説明

建設機械のジブ動作監視装置、建設機械のジブ動作監視方法、建設機械の動作監視システム

【課題】容易かつ安全に保守、点検作業を行うことのできる旋回可能なジブを備える建設機械の動作を監視するジブ動作監視装置を提供する。
【解決手段】クレーンなど水平方向に旋回可能なジブを有する建設機械のジブ動作監視装置は、前記ジブ又はこのジブと共に旋回する旋回部に取り付けられた前記ジブの方位を検出するGPSコンパス23と、GPSコンパス23により検出された方位と、前記ジブの長さとを含む測定情報に基づき、前記ジブの少なくとも先端部を含むジブ各部の座標を表すジブ座標情報を計算するジブ座標計算部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場においてクレーンや掘削機などジブを有する建設機械のジブの動作を監視する装置及び方法に関するものである。また、本発明は、この建設機械のジブの座標を計算する装置を用いた建設機械同士の衝突や建設機械と既存建物の接触を防止するための動作監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレーンなどのジブを有する建設機械同士の衝突の防止又は建設機械と周囲の建物との接触を防止するため、建設機械のジブの旋回角度や起伏角度を検出し、検出した旋回角度や起伏角度に基づき、建設機械同士又は周囲の建物との接近を判定することが行われている。
【0003】
特許文献1には、このような判定にGPS(Global Positioning System)装置を用いたシステムとして、移動式クレーンなどの建設機械のジブを含む2箇所にGPSアンテナを取り付けてGPS計測装置により3次元絶対座標を検出し、GPS計測装置により検出された3次元座標に基づき、建設機械の位置及びジブの姿勢を計算し、この計算結果に基づいて、建設機械同士の衝突の危険の有無又は建設機械が侵入禁止エリアへ侵入する危険の有無を判定する装置が記載されている。
【特許文献1】特開2005−29338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の装置では、建設機械の位置及び姿勢を計算する装置として、ジブを含む2箇所に取り付けられたGPSアンテナを用いているが、精度良く建設機械の位置及びジブの姿勢を計算するためには、GPSアンテナの一方をクレーンのジブの先端に取付ける必要がある。しかしながら、GPSアンテナをクレーンのジブの先端に取り付けてしまうと、このGPSアンテナの補修、点検が、高所作業となってしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、容易かつ安全に保守、点検作業を行うことのできる旋回可能なジブを備える建設機械のジブの座標情報を計算するジブ動作監視装置及びこの装置を用いた動作監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建設機械のジブ動作監視装置は、クレーンなど水平方向に旋回可能なジブを有する建設機械のジブ動作監視装置であって、前記ジブ又はこのジブと共に旋回する旋回部に取り付けられ、前記ジブの方位を検出する方位検出手段と、前記方位検出手段により検出された方位と、前記ジブの長さとに基づき、前記ジブの少なくとも先端部を含むジブ各部の座標を表すジブ座標情報を計算するジブ座標計算部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記ジブは伸縮可能であり、前記ジブの長さを測定するジブ長さ測定手段を備え、前記ジブ座標計算部は、前記ジブ長さ測定手段により測定された前記ジブの長さと、前記方位とに基づき、前記ジブ座標情報を計算してもよい。
【0008】
また、前記ジブは鉛直方向に起伏可能であり、前記ジブの起伏角度を検出する起伏角度検出手段を備え、前記ジブ座標計算部は、前記起伏角度検出手段により検出されたジブの起伏角度と、前記方位と前記ジブの長さとに基づき前記ジブ座標情報を計算してもよい。
また、前記建設機械は移動可能であり、前記建設機械の位置を検出する位置検出手段を備え、前記ジブ座標計算部は、前記位置検出手段により検出された位置情報と、前記方位と、前記ジブの長さとに基づき、前記ジブ座標情報を計算してもよい。また、前記方位検出手段はGPSコンパスであってもよい。
