説明

床用化粧材

【課題】表現したい色調の濃淡に関わらず良好な塗装感が得られ、更にナイフマークの問題が解消された床用化粧材を提供する。
【解決手段】木質板1上に、接着剤層6を介して化粧シート3が積層された床用化粧材であって、(1)前記床用化粧材は、前記化粧シート側に溝部4及び/又は面取り部を有し、(2)前記溝部及び面取り部は、着色塗料5によって塗装されており、(3)前記接着剤層6は、着色顔料5を含有する、ことを特徴とする床用化粧材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝部や面取り部に着色塗装が施された床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床用化粧材としては、木質板上に、合成樹脂層を含む化粧シートを積層してなる床用化粧材が知られている(特許文献1等)。そして、これらの床用化粧材は、意匠性を向上させるために、化粧シート側に溝部や面取り部が設けられることが多い。
【0003】
上記溝部や面取り部は、一般に着色塗料によって塗装されるが、色調が淡い場合には、木質板の地色を十分に隠蔽できず、狙った色調が得られない場合がある。また、塗装領域が木質板と化粧シートの両方に跨る場合には、木質板と化粧シートの塗装感に違いが生じ、塗装斑が生じてしまう場合がある。なお、溝部や面取り部の塗装に関しては、例えば、特許文献2等がある。
【0004】
他方、溝部や面取り部を塗装することなく、これらに塗装感を付与する方法として、木質板と化粧シートを接着する接着剤層に着色剤を含有する方法がある。この方法は、溝部や面取り部が浅く、木質板に達していない場合に有効である。しかしながら、この方法においても、着色剤の色調が淡い場合には、木質板の地色を十分に隠蔽できず、狙った色調が得られない場合がある。また、溝部や面取り部を形成する際に、化粧シートに含まれる合成樹脂層にいわゆるナイフマークが残り、光の乱反射のために製品にギラギラ感が残るおそれがある。なお、ナイフマークとは、溝部や面取り部を形成する際、円形のナイフが合成樹脂層を削るときに切削面に残る波型の切削痕を意味する。
【0005】
従って、表現したい色調の濃淡に関わらず良好な塗装感が得られ、更にナイフマークの問題が解消された床用化粧材の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2004−17590号公報
【特許文献2】特開2005−313142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するものであり、表現したい色調の濃淡に関わらず良好な塗装感が得られ、更にナイフマークの問題が解消された床用化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、溝部及び面取り部を着色塗料によって塗装するとともに、木質板と化粧シートとを接着する接着剤層に着色剤を含有することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の床用化粧材に関する。
1.木質板上に、接着剤層を介して化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1)前記床用化粧材は、前記化粧シート側に溝部及び/又は面取り部を有し、
(2)前記溝部及び面取り部は、着色塗料によって塗装されており、
(3)前記接着剤層は、着色剤を含有する、
ことを特徴とする床用化粧材。
2.前記化粧シートは、最下層に、厚さ100μm以上の合成樹脂層を有する、上記項1に記載の床用化粧材。
3.前記着色塗料によって塗装された前記溝部及び面取り部は、前記着色剤を含有する前記接着剤層と色調が同じである、上記項1又は2に記載の床用化粧材。

以下、本発明の床用化粧材について詳細に説明する。
【0009】
本発明の床用化粧材は、木質板上に、接着剤層を介して化粧シートが積層されており、
(1)前記床用化粧材は、前記化粧シート側に溝部及び/又は面取り部を有し、
(2)前記溝部及び面取り部は、着色塗料によって塗装されており、
(3)前記接着剤層は、着色剤を含有する、
ことを特徴とする。
【0010】
上記特徴を有する本発明の床用化粧材は、溝部及び面取り部が着色塗料によって塗装されており、更に接着剤層が着色剤を含有するため、両者の相乗効果により、塗装の色調が淡い場合でも木質板の下地色が十分に隠蔽されて良好な塗装感が得られる。また、木質板と化粧シートの両方に跨って塗装する場合でも、塗装感の違いが抑制されている。更に、溝部及び面取り部に塗装を施すためにナイフマークの問題が解消されている。
【0011】
以下、本発明の床用化粧材の各構成について説明する。
(木質板)
木質板としては、例えば、杉、檜、ラワン、チーク等の樹木からなる木材単板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質板が挙げられる。
【0012】
木質板の厚みは特に限定的ではないが、3〜15mm程度が好ましく、6〜12mm程度がより好ましい。
(接着剤層)
接着剤層は、着色剤を含有し、木質板と化粧シートとを接着する。
【0013】
接着剤層は、木質材料に適用できる公知の接着剤に着色剤を含有したものを用いて形成する。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする接着剤が挙げられる。
