廃プラスチック・有機物の分解方法、分解装置及び分解システム
【課題】本発明は、触媒の寿命を延ばすことができ、しかも多量の廃プラスチック・有機物を効率良く分解できる分解装置及び分解システムを提供することにある。
【解決手段】本発明者らは、触媒循環可能な分解装置及び分解システムを確立し、本発明を完成するに至った。
【解決手段】本発明者らは、触媒循環可能な分解装置及び分解システムを確立し、本発明を完成するに至った。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック、有機物で構成される医療廃棄物、又感染性のある医療廃棄物の分解方法に関し、詳しくは、廃プラスチック、有機物の分解方法の各条件を最適化したことによる高効率廃プラスチック・有機物の分解方法に関する。
さらに、本発明は、廃プラスチック・有機物を分解する触媒循環型分解装置及び高効率分解システムに関する。加えて、該分解装置は、廃プラスックに混在し、またはその少なくとも一部に蒸着しあるいは貼着等された金属・無機物の分離・回収手段も含む。
また、本出願は、参照によりここに援用されるところ、日本特許出願番号2006-297194、2006-115920、2006-115925及び2007-016087からの優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃プラスチックを処理し又は再利用する方法として、種々のものが提案され、また、一部は実用化されている。このような廃プラスチックの再利用、再資源化の一つの有力な方法として、廃プラスチック片を光触媒として知られている酸化チタンからなる分解触媒の存在下に紫外線を照射しながら、加熱して、廃プラスチックをガス化する方法及び装置が提案されている(特許文献1、2参照)。
また、廃プラスチック片の分解処理に用いられる触媒についても種々検討されている(特許文献3〜5)。
【0003】
しかし、上記の廃プラスチックの分解方法を用いた分解装置では、効率的な廃プラスチック分解処理を行うことはできず、高い処理費用及び大掛かりな装置が必要であった。さらに、ポリ塩化ビニルを含む廃棄物を処理する場合では、塩化水素ガスが発生することが知られており、また、テフロン(登録商標)を処理する場合には有毒なフッ化水素が発生することが知られており、それらのガスの処理が問題となっていた。
【0004】
プラスチック等の有機物は、廃棄時の処理が難しく、焼却処理ではダイオキシンなどの有害物質が発生するなどの危険がある。
また、プラスチック片には用途に応じてアルミニウムや銅などの金属、無機物が混在していたり、表面に金属が蒸着、貼着等されていたりする。このようなプラスチック片を焼却すると、有毒ガスが発生したり、焼却炉を傷めたりする恐れが有る。
そこで、プラスチック片など有機物は、埋め立て処理される場合があるが、プラスチックはそのままでは地中で分解しない。埋立地も不足して来ているというのが実状である。また、生分解性プラスチックなるものが存在するが、生分解性プラスチックは分解されるまでに長期間かかり、さらに分解に必要な土地が膨大であるという欠点がある。加えて、廃プラスチック・有機物に混在している利用可能な金属、希少金属、無機物は廃プラスチック・有機物から分離することができず、埋立られたり、焼却されている。
【0005】
従来このような触媒を利用した有機物の分解は、図23に示すように、プラスチック等の有機物を破砕装置101で粒状に破砕し、この有機物を、予め粒状の触媒が蓄積されたドラム形の反応槽102に投入する。続いて、反応槽102の内部で攪拌羽根103を回転させることにより、触媒と有機物とを攪拌し、ブロアー104で反応槽102の内部へ熱風を供給する。これにより、触媒の作用によって有機物の分解が促進され、有機物が気化するに至る。
更に、触媒は反応槽に残存するが、気化した有機物は、サイクロン集塵機を主体とする分離装置106を経て、水蒸気と二酸化炭素だけが排気ガスとして大気へ放出される。このように反応槽102に投入された有機物が気化すれば、その分、新たな有機物を反応槽102に投入できるので、上記の工程は中断することなく連続して行うことができる。
【0006】
しかし、従来の分解装置では、効率的な廃プラスチック分解処理を行うことはできず、高い処理費用及び大掛かりな装置が必要であった。
さらに、ポリ塩化ビニルを含む廃棄物を処理する場合では、塩化水素ガス、窒素化合物が発生することが知られており、また、テフロン(登録商標)を処理する場合には有毒なフッ化水素が発生することが知られており、それらのガスの処理が問題となっていた。
【0007】
一方、病院、透析施設等から排出される感染性医療廃棄物による2次感染防止のため、このような廃棄物の処理方法を規定した厚生省のガイドラインが平成1年11月7日に発表され、平成2年4月1日から施行されている。これにより、病院、透析施設等は、原則として、院内又は施設内での医療廃棄物の滅菌処理が義務付けられている。
以上により、病院内やクリニック内での施設において、大掛かりな装置を必要とせずかつ安全に廃プラスチック特にポリ塩化ビニルを含む感染性医療廃棄物の処理を可能とする分解方法、分解装置及び分解システムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−363337号公報
【特許文献2】特開2004−182837号公報
【特許文献3】特開2005−066433号公報
【特許文献4】特開2005−205312号公報
【特許文献5】特開2005−307007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記要求に答えるべく、高効率の廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック類で構成される医療廃棄物、血液等の生体由来物又は該由来物が付着したプラスチックの分解方法を提供することを課題とする。さらに、ポリ塩化ビニルなどの塩素系プラスチック分解時に発生するHCl、生体由来及び多種の医療廃棄物プラスチック分解時に発生する硫黄化合物、窒素化合物、テフロン(登録商標)などのフッ素化合物分解時に発生するフッ化水素等の除去も可能な分解方法も課題とする。
【0010】
一方、医療廃棄物などの産業廃棄物は、その大部分をプラスチック、有機物等に占められるが、包装袋の内面に蒸着されたアルミニウムの薄膜、又は注射針等も含んでいる。これらの金属は、有機物の全部が気化しても反応槽に残ることになる。また、金属がアルミニウム等である場合、反応槽にアルミニウム等を残したまま分解工程を継続すると、アルミニウム等は激しく酸化されるため、そのリサイクルが困難になる。
また、反応槽から金属を逐次取り出そうとして、上記の工程を中断すると、所定の時間当りに分解できる有機物の質量又は体積(以下で「処理量」と記する場合がある)が低下する。すなわち、反応槽外で金属を分離・回収しようとすると、触媒を取り出す毎に活性温度になっている触媒の温度が冷めてしまい、再度の加熱が必要であり熱エネルギーが無駄になっていた。
また、従来の分解装置では、粉末化しさらに飛散した触媒は、反応槽に戻されることなく廃棄されている。これは、触媒が1〜3mm前後の大きさの粒であれば、攪拌羽根の回転に伴って触媒の流動が反応槽の内部全体で起こるが、粉末化した触媒は流動し難い性質となり、廃プラスチック・有機物と混ざり難くなるからである。この問題は、反応槽に蓄積する触媒の量が増える程に顕著となるため、反応槽を大型化することを妨げ、更には処理量を増大することも妨げている。
一方、アルミ箔複合体など、アルミニウムや銅などの金属を含む廃プラスチック・有機物などから酸化させずに金属を回収するためには、乾留処理などが用いられるが、真空溶解炉を使用すると金属回収のコストが高くなる。また、プラスチック片に溶解処理を行うと、金属は酸化してしまうため高純度の金属の回収は望めない。
さらに、ポリ塩化ビニルなどの塩素系プラスチック分解時に発生するHCl、生体由来及び多種の医療廃棄物プラスチック分解時に発生する硫黄化合物、窒素化合物、テフロン(登録商標)などのフッ素化合物分解時に発生するフッ化水素等の処理が分解装置の実用化の妨げとなっている。
よって、本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、触媒の寿命を延ばすことができ、しかも多量の廃プラスチック・有機物を効率良く分解できる分解装置及び分解システムを提供することにある。
さらに、本発明は、触媒が循環及び/又は攪拌される工程で金属及び/又は無機物を分離・回収できる分解装置並びに分解システムを提供することを目的とする。
さらに、ポリ塩化ビニルなどの塩素系プラスチック分解時に発生するHCl、生体由来及び多種の医療廃棄物プラスチック分解時に発生する硫黄化合物、窒素化合物、テフロン(登録商標)などのフッ素化合物分解時に発生するフッ化水素等の除去できる分解装置及び分解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、分解工程における各条件を最適化すること、さらには発生した有害ガスを吸着除去する工程を導入することにより、高効率の廃プラスチック、有機物特に主にプラスチック類で構成される医療廃棄物の分解方法を確立した。
さらに、本発明者らは触媒循環を可能とした廃プラスチック・有機物の分解装置及び分解システムを確立した。
以上により、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は以下よりなる。
「1.活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒と共に廃プラスチック及び/又は有機物を加熱しながら攪拌する工程を含む、該プラスチック及び/又は有機物をガス化する廃プラスチック・有機物の分解方法において、該触媒の加熱温度が420度〜560度の範囲であることを特徴とする廃プラスチック・有機物の分解方法。
2.酸化チタンの顆粒体の酸化チタンが、以下の特性を有することを特徴とする前項1の分解方法。
(1)比表面積が35m2/g以上〜50 m2/g以下、
(2)顆粒体が3.5mesh(5.60mm)以下。
3.酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの廃プラスチック及び/又は有機物処理量が3.0kg〜40.0kg範囲であることを特徴とする前項1又は2に記載の分解方法。
4.さらに、石灰中和処理工程を含む前項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
5.さらに、酸化触媒処理工程を含む前項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
6.さらに、酸化触媒処理工程前にアルミナ触媒処理工程を含む前項5に記載の分解方法。
7.さらに、金属及び/又は無機物分離・回収工程を含む前項1〜6のいずれか1に記載の分解方法。
8.以下の処理手段を含む触媒循環型廃プラスチック・有機物の分解装置;
(1)廃プラスチック・有機物処理手段
(2)酸化触媒処理手段。
9.廃プラスチック・有機物処理手段が、以下の構成を有することを特徴とする前項8に記載の分解装置、
触媒を反応槽内に循環させる反応槽と、
反応槽の投入口から投入される廃プラスチック及び/又は有機物を前記触媒と共に循環及び/又は攪拌をする手段(循環及び/又は攪拌手段)と、を備え、
前記触媒と共に前記廃プラスチック及び/又は有機物が前記反応槽内を循環する工程で前記廃プラスチック及び/又は有機物を気化させることを特徴とする廃プラスチック・有機物処理装置。
10.前記循環及び/又は攪拌手段が、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、前記反応槽内に前記回転軸を挿入して成る1又は2以上のスクリュフィーダであることを特徴とする前項9に記載の廃プラスチック・有機物処理装置。
11.前記2つのスクリュフィーダが反応槽内に実質的に水平姿勢に設置され、かつ前記2つのスクリュフィーダの回転により、前記触媒と共に前記廃プラスチック及び/又は有機物が反応槽内を実質的に水平方向に循環されることを特徴とする前項10に記載の廃プラスチック・有機物処理装置。
12.廃プラスチック・有機物処理手段が、以下の構成を有することを特徴とする前項9に記載の分解装置、
触媒を反応槽内の上流端から下流端に循環させる反応槽と、
前記反応槽の投入口から投入される廃プラスチック及び/又は有機物を前記触媒と共に前記上流端から前記下流端に向けて循環させる循環手段と、
前記反応槽内で、前記触媒並びに廃プラスチック及び/又は有機物を攪拌する攪拌手段と、
前記反応槽内で、前記触媒を前記反応槽の下流端から上流端へ案内する帰還経路と、を備え、
前記触媒と共に前記廃プラスチック及び/又は有機物が前記反応槽の上流端から下流端へ循環される工程で前記廃プラスチック及び/又は有機物を気化させることを特徴とする廃プラスチック・有機物処理装置。
13.前記反応槽内が、前記上流端を有する第1段槽と、前記下流端を有し前記第1段槽より高く配置される第2段槽とに区分され、前記触媒が、前記第2段槽の下流端から前記帰還経路に案内されて前記第1段槽の上流端まで流下することを特徴とする前項12に記載の分解装置。
14.前記反応槽内の前記上流端と前記下流端が実質的に水平姿勢に設置され、前記触媒が、前記下流端から自重で滑落した後に、前記帰還経路に案内されて前記上流端まで流上することを特徴とする前項12に記載の分解装置。
15.前記循環手段が、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、前記反応槽に前記回転軸を挿入して成るスクリュフィーダであることを特徴とする前項12〜14のいずれか1に記載の分解装置。
16.前記螺旋羽根に補助羽根が設置されていることを特徴とする前項15に記載の分解装置。
17.廃プラスチック・有機物処理手段が、以下の構成を有することを特徴とする前項9に記載の分解装置、
触媒を反応槽内の上流端から下流端に循環させる反応槽と、
廃プラスチック及び/又は有機物を反応槽内に配置可能なカゴと、
前記反応槽内で、前記触媒を前記反応槽の下流端から上流端へ案内する帰還経路と、を備え、
前記触媒が前記反応槽の上流端から下流端へ落下(循環)する工程において、前記カゴ内の前記廃プラスチック及び/又は有機物は前記触媒と接触し、さらに気化することを特徴とする廃プラスチック・有機物処理装置。
18.前記反応槽において、反応槽底部の複数の穴から担体ガスを直接に触媒の内部に均一に分散供給可能であることを特徴とする前項9〜17のいずれか1に記載の分解装置。
19.前記反応槽の循環工程中において、金属及び/又は無機物分離・回収手段を備えることを特徴とする前項9〜18のいずれか1に記載の分解装置。
20.前記金属及び/又は無機物分離・回収手段が、前記反応槽内の循環工程中において、触媒を廃プラスチック及び/又は有機物並びに触媒の混合物から分離する手段であることを特徴とする前項19に記載の分解装置。
21.触媒を廃プラスチック及び/又は有機物並びに触媒の混合物から分離する手段が、前記金属及び/又は無機物と前記触媒の大きさにより両者を分離する手段であることを特徴とする前項20に記載の分解装置。
22.前記金属及び/又は無機物と前記触媒の大きさにより両者を分離する手段が、前記反応槽の循環工程中に触媒通過可能な篩を設置することを特徴とする前項21に記載の分解装置。
23.さらに、以下のいずれか1以上の手段を有することを特徴とする前項8〜22のいずれか1に記載の分解装置。
(1)アルミナ触媒処理手段
(2)破砕手段
(3)担体ガス供給手段
(4)サイクロン集塵手段
(5)バグフィルター付き集塵手段
(6)熱交換手段
(7)プレヒーター手段
(8)排気ブロア手段
(9)冷却手段
(10)熱回収手段
(11)HCI連続測定手段
(12)CO連続測定手段
(13)警報手段
(14)石灰中和処理手段
24.前項8〜23のいずれか1の分解装置を使用して、活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒の加熱温度を420度〜560度の範囲に設定して廃プラスチック・有機物の分解をすることを特徴とする廃プラスチック・有機物の分解システム。
25.酸化チタンの顆粒体の酸化チタンが、以下の特性を有することを特徴とする前項24に記載の分解システム。
(1)比表面積が35m2/g以上〜50m2/g以下、
(2)顆粒体が3.5mesh(5.60mm)以下
26.前記酸化チタンの顆粒体が、活性成分としての酸化チタンと少なくとも以下のいずれか1から選ばれる混合物であることを特徴とする前項25に記載の分解システム。
(1)酸化アルミニウム
(2)酸化ケイ素」
【発明の効果】
【0013】
本発明の分解方法によれば、高効率で廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック類で構成される医療廃棄物、血液等の生体由来物又は該由来物が付着したプラスチックを処理することができる。さらに、分解工程中にHCI、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチック、有機物又は血液等の生体由来物、フッ化水素を発生するフッ素化合物の処理も容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係る分解装置及び分解システムによれば、触媒が循環されている反応槽の内部に加熱手段による熱せられた空気を供給することにより、触媒を活性温度まで加熱することができる。いったん加熱した後は、廃プラスチック・有機物の分解反応熱を反応槽の触媒の活性最適温度維持に利用し、外部からのエネルギー供給を抑えることができ、熱エネルギーの有効利用が可能である。
廃プラスチック・有機物が反応槽の投入口から投入されると、廃プラスチック・有機物は触媒と共に循環手段によって反応槽を循環する。この工程で、廃プラスチック・有機物と触媒とが攪拌手段によって攪拌されるので、触媒と廃プラスチック・有機物との接触が繰り返され、触媒と廃プラスチック・有機物の密度を均一に保たれ、触媒の作用に基づき効率的分解が促進される。これにより、反応槽の投入口から投入された廃プラスチック・有機物は、約反応槽を1周(1循環)するまでの間に気化される。
または、反応槽内に廃プラスチック・有機物を含むカゴを配置する。そして、触媒が前記反応槽の上流端から下流端へ落下する工程(循環する工程)において、前記廃プラスチック及び/又は有機物は前記触媒と接触し、気化される。この場合には、上記のような廃プラスチック・有機物と触媒との攪拌手段を要しない。
触媒は、反応槽を常に循環している。下記実施例9の態様では、触媒は反応槽内を水平循環している。又は、下記実施例10〜12の態様では、触媒は反応槽の上流端から下流端に達したところで、帰還経路に案内されて反応槽の上流端へ戻ることにより反応槽内を循環している。よって、触媒が反応槽の内部を常に循環することになり、新たな廃プラスチック・有機物は反応槽に投入されると、反応槽の内部を循環する触媒の作用に基づき、効率的に気化させられる。
また、実施例9〜11の態様では、廃プラスチック・有機物が触媒と共に循環手段によって反応槽を循環する工程で、廃プラスチック・有機物の大部分を占める有機物は気化する。しかし、廃プラスチック・有機物に混入した金属・無機物は触媒の中に残る。この金属・無機物は、触媒と共に更に循環される工程で、金属及び/又は無機物分離・回収手段によって分離、回収されるので、この金属・無機物を触媒の中から取出すことができる。
従って、当該分解装置及び分離システムによれば、金属・無機物を反応槽に多量に残留させることがなく、金属・無機物の酸化を抑え、そのリサイクルを実現することができる。しかも、金属及び/又は無機物分離・回収手段が金属を分離・回収するとき、循環手段及び攪拌手段を停止させる必要がないので、廃プラスチック・有機物の処理量を高く維持させることができる。しかも、分離・回収手段が金属・無機物を選別するとき、反応槽を開放する必要がない、又は触媒を分解装置外に取し出して、金属・無機物を分離する必要がない。よって、当該分解装置及び分解システムの熱効率を高く保つことができる。
さらに、本発明の分解装置又は分解システムによれば、酸化触媒処理手段、さらに好適には石灰中和処理手段を備えるので、高効率で廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック類で構成される医療廃棄物などの産業廃棄物、血液等の生体由来物又は該由来物が付着したプラスチックを処理することができる。さらに、分解工程中にHCI、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチック、有機物又は血液等の生体由来物、フッ化水素を発生するフッ素化合物の処理も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】酸化チタンの摩耗率を測定するための装置を示す図
【図2】塩素固定性能の比較
【図3】石灰材中の水分量の影響
【図4】石灰中和処理工程の加熱温度の検討
【図5】アルミナ触媒槽の模式図
【図6】本発明の廃プラスチック分解方法の流れ
【図7】各加熱温度で廃プラスックの分解の結果
【図8】本発明の分解方法の工程に発生するダイオキシンの検出
【図9】各廃プラスチックの分解による発生したガスを測定した結果
【図10】分解処理後の酸化チタン顆粒体付着菌の検査結果
【図11】圧縮金型上押部
【図12】圧縮金型下押部
【図13】強度分布(エッジ処理なし)
【図14】強度分布(エッジ処理あり)
【図15】本発明の実施例9に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図16】本発明の実施例9に係る有機物処理手段の各態様を示す概略図。
【図17】本発明の実施例10に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図18】本発明の実施例10に係る有機物処理手段の断面図。
【図19】本発明の実施例11に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図20】本発明の実施例12に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図21】(a),(b)は、それぞれ本発明の実施形態に係る有機物処理手段に適用した搬送手段、及び攪拌手段の変形例を示す斜視図。
【図22】本発明の実施例に係る廃プラスチック・有機物の分解装置の構成を示すブロック図。
【図23】有機物を分解するための従来の装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の「触媒の加熱温度」は、少なくとも、300度以上かつ600度以下は必要であり、好ましくは、350度以上であり、特に好ましくは、420度〜560度であり、さらに好ましくは450度〜530度の範囲であり、最も好ましくは約480度である。 なお、加熱温度とは、触媒と廃プラスチック及び/又は有機物を反応させるための反応槽内の触媒温度であり、その触媒の設定温度を保つための設定温度を指す。すなわち、設定温度を480度としても、反応槽内の触媒温度の振れ範囲は設定温度からプラス・マイナス約30度となる。
さらに、反応槽内のある箇所では、反応槽の形状や大きささにより、本発明の特に好ましい「触媒の加熱温度」よりも高く又は低くなる場合がある。しかしながら、触媒は反応槽内を循環しているので、触媒の大部分が特に好ましい触媒加熱温度に維持されていれば良い。
下記実施例では、触媒の加熱温度を種々検討した。これにより、廃プラスチック分解における最適な加熱温度を設定した。
【0017】
本発明の触媒は、好適には、活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒である。また、酸化チタンの顆粒体からなる触媒は活性成分としての酸化チタンのみからなる酸化チタンの顆粒体だけでなく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種と酸化チタンとの混合物(以下、酸化チタン混合物と称する場合がある)の顆粒体も含まれる。既に知られているように、酸化チタンは光触媒としての機能も有しているので、上記いずれかの触媒を用いて、廃プラスチック・有機物を分解するに際して、必要に応じて、光照射特に紫外線の照射の下に、触媒と廃プラスチック・有機物とを加熱攪拌してもよい。しかしながら、多種の廃プラスチックや有機物の単体、またはそれらの固体や液体、又は金属、無機物の含まれた様々な状態の物を分解しようとすると、紫外線の照射下では、実用性としての効果は乏しい。
しかしながら、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法及び/又は分解システムでは、好適な分解装置を用いること、分解条件を最適化すること、好適な触媒を使用することにより、光照射を必要とすることなく高効率で廃プラスチック、有機物の分解を行うことができる。
【0018】
また、酸化チタンの顆粒体の製造方法は、チタン酸化物のゾルを乾燥して酸化チタンゲルとし、この酸化チタンゲルを450〜850℃の範囲の温度で焼成し、この焼成物を破砕し、エッジ処理して得られものである。さらに、酸化チタン混合物の顆粒体は、アルミナゾルとシリカゾルから選ばれる少なくとも1種のゾルとチタン酸化物のゾルとを混合し、乾燥してゲルとし、このゲルを450〜850度の範囲の温度で焼成し、この焼成物を破砕し、エッジ処理して得られるものである。なお、使用する酸化チタンは、好適にはアナターゼ型の酸化チタンである。
【0019】
本発明の廃プラスチックの分解方法又は分解システムに用いる酸化チタンの顆粒体の形状は、3.5mesh(5.60mm)以下、好ましくは10mesh(1.70mm)以下で良い。
より好ましくは、使用前の酸化チタンの顆粒体の形状は、5.60mm〜110μm、3.50mm〜150μmである。
より詳しくは、酸化チタンの顆粒体の形状は、0.1mm以上より好ましくは0.1mm以上〜5.60mm以下の粒径を有する粒子の割合は、90%以上である(参照:図13及び図14)。
なお、従来の廃プラスチックの分解方法又は分解システムにおける、酸化チタンの顆粒体、又は酸化チタン混合物の顆粒体の好ましい形状は、0.5〜1.18mmの粒径を有する粒子の割合が50〜95重量%の範囲にあり、1.18〜1.7mmの粒径を有する粒子の割合が5〜50重量%の範囲にある粒度分布を有すると共に、2.0%以下の摩耗率を有するもの、より好ましくは、0.5〜1.18mmの粒径を有する粒子の割合が60〜90重量%の範囲にあり、1.18〜1.7mmの粒径を有する粒子の割合が10〜40重量%の範囲にある粒度分布を有する共に、1.0%以下の摩耗率を有するものであった。
しかし、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムに用いる酸化チタンの顆粒体の形状は、分解工程における各条件及び/又は分解装置を最適化することにより、上記従来において適当と考えられていた酸化チタンの顆粒体の形状、粒度の範囲に限定されない広範囲の物でも使用可能になった。これにより、従来利用できなかった粒径の酸化チタンの顆粒体を使用することができ、酸化チタンの製造においての工程・製法において簡略化ができる。
しかしながら、当然に上記従来の顆粒体を用いても十分に廃プラスチック・有機物を分解することができる。
【0020】
