建物ボイド内組込型の立体駐車装置およびその水平サポート装置
【課題】 立体駐車装置を建物ボイド内壁面に支持させながら、その運転音や小振動が建物躯体へ伝播することを抑制し、地震等の大きな揺れに対しては立体駐車装置が建物躯体に追従して揺れるように作用する、建物ボイド内組込型の立体駐車装置用の水平サポート装置を提供する。
【解決手段】 ボイド3内に設置された駐車装置1と前記ボイドの隔壁内面5aとの間に配設される、隔壁内面5aに駐車装置1を支持させるための水平サポート装置25であって、駐車装置1の立駐塔4に接続され、前記隔壁内面5aとの間に隙間を介して配置される第一緩衝部材26と、立駐塔4および隔壁内面5aの内面の両方に接するように配置される第二緩衝部材27とを備えており、第二緩衝部材27の対歪剛性が第一緩衝部材26の対歪剛性より小さくされている。
【解決手段】 ボイド3内に設置された駐車装置1と前記ボイドの隔壁内面5aとの間に配設される、隔壁内面5aに駐車装置1を支持させるための水平サポート装置25であって、駐車装置1の立駐塔4に接続され、前記隔壁内面5aとの間に隙間を介して配置される第一緩衝部材26と、立駐塔4および隔壁内面5aの内面の両方に接するように配置される第二緩衝部材27とを備えており、第二緩衝部材27の対歪剛性が第一緩衝部材26の対歪剛性より小さくされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体のボイド内に設置される実質的に塔状の鉄骨構造体を有した立体駐車装置、および、建物ボイドの内面に前記立体駐車装置を支持させるための水平サポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10および図11に示すように、近年、予め建物62に内部空洞(以下、「ボイド」という)63を形成し、そのボイド63内に立体駐車装置を設置する形態が多くなっている。図10はかかる立体駐車装置の一例としてのエレベータ式駐車装置61を示す正面図であり、図11は図10におけるXI−XI線断面図である。
【0003】
これらの図では、車両搬送用のエレベータ65と、エレベータ65の昇降路66に沿ってその両側に車両搭載用のパレット73を収容する上下多段の駐車棚67とを備えたエレベータ式駐車装置61が例示されている。しかし、他の形式の駐車装置も提案されている。この立体駐車装置61は、ボイド63の内壁面63aとの間に隙間68を設けることにより、実質上離間して独立した状態で設置されている。そして、これらの立体駐車装置61では、その塔状構造体64の適宜箇所にボイド内壁面63a向けて非接触式の水平サポート機構69が突設されている。なお、塔状構造体64とは、主柱70や梁71等からなる塔状の鉄骨構造体を意味しており、立駐塔ともいう。この立駐塔64は、主柱70と梁71とが形成する四角面の対角を結ぶように補強用斜材(ブレス)72が交差して設けられている。
【0004】
図12に示すように、前記水平サポート機構69はチャンネル状の鋼鉄製ブラケット74を有している。このブラケット74の一端面には、長さ調整ボルト75によってゴム固定板76が突設されている。ゴム固定板76には緩衝ゴム77が取り付けられている。ブラケット74の他端は主柱71に溶接等によって固着されている。緩衝ゴム77がボイド63の内壁面63aに衝突する部分である。
【0005】
前記のとおり、立駐塔64自体はもとより、水平サポート機構69もボイド内壁面63aから所定の間隔G(たとえば約20mm)だけ離間している。したがって、通常時は建物62と立駐塔64とは実質的に独立した状態にあり、駐車装置61で発生する振動や騒音の建物62側への伝播が軽減される。そして、地震時等には立駐塔64が揺れて水平サポート機構69の緩衝ゴム76がボイド内壁面63aに衝突するので、建物62の揺れに追従して揺れることになる。こうすることにより、建物62および駐車装置61の双方の損傷の防止を図ろうとしている。
【0006】
このような駐車装置としては特許文献1、2に開示されたものが知られている。そして、前述した非接触式の水平サポート機構としては、特許文献1の垂直循環式駐車装置における緩衝装置5、および、特許文献2のエレベータ式駐車装置における緩衝部材14,15が挙げられる。また、駐車装置ではないが、同様の構造を採用した耐震立体倉庫(特許文献3)における突っ張り部材30も提案されている。
【0007】
しかしながら、以上説明した駐車装置では、高層であるためその下層から上層にいたるまでボイド内壁面との間に僅かな隙間を維持したままで自立することは困難である。そのため、駐車装置の稼働や小規模地震(たとえば深度1〜2程度)によっても、特に上層部において水平サポート機構が断続的にボイド内壁面に衝突する。このときの振動が固体伝播音としてボイド壁を通して建物側に伝わり、建物居住者に不快感を与える。
【0008】
一方、水平サポート機構を常にボイド内壁面へ当接させておく(突っ張らせておく)ことによって前述のような断続的な衝突を回避することも考えられる。しかしながら、駐車装置の稼働時には常にその振動や騒音が水平サポート機構およびボイド内壁を通して固体伝播音として建物側に伝わる。
【特許文献1】特開平10−280720号公報
【特許文献2】特開2005−155161号公報
【特許文献3】特開平3−233082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、常に建物ボイド内壁面に支持されていながら、駐車装置の運転音や小振動の建物躯体への伝播が抑制され、さらに、大きな地震等の揺れに対しては建物躯体に追従して揺れることによって損壊を防止しうる建物ボイド内組込型の立体駐車装置、および、この駐車装置に適用される水平サポート装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水平サポート装置は、
建物ボイドに設置された立体駐車装置と前記建物ボイドの内面との間に配設される、この建物ボイドの内面に前記立体駐車装置を支持させるための水平サポート装置であって、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続され、他方との間に隙間を介して配置される第一緩衝部材と、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するように配置される第二緩衝部材とを備えており、
前記第二緩衝部材の対歪剛性が第一緩衝部材の対歪剛性より小さくされている。
【0011】
この水平サポート装置によれば、それが立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するので、駐車装置と建物躯体とが相対的に揺れることが抑制され、駐車装置がボイドの壁面に衝突することを防止することができる。ここでいう「接する」は、「接続する」意味も含んでいる。また、塔状構造体および建物ボイド内面の両方に接しているのは対歪剛性が比較的小さい第二緩衝部材であるため、駐車装置の小振動や騒音が伝播しにくい。また、大きな地震等の大きな揺れが発生したときには駐車装置と建物ボイド内面との隙間が縮小するので、対歪剛性が比較的大きい第一緩衝部材が駐車装置および建物ボイド内面の両方に接触することになる。その結果、駐車装置は建物躯体に追従して揺れるので、損壊が防止される。第一緩衝部材が駐車装置および建物ボイド内面の両方に接触するときには、すでに第二緩衝部材が相当に歪んで復元力が生じているため、第一緩衝部材は駐車装置または建物ボイド内面に激しく衝突することはない。
【0012】
なお、第二緩衝部材の対歪剛性を第一緩衝部材の対歪剛性より小さくする方法としては、たとえば、緩衝部材に弾性材質を用いる場合には、第二緩衝部材の弾性材質の弾性率を第一緩衝部材の弾性材質の弾性率より小さくすることができる。また、同一弾性率の弾性材質を用いる場合であっても、両緩衝部材がいずれも圧縮(引っ張り)変形することによって緩衝作用を奏する場合には、第二緩衝部材の弾性材質の受圧面積を第一緩衝部材の弾性材質の受圧面積より小さくする等の方法をとることができる。例えて言えば、第二緩衝部材のバネ定数を第一緩衝部材のバネ定数より小さくすることができる。また、後述するように第二緩衝部材を剪断方向に変形するように構成し、第一緩衝部材を圧縮方向に変形するように構成することもできる。
【0013】
