説明

平版印刷版の製版方法

【課題】 支持体の表面に感光層を設けた光重合系感光性平版印刷版を、製造後長期間、高温高湿条件下で保存しても、その後画像露光及び現像を行い印刷した時に、地汚れの発生のない、経時安定性の高い光重合系平版印刷版の製版方法を提供すること。
【解決手段】 アルミニウム支持体上に中間層及び光重合性感光層を順に積層してなる感光性平版印刷版を画像露光し、現像液で現像することを含む平版印刷版の製版方法であって、該中間層が側鎖に燐酸基を有する高分子化合物を含み、並びに該現像液が無機アルカリ塩、及びポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を含みかつpHが11.0〜12.7である、上記平版印刷版の製版方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム支持体上に光重合性感光層が形成された感光性平版印刷版の製版方法に関する。さらに詳しくは、非画像部の現像性の改良により、印刷での汚れにくさが確保され、かつ露光部における現像時のダメージが少なく強固な画像強度が得られる平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】平版印刷版を用いた印刷物の製造において、地汚れの無い印刷物を得ることは必須条件の一つである。一般に地汚れは、製造後の貯蔵時間が長くなると共に増加し、特に高温、高湿下で貯蔵された場合に顕著となる。光重合性感光層は、光によりラジカルが発生して、重合連鎖反応により画像が形成される物であるため、このような光重合性感光層を有する感光性平版印刷版では良好な貯蔵安定性を得ることが難しい。従って、長時間の保存、特に高温高湿下での保存に耐え、印刷物の地汚れが発生しない感光性平版印刷版が望まれていた。
【0003】このような地汚れを生じさせない試みは従来より数多くなされている。例えば、陽極酸化アルミニウム板の表面にポリビニルホスホン酸からなる下塗り層を設け、その上にジアゾ化合物を含有する感光層を設けた感光性平版印刷版(西独国特許第1,621,478号)、アルミニウム支持体上にポリアクリル酸等を下塗りし、その上にジアゾ樹脂を設けた感光性平版印刷版(西独国特許第1,091,433号)、ポリアクリルアミドを下塗りし、その上に感光層を設けた感光性平版印刷版(米国特許第3,511,661号)、ジアゾ化合物と有機高分子担体とを含有する感光層を有する感光性平版印刷版の経時安定性を改良し地汚れの発生を防止するために感光層への高分子の有機酸を添加する方法(特開昭56−107238号公報)等が知られている。しかし、いずれも十分な効果を発揮せず、より一層の改良が望まれていた。また、特開昭57−5042号公報には、複数個の側鎖ジアゾニウム基を有するジアゾ樹脂と、複数個のスルホネート基を有するスルホン化重合体(例えばスルホン化ポリウレタンやスルホン化ポリエステル)との組み合わせを含む感光性付加物が開示されている。しかし、この方法に依れば地汚れ防止の効果が十分でないばかりか、これらの付加物を感光層そのものとして用いるため使用するスルホン化ポリウレタンあるいはスルホン化ポリエステル等の生成によって感光性平版印刷版の性能が支配されてしまい、その使用範囲はごく限定されてしまうという欠点があった。
【0004】また、特開昭59−101651号公報には、ジアゾ化合物及び光重合性組成物を感光層に用いた感光性平版印刷版の長期貯蔵により生じる地汚れを改良する方法として、スルホン酸を有するモノマー単位の繰り返し重合体を中間層に設けることが記載されている。しかしながら、この技術による経時安定性改良は、従来のPS版露光装置で使用する低感度の光重合系では十分な効果が見られたが、CTP等でレーザー光源で露光される高感度な光重合系ではその効果が不十分であった。一方、これらの、現像液に溶解性の高い化合物を下塗り層として設けたり、あるいは光重合性感光層中に添加する方法は、地汚れの改良に有効である反面、露光部の現像によるダメージが大きくなり、耐刷性等の性能劣化を起こすことが多かった。
【0005】一方、アルミニウム支持体上に光重合性感光層を有する感光性平版印刷版の現像液としては、アルカリ金属の珪酸塩、燐酸塩、炭酸塩、水酸化物等、及び有機アミン化合物等の水溶液が提案されている。例えば、特開平8-248643号公報には、12以上の高pHで珪酸アルカリ塩と両性界面活性剤を含む現像液が、特開平11-65129号公報には、SiO2/M2O(Mはアルカリ金属)が規定されたpH12以下の珪酸アルカリ塩を含む現像液が開示されている。前者には取り扱い上の問題の他に、現像液の高いpHのため現像時に画像部がダメージを受けやすいという問題が、また後者には使用中の僅かな現像液のpH低下により、珪酸塩がゲル化、不溶化してしまうという問題があった。
【0006】珪酸アルカリ塩を用いない現像液としては、特開昭61-109052号公報に、アルカリ試薬、錯化剤、アニオン界面活性剤、乳化剤、n−アルカン酸等からなる現像液が、また西ドイツ特許第1984605号公報には、アルカリ剤、錯化剤、アニオン界面活性剤、アミルアルコール、N−アルコキシアミン類を含んだ現像液が開示されているが、両者ともpHが高く、また有機溶剤を含有するため、画像部のダメージが大きく、耐刷性等の印刷性能を得る上で問題があった。比較的pHが低く(pH12以下)、珪酸アルカリ塩を含まない現像液としては、特開2000-81711号公報に、アニオン界面活性剤を含む水酸化カリウム水溶液からなる現像液が、また特開平11-65126号公報にはpH8.5〜11.5のアルカリ金属の炭酸塩水溶液からなる現像液が開示されている。
【0007】しかしながら、このような比較的低pHの現像液は、基本的に光重合性感光層の溶解力が乏しいため、例えば、経時した版材では十分に現像が進まず残膜が生じる等の問題があった。これらの問題を解決するためには、版材感光層中の高分子結合剤の酸価を高くして現像性を向上させるか、又は酸基を有するモノマーを併用する等の工夫が必要であるが、この様な高酸価バインダーを使用した場合には、印刷の途中でインキが着かなくなる問題(ブラインディンク)等、印刷上の問題が発生しやすかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目的は、支持体の表面に感光層を設けた光重合系感光性平版印刷版を、製造後長期間、高温高湿条件下で保存しても、その後画像露光及び現像を行い印刷した時に、地汚れの発生のない、経時安定性の高い光重合系平版印刷版の製版方法を提供することにある。更に詳しくは、環境、安全上好ましい比較的低pHのアルカリ現像液を用いても、安定して非画像部が良好な現像性を示し、印刷での汚れがなく、かつ現像時における画像部のダメージが少なく、強固な画像強度が得られる平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【0009】
【発明を解決するための手段】本発明者は、前期課題を解決すべく鋭意研究した結果、中間層として側鎖に燐酸基を有する高分子化合物を含む層を設け、また、比較的pHが低いアルカリ水溶液に、一定のノニオン系界面活性剤を含有させた現像液により現像することで地汚れの発生し難い光重合系平版印刷版を得ることができること、また、光重合性感光層の未露光部の溶解速度が上がり、逆に光重合による架橋した画像部分は現像液の浸透が抑制され、強固な膜となることを見いだした。すなわち本発明は、アルミニウム支持体上に中間層及び光重合性感光層を順に積層してなる感光性平版印刷版を画像露光し、現像液で現像することを含む平版印刷版の製版方法であって、該中間層が側鎖に燐酸基を有する高分子化合物を含み、並びに該現像液が無機アルカリ塩、及びポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を含みかつpHが11.0〜12.7である、上記平版印刷版の製版方法を提供する。上記発見により、長期保存しても印刷汚れが生じず、かつ画像部は強固な被膜となり、耐刷性、耐溶剤性の高い光重合系平版印刷版を得ることが可能になった。
【0010】
【発明の実施の態様】以下本発明について詳細に説明する。
(中間層)本発明の特徴の一つは中間層が側鎖に燐酸基を有する高分子化合物を含むことである。この高分子化合物を含む中間層を後述するアルミニウム支持体と感光層との間に設けることにより、平版印刷版における経時による汚れ難さが達成され、また耐刷性も向上する。本発明における高分子化合物は、例えば、少なくとも燐酸基を有するモノマー成分を重合してなる高分子化合物であり、所望の割合で他のビニルモノマーと共重合してもかまわない。燐酸基とは、
【0011】
【化1】


