平面型光波回路
【課題】集積型光受信機または光送信機において、温度変化により発生する光軸ズレと、光機能回路の特性劣化の双方を抑制する。
【解決手段】基板と、該基板とは異なる材料からなり、前記基板上に形成された導波路型の光機能回路とを有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている導波路領域を含み、前記導波路領域が形成された部分の前記基板の底面においてのみ、前記平面型光波回路を保持する固定用マウントに固定されている。
【解決手段】基板と、該基板とは異なる材料からなり、前記基板上に形成された導波路型の光機能回路とを有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている導波路領域を含み、前記導波路領域が形成された部分の前記基板の底面においてのみ、前記平面型光波回路を保持する固定用マウントに固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子または受光素子ともに集積されて光送受信機を構成する平面型光波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の進展に伴い、光部品の開発が益々重要となっている。とりわけ、光送受信器は、伝送速度や応答速度の高速化が検討され、通信容量の拡大が進んでいる。一般的な送受信器の構成は、光半導体を用いて作製される発光素子または受光素子と、出力用または入力用の光ファイバとから構成され、それらがレンズを介して光結合されている。例えば、光受信器の場合、入力側の光ファイバから出射された光は、レンズにより受光素子に結像され、直接検波(強度検波)される。
【0003】
光伝送システムにおける変復調処理技術に目を転ずると、位相変調方式を用いた信号伝送が広く実用化されている。位相シフトキーイング(PSK)方式は、光の位相を変調することで信号を伝送する方法であり、変調の多値化などにより、従来に比べ、飛躍的な伝送容量の拡大が可能となる。
【0004】
このようなPSK信号を受信するには、光の位相を検波する必要がある。受光素子は、信号光の強度を検波することはできるが、光の位相を検波することができない。従って、光の位相を光強度に変換する手段が必要となる。そこで、光の干渉を用いることにより、位相差を検波する方法等がある。信号光と他の光(参照光)とを干渉させ、その干渉光の光強度を受光素子で検波することにより、光の位相情報を得ることが可能となる。参照光として、別途用意した光源を用いるコヒーレント検波、信号光自体を一部分岐して参照光とし、両者を干渉させる差動検波がある。このように、従来の強度変調方式のみを用いた光受信機に比べ、近年のPSK方式の光受信機には、光の干渉により位相情報を強度情報に変換する、光干渉回路が必要となっている。
【0005】
このような光干渉回路は、平面型光波回路(PLC:Planar Light Circuit)を用いて実現できる。平面型光波回路は、量産性、低コスト性および高信頼性の面から優れた特徴をもち、様々な光干渉回路が実現可能である。実際に、PSK方式の光受信機に用いられる光干渉回路として、光遅延干渉回路、90度ハイブリッド回路等が実現され、実用化されている。このような平面型光波回路は、標準的なフォトグラフィー法、エッチング技術およびFHD(Flame Hydrolysis Deposition)等のガラス堆積技術によって作製されている。
【0006】
具体的な製造プロセスを概観すれば、最初に、Si等の基板上に、石英ガラス等を主原料とするアンダークラッド層と、クラッド層より高い屈折率を持つコア層とを堆積させる。その後、コア層に様々な導波路パターンを形成し、最後にオーバークラッド層によってコア層から形成された導波路を埋め込む。このようなプロセスにより、導波路型の光機能回路が作製される。信号光は、上述のようなプロセスを経て作製された導波路内に閉じ込められ、平面型光波回路内部を伝搬する。
【0007】
図1に、従来の平面型光波回路と光受信器との光接続方法を示す。PSK方式の光受信機における平面型光波回路と光受信器との光接続方法に目を転ずると、これらの基本的な接続方法は、図1に示すような、単純なファイバ接続である。入出力端に光ファイバ3a,3bが接続された平面型光波回路1と、入力光ファイバ3bを持つ光受信器2とを、光ファイバで繋ぐことにより光結合を行う。光結合に使用する光ファイバの本数は、平面型光波回路から出力される出力光の数により決まり、複数本になる場合もある。しかしながら、このような光ファイバ接続を用いた光受信機の構成では、サイズが大きくなるという問題があった。そこで、平面型光波回路の出力と光受信器の入力とを、レンズを用いて直接的に光結合し、全体を1つのパッケージに集積することにより、小型な構成が可能となる。このような、平面型光波回路と光受信器とが直接的に光結合された形態の光受信機を、集積型光受信機と呼ぶ。
【0008】
集積型光受信機を実現するためには、平面型光波回路の固定方法が特に重要となる。平面型光波回路から出力される光を空間中に伝搬させ、レンズ等により受光素子に光結合する場合、光の出射端、レンズ、受光素子の位置関係が変化すると、全ての光を受光素子により受光できなくなり、損失となる。特に、光受信機を納めるパッケージの温度、環境温度、それぞれの素子温度等が変化した場合、熱膨張の影響によりこれらの位置が変動するため、このような問題が顕著になる。このため、低損失な光結合を実現するためには、環境温度等が変化した場合でも、それぞれの位置関係が、少なくとも相対的に、変動しないことが必要となる。
【0009】
特に、平面型光波回路は、環境温度に対し、熱膨張による形状変化が受光素子等に比べ非常に大きい。さらに、平面型光波回路は、光受信機の中で占める面積が、受光素子に比べて1桁から2桁程度大きく、熱膨張による形状の変化も1桁から2桁程度大きい。また、平面型光波回路を構成する基板と堆積された薄膜ガラスとは、大きな熱膨張係数差を持つため、温度変化によって大きなそりが発生する。このため、受光素子に対する平面型光波回路からの出射光の位置変位および出射角度変化が非常に問題となる。これらの2つの変化により平面型光波回路からの出射光の位置や角度が変化し、光軸ズレが発生する。光軸ズレは受光素子への光結合を劣化させ、損失を発生する。集積型光受信機の実現には、このような光軸ズレを解消、もしくは、無害化することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−175364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図2に、従来の集積型光受信機の内部構造を示す。上述したような、温度変化による光軸ズレが発生しないように、平面型光波回路の底面のほぼ全面を、しっかりと固定する方法が知られている。図2に示した集積型光受信機では、光機能回路として光干渉回路が形成された平面型光波回路13と、レンズ14と、受光素子15とは、それぞれ固定用マウント12a,12b,12cを支持部材として、ベース基板11に固定されている。光ファイバ16と平面型光波回路13とは、光ファィバ固定部品17を介して接続されている。集積型光受信機では、光ファイバ16から入力された光は、平面型光波回路13において干渉したのち、レンズ14により受光素子15に結合する。
【0012】
固定用マウント12aと平面型光波回路13とは、接着剤18または半田により固定される。平面型光波回路13の底面のほぼ全面を、しっかりと固定用マウントに固定することにより、温度による膨張やそり変化を抑えている。また、レンズ14、受光素子15も固定用マウントに固定することにより、温度変化による光軸ズレが発生しないようにしている。
【0013】
しかしながら、図2に示す構成では、温度変化による光軸ズレは大きく抑制できるが、一方で、温度変化による平面型光波回路の特性変化が顕著になる。上述のように、平面型光波回路13は、大きな熱膨張係数差を持つSi基板13aと石英ガラス層13bとから構成されているため、温度変化によるそり変化や、熱膨張が大きい。図2に示すような構成では、平面型光波回路13の底面が全面固定されているため、熱膨張やそり変化が抑制される。
【0014】
一方で、この場合、大きな熱応力がSi基板13aと石英ガラス層13bとの間に発生する。応力は、光弾性効果を通じて、石英ガラス層13b内部に屈折率変化を引き起こす。平面型光波回路13内に構成された光干渉回路は、干渉特性を制御するために、導波路の長さと屈折率が正確に調整されている。応力を介して発生する屈折率変化は、等価回路長の変化をもたらし、干渉計の特性を変化させるため、光干渉回路の特性を劣化させる。