【0014】
着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニンリンブラック等の有機顔料(染料も含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。着色剤の含有量は着色の濃淡等に応じて適宜設定できるが、接着剤層中に1〜20重量%程度が好ましい。
【0015】
接着剤層の厚さは限定的ではないが、0.1〜50μm程度が好ましい。
(化粧シート)
化粧シートとしては限定されないが、例えば、基材シート上に絵柄層(ベタインキ層・柄インキ層)、透明性樹脂層及び表面保護層を順に有するものが好ましい。
【0016】
基材シートとしては、1)薄紙,上質紙,クラフト紙,和紙,チタン紙,樹脂含浸紙,紙間強化紙等の紙、2)木質繊維,ガラス繊維,石綿,ポリエステル繊維,ビニロン繊維,レーヨン繊維等からなる織布又は不織布、3)ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアクリル,ポリアミド,ポリウレタン,ポリスチレン等の合成樹脂製シート、の1種又は2種以上の積層体が挙げられる。
【0017】
基材シートの厚さは、20〜300μm程度が好ましい。基材シートは、着色又は非着色でもよい。また、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0018】
絵柄層は、柄インキ層及び/又はベタインキ層から構成される。絵柄層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷法により形成できる。柄インキ層の模様は、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様等が挙げられる。ベタインキ層は、着色インキのベタ印刷により得られる。絵柄層は、柄インキ層及びベタインキ層の片方又は両方から構成される。
【0019】
絵柄層に用いるインキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものが使用できる。この中でも、環境問題、被印刷面との密着性等の観点より、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上の混合物が好ましい。
【0020】
透明性樹脂層は、透明性の樹脂層であれば特に限定されず、例えば、透明性の熱可塑性樹脂により好適に形成できる。
【0021】
具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0022】
透明性樹脂層は、着色されていてもよい。この場合は、熱可塑性樹脂に着色剤を添加すればよい。着色材としては、絵柄層で用いる顔料又は染料が使用できる。
【0023】
透明性樹脂層には、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えば、ゴム)等の各種の添加剤を含めてもよい。
【0024】
表面保護層(透明性表面保護層)は、化粧シートに要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられる。この表面保護層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂が好ましい。特に、電離放射線硬化型樹脂は高い表面硬度、生産性等の観点から好ましい。
【0025】
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0026】
上記樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加でき、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
【0027】
熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば、熱硬化型樹脂の溶液をロールコート法、グラビアコート法等の塗布法で塗布し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。溶液の塗布量としては、固形分で概ね5〜30μm、好ましくは5〜20μm程度である。
【0028】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂;シロキサン等のケイ素樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0029】
電離放射線としては、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも、紫外線、電子線が望ましい。
【0030】
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度できる。
【0031】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100〜1000keV程度が好ましく、100〜300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2〜15Mrad程度が好ましい。
【0032】
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
