説明

建物の免震装置及び免震住宅

【課題】建物を浮上させる気体を漏らすことがなく、また建物の加重の偏りがあっても、建物を傾かないように略水平に浮上させ、かつ施工も簡易な気体圧で建物を浮上させ、建物を免震する建物の免震装置及び免震住宅を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、地盤に施工される基盤と前記基盤に重なり上に建物を固定する建物基礎との間に設置される1以上の環状の柔軟なパイプと、前記地盤又は建物の揺れの感知により前記パイプ、並びに前記パイプと前記基盤と建物基礎とで囲まれた隙間に気体を送るエアタンクとからなり、地盤又は建物の揺れ発生時、前記建物基礎を略水平に浮上させ、建物の揺れを免震することを特徴とする建物の免震装置の構成とした。さらにそれを備える免震住宅の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物を基盤から浮揚させ、地震の揺れを免震する建物の免震装置及びそれを用いた免震住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物の免震装置としては、家屋と基盤の間で、平面又は凹状の皿の上を、ボール又はローラーが転がって地震の横揺れを免震する転がり免震装置、同様に平面又は凹状の皿の上を、摩擦係数の小さい滑り部材がスルスル滑って地震の横揺れを免震するすべり免震装置、家屋と基盤の間に積層されたゴムの変形で横揺れを免震する積層免震装置などが一般に知られている。
【0003】
しかし、それら従来の免震装置は何れも基盤と建物が接触した状態で、免震しており、かつ複雑な装置を必要としていた。そこで、地震の揺れを免震し、建物への影響を軽減する新たな免震手段として特許文献1に記載の空気圧浮揚式免震装置が考案されている。
【0004】
特許文献1に記載の考案は、地震の揺れだけでなく、台風などの大きな風圧にも、建物の揺れや震動を防ぐことを目的に、建物の基礎底盤1の上面に、重なる基礎上盤2を設置し、その隙間の周囲から外部に空気が漏れないようにシール材3を設け、シール材3に空気を供給するエアコンプレッサー8,エアータンク7及びバルブ6を設置することを特徴とし、台風及び平常時、建物は、地面に接している底盤1の上に基礎上盤2が自重で圧着しており摩擦により安定性が良く、揺れや震動をおこさない。地震発生時のみ、空気圧により基礎上盤2と共に建物を浮上させ、免震効果を発揮させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3119675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の考案では、シール材3で囲まれた内部に空気を送風するものであるが、エア漏れを防ぐことが困難であった。また、建物は場所により加重が異なり、水平に浮上させることが困難で、エアを除いた後建物がズレて基盤の上にのることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、建物を浮上させる気体を漏らすことがなく、また建物の加重の偏りがあっても、建物を傾かないように略水平に浮上させ、かつ施工も簡易な気体圧で建物を浮上させ、建物を免震する建物の免震装置及び免震住宅を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、地盤に施工される基盤と前記基盤に重なり上に建物を固定する建物基礎との間に設置される1以上の環状の柔軟なパイプと、前記地盤又は建物の揺れの感知により前記パイプ、並びに前記パイプと前記基盤と建物基礎とで囲まれた隙間に気体を送るエアタンクとからなり、地盤又は建物の揺れ発生時、前記建物基礎を略水平に浮上させ、建物の揺れを免震することを特徴とする建物の免震装置の構成とした。さらに、前記建物基礎に、前記基盤とで前記パイプを囲み収納する底が開口した断面コの字状の管を、環状に巡らし埋設したことを特徴とする前記建物の免震装置の構成とし、また、一端が前記エアタンクに接続する前記エアホースに連結し、他端が前記建物基礎に穿設した孔の位置に固定され前記各区画への気体の注入量を調節する注入制御装置を設けたことを特徴とする前記何れかに記載の建物の免震装置の構成とした。