【0009】
以上の建設機械のジブ動作監視装置によれば、方位検出手段により検出された方位とジブの長さに基づき建設機械の位置及び姿勢を検出することができるため、ジブの先端に測定装置を設置する必要がなく、測定装置の保守、点検にあたって高所作業が不要となり、作業性が向上する。
【0010】
また、本発明の建設機械の動作監視システムは、上記の建設機械のジブ動作監視装置と、前記ジブ動作監視装置により計算されたジブ座標情報に基づき、建設機械の侵入禁止エリアへの侵入の危険の有無を判定する危険判定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の建設機械の動作監視システムは、クレーンなど水平方向に旋回可能なジブを有する複数の建設機械同士の接触又は衝突の危険の有無を判定するための動作監視システムであって、各建設機械の前記ジブ又はこのジブと共に旋回する旋回部に取り付けられ、前記ジブの方位を検出する方位検出手段と、各建設機械の前記方位検出手段により検出された方位と、前記ジブの長さとに基づき、各建設機械の前記ジブの少なくとも先端部を含むジブ各部の座標を表すジブ座標情報を計算するジブ座標計算部と、前記ジブ座標計算部により計算された各建設機械のジブ座標情報に基づき、前記建設機械同士の接触又は衝突の危険の有無を判定する危険判定部を備えることを特徴とする。
また、上記の建設機械の動作監視システムにおいて、各建設機械は移動可能であり、各建設機械の位置を検出する位置検出手段を備え、前記ジブ座標計算部は、前記位置検出手段により検出された各建設機械の位置情報と、前記方位と、前記ジブの長さとに基づき、各建設機械の前記ジブ座標情報を計算してもよい。
また、前記危険判定部は、建設機械同士の接触又は衝突の危険の有無を判定するとともに、前記ジブ座標計算部により計算されたジブ座標情報に基づき、建設機械の侵入禁止エリアへの侵入の危険の有無を判定してもよい。
【0012】
また、本発明は、クレーンなど水平方向に旋回可能なジブを有する建設機械のジブ動作監視方法であって、前記ジブ又はこのジブと共に旋回する旋回部に方位検出手段を取り付け、前記方位検出手段によりジブの方位を検出し、前記方位検出手段により検出された方位と、前記ジブの長さとに基づき、前記ジブの少なくとも先端部を含むジブ各部の座標を表すジブ座標情報を計算することを特徴とする建設機械のジブ動作監視方法を含むものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定装置をクレーンのジブの先端に取り付けなくても、精度良く建設機械のジブの座標情報を検出することができるため、測定装置の保守、点検作業を安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の建設機械の動作監視システムの第1実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、動作監視システムをタワークレーンの動作の監視に適用し、このタワークレーンのジブが旋回や起伏することにより、周囲の建物の近傍などの侵入禁止エリアに侵入する危険の有無を判定する場合について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の動作監視システム1の構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態の動作監視システム1は、タワークレーンのジブとともに旋回する旋回部(以下、タワークレーン旋回部という)に取り付けられたGPSコンパス23と、タワークレーンのジブに取り付けられた傾斜計22と、GPSコンパス23及び傾斜計22と無線通信装置24を介して通信可能な現場事務所等に設置された監視装置10とを備える。
【0016】
GPSコンパス23は、タワークレーン旋回部に取り付けられた一対のGPSアンテナ21と、このGPSアンテナ21と電気的に接続された方位計算部20とを備える。GPSコンパス23は、一対のGPSアンテナ21が衛星よりGPS信号を受信し、方位算定部20が、一対のGPSアンテナ21を結ぶ方向の絶対方位を算定する。従って、一対のGPSアンテナ21の取付け時に、一対のGPSアンテナ21を結ぶ方向と、ジブの方向との関係を定めておけば、GPSコンパス23により、ジブの絶対方位、すなわちクレーンの絶対方位を得ることができる。なお、この場合の絶対方位は、真北を0°とし、時計回りを正とする。
