器33の出力の干渉パルスに現れる光ビート(光周波数シフタでシフトする周波数の成分)を復調器72で位相復調することでセンシングファイバ11aで検出した信号を得る。
干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)は光源から出力した同一のパルスが分岐したパルスであるためレーザの位相雑音が最小になる。
【0010】
従来技術2の復調器72では、オシレータ26の出力を参照信号とする同期検波器56aとオシレータ26の出力の位相をπ/2[rad]シフトさせた参照信号とする同期検波器56bでsinφとcosφを得る。逆正接演算器53と不連続点補償演算器54は上記従来技術1と同様に動作する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】JJAP Vol. 46, No. 2 “Design of Fiber-Optic Magnetometer Utilizing Magnetostriction"
【非特許文献2】JASA Vol. 115, No. 6 “Acoustic Performance of a lage-aperture, seabed, fiber-optic hydrophone array"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
センシングファイバ11aの感度が高い場合、センシングファイバ11aに入力する信号φの振幅が大きい場合、またはセンシングファイバ11aに入力する信号φの周波数が高い場合、センシングファイバ11aで変調された光の位相変化が速くなる。
復調の際には、O/E変換器33から出力される干渉パルスが繰返し得られる周期でサンプリングして位相復調するため、サンプリング1周期の間の光の位相変化がπ[rad]を超えると復調できなくなる。このように復調が正しくできなくなる一例を図7に示す。
図7は正弦波信号が入力した場合の出力波形の例を示す図である。実線は位相φに換算した入力信号、●は離散的に得られる出力である。例1は正常に入力信号を検出している例、例2は入力信号の周波数が高いために復調できなくなった例である。例2の図中に符号Aで示した2つ目の出力は、図中に矢印で示した2つ目の出力のタイミングの入力が1つ目の出力からπ[rad]を超えたため、不連続点の連結が正しく働かなくなり、結果として入力と異なる波形を出力することを示している。
【0013】
従来の技術においては、正常な復調を補償するため、検出できる信号の振幅や周波数に制限を設けるか、位相変化速度が復調できる範囲におさまるようにセンシングファイバの感度を抑えなければならなかった。特に、センシングファイバを長くして感度を高くする場合に、サンプリング周期は長くなり、信号の位相変化は速くなるため、避けがたい問題となった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る干渉型光ファイバセンサシステムは、パルス光を出力する光源と、物理量を検知するセンシングファイバ、および前記センシングファイバと伝搬遅延時間(τd)が等しい遅延補償ファイバを有し、前記光源からのパルス光を干渉させる干渉計と、前記干渉計からの干渉光をサンプリングして前記物理量に対応する測定信号を検出する検出部と、を備え、前記光源は、前記センシングファイバに前記パルス光が入力してから出力されるまでの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、前記パルス光を出力し、前記検出部は、前記センシングファイバの前記伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、前記干渉光をサンプリングするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る干渉型光ファイバセンサシステムは、信号の復調を可能とする位相変化速度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係る干渉型光ファイバセンサシステムの構成とパルス波形を示す図である。
【図2】実施の形態2に係る干渉型光ファイバセンサシステムの構成とパルス波形を示す図である。
【図3】実施の形態3に係る干渉型光ファイバセンサシステムの構成を示す図である。
【図4】実施の形態3に係る干渉型光ファイバセンサシステムのパルス波形を示す図である。
【図5】従来技術1の構成とパルス波形を示す図である。
【図6】従来技術2の構成とパルス波形を示す図である。
【図7】正弦波信号が入力した場合の出力波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
(構成)
図1は実施の形態1に係る干渉型光ファイバセンサシステムの構成とパルス波形を示す図である。
本実施の形態1における干渉型光ファイバセンサシステムは、復調方式にPGC方式を用いるものである。
以下、上述した従来技術1との相違点を中心に説明する。
【0018】
本実施の形態1における干渉型光ファイバセンサシステムは、従来技術1と同様に、パルス光を発生するパルス光源1と、パルス光源1からのパルス光を干渉させる干渉計5と、PGC信号を発生するPGC信号発生器40と、干渉光を電気信号に変換するO/E変換器33と、物理量に対応する信号φの抽出等を行う復調器70と、を備えている。
【0019】
干渉計5は、光ファイバ1a、光カプラ10、センシングファイバ11a、リファレンスファイバ11b、ミラー12a、12b、光ファイバ10a、遅延補償ファイバ30a、光ファイバ30b、ミラー31a、31b、光カプラ32、圧電子34、および光ファイバ32aにより構成される。
センシングファイバ11aは、物理量によってパルス光を位相変調する。
遅延補償ファイバ30aは、その伝搬遅延時間が、センシングファイバ11aにパルス光が入力してから出力されるまでの伝搬遅延時間(τd)と等しく設定されている。
