説明

幹細胞培養法

本発明は、細胞を安定化させるための化合物、およびその使用方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年12月3日に提出された米国仮特許出願第61/200,808号に対して優先権を主張するものであり、その全体が全ての目的のために本明細書において組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
胚性幹細胞(ESC)は、永久に自己再生し、体の全ての細胞型に分化する能力を有する多能性細胞である(Thomson, J.A. et al., Science 282 (5391):1145-1147 (1998)(非特許文献1); Thomson, J.A. and Odorico, J.S., Trends Biotechnol 18 (2):53-57 (2000)(非特許文献2))。この能力は、失われた細胞および損傷した細胞を置換するために、ならびに従来薬では力の及ばない治療方法を提供するために、やがてESCが使用される日が来るであろうという希望を与えるものである。しかしながら、hESCの臨床的可能性を十分に実現するためには、化学的に定義され、フィーダーを含まないおよび動物由来の生成物を含まない、確固とした培養条件を確立する必要がある。幾つかの化学的に定義された培地が報告されているが(Yao, S. et al., Proc Natl Acad Sci USA 103 (18):6907-6912 (2006)(非特許文献3); Lu, J. et al., Proc Natl Acad Sci USA 103 (15): 5688-5693 (2006)(非特許文献4); Ludwig, T.E. et al., Nat Biotechnol 24 (2):185-187 (2006)(非特許文献5))、それらの培地中の細胞は性能が最適以下であるため、その大部分は未だに満足できないものである。特にこれらの条件下において、細胞を、トリプシンによって単一細胞に継代する場合、これらは大規模な細胞死を起こす。hESCの自己再生を仲介する多数のシグナル伝達経路は、公知であり、FGF、TGF-β、Wnt等を含む(James, D. et al., Development 132 (6):1273-1282 (2005)(非特許文献6); Xu, R.H. et al., Nat Methods 2 (3):185-190 (2005)(非特許文献7); Beattie, G.M. et al., Stem Cells 23 (4):489-495 (2005)(非特許文献8); Greber B., Lehrach, H., and Adjaye, J., Stem Cells 25 (2):455-464 (2007)(非特許文献9); Sato, N. et al., Nat Med 10 (1):55-63 (2004)(非特許文献10))。しかしながら、このプロセスにおいて、それらのうちいずれも生存因子の役割を果たす様子はいずれにも無く、分子機構も分かりにくい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Thomson, J.A. et al., Science 282 (5391):1145-1147 (1998)
【非特許文献2】Thomson, J.A. and Odorico, J.S., Trends Biotechnol 18 (2):53-57 (2000)
【非特許文献3】Yao, S. et al., Proc Natl Acad Sci USA 103 (18):6907-6912 (2006)
【非特許文献4】Lu, J. et al., Proc Natl Acad Sci USA 103 (15): 5688-5693 (2006)
【非特許文献5】Ludwig, T.E. et al., Nat Biotechnol 24 (2):185-187 (2006)
【非特許文献6】James, D. et al., Development 132 (6):1273-1282 (2005)
【非特許文献7】Xu, R.H. et al., Nat Methods 2 (3):185-190 (2005)
【非特許文献8】Beattie, G.M. et al., Stem Cells 23 (4):489-495 (2005)
【非特許文献9】Greber B., Lehrach, H., and Adjaye, J., Stem Cells 25 (2):455-464 (2007)
【非特許文献10】Sato, N. et al., Nat Med 10 (1):55-63 (2004)(
【発明の概要】
【0004】
発明の簡単な概要
本発明は、以下の式を有する化合物を提供する。

式中、
環Aは、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
環Bは、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
L1は-C(O)-NR2-または-C(O)-NR2-であり;
L2は結合、置換もしくは非置換のアルキレン、または置換もしくは非置換のヘテロアルキレンであり;かつ
R1およびR2は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0005】
ある態様において、環Aは置換もしくは非置換のアリールである。
【0006】
ある態様において、環Aは置換もしくは非置換のフェニルである。
【0007】
ある態様において、環Bは、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0008】
ある態様において、環Bは、置換または非置換のヘテロアリールである。
【0009】
ある態様において、環Bは、置換もしくは非置換のピラゾリル、置換もしくは非置換のフラニル、置換もしくは非置換のイミダゾリル、置換もしくは非置換のイソキサゾリル、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル、置換もしくは非置換のオキサゾリル、置換もしくは非置換のピロリル、置換もしくは非置換のピリジル、置換もしくは非置換のピリミジル、置換もしくは非置換のピリダジニル、置換もしくは非置換のチアゾリル、置換もしくは非置換のトリアゾリル、置換もしくは非置換のチエニル、置換もしくは非置換のジヒドロチエノ-ピラゾリル、置換もしくは非置換のチアナフテニル、置換もしくは非置換のカルバゾリル、置換もしくは非置換のベンゾチエニル、置換もしくは非置換のベンゾフラニル、置換もしくは非置換のインドリル、置換もしくは非置換のキノリニル、置換もしくは非置換のベンゾトリアゾリル、置換もしくは非置換のベンゾチアゾリル、置換もしくは非置換のベンゾオキサゾリル、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル、置換もしくは非置換のイソキノリニル、置換もしくは非置換のイソインドリル、置換もしくは非置換のアクリジニル、置換もしくは非置換のベンゾイサゾリル、または置換もしくは非置換のジメチルヒダントインである。
【0010】
ある態様において、L2は、置換または非置換のC1-C10アルキルである。
【0011】
ある態様において、L2は、非置換C1-C10アルキルである。
【0012】
ある態様において、L2は、メチレンである。
【0013】
ある態様において、環Aは置換または非置換のアリールであり;環Bは置換または非置換のヘテロアリールであり;R1は水素であり;かつL2は非置換C1-C10アルキルである。
【0014】
ある態様において、R2は、水素である。
【0015】
ある態様において、R1は、水素または非置換C1-C10アルキルである。
【0016】
ある態様において、R1は、水素である。
【0017】
ある態様において、化合物は、以下の式を有する。

式中、yは0から3の整数であり;zは0から5の整数であり;Xは-N=、-CH=、または-CR5=であり;R3、R4、およびR5は、独立して、CN、S(O)nR6、NR7R8、C(O)R9、NR10-C(O)R11、NR12-C(O)-OR13、-C(O)NR14R15、-NR16S(O)2R17、-OR18、-S(O)2NR19、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、ここで、nは0から2の整数であり、ここでzが1よりも大きい場合、2つのR3部分は、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成してもよく;かつR6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0018】
ある態様において、L2は置換または非置換のC1-C10アルキルである。
【0019】
ある態様において、L2は非置換C1-C10アルキルである。
【0020】
ある態様において、L2はメチレンである。
【0021】
ある態様において、Xは-N=または-CH=である。
【0022】
ある態様において、zは2であり、隣接する頂点における2つのR3部分は、一緒に連結されて、置換または非置換のヘテロシクロアルキルを形成する。
【0023】
ある態様において、zは1である。
【0024】
ある態様において、yは0または1である。
【0025】
ある態様において、R3は-OR18であり、かつR18は水素または非置換C1-C10アルキルである。
【0026】
ある態様において、L2はメチレンであり;Xは-N=または-CH=であり;R1は水素であり;かつyおよびzは0である。
【0027】
ある態様において、化合物は、以下の式を有する。

【0028】
本発明は、以下の式を有する化合物も提供する。

式中、
環Dは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
L3は、-C(O)NH-または-S(O)2-NH-であり;
R20は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
R21は、-NR22R23または-OR24であり;
R22およびR23は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールであるか、あるいは一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成し;
R24は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであるか、あるいは一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルの置換もしくは非置換のシクロアルキルを形成する。
【0029】
ある態様において、環Dは、置換または非置換のフェニルである。
【0030】
ある態様において、R20は、置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルである。
【0031】
ある態様において、R20は、置換もしくは非置換のC1-C10アルキル、または置換もしくは非置換の3〜7員のシクロアルキルである。
【0032】
ある態様において、R20は、置換もしくは非置換のC1-C5アルキル、または置換もしくは非置換の3〜6員のシクロアルキルである。
【0033】
ある態様において、R20は、非置換C1-C5アルキル、または非置換3〜6員のシクロアルキルである。
【0034】
ある態様において、R22は、水素であり;かつR23は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0035】
ある態様において、R22は、水素であり;かつR23は、置換または非置換の置換または非置換のアリールである。
【0036】
ある態様において、R22およびR23は、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成する。
【0037】
ある態様において、R22およびR23は、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のピロリル、置換もしくは非置換のイソインドリニル、置換もしくは非置換のピペリジニル、または置換もしくは非置換のテトラヒドロキノリニルを形成する。
【0038】
ある態様において、化合物は、以下の式を有する。

式中、wは0から1の整数であり;qは0から7の整数であり;R25、R26、R27、およびR28は、独立して、-CN、-NR29R30、-C(O)R31、-NR32-C(O)R33、-NR34-C(O)-OR35、-C(O)NR36R37、-NR38S(O)2R39、-OR40、-S(O)2NR41、-S(O)vNR42、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、ここで、vは0から2の整数であり;R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、およびR42は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、ここでR25およびR26、またはR26およびR27は、連結されて、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成してもよい。
【0039】
ある態様において、R28は-OR40であり、ここでR40は水素または非置換C1-C10アルキルである。
【0040】
ある態様において、R40は水素または非置換C1〜C5アルキルである。
【0041】
ある態様において、化合物は、以下の式を有する。

【0042】
ある態様において、R20は非置換C1〜C10アルキルである。
【0043】
ある態様において、R28は-OR40であり、ここでR40は水素または非置換C1〜C10アルキル、または置換もしくは非置換のC3〜C6シクロアルキルで置換されたC1〜C10アルキルである。
【0044】
ある態様において、qは1である。
【0045】
ある態様において、化合物は、以下の式を有する。

