説明

広い用途範囲を有する形状記憶成形品の製造方法

【課題】射出および押出によって形状記憶成形品を製造することに関して、広い温度範囲に適用できる形状記憶成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】a)イソシアネート末端プレポリマーを形成するために、約2000〜約4000g/molの分子量、および官能価2を有する一以上の直鎖状ヒドロキシル末端ポリオールと、有機ジイソシアネートの第1部分を約1.1:1〜約1.9:1のNCO:OHモル比で反応させる。b)段階a)で製造されたプレポリマーと、有機ジイソシアネートの残りの第2部分を混合する。c)熱可塑性ポリウレタンを形成するために、段階b)で製造された混合物と、約60〜約350g/molの分子量を有する一以上のジオール鎖延長剤を反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い適用温度範囲を有する形状記憶成形品の製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は以前から既知であり、高品位な機械特性と、その低廉な熱可塑性加工性の既知の利点との組み合わせのために、工業的に重要である。広範な機械特性は、異なった化学合成成分を用いることによって得ることができる。TPU、その特性および用途の概観は、例えば、プラスチック(Kunststoffe)68(1978年)、第819〜825頁、または弾性ゴム、ゴム、プラスチック(Kautschuk、Gummi、Kunststoffe)35(1982年)、第568〜584頁に示される。
【0003】
TPUは、直鎖状ポリオール、一般にポリエステルまたはポリエーテルポリオール、有機ジイソシアネートおよび短鎖状ジオール(鎖延長剤)に由来して合成される。さらに、反応形成を促進するために触媒を添加し得る。特性を調節するために、合成成分を比較的広いモル比内で変更し得る。1:1〜1:12のポリオールと鎖延長剤のモル比は適当なことが証明された。ショアA硬度60〜75を有する生成物は、その結果製造される。
【0004】
TPUは、連続的または不連続的に製造し得る。もっとも既知である工業上の製造方法は、ストリッププロセス(GB1057018)および押出機プロセス(DE1964834および2059570)である。
【0005】
例えば、可塑化されたブロック(セグメント)予備延長によって改良された加工挙動を有する、熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマ−の製造は、EP−A0571830に記載される。既知の出発化合物が用いられる。それによって得られたTPUは、射出成形用途において改良された安定性、および改良された離型性を有する。
【0006】
形状記憶材料も一般に既知である。A.LendleinおよびS.Kelchによる論文「形状記憶ポリマー(Formgedachtnispolymere)」、応用化学(Angewandte Chemie)、2002年、第2138〜2162頁、Wiley−VCH Publishersには、他のポリマーに加えてポリウレタンが記載される。従って形状記憶材料は、外部刺激の作用下でその外部形状を作り変えることができるという材料である。温度変化により形状変化が生じた場合、これは熱的に引き起こされた形状記憶効果である。この材料の製造のために形状記憶ポリマーを用いる際、技術的に所望の温度範囲内の物理的な相転移、例えば相の融点をこのために用いる。
【0007】
Lendleinにより記載されたポリウレタンに由来する形状記憶ポリマーは、一般に工業的に利用不可能、または困難を伴ってのみ利用可能である成分から作られるか、または他の不利な点を示す。従ってポリウレタンは、例えば、しばしば望ましくない真珠層効果を示すか、または加水分解に対して非常に敏感である。
【0008】
DE−A10234006およびDE−A10234007に記載される形状記憶ポリマーは、体温より下にある相転移を示し、従って多くの用途に対して適当でない。さらに工業的に重要な5〜20MPaのエラストマー弾性率範囲内で、このポリウレタンは、著しくその適用温度範囲に関して制限される。該ポリウレタンは、100℃〜120℃で早くもその寸法安定性を失う。
【特許文献1】GB1057018
【特許文献2】DE1964834
【特許文献3】DE2059570
【特許文献4】EP−A0571830
【特許文献5】DE−A10234006
【特許文献6】DE−A10234007
【非特許文献1】「プラスチック(Kunststoffe)」、1978年、68、第819〜825頁
【非特許文献2】「弾性ゴム、ゴム、プラスチック(Kautscuk、Gummi、Kunststoffe)」、1982年、35、第568〜584頁
【非特許文献3】A.LendleinおよびS.Kelch、「形状記憶ポリマー(Formgedachtnispolymer)」、Angewandte Chemie、Wiley−VCH Publishers、2002年、第2138〜2162頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上昇したスイッチング温度を有し、同時に180℃までの適用温度範囲を有する形状記憶ポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を例示の目的であって、限定の目的ではなく記載する。実施例中または特記する場合を除き、本明細書中での量、パーセンテージ、OH価、官能価などで表される全ての数字は、用語「約」によって全ての場合において修飾されるものとして理解される。本明細書中にダルトン(Da)で示される当量および分子量は、特記しない限り、それぞれ数平均当量および数平均分子量である。
【0011】
本発明は、120℃より高い温度で熱的に安定であり、25℃〜120℃、好ましくは35℃〜70℃の相転移範囲、および相転移温度の上下の温度で測定した15ショアAより大きい硬度差を有する、熱可塑的に加工可能なポリウレタンに基づく形状記憶成形品の改良された製造方法であって、多段階反応において、