【0033】
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
【0034】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度である。
【0035】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂の溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の塗布法で塗布すればよい。溶液の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μm、好ましくは5〜20μm程度である。
【0036】
電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、耐擦傷性、耐摩耗性をさらに付与する場合には、無機充填材を配合すればよい。無機充填材としては、例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。
【0037】
無機充填材の添加量としては、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して1〜80重量部程度である。
【0038】
各層の積層は、例えば、基材シートの一方の面に絵柄層(ベタインキ層、柄インキ層)を順に印刷により形成後、絵柄層上に2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤を介して透明性樹脂層をドライラミネーション法、Tダイ押出し法等で積層し、さらに表面保護層を形成する方法により行える。
【0039】
表面保護層側からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成してもよい。凹凸模様は、加熱プレス、ヘアライン加工等により形成できる。凹凸模様としては、導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0040】
上記化粧シートは、最下層(木質板と接着する層)に厚さ100μm以上の合成樹脂層(いわゆるバッカー層)を有していてもよい。なお、バッカー層は、床用化粧材において衝撃吸収等を目的とした緩衝層を意味する。バッカー層を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET−G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上で使用できる。バッカー層の厚さの上限は限定的ではないが、300〜600μmが適当である。
(溝部及び面取り部)
本発明の床用化粧材は、化粧シート側に溝部及び/又は面取り部を有し、それらは着色塗料によって塗装されている。
【0041】
溝部や面取り部は、例えば、テノーナ等の切削具を用いて床用化粧材を溝加工・面取り加工することにより形成する。溝及び面取りの深さは限定的ではなく、化粧シート内面に留まる深さでもよいし、木質板に到達する深さでもよい。このような加工深さは、所望の意匠性に応じて適宜設定する。
【0042】
特に木質板まで溝加工及び/又は面取り加工が達している場合には、着色塗料が木質板に染み込むため、化粧シートの加工面と木質板の加工面とで塗装色調が若干異なる場合があるが、本発明では接着剤層にも着色剤を添加するため、前記色調の相違が目立ち難い。
【0043】
溝部及び面取り部を塗装するための着色塗料は、例えば、前記接着剤層にも使用できる着色剤をビヒクルに溶解又は分散させることによりインキ化したものが使用できる。着色剤の例示については前記と同じである。ビヒクルとしては、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらのビヒクルは、単独又は2種以上を混合して使用できる。なお、着色塗料には、その他、溶剤や補助剤等を必要に応じて添加することもできる。
【0044】
着色塗料によって塗装された溝部及び面取り部は、着色剤を含有する接着剤層と色調が同じであることが好ましい。これにより、木質板の下地色を十分に隠蔽でき、塗装斑をなくして良好な塗装感が得られる。
【0045】
本発明の床用化粧材を図1、図2を用いて具体的に説明する。
【0046】
図1に示される床用化粧材は、木質板1に着色接着剤層6を介して合成樹脂製バッカー層2及び化粧シート3が積層された構成を有し、化粧シート3側から木質板1に達する溝部4が設けられている。溝部4の表面には着色塗膜5が形成されている。
【0047】
図2に示される床用化粧材は、合成樹脂製バッカー層23上に接着剤層24、プライマー層25、基材シート26、ベタインキ層27、柄インキ層28、接着剤層29、透明性樹脂層30、プライマー層(図示せず)及び表面保護層31が順に積層された構造を有する。表面保護層側からエンボス加工が施され、凹状のエンボス部32が付されている。一方、合成樹脂製バッカー層の裏面には、木質板21が着色接着剤層22を介して積層されている。そして、この床材においては、化粧シート側より木質板21に達する溝部20が設けられている。
【発明の効果】
【0048】