【0046】
ある態様において、化合物は、以下の式を有する。


【0047】
本発明は、分離された細胞をインビトロで安定化させる方法も提供する。ある態様において、該方法は、動物細胞を安定化させるのに十分な量の式IまたはIIIの化合物と、該細胞を接触させる工程を含む。
【0048】
ある態様において、該方法は、化合物の存在下において細胞の状態または環境を変化させる工程をさらに含み、化合物の非存在下における該変化させる工程が、該細胞の細胞プログラミングに変化をもたらす。ある態様において、該変化させる工程は、細胞を解凍することおよび該細胞を他の細胞から解離させることのうち少なくとも1つを含む。
【0049】
ある態様において、細胞は接着性である。ある態様において、細胞は懸濁液中にある。
【0050】
ある態様において、上記方法は、細胞の形質を決定する工程をさらに含む。
【0051】
ある態様において、上記方法は、動物より細胞を分離する工程を含む。ある態様において、動物はヒトである。ある態様において、動物は非ヒト動物である。
【0052】
ある態様において、化合物は、式Iの化合物である。ある態様において、化合物は式IIIの化合物である。
【0053】
本発明は、動物において状態を改善させる方法も提供する。ある態様において、該方法は、状態を改善させるのに十分な量の式IまたはIIIの化合物を、それを必要とする動物に投与する工程を含む。
【0054】
ある態様において、状態は、組織損傷、発作、および癌からなる群より選択される。ある態様において、組織は、膵臓、肝臓、腸、肺、および腎臓からなる群より選択される。
【0055】
ある態様において、状態は、移植された組織または臓器の少なくとも部分的な拒絶を含む。ある態様において、移植は、骨髄、臍帯血、精製された造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、心臓細胞、神経系細胞、膵β細胞、または肝細胞の移植を含む。
【0056】
ある態様において、化合物は、式Iの化合物である。ある態様において、化合物は式IIIの化合物である。
【0057】
本発明は、細胞生存を維持するための方法も提供する。ある態様において、該方法は、分離された幹細胞、前駆細胞または分化細胞を産生する工程、および該分離された細胞内のE-カドヘリンの安定化を誘導する工程により、細胞生存を維持する工程を含む。
【0058】
ある態様において、誘導する工程は、分離された幹細胞を、式Iの化合物の非存在下の場合と比較して、分離された幹細胞の生存を少なくとも2倍向上させるのに十分な量の該化合物に、接触させることを含む。
【0059】
ある態様において、誘導する工程は、表面上で分離された幹細胞を培養することを含み、E-カドヘリン外部ドメインを含む分子は該表面に係留されている。
【0060】
本発明は、分離された細胞内のE-カドヘリンを安定化させる分子の非存在下の場合と比較して、分離された細胞の生存を少なくとも2倍向上させるのに十分な量の該分子を含む、該細胞の集団も提供する。
【0061】
ある態様において、該分子は式Iの化合物を含む。
【0062】
ある態様において、細胞は、幹細胞、誘導幹細胞幹細胞、多能性幹細胞、前駆細胞、分化細胞、β細胞、および線維芽細胞からなる群より選択される。
【0063】
本発明は、式IまたはIIIの化合物の非存在下の場合と比較して、分離された細胞の生存を少なくとも2倍向上させるのに十分な量の該化合物を含む、分離された細胞の集団も提供する。
【0064】
ある態様において、細胞は、幹細胞、誘導幹細胞、多能性幹細胞、前駆細胞、分化細胞、β細胞、および線維芽細胞からなる群より選択される。
【0065】
本発明は、幹細胞生存を維持するための方法も提供する。ある態様において、該方法は、分離された細胞を産生する工程;および該分離された細胞内のプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する工程により、細胞生存を維持する工程を含む。
【0066】
ある態様において、活性化する工程は、PMAの非存在下における生存率と比較して、分離された細胞の生存を向上させるのに十分な量のホルボール 12-ミリステート 13-アセテート(PMA)を、該細胞に接触させる工程を含む。
【0067】
本発明は、プロテインキナーゼC活性化物質の非存在下の場合と比較して、分離された幹細胞の生存を少なくとも2倍向上させるのに十分な量のPKC活性化物質を含む、分離された幹細胞の集団も提供する。
【0068】
定義
本明細書中で使用されている略語は、化学および生物学の分野における通常の意味を有する。
【0069】
「細胞を安定化させる」という用語は、細胞が曝されている状態もしくは環境が変化することに対する細胞の応答を実質的に減少させるまたは除去することを意味する。この状況において「実質的に減少させる」とは、応答が、安定化成分(例えば、本発明の化合物)の非存在下において生じたと考えられる応答よりも少なくとも50%少ないことを意味する。
【0070】
「細胞の状態または環境を変化させる」という用語は、温度、培地(例えば、炭素源、塩濃度、成長因子)を変化させること、細胞を分離された細胞に解離させること、細胞を解凍すること、あるいは細胞周囲の環境の一要素を変化させることを意味する。本明細書において述べられているとおり、細胞の状態または環境を変化させることは、細胞の形質または細胞プログラミングを変化させる場合が多い。例えば、幹細胞ならびに一部の他の細胞は、分離されると、特定の変化、例えば分離、解凍などに応答して分化および/または死を引き起こす。従って、状態を変化させることは、細胞生存能力を減少または無くすことが可能であるが、本明細書に記載の安定化された細胞の生存能力は、状態の同様の変化の下では実質的に減少していない。細胞プログラミングの変化も、ある細胞型に特徴的な特定の刺激に対する細胞の応答として、および/または1つもしくは一組の特徴的な遺伝子もしくは遺伝子産物の発現により、モニターすることができる。非限定的な例として、ヒト多能性幹細胞は下記のマーカーの少なくとも一部、および任意に全てを発現することが知られている:SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、ALP、Sox2、E-カドヘリン、UTF-1、Oct4、Rex1、およびNanog。このような発現は、幹細胞が多能性を喪失するにつれてさもなければ分化するにつれて変化し得る。安定化されたヒト多能性幹細胞は、状態が変化した後も、その特徴的な発現パターンを維持することとなる。
【0071】
「分離された」細胞は、生物の他の細胞から離されて実質的に分けられているかまたは精製されている。
【0072】
細胞を「解離させる」という用語は、他の細胞または表面(例えば、培養プレート表面)から細胞を分離する過程を意味する。例えば、動物または組織から機械的もしくは酵素的方法により細胞を解離させることが可能である。あるいは、インビトロで凝集する細胞を互いに解離させることができる。さらに別の選択肢においては、接着細胞は培養プレートまたは他の表面から解離される。従って、解離は、細胞外基質(ECM)および基質(例えば、培養物の表面)との細胞の相互作用の切断、または細胞間のECMの切断を含むことができる。
【0073】
「細胞の形質を決定する」とは、細胞の質または特徴を評価することを意味する。形質としては、例えば、細胞型に特徴的な遺伝子発現もしくは遺伝子発現パターン、刺激もしくは環境に対する細胞の応答、分化もしくは脱分化する能力、特定の形態の有無、等が挙げられる。
【0074】
化学置換基がそれらの通常の化学式により特定され、左から右へと書かれている場合、それらは、構造を右から左へと書いた結果得られるものと化学的に同等な置換基も同様に含む。例えば、-CH2O-は-OCH2-と同じである。
【0075】
「アルキル」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、別段の言及がない限り、直鎖(即ち、分枝していない)もしくは分枝鎖、あるいはその組合せを意味し、これは、完全な飽和であっても、モノ不飽和もしくはポリ不飽和であってもよく、かつ二価および多価のラジカルを含むことができ、指定された数の炭素原子(即ち、C1-C10は1個から10個の炭素を意味する)を含む。飽和炭化水素ラジカルの例として、以下に限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等の相同体および異性体等の基が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つまたは複数の二重結合または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基の例として、以下に限定されないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびに高級な相同体および異性体が挙げられる。好ましいアルキル基は、C1-6アルキル基である。
【0076】
「アルキレン」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、アルキルから誘導された二価のラジカルを意味し、例として、これに限定されないが、-CH2CH2CH2CH2-が挙げられる。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1〜24個の炭素原子を有し、本発明においては、10個またはそれ以下の炭素原子を有する基が例示されている。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、より短い鎖のアルキル基またはアルキレン基であり、一般に、8個またはそれ以下の炭素原子を有する。好ましいアルキレン基は、C1-6アルキレン基である。
【0077】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体でまたは別の用語と組み合わせて、別段の言及がない限り、安定した直鎖もしくは分枝鎖または環状の炭化水素ラジカル、あるいはそれらの組合せを意味し、少なくとも1つの炭素原子、ならびにO、N、P、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなり、ここで、窒素原子および硫黄原子は、任意で酸化されていてもよく、窒素へテロ原子は、任意で四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、P、およびSおよびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部の位置にあっても、またはアルキル基が分子の残りの部に結合している位置にあってもよい。例として、以下に限定されないが、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH33、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)-CH3、O-CH3、-O-CH2-CH3、および-CNが挙げられる。例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH33等、2つまでのヘテロ原子が連続し得る。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導された二価のラジカルを意味し、例として、以下に限定されないが、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-が挙げられる。ヘテロアルキレン基については、ヘテロ原子はまた、鎖の末端の一方または両方を占めることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。その上さらに、アルキレン連結基およびヘテロアルキレン連結基については、連結基の式が記載されている方向によって、連結基の方向性が示されることにはならない。例えば、式-C(O)2R'-は、-C(O)2R'および-R'C(O)2-の両方を示す。上記のとおり、ヘテロアルキル基には、本明細書において使用されるように、-C(O)R'、-C(O)NR'、-NR'R''、-OR'、-SR'、および/または-SO2R'のような、ヘテロ原子を通して分子の残部に結合している基が含まれる。「ヘテロアルキル」が表記された後に-NR'R''等の特定のヘテロアルキル基が表記された場合、ヘテロアルキルおよび-NR'R''という用語は、重複しないことまたは相互に排他的であることが理解されると考えられる。むしろ、特定のヘテロアルキル基は、明確さを加えるために表記される。従って、「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書において、-NR'R''等のような特定のヘテロアルキル基を除外するものと解釈されるべきではない。好ましいヘテロアルキル基は、C1-6ヘテロアルキル基である。
【0078】
本明細書において使用されるように、「ヘテロアルキレン」という用語は、上記定義の、少なくとも2つの別の基を連結する、ヘテロアルキル基を意味する。ヘテロアルキレンに連結された2つの部分は、ヘテロアルキレンの同一の原子または異なる原子に連結されていてもよい。好ましいヘテロアルキレン基は、C1-6ヘテロアルキレン基である。
【0079】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それら自体でまたはその他の用語と組み合わせて、別段の言及がない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状型を示す。さらに、ヘテロシクロアルキルについては、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残部に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例として、以下に限定されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル等が挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例として、以下に限定されないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル等が挙げられる。「シクロアルキレン」および「ヘテロシクロアルキレン」は、それぞれシクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルより誘導される二価のラジカルを意味する。シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、C3-8シクロアルキル基およびC3-8ヘテロシクロアルキル基、またはC5-8シクロアルキル基およびC5-8ヘテロシクロアルキル基であってよい。
【0080】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それら自体でまたは別の置換基の一部として、別段の言及がない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」等の用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C1-C4)アルキル」という用語は、以下に限定されないが、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル等を含むことを意味する。
【0081】
「アリール」という用語 は、別段の言及がない限り、単環であっても、または一緒になって縮合しているかもしくは共有結合によって連結している多環であってもよい(好ましくは、単環〜3環)、ポリ不飽和置換基、芳香族置換基、炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、およびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有するアリール基(または環)を指し、ここで、窒素原子および硫黄原子は、酸化されていてもよく、かつ窒素原子は、四級化されていてもよい。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して、分子の残部に結合することができる。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例として、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上記のアリール環系およびヘテロアリール環系のそれぞれの置換基は、以下に記載する許容可能な置換基の群から選択される。「アリレン」および「ヘテロアリレン」は、それぞれアリールおよびヘテロアリールより誘導される、二価のラジカルを意味する。本発明のアリール基は、好ましくは5環員(ring member)から12環員、より好ましくは6環員から10環員を有する。本発明のヘテロアリール基は、好ましくは5環員から12環員、より好ましくは5環員から10環員を有する。
【0082】
簡潔にするために、「アリール」という用語は、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用する場合には、上記で定義したアリール環およびヘテロアリール環の両方を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、アリール基が、アルキル基に結合しているラジカル(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル等)を含むことを意味し、それらには、炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子によって置換されたアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピル等)が含まれる。
【0083】
本明細書において使用される場合、「オキソ」という用語は、炭素原子に対して二重結合を形成する酸素を意味する。
【0084】
本明細書において使用される場合、「アルキルスルホニル」という用語は、式-S(O2)-R'を有する部分を意味し、ここでR'は上記定義と同様にアルキル基である。R'は指定された数の炭素を有していてもよい(例えば、「C1-C4アルキルスルホニル」)。
【0085】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)のそれぞれは、記述されているラジカルの置換形態および非置換形態の両方を含むことを意味する。各タイプのラジカルの例示的な置換基を以下に示す。
【0086】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしばしば呼ばれる基を含む)についての置換基は、以下に限定されないが-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2から、0〜(2m'+1)(ここで、m'がそのようなラジカル中の炭素原子の総数である)の範囲の数で選択される、多様な基のうちの1種または複数種であってよい。R'、R''、R'''およびR''''はそれぞれ、好ましくは、独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(例えば、1〜3個のハロゲンで置換されているアリール)、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が2つまたはそれ以上のR基を含む場合には、例えば、R'基、R''基、R'''基およびR''''基のうちの2つまたはそれ以上が存在する場合にこれらのそれぞれの基がそうであるように、R基のそれぞれが独立して選択される。R'およびR''が、同一の窒素原子に結合している場合には、窒素原子と組み合わさって、4員環、5員環、6員環または7員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は、以下に限定されないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意味する。置換基の上記の論述から、当業者であれば、「アルキル」という用語は、水素基以外の基、例えば、ハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)ならびにアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3等)等に結合している炭素原子を含む基を含むことを意味することを理解すると考えられる。
【0087】
アルキルラジカルについて記載した置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基についての置換基は、多様であり、例えば、ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2、-R'、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシおよびフルオロ(C1-C4)アルキルから、ゼロから芳香環系上の開放原子価(open valence)の総数までの範囲の数で選択され;かつここでR'、R''、R'''およびR''''は、好ましくは、独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が2つまたはそれ以上のR基を含む場合には、例えば、R'、R''、R'''およびR''''基のうちの2つまたはそれ以上が存在する場合にこれらのそれぞれの基がそうであるように、R基のそれぞれが独立して選択される。
【0088】
アリール環またはヘテロアリール環における隣接する原子上の2つの置換基は、式中、TおよびUが独立して-NR-、-O-、-CRR'-または一重結合であり、かつqが0〜3の整数である、式 -T-C(O)-(CRR')q-U-の環を任意に形成することができる。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環における隣接する原子上の2つの置換基は、式中、AおよびBが独立して-CRR'-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または一重結合であり、rが1〜4の整数である、式 -A-(CH2r-B-の置換基で置換されてもよい。このようにして形成された新しい環の一重結合のうちの1つを、二重結合で任意に置換してもよい。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環における隣接する原子上の2つの置換基は、式中、sおよびdが独立して0〜3の整数であり、かつX'が-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-または-S(O)2NR'-である、式 -(CRR')s-X'-(CR''R''')d-の置換基で置換されてもよい。置換基R、R'、R''、およびR'''は、好ましくは、独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロアリールから選択される。
【0089】
本明細書で使用される、「ヘテロ原子」または「環へテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)、およびケイ素(Si)を含むことを意図する。
【0090】
本明細書で使用される「置換基」とは、以下の部分から選択される基を意味する:
(A)-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、オキソ、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、および
(B)以下から選択される少なくとも1つの置換基により置換される、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール:
(i)オキソ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、および
(ii)以下から選択される少なくとも1つの置換基により置換される、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール:
(a)オキソ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、および
(b)オキソ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、および非置換ヘテロアリールから選択される少なくとも1つの置換基により置換される、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール。
【0091】
本明細書で使用される「サイズ限定(size-limited)置換成分」または「サイズ限定置換基」とは、「置換基」に関して上に説明される置換成分の全てから選択される基を意味し、ここで、置換または非置換のアルキルのそれぞれは、置換または非置換のC1-C20アルキルであり、各置換または非置換のヘテロアルキルのそれぞれは、置換または非置換の2〜20員のヘテロアルキルであり、置換または非置換のシクロアルキルのそれぞれは、置換または非置換のC4-C8シクロアルキルであり、置換または非置換のヘテロシクロアルキルのそれぞれは、置換または非置換の4〜8員のヘテロシクロアルキルである。
【0092】
本明細書で使用される「低級置換成分」または「低級置換基」とは、「置換基」に関して上に説明される置換成分の全てから選択される基を意味し、ここで、置換または非置換のアルキルのそれぞれは、置換または非置換のC1-C8アルキルであり、置換または非置換のヘテロアルキルのそれぞれは、置換または非置換の2〜8員のヘテロアルキルであり、置換または非置換のシクロアルキルのそれぞれは、置換または非置換のC5-C7シクロアルキルであり、置換または非置換のヘテロシクロアルキルのそれぞれは、置換または非置換の5〜7員のヘテロシクロアルキルである。
【0093】
「薬学的に許容できる塩」という用語は、本明細書に記載する化合物上に見出される特定の置換基に依存して、比較的無毒性の酸または塩基を用いて調製する、活性な化合物の塩を含むことを意図する。本発明の化合物が、比較的酸性の官能基を含有する場合には、そのような化合物の中性の形態を、十分な量の所望の塩基と、そのまままたは適切な不活性な溶媒中のいずれかで接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容できる塩基付加塩の例として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、もしくはマグネシウム塩、または類似の塩が挙げられる。本発明の化合物が、比較的塩基性の官能基を含有する場合には、そのような化合物の中性の形態を、十分な量の所望の酸と、そのまままたは適切な不活性な溶媒中のいずれかで接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容できる酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic acid)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric acid)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、または亜リン酸等のような無機酸から誘導した塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等のような比較的無毒性の有機酸から誘導した塩が挙げられる。また、アルギン酸塩等のアミノ酸の塩、ならびにグルクロン酸またはガラクツロン酸等のような有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19)を参照されたい)。特定の特異的な本発明の化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれにも変換することを可能にする、塩基性官能基および酸性官能基の両方を含有する。
【0094】
従って、本発明の化合物は、薬学的に許容できる塩と共に塩として存在し得る。本発明にはこのような塩が含まれる。このような塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば(+)-酒石酸塩、(−)-酒石酸塩、またはラセミ混合物を含むこれらの混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩、およびグルタミン酸等のアミノ酸を含有する塩が含まれる。これらの塩は当業者に既知の方法により調製されてもよい。
【0095】
化合物の中性形態は好ましくは、従来の方法で塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を単離することにより再生される。化合物の親形態は、特定の物理的特性、例えば極性溶媒中の溶解性における種々の塩形態とは異なる。
【0096】
塩の形態に加えて、本発明は、プロドラッグの形態である化合物も提供する。本明細書に記載する化合物のプロドラッグは、生理的条件下で化学変化を容易に受けて、本発明の化合物をもたらす化合物である。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境下で化学的または生化学的な方法によって本発明の化合物に変換することもできる。例えば、プロドラッグを、経皮パッチリザーバ中に適切な酵素または化学試薬と共に置いて、本発明の化合物にゆっくりと変換させることができる。
【0097】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和の形態でも、水和した形態を含む溶媒和の形態でも存在することができる。一般に、溶媒和の形態は、非溶媒和の形態と同等であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形態または非結晶の形態で存在することができる。一般に、全ての物理的形態は、本発明が企図する用途の面では同等であり、本発明の範囲内に属することを意図する。
【0098】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。本発明の化合物には、合成できないおよび/または単離できないほどに不安定であることが当技術分野で知られているものは含まれない。
【0099】
本発明の化合物は、そのような化合物を構成する1個または複数個の原子において、不自然な比率の原子同位体を含有することもある。例えば化合物は、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)のような放射性同位体で放射標識されていてもよい。本発明の化合物の全ての同位体変形物は、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1A】新規合成小分子は、単一細胞解離後のhESCの生存を、その長期自己再生および発生能の全てを損なうことなく、劇的に高める。チアゾビビン/Tzvおよびピリンテグリン(Pyrintegrin)/Ptnの化学構造を示す。
【図1B】新規合成小分子は、単一細胞解離後のhESCの生存を、その長期自己再生および発生能の全てを損なうことなく、劇的に高める。低密度で播種し、かつ記載されているとおりに処理した、解離された単一細胞より増殖した、hESCコロニーのALP染色。
【図1C】新規合成小分子は、単一細胞解離後のhESCの生存を、その長期自己再生および発生能の全てを損なうことなく、劇的に高める。ALP陽性コロニー対全初期播種細胞の比率。
【図1D】新規合成小分子は、単一細胞解離後のhESCの生存を、その長期自己再生および発生能の全てを損なうことなく、劇的に高める。PtnまたはTzvを含む培地に長期間維持されたhESCの免疫染色を示す。
【図1E】新規合成小分子は、単一細胞解離後のhESCの生存を、その長期自己再生および発生能の全てを損なうことなく、劇的に高める。Tzv(i、ii)またはPtn(iii、iv)を含む培地に維持された、長期間拡張したhESCより形成された5週の奇形腫の切片。神経上皮(外胚葉)、軟骨(中胚葉)、および単純上皮(内胚葉)(i);神経上皮(外胚葉)、単純上皮および肝臓上皮(内胚葉)(ii);神経上皮(外胚葉)、軟骨(中胚葉)、および尿細管上皮(内胚葉)(iii);神経上皮(外胚葉)、骨格筋(中胚葉)、および尿細管上皮(内胚葉)(iv)。
【図1F】新規合成小分子は、単一細胞解離後のhESCの生存を、その長期自己再生および発生能の全てを損なうことなく、劇的に高める。(化合物PtnまたはTzvの存在下で増殖させた、20回より多く継代した後のhESCのG-バンド解析。特記されない限り、全ての上記hESCは、化学的に定義された培地中、かつフィーダーを含まず、マトリゲル被覆プレート上で培養した。
【図2A】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。PtnまたはTzvで処理または処理していないマトリゲル上または懸濁液中で増殖させた解離hESCの細胞死解析。
【図2B】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。示された分子で処理した非被覆プレート上で増殖させたhESCの位相差画像。
【図2C】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。E-カドヘリンまたはGFPに対する特異的siRNAを形質移入されたhESC中のE-カドヘリンのウエスタンブロット解析。
【図2D】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。Tzvの存在下、E-カドヘリンまたはGFPに対する特異的siRNAを形質移入された解離hESCのTUNEL染色による細胞死解析。
【図2E】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。Tzvの存在下、E-カドヘリンまたはGFPに対する特異的siRNAを形質移入された解離hESCのALP染色。
【図2F】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。hESC中の全長E-カドヘリンへのトリプシン処理前後のウエスタンブロット解析。
【図2G】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。トリプシンによる解離後、指示された時間、DMSO、Tzv、またはPtnにより処理されたhESCにおける全長E-カドヘリン発現の経時的ウエスタンブロット解析。
【図2H】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。Tzvの存在下でのトリプシン処理後のhESCにおけるE-カドヘリンの表面量のフローサイトメトリー解析。DMSOを対照として使用した。
【図2I】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。Tzvで処理または処理していないhESC中のE-カドヘリンの半定量的RT-PCR。
【図2J】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。Tzvの存在下または非存在下におけるE-カドヘリンのエンドサイトーシス解析。
【図2K】細胞解離後、TzvはE-カドヘリンを安定化させ、hESCを懸濁培養液中における死から保護する。BSAまたは異なる濃度のE-cad-Fcキメラで被覆したプレート上で増殖したhESCの細胞生存解析。
【図3A】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。異なる時間経過のPtnおよびTzv処理でマトリゲル上に増殖したhESCの増殖曲線。グループ1、最初の24時間の間のみPtn処理;グループ2、培養期間中を通して連続的なPtn処理;グループ3、最初の24時間の間のみTzv処理;グループ4、培養中は連続的なTzv処理;各状態において、解離細胞は、6穴プレートの各ウェルに10×104個蒔いた。
【図3B】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。異なるマトリックス上に播種され、示された化合物で処理した12時間後のhESCの位相差画像。
【図3C】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。解離されたhESCは、マトリゲル被覆プレート上に蒔かれ、化合物の存在下または記載のとおりインテグリンβ1遮断抗体と共に、3時間接着させた。接着の割合は、材料と方法に記載のとおり計算された。
【図3D】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。hESCにより発現されるインテグリンβ1のトリプシン処理前後のウエスタンブロット解析。
【図3E】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。トリプシンによる解離およびDMSO、Tzv、またはPtnを指定された時間用いた処理後のhESCにおけるインテグリン発現の経時的ウエスタンブロット解析。
【図3F】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。TzvまたはPtnを用いて処理した後のトリプシンにより解離されたhESC内の活性立体構造を有するβ1インテグリンの、フローサイトメトリー解析。
【図3G】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。TzvまたはPtnを用いて処理した後のトリプシンにより解離されたhESC内の活性立体構造を有するβ1インテグリンの、免疫染色解析。
【図3H】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。β1-活性化型抗体、TS2/16で処理されているまたは処理されていないhESCの細胞接着。
【図3I】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。β1-活性化型抗体、TS2/16で処理されているまたは処理されていないhESCのALP染色。
【図3J】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。PKC阻害物質と共にもしくはPKC阻害物質の非存在下で、TzvもしくはPtnを用いて処理したhESCの細胞接着。
【図3K】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。PMA(10nM)を用いて処理されているもしくは処理されていないhESC中の活性立体構造におけるβ1インテグリンの免疫染色。
【図3L】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。示された化合物により処理されたhESCの細胞接着。
【図3M】PtnおよびTzvは、インテグリン活性を維持し、再度活性化することにより、解離後、接着培地中でhESCを細胞死から保護する。示された化合物により処理されたhESCのALP染色。
【図4A】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。マトリゲル上に蒔きかつ記載どおりに処理した、解離されたhESCの細胞死解析。
【図4B】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。Ptnで2時間処理したhESCにおける異なる成長因子受容体のリン酸化状態を示す、ウエスタンブロット。DMSOを対照として用いた。
【図4C】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。示された条件で処理した懸濁液中の解離されたhESCの細胞死解析。
【図4D】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。E-カドヘリンのEGFR1とErb2との相互作用を示す免疫沈降。
【図4E】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。記載された期間Ptnで処理されたhESCにおけるAKTリン酸化状態を示す、ウエスタンブロット。
【図4F】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。Ptn存在下の、またはPtnと共にインテグリンβ1遮断抗体が存在する場合のAKTおよびERKリン酸化状態を示す、ウエスタンブロット。
【図4G】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。Ptnを用いて処理された、または記載の受容体阻害剤と共に処理されたhESCにおいてAKTリン酸化状態を示す、ウエスタンブロット。
【図4H】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。Ptnを用いて24時間処理された、またはPI-3K阻害剤もしくはMEK阻害剤と共にPtnを用いて24時間処理された、hESCの細胞死解析。
【図4I】成長因子受容体を介するPI-3KおよびERKは、それぞれhESCニッチより発生する主要な生存シグナル伝達および分化抑制シグナル伝達である。MEK阻害剤による処理後のSSEA4陰性細胞の割合。
【図5A】チアゾビビンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図5B】チアゾビビンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6A】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6B】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6C】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6D】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6E】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6F】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6G】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6H】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6I】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6J】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6K】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6L】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6M】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6N】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6O】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6P】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6Q】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6R】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6S】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6T】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6U】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6V】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6W】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6X】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6Y】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6Z】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6AA】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6AB】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【図6AC】ピリンテグリンおよびその誘導体を含む本発明の化合物を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
詳細な説明
I.序論
本発明は、新規化合物およびその使用方法を提供する。細胞が分離された場合、または細胞がその通常の培地の外もしくは組織環境の外に存在する場合を含むがこれらに限定されず、細胞分化を妨げかつ細胞生存を促進する、2種類の低分子化合物を提供する。化合物は、多少異なる機構で作用するが、いずれも幾つもの異なる病気の徴候、例えば限定されないが、癌、組織損傷、および発作の予防的および治療的な化合物として有用である。
【0102】
II.細胞生存および/または分化抑制を促進する化合物
一つの側面において、細胞生存および/または分化抑制を促進する化合物が提供される。ある態様において、化合物は、以下の式を有する。

