説明

平版印刷版の製造方法

(a)平版用基板上に画像領域と非画像領域とを含む平版印刷版を、以下に規定する一般式(I)の少なくとも1種のホスホノ置換型シロキサンを含む溶液と接触させ、そして(b)乾燥させることを含んで成る画像形成された平版印刷版の後処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の製造方法、具体的にはホスホノ置換型シロキサンを用いた現像された平版印刷版の処理方法に関する。本発明はさらに、この方法に従って製造された平版印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷の技術分野は、油と水との不混和性に基づく。油性材料又は印刷インクは、好ましくは画像領域によって受容され、そして水又はファウンテンは、好ましくは非画像領域によって受容される。適切に製造された表面が水で湿潤され、そして印刷インクが着けられると、背景又は非画像領域が水を受容し、印刷インクを弾くのに対して、画像領域は印刷インクを受容し、水を弾く。次いで画像領域内の印刷インクは、紙や布地などのような材料の被画像形成面に移される。しかし、一般に、印刷インクは先ず、「ブランケット」と呼ばれる中間材料に移され、次いで、ブランケットは、材料の被画像形成面上に印刷インクを移す。この技術はオフセット平版印刷と呼ばれる。
【0003】
普通、平版印刷前駆体(ここでの「印刷版前駆体」という用語は、露光及び現像の前の塗布された印刷版を意味する)は、通常アルミニウムを基材とする基板上に適用された輻射線感受性塗膜を含む。塗膜が輻射線に対して反応して露光された部分が可溶性になることにより、この部分が現像プロセス中に除去される場合、印刷版は「ポジ型」と呼ばれる。他方において、塗膜の露光された部分が輻射線によって硬化される場合には、印刷版は「ネガ型」と呼ばれる。両方の事例において、残った画像領域は印刷インクを受容し、すなわち親油性であり、非画像領域(背景)は水を受容し、すなわち親水性である。画像領域と非画像領域との区別化は露光中に行われる。普通、水性強アルカリ性現像剤を使用することにより、塗膜のより可溶性の部分を除去する。
【0004】
普通、輻射線感受性層が適用される前に、基板、具体的には酸化アルミニウムを有するアルミニウム基板に、親水性保護層(「中間層」とも呼ばれる)が設けられる。この親水性層は例えば、平版印刷版の(非印刷)背景領域の水受容性を改善するか、又はこれらの領域における印刷インクの反発性を改善する。好適な保護層はまた、現像中に輻射線感受性層の可溶性部分が容易に、そして残留物なしに基板から除去されて、印刷中にきれいな背景領域が得られるようになることを保証する。このような残留物なしの除去が行われないと、トーニングと呼ばれるものが印刷中に発生する。すなわち背景が印刷インクを受容するようになる。中間層はまた、強アルカリ性現像剤(pH値>11.5)による現像中の腐食に対して、そして、例えば輻射線感受性層内に使用される色素の永久的な吸着(「ステイン形成」と呼ばれる)に対して、酸化アルミニウム層を保護するようになっている。
【0005】
独国特許出願公開第25 327 69号明細書には、ケイ酸ナトリウム中間層を有するネガ型ジアゾ樹脂を基剤とする平版印刷版前駆体が記載されている。この中間層に対する画像領域の付着力は極めて良好であるものの、これらの印刷版の感受性は、高い温度及び湿度における貯蔵によって著しい影響を及ぼされることが判った。さらに、中間層適用プロセスは問題を引き起こし、例えば、装置部分上でアルカリ性ケイ酸ナトリウムが乾燥すると、除去するのが難しい残留物をもたらす。
【0006】
平版印刷版前駆体内の中間層として、ポリビニルホスホン酸又はその塩、並びにビニルホスホン酸とアクリルモノマーとのコポリマーを使用することが、例えば独国第11 34 093号明細書、米国特許第4,153,461号明細書、及び欧州特許第0 537 633号明細書に示唆されている。しかし、このような層は、酸化アルミニウムのための最適な保護を可能にしないので、現像剤のスラッジが形成されてしまい、さらに、このような印刷版は、印刷機が再始動された後にトーニングを引き起こす傾向がある。
【0007】
きれいな印刷画像を得るためには、画像領域(すなわち像様に残った塗膜)が印刷インクを良好に受容する一方、非画像領域(すなわち像様露光された基板、例えばアルミニウム基板)が、印刷インクを受容してはならないようになっていることが必要である。像様露光された基板、例えばアルミニウム基板を指紋、酸化アルミニウムの形成、及び腐食に対して、また機械的損傷、例えば印刷版が印刷機上に組み付けられるときの引掻き傷に対して保護するために、すなわち、非画像領域の親水性を維持し、そして可能な場合にはこれを改善するために、現像された印刷版に、通常、「ゴム引き」処理(「仕上げ」とも呼ばれる)が施される。貯蔵前、又は印刷機の長い休止時間前にゴム引き処理を行うことにより、非画像領域が親水性を維持することが保証され、ひいてはトーニングが防止される。次いで、印刷中には、ゴム引き剤は、画像領域がインクを即座に受容できるように印刷プロセス中に使用されるファウンテン溶液によって素早く除去することができなければならない。ゴム引き処理は以前から知られており、しばしばアラビアゴムを基剤とする(例えば独国特許出願公開第29 26 645号明細書)。
【0008】
米国特許第4,880,555号明細書に記載された、平版印刷版のための「仕上剤」は、酵素加水分解によって調製されたマルトデキストリン、ポリオール、炭化水素、長鎖アルコールとアミノ化アルコールスルフェートとの混合物、置換型フェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール及びエタノールアミンを含む。
【0009】
米国特許第4,033,919号明細書に記載されたゴム引き水溶液は、アクリルアミドから誘導されたユニットと、カルボキシ基を有する1〜25 wt%のユニットとを含む。この溶液はさらに、酸性材料、例えばホスホン酸、クエン酸、及び酒石酸を含む。米国特許第4,143,021号明細書及び独国特許出願公開第25 045 94号明細書にやはり記載されたゴム引き水溶液は、ポリアクリルアミドを基剤とするポリマー又はコポリマーを含む。
【0010】
欧州特許出願公開第0 985 546号明細書には、下記式:
【0011】
【化1】