前記第二緩衝部材を、立体駐車装置と建物ボイドの内面との隙間寸法の変動によって剪断方向に弾性変形しうるように配設することができる。こうすることにより、第二緩衝部材を塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するように配置したうえで、第二緩衝部材のバネ定数を第一緩衝部材のバネ定数より小さくすることができる。なぜなら、たとえば緩衝部材に弾性部材としてのゴム等を用いる場合、一般的にゴムも縦弾性係数より横弾性係数が小さいからである。
【0014】
前記第二緩衝部材の主要構成要素として、塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に突設された上側ブラケットと、他方に突設された下側ブラケットと、この上下のブラケットの間に固定挟持された弾性部材とを含めることができる。弾性部材をこのように取り付けると、揺れによる塔状構造体と建物ボイドの内面との横方向の相対変位に伴い、前記弾性部材を効果的に剪断方向に変形させることができる。しかも、水平面内360゜いずれの方向の相対変位に対しても、一つの第二緩衝部材が剪断方向に変形して防振作用を奏することができる。
【0015】
前述の上下のブラケットのうち少なくともいずれか一方を、その突出方向の長さを調節しうるように構成することができる。こうすることにより、塔状構造体と建物ボイドの内面との間の隙間寸法に応じて第二緩衝部材の突出長さを調節し、前記弾性部材を効果的に機能させることができる。
【0016】
前記第二緩衝部材を、立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続し、他方にその先端を当接させることができる。
【0017】
本発明の建物ボイド内組込型の立体駐車装置は、
建物躯体に形成されたボイド内に設置される立体駐車装置であって、
駐車機構が組み込まれた塔状構造体と、
この塔状構造体の外面と建物ボイドの内面との間に上下方向に間隔をおいて配置された水平サポート装置とを備えており、
この水平サポート装置が、前述したうちのいずれか一の水平サポート装置である。
【0018】
かかる立体駐車装置は、その水平サポート装置の作用により、駐車装置と建物躯体とが相対的に揺れることが抑制され、駐車装置がボイドの壁面に衝突することが防止されうる。しかも、駐車装置の小振動や騒音が伝播しにくい。また、地震等によって大きな振動が加えられても、駐車装置は建物躯体に追従して揺れるので損壊が防止される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、駐車装置は常に建物ボイド内壁面に支持されていながら、駐車装置の運転音や小振動は建物躯体へ伝播することが抑制される。さらに、駐車装置は大きな地震等の揺れに対しては建物躯体に追従して揺れることにより、その損壊が防止されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態にかかる立体駐車装置(以下、単に駐車装置ともいう)およびその水平サポート装置を説明する。図1は、そのボイド内に本発明の立体駐車装置が設置されている建造物を示す、水平面で切った横断面図である。図2は図1における駐車装置の一実施形態にかかるエレベータ式駐車装置を示す、図1のII−II線断面図である。図3は図2の駐車装置の側面図である。図4は図2におけるIV−IV線断面を示す、駐車階の平面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態にかかる駐車装置1は、いわゆるビル内鉄塔型のものであり、居住空間(住居部分、オフィス等)を擁するビルの建物躯体2に形成されたボイド3の内部に立設されている。この立駐塔4は、その前後左右の四面が建物躯体2によって囲まれているが、その入出庫階15では、入出庫口16(図2、3参照)から外部へ通じる入出通路8に対向する範囲が開放されている。もちろん、その左右両側面および後面が建物躯体2によって囲まれ、前面4Fの全体が外部へ開放されたものでもよい。このような形態で、高層マンション等の高層建物の中央部ボイド内に立体駐車装置を設置するケースが多くなっている。この種のボイドは、一般にその周囲が耐震耐火壁から構成された隔壁5に囲まれている。また、この隔壁5の外周に形成された回廊状の共有廊下6が、住戸7等を駐車装置用のボイド3からさらに隔てている。したがって、機械式の駐車機構を内蔵した立駐塔4が前記隔壁内面5aに直接接触していても住戸7への騒音や振動の影響は極めて少ない。
【0022】
図2および図3に示すように、この駐車装置1は車両Mを搬送するためのエレベータ10を備えている。エレベータ10の昇降路11に沿ってその左右両側に多数段の駐車棚12が配設されている。エレベータ10はワイヤーロープ13によって吊り下げられており、このワイヤーロープ13の他端にはカウンターウエイト14が連結されている。地上階(地下階であってもよい)である入出庫階15には入出庫口16が形成されている。また、駐車装置1の最上階である機械室17には、ワイヤーロープ13を巻き上げ繰り出してエレベータ10を昇降させる昇降駆動装置18が設置されている。
【0023】
図4も併せて参照すれば明らかなように、立駐塔4は、平面視矩形のボイド3の四隅に立設された主柱20と、主柱20間の適宜箇所に水平に架け渡された梁21とによって塔状に組み立てられたものである。立駐塔4の所定位置には鉛直方向に主棚柱22と副棚柱23とが立設されている。副棚柱23はエレベータ昇降路5の四隅に立設されている。この主棚柱22と副棚柱23との間に駐車棚12としてのレールが架け渡されている。レールの上には、車両Mを搭載するパレット19が格納されている。また、主柱20と梁21とが形成する四角面の対角を結ぶように補強用斜材(ブレス)24が交差して設けられている。
【0024】
図2〜図4に示すように、各主柱20の上下方向に所定間隔をおいた複数所には、水平サポート装置(以下、単にサポート装置とも呼ぶ)25が取り付けられている。このサポート装置25は、主柱20上の各取付箇所において互いに水平面内にほぼ90゜をなす外向きの二方向それぞれに突出した一対のサポート装置25a、25bから構成されている(図4参照)。このように、平面視矩形の立駐塔4の四隅それぞれに、互いにほぼ90゜をなす方向にサポート装置25を突設しているため、いずれの方向の横揺れに対してもいずれかのサポート装置25が有効に作用する。本実施形態では、両サポート装置25a、25bはH形鋼からなる主柱20のハブ部20hとフランジ部20fとに取り付けられている。したがって、その水平方向の長さは相違する。しかし、基本構成は下記のとおり同一である(図5および図6も併せて参照)。
(水平サポート装置の第一の実施形態)
図5は図4のV−V線矢視図であり、サポート装置25を示している。図6は図5のVI−VI線断面図である。図5の左側は互いに90゜をなす一方のサポート装置25aの側面図であり、右側は他方のサポート装置25bの正面図(隔壁内面5a側から見た図)である。図示のごとく、いずれのサポート装置25a、25bも、第一緩衝部材26と、この第一緩衝部材26を挟んだ上下のほぼ対称位置それぞれに配設される第二緩衝部材27とから構成されている。
【0025】
両緩衝部材26、27は大きく以下のように相違している。第二緩衝部材27は第一緩衝部材26よりその対歪剛性が小さく構成されている。そして、第一緩衝部材26はその先端が隔壁内面5aから離間しているが、第二緩衝部材27は主柱20および隔壁内面5aのいずれにも接続されている。したがって、通常時には立駐塔4は第二緩衝部材27を介して隔壁5によって支持され、第二緩衝部材27によって小振動や騒音が吸収されている。地震等によって大きな揺れが生じたときには、第一緩衝部材26が隔壁内面5aに当接するので、立駐塔4は第二緩衝部材27および第一緩衝部材26を介して隔壁5によって支持される。
【0026】
図5および図6に示すように、第一緩衝部材26は三枚の鋼鉄板からチャンネル状に形成されたブラケット28を有している。ブラケット28の基端部は溶接等によって主柱20に固定されている。ブラケット28の先端面を構成する取付板28aには、シム(スペーサ)29を挟持するようにゴム固定板30が取付ボルト31によって着脱可能に取り付けられている。ゴム固定板30上の前記取付ボルト31を避ける位置(図5の右側の第一緩衝部材26を参照)には、板状の緩衝ゴム32が固定ボルト33または接着剤によって固定される。この緩衝ゴム32が、第一緩衝部材26の隔壁内面5aへの衝突時の衝撃を吸収する。また、シム29の装着枚数を変えることにより、主柱20からの緩衝ゴム32の突出位置を調節することができる。そして、第一緩衝部材26は、その先端面(緩衝ゴム32の外端面)と隔壁内面5aとの間に所定の隙間G(たとえば約10〜約20mm)が生じるように調節される。建物躯体2および立駐塔4の横揺れによって立駐塔4と隔壁内面5aとの間隙が小さくなると緩衝ゴム32が隔壁内面5aに当接する。なお、緩衝ゴム32の外端面には固定ボルト33用の座ぐり穴が形成され、そこに固定ボルト33の頭が収容されている。したがって、緩衝ゴム32の外端面が隔壁内面5aに衝突したときでもボルト頭の衝突は回避される。