【0012】であり、燐酸基を有するモノマーとしては以下のものを挙げることができるがこれにより限定されるものではない。
【0013】
【化2】


【0014】CH2=C(CH3)COO(C2H4O)nP=O(OH)(O-)N+H(CH3)2C2H4OCOC(CH3)=CH2, n=1CH2=C(CH3)COO(C2H4O)nP=O(OH)(O-)N+H3C2H4OH, n=1[CH2=C(CH3)COO(C2H4O)n]2P=O(OH), n=1CH2=C(CH3)COO(C2H4O)nP=O(OH)(O-)N+H(C2H5)2C2H4OCOC(CH3)=CH2, n=1[CH2=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10O]2P=O(OH)
【0015】本発明で燐酸基を有するモノマーと共重合してもよいモノマーとしては下記の様な他の酸基を有するモノマー、あるいは(1)〜(14)に記載したような他のモノマーを挙げることが出来る。
(酸基を有するモノマーの具体例)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、
【0016】
【化3】


【0017】
【化4】


【0018】
【化5】


【0019】(1)N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−またはp−ヒドロキシスチレン、o−またはm−ブロモ−p−ヒドロキシスチレン、o−またはm−クロル−p−ヒドロキシスチレン、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニルアクリレートまたはメタクリレート等の芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類およびヒドロキシスチレン類、(2)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびそのハーフエステル、イタコン酸、無水イタコン酸およびそのハーフエステルなどの不飽和カルボン酸、
【0020】(3)N−(o−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−[1−(3−アミノスルホニル)ナフチル]アクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−[1−(3−アミノスルホニル)ナフチル]メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)アクリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリレートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、
【0021】(4)トシルアクリルアミドのように置換基があってもよいフェニルスルホニルアクリルアミド、およびトシルメタクリルアミドのような置換基があってもよいフェニルスルホニルメタクリルアミド、(5)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、(6)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置換)アクリル酸エステル、(7)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリル酸エステル、
【0022】(8)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミドおよびN−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアクリルアミドもしくはメタクリルアミド、(9)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、
【0023】(10)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類、(11)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類、(12)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン類、(13)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類、(14)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど。
【0024】本発明の中間層に使用される側鎖に燐酸基を有する高分子化合物は、燐酸基を有する構成成分が10モル%以上含まれることが好ましく、できれば20モル%以上含まれる事が好適である。燐酸基を有する構成単位は1種類あるいは2種類以上を組み合わせても良い。また、側鎖に燐酸基を有する高分子化合物に他の酸基を有する構成単位を含む場合は、燐酸基を有する構成単位と併せて20モル%以上含まれることが望ましく、できれば40モル%以上の方が好適である。酸基が20モル%以上あると、アルカリ現像時の溶解除去が促進され、燐酸基を10モル%以上含むと露光部のアルミニウム界面との密着性が向上する。更に、側鎖に燐酸基を有する高分子には、溶解性および密着性の微調整のため、他の構成成分を含有させてもよい。次に、本発明に用いられる重合体の代表的な例を以下に示す。なお、ポリマー構造の組成比はモル百分率を表す。
【0025】
【化6】