【0015】
これに対して、熱応力の発生を抑制することにより光学特性の変化を抑制するために、接着剤18として、弾性接着剤、ペーストなどの柔らかい接着剤、または固定用ペーストを用いたとすると(例えば、特許文献1参照)、前述の光軸ズレの影響が顕著となり、損失が発生する。
【0016】
本発明の目的は、集積型光受信機または光送信機において、温度変化により発生する光軸ズレと、光機能回路の特性劣化の双方を抑制することができる平面型光波回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施態様は、このような目的を達成するために、基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている導波路領域を含み、前記導波路領域が形成された部分の前記基板の底面においてのみ、前記平面型光波回路を保持する固定用マウントに固定されていることを特徴とする。
【0018】
他の実施態様は、基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、該中間固定用マウントが、前記出射光または入射光を透過する材料からなり、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする。
【0019】
さらに他の実施態様は、基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、該中間固定用マウントの一部に、前記出射光または入射光を透過する材料からなる窓、または前記出射光または入射光を透過するよう切り欠きが形成されており、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、平面型光波回路上の光回路のうち、特に光軸ズレを防ぐために強固に固定しなければならない光入出力用の導波路領域のみを固定用マウントに固定する集積型光受信機または光送信機において、温度変化により発生する光軸ズレと、光機能回路の特性劣化の双方を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の平面型光波回路と光受信器との光接続方法を示す図である。
【図2】従来の集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【図4】実施例1にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図5】本発明の実施例2にかかる集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【図6】実施例3にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図7】実施例1および3における平面型光波回路の応力解析結果を示す図である。
【図8】実施例4にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図9】実施例5にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図10】実施例6にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。
【図11】本発明の実施例7にかかる集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、集積型光受信機を例として説明するが、例えば、受光素子を発光素子と、出射光を入射光と出射端面を入射端面と読み替えれば、光送信機にも適用できることは明らかである。
【0023】
本実施形態においては、平面型光波回路上の光回路のうち、特に光軸ズレを防ぐために強固に固定しなければならない光入出力用の導波路領域のみを固定用マウントに固定する。応力の影響を受けやすい光干渉回路などの光機能回路が形成された領域は、固定用マウントには固定されない。これにより、温度変化により歪みや反りが発生しても、光機能回路の部分は、応力の影響が最小限で済み、光機能回路の特性劣化を抑制することができる。また、導波路領域は、固定用マウントに固定されているので、温度変化により発生する光軸ズレを抑制することができ、光送受信機として温度変化に対する動作マージンを大きく取ることが可能となる。
【0024】
また、温度変化に対する動作マージンが大きくなると、光送受信機に設けられるペルチェ素子等の恒温装置への要求も緩和されるため、光送受信機のコスト削減と消費電力の低減を図ることもできる。
【実施例1】
【0025】
図3に、本発明の実施例1にかかる集積型光受信機の内部構造を示す。光機能回路として光干渉回路が形成された平面型光波回路33と、レンズ34と、受光素子35とは、それぞれ固定用マウント32a,32b,32cを支持部材として、ベース基板31に固定されている。光ファイバ36と平面型光波回路33とは、光ファィバ固定部品37を介して接続されている。集積型光受信機では、光ファイバ36から入力された光は、平面型光波回路33において干渉等の光信号処理がなされた後、レンズ34により受光素子35に結合する。平面型光波回路33は、Si基板33a上に、コア、クラッドからなる導波路型の光機能回路が形成された石英ガラス層33bが積層されている。
【0026】
図4に、実施例1にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。図3に示した平面型光波回路33の固定方法を詳細に示す。平面型光波回路33の石英ガラス層33bには、光機能回路として光干渉回路が形成されている領域33yと、レンズ34への出射光が出射される光導波路の出射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている(光干渉回路が形成されていない)導波路領域33x(図4(d)参照)とが形成されている。固定用マウント32aは、図4(a),(b)に示したように、側面から見ると、逆L字形状または鉤型の形状しており、平面型光波回路33上の光回路のうち、導波路領域33x(図4(d)参照)のみを接着剤38により固定する。
【0027】
このとき、平面型光波回路33の導波路領域33xの下部の基板底面と、固定用マウント32aの固定部分の上面とは平行になる。また、導波路領域33xの出射端面が形成された一辺が、固定用マウント32aの固定部分の一辺よりも、接着剤38の厚みに対して100倍程度の長さだけ外側に出るように固定する(図4(c)参照)。これにより、温度変化による平面型光波回路33のそり変化(図4(a),(b)参照)、熱膨張による水平方向(平面型光波回路33の回路平面に対して)への位置変化を受けることなく、導波路領域33xの出射端の位置を固定することができる。レンズ34、受光素子35も固定用マウントに固定されているので、温度変化による光軸ズレが発生しない。
【0028】
平面型光波回路33の光干渉回路の領域33yは、固定用マウント32aには固定されず、固定用マウント32aから浮いた状態になっている。温度変化によって平面型光波回路33にそりが生じても、自在に変化することができるので(図4(a),(b)参照)、応力の影響を受け難い。
【0029】
実装により発生する応力や応力変化は、光導波路の複屈折変化を引き起こす。光干渉回路は複屈折変化に対して敏感であり、特性劣化を受けやすいため、光干渉回路の領域33yを固定用マウント32aに固定しないことにより、特性の安定化を図ることができる。一方、導波路領域33xは、固定用マウント32aに固定しているが、平面型光波回路33のそり変化による応力の影響が、全面を固定している場合と比較して小さいので、複屈折変化による特性劣化は小さくすることができる。
【0030】
固定用マウント32aのうち平面型光波回路33が固定されていない部分(非固定部分)は、温度変化による平面型光波回路33のそり変化が発生しても、平面型光波回路33と非固定部分の上面が接触しない用に、固定部分と高低差をつける必要がある。そり変化が生じた時に、固定用マウント32aに平面型光回路33が接触すると、基板への応力が発生し、特性劣化に繋がるからである。平面型光波回路33が、Si基板と石英系ガラス材料から作成されている場合、非固定部分と固定部分との段差h(図4(a)参照)は、数100μm程度、設ける必要がある。
【0031】
