説明

廃棄物と汚水の処理方法および処理設備

【課題】 ごみ処理場と下水処理場とし尿処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法または設備に関し、設備費や運転費用に関する無駄を減らし、廃棄物と汚水の処理を合理化する技術を提供する。
【解決手段】 ごみ処理場1のメタン発酵槽20で発生するバイオガスのための精製装置23、タンク24、またはそのバイオガスの利用のための手段(ガスエンジン発電機25等)のうちいずれか1以上に、下水処理場3の消化槽38で発生するバイオガス(消化ガス)をも送ることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項に係る発明は、ごみ処理場と下水処理場、またはさらにし尿処理場を組み合わせて使用する廃棄物と汚水の処理方法、および当該処理方法を実施するための処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内には、各地域にごみ処理場と下水処理場とし尿処理場がある。各処理場ではつぎのような処理が行われる。
・ごみ処理場: 収集車で収集した、紙類・プラ類・生ごみなどを主に焼却処理する。
・下水処理場: 下水管を介して流れてくる、水洗便所や工場からの廃水を浄化し、処理水を放流する。
・し尿処埋場: 収集車で収集した、し尿や浄化槽汚泥を浄化し、処理水を放流する。
【0003】
従来のごみ処理場・下水処理場・し尿処理場における処理系統を図14に示す。図に示した各処理場の特徴はつぎのとおりである。
【0004】
i) ごみ処理場1:
図示の例では、焼却炉やガス化溶融炉、直溶炉、炭化炉などのごみ焼却手段11に、乾式または湿式のメタン発酵槽20が併設されている。近年、このようにメタン発酵槽20を併設するごみ処理場1が注目を集めている。発生するメタンガス(バイオガス)はガスエンジン発電機25による高効率発電が可能であり、場外において自動車燃料等にも利用できること、また、メタン発酵槽20を併設することでごみ焼却量を約3割削減できることが、注目される理由である。ただし、メタン発酵槽20を設けると、一般に排水処埋にコストがかかるという課題がともなう。
【0005】
ii) 下水処理場3:
下水を沈殿させて得る濃縮汚泥を消化槽38において消化(メタン発酵と同義)させ、消化ガス(バイオガスと同義)を回収している。消化ガスの3〜5割は、そのまま燃やして温水や蒸気を製造し、消化槽38の加温に用いる。消化ガスを発電等に利用することはあまり普及しておらず、図示の例でも行っていない。水処理工程の生物反応槽33では、たいてい、標準活性汚泥法として曝気が行われる。
また、下水処理場の処理水の放流先が、湖沼や海、河川などで閉鎖性水域の場合は、高度な窒素の除去が求められる。この場合、生物反応槽は、標準活性汚泥法ではなく嫌気好気法が採用される。この方法では、生物反応槽は、最初に嫌気槽、次に好気槽で構成され、好気槽の流出水の半分を嫌気槽に戻して循環させる。下水流入水には、有機物とアンモニア性窒素が含まれるが、アンモニア性窒素を硝酸性窒素に硝化する微生物の反応は、好気条件下で、かつ、有機物がある程度まで分解された後に行われる。硝酸性窒素を窒素ガスに脱窒する微生物の反応は、嫌気条件下で、かつ、ある程度の有機物を分解しながら並行して行われる。したがって、嫌気好気法では、嫌気槽で微生物が下水流入水の有機物を分解すると共に、好気槽からの循環液により供給される硝酸性窒素を脱窒する。次に、好気槽で残る有機物を分解し、さらにアンモニア性窒素を硝化する。よって、循環比を1対1にするとき、嫌気好気法生物反応槽へ流入するアンモニア性窒素は、脱窒される率は50%が上限となり、残りは硝酸性窒素の状態で放流されてしまっている。
脱水汚泥は、場外において産業廃棄物処分するか、または場内にて専用の焼却炉(図示せず)で焼却を行う。
【0006】
iii) し尿処理場5:
脱窒槽53等の脱窒手段と脱水機62等とともに汚泥の焼却炉63を備えている。
家庭への水洗便所および下水管の普及に伴い、し尿の量は年々顕著な減少傾向にあり、浄化槽汚泥と合わせた処理量は年々減少している。割合としては、し尿よりも浄化槽汚泥の方が多い処理場が増えてきている。
【0007】
図14に示すとおり、各処理場で発生する電気(電力)、ガス、熱量等が他の処理場で利用されることは従来ほとんど行われていない。一般的には、各処理場が互いに接近して配置されることも稀である。したがって、図14の例でも、たとえばごみ処理場1のメタン発酵槽20と下水処理場の消化槽38とがそれぞれ発生するバイオガスは、処理場ごとに設けられたガス精製装置23・40やガスタンク24・41等に送られ、共用の装置で処理等されることはない。
【0008】
下記の特許文献1には、ごみ処理場にメタン発酵槽を併設し、さらに下水処理場等を関連づけて使用する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2004−122073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図14の例のように、それぞれの処理場で発生するバイオガスを処理場ごとに取り扱うとしたら、同様の装置が処理場ごとに必要となって設備上の無駄が生じることになる。また、ごみ処理場1のメタン発酵槽20からの排水は窒素濃度が高いため、下水道に放流する場合でも何らかの排水処理が必要であるため、し尿処理場5等に送って処理するのでなければ、ごみ処理場1において相当の設備と運転費用をかけて処理する必要がある。
【0010】
特許文献1の例においても、ごみ処理場のメタン発酵槽で発生するバイオガスと下水処理場で発生するバイオガス(消化ガス)とを、2以上の処理場で共有する1台の装置(ガス精製手段やタンク等)に送り込むこと等は示されておらず、設備や運転費用に関してなおも改善の余地がある。
【0011】
請求項に係る発明は、上記のような設備・運転費用に関する無駄を減らして、廃棄物と汚水の処理を合理化する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項に係る発明は、ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、ごみ処理場のメタン発酵槽で発生するバイオガスのための精製手段、タンク、またはそのバイオガスの利用のための手段(ガスエンジン発電機や場外利用のための装置)に、下水処理場の消化槽で発生するバイオガス(消化ガス)をも送ることを特徴とする。
なお、上記の「または」や「もしくは」は集合の結び(全体集合)をさすものとし、たとえば「A、BまたはC」や「Aか、BかまたはCか」なる記載は、「A、B、Cのうちいずれか1以上」を表す(以下においても同様)。したがって、たとえば上記の発明は、「バイオガスのための精製手段、タンク、そのバイオガスの利用のための手段」のうちいずれか1以上に、下水処理場の消化槽で発生するバイオガスをも送ることを内容とする。
この発明の処理方法では、ごみ処理場のメタン発酵槽で発生するバイオガスと、下水処理場の消化槽で発生するバイオガスとを、共通の装置(すなわち、メタン発酵槽で発生するバイオガスのための精製手段、タンク、またはそのバイオガスの利用のための手段)によって精製し、貯留し、または利用することができる。そのため、ごみ処理場と下水処理場とのそれぞれにバイオガス用の装置を設ける必要がなくなり、設備コストが低減できるうえ設備の維持管理も容易になる。とくにこの発明の方法では、ごみ処理場のメタン発酵槽で発生するバイオガスの量が下水処理場の消化槽で発生するバイオガスに比べて多いことを考慮して、前者のバイオガス用の装置に後者のバイオガスを送ることとしている。そのため、バイオガスを移送するための設備を簡素化でき、移送のためのエネルギを抑制できるという利点もある。