【0026】
【化7】


【0027】
【化8】


【0028】本発明において使用可能なかかる重合体は、一般には、ラジカル連鎖重合法を用いて製造することができる(“Textbook of Polymer Science" 3rd ed,(1984)F.W.Billmeyer,A Wiley-Interscience Publication参照)。本発明に係る重合体の分子量はNMR測定における末端基と側鎖官能基の積分強度比より算出される数平均分子量(Mn)が、300〜5,000であり、好ましくは500〜4,800の範囲にあり、更に好ましくは800〜4,500の範囲である。300未満では、基板との密着力が弱くなり、耐刷性の劣化が生じ、5,000を超えて高くなると、基板への密着力が強くなりすぎ、非画像部の感光層残渣を十分に除去することができなくなり、更には消去性の劣下をも引き起こし、不適である。また、この重合体中に含まれる未反応モノマー量は広範囲であってもよいが、20質量%以下であることが好ましく、また10質量%以下であることが更に好ましい。
【0029】上記範囲の分子量を有する重合体は対応する単量体を共重合する際に、重合開始剤および連鎖移動剤の添加量を調整することにより得ることができる。なお、連鎖移動剤とは、重合反応において連鎖移動反応により、反応の活性点を移動させる物質のことを示し、その移動反応の起こり易さは、連鎖移動定数Csで表される。本発明で用いられる連鎖移動剤の連鎖移動定数Cs×104(60℃)は、0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、1以上であることが特に好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合の際に一般によく用いられる過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤をそのまま利用することができる。これらの中でアゾ化合物が特に好ましい。
【0030】連鎖移動剤の具体例としては、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化合物、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、2−メチル−1−ブテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等のオレフィン類、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、チオサルチル酸、チオフェノール、チオクレゾール、ベンジルメルカプタン、フェネチルメルカプタン等の含イオウ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、チオサルチル酸、チオフェノール、チオクレゾール、ベンジルメルカプタン、フェネチルメルカプタンであり、特に好ましくは、エタンチオール、ブタンチオール、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸エチル、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、エチルジスルフィド、sec−ブチルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィドである。また、側鎖に燐酸基を有する高分子化合物としては特開平2−304441号に記載の不飽和基と燐酸基を有する高分子化合物も好適に使用される。
【0031】本発明に係る上記高分子化合物を含む中間層は、後述する任意に親水化処理を施したアルミニウム支持体上に種々の方法により塗布して設けられる。この中間層は次の方法で設けることができる。メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤あるいはこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に本発明に係る高分子化合物を溶解させた溶液をアルミニウム支持体上に塗布、乾燥して設ける塗布方法、あるいはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤あるいはこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に本発明に係る高分子化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム支持体を浸漬し、しかる後、水洗あるいは空気などによって洗浄、乾燥して中間層を設ける塗布方法を挙げることができる。
【0032】前者の方法では、上記化合物合計で0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.005〜20質量%、好ましくは0.01%〜10質量%であり、浸漬温度0℃〜70℃、好ましくは5〜60℃であり、浸漬時間は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜120秒である。
【0033】上記の溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などの無機酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸、フェニルホスホン酸などの有機ホスホン酸、安息香酸、クマル酸、リンゴ酸などの有機カルボン酸など種々有機酸性物質、ナフタレンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライドなどの有機クロライド等によりpHを調整し、pH=0〜12、より好ましくはpH=0〜6の範囲で使用することもできる。また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために紫外光や可視光、赤外光などを吸収する物質を添加することもできる。
【0034】本発明における中間層を構成する化合物の乾燥後の被覆量は、合計で1〜100mg/m2が適当であり、好ましくは2〜70mg/m2である。上記被覆量が1mg/m2よりも少ないと十分な効果が得られない。また100mg/m2よりも多くても同様である。
【0035】(感光層)本発明に用いる感光性平版印刷版の光重合性感光層を構成する光重合型感光性組成物(以下、光重合性組成物と呼ぶ)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物、光重合開始剤、高分子結合剤を必須成分とし、必要に応じ、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を併用することができる。
【0036】エチレン性不飽和結合含有化合物とは、光重性組成物が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。付加重合可能なエチレン性不飽和結合を含む化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0037】モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エ−テル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0038】メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタン等がある。
【0039】イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,5−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0040】マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物も挙げることができる。また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレシビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0041】その他の例としては、特公昭48-41708号公報中に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0042】CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (A)(ただし、RおよびR'はHあるいはCH3を示す。)
【0043】また、特開昭51-37193号、特公平2-32293号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。さらに日本接着協会誌Vo1.20, No.7, 300〜308ぺ−ジ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。なお、これらエチレン性不飽和結合含有化合物の使用量は、感光層全成分の5〜80質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で使用される。
【0044】また本発明における感光性平版印刷版の感光層に含有させる光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができる。以下に具体例を列挙するがこれらに制限されるものではない。400nm以上の可視光線、Arレーザー、半導体レーザーの第2高調波、SHG-YAGレーザーを光源とする場合にも、種々の光開始系が提案されており、例えば、米国特許第2,850,445号に記載のある種の光還元性染料、例えばローズベンガル、エオシン、エリスロジンなど、あるいは、染料と開始剤との組み合わせによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44-20189号)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45-37377号)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47-2528号、特開昭54-155292号)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48-84183号)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54-151024号)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号、特開昭58-15503号)、ビイミダジール、スチレン誘導体、チオールの系(特開昭59−140203号)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59-1504号、特開昭59-140203号、特開昭59-189340号、特開昭62-174203号、特公昭62-1641号、米国特許第4766055号)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63-258903号、特開平2-63054号など)、染料とボレート化合物の系(特開昭62-143044号、特開昭62-150242号、特開昭64-13140号、特開昭64−13141号、特開昭64-13142号、特開昭64-13143号、特開昭64-13144号、特開昭64-17048号、特開平1-229003号、特開平1-298348号、特開平1-138204号など)、ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2-179643号、特開平2-244050号)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63-221110号)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物を組み合わせた系(特開平4-221958号、特開平4-219756号)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6-295061号)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8-334897号)等を挙げることができる。
【0045】また、最近400〜410nmの波長のレーザー(バイオレットレーサー)が開発され、それに感応する450nm以下の波長に高感度を示す光開始系が開発されており、これらの光開始系も使用される。例えば、カチオン色素/ボレート系(特開平11-84647号公報)、メロシアニン色素/チタノセン系(特開2000-147763)、カルバゾール型色素/チタノセン系(特願平11-221480号)等を挙げることができる。本発明においては特にチタノセン化合物を用いた系が、感度の点で優れており好ましい。
【0046】チタノセン化合物としては、種々のものを用いることができるが、例えば、特開昭59-152396号、特開昭61-151197号各公報に記載されている各種チタノセン化合物から適宜選んで用いることができる。さらに具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6'−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等を挙げることができる。チタノセンと組み合わせる色素として好ましいものは、シアニン系、メロシアニン系、キサンテン系、ケトクマリン系、ベンゾピラン系色素である。シアニン系色素として好ましくは下記の構造を有するものか挙げられるが、特に限定されない。
【0047】
【化9】