a)イソシアネート末端プレポリマーを形成するために、2000〜4000g/molの分子量および官能価2を有する一以上の直鎖状ヒドロキシル末端ポリオールと、有機ジイソシアネートの第1部分を、1.1:1〜1.9:1のNCO:OHモル比で反応させること、
b)段階a)で製造されるプレポリマーを有機ジイソシアネートの残りの(第2)部分と混合すること、
c)熱可塑性ポリウレタンを形成するために、段階b)で製造される混合物と、60〜350g/molの分子量を有する一以上のジオール鎖延長剤を反応させること
を含み、段階c)の後にNCO:OHモル比を0.9:1〜1.1:1に調節し、ジオール鎖延長剤とポリオールのモル比は、3:1〜1:2である、方法を提供する。
【0012】
使用し得る適当な有機ジイソシアネートは、例えばJustus Liebigs Annalen der Chemie、562、第75〜136頁に記載されるような、例えば、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、ヘテロ環式、および芳香族ジイソシアネートである。
【0013】
特に、例えば以下のジイソシアネートを挙げることができる:脂肪族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなど、脂環式ジイソシアネート、例えば、 イソホロンジイソシアネートなど、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1−メチル −2,6−シクロヘキサンジイソシアネートならびに相当する異性体混合物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートならびに相当する異性体混合物など、芳香族ジイソシアネート、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートと2,6−トルイレンジイソシアネートの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、ウレタン変性液状4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルエタン−(1,2) および1,5−ナフチレン ジイソシアネート。好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、96重量%より多い4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量を有するジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートを用いる。上述のジイソシアネートは、単独で、または互いに混合物の形態で用いることができる。それらを、(全イソシアネートをもとに算出した)15mol%までのポリイソシアネートと同時に用いてもよいが、熱可塑的になお加工可能な生成物を形成するような量でのみポリイソシアネートを添加してよい。ポリイソシアネートの例は、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートおよびポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートである。
【0014】
直鎖状ヒドロキシル末端ポリオールをポリオールとして使用する。製造に依存して、このポリオールは、少量の非直鎖状化合物をしばしば含有する。従って、これはまた、しばしば「実質的に直鎖状のポリオール」と称される。
【0015】
適当なポリオールとして、例えばポリエーテルジオールおよびポリエステルジオールが挙げられる。
【0016】
ポリエーテル−ジオールは、アルキレン基中に2〜4個の炭素原子を含有する一以上のアルキレンオキシドと、2個の活性水素原子を結合状態で含有する出発分子を反応させて製造し得る。アルキレンオキシドとして、例えば以下のものを挙げることができる:エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリンおよび1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシド。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物を用いることは好ましい。アルキレンオキシドは、単独で、交互の方法で、または混合物として用いてよい。適当な出発分子としては、例えば、水、アミノアルコール、例えばN−アルキル−ジエタノールアミン、例えばN−メチル−ジエタノールアミン、およびジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。必要に応じて出発分子の混合物を使用してもよい。適当なポリエーテルジオールは、さらに、ヒドロキシル基を含有するテトラヒドロフランの重合生成物である。二官能性ポリエーテルについて0〜30重量%の量で三官能性ポリエーテルを用いてもよいが、多くともなお熱可塑的に加工可能な生成物が形成されるような量である。実質的に直鎖状のポリエーテルジオールが2000〜4000の数平均分子量Mを有することは好ましい。
【0017】