導波路領域33xの出射端面は、固定用マウント32aの固定部分の側面と一致しているか、やや外側であること(図4(c)において、平面型光波回路33が固定用マウント32aの固定部分の側面から右方にずれていること)が好ましい。出射端面が固定部分の側面よりも内側であっても(図4(c)において、平面型光波回路33が固定用マウント32aの固定部分の側面から左方にずれていても)、同様の効果を奏することはできる。但し、この場合は、固定用の接着剤38が出射端面に回りこむ可能性が高くなるので、平面型光波回路33の基板厚を厚くするか、接着剤38がはみ出さないように、極力薄く塗布する必要があるなど、実装が難しくなる。
【0032】
一方、導波路領域33xの出射端面を、固定用マウント32aの固定部分の側面に対して、接着剤38の厚さ(5〜20μm)の1000倍以上の長さだけ外側に出すと、今度は温度変化による平面型光波回路33のそり変化が発生したときに、導波路領域33xの出射端面のズレが光軸に対して無視できない大きさになる。そのため、出射端面を固定部分の側面に対して外側に出す長さは、接着後に接着剤38のはみ出す量の目安となる、接着剤38の厚さに対して0倍以上1000倍未満であればよい。10倍以上500倍未満であれば、特に反りの影響を受けることなく出射端面への接着剤の回り込みの防止を確実に図ることが可能である。
【0033】
なお、平面型光波回路33が、Si基板と石英系ガラス材料から作成されている場合について述べたが、全てを半導体材料またはガラス系材料などで構成してもよいし、LiNbO3などの誘電体材料などで構成してもよい。いずれの場合であっても、平面型光波回路の実装時、温度変化時の応力の影響を抑制することができる。
【実施例2】
【0034】
図5に、本発明の実施例2にかかる集積型光受信機の内部構造を示す。実施例1の集積型光受信機との相違点は、平面型光波回路43にある。平面型光波回路43の導波路領域の出射端面が、平面型光波回路43の回路平面に対して鉛直方向に斜め加工されている。斜めに加工することにより、出射端面における反射を抑制することができる。このとき、導波路領域の出射端面の下辺と、固定用マウント32aの固定部分の側面との位置関係は、実施例1に準拠すればよい。
【実施例3】
【0035】
図6に、実施例3にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。温度変化や実装時に特性が劣化しないように、さらに、平面型光波回路と固定用マウントの固定部分を限定することもできる。具体的には、図6(a)に示すように、図4に示した実施例1の固定用マウント32aよりも、固定部分の形状を限定した固定用マウント52aを用いる。図6(b)に示すように、平面型光回路53の導波路領域53xを、固定用マウント52aの固定部分の形状に合わせて出射端面の一辺の一部に限定すると、熱膨張による水平方向への位置変化を受けることなく、導波路領域53xの出射端の位置を固定することができる。これにより、実施例1,2と比較して、さらに実装時の応力や、温度変化に対する応力変化を抑制することができる。
【0036】
なお、導波路領域53xの出射端面と、固定用マウント52aの固定部分の側面との位置関係は、実施例1に準拠すればよい。
【0037】
図7に、実施例1および3における平面型光波回路の応力解析結果を示す。図7(a)は、図4に示した実施例1の固定方法による解析結果であり、図7(b)は、図6に示した実施例3の固定方法による解析結果である。平面型光波回路33は、22.5mm角の正方形であり、固定用マウント32aの固定部分の大きさは、22.5mm×3.0mm、非固定部分と固定部分との段差h=0.1mmである。平面型光波回路53も、22.5mm角の正方形であり、固定用マウント52aの固定部分の大きさは、5.0mm×3.0mm、非固定部分と固定部分との段差h=0.1mmである。いずれも、固定用マウントは、コバールからなり、平面型光波回路は、1mm厚のSi基板上に、40μm厚の石英ガラス層が堆積されている。
【0038】
図は、環境温度を25℃から85℃まで変化させた際に発生する平面型光波回路への応力変化を示す。図7(a)の解析結果が示すように、平面型光波回路を固定用マウントに固定する部分を導波路領域に限定することにより、応力の影響が、光干渉回路の領域に及ばないことがわかる。さらに、図7(b)を参照すると、導波路領域を限定して固定部分を限定することにより、応力の影響が小さくなり、限定的な領域にとどまることが分かる。以上により、平面型光波回路の実装時、温度変化時の光干渉回路の特性変化を抑制することができる。
【実施例4】
【0039】
実施例1−3では、平面型光波回路を、直接、固定用マウントに固定していた。一般的に、固定用マウントは金属から構成される。平面型光波回路の基板は、Si基板等を用いることが多いため、両者の熱膨張係数が異なる。従って、環境温度が変化した際に、それぞれが膨張または収縮する量が異なるため、歪が発生する。実施例1−3では、その歪みの影響を受けにくい平面型光波回路の導波路領域で固定用マウントに固定していたが、さらに歪みを低減させる必要がある場合は、実施例4のように、固定用マウントとは異なる材料からなる中間固定用マウントを介して、平面型光波回路と固定用マウントとを固定する。
【0040】
図8に、実施例4にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。図8(a)に示すように、平面型光波回路73は、中間固定用マウント72dを介して、固定用マウント72aに固定される。中間固定用マウント72dの熱膨張係数は、固定用マウント72aの熱膨張係数よりも平面型光波回路73の基板(例えば、Si基板)の熱膨張係数に近い値とする。さらには、平面型光波回路73の基板の熱膨張係数と固定用マウント72aの熱膨張係数の中間の値、または、平面型光波回路73の基板の熱膨張係数と同じ値が好適である。
【0041】
中間固定用マウント72dの熱膨張係数の値を中間の値にすると、固定用マウント72aと、平面型光波回路73に与える歪は、それぞれ少なくなる。
【0042】
一方、平面型光波回路73の光干渉回路の特性劣化を防ぐことを優先するならば、光干渉回路側への歪を極力避けるために、平面型光波回路73の基板と同等な熱膨張係数を持つ材料により中間固定用マウント72dを形成する。典型的には、中間固定用マウント72dと平面型光波回路73の基板とを同じ材料で作製する。これにより、温度変化による光軸ズレや、実装時の光干渉回路の特性劣化を防ぐことができる。
【0043】
上述したように、平面型光波回路の導波路領域の出射端面の反射を抑制するためには、図8(b)に示すように、出射端面を斜め加工した平面型光波回路83を中間固定用マウント72dに固定しても良い。
【0044】
平面型光波回路73,83の導波路領域の出射端面は、中間固定用マウント72dの側面と一致しているか、やや外側であること(図8(a),(b)において、平面型光波回路73,83が中間固定用マウント72dの側面から右方にずれていること)が好ましい。出射端面が中間固定用マウント72dの側面よりも内側であっても(図8(a),(b)において、平面型光波回路73,83が中間固定用マウント72dの側面から左方にずれていても)、同様の効果を奏することはできる。但し、この場合は、固定用の接着剤78aが出射端面に回りこむ可能性が高くなるので、平面型光波回路73,83の基板厚を厚くするか、接着剤78aがはみ出さないように、極力薄く塗布する必要があるなど、実装が難しくなる。
【0045】
一方、平面型光波回路73,83の導波路領域の出射端面を、中間固定用マウント72dの固定部分の側面に対して、接着剤78aの厚さ(5〜20μm)の1000倍以上の長さだけ外側に出すと、今度は温度変化による平面型光波回路73,83のそり変化が発生したときに、導波路領域の出射端面のズレが光軸に対して無視できない大きさになる。そのため、出射端面を固定部分の側面に対して外側に出す長さは、接着後に接着剤78aのはみ出す量の目安となる、接着剤78aの厚さに対して0倍以上1000倍未満であればよい。10倍以上500倍未満であれば、特に反りの影響を受けることなく出射端面への接着剤の回り込みの防止を確実に図ることが可能である。
【実施例5】
【0046】
図9に、実施例5にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。実施例4で使用した中間固定用マウントを透明材料とすることで、平面型光波回路の導波路領域の出射端面を、中間固定用マウントに固定する。図9(a)に示すように、固定用マウント92aの上面に、接着剤98bにより中間固定用マウント92dが固定される。平面型光波回路93の導波路領域の出射端面は、中間固定用マウント92dの側面に、直接、接着剤98aにより固定される。平面型光波回路93から出射された光は、中間固定用マウント92dを透過して、レンズ、受光素子に結合する。