【0048】(式中、Z1およびZ2はベンゾイミダゾールまたはナフトイミダゾール環を形成するのに必要な非金属原子群を表わし、同一でも異なっていてもよい。R11、R12、R13およびR14はそれぞれ置換されていてもよいアルキル基を表わす。X1-は対アニオンを表わし、nは0または1である。)下の表1にシアニン系色素の具体例を示す。
【0049】
【表1】


【0050】メロシアニン系色素として好ましくは下記の構造を有するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0051】
【化10】


【0052】(式中、Z3、Z4はそれぞれシアニン色素で通常用いられる5員環及び/又は6員環の含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表わす。R15、R16はそれぞれアルキル基を表わす。Q1とQ2は組み合わせることにより、4−チアゾリジノン環、5−チアゾリジノン環、4−イミダゾリジノン環、4−オキサゾリジノン環、5−オキサゾリジノン環、5−イミダゾリジノン環または4'−ジチオラノン環を形成するのに必要な原子群を表わす。L1、L2、L3、L4及びL5はそれぞれメチン基を表わす。mは1又は2を表わす。i、hはそれぞれ0又は1を表わす。lは1又は2を表わす。j、kはそれぞれ0、1、2又は3を表わす。X2-は対アニオンを表わす。)
【0053】
【化11】


【0054】(式中R17およびR18は各々独立して水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基またはアラルキル基を表わす。Z6は酸素原子、イオウ原子、セレン原子、テルル原子、アルキルないしはアリール置換された窒素原子、またはジアルキル置換された炭素原子を表わす。Z5は含窒素ヘテロ五員環を形成するのに必要な非金属原子群を表わす。B1は置換フェニル基、無置換ないしは置換された多核芳香環、または無置換ないしは置換されたヘテロ芳香環を表わす。B2は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、置換アミノ基、アシル基、またはアルコキシカルボニル基を表わし、またB1と互いに結合して環を形成していてもよい。)以下にメロシアニン系色素の具体例を示す。
【0055】
【化12】


【0056】
【化13】


【0057】キサンテン系色素としては、ローダミンB、ローダミン6G、エチルエオシン、アルコール可溶性エオシン、ピロニンY、ピロニンB等を挙げることができる。ケトクマリン系色素として好ましくは下記の構造を有するものが挙げられるが、特に限定されない
【0058】
【化14】


【0059】(式中、R19、R20およびR21はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表わし、R21およびR23はそれぞれアルキル基を表わすが、少なくとも一方が炭素数4〜16個のアルキル基を表わし、R24は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、シアノ基、カルボキシル基、もしくはそのエステル誘導体またはアミド誘導体の基を表わし; R25は炭素原子の総数が3〜17個の複素環残基−CO-R26を表わし、R20とR21、R22とR23は互いに結合して環を形成してもよい。ここでR26は下に示す基である。)
【0060】
【化15】


【0061】以下にケトクマリン系色素の具体例を示す。
【0062】
【化16】


【0063】ベンゾピラン系色素として好ましくは下記の構造を有するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0064】
【化17】


【0065】(式中、R27〜R29は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。また、R27〜R29はそれらが各々結合できる炭素原子と共に非金属原子から成る環を形成していても良い。R31は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ芳香族基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基またはアルケニル基を表す。R29は、R31で表される基または−Z9-R31であり、Z9はカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基またはアリーレンジカルボニル基を表す。またR31およびR32は共に非金属原子から成る環を形成しても良い。Z7はO、S、NHまたは置換基を有する窒素原子を表す。Z8は、基
【0066】
【化18】