【0013】
請求項に係る別の発明は、ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場と、硝化脱窒槽を有するし尿処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水をし尿処理場の硝化脱窒槽に送るとともに、浄化槽汚泥を、し尿処理場の硝化脱窒槽に送ることなく下水処理場に送ることを特徴とする。
この処理方法によれば、ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水をし尿処理場で処理することができ、しかも、し尿処理場における窒素除去の負担をほとんど上昇させずにおくことができる。ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水は前記のように窒素濃度が高いため、下水道に放流する場合でも一次処理が必要で下水道料金が徴収されるほか、湖沼や海、河川に放流する場合には二次処理など高度な処理が必要になる。その点、その排水をし尿処理場の脱窒槽に送って処理すると、ごみ処理場に専用の排水処理装置を設けず全体としてのコストを抑えながら、し尿処理場を経由してその排水を放流することが可能になる。
またこの方法では、し尿処理場で受け入れるのが一般的な浄化槽汚泥を、し尿処理場の硝化脱窒槽には送ることなく下水処理場に送る(たとえば挟雑物除去をしたうえ、下水処理場の脱水機に供給する)ため、し尿処理場における窒素除去負担の上昇を抑えることが可能である。浄化槽汚泥は、曝気処理を施されていて溶解性窒素の濃度が低いため、下水処理場において生成する脱水汚泥中に含めて産廃処分することに不都合はない。
【0014】
請求項に係るさらに別の発明は、ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、嫌気好気法生物反応槽を有する下水処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水を、曝気する(たとえばごみ処理場内の生物反応槽で曝気する)ことによってアンモニア性窒素の硝化を行ったのち、下水処理場の嫌気好気法生物反応槽の嫌気槽に送ることを特徴とする。
この処理方法によっても、ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水を下水処理場で処理することができ、ごみ処理場に専用の排水処理装置を設ける必要がなくなるため、コストを抑えながらメタン発酵槽からの排水の放流が可能になる。しかもこの方法には、とくに、ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水がほぼ完全に脱窒されるという利点がある。メタン発酵槽の排水を曝気して微生物により十分に浄化すれば、排水中のアンモニア性窒素が硝化されて硝酸性窒素となること、そして硝酸性窒素は、嫌気好気法を採用している生物反応槽の嫌気槽において完全に除去され得ること、がその理由である。そうしてほぼ完全に脱窒されると、上記の排水は、富栄養化対策がとられる湖沼等の閉鎖性水域に対しても全く問題なく放流することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場と、脱窒槽を有するし尿処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、
・ ごみ処理場におけるボイラか、メタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンか、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンかを発生源とする熱を、温水または蒸気に保有させ、その温水または蒸気(の一部または全部)によってごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温すること、
・ ごみ処理場におけるボイラからの蒸気によるタービン発電機か、ごみ処理場のメタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジン発電機か、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジン発電機かによって発生する電力(の一部または全部)を、ごみ処理場、下水処理場またはし尿処理場で利用すること、
・ ごみ処理場のメタン発酵槽からのバイオガスおよび下水処理場の消化槽からのバイオガスについて、精製手段、タンク、またはそのバイオガスの利用のための手段(ガスエンジン発電機や場外利用のための装置)を共用する(つまり共通の1組の装置に双方のバイオガスを流す)こと、
・ および、下水処理場の処理水またはし尿処理場の処理水を、ごみ処理場で利用すること――を特徴とする。
この発明によれば、つぎのような作用上の利点がある。
・ 上記したボイラやガスエンジンからの排熱を有効に利用して、ごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温し、その反応(メタン発酵)を促進することができる。メタン発酵槽や消化槽の加温を専らの目的として化石燃料を消費する必要がないため、運転費用を低減することが可能である。
・ ごみ処理場または下水処理場で必要となる電力として、ごみ処理場または下水処理場に設けた発電機による電力を利用するため、外部から購入する電力を低減し、またはゼロにすることができる。
・ メタン発酵槽からのバイオガスおよび消化槽からのバイオガスを共用の装置(上記の精製手段、タンク、またはバイオガスの利用のための手段)に流すため、ごみ処理場と下水処理場とのそれぞれにバイオガス用の装置を設ける必要がなくなり、設備コストが低減できるうえ設備の維持管理も容易になる。
・ また、下水処理場またはし尿処理場での処理水をごみ処理場で利用するため、ごみ処理場において地下水を汲み上げたり、上水や工業用水を使用したりする必要がなく、その点でも運転費用を低減することができる。
【0016】
請求項4に記載した発明の処理方法については(それを1)の発明として)、さらに、下記2)〜13)のようにすることもできる。
【0017】
2) ごみ処理場のメタン発酵槽の排水を、し尿処理場の流入部へ送ることとするのもよい。
そのようにすれば、上記メタン発酵槽の排水はし尿処理場の脱窒槽において脱窒され、放流可能なものになるという利点がさらに加わる。ごみ処理場に専用の排水処理装置を設けて運転する必要がないので、設備費用の点でも運転費用の点でも有利である。
【0018】
3) ごみ処理場のメタン発酵槽の排水をし尿処理場の流入部へ送る一方、し尿処理場で受け入れた浄化槽汚泥を、し尿処理場の脱窒槽に送ることなく下水処理場に送ることとするのも好ましい。
