平板状樹脂の成形装置
【課題】構造が簡単でイニシャルコストが低く、またランニングコストも低く、高い離型性を有し、したがって破損率の低い平板状樹脂の成形装置を得る。
【解決手段】成形部Ｅ内に供給された被成形樹脂Ｐｏを上下の金型（ヒートプレス２４）によって挟み込んで平板形状に成形する成形装置１２において、前記成形部Ｅが、平板樹脂Ｐの外形を形成するための枠体１６と、該枠体１６の上部に配置され、この枠体１６の内側（貫通孔１６Ａ）に沿った形状に変形可能で、且つ復元が可能な弾性体シート（第１の弾性シート）１８と、当該成形部Ｅの最上部を自身の一端側をめくるように変形させることで開閉可能なカバーシート（第２の弾性シート）２０と、を備える。被成形樹脂Ｐｏは、弾性体シート１８とカバーシート２０との間で成形される。
【解決手段】成形部Ｅ内に供給された被成形樹脂Ｐｏを上下の金型（ヒートプレス２４）によって挟み込んで平板形状に成形する成形装置１２において、前記成形部Ｅが、平板樹脂Ｐの外形を形成するための枠体１６と、該枠体１６の上部に配置され、この枠体１６の内側（貫通孔１６Ａ）に沿った形状に変形可能で、且つ復元が可能な弾性体シート（第１の弾性シート）１８と、当該成形部Ｅの最上部を自身の一端側をめくるように変形させることで開閉可能なカバーシート（第２の弾性シート）２０と、を備える。被成形樹脂Ｐｏは、弾性体シート１８とカバーシート２０との間で成形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、圧縮成形等においてその供給用素材として用いる平板状の樹脂を成形する際に適用するのに好適な平板状樹脂の成形装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
半導体や電子部品のように、高い精度が要求される部材を樹脂封止する場合、その供給用素材としていわゆる平板樹脂がよく用いられる。この平板樹脂は、粉粒状の熱硬化性の樹脂を金型によって加熱・押圧することによって半硬化状態の薄い平板に成形したものであり、半導体等をばらつきなく封止するための封止素材として好適である。
【０００３】
しかしながら、薄くてそれ自体の強度が高くないことから、通常の金型による成形では、破損してしまい易いという問題がある。この問題を解決するための対策として、プレートモールド法や、該プレートモールド法をベースとして、上下の平面部にリリースフィルムを介在させる方法などが提案されている（特許文献１など参照）。
【０００４】
【特許文献１】特開２００１−２４０１４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
プレートモールド法は、これ自体平板樹脂の破損が生じにくい成形法ではあるが、平板樹脂の厚さは、例えば０．５ｍｍ程度しかなく、それでもなお、破損の発生が避けがたいというのが実情である。
【０００６】
また、金型との境界面にリリースフィルムを介在させる方法は、平板樹脂を成形するたびにフィルムの交換が必要で、コスト高となり易い上に、新しいフィルムの供給と使用済みのフィルムの回収を行うためのフィルム送り機構が必要となり、装置が複雑になってしまうという問題がある。
【０００７】
また、ときに、枠体の内側からリリースフィルム側に僅かに沁みだした樹脂が、枠体をくわえ込んでしまうことがあり、この場合には、却って離型抵抗が増大して破壊に至ってしまう確率が高くなるという問題もある。
【０００８】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、構造が簡単でイニシャルコストが低く、また繰り返し使えることからランニングコストも低く、高い離型性を有すると共に、樹脂の沁みだし等による不具合が発生しにくく、したがって破損率を低く維持することのできる平板状樹脂の成形装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明は、成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形装置において、前記成形部が、前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体と、該枠体の上部に配置され、この枠体の内側に沿った形状に変形可能で、且つ復元が可能な第１の弾性シートと、当該成形部の最上部を自身の一端側をめくるように変形させることで開閉可能な第２の弾性シートと、で構成され、且つ前記被成形樹脂を、前記第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に供給して成形を行うことにより、上記課題を解決したものである。