【0017】
傾斜計22は、後述するように、タワークレーンのジブに取り付けられており、タワークレーンのジブの起伏角度を測定するものである。なお、このような傾斜計としては、例えば、液封入式の傾斜角センサなどを用いることができる。
GPSコンパス23及び傾斜計22により測定されたタワークレーンの絶対方位及びタワークレーンのジブの起伏角度は、無線通信装置24により監視装置10に送信される。
【0018】
ここで、GPSコンパス23のGPSアンテナ21及び傾斜計22の取り付け位置について説明する。図2は、タワークレーン旋回部2におけるGPSアンテナ21及び傾斜計22の取り付け位置を示し、(A)はタワークレーン旋回部2の平面図であり、(B)は立面図である。同図(A)に示すように、一対のGPSアンテナ21は、タワークレーン旋回部2の後方の手すり4など、タワークレーン旋回部2の旋回やジブ3の起伏の障害とならず、容易に取り付け可能な2箇所に設置されている。また、同図(B)に示すように、傾斜計22はタワークレーンのジブ3の付け根付近などの、ジブ3の起伏の障害とならず、かつ、容易に取り付け可能な位置に取り付けられている。
また、図2(A)によれば、一対のGPSアンテナ21の方向と、ジブの方向は90°となっているので、GPSコンパス23により得られた絶対方位に90°を加えたものがタワークレーンの絶対方位となる。
【0019】
図1に戻り、監視装置10は、位置情報受信部11と、ジブ座標計算部12と、モデル記憶部15と、危険判定部13と、判定結果送信部14と、表示部16とを備える。
位置情報受信部11は、無線通信装置24を介してGPSコンパス23及び傾斜計22により測定されたタワークレーンの旋回部2の絶対方位及びジブ3の起伏角度を受信する。
モデル記憶部15には、予め、各種タワークレーンの3次元モデルデータと、建築現場の敷地周辺の建物などに基づいて設定された接触等の危険のある侵入禁止エリアを表す3次元モデルデータとが格納されている。
【0020】
ジブ座標計算部12は、位置情報受信部11が受信したタワークレーンの旋回部2の絶対方位と、ジブ3の起伏角度と、モデル記憶部15に記録されたタワークレーンの3次元モデルデータに基づきタワークレーンの旋回部2のジブ先端及び各部の座標(以下、ジブの座標情報という)を計算する。
図3は、ジブ先端及び各部の座標を計算する方法を説明するための平面図及び立面図である。図3に示すように、例えば、Y軸正方向と絶対方位の0°が一致するようにXYZの3軸を設定する。GPSコンパス23により得られたタワークレーンの絶対方位をφ°とすると、Y軸正方向と絶対方位0°とは一致しているので、Y軸正方向とタワークレーンの絶対方位とのなす角は、φ°となる。また、X軸正方向と、タワークレーンの絶対方位とのなす角は、(90−φ)°となる。ジブの起伏角をθ°、ジブの長さをL1とし、タワークレーンの中心3次元座標を(X1、Y1,Z1)とすると、ジブの先端の3次元座標(X2、Y2,Z2)は、以下の式で算出することができる。
X2=X1+L1×cosθ×cos(90−φ)
Y2=Y1+L1×cosθ×sin(90−φ)
Z2=Z1+L1×sinθ
また、ジブ座標計算部12では、ジブ3の先端の3次元座標に限らず、上記式において、L1に変えて0〜L1の値を用いることで、タワークレーンのジブ3の各部の3次元座標を計算することができる。
【0021】
危険判定部13は、モデル記憶部15に記録されたタワークレーン及び侵入禁止エリアの3次元モデルデータを取得し、取得したタワークレーンの3次元モデルデータ及びジブ座標計算部12が計算したジブの座標情報に基づき、タワークレーンの周囲に衝突警報ゾーン(図4中に斜線を付して示す)を設定する。そして、この衝突警報ゾーンが、モデル記憶部15より取得した侵入禁止エリアに侵入するかどうかにより、衝突の危険の有無を判定する。
【0022】