【0012】
(上記式中、a及びbは独立して整数1〜50を表し、そしてRは炭素原子数8〜22のアルキル基である)の化合物を、平版印刷版用のゴム引き溶液中又はファウンテン溶液中に使用することが示唆されている。
【0013】
欧州特許出願公開第1 260 866号明細書には、平版印刷版から現像するために使用された現像剤をすすぎ、そして同時にゴム引き・プロセスを実施することが可能であることが説明されている。これを目的として、印刷版は、(a)1種以上の被膜形成性水溶性ポリマーと、(b)1種以上のホスホン酸誘導体
【0014】
【化2】

【0015】
とを含むすすぎ水と接触させられる。
【0016】
欧州特許出願公開第0 943 967号明細書及び独国特許出願公開第29 25 363号明細書には、エマルジョン・タイプのゴム引き溶液が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、平版印刷版を製造し、そして(現像された)平版印刷版を後処理する方法であって、これにより、基板に対する画像領域の付着力を高め、結果として、印刷中のより高い感度及びより低いドットゲインをもたらし、しかもこの場合、印刷インクと水との微妙な釣り合い状態を妨げることがなく、また、印刷機の再始動時にトーニングのような問題を引き起こすこともない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、像様露光及び現像後に、一般式(I):
【0019】
【化3】

【0020】
(上記式中、
R1は、水素原子、ヒドロキシ基、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C1-C20アルコキシ、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、アシルオキシ基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R2及びR3は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
R4は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R5は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
Zは、-(CR6R7)x-又はアリーレン、又はこれらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせを表し、
R6及びR7は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C6アルキル、線状又は分枝状C2-C6アルケニル、線状又は分枝状C2-C6アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
nは、平均値であって、1〜200の値を有し、そして
xは、1〜100の整数であり、
Mは、電荷等化に必要な対イオンを表し、そして一価、二価又は多価カチオンから選択され、そして
mは、電荷等化に必要なカチオンの数である)
のホスホノ置換型シロキサンを含む溶液を適用する方法によって達成される。
【0021】
この目的はまた、平版用基板上に親油性画像領域が像様に適用され、そして続いて上記溶液が適用される別の方法によっても達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明において使用される「印刷版前駆体」という用語は、画像が形成されていない版(すなわち、像様露光及び現像が施されていない版)を意味し、この前駆体から、像様露光及び任意選択的に現像を施すことにより印刷版が製造される。本発明において使用される「印刷版」という用語は、印刷版前駆体から製造された画像形成された版(「印刷フォーム」とも呼ばれる)を意味する。
【0023】
平版印刷版の本発明による後処理のために、一般式(I)
【0024】
【化4】

【0025】
(上記式中、
R1は、水素原子、ヒドロキシ基、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C1-C20アルコキシ、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、アシルオキシ基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R2及びR3は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
R4は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R5は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
Zは、-(CR6R7)x-又はアリーレン、又はこれらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせを表し、
R6及びR7は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C6アルキル、線状又は分枝状C2-C6アルケニル、線状又は分枝状C2-C6アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
nは、平均値であって、1〜200(好ましくは1〜100)の値を有し、そして
xは、1〜100(好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜10)の整数であり、
Mは、電荷等化に必要な対イオンを表し、そして一価、二価又は多価カチオンから選択され、そして
mは、電荷等化に必要なカチオンの数である)
のホスホノ置換型シロキサンが使用される。
【0026】
好ましくは、ホスホノ置換型シロキサンは一般式(II)を有する:
【0027】
【化5】