【００１０】
本発明においては、被成形樹脂は第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に投入される。投入された被成形樹脂は、上下の金型によって枠体の中側（内壁）に向けて押し付けられる。これにより、第１の弾性シートが枠体の形状に沿うように変形するため、被成形樹脂は、枠体通りの形状に成形される。枠体は、高い剛性を有するため、成形された平板状樹脂の形状のばらつきは小さい。
【００１１】
一方、平板状樹脂が接するのは、第１の弾性シート及び第２の弾性シートのみであるため、離型性が良く、また、剥離時は第２の弾性シートの一端側をめくるように変形させることによって剥離線を発生させ、剥離線に剥離応力を集中させることができる。そのため、脆弱な平板樹脂を破損することなく取り出すことができる。
【００１２】
また、平板状樹脂は、第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に挟まれることから、従来のリリースフィルムを用いた成形方法では避け難かった「沁みだした樹脂が枠体をくわえ込み、却って離型性に悪影響を及ぼす」というような不具合が発生する恐れもない。
【００１３】
更に、第１の弾性シートは、復元可能であり、繰り返し使用することができるため、ランニングコストも低減できる。なお、ここでの「復元」は、必ずしも幾何学的に完全に元の形状に戻るということを要求するものではなく、繰り返し使用するのに支障がない程度に、ほぼ元の形に戻れば足りるものとする。
【００１４】
ここで、第１の弾性シートは、弾性を有する基材に、金型との離型性の高い薄膜を貼付したものであることが好ましい。これにより、所定の変形、復元という機能を有しながら、より離型性の高い第１の弾性シートを得ることができる。
【００１５】
また、第２の弾性シートは、薄い金属板によって構成されているのが好ましい。これにより、成型工程での加熱、除熱の効率を高めることができ、熱損失を小さくすることができると共に、成形のサイクルタイムを短縮できる。また、平板状樹脂から剥離する際に、金属板の変形によって剥離線に応力を集中させることができるため、軽荷重で剥離することができる。
【００１６】
なお、請求項１の発明は、成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形方法において、前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体の上部に復元可能な第１の弾性シートが配置される工程と、該枠体の内側に沿った形状に変形された前記第１の弾性体シートのポケット部に前記被成形樹脂を供給する工程と、供給された該被成形樹脂の上部に配置された第２の弾性体シートを閉じる工程と、前記第１の弾性体シート、枠体、及び第２の弾性体シートで構成される前記成形部を該被成形樹脂が供給された状態で加熱する工程と、該加熱された該成形部を冷却して前記平板状樹脂を成形する工程と、該冷却された該成形部の前記第２の弾性体シートを一端側からめくるように変形させて開く工程と、を含むことを特徴とする平板状樹脂の成形方法によっても、同様な作用効果を得ることができる。
【００１７】
なお、本発明の成形対象は、いわゆる「平板樹脂」がメインとなるが、必ずしも完全な平板形状である必要はなく、封止すべき製品に要求される特性によっては、例えばその中央部が若干膨らんでいたり、逆に若干凹んでいたりするような「平板状の樹脂（平板状樹脂）」であってもよい。この場合は、金型（例えば下型）の押圧面を当該所望の形状に対応させれば足りる。
【発明の効果】
【００１８】
構造が簡単でイニシャルコストが低く、またランニングコストも低く、高い離型性を有し、したがって破損率の低い平板状樹脂の成形装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【００２０】
図１は、本実施形態が適用された平板樹脂の成形装置の成形部の概略斜視図である。また、図２（Ａ）〜（Ｄ）には、この構成の成形部を用いて平板樹脂を成形する際の製造工程がそれぞれ示されている。
【００２１】