以上により、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」は、酸化チタンのみの顆粒体か、又は酸化チタン混合物の顆粒体からなり、3.5mesh(5.60mm)以下、好ましくは10mesh(1.70mm)以下の形状を有すると共に、エッジ処理の結果、2.0%以下、より好ましくは1.0%以下の摩耗率を有するものである。従って、本発明によれば、上述したような触媒を用いることによって、長時間にわたって廃プラスチック、有機物を高効率にて分解することができる。
【0021】
上述した形状を有する顆粒体を得る方法は特に限定されるものではない。例えば、前述したように、ゲルを焼成し、得られた焼成物を破砕し、エッジ処理した後、分級(各メッシュサイズを持つ篩を利用)して、上記形状を有する顆粒体を得てもよく、また、エッジ処理した後、分級し、得られた分級物を適宜、混合して、上記形状を有する顆粒体を得てもよい。
【0022】
種々の製法による酸化チタンのなかでも、上述したように、チタン酸化物のゾルを乾燥して酸化チタンゲルとし、この酸化チタンゲルを450〜850℃の範囲の温度で焼成して得られる酸化チタンが廃プラスチックの分解触媒としてすぐれた性能を有するが、破砕物のままでは、容易に摩耗し、微粉を生じて、失われる部分が多くなる。
【0023】
そこで、本発明に従って、そのような酸化チタンゲルの焼成物の破砕物をエッジ処理して、いわば、予め、角を取ることによって、摩耗率を著しく低減し、かくして、廃プラスチック・有機物を高効率で分解することができるのみならず、望ましい形状を保って、その高い触媒効率を長時間にわたって維持することができる。酸化チタン混合物の顆粒体からなる触媒についても同様である。このようなエッジ処理は、例えば、酸化チタンのゲルや、アルミナとシリカから選ばれる少なくとも1種のゲルと酸化チタンのゲルとの混合ゲルを破砕し、これを造粒装置の一つとしてよく知られている転動造粒装置にて処理することによって行うことができる。しかし、転動造粒装置に限定されることはない。
【0024】
なお、本発明の酸化チタンの顆粒体の摩耗率は以下の方法で測定をする。
図1に示す摩耗率測定装置にて測定する。即ち、この摩耗率測定装置は、内径63mm、深さ86mmの試料容器201に攪拌機202を取付けてなり、この攪拌機202は、軸体203の下端部にそれぞれ長さ20mmの楕円形状の攪拌羽根204を3枚、60゜間隔で軸体から直径方向に延びるように取付けたものであって、攪拌羽根はそれぞれ水平に対して45゜の角度を有するように傾斜している。この攪拌羽根は、その最下縁が試料容器の底から8mmの距離に位置する。
【0025】
酸化チタンの顆粒体の摩耗率の測定に際しては、200mLメスシリンダーで酸化チタンの顆粒体150mLを計量し、重量を記録した後、試料容器に全量を投入し、300rpmで30分間上記攪拌機を用いて攪拌した後、試料容器から試料を取り出し、全量を目開き0.5mmの篩に移し、この篩を通過した試料の重量を測定する。ここに、試料の摩耗率Aは、目開き0.5mmの篩を通過した試料の重量をWとし、測定に供した試料の重量をW0とするとき、A=(W/W0)×100(%)である。
【0026】
また、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」は、活性成分としての酸化チタンの比表面積が30m2/g 以上であり、好ましくは33m2/g以上〜65 m2/g以下、より好ましくは35m2/g以上〜50 m2/g以下である。さらには、使用前の酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積は、35m2/g以上〜50 m2/g以下である。これは、比表面積が大きいほど、廃プラスチックとの接触面が大きくなり、分解効率を上げることができる。しかし、比表面積が大きすぎると耐熱性が弱くなり、かつ顆粒体が崩れやすく粉末化しやすくなる。
なお、酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積の測定方法は、自体公知の方法を利用することができるが、本発明ではBET法を使用して測定する。詳しくは、以下の通りである。
【0027】
BET法は,粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。
本発明では、比表面積測定装置は、2300形 自動測定装置(島津製作所(株)製造元)を使用した。
【0028】
また、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」は、活性成分としての酸化チタンの細孔容積が0.05cc/g〜0.70 cc/g、好ましくは0.10cc/g〜0.50 cc/gである。
なお、酸化チタンの顆粒体からなる触媒の細孔容積の測定方法は、自体公知の方法を利用することができるが、本発明では水銀圧入法を使用して測定する。詳しくは、以下の通りである。
【0029】
水銀圧入法は、水銀の表面張力が大きいことを利用して粉体の細孔に水銀を浸入させるために圧力を加え、圧力と圧入された水銀量から細孔容積を求める方法である。
本発明では、Thermo Finnigan 社製のポロシメーター(水銀圧入式 最高圧力:200MPa)を使用した。
【0030】
また、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」の強度は、図13及び図14に示したような分布を示す。すなわち、50KN又は70KNの強度分布では、1.4mm以上が20%〜30%であり、1.0〜1.4mmは10.0%〜15.0%であり、0.6〜1.0mmは15%〜20%であり、0.3〜0.6mmは18%〜25%であり、0.125〜0.3mmは10%〜18%である。
なお、強度の測定方法は、以下の通りである。
(1)圧縮試験用金型(堺化学工業株式会社製、参照図11、12)に、酸化チタンの顆粒体350gを投入する。なお、投入前によく攪拌する。
(2)圧縮試験用金型を300KN圧縮試験機((株)マルイ製)の中央にセットする。
(3)徐々に荷重をかけ、指定圧力(50KN、70KN)到達した時に圧力を解放する。
(4)圧縮試験用金型を試験機から取り出す。
(5)圧縮試験用金型の顆粒体を袋に移し、均一に混合する。
(6)均一に混合された顆粒体25gを精秤し、篩にかける。
(7)メッシュに残っている顆粒体の重量を測定し、分布を算出する。
【0031】
また、本発明は、酸化チタンの顆粒体の量に対して廃プラスチック及び/又は有機物量が少ないと、廃プラスチック、有機物がすぐに分解されてしまい、分解反応熱を利用して酸化チタンの分解好適温度を維持する熱量が不足し、外部からの加熱が必要となり分解エネルギー効率が悪い。しかし、酸化チタンの顆粒体の量に対して廃プラスチック及び/又は有機物量が多くなると、酸化チタン顆粒体の接触分解能力を超えた処理物は未分解のガスになったり、さらには、酸化チタン表面を有機物が覆い活性を無くしてしまい、分解できなくなる。
そこで酸化チタン顆粒体と処理する廃プラスチック及び/又は有機物の量を好適にすることにより、分解反応熱を利用し酸化チタンの分解好適温度を維持し、外部からのエネルギーを最小にすることができ、かつ分解好適温度を超えた反応熱は反応槽を冷却制御することにより、熱を回収して再利用できる。例えば、蒸気、お湯での熱回収が可能である。よって、回収した熱は、工場施設の給湯関係又は融雪等に利用することができる。しかし、これらの利用に限られるものではない。
【0032】
また、本発明の酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの廃プラスチック処理量は、3.0〜40.0kg、好ましくは6.0kg〜35.0kgである。
上記最適な処理量は、以下実施例4の結果より得られたものである。
【0033】
本発明に係る分解装置及び分解システムについて図面を参照しながら説明する。以下に述べる駆動源、ブロアー、又はスクリュフィーダの他、自明の技術については、その図示又は説明は省略する場合がある。また、当該分解装置の形状、各要素の配置、及び尺度については、説明の便宜を優先して図示しており、実際のものではない。
【0034】
図15、16に示すように、本発明の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例9)は、触媒2を内部に循環する反応槽3と、反応槽3に投入される廃プラスチック・有機物4を触媒2と共に循環する循環手段5と、触媒2及び廃プラスチック・有機物4を攪拌する攪拌手段6と、投入口7、を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、分解反応に必要な熱を供給する加熱手段9、送風チャンバ10、触媒循環をスムーズに行うための仕切り壁11、触媒の流れを変えるためのパドル12、排気口39も好適には備える。さらには、大きな塊の金属・無機物を反応槽から直接回収する手段である金属・無機物取り出し口18を備える。
【0035】
循環手段5は、図16(1)に示すように、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、反応槽に回転軸を挿入して成る2つのスクリュフィーダであり、さらに該2つのスクリュフィーダは反応槽内に実質的に水平姿勢に設置されていることが好ましい。なお、図16(1)中の矢印は、時計回りの触媒循環方向を示しているが、当然に前記2つのスクリュフィーダの回転方向を変えることにより、反時計回りの触媒循環方向とすることもできる。また、回転軸14は、モータ等の駆動源Mにより回転される。
また、図16(1)中では、触媒の流れを変えるための2つのパドル12を反応槽の対角線上に設置したが、触媒の流れを変えることができる手段であれば特にパドルに限定されない。
さらに、図16(2)のように、4つのスクリュフィーダが反応槽内に実質的に水平姿勢に設置されていれば、触媒の循環が行うことができる。
加えて、図16(3)のように、反応槽の形状を楕円形状にすれば、2つのスクリュフィーダのみで触媒循環を達成することもできる。
さらに加えて、図16(5)のように、3つのスクリュフィーダが反応槽内に実質的に水平姿勢に設置されていれば、触媒の循環が行うことができ、さらに、粉砕していない廃プラスチック・有機物(固形廃プラスチック・有機物)を固形廃プラスチック・有機物投入口24から投入して、反応槽3内の固形廃プラスチック・有機物分解部25で分解することができる。
なお、循環手段5をスクリュフィーダとした場合には、螺旋羽根21(参照図21)が循環工程と同時に触媒2と廃プラスチック・有機物4の攪拌も行うので、攪拌手段6ともなる。すなわち、スクリュフィーダは循環手段5と攪拌手段6の両方を提供する。さらに、螺旋羽根21には、好適には補助羽根を設置されている。
【0036】
また、金属及び/又は無機物分離・回収手段15を上記分解手段に備えることができる。該分離・回収手段15は、図16(1)に示すように、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、反応槽3の循環工程中のいずれの位置にでも嵌めても良い。しかし、好適には循環工程の終了付近に嵌める。そして、金網に止められた金属・無機物を回収できるポケット17を該金網16と接続する。ここで、該金網16はポケット17よりも高い位置に設定すること(金網からポケットに傾斜をつけること)により金網に止められた金属・無機物はポケット17に自重で滑り落ちていく、又は該金網16をモータ等により振動させることにより金網に止められた金属・無機物をポケット17に落とすことでも、金属・無機物を回収することができる。さらに、ポケット17は2段シャッターになっており、分解反応中に随時金属・無機物を回収することができる。しかし、金属・無機物がある程度溜まったところで、ポケット17から金属・無機物を回収すれば良い。
よって、本発明では、金属及び/又は無機物分離・回収手段15が金属・無機物を該ポケット17から分離・回収するとき、循環手段5及び/又は攪拌手段6を停止させる必要がないので、廃プラスチック・有機物の処理量を高く維持させることができる。しかも、分離・回収手段が金属・無機物を選別するとき、反応槽3を開放する必要がないので、当該分解装置及び分解システムの熱効率を高く保つことができる。しかし、当然に反応槽3を一端開放した後に、金属及び/又は無機物分離・回収を行うこともできる。
加えて、廃プラスチック・有機物4に高価な金属が混在している場合において、該金属を効率的に回収する方法として、金属・無機物取り出し口18を使用する。例えば、予め高価な金属が混在している廃プラスチック・有機物4を触媒循環の邪魔にならない形状(例:立方体、多面体)の金網(触媒2は通過可能な程度の金網)に入れた状態で投入口7から投入する、該球体形状の金網は反応槽を循環する工程で該金網中の廃プラスチック・有機物は気化されるが、気化されない金属は金網中に残存する。そして、該形状の金網は、金属・無機物取り出し口18から直接回収する。これにより、該球体形状の金網中に残存する金属を高効率的に回収することができる。
さらに、上記の場合と異なり、回収する金属の径が触媒2の径より小さい場合は、金属及び/又は無機物分離・回収手段15として、実施例9では図16(4)の凹部13の一番低い位置、以下実施例10、11では帰還経路20の一番低い位置、に金網を設置するのが好ましい。金網の下に金属収集容器を載置すれば、自動的に廃プラスチック・有機物4から分離された金属を収集することができる。
以上により、本発明の分解装置は、優れた金属及び/又は無機物分離・回収方法も提供する。
【0037】
本発明の上記実施例の一態様では、図16(4)に示すように、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を分解手段1の上面から見て右手前側に備える(なお、図16(4)では金網16を図示していない)。そして、該金網16の周辺付近は凹部13となっている。該凹部13は投入口7と連結している。また、該凹部13には、投入口7から投入される廃プラスチック・有機物4を凹部13から分解手段1の上面から見て左手前側に循環させるための循環手段5(D)を備える。なお、パドル12は、分解手段1の上面から見て左手前側、右奥側に設置している。当然に、各配置は図16(4)の記載に限定されない。
上記実施態様では、該金網16の網目口径に応じて篩い操作が行われ、該金網16の上部に残置された金属・無機物はポケット17に回収され、一方、触媒2は篩い操作で凹部下部に篩い落とされ、循環手段5(D)により、新たに投入された廃プラスチック・有機物4と共に反応槽3内を循環する。
【0038】
本発明における循環手段5(D)の原動力は、スクリュフィーダ、コンベヤ特にパケットコンベヤ、パドル、ピストン等を用いることができるが、特に限定されない。
ここで、投入口7と金属及び/又は無機物分離・回収手段15の位置は、お互いに周辺にあっても良いし、所望により対極に設置してもよい。好適な態様の一つでは、お互いに周辺に設置する。これは、投入された直後の廃プラスチック・有機物を分解するには、分解途中の廃プラスチック・有機物が混入していない触媒2が好ましいからである。本発明の廃プラスチック・有機物の分解装置では、循環した後の触媒2(分解途中の廃プラスチック・有機物が混入していない触媒)を新たに投入された廃プラスチック・有機物と反応させることができる装置である。これにより、従来の分解装置とは異なり、高効率で廃プラスチック・有機物を分解することができる。
【0039】
また、本発明の分解手段1では、好適には廃プラスチック・有機物4を反応槽3の上部より触媒2の表面に投入するのではなく、図15に示すように投入口7より、循環している触媒2の内部に投入することが好ましい。本発明者らは、廃プラスチック・有機物4を触媒2の内部に直接投入することにより、高効率分解効果を有することを発見している。しかし、本発明の分解手段1では、廃プラスチック・有機物4を反応槽3の上部である投入口8より、触媒2の表面に投入しても分解することができる。
さらに、本発明の分解手段1では、上記いずれの投入方法を実施可能にするために2以上の投入口を有しても良い。加えて、投入口7、8は廃プラスチック・有機物4の投入だけに利用されるのではなく、触媒2の投入口としても利用することもできる。
なお、以下の実施例10、11においても投入口7、8は上記と同様である。
【0040】
図17に示すように、本発明の別の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例10)は、触媒2を内部に蓄積する反応槽3と、反応槽3内に投入される廃プラスチック・有機物4を触媒2と共に循環する循環手段5(A)(B)(C)と、触媒2及び廃プラスチック・有機物4を攪拌する攪拌手段6と、投入口7、帰還経路20を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、送風チャンバ10、分解反応に必要な熱を供給するための加熱手段9、排気口39も好適には備える。
【0041】
反応槽3の内部は、図17に示すように、第1段槽31と、第1段槽31よりも高く配置された第2段槽32とに区分されている。第1段槽31は、その長手方向の一方(図17の左側)を上流端33とし、他方(図17の右側)を送出端34とした第1の通気性底材35を、反応槽3の内部に固定したものである。第2段槽32は、その長手方向の一方を下流端36とし、他方を送入端37とした第2の通気性底材38を、反応槽3の内部に固定したものである。
【0042】
循環手段5(A)は、図17に示すように、螺旋羽根21を有する回転軸14を、第1段槽31の内側にその長手方向に沿う水平姿勢で挿入したスクリュフィーダである。循環手段5(B)は、螺旋羽根21を有する回転軸14の下端部を、第1段槽31の送出端34に近接し、且つ回転軸14の上端部を第2段槽32の送入端37に近接する起立姿勢としたスクリュフィーダである。循環手段5(C)は、第2段槽32の内側に設けられている点を除いて、上記の循環手段5(A)と同様である。搬送手段5(A)、(B)、(C)のそれぞれの回転軸14は、モータ等の駆動源Mにより回転される。
【0043】
図18に示すように、第1,第2の通気性底材35,38は、それぞれ上向きに開いた円弧状の断面形状を有する金属メッシュである。金属メッシュは、触媒2を受止めることができ、且つ気体の通過を許容する材料である。しかし、通気性底材は金属メッシュに限られない。第1,第2の通気性底材35,38の間は、仕切壁30で遮られているが、これらの上方は互いに開放して反応槽3の内部で通じている。更に、第1,第2の通気性底材35,38のそれぞれの下方には、送風チャンバ10が区画されている。
【0044】
加えて、図17に示すように、第1段槽よりも第2段槽を高く配置したことで、触媒を第2段槽の下流端から第1段槽の上流端まで戻すのに、例えばコンベヤ又はスクリュフィーダ等を用いて強制的に行わなくて良い。なお、帰還経路20は、第1段槽31の上流端33と第2段槽32の下流端36とを接続するシュートである。
【0045】
さらに、図18は、螺旋羽根21の図示を省略し、循環手段5のそれぞれの回転軸14に攪拌手段として設けられた翼列22を表している。翼列22は3枚の羽根81を120度のピッチで回転軸14に固定したものである。このように循環手段5が廃プラスチック・有機物4を触媒2と共に循環する(循環手段)のと同時に、触媒2と廃プラスチック・有機物4とを良好に攪拌する(攪拌手段)ことができる。これにより、触媒2が粉状であるか、又は粒状であるかを問わず、触媒2及び廃プラスチック・有機物4が螺旋羽根21の間隙で塊となるのを阻止することができる。さらに、好適には螺旋羽根21に補助羽根が設置されている。
【0046】
また、実施例9の廃プラスチック・有機物処理手段と同様に、金属及び/又は無機物分離・回収手段15としての触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、帰還経路20に嵌めても良い。これにより、実施例9と同様に金属及び/又は無機物を分離・回収することができる。
【0047】
また、図19に示すようにさらなる別の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例11)は、長手方向の一方を上流端33とし他方を下流端36とした長尺な反応槽3の内部に、循環手段5、及び図に表れていない攪拌手段6、投入口8、帰還経路20を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、分解反応に必要な熱を供給する加熱手段9、送風チャンバ10、排気口39も好適には備える。
そして、上流端33と下流端36との間に触媒2を循環する。反応槽3の投入口8から上流端33付近に投入される廃プラスチック・有機物4を、触媒2と共に循環手段5によって反応槽3の上流端33から下流端36へ向けて循環すれば、この工程で廃プラスチック・有機物4を気化させることができる。同図には反応槽3が水平姿勢で表れているが、上流端33よりも下流端36が高くなるように、反応槽3を傾斜させても良い。この場合、循環手段5により下流端36まで搬送された触媒2を、その自重で帰還経路20を滑落させて、上流端33まで戻すことができる。
【0048】
また、触媒2は、循環手段5によって上流端33から下流端36へ向けて循環されるので、下流端36に達した触媒は、帰還経路20に案内されて上流端33に戻る。これにより、触媒を反応槽の内部で循環できるので、新たに反応槽に投入される廃プラスチック・有機物を、同じ触媒の作用に基づき更に気化させることができる。
なお、図19では、下流端36に達した触媒は、スクリュフィーダにより上流端33に戻るが、ハドル、パケットコンベヤ、ピストン等も利用することができる。
【0049】
また、図20に示すようにさらなる別の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例12)は、図上面を上流端33とし図下面を下流端36とする反応槽3、廃プラスチック及び/又は有機物を配置可能なカゴ40、該カゴを反応槽3の内部に投入するための投入口41、帰還経路20を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、分解反応に必要な熱を供給する加熱手段9、落下する触媒量を制御する網42、排気口39も好適には備える。
ここで、上流端33、下流端36の周辺には、触媒を均一にするための攪拌装置を備えても良い。さらに、図20では、担体ガスは直接反応槽内部に供給されるが、上記実施例9〜11のように送風チャンバを介して反応槽内部に供給しても良い。加えて、排気口39は、触媒を反応槽に投入するための投入口の役割もかねる。しかし、別途、触媒投入口を設けても良い。
廃プラスチック・有機物を含むカゴ40を、投入口41を介して反応槽3内に配置する。次に、触媒が前記反応槽3の上流端から下流端へ落下する工程において、前記廃プラスチック及び/又は有機物は前記触媒と接触し、気化される。
【0050】
また、触媒2は、上流端33から下流端36へ落下(循環)されるので、下流端36に達した触媒は、帰還経路20に案内されて上流端33に戻る。これにより、触媒2を反応槽3の内部で循環できる。なお、下流端36に達した触媒2は、帰還経路20に案内されて上流端33に戻る原動力は、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、前記帰還経路に前記回転軸を挿入して成るスクリュフィーダである。しかし、特には限定されず、他の原動力としては、パケットコンベアー等が挙げられる。
ここで、廃プラスチック及び/又は有機物を配置可能なカゴ40とは、好適には金網であり、流下してくる触媒2は通過可能であるが、投入した廃プラスチック・有機物は通過不可能であり、さらには廃プラスックに混在し、またはその少なくとも一部に蒸着しあるいは貼着等された金属・無機物は通過不能とする網である。さらに、触媒2と廃プラスチック・有機物を効率良く接触させるために、カゴ40は反応槽3内で回転及び/又は振動させても良い。
しかしながら、微小な廃プラスチック・有機物がカゴ40を通過して、下流端36へ落下しても、下流端36に達した触媒2の作用が廃プラスチック・有機物を気化させる。
ここで、落下する触媒量を制御する網42は、好適には金網であり、触媒2を上流端から下流端へ均一に流下させる。好適には、網42は2枚以上の金網で構成されており、複数の金網をスライドさせることで、触媒流下量を制御することができる。
【0051】
図20に示すような実施例12の廃プラスチック・有機物処理手段1は、上記実施例9〜11の廃プラスチック・有機物処理手段1とは異なり、廃プラスチック・有機物と触媒との攪拌手段を要しない。これにより、反応槽3の大きさは、従来の分解装置の反応槽と比較して、小さくすることが可能である。さらに、廃プラスチック・有機物を破砕することなく、投入口41を介して反応槽3のカゴ40内に配置できる。これにより、廃プラスチック・有機物を破砕するための破砕装置を必要としない。
加えて、図20に記載の廃プラスチック・有機物処理手段1を、実施例9(参照:図16(1)〜(5))のように水平方向にすることもできる。この場合には、触媒2を循環させるために、循環手段であるスクリュフィーダを利用する。さらに、廃プラスチック・有機物4を含むカゴ40を回転させながら、触媒2を反応槽3を循環させても良い。これにより、廃プラスチック・有機物4と触媒2の接触効率を高めることができるので、効率的な廃プラスチック・有機物4の分解を行なうこともできる。
【0052】
上記いずれの実施例の廃プラスチック・有機物処理手段であってもスクリュフィーダには次の利点がある。循環手段5と攪拌手段6を同時に行うことができる。また、触媒2が粉状であるか、又は粒状であるかを問わず、スクリュフィーダは触媒2を滞留させることなく確実に循環させることができる。また、反応槽3に蓄積される触媒2の容積を増大すると、これを回転させるのに過大なトルクを要するのに対して、スクリュフィーダは、従来例の攪拌羽根と比較して、回転軸14を回転させるトルクの増大量を少なくすることができる。従って、循環手段5及び/又は攪拌手段6としてスクリュフィーダを適用することは、廃プラスチック・有機物処理手段1の反応槽3の容量を増加させるのに有利である。
その他の実施態様として、自体公知のロータリンキルン、反応槽内に複数のハドルを設置することにより、触媒循環型廃プラスチック・有機物の分解装置も本発明に含まれる。
【0053】
上記いずれかの実施例の加熱手段9は、送風ブロアー19等の担体ガス供給手段により供給された空気等を加熱するものである。すなわち、加熱手段9は送風ブロアー等で供給された空気が送風チャンバ10に送りこまれる工程において、該空気を加熱することにより、分解反応に必要な触媒活性温度まで触媒を熱する働きを行う。なお、熱源は電気が好ましいが、しかし特には限定されない。図17を使用して説明すると、この熱風は、送風チャンバ10へ送り込まれ、第1の通気性底材35から反応槽3の内部へと上昇する。しかし、加熱手段は、分解反応の最初に触媒2を触媒活性温度までに上げるのに必要であるが、分解反応が進むと廃プラスチック・有機物の分解熱により触媒活性温度が維持されるので、その後、加熱手段は特に必要がない。しかし、発熱量の少ない廃プラスチック・有機物4を分解する場合には、送風ブロアー19から供給される空気を必要に応じて加熱手段9により加熱することにより反応槽3に熱を供給する。
【0054】
また、上記いずれの送風チャンバ10は、いわゆる担体ガス供給槽と反応初期に必要な熱を供給する槽の2つの役割を有する。また、送風チャンバ10の存在により、第1の通気性底材35に複数の穴を有することにより、送風ブロアー19等から供給された担体がスを触媒内部の全体に均一に担体ガスを供給分散することができる。
