説明

平版印刷版原版

【課題】赤外線レーザーによる直接描画が可能で、なおかつ感度、経時安定性、及び、耐刷性に優れたネガ型平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体上に、(A)下記式(I)で表されるシアニン色素、(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物、(C)重合開始剤、及び、(D)バインダーポリマーを含有する感光層を有することを特徴とする平版印刷版原版。式(I)中、X1及びX2はそれぞれ独立にS、O、NR及びC(アルキル)2よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、R1a及びR1bはそれぞれ独立にアルキル基、アルキルスルホネート基、アルキルカルボキシレート基又はアルキルアンモニウム基を表し、R2は、SR、SO2R又はORを表し、Rはアリール基を表し、Zは一価以上のアニオンを表し、n1及びn2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線レーザー光での直接描画が可能な、感度、経時安定性、耐刷性に優れた重合型記録層を有するネガ型平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
ネガ型平版印刷版は、一般に、粗面化処理されたアルミニウム板等の支持体上に感光性組成物を塗布し、これに所望の画像を露光し、露光部を重合あるいは架橋させて現像液に不溶化させ、未露光部を現像液で溶出するプロセスにて画像形成が行われる。従来このような目的に使用される組成物としては、光重合性組成物がよく知られており、一部が実用に供されている。また最近の可視光に高感度な光開始系技術を取り入れた高感度フォトポリマーは、可視レーザーによる直接製版に使用される領域まで高感度化が進み、いわゆるCTP(Computer To Plate)版として普及している。
【0003】
しかし、上記光重合性組成物を用いての画像形成は、作業性の点で、暗室ではなく黄色灯や白色灯下での取り扱い性(明室化)への要求も高まり、それに対応して、波長300〜450nmの紫外−紫色レーザーや、800〜1,200nmの赤外レーザーといった露光方式と組み合わせて用いることのできる光重合性組成物が研究されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
また、特許文献5には、(A)不斉構造であり、かつエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、(B)実質的に水またはアルカリ水溶液に可溶または膨潤するバインダーポリマーと、(C)光または熱によりラジカルを発生する化合物と、を含有することを特徴とする重合性組成物が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−147763号公報
【特許文献2】特開2001−133969号公報
【特許文献3】特表2005−523484号公報
【特許文献4】国際公開第2007/23133号パンフレット
【特許文献5】特開2005−283632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CTP版が広い分野で使われるようになるのに伴って、高感度であり、かつ、高耐刷化も要求されている。また、CTP版を長期間保存後も性能が安定であることも望まれている。
よって、現在のCTP版市場においては、感度、保存安定性、耐刷性の全てについてさらなる性能向上が求められている。
本発明は前記市場要求をふまえ、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、赤外線レーザーによる直接描画が可能で、なおかつ感度、経時安定性、及び、耐刷性に優れたネガ型平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は以下の<1>に記載の手段によって解決された。好ましい実施態様である<2>〜<10>と共に以下に記載する。
<1>支持体上に、(A)下記式(I)で表されるシアニン色素、(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物、(C)重合開始剤、及び、(D)バインダーポリマーを含有する感光層を有することを特徴とする平版印刷版原版、
【0007】
【化1】

(式(I)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、S、O、NR及びC(アルキル)2よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、R1a及びR1bはそれぞれ独立に、アルキル基、アルキルスルホネート基、アルキルカルボキシレート基又はアルキルアンモニウム基を表し、R2は、SR、SO2R、又は、ORを表し、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、アルキル基、COOR、OR、SR、NR2若しくはハロゲン原子を表すか、又は、2つ以上のR3a若しくは2つ以上のR3bが結合して形成される縮合ベンゼン環を表し、Rはアリール基を表し、Zは式(I)で表されるシアニン色素全体として電荷的中性を得るのに十分なアニオンを表し、R4a及びR4bは、共に水素原子を表すか、又は、R4aとR4bとが結合し、かつ長さが炭素数2若しくは3である二価の炭化水素基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
【0008】
<2>前記式(I)におけるR1a及びR1bがそれぞれ独立に、アルキル基である上記<1>に記載の平版印刷版原版、
<3>前記式(I)におけるR2が、SRである上記<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版、
<4>前記式(I)におけるR3a及びR3bがそれぞれ独立に、アルキル基、又は、ハロゲン原子である上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<5>前記式(I)におけるX1及びX2がそれぞれ独立に、C(アルキル)2である上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<6>前記(A)式(I)で表されるシアニン色素が、下記式(II)で表されるシアニン色素である上記<1>〜<5>いずれか1つに記載の平版印刷版原版、
【0009】
【化2】

(式(II)中、Z’-は一価のアニオンを表す。)
【0010】
<7>前記(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物が、下記式(III)で表される化合物を含む上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版、
【0011】
【化3】

【0012】
<8>前記(C)重合開始剤が、オニウム塩である上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<9>前記(D)バインダーポリマーが、ウレタン樹脂である上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版、
<10>前記(D)バインダーポリマーが、側鎖に架橋性基を有するウレタン樹脂である上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、赤外線レーザーによる直接描画が可能で、なおかつ感度、経時安定性、及び、耐刷性に優れたネガ型平版印刷版原版を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の平版印刷版原版について詳細に説明する。
【0015】
<ネガ型平版印刷版原版>
本発明の平版印刷版原版は、ネガ型平版印刷版原版であり、支持体上に、(A)下記式(I)で表されるシアニン色素、(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物、(C)重合開始剤、及び、(D)バインダーポリマーを含有する感光層(以下、「画像記録層」、「特定記録層」又は「記録層」ともいう。)を有することを特徴とする。
【0016】
【化4】