本実施形態に係る平板樹脂の成形装置１２の成形部Ｅは、図１の下から順に、枠体１６、その直上の弾性体シート（第１の弾性シート）１８、及びカバープレート（第２の弾性シート）２０の３層から構成されている。
【００２２】
前記枠体１６は、被成形樹脂の外形（成形しようとする平板樹脂の外形）を確定するためのもので、当該外形に対応させた貫通孔１６Ａを有する。ここでは、矩形の貫通孔１６Ａが形成されている。すなわち、本成形装置によって成形される平板樹脂は、貫通孔１６Ａの形状に対応している矩形の平板樹脂である。
【００２３】
前記弾性体シート１８は、枠体１６の上部に配置されている。弾性体シート１８は、この枠体１６の内側（貫通孔１６Ａ）に沿った形状に変形可能であり、かつ復元が可能な素材で形成されている。具体的には、シリコンゴム、あるいはエチレンプロピレン等の弾性のある素材をその基材とし、これに離型性の高い薄膜（例えばフッ素系離型フィルム等）を接着している。なお、この弾性体シート１８は、１２０°Ｃ〜１３０°Ｃの耐熱特性を有するのが好ましい。
【００２４】
前記カバープレート２０は、成形部Ｅの最上部を開閉可能とするものである。この実施形態では、０．１ｍｍ〜０．１５ｍｍの厚さを有するステンレス製の薄い金属板で形成されている。
【００２５】
図２に示されるように、本成形装置１２は、更に、図示しない駆動機構によって成形部Ｅを上下から挟み込み、加熱・加圧する金型（ヒートプレス）２４、加熱・加圧後の成形部Ｅを上下から挟み込み、除熱するクールプレス２６、及び成形した平板樹脂Ｐを上方に突き出して成形品としての平板樹脂Ｐを上方に押し出す押し出し機構２８を別途備える。又、図示しないが、このほかに被成形樹脂Ｐｏの投入機構、後述する弾性体シート１８の吸着機構、成形された平板樹脂Ｐを弾性体シート１８から剥離させるための吸着機構、及び剥離した平板樹脂Ｐを回収するアンローダ機構等が付設されている。これらの具体的な構成は、従来同種の機能を実現するために既に知られている構成を採用することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【００２６】
以下、図２を用いて、本成形装置１２の作用を詳細に説明する。
【００２７】
図２（Ａ）に示されるように、成形部Ｅのカバープレート２０を開き、弾性体シート１８を枠体１６の貫通孔１６Ａ側に吸引・変形させてポケット部１８Ａを形成する。なお、このときの弾性体シート１８の変形手段としては、吸引の代わりに、機械的な押し込みなどを利用してもよい。
【００２８】
吸引によって形成された弾性体シート１８のポケット部１８Ａに原料となる粉粒状の樹脂（被成形樹脂）Ｐｏを必要量を投入し、カバープレート２０を閉じる。この状態で樹脂投入済みの成形部Ｅをヒートプレス２４の設置位置までそっくり移動する。移動後、ヒートプレス２４により、該成形部Ｅを上下から挟み込み、枠体１６の貫通孔１６Ａ内において被成形樹脂Ｐｏを成形し、平板樹脂Ｐとする（図２（Ｂ）参照）。このときの加熱温度は、６０°Ｃ〜１００°Ｃであり、加圧力は、０．２〜１．０ＭＰａである。
【００２９】
成形部Ｅにおける枠体１６内で成形された平板樹脂Ｐは、溶融・軟化した状態となっているため、次に、成形部Ｅを再び移動してクールプレス２６によって挟み込み、平板樹脂Ｐから熱を奪う（図２（Ｃ）参照）。この結果、平板樹脂Ｐの温度は１０°Ｃ〜２０°Ｃ程度にまで低下する。
【００３０】
次に、除熱した成形部Ｅをクールプレス２６から外し、カバープレート２０を一端側（図２の右側）からめくるようにして変形させて開いていく。この変形により、いわゆる剥離線（カバープレート２０が平板樹脂Ｐから剥離されてゆくときの境界線）が発生するため、該剥離線に剥離応力を集中させることができ、軽荷重でカバープレート２０を平板樹脂Ｐから剥離することができる。
【００３１】
最後に、図２（Ｄ）に示されるように、押し出し機構２８によって弾性体シート１８ごと平板樹脂Ｐを上方に突き出し、図示せぬアンローダ機構等によって成形された平板樹脂Ｐを回収する。弾性体シート１８の表面には高い剥離性を有するフィルムが貼付されているため、例えば、吸着等の手段によって平板樹脂Ｐを引き上げることにより、弾性体シート１８の最外周側から中央側に向けて移動する剥離線が発生することと相まって、平板樹脂Ｐを容易に弾性体シート１８から剥離させることができる。
【００３２】
この実施形態によれば、被成形樹脂Ｐｏは、２つの弾性シート（弾性体シート１８及びカバープレート２０）の間に挟まれた状態で成形されるため、金型との接触が一切なく、剥離を極めて容易に（軽荷重で）行うことができる。そのため、平板樹脂が損傷する危険性は極めて低く、歩留まりを向上させることができる。