【0027】
本実施形態では第一緩衝部材26のブラケット28の基端部は主柱20に固定されているが、かかる構成に限定されない。たとえば、ブラケット28の基端部を隔壁内面5a側に固定し、先端の緩衝ゴム32の外端面と主柱20の面との間に所定の隙間Gを設けるようにしてもよい。その場合、主柱20には必要に応じて緩衝ゴム32が当接しうる当接板を取り付けておいてもよい。また、図示の緩衝ゴム32は直方体状を呈しているが、円柱状等の他の形状であってもよい。
【0028】
上下の第二緩衝部材27はいずれも、L字状断面の壁側ブラケット34と、平板状の柱側ブラケット35と、これら両ブラケット34、35の間に挟持される防振部材36とを有している。本実施形態では、壁側ブラケット34が防振部材36の上に配置され、柱側ブラケット35が防振部材36の下に配置されているが、もちろん上下が逆であってもよい。壁側ブラケット34は、その鉛直部分34vがシム37aを挟むようにして取付ボルト37bによって隔壁内面5aに固定されており、主柱20からは離間している。このシム37aは第二緩衝部材27全体の水平方向長さを調節するためのものである。柱側ブラケット35は水平状に配置され、その基端部が主柱20のハブ部20hおよびフランジ部20fに溶接によって固定されており、隔壁内面5aからは離間している。このように、第二緩衝部材27は、その壁側ブラケット34および柱側ブラケット35が防振部材36を介して隔壁内面5aと主柱20とをつなぐように取り付けられている。
【0029】
防振部材36は、弾性部材である円柱状の防振ゴム38と、この防振ゴム38の軸方向の両端面に固着された円盤状の固定プレート39とを有している。すなわち、防振ゴム38は二枚の固定プレート39の間にサンドイッチ状に固着されている。この防振部材36として市販品を使用することができる。この防振ゴム38として、前述した第一緩衝部材26の緩衝ゴム32より小さい弾性率を有するゴムを使用している。具体的には、前記緩衝ゴム32には硬質ゴムを用い、防振ゴム38には低反発ゴムを用いている。
【0030】
各固定プレート39の中心部にはボルト用のネジ穴39aが形成されている。この防振部材36は、その上側の固定プレート39が壁側ブラケット34の水平部分34hにボルト40によって固定され、下側の固定プレート39が柱側ブラケット35にボルト40によって固定されている。このボルト40は防振ゴム38の防振機能を阻害しないように、防振ゴム38にまでは貫入していない。建物躯体2および立駐塔4の横揺れによる両者2、4間の隙間寸法が変動したとき、前記両ブラケット34、35同士の相対移動に伴って防振ゴム38はその剪断方向に弾性変形する。したがって、この第二緩衝部材27は、建物躯体2および立駐塔4の相対移動を抑制するとともに、一方から他方への小振動や騒音の伝達をも抑制する。
【0031】
第一緩衝部材26と第二緩衝部材27とを並列に組み合わせているため、第一緩衝部材26が隔壁内面5aに当接するときは、第二緩衝部材27がある程度歪んで復元力が生じている状態である。したがって、第一緩衝部材26は隔壁内面5aに激しく衝突することはない。また、前述したように、第二緩衝部材27の防振ゴム38として比較的小さい弾性率を有するゴムを使用している。さらに、ゴムの弾性係数に関して、一般的に横弾性係数は縦弾性係数より小さい。これらが相俟って、剪断方向に変形する第二緩衝部材27は騒音や小振動の吸収に大きな効果を発揮する。また、第一緩衝部材26および第二緩衝部材27の対歪剛性を相違させる方法は、とくにゴム固有の弾性率を相違させることや、変形方向を相違させることだけには限定されない。緩衝ゴム32および防振ゴム38の固有の弾性率を同一にしたとしても、それらの断面積(緩衝ゴム32ではその受圧面積であり、防振ゴム38ではその円柱中心軸に垂直な平面で切った断面積)を変更したり、軸方向長さ(緩衝ゴム32では水平方向長さであり、防振ゴム38ではその円柱中心軸長さ)を変更することにより、両者の対歪剛性を調節することができる。こうすることによっても、第二緩衝部材27による騒音や小振動の吸収効果を高めることができる。
(水平サポート装置の第二の実施形態)
図7および図8には、他のサポート装置41が示されている。図7はこの水平サポート装置41の側面図であって図5に対応する図である。また、図8は図7におけるVIII−VIII線矢視平面図である。このサポート装置41は、主柱20上の各取付箇所において互いに水平面内にほぼ90゜をなす外向きの二方向それぞれに突出した一対のサポート装置41a、41bから構成されている。図7の左側は互いに90゜をなす一方のサポート装置41aの側面図であり、右側は他方のサポート装置41bの正面図(隔壁内面5a側から見た図)である。図示のごとく、いずれのサポート装置41a、41bも以下に説明するように同一の構成であり、前述した第一緩衝部材26(図5および図6)に類似した構成を有している。
【0032】
図示のごとく、このサポート装置41は前述したブラケット28(図5および図6)と同様の三枚の鋼鉄板からチャンネル状に形成されたブラケット42を有している。ブラケット42の基端部は溶接等によって主柱20に固定されている。ブラケット42の先端面を構成する取付板42aには、シム43を挟持するようにゴム固定板44が取付ボルト45によって着脱可能に取り付けられている。ゴム固定板44上の前記取付ボルト45を避ける位置(図7の右側のサポート装置41を参照)には、第一緩衝部材としての第一緩衝ゴム46および第二緩衝部材としての第二緩衝ゴム47が配設されている。これらの二種類の板状の緩衝ゴム46、47は、互いに並列にそれぞれ固定ボルト48または接着剤によってゴム固定板44上に固定される。第一緩衝ゴム46には硬質ゴムを用い、第二緩衝ゴム47には低反発ゴムを用いている。すなわち、第二緩衝ゴム47の弾性率は第一緩衝ゴム46の弾性率より小さい。こうすることによって両緩衝ゴム46、47間の対歪剛性を相違させている。両緩衝ゴム46、47に弾性率の異なるゴムを使用することに代えて、またはこれに加えて、両緩衝ゴム46、47の受圧面積を調節することによって対歪剛性を相違させてもよい。
【0033】
本実施形態では、第一緩衝ゴム46はゴム固定板44の中央をゴム固定板44より狭い幅で横方向に端から端まで延設されている。第二緩衝ゴム47は、ゴム固定板44の取付ボルト45を挟んだ左右両端側であって第一緩衝ゴム46の上下両側の合計四カ所に配置されている。この配置は、ゴム固定板44上において左右上下に対称の配置である。もちろんこのような配置に限定されないが、どのような形状であれ、ゴム固定板44上において左右上下に対称の配置とするのが、緩衝ゴムの隔壁内面5aへの当接が均一となるので好ましい。
【0034】
第一緩衝ゴム46は、その先端面と隔壁内面5aとの間に所定の隙間G(たとえば約10〜約20mm)が生じるように配設される。この隙間Gの調節は、シム43の装着枚数を変えて主柱20からの第一緩衝ゴム46の突出位置を調節することによって行うことができる。建物躯体2および立駐塔4の横揺れによって立駐塔4と隔壁内面5aとの間隙が小さくなると、第一緩衝ゴム46が隔壁内面5aに当接して衝撃を吸収する。第一緩衝ゴム46の外端面に固定ボルト48用の座ぐり穴が形成されているので、第一緩衝ゴム46の外端面が隔壁内面5aに衝突したときでもボルト頭の衝突は回避される。
【0035】
四個の第二緩衝ゴム47は、図示のごとくいずれも通常時はその先端面が隔壁内面5aに当接する厚さにされている。すなわち、第二緩衝ゴム47は第一緩衝ゴム46より所定寸法だけ厚くされている。このように、低反発ゴムからなる第二緩衝ゴム47が常時隔壁内面5aに当接していることにより、建物躯体2および立駐塔4の相対移動が抑制される。さらに、一方から他方への小振動や騒音の伝達も抑制される。第二緩衝ゴム47の外端面には固定ボルト48用の座ぐり穴が形成されており、固定ボルト48の頭が隔壁内面5aに衝突することが回避される。
【0036】