式(I)において、環Aは、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。環Bは、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0103】
L1は-C(O)-NR2-または-NR2-C(O)-である。L2は結合、置換もしくは非置換のアルキレン、または置換もしくは非置換のヘテロアルキレンである。
【0104】
R1およびR2は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0105】
ある態様において、環Aは、置換または非置換のアリールである。環Aは、置換または非置換のフェニルであってもよい。
【0106】
別の態様において、環Bは、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。環Bは、置換または非置換のヘテロアリールであってもよい。環Bは置換もしくは非置換のピラゾリル、置換もしくは非置換のフラニル、置換もしくは非置換のイミダゾリル、置換もしくは非置換のイソキサゾリル、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル、置換もしくは非置換のオキサゾリル、置換もしくは非置換のピロリル、置換もしくは非置換のピリジル、置換もしくは非置換のピリミジル、置換もしくは非置換のピリダジニル、置換もしくは非置換のチアゾリル、置換もしくは非置換のトリアゾリル、置換もしくは非置換のチエニル、置換もしくは非置換のジヒドロチエノ-ピラゾリル、置換もしくは非置換のチアナフテニル、置換もしくは非置換のカルバゾリル、置換もしくは非置換のベンゾチエニル、置換もしくは非置換のベンゾフラニル、置換もしくは非置換のインドリル、置換もしくは非置換のキノリニル、置換もしくは非置換のベンゾトリアゾリル、置換もしくは非置換のベンゾチアゾリル、置換もしくは非置換のベンゾオキサゾリル、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル、置換もしくは非置換のイソキノリニル、置換もしくは非置換のイソインドリル、置換もしくは非置換のアクリジニル、置換もしくは非置換のベンゾイサゾリル、または置換もしくは非置換のジメチルヒダントインであってもよい。
【0107】
L2は、置換または非置換のC1-C10アルキルであってよい。ある態様において、L2は、非置換C1-C10アルキルである。L2は、置換または非置換のメチレンでもあり得る(例えば、非置換メチレン)。
【0108】
R2は、水素であってよい。R1は、水素または非置換C1-C10アルキルであってよい。ある態様において、R1は、単なる水素である。
【0109】
式(I)のある態様において、環Aは、置換または非置換のアリール、環Bは置換または非置換のヘテロアリール、R1は、水素であり、かつL2は、非置換C1-C10アルキルである。
【0110】
別の態様において、細胞生存および/または分化抑制を促進する化合物は、以下の式を有する。

式(II)において、yは0から3の整数であり、zは0から5の整数である。Xは-N=、-CH=、または-CR5=である。R1およびL2は、上記定義の式(I)に記載されているとおりである。
【0111】
R3、R4、およびR5は、独立して、-CN、-S(O)nR6、-NR7R8、-C(O)R9、-NR10-C(O)R11、-NR12-C(O)-OR13、-C(O)NR14R15、-NR16S(O)2R17、-OR18、-S(O)2NR19、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、ここで、nは0から2の整数であり、ここでzが1よりも大きい場合、2つのR3部分は、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成してもよい。
【0112】
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0113】
ある態様において、L2は置換または非置換のC1-C10アルキルである。L2は非置換C1-C10アルキルであってもよい。あるいは、L2は、置換または非置換のメチレンである(例えば、非置換メチレン)。
【0114】
他の態様において、Xは-N=または-CH=である。記号zは2であってもよい。さらに他の態様において、隣接する頂点における2つのR3部分は、一緒に連結されて、置換または非置換のヘテロシクロアルキルを形成する。記号zは1であってもよい。記号yは0または1であってよい。R3は-OR18であってよい。R18は水素または非置換C1-C10アルキルであってよい。
【0115】
ある態様において、L2は置換または非置換のメチレン(例えば、非置換メチレン)であり、Xは-N=または-CH=、R1は水素であり、かつyおよびzは0である。
【0116】
他の態様において、化合物は以下の式を有する。

【0117】
さらに別の態様において、式Iの化合物は、環Aが、1〜5個のR3基でそれぞれ置換されてもよい、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;環Bが、1〜5個のR4基でそれぞれ置換されてもよいヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールであり;L1が-C(O)-NR2-または-NR2-C(O)-であり;L2が結合、C1-10アルキレン、またはC1-10ヘテロアルキレンであり;R1およびR2が、独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;R3およびR4のそれぞれが、独立して、-CN、-S(O)nR6、-NR7R8、-C(O)R9、-NR10-C(O)R11、-NR12-C(O)-OR13、-C(O)NR14R15、-NR16S(O)2R17、-OR18、-S(O)2NR19、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここで、nが0から2の整数であり、2つのR3部分は、一緒に連結されて、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはテロアリールを形成してもよく;かつR6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19が、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである。さらに他の態様において、式Iの化合物は、チアゾビビン以外の化合物である。
【0118】
他の態様において、細胞生存および/または分化抑制を促進する化合物は、以下の式を有する。

式(III)において、環Dは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールである。L3は、-C(O)NH-または-S(O)2NH-である。
【0119】
R20は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。R21は、-NR22R23または-OR24である。
【0120】
R22およびR23は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであるか、あるいは一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成する。
【0121】
R24は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであるか、あるいは一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルの置換もしくは非置換のシクロアルキルを形成する。
【0122】
別の態様において、L3は、結合、-O-、-C(O)NH-または-S(O)2NH-、R20は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、かつ環DおよびR21は、上記定義のとおりである。ある他の態様において、L3は、結合、-O-または-S(O)2NH-であり、かつ環D、R20、およびR21は、上記定義のとおりであり、L3が-S(O)2NH-の場合、R20は、水素である。さらに別の態様において、L3は、結合または-O-であり、環D、R20、およびR21は、上記定義のとおりである。
【0123】
ある態様において、環Dは置換または非置換のフェニルである。
【0124】
他の態様において、R20は、置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルである。R20は、置換もしくは非置換のC1-C10アルキル、または置換もしくは非置換の3〜7員のシクロアルキルであってもよい。R20は、置換もしくは非置換のC1-C5アルキル、または置換もしくは非置換の3〜6員のシクロアルキルであってもよい。ある態様において、R20は、非置換C1-C5アルキル、または非置換3〜6員のシクロアルキルである。
【0125】
さらに他の態様において、R22は、水素であり、かつR23は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。また、R22は、水素であり、かつR23は、置換もしくは非置換の置換もしくは非置換のアリールである。あるいは、R22およびR23は、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成する。R22およびR23は、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のピロリル、置換もしくは非置換のイソインドリニル、置換もしくは非置換のピペリジニル、または置換もしくは非置換のテトラヒドロキノリニルを形成してもよい。
【0126】
ある態様において、化合物は、以下の式を有する。