【００３３】
また、成形中の樹脂が沁み出して金型と接触することもないため、この点でも平板樹脂が破損に至る確率が低減される。
【００３４】
２つの弾性シートは、繰り返し使用することが可能であるため、ランニングコストも低い。
【００３５】
この実施形態では、更に、カバープレート２０として、薄いステンレス製の金属板を採用するようにしているため、良好な変形特性を得ることができると共に、熱伝導性が高く、加熱及び除熱のいずれに対しても効率的な熱移動を実現することができる。その結果、熱損失を低減でき、成形のサイクルタイムも短縮できる。
【００３６】
なお、本発明においては、第１、第２弾性シートをどのような素材で形成するかについては、特に限定されない。また、成形されるべき平板状の樹脂の具体的な形状等も、特に限定されない。更には、上記実施形態においては、第１、第２弾性シートをそれぞれ独立した部材で形成していたが、これを単一の部材を折り曲げた態様で形成するようにしてもよい。この場合、第１、第２弾性シートは、その機能が若干異なるため、例えば、一方側のみにフィルムを貼付したり、あるいは、別の薄い金属材料を貼付したりするようにすると良好である。このように、２つの弾性シートを単一の部材を折り曲げた態様で形成するようにすると、両者の位置のずれを低減でき、樹脂の沁みだしの防止効果をそれだけ高めることができる。
【００３７】
又、本発明は、成形部が、下側から順に枠体、変形が可能な第１の弾性シート、開閉が可能な第２の弾性シートで構成されるが、最終的な取出し工程等において何らかの都合で全体の上下を裏返して下側から取り出すような場合も、その技術的範疇に包含している。
【産業上の利用可能性】
【００３８】
本発明は、平板状の樹脂を成形する分野において特に有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の実施形態が適用された成形装置の成形部の構成を示す概略斜視図
【図２】上記成形部を用いて平板樹脂を成形する際の製造工程を示す断面図
【符号の説明】
【００４０】
１２…成形装置
１６…枠体
１６Ａ…貫通孔
１８…弾性体シート（第１の弾性シート）
２０…カバープレート（第２の弾性シート）
２４…ヒートプレス（金型）
２６…クールプレス
２８…押し出し機構
Ｅ…成形部
Ｐ…平板樹脂
Ｐｏ…被成形樹脂
【技術分野】
【０００１】
本発明は、圧縮成形等においてその供給用素材として用いる平板状の樹脂を成形する際に適用するのに好適な平板状樹脂の成形装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
半導体や電子部品のように、高い精度が要求される部材を樹脂封止する場合、その供給用素材としていわゆる平板樹脂がよく用いられる。この平板樹脂は、粉粒状の熱硬化性の樹脂を金型によって加熱・押圧することによって半硬化状態の薄い平板に成形したものであり、半導体等をばらつきなく封止するための封止素材として好適である。
【０００３】
しかしながら、薄くてそれ自体の強度が高くないことから、通常の金型による成形では、破損してしまい易いという問題がある。この問題を解決するための対策として、プレートモールド法や、該プレートモールド法をベースとして、上下の平面部にリリースフィルムを介在させる方法などが提案されている（特許文献１など参照）。
【０００４】
【特許文献１】特開２００１−２４０１４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
プレートモールド法は、これ自体平板樹脂の破損が生じにくい成形法ではあるが、平板樹脂の厚さは、例えば０．５ｍｍ程度しかなく、それでもなお、破損の発生が避けがたいというのが実情である。
【０００６】
また、金型との境界面にリリースフィルムを介在させる方法は、平板樹脂を成形するたびにフィルムの交換が必要で、コスト高となり易い上に、新しいフィルムの供給と使用済みのフィルムの回収を行うためのフィルム送り機構が必要となり、装置が複雑になってしまうという問題がある。
【０００７】
また、ときに、枠体の内側からリリースフィルム側に僅かに沁みだした樹脂が、枠体をくわえ込んでしまうことがあり、この場合には、却って離型抵抗が増大して破壊に至ってしまう確率が高くなるという問題もある。