ポリエステルジオールを、例えば、好ましくは2〜12個の炭素原子、より好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸と多価アルコールから製造し得る。適当なジカルボン酸としては、例えば脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸など、または芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などが挙げられる。ジカルボン酸を、単独で、または混合物として、例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で使用することができる。ポリエステルジオールの製造のために、ジカルボン酸のかわりに、相当するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール基に1〜4個の炭素原子を含有するカルボン酸ジエステル、無水カルボン酸、またはカルボン酸塩化物などを使用することは、場合により有利であり得る。多価アルコールの例としては、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を含有するグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールまたはジプロピレングリコールが挙げられる。ブタンジオールアジペートは特に好ましい。
【0018】
上述のジオール、特に4〜6個の炭素原子を含有する、1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールのようなジオールと炭酸とのエステル、ω−ヒドロキシカルボン酸、例えばω−ヒドロキシカプロン酸などの縮合生成物、またはラクトン、例えば場合により置換されたω−カプロラクトンの重合生成物も適当である。
【0019】
本発明に従って、ポリエステルジオールが2000〜4000の数平均分子量Mを有することは好ましい。
【0020】
鎖延長剤として、60〜350の分子量を有する、場合により少量のジアミンと混合したジオール、好ましくは2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えばエタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールおよび特に1,4−ブタンジオールなどを用いる。しかしながら、2〜4個の炭素原子を有するグリコールとテレフタル酸のジエステル、例えばテレフタル酸ビス−エチレングリコールまたはテレフタル酸ビス−1,4−ブタンジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、エトキシル化ビスフェノール、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAも適当である。エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノンまたは1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAは、鎖延長剤として好ましく用いられる。上述の鎖延長剤の混合物を用いてもよい。さらに少量のトリオールを添加してもよい。
【0021】
さらに、単官能性化合物も、例えば連鎖停止剤または離型助剤として、少量で添加してもよい。例えば、アルコール、例えばオクタノールおよびステアリルアルコールなど、またはアミン、例えばブチルアミンおよびステアリルアミンなどを挙げることができる。
【0022】
TPUの製造のために、合成成分を、場合により触媒、助剤物質および/または添加剤の存在下で、NCO基とNCO反応性基の総量との当量比が0.9:1.0〜1.1:1.0、好ましくは0.95:1.0〜1.10:1.0であるような量で反応させてよい。
【0023】
本発明による適当な触媒は、当業者に既知の三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N'−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなど、ならびに特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、または錫化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレートなど、または脂肪族カルボン酸の錫ジアルキル塩、例えばジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ジラウレートなどである。好ましい触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物および錫化合物である。TPU中の触媒の総量は、TPUの重量に基づいて好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜1重量%である。
【0024】
TPU成分および触媒に加えて、助剤物質および/または添加剤を添加してもよい。例えば以下のものが挙げられる:潤滑剤、例えば脂肪酸エステル、その金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪エステルアミドおよびシリコーン化合物、粘着防止剤、抑制剤、加水分解、光、熱および変色に対する安定剤、難燃剤、染料、顔料、無機および/または有機充填剤および補強剤。補強剤は、特に繊維状補強物質、例えば無機繊維などであり、これは、先行技術により製造され、サイジング剤で処理されてもよい。好ましくはナノ粒子固体、例えばカーボンブラックなどを、TPUに対して0〜10重量%の量で添加してもよい。既知の助剤物質および添加剤に関するさらなる詳細は、専門文献、例えばJ.H.SaundersおよびK.C.Frischによるモノグラフ「ハイポリマー(High Polymers)」、第XVI巻、ポリウレタン、第1部および第2部、Verlag Interscience Publishers、1962年および1964年、R.GachterおよびH.Mullerによるプラスチック添加剤のハンドブック(Handbook of Plastics Additives)(Hanser Verlag、ミュンヘン、1990年)またはDE−A2901774から得られる。
【0025】