【0009】
前記注入制御装置が、一端が前記エアタンクに接続する前記エアホースに連結し、他端が前記建物基礎の孔を覆い固定された内部が空洞の本体及び前記本体内部に突出した係止部とよりなる筒体と、孔内に挿入され、前記基盤に載置した重りと、前記重りに固定され前記筒体内に位置する軸と、前記軸に高さ位置調節可能に備えられ、前記エアホースからの気体送入により前記建物基礎とともに浮上する前記係止部とで、前記隙間へ送入される気体の注入量を調節する弁とからなることを特徴とする前記建物の免震装置の構成とした。
【0010】
加えて、免震後、前記基盤と建物基礎の水平方向のズレを前記エアタンクと独立したエアタンクから送入された気体の圧力で、前記建物基礎を水平方向に移動させ、前記基盤と建物基礎のズレを修正する矯正装置を備えたことを特徴とする前記何れかに記載の建物の免震装置の構成とした。さらに、前記何れかに記載の建物の免震装置を備えたことを特徴とする免震住宅の構成とした。
【0011】
また、地盤にコンクリート基盤を打設し、養生し、環状に配置される柔軟なパイプを設置する位置にリード線を置き、前記リード線を覆うように前記パイプを収納する底が開口、かつ側面に一部開口部を設けた断面コの字状の管を置き、建物基礎の配筋を行い、前記コンクリート基盤上面に剥離剤を塗布し、前記コンクリート基盤と建物基礎と前記パイプとの隙間に気体を送入する孔の位置にパイプを設置し、建物基礎のコンクリートを前記開口部を残し打設、養生し、前記断面コの字状の管の側面開口部からリード線の一端に前記パイプを連結し、前記リード線の他端を引き出して前記建物基礎に埋設された断面コの字状の管内に前記パイプを挿入することを特徴とする浮上式免震住宅の基礎の施工方法の構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明である免震装置は、建物を気体圧により略水平に浮上させ、地震の揺れを免震し、建物を地震から保護することができる。さらに、地震後ズレて建物が基盤に載ることも少なく、さらには、ズレ矯正装置を付加することで、ズレて建物が基盤に載ることがない。これら装置を用いた住宅は、地震の揺れに対して極めて高い免震性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明である建物の免震装置の建物基礎平面のエア配管系模式統図である。
【図2】本発明である建物の免震装置の建物基礎平面の制御線系模式統図である。
【図3】本発明である建物の免震装置の作動前のE−E断面模式図である。
【図4】本発明である建物の免震装置の免震作動中のE−E断面模式図である。
【図5】本発明である建物の免震装置を構成する注入制御倒置の作動前の縦断面模式図である。
【図6】本発明である建物の免震装置を構成する注入制御倒置の作動後の縦断面模式図である。
【図7】弁による隙間圧を調整し、加重の異なる建物を略水平に浮上させる方法を説明する注入制御倒置の縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である建物の免震装置及び免震住宅について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明である建物の免震装置の建物基礎平面のエア配管系模式統図である。図2は、本発明である建物の免震装置の建物基礎平面の制御線系模式統図である。また、図3は、本発明である建物の免震装置の作動前のE−E断面模式図である。
【0016】
建物の免震装置1は、パイプ2とエアタンクからなる。より詳しくは、地盤20に施工される基盤8と基盤8に重なり上に建物を固定する建物基礎9との間に設置される1以上の環状の柔軟なパイプ2、2、・・・と、地盤20又は建物の揺れの感知によりパイプ2、並びにパイプ2と基盤8と建物基礎9とで囲まれた隙間18に気体を送るエアタンク10、10・・・とからなり、地盤20又は建物の揺れ発生時、建物基礎9を略水平に浮上させ、建物の揺れを免震することを特徴とする。免震時の建物基礎9の基盤8からの浮上高さは、5mm〜15mm程度で十分免震効果を発揮する。好ましくは10mm程度である。