【０００８】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、構造が簡単でイニシャルコストが低く、また繰り返し使えることからランニングコストも低く、高い離型性を有すると共に、樹脂の沁みだし等による不具合が発生しにくく、したがって破損率を低く維持することのできる平板状樹脂の成形装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明は、成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形装置において、前記成形部が、前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体と、該枠体の上部に配置され、この枠体の内側に沿った形状に変形可能で、且つ復元が可能な第１の弾性シートと、当該成形部の最上部を自身の一端側をめくるように変形させることで開閉可能な第２の弾性シートと、で構成され、且つ前記被成形樹脂を、前記第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に供給して成形を行うことにより、上記課題を解決したものである。
【００１０】
本発明においては、被成形樹脂は第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に投入される。投入された被成形樹脂は、上下の金型によって枠体の中側（内壁）に向けて押し付けられる。これにより、第１の弾性シートが枠体の形状に沿うように変形するため、被成形樹脂は、枠体通りの形状に成形される。枠体は、高い剛性を有するため、成形された平板状樹脂の形状のばらつきは小さい。
【００１１】
一方、平板状樹脂が接するのは、第１の弾性シート及び第２の弾性シートのみであるため、離型性が良く、また、剥離時は第２の弾性シートの一端側をめくるように変形させることによって剥離線を発生させ、剥離線に剥離応力を集中させることができる。そのため、脆弱な平板樹脂を破損することなく取り出すことができる。
【００１２】
また、平板状樹脂は、第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に挟まれることから、従来のリリースフィルムを用いた成形方法では避け難かった「沁みだした樹脂が枠体をくわえ込み、却って離型性に悪影響を及ぼす」というような不具合が発生する恐れもない。
【００１３】
更に、第１の弾性シートは、復元可能であり、繰り返し使用することができるため、ランニングコストも低減できる。なお、ここでの「復元」は、必ずしも幾何学的に完全に元の形状に戻るということを要求するものではなく、繰り返し使用するのに支障がない程度に、ほぼ元の形に戻れば足りるものとする。
【００１４】
ここで、第１の弾性シートは、弾性を有する基材に、金型との離型性の高い薄膜を貼付したものであることが好ましい。これにより、所定の変形、復元という機能を有しながら、より離型性の高い第１の弾性シートを得ることができる。
【００１５】
また、第２の弾性シートは、薄い金属板によって構成されているのが好ましい。これにより、成型工程での加熱、除熱の効率を高めることができ、熱損失を小さくすることができると共に、成形のサイクルタイムを短縮できる。また、平板状樹脂から剥離する際に、金属板の変形によって剥離線に応力を集中させることができるため、軽荷重で剥離することができる。
【００１６】
なお、請求項１の発明は、成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形方法において、前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体の上部に復元可能な第１の弾性シートが配置される工程と、該枠体の内側に沿った形状に変形された前記第１の弾性体シートのポケット部に前記被成形樹脂を供給する工程と、供給された該被成形樹脂の上部に配置された第２の弾性体シートを閉じる工程と、前記第１の弾性体シート、枠体、及び第２の弾性体シートで構成される前記成形部を該被成形樹脂が供給された状態で加熱する工程と、該加熱された該成形部を冷却して前記平板状樹脂を成形する工程と、該冷却された該成形部の前記第２の弾性体シートを一端側からめくるように変形させて開く工程と、を含むことを特徴とする平板状樹脂の成形方法によっても、同様な作用効果を得ることができる。
【００１７】