本実施形態では第一緩衝ゴム46および第二緩衝ゴム47ともに長方形板状を呈しているが、これは長方形状のゴム固定板44に効率よく配置するためのものであ。したがってこの形状や配置に限定されることはない。長方形以外の多角板形、円板形等を採用してもよい。
【0037】
また、本実施形態では一つのブラケット42およびゴム固定板44上に第一緩衝ゴム46および第二緩衝ゴム47の両方を配置しているが、かかる構成にも限定されない。第一緩衝ゴム46および第二緩衝ゴム47をそれぞれ別のブラケットおよび別のゴム固定板上に配設してもよい。この場合、第二緩衝ゴム47については、その先端を隔壁内面5aに当接させておくのではなく、接続させておいてもよい。そうすることにより、建物躯体2および立駐塔4の横揺れ時に、圧縮変形のみならず引っ張り変形によっても振動や騒音を減衰することが可能となる。
【0038】
このサポート装置41によれば、通常時には立駐塔4は第二緩衝ゴム47を介して隔壁5によって支持され、第二緩衝ゴム47によって小振動や騒音が吸収されている。地震等によって大きな揺れが生じたときには、第一緩衝ゴム46が隔壁内面5aに当接するので、立駐塔4は第二緩衝ゴム47および第一緩衝ゴム46を介して隔壁5によって支持される。また、第一緩衝ゴム46と第二緩衝ゴム47とを組み合わせているいため、第一緩衝ゴム46が隔壁内面5aに当接するときは、第二緩衝ゴム47がある程度歪んで復元力が生じている状態である。したがって、第一緩衝ゴム46は隔壁内面5aに激しく衝突することはない。
(水平サポート装置の第三の実施形態)
図9には他のサポート装置51が示されている。このサポート装置51が前述した第二の実施形態にかかるサポート装置41(図7および図8)と異なる点は、第二緩衝ゴム47の突出位置を第一緩衝ゴム46から独立して調節することができるようにした点である。すなわち、各第二緩衝ゴム47が独自のゴム固定板52に固着されており、このゴム固定板52がそれぞれシム53を挟持するように、ボルト48によって前記ゴム固定板44に着脱可能に取り付けられている。すなわち、四個の第二緩衝ゴム47がそれぞれ前記シム43とは別に独自のシム53を備えている。その他の構成は第二の実施形態にかかるサポート装置41(図7および図8)と同一であるので、同一構成部品には同一の参照符号を付してその説明を省略する。しかし、かかる構成には限定されない。たとえば、前述したサポート装置41(図7および図8)において、第一緩衝ゴム46のみにさらに独自のシムを備えてもよい。
【0039】
前述した第二および第三の実施形態にかかるサポート装置41、51はいずれも主柱20に固定されているが、この構成には限定されず、たとえば全サポート装置41、51または一部のサポート装置41、51を隔壁内面5aに固定してもよい。また、主柱20に代えて梁21に固定してもよい。
【0040】
本実施形態の立駐塔4はその骨組みが主に主柱20と梁21とから構成されている。しかし、かかる構成に限定されることはない。たとえば、主柱20を省略し、主棚柱22間に梁を架け渡した構成としてもよい。この構成は、自重が比較的小さくなる低中層の駐車装置には好適であろう。
【0041】
以上説明した実施形態はエレベータ式駐車装置を例にとったが、とくにエレベータ式に限定されることはない。また、平面視が矩形の駐車装置を例示したが、これにも限定されない。すなわち、上述した駐車装置は一実施形態であり、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、立体駐車装置が建物ボイド内壁面に支持されていながら、その運転音や小振動の建物躯体への伝播が抑制される。さらに、大きな地震等の揺れに対しては建物躯体に追従して揺れることによって損壊が防止されうる。したがって、本発明は駐車装置を建物躯体のボイド内部に設ける場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態である立体駐車装置が設置されたボイドを有する建物を概略的に示す横断面図である。
【図2】図1における駐車装置の一実施形態にかかるエレベータ式駐車装置の正面を示す、図1のII−II線矢視図である。
【図3】図2の駐車装置の側面を示す、図1のII−II線矢視図である。
【図4】図2におけるIV−IV線断面を示す、駐車階の平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態である水平サポート装置を示す、図4のV−V線矢視図である。
【図6】図5におけるVI−VI線矢視平面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態にかかる水平サポート装置を示す側面図であり、図5に対応する図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線矢視平面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態にかかる水平サポート装置の要部を示す側面図であり、図5に対応する図である。
【図10】従来の建物ボイド内組込型の立体駐車装置の一例を示す正面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線断面を示す、駐車階の平面図である。
【図12】従来の水平サポート装置の一例を示す図11のXII部拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
1 … 駐車装置
2 … 建物躯体
3 … ボイド
4 … 立駐塔
5 … 隔壁
6 … 共有廊下
7 … 住戸
8 … 入出通路
10 … エレベータ
11 … 昇降路
12 … 駐車棚
13 … ワイヤーロープ
14 … カウンターウエイト
15 … 入出庫階
16 … 入出庫口
17 … 機械室
18 … 昇降駆動装置
19 … パレット
20 … 主柱
21 … 梁
22 … 主棚柱
23 … 副棚柱
24 … ブレス
25 … 水平サポート装置
26 … 第一緩衝部材
27 … 第二緩衝部材
28 … ブラケット
29 … シム
30 … ゴム固定板
31 … ボルト
32 … 緩衝ゴム
33 … ボルト
34 … 壁側ブラケット
35 … 柱側ブラケット
36 … 防振部材
37 … 取付ボルト
38 … 防振ゴム
39 … 固定プレート
40 … ボルト
41 … 水平サポート装置
42 … ブラケット
43 … シム
44 … ゴム固定板
45 … 取付ボルト
46 … 第一緩衝ゴム
47 … 第二緩衝ゴム
48 … 固定ボルト
51 … 水平サポート装置
52 … ゴム固定板
53 … シム
G … 隙間
M … 車両
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体のボイド内に設置される実質的に塔状の鉄骨構造体を有した立体駐車装置、および、建物ボイドの内面に前記立体駐車装置を支持させるための水平サポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10および図11に示すように、近年、予め建物62に内部空洞(以下、「ボイド」という)63を形成し、そのボイド63内に立体駐車装置を設置する形態が多くなっている。図10はかかる立体駐車装置の一例としてのエレベータ式駐車装置61を示す正面図であり、図11は図10におけるXI−XI線断面図である。
【0003】
これらの図では、車両搬送用のエレベータ65と、エレベータ65の昇降路66に沿ってその両側に車両搭載用のパレット73を収容する上下多段の駐車棚67とを備えたエレベータ式駐車装置61が例示されている。しかし、他の形式の駐車装置も提案されている。この立体駐車装置61は、ボイド63の内壁面63aとの間に隙間68を設けることにより、実質上離間して独立した状態で設置されている。そして、これらの立体駐車装置61では、その塔状構造体64の適宜箇所にボイド内壁面63a向けて非接触式の水平サポート機構69が突設されている。なお、塔状構造体64とは、主柱70や梁71等からなる塔状の鉄骨構造体を意味しており、立駐塔ともいう。この立駐塔64は、主柱70と梁71とが形成する四角面の対角を結ぶように補強用斜材(ブレス)72が交差して設けられている。
【0004】
図12に示すように、前記水平サポート機構69はチャンネル状の鋼鉄製ブラケット74を有している。このブラケット74の一端面には、長さ調整ボルト75によってゴム固定板76が突設されている。ゴム固定板76には緩衝ゴム77が取り付けられている。ブラケット74の他端は主柱71に溶接等によって固着されている。緩衝ゴム77がボイド63の内壁面63aに衝突する部分である。