(式(I)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、S、O、NR及びC(アルキル)2よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、R1a及びR1bはそれぞれ独立に、アルキル基、アルキルスルホネート基、アルキルカルボキシレート基又はアルキルアンモニウム基を表し、R2は、SR、SO2R、又は、ORを表し、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、アルキル基、COOR、OR、SR、NR2若しくはハロゲン原子を表すか、又は、2つ以上のR3a若しくは2つ以上のR3bが結合して形成される縮合ベンゼン環を表し、Rはアリール基を表し、Zは式(I)で表されるシアニン色素全体として電荷的中性を得るのに十分なアニオンを表し、R4a及びR4bは、共に水素原子を表すか、又は、R4aとR4bとが結合し、かつ長さが炭素数2若しくは3である二価の炭化水素基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
【0017】
本発明の平版印刷版原版を構成する各部材について説明する。
【0018】
(感光層)
本発明の平版印刷版原版における感光層は、赤外光に感応するため、CTPに有用な赤外線レーザーにより記録可能である。
感光層に含まれるシアニン色素は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、感光層中に併存する重合開始剤に作用して、前記重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させる。
ラジカルの生成機構としては、シアニン色素の光熱変換機能により発生した熱が、後述する重合開始剤を熱分解しラジカルを発生させる機構が挙げられる。そして、生成したラジカルによりモノマーが重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部を形成する。
【0019】
本発明の平版印刷版原版は、感光層がシアニン色素を含有することにより、700nm〜1,400nmの波長を有する赤外線レーザー光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
以下に、感光層を構成する各成分について説明する。
【0020】
(A)式(I)で表されるシアニン色素
本発明の平版印刷版原版における感光層は、(A)式(I)で表されるシアニン色素を含有する。
感光層は、感度向上の観点から、700〜1,400nmに吸収極大を有する化合物として、シアニン色素を含有する。シアニン色素を含有することで、平版印刷版原版は赤外線波長域に感応性を有することになる。
本発明に用いることができるシアニン色素は、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から、波長700〜1,400nmに吸収極大を有し、さらに後述するウレタンモノマーとの優れた相互作用の観点から、下記式(I)で表されるシアニン色素である。
【0021】
【化5】

(式(I)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、S、O、NR及びC(アルキル)2よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、R1a及びR1bはそれぞれ独立に、アルキル基、アルキルスルホネート基、アルキルカルボキシレート基又はアルキルアンモニウム基を表し、R2は、SR、SO2R、又は、ORを表し、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、アルキル基、COOR、OR、SR、NR2若しくはハロゲン原子を表すか、又は、2つ以上のR3a若しくは2つ以上のR3bが結合して形成される縮合ベンゼン環を表し、Rはアリール基を表し、Zは式(I)で表されるシアニン色素全体として電荷的中性を得るのに十分なアニオンを表し、R4a及びR4bは、共に水素原子を表すか、又は、R4aとR4bとが結合し、かつ長さが炭素数2若しくは3である二価の炭化水素基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
【0022】
式(I)におけるX1及びX2はそれぞれ独立に、S、O、NR及びC(アルキル)2よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、C(アルキル)2であることが好ましく、C(CH32であることがより好ましい。また、前記NRのRは、アリール基を表す。
式(I)におけるR1a及びR1bはそれぞれ独立に、アルキル基、アルキルスルホネート基、アルキルカルボキシレート基又はアルキルアンモニウム基を表し、アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、前記アルキルアンモニウム基における窒素原子上の他の3つの基はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基が例示できる。
式(I)におけるR2は、SR、SO2R、又は、ORを表し、SRであることが好ましく、チオフェニル基であることがより好ましい。また、これらSR、SO2R及びORのRは、アリール基を表し、フェニル基であることが好ましい。
【0023】
式(I)における芳香環上の置換基R3a及びR3bはそれぞれ独立に、アルキル基、COOR、OR、SR、NR2若しくはハロゲン原子を表すか、又は、2つ以上のR3a若しくは2つ以上のR3bが結合して形成される縮合ベンゼン環を表し、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、ハロゲン原子であることが好ましく、ハロゲン原子であることがより好ましく、塩素原子であることがさらに好ましい。
芳香環上の置換基R3a及びR3bの数であるm1及びm2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
なお、式(I)において、m1が0であるとは、芳香環上の置換基R3aがないことを表し、X1と結合している芳香環の環員を形成する炭素原子のうち、X1に結合した炭素原子及び窒素原子に結合した炭素原子以外の炭素原子に結合する基は全て水素原子であることを表す。また同様に、式(I)において、m2が0であるとは、芳香環上の置換基R3bがないことを表し、X2と結合している芳香環の環員を形成する炭素原子のうち、X2に結合した炭素原子及び窒素原子に結合した炭素原子以外の炭素原子に結合する基は全て水素原子であることを表す。
【0024】
式(I)におけるZは、式(I)で表されるシアニン色素全体として電荷的中性を得るのに十分なアニオンを表す。
Zとしては、式(I)で表されるシアニン色素全体として電荷的中性を得るのに十分な一価以上のアニオンであれば、特に制限なく用いることができる。また、Zは、1つのアニオンであっても、2つ以上のアニオンであってもよい。さらにZは、1種のアニオンであっても、2種以上のアニオンであってもよい。
Zとして具体的には、安定性の面から、スルホン酸アニオン、ベンゾイルギ酸アニオン、AsF6-、PF6-、BF4-、ClO4-、カルボン酸アニオン、スルフィン酸アニオン、硫酸アニオン、ホウ素アニオン、ハロゲン化物イオン、ポリマー型スルホン酸アニオン、ポリマー型ベンゾイルギ酸アニオン、ポリマー型カルボン酸アニオン等が好ましく例示できる。これらの中でも、スルホン酸アニオンが好ましく、トリフラートアニオン(CF3SO3-)がより好ましい。
【0025】
式(I)におけるR4a及びR4bは、共に水素原子を表すか、又は、R4aとR4bとが結合し、かつ長さが炭素数2若しくは3である二価の炭化水素基を表し、共に水素原子を表すか、又は、R4aとR4bとが結合したエチレン基若しくはプロピレン基であることが好ましく、R4aとR4bとが結合したプロピレン基であることがより好ましい。
式(I)におけるn1及びn2はそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、n1及びn2が共に1であることが好ましい。
式(I)におけるX1及びX2は、同じ基であることが好ましい。また、同様に、式(I)におけるR1a及びR1b、n1及びn2、m1及びm2はそれぞれ、同じ基であることが好ましい。
また、式(I)においては、R3a及びR3bは、同じ基であり、かつ芳香環上の置換位置もR2を中心として線対称の位置であることが好ましい。
【0026】
また、式(I)で表されるシアニン色素としては、下記式(II)で表されるシアニン色素であることが好ましい。なお、本発明における化学構造式は、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
【0027】
【化6】