【0055】
本発明の廃プラスチック・有機物処理手段1では、断続的に区切られていない螺旋羽根が好ましく、さらに好ましくは螺旋羽根の間に小さな補助羽根を設けても良い。最も好ましくは螺旋羽根に小さな補助羽根85を設置する。補助羽根85の存在により、触媒2と廃プラスチック・有機物4の接触効率をさらに向上させることができる。
この他、実施例のいずれかの攪拌手段は、断続的に区切られた螺旋羽根であっても良い。即ち、図21(a)に示すように、螺旋羽根の適所に複数の切欠部82を形成すれば、粉粒状触媒2及び廃プラスチック・有機物4が循環される途中で、その一部が切欠部82を通り抜ける。これにより、粉粒状触媒2及び廃プラスチック・有機物4の攪拌が起こるので、循環手段5と攪拌手段6、の役割も果たすことになる。或いは、同図(b)に示すように、攪拌手段6は、回転軸14を中心に回転しながら粉粒状触媒2及び廃プラスチック・有機物4に推進力を与える複数の軸流羽根83であっても良い。この場合、螺旋羽根を省略しても良い。また、回転軸14の適所に突片84を設けても良い。
【0056】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物の分解装置では、上記廃プラスチック・有機物処理手段に加え酸化触媒処理手段を含み、さらに好ましくは石灰中和処理手段を含む。
【0057】
また、本発明の分解装置では、以下のいずれか1以上の手段を有することができる(参照図22)。
【0058】
(1)アルミナ触媒処理手段
本発明の廃プラスチック分解方法又は分解装置には、酸化触媒処理工程前に「アルミナ触媒処理手段」を導入することが好ましい。アルミナ触媒処理手段とは、酸化触媒にSi, Mg, Cr, Pb, Fe 等、又はダスト(塵)等が付着するのを防止することである。なお、アルミナ触媒は、酸化触媒槽の前段に設置するのが好ましい。別途アルミナ触媒槽を設けても良い。なお、アルミナ触媒の加熱温度は、好適は350度以上で行うのが良い。
【0059】
(2)破砕手段
本発明の破砕手段は、廃プラスチック・有機物処理手段の反応槽に廃プラスチック・有機物を好適な大きさ(片)に破砕するための手段(装置)である。よって、廃プラスチック・有機物を破砕できるような手段であれば特に限定されない。しかし、好適は、段ボール箱をそのまま破砕できる容量、特に医療分野の感染性処理物の処理を行う場合には2段シャッター付き、殺菌灯付きが好ましい。
【0060】
(3)担体ガス供給手段
反応槽に供給する担体ガスとしては、酸素が好ましいが、通常、空気が用いられる。また、必要に応じて不活性ガスを利用しても良い。なお、担体ガスの供給方法は、送風ブロアー19等を使用し、好ましくは酸化チタンの顆粒体の内部全体に均一に分散供給する。供給量は分解有機物の酸化分解に必要な酸素量を含む常温空気で、理論酸素必要量の1.3倍〜4.0倍が好ましい。さらに、分解効率の点から、1.6倍〜3.0倍が良い。なお、ブロアー等を用いることができるが、特に限定されない。
例えば、反応槽3の底部に複数の穴を設け、そこから酸素等を供給する方法などである。なお、本発明の廃プラスチック・有機物処理手段では、反応槽の底部より複数の穴より担体ガス好ましくは空気を循環している触媒の内部に直接供給することにより、従来の反応槽の上部より担体がスを供給する方法よりも、格段に分解効率が向上する。
【0061】
集塵手段
本発明の集塵手段は、廃プラスチック・有機物処理手段の反応槽から排出される飛散した金属・無機物及び/又は触媒を回収する。また、回収した触媒を再利用することもできる。また、好適には、図22にも示したように、集塵手段は、石灰中和手段を挟んで2つあるのが好ましい。さらに、第1集塵手段はサイクロン集塵手段(装置)、第2集塵手段はバグフィルター付き集塵手段(装置)が好ましい。
(4)サイクロン集塵手段(第1集塵手段)
第1集塵手段で回収した触媒は、サイクロンで集め、反応槽に連結している循環経路より反応槽にもどすことにより、触媒の循環に利用することができる。なお、発明者らは、実験結果により、第1集塵手段で約95%〜約99%の触媒が回収できることを確認している。
(5)バグフィルター付き集塵手段(第2集塵手段)
第2集塵手段で回収した触媒は、微粉末であれば、微粉末触媒を固めることにより、望みの粒径にした後に、反応槽にもどすこともできる。
【0062】
(6)熱交換手段
二酸化炭素と微量の水分を含んだ熱風から熱交換を通して熱を回収する手段である。また、得られた熱源は、加熱手段に利用することができるが、特に限定されない。例えば、供給する空気を加熱する、プレヒーターに利用したり、工場施設の給湯関係又は融雪等に利用することができる。
【0063】
(7)プレヒーター手段
酸化触媒処理の前にはヒーター手段によりプレヒートー(前保温)を行うことが好ましい。濃度の低いガスが流れてきたり、分解槽での発熱が低い場合に酸化触媒を確実に反応させるのに好適である。
【0064】
(8)排気ブロアー手段
廃プラスチック・有機物が分解されて生成した安全な炭酸ガス、微量の水分を含む空気を本発明の廃プラスック・有機物の分解装置外に排出する手段である。
【0065】
(9)冷却手段
反応槽内が触媒の最適活性温度領域を超えた場合に、反応槽の触媒を冷却する手段である。冷却する方法は、好適には冷却水を反応槽の外周又は内周に流すことにより、反応槽からの熱を回収する(好適は潜熱を利用する、又は冷却水を温める)方法であるが、特に限定されず、羽根等に冷却水を流すこともできる。
【0066】
(10)熱回収手段
上記冷却水から得た熱を保存又は利用する手段である。回収した熱は、工場施設の給湯関係又は融雪等に利用することができる。しかし、これらの利用に限られるものではない。
【0067】
(11)HCl連続測定手段
HCIが石灰中和処理手段で吸収除去されているかを確認するための手段である。すなわち、一定以上のHCI濃度を本発明の廃プラスック・有機物の分解装置外に排出するのを防ぐ手段である。
【0068】
(12)CO連続測定手段
COが酸化触媒処理手段で二酸化炭素に変換されているかを確認するための手段である。すなわち、一定以上のCO濃度を本発明の廃プラスック・有機物の分解装置外に排出するのを防ぐ手段である。
【0069】
(13)警報手段
本発明の分解装置は、法規制基準内で安全な運転を行っているが、安全域をわずかに超えた場合でも運転が止まる。すなわち、上記HCl連続測定手段及び/又はCO連続測定手段における測定中にわずかに基準値以上のCO、HCI濃度が検出された場合に異常を知らせる手段である。好適には、異常を検出した場合には、安全手段(装置)を介して外部に有害ガスを排出させない。
【0070】
本発明の廃プラスチック・有機物の分解システム
本発明の廃プラスチック・有機物の分解システムは、上記いずかに記載の分解装置を使用して、さらに好適な触媒の使用及び/又は好適な分解条件を使用して廃プラスチック・有機物の分解を行うことを意味する。
また、本発明の廃プラスック・有機物の分解システムでは、図23に記載のバッチ式の反応槽を持つ従来の有機物処理手段を含む分解装置を使用して、さらに好適な触媒の使用及び好適な分解条件を使用して廃プラスチック・有機物の分解を行うこともできる(図6参照)。
【0071】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムには、例えば、処理する廃プラスチックがポリ塩化ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)等、様々な医療廃棄物プラスチックの場合には、処理工程中に塩化水素、硫黄化合物、フッ化水素、シアンガス、窒素含有化合物が生成する。塩化水素等をそのまま大気放出させることができない。よって「石灰中和処理工程」又は「石灰中和処理手段」を導入する。
石灰中和処理工程とは、分解処理工程中に発生する塩化水素、硫黄化合物、フッ化水素、シアンガス、窒素含有化合物等を大気中に放出させないために吸着除去することを意味する。石灰中和処理手段では、これらを大気中に放出させないために吸着除去する手段(装置)を意味する。
詳しくは、生石灰、消石灰又はその混合物を主成分とする石灰材であって、それを多孔質で、サイズが2mm以上に成形した塩化水素吸収材ペレットを除去容器に充填し、その除去容器に前記分解された廃プラスチック由来の塩化水素等含有気体を通過させ、塩化水素等を反応吸収させることである。
【0072】
本発明でいう石灰材は、生石灰でも、消石灰でも、その混合物でもいい。この石灰材を多孔質のペレット状にし、2mm以上の大きさにしたものを用いるのがよい。この成形方法は自由であるが、水で練って乾燥させるだけでもよく、焼成してもよい。例えば、石灰材の粉末を水と混合し、成形できる硬さにし、押出機から押出し、それをカットしてペレット状にする等である。
ペレットの形状は自由である。球状、円盤状、円柱状その他どのような形状でもよい。サイズは、2mm以上である。これ以下になると、粉体に近くなり、処理風量の圧力損失による装置の問題、飛散、同伴の問題やフィルターの問題が生じる。大きいものは原則として使用できるが、大きくなればなるほど効率は悪くなる。現実的には、10mm以下が好適である。発明者の実験では、3mm〜7mm程度が好適であった。
【0073】
また、本発明の廃プラスチックの分解方法の「石灰中和処理工程」に用いる石灰材は、好適には消石灰より生石灰が良い。これらの知見は、本発明の発明者らの各石灰材(ポーラス生石灰、消石灰)を用いた塩素固定率の測定結果によるものである(参照:図2)。
【0074】
さらに、石灰材中の水分量(ppm)はなるべく低下させたほうが良い。好ましくは、20%以下、より好ましくは10%以下である。これらの知見は、本発明の発明者らの各水分量の石灰材(消石灰、生石灰)の測定結果によるものである(参照:図3)。
【0075】
さらに、石灰中和処理工程の加熱温度は、好ましくは150度〜500度、より好ましくは200度〜400度、最も好ましくは250度〜350度である。これらの知見は、理論塩素固定濃度の計算によるものである(参照:図4)。従来、塩化水素等を吸着処理するには、常温でかつ消石灰を使用していた。焼却炉などでは、燃焼後の排ガスの温度を冷却して下げてから塩化水素等を吸着処理していた。また消石灰の粉末を使用するため、扱いにくく装置は大面積の切り替え式バグフィルターなど大掛かりなものであった。しかしながら、本発明の石灰材は分解反応後の排ガス温度をそのままで吸着除去処理できるものとした。
【0076】
石灰中和処理工程は、好適には石灰中和処理装置(手段)を使用する。石灰中和処理装置では、充填槽を利用する。充填槽上部からペレットが下部に向かい落下し、処理の必要なガスは下部から上部へ、石灰ペレットと接触しながら通過するものである。上部にはペレットのストック部、下部には使用済みのペレットの排出部が設けられている。もちろん反応容器の層とはシャッター、ロータリーバルブなどで遮断されている。処理濃度、処理速度により排出量を制御して使用する。装置には潮解現象の防止のためヒーターが設けられている。本分解方法では、高温で処理するため潮解現象は起こさないが、加熱しない状態時のために好適にはヒーター工程を設ける。
【0077】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物分解方法には、「酸化触媒処理工程」、本発明の廃プラスチック・有機物分解システムには、「酸化触媒処理手段」を導入しても良い。
酸化触媒処理工程とは、上記の加熱された酸化チタンの顆粒体触媒によって分解された廃プラスチックや有機物でも、すべてが完全に分解されるとは限らない。未反応物や中間生成物がそのまま反応容器を出ていく可能性がある。このため、本発明では、その後の工程として酸化触媒処理によってさらに酸化又は分解することが好ましい。なお、酸化触媒処理工程は、好ましくは石灰中和処理工程の後に行う。
【0078】
酸化触媒とは、一般的に無触媒時より低い温度で且つ短時間で酸化、分解反応を起こすものである。このような酸化触媒は従来から種々のものが知られ、市販もされている。一般的に反応温度は、200〜500度で使用されるが、本発明では、300度以上が良いが、好ましくは350度以上である。それは雑多な廃プラスチック、有機物などを分解した場合、単一の未分解ガスが発生するとは限らないため、混合した未分解ガスを完全分解するためには350度以上が好ましい。本発明では効率、装置面の有効性からハニカムタイプが好ましい。
なお、白金触媒は、一酸化炭素を二酸化炭素にする反応、低級炭化水素、VOC(揮発性有機化合物)、分解には好適である。また、パラジウム触媒は、メタンガス分解には好適である。本発明ではパラジウムと白金触媒を用いるのが好ましい。処理順序は、好ましくはパラジウム触媒、白金触媒の順である。
この触媒処理の前にはプレヒーター処理(前保温)を行うことが好ましい。濃度の低いガスが流れてきたり、分解槽での発熱が低い場合酸化触媒を確実に処理するためである。
【0079】
この酸化触媒は、一酸化炭素や炭化水素のような未燃物の酸化に対して大きな効果を有するもので、酸素と所定の温度があれば直ちに、且つほとんどが酸化分解される。一酸化炭素ならば二酸化炭素に、炭化水素ならば二酸化炭素と水になる。
【0080】
さらに、本発明の廃プラスチック分解方法には、酸化触媒処理工程前に「アルミナ触媒処理工程」を導入することが好ましい。アルミナ触媒処理工程とは、酸化触媒にSi, Mg, Cr, Pb, Fe 等、又はダスト(塵)等が付着するのを防止することである。なお、アルミナ触媒は、酸化触媒槽の前段に設置するのが好ましい。別途アルミナ触媒槽を設けても良い(参照:図5)。なお、アルミナ触媒の加熱温度は、好適は350度以上で行うのが良い。
【0081】
このように本発明は酸化チタンによる酸化・分解と、石灰中和処理による塩化水素、フッ化水素、硫黄化合物、窒素含有化合物等の除去、アルミナ触媒処理によるダスト等の除去、及び/又は酸化触媒によるさらなる酸化・分解とを組み合わせることができる。
【0082】
なお、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムの流れを図6に示した。図6に記載してある通りに、本発明の分解方法では、上記記載の工程に加えて、空気供給工程、冷却水を用いた冷却工程、サイクロン分離機を用いた飛散酸化チタン回収再使用工程、熱交換器を用いた熱交換工程、微粉末を取り除く集塵工程、排気ブロアーによる排気工程、塩化水素検知器を用いた排出ガス安全制御工程、CO検出器を用いた排出ガス安全制御工程を導入することができる。
当然に、上記各工程を削除又は修正をすることができる。
【0083】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムには、「金属及び/又は無機物分離・回収工程」を導入しても良い。上記加熱された触媒によって酸化又は分解された廃プラスチック・分解物には、ステンレスや、鉄、アルミニウムや銅などの金属、無機物が混在していたり、表面に金属が蒸着、貼着等している場合がある。このような金属は、廃プラスチック・有機物とは異なり分解されず、触媒に混入して反応容器に蓄積する。よって、金属及び/又は分離・回収工程では、上記金属を触媒から分離し回収するものである。廃棄物に限らずプラスチック、または有機物に金属、無機物が一体になっている物は多い。本発明はそうしたプラスチック、または有機物と金属、無機物が一体になっている物からプラスチック、または有機物だけを分解し、金属、無機物を取出すことが出来る。
【0084】
上記金属及び/又は無機物分離・回収方法としては、例えば、分解反応容器中に顆粒酸化チタン触媒の最大径が通過することができる程度の網目を有する篩を設ける。そして、金網に止められた金属、無機物のみを取出せば、金属、無機物を反応容器に極力残留させることがない。また、金属、無機物と触媒の比重差により両者を分離してもよい。触媒よりも比重の小さなアルミニウム薄膜のような金属は、酸化チタン触媒が攪拌される工程中に触媒の中からアルミニウムの薄膜等が浮上するので、これを選択的に回収できる。または、回収する金属が磁性体である場合は、金属と触媒を磁気又は磁界を利用して分離してもよい。金属と無機の分離については上記の方法に限っているものではない。
【0085】
酸化チタンの顆粒体からなる触媒と廃プラスチックの攪拌は、反応容器の容積量、攪拌羽根の形状及び攪拌方法により差は有るが、回転数は5rpm〜70rpm、好ましくは10rpm〜40rpmである。なお、反応容器がバッチ方式又は循環方式でも同様な回転数が好ましい。
これは、回転数が速すぎると、酸化チタンの磨耗が大きい、しかし回転数を遅くすると、酸化チタンと廃プラスチック及び/又は有機物の接触効率が落ちることを考慮した値である。
言い換えると、100kgのチタン重量に対して、インバーターを30Hz〜70Hzに調整しながら0.75kw〜1.5kwの負荷を加えるのが好ましい。
【0086】
反応容器(反応槽)に供給する担体ガスとしては、酸素が好ましいが、通常、空気が用いられる。また、必要に応じて不活性ガスを利用しても良い。なお、担体ガスの供給方法は、好ましくは酸化チタンの顆粒体の内部全体に均一に分散供給する。供給量は分解有機物の酸化分解に必要な酸素量を含む常温空気で、理論酸素必要量の1.3倍〜4.0倍が好ましい。さらに、分解効率の点から、1.6倍〜3.0倍が良い。例えば、反応容器の底部に無数の小さな穴を設け、そこから酸素等を供給する方法などである。
【0087】
本発明の分解方法、分解装置又は分解システムに適用することができる廃プラスチック、有機物は、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等の、汎用の熱可塑性プラスチックのほか、熱硬化性プラスチックも本発明の方法によって分解し、ガス化することができる。また、廃プラスチック、有機物は、破砕して、数mm3角程度の大きさにしたものが分解効率から好ましいが、破砕することなく分解処理もすることができる。
なお、本発明の廃プラスチック、有機物分解方法で分解できる対象は、プラスチック例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)、また、オムツ、人工透析装置、抗がん剤、遺伝子研究関係処理物、情報端末物、機密情報物(例えば、CD-R等)、自動車・家電廃プラ、有価物金属回収、有機物と金属無機物の分離等が挙げられるが、有機物を含め、特に限定はされない。さらに、医療廃棄物の場合では、用途に応じてステンレス、アルミニウムなどの金属が混在していたり、表面に金属が蒸着、貼着等されていたりする。また、廃プラスチックとは、使用済みプラスチックのみを対象とするのではなく、未使用であるが不要なプラスチック、有機物も対象とする。
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0089】
加熱温度の検討
酸化チタンの顆粒体からなる触媒と廃プラスチックの最適加熱温度を検討した。各条件は以下の通りである。
1.実験装置(反応容器): 攪拌型分解実験機(2200mL)
2.導入エアー流量:50L/min
3.反応容器内温度:300度、320度、350度、380度、400度、420度、450度、480度、500度、530度、550度、560度、570度、580度、600度
4.使用した触媒:酸化チタン触媒(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108) 700g
5.廃プラスチック:ポリエチレンペレット 1g/1回投入
なお、ガス濃度(NOx、CO、CO2、O2、CH4)の測定は、ガス濃度連続測定器PG-250(製造元:堀場製作所)を用いた。
【0090】
上記各温度で廃プラスックを分解処理した。実験結果は図7である。
加熱温度300度では、廃プラスチックを分解することができなかった。これは、加熱温度が300度以下であれば、酸化チタンの活性が無く分解性能が機能しないためであり、単に300度の温度により廃プラスチックが溶解し、大半は酸化チタン表面に付着・蓄積した。なお、300度の加熱を続けると、廃プラスック由来の有機物が酸化チタンの表面を覆い、酸化チタンの触媒機能活性が失われた。
加熱温度350度ではほんの少しは反応しているが結果は300度と同じであった。
加熱温度600度では、廃プラスチックを反応容器に投入した同時に燃焼した。すなわち、加熱温度600度以上では、廃プラスチックが投入された瞬間に発火した。これは、酸化チタンによる触媒作用による廃プラスチックの分解ではない、また燃焼による大量の未分解ガスが発生した。
加熱温度570度と580度では、廃プラスックが投入されて5秒〜15秒で発火し燃えた。
加熱温度350度では1回の分解に35分から45分を要した。
加熱温度380度では1回の分解に15分から25分を要した。
加熱温度400度では1回の分解に6分から8分を要した。
加熱温度420度では1回の分解に3分から5分を要した。
加熱温度450度では1回の分解に1分30秒から2分を要した。
加熱温度480度では1回の分解に30秒から40秒を要した。
加熱温度500度では1回の分解に30秒を要した。
加熱温度530度では1回の分解に25秒を要した。
加熱温度550度では1回の分解に20秒を要した。
加熱温度560度では1回の分解に20秒を要した。
加熱温度350度〜420度では分解がゆっくりと進行し効率的な分解ではなく、実用性はみられなかった。450度から560度では良好な廃プラスチックの分解が見られたが、さらに最も効率的な廃プラスックの分解が見られた加熱温度は、分解効率、反応安定性、反応温度の振れ範囲による安全性等から480度であった。
以上により、最適な加熱温度は、従来知られている加熱温度よりかなり狭い範囲でしか高効率の分解反応が得られないことを発見した。実用性もその範囲に順ずる結果であった。酸素供給量を変更して実験を行ったが、分解速度の変化が変わるが、最適な加熱温度は変化しなかった。
【実施例2】
【0091】
本発明の分解方法の工程に発生するダイオキシンの検出
本発明の分解方法の工程に発生するダイオキン量を検出した。使用したプラスチックは、焼却により多量のダイオキシン、塩化水素を発生する20%ポリ塩化ビニルを含む廃プラスチックを使用した。
測定条件は、以下の通りである。
1.分解装置:100kg酸化チタン攪拌分解装置
2.使用した触媒:酸化チタン触媒100kg(堺化学工業(株)SSP-G Lot.050323)
3.使用したプラスチックの種類及び投入量:ポリ塩化ビニル及びポリエチレンの混合物(20対80:重量%)、117g/min
4.酸化チタン顆粒体の加熱温度:480度
5.導入エアー流量:3.9m3/min
6.石灰中和処理工程
7.酸化触媒処理工程
なお、ガス濃度の測定は、特定検査機関を用いた。
【0092】
本発明の分解方法の工程に発生するダイオキン量を検出した結果を図8に示す。排ガス(酸化触媒処理後)、分解槽内の酸化チタンの顆粒体(分解槽内触媒)、石灰中和処理工程後の石灰材(中和装置内中和剤)のいずれにおいてもダイオキシン類及びコプラナーPCB濃度の実測値が低く、さらに毒性当量については非常に微量であった。以上により、本発明の分解方法の工程に発生するダイオキシン量は法規制以下であることがわかった。
通常、20%含有塩化ビニルを燃焼するとダイオキシン、塩化水素の発生量が多く、処理が困難であった。また、通常の焼却炉は、立ち上げ時、投入物の状態によりダイオキシン発生が起こり、焼却灰が残りその中にダイオキシンが多く含まれる。また高温処理は、大量の熱が必要であること、焼却炉の劣化が激しくメンテナンスが大変であった。しかし、本発明では、従来の焼却炉と比較して低温で処理することができ、メンテナンスが焼却炉と比較して簡易であり、さらに問題となる法規制にかかるダイオキシンの発生がない。これにより、本発明の分解方法では、低温分解であるにもかかわらず、有機物の残さは残らない画期的な分解方法である。
【実施例3】
【0093】
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積の検討
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の最適な比表面積の検討をした。
各測定条件は以下の通りである。
1.実験装置(反応容器):攪拌型分解実験機
2.加熱方法:導入空気加熱方式
3.導入エアー流量:50L/min
4.反応容器内温度:480度
5.攪拌速度:35rpm
6.使用した触媒:酸化チタン触媒(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108) 700g
7.廃プラスチック:ポリエチレン 1g/min投入
8.酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積:30m2/g、40m2/g、70m2/g
【0094】
(1)比表面積30m2/g、細孔容積0.20cc/gの酸化チタンの顆粒体
廃プラスチックであるポリエチレンを反応容器の酸化チタンの顆粒体に投入した。投入直後では、廃プラスチックは塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は次第に元の色に変化し、約40秒〜約60秒で元の色に戻った。なお、廃プラスチック投入直後の塊が崩れ分散する時に僅かではあるが煙が確認できた。なお、分解時間が長く効率が悪かった。
(2)比表面積40m2/g、細孔容積0.23cc/gの酸化チタンの顆粒体
廃プラスチックであるポリエチレンを反応容器の酸化チタンの顆粒体に投入した。投入直後では、廃プラスチックは塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は次第に元の色に変化し、約30秒〜約40秒で元の色に戻った。なお、分解効率は良かった。
(3)比表面積70m2/g、細孔容積0.26cc/gの酸化チタンの顆粒体
廃プラスチックであるポリエチレンを反応容器の酸化チタンの顆粒体に投入した。投入直後では、廃プラスチックは塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は次第に元の色に変化し、約30秒〜約45秒で元の色に戻った。なお、廃プラスチック投入直後の塊が崩れ分散するのが遅かった。また、酸化チタンそのものが崩れ粉状化し飛散したことによりハンドリングが悪かった。
以上の結果により、比表面積が30m2/g 以上であれば、十分に廃プラスチックの分解をすることができた。しかし、比表面積が35m2/g 以上であれば、さらに高効率で廃プラスチックを分解することができた。しかし、比表面積を大きくし過ぎると、耐熱性が弱く、顆粒体が崩れ粉状化してしまう。
よって、33m2/g以上〜65 m2/g以下、より好ましくは35m2/g以上〜50 m2/g以下の比表面積を持つ酸化チタンの顆粒体が、高い効率で廃プラスチックを分解することがわかった。
【実施例4】
【0095】
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の処理量の検討
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の最適な処理量の検討をした。
ポリスチレンペレットの処理量を漸次増加し最大処理可能量を算出した。チタン触媒量350gで1g/min、2g/min×5回、2g/min×5回連続feed、3g/min連続feed、4g/min連続feed、5g/min連続feedにて処理した。
