廃熱回収装置、廃熱回収システム及び廃熱回収方法
【課題】 炉又は内燃機関から排出される排ガスの顕熱を、H2燃料等の燃料として回収できる新たな廃熱回収装置を提供する。
【解決手段】 炉、内燃機関、又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、DMEを改質する触媒を充填した熱交換器を設置する。熱交換器にDMEとH2Oの混合ガスを通すことにより、DMEを熱分解し、炉又は内燃機関の排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。廃熱を単なる蒸気、温水、加熱空気等として回収するのではなく、H2燃料、又はH2及びCO燃料として回収するので、回収されたエネルギーの用途が限定されない(すなわち、燃料の燃焼熱として回収することになるので、遠方へ輸送しても回収されたエネルギーが減少することはない)。
【解決手段】 炉、内燃機関、又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、DMEを改質する触媒を充填した熱交換器を設置する。熱交換器にDMEとH2Oの混合ガスを通すことにより、DMEを熱分解し、炉又は内燃機関の排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。廃熱を単なる蒸気、温水、加熱空気等として回収するのではなく、H2燃料、又はH2及びCO燃料として回収するので、回収されたエネルギーの用途が限定されない(すなわち、燃料の燃焼熱として回収することになるので、遠方へ輸送しても回収されたエネルギーが減少することはない)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種産業部門から排出される廃熱を回収する方法に関し、特に炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱回収装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼させる燃焼炉に代表される各種の炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置から放出される排ガスの廃熱を回収する努力が続けられ、省エネルギーの実績を挙げている。
【0003】
排ガスの廃熱の回収方法として、一般的に世の中では、排ガスの顕熱を熱エネルギーとして回収する方法が行われている。具体的には、燃焼装置の排気系統に熱交換器を設置し、その熱交換器に熱回収媒体を通して、熱回収媒体を排ガスで加熱することにより、排ガスの顕熱を熱エネルギーとして回収する。例えば廃熱ボイラは、熱交換媒体として水を用い、排ガスの顕熱を低圧蒸気や温水の熱エネルギーとして回収する。レキュペレータ、リジェネバーナは、熱交換媒体として空気を用い、排ガスの顕熱を予熱した加熱空気の熱エネルギーとして回収する。
【0004】
廃熱回収技術に影響を及ぼす廃熱の特徴として、エネルギー密度が低いことが挙げられる。排ガスの温度が低温の300℃以下になる場合もあり、この場合、熱交換器で排ガスから熱交換媒体に熱交換すると、最大200〜250℃の熱エネルギーしか回収できない。エネルギー密度の低い熱エネルギーは低温の加熱源としてしか利用できない。この問題を克服すべく、廃熱を高効率で回収しようとすると、伝熱面積の大きな熱交換器が必要になり、廃熱回収装置が大きくなりがちである。
【0005】
また、廃熱回収技術の問題点として、廃熱回収技術の用途が燃焼用空気や低温の加熱源などに限定され、使用先が回収熱源の近くに限定される(加熱空気や蒸気を配管などで遠方へ輸送すると、熱放散が大きくなり、回収した熱を有効に利用できなくなる)こともある。このような理由から、特に排ガスの温度が低い場合、廃熱回収技術を経済的に成り立たせるのは極めて困難であった。
【0006】
他方、近年H2燃料を大気中の酸素と電気化学的に反応させ、直接発電させる燃料電池が実用化されている。燃料電池のH2燃料を得る方法として、製鉄所のコークス炉ガスに含まれるCnHm分をコークス炉ガス自らの顕熱で改質し、H2とCOを回収する方法が開発されている(特許文献1参照)。しかしこの方法では、コークス炉がないとH2燃料が得られないことになり、燃料電池などの燃料として将来求められる汎用的なH2燃料発生源になることができない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−212575号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置から排出される排ガスの顕熱を、H2燃料等の燃料として回収できる新たな廃熱回収装置、廃熱回収システム及び廃熱回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃熱回収装置において、前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記排気系統にジメチルエーテルを投入することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置により、上述した課題を解決する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の廃熱回収装置において、前記燃焼装置のCO2を含む排ガスを脱水及び脱酸素し、この脱水及び脱酸素した排ガスとジメチルエーテルとの混合ガスを前記熱交換器に通すことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解して、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置により、上述した課題を解決する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の廃熱回収装置において、前記第2の熱交換器に投入される前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記第1の熱交換器で回収したH2及びCO燃料を、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間の排気系統に投入することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の廃熱回収装置において、前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置において、前記燃焼装置は、ガスタービン、ガスエンジン、又はディーゼルエンジンであり、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を前記ガスタービン、前記ガスエンジン、又は前記ディーゼルエンジンの燃料として用いることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置において、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、製鉄所の副生ガスの代替燃料として用いることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置において、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、燃料電池の燃料として用いることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、前記廃熱回収装置は、前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システムである。
【0020】
請求項12に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、前記廃熱回収装置は、前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システムである。
【0021】
請求項13に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、前記廃熱回収装置は、前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収システムである。
【0022】
請求項14に記載の発明は、請求項11ないし13いずれかに記載の廃熱回収システムにおいて、前記燃焼装置は、燃料としてLNG(liquefied natural gas)を使用することを特徴とする。
【0023】
請求項15に記載の発明は、請求項11ないし14いずれかに記載の廃熱回収システムにおいて、前記廃熱回収システムはさらに、回収した前記H2及びCO燃料を燃焼させる加熱炉又は燃焼装置を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項16に記載の発明は、請求項13ないし15いずれかに記載の廃熱回収システムにおいて、前記廃熱回収システムはさらに、前記排気系統の前記第2の熱交換器よりも下流側に設置された廃熱ボイラを備え、この廃熱ボイラで回収した水蒸気を前記第2の熱交換機に供給することを特徴とする。
【0025】
請求項17に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0026】
請求項18に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0027】
請求項19に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、前記排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、前記第1の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第2の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0028】
請求項20に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0029】
請求項21に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【発明の効果】
【0030】
請求項1ないし7いずれかに記載の発明によれば、燃焼装置の廃熱を単なる蒸気、温水、加熱空気等として回収するのではなく、H2燃料、又はH2及びCO燃料として回収するので、回収されたエネルギーの用途が限定されない(すなわち、燃料の燃焼熱として回収することになるので、遠方へ輸送しても回収されたエネルギーが減少することはない)。また、排ガスの顕熱を利用してジメチルエーテルをH2燃料に改質するので、ジメチルエーテルをH2へ転換する際のエネルギー転換効率を高くすることができる(例えば、排ガスの温度が250〜300℃と低くても、エネルギー転換効率は90%以上に達する)。さらに、付加価値の高い燃料として廃熱を回収できるので、排ガス温度が低くても(例えば、排ガスの温度が300℃以下でも)経済性のある熱回収が行える。さらに、排ガスとジメチルエーテルとH2O又はCO2があれば、H2燃料を発生することができるので、汎用的なH2燃料発生装置が得られ、H2燃料を大量に消費する社会システムが実現できる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、H2燃料又はH2及びCO燃料をガスタービン、ガスエンジン、又はディーゼルエンジンの燃料として用いることができる。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、得られるH2燃料又はH2及びCO燃料は、製鉄所の副生ガスと組成及び発熱量が近いので、高炉休風等で副生ガスが不足する場合の副生ガス代替燃料として、既存の燃焼設備を改造することなく使用することができ、製鉄所における副生ガスの運用効率を高めることができる。