この処理方法によれば、ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水をし尿処理場で処理することができ、したがってごみ処理場には専用の排水処理装置が不要になることから、やはり設備費用・運転費用に関する利点がある。しかも、この方法では、し尿処理場で受け入れるのが一般的な浄化槽汚泥を下水処理場に送るため、し尿処理場における窒素除去の負担が過剰になることもない。
【0019】
4) ごみ処理場のメタン発酵槽の排水を、生物処理槽を有する下水処理場の流入部へ送ることとするのもよい。
そうすることによってもメタン発酵槽の排水は下水処理場の生物処理槽にて浄化され、放流可能になる。ごみ処理場に専用の排水処理装置を設ける必要がないので、設備費用・運転費用に関して有利である。
【0020】
5) ごみ処理場のメタン発酵槽の排水を、ごみ処理場内の生物反応槽で曝気したのち、嫌気好気法生物反応槽を有する下水処理場の流入部へ送ることとするのも好ましい。
そうすれば、ごみ処理場に専用の排水処理装置を設けなくとも、メタン発酵槽の排水がほぼ完全に脱窒されるという利点がある。完全な脱窒が可能になるのは、生物処理槽での曝気によって排水中のアンモニア性窒素が硝酸性窒素になり、硝酸性窒素は嫌気好気法生物反応槽の嫌気槽において完全に除去され得るからである。完全な脱窒により、メタン発酵槽の排水は、富栄養化対策がとられる閉鎖性水域等に対しても放流が可能になる。
【0021】
6) 下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥をごみ処理場のごみの焼却手段に投入することとするのもよい。
そうすれば、下水処理場やし尿処理場のそれぞれに専用の汚泥焼却炉を建設したり、それを維持管理したりすることが不要となり、設備費用・運転費用に関する利点がある。
【0022】
7) ごみ処理場におけるボイラか、メタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンか、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンかを発生源とする熱を蒸気に保有させ、その蒸気を利用して、下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を乾燥させることとするのもよい。
そうすることにより、脱水汚泥の乾燥のために外部から化石燃料等を供給する必要がなくなり、経済的である。なお、脱水汚泥を乾燥させることから、a)同汚泥が減容化されるので、産廃処分する際の処分費が少なくて済む、b)水分が少なくなるのでハンドリングが容易となり農業利用などが容易となる、c)発熱量が上がるので燃料として利用しやすくなる、といったメリットがある。
【0023】
8) 下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を上記7)のとおり乾燥させる際の排熱によって、ごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温することとするのもよい。
そのようにすれば、上記のメタン発酵槽または消化槽をきわめて容易に加温することができる。また、バイオガスを使用するボイラやガスエンジンを設けない場合にも、あるいはそれらボイラやガスエンジンからの熱を他の用途に使用する場合にも、上記のメタン発酵槽または消化槽を加温することができる。
【0024】
9) 下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を炭化または活性炭化することとし、そのための炭化炉または活性炭化炉の排熱を利用して当該脱水汚泥を乾燥させ、乾燥した汚泥を、ごみ処理場のメタン発酵槽からのバイオガスおよび下水処理場の消化槽からのバイオガスを補助燃料として加えながら上記炭化炉または活性炭化炉により炭化または活性炭化する、というプロセスをとるのも好ましい。
そうする場合には、乾燥のための熱風の発生炉としても炭化炉または活性炭化炉を使用できるため、専用の熱風発生炉が不要になるという利点がある。そのほか、脱水汚泥を炭化することにより、a)汚泥が減容化される、b)臭気がなくなってハンドリングが容易となる、c)腐敗しないので保存性がよくなる、d)土壌改良資材、製鉄所保温材、ボイラ燃料などとして広く利用できる、といったメリットもともなう。また、脱水汚泥を活性炭化する場合には、a)活性炭が吸着能力を有するので、例えばごみ焼却場の焼却炉の排ガスのダイオキシン除去に使われる活性炭などとして利用できる、b)高付加価値なものとして販売できる、といったメリットもさらに付随する。
【0025】
10) 脱水汚泥を上記9)のとおり乾燥させる際の排熱によって、ごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温することとするとよい。
そうする場合にも、上記メタン発酵槽または消化槽をきわめて容易に加温することができる。バイオガスを使用するボイラやガスエンジンを設けない場合にも、あるいはそれらボイラやガスエンジンからの熱を他の用途に使用する場合にも、メタン発酵槽または消化槽を加温できる。また、メタン発酵槽または消化槽の加温に使用した後の残ガスを、炭化炉または活性炭化炉への補助燃料として燃焼させ、それによって脱臭できることから、残ガスの脱臭装置が不要になるというメリットもある。
【0026】
11) ごみ処理場におけるボイラか、メタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンか、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンかを発生源とする熱を蒸気に保有させ、その蒸気を利用して、下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を乾燥させ、乾燥させた汚泥をさらに炭化または活性炭化することとするのも好ましい。
そうすると、脱水汚泥の乾燥のために外部から化石燃料等を供給する必要がなくなる。脱水汚泥を乾燥させることから、a)減容化されるので産廃処分する際の処分費が少なくて済む、b)水分が少なくなるのでハンドリングが容易となり農業利用などが容易となる、c)発熱量が上がるので燃料として利用しやすくなる、といったメリットもある。炭化炉または活性炭化炉の排熱を利用しないとすると、バイオガスの添加が不要であるうえ、他の施設とは独立して運転できて運用が容易である。
【0027】
12) 脱水汚泥を上記11)のとおり乾燥させる際の排熱によって、ごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温するのもよい。
その場合にも、上記メタン発酵槽または消化槽をきわめて容易に加温できる。バイオガスを使用するボイラやガスエンジンを設けない場合にも、またそれらボイラやガスエンジンからの熱を他の用途に使用する場合にも、やはりメタン発酵槽または消化槽を加温することができる。
【0028】
13) ごみ処理場、下水処理場またはし尿処理場のうち2以上の処理場の臭気ガスを1組の共用の脱臭装置によって脱臭処理することとするのもよい。
一般に、ごみ処理場、下水処理場、し尿処理場には似たような脱臭装置が存在する。しかし、こうして脱臭装置(の一部または全部)を共有にすることで、脱臭に関する設備費・運転費を節約することができる。
【0029】