(式(II)中、Z’-は一価のアニオンを表す。)
【0028】
式(II)におけるZ’-は一価のアニオンを表す。
Z’-としては、一価のアニオンであれば、特に制限なく用いることができる。
Z’-として具体的には、安定性の面から、スルホン酸アニオン、ベンゾイルギ酸アニオン、AsF6-、PF6-、BF4-、ClO4-、カルボン酸アニオン、スルフィン酸アニオン、ホウ素アニオン、ハロゲン化物イオン等が好ましく例示できる。これらの中でも、スルホン酸アニオンが好ましく、トリフラートアニオン(CF3SO3-)がより好ましい。
【0029】
式(I)で表されるシアニン色素として具体的には、下記に示す化合物が好ましく例示できる。
【0030】
【化7】

【0031】
(A)式(I)で表されるシアニン色素は、感光層を構成する全固形分に対し、0.5〜5重量%添加されることが好ましい。上記範囲であると、露光による特性変化における良好な感度が得られ、十分な膜の均一性や強度が維持される。
【0032】
(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物
本発明の平版印刷版原版における感光層は、(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物を含有する。
ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物としては、1つ以上のウレタン結合及び1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であればよいが、2つ以上のウレタン結合及び2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましく、2つのウレタン結合及び2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であることがより好ましく、2つのウレタン結合及び2つのエチレン性不飽和基を有する化合物であることがさらに好ましい。
(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物(以下、「ウレタンモノマー」又は「特定重合性化合物」ともいう。)をエチレン性不飽和結合の数が2の場合と、3以上の場合に分けて説明する。
分子内にウレタン結合と2つのエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(以下、「2官能重合性化合物」という場合がある。)は、下記式(1)で表される。
X−R−U−A−U−R−X・・・(1)
【0033】
前記式(1)中、Aは鎖状又は環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリレン基、又は、オキシアルキレン基を表し、Uはそれぞれ独立に、ウレタン結合、Xはそれぞれ独立に、メタクリロイル基、アクリロイル基、又は、ビニル基を表し、Rはそれぞれ独立に、二価の連結基、例えば、オキシアルキレン基、アルキレンオキシ基、又は、アラルキレン基を表す。
【0034】
式(1)におけるAとしては、2,2,4−トリメチルヘキシル基、ヘキサメチレン基、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、シクロヘキシル基などが好ましい。
式(1)におけるXとしては、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基が好ましく、メタクリロイル基がより好ましい。
【0035】
式(1)において、Rで表されるオキシアルキレン基、アルキレンオキシ基、アラルキレン基における好ましい基は、前記Aで表されるオキシアルキレン基、アルキレンオキシ基、及び、アラルキレン基における好ましい基と同様である。
【0036】
2官能重合性化合物の具体例として、下記構造の重合性化合物(M−1〜M−40)を挙げることができる。
【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
また、特定重合性化合物には、エチレン性不飽和結合を分子内に3つ以上含む構造でもよい。ウレタン結合と4つ以上のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、下記式(3)で表される化合物が用いられる。
D−(−U−R−(X)mn・・・式(3)
式(3)中、nは2又は3を表し、Dは二価又は三価の有機基を表し、Uはそれぞれ独立に、ウレタン結合を表し、Rはそれぞれ独立に、三価又は四価の炭素原子あるいは炭素原子と酸素原子とで構成される連結基を表し、Xはそれぞれ独立に、メタクリロイル基、アクリロイル基、又は、ビニル基を表し、mはそれぞれ独立に、2又は3を表す。
また、前記式(3)で表される化合物においてn個存在する−U−R−(X)mは、全て同一の基であることが好ましい。
【0044】
エチレン性不飽和結合を分子内に4つ以上含む特定重合性化合物の具体例として下記構造の重合性化合物(N−1〜N−7及びN−15〜N−25)を挙げることができる。
【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
【化16】

【0048】
特定重合性化合物としては、以上の具体例の中でも、M−1、M−11、及び、N−2が好ましく、M−1がより好ましい。
【0049】
特定重合性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
これら特定重合性化合物の感光層の全固形分に対する添加量(総量)は、10〜60重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましく、30〜45重量%がさらに好ましい。上記範囲であると、低感度となる場合や、記録層がべたつき、製造適性が劣る場合もない。
【0050】
(C)重合開始剤
本発明の平版印刷版原版における感光層は、(C)重合開始剤を含有する。
本発明において、感光層に用いることができる重合開始剤は、光又は熱エネルギーによりラジカルを発生する光又は熱重合開始剤であり、エチレン性不飽和化合物の重合を開始又は促進する化合物である。重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などから適宜選択して用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物が挙げられる。
【0051】
前記有機ハロゲン化合物としては、具体的には、若林等、"Bull. Chem. Soc. Japan", 42, 2924 (1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、
特開昭48−36281号、特開53−133428号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M. P. Hutt, "Journal of Heterocyclic Chemistry", 1 (No.3) (1970)に記載の化合物が挙げられる。中でも、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物及びs−トリアジン化合物が好適である。
【0052】
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、又は、トリハロゲン置換メチル基が、s−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール環に結合したオキサジアゾール誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジンや下記化合物等が挙げられる。
【0053】
【化17】