なお、本発明の成形対象は、いわゆる「平板樹脂」がメインとなるが、必ずしも完全な平板形状である必要はなく、封止すべき製品に要求される特性によっては、例えばその中央部が若干膨らんでいたり、逆に若干凹んでいたりするような「平板状の樹脂（平板状樹脂）」であってもよい。この場合は、金型（例えば下型）の押圧面を当該所望の形状に対応させれば足りる。
【発明の効果】
【００１８】
構造が簡単でイニシャルコストが低く、またランニングコストも低く、高い離型性を有し、したがって破損率の低い平板状樹脂の成形装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１９】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【００２０】
図１は、本実施形態が適用された平板樹脂の成形装置の成形部の概略斜視図である。また、図２（Ａ）〜（Ｄ）には、この構成の成形部を用いて平板樹脂を成形する際の製造工程がそれぞれ示されている。
【００２１】
本実施形態に係る平板樹脂の成形装置１２の成形部Ｅは、図１の下から順に、枠体１６、その直上の弾性体シート（第１の弾性シート）１８、及びカバープレート（第２の弾性シート）２０の３層から構成されている。
【００２２】
前記枠体１６は、被成形樹脂の外形（成形しようとする平板樹脂の外形）を確定するためのもので、当該外形に対応させた貫通孔１６Ａを有する。ここでは、矩形の貫通孔１６Ａが形成されている。すなわち、本成形装置によって成形される平板樹脂は、貫通孔１６Ａの形状に対応している矩形の平板樹脂である。
【００２３】
前記弾性体シート１８は、枠体１６の上部に配置されている。弾性体シート１８は、この枠体１６の内側（貫通孔１６Ａ）に沿った形状に変形可能であり、かつ復元が可能な素材で形成されている。具体的には、シリコンゴム、あるいはエチレンプロピレン等の弾性のある素材をその基材とし、これに離型性の高い薄膜（例えばフッ素系離型フィルム等）を接着している。なお、この弾性体シート１８は、１２０°Ｃ〜１３０°Ｃの耐熱特性を有するのが好ましい。
【００２４】
前記カバープレート２０は、成形部Ｅの最上部を開閉可能とするものである。この実施形態では、０．１ｍｍ〜０．１５ｍｍの厚さを有するステンレス製の薄い金属板で形成されている。
【００２５】
図２に示されるように、本成形装置１２は、更に、図示しない駆動機構によって成形部Ｅを上下から挟み込み、加熱・加圧する金型（ヒートプレス）２４、加熱・加圧後の成形部Ｅを上下から挟み込み、除熱するクールプレス２６、及び成形した平板樹脂Ｐを上方に突き出して成形品としての平板樹脂Ｐを上方に押し出す押し出し機構２８を別途備える。又、図示しないが、このほかに被成形樹脂Ｐｏの投入機構、後述する弾性体シート１８の吸着機構、成形された平板樹脂Ｐを弾性体シート１８から剥離させるための吸着機構、及び剥離した平板樹脂Ｐを回収するアンローダ機構等が付設されている。これらの具体的な構成は、従来同種の機能を実現するために既に知られている構成を採用することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【００２６】
以下、図２を用いて、本成形装置１２の作用を詳細に説明する。
【００２７】
図２（Ａ）に示されるように、成形部Ｅのカバープレート２０を開き、弾性体シート１８を枠体１６の貫通孔１６Ａ側に吸引・変形させてポケット部１８Ａを形成する。なお、このときの弾性体シート１８の変形手段としては、吸引の代わりに、機械的な押し込みなどを利用してもよい。
【００２８】
吸引によって形成された弾性体シート１８のポケット部１８Ａに原料となる粉粒状の樹脂（被成形樹脂）Ｐｏを必要量を投入し、カバープレート２０を閉じる。この状態で樹脂投入済みの成形部Ｅをヒートプレス２４の設置位置までそっくり移動する。移動後、ヒートプレス２４により、該成形部Ｅを上下から挟み込み、枠体１６の貫通孔１６Ａ内において被成形樹脂Ｐｏを成形し、平板樹脂Ｐとする（図２（Ｂ）参照）。このときの加熱温度は、６０°Ｃ〜１００°Ｃであり、加圧力は、０．２〜１．０ＭＰａである。
【００２９】
成形部Ｅにおける枠体１６内で成形された平板樹脂Ｐは、溶融・軟化した状態となっているため、次に、成形部Ｅを再び移動してクールプレス２６によって挟み込み、平板樹脂Ｐから熱を奪う（図２（Ｃ）参照）。この結果、平板樹脂Ｐの温度は１０°Ｃ〜２０°Ｃ程度にまで低下する。
【００３０】