【0047】
この方法によれば、平面型光波回路の実装時の応力が最も少なく、平面型光波回路の特性劣化を抑制することができる。また、そり変化による光軸ズレも最も少ない構成である。透明材料とは、平面型光波回路の使用光波長付近で、吸収等の損失が無い材料であり、石英等が好ましい。
【0048】
上述したように、平面型光波回路の導波路領域の出射端面の反射を抑制するためには、図9(b)に示すように、出射端面を斜め加工した平面型光波回路103を中間固定用マウント92eに固定しても良い。
【実施例6】
【0049】
図10に、実施例6にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。実施例4で使用した中間固定用マウントの一部に、出射光を透過する透明材料からなる窓が形成されており、平面型光波回路の導波路領域の出射端面を、中間固定用マウントの窓に合わせて固定する。固定用マウント92aの上面に、接着剤98bにより中間固定用マウント92fが固定される。平面型光波回路93の導波路領域の出射端面は、中間固定用マウント92fの側面に、直接、接着剤98aにより固定される。平面型光波回路93から出射された光は、中間固定用マウント92fの窓99を透過して、レンズ、受光素子に結合する。
【0050】
この方法によれば、平面型光波回路の実装時の応力が最も少なく、平面型光波回路の特性劣化を抑制することができる。また、そり変化による光軸ズレも最も少ない構成である。透明材料とは、平面型光波回路の使用光波長付近で、吸収等の損失が無い材料であり、石英等を用いることができる。また、平面型光波回路93と中間固定用マウント92fとを固定することができれば、中空構造の窓99としてもよいし、中間固定用マウント92fの一面を切り欠いた空間に光信号が通過できるようにしてもよい。なお、実施例6では中間固定用マウントの一部に窓を形成したが、中間固定用マウントを固定用マウントの固定部分と読み替えて、固定用マウントの固定部分に形成したものを使用しても良い。
【実施例7】
【0051】
光干渉回路の種類によっては、干渉計内に位相シフタが必要な場合がある。一般的に、位相シフタは、導波路上部に形成したヒータにより実現している。位相シフタの動作は、導波路を局所的に加熱することにより屈折率変化を誘起し、導波路を透過する光の位相をシフトさせる。このような位相シフタを光干渉回路に配置した場合、発生する熱を効率よく、外部に逃がす必要がある。なぜなら、発生する熱を平面型光波回路外部に逃がすことができないと、平面型光波回路自体の温度が上昇し過ぎてしまい、耐熱温度を超えてしまう恐れがあるためである。
【0052】
図11に、本発明の実施例7にかかる集積型光受信機の内部構造を示す。平面型光波回路113、レンズ114、受光素子115は、それぞれ固定用マウント112a,112b,112cを支持部材として、ベース基板111に固定されている。光ファイバ116と平面型光波回路113とは、光ファィバ固定部品117を介して接続されている。さらに、平面型光波回路113の光干渉回路の利用域の底面の基板と、固定用マウント112aの非固定部分の上面との間に、熱伝導性の高いペースト119を配置する。
【0053】
これにより、平面型光波回路113上で発生した熱は、熱伝導ペースト119および固定用マウント112aを介して、集積型光受信機のパッケージ外部へ放出される。また、熱伝導ペースト119は、その形状が変形しやすく、環境温度変化による平面型光波回路113のそり変化に追従して、形状が変化する。そのため、平面型光波回路113への余計な応力を低減できる。実施例6では、熱伝導ペーストを用いたが、熱伝導性が高く、かつ、自己の形をある程度自由に変化させることができる、ペースト、ゴム状、またはゲル状のものであればよく、熱伝導ペーストに限るものではない。
【0054】
なお、本実施例のように、熱伝導性が高く、かつ、その形状をある程度自由に変化させることができる、ペースト、ゴム状、またはゲル状のものを、平面型光波回路の熱を固定用マウントを介して外部に逃がすための材料として用いるという構成は、他の実施例の構成にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、光伝送システムにおける光通信装置に利用することができる。特に、位相変調された光信号を受信する集積型受信機に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
11,31,111 ベース基板
12a−c,32a−c,52a,72a,92a,112a−c 固定用マウント
72d,92d 中間固定用マウント
13,33,43,53,73,83,93,103,113 平面型光波回路
13a,33a Si基板
13b,33b 石英ガラス層
33x,53x 導波路領域
33y,53y 光干渉回路の領域
14,34,114 レンズ
15,35,115 受光素子
16,36,56,76,96,116 光ファイバ
17,37,57,77,97,117 光ファィバ固定部品
18,38,78a−b,98a−b,118 接着剤
119 熱伝導ペースト
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子または受光素子ともに集積されて光送受信機を構成する平面型光波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の進展に伴い、光部品の開発が益々重要となっている。とりわけ、光送受信器は、伝送速度や応答速度の高速化が検討され、通信容量の拡大が進んでいる。一般的な送受信器の構成は、光半導体を用いて作製される発光素子または受光素子と、出力用または入力用の光ファイバとから構成され、それらがレンズを介して光結合されている。例えば、光受信器の場合、入力側の光ファイバから出射された光は、レンズにより受光素子に結像され、直接検波(強度検波)される。
【0003】
光伝送システムにおける変復調処理技術に目を転ずると、位相変調方式を用いた信号伝送が広く実用化されている。位相シフトキーイング(PSK)方式は、光の位相を変調することで信号を伝送する方法であり、変調の多値化などにより、従来に比べ、飛躍的な伝送容量の拡大が可能となる。
【0004】
このようなPSK信号を受信するには、光の位相を検波する必要がある。受光素子は、信号光の強度を検波することはできるが、光の位相を検波することができない。従って、光の位相を光強度に変換する手段が必要となる。そこで、光の干渉を用いることにより、位相差を検波する方法等がある。信号光と他の光(参照光)とを干渉させ、その干渉光の光強度を受光素子で検波することにより、光の位相情報を得ることが可能となる。参照光として、別途用意した光源を用いるコヒーレント検波、信号光自体を一部分岐して参照光とし、両者を干渉させる差動検波がある。このように、従来の強度変調方式のみを用いた光受信機に比べ、近年のPSK方式の光受信機には、光の干渉により位相情報を強度情報に変換する、光干渉回路が必要となっている。
【0005】
このような光干渉回路は、平面型光波回路(PLC:Planar Light Circuit)を用いて実現できる。平面型光波回路は、量産性、低コスト性および高信頼性の面から優れた特徴をもち、様々な光干渉回路が実現可能である。実際に、PSK方式の光受信機に用いられる光干渉回路として、光遅延干渉回路、90度ハイブリッド回路等が実現され、実用化されている。このような平面型光波回路は、標準的なフォトグラフィー法、エッチング技術およびFHD(Flame Hydrolysis Deposition)等のガラス堆積技術によって作製されている。
【0006】
具体的な製造プロセスを概観すれば、最初に、Si等の基板上に、石英ガラス等を主原料とするアンダークラッド層と、クラッド層より高い屈折率を持つコア層とを堆積させる。その後、コア層に様々な導波路パターンを形成し、最後にオーバークラッド層によってコア層から形成された導波路を埋め込む。このようなプロセスにより、導波路型の光機能回路が作製される。信号光は、上述のようなプロセスを経て作製された導波路内に閉じ込められ、平面型光波回路内部を伝搬する。
【0007】