式(IV)において、wは0から1の整数であり、qは0から7の整数である。R20は、式(III)の化合物の定義において上記定義のとおりである。R25、R26、R27、およびR28は、独立して、-CN、-NR29R30、-C(O)R31、-NR32-C(O)R33、-NR34-C(O)-OR35、-C(O)NR36R37、-NR38S(O)2R39、-OR40、-S(O)2NR41、-S(O)vNR42、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、ここで、vは0から2の整数である。
【0127】
R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、およびR42は、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0128】
R25およびR26、またはR26およびR27は、連結されて、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成してもよい。
【0129】
ある態様において、R28は-OR40である。R40は、水素、または非置換C1-C10アルキルであり、またR40は、水素、または非置換C1-C5アルキルであってもよい。
【0130】
化合物は、以下の式を有していてもよい。

式(V)において、R20、R28、およびqは、式(IV)の定義において上記定義のとおりである。ある態様において、R20は、非置換C1〜C10アルキルである。R28は-OR40であってよい。R40は、水素、または非置換C1〜C10アルキル、または置換または非置換のC3〜C6シクロアルキルで置換されたC1〜C10アルキルである。記号qは、1であってもよい。
【0131】
別の態様において、化合物は、以下の式を有する。

式(VI)において、R20、R28、およびqは、式(IV)または式(VI)の定義において上記定義のとおりである。
【0132】
別の態様において、化合物は、以下の式を有する。