次に、除熱した成形部Ｅをクールプレス２６から外し、カバープレート２０を一端側（図２の右側）からめくるようにして変形させて開いていく。この変形により、いわゆる剥離線（カバープレート２０が平板樹脂Ｐから剥離されてゆくときの境界線）が発生するため、該剥離線に剥離応力を集中させることができ、軽荷重でカバープレート２０を平板樹脂Ｐから剥離することができる。
【００３１】
最後に、図２（Ｄ）に示されるように、押し出し機構２８によって弾性体シート１８ごと平板樹脂Ｐを上方に突き出し、図示せぬアンローダ機構等によって成形された平板樹脂Ｐを回収する。弾性体シート１８の表面には高い剥離性を有するフィルムが貼付されているため、例えば、吸着等の手段によって平板樹脂Ｐを引き上げることにより、弾性体シート１８の最外周側から中央側に向けて移動する剥離線が発生することと相まって、平板樹脂Ｐを容易に弾性体シート１８から剥離させることができる。
【００３２】
この実施形態によれば、被成形樹脂Ｐｏは、２つの弾性シート（弾性体シート１８及びカバープレート２０）の間に挟まれた状態で成形されるため、金型との接触が一切なく、剥離を極めて容易に（軽荷重で）行うことができる。そのため、平板樹脂が損傷する危険性は極めて低く、歩留まりを向上させることができる。
【００３３】
また、成形中の樹脂が沁み出して金型と接触することもないため、この点でも平板樹脂が破損に至る確率が低減される。
【００３４】
２つの弾性シートは、繰り返し使用することが可能であるため、ランニングコストも低い。
【００３５】
この実施形態では、更に、カバープレート２０として、薄いステンレス製の金属板を採用するようにしているため、良好な変形特性を得ることができると共に、熱伝導性が高く、加熱及び除熱のいずれに対しても効率的な熱移動を実現することができる。その結果、熱損失を低減でき、成形のサイクルタイムも短縮できる。
【００３６】
なお、本発明においては、第１、第２弾性シートをどのような素材で形成するかについては、特に限定されない。また、成形されるべき平板状の樹脂の具体的な形状等も、特に限定されない。更には、上記実施形態においては、第１、第２弾性シートをそれぞれ独立した部材で形成していたが、これを単一の部材を折り曲げた態様で形成するようにしてもよい。この場合、第１、第２弾性シートは、その機能が若干異なるため、例えば、一方側のみにフィルムを貼付したり、あるいは、別の薄い金属材料を貼付したりするようにすると良好である。このように、２つの弾性シートを単一の部材を折り曲げた態様で形成するようにすると、両者の位置のずれを低減でき、樹脂の沁みだしの防止効果をそれだけ高めることができる。
【００３７】
又、本発明は、成形部が、下側から順に枠体、変形が可能な第１の弾性シート、開閉が可能な第２の弾性シートで構成されるが、最終的な取出し工程等において何らかの都合で全体の上下を裏返して下側から取り出すような場合も、その技術的範疇に包含している。
【産業上の利用可能性】
【００３８】
本発明は、平板状の樹脂を成形する分野において特に有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の実施形態が適用された成形装置の成形部の構成を示す概略斜視図
【図２】上記成形部を用いて平板樹脂を成形する際の製造工程を示す断面図
【符号の説明】
【００４０】
１２…成形装置
１６…枠体
１６Ａ…貫通孔
１８…弾性体シート（第１の弾性シート）
２０…カバープレート（第２の弾性シート）
２４…ヒートプレス（金型）
２６…クールプレス
２８…押し出し機構
Ｅ…成形部
Ｐ…平板樹脂
Ｐｏ…被成形樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項１】
成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形装置において、
前記成形部が、
前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体と、
該枠体の上部に配置され、この枠体の内側に沿った形状に変形可能で、且つ復元が可能な第１の弾性シートと、
当該成形部の最上部を自身の一端側をめくるように変形させることで開閉可能な第２の弾性シートと、で構成され、且つ
前記被成形樹脂を、前記第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に供給して成形を行う
ことを特徴とする平板状樹脂の成形装置。
【請求項２】
請求項１において、