【0067】であり、G1、G2は同一でも異なっていても良く、水素原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはフルオロスルホニル基を表す。但しG1とG2は同時に水素原子となることはない。またG1およびG2は炭素原子と共に非金属原子から成る環を形成していても良い。)以下にベンゾピラン系色素の具体例を示す。
【0068】
【化19】


【0069】更に上記光重合開始剤に必要に応じ、2−メルカプトベンスチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物を加えることにより更に光開始能力が高められることが知られている。これらの光重合開始剤(系)の使用量はエチレン性不飽和結合含有化合物100質量部に対し、0.05〜100質量部、好ましくは0.1〜70質量部、更に好ましくは0.2〜50質量部の範囲で用いられる。
【0070】本発明における感光性平版印刷版の感光層に用いられる高分子結合剤は、該組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、アルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される、該有機高分子重合体は、例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。この様な有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59-44615号、特公昭54-34327号、特公昭58-12577号、特公昭54-25957号、特開昭54-92723号、特開昭59-53836号、特開昭59-71048号の各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。
【0071】また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。この他に水溶性有機高分子重合体として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。また特公平7−120040号、特公平7-120041号、特公平7-120042号、特公平8-12424号、特開昭63-287944号、特開昭63-287947号、特開平1-271741号、特開平11-352691号各公報に記載のポリウレタン樹脂も本発明の用途には有用である。
【0072】これら有機高分子重合体は側鎖にラジカル反応性基を導入することにより硬化皮膜の強度を向上させることができる。付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が、又光照射によりラジカルになり得る官能基としてはメルカプト基、チオール基、ハロゲン原子、トリアジン構造、オニウム塩構造等が、又極性基としてカルボキシル基、イミド基等が挙げられる。上記付加重合反応し得る官能基としては、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基などエチレン性不飽和結合基が特に好ましいが、又アミノ基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、燐酸基、カルバモイル基、イソシアネート基、ウレイド基、ウレイレン基、スルホン酸基、アンモニオ基から選ばれる官能基も有用である。
【0073】組成物の現像性を維持するためには、本発明における高分子結合剤は適当な分子量、酸価を有することが好ましく、重量平均分子量で5000〜30万、酸価20〜200の高分子重合体が有効に使用される。これらの高分子結合剤は全組成物中に任意な量を混和させることができる。しかし、90質量%を超える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。また光重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物と高分子結合剤は、重量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2であり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
【0074】また、本発明においては以上の基本成分の他に感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、全組成物の重量に対して約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体等の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0075】更に感光層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。染料および顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約20質量%が好ましい。加えて、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全組成物の10質量%以下が好ましい。
【0076】本発明における感光性平版印刷版の感光性組成物を前述の中間層上に塗布する際には種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライト、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート−3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は1〜50質量%が適当である。
【0077】本発明における感光性平版印刷版の感光層における光重合性組成物には、塗布面質を向上するために界面活性剤を添加することができる。その被覆量は乾燥後の重量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.3〜5g/m2である。更に好ましくは0.5〜3g/m2である。
【0078】また、通常、前記感光層の上には、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性の保護層が設けられる。酸素遮断性保護層に含まれる水溶性ビニル重合体としては、ポリビニルアルコール、およびその部分エステル、エ−テル、およびアセタール、またはそれらに必要な水溶性を有せしめるような実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するその共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールとしては、71〜100%加水分解され、重合度が300〜2400の範囲のものが挙げられる。具体的には株式会社クラレ製PVA-105, PVA-110, PVA-117, PVA-117H, PVA-120, PVA-124, PVA-124H, PVA-CS, PVA-CST, PVA-HC, PVA-203, PVA-204, PVA-205, PVA-210, PVA-217, PVA-220, PVA-224, PVA-217EE, PVA-220, PVA-224,PVA-217EE, PVA-217E, PVA-220E, PVA-224E, PVA-405, PVA-420, PVA-613, L-8等が挙げられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体が挙げられる。その他有用な重合体としてはポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアラビアゴムが挙げられ、これらは単独または併用して用いても良い。
【0079】本発明における感光性平版印刷版において酸素遮断性保護層を塗布する際に用いる溶媒としては、純水が好ましいが、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類を純水と混合しても良い。そして塗布溶液中の固形分の濃度は1〜20質量%が適当である。本発明における上記酸素遮断性保護層には、さらに塗布性を向上させるための界面活性剤、皮膜の物性を改良するための水溶性の可塑剤等の公知の添加剤を加えても良い。水溶性の可塑剤としては、たとえばプロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等がある。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーなどを添加しても良い。その被服量は乾燥後の重量で約0.1g/m2〜約15g/m2の範囲が適当である。より好ましくは1.0g/m2〜約5.0g/m2である。
【0080】(アルミニウム支持体)次に本発明における感光性平版印刷版のアルミニウム支持体について説明する。本発明にて用いられるアルミニウム支持体は、寸度的に安定なアルミニウムまたはその合金(例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルとの合金)、またはアルミニウム、アルミニウム合金がラミネートもしく蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙を意味し、通常その厚さは0.05mm〜1mm程度である、また特開昭48-18327号公報に記載の複合シートも使用することができる。
【0081】本発明におけるアルミニウム支持体は表面粗さRaは0.2〜0.55μmであることが好ましい。このような表面粗さを得るために、後述の基板表面処理が施される。ここでアルミニウム支持体の表面粗さとはアルミニウム圧延方向に対し直角方向の中心線平均粗さ(算術平均粗さ)(Ra)をいい、蝕針計で測定した粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、それに直交する軸をY軸として、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、次の式で与えられた値をμm単位で表したものである。(Lの決定及び平均粗さの計測はJIS B 0601に従う。)
【0082】
【数1】