【0017】
地盤20は、建物を建てる土面であり、土、砂、砂利、石などにより補強してあってもよい。基盤8は、鉄筋、コンクリートなどで形成され、建物を支える下部構造である。所謂べた基礎が好適である。
【0018】
建物基礎9は、建物下部に気体を送入する孔9aを設け、建物の底一面をコンクリート、モルタルで覆う部分で、送入した気体を逃がさない層となる。建物は、住居、倉庫などに限定されることなく、像など種々の構造物も含む。
【0019】
パイプ2は、地震発生時に、気体が送入され、パイプ2により所定の範囲に区画された基盤8と建物基礎9との隙間をシールする機能を発揮する。また、シール機能を発揮すれば、その素材は特に限定されない。また、揺れのとき、基盤上を滑るよう基盤との摩擦抵抗が低いものが望ましい。
【0020】
さらに、寒冷池から温かい地方においても使用できるよう、耐冷(−40℃)、耐熱(+50℃)性を有するものが好ましい。加えて、コンクリート層内に長期間設置されるため、耐アルカリ性を有することがこのましい。ゴム、樹脂、例えば三井化学(株)ミラストマー(登録商標)に、摩擦抵抗の低い樹脂を積層することにより、柔軟かつ強度、滑り、耐アルカリ、耐冷、耐熱、耐密閉性があるパイプが得られる。建物基礎9を基盤8から10mm程度浮上させる場合には、パイプ2の直径は40mm程度で十分である。
【0021】
パイプ2は、基盤8と建物基礎9との間に複数の区切られた空間を形成するよう環状に、配置される。その区切られた空間毎に、建物基礎9には孔9aが設けられ、揺れ発生時、気体が前記孔9aから前記空間に送入され、建物基礎9を上昇させる。
【0022】
パイプ2は、建物基礎9に環状に巡らし埋設され、底が開口した断面コの字状の管9b内に設置すると、施工、気密性の観点が優れている。管9bは、基盤8とともにパイプ2を囲み収納する。管9bは、内径70mm程度の内部が空洞の四角柱、円柱を縦に切断し、一面を開口させたものが採用できる。40mmのパイプ2を採用し、建物基礎9を基盤から10mm程度浮上させる場合には、管9bの建物基礎9底部からの高さは、20mm〜30mm程度あればよい。
【0023】
気体は、特に限定されないが、安全性、コストから空気が好適である。エアタンク10は、地震、建物の揺れを感知し、環状に設置されたパイプ2により区切られた基盤8と建物基礎9の間に、気体を送入する。
【0024】
次に、図1を参照して、本発明である建物の免震装置1を適用した住宅のエア配管の一例を説明する。ここでは、パイプ2で区切られる区画は4箇所(図中A、B、C、D)とした。複数の区画を設けることで、建物基礎の加重の偏りがあったとしても、区画毎に圧力が調整され、結果的に建物基礎9の浮上高さを一定することができる。その結果、建物を水平に浮上させることができ、気体排出後にも、ズレがすくなく、ズレの矯正も容易になる。
【0025】
また、図1、2では、建物基礎9及び前記区画を略四角形としているが、種々の複雑な形状であっても構わない。
【0026】
以下、符号は主に区画Aについてのみ図中に記載されているが、区画B〜Dも同様の描写は、区画Aと同じ装置、部材である。複数のエアタンク10、10aは、建物基礎9上に設置され、家庭用電源、又は非常用バッテリ10cで駆動するコンプレッサ10bにより、エアタンク10、10a内にエアが補充されエアタンク10、10a内の圧力は一定に保たれるよう制御される。
【0027】
エアタンク10から送られる気体(以下、空気ともいう。)は、エアタンク10とバルブ11とを連結する配管、及びバルブ11と減圧弁7を連結する配管を通り、さらに減圧弁7と各区画(A、B、C、D)のパイプ2と基盤8と建物基礎9とで囲まれた隙間(以下、区画ともいう。)にエアホース3を通り送られる。前記隙間には、建物基礎9に設けられた孔9a内に設置された後述の注入制御装置13を介して送られることが望ましい。
【0028】
また、空気は、減圧弁7から各パイプ2にもエアホース4を通り送られる。各パイプ2は、パイプ2と同一素材でできたT字状のジョイント2aで環状に熱融着などにより連結される。
【0029】