【0033】
請求項10に記載の発明によれば、得られるH2燃料又はH2及びCO燃料を、燃料電池の燃料として用いることができる。
【0034】
請求項11又は12に記載の発明によれば、燃焼装置の廃熱をH2燃料、又はH2及びCO燃料として回収することができる廃熱回収システムが得られる。
【0035】
請求項13に記載の発明によれば、第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を第1の熱交換器に供給するので、CO2の循環が行われ、したがってCO2の排出量を低減することができる。
【0036】
請求項14に記載の発明によれば、燃焼装置の燃料として、ジメチルエーテルよりもカーボン排出量の少ないLNGを使用することで、CO2の排出量を低減することができる。
【0037】
請求項15に記載の発明によれば、回収したH2及びCO燃料を加熱炉又はボイラー等の燃焼装置の燃料として使用することができる。
【0038】
請求項16に記載の発明によれば、第2の熱交換器に供給される水蒸気を廃熱ボイラで回収することができる。
【0039】
請求項17又は18に記載の発明によれば、廃熱を単なる蒸気、温水、加熱空気等として回収するのではなく、H2燃料、又はH2及びCO燃料として回収するので、回収されたエネルギーの用途が限定されない(すなわち、燃料の燃焼熱として回収することになるので、遠方へ輸送しても回収されたエネルギーが減少することはない)。
【0040】
請求項19に記載の発明によれば、第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を第1の熱交換器に供給するので、CO2の循環が行われ、したがってCO2の排出量を低減することができる。
【0041】
請求項20又は21に記載のように、ジメチルエーテルを直接排気系統に吹き込んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態における廃熱回収装置を示す。燃焼炉1の排気系統4に熱交換器2を設置し、この熱交換器2にジメチルエーテル(以下DMEと記す)と水蒸気(以下H2Oと記す)の混合ガスを通す。熱交換器2で排ガスとDMEとで熱交換を行わせることにより、DMEをH2に熱分解し、排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。
【0043】
熱交換器2には、管形、プレート形、拡大伝熱面、蓄熱式、流動層式、熱媒体循環式等さまざまな構造のものが用いられる。図2は管形の熱交換器の一例(レキュペレータと呼ばれる回収熱交換器)を示し、図3及び図4は蓄熱式の熱交換器を示し、図5は流動層式及び熱媒体循環式の熱交換器を示す。
【0044】
図2に示されるレキュペレータでは、排ガスとDME及びH2Oの混合ガスとは固体壁としての伝熱管3で隔てられる。伝熱管3の内側を低温流体のDME及びH2Oの混合ガスが流れ、伝熱管3の外側を高温流体の排ガスが流れ、これらを間接的に接触させて熱交換を行わせる。排ガスの顕熱は輻射、伝導により伝熱管3を介してDME及びH2Oの混合ガスに移送される。
【0045】
図3は切換式の蓄熱式熱交換器を示す。理解を容易にするために、この蓄熱式熱交換器の使用方法について説明する。まずアルミナボール、ハニカム材料等からなる蓄熱体Aに、高温流体の排ガスを流し、蓄熱体Aを温める。蓄熱体Aがある程度温まったところでバルブを切り換え、温まった蓄熱体Aに低温流体のDME及びH2Oの混合ガスを流す。それと共にバルブを切り換えて、蓄熱体Aに排ガスを流すのを止めて蓄熱体Bに排ガスを流す。蓄熱体Bがある程度温まったら再びバルブを切り換えて同様の動作を繰り返す。バルブの切り換えは所定の時間ごとに行われる。
【0046】
図4は回転式の蓄熱式熱交換器を示す。この熱交換器では、両外側の流路が高温流体の排ガスの流路と、低温流体のDME及びH2Oの混合ガスの流路とに分かれている。中央の蓄熱体は回転できるようになっており、所定時間経過後回転し、高温流体で温められた部分が低温流体側に移動する。蓄熱体の温められた部分に低温流体が流れるので、排ガスとDME及びH2Oの混合ガスとで熱交換が行われる。
【0047】
図2に示される熱交換器の排ガス下流側に、図3又は図4に示される熱交換器を配置し、そこで昇温したDMEとH2Oの混合気体を図2に示される熱交換器へ導いてもよい。これによりDMEの熱分解が可能な温度領域まで排ガス顕熱を効率よく回収して昇温することができる。
【0048】
熱交換器2のDME及びH2Oの混合ガスが流れる側には、DMEを水素に改質する触媒が充填される。この触媒には、アルミナ、シリカ、チタニア等の公知の触媒を用いることができる。触媒の種類は特に限定されるものでなく、DMEを水素に改質することができれば、どのような種類の触媒を用いてもよい。
【0049】
なお、熱交換器2にDME6とH2Oの混合ガスを通す替わりに、DMEとCO2の混合ガスを通し、混合ガスをH2及びCOに熱分解し、燃焼炉1の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収してもよい。このDMEとCO2をH2及びCO燃料に改質する反応については、図8に示される第2の実施形態で詳述する。
【0050】
図5(A)は流動層式の熱交換器を示し、図5(B)は熱媒体循環式の熱交換器を示す。図5(A)に示される流動層式の熱交換器では、流動層2a内をDMEとH2O又はCO2の混合ガスが流れる。流動層2aの外側には、高温の排ガスが流れていて、流動層2aの壁面を介して排ガスと混合ガスとで熱交換が行なわれる。流動層2a内には、触媒2bが充填されていて、触媒2bは混合ガスの流れに伴って流動する。流動層2aを通過した混合ガスは、触媒2bの作用によってH2又はCO+H2に改質される。
【0051】
図5(B)に示される熱媒体循環式の熱交換器では、循環層2c内をDMEとH2O又はCO2の混合ガス(図中に流動媒体と記す)が流れる。循環層2c内には、触媒2eも充填されている。混合ガスと触媒2eとは、伝熱管2dを介して循環層2c内を循環する。伝熱管2dの外側には、高温の排ガスが流れていて、伝熱管2dの壁面を介して排ガスと混合ガスとで熱交換が行なわれる。循環層2aを通過した混合ガスは、触媒2eの作用によってH2又はCO+H2に改質される。
【0052】
以上に記載の熱交換器2では、触媒により、CH3OCH3+3H2O+29kcal⇒6H2+2CO2の反応が進行する。この反応により、DMEをH2に熱分解し、排ガスの顕熱をH2燃料として回収することができる。
【0053】
図6はDMEの水素改質特性を示す。反応前のDME+3H2Oに熱を加えると、反応後にDMEが改質されて6H2+2CO2になる。そのとき9%分の29kcalだけ熱量が増大するので、低温廃熱を水素燃料として回収できるのがわかる。
【0054】
ここで、排ガスの温度が低い場合(例えば300℃以下の場合)、DMEとH2Oの混合ガスがH2に分解する反応が起きにくくなる。また、DMEとH2OがH2とCO2に分解する反応は吸熱反応なので、排ガスの温度がますます下がるおそれがある。このため、図1に示されるように、排ガスの熱量を増大(例えば排ガスの温度を300℃以上に上昇)させるように、排気系統に熱回収に用いるDMEの一部を投入(所謂スーパーヒート)する。そして、投入されたDMEの燃焼熱によって排ガスを加熱してもよい。
【0055】
排ガスの温度が350〜400℃であると、DMEとH2Oの混合ガスがH2に分解する反応が進行するので、DMEをスーパーヒートする必要はなくなる。また、高効率の熱交換器を使用すると、排ガスの温度が300℃以下でもDMEを熱分解することができる。
【0056】
図7はDMEをH2へ転換する際のエネルギー転換効率を試算した一例を示す。この例では、排ガス7の温度を300℃と仮定している。300℃の排ガス7が20Nm3/hあるとすると、排ガス7の熱量は2100kcal/hになる。
【0057】
この例では、排ガス7の温度を300℃以上に保つために、排気系統4に熱源としてのDME5を0.1kg/h(688kcal/h)スーパーヒートする。反応に必要な熱量だけを与えるべく、スーパーヒートされるDME5の投入量は、DME5をH2燃料に熱分解する吸熱反応の反応熱を補う量となる。DME5のスーパーヒートにより、排ガス10の温度は394℃になる。
【0058】
熱交換器2には常温30℃のDME6とH2O8が供給される。DME6とH2O8の温度を300℃に上げるのに、排ガス7の顕熱を利用する。熱交換器から排出される排ガス11の温度は248℃であるので、排ガス11の約50℃分(=300℃(排ガス7の温度)−248℃(排ガス11の温度))がDME6とH2O8を温めるのに使われている。
【0059】
熱交換器2では、排ガス10とDME6及びH2O8の混合ガスとを熱交換させ、DME6をH2燃料9に改質する。熱交換器2には、DME6が1.05kg/h(7224kcal/h)投入される。得られるH2燃料9は2.91Nm3/h(7499kcal/h)である。
【0060】
300℃の排ガス7を利用したこの例での、DME6をH2燃料9に転換する際のエネルギー転換効率を計算すると、7499/(7224+688)×100=94.5%になり、高い熱効率で転換することがわかる。排ガス温度が250℃〜300℃でも、エネルギー転換効率は90%以上に達した。ここでエネルギー転換効率ηは、η=(得られたH2燃料の燃焼エネルギー)/(使用したDMEの燃焼エネルギー)、で定義される。
【0061】
このエネルギー転換効率によると、DMEの持っている燃焼熱の95%がH2の燃焼熱に変わる。例えばH2燃料を燃料電池で使用する場合、燃料電池そのものの発電効率が60%程度あれば、H2の発生に使われるエネルギーも含めた総合効率は60%×95%=約57%総合効率(=発電エネルギー/燃料(DME)エネルギー)の効率で発電できることになる。このため、既存の電力会社で所有する大規模なガスタービン発電設備と同様な発電効率が得られることになる。
【0062】
比較例として、300℃の排ガスを利用しない場合の熱効率を試算する。この場合、熱交換器2に投入される排ガス10の熱量2788kcalの全てをDMEの燃焼熱で補うことになる。つまり、DMEを燃焼させ、その熱でDMEを熱分解させる。この場合のエネルギー転換効率は、7499/(7224+2788)×100=74.9%であり、80%以下に低減してしまう。これは、DMEを熱分解するための熱源を、別のDMEを燃焼させることによって得ていることが原因になる。