干渉計5は、パルス光源1から出力されるパルス光を光カプラ10で分岐して、センシングファイバ11aを経たパルス光(経路ABDFG)と、遅延補償ファイバ30aを経たパルス光(経路ACDEG)とを干渉させ、干渉光(以下「干渉パルス」ともいう)をO/E変換器33に出力する。また、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ30aとの何れも経ていないパルス光(経路ABDEG)、および、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ30aとの何れも経たパルス光(経路ACDFG)もO/E変換器33に出力する。パルス波形の詳細は後述する。
【0020】
復調器70は、AM復調器51a、AM復調器51b、逆正接演算器53、不連続点補償演算器54を備える。復調器70では、O/E変換器33の出力から、干渉光に含まれる信号φの正弦波成分(sinφ)および余弦波成分(cosφ)を抽出し、正弦波成分および余弦波成分を用いて逆正接演算を行い、逆正接演算結果が不連続となっている場合、不連続点を連結して信号φを検出する。
【0021】
なお、「信号φ」は、本発明における「測定信号」に相当する。
なお、「O/E変換器33」および「復調器70」は、本発明における「検出部」を構成する。
【0022】
本実施の形態におけるパルス光源1は、従来技術1と比較して、パルス繰返し周期が速いものを用いる。
また、O/E変換器33は、従来技術1と比較して、繰返し周期の速いパルスに対応するため出力周波数帯域が広いものを用いる。
また、復調器70は、従来技術1と比較して、干渉パルスを速くサンプリングして処理できるものを用いる。
また、PGC信号発生器40、圧電子34、および復調器70は、従来技術1と比較して、高い周波数のPGCが扱えるものを用いる。
本実施の形態におけるセンシングファイバ11aおよび遅延補償ファイバ30aには、従来技術1と比較して、長いものを用いることができる。即ち、従来技術1と比較して、感度が高いものを用いることができる。
【0023】
ここで、本実施の形態におけるパルス光源1が出力するパルス光の周期と、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)との関係は次のように設定している。
パルス光源1は、センシングファイバ11aにパルス光が入力してから出力されるまでの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、パルス光を出力する。そして、復調器70では、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、干渉光をサンプリングする。
例えば、復調器70での干渉光のサンプリングは、上記伝搬遅延時間(τd)より短い周期であって、且つ、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期(τc)とする。
このサンプリング周期(τc)は、物理量に応じて設定される周期である。例えば、測定対象の物理量においての使用環境等で想定される、センシングファイバ11aでの位相変化速度が最高となるときに、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となる周期である。
【0024】
また、復調器70で干渉パルスの一つ一つを検出する時間幅(τs)を、次式(1)を満たすように設定する。
【数1】

【0025】
また、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)の間に干渉光をサンプルする数(Ni)を、次式(2a)または(2b)を満たすように設定する。
【数2】

ここで、NTは、2以上の整数である。
τcは、物理量に応じて設定される周期であって、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期である。
τdは、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間である。
【0026】
また、パルス光源1から出力するパルス光のパルス幅は通常、時間幅(τs)以下にする。
【0027】
図1に示したパルス波形は(2a)式の条件でNT=2、Ni=3とした一例である。
次に、図1のパルス波形例により本実施の形態における動作を説明する。
【0028】
(動作)
図1のパルス波形は、各経路を通過したパルス光の波形を示している。Aは、パルス光源1の出力であるAの位置を通過するパルス波形である。パルス光源1から出力される順に1,2,3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDEGは、O/E変換器33に入力するパルス波形Gの内、経路ABDEGを伝搬した成分である。到達する順にa1,a2,a3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDFG、パルス波形ACDEG、パルス波形ACDFGもそれぞれの経路を伝搬してO/E変換器33に入力するパルスの成分であり、到達する順に番号を付与した。
【0029】
パルス光源1からO/E変換器33までの各構成部の動作は従来技術1と同様に動作する。
ただし、本実施の形態においては、パルス光源1から出力の繰返し周期がセンシングファイバ11aおよび遅延補償ファイバ30aの伝搬遅延時間(τd)より短いため、最初は経路ABDEGを伝搬したパルスai(i=1,2,3・・・)だけがO/E変換器33から出力される。
次にABDFGを伝搬したパルスbi(i=1,2,3・・・)とACDEGを伝搬したパルスci(i=1,2,3・・・)とが干渉した干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)が出力される。
次にACDFGを伝搬したパルスdi(i=1,2,3・・・)がaiに重なり、重畳したパルス光a(i+7)+di(i=1,2,3・・・)が出力される。
パルスd1が出力された後は長い空き時間がないパルス列が構成される。
【0030】
このように、本実施の形態におけるパルス光源1が出力するパルス光の周期は、干渉光のパルス間に、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ30aとの何れも経ていないパルス光(経路ABDEG)と、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ30aとの何れも経たパルス光(経路ACDFG)とが重畳されるように設定している。