図1に、従来の平面型光波回路と光受信器との光接続方法を示す。PSK方式の光受信機における平面型光波回路と光受信器との光接続方法に目を転ずると、これらの基本的な接続方法は、図1に示すような、単純なファイバ接続である。入出力端に光ファイバ3a,3bが接続された平面型光波回路1と、入力光ファイバ3bを持つ光受信器2とを、光ファイバで繋ぐことにより光結合を行う。光結合に使用する光ファイバの本数は、平面型光波回路から出力される出力光の数により決まり、複数本になる場合もある。しかしながら、このような光ファイバ接続を用いた光受信機の構成では、サイズが大きくなるという問題があった。そこで、平面型光波回路の出力と光受信器の入力とを、レンズを用いて直接的に光結合し、全体を1つのパッケージに集積することにより、小型な構成が可能となる。このような、平面型光波回路と光受信器とが直接的に光結合された形態の光受信機を、集積型光受信機と呼ぶ。
【0008】
集積型光受信機を実現するためには、平面型光波回路の固定方法が特に重要となる。平面型光波回路から出力される光を空間中に伝搬させ、レンズ等により受光素子に光結合する場合、光の出射端、レンズ、受光素子の位置関係が変化すると、全ての光を受光素子により受光できなくなり、損失となる。特に、光受信機を納めるパッケージの温度、環境温度、それぞれの素子温度等が変化した場合、熱膨張の影響によりこれらの位置が変動するため、このような問題が顕著になる。このため、低損失な光結合を実現するためには、環境温度等が変化した場合でも、それぞれの位置関係が、少なくとも相対的に、変動しないことが必要となる。
【0009】
特に、平面型光波回路は、環境温度に対し、熱膨張による形状変化が受光素子等に比べ非常に大きい。さらに、平面型光波回路は、光受信機の中で占める面積が、受光素子に比べて1桁から2桁程度大きく、熱膨張による形状の変化も1桁から2桁程度大きい。また、平面型光波回路を構成する基板と堆積された薄膜ガラスとは、大きな熱膨張係数差を持つため、温度変化によって大きなそりが発生する。このため、受光素子に対する平面型光波回路からの出射光の位置変位および出射角度変化が非常に問題となる。これらの2つの変化により平面型光波回路からの出射光の位置や角度が変化し、光軸ズレが発生する。光軸ズレは受光素子への光結合を劣化させ、損失を発生する。集積型光受信機の実現には、このような光軸ズレを解消、もしくは、無害化することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−175364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図2に、従来の集積型光受信機の内部構造を示す。上述したような、温度変化による光軸ズレが発生しないように、平面型光波回路の底面のほぼ全面を、しっかりと固定する方法が知られている。図2に示した集積型光受信機では、光機能回路として光干渉回路が形成された平面型光波回路13と、レンズ14と、受光素子15とは、それぞれ固定用マウント12a,12b,12cを支持部材として、ベース基板11に固定されている。光ファイバ16と平面型光波回路13とは、光ファィバ固定部品17を介して接続されている。集積型光受信機では、光ファイバ16から入力された光は、平面型光波回路13において干渉したのち、レンズ14により受光素子15に結合する。
【0012】
固定用マウント12aと平面型光波回路13とは、接着剤18または半田により固定される。平面型光波回路13の底面のほぼ全面を、しっかりと固定用マウントに固定することにより、温度による膨張やそり変化を抑えている。また、レンズ14、受光素子15も固定用マウントに固定することにより、温度変化による光軸ズレが発生しないようにしている。
【0013】
しかしながら、図2に示す構成では、温度変化による光軸ズレは大きく抑制できるが、一方で、温度変化による平面型光波回路の特性変化が顕著になる。上述のように、平面型光波回路13は、大きな熱膨張係数差を持つSi基板13aと石英ガラス層13bとから構成されているため、温度変化によるそり変化や、熱膨張が大きい。図2に示すような構成では、平面型光波回路13の底面が全面固定されているため、熱膨張やそり変化が抑制される。
【0014】
一方で、この場合、大きな熱応力がSi基板13aと石英ガラス層13bとの間に発生する。応力は、光弾性効果を通じて、石英ガラス層13b内部に屈折率変化を引き起こす。平面型光波回路13内に構成された光干渉回路は、干渉特性を制御するために、導波路の長さと屈折率が正確に調整されている。応力を介して発生する屈折率変化は、等価回路長の変化をもたらし、干渉計の特性を変化させるため、光干渉回路の特性を劣化させる。
【0015】
これに対して、熱応力の発生を抑制することにより光学特性の変化を抑制するために、接着剤18として、弾性接着剤、ペーストなどの柔らかい接着剤、または固定用ペーストを用いたとすると(例えば、特許文献1参照)、前述の光軸ズレの影響が顕著となり、損失が発生する。
【0016】
本発明の目的は、集積型光受信機または光送信機において、温度変化により発生する光軸ズレと、光機能回路の特性劣化の双方を抑制することができる平面型光波回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施態様は、このような目的を達成するために、基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている導波路領域を含み、前記導波路領域が形成された部分の前記基板の底面においてのみ、前記平面型光波回路を保持する固定用マウントに固定されていることを特徴とする。
【0018】
他の実施態様は、基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、該中間固定用マウントが、前記出射光または入射光を透過する材料からなり、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする。
【0019】
さらに他の実施態様は、基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、該中間固定用マウントの一部に、前記出射光または入射光を透過する材料からなる窓、または前記出射光または入射光を透過するよう切り欠きが形成されており、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、平面型光波回路上の光回路のうち、特に光軸ズレを防ぐために強固に固定しなければならない光入出力用の導波路領域のみを固定用マウントに固定する集積型光受信機または光送信機において、温度変化により発生する光軸ズレと、光機能回路の特性劣化の双方を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の平面型光波回路と光受信器との光接続方法を示す図である。
【図2】従来の集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【図4】実施例1にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図5】本発明の実施例2にかかる集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【図6】実施例3にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図7】実施例1および3における平面型光波回路の応力解析結果を示す図である。
【図8】実施例4にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図9】実施例5にかかる平面型光波回路の固定方法を示す図である。
【図10】実施例6にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。
【図11】本発明の実施例7にかかる集積型光受信機の内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、集積型光受信機を例として説明するが、例えば、受光素子を発光素子と、出射光を入射光と出射端面を入射端面と読み替えれば、光送信機にも適用できることは明らかである。
【0023】
本実施形態においては、平面型光波回路上の光回路のうち、特に光軸ズレを防ぐために強固に固定しなければならない光入出力用の導波路領域のみを固定用マウントに固定する。応力の影響を受けやすい光干渉回路などの光機能回路が形成された領域は、固定用マウントには固定されない。これにより、温度変化により歪みや反りが発生しても、光機能回路の部分は、応力の影響が最小限で済み、光機能回路の特性劣化を抑制することができる。また、導波路領域は、固定用マウントに固定されているので、温度変化により発生する光軸ズレを抑制することができ、光送受信機として温度変化に対する動作マージンを大きく取ることが可能となる。