【0063】
熱交換器2にDME6とH2O8の混合ガスを通す替わりに、DMEとCO2の混合ガスを通すことにより、DMEをH2及びCOに熱分解し、燃焼炉の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収してもよい。このDMEをH2及びCO燃料に改質する反応については、下記の第2の実施形態で詳述する。
【0064】
図8は、本発明の第2の実施形態における廃熱回収装置を示す。この実施形態では、廃熱回収装置をガスタービンコンバインドシステムの排気系統に設置している。ガスタービンコンバインドシステムは、燃料ガスを燃料ガス圧縮機13で圧縮し、これを空気圧縮機14で圧縮された空気とともに燃焼器15で燃焼する。生じた高温高圧の燃料ガスをガスタービン16中で膨張させることによって外部の発電機17へ出力をとり出す。
【0065】
ガスタービン16の排ガスは高温大流量である。このガスタービン16の排気系統に熱交換器18を設置する。熱交換器18にDMEとCO2の混合ガスを通すことにより、DMEを熱分解し、排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。回収されたH2及びCO燃料は、例えば製鉄所の副生ガスと混合され、ガスタービン16の燃料として用いられる。
【0066】
熱交換器18には、DMEをH2及びCO燃料に改質する触媒が充填される。触媒には、ルテニウム、ニッケル等の公知の触媒を用いることができる。触媒の種類は特に限定されるものでなく、DMEをH2及びCOに改質することができれば、どのような種類の触媒を用いてもよい。
【0067】
熱交換器18では、CH3OCH3+CO2+58kcal⇒3H2+3COの反応が進行する。DMEとH2Oの混合ガスを投入してH2燃料を得る反応に比較すると、吸熱反応の反応熱が大きいので、排ガスの温度が高くないといけない。ガスタービン16の排ガスの温度は例えば600℃と高いので、この排ガスを使用してDMEを熱分解するのに適している。勿論、熱交換器18の替わりに、CH3OCH3+3H2O+29kcal⇒6H2+2CO2の反応を利用した、例えば図1に示される熱交換器2を用いることもできる。
【0068】
熱交換器18から排出された排ガスは、廃熱ボイラ19に供給される。廃熱ボイラ19は、H2O(水)を熱し、排ガスの顕熱をH2O(水蒸気)として回収する。得られたH2O(水蒸気)は、ガスタービン16と組み合わされた蒸気タービン20を回転させるのに用いられる。ガスタービン16及び蒸気タービン20が回転すると、発電機17が発電する。
【0069】
図9は、本発明の第3の実施形態における廃熱回収装置を示す。この実施形態の廃熱回収装置は、上記第2の実施形態の廃熱回収装置と同様に、ガスタービン16などの燃焼装置の排気系統に熱交換器18を設置し、該熱交換器18にDMEとCO2の混合ガスを通すことにより、DMEを熱分解し、燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。他方、この実施形態の廃熱回収装置は、上記第2の実施形態の廃熱回収装置と異なり、燃焼装置のCO2を含む排ガスを、脱水装置及び脱O2装置21にて脱水・脱O2し、この脱水・脱O2した排ガスを熱交換器18に通している。改質に用いられるCO2は100%濃度である必要はなく、10%程度のCO2を含むガスでも1000Kcal/Nm3程度の燃料ガスとして改質・回収できる。
【0070】
図10は、本発明の第4の実施形態における廃熱回収装置を示す。この実施形態では、燃焼炉の排気系統の上流側に、DMEをH2及びCO燃料として回収する第1の熱交換器25を設置し、下流側にDMEをH2燃料として回収する第2の熱交換器26を設置している。上述のように、第1の熱交換器25における吸熱反応の反応熱は、第2の熱交換器26における吸熱反応の反応熱よりも大きい。各吸熱反応を円滑に進行させるため、第1及び第2の熱交換器25,26をタンデムに配列し、且つ第1の熱交換器25を上流側に第2の熱交換器26を下流側に配置するのが望ましい。
【0071】
第1の熱交換器25には、DMEをH2及びCO燃料に改質する触媒が充填される。この第1の熱交換器25には、DME及びCO2を混合したガスが投入される。そして第1の熱交換器25は、排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。回収されたH2及びCO燃料は例えば製鉄所等の副生ガス系統に供給される。第2の熱交換器26に投入される排ガスの温度を上昇させるように、DMEの一部を第1の熱交換器25と第2の熱交換器26との間の排気系統に投入して燃焼(所謂スーパーヒート)させてもよい。
【0072】
第2の熱交換器26には、DMEをH2燃料に改質する触媒が充填される。第2の熱交換器26には、DMEとH2Oの混合ガスが投入される。そして第2の熱交換器26は、排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。H2燃料とともに第2の熱交換器26から排出されたCO2は、分離装置28で分離される。分離されたCO2は第1の熱交換器25に原料として供給される。分離されたCO2は高濃度なので、第1の熱交換器25でCO2以外の気体を温める必要がなく、効率よくDMEの分解反応を行うことができる。これに対し、第1の熱交換器25にDMEとともに排ガスを投入すると、CO2以外に余分に含まれるN2やO2をも温めることになってしまうので、廃熱の回収効率が低下する。本装置は図8に示されるガスタービンコンバインドシステムの熱交換器18の替わりに用いてもよい。
【0073】
本実施形態により得られるH2及びCO燃料は、製鉄所の副生ガスと組成及び発熱量が近いので、高炉休風等で副生ガスが不足する場合の副生ガス代替燃料として、既存の燃焼設備を改造することなく使用することができ、製鉄所における副生ガスの運用効率を高めることができる。以下これを説明する。
【0074】
副生ガスは、コークス炉ガス:4500kcal/Nm3、高炉ガス:750kcal/Nm3、転炉ガス:2000kcal/Nm3の混合ガスであり、H2及びCO主体のガスである。本実施形態で得られる燃料ガスは、H2及びCO燃料:2800kcal/Nm3、H2燃料:1800〜2580kcal/Nm3である。副生ガスと本実施形態の燃料ガスとは成分及びカロリーが近いので、製鉄所の燃焼炉の排ガス系統に本実施形態を適用し、得られたH2燃料、H2及びCO燃料を副生ガス系統に混合してやれば、既存の燃焼設備を改造することなく、副生ガスの代替燃料として使用することができる。
【0075】
エネルギー多消費型産業の代表とされる製鉄所では、廃熱量も多く、各製造工程で発生するエネルギーの40%前後は副生ガスとなって排出されている。しかし、副生ガスの変動が激しいので、製鉄所では副生ガスを燃料にする効率の高い発電用ガスタービンが使用し難い。その替わりに、副生ガスが変動する分を、重油等を燃焼させて蒸気の発生量を安定させ、蒸気タービンで発電している。本実施形態で得られたH2燃料、H2及びCO燃料を副生ガス系統に混合してやれば、副生ガスの発生量を安定させることができ、このため発電用ガスタービン等の効率のよい機械を導入し易くなり、製鉄所における副生ガスの運用効率を高めることができる。
【0076】
図11は、本発明の第1の実施形態における廃熱回収システムの系統図を示す。この廃熱回収システムでは、燃焼装置としてガスエンジン発電機31を用い、ガスエンジン発電機31の排気系統に上記第3の実施形態と同様に第1の熱交換器25及び第2の熱交換器26を配置している。
【0077】
第1の熱交換器25には、DMEをH2及びCO燃料に改質する触媒が充填される。この第1の熱交換器25には、DME及びCO2を混合したガスが投入される。そして第1の熱交換器25は、排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。他方、第2の熱交換器26には、DMEをH2燃料に改質する触媒が充填される。第2の熱交換器26には、DMEとH2Oの混合ガスが投入される。そして第2の熱交換器26は、排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。H2燃料とともに第2の熱交換器26から排出されたCO2は、分離装置28で分離される。分離されたCO2は第1の熱交換器25に原料として供給される。
【0078】
第1の熱交換器25で回収されたH2及びCO燃料は、加熱炉32の燃料として使用される。加熱炉32の替わりにボイラーなどの燃焼装置を用いることもできる。第2の熱交換器26よりも下流側には、廃熱ボイラ33が設置され、この廃熱ボイラ33で回収した水蒸気を第2の熱交換機26に供給する。
【0079】
この実施形態の廃熱回収システムでは、燃焼装置にガスエンジン発電機31を用い、ガスエンジン発電機の燃料にDMEではなく、LNG(liquefied natural gas)を使用する。ここで、第1及び第2の熱交換器25,26にDMEを供給するので、ガスエンジン発電機31の燃料にもDMEを使用したらよいと思われた。しかし、発電機31の燃料にDMEを使用すると、DMEはLNGよりも燃料として燃焼させたときのCO2排出量が18%程度多いので(燃料のカーボン排出原単位がLNG:64.06g−C/Mcalであるのに対し、DME:75.60g−C/Mcalである)、燃料のカーボン排出原単位の関係からカーボン排出量が増えてしまう。そのため、この実施形態ではカーボン排出量を低減するために、発電機31の燃料にLNGを使用する。
【0080】
以下に、燃料消費量の大きな発電機31の燃料として、DMEではなく、LNGを使用する廃熱回収システム(以下この廃熱回収システムをLNGとDMEの併用廃熱回収システムと呼ぶ)と、全てLNGを使用した廃熱回収システム(図12参照)との比較について説明する。2つの廃熱回収システムは、発電機で同一出力発電し、加熱炉で同一熱量を得て、同一の水素量を製造するという条件で共通している。
【0081】
図12は、比較例として、全てLNGを使用したシステムの系統図を示す。このシステムでは、LNGを加熱炉41の燃料として使用し、またLNGを発電機42の燃料として使用し、さらにLNGを改質炉43で改質して水素を得る。発電機42の排気系統には廃熱ボイラ44が設置され、発電機42の廃熱を蒸気で回収する。加熱炉で3278Mcal/hrの熱量を得て、発電機で5500kw出力を得て、水素量を666Nm3/hr製造する。これらの値の熱量、出力、水素量を得ようとすると、以下の表1に示される量だけLNGが消費され、またCO2が排出される。
【0082】
【表1】
【0083】
廃熱回収システムを利用するユーザは、燃料消費量もCO2排出量もいずれも削減できるのを望む。燃料消費量を削減できれば、コストダウンが図れるし、COP3が京都議定書で批准された以上は、社会的にCO2排出量をも削減する必要がある。このような背景から、図11に示されるLNGとDMEの併用廃熱回収システムが考案された。図11に示されるLNGとDMEの併用廃熱回収システムでは、燃料消費量が大きいガスエンジン発電機31の燃料にLNGを使用し、その他の加熱炉32、水素製造のためにDMEを使用している。そうすると、以下の表2に示される燃料消費量及びCO2排出量になる。