【0054】
【化18】

【0055】
【化19】

【0056】
前記カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0057】
前記アゾ化合物としては例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0058】
前記アジド化合物は、アジド基が直接又はカルボニル基又はスルホニル基を介して芳香環に結合している芳香族アジド化合物であることが好ましい。これらは光によりアジド基が分解して、ナイトレンを生じ、ナイトレンが種々の反応を起こして不溶化するものである。
好ましい芳香族アジド化合物としては、アジドフェニル、アジドスチリル、アジドベンザル、アジドベンゾイル及びアジドシンナモイルの如き基を1個又はそれ以上含む化合物が挙げられ、例えば、4,4’−ジアジドカルコン、4−アジド−4’−(4−アジドベンゾイルエトキシ)カルコン、N,N−ビス−p−アジドベンザル−p−フェニレンジアミン、1,2,6−トリ(4’−アジドベンゾキシ)ヘキサン、2−アジド−3−クロロ−ベンゾキノン、2,4−ジアジド−4’−エトキシアゾベンゼン、2,6−ジ(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドベンゾフェノン、2,5−ジアジド−3,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ビス(4−アジドスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−アジドシンナモイル)チオフェン、2,5−ジ(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドフェニルメタン、1−(4−アジドフェニル)−5−フリル−2−ペンタ−2,4−ジエン−1−オン、1−(4−アジドフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)−ペンタ−1,4−ジエン−3−オン、1−(4−アジドフェニル)−3−(1−ナフチル)プロペン−1−オン、1−(4−アジドフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−プロパン−1−オン、1−(4−アジドフェニル)−5−フェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン、1−(4−アジドフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−2−プロペン−1−オン、1−(4−アジドフェニル)−3−(2−フリル)−2−プロペン−1−オン、1,2,6−トリ(4’−アジドベンゾキシ)ヘキサン、2,6−ビス−(4−アジドベンジリジン−p−t−ブチル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドベンザルアセトン、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4’−アジドベンザルアセトフェノン−2−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−α−カルボン酸、ジ−(4−アジド−2’−ヒドロキシベンザル)アセトン−2−スルホン酸、4−アジドベンザルアセトフェノン−2−スルホン酸、2−アジド−1,4−ジベンゼンスルホニルアミノナフタレン、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸アニリド等を挙げることができる。
またこれらの低分子量芳香族アジド化合物以外にも特公昭44−9047号、同44−31837号、同45−9613号、同45−24915号、同45−25713号、特開昭50−5102号、同50−84302号、同50−84303号、同53−12984号の各公報に記載のアジド基含有ポリマーも好適である。
【0059】
前記有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0060】
前記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号、特開平5−83588号の各公報に記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル]チタニウム、並びに特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報に記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0061】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号の各明細書等に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0062】
前記有機ホウ素化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号、特許第2764769号、特開2002−116539号の各公報、Martin Kunz, Rad Tech '98. Proceeding April, 19-22, 1998, Chicago等に記載の有機ホウ酸塩、特開平6−157623号、特開平6−175564号、特開平6−175561号の各公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号、特開平7−128785号、特開平7−140589号、特開平7−306527号、特開平7−292014号の各公報に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が挙げられる。
【0063】
前記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特開2003−328465号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0064】
前記オキシムエステル化合物としては、J. C. S. Perkin II, 1653-1660 (1979)、J. C. S. Perkin II, 156-162 (1979)、Journal of Photopolymer Science and Technology, 202-232 (1995)、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報記載の化合物が挙げられる。具体例としては、下記の構造式で示される化合物が挙げられる。なお、下記構造式における波線は、オキシムの(E)体及び(Z)体のどちらでもよいことを表す。
【0065】
【化20】

【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
前記オニウム塩化合物としては、例えば、S. I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387 (1974)、T. S. Bal et al., Polymer, 21, 423 (1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、同第4,069,056号明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号明細書、米国特許第339,049号、同第410,201号,580号、同第3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J. V. Crivello et al., Macromolecules, 10(6), 1307 (1977)、J. V.Crivello et al., J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979)に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al., The Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p.478, Tokyo, Oct. (1988)に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
本発明において、これらのオニウム塩化合物は酸発生剤ではなく、ラジカル重合開始剤として機能することができる。
【0069】
好適に用いられるオニウム塩化合物は、下記式(RI-I)〜(RI-III)で表されるオニウム塩である。
【0070】
【化23】

【0071】
式(RI-I)中、Ar11は置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。
好ましい置換基としては、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルケニル基、炭素数12以下のアルキニル基、炭素数12以下のアリール基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルキルアミノ基、炭素数12以下のジアルキルアミノ基、炭素数12以下のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数12以下のチオアルキル基、炭素数12以下のチオアリール基が挙げられる。
11-は一価の陰イオンを表し、具体的には、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン及びスルフィン酸イオンが好ましい。
【0072】
式(RI-II)中、Ar21及びAr22はそれぞれ独立に、置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。
好ましい置換基としては、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルケニル基、炭素数12以下のアルキニル基、炭素数12以下のアリール基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルキルアミノ基、炭素数12以下のジアルキルアミノ基、炭素数12以下のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数12以下のチオアルキル基、炭素数12以下のチオアリール基が挙げられる。
21-は一価の陰イオンを表す。具体的には、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0073】
式(RI-III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立に、置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基、アルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。中でも、反応性、安定性の面から好ましいのは、アリール基である。
置換基としては、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルケニル基、炭素数12以下のアルキニル基、炭素数12以下のアリール基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルキルアミノ基、炭素数12以下のジアルキルアミノ基、炭素数12以下のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数12以下のチオアルキル基、炭素数12以下のチオアリール基が挙げられる。
31-は一価の陰イオンを表す。具体例としては、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
【0074】
以下に、式(RI-I)〜(RI-III)で表されるオニウム塩の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化24】

【0076】
【化25】

【0077】
【化26】

【0078】
【化27】

【0079】
【化28】

【0080】
【化29】

【0081】
【化30】

【0082】
【化31】

【0083】
【化32】

【0084】
重合開始剤としては、特に反応性、安定性の面から、有機ハロゲン化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、オキシムエステル化合物、及び/又は、オニウム塩化合物が好ましく、有機ハロゲン化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び/又は、オニウム塩化合物がより好ましく、オニウム塩化合物が特に好ましい。
重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の含有量は、感光層全固形分に対し、0.1〜50重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましく、0.8〜20重量%がさらに好ましい。
【0085】
(D)バインダーポリマー
本発明の平版印刷版原版における感光層は、(D)バインダーポリマーを含有する。
本発明に用いることができるバインダーポリマーの化学構造は、特に限定されないが、弱アルカリ性の処理液への溶解性、すなわち現像性の観点から酸基を有する有機高分子が好ましく、特にカルボキシル基(カルボン酸基)又はその塩を含有する有機高分子がより好ましい。
本発明に用いることができるバインダーポリマーとしては、カルボン酸基含有のアルカリ水可溶又は膨潤性の有機高分子が用いられる。
この様な有機高分子としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が有用である。バインダーポリマーとして、カルボン酸(塩)基を含有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含む共重合体が好ましい。
また、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシル基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなども有用である。
さらに、特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号の各公報に記載のポリウレタン樹脂もアルカリ水可溶又は膨潤性バインダーとして有用である。
本発明に使用するバインダーポリマーとして、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、又は、ウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0086】
本発明に用いることができるバインダーポリマーとして好適な材料の一例は、下記(a)カルボン酸基(その塩を含む。)を含有するモノマー単位及び(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位を有する共重合体である。
(a)カルボン酸基を含有するモノマー単位としては特に限定されないが、下記構造が好ましく用いられる。
【0087】
【化33】