エアタンク10、10aコンプレッサ10bは、地震の時の揺れにより配管が破断することがないよう、建物基礎9、その上に建てられる建物内に設置されることが望ましい。
【0030】
さらに、先の隙間、パイプ2に送られるエアタンク10と独立した1以上のエアタンク10aを備え、バルブ5a、エアホース5を介して各区画のズレ矯正装置21に送られる。ズレ矯正装置21とは、免震後、発生した基盤8と建物基礎9の水平方向のズレをエアタンク10aから送入された気体の圧力で、建物基礎9を水平方向に移動させ、基盤8と建物基礎9のズレを修正するものであり、所謂エアダンパである。
【0031】
例えば、ズレ矯正装置21の形態としては、建物基礎9に設けた穴22の中心に位置する基盤8に垂直に固定された軸に、X軸、Y軸方向に水平に伸縮するエアシリンダーが採用できる。エアシリンダーはエアホース5を介して、エアタンク10aから気体が送られる。
【0032】
その場合、エアホース5から送られた気体圧により、X軸、Y軸方向の各エアシリンダーの内部が等しくなるようエアタンク10aから気体を送る。その結果、基盤8と建物基礎9にズレがない状態に、建物基礎9が水平方向に移動し、ズレを解消させることができる。なお、ズレ矯正装置21とパイプ2へ送る気体のエアタンク10、10aはそれぞれ独立させると、パイプ2の耐圧を考慮することなく、高圧力の気体をズレ矯正装置21に送ることができ、好ましい。
【0033】
ズレ矯正装置21は、上記に限らず、基盤8と建物基礎9とのズレを、ズレセンサ−(図2中省略/ズレ矯正装置21或いは基盤8と建物基礎9とに設けられるものでどのような装置で、どのようなシグナルを発生させてもよい。)の情報をもとに、水平方向(X軸、Y軸2方向/図1)のズレを、バネ、エアなどにより修正できればよい。
【0034】
また、前記バルブ11には、免震後、パイプ2、区画から送入された空気を排出する排出配管11aが接続され、一度にパイプ2、各区画から容易に空気を排出することができる。
【0035】
バルブ11は、三方弁などで、各区画にエアを送るときはエアタンク10と減圧弁7側が挿通し排出管11a側は閉止され、エア排出時には減圧弁7と排出配管11a側が挿通しエアタンク10側が閉止される。免震待機時は、エアタンク10側が閉止され、減圧弁側7、排出配管11a側が閉止されている。また、バルブ11は、三方弁でなく各配管に個別に設置、個別に前述のように開閉制御してもよいことは勿論である。
【0036】
減圧弁7は、エアタンク10からパイプ2に送られる気体圧を減じる装置である。パイプ2の耐圧力が、エアタンク10内の気体圧以上にある場合は、減圧弁7は、使用しなくてよい。
【0037】
次に、図2を参照し、各装置、バルブの制御につて説明する。地上に設置された揺れ感知センサ内蔵制御装置12によって、各装置、バルブは一括制御できる。さらに、建物内にも揺れ感知センサ内蔵制御装置を設置してもよい。揺れ感知センサ内蔵制御装置12は、地震の初期微動、P波、S波、縦揺れ、横揺れ何れを感知するものでよく、市販の揺れ感知センサを採用することができる。
【0038】
揺れ発生時、揺れ感知センサ内蔵制御装置12が揺れを感知し、バルブ11の作動を制御するシグナル(図2中一点鎖線)を信号線12aを通しバルブ11に送る。バルブ11の作動によりタンク10とパイプ2、タンク10と各区画を連通させ、排出管11a側を閉止する。すると、エアタンク10からパイプ2に空気が一気に送られ、パイプ2が膨張し各区画をシールする。同時に、各区画にも空気が送られ、建物基礎9が一定の高さまで上昇する。地震の最中、建物基礎9が上昇した状態で維持される。
【0039】
免震後、必要に応じて、基盤8と建物基礎9とのズレを矯正し、各区画、パイプ2、ズレ矯正装置21の気体を排出する。例えば、タイマー制御による地震発生から一定時間経過後など、感知センサ内蔵制御装置12が、バルブ11の作動を制御するシグナルを信号線12aを通しバルブ11に送る。バルブ11の作動によりタンク10側が閉止され、パイプ2及び各区画と排出管11a側を連通させる。
【0040】
各区画、パイプ2の気体の排出の前後に、必要に応じてバルブ5aを作動させてズレ矯正装置21からも気体を排出管5bから排出する。バルブ5aも三方弁を採用すると気体の送入、排出制御が容易である。