【0031】
復調器70は、パルス波形Gで表されるパルス列から、bi+ci(i=1,2,3・・・)の干渉パルスを抽出して復調する。そして、物理量に対応する信号φを出力する。復調の動作は例えば従来技術1と同様である。
なお、PGCの周波数は検出する信号の振幅と周波数に応じて設定する。
【0032】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)より短い周期でパルス光源1からパルス光を出力し、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、干渉光をサンプリングする。
このため、信号φの復調を可能とする位相変化速度を向上することができる。
よって、振幅が大きく周波数が高い信号を検出できる。また、センシングファイバ11aの感度を高くすることができる。
【0033】
また、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期(τc)で干渉光をサンプリングするので、信号φの復調を正常に行うことができる。
【0034】
また、干渉光のパルス間に、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ30aとの何れも経ていないパルス光と、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ30aとの何れも経たパルス光とが重畳されるように、パルス光を出力する周期を設定した。
このため、信号φの復調に用いる干渉光(bi+ci)以外のパルス光を重畳させることができ、復調に必要な干渉パルスが得られる周期を最短にできるため、復調できる振幅および周波数を最大にできる。
【0035】
また、干渉光を検出する時間幅(τs)が、上記式(1)を満たすように設定し、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)の間に干渉光をサンプルする数(Ni)が、上記式(2a)または(2b)を満たすように設定した。また、パルス光源1から出力するパルス光のパルス幅が、時間幅(τs)以下である。
このため、センシングファイバの伝搬遅延時間(τd)より短い周期でパルス光源1からパルス光を出力して復調器70でサンプリングしても、ABDFGを伝搬したパルス光とACDEGを伝搬したパルス光とが干渉した干渉パルス(bi+ci)に、当該パルス光以外の別のパルス光が干渉することがない。よって、雑音が発生したり正常に動作しなくなることを防止でき、振幅が大きく周波数が高い信号を検出できる。
また、NT=2とすることで、ABDEGを伝搬したパルスaiとACDFGを伝搬したパルスdi(i=1,2,3・・・)とが重なり、復調に必要な干渉パルス(bi+ci)が得られる周期を最短にできるため、復調できる振幅および周波数を向上することができる。
【0036】
また、干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)は光源から出力した同一のパルスが分岐したパルスであるため、レーザの位相雑音が最小になる条件を満たしている。
【0037】
また、干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)のパルス間(前後)には、パルス光源1から出力した、別のパルス(パルスai+di)が配置されるため、パルス列においてパルスがない空き時間を短くすることができ、パルス光源1、O/E変換器33などの構成部が応答する出力周波数帯域の範囲内で、効率の良い干渉パルスのサンプリングが成されている。
【0038】
実施の形態2.
(構成)
図2は実施の形態2に係る干渉型光ファイバセンサシステムの構成とパルス波形を示す図である。
本実施の形態2における干渉型光ファイバセンサシステムは、復調方式にヘテロダイン方式を用いるものである。
以下、上述した従来技術2との相違点を中心に説明する。
【0039】
本実施の形態2における干渉型光ファイバセンサシステムは、従来技術2と同様に、パルス光を発生するパルス光源1と、パルス光源1からのパルス光を干渉させる干渉計5と、オシレータ26と、干渉光を電気信号に変換するO/E変換器33と、物理量に対応する信号φの抽出等を行う復調器72と、を備えている。
【0040】
干渉計5は、光ファイバ1a、光カプラ20、遅延補償ファイバ20a、光周波数シフタ22、光カプラ23、光ファイバ23a、光カプラ10、センシングファイバ11a、リファレンスファイバ11b、ミラー12a、12b、および光ファイバ10aにより構成される。
センシングファイバ11aは、物理量によってパルス光を位相変調する。
遅延補償ファイバ20aは、その伝搬遅延時間が、センシングファイバ11aにパルス光が入力してから出力されるまでの伝搬遅延時間(τd)と等しく設定されている。
干渉計5は、パルス光源1から出力されるパルス光を光カプラ20で分岐して、一方のパルス光を遅延補償ファイバ20aにより遅延させ、もう一方のパルス光の周波数を光周波数シフタ22によりシフトさせてから光カプラ23で結合する。さらに光カプラ10でパルス光を分岐して、センシングファイバ11aを経たパルス光(経路ABDFG)と、遅延補償ファイバ20aを経たパルス光(経路ACDEG)とを干渉させ、干渉光(以下「干渉パルス」ともいう)をO/E変換器33に出力する。また、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ20aとの何れも経ていないパルス光(経路ABDEG)、および、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ20aとの何れも経たパルス光(経路ACDFG)もO/E変換器33に出力する。パルス波形の詳細は後述する。
【0041】
復調器72は、同期検波器56a、同期検波器56b、逆正接演算器53、不連続点補償演算器54を備える。復調器72では、O/E変換器33の出力から、干渉光に含まれる信号φの正弦波成分(sinφ)および余弦波成分(cosφ)を抽出し、正弦波成分および余弦波成分を用いて逆正接演算を行い、逆正接演算結果が不連続となっている場合、不連続点を連結して信号φを検出する。
