説明

建設機械におけるエンジン駆動制御装置

【課題】 油圧ショベル1において、油圧ロック検知スイッチ10がON状態になったことに基づいてエンジン回転数を作業時回転数から待機時回転数に減少させた場合のエンジン回転数を作業時回転数に復帰するための条件を、真に操作具操作がなされることであるとして、この間、エンジン6を待機時回転数に制御し、無駄な燃料消費をなくすようにする。
【解決手段】 待機時回転数状態に制御されるエンジン回転数を作業時回転数に復帰させる条件を、油圧ロック検知スイッチ10がOFFになり、かつ操作具操作があったこととし、これによって、油圧ロックがOFFになってから実際に操作具操作が行われるまでの準備段階のあいだでのエンジンの無駄な高回転をなくすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械におけるエンジン駆動制御装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、自然環境を守り、地球温暖化の防止する一環として、油圧ショベル等の建設機械においても燃料消費の低減化が提唱され、その中の一つとして、油圧ロックレバーを、オペレータの乗降の邪魔をしない姿勢に操作して油圧ロックスイッチをONにして油圧ロック状態にし、これによって操作レバー等の操作手段を操作しても油圧アクチュエータが作動しないようにしているが、この油圧ロック状態になったとき、エンジン回転数を自動的に作業時回転数(例えばフルスロットル回転数やアクセルダイヤル設定回転数)から待機時回転数(例えばローアイドリング時回転数)に低下させるように制御するもの(例えば特許文献1)が知られている。
【特許文献1】特開平8−100690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして前記従来のものは、油圧ロックスイッチがONになるようオペレータが油圧ロックレバーを操作することは、該オペレータが作業する意思のないことを表明しているものであるから、この操作に対応させてエンジン回転数を待機時回転数に低下させることは、燃料消費の提言に寄与するだけでなく、騒音発生の抑制にもなるという利点がある。ところがこのものは、油圧ロックレバーを、油圧ロックスイッチがOFFになるよう操作することに連動してエンジン回転数を作業時回転数に復帰上昇させるように制御している。
ところが、油圧ロックスイッチをOFFにする操作があった直後に操作具操作をして油圧アクチュエータの作動をするような場合は少なく、油圧ロックスイッチのOFF操作は、寧ろ作業開始の準備段階の場合が多く、その後、いろいろな設定をしたり確認をしたりしてから作業開始をするのが一般であり、このような作業準備の段階から実際に作業開始するに至るまでのあいだ、エンジン回転数を高回転数である作業時回転数に上昇させることは、無駄な燃料消費になってしまうばかりでなく、騒音発生の要因になるという問題があり、ここに本発明が解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンを駆動源として駆動する油圧ポンプを備え、該油圧ポンプから供給される作動油を受ける油圧アクチュエータの作動を、操作手段の操作に基づいて行うと共に、前記油圧アクチュエータの作動を、油圧ロック手段のロック操作によりロックするように構成してなる建設機械において、前記油圧ロック手段のロック検知をする油圧ロック検知手段からロック検知信号を入力した場合に、エンジン回転数を高回転数である作業時回転数から低回転数である待機時回転数にするよう制御する制御部を設けるにあたり、該制御部は、操作手段の操作検知をする操作検知手段からの検知信号が入力するものとして、前記待機時回転数に制御されるエンジン回転数を作業時回転数に復帰する条件を、油圧ロック検知手段がロック検知状態ではなく、かつ操作検知手段から操作検知信号を入力した場合であるとして設定されていることを特徴とする建設機械におけるエンジンの制御装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることで、油圧ロック手段がロック状態になったことに基づいて待機時回転数に制御されている場合のエンジン回転数を作業時回転数に復帰するための条件が、油圧ロック検知手段がロック検知状態でないことに加えて、操作検知手段から操作検知信号を入力した場合を含むことになり、この結果、油圧ロック手段を非ロック状態にして作業開始の準備をし、操作具操作をするという真に操作が開始されたことを持ってエンジン回転数が作業時回転数に復帰することになって、この間のエンジン回転数を低回転数である待機時回転数に制御して無駄な燃料消費を抑え、環境保護に寄与できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図中、1は建設機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ型の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に設けられる作業アタッチメントとしてのバケット4、ハーフキャノピ式の運転操縦室5、エンジン6を内装するエンジンルーム7等の各種部材装置を用いて構成されていることは何れも従来通りである。
【0007】