【0133】
別の態様において、式IIIの化合物は、環Dが、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよいアリールまたはヘテロアリールであり;L3が、-C(O)NH-または-S(O)2NH-であり;R20が、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよい、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;R21が、-NR22R23または-OR24であり;R22およびR23が、独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールであるか、または一緒に連結されて、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよいヘテロシクロアルキルもしくはヘテロアリールを形成し;R24が、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよい、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;かつ各R基が、独立して、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CN、-NO2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、ここで、R'、R''、R'''、およびR''''のそれぞれが、独立して、水素、C1-10アルキル基、C1-10ヘテロアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群より選択される、化合物である。
【0134】
ある態様において、式(I)〜(VI)の化合物中の上記置換基のそれぞれは、少なくとも1つの置換基で置換されている。より具体的に、ある態様において、式(I)〜(VI)の化合物中の上記の置換されたアルキル、置換されたヘテロアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、置換されたアルキレン、および/または置換されたヘテロアルキレンのそれぞれは、少なくとも1つの置換基で置換されている。他の態様において、これらの基の少なくとも1つまたは全てが、少なくとも1つのサイズ限定置換基により置換されている。あるいは、これらの基の少なくとも1つまたは全てが、少なくとも1つの低級置換基で置換されている。
【0135】
式(I)〜(VI)の化合物の他の態様において、置換もしくは非置換のアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換のC1-C20アルキルであり、置換もしくは非置換のヘテロアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換の2〜20員のヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換のシクロアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換のC3-C8シクロアルキルであり、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換の3〜8員のヘテロシクロアルキルであり、置換もしくは非置換のアルキレンのそれぞれは、置換もしくは非置換のC1-C20アルキレンであり、かつ/または置換もしくは非置換のヘテロアルキレンのそれぞれは、置換もしくは非置換の2〜20員のヘテロアルキレンである。
【0136】
ある態様において、置換もしくは非置換のアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換のC1-C8アルキルであり、置換もしくは非置換のヘテロアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換の2〜8員環のヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換のシクロアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換のC5-C7シクロアルキルであり、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルのそれぞれは、置換もしくは非置換の5〜7員環のヘテロシクロアルキルであり、かつ/または置換もしくは非置換のアルキレンのそれぞれは、置換もしくは非置換のC1-C8アルキレンであり、かつ/または置換もしくは非置換のヘテロアルキレンのそれぞれは、置換もしくは非置換の2〜8員環のヘテロアルキレンである。
【0137】
ある他の態様において、式(I)-(VI)の化合物は、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CN、-NO2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換することができ、ここで、R'、R''、R'''、およびR''''のそれぞれは、水素、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基である。
【0138】
III.使用方法
本発明の化合物は、多種多様な目的において有用である。例えば、(例えば、分離された細胞について)細胞が、別の場合にはアポトーシスを起こすかまたは別の場合には死滅する状況において、化合物は生存を促進する。ある態様において、細胞は、少なくとも特定の期間、例えば10分間、30分間、または1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、24時間、48時間、または96時間安定化される。さらに、化合物は、細胞が別の場合には分化するかあるいは別の場合には細胞のプログラミングを変化させる状態の場合、細胞分化の現状を維持するために有用である。これらの効果は、結果として化合物のインビトロまたはインビボのいずれかにおける数々の使用を導く。
【0139】
A.インビボ用途
本発明の化合物は、組織障害の減少に有用であり、従って組織障害を治療、緩和、または予防するために投与することができる。ある態様において、本発明の化合物は、内臓に組織障害を有するか、またはその危険性を有する個体に投与される。内臓とは、以下に限定されないが、脳、膵臓、肝臓、腸、肺、腎臓、または心臓が挙げられ、例えば熱傷または切傷による傷を負っている。例えば、ある態様において、本発明の化合物は、虚血後再灌流障害において梗塞の大きさを減少させるのに効果的である。従って、本発明の化合物は、発作を起こす可能性がある、起こしている、または起こしたことのある個体に投与可能である。同様に、本発明の化合物は、心臓発作または心臓障害を起こす可能性がある、起こしている、または起こしたことのある個体に投与可能である。
【0140】
本発明者らは、本発明の化合物が、例えば上皮細胞において、細胞死を妨げることができることを見出した。例えば、本発明者らは、単一細胞として蒔かれた初代ヒト膵島/β細胞を、マトリゲルまたはラミニンで被覆した組織培養プレート上に撒布した。Tzvを含まないβ細胞用の通常細胞培養液中では、結果として実質的な細胞死が見られた。しかしながら、Tzv(1-2mM)が培地に添加されると細胞死は阻害された。同様の効果が、神経系細胞などの他の上皮初期細胞においても観察された。従って、ある態様において、本発明の化合物は、膵β細胞および/または膵島細胞を必要とする個体に投与され、ここで化合物の投与は、個体中のβ細胞または島細胞の数の増加をもたらす。
【0141】
さらに、本発明の化合物(例えば、式IまたはIIIの化合物)は、血流の増加、炎症反応の阻害に効果的である。例えば、式Iの化合物は、単球の接着および単球が内皮細胞の単層を横断する移動を亢進し、その結果、炎症反応を軽減する(データは示されていない)。従ってある態様において、本発明の化合物は、血流の増加および/または炎症の減少を必要とする(例えば、脳虚血を有する)個体に投与される。炎症の減少を必要とする個体は、炎症性疾患、または炎症状態を介した疾患を有する個体を含む。炎症性疾患の例としては、以下に限定されないが、慢性閉塞性肺疾患、変形性関節症、腱炎もしくは滑液包炎、通風関節炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、骨盤内炎症性疾患、および関節リウマチを含む関節炎が挙げられる。
【0142】
ある態様において、本発明の化合物は、癌を治療または緩和するために使用される。場合によっては、本発明の化合物は、癌、例えば、細胞種、神経膠腫、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌、およびバーキットリンパ腫、頭頸部癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、精巣癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵内分泌癌、カルチノイド腫瘍、骨癌、皮膚癌、網膜芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(さらなる癌の例については、Cancer: Principles and Practice (De Vita, V. T. et al., eds, 1997)を参照のこと)を治療するために投与される。
【0143】
癌細胞転移は、典型的には上皮間葉転換/EMT(例えば、上皮型細胞から線維芽型細胞へ)が関与するプロセスである。本発明者は、本発明の化合物(即ち、TvzおよびPtn)がMET(EMTの逆)を誘発し、EMTを阻害できることを見出し、化合物が癌転移の減少または予防に有効であることを示した。従って、ある態様において、本発明の化合物は、癌転移の発生しているまたはその危険性のある個体に投与される。例えば、本発明者らは、乳癌および肝細胞癌を含むがこれらに限定されない上皮癌の転移を式IおよびIIIの化合物が阻害することを見出した。
【0144】
ある態様において、本発明の化合物は、高血圧、および/または、アテローム性動脈硬化を起こしているか、またはその危険性を有する個体に投与される。
【0145】
式IおよびIIIの化合物(即ち、TvzおよびPtn)は、損傷した中枢神経系の軸索再生および機能回復の促進に効果的である。例えば、本発明者らは、Tvzがマウス由来の初代神経細胞からの神経突起伸長を促進できることを見出した。Tzv(3μM)は、マウスP1皮質外植片を用いて試験を行い、軸索伸長を結果として見出した。Tzvは、プレーティング20分後に培地に添加され、DMSOを対照とした。外植片を培地にて4日間観察した。Tzvは、軸索伸長の促進に対して劇的な効果を示し、これは第一分裂より顕著であった。従って、ある態様において、本発明の化合物は、中神経系の傷害を有する個体、または軸索再生を必要とする、もしくは別の面でその恩恵を受ける者に投与される。
【0146】
ある態様において、本発明の化合物は、糖尿病、インスリン抵抗性を患っている、またはそれ以外にβ細胞生存の促進を必要とする、またはβ細胞機能を失う危険性を有する個体に投与される。
【0147】
本発明の化合物は、陰性症状の回復、その他に臓器、細胞、もしくは組織移植の改善における使用も見出されている。本明細書において記述されているとおり、本発明の化合物は、細胞の状況的プログラミングの安定化および維持に効果的である。従って、ある態様において、本発明の化合物は、個体に細胞、組織、または臓器を移植中または移植後に投与される。移植の例としては、以下に限定されないが、骨髄、臍帯血、精製された造血幹/前駆細胞、心臓細胞、神経細胞、膵臓β細胞、および肝細胞の移植が挙げられる。
【0148】
B.インビトロ用途
本発明の化合物は、多種多様な条件に曝された細胞の安定化に効果的である。多くの動物細胞は、分離されると(懸濁液中、または接着性である場合)生存能力を失い、アポトーシスを起こす、および/またはプログラミングを変更する(例えば、幹細胞は分離された場合しばしば死滅するか、または分化する)。本発明の化合物は、このような細胞と混合すると、環境の変化に対するそのような細胞の応答の阻止に効果的である。ある態様において、細胞は、動物より分離され、かつ細胞能力の喪失および/または細胞プログラミングの変化を阻止するのに十分な量の本発明の化合物と接触させる。ある態様において、そのような分離された細胞は、分離プロセスおよび分離そのものに対する細胞の応答により、他の場合では細胞が失ってしまう形質を保持するため、診断に有用である。保持される形質の例としては、遺伝子発現パターン、刺激、リガンド、または薬物に対する細胞の応答性、細胞能力が含まれる。
【0149】
細胞集団の安定性は、例えば、遺伝子産物の発現をモニターすることにより、モニターすることができる。例えば、特定の遺伝子産物は、組織または細胞型に特異的であり、状態または環境の変化(例えば、細胞培地の交換、細胞の解凍、他の細胞からの細胞の分離)の前後にモニターし、変化が細胞プログラミングに影響を及ぼすかを判定することができる。ある態様において、状態または環境の変化に曝される直前の細胞、または変化の比較的直後(例えば、状況に応じて、1分以内、5分、一時間など)の細胞は、1つまたは複数の細胞発現マーカーが実質的に同一のままであるように十分な量の本発明の化合物と接触される。「実質的に同一」とは、状況によるが、当技術分野においては理解される。ある態様において、「実質的に同一」とは、特定の細胞型と関連付けられる遺伝子産物の発現が、細胞に対する特定の処理後、(例えば、処理前の発現と比較して)約10%、20%、または30%を超えて変化しないことを意味する。
【0150】
ある態様において、本発明は、エクスビボの幹細胞において生存および分化抑制を促進する方法を提供する。例えば、本発明者らは、細胞分離直後に細胞を式IまたはIIIの化合物と接触させることにより、式IまたはIIIの化合物(即ち、TzvおよびPtn)が、ヒト胚性幹細胞、マウス胚性幹細胞、複数の神経幹細胞、皮膚幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、間質幹細胞、および上皮幹細胞において生存および分化抑制を促進させるのに効果的であることを見出した。
【0151】
従って、本発明は、細胞を安定化させるのに、例えば状態の変化(例えば、組織からの分離、細胞の解凍)に対する細胞の応答を阻止または減少させるのに十分な量の本発明の化合物(例えば、式IまたはIIIの化合物)と接触している細胞集団および/または組織を提供する。ある態様において、例えば、本発明の化合物と接触している細胞または組織は、凍結または液体の状態である。ある態様において、細胞/組織は、細胞の損傷または分化を阻止または減少させるのに十分な量の本発明の化合物と接触させながら凍結された状態から解凍される。
【0152】
ある態様において、本発明の化合物は、幹細胞、前駆細胞、または分化細胞の集団と接触させる。例示的な幹細胞は、多能性幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を含む。例示的な幹細胞は、さらにヒト胚性幹細胞、マウス胚性幹細胞、複数の神経幹細胞、皮膚幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、間質幹細胞、および上皮幹細胞を含む。任意の種類の前駆細胞を使用でき、その例としては、限定されないが、内胚葉前駆細胞、中胚葉前駆細胞(例えば、筋肉前駆細胞、骨前駆細胞、血液前駆細胞)、および外胚葉前駆細胞(例えば、上皮組織前駆細胞および神経前駆細胞)が挙げられる。また、多種多様な分化細胞が知られている。分化細胞の例としては、限定されないが、線維芽細胞、心臓細胞、神経細胞、膵β細胞、肝細胞、上皮細胞、および腸細胞が挙げられる。本明細書に記述されている細胞は、ヒト細胞または非ヒト細胞であってよい。ある態様において、細胞はヒト細胞である。ある態様において、細胞はマウス、イヌ、ウシ、ブタ、ラット、または非ヒト霊長類細胞である。
【0153】
細胞生存能力および細胞プログラミングを維持する能力は、薬物スクリーニングおよび診断の方法の改善を可能とする。例えば、ある態様において、細胞は、細胞の生存能力を維持する少なくとも1つの本発明の化合物(例えば、式IまたはIIIの化合物)の存在下で応答についてスクリーニングされ、かつ複数の作用物質(例えば、化合物ライブラリー)の少なくとも1つとさらに接触させ、応答をモニターされる。様々なスクリーニング方法が知られている。この方法は、スクリーニング方法の条件下において(例えば、分離された細胞、懸濁液中の細胞、接着細胞等の使用が便利である場合)、他の場合では生存能力が低くなると考えられる細胞を用いる使用に、特に有利であることを見出している。細胞は、例えば、本明細書に記載のとおり幹細胞、前駆細胞、または分化細胞であってよい。細胞性応答は任意の所望の応答であってよい。細胞に基づいたスクリーニングアッセイ法におけるいくつかの応答は、以下に限定されないが、遺伝子の発現(例えば、レポーター遺伝子の発現に基づく、またはPCRもしくは他の検出技術により定量化される)、細胞生存能力もしくはその喪失、アポトーシスの誘導等を含む。
【0154】
スクリーニング方法に用いられる作用物質は、例えば、小分子有機化合物(例えば、分子量10,000ダルトン未満、例えば、8000、6000、4000、2000ダルトン未満)、脂質、糖質、ポリペプチド、抗体、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、リボザイム、短鎖抑制性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)等)であってよい。
【0155】
ある態様において、アッセイ法は、典型的には平行して(例えば、ロボットによるアッセイ法におけるマイクロタイター形式またはマイクロウェルプレート中で)行われる、アッセイ工程を自動化すること、および任意の好都合な供給源からの化合物を提供することにより、大きなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするように設計されている。コンビナトリアルライブラリーは、完全に無作為であることができるか、または1つまたは複数の期待できるリード化合物に基づくコア構造を含有するメンバーを含むことができる。コンビナトリアルライブラリーは、完全に合成されていても、または天然の原料、例えば、細菌、真菌、植物、昆虫、および脊椎動物(例えば、アフリカツメガエル(Xenopus)(カエル)またはアングイラ(Anguilla)(ウナギ))、および無脊椎動物(例えばエゾバフンウニ(Strongylocentrotus)(ウニ)または軟体動物)に由来するメンバーを一部もしくは全て含んでいてもよい。Boldi, Combinatorial Synthesis of Natural Product Based Libraries, 2006, CRC Pressも参照のこと。
【0156】
一つの態様において、高処理スクリーニング方法は、数多くの潜在的な治療化合物(潜在的な修飾因子またはリガンド化合物)を含むコンビナトリアル化合物ライブラリーまたはペプチドライブラリーを提供する工程を含む。次に、このような「コンビナトリアル化合物ライブラリー」または「リガンドライブラリー」は、所望の特徴的な活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を特定するために、本明細書に記載のとおり、1つまたは複数のアッセイ法を用いてスクリーニングされる。これにより特定された化合物は、通常の「リード化合物」の役割を果たすことができるか、またはそれそのものが潜在的なもしくは実際の治療物質として使用できる。
【0157】
コンビナトリアル化合物ライブラリーは、複数の試薬等の化学的「構成単位」を組み合わせることにより、化学合成または生物学的合成により作製された多種多様な化合物のコレクションである。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの直鎖コンビナトリアル化合物ライブラリーは、特定の長さの化合物(即ち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)を得るために可能な限りの方法で化学的構成単位のセット(アミノ酸)を組み合わせることにより形成される。化学的構成単位のこのようなコンビナトリアル混合により、何百万もの化合物が合成できる。
【0158】
コンビナトリアル化合物ライブラリーの調製およびスクリーニングは当業者には公知である。例えば、米国特許第5,663,046号;同第5,958,792号;同第6,185,506号;同第6,541,211号;同第6,721,665号を参照のこと。また、それらの開示は参照として本明細書に組み入れられている。このようなコンビナトリアル化合物ライブラリーは、以下に限定されないが、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487-493 (1991)、Houghton, et al., Nature 354:84-88 (1991)、Combinatorial Peptide Library Protocols, Cabilly, ed., 1997, Humana Pressを参照のこと)を含む。化学的多様性ライブラリーを作製するためのその他の化学も使用可能である。そのような化学は、以下に限定されないが、ペプトイド(例えば、PCT公報WO91/19735)、コード化ペプチド(例えば、PCT公報WO93/20242)、ランダム・バイオオリゴマー(例えば、PCT公報WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチド等のダイバーソマー(diversomer)(Hobbs et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90:6909-6913(1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコース足場を有する非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmann et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:9217-9218(1992))、小分子化合物ライブラリーの類似有機合成物(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661(1994)、Combinatorial Libraries: Synthesis, Screening and Application Potential, Cortese, ed., 1995, Walter De Gruyter Inc、およびObrecht and Villalgordo, Solid-Supported Combinatorial and Parallel Synthesis of Small-Molecular-Weight Compound Libraries, 1998, Elsevier Science Ltd.)、オリゴカルバミン酸(Cho et al., Science 261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59:658(1994))、核酸ライブラリー(いずれも前掲のAusubel、SambrookならびにRussell、および米国特許第6,955,879号、同第6,841,347号、同第6,830,890号、同第6,828,098号、同第6,573,098号、ならびに同第6,399,334号を参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号、同第5,864,010号、および6,756,199を参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn et al., Nature Biotechnology, 14(3):309-314(1996)およびPCT/US96/10287を参照)、糖質ライブラリー(例えば、Liang et al., Science, 274:1520-1522(1996)、米国特許第5,593,853号、およびSolid Support Oligosaccharide Synthesis and Combinatorial Carbohydrate Libraries, Seeberger, ed., 2004, John Wiley & Sons (E-book)を参照)、有機小分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, January 18, page 33(1993)および米国特許第5,288,514号;イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン(metathiazanone)、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号などを参照のこと)を含む。Combinatorial Library Design and Evaluation: Principles, Software Tools, and Applications in Drug Discovery, Ghose et al., eds., 2001, Marcel Dekker、Molecular Diversity and Combinatorial Chemistry: Libraries and Drug Discovery, Chaiken and Janda, eds., 1996, Oxford Univ Pr.、およびCombinatorial Library Methods and Protocols, English ed., 2002, Humana Pressも参照されたい。
【0159】
コンビナトリアルライブラリーを調製するための装置は市販されている(例えば、Advanced Chem Tech, Louisville KY、Symphony, Rainin, Woburn, MA、Applied Biosystems, Foster City, CA、Millipore, Bedford, MA、およびCaliper Life Sciences, Hopkinton, MAを参照)。
【0160】
ある態様において、スクリーニングアッセイ法はマルチウェルプレート中(例えば、96穴、384穴、等)で好都合に実施でき、ここでスクリーニングされる各作用物質は、1つのウェルで別々に試験される。ある態様において、2つまたはそれ以上の候補作用物質は1つの反応混合物中で試験される。
【0161】
C.同様の効果を得るための別の標的
下記の例に具体的に説明されているとおり、本発明者らは、本発明の化合物に対する細胞性応答における幾つかの遺伝子産物の役割について知り、これは、以下に説明されているとおり遺伝子産物を操作することによっても細胞を安定化できるという発見につながった。
【0162】
1.E-カドヘリン
本発明者らは、E-カドヘリン発現の増加が幹細胞生存を増強することを見出した。従って、本発明は、細胞中でE-カドヘリンの発現を安定化および/または増加させる方法を提供し、他の場合では細胞の生存能力に有害となり得る状態の変化に対して、これにより細胞を安定化させる。E-カドヘリンの安定化は、例えば、E-カドヘリンの発現を増加させるかまたはE-カドヘリンを何らかの様式でタンパク質切断から保護する化合物を、細胞と接触させる工程を含むことができる。
【0163】
ある態様において、本発明は、任意に融合タンパク質などの別の成分と連結している少なくともE-カドヘリンの外部ドメインを含むタンパク質で、表面が被覆され、その結果細胞が安定化される(例えば、細胞の生存能力を維持または増加させるおよび/または細胞性プログラミングを維持する)容器に入った幹細胞(これに限定されないが、ヒトまたはマウス胚性幹細胞を含む)の培養方法を提供する。外部ドメインとは、細胞外間隙(細胞外の空間)へと伸びる膜タンパク質の部分である。ある態様において、外部ドメインは、表面との接触を開始し、シグナル伝達をもたらすタンパク質の部分である。E-カドヘリンの外部ドメインは、例えば、Ito et al., Oncogene 18(50):7080-90(1999)に説明されている。ある態様において、少なくともE-カドヘリンの外部ドメインが二量体化するポリペプチド配列に融合していて、これにより外部ドメインの安定化された二量体を可能にする。「二量化するポリペプチド」とは、ホモダイマーを形成し、それにより2つのポリペプチドが二量体を形成することを可能にするアミノ酸配列を意味する。二量体化するポリペプチドの例としては、限定されないが、IgGFcフラグメントが挙げられる。ある態様において、幹細胞(ヒトまたはマウス胚性幹細胞、多能性幹細胞、iPS細胞を含むが、それらに限定されない)は互いに解離していて容器中で培養され、その容器は、任意に融合タンパク質などの別の成分と連結している少なくともE-カドヘリンの外部ドメインを含むタンパク質で被覆された表面を有し、その結果、同様に処理された細胞をポリペプチド被覆されていない容器で培養した場合の生存率と比較して、細胞の生存率が向上され、細胞が安定化される。
【0164】
2.プロテインキナーゼC
本発明は、細胞をプロテインキナーゼC活性化物質と接触させることによる細胞の安定化も提供する。本明細書に説明されているとおり、解離されたhESCをプロテインキナーゼC活性化物質で処理し、マトリゲルマトリックスの存在下で増殖させた結果、細胞接着およびコロニー形成が著しく向上され、それにより細胞生存能力が向上された。従って、本発明は、プロテインキナーゼC活性化物質の存在下での細胞培養により細胞生存能力の向上を提供し、それにより細胞の生存能力、増殖および/または接着を向上させる。ある態様において、プロテインキナーゼC活性化物質は、細胞の生存能力および/または生存時間および/または接着を向上させるのに十分な量で、幹細胞、前駆細胞、または分化細胞の集団と接触させる。幹細胞の例としては、多能性細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、または他に本明細書に記載されているものを含む。プロテインキナーゼC活性化物質の例としては、以下に限定されないが、ホルボールエステル(例えば、ホルボール 12-ミリステート 13-アセテート(PMA)または米国特許出願公開第20080226589号に記載されているホルボールエステル)またはペプチドアゴニスト(例えば、米国特許第6,165,977号に記載のとおり)が挙げられる。
【0165】
3.インテグリンβ1
本発明は、細胞をインテグリンβ1活性化物質と接触させることによる細胞の安定化も提供する。本明細書に説明されているとおり、解離されたhESCをインテグリンβ1活性化物質で処理し、ラミン上で細胞を増殖させた結果、細胞接着およびコロニー形成が著しく向上され、それにより細胞生存能力が向上された。従って、本発明は、インテグリンβ1活性化物質の存在下での細胞培養により細胞生存能力の向上を提供し、それにより細胞の生存能力、増殖および/または接着を向上させる。ある態様において、インテグリンβ1活性化物質は、細胞の生存能力および/または生存時間および/または接着を向上させるのに十分な量で、幹細胞、前駆細胞、または分化細胞の集団と接触させる。幹細胞の例としては、多能性細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、または他に本明細書に記載されているものを含む。インテグリンβ1活性化物質の例としては、以下に限定されないが、インテグリンβ1活性化抗体、例えばTS2/16(Thermo Scientific、イリノイ州、ロックフィールド等から市販されている)等が挙げられる。
【0166】
IV.細胞集団
本明細書に記載のとおり、本発明は、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物(例えば、TzvおよびPt-、またはプロテインキナーゼC活性化物質、またはインテグリンβ1活性化物質を含むがこれらに限定されない、式IまたはIIIの化合物)との混合物(例えば、細胞培養液)中の細胞を提供する。ある態様において、化合物は、細胞の環境または状態の変化(例えば、解凍)に対する応答において生存能力または細胞プログラミングを維持するのに十分な濃度で混合物中に存在する。例えば、ある態様において、化合物は少なくとも0.1Mの濃度で存在し、例えば、少なくとも1、10、100、1000、10000、または100000nM、例えば0.1nM〜100000nM、例えば1nM〜10000nM、例えば10nM〜10000nM、例えば1〜10μMが挙げられる。ある態様において、混合物は人工的な容器(例えば、試験管、ペトリ皿、等)中に存在する。従って、ある態様において、細胞は、分離された細胞である(動物の一部ではない)。ある態様において、細胞は、接着細胞または懸濁液中の細胞である。ある態様において、細胞は、動物(ヒトまたは非ヒト)由来の組織試料(例えば、生検組織)より分離または解離され、容器に入れられ、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物(例えば、式IまたはIIIの化合物)と接触させる。次に、細胞は培養し、任意に特定の細胞型もしくは細胞系列に分化するように刺激された後、または組換え発現カセットを細胞に導入した後、任意に同一または異なる動物に戻すことができる。
【0167】
V.細胞の培養
細胞は、当技術分野において公知の任意の方法により培養できる。細胞は、必要に応じて、懸濁液中でまたは接着細胞として培養できる。
【0168】
ある態様において、細胞(例えば、幹細胞)は、フィーダー細胞と接触させて培養される。フィーダー細胞の例としては、以下に限定されないが、線維芽細胞、例えばマウス胚線維芽細胞(MEF)が挙げられる。細胞をフィーダー細胞上で培養する方法は、当技術分野において公知である。
【0169】
ある態様において、細胞は、フィーダー細胞の非存在下で培養される。例えば、細胞は、例えば分子係留(molecular tether)を介して、固体培養表面(例えば、培養プレート)に直接接着させることができる。分子係留の例としては、以下に限定されないが、マトリゲル、細胞外基質(ECM)、ECM類似体、ラミニン、フィブロネクチン、またはコラーゲンが挙げられる。しかしながら、当業者は、これが非限定的な列挙であり、他の分子を用いて固体表面に細胞を接着できることを認識すると考えられる。係留を固体表面に最初に付着させる方法は、当技術分野において公知である。
【0170】
VI.製剤および投与方法
製剤(例えば、投与に適したものを含むがそれに限定されない本発明の化合物を含む)は、水溶液および非水溶液、製剤を等張性の状態にする抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および溶質を含有する等張滅菌溶液、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含有してもよい水性および非水性滅菌懸濁液を含有する。本発明の実施において、組成物は、例えば経口的、経鼻的、局所的、静脈内、腹腔内、またはくも膜下内に投与できる。化合物の製剤は、単位用量または複数回用量の密封容器、例えばアンプルおよびバイアル等で提供することができる。溶液および懸濁液は、前記の種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調整することができる。修飾物質もまた、調製された食品または薬物の一部として投与することができる。
【0171】
本発明の状況において患者に投与される用量は、被験者において徐々に有益な反応を誘発するのに十分である必要がある。任意の患者のための最適な服用レベルは、使用された特定の修飾物質の効力、患者の年齢、体重、身体的活動、および食生活を含む様々な要因により、他の薬物との可能な組み合わせにより、ならびに疾患の重症度または対象となる状態により決定される。また、用量の大きさの決定も、特定の被験者への特定の化合物またはベクターの投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によりなされる。
【0172】
投与する有効成分の効果的な量を決定する場合、医師は化合物もしくは剤の循環血漿中濃度、化合物もしくは剤の毒性、および化合物もしくは剤に対する抗体の産生を評価してもよい。一般的に、化合物または剤の用量と同じ量は、典型的な被験者に対して約1ng/kg〜10mg/kgである。
【実施例】
【0173】
VII.実施例
下記の実施例は、特許請求される本発明を説明するために示されるが、特許請求される本発明を制限するために示すものではない。
【0174】
実施例1:
化学的に定義された培地の条件を改善し、単一細胞解離後のhESCの死の分子機構を明らかにするために、本発明者らは、50,000個の合成化合物に対して高処理形質スクリーニングを実施し、トリプシン解離後にhESC生存を促進する小分子を特定した。このスクリーニングから、解離後に細胞生存を著しく増加させ、hESCコロニーの形態ならびにアルカリホスファターゼ(ALP)発現も維持させた2つの化合物群が特定された。更なる化合物の最適化および活性解析の結果、更なる機能的および機構的特徴づけを行う対象として2つのリード分子2,4-二置換チアゾール(チアゾビビン/Tzvと名付けられた)および2,4-二置換ピリミジン(ピリンテグリン/Ptnと名付けられた)(図1A)が見出された。
【0175】
(表1)活性データ