【0028】
(上記式中、nは平均値であって、1〜100の値を有する。)
【0029】
pH値に応じて、式(I)又は(II)のシロキサンをN原子においてプロトン化することもできる。このように、本出願において式(I)又は(II)に言及するときにはいつでも、プロトン化種も含まれるものとする。
【0030】
プロトン並びにアルカリ又はアルカリ土類金属イオン、アンモニウム・イオン又はホスホニウム・イオンを例えば、対イオンMとして使用することができる。プロトンの場合には、化合物は遊離酸として存在する。酸性媒質(pH範囲1〜3)中で、遊離酸は、酸付加塩、例えば塩酸塩、硫酸塩などとして存在することもできる。等電点では、ベタイン型構造が存在することが可能である。
【0031】
対イオンMが遷移金属カチオンである場合には、錯体を形成することができ、すなわち、実際の塩構造はない。このような錯体も本発明に含まれる。
【0032】
本発明のホスホノ置換型シロキサンの1調製方法は、好適なアミノシロキサンと、ホルムアルデヒド又はその他の好適なカルボニル化合物及び亜リン酸とを反応させることである。亜リン酸は例えば、好適なハロゲン化リン化合物を制御された状態でその場で加水分解することにより、例えばPCl3から調製することができる。
【0033】
このような反応は、下記反応スキーム:
R'-NH2 + H3PO3 + HCHO → R'-NH-CH2-PO32-
又は
【0034】
【化6】