図4は、表示部16に描画された侵入禁止エリアにタワークレーンの衝突警告ゾーンが侵入した場合の表示画面の一例を示す図である。図4に示すように、表示部16は、モデル記憶部15に記録された建築現場周辺の3次元モデルデータに基づき、建築現場周囲の侵入禁止エリアを表示するとともに、これに重ねて、ジブ座標計算部12の計算したジブの座標情報に基づき建設機械の姿勢と、危険判定部13の設定した衝突警報ゾーンとを表示する。
【0023】
判定結果送信部14は、危険判定部13により衝突の危険があると判定された場合に、タワークレーンの無線通信装置24へ警報信号を送信する。タワークレーンの無線通信装置24は、この警報信号を受信すると、例えば光の点滅や警報音などによりタワークレーンのオペレータに侵入禁止エリアに侵入する危険がある旨を表示する。
【0024】
以上説明したように、動作監視システム1によれば、GPSコンパス23及び傾斜計22によりタワークレーン旋回部2の絶対方位及びジブ3の起伏角度を測定し、ジブ座標計算部12が、この測定結果に基づきタワークレーンの旋回部2のジブの座標情報を計算し、ジブ座標計算部12により計算されたジブの座標情報に基づき、建築現場の周囲の侵入禁止エリアに侵入する危険を判定し、オペレータに警告することができる。これにより、侵入禁止エリアへの侵入を未然に防止できる。
【0025】
また、本実施形態の動作監視システム1において、GPSコンパス23のGPSアンテナ21は、タワークレーンの旋回部2の異なる2点に取り付けられていれば、旋回部2の絶対方位を得ることができる。このため、上述したようにGPSアンテナ21を例えば運転室後方の手すり4などに取付けることにより、安全かつ容易に保守、点検作業を行うことができる。同様に、傾斜計22もジブ3の一部であれば、取り付け位置を問わない。このため、上述したように、ジブ3の付け根などに取付けることにより、安全かつ容易に保守、点検作業を行うことができる。このように、本実施形態の動作管理システム1によれば、高所作業を軽減し、安全かつ容易に保守点検作業を行うことができる。
【0026】
なお、上記の実施形態では、ジブ3の起伏が可能であるタワークレーンを対象としたが、トンボクレーンのようなジブ3を起伏する機能を備えないクレーンに対しても適用することができる。この場合には、傾斜計22が不要となり、ジブ座標計算部12における計算では、ジブの起伏角度θを0として計算すればよい。
【0027】
また、本発明は、伸縮可能なジブを有するクレーンに対しても適用することができる。このような場合には、例えば、ジブの付け根にレーザ式の距離計を設置し、ジブの先端に距離計のターゲットを設置すること等により、ジブの長さを測定し、この測定したジブの長さをジブ座標計算部における式のL1に代入して計算すればよい、
【0028】
また、本発明は、移動式クレーンなどの移動可能な建築機械に対しても適用することができる。このような場合には、例えば、適用の対象となる建築機械にGPS装置などの3次元的な位置を測定する装置を設置し、このGPS装置により測定された3次元的な位置をジブ座標計算部における計算の(X1、Y1、Z1)に代入することにより、ジブの座標情報を計算することができ、これに基づき、侵入禁止エリアへの侵入の危険の有無を判定することができる。
また、上記の実施形態では、監視装置10を現場事務所などに設置する構成としたが、これに限らず、監視装置10を建設機械に搭載する構成としてもよい。
【0029】
<第2実施形態>
次に、本発明が複数の移動式クレーンの接触の危険を判定する動作監視システムとして適用された場合の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成部分については、第1実施形態と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図5は、本実施形態の動作監視システム30の構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態の動作監視システム30は、各移動式クレーンの旋回部に取り付けられたGPSコンパス23と、ジブに取り付けられた傾斜計22と、無線通信装置24に加えて、GPS装置25が移動式クレーンに取り付けられている。GPS装置25は移動式クレーンの3次元的な位置を測定する。GPS装置25により測定された移動式クレーンの位置情報は、移動式クレーンの旋回部の絶対方位やジブの起伏角度と共に、ネットワーク31を介して監視サーバ40に送信される。