【0042】
なお、「O/E変換器33」および「復調器72」は、本発明における「検出部」を構成する。
【0043】
本実施の形態におけるパルス光源1は、従来技術2と比較して、パルス繰返し周期が速いものを用いる。
また、O/E変換器33は、従来技術2と比較して、繰返し周期の速いパルスに対応するため出力周波数帯域が広いものを用いる。
また、復調器72は、従来技術2と比較して、干渉パルスを速くサンプリングして処理できるものを用いる。
また、光周波数シフタ22、および復調器は、従来技術2と比較して、高い周波数の光ビートが扱えるものを用いる。
本実施の形態におけるセンシングファイバ11aおよび遅延補償ファイバ20aには、従来技術2と比較して、長いものを用いることができる。即ち、従来技術1と比較して、感度が高いものを用いることができる。
【0044】
パルス光源1が出力するパルス光の周期の条件は、上記実施の形態1と同様である。
復調器72で干渉パルスの一つ一つを検出する時間幅(τs)、および、センシングファイバ11aの伝搬遅延時間(τd)の間に干渉光をサンプルする数(Ni)の設定は、上記実施の形態1と同様である。ただし、NTは3以上に設定する。
パルス光源1から出力するパルス光のパルス幅は通常、時間幅(τs)以下にする。
【0045】
図2に示したパルス波形は(2a)式の条件でNT=3、Ni=3とした一例である。
次に、図2のパルス波形例により本実施の形態における動作を説明する。
【0046】
(動作)
図2のパルス波形は、各経路を通過したパルス光の波形を示している。Aは、パルス光源1の出力であるAの位置を通過するパルス波形である。パルス光源1から出力される順に1,2,3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDEGは、O/E変換器33に入力するパルス波形Gの内、経路ABDEGを伝搬した成分である。到達する順にa1,a2,a3・・・の番号を付与した。パルス波形ABDFG、パルス波形ACDEG、パルス波形ACDFGもそれぞれの経路を伝搬してO/E変換器33に入力するパルスの成分であり、到達する順に番号を付与した。
【0047】
パルス光源1からO/E変換器33までの各構成部の動作は従来技術2と同様に動作する。
ただし、本実施の形態においては、パルス光源1から出力の繰返し周期がセンシングファイバ11aおよび遅延補償ファイバ20aの伝搬遅延時間(τd)より短いため、最初は経路ABDEGを伝搬したパルスai(i=1,2,3・・・)だけがO/E変換器33から出力される。
次にABDFGを伝搬したパルスbi(i=1,2,3・・・)とACDEGを伝搬したパルスci(i=1,2,3・・・)とが干渉した干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)が出力される。
次にACDFGを伝搬したパルスdi(i=1,2,3・・・)が出力される。
【0048】
上記実施の形態1のパルス列との違いは、経路ABDEGを伝搬したパルスと経路ACDEGを伝搬したパルスとが重ならないことである。
このように、本実施の形態におけるパルス光源1が出力するパルス光の周期は、干渉光のパルス間に、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ20aとの何れも経ていないパルス光(経路ABDEG)と、センシングファイバ11aと遅延補償ファイバ20aとの何れも経たパルス光(経路ACDFG)とが重畳しないように設定している。
【0049】
復調器72は、パルス波形Gで表されるパルス列から、bi+ci(i=1,2,3・・・)の干渉パルスを抽出して復調する。そして、物理量に対応する信号φを出力する。復調の動作は例えば従来技術2と同様である。
なお、光ビート(光周波数シフタ22でシフトする周波数の成分)の周波数は検出する信号の振幅と周波数に応じて高い周波数に設定する。
【0050】
(効果)
本実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、信号φの復調を可能とする位相変化速度を向上することができる。
よって、振幅が大きく周波数が高い信号を検出できる。また、センシングファイバ11aの感度を高くすることができる。
【0051】
また、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期(τc)で干渉光をサンプリングするので、信号φの復調を正常に行うことができる。
【0052】
また、センシングファイバの伝搬遅延時間(τd)より短い周期でパルス光源1からパルス光を出力して復調器72でサンプリングしても、ABDFGを伝搬したパルス光とACDEGを伝搬したパルス光とが干渉した干渉パルス(bi+ci)に、当該パルス光以外の別のパルス光が干渉することがない。よって、雑音が発生したり正常に動作しなくなることを防止でき、振幅が大きく周波数が高い信号を検出できる。
【0053】
また、干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)は光源から出力した同一のパルスが分岐したパルスであるため、レーザの位相雑音が最小になる条件を満たしている。
【0054】
また、干渉パルスbi+ci(i=1,2,3・・・)のパルス間(前後)には、パルス光源1から出力した、別のパルス(パルスai、di)が配置されるため、パルス列においてパルスがない空き時間を短くすることができ、パルス光源1、O/E変換器33などの構成部が応答する出力周波数帯域の範囲内で、効率の良い干渉パルスのサンプリングが成されている。
【0055】
また本実施の形態においては、NTを3以上に設定することで、ABDEGを伝搬したパルスaiとACDFGを伝搬したパルスdi(i=1,2,3・・・)とが重畳しない。
このため、復調器72での抽出対象ではないパルス(パルスai、di)が干渉して光ビートを発生することがなく、O/E変換器33の群遅延で抽出対象ではないパルスが抽出対象のパルスに漏れることによる復調出力の雑音を低減することができる。
【0056】
実施の形態3.