請求項に係る廃棄物と汚水の処理設備は、ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場と、脱窒槽を有するし尿処理場とが、配管もしくは給電線により接続されまたは輸送手段により連係されたものであって、上記いずれかに記載した処理方法を実施できるよう構成されていることを特徴とする。
そのような処理設備であれば、上記した処理方法を実施して、上記それぞれの利点をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項に係る発明である廃棄物と汚水の処理方法および処理設備によれば、処理が合理化されてコスト上のメリット等がもたらされ、下記いずれかの効果が得られる。
・ 従来は各処理場に設けられていた同様の設備(バイオガスの精製手段・タンク・利用のための手段、汚泥焼却炉、または脱臭装置)を集約して共用にすることにより、設備コストが低減でき、設備の維持管理も容易になる。
・ ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水について、専用の排水処理装置を設けず全体としてのコストを抑えながら、必要な排水処理を行って放流することが可能になる。
・ 各処理場の排熱を有効に利用して、メタン発酵槽や消化槽の加温、または脱水汚泥の乾燥等を行うことができ、化石燃料の使用による運転費用を低減することができる。
・ いずれかの処理場で得られる電力または水を他のいずれかの処理場で利用して、電力コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1〜図13に発明の実施の形態を紹介する。各図は実施例1)〜実施例13)をそれぞれ表しており、いずれも、ごみ処理場1と下水処理場3、し尿処理場5を有する総合処理設備における機器配置および材料とエネルギーのフローを示す系統図である。
【0032】
実施例1)を表す図1は、ごみ処理場1で発生する熱や電気(電力)を下水処理場3等で利用するとともに、下水処理場3やし尿処理場5でできる水をごみ処理場1で利用し、またバイオガスのガスタンク24等を共有にした例を示している。
【0033】
図1について、はじめに各処理場での機器配置とフローの概略を説明する。
まずごみ処理場1には、焼却手段11と乾式メタン発酵槽20(固形物濃度が15〜60%の有機性廃棄物を対象)とを併設している。焼却手段11は、焼却炉またはガス化溶融炉、直溶炉、炭化炉などのいずれかであればよく、乾式メタン発酵槽20は、乾式に代えて湿式のものを使用してもよい。ごみ処理場1に送られた可燃ごみは、約50%ずつに分けて一方を前処理手段18に供給し、そこで発酵不適物を除去して残りを乾式メタン発酵槽20に投入する。焼却手段11には、上記で分けられた約50%の可燃ごみと、前処理手段18で除去された発酵不適物とが(したがって全可燃ごみの70〜80%が)、投入手段11aを介して投入される。焼却手段11にはボイラ12を付設しており、発生する蒸気をタービン発電機13に送って発電している。一方の乾式メタン発酵槽20の下流側には脱水機21と排水処理装置22を接続するとともに、メタン発酵によって生じるバイオガス(メタンガス)をガス精製装置23、ガスタンク24に送ったうえ、そのガスの利用手段であるガスエンジン発電機25に供給している。バイオガスの一部は場外へ供給するようにもしている。
【0034】
下水処理場3には、脱窒等を行う生物反応槽33とともに、汚泥を消化(メタン発酵)するための消化槽38を配置している。下水は、初沈槽31に通したうえ生物反応槽33に入れ、さらに終沈槽34を経由させて放流し、その一部は砂ろ過器36に通す。初沈槽31および終沈槽34の各濃縮機32・35で得た濃縮汚泥は消化槽38に投入し、さらに、凝集剤を加えて脱水機39にかけることにより脱水汚泥とし、産廃処分する。消化槽38で発生するバイオガスは、ガス精製装置40に送る。
【0035】
また、し尿処理場5には、一次硝化脱窒槽52と再曝気槽54等とを前後に備える脱窒槽53を設けて、し尿および浄化槽汚泥に含まれる窒素を除去することとしている。そのうえで、膜55・57および凝集混和槽56に通した水分は、活性炭吸着塔58を経由させて放流する。膜55・57で分離された汚泥は、濃縮機61および脱水機62に通して脱水汚泥とし、それと分離されたろ液は再び脱窒槽52・53等に送る。
【0036】
図1(実施例1))の処理設備では、下記のとおり、いずれかの処理場で発生するバイオガスや蒸気、温水、水、電気を他の処理場に送ることにより、その有効利用をはかり、または処理の効率化を実現している。すなわち、
・ ごみ処理場1におけるボイラ12で発生する温水および蒸気を、下水処理場3に送って消化槽38の加温に使用する。ごみ処理場1のメタン発酵槽20から発生するバイオガスを燃料とするガスエンジン発電機25に排熱回収装置を付け、それより発生する温水および蒸気も、同じ経路で下水処理場3に送って消化槽38を加温する。なお、上記ボイラ12等で発生する温水は、同じごみ処理場のメタン発酵槽20の加温にも使用する。
・ ごみ処理場1のタービン発電機13で発生する電気と、同じごみ処理場1のガスエンジン発電機25で得られる電気を、下水処理場3およびし尿処理場5に供給して利用する。
・ 下水処理場3の消化槽38から出るバイオガスについて、精製装置40の下流には専用のガスタンクやガスエンジン発電機を設けないこととし、その代替として、ごみ処理場1のメタン発酵槽20からのバイオガス用のガスタンク24とガスエンジン発電機25を使用する。
・ 下水処理場3の処理水およびし尿処理場5の処理水を、ごみ処理場1での利用に供する。また、し尿処理場5で得る脱水汚泥は、ごみ処理場1の焼却手段11(の投入手段11a)にて焼却処理する。なお、し尿処理場5についてはごみ処理場1および下水処理場3との関連を絶ち、ごみ処理場1等への処理水や脱水汚泥の供給等を行わないこととするのもよい。
【0037】
図1(実施例1))の処理設備と処理方法、および後述する図2(実施例2))以下の設備・方法における効果を定量的に把握するために、ここで、設備が設置され使用される環境として一般的であると考えられる下記のような条件を想定的に設定する。
【0038】
a) 設定条件
人口: 20万人
ごみの処理量: 1.1kg/人・日として、220t/日。メタン発酵施設に投入する割合を0.5、メタン発酵施設の脱水汚泥の割合を0.2とすると、ごみ焼却量は0.7となる。メタン発酵施設の処理量は110t/日、ごみ焼却炉の処理量は154t/日となる。
下水処理量: 下水道普及率67%、300L/人・日、家庭系排水:事業系排水=2:1より、計60,000m3/日。下水処理場は同じ規模のもの(各流入下水量30,000m3/日)が2箇所にあって、片方がごみ処理場やし尿処理場と隣接していて本発明の対象(実施例)であるとする。他方は対象外であるとする。
し尿処理量: し尿汲み取り率を12%、し尿の量は1.8L/人・日として、43.2m3/日。浄化槽(農業集落排水施設・コミプラ等を含む)の普及率を18%、浄化槽汚泥の量を1.3L/人・日とすると、46.8m3/日。し尿処理場の受け入れ量は、し尿43.2m3/日+浄化槽汚泥46.8m3/日=計90m3/日。
【0039】
b) バイオガス発生量について
ごみ処理場のメタン発酵施設からのバイオガス量: ごみ処理量220t/日×メタン発酵する割合0.5×170Nm3/t投入ごみ=18,700Nm3/日。これより、18,700Nm3/日×低位発熱量5,000kcal/Nm3÷24時問÷860kcal/kWh=4,530kWh/h。