【0035】
(上記式中R'は1つ又は2つ以上のシロキサン基を担持する)
に従って行われる(phosphorous chemistry, 8(1977), 第527-529頁のTopicsも参照)。
【0036】
平版用基板は寸法安定的なプレート状又はフォイル状の材料である。好ましくは、印刷物のための基板として既に使用されている材料が、寸法安定性を有するプレート状又はフォイル状材料として使用される。このような基板の例は、紙、プラスチック材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)で塗布された紙、金属プレート又はフォイル、例えばアルミニウム(アルミニウム合金を含む)、亜鉛及び銅プレート、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリビニルアセテートから形成されたプラスチック・フィルム、及び紙又はプラスチック・フィルムと上述の金属のうちの1つとから形成されたラミネート材料、又は蒸着により金属化された紙/プラスチック・フィルムを含む。これらの基板の中では、アルミニウム・プレート又はフォイルが特に好ましい。それというのは、アルミニウム・プレート又はフォイルは卓越した寸法安定度を示し、低廉であるからである。さらに、複合フィルムを使用することもでき、この複合フィルムの場合、アルミニウム・フォイルがプラスチック・フィルム、例えばポリエチレンテレフタレート・フィルム、又は紙上に貼り合わされているか、或いは、プラスチック・フィルム上に、蒸着によってアルミニウムが堆積されている。
【0037】
金属基板、具体的にはアルミニウム基板には、研磨処理(例えば乾燥状態でのブラッシング、又は研磨懸濁液を用いたブラッシング、又は例えば塩酸又はHNO3を用いた電気化学的な研磨による)、及び陽極処理(硫酸又はリン酸中)から選択された少なくとも1つの処理が施されるのが好ましい。
【0038】
基板には、ポリビニルホスホン酸又はケイ酸塩から成る中間層を、基板の1つ又は2つの側に適用することにより、親水性化層の適用を施すこともできる。本発明の場合には、中間層が存在せず、しかも陽極層の酸化物孔が実質的に密封されないことが好ましい。
上述の基板前処理の詳細は、当業者に知られている。
【0039】
好ましくは厚さ0.1〜0.7 mm、より好ましくは0.15〜0.5 mmのアルミニウム・フォイルが、特に好ましい基板である。フォイルが研磨処理(好ましくは電気化学的処理)され、次いで平均粗さ0.2〜1 μm、特に好ましくは0.3〜0.8 μmを示すことが好ましい。
【0040】
特に好ましい実施態様によれば、研磨されたアルミニウム・フォイルはさらに陽極処理される。結果として得られる酸化アルミニウムの層重量は、好ましくは1.5 〜5 g/m2、特に好ましくは2〜4 g/m2である。
【0041】
本発明による平版印刷版の後処理は、平版印刷版の全てのタイプ、すなわちポジ型前駆体から製造された印刷版、及びネガ型前駆体から製造された印刷版の両方に適しており、印刷版前駆体は、UV/VIS感受性(すなわち波長範囲320〜750 nmから選択された輻射線に対して感受性を有する)、又はIR感受性(すなわち、波長範囲750 nm超〜1,600 nm、好ましくは750 nm超〜1,350 nmから選択された輻射線に対して感受性を有する)、又は感熱性であってよい。前駆体は、単層前駆体又は多層構造を有する前駆体であってよい。
【0042】
輻射線感受性塗膜は、例えば、とりわけ欧州特許第0 752 430号明細書に記載されているようなネガ型ジアゾ樹脂を基剤とするネガ型UV感受性塗膜、約405 nmの輻射線に対して感受性を有するネガ型フォトポリマー層(例えばDE 103 07 451.1参照)、可視スペクトル範囲からの輻射線に対して感受性を有するネガ型感受性ポリマー系(例えば欧州特許第0 684 522号明細書)、又はラジカル重合に基づくネガ型IR感受性層(例えば独国第199 06 823号明細書)であってよい。
【0043】
さらに、輻射線感受性塗膜は、米国特許第4,594,306号明細書に記載されているような、キノンジアジド及びノボラックを基剤とするポジ型UV感受性層、又はノボラックとIR色素との混合物を基剤とするポジ型IR感受性層(欧州特許第0 887 182号明細書及び欧州特許出願公開第1 101 607号明細書も参照)であってよい。
【0044】
さらに、印刷版の製造において使用される印刷版前駆体は、ネガ型単層IR感受性要素であってよく、輻射線感受性層は、IR照射時に水性アルカリ性現像剤中に不溶性になるか又は水性アルカリ性現像剤不浸透性になり、好ましくは、
(i) IR照射時に酸を形成する1種以上の化合物(以下、「潜ブレンステッド酸」とも呼ぶ)、及び
(ii) 酸又はその混合物によって架橋可能な成分(以下、「架橋剤」とも呼ぶ)、及び
任意選択的に、
(iii) バインダー樹脂又はその混合物
を含む。
このような系は例えば欧州特許第0 625 728号明細書及び同第0 938 413号明細書に記載されている。
【0045】
ポジ型二重層要素を印刷版前駆体として使用することもできる。ポジ型二重層要素は、基板の親水性表面上に、IR照射によって溶解度が変化させられない、水性アルカリ性現像剤中に可溶性の第1の層と、その層の上側に位置する、水性アルカリ性現像剤中に不溶性のトップ層とを含む。トップ層は、IR照射時に現像剤中に可溶性となるか、又は現像剤浸透性になる。
【0046】
トップ層には公知の原理を当てはめることができる:
(a) 強アルカリ性水性現像剤(pH>11)中に不溶性のポリマーが使用され、このポリマーは、IR照射によって、現像剤中に可溶性となるか、又は現像剤浸透性になり、このような系は例えば米国特許第6,352,812号明細書に記載されている。
【0047】
(b) 強アルカリ性水性現像剤(pH>11)中に可溶性のポリマーが使用され、このポリマーの溶解度は、同時に存在する溶解度抑制剤によって、層が現像条件下で不溶性又は不浸透性であるような高い程度まで低減され、ポリマーと抑制剤との相互作用は、照射された(加熱された)層領域が現像剤中に可溶性になるか又は現像剤浸透性になるような程度にまで、IR照射によって弱められる。このような系は、米国特許第6,352,811号明細書及び同第6,358,669号明細書に記載されている。ポリマーと溶解度抑制剤とは2つの別個の化合物であることは必要でなく、溶解度抑制効果を同時に有するポリマー、例えば米国特許出願公開第2002/0,150,833号明細書、米国特許第6,320,018号明細書、及び同第6,537,735号明細書に記載された官能化型樹脂、例えば官能化型ノボラックを使用することもできる。
【0048】
(c) pH<11の水性アルカリ性現像剤中に不溶性(しかしpH>11では可溶性)のポリマーが使用され、このポリマーはIR照射時に、このようなpH<11の現像剤中に可溶性になり、そして照射された要素は、pH<11のアルカリ性現像剤で現像される。このような系は、例えば国際公開第02/14071号パンフレットに記載されている。
【0049】
本発明の1実施態様によれば、平版印刷版は、
(a)平版用基板に適用された輻射線感受性層を有する平版印刷版前駆体を像様照射し;
(b)像様照射された前駆体から、アルカリ性現像剤によって非画像領域を除去し;
(c)現像された印刷版を上記ホスホノ置換型シロキサンを含む溶液で処理する
ことを含む方法に従って、製造される。
【0050】
輻射線感受性組成物は、一般的な方法、例えばスピン塗布、浸漬塗布、噴霧塗布、及びドクター・ブレードによる塗布によって、基板の表面に適用することができる。基板の両側に輻射線感受性組成物を適用することも可能ではあるが、基板の一方の側だけに適用されるのが好ましい。
【0051】
基板は好ましくは中間層を含まない。中間層のない、研磨処理及び陽極処理を施されたアルミニウム・フォイルが特に好ましく、好ましくは、陽極層の酸化物孔は実質的に密封されない。
【0052】
組成物中に使用される増感剤に応じて、印刷版前駆体は、UV線、VIS線又はIR線で像様露光される。
【0053】
層がポジ型輻射線感受性層であるかネガ型輻射線感受性層であるかに応じて、露光された領域又は露光されなかった領域が続いて現像剤(好ましくは水性アルカリ性現像剤)によって除去され、現像剤は印刷画像領域と非印刷背景領域とをもたらす。
【0054】
別の実施態様によれば、印刷親油性領域を基板に像様に適用する(例えばインクジェット法、熱転写法、及びトナー転写法による)ことも可能であり、これにより像様照射及び現像剤はもはや必要ではなくなる。
【0055】
本発明による画像形成された平版印刷版の後処理のために、ホスホノ置換型シロキサンの溶液が溶剤を基準として、好ましくは濃度0.01〜15 wt%で、より好ましくは0.1〜5 wt%で、そして特に好ましくは0.3〜3 wt%で調製される。この溶液は次いで、一般的な塗布法、例えば、浸漬塗布、ローラ塗布、噴霧塗布、及びドクター・ブレードによる塗布、及びスロット・コータによる塗布を用いて適用される。このプロセスにおいて使用される溶剤の温度は、好ましくは20〜90℃である。両性非プロトン性溶剤(例えばDMF、DMSO、NMP及びTHF)、並びにプロトン性溶剤(例えばC1-C4アルカノール)、水、及び上記溶剤の混合物を使用することができる。
【0056】
ホスホノ置換型シロキサンに加えて、溶液は一般的な添加剤、例えば増粘剤、界面活性剤、殺菌剤、防カビ剤などをさらに含有することができる。
【0057】
所望の場合には、基板における溶液の十分に長い滞留時間後に、ドクター・ブレード、絞りロールによって、又は水(好ましくは20〜80℃の温度)ですすぐことにより、過剰の溶液を除去することができる。
【0058】
溶液で処理された印刷版は、次いで、例えば空気中で、又は温風乾燥器又は赤外線乾燥器によって乾燥させられる。乾燥は好ましくは、温度20〜120℃、特に好ましくは20〜80℃で行われる。
【0059】
所望の場合、ホスホノ置換型シロキサンによる後処理後に、一般的なゴム引き処理、例えば一般的な方法(例えばローラ塗布)による、アラビアゴム含有水溶液の塗布を行うことができる。
【0060】
しかし、別の実施態様によれば、後処理のために使用されるホスホノ置換型シロキサンの溶液は、付加的に、アラビアゴム又は別のゴム引き剤を含有することにより、後処理とゴム引き処理とを1工程で行うようにすることができる。
【実施例】
【0061】
本発明を下記例においてより詳細に説明するが、これらの例は本発明を限定するものでは決してない。
【0062】
参考例(式IIのホスホノ置換型シロキサンの調製)
撹拌器及びサーモスタットを備えた5Lガラス溶液内で、460 gのH3PO3(70 %)と660 gのHCl(31 %)とを混合し、そして約10分間にわたって撹拌する。次いで、重縮合された3-アミノプロピルトリヒドロキシシランの22.5%水溶液1,200 gを、3時間にわたって液滴状に添加する。その時間中、温度を60℃と70℃との間で保持する。次いで、混合物を圧力反応器内で100〜109℃まで加熱し、そして166 gのパラホルムアルデヒドをゆっくりと添加した(3時間以内)。次いで、ホスホノメチル化反応をその温度で2時間にわたって進行させておく。その後、液体を大気圧下で1,300gの重量損失が生じるまで蒸留するこにより、塩化物含量を低減し、そして過剰のホルムアルデヒドを除去する。残りの高粘性溶剤の固形分含有率は、50.7 wt%と測定された。
【0063】
生成物の元素分析の結果:
C 18.46 %
H 4.92 %
N 4.31 %
P 19.08 %
Si 8.92 %
P/Si比=2.14
合成後、上述の化合物は、遊離酸として水溶液中に、そして重合状態で存在する。
【0064】
得られたホスホノ置換型シロキサンの構造は、下記のもの:
【0065】
【化7】