(式(D−I)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び、硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含んで構成され、その原子数が2〜82である連結基を表し、Aは酸素原子又は−NR3−を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【0088】
式(D−I)においてR2で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び、硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含んで構成され、その総原子数は2〜82であり、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜30である。R2で表される連結基は置換基を有していてもよい。ここで示す総原子数とは、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることがさらに好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、式(D−I)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0089】
式(D−I)においてR2で表される連結基として、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、あるいはこれらの基を構成する任意の炭素原子上の水素原子を除き(n+1)価の基としたものなどが挙げられ、これらの基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有するものが好ましい。特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
2で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基が挙げられる。
式(D−I)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
式(D−I)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
【0090】
(a)アルカリ可溶性を付与するモノマー単位の具体例としては以下に示す(a−1)から(a−12)に示す構造の化合物が挙げられる。
【0091】
【化34】

【0092】
【化35】

【0093】
この(a)カルボン酸を含有するモノマーの含有量は、総モノマー単位数を100とした場合、そのうちの5〜50単位であることが好ましく、5〜25単位であることがより好ましく、5〜15単位であることがさらに好ましい。
【0094】
また、(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位の具体例としては以下の(b−1)から(b−11)に示す構造が含まれる。
【0095】
【化36】

【0096】
この(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位の含有量は、総モノマー単位数を100とした場合、そのうちの5〜90単位であることが好ましく、20〜85単位であることがより好ましく、40〜80単位であることがさらに好ましい。
【0097】
本発明に用いることができるバインダーポリマーは、(a)アルカリ可溶性を付与するモノマー単位も、(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位も含まないエチレン性不飽和化合物に由来するモノマー単位を共重合成分として有していてもよい。このようなモノマー単位としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位が好ましい。特に、特開2007−272134号公報の段落0061〜0084に記載のアミド基(メタ)アクリル酸アミドに由来するモノマー単位が好ましく用いられる。
このモノマーの含有量は、総モノマー単位数を100とした場合、そのうちの5〜50単位であることが好ましく、5〜35単位であることがより好ましく、5〜25単位であることがさらに好ましい。
【0098】
本発明における感光層には、バインダーポリマーとして、前述のモノマー単位の組み合わせを有する付加重合体以外に、ウレタン樹脂(「ポリウレタン樹脂」ともいう。)を使用することが好ましく、側鎖に架橋性基を有するウレタン樹脂も使用することがより好ましい。
ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に画像形成層中で起こる化学反応によりバインダーポリマーを架橋することができる基のことである。このような機能を有する基であれば特にその化学構造は限定されないが、例えば、付加重合し得る官能基としてエチレン性不飽和基、エポキシ基/オキセタニル基等の環状エーテル基が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン原子、オニウム塩構造等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和基が好ましく、特開2007−17948号公報の段落0130〜0139に記載された官能基が含まれる。
【0099】
上記の側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、感光層の皮膜形成剤として機能するだけでなく、アルカリ性の処理液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性又は膨潤性であることが要求される。そのため、側鎖に架橋性基の他にアルカリ水可溶性基、例えばカルボキシル基(その塩を含む。)などを有する。ポリウレタン樹脂は、感光層の酸価が低くとも未露光部の現像性を低下させることなく、露光部の現像ダメージを抑制することができ、良好な汚れ性と高い耐刷性を兼ね備えることができる点で好ましい。
以下に側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂について、さらに詳しく説明する。
【0100】
本発明で特に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)カルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物及び必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、(v)アミノ基を有する化合物を重付加反応させることにより得ることができる。
【0101】
前記(i)、(ii)及び(iii)の化合物は特開2007−17948号公報の段落0142〜0167に記載された式(4)〜(10)及び具体例が挙げられる。
【0102】
ここで、ポリウレタン樹脂の側鎖に架橋性基を導入する方法としては、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に架橋性基を含有するジイソシアネート化合物を用いる方法が好適である。トリイソシアネート化合物と架橋性基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させることにより得ることできるジイソシアネート化合物であって、側鎖に架橋性基を有するものとしては、特開2007−17948号公報の段落0179〜0178の化合物が含まれる。
【0103】
(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物
ポリウレタン樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法としては、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物を用いる方法も採用できる。そのようなジオール化合物は、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルのように市販されているものも含まれ、ハロゲン化ジオール化合物、トリオール化合物、アミノジオール化合物と、不飽和基を含有するカルボン酸、酸塩化物、イソシアネート、アルコール、アミン、チオール、ハロゲン化アルキル化合物との反応により製造される化合物も含まれる。これら化合物の具体的例には、特開2007−17948号公報の段落0180〜0225に記載された一般式(A’)、式(a)〜(e)、式(11)〜(22)及び具体的化合物が含まれる。
【0104】
(v)アミノ基を有する化合物
画像形成層に使用できるバインダーポリマーとして、ポリウレタン樹脂の製造において、さらにアミノ基含有化合物を組み合わせてジイソシアネート化合物と反応させ、ウレア構造を形成してポリウレタン樹脂の構造に組み込んでもよい。アミノ基含有化合物には、特開2007−17948号公報の段落0227〜0230に記載された式(31)及び式(32)及び具体的化合物が含まれる。
【0105】
本発明に用いることができるバインダーポリマーには、ポリウレタン樹脂合成時に側鎖に架橋性基を導入して得られる前記のポリウレタン樹脂のほかに、特開2003−270775号公報に記載されるようなカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂に高分子反応で架橋性基を導入して得られるポリウレタン樹脂も含まれる。
【0106】
本発明では、特に、融点が45℃以上のモノマーと上記架橋性基を有するウレタン樹脂のうちTgが45℃以上、より好ましくは50℃以上の架橋性基を有するウレタン樹脂との組み合わせが特に好ましく用いられる。
かかるウレタン樹脂の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記ウレタン樹脂の各構成単位を表す括弧の右下の数字は、各構成単位のモル比を表す。
【0107】
【化37】