【0084】
【表2】
【0085】
この表2から、LNGとDMEを併用すると、全てLNGを使用したプロセスよりもCO2排出量を削減することができ、また燃料消費量も削減することができるのがわかる。CO2排出量が削減できるのは、ガスエンジン発電機31の廃熱が燃料に化け、その分のCO2排出量が削減すると考えられるからである。すなわち、第2の熱交換器26から発生するCO2を分離して第1の熱交換器25に供給し、第1の熱交換器25でCO2をDMEと混ぜることによって再度CO燃料に戻しているので、廃熱回収システム内でCO2の循環が行われることになり、したがってCO2排出量が削減する。
【0086】
以下の表3に、上記2つの廃熱回収システムの比較をまとめた。ケース1が全て全てLNGを使用した廃熱回収システムであり、ケース2がLNGとDMEを併用した廃熱回収システムである。ケース2では、燃料を9%削減できるし、CO2排出量も4%削減することができるのがわかる。
【0087】
【表3】
【0088】
燃料消費量を低減できるということは、ユーザにコストメリットをもたらす。この削減できたコストを、例えばバイオマス、廃棄物、石油残渣、炭層メタン、又は石炭から得られたDME(以下バイオマス由来のDMEという)を普及させる財源として用いれば、経済ベースで天然ガス由来のDMEに数%バイオマス由来のDMEを混ぜた形でバイオマス由来のDMEを流通させることもできる。バイオマス由来のDMEが普及すると、社会全体で発生するCO2をより削減できる。バイオマス由来のDMEは、バイオマス等をガス化炉で一旦CO+H2にガス化した後、触媒のもと周知のDME合成反応を用いて製造される。
【0089】
図13は、本発明の第2の実施形態における廃熱回収システムの系統図を示す。この実施形態の廃熱回収システムは、LNG,重油等の既存燃料を燃料として発電する発電設備51と、発電設備51の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収・水素製造装置52とを備える。廃熱回収・水素製造装置52は、上述した廃熱回収装置と同様に、供給されるDMEをH2+CO2又はH2+CO燃料に改質する。製造されたH2燃料は水素分離装置53で分離された後、燃料電池54に供給されたり、燃料電池自動車の燃料として使用されたりする。この廃熱回収システムは、例えば以下のように制御される。電力の高需要時(昼間)には、廃熱回収・水素製造装置52で製造された水素は、全て燃料電池54に送られ、電力にエネルギー変換される。他方、電力の低需要時(夜間)には、廃熱回収・水素製造装置52で製造された水素は、燃料電池自動車の燃料として貯えられる。このように、発電廃熱を水素で回収することにより、負荷調整機能(すなわち水素製造と発電の選択が可能)を有する発電システムが実現できる。
【0090】
なお、本発明の廃熱回収装置は、発電、鉱業分野に限られることなく、石油化学、紙・パルプ、非鉄金属、セメント、窯業、運輸等さまざまな工業分野の炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に設置することができ、また、民生・商業分野の空調、厨房、給湯用の燃焼機器の排気系統にも設置することができる。さらに、本発明の廃熱回収装置は、排ガスの温度が300℃以上の排気系統にすることが望ましいが、排ガスの温度が300℃以下の排気系統にも効果的に適用することができる。
【0091】
また、本発明の廃熱回収システムは、発電機、加熱炉、水素改質がある場合に限られることなく、炉、内燃機関又は発電設備の排気系統に廃熱回収装置が組み込まれるものであれば、様々なバリエーションの廃熱回収システムに適用することができ、例えば蒸気が不要な局面では廃熱ボイラーがなくてもよい。さらに、本発明の廃熱回収システムにおける加熱炉は、工業加熱炉の他、空調、厨房、給湯用の燃焼機器であってもよいし、燃料電池に置き換えられてもよい。
【0092】
さらに、本発明の廃熱回収方法において、熱交換器を設けることなく、触媒が充填された排気系統に直接DMEを吹き込んでDMEをH2燃料、又はH2及びCO燃料に改質してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図2】管形の熱交換器(レキュペレータ)を示す図。
【図3】蓄熱式の熱交換器(切換式)を示す図。
【図4】蓄熱式の熱交換器(回転式)を示す図。
【図5】流動層式及び熱媒体循環式の熱交換器を示す図(図中(A)は流動層式の熱交換器を示し、図中(B)は熱媒体循環式の熱交換器を示す)。
【図6】DMEの水素改質特性を示す図。
【図7】DMEをH2へ転換する際のエネルギー転換効率を試算した一例を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図9】本発明の第3の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図10】本発明の第4の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図11】本発明の第1の実施形態における廃熱回収システムの系統図(LNGとDMEの併用廃熱回収システム)。
【図12】全てLNGを使用した廃熱回収システムの系統図。
【図13】本発明の第2の実施形態における廃熱回収システムの系統図
【符号の説明】
【0094】
1…燃焼炉(燃焼装置)
2…熱交換器
4…排気系統
16…ガスタービン(燃焼装置)
18…熱交換器
21…脱水・脱O2装置
25…第1の熱交換器
26…第2の熱交換器
28…分離装置
31…ガスエンジン発電機(燃焼装置)
32…加熱炉
33…廃熱ボイラ
51…発電設備(燃焼装置)
52…廃熱回収・水素製造装置
53…水素分離装置
54…燃料電池
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種産業部門から排出される廃熱を回収する方法に関し、特に炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱回収装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼させる燃焼炉に代表される各種の炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置から放出される排ガスの廃熱を回収する努力が続けられ、省エネルギーの実績を挙げている。
【0003】
排ガスの廃熱の回収方法として、一般的に世の中では、排ガスの顕熱を熱エネルギーとして回収する方法が行われている。具体的には、燃焼装置の排気系統に熱交換器を設置し、その熱交換器に熱回収媒体を通して、熱回収媒体を排ガスで加熱することにより、排ガスの顕熱を熱エネルギーとして回収する。例えば廃熱ボイラは、熱交換媒体として水を用い、排ガスの顕熱を低圧蒸気や温水の熱エネルギーとして回収する。レキュペレータ、リジェネバーナは、熱交換媒体として空気を用い、排ガスの顕熱を予熱した加熱空気の熱エネルギーとして回収する。
【0004】
廃熱回収技術に影響を及ぼす廃熱の特徴として、エネルギー密度が低いことが挙げられる。排ガスの温度が低温の300℃以下になる場合もあり、この場合、熱交換器で排ガスから熱交換媒体に熱交換すると、最大200〜250℃の熱エネルギーしか回収できない。エネルギー密度の低い熱エネルギーは低温の加熱源としてしか利用できない。この問題を克服すべく、廃熱を高効率で回収しようとすると、伝熱面積の大きな熱交換器が必要になり、廃熱回収装置が大きくなりがちである。
【0005】
また、廃熱回収技術の問題点として、廃熱回収技術の用途が燃焼用空気や低温の加熱源などに限定され、使用先が回収熱源の近くに限定される(加熱空気や蒸気を配管などで遠方へ輸送すると、熱放散が大きくなり、回収した熱を有効に利用できなくなる)こともある。このような理由から、特に排ガスの温度が低い場合、廃熱回収技術を経済的に成り立たせるのは極めて困難であった。
【0006】
他方、近年H2燃料を大気中の酸素と電気化学的に反応させ、直接発電させる燃料電池が実用化されている。燃料電池のH2燃料を得る方法として、製鉄所のコークス炉ガスに含まれるCnHm分をコークス炉ガス自らの顕熱で改質し、H2とCOを回収する方法が開発されている(特許文献1参照)。しかしこの方法では、コークス炉がないとH2燃料が得られないことになり、燃料電池などの燃料として将来求められる汎用的なH2燃料発生源になることができない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−212575号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置から排出される排ガスの顕熱を、H2燃料等の燃料として回収できる新たな廃熱回収装置、廃熱回収システム及び廃熱回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃熱回収装置において、前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記排気系統にジメチルエーテルを投入することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置により、上述した課題を解決する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の廃熱回収装置において、前記燃焼装置のCO2を含む排ガスを脱水及び脱酸素し、この脱水及び脱酸素した排ガスとジメチルエーテルとの混合ガスを前記熱交換器に通すことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解して、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置により、上述した課題を解決する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の廃熱回収装置において、前記第2の熱交換器に投入される前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記第1の熱交換器で回収したH2及びCO燃料を、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間の排気系統に投入することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の廃熱回収装置において、前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置において、前記燃焼装置は、ガスタービン、ガスエンジン、又はディーゼルエンジンであり、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を前記ガスタービン、前記ガスエンジン、又は前記ディーゼルエンジンの燃料として用いることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置において、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、製鉄所の副生ガスの代替燃料として用いることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置において、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、燃料電池の燃料として用いることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、前記廃熱回収装置は、前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システムである。