本実施の形態3では、上記実施の形態1におけるセンシングファイバを複数備え、時分割多重を用いた例を説明する。
【0057】
(構成)
図3は実施の形態3に係る干渉型光ファイバセンサシステムの構成を示す図である。
本実施の形態3における干渉計5は、パルス光源1から出力されるパルス光を、センシングファイバ111a、112aのそれぞれに分岐し、各センシングファイバを経たパルス光のそれぞれと、遅延補償ファイバ30aを経たパルス光とを干渉させ、それぞれの干渉光を時分割多重してO/E変換器33に出力する。そして、時分割多重化された干渉光は、復調器73によって、順次復調される。
【0058】
パルス光源1から出力されるパルス光は、光ファイバ1aを介して光カプラ141に入り、二つに分割される。分割された一方のパルス光は、光ファイバ141aを経由し、光カプラ101に入る。光カプラ101に入った光は、二つに分割され、一方はセンシングファイバ111aを通りセンシング光となり、もう一方は光ファイバ111bを通りリファレンス光となる。センシング光はセンシングファイバ111aを通過するときに、センシングファイバ111aに加わる信号φ1で位相変調される。この信号φ1は、前述のように、音響信号、磁気信号および加速度等がある。そして、センシング光はミラー121aで反射し、リファレンス光はミラー121bで反射する。反射したセンシング光とリファレンス光は、光カプラ101を経由して、光カプラ151に伝送される。ここで、センシング光はセンシングファイバ111aによる伝搬遅延のため、リファレンス光より遅延している。
【0059】
一方、光カプラ141で分割されたもう一方の光は、遅延ファイバ161により遅延し、光カプラ102に入った光は、二つに分割される。一方はセンシングファイバ112aを通りセンシング光となり、もう一方は光ファイバ112bを通りリファレンス光となる。
ここで、光カプラ102から送られたセンシング光とリファレンス光は、遅延ファイバ161を通過しているため、光カプラ101から送られたセンシング光とリファレンス光より遅延している。これにより、各センシングファイバの信号を含み、時分割多重により分割された光が生成される。
なお、本実施の形態3では、センシングファイバが2つの例で説明したが、センシングファイバが3つ以上ある場合も同様であり、多重化の数が増えるだけである。
【0060】
光カプラ32、遅延補償ファイバ30a、圧電子34、ミラー31a、31b、PGC信号発生器40、O/E変換器33の構成は、上記実施の形態1と同様である。
復調器73は、AM復調器51a、AM復調器51b、逆正接演算器53、不連続点補償演算器54を備える。本実施の形態3の復調器73は、各センシングファイバ111a、112aの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、時分割多重された各干渉光をそれぞれサンプリングする。そして、時分割多重された各信号をそれぞれ復調する。復調動作は上記実施の形態1と同様である。
【0061】
なお、「信号φ1」、「信号φ2」は、本発明における「測定信号」に相当する。
なお、「O/E変換器33」および「復調器73」は、本発明における「検出部」を構成する。
【0062】
本実施の形態におけるパルス光源1は、従来技術1と比較して、パルス繰返し周期が速いものを用いる。
また、O/E変換器33は、従来技術1と比較して、繰返し周期の速いパルスに対応するため出力周波数帯域が広いものを用いる。
また、復調器73は、従来技術1と比較して、干渉パルスを速くサンプリングして処理できるものを用いる。
また、PGC信号発生器40、圧電子34、および復調器73は、従来技術1と比較して、高い周波数のPGCが扱えるものを用いる。
本実施の形態におけるセンシングファイバ111a、112aおよび遅延補償ファイバ30aには、従来技術1と比較して、長いものを用いることができる。即ち、従来技術1と比較して、感度が高いものを用いることができる。
【0063】
ここで、本実施の形態におけるパルス光源1が出力するパルス光の周期と、センシングファイバ111a、112aの伝搬遅延時間(τd)と、遅延ファイバ161の伝搬遅延時間の関係は次のように設定している。
パルス光源1は、上記実施の形態1と同様に、センシングファイバ111a、112aの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、パルス光を出力する。また、パルス光源1は、一方の干渉光のパルス間に、他方の干渉光が配置されるように、パルス光を出力する周期を設定する。
また、復調器73では、センシングファイバ111a、112aの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、各干渉光のそれぞれをサンプリングする。
例えば、復調器73での干渉光のサンプリングは、上記伝搬遅延時間(τd)より短い周期であって、且つ、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期(τc)とする。
なお、遅延ファイバ161の伝搬遅延時間は、通常、センシングファイバ111a、112aよりも短く設定する。
【0064】
また、復調器73で干渉パルスの一つ一つを検出する時間幅(τs)を、次式(3)を満たすように設定する。
【数3】

ここで、Nmは、時分割多重する数である。
【0065】
また、センシングファイバ111a、112aの伝搬遅延時間(τd)の間に干渉光をサンプルする数(Ni)を、次式(4a)または(4b)を満たすように設定する。