【0041】
その結果、パイプ2、各区画の空気を排出配管11aから排出させ、建物基礎9を基盤8の上にズレがなく載せることができる。そして、次の揺れに備える。
【0042】
図3、図4を参照し、建物基礎の浮上の仕組みを説明する。図3は、本発明である建物の免震装置の作動前のE−E断面模式図である。図4は、本発明である建物の免震装置の免震作動中のE−E断面模式図である。
【0043】
基盤8と建物基礎9との間に、上方及び側方を管9bに囲まれ環状にパイプ2が設置されている。ここで、パイプ2の設置方法及び建物の下部構造(基礎)の施工方法について説明する。
【0044】
上式免震住宅の基礎の施工方法は、次の工程を順次行う。先ず、地盤20に鉄筋を配筋し、コンクリート基盤8を打設し、養生させる。次に、環状に配置される柔軟なパイプ2を設置する位置にリード線(図示なし)を置く。前記リード線を覆うように前記パイプ2を収納する底が開口、かつ側面に一部開口部を設けた断面コの字状の管9bを置き、建物基礎9の配筋を行う。
【0045】
続いて、前記コンクリート基盤8上面に剥離剤を塗布し、前記コンクリート基盤8と建物基礎9と前記パイプ2との隙間に気体を送入する孔9aの位置に塩ビ製などのパイプを設置し、建物基礎9のコンクリートを前記開口部を残し打設、養生する。剥離剤とは、固化した基盤8と固化した建物基礎9とを分離させ易くさせ、かつコンクリートのアルカリ性を害しない物質で、鉱物油或いは植物油と水を乳化剤などで乳化した乳化物などが例示できる。より具体的には、佐藤科研工業有限会社製、エコメイトCR−1(植物油)に水を加えてた乳化液が挙げられる。
【0046】
その後、前記断面コの字状の管9bの側面開口部からリード線の一端に前記パイプ2(非環状)を連結し、前記リード線の他端を引き出して前記建物基礎9に埋設された断面コの字状の管9b内に前記パイプ2を挿入する。さらに、T字状のジョイント2aとパイプ2を熱融着などしてパイプ2を環状にする。最後にジョイント2aの一端を前記エアホース4に接続する。このとき、より密閉度を保つため、建物基礎9の前記開口部に蓋2bを用いるとよい。このようにして、浮上式免震住宅の下部構造を容易かつ、エア漏れなく施工することができる。
【0047】
図4に示すように、エアホース4からパイプ2に空気が送入されると、パイプ2が膨張し、基盤8と建物基礎9の区画(隙間18)とをシールする。なお建物基礎9の浮上(図中上矢印)は、エアホース3を通り、後述の注入制御装置13を介して送られた空気圧によって行われる。このように建物基礎9が基盤から上昇することにより、建物基礎9上の建物を免震する。
【0048】
次に、注入制御装置13について説明する。図5は、本発明である建物の免震装置を構成する注入制御倒置の作動前の縦断面模式図である。
【0049】
注入制御装置13は、各区各に空気を送るエアタンク10に接続するエアホース3に一端が連結し、他端が建物基礎9に穿設した孔9aに固定された前記各区画への気体の注入量を調節する。従って、その機能を発揮すれば、本発明を構成する注入制御装置は、図5に例示した構造に限定されるものではない。
【0050】
図5に示す注入制御装置13は、一端がエアホース3に連結し他端が建物基礎9の孔9aを覆い固定され内部が空洞の本体15a及び本体15a内部に突出した係止部15fを有する筒体15と、孔9a内に挿入され基盤8に載置した重り17と、重り17に固定され筒体15内に位置する軸16aと、軸16aに高さ位置調節可能に備えられエアホース3からの気体送入により浮上する建物基礎9の浮上により係止部15fとで前記隙間へ送入される気体の注入量を調節する弁16と、からなる。
【0051】
筒体15は、円柱に限らず四角柱など形状は特に限定されず、建物基礎9に固定される。筒体15の固定は、一例を挙げれば、筒体15の建物基礎9側の端部に形成されたフランジ15cを挿通し、建物基礎9に固定又は螺着したネジ部を有する軸棒15dと、ナット15eを螺着させ方法がある。
【0052】