【0108】
感光層の現像性を維持するためには、使用されるバインダーポリマーは適当な分子量を有することが好ましく、重量平均分子量は5,000〜300,000であることがより好ましく、20,000〜150,000であることが特に好ましい。
【0109】
これらのバインダーポリマーは、画像形成層中に任意な量で含有させることができ、10〜90重量%であることが好ましく、30〜80重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、形成される画像強度等の点で好ましい結果が得られる。
【0110】
〔感光層のその他の添加剤〕
また、本発明の平版印刷版原版の感光層においては、感光層を形成するための組成物(感光性組成物)の製造中あるいは保存中においてエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。
適当な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の添加量は、感光層の全重量に対し、0.01重量%〜5重量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光性層の表面に偏在させてもよい。
高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層の全重量に対し、0.5重量%〜10重量%が好ましい。
【0111】
さらに感光層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。
着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6等)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。
染料及び顔料の添加量は、感光層の全重量に対し、0.5重量%〜5重量%が好ましい。
加えて、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。
これらの添加剤は、感光層の全重量に対し、10重量%以下が好ましい。
また、感光層を形成するための組成物には、塗布面状を向上するために界面活性剤を添加することができる。好適な界面活性剤としては、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤を挙げることができる。
【0112】
〔感光層の溶剤〕
本発明において、感光層を形成するために使用することができる組成物は、所望により各種表面処理を施した支持体上に、塗工するが、組成物を支持体上に塗工する際には種々の有機溶剤に溶かして使用することができる。
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等がある。
これらの溶媒は、1種単独又は2種以上混合して使用することができる。なお、塗布溶液中の固形分濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版における感光層の被覆量は、塗布乾燥後の重量で0.1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.3〜5g/m2の範囲であることがより好ましく、0.5〜3g/m2の範囲であることがさらに好ましい。
【0113】
(保護層(酸素遮断層))
本発明の平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、感光層上に保護層(酸素遮断層)を設けることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版における保護層は、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(cc/m2・day)であることが好ましい。酸素透過性Aが1.0(cc/m2・day)以上であれば、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じることもなく、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じることもない。
また、酸素透過性Aが20(cc/m2・day)以下であれば、感度の低下を招くこともない。また、保護層に望まれる特性としては、上記酸素透過性以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが好ましい。この様な保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0114】
保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、及び、現像除去性において最も良好な結果を与えることができるため、好ましい。
【0115】
保護層に用いることができるポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100モル%加水分解され、重合繰り返し単位が300〜2,400の範囲のものを挙げることができる。
具体的には、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。これらは単独又は混合して使用できる。
ポリビニルアルコールの保護層中の含有率は、20〜95重量%であることが好ましく、30〜90重量%であることがより好ましい。
【0116】
ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としては、ポリビニルピロリドン又はその変性物が酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましい。
保護層中のポリビニルピロリドン又はその変性物の含有率は、3.5〜80重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましく、15〜30重量%であることがさらに好ましい。
【0117】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVA(ポリビニルアルコール)の加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。
本発明における保護層の、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(cc/m2・day)であることが好ましく、1.5≦A≦12(cc/m2・day)であることがより好ましく、2.0≦A≦8.0(cc/m2・day)であることがさらに好ましい。上記範囲であると、製造時・生保存時に不要な重合反応を起こることを抑制でき、また、画像露光時においては不要なカブリ及び画線の太りを抑制することができる。
前記ポリビニルアルコール(PVA)等の(共)重合体の分子量は、2,000〜1,000万の範囲のものが好ましく使用でき、2万〜300万の範囲のものがより好ましく使用できる。
【0118】
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数重量%相当量添加して可撓性を付与することができる。
また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を(共)重合体に対して数重量%添加することができる。
保護層の膜厚は、0.5〜5μmであることが好ましく、1〜3μmであることが特に好ましい。
【0119】
また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。すなわち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改良すべく種々の提案がなされている。例えば、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60重量%混合し、重合層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが挙げられる。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0120】
なお、保護層には、記録層を露光する際に用いる光の透過性に優れ、かつ、露光に関わらない波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料)を添加してもよい。これにより、感度を低下させることなく、セーフライト適性を高めることができる。
【0121】
保護層の塗設量は、乾燥重量として、0.1〜10g/m2であることが好ましく、0.5〜5g/m2であることがより好ましい。
【0122】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版における支持体としては、従来公知の、平版印刷版に使用される支持体を限定なく使用することができる。また、前記支持体としては、親水性支持体であることが好ましい。
使用される支持体は寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のような金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれ、これらの表面に対し、必要に応じ親水性の付与や、強度向上、等の目的で適切な公知の物理的、化学的処理を施してもよい。
【0123】
特に、好ましい親水性支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板があげられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は特に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0124】
前記アルミニウム基板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。
【0125】
以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板をアルミニウム基板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10重量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
【0126】
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。また、本発明に用いることができるアルミニウム基板の厚みは、0.1mm〜0.6mmであることが好ましく、0.15mm〜0.4mmであることがより好ましく、0.2mm〜0.3mmであることがさらに好ましい。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。アルミニウム基板には、必要に応じて、後述の基板表面処理が施されても、施されなくてもよい。
【0127】
アルミニウム基板は、粗面化処理されることが好ましい。
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。さらに塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及び、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤とでアルミニウム表面を砂目立てするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができる。また、上記粗面化方法を単独又は組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、好適な陽極時電気量は50C/dm2〜400C/dm2の範囲である。さらに具体的には、0.1〜50重量%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
【0128】
このように粗面化処理したアルミニウム基板は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。
好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50重量%、20〜100℃である。
エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われることが好ましい。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような温度50〜90℃の15〜65重量%の硫酸と接触させる方法、及び、特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。以上のように処理された後、処理面の中心線平均組さRaが0.2〜0.5μmであれば、特に方法条件は限定しない。
【0129】
以上のようにして粗面化処理されたアルミニウム基板には、その後に陽極酸化処理がなされ酸化皮膜が形成される。陽極酸化処理は、硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。さらには第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10,000ppm程度含まれてもよい。
陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/m2の範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは、0.5〜1.5μmの範囲であることが好ましく、0.5〜1.0μmの範囲であることがより好ましい。
【0130】