下水処理場の消化槽からのバイオガス量: 濃縮汚泥200m3/日×固形物濃度2.5%/100×有機物濃度85%/100×消化率50%/100×900Nm3/分解有機物t=1,913Nm3/日。そして1,913Nm3/日×低位発熱量5,000kcal/Nm3÷24時間÷860kcal/kWh=463kWh/h。
【0040】
c) 発電量について
ごみ処理場の焼却炉のタービン発電機による発電量: 154t/日×1000kg/t×1,800kcal/kg×発電効率15%/100÷24時問÷860kcal/kWh=2,015kWh/h。発電量と同等の排熱が発生すると、排熱2,015kWh/hが温水として利用可。
ごみ処理場のメタン発酵施設のガスエンジン発電機による発電量: バイオガスの熱量4,530kWh/hに対して、ガスエンジンの発電効率35%を適用すると1,585kWh/h、排熱2,265kWh/hが蒸気又は温水として利用可。
下水処理場のガスエンジン発電機による発電量: バイオガスの熱量463kWh/hに対して、ガスエンジンの発電効率35%を適用すると162kWh/h、排熱232kWh/hが蒸気又は温水として利用可。
【0041】
d) 使用電力量について
ごみ処理場: 焼却炉1,000kWh/h+メタン発酵施設800kWh/h=計1,800kWh/h。
下水処理場: 800kWh/h(脱水汚泥は場外処分とする)。
し尿処理場: 250kWh/h。
【0042】
e) 加温用熱量について
ごみ処理場のメタン発酵槽: 110m3/日×2倍に返送水で希釈×(55−25℃)×1000kcal/m3・℃÷24時間÷860kcal/kWh=320kWh/h必要。
下水処理場の消化槽: 200m3/日×(37-15℃)×1000kcal/m3・℃÷24時間÷860kcal/kWh=213kWh/hが必要。
【0043】
f) 水の使用量について
ごみ処理場の焼却炉: 50m3/日を使用。
ごみ処理場のメタン発酵施設: 10m3/日を使用。
【0044】
g) 排水量について
ごみ処理場のメタン発酵施設の排水量: 40m3/日。
下水処理場の放流水量: 30,000m3/日。
し尿処理場の放流水量: 90m3/日。
【0045】
h) 窒素の負荷について
ごみ処理場のメタン発酵施設の排水: 総窒素濃度3,000mg/L、アンモニア性窒素濃度1,500mg/L、硝酸性窒素濃度0 mg/L。
下水処理場の流入水: 総窒素濃度30mg/L、アンモニア性窒素濃度20mg/L、硝酸性窒素濃度0mg/L。
し尿処理場の汲み取りし尿: 総窒素濃度3,000mg/L、アンモニア性窒素濃度2,500mg/L、硝酸性窒素濃度0mg/L。
し尿処理場の浄化槽汚泥: 総窒素濃度1,500mg/L、アンモニア性窒素濃度150mg/L、硝酸性窒素濃度300mg/L。
【0046】
i) 脱水汚泥の発生量について
下水処理場: 固形物量は、濃縮汚泥200m3/日×1000kg/m3×固形物濃度2.5%/100×(1−(有機物濃度85%/100×消化率50%/100))=2,875kg/日。脱水汚泥の含水率を82%とすると16t/日となる。
し尿処理場: 固形物量は、し尿43.2m3/日×汚泥発生量10kg/m3+浄化槽汚泥46.8m3/日×汚泥発生量8kg/m3=806kg/日。脱水汚泥の含水率を82%とすると4t/日となる。
【0047】
j) 炭化製品または活性炭化製品について
下水処理場: 乾燥汚泥の固形物量は2,875kg/日、乾燥汚泥の有機物量は2,125kg/日、無機物量は750kg/日。炭化製品または活性炭化製品の製造量は、有機物量:無機物量=1:1とすると、1,500kg/日。乾燥汚泥の有機物の低位発熱量を4,500kca1/kg、炭化製品または活性炭化製品の有機物の低位発熱量を6,000kca1/kgとすると、炭化炉または活性炭化炉の排ガスの熱量は、(2,125×4,500−750×6,000)÷24時間÷860=245kWh/h。
し尿処理場: 乾燥汚泥の固形物量は806kg/日、乾燥汚泥の有機物量:無機物量=70:30とすると、乾燥汚泥の有機物量は564kg/日、無機物量は242kg/日となる。炭化製品または活性炭化製品の製造量は、有機物量:無機物量=1:1とすると、484kg/日。乾燥汚泥の有機物の低位発熱量を4,500kca1/kg、炭化製品または活性炭化製品の有機物の低位発熱量を6,000kca1/kgとすると、炭化炉または活性炭化炉の排ガスの熱量は、(564×4,500−242×6,000)÷24時間÷860=53kWh/h。
【0048】
以上のとおり設定した条件のもとで図1の例(実施例1))の実施可能性と量的効果を検討すると、つぎのように評価される。すなわち、
・ 上記のc)およびe)によれば、蒸気または温水の熱が2,015+2,256+232=4,503kWh/hであるのに対して、加温に必要な熱量は320+213=533kWh/hであり、十分に熱がある。余剰分は場外にて利用することができる。
・ 上記のc)およびd)によれば、使用電力量が1,800+800+250=2,850kWh/hであるのに対して、発電量は2,015+1,585+162=3,762kWh/hであり、十分に電気がある。余剰分は場外利用可。
・ 上記b)によれば、下水処理場から発生するバイオガスの量は、ごみ処理場から発生するバイオガスの量に比べてかなり少ない(上記の試算例では約1/10)ので、下水処理場のこれらバイオガスに関する各装置は、ごみ処理場のそれに集約することで、建設費が少なくて済み、維持管理も容易となる。
・ 上記f)によれば、ごみ処理場で、地下水を汲み上げたり、上水や工業用水を使用したりしなくて済む。
【0049】
つづく図2は実施例2)を表すもので、図1の例(実施例1))に対し、メタン発酵槽20からの排水をし尿処理場5で処理することとした例である。すなわち、ごみ処理場1のメタン発酵槽20には排水処理装置を設けず、同発酵槽20につづく脱水機21からの排水をし尿処理場5の一次硝化脱窒槽52のすぐ上流側に送っている。このようにしたことにより、ごみ処理場1に専用の排水処理装置を設けなくとも、メタン発酵槽20の排水はし尿処理場5の脱窒槽53等で脱窒され、放流可能となる。なお、図2およびそれ以降の図においては、他の図(図1等)と同様の部分には同一の符号を付している。
【0050】
この図2の例(実施例2))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 前記g)によれば、ごみ処理場のメタン発酵施設の排水が40m3/日あるので、これをし尿処理場で処理するとき、し尿処理場は水負荷は1.4倍へ増加する。しかし、下水道普及率の上昇に伴い、し尿処理場の処理量は年々減少傾向にあるので、仮に90m3/日設計のところが、処理量が70m3/日まで低下している場合は、1.2倍への増加で済み、極端な負担増にはならない。
【0051】
図3は実施例3)を示し、図1の例(実施例1))に加えて、メタン発酵槽20の排水をし尿処理場5で処理するとともに、浄化槽汚泥は脱窒槽52・53等をバイパスさせて下水処理場3へ送ることとした例である。すなわち、図2の例と同様にごみ処理場1のメタン発酵槽20には排水処理装置を設けず、同発酵槽20の排水をし尿処理場5の脱水機62に送る。ただし、もし同発酵槽20の排水が十分に清浄であれば、脱水機62に入れることなく脱窒槽52・53等の上流側に送る。そして、し尿処理場5で受け入れる浄化槽汚泥は、挟雑物除去装置51で挟雑物を除去したうえ、下水処理場3における脱水機39の上流側に送る(少量を初沈槽31に送るのもよい)。