【0066】
(nは平均値であって、1〜100の値を有する)
であることが判った。
【0067】
上記合成を用いて、適宜にパラメータを調節することにより、本発明における使用に適した全てのシロキサンを調製することができる。
【0068】
塩酸の代わりに他の強無機酸、例えば硫酸を使用することに基づいて、別の有利な合成変化形が提供される。
【0069】
基板1の製造
(ポリビニルホスホン酸中間層を有する基板)
電気化学的に研磨処理され(HClで、平均粗さ0.6 μm)、そして陽極処理されたアルミニウム・フォイル(酸化物層の重量3.2 g/m2)に、50℃で10秒間にわたって1.5 g/lのポリビニルホスホン酸(PVPA)の水溶液による後処理を施し、その結果、アルミニウム基板上に15 mg/m2のPVPAから成る中間層をもたらした。
【0070】
基板2の製造
(中間層を有しない基板)
電気化学的に研磨処理され(HClで、平均粗さ0.6 μm)、そして陽極処理されたアルミニウム・フォイル(酸化物層の重量3.2 g/m2)を調製した。中間層は適用されなかった。
【0071】
例1〜3及び比較例1〜3
(UV感受性のフォトポリマー層を有する平版印刷版前駆体)
表1に記載されたUV感受性の濾過された塗布用溶液を、表2に挙げた基板に適用し、90℃で4分間にわたって乾燥させた。フォトポリマー層の乾燥層重量は、約1.5 g/m2であった。
【0072】
【表1】