本発明の床用化粧材は、溝部及び面取り部が着色塗料によって塗装されており、更に接着剤層が着色剤を含有するため、両者の相乗効果により、塗装の色調が淡い場合でも木質板の下地色が十分に隠蔽されて良好な塗装感が得られる。また、木質板と化粧シートの両方に跨って塗装する場合でも、塗装感の違いが抑制されている。更に、溝部及び面取り部に塗装を施すためにナイフマークの問題が解消されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0050】
実施例1
(化粧シートの作成)
両面コロナ放電処理を施した60μm厚さの着色ポリプロピレン系フィルムの一方の面にグラビア印刷法でウレタン/硝化綿系プライマー層(固形分として2g/m)を形成し、他方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキでベタ柄印刷層とベタ柄印刷層上に木目柄の絵柄印刷層をグラビア印刷法で形成した後に、前記絵柄印刷層全面に2液硬化型ウレタン系樹脂からなる接着剤層(固形分として2g/m)を形成し、接着剤層面にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を添加したポリプロピレン系熱可塑性エラストマーをTダイ押出機で加熱溶融押出しして、80μm厚さの透明樹脂層を形成し、次いで透明樹脂層面に木目導管柄のエンボス版で凹陥模様を設けるとともに、透明樹脂層全面にアクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗布して透明プライマー層(固形分として1g/m)を形成し、更に透明プライマー層全面にウレタンアクリレート系電離放射線硬化型樹脂を塗布するとともに電子線(加速電圧:175KeV、照射量:5MRad)を照射して透明な表面保護層(固形分として15g/m)を形成した。更に、上記ウレタン/硝化綿系プライマー層にポリエチレンテレフタレート製バッカー層(厚さ400μm)を2液硬化型ウレタン系樹脂からなる接着剤(固形分:約6g/m)を介して設けることにより、化粧シートを作製した。
(床用化粧材の作成)
12mm×945mm幅×1840mm長の合板に、中央理化工業製BA−11/BA−11Bに淡色着色顔料(中央理化工業製T−60)を5部添加した接着剤を8g/尺を合板表面に塗布し、化粧シートを貼り合わせた。
【0051】
更に、ギャングソーで3つ割加工をした後、テノーナにより溝加工・面取り加工をした。なお、溝加工・面取り加工は、化粧シート側から合板に達する深さで施した。
【0052】
更に、塗装ラインにて、淡色着色塗料(昭和インク工業製W−SF)で溝部及び面取り部に着色塗装を施し、床用化粧材を得た。
【0053】
比較例1
接着剤に着色剤を添加しない以外は、実施例1と同様にして床用化粧材を得た。
【0054】
比較例2
溝部及び面取り部に着色塗装をしない以外は、実施例1と同様にして床用化粧材を得た。
【0055】
試験例1
実施例1、比較例1、2で作成した床用化粧材について、溝部・面取り部の着色感(着色斑の有無、所望の色調の有無)を調べた。また、溝部・面取り部のナイフマークによる意匠性の低下の有無を調べた。評価基準は次の通りである。
【0056】
色調評価:
○…木質板の下地色が十分に隠蔽されており、色調に斑がない。
△…木質板の下地色の影響をやや受けており、溝内の色調(シート部と木質部)にやや斑がある。
×…木質板の下地色の影響を受け、狙いの溝色が表現できなく、溝内の色調(シート部と木質部)に斑がある。
【0057】
外観評価:
○…ナイフマークによる意匠性の低下がない。
△…ナイフマークにより、意匠性が低下する。
×…ナイフマークによるギラツキ感が大きく、意匠性が悪い。
結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の床用化粧材の模式図(一例)である。
【図2】本発明の床用化粧材の模式図(一例)である。
【符号の説明】
【0060】
1.木質板
2.合成樹脂製バッカー層
3.化粧シート
4.溝部
5.着色塗膜
6.着色接着剤層
20.溝部
21.木質板
22.着色接着剤層
23.合成樹脂製バッカー層
24.接着剤層
25.プライマー層
26.基材シート
27.ベタインキ層
28.柄インキ層
29.透明性接着剤層
30.透明性樹脂層
31.表面保護層
32.エンボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質板上に、接着剤層を介して化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1)前記床用化粧材は、前記化粧シート側に溝部及び/又は面取り部を有し、
(2)前記溝部及び面取り部は、着色塗料によって塗装されており、
(3)前記接着剤層は、着色剤を含有する、
ことを特徴とする床用化粧材。
【請求項2】
前記化粧シートは、最下層に、厚さ100μm以上の合成樹脂層を有する、請求項1に記載の床用化粧材。
【請求項3】
前記着色塗料によって塗装された前記溝部及び面取り部は、前記着色剤を含有する前記接着剤層と色調が同じである、請求項1又は2に記載の床用化粧材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−228335(P2009−228335A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76216(P2008−76216)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】