【0005】
前記のとおり、立駐塔64自体はもとより、水平サポート機構69もボイド内壁面63aから所定の間隔G(たとえば約20mm)だけ離間している。したがって、通常時は建物62と立駐塔64とは実質的に独立した状態にあり、駐車装置61で発生する振動や騒音の建物62側への伝播が軽減される。そして、地震時等には立駐塔64が揺れて水平サポート機構69の緩衝ゴム76がボイド内壁面63aに衝突するので、建物62の揺れに追従して揺れることになる。こうすることにより、建物62および駐車装置61の双方の損傷の防止を図ろうとしている。
【0006】
このような駐車装置としては特許文献1、2に開示されたものが知られている。そして、前述した非接触式の水平サポート機構としては、特許文献1の垂直循環式駐車装置における緩衝装置5、および、特許文献2のエレベータ式駐車装置における緩衝部材14,15が挙げられる。また、駐車装置ではないが、同様の構造を採用した耐震立体倉庫(特許文献3)における突っ張り部材30も提案されている。
【0007】
しかしながら、以上説明した駐車装置では、高層であるためその下層から上層にいたるまでボイド内壁面との間に僅かな隙間を維持したままで自立することは困難である。そのため、駐車装置の稼働や小規模地震(たとえば深度1〜2程度)によっても、特に上層部において水平サポート機構が断続的にボイド内壁面に衝突する。このときの振動が固体伝播音としてボイド壁を通して建物側に伝わり、建物居住者に不快感を与える。
【0008】
一方、水平サポート機構を常にボイド内壁面へ当接させておく(突っ張らせておく)ことによって前述のような断続的な衝突を回避することも考えられる。しかしながら、駐車装置の稼働時には常にその振動や騒音が水平サポート機構およびボイド内壁を通して固体伝播音として建物側に伝わる。
【特許文献1】特開平10−280720号公報
【特許文献2】特開2005−155161号公報
【特許文献3】特開平3−233082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、常に建物ボイド内壁面に支持されていながら、駐車装置の運転音や小振動の建物躯体への伝播が抑制され、さらに、大きな地震等の揺れに対しては建物躯体に追従して揺れることによって損壊を防止しうる建物ボイド内組込型の立体駐車装置、および、この駐車装置に適用される水平サポート装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水平サポート装置は、
建物ボイドに設置された立体駐車装置と前記建物ボイドの内面との間に配設される、この建物ボイドの内面に前記立体駐車装置を支持させるための水平サポート装置であって、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続され、他方との間に隙間を介して配置される第一緩衝部材と、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するように配置される第二緩衝部材とを備えており、
前記第二緩衝部材の対歪剛性が第一緩衝部材の対歪剛性より小さくされている。
【0011】
この水平サポート装置によれば、それが立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するので、駐車装置と建物躯体とが相対的に揺れることが抑制され、駐車装置がボイドの壁面に衝突することを防止することができる。ここでいう「接する」は、「接続する」意味も含んでいる。また、塔状構造体および建物ボイド内面の両方に接しているのは対歪剛性が比較的小さい第二緩衝部材であるため、駐車装置の小振動や騒音が伝播しにくい。また、大きな地震等の大きな揺れが発生したときには駐車装置と建物ボイド内面との隙間が縮小するので、対歪剛性が比較的大きい第一緩衝部材が駐車装置および建物ボイド内面の両方に接触することになる。その結果、駐車装置は建物躯体に追従して揺れるので、損壊が防止される。第一緩衝部材が駐車装置および建物ボイド内面の両方に接触するときには、すでに第二緩衝部材が相当に歪んで復元力が生じているため、第一緩衝部材は駐車装置または建物ボイド内面に激しく衝突することはない。
【0012】
なお、第二緩衝部材の対歪剛性を第一緩衝部材の対歪剛性より小さくする方法としては、たとえば、緩衝部材に弾性材質を用いる場合には、第二緩衝部材の弾性材質の弾性率を第一緩衝部材の弾性材質の弾性率より小さくすることができる。また、同一弾性率の弾性材質を用いる場合であっても、両緩衝部材がいずれも圧縮(引っ張り)変形することによって緩衝作用を奏する場合には、第二緩衝部材の弾性材質の受圧面積を第一緩衝部材の弾性材質の受圧面積より小さくする等の方法をとることができる。例えて言えば、第二緩衝部材のバネ定数を第一緩衝部材のバネ定数より小さくすることができる。また、後述するように第二緩衝部材を剪断方向に変形するように構成し、第一緩衝部材を圧縮方向に変形するように構成することもできる。
【0013】
前記第二緩衝部材を、立体駐車装置と建物ボイドの内面との隙間寸法の変動によって剪断方向に弾性変形しうるように配設することができる。こうすることにより、第二緩衝部材を塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するように配置したうえで、第二緩衝部材のバネ定数を第一緩衝部材のバネ定数より小さくすることができる。なぜなら、たとえば緩衝部材に弾性部材としてのゴム等を用いる場合、一般的にゴムも縦弾性係数より横弾性係数が小さいからである。
【0014】
前記第二緩衝部材の主要構成要素として、塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に突設された上側ブラケットと、他方に突設された下側ブラケットと、この上下のブラケットの間に固定挟持された弾性部材とを含めることができる。弾性部材をこのように取り付けると、揺れによる塔状構造体と建物ボイドの内面との横方向の相対変位に伴い、前記弾性部材を効果的に剪断方向に変形させることができる。しかも、水平面内360゜いずれの方向の相対変位に対しても、一つの第二緩衝部材が剪断方向に変形して防振作用を奏することができる。
【0015】
前述の上下のブラケットのうち少なくともいずれか一方を、その突出方向の長さを調節しうるように構成することができる。こうすることにより、塔状構造体と建物ボイドの内面との間の隙間寸法に応じて第二緩衝部材の突出長さを調節し、前記弾性部材を効果的に機能させることができる。
【0016】
前記第二緩衝部材を、立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続し、他方にその先端を当接させることができる。
【0017】
本発明の建物ボイド内組込型の立体駐車装置は、
建物躯体に形成されたボイド内に設置される立体駐車装置であって、
駐車機構が組み込まれた塔状構造体と、
この塔状構造体の外面と建物ボイドの内面との間に上下方向に間隔をおいて配置された水平サポート装置とを備えており、
この水平サポート装置が、前述したうちのいずれか一の水平サポート装置である。
【0018】