筒体15とエアホース3との連結は、一例を挙げれば、エアホース3端部にフランジ3aを形成し、エアホース3を内部にネジ山を形成したキャップ3b内に通し、キャップ3bを筒体15のエアホース3側の端部外周に形成されたネジ部15bに螺着させ、気密的連結する方法がある。
【0053】
重り17は、孔9a内に、揺れにより水平方向に移動可能に収納されているだけである。従って、少なくとも基盤8と接触する重り17の底部は、基盤8との摩擦により摩耗しないよう摩擦抵抗が低い素材を採用することが好ましい。例えば、ポリアセタールなどが挙げられる。重り17を基盤8と連結しないことにより、揺れが基盤8と重り17にそれぞれに直接伝達されることがない。
【0054】
軸16aは、弁16の高さ位置を調節可能にすることが好ましい。この弁16の高さにより、建物基礎9の基盤8からの浮上高さを調節することができる。例えば、軸16aの外周部に、ねじ山を形成し、一端を重り17に螺着させ、他端側からさらに弁16を螺合させ、弁16を回転させることで、弁16の高さ位置を調節する方法が挙げられる。
【0055】
弁16は、筒体15本体15aの内部形状に合わせ、建物基礎9の浮上時に、係止部15fと接触して、筒体15と孔9aとの間を遮断する形状であればよい。図5に示すように、弁16の高さ位置をネジ構造により回転で調節する場合、筒体15の本体は内部空洞の円柱形状で、弁は円盤形状が好適である。
【0056】
弁16は、図5に示すように、基盤8と建物基礎9が接触している免震非作動時には、係止部15fと接触せず、筒体15内部と、孔9aが連通している。従って、免震時にエアタンク10に充填された空気は、エアホース3から筒体15内部、孔9aを通り、基盤8と建物基礎9との間に流れ込むことができる。
【0057】
次に、図6、7を参照し、弁16による基盤8と建物基礎9との間への空気の注入量調節機構を説明する。
【0058】
図6は、本発明である建物の免震装置を構成する注入制御倒置の作動後の縦断面模式図である。図7は、弁による隙間圧を調整し、加重の異なる建物を略水平に浮上させる方法を説明する注入制御倒置の縦断面模式図である。
【0059】
揺れ発生時、揺れ感知センサ内蔵制御装置12がバルブ11の開閉を制御し、空気19がパイプ2内にエアタンク10から流れ込む。それと同時に、空気19は、エアホース3、筒体15内、孔9aを通り、隙間18にも流れ込む。隙間18は、基盤8と建物基礎9の間をパイプ2でシールされた空間であるので、徐々に建物基礎9が基盤8から浮上する(図中上矢印)。
【0060】
隙間18に空気19が流れ続けると、図7に示すように、上昇した係止部15fが、弁16と接触して、空気19の隙間18への流入を遮断する。
【0061】
また、仮に、パイプ2と基盤8及び建物基礎との間から空気19が漏れたとしても、隙間の空気圧が低下し、建物基礎9が降下した場合は、図6のようになり、また空気19が隙間18に流れ、隙間18の空気圧を一定に保つように弁16と係止部15fで制御される。
【0062】
その結果、建物基礎9の基盤8からの浮上高さも一定に保たれるよう制御される。さらに、建物基礎9の各区画での加重に偏りがあっても、各区画の空気圧が自動制御されるため、各区画は何れも弁16の位置まで浮上し、結果建物基礎9が略水平に浮上することとなる。極めて、簡易な構造で、パイプで囲まれた区画(隙間18)の空気圧を調整することができる。
【0063】
免震後、例えば地震発生から所定時間後、バルブ11を作動(エアタンク10側を閉止、減圧弁7と排出管11aを挿通)させ、パイプ2、隙間18の空気を排出し、建物基礎9を基盤の上に載置することができる(図5)。なお、その時、上述のように、ズレ矯正装置、エアタンク10aの開閉を制御することより、建物基礎9の基盤8に対する水平方向のズレを修正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明である建物の免震装置は、気体圧により建物を略水平に浮上させ、地震の揺れを免震し、建物を地震から保護することができる。さらに、地震後ズレて建物が基盤に載ることも少なく、さらには、ズレ矯正装置を付加することで、ズレて建物が基盤に載ることがない。これら装置を用いた住宅は、地震の揺れに対して極めて高い免震性を発揮する。
【符号の説明】
【0065】