前記運転操縦室5に設けられる運転席8には、オペレータの乗降を邪魔する倒伏姿勢と邪魔しない起立姿勢とに変姿自在な油圧ロックレバー9が設けられており、該油圧ロックレバー9の起倒切換えを検知する油圧ロック検知スイッチ10が設けられている。因みに、本実施の形態では、油圧ロック検知スイッチ10は、油圧ロックレバー9がオペレータの乗降を邪魔しない姿勢になっている場合にONとなって油圧ロック状態、つまり操作レバーや操作ペダル等の操作具(例えばリモコン操作レバー)11操作をしても対応する油圧アクチュエータ(例えばブーム用油圧シリンダ)12が作動しない状態になっていることを検知するようになっている。
【0008】
そして次に、本発明が実施された油圧ロック検知スイッチ10がONとなった場合の前記エンジン6の回転数制御システムについて図2に示すブロック回路図、図3に示すフローチャート図を用いて説明する。
図面において13はマイクロコンピュータ等の電子、電気機器を用いて構成される制御部であって、油圧ショベルの各種制御を実行するものであるが、ここでは前記エンジン6の回転数制御システムに関連のあるものに限定して説明する。前記制御部13には、前記油圧ロック検知スイッチ10のほかに、操作具11が操作されたことを検知する操作検知センサ14からの信号が入力するようになっており、制御部13はこれら入力した信号に基づいてエンジン回転数の制御を実行する。
【0009】
そしてこのものでは、システムスタートし、必要な情報を読み込む初期設定がなされ、エンジン回転数が作業時回転数(例えばフルスロットル回転数やアクセルダイヤル設定回転数)となるエンジン駆動制御が実行されているときにおいて油圧ロック検知スイッチ10がONであるか否かの判断がなされ、ONであるとしてYESの判断がなされた場合、本発明が実施されたエンジン回転数の制御ルーチンが実行される。つまり、前記油圧検知スイッチ10がONになったと判断された場合、該ON状態が予め設定されるタイマ時間Tのあいだ継続したか否かの判断がなされ、油圧ロックON状態がタイマ時間Tを経過したと判断された場合、エンジン回転数を作業時回転数から待機時回転数(例えばローアイドリング回転数)に低下する制御指令を出力し、エンジン6の回転数を待機時回転数に制御する。この待機時回転数に制御される状態で、油圧ロック検知センサ10がOFFになったか否かの判断がなされ、OFFになったとしてYESの判断がなされるまで前記待機時回転数の制御が実行されるが、OFFになったとしてYESの判断がなされると、さらに操作検知センサ14がONになった、つまり操作具11が操作されたとしてYESの判断がなされたか否かが判断され、操作されていない、つまりOFFであるとしてNOの判断がなされているあいだは前記待機時回転数制御が実行されるが、操作具11の操作があってONになったとしてYESの判断がなされるとエンジン回転数を待機時回転数から作業時回転数に復帰する制御が実行される。
【0010】
叙述とのごとく構成された本発明の実施の形態において、油圧ロックレバー9がエンジン回転数が高回転である作業時回転数となっている通常のエンジン駆動制御が実行されているときにおいて、油圧ロックレバー9がロック姿勢に操作され、この状態がタイマ時間Tのあいだ継続したと判断された場合、オペレータが作業続行の意思が無いものとしてエンジン回転数を、前記作業時回転数から低回転数である待機時回転数になるよう制御される。そしてこの待機時回転数状態から作業時回転数に復帰する場合の条件を、油圧ロックレバー9を非ロック状態にすることに加えて、操作具11の操作があった場合としている結果、油圧ロックレバー9を非ロック状態にして作業開始の準備をし、操作具11の操作をするという真に操作が開始されたことを持ってエンジン回転数が作業時回転数に復帰することになって、この間のエンジン回転数を低回転数である待機時回転数状態のままに制御して無駄な燃料消費を抑え、環境保護に寄与できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】油圧ショベルの全体側面図である。
【図2】エンジン回転数制御システムのブロック回路がである。
【図3】エンジン回転数制御システムのフローチャート図である。
【符号の説明】
【0012】
1 油圧ショベル
6 エンジン
9 油圧ロックレバー
10 油圧ロック検知スイッチ
11 操作具
14 操作検知スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを駆動源として駆動する油圧ポンプを備え、該油圧ポンプから供給される作動油を受ける油圧アクチュエータの作動を、操作手段の操作に基づいて行うと共に、前記油圧アクチュエータの作動を、油圧ロック手段のロック操作によりロックするように構成してなる建設機械において、前記油圧ロック手段のロック検知をする油圧ロック検知手段からロック検知信号を入力した場合に、エンジン回転数を高回転数である作業時回転数から低回転数である待機時回転数にするよう制御する制御部を設けるにあたり、該制御部は、操作手段の操作検知をする操作検知手段からの検知信号が入力するものとして、前記待機時回転数に制御されるエンジン回転数を作業時回転数に復帰する条件を、油圧ロック検知手段がロック検知状態ではなく、かつ操作検知手段から操作検知信号を入力した場合であるとして設定されていることを特徴とする建設機械におけるエンジン駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−22702(P2006−22702A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200784(P2004−200784)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】