【0020】
請求項12に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、前記廃熱回収装置は、前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システムである。
【0021】
請求項13に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、前記廃熱回収装置は、前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収システムである。
【0022】
請求項14に記載の発明は、請求項11ないし13いずれかに記載の廃熱回収システムにおいて、前記燃焼装置は、燃料としてLNG(liquefied natural gas)を使用することを特徴とする。
【0023】
請求項15に記載の発明は、請求項11ないし14いずれかに記載の廃熱回収システムにおいて、前記廃熱回収システムはさらに、回収した前記H2及びCO燃料を燃焼させる加熱炉又は燃焼装置を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項16に記載の発明は、請求項13ないし15いずれかに記載の廃熱回収システムにおいて、前記廃熱回収システムはさらに、前記排気系統の前記第2の熱交換器よりも下流側に設置された廃熱ボイラを備え、この廃熱ボイラで回収した水蒸気を前記第2の熱交換機に供給することを特徴とする。
【0025】
請求項17に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0026】
請求項18に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0027】
請求項19に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、前記排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、前記第1の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第2の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0028】
請求項20に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【0029】
請求項21に記載の発明は、炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法により、上述した課題を解決する。
【発明の効果】
【0030】
請求項1ないし7いずれかに記載の発明によれば、燃焼装置の廃熱を単なる蒸気、温水、加熱空気等として回収するのではなく、H2燃料、又はH2及びCO燃料として回収するので、回収されたエネルギーの用途が限定されない(すなわち、燃料の燃焼熱として回収することになるので、遠方へ輸送しても回収されたエネルギーが減少することはない)。また、排ガスの顕熱を利用してジメチルエーテルをH2燃料に改質するので、ジメチルエーテルをH2へ転換する際のエネルギー転換効率を高くすることができる(例えば、排ガスの温度が250〜300℃と低くても、エネルギー転換効率は90%以上に達する)。さらに、付加価値の高い燃料として廃熱を回収できるので、排ガス温度が低くても(例えば、排ガスの温度が300℃以下でも)経済性のある熱回収が行える。さらに、排ガスとジメチルエーテルとH2O又はCO2があれば、H2燃料を発生することができるので、汎用的なH2燃料発生装置が得られ、H2燃料を大量に消費する社会システムが実現できる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、H2燃料又はH2及びCO燃料をガスタービン、ガスエンジン、又はディーゼルエンジンの燃料として用いることができる。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、得られるH2燃料又はH2及びCO燃料は、製鉄所の副生ガスと組成及び発熱量が近いので、高炉休風等で副生ガスが不足する場合の副生ガス代替燃料として、既存の燃焼設備を改造することなく使用することができ、製鉄所における副生ガスの運用効率を高めることができる。
【0033】
請求項10に記載の発明によれば、得られるH2燃料又はH2及びCO燃料を、燃料電池の燃料として用いることができる。
【0034】
請求項11又は12に記載の発明によれば、燃焼装置の廃熱をH2燃料、又はH2及びCO燃料として回収することができる廃熱回収システムが得られる。
【0035】
請求項13に記載の発明によれば、第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を第1の熱交換器に供給するので、CO2の循環が行われ、したがってCO2の排出量を低減することができる。
【0036】
請求項14に記載の発明によれば、燃焼装置の燃料として、ジメチルエーテルよりもカーボン排出量の少ないLNGを使用することで、CO2の排出量を低減することができる。
【0037】
請求項15に記載の発明によれば、回収したH2及びCO燃料を加熱炉又はボイラー等の燃焼装置の燃料として使用することができる。
【0038】
請求項16に記載の発明によれば、第2の熱交換器に供給される水蒸気を廃熱ボイラで回収することができる。
【0039】
請求項17又は18に記載の発明によれば、廃熱を単なる蒸気、温水、加熱空気等として回収するのではなく、H2燃料、又はH2及びCO燃料として回収するので、回収されたエネルギーの用途が限定されない(すなわち、燃料の燃焼熱として回収することになるので、遠方へ輸送しても回収されたエネルギーが減少することはない)。
【0040】
請求項19に記載の発明によれば、第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を第1の熱交換器に供給するので、CO2の循環が行われ、したがってCO2の排出量を低減することができる。
【0041】
請求項20又は21に記載のように、ジメチルエーテルを直接排気系統に吹き込んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態における廃熱回収装置を示す。燃焼炉1の排気系統4に熱交換器2を設置し、この熱交換器2にジメチルエーテル(以下DMEと記す)と水蒸気(以下H2Oと記す)の混合ガスを通す。熱交換器2で排ガスとDMEとで熱交換を行わせることにより、DMEをH2に熱分解し、排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。
【0043】
熱交換器2には、管形、プレート形、拡大伝熱面、蓄熱式、流動層式、熱媒体循環式等さまざまな構造のものが用いられる。図2は管形の熱交換器の一例(レキュペレータと呼ばれる回収熱交換器)を示し、図3及び図4は蓄熱式の熱交換器を示し、図5は流動層式及び熱媒体循環式の熱交換器を示す。
【0044】
図2に示されるレキュペレータでは、排ガスとDME及びH2Oの混合ガスとは固体壁としての伝熱管3で隔てられる。伝熱管3の内側を低温流体のDME及びH2Oの混合ガスが流れ、伝熱管3の外側を高温流体の排ガスが流れ、これらを間接的に接触させて熱交換を行わせる。排ガスの顕熱は輻射、伝導により伝熱管3を介してDME及びH2Oの混合ガスに移送される。
【0045】
図3は切換式の蓄熱式熱交換器を示す。理解を容易にするために、この蓄熱式熱交換器の使用方法について説明する。まずアルミナボール、ハニカム材料等からなる蓄熱体Aに、高温流体の排ガスを流し、蓄熱体Aを温める。蓄熱体Aがある程度温まったところでバルブを切り換え、温まった蓄熱体Aに低温流体のDME及びH2Oの混合ガスを流す。それと共にバルブを切り換えて、蓄熱体Aに排ガスを流すのを止めて蓄熱体Bに排ガスを流す。蓄熱体Bがある程度温まったら再びバルブを切り換えて同様の動作を繰り返す。バルブの切り換えは所定の時間ごとに行われる。
【0046】
図4は回転式の蓄熱式熱交換器を示す。この熱交換器では、両外側の流路が高温流体の排ガスの流路と、低温流体のDME及びH2Oの混合ガスの流路とに分かれている。中央の蓄熱体は回転できるようになっており、所定時間経過後回転し、高温流体で温められた部分が低温流体側に移動する。蓄熱体の温められた部分に低温流体が流れるので、排ガスとDME及びH2Oの混合ガスとで熱交換が行われる。
【0047】
図2に示される熱交換器の排ガス下流側に、図3又は図4に示される熱交換器を配置し、そこで昇温したDMEとH2Oの混合気体を図2に示される熱交換器へ導いてもよい。これによりDMEの熱分解が可能な温度領域まで排ガス顕熱を効率よく回収して昇温することができる。
【0048】
熱交換器2のDME及びH2Oの混合ガスが流れる側には、DMEを水素に改質する触媒が充填される。この触媒には、アルミナ、シリカ、チタニア等の公知の触媒を用いることができる。触媒の種類は特に限定されるものでなく、DMEを水素に改質することができれば、どのような種類の触媒を用いてもよい。
【0049】
なお、熱交換器2にDME6とH2Oの混合ガスを通す替わりに、DMEとCO2の混合ガスを通し、混合ガスをH2及びCOに熱分解し、燃焼炉1の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収してもよい。このDMEとCO2をH2及びCO燃料に改質する反応については、図8に示される第2の実施形態で詳述する。
【0050】
図5(A)は流動層式の熱交換器を示し、図5(B)は熱媒体循環式の熱交換器を示す。図5(A)に示される流動層式の熱交換器では、流動層2a内をDMEとH2O又はCO2の混合ガスが流れる。流動層2aの外側には、高温の排ガスが流れていて、流動層2aの壁面を介して排ガスと混合ガスとで熱交換が行なわれる。流動層2a内には、触媒2bが充填されていて、触媒2bは混合ガスの流れに伴って流動する。流動層2aを通過した混合ガスは、触媒2bの作用によってH2又はCO+H2に改質される。
【0051】
図5(B)に示される熱媒体循環式の熱交換器では、循環層2c内をDMEとH2O又はCO2の混合ガス(図中に流動媒体と記す)が流れる。循環層2c内には、触媒2eも充填されている。混合ガスと触媒2eとは、伝熱管2dを介して循環層2c内を循環する。伝熱管2dの外側には、高温の排ガスが流れていて、伝熱管2dの壁面を介して排ガスと混合ガスとで熱交換が行なわれる。循環層2aを通過した混合ガスは、触媒2eの作用によってH2又はCO+H2に改質される。
【0052】