4g/min連続feedでは激しく発火し燃焼した。3g/minでも触媒の黒化が激しく増大したので、2g/min連続feedが最大処理可能量であると判断した。
【0096】
以上の実験から、触媒使用量に対する廃プラスチックの最大処理可能量の重量比は、100対34.2である。
以上の結果により、最大処理可能量は、本発明の酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの最適な廃プラスチック処理量は、3.0〜40.0kg、好ましくは6.0kg〜35.0kgであることがわかった。
【実施例5】
【0097】
ポリエチレン、ポリスチレンの分解
上記各廃プラスチックを480度に加熱した顆粒酸化チタン(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108)を用いて分解した。詳細は、以下の通りである。
分解装置として、円筒状の容器、熱風加熱制御方式の装置を使用した。該容器中に酸化チタン700gを投入した。次に、粒状に粉砕したポリエチレンを0.6g/30秒毎に投入し、攪拌装置により35rpmで攪拌した。また、流量100L/minの排気ガスをすべて回収した。経時的に排気ガスに含まれる物質を測定した。
なお、ガス濃度の測定は、ガス濃度連続測定器PG-250(製造元:堀場製作所)を用いた。
【0098】
ポリエチレンを投入した30秒後に排気ガス中に炭酸ガス及びCOの排出を確認できた。その後、正常の濃度に戻った。また、それに合わせて、ポリエチレンは投入後、塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は、次第に元の色にもどった。なお、廃プラスチックはその後煙を出すこともなく30秒後に分解した。なお、コントロールとして不活性化された同じ粒度の酸化チタン顆粒を用いた場合には、一般的に燃やした場合と同じく黒煙を上げて燃えた。本結果により、酸化チタンによる分解は、燃焼ではない触媒分解であることが確認できた。また、ポリスチレンでも上記と同様な結果であった。
以上により、実施例1の結果と同様に、本発明の廃プラスチックの分解方法では、酸化チタンの顆粒体からなる触媒と廃プラスチックの加熱温度を約480度にすることにより、ポリエチレン、ポリスチレンを高効率で分解することができた。
【実施例6】
【0099】
ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)の分解
ポリ塩基ビニルは分子に塩素原子を有し、ポリウレタンは分子に窒素原子を有し、テフロン(登録商標)は分子にフッ素原子を有する。本発明の分解方法は、このような分解工程で有害なガスを発生するプラスチックの分解、さらには該ガスを吸着除去できるかを検討した。
すなわち、酸化チタン処理工程の後に、石灰中和処理工程、さらに白金による酸化触媒処理工程を行った。そして、各工程後のガスを回収して、ガス中に含まれる成分を測定した。また、ポリエチレン、ポリスチレンでも同様な測定を行った。
測定条件は、以下の通りである。
1.分解装置:100kg酸化チタン攪拌分解装置
2.使用した触媒:酸化チタン触媒100kg(堺化学工業(株)SSP-G Lot.060829)
3.使用したプラスチックの種類及び投入量:ポリ塩化ビニル(70g/min)、ポリウレタン(120g/min)、テフロン(登録商標)(30g/min)、ポリエチレン(100g/min)、ポリスチレン(100g/min)
4.加熱温度 480度(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル)又は490度(ポリウレタン、テフロン(登録商標))
5.石灰中和処理工程
6.パラジウム、白金酸化触媒処理工程
なお、ガス濃度の測定は、特定検査機関を用いた。
【0100】
各廃プラスチックの分解による発生したガスを測定した結果を図9に示す。
ポリ塩化ビニルの分解では、石灰中和処理工程の後では、環境中に問題がない程度までHCl及び塩素が除去されていた。ポリウレタンの分解では、NO、NO2及びHCNが十分に除去されていた。テフロン(登録商標)の分解では、石灰中和処理工程の後では、環境中に問題がない程度までフッ化水素が除去されていた。
なお、VOC(揮発性有機化合物)及び低級炭化水素は、いずれの廃プラスチックでも十分に除去されていた。
以上の結果により、従来の焼却炉では有害ガス、特にフッ化水素を発生するテフロン(登録商標)等を分解することは困難であったが、本発明の分解方法では、テフロン(登録商標)等を低温で高効率分解することができ、さらに有害ガスを装置外から放出することもなく安全に処理が出来ることを確認した。
【実施例7】
【0101】
医療廃棄物の分解の検討
上記実施例では、廃プラスチックの分解を十分に行えることを確認したが、さらに医療廃棄物(遠沈管、ブルーチップ、ブタ血液、輸液セット、ネオチューブ、シリンジ、セルスクレーバー、シュアヒューザー、シュアーフロー、ダイアライザー、ラックスゴム、チップ、キムタオル)を分解することができるかを確認した。
測定条件は、以下の通りである。
1.分解装置:循環式実証実験機(容量:385L)
2.使用した触媒:酸化チタン触媒200kg (往路100kg、復路100kg、堺化学工業(株)SSP-G Lot.060116)
3.加熱温度:480度
4.攪拌回転数:往路(分解部)10rpm、復路35rpm
5.酸化触媒温度:400度
6.エアー流量:2.75m3/min
【0102】
(1)処理した医療廃棄物(計3.45kg):プラスチックシャーレ(大)36枚2kg、シャーレ(小)10枚0.25kg、遠沈管(50ml)30本0.4kg、ブルーチップ0.2kg、医療廃棄物用ダンボール箱0.6kgを破砕した。
投入量84g/min又は120g/minのいずれにおいても30分間以内で分解することができた。
(2)処理した医療廃棄物(計7.007 kg):プラスチックシャーレ(大)72枚4kg、シャーレ(小)20枚0.5kg、遠沈管(50ml)60本0.8kg、ブルーチップ0.4kg、医療廃棄物用ダンボール箱0.6kgを粉砕した後、ブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)707gを混合した。
投入量120g/minにおいて安定的に分解することができた。
(3)処理した医療廃棄物(計7.185 kg):輸液セット50本入り2箱2.6kg、ネオチューブ(真空採血管)100本入り2箱1.63kg、シリンジ(20ml)2箱1.97kg、セルスクレーバー1袋385g、医療廃棄物用ダンボール箱0.6kgを粉砕した。
投入量156g/min、40分間で7280gを分解することができた。
(4)処理した医療廃棄物(計6.703kg):上記(3)と同様の医療廃棄物5.93kgにブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)773gを混合した。
投入量120g/minにおいて安定的に分解することができた。
(5)処理した医療廃棄物(計3.055kg):シュアヒューザー5個入り1箱765g、シリンジ20本340g、シュアーフロー2個620g、ダイアライザー(アルミラミネートを除く)6本670g、ダンボール箱660gを粉砕した。
投入量63g/min又は84g/minで分解することができた。
(6)処理した医療廃棄物(計3.82kg):上記(5)の医療廃棄物3.1kgにブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)720gを混合した。
投入量85g/min、45分間で全量を分解することができた。
(7)処理した産業廃棄物(計4.755kg):ラテックスゴム手袋3箱2.2kg、チップ400g、キムタオル2袋945g、シリンジ560g、ダンボール箱650gを粉砕した。
投入量480g/min、10分間ですべて分解することができた。
(8)処理した医療廃棄物(計5.37kg):上記(7)の産業廃棄物4.7kgにブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)670gを混合した。
投入量77g/min、20分間で1540gを分解することができた。また、投入量96g/min、40分間で3840gを分解することができた。
【0103】
上記(1)〜(8)の結果により、医療廃棄物を分解することができた。特に、本発明の分解方法では、血液等の生体に由来する物の分解において、NOxなどの窒素化合物も安全に処理ができ、かつ硫黄化合物例えば、硫化水素、亜硫酸ガスについても石灰中和処理工程によって安全に処理できることが確認できた。
【実施例8】
【0104】
酸化チタン顆粒体に付着する菌の確認
菌等を培養したシャーレを分解処理した後において、分解処理後の酸化チタン顆粒体に菌が付着しているかを確認した。詳しくは、撹拌型実験機及び実証機において、大腸菌やその他の有機物を処理した後の酸化チタン顆粒体を回収し、それらに含まれる細菌を検査した。実験方法は以下の通りである。
(1)撹拌型実験装置では使用済みの酸化チタン約260gに蒸留水200mlを加え洗浄した。この洗浄液の一部をSCD培地および各種培地に塗末し、24時間及び48時間、35℃で培養した。培養後形成されたコロニーを観察、計測した。
(2)実証機ではチタン交換時に、酸化チタン約50gを採取し、リン酸塩緩衝液を35ml加え、十分に撹拌後洗浄液として回収した。この洗浄液の一部をSCD培地及び各種ぺたんチェック培地に塗末し、24時間及び48時間、35℃で培養した。培養後形成されたコロニーを観察、計測した。
【0105】
上記(1)及び(2)の結果を図10に示す。いずれの場合においても、廃プラスチック分解処理後の酸化チタン顆粒体から得られた洗浄液からは大腸菌等が検出されなかった。
以上のことから、本発明の分解処理工程によって、大腸菌を死滅させることができた。
【0106】
以下の実施例では、病院等で廃棄される使用済みの注射器、包装袋、又は薬瓶のような医療廃棄物を、本発明の分解装置の廃プラスチック・有機物処理手段によって処理する工程を説明する。既に述べた要素には、引続き同じ呼称、又は同じ符号を用いるものとする。
【実施例9】
【0107】
先ず、送風ブロアー19等である担体ガス供給手段によって反応槽3に空気を供給する、次に加熱手段9を起動させることにより、担体ガス供給手段によって供給されている空気を加熱して、該加熱された空気(熱風)を触媒2を含めた反応槽3の内部に供給することにより、触媒2の温度を420度〜560度になるようにする。
【0108】
次に、図22に示す破砕装置を使用して医療廃棄物を数mm3程度の大きさであり触媒よりも大きいものに破砕する。破砕された医療廃棄物は、反応槽3の投入口7から凹部13(図16−4を参照)に投入される。投入された医療廃棄物は、触媒2と共に循環手段5(D)、さらに循環手段5により反応槽内を循環する。この循環の工程で、触媒2と医療廃棄物とは、攪拌手段6であるスクリュフィーダによって攪拌され続けるので、触媒2と医療廃棄物との接触が繰り返され、触媒2の作用に基づき、医療廃棄物に含まれる廃プラスチック・有機物4の分解が促進される。これにより、反応槽3に投入された総ての医療廃棄物に含まれる廃プラスチック・有機物4は、触媒の循環工程中に気化する。廃プラスチック・有機物4が気化する過程で、その分解が起こると、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0109】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【0110】
また、上記の循環工程で、医療廃棄物の大部分を占める廃プラスチック・有機物4は気化するが、医療廃棄物に混入した金属は、循環の後に至っても触媒2の中に残る。このような金属を、触媒2と共に更に循環される工程で選別できるようにしても良い。例えば、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、金属及び/又は無機物分離・回収手段として反応槽に嵌めこむ(図16(4)参照)。そして、金網に止められた金属・無機物を回収できるポケット17を設置し、ポケットから金属・無機物を回収することができる。
【0111】
従って、本発明の廃プラスチック・有機物処理手段によれば、医療廃棄物に含まれる金属、無機物を反応槽3に残留させることがなく、金属の酸化を抑え、そのリサイクルを実現することができる。しかも、金属及び/又は無機物分離・回収手段が金属を選別するとき、循環手段5及び/又は攪拌手段6を停止させる必要がないので、医療廃棄物の処理量を高く維持させることができる。また、金属及び/又は無機物分離・回収手段15が金属を選別するとき、反応槽3の扉を開放する必要がないので、廃プラスチック・有機物処理手段の熱効率を高く保つことができる。
【実施例10】
【0112】
先ず、図17に示す反応槽3の投入口7を開放し、第1段槽31の上流端33の付近に触媒2を流下する。同時に、循環手段5を起動すれば、触媒2は、最初に循環手段5(A)により第1段槽31の送出端34へ向けて搬送され、循環手段5(B)の回転軸14の下端部に至る。続いて、触媒2は、循環手段5(B)により第2段槽32の送入端37まで押上げられ、最後に、循環手段5(C)により第2段槽32の下流端36まで搬送される。この時点で、第1段槽31の上流端33から第2段槽32の下流端36までの循環経路に触媒2が存在し、循環している。
【0113】
上記のように触媒2を流下させながら、循環手段5を起動させ続ければ、触媒2は、その自重で帰還経路20を滑落して第1段槽31の上流端33に戻る。上記の循環経路に蓄積した触媒2の体積、又は質量が所望の量に達するのを見計らって、触媒2の流下を終了する。投入口7を閉鎖した後、加熱手段9を利用して、反応槽3内部の触媒2の温度が420度〜560度の範囲になるように加熱する。なお、触媒は反応槽に常に存在させておいても劣化することはないので、次以降の分解操作においては、反応槽3内の触媒2を加熱させる操作から行えば良い。
【0114】
次に、図22に示す破砕装置を使用して医療廃棄物を数mm3程度の大きさであり触媒よりも大きいものに破砕する。破砕された医療廃棄物は、投入口7から、第1段槽31の上流端33の付近に投入される。更に、医療廃棄物は、触媒2と共に循環手段5により上記の循環経路に沿って循環される。この循環工程で、触媒2と医療廃棄物とは、攪拌手段6であるスクリュフィーダによって攪拌され続けるので、触媒2と医療廃棄物との接触が繰り返され、触媒2の作用に基づき、医療廃棄物に含まれる有機物の分解が促進される。これにより、反応槽3に投入された総ての医療廃棄物に含まれる有機物4は、第1段槽31の上流端33から第2段槽32の下流端36を循環する間に気化する。有機物が気化する過程で、その分解が起こると、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0115】
一方、触媒2は、第2段槽32の下流端36に達したところで、帰還経路20を滑落して反応槽3の上流端33に戻るので、触媒2は反応槽3の内部で循環する。従って、新たに破砕手段で破砕された医療廃棄物が反応槽3に投入されると、同じ触媒2を利用して、この新たな医療廃棄物に含まれる有機物を繰り返し気化させることができる。また、第1段槽31よりも第2段槽32の位置が高いので、触媒2を、第2段槽32の下流端36から第1段槽31の上流端33まで戻すのに、例えばコンベヤ又はスクリュフィーダ等を用いて強制的に行わなくて良い。
【0116】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【0117】
また、上記の循環工程で、医療廃棄物の大部分を占める有機物は気化するが、医療廃棄物に混入した金属は、第2段槽32の下流端36に至っても触媒2の中に残る。このような金属を、触媒2と共に更に循環される工程で選別できるようにしても良い。例えば、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、金属及び/又は無機物分離・回収手段15として帰還経路20の途中に嵌めても良い。この場合、金網に止められた金属が上記の高温ガスに直に触れないように、帰還経路20を反応槽3の外側に配置しても良い。そして、金網に止められた金属を、帰還経路20を開放して取り出せば、この金属が新たに反応槽3に投入される医療廃棄物に混じる前に、触媒2の中から取り除くことができる。
【0118】
尚、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できる。例えば、循環手段5(B)を必要としない場合もある。例えば、第1の通気性底材35を、その上流端33より送出端34が高くなるような傾斜姿勢として、搬送手段5により第1の通気性底材35の送出端34まで搬送された触媒2を、第2の通気性底材38の送入端37に直に落下させても良い。
【実施例11】
【0119】
先ず、図19に示す投入口8を開放し、上流端33の付近に触媒2を流下する。同時に、循環手段5を起動すれば、触媒2は、最初に循環手段5により上流端33から下流端36へ向けて搬送される。この時点で、上流端33から下流端36までの循環経路に触媒2が存在し、循環している。
【0120】
上記の循環経路に蓄積した触媒2の体積、又は質量が所望の量に達するのを見計らって、触媒2の流下を終了する。投入口を閉鎖した後、送風ブロアー19で供給している空気を加熱手段9により熱し、熱せられた空気を反応槽3に送り込むことにより、反応槽3内部の触媒2の温度が420度〜560度の範囲になるように加熱する。なお、触媒は反応槽に常に存在させておいても劣化することはないので、次以降の分解操作においては、反応槽3内の触媒2を加熱させる操作から行えば良い。
【0121】
次に、図22に示す破砕装置を使用して医療廃棄物を数mm3程度の大きさであり触媒よりも大きいものに破砕する。破砕された医療廃棄物は、投入口8から、上流端33の付近に投入される。更に、医療廃棄物は、触媒2と共に循環手段5により上記の循環経路に沿って循環される。この循環工程で、触媒2と医療廃棄物とは、攪拌手段6であるスクリュフィーダによって攪拌され続けるので、触媒2と医療廃棄物との接触が繰り返され、触媒2の作用に基づき、医療廃棄物に含まれる有機物の分解が促進される。これにより、反応槽3に投入された総ての医療廃棄物に含まれる有機物4は、上流端33から下流端36を循環する間に気化する。有機物が気化する過程で、その分解が起こると、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0122】
一方、触媒2は、下流端36に達したところで、帰還経路20を滑落して反応槽3の上流端33に戻るので、触媒2は反応槽3の内部を常に循環する。従って、新たに破砕装置で破砕された医療廃棄物が反応槽3に投入されると、同じ触媒2を利用して、この新たな医療廃棄物に含まれる有機物を繰り返し気化させることができる。
【0123】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【0124】
好適には帰還経路20は、金属及び/又は無機物分離・回収手段15を備え、反応槽3の下流端36と上流端33を接続する。該分離手段15は、以下に詳説するように、下流端36に搬送された触媒2中から残留する金属・無機物を分離する。帰還経路20は、該分離・回収手段15によって金属が分離された触媒2を、上流端33に帰還させる。
【0125】
該分離手段15は、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16であり、帰還経路20の途中に嵌められている。そして、金網に止められた金属がある程度溜まったところで、帰還経路20を開放して金属及び/又は無機物を取り出せば、廃プラスチック・有機物4に含まれる金属を反応槽3に残留させることがなく、金属の酸化を抑え、そのリサイクルを実現することができる。
【0126】
以上説明した廃プラスチック・有機物処理装置により、平均純度が98.9%の金属(アルミニウム(Al))を回収することができた。表面にAlが蒸着されたプラスチック製のフィルムを約5cm四方に破砕して、約480℃に加熱した1〜3mm径の触媒(酸化チタン)2に混入・撹拌させ、10分間で廃プラスチック・有機物処理装置を循環させた。触媒2が廃プラスチック・有機物処理手段1内を1周循環するごとに数cm四方の薄いAl片を回収し、プラスチック片を分解・気化させるとともに上記高純度のアルミニウム金属を回収することができた。循環時間が短いほど高純度の金属を回収できると見込まれる。
【0127】
以上、本発明の廃プラスチック・有機物処理装置について実施形態、実施例を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施例では金属片が金網上に残ったが、触媒2が金網上に残るようにしてもよい。回収する金属の種類、触媒2の加熱温度、酸素濃度などの諸条件により、回収する金属片の大きさは異なり得るので、粒径の大きい方が金網上に残るように、回収条件や触媒2の径、網目の大きさ等を選択して、金属を回収できるよう予め調整する。
【0128】
更に、図19には廃プラスチック・有機物処理手段1が水平姿勢で表れているが、上流端33よりも下流端36が高くなるように、反応槽3を傾斜させても良い。下流端36を上流端33よりも高くすることにより、循環手段5により下流端36に搬送された触媒2を、その自重で帰還経路20を滑落させて、上流端33まで戻すことができる。この場合、帰還経路20は、反応槽3の下流端36と上流端33とを接続するシュートであってよい。
【実施例12】
【0129】
図20で示すように、医療廃棄物であるシャーレをカゴ40に入れる。そして、該シャーレを収納したカゴ40は、投入口41から反応槽3内部に配置される。
次に、触媒2を反応槽3の排気口39から流下させる。これにより、触媒2は反応槽3の上流端33から下流端36に流下する。次に、スクリュフィーダを起動させる。これにより、下流端36付近に蓄積した触媒2は、帰還経路20を介して反応槽3の上流端33に戻る。上記の循環経路に蓄積した触媒2の体積、又は質量が所望の量に達するのを見計らって、触媒2の流下を終了する。
次に、加熱手段9を利用して、反応槽3内部の触媒2の温度が420度〜560度の範囲になるように加熱する。なお、触媒は反応槽に常に存在させておいても劣化することはないので、次以降の分解操作においては、反応槽3内の触媒2を加熱させる操作から行えば良い。
【0130】
以上により、触媒活性温度に達した触媒2が反応槽3の上流端33から下流端36に流下(循環)する工程において、シャーレは触媒2と接触し、気化される。シャーレが気化する過程で、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0131】
一方、触媒2は、反応槽3の下流端36に達したところで、帰還経路20を介して反応槽3の上流端33に戻るので、触媒2は反応槽3の内部で循環する。従って、触媒活性状態が高い触媒2を次々にシャーレに投下することができる。
【0132】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【実施例13】
【0133】
本発明の廃プラスチック・有機物の分解システム
上記実施例9に記載の分解装置を使用し、さらに反応槽3内の酸化チタンの顆粒体を420度〜560度に加熱する。なお、使用する酸化チタンの顆粒体の活性成分としての酸化チタンの特性は、(1)比表面積が35m2/g以上〜50m2/g以下、(2)顆粒体が3.5mesh(5.60mm)以下である。
なお、使用する廃プラスチック・有機物は、分解工程中に塩素、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチックである。
【0134】
上記分解システムでは、従来の分解方法に比べて格段に高い分解効率を示す。また、石灰中和処理手段による石灰中和処理工程及び酸化触媒処理手段による酸化触媒処理工程により、分解工程中にHCI、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチック、有機物又は血液等の生体由来物、フッ化水素を発生するフッ素化合物の処理も容易に行うことができる。さらに、廃プラスック・有機物に混在し、またはその少なくとも一面に蒸着しあるいは貼着等された金属・無機物の分離・回収を容易に行うことができる。
【0135】
その他、本発明のすべての実施例は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の分解方法、分解装置及び分解システムは、医療廃棄物に限らず、あらゆるプラスチック等の廃材を処理するのに有益な技術である。
【符号の説明】
【0137】
1:廃プラスチック・有機物処理手段
2:触媒
3:反応槽
4:廃プラスチック・有機物
5:循環手段
6:攪拌手段
7:投入口
8:投入口
9:加熱手段
10:送風チャンバ
11:仕切り壁
12:パドル
13:凹部
14:回転軸
15:金属及び/又は無機物分離・回収手段
16:触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網
17:金属及び/又は無機物回収ポケット
18:金属・無機物取り出し口
19:送風ブロアー
20:帰還経路
21:螺旋羽根
22:翼列
23:破砕手段
24:固形廃プラスチック・有機物投入口
25:固形廃プラスチック・有機物分解部
30:仕切壁
31:第1段槽
32:第2段槽
33:上流端
34:送出端
35:通気性底材
36:下流端
37:送入端
38:通気性底材
39:排気口
40:カゴ
41:投入口
42:網
81:3枚の羽根
82:切欠部
83:軸流羽根
84:突片
85:突片
101:破砕装置
102:反応槽
103:攪拌羽根
104:ブロアー
105:除去装置
106:分離装置
107:回収槽
201:試料容器
202:攪拌機
203:軸体
204:攪拌羽根
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック、有機物で構成される医療廃棄物、又感染性のある医療廃棄物の分解方法に関し、詳しくは、廃プラスチック、有機物の分解方法の各条件を最適化したことによる高効率廃プラスチック・有機物の分解方法に関する。
さらに、本発明は、廃プラスチック・有機物を分解する触媒循環型分解装置及び高効率分解システムに関する。加えて、該分解装置は、廃プラスックに混在し、またはその少なくとも一部に蒸着しあるいは貼着等された金属・無機物の分離・回収手段も含む。
また、本出願は、参照によりここに援用されるところ、日本特許出願番号2006-297194、2006-115920、2006-115925及び2007-016087からの優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃プラスチックを処理し又は再利用する方法として、種々のものが提案され、また、一部は実用化されている。このような廃プラスチックの再利用、再資源化の一つの有力な方法として、廃プラスチック片を光触媒として知られている酸化チタンからなる分解触媒の存在下に紫外線を照射しながら、加熱して、廃プラスチックをガス化する方法及び装置が提案されている(特許文献1、2参照)。
また、廃プラスチック片の分解処理に用いられる触媒についても種々検討されている(特許文献3〜5)。
【0003】
しかし、上記の廃プラスチックの分解方法を用いた分解装置では、効率的な廃プラスチック分解処理を行うことはできず、高い処理費用及び大掛かりな装置が必要であった。さらに、ポリ塩化ビニルを含む廃棄物を処理する場合では、塩化水素ガスが発生することが知られており、また、テフロン(登録商標)を処理する場合には有毒なフッ化水素が発生することが知られており、それらのガスの処理が問題となっていた。