【0024】
また、温度変化に対する動作マージンが大きくなると、光送受信機に設けられるペルチェ素子等の恒温装置への要求も緩和されるため、光送受信機のコスト削減と消費電力の低減を図ることもできる。
【実施例1】
【0025】
図3に、本発明の実施例1にかかる集積型光受信機の内部構造を示す。光機能回路として光干渉回路が形成された平面型光波回路33と、レンズ34と、受光素子35とは、それぞれ固定用マウント32a,32b,32cを支持部材として、ベース基板31に固定されている。光ファイバ36と平面型光波回路33とは、光ファィバ固定部品37を介して接続されている。集積型光受信機では、光ファイバ36から入力された光は、平面型光波回路33において干渉等の光信号処理がなされた後、レンズ34により受光素子35に結合する。平面型光波回路33は、Si基板33a上に、コア、クラッドからなる導波路型の光機能回路が形成された石英ガラス層33bが積層されている。
【0026】
図4に、実施例1にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。図3に示した平面型光波回路33の固定方法を詳細に示す。平面型光波回路33の石英ガラス層33bには、光機能回路として光干渉回路が形成されている領域33yと、レンズ34への出射光が出射される光導波路の出射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている(光干渉回路が形成されていない)導波路領域33x(図4(d)参照)とが形成されている。固定用マウント32aは、図4(a),(b)に示したように、側面から見ると、逆L字形状または鉤型の形状しており、平面型光波回路33上の光回路のうち、導波路領域33x(図4(d)参照)のみを接着剤38により固定する。
【0027】
このとき、平面型光波回路33の導波路領域33xの下部の基板底面と、固定用マウント32aの固定部分の上面とは平行になる。また、導波路領域33xの出射端面が形成された一辺が、固定用マウント32aの固定部分の一辺よりも、接着剤38の厚みに対して100倍程度の長さだけ外側に出るように固定する(図4(c)参照)。これにより、温度変化による平面型光波回路33のそり変化(図4(a),(b)参照)、熱膨張による水平方向(平面型光波回路33の回路平面に対して)への位置変化を受けることなく、導波路領域33xの出射端の位置を固定することができる。レンズ34、受光素子35も固定用マウントに固定されているので、温度変化による光軸ズレが発生しない。
【0028】
平面型光波回路33の光干渉回路の領域33yは、固定用マウント32aには固定されず、固定用マウント32aから浮いた状態になっている。温度変化によって平面型光波回路33にそりが生じても、自在に変化することができるので(図4(a),(b)参照)、応力の影響を受け難い。
【0029】
実装により発生する応力や応力変化は、光導波路の複屈折変化を引き起こす。光干渉回路は複屈折変化に対して敏感であり、特性劣化を受けやすいため、光干渉回路の領域33yを固定用マウント32aに固定しないことにより、特性の安定化を図ることができる。一方、導波路領域33xは、固定用マウント32aに固定しているが、平面型光波回路33のそり変化による応力の影響が、全面を固定している場合と比較して小さいので、複屈折変化による特性劣化は小さくすることができる。
【0030】
固定用マウント32aのうち平面型光波回路33が固定されていない部分(非固定部分)は、温度変化による平面型光波回路33のそり変化が発生しても、平面型光波回路33と非固定部分の上面が接触しない用に、固定部分と高低差をつける必要がある。そり変化が生じた時に、固定用マウント32aに平面型光回路33が接触すると、基板への応力が発生し、特性劣化に繋がるからである。平面型光波回路33が、Si基板と石英系ガラス材料から作成されている場合、非固定部分と固定部分との段差h(図4(a)参照)は、数100μm程度、設ける必要がある。
【0031】
導波路領域33xの出射端面は、固定用マウント32aの固定部分の側面と一致しているか、やや外側であること(図4(c)において、平面型光波回路33が固定用マウント32aの固定部分の側面から右方にずれていること)が好ましい。出射端面が固定部分の側面よりも内側であっても(図4(c)において、平面型光波回路33が固定用マウント32aの固定部分の側面から左方にずれていても)、同様の効果を奏することはできる。但し、この場合は、固定用の接着剤38が出射端面に回りこむ可能性が高くなるので、平面型光波回路33の基板厚を厚くするか、接着剤38がはみ出さないように、極力薄く塗布する必要があるなど、実装が難しくなる。
【0032】
一方、導波路領域33xの出射端面を、固定用マウント32aの固定部分の側面に対して、接着剤38の厚さ(5〜20μm)の1000倍以上の長さだけ外側に出すと、今度は温度変化による平面型光波回路33のそり変化が発生したときに、導波路領域33xの出射端面のズレが光軸に対して無視できない大きさになる。そのため、出射端面を固定部分の側面に対して外側に出す長さは、接着後に接着剤38のはみ出す量の目安となる、接着剤38の厚さに対して0倍以上1000倍未満であればよい。10倍以上500倍未満であれば、特に反りの影響を受けることなく出射端面への接着剤の回り込みの防止を確実に図ることが可能である。
【0033】
なお、平面型光波回路33が、Si基板と石英系ガラス材料から作成されている場合について述べたが、全てを半導体材料またはガラス系材料などで構成してもよいし、LiNbO3などの誘電体材料などで構成してもよい。いずれの場合であっても、平面型光波回路の実装時、温度変化時の応力の影響を抑制することができる。
【実施例2】
【0034】
図5に、本発明の実施例2にかかる集積型光受信機の内部構造を示す。実施例1の集積型光受信機との相違点は、平面型光波回路43にある。平面型光波回路43の導波路領域の出射端面が、平面型光波回路43の回路平面に対して鉛直方向に斜め加工されている。斜めに加工することにより、出射端面における反射を抑制することができる。このとき、導波路領域の出射端面の下辺と、固定用マウント32aの固定部分の側面との位置関係は、実施例1に準拠すればよい。
【実施例3】
【0035】
図6に、実施例3にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。温度変化や実装時に特性が劣化しないように、さらに、平面型光波回路と固定用マウントの固定部分を限定することもできる。具体的には、図6(a)に示すように、図4に示した実施例1の固定用マウント32aよりも、固定部分の形状を限定した固定用マウント52aを用いる。図6(b)に示すように、平面型光回路53の導波路領域53xを、固定用マウント52aの固定部分の形状に合わせて出射端面の一辺の一部に限定すると、熱膨張による水平方向への位置変化を受けることなく、導波路領域53xの出射端の位置を固定することができる。これにより、実施例1,2と比較して、さらに実装時の応力や、温度変化に対する応力変化を抑制することができる。
【0036】
なお、導波路領域53xの出射端面と、固定用マウント52aの固定部分の側面との位置関係は、実施例1に準拠すればよい。
【0037】
図7に、実施例1および3における平面型光波回路の応力解析結果を示す。図7(a)は、図4に示した実施例1の固定方法による解析結果であり、図7(b)は、図6に示した実施例3の固定方法による解析結果である。平面型光波回路33は、22.5mm角の正方形であり、固定用マウント32aの固定部分の大きさは、22.5mm×3.0mm、非固定部分と固定部分との段差h=0.1mmである。平面型光波回路53も、22.5mm角の正方形であり、固定用マウント52aの固定部分の大きさは、5.0mm×3.0mm、非固定部分と固定部分との段差h=0.1mmである。いずれも、固定用マウントは、コバールからなり、平面型光波回路は、1mm厚のSi基板上に、40μm厚の石英ガラス層が堆積されている。
【0038】
図は、環境温度を25℃から85℃まで変化させた際に発生する平面型光波回路への応力変化を示す。図7(a)の解析結果が示すように、平面型光波回路を固定用マウントに固定する部分を導波路領域に限定することにより、応力の影響が、光干渉回路の領域に及ばないことがわかる。さらに、図7(b)を参照すると、導波路領域を限定して固定部分を限定することにより、応力の影響が小さくなり、限定的な領域にとどまることが分かる。以上により、平面型光波回路の実装時、温度変化時の光干渉回路の特性変化を抑制することができる。