【0073】
得られた試料に、ポリ(ビニルアルコール)の水溶液(加水分解度88 %)を適用することにより、上塗り層を塗布した。90℃で4分間にわたって乾燥させたあと、上塗り層の乾燥層重量は、約3 g/m2であった。
【0074】
印刷版前駆体に、画像セッター(405 nm, 30 mW, cw操作で発光するレーザー・ダイオードを備えた、LithotechのAndromeda(商標)A750M)で露光を施した。定義された階調値を有するUGRAグレイスケールV2.4(全てのデータは、所望の階調値を近似的に得るために線形化された)を、上記印刷版前駆体上に露光した。加えて、全露光下でUGRAグレイスケール85を使用して、版の感度を測定した。露光直後に、版を2分間にわたって90℃まで炉内で加熱した。
【0075】
次いで、露光及び熱処理を施された版を、アルカリ性成分としてKOHと、ポリ(オキシエチレン)-2-ナフチルエーテルとを含有するpH値約12の現像剤溶液で、30秒間にわたって処理した。
次いで現像剤溶液を、タンポンを使用してさらに30秒間にわたって、表面上に再びこすりつけ、次いで版全体を水ですすいだ。この処理後、露光された部分は印刷版上に残った。
【0076】
現像された印刷版を、シロキサン溶液で本発明に従って処理した。参考例に従って、使用されるシロキサンを調製した。この後処理のために、版全体、すなわち画像領域と非画像領域とを、対応溶液で湿潤されたタンポンで注意深くこすり、次いで室温で乾燥させた。次いで、標準的なプロセスを用いて、水性ゴム引き溶液(0.5 % H3PO4、6% アラビアゴム)を適用した。
【0077】
例において使用された基板、ポリマー、シロキサン溶液のための溶剤、及びゴム引き処理に関する詳細、並びに感度、相対ドットゲイン及びトーニングに関して得られた結果を、表2から推認することができる。
【0078】
例3において、現像された印刷版を、シロキサンをも含有するゴム引き溶液で処理した。すなわち後処理及びゴム引き処理を単一の工程で実施した。詳細は表2から同様に推認することができる。
【0079】
相対ドットゲイン及び感度を以下のように測定した:
印刷版を枚葉紙オフセット印刷機内に載置し、研磨性印刷インク(10% CaCO3を含有する、Sun ChemicalのOffset S7184)による印刷のために使用した。
【0080】
「ドットゲイン」という用語は、印刷中の、線形化印刷版の階調値の変化を表す。線形化とは、予め決められた設定階調値(STV)が近似的に得られるようにデジタル版を露光することを意味する。アクセス可能な測定値は階調値(TV)である。これらの値は、種々異なる規模(式1の指数i)で線形化印刷版上に露光され、その結果、これらの規模の選択に応じて、現像後には階調値に関して区別化された画像が生じる。こうして、印刷前階調値(TVB)の一連のデータが得られる。線形化され、現像され、そして本発明に従って後処理された印刷版が、10,000部のプリントのために印刷機内で使用され、清浄化され、次いで再び階調値試験を施される。この試験は印刷後階調値(TVA)を示す。ドットゲインは等式(1)を使用して計算される。
【0081】
【数1】

【0082】
ドットゲインは正又は負の符号を有することができる。実際の印刷用途にとって関心があるのは、絶対値だけである。この絶対値は、理想的な場合には、ゼロに向かって収束するようになっている。
換言すれば、ドットゲインが低ければ低いほど、印刷版は良好である。
【0083】
比較例1の印刷版(すなわち種々異なる階調値において印刷中にかなりのドットゲインを有する印刷版)を基準として使用する。相対ドットゲインは、下記等式(2) を使用して計算される:
【0084】
【数2】

【0085】
図1及び図2は、比較例1及び例1に対応する、印刷前、及び印刷機上での10,000回の連続運転(すなわち10,000部のコピー)後の種々異なる階調値におけるドットゲインを示すグラフである。図1(比較例1)における相対ドットゲインは100%と想定され;図2(例1)における相対ドットゲインは、28%と計算された。これは比較例1と比較して明らかな改善である。
【0086】
【表2】

【0087】
1)「後処理」とは、現像された印刷版を、言及した化合物の水溶液で処理したことを意味する。使用されるシロキサンは、参考例に従って調製し、そして下記構造を有した:
【0088】
【化8】

【0089】
2)列挙された溶剤は、後処理のために使用される溶液のために使用された。
3)「仕上げ」とは、これが印刷版の最終処理工程であったことを意味する。Kodak Polychrome Graphicsのゴム引き溶液850S(商標)、又はこのゴム引き溶液1容積部と、「溶剤」の欄で列挙した溶剤中のシロキサン(II)の2 wt%溶液1容積部との混合物を使用した。
4)照射後に現像された新鮮なプレートにおいて得られたUGRA Offsetテストスケール1982のステップ
5)相対ドットゲインは上記等式(2)を使用して計算された。
【0090】
例4〜6及び比較例4
(UV感受性のフォトポリマー層を有する平版印刷版前駆体)
表3に記載されたUV感受性の濾過された塗布用溶液を、表4に挙げた基板に適用し、90℃で4分間にわたって乾燥させた。フォトポリマー層の乾燥層重量は、約1.5 g/m2であった。
【0091】
こうして得られた試料に、ポリ(ビニルアルコール)の水溶液(加水分解度88 %)を塗布することにより、上塗り層を設けた。90℃で4分間にわたって乾燥させたあと、上塗り層の乾燥層重量は、約3 g/m2であった。
【0092】
印刷版前駆体に、830 nm(120 mJ/cm2)で発光するCreo Trendsetter画像セッターで露光を施した。定義された階調値を有するUGRAデジタル・グレイスケール(全てのデータは、所望の階調値を近似的に得るために線形化されていた)を、上記印刷版前駆体上に露光した。露光直後に、版を1分間にわたって120℃まで炉内で加熱した。
【0093】
次いで、露光及び熱処理を施された版を、Kodak Polychrome Graphicsの現像剤980(商標)で、30秒間にわたって処理した。次いで現像剤溶液を、タンポンを使用してさらに30秒間にわたって、表面上に再びこすりつけ、次いで版全体を水ですすいだ。この処理後、露光された部分は印刷版上に残った。
【0094】
【表3】