かかる立体駐車装置は、その水平サポート装置の作用により、駐車装置と建物躯体とが相対的に揺れることが抑制され、駐車装置がボイドの壁面に衝突することが防止されうる。しかも、駐車装置の小振動や騒音が伝播しにくい。また、地震等によって大きな振動が加えられても、駐車装置は建物躯体に追従して揺れるので損壊が防止される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、駐車装置は常に建物ボイド内壁面に支持されていながら、駐車装置の運転音や小振動は建物躯体へ伝播することが抑制される。さらに、駐車装置は大きな地震等の揺れに対しては建物躯体に追従して揺れることにより、その損壊が防止されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態にかかる立体駐車装置(以下、単に駐車装置ともいう)およびその水平サポート装置を説明する。図1は、そのボイド内に本発明の立体駐車装置が設置されている建造物を示す、水平面で切った横断面図である。図2は図1における駐車装置の一実施形態にかかるエレベータ式駐車装置を示す、図1のII−II線断面図である。図3は図2の駐車装置の側面図である。図4は図2におけるIV−IV線断面を示す、駐車階の平面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態にかかる駐車装置1は、いわゆるビル内鉄塔型のものであり、居住空間(住居部分、オフィス等)を擁するビルの建物躯体2に形成されたボイド3の内部に立設されている。この立駐塔4は、その前後左右の四面が建物躯体2によって囲まれているが、その入出庫階15では、入出庫口16(図2、3参照)から外部へ通じる入出通路8に対向する範囲が開放されている。もちろん、その左右両側面および後面が建物躯体2によって囲まれ、前面4Fの全体が外部へ開放されたものでもよい。このような形態で、高層マンション等の高層建物の中央部ボイド内に立体駐車装置を設置するケースが多くなっている。この種のボイドは、一般にその周囲が耐震耐火壁から構成された隔壁5に囲まれている。また、この隔壁5の外周に形成された回廊状の共有廊下6が、住戸7等を駐車装置用のボイド3からさらに隔てている。したがって、機械式の駐車機構を内蔵した立駐塔4が前記隔壁内面5aに直接接触していても住戸7への騒音や振動の影響は極めて少ない。
【0022】
図2および図3に示すように、この駐車装置1は車両Mを搬送するためのエレベータ10を備えている。エレベータ10の昇降路11に沿ってその左右両側に多数段の駐車棚12が配設されている。エレベータ10はワイヤーロープ13によって吊り下げられており、このワイヤーロープ13の他端にはカウンターウエイト14が連結されている。地上階(地下階であってもよい)である入出庫階15には入出庫口16が形成されている。また、駐車装置1の最上階である機械室17には、ワイヤーロープ13を巻き上げ繰り出してエレベータ10を昇降させる昇降駆動装置18が設置されている。
【0023】
図4も併せて参照すれば明らかなように、立駐塔4は、平面視矩形のボイド3の四隅に立設された主柱20と、主柱20間の適宜箇所に水平に架け渡された梁21とによって塔状に組み立てられたものである。立駐塔4の所定位置には鉛直方向に主棚柱22と副棚柱23とが立設されている。副棚柱23はエレベータ昇降路5の四隅に立設されている。この主棚柱22と副棚柱23との間に駐車棚12としてのレールが架け渡されている。レールの上には、車両Mを搭載するパレット19が格納されている。また、主柱20と梁21とが形成する四角面の対角を結ぶように補強用斜材(ブレス)24が交差して設けられている。
【0024】
図2〜図4に示すように、各主柱20の上下方向に所定間隔をおいた複数所には、水平サポート装置(以下、単にサポート装置とも呼ぶ)25が取り付けられている。このサポート装置25は、主柱20上の各取付箇所において互いに水平面内にほぼ90゜をなす外向きの二方向それぞれに突出した一対のサポート装置25a、25bから構成されている(図4参照)。このように、平面視矩形の立駐塔4の四隅それぞれに、互いにほぼ90゜をなす方向にサポート装置25を突設しているため、いずれの方向の横揺れに対してもいずれかのサポート装置25が有効に作用する。本実施形態では、両サポート装置25a、25bはH形鋼からなる主柱20のハブ部20hとフランジ部20fとに取り付けられている。したがって、その水平方向の長さは相違する。しかし、基本構成は下記のとおり同一である(図5および図6も併せて参照)。
(水平サポート装置の第一の実施形態)
図5は図4のV−V線矢視図であり、サポート装置25を示している。図6は図5のVI−VI線断面図である。図5の左側は互いに90゜をなす一方のサポート装置25aの側面図であり、右側は他方のサポート装置25bの正面図(隔壁内面5a側から見た図)である。図示のごとく、いずれのサポート装置25a、25bも、第一緩衝部材26と、この第一緩衝部材26を挟んだ上下のほぼ対称位置それぞれに配設される第二緩衝部材27とから構成されている。
【0025】
両緩衝部材26、27は大きく以下のように相違している。第二緩衝部材27は第一緩衝部材26よりその対歪剛性が小さく構成されている。そして、第一緩衝部材26はその先端が隔壁内面5aから離間しているが、第二緩衝部材27は主柱20および隔壁内面5aのいずれにも接続されている。したがって、通常時には立駐塔4は第二緩衝部材27を介して隔壁5によって支持され、第二緩衝部材27によって小振動や騒音が吸収されている。地震等によって大きな揺れが生じたときには、第一緩衝部材26が隔壁内面5aに当接するので、立駐塔4は第二緩衝部材27および第一緩衝部材26を介して隔壁5によって支持される。
【0026】
図5および図6に示すように、第一緩衝部材26は三枚の鋼鉄板からチャンネル状に形成されたブラケット28を有している。ブラケット28の基端部は溶接等によって主柱20に固定されている。ブラケット28の先端面を構成する取付板28aには、シム(スペーサ)29を挟持するようにゴム固定板30が取付ボルト31によって着脱可能に取り付けられている。ゴム固定板30上の前記取付ボルト31を避ける位置(図5の右側の第一緩衝部材26を参照)には、板状の緩衝ゴム32が固定ボルト33または接着剤によって固定される。この緩衝ゴム32が、第一緩衝部材26の隔壁内面5aへの衝突時の衝撃を吸収する。また、シム29の装着枚数を変えることにより、主柱20からの緩衝ゴム32の突出位置を調節することができる。そして、第一緩衝部材26は、その先端面(緩衝ゴム32の外端面)と隔壁内面5aとの間に所定の隙間G(たとえば約10〜約20mm)が生じるように調節される。建物躯体2および立駐塔4の横揺れによって立駐塔4と隔壁内面5aとの間隙が小さくなると緩衝ゴム32が隔壁内面5aに当接する。なお、緩衝ゴム32の外端面には固定ボルト33用の座ぐり穴が形成され、そこに固定ボルト33の頭が収容されている。したがって、緩衝ゴム32の外端面が隔壁内面5aに衝突したときでもボルト頭の衝突は回避される。
【0027】
本実施形態では第一緩衝部材26のブラケット28の基端部は主柱20に固定されているが、かかる構成に限定されない。たとえば、ブラケット28の基端部を隔壁内面5a側に固定し、先端の緩衝ゴム32の外端面と主柱20の面との間に所定の隙間Gを設けるようにしてもよい。その場合、主柱20には必要に応じて緩衝ゴム32が当接しうる当接板を取り付けておいてもよい。また、図示の緩衝ゴム32は直方体状を呈しているが、円柱状等の他の形状であってもよい。
【0028】
上下の第二緩衝部材27はいずれも、L字状断面の壁側ブラケット34と、平板状の柱側ブラケット35と、これら両ブラケット34、35の間に挟持される防振部材36とを有している。本実施形態では、壁側ブラケット34が防振部材36の上に配置され、柱側ブラケット35が防振部材36の下に配置されているが、もちろん上下が逆であってもよい。壁側ブラケット34は、その鉛直部分34vがシム37aを挟むようにして取付ボルト37bによって隔壁内面5aに固定されており、主柱20からは離間している。このシム37aは第二緩衝部材27全体の水平方向長さを調節するためのものである。柱側ブラケット35は水平状に配置され、その基端部が主柱20のハブ部20hおよびフランジ部20fに溶接によって固定されており、隔壁内面5aからは離間している。このように、第二緩衝部材27は、その壁側ブラケット34および柱側ブラケット35が防振部材36を介して隔壁内面5aと主柱20とをつなぐように取り付けられている。
【0029】
防振部材36は、弾性部材である円柱状の防振ゴム38と、この防振ゴム38の軸方向の両端面に固着された円盤状の固定プレート39とを有している。すなわち、防振ゴム38は二枚の固定プレート39の間にサンドイッチ状に固着されている。この防振部材36として市販品を使用することができる。この防振ゴム38として、前述した第一緩衝部材26の緩衝ゴム32より小さい弾性率を有するゴムを使用している。具体的には、前記緩衝ゴム32には硬質ゴムを用い、防振ゴム38には低反発ゴムを用いている。
【0030】
各固定プレート39の中心部にはボルト用のネジ穴39aが形成されている。この防振部材36は、その上側の固定プレート39が壁側ブラケット34の水平部分34hにボルト40によって固定され、下側の固定プレート39が柱側ブラケット35にボルト40によって固定されている。このボルト40は防振ゴム38の防振機能を阻害しないように、防振ゴム38にまでは貫入していない。建物躯体2および立駐塔4の横揺れによる両者2、4間の隙間寸法が変動したとき、前記両ブラケット34、35同士の相対移動に伴って防振ゴム38はその剪断方向に弾性変形する。したがって、この第二緩衝部材27は、建物躯体2および立駐塔4の相対移動を抑制するとともに、一方から他方への小振動や騒音の伝達をも抑制する。