さらに、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えば、ポリビニルホスホン酸、スルホ基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば、硼酸亜鉛)、黄色染料、又は、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。さらに特開平7−159983号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起こし得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0131】
その他好ましい例として、任意の支持体上に表面層として耐水性の親水性層を設けたものも上げることができる。この様な表面層としては例えば米国特許第3,055,295号明細書や、特開昭56−13168号公報記載の無機顔料と結着剤とからなる層、特開平9−80744号公報記載の親水性膨潤層、特表平8−507727号公報記載の酸化チタン、ポリビニルアルコール、珪酸類からなるゾルゲル膜等を挙げることができる。これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる感光層の有害な反応を防ぐため、かつ感光層の密着性向上等のために施されるものである。
【0132】
(中間層)
本発明の平版印刷版原版には、感光層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層を設けてもよい。
このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352824号、特開2001−209170号の各公報等に記載のものを挙げることができる。
【0133】
<平版印刷版の製版方法>
次に、本発明の平版印刷版の製版方法について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の平版印刷版原版を画像露光する露光工程、及び、現像液の存在下で非露光部の感光層を除去する現像工程を含むことを特徴とする。
以下に、本発明の製版方法に用いることができる現像液について説明する。
【0134】
(現像液)
本発明の平版印刷版の製版方法に用いることができる現像液は、特に限定されないが、例えば、無機アルカリ塩とノニオン系界面活性剤とを含有し、pHが11.0〜12.7であるものが好適に使用される。
【0135】
無機アルカリ塩としては適宜使用可能であるが、例えば、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、同リチウム、珪酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、同リチウム、第三リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、及び同アンモニウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
珪酸塩を使用する場合には、珪酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す。)との混合比率及び濃度の調製により、現像性を容易に調節することができる。現像液の中でも酸化珪素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。SiO2/M2Oの添加量は、現像液の重量に対して1〜10重量%が好ましく、3〜8重量%がより好ましく、4〜7重量%が最も好ましい。この濃度が前記の範囲において、現像性、処理能力の低下がなく、沈澱や結晶の生成もなく、さらに廃液時の中和の際にゲル化もなく、廃液処理に支障をきたすことがない。
【0137】
また、アルカリ濃度の微妙な調整、感光層の溶解性を補う目的で、補足的に有機アルカリ剤を併用してもよい。
有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。
これらの有機アルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0138】
界面活性剤としては、適宜使用可能であるが、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤等を挙げることができる。これらの中でも、特に好ましいのはポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤である。
【0139】
ポリオキシアルキレンエーテル基を含有する界面活性剤としては、下記式(XI)の構造を有する物が好適に使用される。
40−O−(R41−O)p−H (XI)
式中、R40は、3〜15のアルキル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、又は、炭素数4〜15の複素芳香族環基(なお、置換基としては炭素数1〜20のアルキル基、Br、Cl、I等のハロゲン原子、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、炭素数7〜17のアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜15のアシル基が挙げられる。)を表し、R41は、炭素数1〜100のアルキレン基を示し、pは1〜100の整数を表す。なお、これら各基は置換基を有していてよく、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0140】
前記式(XI)の定義において、「芳香族炭化水素基」の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アンスリル基、ビフェニル基、フェナンスリル基等が挙げられる。
また、「複素芳香族環基」の具体例としては、フリル基、チオニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラニル基、ピリジニル基、アクリジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオニル基、ベンゾピラニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等が挙げられる。
【0141】
また、式(XI)の(R41−O)pの部分は、上記範囲であれば、2種又は3種の基であってもよい。具体的には、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソプロピルオキシ基、エチレンオキシ基とブチレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソブチレン基等の組み合わせのランダム又はブロック状に連なったもの等が挙げられる。
本発明において、ポリオキシアルキレンエーテル基を有する界面活性剤は単独又は複合系で使用され、現像液中、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%添加することが効果的である。上記範囲であると、現像性に優れ、また、現像時のダメージを低減することができるため、印刷版の耐刷性に優れる。
【0142】
前記式(XI)で表されるポリオキシアルキレンエーテル基を有するノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類が挙げられる。
【0143】
界面活性剤は、1種単独、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、界面活性剤の現像液中における含有量は、0.1〜20重量%の範囲が好適に使用される。
【0144】
本発明の製版方法で用いることができる現像液のpHは、画像形成及び露光部の現像でのダメージの点から、11.0〜12.7であることが好ましく、11.5〜12.5であることがより好ましい。
【0145】
また、本発明で用いることができる現像液の導電率は、3〜30mS/cmであることが好ましく、5〜20mS/cmであることが特に好ましい。上記範囲であると、アルミニウム支持体上の感光層成分の溶出が容易であり、印刷時における汚れを抑制でき、また、感光層の溶出速度が適度であり、未露光部に残膜が生じることを防ぐことができる。
【0146】
(露光及び現像処理)
露光処理に用いられる光源としては、700nm〜1,400nmの波長で露光し得るものであれば、如何なるものでもよいが、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられる。中でも、750nm〜1,400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射される単位あたりのエネルギー量は10〜300mJ/cm2であることが好ましい。
【0147】
この露光処理では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さい条件下で露光が行われることをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明では、このオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
【0148】
露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0149】
画像露光後、現像までの間に、記録層の硬化率を高める目的で50℃〜140℃の温度で1秒〜5分の時間の加熱プロセスを行ってもよい。加熱温度が前記の範囲において、硬化率アップの効果があり、未露光部での暗重合による残膜も生じない。
【0150】
また、本発明におけるネガ型平版印刷版原版の感光層の上には、前述したように、酸素遮断層(保護層)を設けていてもよく、現像液を用いて、酸素遮断層の除去と記録層の未露光部の除去を同時に行う方法、又は、水、温水で酸素遮断層を先に除去し、その後未露光部の記録層を現像で除去する方法が知られている、これらの水又は温水には特開平10−10754号公報に記載の防腐剤等、特開平8−278636号公報に記載の有機溶剤等を含有させることができる。
【0151】
本発明におけるネガ型平版印刷版の前記現像液による現像は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理したネガ型平版印刷版を現像液に浸漬してブラシで擦る等により行う。
【0152】
さらに自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。このようにして現像処理されたネガ型平版印刷版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明においてネガ型平版印刷版の後処理には、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0153】
上記のような処理により得られた印刷版は特開2000−89478号公報に記載の方法による後露光処理やバーニングなどの加熱処理により、耐刷性を向上させることができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0154】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0155】
(アルミニウム支持体の作製方法)
厚さ0.3mmのアルミニウム板を10重量%水酸化ナトリウム水溶液に60℃で25秒間浸漬してエッチングし、流水で水洗後、20重量%硝酸水溶液で中和洗浄し、次いで水洗した。これを正弦波の交番波形電流を用いて1重量%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1重量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後、30重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20重量%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2の条件で陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように、2分間陽極酸化処理した。その表面粗さを測定したところ、0.3μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0156】
(中間層の形成)
前記電界粗面化処理されたアルミニウム板に、まずバーコーターを用いて下記中間層液を塗布したあと150℃で4秒間乾燥した。乾燥後の中間層塗布重量は25mg/m2であった。
【0157】
[中間層液]
・下記ゾル液 100重量部
・メタノール 900重量部
【0158】
[ゾル液]
・ホスマーPE(ユニケミカル(株)製) 5重量部
・メタノール 45重量部
・水 10重量部
・85重量%リン酸 5重量部
・テトラエトキシシラン 20重量部
・3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン 15重量部
【0159】
(感光層の形成)
この上記の中間層上に、下記組成の光重合性組成物を乾燥塗布重量が1.3g/m2となるようにバーコーターを用いて塗布し、95℃で50秒間乾燥させ、実施例及び比較例の感光層を形成した。
【0160】
[光重合性組成物]
・シアニン色素(表1に記載の化合物) 0.31重量部
・モノマー(表1に記載の化合物) 4.2重量部
・重合開始剤(表1に記載の化合物) 1.2重量部
・バインダーポリマー(表1に記載の化合物) 3.6重量部
・ε−フタロシアニン分散物 0.92重量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF780 0.05重量部
(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製)
・添加剤 E−1(後述の化合物) 0.6重量部
・添加剤 E−2(後述の化合物) 0.6重量部
・メチルエチルケトン 62重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 57重量部
【0161】
【表1】

