説明

廃木材炭化方法および廃木材炭化装置

【課題】廃木材を再利用可能で高品質な炭化物に炭化させる。
【解決手段】密閉した反応槽内に廃木材(例えば枕木など)を投入し、該反応槽内に加熱蒸気を供給して所定温度(例えば400℃〜500℃程度)まで雰囲気温度を高め、前記廃木材から添加物(例えばコールタールや防腐剤など)を気化させて除去すると共に、該廃木材を炭化させる廃木材炭化方法を実施する。特に、前記加熱槽内は、外気圧よりも高い気圧にして前記気化と炭化を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば使用済みの枕木等の廃木材を炭化するような廃木材炭化方法および廃木材炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の線路に使われる枕木などの廃木材は、コールタールの付着といった理由により、炭化させても炭化物として再利用することが困難であった。このため、再利用せずに廃棄されていた。
【0003】
一方、木材を炭化する方法として、例えばロータリーキルンまたはロータリードライヤーを用いる木材炭化方法が提案されている(特許文献1参照)。この木材炭化方法は、ロータリーキルン又はロータリードライヤーを用いることで、高品質の炭化物を品質変動をきたすことなく安定して得られるとされている。
【0004】
しかし、この木材炭化方法は、枕木などの廃木材に含まれているコールタールを完全に除去することが考慮されておらず、枕木などの廃木材を再利用可能に炭化するために適していなかった。
【0005】
また、廃木材を炭化させるに際して圧縮することが考慮されておらず、備長炭に見られるように圧縮された高品質の炭化物を得られるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−241762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述した問題に鑑み、廃木材を再利用可能で高品質な炭化物に炭化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、密閉した反応槽内に廃木材を投入し、該反応槽内に加熱蒸気を供給して所定温度まで雰囲気温度を高め、前記廃木材から添加物を気化させて除去すると共に、該廃木材を炭化させる廃木材炭化方法およびその装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、木材を再利用可能で高品質な炭化物に炭化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、反応槽10の外観を示す斜視図であり、図2は、廃木材炭化装置1の構成を示す構成図である。
【0011】
反応槽10は、正面に扉18が設けられている。この扉18は、右側に設けられた取っ手19を引くことで、蝶番17を中心に手前へ回動させて開くことができる。反応槽10の内部は空洞になっており、この空洞に廃木材などの処理対象物を投入することができる。
【0012】
図2に示すように、反応槽10の両側部には、加熱水蒸気供給装置13が左右対称に設けられている。この加熱水蒸気供給装置13は、水蒸気を加熱させて穴14から反応空間16内に加熱水蒸気を供給する。加熱水蒸気供給装置13は、加熱水蒸気を供給することで反応槽10内の反応空間16を加熱すると共に、側面から予熱により反応空間16を加熱する。従って、効率よく温度上昇させることができる。なお、加熱水蒸気供給装置13には、水などの液体を充填し、この液体により予熱を利用してもよい。
【0013】
反応槽10の底部には、加熱装置15が設けられている。これにより、下方からも反応空間16を加熱することができる。反応空間16は、加熱水蒸気供給装置13と加熱装置15の加熱により、摂氏400℃程度まで雰囲気温度を上昇させる。なお、400℃に限らず、400℃〜500℃程度まで温度上昇させることも可能である。
反応槽10の上部には、蒸発した気化物を塩素除去装置2へ送り出す気化物排出部11が設けられている。
【0014】
また、反応槽10が設けられている廃木材炭化装置1は、他に塩素除去装置2、冷却装置3、油水分離装置4、および油槽5が設けられている。
塩素除去装置2は、流入してきた気化物から塩素を除去する脱ハロゲン工程を行い、塩素除去した気化物を冷却装置3へ送り出す。
冷却装置3は、流入してきた気化物を冷却して液化し、この液化物を油水分離装置4へ送り出す。
油水分離装置4は、流入してきた液化物を油水分離し、油分(A重油や軽油など)を油槽5へ送り出す。
油槽5は、流入してきた油分を貯留する。
【0015】
このように構成された廃木材炭化装置1は、次のように動作する。
まず、利用者によって扉18が開かれて反応空間16内に枕木等の廃木材が投入される。そして、扉18が閉じられて図示省略する操作部にて処理開始の操作が入力される。
【0016】
この操作入力を受けて、廃木材炭化装置1は、加熱水蒸気供給装置13により反応空間16内に加熱水蒸気を充満させ、加熱装置15により反応空間16内を400℃程度まで温度上昇させる。
【0017】
反応空間16内は、1.2〜1.5気圧に加圧され、廃木材が圧縮されつつ炭化される。また、廃木材に付着しているコールタールや防腐剤等は、液体となって下方へ落ち、廃木材から分離され回収される。また、コールタールや防腐剤等に含まれている油分、および木搾酢が気化して排出される。この気化した気化物は、塩素除去装置2で脱ハロゲン(塩素除去)され、冷却装置3で冷却されて液体に戻り、油水分離装置4で油水分離されて油槽5に油分が回収され、木搾酢は別途回収される。なお、油水分離装置4では、木搾酢と油分が比重の違いにより自然に分離され、上方から木搾酢が回収され、下方から油分が回収される。回収された木搾酢は、美容に利用できる。また回収された油分は、A重油、C重油、あるいは軽油等として利用できる。
加熱開始から1時間半〜2時間半程度で油分および木搾酢の飛散とコールタールや防腐剤の滴下と廃木材の炭化が完了する。
【0018】
以上の構成および動作により、廃木材を高品質の炭に炭化させることができる。特に、廃木材にコールタールや防腐剤等が含まれていても、これらを液化させて滴下させることができるため、良好な炭を得ることができる。
また、加熱水蒸気により廃木材内の水分も排出させることができるため、備長炭のように圧縮された高品質の炭を得ることができる。
【0019】
実験例として、130mm×200mm×700mmの枕木2本を反応空間16に投入し、反応空間16内を開始温度25℃から500℃まで2時間30分加熱し、1時間後に開始温度350℃から500℃まで1時間30分加熱して、さらに80℃で16時間加熱させたところ、2つの枕木が炭化した高品質の炭と、2つの枕木から抽出した0.6kgのグリス状の油を取得することができた。
【0020】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の加熱蒸気供給手段は、実施形態の加熱水蒸気供給装置13に対応し、
以下同様に、
所定温度は、400℃〜500℃に対応し、
添加物は、コールタールや防腐剤等に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】反応槽の外観を示す斜視図。
【図2】廃木材炭化装置の構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0022】
1…廃木材炭化装置、10…反応槽、13…加熱水蒸気供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉した反応槽内に廃木材を投入し、
該反応槽内に加熱蒸気を供給して所定温度まで雰囲気温度を高め、
前記廃木材から添加物を気化させて除去すると共に、該廃木材を炭化させる
廃木材炭化方法。
【請求項2】
前記加熱槽内を、外気圧よりも高い気圧にして前記気化と炭化を実行する
請求項1記載の廃木材炭化方法。
【請求項3】
廃木材の投入を許容して密閉可能な反応槽と、
該反応槽に加熱蒸気を供給する加熱蒸気供給手段とを備えた
廃木材炭化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−84331(P2009−84331A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253009(P2007−253009)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(500104211)
【Fターム(参考)】