【数4】

ここで、NTは、2以上の整数である。
τcは、物理量に応じて設定される周期であって、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期である。
τdは、センシングファイバ111a、112aの伝搬遅延時間である。
【0066】
また、パルス光源1から出力するパルス光のパルス幅は通常、時間幅(τs)以下にする。
次に、図4のパルス波形例により本実施の形態における動作を説明する。
【0067】
(動作)
図4は実施の形態3に係る干渉型光ファイバセンサシステムのパルス波形を示す図である。
図4に示したパルス波形は(4a)式の条件でNm=2、NT=2、Ni=3とした一例である。
図4のパルス波形は、各経路を通過したパルス光の波形を示している。Aは、パルス光源1の出力であるAの位置を通過するパルス波形である。パルス光源1から出力される順に1,2,3・・・の番号を付与した。パルス波形AB1DEGは、O/E変換器33に入力するパルス波形Gの内、経路AB1DEGを伝搬した成分である。到達する順に1a1,1a2,1a3・・・の番号を付与した。パルス波形AB1DFG、パルス波形AC1DEG、パルス波形AC1DFG、パルス波形AB2DEG、パルス波形AB2DFG、パルス波形AC2DEG、パルス波形AC2DFGもそれぞれの経路を伝搬してO/E変換器33に入力するパルスの成分であり、到達する順に番号を付与した。
【0068】
本実施の形態3においても、パルス光源1から出力の繰返し周期がセンシングファイバ111a、112aおよび遅延補償ファイバ30aの伝搬遅延時間(τd)より短いため、最初は経路AB1DEGを伝搬したパルス1ai(i=1,2,3・・・)と、経路AB2DEGを伝搬したパルス2ai(i=1,2,3・・・)とがO/E変換器33から出力される。ただし、パルス2aiは、遅延ファイバ161により、パルス1aiより遅延している。
次にAB1DFGを伝搬したパルス1bi(i=1,2,3・・・)とAC1DEGを伝搬したパルス1ci(i=1,2,3・・・)とが干渉した干渉パルス1bi+1ci(i=1,2,3・・・)が出力される。
次に遅延ファイバ161の遅延時間だけ遅れて、AB2DFGを伝搬したパルス2bi(i=1,2,3・・・)とAC2DEGを伝搬したパルス2ci(i=1,2,3・・・)とが干渉した干渉パルス2bi+2ci(i=1,2,3・・・)が出力される。
次にAB1DEGを伝搬したパルス1ai(i=1,2,3・・・)とAC2DFGを伝搬したパルス2di(i=1,2,3・・・)とが重なり、重畳したパルス光(i+5)+di(i=1,2,3・・・)が出力される。
パルス2d1が出力された後は長い空き時間がないパルス列が構成される。
【0069】
復調器73は、パルス波形Gで表されるパルス列から、1bi+1ci(i=1,2,3・・・)の干渉パルスを抽出して信号φ1を復調する。また、復調器73は、パルス波形Gで表されるパルス列から、2bi+2ci(i=1,2,3・・・)の干渉パルスを抽出して信号φ2を復調する。そして、各物理量に対応する信号φ1、信号φ2を出力する。復調の動作は実施の形態1と同様である。
なお、PGCの周波数は検出する信号の振幅と周波数に応じて設定する。
【0070】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、各センシングファイバの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、時分割多重された各干渉光をそれぞれサンプリングする。
このため、複数の干渉光を時分割多重で伝送する構成において、各信号の復調を可能とする位相変化速度を向上することができる。
よって、振幅が大きく周波数が高い信号を検出できる。また、各センシングファイバの感度を高くすることができる。
【0071】
また、1周期におけるパルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期(τc)で、時分割多重された各干渉光をそれぞれサンプリングするので、信号φの復調を正常に行うことができる。
【0072】
また、干渉光を検出する時間幅(τs)が、上記式(3)を満たすように設定し、センシングファイバ111a、112aの伝搬遅延時間(τd)の間に干渉光をサンプルする数(Ni)が、上記式(4a)または(4b)を満たすように設定した。また、パルス光源1から出力するパルス光のパルス幅が、時間幅(τs)以下である。
このため、時分割多重で伝送される構成において、センシングファイバの伝搬遅延時間(τd)より短い周期でパルス光源1からパルス光を出力して復調器73でサンプリングしても、各干渉パルス(1bi+1ciおよび2bi+2ci)に、当該パルス光以外の別のパルス光が干渉することがない。よって、雑音が発生したり正常に動作しなくなることを防止でき、振幅が大きく周波数が高い信号を検出できる。
【0073】
また、干渉パルス1bi+1ci(i=1,2,3・・・)、干渉パルス2bi+2ci(i=1,2,3・・・)、は光源から出力した同一のパルスが分岐したパルスであるため、レーザの位相雑音が最小になる条件を満たしている。
【0074】
また、干渉パルス1bi+1ci(i=1,2,3・・・)、干渉パルス2bi+2ci(i=1,2,3・・・)の前後には、パルス光源1から出力した、別のパルス(パルス1ai、1di、2ai、2di)が配置されるため、パルス列においてパルスがない空き時間を短くすることができ、パルス光源1、O/E変換器33などの構成部が応答する出力周波数帯域の範囲内で、効率の良い干渉パルスのサンプリングおよび時分割多重が成されている。