【0004】
プラスチック等の有機物は、廃棄時の処理が難しく、焼却処理ではダイオキシンなどの有害物質が発生するなどの危険がある。
また、プラスチック片には用途に応じてアルミニウムや銅などの金属、無機物が混在していたり、表面に金属が蒸着、貼着等されていたりする。このようなプラスチック片を焼却すると、有毒ガスが発生したり、焼却炉を傷めたりする恐れが有る。
そこで、プラスチック片など有機物は、埋め立て処理される場合があるが、プラスチックはそのままでは地中で分解しない。埋立地も不足して来ているというのが実状である。また、生分解性プラスチックなるものが存在するが、生分解性プラスチックは分解されるまでに長期間かかり、さらに分解に必要な土地が膨大であるという欠点がある。加えて、廃プラスチック・有機物に混在している利用可能な金属、希少金属、無機物は廃プラスチック・有機物から分離することができず、埋立られたり、焼却されている。
【0005】
従来このような触媒を利用した有機物の分解は、図23に示すように、プラスチック等の有機物を破砕装置101で粒状に破砕し、この有機物を、予め粒状の触媒が蓄積されたドラム形の反応槽102に投入する。続いて、反応槽102の内部で攪拌羽根103を回転させることにより、触媒と有機物とを攪拌し、ブロアー104で反応槽102の内部へ熱風を供給する。これにより、触媒の作用によって有機物の分解が促進され、有機物が気化するに至る。
更に、触媒は反応槽に残存するが、気化した有機物は、サイクロン集塵機を主体とする分離装置106を経て、水蒸気と二酸化炭素だけが排気ガスとして大気へ放出される。このように反応槽102に投入された有機物が気化すれば、その分、新たな有機物を反応槽102に投入できるので、上記の工程は中断することなく連続して行うことができる。
【0006】
しかし、従来の分解装置では、効率的な廃プラスチック分解処理を行うことはできず、高い処理費用及び大掛かりな装置が必要であった。
さらに、ポリ塩化ビニルを含む廃棄物を処理する場合では、塩化水素ガス、窒素化合物が発生することが知られており、また、テフロン(登録商標)を処理する場合には有毒なフッ化水素が発生することが知られており、それらのガスの処理が問題となっていた。
【0007】
一方、病院、透析施設等から排出される感染性医療廃棄物による2次感染防止のため、このような廃棄物の処理方法を規定した厚生省のガイドラインが平成1年11月7日に発表され、平成2年4月1日から施行されている。これにより、病院、透析施設等は、原則として、院内又は施設内での医療廃棄物の滅菌処理が義務付けられている。
以上により、病院内やクリニック内での施設において、大掛かりな装置を必要とせずかつ安全に廃プラスチック特にポリ塩化ビニルを含む感染性医療廃棄物の処理を可能とする分解方法、分解装置及び分解システムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−363337号公報
【特許文献2】特開2004−182837号公報
【特許文献3】特開2005−066433号公報
【特許文献4】特開2005−205312号公報
【特許文献5】特開2005−307007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記要求に答えるべく、高効率の廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック類で構成される医療廃棄物、血液等の生体由来物又は該由来物が付着したプラスチックの分解方法を提供することを課題とする。さらに、ポリ塩化ビニルなどの塩素系プラスチック分解時に発生するHCl、生体由来及び多種の医療廃棄物プラスチック分解時に発生する硫黄化合物、窒素化合物、テフロン(登録商標)などのフッ素化合物分解時に発生するフッ化水素等の除去も可能な分解方法も課題とする。
【0010】
一方、医療廃棄物などの産業廃棄物は、その大部分をプラスチック、有機物等に占められるが、包装袋の内面に蒸着されたアルミニウムの薄膜、又は注射針等も含んでいる。これらの金属は、有機物の全部が気化しても反応槽に残ることになる。また、金属がアルミニウム等である場合、反応槽にアルミニウム等を残したまま分解工程を継続すると、アルミニウム等は激しく酸化されるため、そのリサイクルが困難になる。
また、反応槽から金属を逐次取り出そうとして、上記の工程を中断すると、所定の時間当りに分解できる有機物の質量又は体積(以下で「処理量」と記する場合がある)が低下する。すなわち、反応槽外で金属を分離・回収しようとすると、触媒を取り出す毎に活性温度になっている触媒の温度が冷めてしまい、再度の加熱が必要であり熱エネルギーが無駄になっていた。
また、従来の分解装置では、粉末化しさらに飛散した触媒は、反応槽に戻されることなく廃棄されている。これは、触媒が1〜3mm前後の大きさの粒であれば、攪拌羽根の回転に伴って触媒の流動が反応槽の内部全体で起こるが、粉末化した触媒は流動し難い性質となり、廃プラスチック・有機物と混ざり難くなるからである。この問題は、反応槽に蓄積する触媒の量が増える程に顕著となるため、反応槽を大型化することを妨げ、更には処理量を増大することも妨げている。
一方、アルミ箔複合体など、アルミニウムや銅などの金属を含む廃プラスチック・有機物などから酸化させずに金属を回収するためには、乾留処理などが用いられるが、真空溶解炉を使用すると金属回収のコストが高くなる。また、プラスチック片に溶解処理を行うと、金属は酸化してしまうため高純度の金属の回収は望めない。
さらに、ポリ塩化ビニルなどの塩素系プラスチック分解時に発生するHCl、生体由来及び多種の医療廃棄物プラスチック分解時に発生する硫黄化合物、窒素化合物、テフロン(登録商標)などのフッ素化合物分解時に発生するフッ化水素等の処理が分解装置の実用化の妨げとなっている。
よって、本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、触媒の寿命を延ばすことができ、しかも多量の廃プラスチック・有機物を効率良く分解できる分解装置及び分解システムを提供することにある。
さらに、本発明は、触媒が循環及び/又は攪拌される工程で金属及び/又は無機物を分離・回収できる分解装置並びに分解システムを提供することを目的とする。
さらに、ポリ塩化ビニルなどの塩素系プラスチック分解時に発生するHCl、生体由来及び多種の医療廃棄物プラスチック分解時に発生する硫黄化合物、窒素化合物、テフロン(登録商標)などのフッ素化合物分解時に発生するフッ化水素等の除去できる分解装置及び分解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、分解工程における各条件を最適化すること、さらには発生した有害ガスを吸着除去する工程を導入することにより、高効率の廃プラスチック、有機物特に主にプラスチック類で構成される医療廃棄物の分解方法を確立した。
さらに、本発明者らは触媒循環を可能とした廃プラスチック・有機物の分解装置及び分解システムを確立した。
以上により、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は以下よりなる。
「1.活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒と共に廃プラスチック及び/又は有機物を加熱しながら攪拌する工程を含む、該プラスチック及び/又は有機物をガス化する廃プラスチック・有機物の分解方法において、該触媒の加熱温度が420度〜560度の範囲であることを特徴とする廃プラスチック・有機物の分解方法。
2.酸化チタンの顆粒体の酸化チタンが、以下の特性を有することを特徴とする前項1の分解方法。
(1)比表面積が35m2/g以上〜50 m2/g以下、
(2)顆粒体が3.5mesh(5.60mm)以下。
3.酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの廃プラスチック及び/又は有機物処理量が3.0kg〜40.0kg範囲であることを特徴とする前項1又は2に記載の分解方法。
4.さらに、石灰中和処理工程を含む前項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
5.さらに、酸化触媒処理工程を含む前項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
6.さらに、酸化触媒処理工程前にアルミナ触媒処理工程を含む前項5に記載の分解方法。
7.さらに、金属及び/又は無機物分離・回収工程を含む前項1〜6のいずれか1に記載の分解方法。
8.以下の処理手段を含む触媒循環型廃プラスチック・有機物の分解装置;
(1)廃プラスチック・有機物処理手段
(2)酸化触媒処理手段。
9.廃プラスチック・有機物処理手段が、以下の構成を有することを特徴とする前項8に記載の分解装置、
触媒を反応槽内に循環させる反応槽と、
反応槽の投入口から投入される廃プラスチック及び/又は有機物を前記触媒と共に循環及び/又は攪拌をする手段(循環及び/又は攪拌手段)と、を備え、
前記触媒と共に前記廃プラスチック及び/又は有機物が前記反応槽内を循環する工程で前記廃プラスチック及び/又は有機物を気化させることを特徴とする廃プラスチック・有機物処理装置。
10.前記循環及び/又は攪拌手段が、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、前記反応槽内に前記回転軸を挿入して成る1又は2以上のスクリュフィーダであることを特徴とする前項9に記載の廃プラスチック・有機物処理装置。
11.前記2つのスクリュフィーダが反応槽内に実質的に水平姿勢に設置され、かつ前記2つのスクリュフィーダの回転により、前記触媒と共に前記廃プラスチック及び/又は有機物が反応槽内を実質的に水平方向に循環されることを特徴とする前項10に記載の廃プラスチック・有機物処理装置。
12.廃プラスチック・有機物処理手段が、以下の構成を有することを特徴とする前項9に記載の分解装置、
触媒を反応槽内の上流端から下流端に循環させる反応槽と、
前記反応槽の投入口から投入される廃プラスチック及び/又は有機物を前記触媒と共に前記上流端から前記下流端に向けて循環させる循環手段と、
前記反応槽内で、前記触媒並びに廃プラスチック及び/又は有機物を攪拌する攪拌手段と、
前記反応槽内で、前記触媒を前記反応槽の下流端から上流端へ案内する帰還経路と、を備え、
前記触媒と共に前記廃プラスチック及び/又は有機物が前記反応槽の上流端から下流端へ循環される工程で前記廃プラスチック及び/又は有機物を気化させることを特徴とする廃プラスチック・有機物処理装置。
13.前記反応槽内が、前記上流端を有する第1段槽と、前記下流端を有し前記第1段槽より高く配置される第2段槽とに区分され、前記触媒が、前記第2段槽の下流端から前記帰還経路に案内されて前記第1段槽の上流端まで流下することを特徴とする前項12に記載の分解装置。
14.前記反応槽内の前記上流端と前記下流端が実質的に水平姿勢に設置され、前記触媒が、前記下流端から自重で滑落した後に、前記帰還経路に案内されて前記上流端まで流上することを特徴とする前項12に記載の分解装置。
15.前記循環手段が、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、前記反応槽に前記回転軸を挿入して成るスクリュフィーダであることを特徴とする前項12〜14のいずれか1に記載の分解装置。
16.前記螺旋羽根に補助羽根が設置されていることを特徴とする前項15に記載の分解装置。
17.廃プラスチック・有機物処理手段が、以下の構成を有することを特徴とする前項9に記載の分解装置、
触媒を反応槽内の上流端から下流端に循環させる反応槽と、
廃プラスチック及び/又は有機物を反応槽内に配置可能なカゴと、
前記反応槽内で、前記触媒を前記反応槽の下流端から上流端へ案内する帰還経路と、を備え、
前記触媒が前記反応槽の上流端から下流端へ落下(循環)する工程において、前記カゴ内の前記廃プラスチック及び/又は有機物は前記触媒と接触し、さらに気化することを特徴とする廃プラスチック・有機物処理装置。
18.前記反応槽において、反応槽底部の複数の穴から担体ガスを直接に触媒の内部に均一に分散供給可能であることを特徴とする前項9〜17のいずれか1に記載の分解装置。
19.前記反応槽の循環工程中において、金属及び/又は無機物分離・回収手段を備えることを特徴とする前項9〜18のいずれか1に記載の分解装置。
20.前記金属及び/又は無機物分離・回収手段が、前記反応槽内の循環工程中において、触媒を廃プラスチック及び/又は有機物並びに触媒の混合物から分離する手段であることを特徴とする前項19に記載の分解装置。
21.触媒を廃プラスチック及び/又は有機物並びに触媒の混合物から分離する手段が、前記金属及び/又は無機物と前記触媒の大きさにより両者を分離する手段であることを特徴とする前項20に記載の分解装置。
22.前記金属及び/又は無機物と前記触媒の大きさにより両者を分離する手段が、前記反応槽の循環工程中に触媒通過可能な篩を設置することを特徴とする前項21に記載の分解装置。
23.さらに、以下のいずれか1以上の手段を有することを特徴とする前項8〜22のいずれか1に記載の分解装置。
(1)アルミナ触媒処理手段
(2)破砕手段
(3)担体ガス供給手段
(4)サイクロン集塵手段
(5)バグフィルター付き集塵手段
(6)熱交換手段
(7)プレヒーター手段
(8)排気ブロア手段
(9)冷却手段
(10)熱回収手段
(11)HCI連続測定手段
(12)CO連続測定手段
(13)警報手段
(14)石灰中和処理手段
24.前項8〜23のいずれか1の分解装置を使用して、活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒の加熱温度を420度〜560度の範囲に設定して廃プラスチック・有機物の分解をすることを特徴とする廃プラスチック・有機物の分解システム。
25.酸化チタンの顆粒体の酸化チタンが、以下の特性を有することを特徴とする前項24に記載の分解システム。
(1)比表面積が35m2/g以上〜50m2/g以下、
(2)顆粒体が3.5mesh(5.60mm)以下
26.前記酸化チタンの顆粒体が、活性成分としての酸化チタンと少なくとも以下のいずれか1から選ばれる混合物であることを特徴とする前項25に記載の分解システム。
(1)酸化アルミニウム
(2)酸化ケイ素」
【発明の効果】
【0013】
本発明の分解方法によれば、高効率で廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック類で構成される医療廃棄物、血液等の生体由来物又は該由来物が付着したプラスチックを処理することができる。さらに、分解工程中にHCI、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチック、有機物又は血液等の生体由来物、フッ化水素を発生するフッ素化合物の処理も容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係る分解装置及び分解システムによれば、触媒が循環されている反応槽の内部に加熱手段による熱せられた空気を供給することにより、触媒を活性温度まで加熱することができる。いったん加熱した後は、廃プラスチック・有機物の分解反応熱を反応槽の触媒の活性最適温度維持に利用し、外部からのエネルギー供給を抑えることができ、熱エネルギーの有効利用が可能である。
廃プラスチック・有機物が反応槽の投入口から投入されると、廃プラスチック・有機物は触媒と共に循環手段によって反応槽を循環する。この工程で、廃プラスチック・有機物と触媒とが攪拌手段によって攪拌されるので、触媒と廃プラスチック・有機物との接触が繰り返され、触媒と廃プラスチック・有機物の密度を均一に保たれ、触媒の作用に基づき効率的分解が促進される。これにより、反応槽の投入口から投入された廃プラスチック・有機物は、約反応槽を1周(1循環)するまでの間に気化される。
または、反応槽内に廃プラスチック・有機物を含むカゴを配置する。そして、触媒が前記反応槽の上流端から下流端へ落下する工程(循環する工程)において、前記廃プラスチック及び/又は有機物は前記触媒と接触し、気化される。この場合には、上記のような廃プラスチック・有機物と触媒との攪拌手段を要しない。
触媒は、反応槽を常に循環している。下記実施例9の態様では、触媒は反応槽内を水平循環している。又は、下記実施例10〜12の態様では、触媒は反応槽の上流端から下流端に達したところで、帰還経路に案内されて反応槽の上流端へ戻ることにより反応槽内を循環している。よって、触媒が反応槽の内部を常に循環することになり、新たな廃プラスチック・有機物は反応槽に投入されると、反応槽の内部を循環する触媒の作用に基づき、効率的に気化させられる。
また、実施例9〜11の態様では、廃プラスチック・有機物が触媒と共に循環手段によって反応槽を循環する工程で、廃プラスチック・有機物の大部分を占める有機物は気化する。しかし、廃プラスチック・有機物に混入した金属・無機物は触媒の中に残る。この金属・無機物は、触媒と共に更に循環される工程で、金属及び/又は無機物分離・回収手段によって分離、回収されるので、この金属・無機物を触媒の中から取出すことができる。
従って、当該分解装置及び分離システムによれば、金属・無機物を反応槽に多量に残留させることがなく、金属・無機物の酸化を抑え、そのリサイクルを実現することができる。しかも、金属及び/又は無機物分離・回収手段が金属を分離・回収するとき、循環手段及び攪拌手段を停止させる必要がないので、廃プラスチック・有機物の処理量を高く維持させることができる。しかも、分離・回収手段が金属・無機物を選別するとき、反応槽を開放する必要がない、又は触媒を分解装置外に取し出して、金属・無機物を分離する必要がない。よって、当該分解装置及び分解システムの熱効率を高く保つことができる。
さらに、本発明の分解装置又は分解システムによれば、酸化触媒処理手段、さらに好適には石灰中和処理手段を備えるので、高効率で廃プラスチック、有機物、特に多種のプラスチック類で構成される医療廃棄物などの産業廃棄物、血液等の生体由来物又は該由来物が付着したプラスチックを処理することができる。さらに、分解工程中にHCI、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチック、有機物又は血液等の生体由来物、フッ化水素を発生するフッ素化合物の処理も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】酸化チタンの摩耗率を測定するための装置を示す図
【図2】塩素固定性能の比較
【図3】石灰材中の水分量の影響
【図4】石灰中和処理工程の加熱温度の検討
【図5】アルミナ触媒槽の模式図
【図6】本発明の廃プラスチック分解方法の流れ
【図7】各加熱温度で廃プラスックの分解の結果
【図8】本発明の分解方法の工程に発生するダイオキシンの検出
【図9】各廃プラスチックの分解による発生したガスを測定した結果
【図10】分解処理後の酸化チタン顆粒体付着菌の検査結果
【図11】圧縮金型上押部
【図12】圧縮金型下押部
【図13】強度分布(エッジ処理なし)
【図14】強度分布(エッジ処理あり)
【図15】本発明の実施例9に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図16】本発明の実施例9に係る有機物処理手段の各態様を示す概略図。
【図17】本発明の実施例10に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図18】本発明の実施例10に係る有機物処理手段の断面図。
【図19】本発明の実施例11に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図20】本発明の実施例12に係る有機物処理手段の要部を示す概略図。
【図21】(a),(b)は、それぞれ本発明の実施形態に係る有機物処理手段に適用した搬送手段、及び攪拌手段の変形例を示す斜視図。
【図22】本発明の実施例に係る廃プラスチック・有機物の分解装置の構成を示すブロック図。
【図23】有機物を分解するための従来の装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の「触媒の加熱温度」は、少なくとも、300度以上かつ600度以下は必要であり、好ましくは、350度以上であり、特に好ましくは、420度〜560度であり、さらに好ましくは450度〜530度の範囲であり、最も好ましくは約480度である。 なお、加熱温度とは、触媒と廃プラスチック及び/又は有機物を反応させるための反応槽内の触媒温度であり、その触媒の設定温度を保つための設定温度を指す。すなわち、設定温度を480度としても、反応槽内の触媒温度の振れ範囲は設定温度からプラス・マイナス約30度となる。
さらに、反応槽内のある箇所では、反応槽の形状や大きささにより、本発明の特に好ましい「触媒の加熱温度」よりも高く又は低くなる場合がある。しかしながら、触媒は反応槽内を循環しているので、触媒の大部分が特に好ましい触媒加熱温度に維持されていれば良い。
下記実施例では、触媒の加熱温度を種々検討した。これにより、廃プラスチック分解における最適な加熱温度を設定した。
【0017】
本発明の触媒は、好適には、活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒である。また、酸化チタンの顆粒体からなる触媒は活性成分としての酸化チタンのみからなる酸化チタンの顆粒体だけでなく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1種と酸化チタンとの混合物(以下、酸化チタン混合物と称する場合がある)の顆粒体も含まれる。既に知られているように、酸化チタンは光触媒としての機能も有しているので、上記いずれかの触媒を用いて、廃プラスチック・有機物を分解するに際して、必要に応じて、光照射特に紫外線の照射の下に、触媒と廃プラスチック・有機物とを加熱攪拌してもよい。しかしながら、多種の廃プラスチックや有機物の単体、またはそれらの固体や液体、又は金属、無機物の含まれた様々な状態の物を分解しようとすると、紫外線の照射下では、実用性としての効果は乏しい。
しかしながら、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法及び/又は分解システムでは、好適な分解装置を用いること、分解条件を最適化すること、好適な触媒を使用することにより、光照射を必要とすることなく高効率で廃プラスチック、有機物の分解を行うことができる。
【0018】
また、酸化チタンの顆粒体の製造方法は、チタン酸化物のゾルを乾燥して酸化チタンゲルとし、この酸化チタンゲルを450〜850℃の範囲の温度で焼成し、この焼成物を破砕し、エッジ処理して得られものである。さらに、酸化チタン混合物の顆粒体は、アルミナゾルとシリカゾルから選ばれる少なくとも1種のゾルとチタン酸化物のゾルとを混合し、乾燥してゲルとし、このゲルを450〜850度の範囲の温度で焼成し、この焼成物を破砕し、エッジ処理して得られるものである。なお、使用する酸化チタンは、好適にはアナターゼ型の酸化チタンである。
【0019】
本発明の廃プラスチックの分解方法又は分解システムに用いる酸化チタンの顆粒体の形状は、3.5mesh(5.60mm)以下、好ましくは10mesh(1.70mm)以下で良い。
より好ましくは、使用前の酸化チタンの顆粒体の形状は、5.60mm〜110μm、3.50mm〜150μmである。
より詳しくは、酸化チタンの顆粒体の形状は、0.1mm以上より好ましくは0.1mm以上〜5.60mm以下の粒径を有する粒子の割合は、90%以上である(参照:図13及び図14)。
なお、従来の廃プラスチックの分解方法又は分解システムにおける、酸化チタンの顆粒体、又は酸化チタン混合物の顆粒体の好ましい形状は、0.5〜1.18mmの粒径を有する粒子の割合が50〜95重量%の範囲にあり、1.18〜1.7mmの粒径を有する粒子の割合が5〜50重量%の範囲にある粒度分布を有すると共に、2.0%以下の摩耗率を有するもの、より好ましくは、0.5〜1.18mmの粒径を有する粒子の割合が60〜90重量%の範囲にあり、1.18〜1.7mmの粒径を有する粒子の割合が10〜40重量%の範囲にある粒度分布を有する共に、1.0%以下の摩耗率を有するものであった。
しかし、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムに用いる酸化チタンの顆粒体の形状は、分解工程における各条件及び/又は分解装置を最適化することにより、上記従来において適当と考えられていた酸化チタンの顆粒体の形状、粒度の範囲に限定されない広範囲の物でも使用可能になった。これにより、従来利用できなかった粒径の酸化チタンの顆粒体を使用することができ、酸化チタンの製造においての工程・製法において簡略化ができる。
しかしながら、当然に上記従来の顆粒体を用いても十分に廃プラスチック・有機物を分解することができる。
【0020】
以上により、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」は、酸化チタンのみの顆粒体か、又は酸化チタン混合物の顆粒体からなり、3.5mesh(5.60mm)以下、好ましくは10mesh(1.70mm)以下の形状を有すると共に、エッジ処理の結果、2.0%以下、より好ましくは1.0%以下の摩耗率を有するものである。従って、本発明によれば、上述したような触媒を用いることによって、長時間にわたって廃プラスチック、有機物を高効率にて分解することができる。
【0021】
上述した形状を有する顆粒体を得る方法は特に限定されるものではない。例えば、前述したように、ゲルを焼成し、得られた焼成物を破砕し、エッジ処理した後、分級(各メッシュサイズを持つ篩を利用)して、上記形状を有する顆粒体を得てもよく、また、エッジ処理した後、分級し、得られた分級物を適宜、混合して、上記形状を有する顆粒体を得てもよい。
【0022】
種々の製法による酸化チタンのなかでも、上述したように、チタン酸化物のゾルを乾燥して酸化チタンゲルとし、この酸化チタンゲルを450〜850℃の範囲の温度で焼成して得られる酸化チタンが廃プラスチックの分解触媒としてすぐれた性能を有するが、破砕物のままでは、容易に摩耗し、微粉を生じて、失われる部分が多くなる。
【0023】
そこで、本発明に従って、そのような酸化チタンゲルの焼成物の破砕物をエッジ処理して、いわば、予め、角を取ることによって、摩耗率を著しく低減し、かくして、廃プラスチック・有機物を高効率で分解することができるのみならず、望ましい形状を保って、その高い触媒効率を長時間にわたって維持することができる。酸化チタン混合物の顆粒体からなる触媒についても同様である。このようなエッジ処理は、例えば、酸化チタンのゲルや、アルミナとシリカから選ばれる少なくとも1種のゲルと酸化チタンのゲルとの混合ゲルを破砕し、これを造粒装置の一つとしてよく知られている転動造粒装置にて処理することによって行うことができる。しかし、転動造粒装置に限定されることはない。
【0024】
なお、本発明の酸化チタンの顆粒体の摩耗率は以下の方法で測定をする。
図1に示す摩耗率測定装置にて測定する。即ち、この摩耗率測定装置は、内径63mm、深さ86mmの試料容器201に攪拌機202を取付けてなり、この攪拌機202は、軸体203の下端部にそれぞれ長さ20mmの楕円形状の攪拌羽根204を3枚、60゜間隔で軸体から直径方向に延びるように取付けたものであって、攪拌羽根はそれぞれ水平に対して45゜の角度を有するように傾斜している。この攪拌羽根は、その最下縁が試料容器の底から8mmの距離に位置する。