この例では、ごみ処理場1に専用の排水処理装置を設けなくとも、メタン発酵槽20の排水がし尿処理場5の脱窒槽53等で脱窒されて放流可能となり、しかも、し尿処理場における窒素除去の負担が過剰になることが避けられる。
【0052】
この図3の例(実施例3))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 前記a)およびg)によれば、し尿処理場が、浄化槽汚泥46.8m3/日の代わりにごみ処理場のメタン発酵施設の排水40m3/日を受入れることは、流量としては問題ない。また、前記a)・g)・h)によれば、ごみ処理場のメタン発酵施設の排水のうち、有機性窒素が1,500mg/Lであり、通常、有機性窒素のうち、例えば90%以上が固形性で、残る10%が溶解性であるとすると、この排水を脱水すれば、ろ液には、主にアンモニア性窒素1,500mg/Lと有機性の溶解性窒素150mg/Lが残り、合計で総窒素濃度1,650mg/Lとなる。よって、これをし尿処理場で処理するとき、窒素負荷は1,650mg/L×40m3/日=66kg窒素/日の負荷がかかる。これに対して、浄化槽汚泥を、挟雑物を除去した後に、下水処理場に投入すれば、し尿処理場のその分の窒素負荷を軽減でき、その軽減分は、1,500m3/日×46.8m3/日=70kg窒素/日である。よって、これらの方法により、し尿処理場の窒素除去の負荷を上昇させることなく、ごみ処理場のメタン発酵施設の排水を処理できる。
【0053】
図4は実施例4)を示し、図1の例(実施例1))に加えて、メタン発酵槽20の排水を下水処理場3で処理することとした例である。すなわち、やはりごみ処理場1のメタン発酵槽20には排水処理装置を設けず、同発酵槽20の排水を下水処理場3の初沈槽31または生物反応槽33に入れる。ごみ処理場1に専用の排水処理装置を設けなくとも、メタン発酵槽20の排水は下水処理場の生物処理槽にて浄化され、放流可能になる。
【0054】
この図4の例(実施例4))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 前記a)およびh)によれば、ごみ処理場のメタン発酵施設の排水の窒素量は3,000mg/L×40m3/日=120kg窒素/日であり、下水処理場の流入水の窒素量は30mg/L×30,000m3/日=900kg窒素/日である。よって、下水処理場がごみ処理場のメタン発酵施設の排水を受入れると、窒素負荷は13%の上昇となる。しかし、通常、下水処理場は人口増加や流入水の負荷変動を加味して十分な余裕をとって建設しているので、この程度であれば問題はない。
【0055】
図5は実施例5)を示し、図1の例(実施例1))に加えて、メタン発酵槽20の排水を硝化したうえで下水処理場3に送って処理する例である。やはりごみ処理場1のメタン発酵槽20には排水処理装置を設けず、脱水機21の下流側に接触曝気槽(生物反応槽)26を設け、そこでの曝気によってアンモニア性窒素を硝酸性窒素に消化し、そのうえで下水処理場3に送る。下水処理場3には嫌気好気法生物反応槽33Aを設置しておき、そこで硝酸性窒素を除去するのである。
この例では、ごみ処理場1に専用の排水処理装置を設ける必要がなくなるほか、硝酸性窒素を経由する上記の処理によって、メタン発酵槽20からの窒素が完全に除去されるという利点がある。窒素が完全に除去された排水は、湖沼や海、河川の閉鎖性水域にも問題なく放流することが可能になる。
【0056】
この図5の例(実施例5))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 下水処理場では、放流先が閉鎖性水域などの場合は、富栄養化対策として、窒素の除去が求められることがある。この場合、下水処理場の生物反応槽では、嫌気好気法による生物処理が行われ、窒素が除去される。嫌気好気法では、嫌気部で、有機物の分解と、硝酸性窒素→窒素ガスヘの脱窒が行われ、好気部で、アンモニア性窒素→硝酸性窒素への硝化が行われ、硝化した液の約半分の水が嫌気部に戻される。ここで、ごみ処理場のメタン発酵施設の排水を、曝気して微生物により十分に浄化すれば、アンモニア性窒素は硝化されて硝酸性窒素となる。この硝酸性窒素を、嫌気好気法を採用している下水処理場の嫌気部に流せば、窒素を除去できる。これを適用するとき、前記g)・h)によれば、嫌気部への硝酸性窒素の流入量は、下水由来は20mg/L×30,000m3/日×返送比0.5=300kg窒素/日となり、ごみ処理場のメタン発酵施設の排水由来は1,500mg/L×40m3/日=60kg窒素/日であり、窒素負荷は20%の上昇に過ぎない。
【0057】
図6は実施例6)を示し、図3の例(実施例3))に加えて、下水処理場3の脱水機39から出る脱水汚泥を、し尿処理場5の脱水機62の脱水汚泥とともにごみ処理場1の焼却手段11(投入手段11a)に送って焼却することとした例である。下水処理場3やし尿処理場5のそれぞれに専用の汚泥焼却炉を建設して使用する必要がなくなる。
【0058】
この図6の例(実施例6))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 前記a)およびi)によれば、下水処理場とし尿処理場の各脱水汚泥発生量の合計は20t/日である。これに対して、ごみ処理場の焼却炉の処理量は154t/日である。通常、ごみ焼却炉では、通常のごみ量に対して汚泥量は約1/3程度であれば安定して混合燃焼できるので、20t/日を受入れることに問題はない。
【0059】
図7は実施例7)を示し、図3の例(実施例3))に加えて、下水処理場3の脱水機39から出る脱水汚泥等を乾燥処理する例である。脱水機39の下流側に乾燥機45を設け、これに、下水処理場3の脱水汚泥と、し尿処理場5の脱水機62から出る脱水汚泥とを送り込む。乾燥機45には、ごみ処理場1のボイラ12や、タービン発電機13、ガスエンジン発電機25の排熱で発生する蒸気を供給して乾燥用熱源とする。脱水汚泥を乾燥させることによるメリットのほか、脱水汚泥の乾燥のために外部から化石燃料等を供給する必要がなくなるという経済的効果がある。
【0060】
この図7の例(実施例7))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 前記a)・c)・i)によれば、脱水汚泥の合計量は20t/日であり、このうち水分を蒸発させるためには、20t/d×含水率82%/100×((120−15℃)×比熱1+蒸発潜熱560kca1/kg)÷24時間÷860kcal/kWh=528kWh/hのエネルギーが必要となる。このためには、ガスエンジンの排熱などで十分に熱量がある。
【0061】
図8は実施例8)を示し、図7の例(実施例7))に加え、下水処理場3において乾燥機45の排ガスで消化槽38を加温することとした例である。これによると、加温のためのボイラ等を設けなくとも、低コストで容易に消化槽を加温することができる。
【0062】
この図8の例(実施例8))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 前記g)によれば、乾燥機の排ガスを常温まで冷却して水蒸気を水まで凝縮させるとき、528kWh/hの熱量を放熱できる。よって、ごみ処理場のメタン発酵槽への投入原料または下水処理場の消化槽への投入原料にこの乾燥機の排ガスを接触させて伝熱すると、前記e)にある加温に必要な熱量320+213=533kWのほとんどを供給できる。