1最初に播種された細胞総数に対するALP陽性コロニーの比率。
【0176】
化合物TzvまたはPtnは、単一hESCの生存を、マトリゲル被覆プレート上で酵素による解離後、20倍より多く増強させる(図1B、C)。hESCは、TzvまたはPtnを含有する化学的に定義された培地中で20世代よりも多く連続的に継代培養された。このような条件下、細胞は均一にhESCの特徴的な形態、典型的な多能性マーカーの発現、および通常の核型を維持した(図1D、E)。これらの細胞がヌードマウスに注射されると、3つの一次胚葉組織全てからなる複雑な奇形腫が発生した(図1F)。幾つかの独立したhESC系統で確認されたこれらの結果は、両化合物が、自己再生および完全な発生能を損なうことなく、hESC生存を実質的に促進できることを、一括してかつ説得力をもって示した。
【0177】
hESCは、多数の細胞死のため、単一細胞解離後に懸濁培養において胚様体(EB)を形成することが困難であることが知られている。従って、本発明者らはさらに、TzvまたはPtnが懸濁液中の解離されたhESCの生存を促進できるかを試験した。興味深いことに、Tzvは、接着性および懸濁培養の両方においてhESCの生存を大幅に向上した。対照的に、Ptnは接着培養(例えば、マトリゲル被覆プレート上)においてのみhESCの生存を促進させ、懸濁培養においては効果を示さなかった(図2A)。これらの知見は、ECM/マトリゲルまたは懸濁液の条件下、少なくとも2つの異なるメカニズムがこれら2種類の細胞死に関与し、TzvとPtnは異なる形で機能していることを示唆するものである。hESCは、懸濁液においてTzv(図2B)の存在下で培養すると、好都合な細胞集合体を形成し、様々な系列に分化可能であった(データ記載せず)。細胞の集合は、細胞間接着によって媒介されることが最も多く、E-カドヘリンは一次細胞間接着分子であると共にhESCに高度に発現しているため(Eastham, A.M. et al., Cancer Res 67(23):11254-11262(2007))、本発明者らは多細胞集合体の形成に対する特定のE-カドヘリン遮断抗体の効果を試験した。抗体の存在下で細胞を培養すると、Tzv処理により誘導される細胞生存および大型で緻密な集合体の形成が著しく阻害され、これはTzvに誘導される細胞生存と多細胞集合体の構築に機能的なE-カドヘリンの関与が必要であることを示すものである(図2B)。さらに、hESCにおける特異的なsiRNAによるE-カドヘリンのノックダウンは、Tzv処理に誘導される細胞生存を劇的に減少させ、ALP陽性コロニーの数を著しく減少させた(図2C、D、E)。これらの結果から、Tzvが懸濁液中でのhESC生存を増強し、おそらくE-カドヘリンを介する細胞間接着を通じて作用していることが示唆される。
【0178】
次に本発明者らは、トリプシン解離後のhESCにおけるE-カドヘリン発現について調べた。本発明者らは、完全長のE-カドヘリンのほとんどがトリプシン解離後に切断されていたことを見出した(図2F)。この知見は、E-カドヘリンの細胞外領域が膜貫通領域の付近に細胞内タンパク質分解の切断部位を有するという報告と一致するものであった(Damsky, C.H. et al., Cell 34(2):455-466(1983))。Tzv処理されなかった細胞では、新しく合成された完全長E-カドヘリンが酵素処理の1時間後に出現し、4時間後に消失したことから、解離されたhESCにおいて新たに合成されたE-カドヘリンは不安定であることが示唆された。しかしながら、Tzv処理された細胞においてE-カドヘリン発現は著しく増加していた(図2G)。さらに、フローサイトメトリー解析により、hESCにおける細胞表面E-カドヘリンがTzvにより著しく増加していることが明らかとなった(図2H)。従って、Tzvは、E-カドヘリンの細胞表面レベルを調節することにより細胞接着に影響を与えていると考えられる。半定量的RT-PCRから、模擬対照およびTzv処理された細胞においてE-カドヘリン転写物が同程度の量であることが明らかになり(図2I)、E-カドヘリンタンパク質量の違いが転写量の変化によるものではないことが示唆された。Tzvは細胞表面上のE-カドヘリンを安定化させることによりその効果を発揮している可能性が高い。最後に、エンドサイトーシスアッセイ法は、E-カドヘリンの内部移行がTzvにより著しく遮断されることを明らかにした。これらの結果は、Tzvが、E-カドヘリンのエンドサイトーシスを阻害することによりE-カドヘリン活性を制御していることを示すものである(図2J)。
【0179】
トリプシンによる細胞-細胞解離は、E-カドヘリンの急速な切断とその後の不安定化につながる。本発明者らは、E-カドヘリンの安定性が細胞間の同種親和性相互作用によって媒介されている可能性があると仮定した。従って、E-カドヘリンの組換えリガンドとの同種親和性連結は、E-カドヘリンを安定化させhESC生存に影響を及ぼし得る。この仮説を検証するために、本発明者らは、IgGFc断片にE-カドヘリンの外部ドメインが融合したものを含む二量体E-カドヘリン-Fcキメラタンパク質で、プレートを被覆した(Ecad-Fc)。著しいことに、解離されたhESCは被覆された表面に付着し、それらの生存率は用量依存的に有意に増加し(図2K)、これによりE-カドヘリンを介した細胞間接着がhESC生存の重要な制御因子であることが確認された。
【0180】
TzvおよびPtnの両方は、マトリゲル被覆プレート上に増殖させたhESCの生存に劇的な効果を示す。このような生存促進効果は、細胞増殖に対する影響によるものとは考えにくく、細胞の解離および播種の過程の後に続く細胞接着能の増大に大きく起因するものであり得る(図3A、B)。確かに、TzvまたはPtnで処理した解離されたhESCは、劇的に増大したマトリゲルまたはラミニンへの接着を示した。対照的に、インテグリンが関与しないhESCのゼラチンまたはポリリジンへの接着(図3B、および示されていないデータ)は、PtnまたはTzv処理の影響を受けなかった。マトリゲルの主成分は、ラミニンであり、ラミニン受容体β1インテグリンはhESCにおいて高発現していることが報告された(Xu, C. et al., Nat Biotechnol 19(10):971-974 (2001))。PtnまたはTzvがβ1インテグリンを介して作用するかを検証するために、本発明者らは、細胞をβ1インテグリンに対する遮断抗体で前もって処理し、化合物処理により誘発された増加した細胞接着が完全に消失することを観察した。これは、TzvおよびPtnが、β1インテグリンを通じてECM基質への細胞接着を仲介することを示唆するものである(図3C)。
【0181】
TzvおよびPtnによるβ1インテグリン制御のメカニズムに対する洞察を得るため、本発明者らは化合物の効果がインテグリン発現の変化によるものかどうか検討した。E-カドヘリンと対照的に、β1インテグリンはトリプシンにより切断されなかった。ウエスタンブロット解析から、β1インテグリンの発現が増加していたため、化合物の効果はありそうにないことが明らかとなった。従って、TzvおよびPtnは、インテグリン活性を調節することにより細胞接着に影響を及ぼす可能性が高い(図3D、E)。β1インテグリンの活性に対する化合物処理の効果を検討するため、本発明者らは、活性化された形のβ1インテグリンに特異的に結合するモノクローナル抗体HUTS-21を使用した(Luque, A. et al., J Biol Chem 271 (19):11067-11075(1996))。特に、化合物処理によってHUTS-21結合のレベルが上昇した(図3F、G)。これらの結果は一括して、TzvおよびPtnが内側から外側へインテグリン活性を調節することにより細胞接着を増加させることを示唆するものである。
【0182】
両方の化合物が、インテグリンを活性立体構造に変換することにより細胞接着を増強させたとしたら、インテグリンを活性立体構造に固定するインテグリン活性化抗体で細胞を処理した場合、化合物と同様の効果を得られるはずである。実際に、β1インテグリンに対する活性化抗体であるTS2/16(van de Wiel-van Kemenade, E. et al., J Cell Biol 117 (2):461-470 (1992))の存在下、解離されたhESCをラミニン上に蒔くと、対照と比較して、細胞接着は有意に増加し、細胞はより多くのコロニーを形成した(図3H、I)。これらの結果から、これらの化合物で細胞が処理される際に起こる接着の増加には、インテグリンの活性化を誘発するメカニズムが関与していることが示唆される。
【0183】
TzvおよびPtnによるインテグリン活性制御の分子機構をさらに精査するため、本発明者らは幾つかの経路阻害剤の効果を検討した。本発明者らは、PKCの特異的な阻害剤であるビスインドリルマレイミドIがPtnにより誘発された細胞接着の増加を拮抗できるが、Tzvにより誘発された細胞接着には効果を示さなかったことを明らかにした。これはPKCがTzvではなくPtnの作用を媒介し得ることを示唆するものである(図3J)。PKCのhESC生存における役割をさらに確認するため、解離されたhESCは、PKCアゴニストであるホルボール 12-ミリステート 13-アセテート(PMA)を用いて処理した。PMA処理は、インテグリンの活性化を引き起こすと共に、細胞接着およびコロニー形成の実質的な増加を引き起こした(図3K、L、M)。
【0184】
幹細胞の運命は、成長因子、細胞-ECM相互作用、および細胞間相互作用からなる、その細胞のニッチに影響される。hESC生存が細胞間相互作用および/または細胞-ECM相互作用に大きく依存しているという事実は、これまで認識されていなかったhESCのインビトロのニッチの重要性を明らかにした。さらに重要なことに、細胞内在性タンパク質発現(例えば、E-カドヘリンおよびインテグリン)および制御機構(例えば、タンパク質の安定化および活性化)は、ニッチ成分に応答するだけでなく、必須のニッチ成分でもあり、幹細胞が他の外因性因子または細胞型の非存在下においても独自のニッチを形成する内在的な能力を持つことが示唆されるが、これらの外因性因子または細胞型は、細胞の自己制御ニッチ機構に関与しかつ該ニッチ機構を増強させることができる。
【0185】
物理的/構造的環境と成長因子の間の相互作用は、細胞運命の制御においてとても重要な役割を果たす(Comoglio, P.M., Boccaccio, C., and Trusolino, L., Curr Opin Cell Biol 15 (5): 565-571 (2003))。インテグリンを介したhESC生存に成長因子が関与しているかどうかを検討するため、本発明者らは、TzvまたはPtnと共に個々の特異性の高い成長因子受容体阻害剤を用いて、解離されたhESCを処理した。本発明者らは、FGFR、IGFR、EGFR1、またはErb2の化学的阻害が、TzvまたはPtn処理により誘発される生存促進効果を大幅に減少させることを見出した(図4A)。加えて、Ptnは成長因子受容体のリン酸化を著しく増加させ、これによりインテグリンを介した細胞生存に成長因子受容体の関与が必要であることが示唆された(図4B)。同様に、FGFR、IGFR、EGFR1、またはErb2の阻害は、懸濁培養におけるTzvに誘発されるhESCの生存を大幅に消失させた。さらに、TzvはE-カドヘリンのEGFR1およびERB2への結合を誘発し、E-カドヘリンを介した細胞生存における成長因子受容体の重要な役割を示した(図4C、D)。
【0186】
ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI-3K)シグナル伝達およびMAPK/ERKは、hESCの自己再生において主要な制御因子である(Armstrong, L. et al., Hum Mol Genet 15 (11): 1894-1913 (2006)、Paling, N.R. et al., J Biol Chem 279 (46):48063-48070 (2004)、Pyle, A.D., Lock, L.F., and Donovan, P.J., Nat Biotechnol 24 (3):344-350 (2006)、Li, J. et al., Differentiation 75 (4):299-307 (2007))。PI-3Kの下流エフェクターであるERKおよびAKTのリン酸化は、解離されたhESCをPtnで処理すると増加し、この増加はインテグリン遮断抗体により消失した(図4E、F)。さらに、PtnによるAKTおよびERKの活性化は、FGFR、IGFR、EGFR、またはErb2の阻害剤により遮断された(図4Gおよび示されていないデータ)。PI-3K作用の化学的阻害は、Ptnにより誘発された生存効果を著しく拮抗した(図4H)。ERKの阻害は、Ptnに誘発された生存に対して劇的な効果は無かったものの、hESCの分化を誘導した(図4I)。これらの結果は、PI-3Kの活性化が主要な生存シグナル伝達であり、ERKの活性化が、成長因子受容体の活性化を通じてニッチにより発生された分化抑制シグナル伝達であることを示した。
【0187】
要約すると、本発明者らは、高処理形質スクリーニングより、単一細胞解離後にhESC生存を大いに増強する、異なる作用機構を持つ2つの新規の合成小分子を特定した。このような化学的手段および機構の特徴付けを通して新たに同定された生物学的手段(例えば、接着培養におけるhESC付着のための、定義された組換えEcad-Fc;細胞の生存および付着を増強するための活性化抗体)は、より頑強なhESC培養を可能にし、hESCの応用、例えば遺伝子ターゲティングまたは創薬を著しく促進すると考えられる。さらに重要なことは、徹底したメカニズムの特徴付けにより、hESCの生存および増殖を維持するために必要な、これまで認識されていなかったニッチ機構が解明された。このようなニッチは、E-カドヘリンを介したhESC同士の相互作用、インテグリンを介した細胞-ECM相互作用、および成長因子からなる。以前の研究は、hESC自己再生に対する成長因子の重要な役割に向いていた。しかしながら、成長因子のシグナル伝達の完全な活性化は、成長因子および受容体の存在だけでなく、特定の微小環境との相互作用も必要とする。この物理的/構造的環境が破壊されると、成長因子のみではESCの自己再生に不十分である。
【0188】
最近、自己再生培地中のhESCより産生された分化線維芽細胞が、hESCのインビトロニッチを作り出すことが報告された(Bendall, S.C. et al., Nature 448(7157):1015-1021 (2007))。本発明者らおよび他者の化学的に定義された培地条件下、長期培養においてこのような分化細胞が見られることは非常に稀であり、このことは、そのような人工的なニッチが培地の差により作られている可能性を示唆するものである。しかしながら、本発明者らの研究は、hESCの生存および自己再生において、成人幹細胞のインビボ運命を制御する際に重要な役割を果たす可能性が高いと考えられる、独特の細胞自立的な(即ち、細胞間相互作用)および細胞非自立的な(即ち、細胞-ECMおよび-成長因子)ニッチ機構を明らかにするものである。
【0189】
トリプシンによる細胞-細胞解離は、E-カドヘリンの不安定化をもたらしただけでなく、インテグリンの不活性化も引き起こし、インテグリン活性を維持するシグナル伝達が酵素処理に敏感であることを示した。フィーダー細胞-条件培地(成長因子を豊富に含む血清)は、単一細胞解離後の細胞死に対する保護をあまり提供しなかった。さらに、高密度の細胞播種も細胞接着/生存の増加を誘発するという事実は、インテグリン活性を維持するために必要なシグナル伝達が分泌された因子に起因するものではなく、むしろ物理的な細胞間相互作用に起因することを示唆するものである。Tzvは、E-カドヘリンのエンドサイトーシスを阻害し、その結果、懸濁液において死から細胞を保護する。同様に、エンドサイトーシスを阻害することにより、Tzvは細胞表面からのシグナル伝達を安定化させ、その結果インテグリン活性を維持させると考えられる。一方、Ptnは、物理的な細胞間相互作用による下流シグナル伝達を模倣することによりPKCを活性化すると考えられる。今後、Ptnの標的が特定されることにより、細胞-細胞接着が細胞-ECM相互作用を制御する機構の解明に新たな手掛かりを与えると考えられる。また、本発明者らの研究により、幹細胞研究における高処理化合物スクリーニングの可能性と進歩も例証された。幹細胞における、このような化学的取り組みの更なる発展および応用は、更なる新規小分子の特定およびインビトロならびにインビボでの細胞運命を正確に制御するための機構に対する洞察を得るという結果に間違いなくつながる。
【0190】
方法
細胞培養
ヒトESC系統、H1、HUES7、およびHUES9は、2mM L-グルタミン、1×非必須アミノ酸、20%血清代替物(Invitrogen)、および10ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(Invitrogen)を添加したDMEM-F12中で、照射MEFフィーダー細胞上で培養した。化学的に定義され、フィーダーを含まないhESC培養液は、以前にも示されている(Yao, S. et al., Proc Natl Acad Sci USA 103 (18):6907-6912 (2006))。簡潔には、hESCは、マトリゲル被覆組織培養プレート上で、N2B27-CDM(1×N2補充物、1×B27補充物、2mM L-グルタミン、0.11mM 2-メルカプトエタノール、1×非必須アミノ酸、および0.5mg/mlのBSA(画分V)ならびに20ng/mlのbFGFを添加したDMEM-F12)および20ng/mLのbFGF中で増殖させた。ヒトESCは、0.05%のトリプシンと共に5〜6日ごとに継代した。
【0191】
クローン生存アッセイ法には、単一hESCをクローン密度に希釈し、96穴マトリゲル被覆プレート上に蒔いた。低密度生存アッセイ法には、500個の細胞を96穴マトリゲル被覆プレート上に蒔いた。hESCコロニーを可視化するため、培養物を4%パラホルムアルデヒド含有PBS中で5分間固定させ、PBSで一回洗浄し、製造者の使用説明書に従ってアルカリホスファターゼ活性検出のための染色を行った。ALP陽性コロニーは、倒立顕微鏡を用いて数えた。
【0192】
試薬
ALP検出キットおよびインテグリン抗体はケミコンからのものであった。AG825(Erb2阻害剤)、AG1478(EGFR阻害剤)、PPP(IGFR1阻害剤)はCalbiochemより購入した。E-カドヘリンの細胞質内尾部に対して産生された抗体(Transduction Laboratories、ケンタッキー州、レキシントン)を免疫沈降に用いた。TS2/16抗体はPierceからのものであった。E-カドヘリン分子の細胞外領域に対する抗体は、Zymed(Carlsbad)からのものであった。細胞外シグナルにより制御されるキナーゼ/MAPK、EGFR1、ERB2、GADPH、およびリン酸化されたAKTに対する抗体は、Cell Signalingからのものであった。マウスモノクローナル抗リン酸化チロシン(4G-10クローン)は、Upstate Biotechnologyからのものであった。PtnおよびTzvは、2μMで培地に添加された。
【0193】
高処理化合物スクリーニング
トリプシン処理が可能なhESC系統HUES7またはHUES9を、スクリーニングに使用した。hESCは、上述のとおり、マトリゲル被覆プレート上、化学的に定義された培地中で培養された。次に細胞は、トリプシンを用いて回収した。hESCは、マトリゲル被覆された384ウェルプレートに1ウェルあたり4,000個蒔いた。一時間経過し細胞が沈下した後、50,000個の別々の複素環のライブラリーから得られた化合物を各ウェルに添加した(最終濃度2μM)。培地および化合物を3日目に交換しながら、さらに6日間培養した後、ALP発現を検出するために細胞を染色し、緻密なコロニー形態を検出するため検査を行った。
【0194】
免疫染色解析
免疫染色は、既に説明されているとおりに実施した(Yao, S. et al., Proc Natl Acad Sci USA 103 (18):6907-6912 (2006))。簡潔には、細胞の固定は、4%パラホルムアルデヒドを用いて室温(RT)で15分間実施した。次に細胞を阻止緩衝液においてRTで一時間培養した。一次抗体インキュベーションは4℃で一晩実施した。下記の市販の抗体を、阻止緩衝液中1:100の濃度で使用した:抗SSEA4、抗Oct4(Chemicon)、抗Nanog(Chemicon)。染色は、FITC、cy3、またはcy5抱合型二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて可視化した。
【0195】
奇形腫形成および核型決定
奇形腫形成実験は、300万〜500万個のhESC(化合物TvzまたはPtnの存在下で維持された細胞)をヌードマウスの腎臓皮膜下に注射することにより実施した。4〜5週間後、全てのマウスに奇形腫が発生し、これを切除した後、スクリプス研究所研究用組織学サービスおよび動物資源(Scripps Research Institute Research Histology Service and Animal Resources)により免疫組織学的に分析された。化合物で処理された細胞は、Children's Hospital Oaklandの細胞遺伝子学研究所において標準的なGバンド形成により核型決定された。無作為に選ばれた10個の核から染色体異常は検出されなかった。
【0196】
TUNELアッセイ法
異なる処理を受けたhESCは、トリプシンにより解離され、4%パラホルムアルデヒドにより固定された。染色は、製造者(MBL Laboratories、マサチューセッツ州、ウォータータウン)の使用説明書に従って実施された。染色後、試料をFACS Caliburフローサイトメーター(BD)を用いたフローサイトメトリーにより分析した。
【0197】
フローサイトメトリー分析
E-カドヘリン、活性化されたインテグリンおよびSSEA4の発現を評価するために、解離された細胞(3×105)をPBSで洗浄し、2%ヤギ血清を含むPBSに再懸濁した。次に細胞を適切な抗体と共に4℃で1時間インキュベートし、遮断溶液で洗浄し、FITC複合二次抗体を用いて4℃で30分間標識した。その後、細胞を洗浄し、FACS Caliburフローサイトメーター上で分析した。
【0198】
細胞接着アッセイ法
細胞接着アッセイ法は、マトリゲルで被覆した96穴マイクロタイタープレート中で実施した。トリプシン処理後、hESCを、所望の化合物を含有する化学的に定義された培地に再度懸濁した。次に細胞をマイクロタイターウェルに加え、37℃で3時間インキュベートした。結合しない細胞および緩く結合した細胞は、振とうならびに洗浄することにより除去され、次に、残留した細胞を直ぐに固定した。200μlのH2Oでウェルを3回洗浄し、付着している細胞をクリスタルバイオレット(Sigma)で染色した。570nmにおける各ウェルの吸光度を次に測定した。遮断抗体を用いた実験には、細胞を抗体と氷上で30分間予めインキュベートし、接着アッセイ法を抗体の存在下で実施した。各試料のアッセイ法は独立して3回行われた。
【0199】
エンドサイトーシスアッセイ法
hESCは、氷上で1.5 mg/mlのスルホサクシニミジル2-(ビオチンアミド)エチル-ジチオプロプリオン酸(スルホ-NHS-SS-ビオチン)(Pierce Chemical Co.)とインキュベートした後、洗浄し、反応を停止させた。E-カドヘリンのエンドサイトーシスは、Ca2+の枯渇および37℃でインキュベートすることにより惹起された。次に細胞は、0℃でグルタチオン溶液(60mMグルタチオン、0.83M NaCl、と共に使用前に加えた0.83M NaOHおよび1%BSA)による20分間の洗浄において2回インキュベートし、これにより細胞表面の全てのビオチン基が除去された。残されたビオチン化されたタンパク質は、エンドサイトーシスにより細胞内に隔離され、従ってグルタチオンによるストリッピングから保護された。ビオチン化されたタンパク質は、ストレプトアビジンビーズ上に回収され、SDS-PAGEで分析された。E-カドヘリンは免疫ブロット法により検出された。エンドサイトーシス前の表面E-カドヘリンの総量を参照として用いた。
【0200】
実施例2:N-ベンジル-2-(ピリミジン-4-イルアミノ)チアゾール-4-カルボキサミド(チアゾビビン)の合成
化学合成
下記の化学合成の実施例および当技術分野において一般的に知られている化学合成法を用いて、当業者は本明細書に開示されている化合物(例えば、式(I)〜(VI)の化合物)を作り出すことが可能である。
【0201】
商業的に入手した化合物の全てはさらに精製することなく使用された。NMRスペクトルは、Bruker(400MHz)の装置にて記録した。化学シフト(δ)は、ppmで測定し、カップリング定数(J)は、Hzで報告された。LCMSは、API-ESイオン化源と共に逆相液体クロマトグラフィー-質量分析機Agilent1100 LCMSシステムを用いて実施された。高圧液体クロマトグラフィーは、C18カラムを用いて、直線勾配で10%から90%の溶液A(0.035%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル)を含む溶液B(0.05%トリフルオロ酢酸を含む水)にて7.5分間、その後90%のAにて2.5分間溶出することにより実施された。
【0202】
N-ベンジル-2-(ピリミジン-4-イルアミノ)チアゾール-4-カルボキサミド(チアゾビビン)の合成
4-ホルミル-3,5-ジメトキシフェノキシメチルで官能性を持たせたポリスチレン樹脂(PAL)にベンジルアミンを還元的アミノ化により添加させ、PAL-ベンジルアミン樹脂を得た。Ding, S.; Grey, N.S. Wu, X.; Ding, Q.; Schultz, P. G. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 1594-1596を参照のこと。PAL-ベンジルアミン樹脂(200mg、0.2mmol)、2-ブロモチアゾール-4-カルボン酸(83 mg、0.4 mmol)、塩化ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸(BOP-Cl)(153mg、0.6mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.17mL、1mmol)の入ったDMF(3mL)を含む反応フラスコを、24時間室温で振とうした。樹脂をメタノール、ジクロロメタンで洗浄し、真空下で乾燥させることによりPAL樹脂-N-ベンジル-2-ブロモチアゾール-4-カルボキサミドを得、これを火炎乾燥した反応バイアルに加え、次に4-アミノピリミジン(95mg、1mmol)、Pd2(dba)3(46mg、0.05mmol)、キサントホス(87mg、0.15mmol)、およびNaOtBu(192mg、2mmol)を加えた。バイアルは、確実で安全にキャップされ、脱気後、アルゴンと無水ジオキサン(1.5mL)を充填した。反応物を90℃で24時間振とうさせた。樹脂を、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液(DMF中0.05M)、メタノール、およびジクロロメタンで洗浄し、真空下で乾燥させた。次に、樹脂をTFA:CH2Cl2:H2O(45:55:5)(2mL)の切断カクテルで2時間切断した。樹脂を濾過し、濾液を回収し、真空下で乾燥させることにより粗精製物を得、次にこれをHPLCで精製することにより表題化合物を得た(30mg、48%)。