【0025】
酸化チタンの顆粒体の摩耗率の測定に際しては、200mLメスシリンダーで酸化チタンの顆粒体150mLを計量し、重量を記録した後、試料容器に全量を投入し、300rpmで30分間上記攪拌機を用いて攪拌した後、試料容器から試料を取り出し、全量を目開き0.5mmの篩に移し、この篩を通過した試料の重量を測定する。ここに、試料の摩耗率Aは、目開き0.5mmの篩を通過した試料の重量をWとし、測定に供した試料の重量をW0とするとき、A=(W/W0)×100(%)である。
【0026】
また、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」は、活性成分としての酸化チタンの比表面積が30m2/g 以上であり、好ましくは33m2/g以上〜65 m2/g以下、より好ましくは35m2/g以上〜50 m2/g以下である。さらには、使用前の酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積は、35m2/g以上〜50 m2/g以下である。これは、比表面積が大きいほど、廃プラスチックとの接触面が大きくなり、分解効率を上げることができる。しかし、比表面積が大きすぎると耐熱性が弱くなり、かつ顆粒体が崩れやすく粉末化しやすくなる。
なお、酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積の測定方法は、自体公知の方法を利用することができるが、本発明ではBET法を使用して測定する。詳しくは、以下の通りである。
【0027】
BET法は,粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。
本発明では、比表面積測定装置は、2300形 自動測定装置(島津製作所(株)製造元)を使用した。
【0028】
また、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」は、活性成分としての酸化チタンの細孔容積が0.05cc/g〜0.70 cc/g、好ましくは0.10cc/g〜0.50 cc/gである。
なお、酸化チタンの顆粒体からなる触媒の細孔容積の測定方法は、自体公知の方法を利用することができるが、本発明では水銀圧入法を使用して測定する。詳しくは、以下の通りである。
【0029】
水銀圧入法は、水銀の表面張力が大きいことを利用して粉体の細孔に水銀を浸入させるために圧力を加え、圧力と圧入された水銀量から細孔容積を求める方法である。
本発明では、Thermo Finnigan 社製のポロシメーター(水銀圧入式 最高圧力:200MPa)を使用した。
【0030】
また、本発明の「酸化チタンの顆粒体からなる触媒」の強度は、図13及び図14に示したような分布を示す。すなわち、50KN又は70KNの強度分布では、1.4mm以上が20%〜30%であり、1.0〜1.4mmは10.0%〜15.0%であり、0.6〜1.0mmは15%〜20%であり、0.3〜0.6mmは18%〜25%であり、0.125〜0.3mmは10%〜18%である。
なお、強度の測定方法は、以下の通りである。
(1)圧縮試験用金型(堺化学工業株式会社製、参照図11、12)に、酸化チタンの顆粒体350gを投入する。なお、投入前によく攪拌する。
(2)圧縮試験用金型を300KN圧縮試験機((株)マルイ製)の中央にセットする。
(3)徐々に荷重をかけ、指定圧力(50KN、70KN)到達した時に圧力を解放する。
(4)圧縮試験用金型を試験機から取り出す。
(5)圧縮試験用金型の顆粒体を袋に移し、均一に混合する。
(6)均一に混合された顆粒体25gを精秤し、篩にかける。
(7)メッシュに残っている顆粒体の重量を測定し、分布を算出する。
【0031】
また、本発明は、酸化チタンの顆粒体の量に対して廃プラスチック及び/又は有機物量が少ないと、廃プラスチック、有機物がすぐに分解されてしまい、分解反応熱を利用して酸化チタンの分解好適温度を維持する熱量が不足し、外部からの加熱が必要となり分解エネルギー効率が悪い。しかし、酸化チタンの顆粒体の量に対して廃プラスチック及び/又は有機物量が多くなると、酸化チタン顆粒体の接触分解能力を超えた処理物は未分解のガスになったり、さらには、酸化チタン表面を有機物が覆い活性を無くしてしまい、分解できなくなる。
そこで酸化チタン顆粒体と処理する廃プラスチック及び/又は有機物の量を好適にすることにより、分解反応熱を利用し酸化チタンの分解好適温度を維持し、外部からのエネルギーを最小にすることができ、かつ分解好適温度を超えた反応熱は反応槽を冷却制御することにより、熱を回収して再利用できる。例えば、蒸気、お湯での熱回収が可能である。よって、回収した熱は、工場施設の給湯関係又は融雪等に利用することができる。しかし、これらの利用に限られるものではない。
【0032】
また、本発明の酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの廃プラスチック処理量は、3.0〜40.0kg、好ましくは6.0kg〜35.0kgである。
上記最適な処理量は、以下実施例4の結果より得られたものである。
【0033】
本発明に係る分解装置及び分解システムについて図面を参照しながら説明する。以下に述べる駆動源、ブロアー、又はスクリュフィーダの他、自明の技術については、その図示又は説明は省略する場合がある。また、当該分解装置の形状、各要素の配置、及び尺度については、説明の便宜を優先して図示しており、実際のものではない。
【0034】
図15、16に示すように、本発明の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例9)は、触媒2を内部に循環する反応槽3と、反応槽3に投入される廃プラスチック・有機物4を触媒2と共に循環する循環手段5と、触媒2及び廃プラスチック・有機物4を攪拌する攪拌手段6と、投入口7、を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、分解反応に必要な熱を供給する加熱手段9、送風チャンバ10、触媒循環をスムーズに行うための仕切り壁11、触媒の流れを変えるためのパドル12、排気口39も好適には備える。さらには、大きな塊の金属・無機物を反応槽から直接回収する手段である金属・無機物取り出し口18を備える。
【0035】
循環手段5は、図16(1)に示すように、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、反応槽に回転軸を挿入して成る2つのスクリュフィーダであり、さらに該2つのスクリュフィーダは反応槽内に実質的に水平姿勢に設置されていることが好ましい。なお、図16(1)中の矢印は、時計回りの触媒循環方向を示しているが、当然に前記2つのスクリュフィーダの回転方向を変えることにより、反時計回りの触媒循環方向とすることもできる。また、回転軸14は、モータ等の駆動源Mにより回転される。
また、図16(1)中では、触媒の流れを変えるための2つのパドル12を反応槽の対角線上に設置したが、触媒の流れを変えることができる手段であれば特にパドルに限定されない。
さらに、図16(2)のように、4つのスクリュフィーダが反応槽内に実質的に水平姿勢に設置されていれば、触媒の循環が行うことができる。
加えて、図16(3)のように、反応槽の形状を楕円形状にすれば、2つのスクリュフィーダのみで触媒循環を達成することもできる。
さらに加えて、図16(5)のように、3つのスクリュフィーダが反応槽内に実質的に水平姿勢に設置されていれば、触媒の循環が行うことができ、さらに、粉砕していない廃プラスチック・有機物(固形廃プラスチック・有機物)を固形廃プラスチック・有機物投入口24から投入して、反応槽3内の固形廃プラスチック・有機物分解部25で分解することができる。
なお、循環手段5をスクリュフィーダとした場合には、螺旋羽根21(参照図21)が循環工程と同時に触媒2と廃プラスチック・有機物4の攪拌も行うので、攪拌手段6ともなる。すなわち、スクリュフィーダは循環手段5と攪拌手段6の両方を提供する。さらに、螺旋羽根21には、好適には補助羽根を設置されている。
【0036】
また、金属及び/又は無機物分離・回収手段15を上記分解手段に備えることができる。該分離・回収手段15は、図16(1)に示すように、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、反応槽3の循環工程中のいずれの位置にでも嵌めても良い。しかし、好適には循環工程の終了付近に嵌める。そして、金網に止められた金属・無機物を回収できるポケット17を該金網16と接続する。ここで、該金網16はポケット17よりも高い位置に設定すること(金網からポケットに傾斜をつけること)により金網に止められた金属・無機物はポケット17に自重で滑り落ちていく、又は該金網16をモータ等により振動させることにより金網に止められた金属・無機物をポケット17に落とすことでも、金属・無機物を回収することができる。さらに、ポケット17は2段シャッターになっており、分解反応中に随時金属・無機物を回収することができる。しかし、金属・無機物がある程度溜まったところで、ポケット17から金属・無機物を回収すれば良い。
よって、本発明では、金属及び/又は無機物分離・回収手段15が金属・無機物を該ポケット17から分離・回収するとき、循環手段5及び/又は攪拌手段6を停止させる必要がないので、廃プラスチック・有機物の処理量を高く維持させることができる。しかも、分離・回収手段が金属・無機物を選別するとき、反応槽3を開放する必要がないので、当該分解装置及び分解システムの熱効率を高く保つことができる。しかし、当然に反応槽3を一端開放した後に、金属及び/又は無機物分離・回収を行うこともできる。
加えて、廃プラスチック・有機物4に高価な金属が混在している場合において、該金属を効率的に回収する方法として、金属・無機物取り出し口18を使用する。例えば、予め高価な金属が混在している廃プラスチック・有機物4を触媒循環の邪魔にならない形状(例:立方体、多面体)の金網(触媒2は通過可能な程度の金網)に入れた状態で投入口7から投入する、該球体形状の金網は反応槽を循環する工程で該金網中の廃プラスチック・有機物は気化されるが、気化されない金属は金網中に残存する。そして、該形状の金網は、金属・無機物取り出し口18から直接回収する。これにより、該球体形状の金網中に残存する金属を高効率的に回収することができる。
さらに、上記の場合と異なり、回収する金属の径が触媒2の径より小さい場合は、金属及び/又は無機物分離・回収手段15として、実施例9では図16(4)の凹部13の一番低い位置、以下実施例10、11では帰還経路20の一番低い位置、に金網を設置するのが好ましい。金網の下に金属収集容器を載置すれば、自動的に廃プラスチック・有機物4から分離された金属を収集することができる。
以上により、本発明の分解装置は、優れた金属及び/又は無機物分離・回収方法も提供する。
【0037】
本発明の上記実施例の一態様では、図16(4)に示すように、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を分解手段1の上面から見て右手前側に備える(なお、図16(4)では金網16を図示していない)。そして、該金網16の周辺付近は凹部13となっている。該凹部13は投入口7と連結している。また、該凹部13には、投入口7から投入される廃プラスチック・有機物4を凹部13から分解手段1の上面から見て左手前側に循環させるための循環手段5(D)を備える。なお、パドル12は、分解手段1の上面から見て左手前側、右奥側に設置している。当然に、各配置は図16(4)の記載に限定されない。
上記実施態様では、該金網16の網目口径に応じて篩い操作が行われ、該金網16の上部に残置された金属・無機物はポケット17に回収され、一方、触媒2は篩い操作で凹部下部に篩い落とされ、循環手段5(D)により、新たに投入された廃プラスチック・有機物4と共に反応槽3内を循環する。
【0038】
本発明における循環手段5(D)の原動力は、スクリュフィーダ、コンベヤ特にパケットコンベヤ、パドル、ピストン等を用いることができるが、特に限定されない。
ここで、投入口7と金属及び/又は無機物分離・回収手段15の位置は、お互いに周辺にあっても良いし、所望により対極に設置してもよい。好適な態様の一つでは、お互いに周辺に設置する。これは、投入された直後の廃プラスチック・有機物を分解するには、分解途中の廃プラスチック・有機物が混入していない触媒2が好ましいからである。本発明の廃プラスチック・有機物の分解装置では、循環した後の触媒2(分解途中の廃プラスチック・有機物が混入していない触媒)を新たに投入された廃プラスチック・有機物と反応させることができる装置である。これにより、従来の分解装置とは異なり、高効率で廃プラスチック・有機物を分解することができる。
【0039】
また、本発明の分解手段1では、好適には廃プラスチック・有機物4を反応槽3の上部より触媒2の表面に投入するのではなく、図15に示すように投入口7より、循環している触媒2の内部に投入することが好ましい。本発明者らは、廃プラスチック・有機物4を触媒2の内部に直接投入することにより、高効率分解効果を有することを発見している。しかし、本発明の分解手段1では、廃プラスチック・有機物4を反応槽3の上部である投入口8より、触媒2の表面に投入しても分解することができる。
さらに、本発明の分解手段1では、上記いずれの投入方法を実施可能にするために2以上の投入口を有しても良い。加えて、投入口7、8は廃プラスチック・有機物4の投入だけに利用されるのではなく、触媒2の投入口としても利用することもできる。
なお、以下の実施例10、11においても投入口7、8は上記と同様である。
【0040】
図17に示すように、本発明の別の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例10)は、触媒2を内部に蓄積する反応槽3と、反応槽3内に投入される廃プラスチック・有機物4を触媒2と共に循環する循環手段5(A)(B)(C)と、触媒2及び廃プラスチック・有機物4を攪拌する攪拌手段6と、投入口7、帰還経路20を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、送風チャンバ10、分解反応に必要な熱を供給するための加熱手段9、排気口39も好適には備える。
【0041】
反応槽3の内部は、図17に示すように、第1段槽31と、第1段槽31よりも高く配置された第2段槽32とに区分されている。第1段槽31は、その長手方向の一方(図17の左側)を上流端33とし、他方(図17の右側)を送出端34とした第1の通気性底材35を、反応槽3の内部に固定したものである。第2段槽32は、その長手方向の一方を下流端36とし、他方を送入端37とした第2の通気性底材38を、反応槽3の内部に固定したものである。
【0042】
循環手段5(A)は、図17に示すように、螺旋羽根21を有する回転軸14を、第1段槽31の内側にその長手方向に沿う水平姿勢で挿入したスクリュフィーダである。循環手段5(B)は、螺旋羽根21を有する回転軸14の下端部を、第1段槽31の送出端34に近接し、且つ回転軸14の上端部を第2段槽32の送入端37に近接する起立姿勢としたスクリュフィーダである。循環手段5(C)は、第2段槽32の内側に設けられている点を除いて、上記の循環手段5(A)と同様である。搬送手段5(A)、(B)、(C)のそれぞれの回転軸14は、モータ等の駆動源Mにより回転される。
【0043】
図18に示すように、第1,第2の通気性底材35,38は、それぞれ上向きに開いた円弧状の断面形状を有する金属メッシュである。金属メッシュは、触媒2を受止めることができ、且つ気体の通過を許容する材料である。しかし、通気性底材は金属メッシュに限られない。第1,第2の通気性底材35,38の間は、仕切壁30で遮られているが、これらの上方は互いに開放して反応槽3の内部で通じている。更に、第1,第2の通気性底材35,38のそれぞれの下方には、送風チャンバ10が区画されている。
【0044】
加えて、図17に示すように、第1段槽よりも第2段槽を高く配置したことで、触媒を第2段槽の下流端から第1段槽の上流端まで戻すのに、例えばコンベヤ又はスクリュフィーダ等を用いて強制的に行わなくて良い。なお、帰還経路20は、第1段槽31の上流端33と第2段槽32の下流端36とを接続するシュートである。
【0045】
さらに、図18は、螺旋羽根21の図示を省略し、循環手段5のそれぞれの回転軸14に攪拌手段として設けられた翼列22を表している。翼列22は3枚の羽根81を120度のピッチで回転軸14に固定したものである。このように循環手段5が廃プラスチック・有機物4を触媒2と共に循環する(循環手段)のと同時に、触媒2と廃プラスチック・有機物4とを良好に攪拌する(攪拌手段)ことができる。これにより、触媒2が粉状であるか、又は粒状であるかを問わず、触媒2及び廃プラスチック・有機物4が螺旋羽根21の間隙で塊となるのを阻止することができる。さらに、好適には螺旋羽根21に補助羽根が設置されている。
【0046】
また、実施例9の廃プラスチック・有機物処理手段と同様に、金属及び/又は無機物分離・回収手段15としての触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、帰還経路20に嵌めても良い。これにより、実施例9と同様に金属及び/又は無機物を分離・回収することができる。
【0047】
また、図19に示すようにさらなる別の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例11)は、長手方向の一方を上流端33とし他方を下流端36とした長尺な反応槽3の内部に、循環手段5、及び図に表れていない攪拌手段6、投入口8、帰還経路20を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、分解反応に必要な熱を供給する加熱手段9、送風チャンバ10、排気口39も好適には備える。
そして、上流端33と下流端36との間に触媒2を循環する。反応槽3の投入口8から上流端33付近に投入される廃プラスチック・有機物4を、触媒2と共に循環手段5によって反応槽3の上流端33から下流端36へ向けて循環すれば、この工程で廃プラスチック・有機物4を気化させることができる。同図には反応槽3が水平姿勢で表れているが、上流端33よりも下流端36が高くなるように、反応槽3を傾斜させても良い。この場合、循環手段5により下流端36まで搬送された触媒2を、その自重で帰還経路20を滑落させて、上流端33まで戻すことができる。
【0048】
また、触媒2は、循環手段5によって上流端33から下流端36へ向けて循環されるので、下流端36に達した触媒は、帰還経路20に案内されて上流端33に戻る。これにより、触媒を反応槽の内部で循環できるので、新たに反応槽に投入される廃プラスチック・有機物を、同じ触媒の作用に基づき更に気化させることができる。
なお、図19では、下流端36に達した触媒は、スクリュフィーダにより上流端33に戻るが、ハドル、パケットコンベヤ、ピストン等も利用することができる。
【0049】
また、図20に示すようにさらなる別の廃プラスチック・有機物処理手段1(実施例12)は、図上面を上流端33とし図下面を下流端36とする反応槽3、廃プラスチック及び/又は有機物を配置可能なカゴ40、該カゴを反応槽3の内部に投入するための投入口41、帰還経路20を少なくとも備える。さらに、担体ガス(空気)供給手段としての送風ブロアー19、分解反応に必要な熱を供給する加熱手段9、落下する触媒量を制御する網42、排気口39も好適には備える。
ここで、上流端33、下流端36の周辺には、触媒を均一にするための攪拌装置を備えても良い。さらに、図20では、担体ガスは直接反応槽内部に供給されるが、上記実施例9〜11のように送風チャンバを介して反応槽内部に供給しても良い。加えて、排気口39は、触媒を反応槽に投入するための投入口の役割もかねる。しかし、別途、触媒投入口を設けても良い。
廃プラスチック・有機物を含むカゴ40を、投入口41を介して反応槽3内に配置する。次に、触媒が前記反応槽3の上流端から下流端へ落下する工程において、前記廃プラスチック及び/又は有機物は前記触媒と接触し、気化される。
【0050】
また、触媒2は、上流端33から下流端36へ落下(循環)されるので、下流端36に達した触媒は、帰還経路20に案内されて上流端33に戻る。これにより、触媒2を反応槽3の内部で循環できる。なお、下流端36に達した触媒2は、帰還経路20に案内されて上流端33に戻る原動力は、駆動源により回転する回転軸に螺旋羽根を設け、前記帰還経路に前記回転軸を挿入して成るスクリュフィーダである。しかし、特には限定されず、他の原動力としては、パケットコンベアー等が挙げられる。
ここで、廃プラスチック及び/又は有機物を配置可能なカゴ40とは、好適には金網であり、流下してくる触媒2は通過可能であるが、投入した廃プラスチック・有機物は通過不可能であり、さらには廃プラスックに混在し、またはその少なくとも一部に蒸着しあるいは貼着等された金属・無機物は通過不能とする網である。さらに、触媒2と廃プラスチック・有機物を効率良く接触させるために、カゴ40は反応槽3内で回転及び/又は振動させても良い。
しかしながら、微小な廃プラスチック・有機物がカゴ40を通過して、下流端36へ落下しても、下流端36に達した触媒2の作用が廃プラスチック・有機物を気化させる。
ここで、落下する触媒量を制御する網42は、好適には金網であり、触媒2を上流端から下流端へ均一に流下させる。好適には、網42は2枚以上の金網で構成されており、複数の金網をスライドさせることで、触媒流下量を制御することができる。
【0051】
図20に示すような実施例12の廃プラスチック・有機物処理手段1は、上記実施例9〜11の廃プラスチック・有機物処理手段1とは異なり、廃プラスチック・有機物と触媒との攪拌手段を要しない。これにより、反応槽3の大きさは、従来の分解装置の反応槽と比較して、小さくすることが可能である。さらに、廃プラスチック・有機物を破砕することなく、投入口41を介して反応槽3のカゴ40内に配置できる。これにより、廃プラスチック・有機物を破砕するための破砕装置を必要としない。
加えて、図20に記載の廃プラスチック・有機物処理手段1を、実施例9(参照:図16(1)〜(5))のように水平方向にすることもできる。この場合には、触媒2を循環させるために、循環手段であるスクリュフィーダを利用する。さらに、廃プラスチック・有機物4を含むカゴ40を回転させながら、触媒2を反応槽3を循環させても良い。これにより、廃プラスチック・有機物4と触媒2の接触効率を高めることができるので、効率的な廃プラスチック・有機物4の分解を行なうこともできる。
【0052】
上記いずれの実施例の廃プラスチック・有機物処理手段であってもスクリュフィーダには次の利点がある。循環手段5と攪拌手段6を同時に行うことができる。また、触媒2が粉状であるか、又は粒状であるかを問わず、スクリュフィーダは触媒2を滞留させることなく確実に循環させることができる。また、反応槽3に蓄積される触媒2の容積を増大すると、これを回転させるのに過大なトルクを要するのに対して、スクリュフィーダは、従来例の攪拌羽根と比較して、回転軸14を回転させるトルクの増大量を少なくすることができる。従って、循環手段5及び/又は攪拌手段6としてスクリュフィーダを適用することは、廃プラスチック・有機物処理手段1の反応槽3の容量を増加させるのに有利である。
その他の実施態様として、自体公知のロータリンキルン、反応槽内に複数のハドルを設置することにより、触媒循環型廃プラスチック・有機物の分解装置も本発明に含まれる。
【0053】
上記いずれかの実施例の加熱手段9は、送風ブロアー19等の担体ガス供給手段により供給された空気等を加熱するものである。すなわち、加熱手段9は送風ブロアー等で供給された空気が送風チャンバ10に送りこまれる工程において、該空気を加熱することにより、分解反応に必要な触媒活性温度まで触媒を熱する働きを行う。なお、熱源は電気が好ましいが、しかし特には限定されない。図17を使用して説明すると、この熱風は、送風チャンバ10へ送り込まれ、第1の通気性底材35から反応槽3の内部へと上昇する。しかし、加熱手段は、分解反応の最初に触媒2を触媒活性温度までに上げるのに必要であるが、分解反応が進むと廃プラスチック・有機物の分解熱により触媒活性温度が維持されるので、その後、加熱手段は特に必要がない。しかし、発熱量の少ない廃プラスチック・有機物4を分解する場合には、送風ブロアー19から供給される空気を必要に応じて加熱手段9により加熱することにより反応槽3に熱を供給する。
【0054】
また、上記いずれの送風チャンバ10は、いわゆる担体ガス供給槽と反応初期に必要な熱を供給する槽の2つの役割を有する。また、送風チャンバ10の存在により、第1の通気性底材35に複数の穴を有することにより、送風ブロアー19等から供給された担体がスを触媒内部の全体に均一に担体ガスを供給分散することができる。
【0055】
本発明の廃プラスチック・有機物処理手段1では、断続的に区切られていない螺旋羽根が好ましく、さらに好ましくは螺旋羽根の間に小さな補助羽根を設けても良い。最も好ましくは螺旋羽根に小さな補助羽根85を設置する。補助羽根85の存在により、触媒2と廃プラスチック・有機物4の接触効率をさらに向上させることができる。
この他、実施例のいずれかの攪拌手段は、断続的に区切られた螺旋羽根であっても良い。即ち、図21(a)に示すように、螺旋羽根の適所に複数の切欠部82を形成すれば、粉粒状触媒2及び廃プラスチック・有機物4が循環される途中で、その一部が切欠部82を通り抜ける。これにより、粉粒状触媒2及び廃プラスチック・有機物4の攪拌が起こるので、循環手段5と攪拌手段6、の役割も果たすことになる。或いは、同図(b)に示すように、攪拌手段6は、回転軸14を中心に回転しながら粉粒状触媒2及び廃プラスチック・有機物4に推進力を与える複数の軸流羽根83であっても良い。この場合、螺旋羽根を省略しても良い。また、回転軸14の適所に突片84を設けても良い。
【0056】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物の分解装置では、上記廃プラスチック・有機物処理手段に加え酸化触媒処理手段を含み、さらに好ましくは石灰中和処理手段を含む。
【0057】
また、本発明の分解装置では、以下のいずれか1以上の手段を有することができる(参照図22)。
【0058】
(1)アルミナ触媒処理手段
本発明の廃プラスチック分解方法又は分解装置には、酸化触媒処理工程前に「アルミナ触媒処理手段」を導入することが好ましい。アルミナ触媒処理手段とは、酸化触媒にSi, Mg, Cr, Pb, Fe 等、又はダスト(塵)等が付着するのを防止することである。なお、アルミナ触媒は、酸化触媒槽の前段に設置するのが好ましい。別途アルミナ触媒槽を設けても良い。なお、アルミナ触媒の加熱温度は、好適は350度以上で行うのが良い。
【0059】
(2)破砕手段
本発明の破砕手段は、廃プラスチック・有機物処理手段の反応槽に廃プラスチック・有機物を好適な大きさ(片)に破砕するための手段(装置)である。よって、廃プラスチック・有機物を破砕できるような手段であれば特に限定されない。しかし、好適は、段ボール箱をそのまま破砕できる容量、特に医療分野の感染性処理物の処理を行う場合には2段シャッター付き、殺菌灯付きが好ましい。
【0060】
(3)担体ガス供給手段