以上に記載の熱交換器2では、触媒により、CH3OCH3+3H2O+29kcal⇒6H2+2CO2の反応が進行する。この反応により、DMEをH2に熱分解し、排ガスの顕熱をH2燃料として回収することができる。
【0053】
図6はDMEの水素改質特性を示す。反応前のDME+3H2Oに熱を加えると、反応後にDMEが改質されて6H2+2CO2になる。そのとき9%分の29kcalだけ熱量が増大するので、低温廃熱を水素燃料として回収できるのがわかる。
【0054】
ここで、排ガスの温度が低い場合(例えば300℃以下の場合)、DMEとH2Oの混合ガスがH2に分解する反応が起きにくくなる。また、DMEとH2OがH2とCO2に分解する反応は吸熱反応なので、排ガスの温度がますます下がるおそれがある。このため、図1に示されるように、排ガスの熱量を増大(例えば排ガスの温度を300℃以上に上昇)させるように、排気系統に熱回収に用いるDMEの一部を投入(所謂スーパーヒート)する。そして、投入されたDMEの燃焼熱によって排ガスを加熱してもよい。
【0055】
排ガスの温度が350〜400℃であると、DMEとH2Oの混合ガスがH2に分解する反応が進行するので、DMEをスーパーヒートする必要はなくなる。また、高効率の熱交換器を使用すると、排ガスの温度が300℃以下でもDMEを熱分解することができる。
【0056】
図7はDMEをH2へ転換する際のエネルギー転換効率を試算した一例を示す。この例では、排ガス7の温度を300℃と仮定している。300℃の排ガス7が20Nm3/hあるとすると、排ガス7の熱量は2100kcal/hになる。
【0057】
この例では、排ガス7の温度を300℃以上に保つために、排気系統4に熱源としてのDME5を0.1kg/h(688kcal/h)スーパーヒートする。反応に必要な熱量だけを与えるべく、スーパーヒートされるDME5の投入量は、DME5をH2燃料に熱分解する吸熱反応の反応熱を補う量となる。DME5のスーパーヒートにより、排ガス10の温度は394℃になる。
【0058】
熱交換器2には常温30℃のDME6とH2O8が供給される。DME6とH2O8の温度を300℃に上げるのに、排ガス7の顕熱を利用する。熱交換器から排出される排ガス11の温度は248℃であるので、排ガス11の約50℃分(=300℃(排ガス7の温度)−248℃(排ガス11の温度))がDME6とH2O8を温めるのに使われている。
【0059】
熱交換器2では、排ガス10とDME6及びH2O8の混合ガスとを熱交換させ、DME6をH2燃料9に改質する。熱交換器2には、DME6が1.05kg/h(7224kcal/h)投入される。得られるH2燃料9は2.91Nm3/h(7499kcal/h)である。
【0060】
300℃の排ガス7を利用したこの例での、DME6をH2燃料9に転換する際のエネルギー転換効率を計算すると、7499/(7224+688)×100=94.5%になり、高い熱効率で転換することがわかる。排ガス温度が250℃〜300℃でも、エネルギー転換効率は90%以上に達した。ここでエネルギー転換効率ηは、η=(得られたH2燃料の燃焼エネルギー)/(使用したDMEの燃焼エネルギー)、で定義される。
【0061】
このエネルギー転換効率によると、DMEの持っている燃焼熱の95%がH2の燃焼熱に変わる。例えばH2燃料を燃料電池で使用する場合、燃料電池そのものの発電効率が60%程度あれば、H2の発生に使われるエネルギーも含めた総合効率は60%×95%=約57%総合効率(=発電エネルギー/燃料(DME)エネルギー)の効率で発電できることになる。このため、既存の電力会社で所有する大規模なガスタービン発電設備と同様な発電効率が得られることになる。
【0062】
比較例として、300℃の排ガスを利用しない場合の熱効率を試算する。この場合、熱交換器2に投入される排ガス10の熱量2788kcalの全てをDMEの燃焼熱で補うことになる。つまり、DMEを燃焼させ、その熱でDMEを熱分解させる。この場合のエネルギー転換効率は、7499/(7224+2788)×100=74.9%であり、80%以下に低減してしまう。これは、DMEを熱分解するための熱源を、別のDMEを燃焼させることによって得ていることが原因になる。
【0063】
熱交換器2にDME6とH2O8の混合ガスを通す替わりに、DMEとCO2の混合ガスを通すことにより、DMEをH2及びCOに熱分解し、燃焼炉の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収してもよい。このDMEをH2及びCO燃料に改質する反応については、下記の第2の実施形態で詳述する。
【0064】
図8は、本発明の第2の実施形態における廃熱回収装置を示す。この実施形態では、廃熱回収装置をガスタービンコンバインドシステムの排気系統に設置している。ガスタービンコンバインドシステムは、燃料ガスを燃料ガス圧縮機13で圧縮し、これを空気圧縮機14で圧縮された空気とともに燃焼器15で燃焼する。生じた高温高圧の燃料ガスをガスタービン16中で膨張させることによって外部の発電機17へ出力をとり出す。
【0065】
ガスタービン16の排ガスは高温大流量である。このガスタービン16の排気系統に熱交換器18を設置する。熱交換器18にDMEとCO2の混合ガスを通すことにより、DMEを熱分解し、排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。回収されたH2及びCO燃料は、例えば製鉄所の副生ガスと混合され、ガスタービン16の燃料として用いられる。
【0066】
熱交換器18には、DMEをH2及びCO燃料に改質する触媒が充填される。触媒には、ルテニウム、ニッケル等の公知の触媒を用いることができる。触媒の種類は特に限定されるものでなく、DMEをH2及びCOに改質することができれば、どのような種類の触媒を用いてもよい。
【0067】
熱交換器18では、CH3OCH3+CO2+58kcal⇒3H2+3COの反応が進行する。DMEとH2Oの混合ガスを投入してH2燃料を得る反応に比較すると、吸熱反応の反応熱が大きいので、排ガスの温度が高くないといけない。ガスタービン16の排ガスの温度は例えば600℃と高いので、この排ガスを使用してDMEを熱分解するのに適している。勿論、熱交換器18の替わりに、CH3OCH3+3H2O+29kcal⇒6H2+2CO2の反応を利用した、例えば図1に示される熱交換器2を用いることもできる。
【0068】
熱交換器18から排出された排ガスは、廃熱ボイラ19に供給される。廃熱ボイラ19は、H2O(水)を熱し、排ガスの顕熱をH2O(水蒸気)として回収する。得られたH2O(水蒸気)は、ガスタービン16と組み合わされた蒸気タービン20を回転させるのに用いられる。ガスタービン16及び蒸気タービン20が回転すると、発電機17が発電する。
【0069】
図9は、本発明の第3の実施形態における廃熱回収装置を示す。この実施形態の廃熱回収装置は、上記第2の実施形態の廃熱回収装置と同様に、ガスタービン16などの燃焼装置の排気系統に熱交換器18を設置し、該熱交換器18にDMEとCO2の混合ガスを通すことにより、DMEを熱分解し、燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。他方、この実施形態の廃熱回収装置は、上記第2の実施形態の廃熱回収装置と異なり、燃焼装置のCO2を含む排ガスを、脱水装置及び脱O2装置21にて脱水・脱O2し、この脱水・脱O2した排ガスを熱交換器18に通している。改質に用いられるCO2は100%濃度である必要はなく、10%程度のCO2を含むガスでも1000Kcal/Nm3程度の燃料ガスとして改質・回収できる。
【0070】
図10は、本発明の第4の実施形態における廃熱回収装置を示す。この実施形態では、燃焼炉の排気系統の上流側に、DMEをH2及びCO燃料として回収する第1の熱交換器25を設置し、下流側にDMEをH2燃料として回収する第2の熱交換器26を設置している。上述のように、第1の熱交換器25における吸熱反応の反応熱は、第2の熱交換器26における吸熱反応の反応熱よりも大きい。各吸熱反応を円滑に進行させるため、第1及び第2の熱交換器25,26をタンデムに配列し、且つ第1の熱交換器25を上流側に第2の熱交換器26を下流側に配置するのが望ましい。
【0071】
第1の熱交換器25には、DMEをH2及びCO燃料に改質する触媒が充填される。この第1の熱交換器25には、DME及びCO2を混合したガスが投入される。そして第1の熱交換器25は、排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。回収されたH2及びCO燃料は例えば製鉄所等の副生ガス系統に供給される。第2の熱交換器26に投入される排ガスの温度を上昇させるように、DMEの一部を第1の熱交換器25と第2の熱交換器26との間の排気系統に投入して燃焼(所謂スーパーヒート)させてもよい。
【0072】
第2の熱交換器26には、DMEをH2燃料に改質する触媒が充填される。第2の熱交換器26には、DMEとH2Oの混合ガスが投入される。そして第2の熱交換器26は、排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。H2燃料とともに第2の熱交換器26から排出されたCO2は、分離装置28で分離される。分離されたCO2は第1の熱交換器25に原料として供給される。分離されたCO2は高濃度なので、第1の熱交換器25でCO2以外の気体を温める必要がなく、効率よくDMEの分解反応を行うことができる。これに対し、第1の熱交換器25にDMEとともに排ガスを投入すると、CO2以外に余分に含まれるN2やO2をも温めることになってしまうので、廃熱の回収効率が低下する。本装置は図8に示されるガスタービンコンバインドシステムの熱交換器18の替わりに用いてもよい。
【0073】
本実施形態により得られるH2及びCO燃料は、製鉄所の副生ガスと組成及び発熱量が近いので、高炉休風等で副生ガスが不足する場合の副生ガス代替燃料として、既存の燃焼設備を改造することなく使用することができ、製鉄所における副生ガスの運用効率を高めることができる。以下これを説明する。
【0074】
副生ガスは、コークス炉ガス:4500kcal/Nm3、高炉ガス:750kcal/Nm3、転炉ガス:2000kcal/Nm3の混合ガスであり、H2及びCO主体のガスである。本実施形態で得られる燃料ガスは、H2及びCO燃料:2800kcal/Nm3、H2燃料:1800〜2580kcal/Nm3である。副生ガスと本実施形態の燃料ガスとは成分及びカロリーが近いので、製鉄所の燃焼炉の排ガス系統に本実施形態を適用し、得られたH2燃料、H2及びCO燃料を副生ガス系統に混合してやれば、既存の燃焼設備を改造することなく、副生ガスの代替燃料として使用することができる。
【0075】
エネルギー多消費型産業の代表とされる製鉄所では、廃熱量も多く、各製造工程で発生するエネルギーの40%前後は副生ガスとなって排出されている。しかし、副生ガスの変動が激しいので、製鉄所では副生ガスを燃料にする効率の高い発電用ガスタービンが使用し難い。その替わりに、副生ガスが変動する分を、重油等を燃焼させて蒸気の発生量を安定させ、蒸気タービンで発電している。本実施形態で得られたH2燃料、H2及びCO燃料を副生ガス系統に混合してやれば、副生ガスの発生量を安定させることができ、このため発電用ガスタービン等の効率のよい機械を導入し易くなり、製鉄所における副生ガスの運用効率を高めることができる。