【実施例4】
【0039】
実施例1−3では、平面型光波回路を、直接、固定用マウントに固定していた。一般的に、固定用マウントは金属から構成される。平面型光波回路の基板は、Si基板等を用いることが多いため、両者の熱膨張係数が異なる。従って、環境温度が変化した際に、それぞれが膨張または収縮する量が異なるため、歪が発生する。実施例1−3では、その歪みの影響を受けにくい平面型光波回路の導波路領域で固定用マウントに固定していたが、さらに歪みを低減させる必要がある場合は、実施例4のように、固定用マウントとは異なる材料からなる中間固定用マウントを介して、平面型光波回路と固定用マウントとを固定する。
【0040】
図8に、実施例4にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。図8(a)に示すように、平面型光波回路73は、中間固定用マウント72dを介して、固定用マウント72aに固定される。中間固定用マウント72dの熱膨張係数は、固定用マウント72aの熱膨張係数よりも平面型光波回路73の基板(例えば、Si基板)の熱膨張係数に近い値とする。さらには、平面型光波回路73の基板の熱膨張係数と固定用マウント72aの熱膨張係数の中間の値、または、平面型光波回路73の基板の熱膨張係数と同じ値が好適である。
【0041】
中間固定用マウント72dの熱膨張係数の値を中間の値にすると、固定用マウント72aと、平面型光波回路73に与える歪は、それぞれ少なくなる。
【0042】
一方、平面型光波回路73の光干渉回路の特性劣化を防ぐことを優先するならば、光干渉回路側への歪を極力避けるために、平面型光波回路73の基板と同等な熱膨張係数を持つ材料により中間固定用マウント72dを形成する。典型的には、中間固定用マウント72dと平面型光波回路73の基板とを同じ材料で作製する。これにより、温度変化による光軸ズレや、実装時の光干渉回路の特性劣化を防ぐことができる。
【0043】
上述したように、平面型光波回路の導波路領域の出射端面の反射を抑制するためには、図8(b)に示すように、出射端面を斜め加工した平面型光波回路83を中間固定用マウント72dに固定しても良い。
【0044】
平面型光波回路73,83の導波路領域の出射端面は、中間固定用マウント72dの側面と一致しているか、やや外側であること(図8(a),(b)において、平面型光波回路73,83が中間固定用マウント72dの側面から右方にずれていること)が好ましい。出射端面が中間固定用マウント72dの側面よりも内側であっても(図8(a),(b)において、平面型光波回路73,83が中間固定用マウント72dの側面から左方にずれていても)、同様の効果を奏することはできる。但し、この場合は、固定用の接着剤78aが出射端面に回りこむ可能性が高くなるので、平面型光波回路73,83の基板厚を厚くするか、接着剤78aがはみ出さないように、極力薄く塗布する必要があるなど、実装が難しくなる。
【0045】
一方、平面型光波回路73,83の導波路領域の出射端面を、中間固定用マウント72dの固定部分の側面に対して、接着剤78aの厚さ(5〜20μm)の1000倍以上の長さだけ外側に出すと、今度は温度変化による平面型光波回路73,83のそり変化が発生したときに、導波路領域の出射端面のズレが光軸に対して無視できない大きさになる。そのため、出射端面を固定部分の側面に対して外側に出す長さは、接着後に接着剤78aのはみ出す量の目安となる、接着剤78aの厚さに対して0倍以上1000倍未満であればよい。10倍以上500倍未満であれば、特に反りの影響を受けることなく出射端面への接着剤の回り込みの防止を確実に図ることが可能である。
【実施例5】
【0046】
図9に、実施例5にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。実施例4で使用した中間固定用マウントを透明材料とすることで、平面型光波回路の導波路領域の出射端面を、中間固定用マウントに固定する。図9(a)に示すように、固定用マウント92aの上面に、接着剤98bにより中間固定用マウント92dが固定される。平面型光波回路93の導波路領域の出射端面は、中間固定用マウント92dの側面に、直接、接着剤98aにより固定される。平面型光波回路93から出射された光は、中間固定用マウント92dを透過して、レンズ、受光素子に結合する。
【0047】
この方法によれば、平面型光波回路の実装時の応力が最も少なく、平面型光波回路の特性劣化を抑制することができる。また、そり変化による光軸ズレも最も少ない構成である。透明材料とは、平面型光波回路の使用光波長付近で、吸収等の損失が無い材料であり、石英等が好ましい。
【0048】
上述したように、平面型光波回路の導波路領域の出射端面の反射を抑制するためには、図9(b)に示すように、出射端面を斜め加工した平面型光波回路103を中間固定用マウント92eに固定しても良い。
【実施例6】
【0049】
図10に、実施例6にかかる平面型光波回路の固定方法を示す。実施例4で使用した中間固定用マウントの一部に、出射光を透過する透明材料からなる窓が形成されており、平面型光波回路の導波路領域の出射端面を、中間固定用マウントの窓に合わせて固定する。固定用マウント92aの上面に、接着剤98bにより中間固定用マウント92fが固定される。平面型光波回路93の導波路領域の出射端面は、中間固定用マウント92fの側面に、直接、接着剤98aにより固定される。平面型光波回路93から出射された光は、中間固定用マウント92fの窓99を透過して、レンズ、受光素子に結合する。
【0050】
この方法によれば、平面型光波回路の実装時の応力が最も少なく、平面型光波回路の特性劣化を抑制することができる。また、そり変化による光軸ズレも最も少ない構成である。透明材料とは、平面型光波回路の使用光波長付近で、吸収等の損失が無い材料であり、石英等を用いることができる。また、平面型光波回路93と中間固定用マウント92fとを固定することができれば、中空構造の窓99としてもよいし、中間固定用マウント92fの一面を切り欠いた空間に光信号が通過できるようにしてもよい。なお、実施例6では中間固定用マウントの一部に窓を形成したが、中間固定用マウントを固定用マウントの固定部分と読み替えて、固定用マウントの固定部分に形成したものを使用しても良い。
【実施例7】
【0051】
光干渉回路の種類によっては、干渉計内に位相シフタが必要な場合がある。一般的に、位相シフタは、導波路上部に形成したヒータにより実現している。位相シフタの動作は、導波路を局所的に加熱することにより屈折率変化を誘起し、導波路を透過する光の位相をシフトさせる。このような位相シフタを光干渉回路に配置した場合、発生する熱を効率よく、外部に逃がす必要がある。なぜなら、発生する熱を平面型光波回路外部に逃がすことができないと、平面型光波回路自体の温度が上昇し過ぎてしまい、耐熱温度を超えてしまう恐れがあるためである。
【0052】
図11に、本発明の実施例7にかかる集積型光受信機の内部構造を示す。平面型光波回路113、レンズ114、受光素子115は、それぞれ固定用マウント112a,112b,112cを支持部材として、ベース基板111に固定されている。光ファイバ116と平面型光波回路113とは、光ファィバ固定部品117を介して接続されている。さらに、平面型光波回路113の光干渉回路の利用域の底面の基板と、固定用マウント112aの非固定部分の上面との間に、熱伝導性の高いペースト119を配置する。
【0053】
これにより、平面型光波回路113上で発生した熱は、熱伝導ペースト119および固定用マウント112aを介して、集積型光受信機のパッケージ外部へ放出される。また、熱伝導ペースト119は、その形状が変形しやすく、環境温度変化による平面型光波回路113のそり変化に追従して、形状が変化する。そのため、平面型光波回路113への余計な応力を低減できる。実施例6では、熱伝導ペーストを用いたが、熱伝導性が高く、かつ、自己の形をある程度自由に変化させることができる、ペースト、ゴム状、またはゲル状のものであればよく、熱伝導ペーストに限るものではない。
【0054】
なお、本実施例のように、熱伝導性が高く、かつ、その形状をある程度自由に変化させることができる、ペースト、ゴム状、またはゲル状のものを、平面型光波回路の熱を固定用マウントを介して外部に逃がすための材料として用いるという構成は、他の実施例の構成にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、光伝送システムにおける光通信装置に利用することができる。特に、位相変調された光信号を受信する集積型受信機に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