N-ベンジル-2-(ピリミジン-4-イルアミノ)チアゾール-4-カルボキサミド
C15H13N5OSの計算精密質量:311.1、実測値:LCMSm/z=334.1(M+Na+)。

【0203】
実施例3:チアゾビビン誘導体の合成

【0204】
還元的アミノ化を通して4-ホルミル-3,5-ジメトキシフェノキシメチルで官能性を持たせたポリスチレン樹脂(PAL)に適切なアミン類R1NH2を予め添加することによりPAL-ベンジルアミン樹脂を得た。無水DMF(3mL)中のPAL-ベンジルアミン樹脂(200mg、0.2mmol、1.0等量)、2-ブロモチアゾールカルボン酸1(0.4 mmol、2.0等量)、塩化ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸(BOP-Cl)(0.6mmol、3.0等量)、およびジイソプロピルエチルアミン(1mmol、5.0等量)の混合物を外界温度で24時間振とうさせた。樹脂をメタノール、ジクロロメタンで洗浄し、真空下で乾燥させ、これを火炎乾燥した反応バイアルに加え、次に対応するR2NH2(1mmol、5.0等量)、Pd2(dba)3(0.05mmol)、キサントホス(0.15mmol)、およびNaOtBu(2mmol、10.0等量)を加えた。バイアルは、確実で安全にキャップされ、脱気後、アルゴンと無水ジオキサン(1.5mL)を充填した。反応物を90℃で24時間振とうさせた。樹脂を、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液(DMF中0.05M)、メタノール、およびジクロロメタンで洗浄し、真空下で乾燥させた。次に、樹脂をTFA:CH2Cl2:H2O=45:55:5(2mL)の切断カクテルで2時間切断した。樹脂を濾過し、濾液を回収し、真空下で乾燥させることにより粗精製物を得、次にこれをHPLCで精製することにより所望の表題化合物3を得た。



【0205】
実施例4:N-(シクロプロピルメチル)-4-(4-(6-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)ベンゼンスルホンアミド(ピリンテグリン)の合成
n-ブタノール(10mL)中の2,4-ジクロロピリミジン(372mg、2.5mmol)、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(489mg、3mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.52mL、3mmol)を含む反応フラスコを、40℃で一晩加温した。溶媒を蒸発させ、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、2-クロロ-4-(6-メトキシ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-イル)ピリミジン(551mg、80%)を得た。この中間体(250mg、0.91mmol)をジクロロメタンに溶解し、BBr3(ジクロロメタン中1M)(1mL、1mmol)を用いて-78℃で処理した。反応混合物をゆっくりと室温まで昇温させ、1時間攪拌し、水に流し込み、ジクロロメタンで抽出した。混合した有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2-クロロ-4-(6-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-イル)ピリミジン(154mg、65%)を得た。DMF(0.5mL)中の2-クロロ-4-(6-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-イル)ピリミジン(29mg、0.11mmol)および4-アミノ-N-(シクロプロピルメチル)ベンゼンスルホンアミド(27mg、0.12mmol)の攪拌溶液に、p-トルエンスルホン酸(ジオキサン中に2M)(55μL、0.11mmol)を加えた。反応混合物を90℃で一晩攪拌し、その後HPLCで精製することにより、表題化合物(27mg、56%)を得た。