【0083】(砂目立て処理)砂目立て処理方法は、特開昭56-28893号公報に開示されているような機械的砂目立て、化学的エッチング、電解グレインなどがある。さらに塩酸または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法のような機械的砂目立て法を用いることができ、上記砂目立て方法を単独あるいは組み合わせて用いることもできる。その中でも、塩酸または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化学的方法が好ましく、適する電流密度は100C/dm2〜400C/dm2の範囲である。さらに具体的には、0.1〜50%の塩酸または硝酸を含む電解液中、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で電解を行うことが好ましい。
【0084】このように砂目立て処理したアルミニウム支持体は、酸またはアルカリにより化学的にエッチングされる。酸をエッチング剤として用いる場合は、微細構造を破壊するのに時間がかかり、工業的に本発明を適用するに際しては不利であるが、アルカリをエッチング剤として用いることにより改善できる。本発明において好適に用いられるアルカリ剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を用い、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃であり、Alの溶解量が5〜20g/m3となるような条件が好ましい。
【0085】エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53-12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48-28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。
【0086】(陽極酸化処理)以上のようにして処理されたアルミニウム支持体は、さらに陽極酸化処理が施される事が好ましい。陽極酸化処理はこの分野で従来より行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等あるいはこれらの二種以上を組み合わせて水溶液または非水溶液中でアルミニウムに直流または交流を流すとアルミニウム支持体表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液の濃度が1〜80%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60アンペア/dm2、電圧1〜100V、電解時間10〜100秒の範囲が適当である。
【0087】これらの陽極酸化処理のうちでも特に英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法及び米国特許第3,511,661号明細書に記載されているリン酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。本発明においては、陽極酸化皮膜は1〜10g/m2であることが好ましく、1g/m2以下であると版に傷が入りやすく、10g/m2以上は製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利である。好ましくは、1.5〜7g/m2である。更に好ましくは、2〜5g/m2である。
【0088】更に、本発明においては、砂目立て処理及び陽極酸化後、アルミニウム支持体に封孔処理を施してもかまわない。かかる封孔処理は、熱水及び無機塩または有機塩を含む熱水溶液への基板の浸漬ならびに水蒸気浴などによって行われる。また本発明におけるアルミニウム支持体にはアルカリ金属珪酸塩によるシリケート処理、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理などの表面処理がなされてもかまわない。
【0089】上記の如く表面処理を施されたアルミニウム支持体上に、上述した中間層および光重合性組成物からなる感光層を順次形成することで、本発明における感光性平版印刷版を作製する
【0090】次に本発明の平版印刷版の製版方法について詳細に説明する。上述した感光性平版印刷版は画像露光した後、無機アルカリ塩とポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を含みかつpHが11.0〜12.7、好ましくは11.5〜12.5である現像液で現像される。以下に、本発明の製版方法に用いられる新規な現像液について説明する。
【0091】(現像液)本発明の平版印刷版の製版方法に使用される現像液は、無機アルカリ塩とポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を含有し、pHが11.0〜12.5である。
【0092】無機アルカリ塩としては適宜使用可能であるが、例えば、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、同リチウム、珪酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、同リチウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、及び同アンモニウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0093】珪酸塩を使用する場合には、珪酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属を表す。)との混合比率及び濃度の調製により、現像性を容易に調節することが出来る。前記アルカリ水溶液の中でも前記酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものが好ましい。前記SiO2/M2Oが0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、平版印刷版用原版の支持体として汎用のアルミニウム板などをエッチングしてしまうといった弊害を生ずることがあり、4.0を越えると、現像性が低下することがある。また、現像液中のSiO2濃度は現像液の総重量に対し、1〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、4〜7質量%が最も好ましい。この濃度が1質量%を未満であると現像性、処理能力が低下することがあり、10質量%を越えると沈殿や結晶を生成し易くなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化し易くなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0094】また、アルカリ濃度の微少な調整、感光層の溶解性の補助の目的で、補足的に有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらのアルカリ剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0095】本発明で使用される現像液には、ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤を含有することが必須であり、この界面活性剤添加により、未露光部の感光層の溶解促進、露光部への現像液の浸透性の低減が可能となる。ポリオキシアルキレンエーテル基を含有する界面活性剤としては、下記一般式(I)の構造を有する物が好適に使用される。
【0096】R40−O−(R41-O)pH (I)式中、R40は、置換基を有しても良い炭素数3〜15のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、又は置換基を有しても良い炭素数4〜15の複素芳香族環基(尚、置換基としては炭素数1〜20のアルキル基、Br、Cl、I等のハロゲン原子、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、炭素数7〜17のアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシ−カルボニル基、炭素数2〜15のアシル基が挙げられる。)を示し、R41は、置換基を有しても良い炭素数1〜100のアルキレン基(尚、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基が挙げられる。)を示し、pは1〜100の整数を表す。
【0097】上記式(I)の定義において、「芳香族炭化水素基」の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アンスリル基、ビフェニル基、フェナンスリル基等が挙げられ、また「複素芳香族環基」の具体例としては、フリル基、チオニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラニル基、ピリジニル基、アクリジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオニル基、ベンゾピラニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。
【0098】また式(I)の(R41−O)pの部分は、上記範囲であれば、2種又は3種の基であっても良い。具体的にはエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソプロピルオキシ基、エチレンオキシ基とブチレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソブチレン基等の組み合わせのランダム又はブロック状に連なったもの等が挙げられる。本発明において、ポリオキシアルキレンエーテル基を有する界面活性剤は単独又は複合系で使用され、現像液中1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%添加することが効果的である。添加量が少ないと現像性の低下がみられ、逆に多すぎると現像のダメージが強くなり、印刷版の耐刷性を低下させてしまう。
【0099】また上記式(I)で表されるポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類が挙げられる。
【0100】さらに以下に記す、その他の界面活性剤を加えてもよい。その他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤; ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤; ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤等が使用可能であるが、特に好ましいのはアルキルナフタレンスルホン酸塩類等のアニオン界面活性剤である。
【0101】これら界面活性剤は単独、もしくは組み合わせて使用することができる。また、これら界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で0.1〜20質量%の範囲が好適に使用される。
【0102】本発明で使用される現像液のpHは、11.0〜12.7、好ましくは11.5〜12.5である。11.0を下回ると画像形成ができなくなり、逆に12.7を超えると過現像になったり、露光部の現像でのダメージが強くなるという問題が生じるからである。
【0103】また、本発明で使用される現像液の導電率は、3〜30 mS/cmである事が好ましい。下回ると、通常、アルミニウム板支持体表面の感光性組成物の溶出が困難となり、印刷で汚れを伴ってしまい、逆に範囲を超えると、塩濃度が高いため、感光層の溶出速度が極端に遅くなり、未露光部に残膜が生じることがあるからである。特に好ましい導電率は、5〜20 mS/cmの範囲である。
【0104】(露光及び現像処理)本発明における感光性平版印刷版を、例えば、カーボンアーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、ヘリウムガドミニウムレーザー、アルゴンイオンレーザー、FD・YAGレーザー、ヘリウムネオンレーザー、半導体レーザー(350nm〜600nm)等の従来公知の活性光線で画像露光した後、現像処理することにより、アルミニウム板支持体表面に画像を形成することができる。画像露光後、現像までの間に、光重合性感光層の硬化率を高める目的で50℃〜150℃の温度で1秒〜5分の時間の加熱プロセスを設けることを行っても良い。
【0105】また、本発明における感光性平版印刷版の感光層の上には、前述したように、通常、、素遮断性を有するオーバーコート層が設けてあり、本発明における現像液を用いて、オーバーコート層の除去と感光層未露光部の除去を同時に行う方法、または、水、温水でオーバーコート層を先に除外し、その後未露光部の感光層を現像で除去する方法が知られている、これらの水または温水には特開平10-10754号公報に記載の防腐剤等、特開平8-278636号公報に記載の有機溶剤等を含有させることができる。
【0106】本発明における感光性平版印刷版の前記現像液による現像は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した感光性平版印刷版を現像液に浸漬してブラシで擦る等により行う。
【0107】さらに自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させても良い。このようにして現像処理された感光性平版印刷版は特開昭54-8002号、同55-115045号、同59-58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明において感光性平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。上記のような処理により得られた印刷版は特開2000-89478号公報に記載の方法による後露光処理やバーニングなどの加熱処理により、耐刷性を向上させることができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0108】
【実施例】以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明はこれらによって限定されるものではない。〔実施例1〕厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのパミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後、20%HNO3で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.45μm(Ra表示)であった(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dm2において50秒間陽極酸化したところ厚さが2.7g/m2であった。
【0109】このように処理されたアルミニウム板上に、No.5で表されるポリマー(分子量Mn=18,000)を、水/メタノール=5g/95gに溶解した液を塗布し、80℃、30秒間乾燥した。この中間層の厚みは10mg/m2であった。この上に、下記組成の高感度光重合性組成物P-1を乾燥塗布重量が1.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光層を形成した。
【0110】
【化20】