【0075】
また、干渉光のパルス間に、他の干渉光が配置されるように、パルス光を出力する周期を設定した。
このため、信号φの復調に用いる干渉光(bi+ci)以外のパルス光を重畳させることができ、復調に必要な干渉パルスが得られる周期を最短にできるため、復調できる振幅および周波数を最大にできる。
【0076】
以上に実施の形態1〜3までを説明したが、本発明における干渉型光ファイバセンサシステムは、以上に説明した構成に限られるものではない。次に、実施の形態1〜3の変形例について説明する。
【0077】
実施の形態1、3では圧電子によるPGC復調方式、実施の形態2では周波数シフタを用いるヘテロダイン方式で信号を復調する例を示した。本発明はこれに限るものではなく、他の変調方法でも、(1)式と(2a)式、(1)式と(2b)式、(3)式と(4a)式、または(3)式と(4b)式を満たすように構成することで同じ効果を得ることができる。
【0078】
また、実施の形態2では、1つの光周波数シフタ22を用いる例を説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、非特許文献2に示されたように2つの光周波数シフタ(AOM)を用いても良い。
【0079】
また、全ての実施の形態において、センシングファイバに光カプラとミラーを取り付けてマイケルソン干渉計を構成する例で説明したが、本発明はこれに限るものではなく、マッハ・ツェンダ干渉計など他の干渉計を用いることもできる。
【0080】
また、実施の形態1、3において、遅延補償ファイバに光カプラとミラーを取り付けてマイケルソン干渉計を構成する例を示し、実施の形態2では光カプラを2つ取り付けてマッハ・ツェンダ干渉計を構成する例を示したが、他の干渉計を用いることもできる。
【0081】
また、実施の形態3では、実施の形態1のPGC方式を時分割多重構成にした例を示したが、実施の形態2のヘテロダイン方式でも同様に構成することができる。
【0082】
また、実施の形態1では、PGC方式において変調を行うために圧電子34を用いる例で説明したが、電磁アクチュエータで遅延補償ファイバ30aを歪ませて光の周波数を変調しても良いし、非特許文献1と同様に、レーザ光源(パルス光源1)の周波数を変調するなど、他の手段で光の位相を変化させても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 パルス光源、1a 光ファイバ、5 干渉計、10 光カプラ、10a 光ファイバ、11a センシングファイバ、11b リファレンスファイバ、12a ミラー、12b ミラー、20 光カプラ、20a 遅延補償ファイバ、22 光周波数シフタ、23 光カプラ、23a 光ファイバ、26 オシレータ、30a 遅延補償ファイバ、30b 光ファイバ、31a ミラー、31b ミラー、32 光カプラ、32a 光ファイバ、33 O/E変換器、34 圧電子、40 PGC信号発生器、51a AM復調器、51b AM復調器、53 逆正接演算器、54 不連続点補償演算器、56a 同期検波器、56b 同期検波器、70 復調器、72 復調器、73 復調器、101 光カプラ、102 光カプラ、111a センシングファイバ、111b 光ファイバ、112a センシングファイバ、112b 光ファイバ、121a ミラー、121b ミラー、141 光カプラ、141a 光ファイバ、151 光カプラ、161 遅延ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を出力する光源と、
物理量を検知するセンシングファイバ、および前記センシングファイバと伝搬遅延時間(τd)が等しい遅延補償ファイバを有し、前記光源からのパルス光を干渉させる干渉計と、
前記干渉計からの干渉光をサンプリングして前記物理量に対応する測定信号を検出する検出部と、
を備え、
前記光源は、
前記センシングファイバに前記パルス光が入力してから出力されるまでの伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、前記パルス光を出力し、
前記検出部は、
前記センシングファイバの前記伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、前記干渉光をサンプリングする
ことを特徴とする干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項2】
前記センシングファイバは、前記物理量によって前記パルス光を位相変調し、
前記検出部は、
前記物理量に応じて設定される周期であって、1周期における前記パルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期(τc)で、前記干渉光をサンプリングする
ことを特徴とする請求項1記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項3】
前記干渉計は、
前記光源から出力される前記パルス光を分岐して、前記センシングファイバを経たパルス光と、前記遅延補償ファイバを経たパルス光とを干渉させ、
前記干渉させた干渉光と、