【0095】
現像された印刷版を、シロキサン溶液で本発明に従って処理した。これを目的として、版全体、すなわち画像領域と非画像領域とを、対応シロキサン溶液で湿潤されたタンポンで注意深くこすり、次いで室温で乾燥させた。次いで、標準的なプロセスを用いて、水性ゴム引き溶液(0.5 % H3PO4、6% アラビアゴム)を適用した。
【0096】
例において使用された基板、シロキサン、シロキサン溶液のための溶剤、及びゴム引き処理に関する詳細、並びに相対ドットゲインに関して得られた結果を、表4から推認することができる。
【0097】
例6において、現像された印刷版を、シロキサン溶液をも含有するゴム引き溶液で処理した。すなわち後処理及びゴム引き処理を単一の工程で実施した。詳細は表4から同様に推認することができる。
相対ドットゲイン及び感度を例1〜3に記載したように測定した:
【0098】
【表4】

【0099】
1)「後処理」とは、現像された印刷版を、言及した化合物の水溶液で処理したことを意味する。使用されるシロキサンは、参考例に従って調製し、そして下記構造を有した:
【0100】
【化9】

【0101】
2)列挙された溶剤は、後処理のために使用される溶液のために使用された。
3)「仕上げ」とは、これが印刷版の最終処理工程であったことを意味する。Kodak Polychrome Graphics社のゴム引き溶液850S(商標)、又はこのゴム引き溶液1容積部と、「溶剤」の欄で列挙した溶剤中のシロキサン(II)の2 wt%溶液1容積部との混合物を使用した。
【0102】
図3及び図4は、比較例4及び例4に対応する、印刷前、及び印刷機上での10,000回の連続運転(すなわち10,000部のコピー)後の種々異なる階調値におけるドットゲインを示すグラフである。図3(比較例4)における相対ドットゲインは100%と推測され;図4(例4)における相対ドットゲインは、わずか3%と計算された。
【0103】
例4〜6の印刷版にさらに、貯蔵安定性試験を施した。これを目的として、印刷版前駆体を88℃で90分間にわたって貯蔵した。次いで老化印刷版前駆体に画像を形成し、そしてこれを感度及び印刷機上の挙動に関して、新鮮な印刷版と比較した。有意な差は観察されなかった。
【0104】
例7及び比較例5
比較例1及び例3において説明したように、2つの印刷版前駆体を製造した。これらの印刷版前駆体に、405 nmで発光するダイオード(P=30 mW)を備えたHeidelberg Prosetterで露光を施した。試験画像を20 μ FMスクリーン(Heidelberg Diamond)において2540 dpiの解像度で印刷版上に露光した。次いで、印刷版を、例1〜4に同様に記載されているようにアルカリ性現像剤で現像し、そしてこれに仕上げ処理を施した。10,000部のプリント後、基板2を用いて製造された例7の印刷版は、基板1を用いて製造した比較例5の印刷版(図6参照)よりも階調値のシフトが著しく低い(図5参照)ことを示した。結果を表5に要約する。
【0105】
【表5】

【0106】
1)「仕上げ」とは、これが印刷版の最終処理工程であったことを意味する。Kodak Polychrome Graphicsのゴム引き溶液850S(商標)、又はこのゴム引き溶液1容積部と、式(II)のシロキサンの4 wt%溶液1容積部との混合物。
2)相対ドットゲインは上記等式(2)を使用して計算された。
【0107】
この例が明らかにするところによれば、構造要素が20 μ FMスクリーン内で発生するのに伴って、小さな構造要素でさえも、基板2上での印刷中に、基板1上での印刷中よりも著しく好ましい挙動を示す。本発明において述べられたシロキサンによる後処理を印刷版に施せば、基板2で製造された印刷版の色味付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、比較例1において測定された、印刷前後の種々の階調値におけるドットゲインを示すグラフである。
【図2】図2は、例1において測定された、印刷前後の種々の階調値におけるドットゲインを示すグラフである。
【図3】図3は、比較例4において測定された、印刷前後の種々の階調値におけるドットゲインを示すグラフである。
【図4】図4は、例4において測定された、印刷前後の種々の階調値におけるドットゲインを示すグラフである。
【図5】図5は、例7において測定された、印刷前後の種々の階調値におけるドットゲインを示すグラフである。
【図6】図6は、比較例5において測定された、印刷前後の種々の階調値におけるドットゲインを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平版用基板に適用された輻射線感受性層を有する平版印刷版前駆体を像様照射し;
(b)該像様照射された前駆体から、アルカリ性現像剤の手段によって非画像領域を除去し;
(c)工程(b)で得られた該平版印刷版を、一般式(I)
【化1】