【0162】
表1中に示すM−1、M−11、N−2、(I)−21、S−19は前述のものを使用した。また、D−1〜D−3、D’−1、D’−2、M’−1〜M’−4、B−1〜B−4、E−1、E−2は、以下に示すものを使用した。
【0163】
【化38】

【0164】
【化39】

【0165】
【化40】

【0166】
【化41】

【0167】
【化42】

【0168】
【化43】

【0169】
なお、前記B−1〜B−4の各構成単位を示す括弧の右下の数字は、各構成単位のモル比を表す。
【0170】
(保護層の形成)
上記の記録層表面に、ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)と、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビスコールK−30)との混合水溶液をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させて保護層を形成して、平版印刷版原版(ネガ型平版印刷版原版)を作製した。なお、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンの含有量の比率は、4/1(重量比)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は2.45g/m2であった。
【0171】
[評価]
<経時安定性>
得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter3244にて、解像度1,200dpiでAM100線の50%平網画像を、出力4.5W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー70mJ/cm2で露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。現像液は、富士フイルム(株)製シリケート含有現像液LP−DZ(原液使用、水での希釈不要、25℃でのpH12.30)を用い、フィニッシャーは、富士フイルム(株)社製FP−2Wの1:3水希釈液を用いた。現像機はG&J社製PSプロセッサーIP850HDを用い、プレヒート温度115℃、液温を25℃に保ち、現像時間28秒で現像した。現像して得られた平版印刷版の版上網点面積率(感度(1))をGretagMacbeth社製iC PlateIIにてn5測定した。
また、得られた平版印刷版原版を合紙とともにアルミクラフト紙で密閉し、60℃で3日放置したものを用いた以外は上記と全て同じ方法で露光、現像して得られた平版印刷版の版上網点面積率をGretagMacbeth社製iC PlateIIにてn5測定した平均値を長期保管後の感度の指標とし、前記感度(1)(平版印刷版原版が新しい状態での感度)を基準とした変化量Δを経時安定性の指標とした。Δが小さいほど経時安定性に優れる。
【0172】
評価結果を表2に示す。
【0173】
【表2】

【0174】
実施例により、本発明における式(I)で表されるシアニン色素とウレタンモノマーとを組み合わせた場合に、特異的に経時安定性が良好であることが分かった。本発明と異なるシアニン色素を用いた比較例2〜4は経時安定性が劣った。ウレタンモノマーとは異なるモノマーを用いた比較例1も、経時安定性が劣った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、
(A)下記式(I)で表されるシアニン色素、
(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物、
(C)重合開始剤、及び、
(D)バインダーポリマー
を含有する感光層を有することを特徴とする
平版印刷版原版。
【化1】

(式(I)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、S、O、NR及びC(アルキル)2よりなる群から選ばれた二価の連結基を表し、R1a及びR1bはそれぞれ独立に、アルキル基、アルキルスルホネート基、アルキルカルボキシレート基又はアルキルアンモニウム基を表し、R2は、SR、SO2R、又は、ORを表し、R3a及びR3bはそれぞれ独立に、アルキル基、COOR、OR、SR、NR2若しくはハロゲン原子を表すか、又は、2つ以上のR3a若しくは2つ以上のR3bが結合して形成される縮合ベンゼン環を表し、Rはアリール基を表し、Zは式(I)で表されるシアニン色素全体として電荷的中性を得るのに十分なアニオンを表し、R4a及びR4bは、共に水素原子を表すか、又は、R4aとR4bとが結合し、かつ長さが炭素数2若しくは3である二価の炭化水素基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(I)におけるR1a及びR1bがそれぞれ独立に、アルキル基である請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記式(I)におけるR2が、SRである請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記式(I)におけるR3a及びR3bがそれぞれ独立に、アルキル基、又は、ハロゲン原子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記式(I)におけるX1及びX2がそれぞれ独立に、C(アルキル)2である請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
前記(A)式(I)で表されるシアニン色素が、下記式(II)で表されるシアニン色素である請求項1〜5いずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化2】

(式(II)中、Z’-は一価のアニオンを表す。)
【請求項7】
前記(B)ウレタン結合を有するエチレン性不飽和化合物が、下記式(III)で表される化合物を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化3】

【請求項8】
前記(C)重合開始剤が、オニウム塩である請求項1〜7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記(D)バインダーポリマーが、ウレタン樹脂である請求項1〜8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
前記(D)バインダーポリマーが、側鎖に架橋性基を有するウレタン樹脂である請求項1〜9のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。

【公開番号】特開2010−128063(P2010−128063A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300686(P2008−300686)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】