TPUに組み入れてよいさらなる添加剤としては、熱可塑性材料、例えばポリカーボネートおよびアクリルニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー、特にABSが挙げられる。他のエラストマー、例えばゴム、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、ならびに他のTPUなどを使用してもよい。市販の可塑剤、例えばホスフェート、フタレート、アジペート、セバケートおよびアルキルスルホン酸エステルなどは、組み入れに対してさらに適している。
【0026】
TPUは多段階プロセスで製造される。
【0027】
段階a)のプレポリマー製造のための反応成分の量は、段階a)における有機ジイソシアネートとポリオールのNCO/OH比が、好ましくは1.1:1〜1.9:1、より好ましくは1.1:1〜1.7:1であるように選択される。
【0028】
成分は互いに充分に混合され、段階a)のプレポリマー反応を、実質的に(ポリオール成分に基づいて)完全に転化するまで行うことが好ましい。
【0029】
その後、(段階b)でジイソシアネートの残りの量を混合する。
【0030】
次いで、この鎖延長剤を激しく混合し、反応を完了させる(段階c)。
【0031】
ジオール鎖延長剤とポリオールのモル比は、好ましく3:1〜1:2である。NCO基とOH基全体のモル比は、全段階にわたり0.9:1〜1.1:1に調節される。好ましくはジオール鎖延長剤とポリオールのモル比は、ポリオールが分子量2000を有する場合には2:1未満であり、ポリオールが分子量4000を有する場合には3:1未満である。
【0032】
TPUを不連続的または連続的に製造し得る。このための最良の既知の工業的な製造方法は、ストリッププロセス(GB−A1057018)および押出機プロセス(DE−A1964834、DE−A2059570およびUS−A5795948)である。
【0033】
既知の混合装置、好ましくは高い剪断エネルギーで動作する装置は、TPUの製造に適している。連続的な製造に対しては、例えば、コニーダー、好ましく押出機、例えば2軸スクリュー押出機およびBUSSニーダーなどが挙げられる。
【0034】
TPUを、例えば2軸スクリュー押出機で、押出機の第1部分でプレポリマーを製造し、次いで第2部分でジイソシアネートを添加し、鎖延長することによって製造し得る。ジイソシアネートおよび鎖延長剤の添加を、押出機の同じ計量口で同時に、または好ましくは2つの別の口で連続的に行うことができる。しかしながら、本発明にしたがって、鎖延長剤の計量は、さらなるジイソシアネートの計量前に行うべきではない。
【0035】
しかしながら、プレポリマーを押出機の外で、別の、上流に接続したプレポリマー反応器内で、不連続的に容器内で、または連続的にスタティックミキサーを備えたチューブ内または攪拌チューブ(チューブ状ミキサー)内で製造してもよい。
【0036】
しかしながら、別のプレポリマー反応器内で製造されたプレポリマーを、第1混合装置、例えばスタティックミキサーを用いてジイソシアネートと、および第2混合装置、例えばミキシングヘッドを用いて鎖延長剤と混合させてもよい。その後、この反応混合物は、既知のストリッププロセスと同様に、連続的にキャリヤー、好ましくはコンベアベルトに乗せられ、そこで、材料を固化しTPUを形成するまで、必要に応じてストリップを加熱して反応させる。
【0037】
本発明の方法により製造されたTPUは、好ましくは25℃〜120℃の温度範囲で付加的な相転移を有する。しかしながら、ゴム状弾性のため、180℃(硬質ブロックの融点)までの広い用途範囲は、相転移を超えてもなお利用可能である。
【0038】
成形品、好ましくは射出成形品または押出品(例えば断面材およびホースなど)を形成するために熱可塑処理した後に、この成形品は形状記憶特性を示す。
【0039】
形状記憶特性は、例えば、硬質ブロックの融点よりも低く、スイッチング温度よりも高いかまたは等しい温度で、不変形状から物品を伸長し、伸長された形状でスイッチング温度よりも低い温度まで物品を冷却することによって利用し得る。TPUは、冷却することによって伸長した通常の形状で固定され、スイッチング温度を超えるかまたは等しい温度まで加熱することでのみ当初の不変形状に変形する。
【0040】
本発明の方法により製造された形状記憶物品は、射出成形品、例えば熱的に制御された作動装置、または熱的に制御し得る取り付けまたは取り外し可能な構造部品、例えば密閉方式のパイプおよび容器など、温度センサー、例えば、燃焼バルブおよび煙探知機、人工筋肉、自己分解する固定部材、例えばボルト、ねじ、リベットなど、シール、エンドフラップ、袖、ホースおよびパイプ留め、固定環、カップリング、ブッシング、クランプディスク、弾性ベアリング、プラグ、線形駆動装置、転換シャフトおよびアクション人形の製造のために用いられる。
【0041】
押出品、例えば熱収縮シート、フィルムおよび繊維、温度ヒューズおよびセンサー、カテーテル、インプラント、心臓血管のステント、熱収縮する骨代替品および外科用縫合材料などを形状記憶物品から製造してもよい。
【実施例】
【0042】
本発明は、以下の実施例によって限定されることなく、さらに例示される。「部」および「パーセント」で示される全ての量は、特記しない限り重量であると理解される。
【0043】
いずれの場合にも、ポリオールを表1にしたがって反応容器中に入れた。内容物を180℃まで加熱した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)部分量1を撹拌しながら添加し、ポリオールについて90mol%を超える転化を行った。
【0044】
反応完了後、MDI部分量2を撹拌しながら添加した。その後、表1で指定された鎖延長剤の量を添加し、全成分のNCO/OH比は1.00であった。激しく混合した後、TPU反応混合物を金属シート上へ注ぎ、120℃で30分間加熱した。
【0045】
【表1】

【0046】