(上記式中、
R1は、水素原子、ヒドロキシ基、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C1-C20アルコキシ、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、アシルオキシ基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R2及びR3は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
R4は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R5は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
Zは、-(CR6R7)x-若しくはアリーレン、又はこれらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせを表し、
R6及びR7は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C6アルキル、線状又は分枝状C2-C6アルケニル、線状又は分枝状C2-C6アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
nは、平均値であって、1〜200の値を有し、そして
xは、1〜100の整数であり、
Mは、電荷等化に必要な対イオンを表し、そして一価、二価又は多価カチオンから選択され、そして
mは、電荷等化に必要なカチオンの数である)
の少なくとも1種のホスホノ置換型シロキサンを含む溶液で処理し;そして
(d)乾燥させる
ことを含んで成る平版印刷版の製造方法。
【請求項2】
(e)工程(d)で得られた該後処理された平版印刷版を、ゴム引き溶液で処理することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)で使用される該溶液が、ゴム引き溶液をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)平版用基板上に、乾燥状態において親油性の組成物を像様に適用して、印刷画像領域を生成し、
(b)工程(a)で得られた該平版印刷版を、一般式(I)
【化2】

(上記式中、
R1は、水素原子、ヒドロキシ基、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C1-C20アルコキシ、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、アシルオキシ基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R2及びR3は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
R4は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R5は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
Zは、-(CR6R7)x-又はアリーレン、又はこれらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせを表し、
R6及びR7は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C6アルキル、線状又は分枝状C2-C6アルケニル、線状又は分枝状C2-C6アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
nは、平均値であって、1〜200の値を有し、そして
xは、1〜100の整数であり、
Mは、電荷等化に必要な対イオンを表し、そして一価、二価又は多価カチオンから選択され、そして
mは、電荷等化に必要なカチオンの数である)
の少なくとも1種のホスホノ置換型シロキサンを含む溶液で処理し;そして
(c)乾燥させる
ことを含んで成る平版印刷版の製造方法。
【請求項5】
(e)工程(c)で得られた該平版印刷版を、ゴム引き溶液で処理することをさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)で使用される該溶液が、ゴム引き溶液をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
該ホスホノ置換型シロキサンが、濃度0.01〜15 wt%で該溶液中に存在する請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該平版用基板が、アルミニウム・フォイル又はプレート、プラスチック・フィルムとアルミニウム・フォイルとから若しくは紙とアルミニウム・フォイルとから形成されたラミネート材料、又はアルミニウムが蒸着手段によって堆積されているプラスチック・フィルムを含む請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該輻射線感受性層の適用前に、該アルミニウムに、機械研磨処理、電気化学的研磨処理、及び陽極処理から選択された少なくとも1つの処理を施す請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該平版用基板が中間層を含まず、そして該輻射線感受性層が、該平版用基板に直接的に適用されている請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該シロキサンが一般式(II):
【化3】

(上記式中、nは平均値であって、1〜100の値を有する)
を有する請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
mM=2H+である請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
mM=2Li+である請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該輻射線感受性層がポジ型層である請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該輻射線感受性層がネガ型層である請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
該輻射線感受性層が、320〜750 nmの範囲から選択された波長の輻射線に対して感受性を有するUV/VIS感受性層である請求項1から3まで、14又は15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
該輻射線感受性層が、750超〜1,600 nmの範囲から選択された波長の輻射線に対して感受性を有するIR感受性層である請求項1から3まで、14又は15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(a)平版用基板上に画像領域と非画像領域とを含む平版印刷版を、請求項1、11、12及び13までのいずれか一項に記載のホスホノ置換型シロキサンを含む溶液と接触させ、そして
(b)乾燥させる
ことを含んで成る画像形成された平版印刷版の後処理方法。
【請求項19】
工程(b)で得られた該印刷版を、続いてゴム引き溶液と接触させる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)で使用される該溶液が、ゴム引き溶液をさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
該ホスホノ置換型シロキサンが、濃度0.01〜15 wt%で該溶液中に存在する請求項18から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
該印刷版が、該平版用基板と該輻射線感受性層との間に、中間層を含まない請求項18から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる平版印刷版。
【請求項24】
平版用基板上に画像領域と非画像領域とを含む平版印刷版の後処理における、一般式(I)のホスホノ置換型シロキサンの使用、
【化4】

(上記式中、
R1は、水素原子、ヒドロキシ基、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C1-C20アルコキシ、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、アシルオキシ基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R2及びR3は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
R4は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
R5は、水素原子、線状又は分枝状C1-C20アルキル、線状又は分枝状C2-C20アルケニル、線状又は分枝状C2-C20アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール基、及び基-CHR6-PO32-から選択され、
Zは、-(CR6R7)x-又はアリーレン、又はこれらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせを表し、
R6及びR7は独立して、水素原子、線状又は分枝状C1-C6アルキル、線状又は分枝状C2-C6アルケニル、線状又は分枝状C2-C6アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、及びアルキニルアリール基から選択され、
nは、平均値であって、1〜200の値を有し、そして
xは、1〜100の整数であり、
Mは、電荷等化に必要な対イオンを表し、そして一価、二価又は多価カチオンから選択され、そして
mは、電荷等化に必要なカチオンの数である)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−511031(P2008−511031A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528747(P2007−528747)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009203
【国際公開番号】WO2006/021447
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505316060)コダック グラフィック コミュニケーションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【Fターム(参考)】