前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経ていない前記パルス光、および、前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経た前記パルス光、の少なくとも一方のパルス光と、
を前記検出部に出力し、
前記光源は、
前記干渉光のパルス間に、前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経ていない前記パルス光、および、前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経た前記パルス光、の少なくとも一方が配置されるように、前記パルス光を出力する周期を設定した
ことを特徴とする請求項1または2記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項4】
前記光源は、
前記干渉光のパルス間に、前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経ていない前記パルス光と、前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経た前記パルス光とが重畳されるように、前記パルス光を出力する周期を設定した
ことを特徴とする請求項3記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項5】
前記光源は、
前記干渉光のパルス間に、前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経ていない前記パルス光と、前記センシングファイバと前記遅延補償ファイバとの何れも経た前記パルス光とが重畳しないように、前記パルス光を出力する周期を設定した
ことを特徴とする請求項3記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項6】
前記検出部は、
前記干渉光を検出する時間幅(τs)が、次式(1)を満たすように設定し、
前記センシングファイバの伝搬遅延時間(τd)の間に前記干渉光をサンプルする数(Ni)が、次式(2a)または(2b)を満たすように設定し、
前記光源は、
出力する前記パルス光のパルス幅が、前記時間幅(τs)以下である
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【数5】

ここで、NTは、2以上の整数である。
τcは、前記物理量に応じて設定される周期であって、1周期における前記パルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期である。
τdは、前記センシングファイバの伝搬遅延時間である。
【請求項7】
前記干渉計は、前記センシングファイバを複数備え、
前記光源から出力される前記パルス光を、各センシングファイバそれぞれに分岐して、前記各センシングファイバを経たパルス光と、前記遅延補償ファイバを経たパルス光とを干渉させ、それぞれの干渉光を時分割多重して前記検出部に出力し、
前記検出部は、
前記各センシングファイバの前記伝搬遅延時間(τd)より短い周期で、前記時分割多重された各干渉光をそれぞれサンプリングする
ことを特徴とする請求項1または2記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項8】
前記干渉計は、
前記各センシングファイバに分岐された前記パルス光をそれぞれ遅延させる遅延ファイバを備え、
前記光源は、
前記干渉光のパルス間に、他の前記干渉光が配置されるように、前記パルス光を出力する周期を設定した
ことを特徴とする請求項7記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【請求項9】
前記検出部は、
前記干渉光を検出する時間幅(τs)が、次式(3)を満たすように設定し、
前記センシングファイバの伝搬遅延時間(τd)の間に前記干渉光をサンプルする数(Ni)が、次式(4a)または(4b)を満たすように設定し、
前記光源は、
出力する前記パルス光のパルス幅が、前記時間幅(τs)以下である
ことを特徴とする請求項1、2、7、8の何れか1項に記載の干渉型光ファイバセンサシステム。
【数6】

ここで、NTは、2以上の整数である。
Nmは、時分割多重する干渉光の数である。
τcは、前記物理量に応じて設定される周期であって、1周期における前記パルス光の位相変化量がπ[rad]以下となるサンプリング周期である。
τdは、前記センシングファイバの伝搬遅延時間である。
【請求項10】
前記検出部は、
前記干渉計からの前記物理量に対応する測定信号を含む干渉光を、電気信号に変換する変換器と、
前記電気信号から正弦波成分および余弦波成分を抽出し、前記正弦波成分および前記余弦波成分を用いて逆正接演算を行い、前記逆正接演算結果が不連続となっている場合、不連続点を連結して前記測定信号を検出する復調器と、
を備えた
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の干渉型光ファイバセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154778(P2012−154778A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13823(P2011−13823)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】