流延プレートを細かく裁断し、粒状化した。粒質物をMannesmann Company製のD60(32スクリュー)射出成形機中で溶融し、S1ロッド(形成温度:40℃;ロッドサイズ:115×25/6×2)およびプレート(形成温度40℃;サイズ:125×50×2mm)へと成形した。
【0047】
測定
硬度をDIN53505に従って、室温および60℃で測定した(表2)。
【0048】
動的機械分析(ISO6721.4に準拠するDMA:貯蔵引張弾性率)
長方形断面材(30mm×10mm×2mm)を射出成形プレートから打ち抜いた。この試験プレートを一定の初期荷重下で、場合により貯蔵弾性率に依存して、非常に小さな変形で周期的に刺激し、クランプした物品に作用する力を、温度と刺激周波数の関数として測定した。
【0049】
付加的に加えられた初期荷重は、負の変形振幅の時に、なお充分にクランプした状態で試験片を保持するように作用した。
【0050】
DMA測定をSEIKO DMSモデル6100機器を用いて、−150℃〜200℃までの温度範囲で、1分あたり2℃の加熱速度で1Hzで行った。
【0051】
所望の相転移(スイッチング温度)の範囲で形状記憶物品の挙動の特性を決定するために、貯蔵引張弾性率を測定し、比較のために20℃および60℃で記録した。
【0052】
スイッチング温度を相転移の転換点として示した(表2)。
【0053】
弾性率曲線が値2Mpa未満に下がるDMA曲線の温度を、熱安定性の尺度として示した。
【0054】
熱的に引き起こされた変形(TID)
S1ロッドを60℃(スイッチング温度よりも高い温度)で100%まで伸長し、室温までさらに延ばして冷却した。それによって、成形品を伸長した通常の形状で固定した(初期長さに対する割合での長さ1)。
【0055】
スイッチング温度を超えるまで新たに加熱することによって、不変形状に戻る収縮が引き起こされた(初期長さに対する割合での長さ2)。
【0056】
【表2】

【0057】
本発明による形状記憶成形品の場合においては、本発明による製造方法によって生成された付加的な相転移(スイッチング温度を参照)をDMA測定値においてみることができ、それは硬度および弾性率の著しい変化を生じさせる。それでもなお、5〜30Mpaの技術的に重要な弾性率範囲に対しては、2Mpaでの温度を特徴とする、160℃までの広い適用温度範囲が得られる。
【0058】
形状記憶特性を、熱的に引き起こされた変形(TID)での長さに対して図によって例示した。比較例1では転移点がないために熱的に引き起こされた長さの変化は存在しないが、本発明による実施例2〜5の場合では、著しい長さの変化が引き起こされる。
【0059】
例示の目的で本発明を上記に詳しく説明したが、そのような詳細は、単なる例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定され得ることを除き、本発明の意図および範囲から逸脱せずに当業者によって変更され得ると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約120℃を超える温度で熱的に安定であり、約25℃〜約120℃の相転移範囲、および相転移温度の上下の温度で測定された15ショアAより大きい硬度差を有する、熱可塑的に加工可能なポリウレタンに基づく形状記憶成形品の製造方法であって、多段階反応において、
a)イソシアネート末端プレポリマーを形成するために、約2000〜約4000g/molの分子量、および官能価2を有する一以上の直鎖状ヒドロキシル末端ポリオールと、有機ジイソシアネートの第1部分を約1.1:1〜約1.9:1のNCO:OHモル比で反応させること、
b)段階a)で製造されたプレポリマーと、有機ジイソシアネートの残りの第2部分を混合すること、
c)熱可塑性ポリウレタンを形成するために、段階b)で製造された混合物と、約60〜約350g/molの分子量を有する一以上のジオール鎖延長剤を反応させること
を含んでなり、段階c)の後に、NCO:OHモル比を約0.9:1〜約1.1:1に調節し、ジオール鎖延長剤とポリオールのモル比は約3:1〜約1:2である、方法。
【請求項2】
ヒドロキシル末端ポリオールは、約2000〜約4000g/molの平均分子量を有するブチレンアジペートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機ジイソシアネートは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、トルイレン−2,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジオール鎖延長剤は、エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノンおよび1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ナノ粒子固体約0〜約10重量%を、製造または加工中に混合物に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ナノ粒子固体はカーボンブラックである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
形状記憶成形品を射出成形加工または押出加工によって製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
射出成形品および押出品の製造方法であって、請求項1に従って製造される形状記憶成形品を使用することを含む、方法。
【請求項9】
熱可塑的に加工可能なポリウレタンの相転移範囲は、約35℃〜約70℃である、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2008−266587(P2008−266587A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−57417(P2008−57417)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】