【0063】
図9は実施例9)を示し、図3の例(実施例3))に加えて、下水処理場3での脱水汚泥を乾燥させたうえ炭化または活性炭化させる例である。下水処理場3の乾燥機45につづけて炭化炉または活性炭化炉46を設置し、これに脱水汚泥を送る。同時に、炭化炉または活性炭化炉46の排ガスは熱交換器47に通し、回収される排熱を乾燥機45に送ることとする。このようにすれば、脱水汚泥を炭化また活性炭化することによるメリットともに、炭化炉または活性炭化炉を乾燥のための熱風の発生炉として使用できるというメリットがもたらされる。
【0064】
この図9の例(実施例9))の実施可能性等を前記設定条件のもとで検討するとつぎのようになる。
・ 前記g)によれば、脱水汚泥の乾燥に必要なエネルギーは528kWh/hである。一方、前記j)によれば、炭化炉または活性炭化炉の排ガスの熱量は245+53=298kWh/hである。よって、炭化炉または活性炭化炉に、前記b)のバイオガスの一部を添加して、その炉の排ガスの熱量を230kWh以上(=528−298)増加させれば、乾燥のために十分な熱量を得られる。
【0065】
図10は実施例10)を示し、図9の例(実施例9))に加えて、乾燥機45の排熱によって消化槽38を加温する例である。すなわち、下水処理場3に設ける脱水汚泥の乾燥機45から出る排ガス(またはそれにて発生させた温水または蒸気)を消化槽38に送る。
【0066】
この実施例10)では、前記の実施例8)と同じ効果がもたらされる。付け加えるに、乾燥機の排ガスを、消化槽の加温に利用した後に、残るガスを炭化炉または活性炭化炉で燃焼し脱臭できるので、残ガスの脱臭装置が不要となる。
【0067】
図11は実施例11)を示し、図3の例(実施例3))に加えて、下水処理場3の脱水汚泥を乾燥させたうえ炭化または活性炭化処理をする例である。すなわち、図3に示した脱水機39の下流側に、乾燥機45と炭化炉または活性炭化炉46を接続している。炭化炉または活性炭化炉46の排熱は、特別な用途には使用しない。
この実施例11)では、実施例9)に比べると、炭化炉または活性炭化炉の排熱を利用しないので、バイオガスの添加が不要であるうえ、その他の施設とは独立して運転でき、運用が容易であるという利点がある。
【0068】
図12は実施例12)を示し、図11の例(実施例11))に加えて、下水処理場3の脱水汚泥を乾燥させる際の排熱で消化槽38を加温する例である。すなわち、脱水機39の下流側に設けた乾燥機45の排熱で発生させる温水または蒸気を、消化槽38に送る。
この実施例12)では、実施例8)と同様、加温のためのボイラ等を設けなくとも、低コストで容易に消化槽を加温することができる。
【0069】
図13は実施例13)を示し、図6の例(実施例6))に加えて、脱臭装置65を1台のみ設置した例である。この例では脱臭装置65はし尿処理場5に設け、これに、ごみ処理場1および下水処理場3の臭気ガスを送り込む。
似たような脱臭装置をごみ処理場、下水処理場、し尿処理場のそれぞれに設けるのではなく、共有の脱臭装置を設けて共用することで、脱臭装置の設備費を節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】発明の実施形態として、廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例1)を示す系統図である。
【図2】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例2)を示す系統図である。
【図3】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例3)を示す系統図である。
【図4】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例4)を示す系統図である。
【図5】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例5)を示す系統図である。
【図6】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例6)を示す系統図である。
【図7】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例7)を示す系統図である。
【図8】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例8)を示す系統図である。
【図9】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例9)を示す系統図である。
【図10】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例10)を示す系統図である。
【図11】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例11)を示す系統図である。
【図12】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例12)を示す系統図である。
【図13】廃棄物と汚水の処理方法および設備の実施例13)を示す系統図である。
【図14】廃棄物と汚水の処理方法および設備について、従来の例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ごみ処理場
3 下水処理場
5 し尿処理場
11 焼却手段
12 ボイラ
13 タービン発電機
20 メタン発酵槽
22 排水処理装置
23・40 ガス精製装置
24・41 ガスタンク
25 ガスエンジン発電機
26 接触曝気槽(生物反応槽)
33 生物反応槽
33A 嫌気好気法生物反応槽
38 消化槽
39 脱水機
45 乾燥機
46 炭化炉または活性炭化炉
51 挟雑物除去装置
52 一次硝化脱窒槽
53 脱窒槽
62 脱水機
65 脱臭装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、
ごみ処理場のメタン発酵槽で発生するバイオガスのための精製手段、タンク、またはそのバイオガスの利用のための手段に、下水処理場の消化槽で発生するバイオガスをも送ることを特徴とする廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項2】
ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場と、硝化脱窒槽を有するし尿処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、
ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水をし尿処理場の硝化脱窒槽に送るとともに、浄化槽汚泥を、し尿処理場の硝化脱窒槽に送ることなく下水処理場に送ることを特徴とする廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項3】
ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、嫌気好気法生物反応槽を有する下水処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、