N-(シクロプロピルメチル)-4-(4-(6-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)ベンゼンスルホンアミド
C23H25N5O3Sの計算精密質量:451.2、実測値 LCMSm/z=452.3(M+H+)。

【0206】
実施例5:ピリンテグリン誘導体の合成

n-ブタノール中の2,4-ジクロロピリミジン4(1.0等量)、R1NH2(1.2等量)、およびジイソプロピルエチルアミン(1.2等量)の混合物を80℃で一晩加温した。溶媒を蒸発させ、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体10を優れた収率で得(>80%)、これをDMF中のR2NH2(1.2等量)で処理し、p-トルエンスルホン酸(ジオキサン中に2M)(1.2等量)を加えた。反応混合物を90℃で一晩攪拌し、次に調整用HPLCで直接精製することによりピリンテグリン誘導体11を優れた収率で得た。





【0207】
本明細書に記載した実施例および態様は例示のみを目的とするものであり、それらを鑑みて様々な改変または変更が当業者には示唆されると考えられるが、それらは本出願の精神および範囲ならびに添付の請求の範囲に含まれるものであることを理解されたい。本明細書中に引用される全ての参考文献、特許、および特許出願は、その全体が全ての目的のために参考として、本明細書中に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式

を有する、化合物:
式中、
環Aが、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
環Bが、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
L1が-C(O)-NR2-または-NR2-C(O)-であり;
L2が、結合、置換もしくは非置換のアルキレン、または置換もしくは非置換のヘテロアルキレンであり;かつ
R1およびR2が、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【請求項2】
環Aが置換または非置換のアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
環Aが置換または非置換のフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
環Bが、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
環Bが置換または非置換のヘテロアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
環Bが、置換もしくは非置換のピラゾリル、置換もしくは非置換のフラニル、置換もしくは非置換のイミダゾリル、置換もしくは非置換のイソキサゾリル、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル、置換もしくは非置換のオキサゾリル、置換もしくは非置換のピロリル、置換もしくは非置換のピリジル、置換もしくは非置換のピリミジル、置換もしくは非置換のピリダジニル、置換もしくは非置換のチアゾリル、置換もしくは非置換のトリアゾリル、置換もしくは非置換のチエニル、置換もしくは非置換のジヒドロチエノ-ピラゾリル、置換もしくは非置換のチアナフテニル、置換もしくは非置換のカルバゾリル、置換もしくは非置換のベンゾチエニル、置換もしくは非置換のベンゾフラニル、置換もしくは非置換のインドリル、置換もしくは非置換のキノリニル、置換もしくは非置換のベンゾトリアゾリル、置換もしくは非置換のベンゾチアゾリル、置換もしくは非置換のベンゾオキサゾリル、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル、置換もしくは非置換のイソキノリニル、置換もしくは非置換のイソインドリル、置換もしくは非置換のアクリジニル、置換もしくは非置換のベンゾイサゾリル、または置換もしくは非置換のジメチルヒダントインである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
L2が置換または非置換のC1-C10アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
L2が非置換C1-C10アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
L2がメチレンである、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
環Aが置換または非置換のアリールであり;
環Bが置換または非置換のヘテロアリールであり;
R1が水素であり;かつ
L2が非置換C1-C10アルキルである、
請求項1記載の化合物。
【請求項11】
R2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
R1が水素または非置換C1-C10アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
R1が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
以下の式

を有する、請求項1記載の化合物:
式中、
yが0から3の整数であり;
zが0から5の整数であり;
Xが-N=、-CH=、または-CR5=であり;
R3、R4、およびR5が、独立して、-CN、-S(O)nR6、-NR7R8、-C(O)R9、-NR10-C(O)R11、-NR12-C(O)-OR13、-C(O)NR14R15、-NR16S(O)2R17、-OR18、-S(O)2NR19、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、ここで、nが0から2の整数であり、ここでzが1よりも大きい場合、2つのR3部分が、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成してもよく;かつ
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19が、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【請求項15】
L2が置換または非置換のC1-C10アルキルである、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
L2が非置換C1-C10アルキルである、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
L2がメチレンである、請求項14記載の化合物。
【請求項18】
Xが-N=または-CH=である、請求項14記載の化合物。
【請求項19】
zが2であり、かつ隣接する頂点における2つのR3部分が、一緒に連結されて、置換または非置換のヘテロシクロアルキルを形成する、請求項14記載の化合物。
【請求項20】
zが1である、請求項14記載の化合物。
【請求項21】
yが0または1である、請求項14記載の化合物。
【請求項22】
R3が-OR18であり、かつR18が水素または非置換C1-C10アルキルである、請求項14記載の化合物。
【請求項23】
L2がメチレンであり;
Xが-N=または-CH=であり;
R1が水素であり;かつ
yおよびzが0である、
請求項14記載の化合物。
【請求項24】
以下の式

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項25】
以下の式

を有する、化合物:
式中、
環Dが、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
L3が、-C(O)-NH-または-S(O)2-NH-であり;
R20が、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
R21が、-NR22R23または-OR24であり;
R22およびR23が、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールであるか、あるいは一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成し;かつ
R24が、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールであるか、あるいは一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルの置換もしくは非置換のシクロアルキルを形成する。
【請求項26】
環Dが、置換または非置換のフェニルである、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
R20が、置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルである、請求項25記載の化合物。
【請求項28】
R20が、置換もしくは非置換のC1-C10アルキル、または置換もしくは非置換の3〜7員のシクロアルキルである、請求項25記載の化合物。
【請求項29】
R20が、置換もしくは非置換のC1-C5アルキル、または置換もしくは非置換の3〜6員のシクロアルキルである、請求項25記載の化合物。
【請求項30】
R20が、非置換C1-C5アルキル、または非置換3〜6員のシクロアルキルである、請求項25記載の化合物。
【請求項31】
R22が水素であり;
R23が、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、
請求項25記載の化合物。
【請求項32】
R22が水素であり;かつ
R23が置換または非置換の置換または非置換のアリールである、
請求項25記載の化合物。
【請求項33】
R22およびR23が、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルまたは置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成する、請求項25記載の化合物。
【請求項34】
R22およびR23が、一緒に連結されて、置換もしくは非置換のピロリル、置換もしくは非置換のイソインドリニル、置換もしくは非置換のピペリジニル、または置換もしくは非置換のテトラヒドロキノリニルを形成する、請求項25記載の化合物。
【請求項35】
以下の式

を有する、請求項25記載の化合物:
式中、
wが0から1の整数であり;
qが0から7の整数であり;
R25、R26、R27、およびR28が、独立して、-CN、-NR29R30、-C(O)R31、-NR32-C(O)R33、-NR34-C(O)-OR35、-C(O)NR36R37、-NR38S(O)2R39、-OR40、-S(O)2NR41、-S(O)vNR42、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、ここで、vが0から2の整数であり;
R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、およびR42が、独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
R25およびR26、またはR26およびR27が、連結されて、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールを形成してもよい。
【請求項36】
R28が-OR40であり、ここでR40が水素または非置換C1-C10アルキルである、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
R40が、水素または非置換C1〜C5アルキルである、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
以下の式

を有する、請求項35記載の化合物。
【請求項39】
R20が非置換C1〜C10アルキルである、請求項38記載の化合物。
【請求項40】
R28が-OR40であり、ここでR40が、水素または非置換C1〜C10アルキル、または置換もしくは非置換のC3〜C6シクロアルキルで置換されたC1〜C10アルキルである、請求項38記載の化合物。
【請求項41】
qが1である、請求項38記載の化合物。
【請求項42】
以下の式

を有する、請求項38記載の化合物。
【請求項43】
以下の式


を有する、請求項25記載の化合物。
【請求項44】
動物細胞を安定化させるのに十分な量の式IまたはIIIの化合物(例えば、請求項1〜43記載のいずれか一項記載の化合物のいずれか)と、該細胞を接触させる工程
を含む、分離された細胞をインビトロで安定化させる方法。
【請求項45】
前記化合物の存在下において前記細胞の状態または環境を変化させる工程をさらに含み、該化合物の非存在下における該変化させる工程が、該細胞の細胞プログラミングに変化をもたらす、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記変化させる工程が、前記細胞を解凍することおよび該細胞を他の細胞から解離させることのうち少なくとも1つを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記細胞が接着性である、請求項44記載の方法。
【請求項48】
前記細胞が懸濁液中にある、請求項44記載の方法。
【請求項49】
前記細胞の形質を決定する工程をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項50】
動物より前記細胞を分離する工程を含む、請求項44記載の方法。
【請求項51】
前記動物がヒトである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記動物が非ヒト動物である、請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記化合物が式Iの化合物である、請求項44記載の方法。
【請求項54】
前記化合物が式IIIの化合物である、請求項44記載の方法。
【請求項55】
動物において状態を改善させる方法であって、
該状態を改善させるのに十分な量の式IまたはIIIの化合物(例えば、請求項1〜43のいずれか一項記載の化合物のいずれか)を、それを必要とする動物に投与する工程
を含む、方法。
【請求項56】
前記状態が、組織損傷、発作、および癌からなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記組織が、膵臓、肝臓、腸、肺、および腎臓からなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記状態が、移植された組織または臓器の少なくとも部分的な拒絶を含む、請求項55記載の方法。
【請求項59】
前記移植が、骨髄、臍帯血、精製された造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、心臓細胞、神経系細胞、膵β細胞、または肝細胞の移植を含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記化合物が式Iの化合物である、請求項55記載の方法。
【請求項61】
前記化合物が式IIIの化合物である、請求項55記載の方法。
【請求項62】
細胞生存を維持するための方法であって、
分離された幹細胞、前駆細胞または分化細胞を産生する工程;および
該分離された細胞内のE-カドヘリンの安定化を誘導する工程により、細胞生存を維持する工程
を含む、方法。
【請求項63】
前記誘導する工程が、前記分離された幹細胞を、式Iの化合物(例えば、請求項1〜24のいずれか一項記載の化合物のいずれか)の非存在下の場合と比較して、分離された幹細胞の生存を少なくとも2倍向上させるのに十分な量の該化合物に、接触させることを含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記誘導する工程が、表面上で前記分離された幹細胞を培養することを含み、E-カドヘリン外部ドメインを含む分子が該表面に係留されている、請求項62記載の方法。
【請求項65】
分離された細胞内のE-カドヘリンを安定化させる分子の非存在下の場合と比較して、分離された細胞の生存を少なくとも2倍に向上させるのに十分な量の該分子を含む、該分離された細胞の集団。
【請求項66】
前記分子が、式Iの化合物(例えば、請求項1〜24のいずれか一項記載の化合物のいずれか)を含む、請求項65記載の細胞の集団。
【請求項67】
前記細胞が、幹細胞、誘導幹細胞、多能性幹細胞、前駆細胞、分化細胞、β細胞、および線維芽細胞からなる群より選択される、請求項65記載の細胞の集団。
【請求項68】
式IまたはIIIの化合物(例えば、請求項1〜43のいずれか一項記載の化合物のいずれか)の非存在下の場合と比較して、分離された細胞の生存を少なくとも2倍向上させるのに十分な量の該化合物を含む、分離された細胞の集団。
【請求項69】
前記細胞が、幹細胞、誘導幹細胞、多能性幹細胞、前駆細胞、分化細胞、β細胞、および線維芽細胞からなる群より選択される、請求項68記載の集団。
【請求項70】
幹細胞の生存を維持するための方法であって、
分離された細胞を産生する工程;および
該分離された細胞内のプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する工程により、細胞生存を維持する工程
を含む、方法。
【請求項71】
前記活性化する工程が、PMAの非存在下における生存率と比較して、前記分離された細胞の生存を向上させるのに十分な量のホルボール 12-ミリステート 13-アセテート(PMA)を、該細胞に接触させることを含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
プロテインキナーゼC活性化物質の非存在下の場合と比較して、分離された幹細胞の生存を少なくとも2倍向上させるのに十分な量のPKC活性化物質を含む、分離された幹細胞の集団。
【請求項73】
各置換基が、独立して、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CN、-NO2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、ここで、R'、R''、R'''、およびR''''のそれぞれが、独立して、水素、C1-10アルキル基、C1-10ヘテロアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項74】
環Aが、1〜5個のR3基でそれぞれ置換されてもよい、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
環Bが、1〜5個のR4基でそれぞれ置換されてもよいヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールであり;
L1が-C(O)-NR2-または-NR2-C(O)-であり;
L2が、結合、C1-10アルキレン、またはC1-10ヘテロアルキレンであり;
R1およびR2が、独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
R3およびR4のそれぞれが、独立して、-CN、-S(O)nR6、-NR7R8、-C(O)R9、-NR10-C(O)R11、-NR12-C(O)-OR13、-C(O)NR14R15、-NR16S(O)2R17、-OR18、-S(O)2NR19、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここで、nが0から2の整数であり、2つのR3部分が、一緒に連結されて、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはテロアリールを形成してもよく;かつ
R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、およびR19が、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである、
請求項1記載の化合物。
【請求項75】
各置換基が、独立して、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CN、-NO2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、ここでR'、R''、R'''、およびR''''のそれぞれが、独立して、水素、C1-10アルキル基、C1-10ヘテロアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群より選択される、
請求項25記載の化合物。
【請求項76】
環Dが、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよいアリールまたはヘテロアリールであり;
L3が、-C(O)NH-または-S(O)2NH-であり;
R20が、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよい、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
R21が、-NR22R23または-OR24であり;
R22およびR23が、独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールであるか、または一緒に連結されて、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよいヘテロシクロアルキルもしくはヘテロアリールを形成し;
R24が、1〜5個のR基でそれぞれ置換されてもよい、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールであり;かつ
各R基が、独立して、C1-10アルキル、C1-10ヘテロアルキル、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CN、-NO2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、ここで、R'、R''、R'''、およびR''''のそれぞれが 、独立して、水素、C1-10アルキル基、C1-10ヘテロアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、およびアリールアルキル基からなる群より選択される、
請求項25記載の化合物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図3M】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図6J】
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【図6K】
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【図6L】
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【図6M】
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【図6N】
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【図6O】
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【図6P】
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【図6Q】
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【図6R】
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【図6S】
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【図6T】
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【図6U】
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【図6V】
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【図6W】
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【図6X】
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【図6Y】
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【図6Z】
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【図6AA】
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【図6AB】
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【図6AC】
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【公表番号】特表2012−510526(P2012−510526A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539689(P2011−539689)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066554
【国際公開番号】WO2010/065721
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【Fターム(参考)】