反応槽に供給する担体ガスとしては、酸素が好ましいが、通常、空気が用いられる。また、必要に応じて不活性ガスを利用しても良い。なお、担体ガスの供給方法は、送風ブロアー19等を使用し、好ましくは酸化チタンの顆粒体の内部全体に均一に分散供給する。供給量は分解有機物の酸化分解に必要な酸素量を含む常温空気で、理論酸素必要量の1.3倍〜4.0倍が好ましい。さらに、分解効率の点から、1.6倍〜3.0倍が良い。なお、ブロアー等を用いることができるが、特に限定されない。
例えば、反応槽3の底部に複数の穴を設け、そこから酸素等を供給する方法などである。なお、本発明の廃プラスチック・有機物処理手段では、反応槽の底部より複数の穴より担体ガス好ましくは空気を循環している触媒の内部に直接供給することにより、従来の反応槽の上部より担体がスを供給する方法よりも、格段に分解効率が向上する。
【0061】
集塵手段
本発明の集塵手段は、廃プラスチック・有機物処理手段の反応槽から排出される飛散した金属・無機物及び/又は触媒を回収する。また、回収した触媒を再利用することもできる。また、好適には、図22にも示したように、集塵手段は、石灰中和手段を挟んで2つあるのが好ましい。さらに、第1集塵手段はサイクロン集塵手段(装置)、第2集塵手段はバグフィルター付き集塵手段(装置)が好ましい。
(4)サイクロン集塵手段(第1集塵手段)
第1集塵手段で回収した触媒は、サイクロンで集め、反応槽に連結している循環経路より反応槽にもどすことにより、触媒の循環に利用することができる。なお、発明者らは、実験結果により、第1集塵手段で約95%〜約99%の触媒が回収できることを確認している。
(5)バグフィルター付き集塵手段(第2集塵手段)
第2集塵手段で回収した触媒は、微粉末であれば、微粉末触媒を固めることにより、望みの粒径にした後に、反応槽にもどすこともできる。
【0062】
(6)熱交換手段
二酸化炭素と微量の水分を含んだ熱風から熱交換を通して熱を回収する手段である。また、得られた熱源は、加熱手段に利用することができるが、特に限定されない。例えば、供給する空気を加熱する、プレヒーターに利用したり、工場施設の給湯関係又は融雪等に利用することができる。
【0063】
(7)プレヒーター手段
酸化触媒処理の前にはヒーター手段によりプレヒートー(前保温)を行うことが好ましい。濃度の低いガスが流れてきたり、分解槽での発熱が低い場合に酸化触媒を確実に反応させるのに好適である。
【0064】
(8)排気ブロアー手段
廃プラスチック・有機物が分解されて生成した安全な炭酸ガス、微量の水分を含む空気を本発明の廃プラスック・有機物の分解装置外に排出する手段である。
【0065】
(9)冷却手段
反応槽内が触媒の最適活性温度領域を超えた場合に、反応槽の触媒を冷却する手段である。冷却する方法は、好適には冷却水を反応槽の外周又は内周に流すことにより、反応槽からの熱を回収する(好適は潜熱を利用する、又は冷却水を温める)方法であるが、特に限定されず、羽根等に冷却水を流すこともできる。
【0066】
(10)熱回収手段
上記冷却水から得た熱を保存又は利用する手段である。回収した熱は、工場施設の給湯関係又は融雪等に利用することができる。しかし、これらの利用に限られるものではない。
【0067】
(11)HCl連続測定手段
HCIが石灰中和処理手段で吸収除去されているかを確認するための手段である。すなわち、一定以上のHCI濃度を本発明の廃プラスック・有機物の分解装置外に排出するのを防ぐ手段である。
【0068】
(12)CO連続測定手段
COが酸化触媒処理手段で二酸化炭素に変換されているかを確認するための手段である。すなわち、一定以上のCO濃度を本発明の廃プラスック・有機物の分解装置外に排出するのを防ぐ手段である。
【0069】
(13)警報手段
本発明の分解装置は、法規制基準内で安全な運転を行っているが、安全域をわずかに超えた場合でも運転が止まる。すなわち、上記HCl連続測定手段及び/又はCO連続測定手段における測定中にわずかに基準値以上のCO、HCI濃度が検出された場合に異常を知らせる手段である。好適には、異常を検出した場合には、安全手段(装置)を介して外部に有害ガスを排出させない。
【0070】
本発明の廃プラスチック・有機物の分解システム
本発明の廃プラスチック・有機物の分解システムは、上記いずかに記載の分解装置を使用して、さらに好適な触媒の使用及び/又は好適な分解条件を使用して廃プラスチック・有機物の分解を行うことを意味する。
また、本発明の廃プラスック・有機物の分解システムでは、図23に記載のバッチ式の反応槽を持つ従来の有機物処理手段を含む分解装置を使用して、さらに好適な触媒の使用及び好適な分解条件を使用して廃プラスチック・有機物の分解を行うこともできる(図6参照)。
【0071】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムには、例えば、処理する廃プラスチックがポリ塩化ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)等、様々な医療廃棄物プラスチックの場合には、処理工程中に塩化水素、硫黄化合物、フッ化水素、シアンガス、窒素含有化合物が生成する。塩化水素等をそのまま大気放出させることができない。よって「石灰中和処理工程」又は「石灰中和処理手段」を導入する。
石灰中和処理工程とは、分解処理工程中に発生する塩化水素、硫黄化合物、フッ化水素、シアンガス、窒素含有化合物等を大気中に放出させないために吸着除去することを意味する。石灰中和処理手段では、これらを大気中に放出させないために吸着除去する手段(装置)を意味する。
詳しくは、生石灰、消石灰又はその混合物を主成分とする石灰材であって、それを多孔質で、サイズが2mm以上に成形した塩化水素吸収材ペレットを除去容器に充填し、その除去容器に前記分解された廃プラスチック由来の塩化水素等含有気体を通過させ、塩化水素等を反応吸収させることである。
【0072】
本発明でいう石灰材は、生石灰でも、消石灰でも、その混合物でもいい。この石灰材を多孔質のペレット状にし、2mm以上の大きさにしたものを用いるのがよい。この成形方法は自由であるが、水で練って乾燥させるだけでもよく、焼成してもよい。例えば、石灰材の粉末を水と混合し、成形できる硬さにし、押出機から押出し、それをカットしてペレット状にする等である。
ペレットの形状は自由である。球状、円盤状、円柱状その他どのような形状でもよい。サイズは、2mm以上である。これ以下になると、粉体に近くなり、処理風量の圧力損失による装置の問題、飛散、同伴の問題やフィルターの問題が生じる。大きいものは原則として使用できるが、大きくなればなるほど効率は悪くなる。現実的には、10mm以下が好適である。発明者の実験では、3mm〜7mm程度が好適であった。
【0073】
また、本発明の廃プラスチックの分解方法の「石灰中和処理工程」に用いる石灰材は、好適には消石灰より生石灰が良い。これらの知見は、本発明の発明者らの各石灰材(ポーラス生石灰、消石灰)を用いた塩素固定率の測定結果によるものである(参照:図2)。
【0074】
さらに、石灰材中の水分量(ppm)はなるべく低下させたほうが良い。好ましくは、20%以下、より好ましくは10%以下である。これらの知見は、本発明の発明者らの各水分量の石灰材(消石灰、生石灰)の測定結果によるものである(参照:図3)。
【0075】
さらに、石灰中和処理工程の加熱温度は、好ましくは150度〜500度、より好ましくは200度〜400度、最も好ましくは250度〜350度である。これらの知見は、理論塩素固定濃度の計算によるものである(参照:図4)。従来、塩化水素等を吸着処理するには、常温でかつ消石灰を使用していた。焼却炉などでは、燃焼後の排ガスの温度を冷却して下げてから塩化水素等を吸着処理していた。また消石灰の粉末を使用するため、扱いにくく装置は大面積の切り替え式バグフィルターなど大掛かりなものであった。しかしながら、本発明の石灰材は分解反応後の排ガス温度をそのままで吸着除去処理できるものとした。
【0076】
石灰中和処理工程は、好適には石灰中和処理装置(手段)を使用する。石灰中和処理装置では、充填槽を利用する。充填槽上部からペレットが下部に向かい落下し、処理の必要なガスは下部から上部へ、石灰ペレットと接触しながら通過するものである。上部にはペレットのストック部、下部には使用済みのペレットの排出部が設けられている。もちろん反応容器の層とはシャッター、ロータリーバルブなどで遮断されている。処理濃度、処理速度により排出量を制御して使用する。装置には潮解現象の防止のためヒーターが設けられている。本分解方法では、高温で処理するため潮解現象は起こさないが、加熱しない状態時のために好適にはヒーター工程を設ける。
【0077】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物分解方法には、「酸化触媒処理工程」、本発明の廃プラスチック・有機物分解システムには、「酸化触媒処理手段」を導入しても良い。
酸化触媒処理工程とは、上記の加熱された酸化チタンの顆粒体触媒によって分解された廃プラスチックや有機物でも、すべてが完全に分解されるとは限らない。未反応物や中間生成物がそのまま反応容器を出ていく可能性がある。このため、本発明では、その後の工程として酸化触媒処理によってさらに酸化又は分解することが好ましい。なお、酸化触媒処理工程は、好ましくは石灰中和処理工程の後に行う。
【0078】
酸化触媒とは、一般的に無触媒時より低い温度で且つ短時間で酸化、分解反応を起こすものである。このような酸化触媒は従来から種々のものが知られ、市販もされている。一般的に反応温度は、200〜500度で使用されるが、本発明では、300度以上が良いが、好ましくは350度以上である。それは雑多な廃プラスチック、有機物などを分解した場合、単一の未分解ガスが発生するとは限らないため、混合した未分解ガスを完全分解するためには350度以上が好ましい。本発明では効率、装置面の有効性からハニカムタイプが好ましい。
なお、白金触媒は、一酸化炭素を二酸化炭素にする反応、低級炭化水素、VOC(揮発性有機化合物)、分解には好適である。また、パラジウム触媒は、メタンガス分解には好適である。本発明ではパラジウムと白金触媒を用いるのが好ましい。処理順序は、好ましくはパラジウム触媒、白金触媒の順である。
この触媒処理の前にはプレヒーター処理(前保温)を行うことが好ましい。濃度の低いガスが流れてきたり、分解槽での発熱が低い場合酸化触媒を確実に処理するためである。
【0079】
この酸化触媒は、一酸化炭素や炭化水素のような未燃物の酸化に対して大きな効果を有するもので、酸素と所定の温度があれば直ちに、且つほとんどが酸化分解される。一酸化炭素ならば二酸化炭素に、炭化水素ならば二酸化炭素と水になる。
【0080】
さらに、本発明の廃プラスチック分解方法には、酸化触媒処理工程前に「アルミナ触媒処理工程」を導入することが好ましい。アルミナ触媒処理工程とは、酸化触媒にSi, Mg, Cr, Pb, Fe 等、又はダスト(塵)等が付着するのを防止することである。なお、アルミナ触媒は、酸化触媒槽の前段に設置するのが好ましい。別途アルミナ触媒槽を設けても良い(参照:図5)。なお、アルミナ触媒の加熱温度は、好適は350度以上で行うのが良い。
【0081】
このように本発明は酸化チタンによる酸化・分解と、石灰中和処理による塩化水素、フッ化水素、硫黄化合物、窒素含有化合物等の除去、アルミナ触媒処理によるダスト等の除去、及び/又は酸化触媒によるさらなる酸化・分解とを組み合わせることができる。
【0082】
なお、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムの流れを図6に示した。図6に記載してある通りに、本発明の分解方法では、上記記載の工程に加えて、空気供給工程、冷却水を用いた冷却工程、サイクロン分離機を用いた飛散酸化チタン回収再使用工程、熱交換器を用いた熱交換工程、微粉末を取り除く集塵工程、排気ブロアーによる排気工程、塩化水素検知器を用いた排出ガス安全制御工程、CO検出器を用いた排出ガス安全制御工程を導入することができる。
当然に、上記各工程を削除又は修正をすることができる。
【0083】
さらに、本発明の廃プラスチック・有機物の分解方法又は分解システムには、「金属及び/又は無機物分離・回収工程」を導入しても良い。上記加熱された触媒によって酸化又は分解された廃プラスチック・分解物には、ステンレスや、鉄、アルミニウムや銅などの金属、無機物が混在していたり、表面に金属が蒸着、貼着等している場合がある。このような金属は、廃プラスチック・有機物とは異なり分解されず、触媒に混入して反応容器に蓄積する。よって、金属及び/又は分離・回収工程では、上記金属を触媒から分離し回収するものである。廃棄物に限らずプラスチック、または有機物に金属、無機物が一体になっている物は多い。本発明はそうしたプラスチック、または有機物と金属、無機物が一体になっている物からプラスチック、または有機物だけを分解し、金属、無機物を取出すことが出来る。
【0084】
上記金属及び/又は無機物分離・回収方法としては、例えば、分解反応容器中に顆粒酸化チタン触媒の最大径が通過することができる程度の網目を有する篩を設ける。そして、金網に止められた金属、無機物のみを取出せば、金属、無機物を反応容器に極力残留させることがない。また、金属、無機物と触媒の比重差により両者を分離してもよい。触媒よりも比重の小さなアルミニウム薄膜のような金属は、酸化チタン触媒が攪拌される工程中に触媒の中からアルミニウムの薄膜等が浮上するので、これを選択的に回収できる。または、回収する金属が磁性体である場合は、金属と触媒を磁気又は磁界を利用して分離してもよい。金属と無機の分離については上記の方法に限っているものではない。
【0085】
酸化チタンの顆粒体からなる触媒と廃プラスチックの攪拌は、反応容器の容積量、攪拌羽根の形状及び攪拌方法により差は有るが、回転数は5rpm〜70rpm、好ましくは10rpm〜40rpmである。なお、反応容器がバッチ方式又は循環方式でも同様な回転数が好ましい。
これは、回転数が速すぎると、酸化チタンの磨耗が大きい、しかし回転数を遅くすると、酸化チタンと廃プラスチック及び/又は有機物の接触効率が落ちることを考慮した値である。
言い換えると、100kgのチタン重量に対して、インバーターを30Hz〜70Hzに調整しながら0.75kw〜1.5kwの負荷を加えるのが好ましい。
【0086】
反応容器(反応槽)に供給する担体ガスとしては、酸素が好ましいが、通常、空気が用いられる。また、必要に応じて不活性ガスを利用しても良い。なお、担体ガスの供給方法は、好ましくは酸化チタンの顆粒体の内部全体に均一に分散供給する。供給量は分解有機物の酸化分解に必要な酸素量を含む常温空気で、理論酸素必要量の1.3倍〜4.0倍が好ましい。さらに、分解効率の点から、1.6倍〜3.0倍が良い。例えば、反応容器の底部に無数の小さな穴を設け、そこから酸素等を供給する方法などである。
【0087】
本発明の分解方法、分解装置又は分解システムに適用することができる廃プラスチック、有機物は、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等の、汎用の熱可塑性プラスチックのほか、熱硬化性プラスチックも本発明の方法によって分解し、ガス化することができる。また、廃プラスチック、有機物は、破砕して、数mm3角程度の大きさにしたものが分解効率から好ましいが、破砕することなく分解処理もすることができる。
なお、本発明の廃プラスチック、有機物分解方法で分解できる対象は、プラスチック例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)、また、オムツ、人工透析装置、抗がん剤、遺伝子研究関係処理物、情報端末物、機密情報物(例えば、CD-R等)、自動車・家電廃プラ、有価物金属回収、有機物と金属無機物の分離等が挙げられるが、有機物を含め、特に限定はされない。さらに、医療廃棄物の場合では、用途に応じてステンレス、アルミニウムなどの金属が混在していたり、表面に金属が蒸着、貼着等されていたりする。また、廃プラスチックとは、使用済みプラスチックのみを対象とするのではなく、未使用であるが不要なプラスチック、有機物も対象とする。
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0089】
加熱温度の検討
酸化チタンの顆粒体からなる触媒と廃プラスチックの最適加熱温度を検討した。各条件は以下の通りである。
1.実験装置(反応容器): 攪拌型分解実験機(2200mL)
2.導入エアー流量:50L/min
3.反応容器内温度:300度、320度、350度、380度、400度、420度、450度、480度、500度、530度、550度、560度、570度、580度、600度
4.使用した触媒:酸化チタン触媒(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108) 700g
5.廃プラスチック:ポリエチレンペレット 1g/1回投入
なお、ガス濃度(NOx、CO、CO2、O2、CH4)の測定は、ガス濃度連続測定器PG-250(製造元:堀場製作所)を用いた。
【0090】
上記各温度で廃プラスックを分解処理した。実験結果は図7である。
加熱温度300度では、廃プラスチックを分解することができなかった。これは、加熱温度が300度以下であれば、酸化チタンの活性が無く分解性能が機能しないためであり、単に300度の温度により廃プラスチックが溶解し、大半は酸化チタン表面に付着・蓄積した。なお、300度の加熱を続けると、廃プラスック由来の有機物が酸化チタンの表面を覆い、酸化チタンの触媒機能活性が失われた。
加熱温度350度ではほんの少しは反応しているが結果は300度と同じであった。
加熱温度600度では、廃プラスチックを反応容器に投入した同時に燃焼した。すなわち、加熱温度600度以上では、廃プラスチックが投入された瞬間に発火した。これは、酸化チタンによる触媒作用による廃プラスチックの分解ではない、また燃焼による大量の未分解ガスが発生した。
加熱温度570度と580度では、廃プラスックが投入されて5秒〜15秒で発火し燃えた。
加熱温度350度では1回の分解に35分から45分を要した。
加熱温度380度では1回の分解に15分から25分を要した。
加熱温度400度では1回の分解に6分から8分を要した。
加熱温度420度では1回の分解に3分から5分を要した。
加熱温度450度では1回の分解に1分30秒から2分を要した。
加熱温度480度では1回の分解に30秒から40秒を要した。
加熱温度500度では1回の分解に30秒を要した。
加熱温度530度では1回の分解に25秒を要した。
加熱温度550度では1回の分解に20秒を要した。
加熱温度560度では1回の分解に20秒を要した。
加熱温度350度〜420度では分解がゆっくりと進行し効率的な分解ではなく、実用性はみられなかった。450度から560度では良好な廃プラスチックの分解が見られたが、さらに最も効率的な廃プラスックの分解が見られた加熱温度は、分解効率、反応安定性、反応温度の振れ範囲による安全性等から480度であった。
以上により、最適な加熱温度は、従来知られている加熱温度よりかなり狭い範囲でしか高効率の分解反応が得られないことを発見した。実用性もその範囲に順ずる結果であった。酸素供給量を変更して実験を行ったが、分解速度の変化が変わるが、最適な加熱温度は変化しなかった。
【実施例2】
【0091】
本発明の分解方法の工程に発生するダイオキシンの検出
本発明の分解方法の工程に発生するダイオキン量を検出した。使用したプラスチックは、焼却により多量のダイオキシン、塩化水素を発生する20%ポリ塩化ビニルを含む廃プラスチックを使用した。
測定条件は、以下の通りである。
1.分解装置:100kg酸化チタン攪拌分解装置
2.使用した触媒:酸化チタン触媒100kg(堺化学工業(株)SSP-G Lot.050323)
3.使用したプラスチックの種類及び投入量:ポリ塩化ビニル及びポリエチレンの混合物(20対80:重量%)、117g/min
4.酸化チタン顆粒体の加熱温度:480度
5.導入エアー流量:3.9m3/min
6.石灰中和処理工程
7.酸化触媒処理工程
なお、ガス濃度の測定は、特定検査機関を用いた。
【0092】
本発明の分解方法の工程に発生するダイオキン量を検出した結果を図8に示す。排ガス(酸化触媒処理後)、分解槽内の酸化チタンの顆粒体(分解槽内触媒)、石灰中和処理工程後の石灰材(中和装置内中和剤)のいずれにおいてもダイオキシン類及びコプラナーPCB濃度の実測値が低く、さらに毒性当量については非常に微量であった。以上により、本発明の分解方法の工程に発生するダイオキシン量は法規制以下であることがわかった。
通常、20%含有塩化ビニルを燃焼するとダイオキシン、塩化水素の発生量が多く、処理が困難であった。また、通常の焼却炉は、立ち上げ時、投入物の状態によりダイオキシン発生が起こり、焼却灰が残りその中にダイオキシンが多く含まれる。また高温処理は、大量の熱が必要であること、焼却炉の劣化が激しくメンテナンスが大変であった。しかし、本発明では、従来の焼却炉と比較して低温で処理することができ、メンテナンスが焼却炉と比較して簡易であり、さらに問題となる法規制にかかるダイオキシンの発生がない。これにより、本発明の分解方法では、低温分解であるにもかかわらず、有機物の残さは残らない画期的な分解方法である。
【実施例3】
【0093】
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積の検討
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の最適な比表面積の検討をした。
各測定条件は以下の通りである。
1.実験装置(反応容器):攪拌型分解実験機
2.加熱方法:導入空気加熱方式
3.導入エアー流量:50L/min
4.反応容器内温度:480度
5.攪拌速度:35rpm
6.使用した触媒:酸化チタン触媒(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108) 700g
7.廃プラスチック:ポリエチレン 1g/min投入
8.酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積:30m2/g、40m2/g、70m2/g
【0094】
(1)比表面積30m2/g、細孔容積0.20cc/gの酸化チタンの顆粒体
廃プラスチックであるポリエチレンを反応容器の酸化チタンの顆粒体に投入した。投入直後では、廃プラスチックは塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は次第に元の色に変化し、約40秒〜約60秒で元の色に戻った。なお、廃プラスチック投入直後の塊が崩れ分散する時に僅かではあるが煙が確認できた。なお、分解時間が長く効率が悪かった。
(2)比表面積40m2/g、細孔容積0.23cc/gの酸化チタンの顆粒体
廃プラスチックであるポリエチレンを反応容器の酸化チタンの顆粒体に投入した。投入直後では、廃プラスチックは塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は次第に元の色に変化し、約30秒〜約40秒で元の色に戻った。なお、分解効率は良かった。
(3)比表面積70m2/g、細孔容積0.26cc/gの酸化チタンの顆粒体
廃プラスチックであるポリエチレンを反応容器の酸化チタンの顆粒体に投入した。投入直後では、廃プラスチックは塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は次第に元の色に変化し、約30秒〜約45秒で元の色に戻った。なお、廃プラスチック投入直後の塊が崩れ分散するのが遅かった。また、酸化チタンそのものが崩れ粉状化し飛散したことによりハンドリングが悪かった。
以上の結果により、比表面積が30m2/g 以上であれば、十分に廃プラスチックの分解をすることができた。しかし、比表面積が35m2/g 以上であれば、さらに高効率で廃プラスチックを分解することができた。しかし、比表面積を大きくし過ぎると、耐熱性が弱く、顆粒体が崩れ粉状化してしまう。
よって、33m2/g以上〜65 m2/g以下、より好ましくは35m2/g以上〜50 m2/g以下の比表面積を持つ酸化チタンの顆粒体が、高い効率で廃プラスチックを分解することがわかった。
【実施例4】
【0095】
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の処理量の検討
酸化チタンの顆粒体からなる触媒の最適な処理量の検討をした。
ポリスチレンペレットの処理量を漸次増加し最大処理可能量を算出した。チタン触媒量350gで1g/min、2g/min×5回、2g/min×5回連続feed、3g/min連続feed、4g/min連続feed、5g/min連続feedにて処理した。
4g/min連続feedでは激しく発火し燃焼した。3g/minでも触媒の黒化が激しく増大したので、2g/min連続feedが最大処理可能量であると判断した。
【0096】
以上の実験から、触媒使用量に対する廃プラスチックの最大処理可能量の重量比は、100対34.2である。
以上の結果により、最大処理可能量は、本発明の酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの最適な廃プラスチック処理量は、3.0〜40.0kg、好ましくは6.0kg〜35.0kgであることがわかった。
【実施例5】
【0097】
ポリエチレン、ポリスチレンの分解
上記各廃プラスチックを480度に加熱した顆粒酸化チタン(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108)を用いて分解した。詳細は、以下の通りである。
分解装置として、円筒状の容器、熱風加熱制御方式の装置を使用した。該容器中に酸化チタン700gを投入した。次に、粒状に粉砕したポリエチレンを0.6g/30秒毎に投入し、攪拌装置により35rpmで攪拌した。また、流量100L/minの排気ガスをすべて回収した。経時的に排気ガスに含まれる物質を測定した。
なお、ガス濃度の測定は、ガス濃度連続測定器PG-250(製造元:堀場製作所)を用いた。
【0098】
ポリエチレンを投入した30秒後に排気ガス中に炭酸ガス及びCOの排出を確認できた。その後、正常の濃度に戻った。また、それに合わせて、ポリエチレンは投入後、塊のまま黒化し、その後塊が崩れ粉状化した。粉状化した廃プラスチックは触媒全体に広がり、触媒全体が黒化した。黒化した触媒は、次第に元の色にもどった。なお、廃プラスチックはその後煙を出すこともなく30秒後に分解した。なお、コントロールとして不活性化された同じ粒度の酸化チタン顆粒を用いた場合には、一般的に燃やした場合と同じく黒煙を上げて燃えた。本結果により、酸化チタンによる分解は、燃焼ではない触媒分解であることが確認できた。また、ポリスチレンでも上記と同様な結果であった。
以上により、実施例1の結果と同様に、本発明の廃プラスチックの分解方法では、酸化チタンの顆粒体からなる触媒と廃プラスチックの加熱温度を約480度にすることにより、ポリエチレン、ポリスチレンを高効率で分解することができた。
【実施例6】
【0099】
ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)の分解
ポリ塩基ビニルは分子に塩素原子を有し、ポリウレタンは分子に窒素原子を有し、テフロン(登録商標)は分子にフッ素原子を有する。本発明の分解方法は、このような分解工程で有害なガスを発生するプラスチックの分解、さらには該ガスを吸着除去できるかを検討した。