【0111】
(光重合性組成物P-1)
エチレン性不飽和結合含有化合物(A1) 1.5 質量部線状有機高分子重合体(高分子結合剤)(B1) 2.0 質量部増感剤(C1) 0.15 質量部光重合開始剤(D1) 0.2 質量部ε−フタロシアニン(F1)分散物 0.02 質量部フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF177 0.03 質量部(大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 9.0 質量部プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.5 質量部トルエン 11.0 質量部
【0112】
【化21】


【0113】この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)の3質量%の水溶液を乾燥塗布重量が2.5g/m2となるように塗布し、120℃で3分間乾燥させ、感光性平版印刷版を得た。
【0114】印刷版の経時による地汚れの程度を把握するために、強制経時条件下(50℃、80%RH)に5日間放置した版を作製した。強制経時前及び後の感光性平版印刷版をFD・YAGレーザー(CSI社製プレートジェット4)で100μJ/cm2の露光量で、4000dpiにて175線/インチの条件でベタ画像と1〜99%の網点画像(1%刻み)を走査露光した後、現像液1及びフィニッシングガム液FP−2W(富士写真フイルム製)を仕込んだ自動現像機(富士写真フイルム製LP−850P2)で標準処理を行った。プレヒートの条件は版面到達温度が100℃、現像液温は30℃、現像液への浸漬時間は約15秒であった。現像液1は下記組成よりなり、pHは25℃で11.5、導電率は5mS/cmであった。
【0115】
(現像液1の組成)水酸化カリウム 0.15 gポリオキシエチレンフェニルエーテル(n=13) 5.0 gキレスト400(キレート剤) 0.1 g水 94.75 g
【0116】〔実施例2〜7〕実施例1の中間層を下記に示した中間層用共重合体にそれぞれ変更し、それ以外は全て実施例1と同じ方法で強制経時前後の平版印刷版を製版した。
【0117】
【表2】