前記第１の弾性シートが、弾性を有する基材に、金型との離型性の高い薄膜を貼付したものである
ことを特徴とする平板状樹脂の成形装置。
【請求項３】
請求項１又は２において、
前記第２の弾性シートが、薄い金属板によって構成されている
ことを特徴とする平板状樹脂の成形装置。
【請求項４】
成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形方法において、
前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体の上部に復元可能な第１の弾性シートが配置される工程と、
該枠体の内側に沿った形状に変形された前記第１の弾性体シートのポケット部に前記被成形樹脂を供給する工程と、
供給された該被成形樹脂の上部に配置された第２の弾性体シートを閉じる工程と、
前記第１の弾性体シート、枠体、及び第２の弾性体シートで構成される前記成形部を該被成形樹脂が供給された状態で加熱する工程と、
該加熱された該成形部を冷却して前記平板状樹脂を成形する工程と、
該冷却された該成形部の前記第２の弾性体シートを一端側からめくるように変形させて開く工程と、を含む
ことを特徴とする平板状樹脂の成形方法。
【請求項１】
成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形装置において、
前記成形部が、
前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体と、
該枠体の上部に配置され、この枠体の内側に沿った形状に変形可能で、且つ復元が可能な第１の弾性シートと、
当該成形部の最上部を自身の一端側をめくるように変形させることで開閉可能な第２の弾性シートと、で構成され、且つ
前記被成形樹脂を、前記第１の弾性シートと第２の弾性シートとの間に供給して成形を行う
ことを特徴とする平板状樹脂の成形装置。
【請求項２】
請求項１において、
前記第１の弾性シートが、弾性を有する基材に、金型との離型性の高い薄膜を貼付したものである
ことを特徴とする平板状樹脂の成形装置。
【請求項３】
請求項１又は２において、
前記第２の弾性シートが、薄い金属板によって構成されている
ことを特徴とする平板状樹脂の成形装置。
【請求項４】
成形部内に供給された被成形樹脂を上下の金型によって挟み込んで平板状に成形する平板状樹脂の成形方法において、
前記平板状樹脂の外形を形成するための枠体の上部に復元可能な第１の弾性シートが配置される工程と、
該枠体の内側に沿った形状に変形された前記第１の弾性体シートのポケット部に前記被成形樹脂を供給する工程と、
供給された該被成形樹脂の上部に配置された第２の弾性体シートを閉じる工程と、
前記第１の弾性体シート、枠体、及び第２の弾性体シートで構成される前記成形部を該被成形樹脂が供給された状態で加熱する工程と、
該加熱された該成形部を冷却して前記平板状樹脂を成形する工程と、
該冷却された該成形部の前記第２の弾性体シートを一端側からめくるように変形させて開く工程と、を含む
ことを特徴とする平板状樹脂の成形方法。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００９−７８５６３（Ｐ２００９−７８５６３Ａ）
【公開日】平成２１年４月１６日（２００９．４．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−３０５９４６（Ｐ２００８−３０５９４６）
【出願日】平成２０年１２月１日（２００８．１２．１）
【分割の表示】特願２００４−７４８７０（Ｐ２００４−７４８７０）の分割
【原出願日】平成１６年３月１６日（２００４．３．１６）
【出願人】（０００００２１０７）住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年４月１６日（２００９．４．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１２月１日（２００８．１２．１）
【分割の表示】特願２００４−７４８７０（Ｐ２００４−７４８７０）の分割
【原出願日】平成１６年３月１６日（２００４．３．１６）
【出願人】（０００００２１０７）住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Ｆターム（参考）】
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