【0031】
第一緩衝部材26と第二緩衝部材27とを並列に組み合わせているため、第一緩衝部材26が隔壁内面5aに当接するときは、第二緩衝部材27がある程度歪んで復元力が生じている状態である。したがって、第一緩衝部材26は隔壁内面5aに激しく衝突することはない。また、前述したように、第二緩衝部材27の防振ゴム38として比較的小さい弾性率を有するゴムを使用している。さらに、ゴムの弾性係数に関して、一般的に横弾性係数は縦弾性係数より小さい。これらが相俟って、剪断方向に変形する第二緩衝部材27は騒音や小振動の吸収に大きな効果を発揮する。また、第一緩衝部材26および第二緩衝部材27の対歪剛性を相違させる方法は、とくにゴム固有の弾性率を相違させることや、変形方向を相違させることだけには限定されない。緩衝ゴム32および防振ゴム38の固有の弾性率を同一にしたとしても、それらの断面積(緩衝ゴム32ではその受圧面積であり、防振ゴム38ではその円柱中心軸に垂直な平面で切った断面積)を変更したり、軸方向長さ(緩衝ゴム32では水平方向長さであり、防振ゴム38ではその円柱中心軸長さ)を変更することにより、両者の対歪剛性を調節することができる。こうすることによっても、第二緩衝部材27による騒音や小振動の吸収効果を高めることができる。
(水平サポート装置の第二の実施形態)
図7および図8には、他のサポート装置41が示されている。図7はこの水平サポート装置41の側面図であって図5に対応する図である。また、図8は図7におけるVIII−VIII線矢視平面図である。このサポート装置41は、主柱20上の各取付箇所において互いに水平面内にほぼ90゜をなす外向きの二方向それぞれに突出した一対のサポート装置41a、41bから構成されている。図7の左側は互いに90゜をなす一方のサポート装置41aの側面図であり、右側は他方のサポート装置41bの正面図(隔壁内面5a側から見た図)である。図示のごとく、いずれのサポート装置41a、41bも以下に説明するように同一の構成であり、前述した第一緩衝部材26(図5および図6)に類似した構成を有している。
【0032】
図示のごとく、このサポート装置41は前述したブラケット28(図5および図6)と同様の三枚の鋼鉄板からチャンネル状に形成されたブラケット42を有している。ブラケット42の基端部は溶接等によって主柱20に固定されている。ブラケット42の先端面を構成する取付板42aには、シム43を挟持するようにゴム固定板44が取付ボルト45によって着脱可能に取り付けられている。ゴム固定板44上の前記取付ボルト45を避ける位置(図7の右側のサポート装置41を参照)には、第一緩衝部材としての第一緩衝ゴム46および第二緩衝部材としての第二緩衝ゴム47が配設されている。これらの二種類の板状の緩衝ゴム46、47は、互いに並列にそれぞれ固定ボルト48または接着剤によってゴム固定板44上に固定される。第一緩衝ゴム46には硬質ゴムを用い、第二緩衝ゴム47には低反発ゴムを用いている。すなわち、第二緩衝ゴム47の弾性率は第一緩衝ゴム46の弾性率より小さい。こうすることによって両緩衝ゴム46、47間の対歪剛性を相違させている。両緩衝ゴム46、47に弾性率の異なるゴムを使用することに代えて、またはこれに加えて、両緩衝ゴム46、47の受圧面積を調節することによって対歪剛性を相違させてもよい。
【0033】
本実施形態では、第一緩衝ゴム46はゴム固定板44の中央をゴム固定板44より狭い幅で横方向に端から端まで延設されている。第二緩衝ゴム47は、ゴム固定板44の取付ボルト45を挟んだ左右両端側であって第一緩衝ゴム46の上下両側の合計四カ所に配置されている。この配置は、ゴム固定板44上において左右上下に対称の配置である。もちろんこのような配置に限定されないが、どのような形状であれ、ゴム固定板44上において左右上下に対称の配置とするのが、緩衝ゴムの隔壁内面5aへの当接が均一となるので好ましい。
【0034】
第一緩衝ゴム46は、その先端面と隔壁内面5aとの間に所定の隙間G(たとえば約10〜約20mm)が生じるように配設される。この隙間Gの調節は、シム43の装着枚数を変えて主柱20からの第一緩衝ゴム46の突出位置を調節することによって行うことができる。建物躯体2および立駐塔4の横揺れによって立駐塔4と隔壁内面5aとの間隙が小さくなると、第一緩衝ゴム46が隔壁内面5aに当接して衝撃を吸収する。第一緩衝ゴム46の外端面に固定ボルト48用の座ぐり穴が形成されているので、第一緩衝ゴム46の外端面が隔壁内面5aに衝突したときでもボルト頭の衝突は回避される。
【0035】
四個の第二緩衝ゴム47は、図示のごとくいずれも通常時はその先端面が隔壁内面5aに当接する厚さにされている。すなわち、第二緩衝ゴム47は第一緩衝ゴム46より所定寸法だけ厚くされている。このように、低反発ゴムからなる第二緩衝ゴム47が常時隔壁内面5aに当接していることにより、建物躯体2および立駐塔4の相対移動が抑制される。さらに、一方から他方への小振動や騒音の伝達も抑制される。第二緩衝ゴム47の外端面には固定ボルト48用の座ぐり穴が形成されており、固定ボルト48の頭が隔壁内面5aに衝突することが回避される。
【0036】
本実施形態では第一緩衝ゴム46および第二緩衝ゴム47ともに長方形板状を呈しているが、これは長方形状のゴム固定板44に効率よく配置するためのものであ。したがってこの形状や配置に限定されることはない。長方形以外の多角板形、円板形等を採用してもよい。
【0037】
また、本実施形態では一つのブラケット42およびゴム固定板44上に第一緩衝ゴム46および第二緩衝ゴム47の両方を配置しているが、かかる構成にも限定されない。第一緩衝ゴム46および第二緩衝ゴム47をそれぞれ別のブラケットおよび別のゴム固定板上に配設してもよい。この場合、第二緩衝ゴム47については、その先端を隔壁内面5aに当接させておくのではなく、接続させておいてもよい。そうすることにより、建物躯体2および立駐塔4の横揺れ時に、圧縮変形のみならず引っ張り変形によっても振動や騒音を減衰することが可能となる。
【0038】
このサポート装置41によれば、通常時には立駐塔4は第二緩衝ゴム47を介して隔壁5によって支持され、第二緩衝ゴム47によって小振動や騒音が吸収されている。地震等によって大きな揺れが生じたときには、第一緩衝ゴム46が隔壁内面5aに当接するので、立駐塔4は第二緩衝ゴム47および第一緩衝ゴム46を介して隔壁5によって支持される。また、第一緩衝ゴム46と第二緩衝ゴム47とを組み合わせているいため、第一緩衝ゴム46が隔壁内面5aに当接するときは、第二緩衝ゴム47がある程度歪んで復元力が生じている状態である。したがって、第一緩衝ゴム46は隔壁内面5aに激しく衝突することはない。
(水平サポート装置の第三の実施形態)
図9には他のサポート装置51が示されている。このサポート装置51が前述した第二の実施形態にかかるサポート装置41(図7および図8)と異なる点は、第二緩衝ゴム47の突出位置を第一緩衝ゴム46から独立して調節することができるようにした点である。すなわち、各第二緩衝ゴム47が独自のゴム固定板52に固着されており、このゴム固定板52がそれぞれシム53を挟持するように、ボルト48によって前記ゴム固定板44に着脱可能に取り付けられている。すなわち、四個の第二緩衝ゴム47がそれぞれ前記シム43とは別に独自のシム53を備えている。その他の構成は第二の実施形態にかかるサポート装置41(図7および図8)と同一であるので、同一構成部品には同一の参照符号を付してその説明を省略する。しかし、かかる構成には限定されない。たとえば、前述したサポート装置41(図7および図8)において、第一緩衝ゴム46のみにさらに独自のシムを備えてもよい。
【0039】
前述した第二および第三の実施形態にかかるサポート装置41、51はいずれも主柱20に固定されているが、この構成には限定されず、たとえば全サポート装置41、51または一部のサポート装置41、51を隔壁内面5aに固定してもよい。また、主柱20に代えて梁21に固定してもよい。
【0040】
本実施形態の立駐塔4はその骨組みが主に主柱20と梁21とから構成されている。しかし、かかる構成に限定されることはない。たとえば、主柱20を省略し、主棚柱22間に梁を架け渡した構成としてもよい。この構成は、自重が比較的小さくなる低中層の駐車装置には好適であろう。
【0041】