【0118】〔実施例8〜10〕実施例1の中間層の乾燥塗布重量を5mg/m2、15mg/m2、20mg/m2とした以外は全て実施例1と同じ方法で平版印刷版を作成した。
〔実施例11〜15〕実施例1の光重合性組成物P-1中の線状有機高分子重合体をB1から下記B2〜B6に変更したものをそれぞれP-2〜P-6とし、それ以外は全て実施例1と同じ方法で平版印刷版を製版した(実施例11〜15)。
B2(P-2):アリルメタクリレート/メタクリル酸(70/30モル%)共重合体、分子量5万。
B3(P-3):メチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸(60/20/20モル%)共重合体、分子量10万。
B4(P-4):メチルメタクリレート/イソプロピルアクリルアミド/メタクリル酸(65/15/20モル%)共重合体、分子量7万。
【化22】


【0119】〔実施例16〕実施例15の光重合性組成物のエチレン性不飽和結合含有化合物をA1から下記構造A2に変更したものをP-7とし、それ以外は全て実施例15と同じ方法で平版印刷版を製版した(実施例16)。
【0120】
【化23】


【0121】〔実施例17〜20〕実施例1の現像液を表3で示した現像液に代えた他は、全て実施例1と同じ方法で平版印刷版を製版した。
【0122】
【表3】


【0123】〔実施例21〕厚さ0.24mmのJIS A1050アルミニウム板の表面をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用い砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウム水溶液に70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後、20%硝酸水溶液で中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液で260クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.55μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%の硫酸水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、20%硫酸水溶液中で電流密度14A/dm2、陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当になるように陽極酸化し、水洗して基板[A]を作成した。
【0124】基板[A]を珪酸ナトリウム0.15質量%水溶液で22℃で10秒間処理し、水洗して基板[B]を作成した。また、基板[A]を珪酸ナトリウム2.5質量%水溶液で30℃で10秒間処理し、水洗して基板[C]を作成した。更に、基板[A]を珪酸ナトリウム2.5質量%水溶液で50℃で5秒間処理し、水洗して基板[D]を作成した。このように処理されたアルミニウム版に、実施例1と同様の方法で中間層、感光層、酸素遮断層を塗布乾燥し、感光性平版印刷版を経た。その後の処理も実施例1と同様に行い、強制経時前後の平版印刷版を作成した。
【0125】〔比較例1〕実施例1の中間層を設けなかった以外は実施例1と同様に感光性平版印刷版を作製し、実施例1と同じ方法で平版印刷版を製版した。
【0126】〔比較例2〕実施例1の現像液1に代えて、両性界面活性剤及びアルカリ金属珪酸塩(SiO2/K2O)を含む現像液6として富士写真フイルム(株)製LP-D現像液を水で10倍に希釈した溶液と、前記比較例1で用いた感光性平版印刷版を用いた以外は、実施例1と同様の方法で印刷版を作成した。なお、現像液6にはポリオキシアルキレンエーテル基含有ノニオン界面活性剤は含まれていない。また、現像液のpHは12.8であり、導電率は32mS/cmであった。上記の実施例1〜21、比較例1〜2の製版方法で得られた平版印刷版について、耐刷性、印刷汚れ性について評価した。耐刷性は、マンローランド社製R201型印刷機で、大日本インキ社製GEOS G墨(N)を使用して印刷し、3%の網点が版飛びを起こした印刷枚数を評価した。印刷汚れ性は三菱重工製ダイヤIF2型印刷機で、大日本インキ社製GEOS G紅(S)を使用して印刷し、非画像部のインキ汚れを目視で評価した。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】


【0128】表4から明らかなように、本発明に係る各実施例の平版印刷版はいずれも満足すべき結果を得たが、中間層を設けずに作製した感光性平版印刷版では、強制経時前においても地汚れが見られ、さらに強制経時後の地汚れは激しかった(比較例1)。また比較例1の平版印刷版の耐刷性はいずれにおいても低かった。また、比較例1において作製した感光性平版印刷版を、ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を含有しない現像液で処理した場合(比較例2)には、強制経時前後いずれにおいても印刷時に汚れが見られ、また耐刷性も低かった。以上のように、本願発明の感光性平版印刷版及び製版方法を用いると、強制経時後も地汚れが無く、耐刷性も高い平版印刷版を得ることができた。
【0129】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の平版印刷版の製版方法は、アルミニウム支持体上に、中間層及び光重合性感光層を順に積層してなる感光性平版印刷版を画像露光し、現像液で現像することを含む平版印刷版の製版方法であって、該中間層が側鎖に燐酸基を有する高分子化合物を含み、及び該現像液が無機アルカリ塩、及びポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を含みかつpHが11.0〜12.7である、上記平版印刷版の製版方法であるが、この方法により、画像部と非画像部のコントラストに優れ、印刷汚れが無く、経時安定性に優れ、かつ耐刷性の優れた平版印刷版の作製が可能である。また現像液のpHが比較的低いため、安全上好ましく、現像廃液の環境への影響も改善できる効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウム支持体上に中間層及び光重合性感光層を順に積層してなる感光性平版印刷版を画像露光し、現像液で現像することを含む平版印刷版の製版方法であって、該中間層が側鎖に燐酸基を有する高分子化合物を含み、並びに該現像液が無機アルカリ塩、及びポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を含みかつpHが11.0〜12.7である、上記平版印刷版の製版方法。

【公開番号】特開2003−43693(P2003−43693A)
【公開日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−235810(P2001−235810)
【出願日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】