11,31,111 ベース基板
12a−c,32a−c,52a,72a,92a,112a−c 固定用マウント
72d,92d 中間固定用マウント
13,33,43,53,73,83,93,103,113 平面型光波回路
13a,33a Si基板
13b,33b 石英ガラス層
33x,53x 導波路領域
33y,53y 光干渉回路の領域
14,34,114 レンズ
15,35,115 受光素子
16,36,56,76,96,116 光ファイバ
17,37,57,77,97,117 光ファィバ固定部品
18,38,78a−b,98a−b,118 接着剤
119 熱伝導ペースト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、
前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている導波路領域を含み、
前記導波路領域が形成された部分の前記基板の底面においてのみ、前記平面型光波回路を保持する固定用マウントに固定されていることを特徴とする平面型光波回路。
【請求項2】
前記出射端面が形成された一辺と、前記固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺とが一致するように、または、前記固定用マウントに前記平面型光波回路を固定するための接着剤の層厚の1000倍未満の長さだけ、前記出射端面が形成された一辺が前記固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺よりも外側に出るように固定されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型光波回路。
【請求項3】
前記平面型光波回路と前記固定用マウントとは、中間固定用マウントを介して固定されており、前記中間固定用マウントの熱膨張係数は、前記基板の熱膨張係数と同じか、または前記固定用マウントの熱膨張係数よりも前記基板の熱膨張係数に近い値であることを特徴とする請求項1または2に記載の平面型光波回路。
【請求項4】
前記平面型光波回路と前記固定用マウントとは、中間固定用マウントを介して固定されており、前記中間固定用マウントは、前記基板の材料と同じ材料で作製されていることを特徴とする請求項1または2に記載の平面型光波回路。
【請求項5】
前記出射端面が形成された一辺と、前記中間固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺とが一致するように、または、前記中間固定用マウントに前記平面型光波回路を固定するための接着剤の層厚の1000倍未満の長さだけ、前記出射端面が形成された一辺が前記中間固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺よりも外側に出るように固定されていることを特徴とする請求項3または4に記載の平面型光波回路。
【請求項6】
基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、
前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、
該中間固定用マウントが、前記出射光または入射光を透過する材料からなり、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする平面型光波回路。
【請求項7】
基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、
前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、
該中間固定用マウントの一部に、前記出射光または入射光を透過する材料からなる窓、または前記出射光または入射光を透過するよう切り欠きが形成されており、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする平面型光波回路。
【請求項8】
前記導波路領域が形成された部分以外の前記基板の底面において、熱伝導性ペーストを介して、前記固定用マウントと熱的に結合されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の平面型光波回路。
【請求項1】
基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、
前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が形成された一辺に接して、光導波路のみが形成されている導波路領域を含み、
前記導波路領域が形成された部分の前記基板の底面においてのみ、前記平面型光波回路を保持する固定用マウントに固定されていることを特徴とする平面型光波回路。
【請求項2】
前記出射端面が形成された一辺と、前記固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺とが一致するように、または、前記固定用マウントに前記平面型光波回路を固定するための接着剤の層厚の1000倍未満の長さだけ、前記出射端面が形成された一辺が前記固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺よりも外側に出るように固定されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型光波回路。
【請求項3】
前記平面型光波回路と前記固定用マウントとは、中間固定用マウントを介して固定されており、前記中間固定用マウントの熱膨張係数は、前記基板の熱膨張係数と同じか、または前記固定用マウントの熱膨張係数よりも前記基板の熱膨張係数に近い値であることを特徴とする請求項1または2に記載の平面型光波回路。
【請求項4】
前記平面型光波回路と前記固定用マウントとは、中間固定用マウントを介して固定されており、前記中間固定用マウントは、前記基板の材料と同じ材料で作製されていることを特徴とする請求項1または2に記載の平面型光波回路。
【請求項5】
前記出射端面が形成された一辺と、前記中間固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺とが一致するように、または、前記中間固定用マウントに前記平面型光波回路を固定するための接着剤の層厚の1000倍未満の長さだけ、前記出射端面が形成された一辺が前記中間固定用マウントの前記平面型光波回路を固定する部分の一辺よりも外側に出るように固定されていることを特徴とする請求項3または4に記載の平面型光波回路。
【請求項6】
基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、
前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、
該中間固定用マウントが、前記出射光または入射光を透過する材料からなり、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする平面型光波回路。
【請求項7】
基板上に形成された導波路型の光機能回路を有する平面型光波回路であって、
前記光機能回路からの出射光が出射される光導波路の出射端面または前記光機能回路への入射光が入射される光導波路の入射端面が中間固定用マウントに固定されており、
該中間固定用マウントの一部に、前記出射光または入射光を透過する材料からなる窓、または前記出射光または入射光を透過するよう切り欠きが形成されており、前記中間固定用マウントが固定用マウントに固定されていることを特徴とする平面型光波回路。
【請求項8】
前記導波路領域が形成された部分以外の前記基板の底面において、熱伝導性ペーストを介して、前記固定用マウントと熱的に結合されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の平面型光波回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【公開番号】特開2013−7797(P2013−7797A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138924(P2011−138924)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]