【0076】
図11は、本発明の第1の実施形態における廃熱回収システムの系統図を示す。この廃熱回収システムでは、燃焼装置としてガスエンジン発電機31を用い、ガスエンジン発電機31の排気系統に上記第3の実施形態と同様に第1の熱交換器25及び第2の熱交換器26を配置している。
【0077】
第1の熱交換器25には、DMEをH2及びCO燃料に改質する触媒が充填される。この第1の熱交換器25には、DME及びCO2を混合したガスが投入される。そして第1の熱交換器25は、排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収する。他方、第2の熱交換器26には、DMEをH2燃料に改質する触媒が充填される。第2の熱交換器26には、DMEとH2Oの混合ガスが投入される。そして第2の熱交換器26は、排ガスの顕熱をH2燃料として回収する。H2燃料とともに第2の熱交換器26から排出されたCO2は、分離装置28で分離される。分離されたCO2は第1の熱交換器25に原料として供給される。
【0078】
第1の熱交換器25で回収されたH2及びCO燃料は、加熱炉32の燃料として使用される。加熱炉32の替わりにボイラーなどの燃焼装置を用いることもできる。第2の熱交換器26よりも下流側には、廃熱ボイラ33が設置され、この廃熱ボイラ33で回収した水蒸気を第2の熱交換機26に供給する。
【0079】
この実施形態の廃熱回収システムでは、燃焼装置にガスエンジン発電機31を用い、ガスエンジン発電機の燃料にDMEではなく、LNG(liquefied natural gas)を使用する。ここで、第1及び第2の熱交換器25,26にDMEを供給するので、ガスエンジン発電機31の燃料にもDMEを使用したらよいと思われた。しかし、発電機31の燃料にDMEを使用すると、DMEはLNGよりも燃料として燃焼させたときのCO2排出量が18%程度多いので(燃料のカーボン排出原単位がLNG:64.06g−C/Mcalであるのに対し、DME:75.60g−C/Mcalである)、燃料のカーボン排出原単位の関係からカーボン排出量が増えてしまう。そのため、この実施形態ではカーボン排出量を低減するために、発電機31の燃料にLNGを使用する。
【0080】
以下に、燃料消費量の大きな発電機31の燃料として、DMEではなく、LNGを使用する廃熱回収システム(以下この廃熱回収システムをLNGとDMEの併用廃熱回収システムと呼ぶ)と、全てLNGを使用した廃熱回収システム(図12参照)との比較について説明する。2つの廃熱回収システムは、発電機で同一出力発電し、加熱炉で同一熱量を得て、同一の水素量を製造するという条件で共通している。
【0081】
図12は、比較例として、全てLNGを使用したシステムの系統図を示す。このシステムでは、LNGを加熱炉41の燃料として使用し、またLNGを発電機42の燃料として使用し、さらにLNGを改質炉43で改質して水素を得る。発電機42の排気系統には廃熱ボイラ44が設置され、発電機42の廃熱を蒸気で回収する。加熱炉で3278Mcal/hrの熱量を得て、発電機で5500kw出力を得て、水素量を666Nm3/hr製造する。これらの値の熱量、出力、水素量を得ようとすると、以下の表1に示される量だけLNGが消費され、またCO2が排出される。
【0082】
【表1】
【0083】
廃熱回収システムを利用するユーザは、燃料消費量もCO2排出量もいずれも削減できるのを望む。燃料消費量を削減できれば、コストダウンが図れるし、COP3が京都議定書で批准された以上は、社会的にCO2排出量をも削減する必要がある。このような背景から、図11に示されるLNGとDMEの併用廃熱回収システムが考案された。図11に示されるLNGとDMEの併用廃熱回収システムでは、燃料消費量が大きいガスエンジン発電機31の燃料にLNGを使用し、その他の加熱炉32、水素製造のためにDMEを使用している。そうすると、以下の表2に示される燃料消費量及びCO2排出量になる。
【0084】
【表2】
【0085】
この表2から、LNGとDMEを併用すると、全てLNGを使用したプロセスよりもCO2排出量を削減することができ、また燃料消費量も削減することができるのがわかる。CO2排出量が削減できるのは、ガスエンジン発電機31の廃熱が燃料に化け、その分のCO2排出量が削減すると考えられるからである。すなわち、第2の熱交換器26から発生するCO2を分離して第1の熱交換器25に供給し、第1の熱交換器25でCO2をDMEと混ぜることによって再度CO燃料に戻しているので、廃熱回収システム内でCO2の循環が行われることになり、したがってCO2排出量が削減する。
【0086】
以下の表3に、上記2つの廃熱回収システムの比較をまとめた。ケース1が全て全てLNGを使用した廃熱回収システムであり、ケース2がLNGとDMEを併用した廃熱回収システムである。ケース2では、燃料を9%削減できるし、CO2排出量も4%削減することができるのがわかる。
【0087】
【表3】
【0088】
燃料消費量を低減できるということは、ユーザにコストメリットをもたらす。この削減できたコストを、例えばバイオマス、廃棄物、石油残渣、炭層メタン、又は石炭から得られたDME(以下バイオマス由来のDMEという)を普及させる財源として用いれば、経済ベースで天然ガス由来のDMEに数%バイオマス由来のDMEを混ぜた形でバイオマス由来のDMEを流通させることもできる。バイオマス由来のDMEが普及すると、社会全体で発生するCO2をより削減できる。バイオマス由来のDMEは、バイオマス等をガス化炉で一旦CO+H2にガス化した後、触媒のもと周知のDME合成反応を用いて製造される。
【0089】
図13は、本発明の第2の実施形態における廃熱回収システムの系統図を示す。この実施形態の廃熱回収システムは、LNG,重油等の既存燃料を燃料として発電する発電設備51と、発電設備51の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収・水素製造装置52とを備える。廃熱回収・水素製造装置52は、上述した廃熱回収装置と同様に、供給されるDMEをH2+CO2又はH2+CO燃料に改質する。製造されたH2燃料は水素分離装置53で分離された後、燃料電池54に供給されたり、燃料電池自動車の燃料として使用されたりする。この廃熱回収システムは、例えば以下のように制御される。電力の高需要時(昼間)には、廃熱回収・水素製造装置52で製造された水素は、全て燃料電池54に送られ、電力にエネルギー変換される。他方、電力の低需要時(夜間)には、廃熱回収・水素製造装置52で製造された水素は、燃料電池自動車の燃料として貯えられる。このように、発電廃熱を水素で回収することにより、負荷調整機能(すなわち水素製造と発電の選択が可能)を有する発電システムが実現できる。
【0090】
なお、本発明の廃熱回収装置は、発電、鉱業分野に限られることなく、石油化学、紙・パルプ、非鉄金属、セメント、窯業、運輸等さまざまな工業分野の炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に設置することができ、また、民生・商業分野の空調、厨房、給湯用の燃焼機器の排気系統にも設置することができる。さらに、本発明の廃熱回収装置は、排ガスの温度が300℃以上の排気系統にすることが望ましいが、排ガスの温度が300℃以下の排気系統にも効果的に適用することができる。
【0091】
また、本発明の廃熱回収システムは、発電機、加熱炉、水素改質がある場合に限られることなく、炉、内燃機関又は発電設備の排気系統に廃熱回収装置が組み込まれるものであれば、様々なバリエーションの廃熱回収システムに適用することができ、例えば蒸気が不要な局面では廃熱ボイラーがなくてもよい。さらに、本発明の廃熱回収システムにおける加熱炉は、工業加熱炉の他、空調、厨房、給湯用の燃焼機器であってもよいし、燃料電池に置き換えられてもよい。
【0092】
さらに、本発明の廃熱回収方法において、熱交換器を設けることなく、触媒が充填された排気系統に直接DMEを吹き込んでDMEをH2燃料、又はH2及びCO燃料に改質してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図2】管形の熱交換器(レキュペレータ)を示す図。
【図3】蓄熱式の熱交換器(切換式)を示す図。
【図4】蓄熱式の熱交換器(回転式)を示す図。
【図5】流動層式及び熱媒体循環式の熱交換器を示す図(図中(A)は流動層式の熱交換器を示し、図中(B)は熱媒体循環式の熱交換器を示す)。
【図6】DMEの水素改質特性を示す図。
【図7】DMEをH2へ転換する際のエネルギー転換効率を試算した一例を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図9】本発明の第3の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図10】本発明の第4の実施形態における廃熱回収装置を示す図。
【図11】本発明の第1の実施形態における廃熱回収システムの系統図(LNGとDMEの併用廃熱回収システム)。
【図12】全てLNGを使用した廃熱回収システムの系統図。
【図13】本発明の第2の実施形態における廃熱回収システムの系統図
【符号の説明】
【0094】
1…燃焼炉(燃焼装置)
2…熱交換器
4…排気系統
16…ガスタービン(燃焼装置)
18…熱交換器
21…脱水・脱O2装置
25…第1の熱交換器
26…第2の熱交換器
28…分離装置
31…ガスエンジン発電機(燃焼装置)
32…加熱炉
33…廃熱ボイラ
51…発電設備(燃焼装置)
52…廃熱回収・水素製造装置
53…水素分離装置
54…燃料電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置。
【請求項2】
前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記排気系統にジメチルエーテルを投入することを特徴とする請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置。
【請求項4】
前記燃焼装置のCO2を含む排ガスを脱水及び脱酸素し、この脱水及び脱酸素した排ガスとジメチルエーテルとの混合ガスを前記熱交換器に通すことを特徴とする請求項3に記載の廃熱回収装置。
【請求項5】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、
前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置。
【請求項6】
前記第2の熱交換器に投入される前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記第1の熱交換器で回収したH2及びCO燃料を、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間の排気系統に投入することを特徴とする請求項5に記載の廃熱回収装置。
【請求項7】
前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする請求項5又は6に記載の廃熱回収装置。