すなわち、酸化チタン処理工程の後に、石灰中和処理工程、さらに白金による酸化触媒処理工程を行った。そして、各工程後のガスを回収して、ガス中に含まれる成分を測定した。また、ポリエチレン、ポリスチレンでも同様な測定を行った。
測定条件は、以下の通りである。
1.分解装置:100kg酸化チタン攪拌分解装置
2.使用した触媒:酸化チタン触媒100kg(堺化学工業(株)SSP-G Lot.060829)
3.使用したプラスチックの種類及び投入量:ポリ塩化ビニル(70g/min)、ポリウレタン(120g/min)、テフロン(登録商標)(30g/min)、ポリエチレン(100g/min)、ポリスチレン(100g/min)
4.加熱温度 480度(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル)又は490度(ポリウレタン、テフロン(登録商標))
5.石灰中和処理工程
6.パラジウム、白金酸化触媒処理工程
なお、ガス濃度の測定は、特定検査機関を用いた。
【0100】
各廃プラスチックの分解による発生したガスを測定した結果を図9に示す。
ポリ塩化ビニルの分解では、石灰中和処理工程の後では、環境中に問題がない程度までHCl及び塩素が除去されていた。ポリウレタンの分解では、NO、NO2及びHCNが十分に除去されていた。テフロン(登録商標)の分解では、石灰中和処理工程の後では、環境中に問題がない程度までフッ化水素が除去されていた。
なお、VOC(揮発性有機化合物)及び低級炭化水素は、いずれの廃プラスチックでも十分に除去されていた。
以上の結果により、従来の焼却炉では有害ガス、特にフッ化水素を発生するテフロン(登録商標)等を分解することは困難であったが、本発明の分解方法では、テフロン(登録商標)等を低温で高効率分解することができ、さらに有害ガスを装置外から放出することもなく安全に処理が出来ることを確認した。
【実施例7】
【0101】
医療廃棄物の分解の検討
上記実施例では、廃プラスチックの分解を十分に行えることを確認したが、さらに医療廃棄物(遠沈管、ブルーチップ、ブタ血液、輸液セット、ネオチューブ、シリンジ、セルスクレーバー、シュアヒューザー、シュアーフロー、ダイアライザー、ラックスゴム、チップ、キムタオル)を分解することができるかを確認した。
測定条件は、以下の通りである。
1.分解装置:循環式実証実験機(容量:385L)
2.使用した触媒:酸化チタン触媒200kg (往路100kg、復路100kg、堺化学工業(株)SSP-G Lot.060116)
3.加熱温度:480度
4.攪拌回転数:往路(分解部)10rpm、復路35rpm
5.酸化触媒温度:400度
6.エアー流量:2.75m3/min
【0102】
(1)処理した医療廃棄物(計3.45kg):プラスチックシャーレ(大)36枚2kg、シャーレ(小)10枚0.25kg、遠沈管(50ml)30本0.4kg、ブルーチップ0.2kg、医療廃棄物用ダンボール箱0.6kgを破砕した。
投入量84g/min又は120g/minのいずれにおいても30分間以内で分解することができた。
(2)処理した医療廃棄物(計7.007 kg):プラスチックシャーレ(大)72枚4kg、シャーレ(小)20枚0.5kg、遠沈管(50ml)60本0.8kg、ブルーチップ0.4kg、医療廃棄物用ダンボール箱0.6kgを粉砕した後、ブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)707gを混合した。
投入量120g/minにおいて安定的に分解することができた。
(3)処理した医療廃棄物(計7.185 kg):輸液セット50本入り2箱2.6kg、ネオチューブ(真空採血管)100本入り2箱1.63kg、シリンジ(20ml)2箱1.97kg、セルスクレーバー1袋385g、医療廃棄物用ダンボール箱0.6kgを粉砕した。
投入量156g/min、40分間で7280gを分解することができた。
(4)処理した医療廃棄物(計6.703kg):上記(3)と同様の医療廃棄物5.93kgにブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)773gを混合した。
投入量120g/minにおいて安定的に分解することができた。
(5)処理した医療廃棄物(計3.055kg):シュアヒューザー5個入り1箱765g、シリンジ20本340g、シュアーフロー2個620g、ダイアライザー(アルミラミネートを除く)6本670g、ダンボール箱660gを粉砕した。
投入量63g/min又は84g/minで分解することができた。
(6)処理した医療廃棄物(計3.82kg):上記(5)の医療廃棄物3.1kgにブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)720gを混合した。
投入量85g/min、45分間で全量を分解することができた。
(7)処理した産業廃棄物(計4.755kg):ラテックスゴム手袋3箱2.2kg、チップ400g、キムタオル2袋945g、シリンジ560g、ダンボール箱650gを粉砕した。
投入量480g/min、10分間ですべて分解することができた。
(8)処理した医療廃棄物(計5.37kg):上記(7)の産業廃棄物4.7kgにブタ血液(洗浄水、吸水性ポリマーを含む)670gを混合した。
投入量77g/min、20分間で1540gを分解することができた。また、投入量96g/min、40分間で3840gを分解することができた。
【0103】
上記(1)〜(8)の結果により、医療廃棄物を分解することができた。特に、本発明の分解方法では、血液等の生体に由来する物の分解において、NOxなどの窒素化合物も安全に処理ができ、かつ硫黄化合物例えば、硫化水素、亜硫酸ガスについても石灰中和処理工程によって安全に処理できることが確認できた。
【実施例8】
【0104】
酸化チタン顆粒体に付着する菌の確認
菌等を培養したシャーレを分解処理した後において、分解処理後の酸化チタン顆粒体に菌が付着しているかを確認した。詳しくは、撹拌型実験機及び実証機において、大腸菌やその他の有機物を処理した後の酸化チタン顆粒体を回収し、それらに含まれる細菌を検査した。実験方法は以下の通りである。
(1)撹拌型実験装置では使用済みの酸化チタン約260gに蒸留水200mlを加え洗浄した。この洗浄液の一部をSCD培地および各種培地に塗末し、24時間及び48時間、35℃で培養した。培養後形成されたコロニーを観察、計測した。
(2)実証機ではチタン交換時に、酸化チタン約50gを採取し、リン酸塩緩衝液を35ml加え、十分に撹拌後洗浄液として回収した。この洗浄液の一部をSCD培地及び各種ぺたんチェック培地に塗末し、24時間及び48時間、35℃で培養した。培養後形成されたコロニーを観察、計測した。
【0105】
上記(1)及び(2)の結果を図10に示す。いずれの場合においても、廃プラスチック分解処理後の酸化チタン顆粒体から得られた洗浄液からは大腸菌等が検出されなかった。
以上のことから、本発明の分解処理工程によって、大腸菌を死滅させることができた。
【0106】
以下の実施例では、病院等で廃棄される使用済みの注射器、包装袋、又は薬瓶のような医療廃棄物を、本発明の分解装置の廃プラスチック・有機物処理手段によって処理する工程を説明する。既に述べた要素には、引続き同じ呼称、又は同じ符号を用いるものとする。
【実施例9】
【0107】
先ず、送風ブロアー19等である担体ガス供給手段によって反応槽3に空気を供給する、次に加熱手段9を起動させることにより、担体ガス供給手段によって供給されている空気を加熱して、該加熱された空気(熱風)を触媒2を含めた反応槽3の内部に供給することにより、触媒2の温度を420度〜560度になるようにする。
【0108】
次に、図22に示す破砕装置を使用して医療廃棄物を数mm3程度の大きさであり触媒よりも大きいものに破砕する。破砕された医療廃棄物は、反応槽3の投入口7から凹部13(図16−4を参照)に投入される。投入された医療廃棄物は、触媒2と共に循環手段5(D)、さらに循環手段5により反応槽内を循環する。この循環の工程で、触媒2と医療廃棄物とは、攪拌手段6であるスクリュフィーダによって攪拌され続けるので、触媒2と医療廃棄物との接触が繰り返され、触媒2の作用に基づき、医療廃棄物に含まれる廃プラスチック・有機物4の分解が促進される。これにより、反応槽3に投入された総ての医療廃棄物に含まれる廃プラスチック・有機物4は、触媒の循環工程中に気化する。廃プラスチック・有機物4が気化する過程で、その分解が起こると、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0109】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【0110】
また、上記の循環工程で、医療廃棄物の大部分を占める廃プラスチック・有機物4は気化するが、医療廃棄物に混入した金属は、循環の後に至っても触媒2の中に残る。このような金属を、触媒2と共に更に循環される工程で選別できるようにしても良い。例えば、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、金属及び/又は無機物分離・回収手段として反応槽に嵌めこむ(図16(4)参照)。そして、金網に止められた金属・無機物を回収できるポケット17を設置し、ポケットから金属・無機物を回収することができる。
【0111】
従って、本発明の廃プラスチック・有機物処理手段によれば、医療廃棄物に含まれる金属、無機物を反応槽3に残留させることがなく、金属の酸化を抑え、そのリサイクルを実現することができる。しかも、金属及び/又は無機物分離・回収手段が金属を選別するとき、循環手段5及び/又は攪拌手段6を停止させる必要がないので、医療廃棄物の処理量を高く維持させることができる。また、金属及び/又は無機物分離・回収手段15が金属を選別するとき、反応槽3の扉を開放する必要がないので、廃プラスチック・有機物処理手段の熱効率を高く保つことができる。
【実施例10】
【0112】
先ず、図17に示す反応槽3の投入口7を開放し、第1段槽31の上流端33の付近に触媒2を流下する。同時に、循環手段5を起動すれば、触媒2は、最初に循環手段5(A)により第1段槽31の送出端34へ向けて搬送され、循環手段5(B)の回転軸14の下端部に至る。続いて、触媒2は、循環手段5(B)により第2段槽32の送入端37まで押上げられ、最後に、循環手段5(C)により第2段槽32の下流端36まで搬送される。この時点で、第1段槽31の上流端33から第2段槽32の下流端36までの循環経路に触媒2が存在し、循環している。
【0113】
上記のように触媒2を流下させながら、循環手段5を起動させ続ければ、触媒2は、その自重で帰還経路20を滑落して第1段槽31の上流端33に戻る。上記の循環経路に蓄積した触媒2の体積、又は質量が所望の量に達するのを見計らって、触媒2の流下を終了する。投入口7を閉鎖した後、加熱手段9を利用して、反応槽3内部の触媒2の温度が420度〜560度の範囲になるように加熱する。なお、触媒は反応槽に常に存在させておいても劣化することはないので、次以降の分解操作においては、反応槽3内の触媒2を加熱させる操作から行えば良い。
【0114】
次に、図22に示す破砕装置を使用して医療廃棄物を数mm3程度の大きさであり触媒よりも大きいものに破砕する。破砕された医療廃棄物は、投入口7から、第1段槽31の上流端33の付近に投入される。更に、医療廃棄物は、触媒2と共に循環手段5により上記の循環経路に沿って循環される。この循環工程で、触媒2と医療廃棄物とは、攪拌手段6であるスクリュフィーダによって攪拌され続けるので、触媒2と医療廃棄物との接触が繰り返され、触媒2の作用に基づき、医療廃棄物に含まれる有機物の分解が促進される。これにより、反応槽3に投入された総ての医療廃棄物に含まれる有機物4は、第1段槽31の上流端33から第2段槽32の下流端36を循環する間に気化する。有機物が気化する過程で、その分解が起こると、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0115】
一方、触媒2は、第2段槽32の下流端36に達したところで、帰還経路20を滑落して反応槽3の上流端33に戻るので、触媒2は反応槽3の内部で循環する。従って、新たに破砕手段で破砕された医療廃棄物が反応槽3に投入されると、同じ触媒2を利用して、この新たな医療廃棄物に含まれる有機物を繰り返し気化させることができる。また、第1段槽31よりも第2段槽32の位置が高いので、触媒2を、第2段槽32の下流端36から第1段槽31の上流端33まで戻すのに、例えばコンベヤ又はスクリュフィーダ等を用いて強制的に行わなくて良い。
【0116】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【0117】
また、上記の循環工程で、医療廃棄物の大部分を占める有機物は気化するが、医療廃棄物に混入した金属は、第2段槽32の下流端36に至っても触媒2の中に残る。このような金属を、触媒2と共に更に循環される工程で選別できるようにしても良い。例えば、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16を、金属及び/又は無機物分離・回収手段15として帰還経路20の途中に嵌めても良い。この場合、金網に止められた金属が上記の高温ガスに直に触れないように、帰還経路20を反応槽3の外側に配置しても良い。そして、金網に止められた金属を、帰還経路20を開放して取り出せば、この金属が新たに反応槽3に投入される医療廃棄物に混じる前に、触媒2の中から取り除くことができる。
【0118】
尚、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できる。例えば、循環手段5(B)を必要としない場合もある。例えば、第1の通気性底材35を、その上流端33より送出端34が高くなるような傾斜姿勢として、搬送手段5により第1の通気性底材35の送出端34まで搬送された触媒2を、第2の通気性底材38の送入端37に直に落下させても良い。
【実施例11】
【0119】
先ず、図19に示す投入口8を開放し、上流端33の付近に触媒2を流下する。同時に、循環手段5を起動すれば、触媒2は、最初に循環手段5により上流端33から下流端36へ向けて搬送される。この時点で、上流端33から下流端36までの循環経路に触媒2が存在し、循環している。
【0120】
上記の循環経路に蓄積した触媒2の体積、又は質量が所望の量に達するのを見計らって、触媒2の流下を終了する。投入口を閉鎖した後、送風ブロアー19で供給している空気を加熱手段9により熱し、熱せられた空気を反応槽3に送り込むことにより、反応槽3内部の触媒2の温度が420度〜560度の範囲になるように加熱する。なお、触媒は反応槽に常に存在させておいても劣化することはないので、次以降の分解操作においては、反応槽3内の触媒2を加熱させる操作から行えば良い。
【0121】
次に、図22に示す破砕装置を使用して医療廃棄物を数mm3程度の大きさであり触媒よりも大きいものに破砕する。破砕された医療廃棄物は、投入口8から、上流端33の付近に投入される。更に、医療廃棄物は、触媒2と共に循環手段5により上記の循環経路に沿って循環される。この循環工程で、触媒2と医療廃棄物とは、攪拌手段6であるスクリュフィーダによって攪拌され続けるので、触媒2と医療廃棄物との接触が繰り返され、触媒2の作用に基づき、医療廃棄物に含まれる有機物の分解が促進される。これにより、反応槽3に投入された総ての医療廃棄物に含まれる有機物4は、上流端33から下流端36を循環する間に気化する。有機物が気化する過程で、その分解が起こると、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0122】
一方、触媒2は、下流端36に達したところで、帰還経路20を滑落して反応槽3の上流端33に戻るので、触媒2は反応槽3の内部を常に循環する。従って、新たに破砕装置で破砕された医療廃棄物が反応槽3に投入されると、同じ触媒2を利用して、この新たな医療廃棄物に含まれる有機物を繰り返し気化させることができる。
【0123】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【0124】
好適には帰還経路20は、金属及び/又は無機物分離・回収手段15を備え、反応槽3の下流端36と上流端33を接続する。該分離手段15は、以下に詳説するように、下流端36に搬送された触媒2中から残留する金属・無機物を分離する。帰還経路20は、該分離・回収手段15によって金属が分離された触媒2を、上流端33に帰還させる。
【0125】
該分離手段15は、触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網16であり、帰還経路20の途中に嵌められている。そして、金網に止められた金属がある程度溜まったところで、帰還経路20を開放して金属及び/又は無機物を取り出せば、廃プラスチック・有機物4に含まれる金属を反応槽3に残留させることがなく、金属の酸化を抑え、そのリサイクルを実現することができる。
【0126】
以上説明した廃プラスチック・有機物処理装置により、平均純度が98.9%の金属(アルミニウム(Al))を回収することができた。表面にAlが蒸着されたプラスチック製のフィルムを約5cm四方に破砕して、約480℃に加熱した1〜3mm径の触媒(酸化チタン)2に混入・撹拌させ、10分間で廃プラスチック・有機物処理装置を循環させた。触媒2が廃プラスチック・有機物処理手段1内を1周循環するごとに数cm四方の薄いAl片を回収し、プラスチック片を分解・気化させるとともに上記高純度のアルミニウム金属を回収することができた。循環時間が短いほど高純度の金属を回収できると見込まれる。
【0127】
以上、本発明の廃プラスチック・有機物処理装置について実施形態、実施例を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施例では金属片が金網上に残ったが、触媒2が金網上に残るようにしてもよい。回収する金属の種類、触媒2の加熱温度、酸素濃度などの諸条件により、回収する金属片の大きさは異なり得るので、粒径の大きい方が金網上に残るように、回収条件や触媒2の径、網目の大きさ等を選択して、金属を回収できるよう予め調整する。
【0128】
更に、図19には廃プラスチック・有機物処理手段1が水平姿勢で表れているが、上流端33よりも下流端36が高くなるように、反応槽3を傾斜させても良い。下流端36を上流端33よりも高くすることにより、循環手段5により下流端36に搬送された触媒2を、その自重で帰還経路20を滑落させて、上流端33まで戻すことができる。この場合、帰還経路20は、反応槽3の下流端36と上流端33とを接続するシュートであってよい。
【実施例12】
【0129】
図20で示すように、医療廃棄物であるシャーレをカゴ40に入れる。そして、該シャーレを収納したカゴ40は、投入口41から反応槽3内部に配置される。
次に、触媒2を反応槽3の排気口39から流下させる。これにより、触媒2は反応槽3の上流端33から下流端36に流下する。次に、スクリュフィーダを起動させる。これにより、下流端36付近に蓄積した触媒2は、帰還経路20を介して反応槽3の上流端33に戻る。上記の循環経路に蓄積した触媒2の体積、又は質量が所望の量に達するのを見計らって、触媒2の流下を終了する。
次に、加熱手段9を利用して、反応槽3内部の触媒2の温度が420度〜560度の範囲になるように加熱する。なお、触媒は反応槽に常に存在させておいても劣化することはないので、次以降の分解操作においては、反応槽3内の触媒2を加熱させる操作から行えば良い。
【0130】
以上により、触媒活性温度に達した触媒2が反応槽3の上流端33から下流端36に流下(循環)する工程において、シャーレは触媒2と接触し、気化される。シャーレが気化する過程で、二酸化炭素と水蒸気を主成分とするガスが発生する。
【0131】
一方、触媒2は、反応槽3の下流端36に達したところで、帰還経路20を介して反応槽3の上流端33に戻るので、触媒2は反応槽3の内部で循環する。従って、触媒活性状態が高い触媒2を次々にシャーレに投下することができる。
【0132】
上記のガス(気化した有機物)は、石灰中和処理手段、続いて酸化触媒処理手段へ送られる。排気ガスの有害成分を除去する工程は、本実施例では省略する。
【実施例13】
【0133】
本発明の廃プラスチック・有機物の分解システム
上記実施例9に記載の分解装置を使用し、さらに反応槽3内の酸化チタンの顆粒体を420度〜560度に加熱する。なお、使用する酸化チタンの顆粒体の活性成分としての酸化チタンの特性は、(1)比表面積が35m2/g以上〜50m2/g以下、(2)顆粒体が3.5mesh(5.60mm)以下である。
なお、使用する廃プラスチック・有機物は、分解工程中に塩素、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチックである。
【0134】
上記分解システムでは、従来の分解方法に比べて格段に高い分解効率を示す。また、石灰中和処理手段による石灰中和処理工程及び酸化触媒処理手段による酸化触媒処理工程により、分解工程中にHCI、フッ化水素、硫黄化合物、窒素化合物等を発生するプラスチック、有機物又は血液等の生体由来物、フッ化水素を発生するフッ素化合物の処理も容易に行うことができる。さらに、廃プラスック・有機物に混在し、またはその少なくとも一面に蒸着しあるいは貼着等された金属・無機物の分離・回収を容易に行うことができる。
【0135】
その他、本発明のすべての実施例は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の分解方法、分解装置及び分解システムは、医療廃棄物に限らず、あらゆるプラスチック等の廃材を処理するのに有益な技術である。
【符号の説明】
【0137】
1:廃プラスチック・有機物処理手段
2:触媒
3:反応槽
4:廃プラスチック・有機物
5:循環手段
6:攪拌手段
7:投入口
8:投入口
9:加熱手段
10:送風チャンバ
11:仕切り壁
12:パドル
13:凹部
14:回転軸
15:金属及び/又は無機物分離・回収手段
16:触媒2の最大径が通過することができる程度の網目を有する金網
17:金属及び/又は無機物回収ポケット
18:金属・無機物取り出し口
19:送風ブロアー
20:帰還経路
21:螺旋羽根
22:翼列
23:破砕手段
24:固形廃プラスチック・有機物投入口
25:固形廃プラスチック・有機物分解部
30:仕切壁
31:第1段槽
32:第2段槽
33:上流端
34:送出端
35:通気性底材
36:下流端
37:送入端
38:通気性底材
39:排気口
40:カゴ
41:投入口
42:網
81:3枚の羽根
82:切欠部
83:軸流羽根
84:突片
85:突片
101:破砕装置
102:反応槽
103:攪拌羽根
104:ブロアー
105:除去装置
106:分離装置
107:回収槽
201:試料容器
202:攪拌機
203:軸体
204:攪拌羽根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒と共に廃プラスチック及び/又は有機物を加熱しながら攪拌する工程を含む、該プラスチック及び/又は有機物をガス化する廃プラスチック・有機物の分解方法において、該触媒の加熱温度が420度〜560度の範囲であり並びに該酸化チタンの顆粒体の酸化チタンが、以下の特性を有することを特徴とする廃プラスチック・有機物の分解方法。
(1)比表面積が35m2/g以上〜50 m2/g以下、
(2)顆粒体の直径が3.5mesh(5.60mm)以下。
【請求項2】
酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの廃プラスチック及び/又は有機物処理量が3.0kg〜40.0kg範囲であることを特徴とする請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
さらに、石灰中和処理工程を含む請求項1又は2に記載の分解方法。
【請求項4】
さらに、酸化触媒処理工程を含む請求項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項5】
さらに、酸化触媒処理工程前にアルミナ触媒処理工程を含む請求項4に記載の分解方法。
【請求項6】
さらに、金属及び/又は無機物分離・回収工程を含む請求項1〜5のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項1】
活性成分が酸化チタンである酸化チタンの顆粒体からなる触媒と共に廃プラスチック及び/又は有機物を加熱しながら攪拌する工程を含む、該プラスチック及び/又は有機物をガス化する廃プラスチック・有機物の分解方法において、該触媒の加熱温度が420度〜560度の範囲であり並びに該酸化チタンの顆粒体の酸化チタンが、以下の特性を有することを特徴とする廃プラスチック・有機物の分解方法。
(1)比表面積が35m2/g以上〜50 m2/g以下、
(2)顆粒体の直径が3.5mesh(5.60mm)以下。
【請求項2】
酸化チタンの顆粒体100kgに対しての1時間当たりの廃プラスチック及び/又は有機物処理量が3.0kg〜40.0kg範囲であることを特徴とする請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
さらに、石灰中和処理工程を含む請求項1又は2に記載の分解方法。
【請求項4】
さらに、酸化触媒処理工程を含む請求項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項5】
さらに、酸化触媒処理工程前にアルミナ触媒処理工程を含む請求項4に記載の分解方法。
【請求項6】
さらに、金属及び/又は無機物分離・回収工程を含む請求項1〜5のいずれか1に記載の分解方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図16−5】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図16−5】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図15】
【公開番号】特開2009−270123(P2009−270123A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190679(P2009−190679)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2008−512045(P2008−512045)の分割
【原出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月1日 日本人工臓器学会発行の「〈日本人工臓器学会会誌〉人工臓器第35巻2号」に発表
【出願人】(000202420)草津電機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2008−512045(P2008−512045)の分割
【原出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月1日 日本人工臓器学会発行の「〈日本人工臓器学会会誌〉人工臓器第35巻2号」に発表
【出願人】(000202420)草津電機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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