ごみ処理場のメタン発酵槽からの排水を、曝気することによってアンモニア性窒素の硝化を行ったのち、下水処理場の嫌気好気法生物反応槽の嫌気槽に送ることを特徴とする廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項4】
ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場と、脱窒槽を有するし尿処理場とを使用する廃棄物と汚水の処理方法であって、
ごみ処理場におけるボイラか、メタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンか、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンかを発生源とする熱を、温水または蒸気に保有させ、その温水または蒸気によってごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温すること、
ごみ処理場におけるボイラからの蒸気によるタービン発電機か、ごみ処理場のメタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジン発電機か、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジン発電機かによって発生する電力を、ごみ処理場、下水処理場またはし尿処理場で利用すること、
ごみ処理場のメタン発酵槽からのバイオガスおよび下水処理場の消化槽からのバイオガスについて、精製手段、タンク、またはそのバイオガスの利用のための手段を共用すること、
および、下水処理場の処理水またはし尿処理場の処理水を、ごみ処理場に送って利用すること
を特徴とする廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項5】
ごみ処理場のメタン発酵槽の排水を、し尿処理場の流入部へ送ることを特徴とする請求項4に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項6】
ごみ処理場のメタン発酵槽の排水をし尿処理場の流入部へ送る一方、し尿処理場で受け入れた浄化槽汚泥を、し尿処理場の脱窒槽に送ることなく下水処理場に送ることを特徴とする請求項4に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項7】
ごみ処理場のメタン発酵槽の排水を、生物処理槽を有する下水処理場の流入部へ送ることを特徴とする請求項4に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項8】
ごみ処理場のメタン発酵槽の排水を、ごみ処理場内の生物反応槽で曝気したのち、嫌気好気法生物反応槽を有する下水処理場の流入部へ送ることを特徴とする請求項4に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項9】
下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥をごみ処理場のごみの焼却手段に投入することを特徴とする請求項6に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項10】
ごみ処理場におけるボイラか、メタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンか、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンかを発生源とする熱を蒸気に保有させ、その蒸気を利用して、下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を乾燥させることを特徴とする請求項6に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項11】
下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を上記のとおり乾燥させる際の排熱によって、ごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温することを特徴とする請求項10に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項12】
下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を炭化または活性炭化することとし、そのための炭化炉または活性炭化炉の排熱を利用して当該脱水汚泥を乾燥させ、乾燥した汚泥を、ごみ処理場のメタン発酵槽からのバイオガスおよび下水処理場の消化槽からのバイオガスを補助燃料として加えながら上記炭化炉または活性炭化炉により炭化または活性炭化することを特徴とする請求項6に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項13】
脱水汚泥を上記のとおり乾燥させる際の排熱によって、ごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温することを特徴とする請求項12に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項14】
ごみ処理場におけるボイラか、メタン発酵槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンか、または下水処理場の消化槽からのバイオガスを燃料とするガスエンジンかを発生源とする熱を蒸気に保有させ、その蒸気を利用して、下水処理場またはし尿処理場の脱水汚泥を乾燥させ、乾燥させた汚泥をさらに炭化または活性炭化することを特徴とする請求項6に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項15】
脱水汚泥を上記のとおり乾燥させる際の排熱によって、ごみ処理場のメタン発酵槽または下水処理場の消化槽を加温することを特徴とする請求項14に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項16】
ごみ処理場、下水処理場またはし尿処理場のうち2以上の処理場の臭気ガスを1組の共用の脱臭装置によって脱臭処理することを特徴とする請求項9に記載した廃棄物と汚水の処理方法。
【請求項17】
ごみの焼却手段にメタン発酵槽が併設されたごみ処理場と、消化槽を有する下水処理場と、脱窒槽を有するし尿処理場とが、配管もしくは給電線により接続されまたは輸送手段により連係された廃棄物と汚水の処理設備であって、
請求項1〜16のいずれかに記載した処理方法を実施するよう構成されていることを特徴とする廃棄物と汚水の処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−253963(P2008−253963A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101943(P2007−101943)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】