【請求項8】
前記燃焼装置は、ガスタービン、ガスエンジン、又はディーゼルエンジンであり、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を前記ガスタービン、前記ガスエンジン、又は前記ディーゼルエンジンの燃料として用いることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置。
【請求項9】
回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、製鉄所の副生ガスの代替燃料として用いることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置。
【請求項10】
回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、燃料電池の燃料として用いることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置。
【請求項11】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、
前記廃熱回収装置は、
前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システム。
【請求項12】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、
前記廃熱回収装置は、
前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システム。
【請求項13】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、
前記廃熱回収装置は、
前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、
前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、
前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収システム。
【請求項14】
前記燃焼装置は、燃料としてLNG(liquefied natural gas)を使用することを特徴とする請求項11ないし13いずれかに記載の廃熱回収システム。
【請求項15】
前記廃熱回収システムはさらに、
回収した前記H2及びCO燃料を燃焼させる加熱炉又は燃焼装置を備えることを特徴とする請求項11ないし14いずれかに記載の廃熱回収システム。
【請求項16】
前記廃熱回収システムはさらに、
前記排気系統の前記第2の熱交換器よりも下流側に設置された廃熱ボイラを備え、
この廃熱ボイラで回収した水蒸気を前記第2の熱交換機に供給することを特徴とする請求項13ないし15いずれかに記載の廃熱回収システム。
【請求項17】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項18】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項19】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、
前記排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、
前記第1の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第2の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項20】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項21】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項1】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置。
【請求項2】
前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記排気系統にジメチルエーテルを投入することを特徴とする請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置。
【請求項4】
前記燃焼装置のCO2を含む排ガスを脱水及び脱酸素し、この脱水及び脱酸素した排ガスとジメチルエーテルとの混合ガスを前記熱交換器に通すことを特徴とする請求項3に記載の廃熱回収装置。
【請求項5】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、
前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収装置。
【請求項6】
前記第2の熱交換器に投入される前記燃焼装置の排ガスの温度を上昇させるように、前記第1の熱交換器で回収したH2及びCO燃料を、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間の排気系統に投入することを特徴とする請求項5に記載の廃熱回収装置。
【請求項7】
前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする請求項5又は6に記載の廃熱回収装置。
【請求項8】
前記燃焼装置は、ガスタービン、ガスエンジン、又はディーゼルエンジンであり、回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を前記ガスタービン、前記ガスエンジン、又は前記ディーゼルエンジンの燃料として用いることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置。
【請求項9】
回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、製鉄所の副生ガスの代替燃料として用いることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置。
【請求項10】
回収された前記H2燃料又は前記H2及びCO燃料を、燃料電池の燃料として用いることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の廃熱回収装置。
【請求項11】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、
前記廃熱回収装置は、
前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システム。
【請求項12】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、
前記廃熱回収装置は、
前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収システム。
【請求項13】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置と、この燃焼装置の排ガスの顕熱を回収する廃熱回収装置と、を備える廃熱回収システムであって、
前記廃熱回収装置は、
前記燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、
前記排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、
前記第2の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第1の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収システム。
【請求項14】
前記燃焼装置は、燃料としてLNG(liquefied natural gas)を使用することを特徴とする請求項11ないし13いずれかに記載の廃熱回収システム。
【請求項15】
前記廃熱回収システムはさらに、
回収した前記H2及びCO燃料を燃焼させる加熱炉又は燃焼装置を備えることを特徴とする請求項11ないし14いずれかに記載の廃熱回収システム。
【請求項16】
前記廃熱回収システムはさらに、
前記排気系統の前記第2の熱交換器よりも下流側に設置された廃熱ボイラを備え、
この廃熱ボイラで回収した水蒸気を前記第2の熱交換機に供給することを特徴とする請求項13ないし15いずれかに記載の廃熱回収システム。
【請求項17】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項18】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した熱交換器を設置し、前記熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項19】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第1の熱交換器を設置し、前記第1の熱交換器にジメチルエーテルとCO2の混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収し、
前記排気系統に、ジメチルエーテルを改質する触媒を充填した第2の熱交換器を設置し、前記第2の熱交換器にジメチルエーテルとH2Oの混合ガスを通すことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収し、
前記第1の熱交換器で回収したH2燃料と共に発生するCO2を分離し、分離したCO2を前記第2の熱交換器に供給することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項20】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【請求項21】
炉、内燃機関又は発電設備などの燃焼装置の排気系統にジメチルエーテルを改質する触媒を充填し、前記排気系統にジメチルエーテルを吹き込むことにより、ジメチルエーテルを熱分解し、前記燃焼装置の排ガスの顕熱をH2及びCO燃料として回収することを特徴とする廃熱回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−46319(P2006−46319A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116222(P2005−116222)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(503047250)ジェイエフイーホールディングス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(503047250)ジェイエフイーホールディングス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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