以上説明した実施形態はエレベータ式駐車装置を例にとったが、とくにエレベータ式に限定されることはない。また、平面視が矩形の駐車装置を例示したが、これにも限定されない。すなわち、上述した駐車装置は一実施形態であり、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、立体駐車装置が建物ボイド内壁面に支持されていながら、その運転音や小振動の建物躯体への伝播が抑制される。さらに、大きな地震等の揺れに対しては建物躯体に追従して揺れることによって損壊が防止されうる。したがって、本発明は駐車装置を建物躯体のボイド内部に設ける場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態である立体駐車装置が設置されたボイドを有する建物を概略的に示す横断面図である。
【図2】図1における駐車装置の一実施形態にかかるエレベータ式駐車装置の正面を示す、図1のII−II線矢視図である。
【図3】図2の駐車装置の側面を示す、図1のII−II線矢視図である。
【図4】図2におけるIV−IV線断面を示す、駐車階の平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態である水平サポート装置を示す、図4のV−V線矢視図である。
【図6】図5におけるVI−VI線矢視平面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態にかかる水平サポート装置を示す側面図であり、図5に対応する図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線矢視平面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態にかかる水平サポート装置の要部を示す側面図であり、図5に対応する図である。
【図10】従来の建物ボイド内組込型の立体駐車装置の一例を示す正面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線断面を示す、駐車階の平面図である。
【図12】従来の水平サポート装置の一例を示す図11のXII部拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
1 … 駐車装置
2 … 建物躯体
3 … ボイド
4 … 立駐塔
5 … 隔壁
6 … 共有廊下
7 … 住戸
8 … 入出通路
10 … エレベータ
11 … 昇降路
12 … 駐車棚
13 … ワイヤーロープ
14 … カウンターウエイト
15 … 入出庫階
16 … 入出庫口
17 … 機械室
18 … 昇降駆動装置
19 … パレット
20 … 主柱
21 … 梁
22 … 主棚柱
23 … 副棚柱
24 … ブレス
25 … 水平サポート装置
26 … 第一緩衝部材
27 … 第二緩衝部材
28 … ブラケット
29 … シム
30 … ゴム固定板
31 … ボルト
32 … 緩衝ゴム
33 … ボルト
34 … 壁側ブラケット
35 … 柱側ブラケット
36 … 防振部材
37 … 取付ボルト
38 … 防振ゴム
39 … 固定プレート
40 … ボルト
41 … 水平サポート装置
42 … ブラケット
43 … シム
44 … ゴム固定板
45 … 取付ボルト
46 … 第一緩衝ゴム
47 … 第二緩衝ゴム
48 … 固定ボルト
51 … 水平サポート装置
52 … ゴム固定板
53 … シム
G … 隙間
M … 車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ボイドに設置された立体駐車装置と前記建物ボイドの内面との間に配設される、該建物ボイドの内面に前記立体駐車装置を支持させるための水平サポート装置であって、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続され、他方との間に隙間を介して配置される第一緩衝部材と、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するように配置される第二緩衝部材とを備えており、
前記第二緩衝部材の対歪剛性が第一緩衝部材の対歪剛性より小さくされている立体駐車装置の水平サポート装置。
【請求項2】
前記第二緩衝部材が、立体駐車装置と建物ボイドの内面との隙間寸法の変動によって剪断方向に弾性変形しうるように配設されている請求項1記載の水平サポート装置。
【請求項3】
前記第二緩衝部材が、塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に突設された上側ブラケットと、他方に突設された下側ブラケットと、該上下のブラケットの間に固定挟持された弾性部材とを有している請求項2記載の水平サポート装置。
【請求項4】
少なくともいずれか一方のブラケットが、その突出方向の長さを調節しうるように構成されてなる請求項3記載の水平サポート装置。
【請求項5】
前記第二緩衝部材が、立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続され、他方にその先端が当接している請求項1記載の水平サポート装置。
【請求項6】
建物躯体に形成されたボイド内に設置される立体駐車装置であって、
駐車機構が組み込まれた塔状構造体と、
該塔状構造体の外面と建物ボイドの内面との間に上下方向に間隔をおいて配置された水平サポート装置とを備えており、
該水平サポート装置が、請求項1〜5のうちのいずれか一の項に記載の水平サポート装置である、建物ボイド内組込型の立体駐車装置。
【請求項1】
建物ボイドに設置された立体駐車装置と前記建物ボイドの内面との間に配設される、該建物ボイドの内面に前記立体駐車装置を支持させるための水平サポート装置であって、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続され、他方との間に隙間を介して配置される第一緩衝部材と、
立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面の両方に接するように配置される第二緩衝部材とを備えており、
前記第二緩衝部材の対歪剛性が第一緩衝部材の対歪剛性より小さくされている立体駐車装置の水平サポート装置。
【請求項2】
前記第二緩衝部材が、立体駐車装置と建物ボイドの内面との隙間寸法の変動によって剪断方向に弾性変形しうるように配設されている請求項1記載の水平サポート装置。
【請求項3】
前記第二緩衝部材が、塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に突設された上側ブラケットと、他方に突設された下側ブラケットと、該上下のブラケットの間に固定挟持された弾性部材とを有している請求項2記載の水平サポート装置。
【請求項4】
少なくともいずれか一方のブラケットが、その突出方向の長さを調節しうるように構成されてなる請求項3記載の水平サポート装置。
【請求項5】
前記第二緩衝部材が、立体駐車装置の塔状構造体および建物ボイドの内面のいずれか一方に接続され、他方にその先端が当接している請求項1記載の水平サポート装置。
【請求項6】
建物躯体に形成されたボイド内に設置される立体駐車装置であって、
駐車機構が組み込まれた塔状構造体と、
該塔状構造体の外面と建物ボイドの内面との間に上下方向に間隔をおいて配置された水平サポート装置とを備えており、
該水平サポート装置が、請求項1〜5のうちのいずれか一の項に記載の水平サポート装置である、建物ボイド内組込型の立体駐車装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−114651(P2009−114651A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285982(P2007−285982)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(593139271)新明和エンジニアリング株式会社 (109)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(593139271)新明和エンジニアリング株式会社 (109)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
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