1 建物の免震装置
2 パイプ
2a ジョイント
2b 蓋
3 エアホース
3a フランジ
3b キャップ
4 エアホース
5 エアホース
5a バルブ
5b 排出管
7 減圧弁
8 基盤
9 建物基礎
9a 孔
9b 管
10 エアタンク
10a エアタンク
10b コンプレッサ
10c 非常用バッテリ
11 バルブ
11a 排出配管
12 揺れ感知センサ内蔵制御装置
12a 信号線
13 注入制御装置
15 筒体
15a 本体
15b ネジ部
15c フランジ
15d 軸棒
15e ナット
15f 係止部
16 弁
16a 軸
17 重り
18 隙間
19 空気
20 地盤
21 ズレ矯正装置
22 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に施工される基盤と前記基盤に重なり上に建物を固定する建物基礎との間に設置される1以上の環状の柔軟なパイプと、前記地盤又は建物の揺れの感知により前記パイプ、並びに前記パイプと前記基盤と建物基礎とで囲まれた隙間に気体を送るエアタンクとからなり、
地盤又は建物の揺れ発生時、前記建物基礎を略水平に浮上させ、建物の揺れを免震することを特徴とする建物の免震装置。
【請求項2】
前記建物基礎に、前記基盤とで前記パイプを囲み収納する底が開口した断面コの字状の管を、環状に巡らし埋設したことを特徴とする請求項1に記載の建物の免震装置。
【請求項3】
一端が前記エアタンクに接続する前記エアホースに連結し、他端が前記建物基礎に穿設した孔の位置に固定され前記各区画への気体の注入量を調節する注入制御装置を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の免震装置。
【請求項4】
前記注入制御装置が、一端が前記エアタンクに接続する前記エアホースに連結し、他端が前記建物基礎の孔を覆い固定された内部が空洞の本体及び前記本体内部に突出した係止部とよりなる筒体と、孔内に挿入され、前記基盤に載置した重りと、前記重りに固定され前記筒体内に位置する軸と、前記軸に高さ位置調節可能に備えられ、前記エアホースからの気体送入により前記建物基礎とともに浮上する前記係止部とで、前記隙間へ送入される気体の注入量を調節する弁とからなることを特徴とする請求項3に記載の建物の免震装置。
【請求項5】
免震後、前記基盤と建物基礎の水平方向のズレを前記エアタンクと独立したエアタンクから送入された気体の圧力で、前記建物基礎を水平方向に移動させ、前記基盤と建物基礎のズレを修正する矯正装置を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の建物の免震装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の建物の免震装置を備えたことを特徴とする免震住宅。
【請求項7】
地盤にコンクリート基盤を打設し、養生し、環状に配置される柔軟なパイプを設置する位置にリード線を置き、前記リード線を覆うように前記パイプを収納する底が開口、かつ側面に一部開口部を設けた断面コの字状の管を置き、建物基礎の配筋を行い、前記コンクリート基盤上面に剥離剤を塗布し、前記コンクリート基盤と建物基礎と前記パイプとの隙間に気体を送入する孔の位置にパイプを設置し、建物基礎のコンクリートを前記開口部を残し打設、養生し、前記断面コの字状の管の側面開口部からリード線の一端に前記パイプを連結し、前記リード線の他端を引き出して前記建物基礎に埋設された断面コの字状の管内に前記パイプを挿入することを特徴とする浮上式免震住宅の基礎の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−189931(P2010−189931A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35476(P2009−35476)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(308038761)島帆ハウス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】