ここで、第1実施形態と同様に、GPSコンパス23の一対のGPSアンテナの取り付け位置は、移動式クレーンの旋回部の異なる2箇所であればよい。また、傾斜計22もジブ3の一部であれば、取り付け位置を問わない。
【0030】
監視サーバ40は、位置情報受信部41と、ジブ座標計算部42と、モデル記憶部45と、危険判定部43と、判定結果送信部44と、表示部46とを備える。
ジブ座標計算部42は、各移動式クレーンより位置情報受信部41を介して受信した、移動式クレーンの3次元位置情報と、移動式クレーンの旋回部の絶対方位と、ジブの起伏角度とに基づき、上記の第1実施形態のジブ座標計算部12と同様にして、ジブの座標情報を計算する。
【0031】
モデル記憶部45には、予め、各種移動式クレーンの3次元モデルデータと、建築現場の敷地周辺の建物などに基づいて設定された、接触等の危険のある侵入禁止エリアを表す3次元モデルデータとが格納されている。
危険判定部43は、モデル記憶部45に記録された各移動式クレーン及び侵入禁止エリアの3次元モデルデータを取得し、取得した各移動式クレーンの3次元モデルデータ及びジブ座標計算部42の計算したジブの座標情報に基づき、移動式クレーンの周囲に衝突警報ゾーン(図6中に斜線を付して示す)を設定する。そして、この衝突警報ゾーンが、モデル記憶部15より取得した侵入禁止エリアに侵入するかどうかにより、衝突の危険の有無を判定する。
また、危険判定部43は、各移動式クレーンの周囲の衝突警報ゾーンが他の移動式クレーンの周囲の衝突警報ゾーンに侵入するかどうかに基づき、移動式クレーン同士の衝突の危険の有無を判定する。
【0032】
図6(A)は、表示部46に描画された移動式クレーン同士が衝突の危険があると判定された場合の表示画面の一例を示す図であり、同図(B)は別の例を示す図である。図6に示すように、表示部46は、モデル記憶部45に記録された移動式クレーンの3次元モデルデータと、ジブ座標計算部42の計算した移動式クレーンのジブの座標情報とに基づき、危険判定部43の設定した衝突警報ゾーンを表示する。また、第1実施形態と同様に、表示部46は、モデル記憶部45に記録された建築現場周辺の3次元モデルデータに基づき、建築現場周囲の侵入禁止エリアを表示するとともに、これに重ねて、ジブ座標計算部42の計算したジブの座標情報に基づき建設機械の姿勢と、危険判定部43の設定した衝突警報ゾーンを表示する。
【0033】
判定結果送信部44は、危険判定部43により移動式クレーン同士が接触する危険があると判定された場合に、該当する移動式クレーンの無線通信装置24へ警報信号を送信する。また、第1実施形態と同様に、侵入禁止エリアへの侵入の危険があると判定された場合にも、該当する移動式クレーンの無線通信装置24へ警報信号を送信する。
移動式クレーンの無線通信装置24は、この警報信号を受信すると、例えば光の点滅や警報音などにより移動式クレーンのオペレータに侵入禁止エリアに侵入する危険又は他の移動式クレーンとの衝突の危険がある旨を表示する。
【0034】
動作監視システム30によれば、侵入禁止エリアに侵入する危険又は他の移動式クレーンとの衝突の危険がある場合に、該当する移動式クレーンのオペレータに警告することができるので、侵入禁止エリアへの侵入を防止できるとともに。移動式クレーン同士の衝突を未然に防止することができる。
【0035】
上記説明したように、本実施形態の動作監視システムによれば、移動式クレーン同士の接触や衝突を防止する際にも用いることができ、この場合にも、第1実施形態と同様に、保守点検の保守点検作業を容易にすることができる。
【0036】
なお、上記の実施形態では、移動式クレーンに設けられたGPS装置25、GPSコンパス23、及び傾斜計22により測定された測定結果を監視装置40へ送信し、監視装置40において、これらに基づき、移動式クレーンのジブの座標情報を計算する構成としたが、これに限らず、移動式クレーン側に演算装置を設けて、このクレーンのジブの座標情報を計算し、その結果を監視装置40へ送信する構成としてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、移動式クレーンに適用した場合について説明したが、これに限らず、タワークレーンなどの移動が不可能な建設機械同士の衝突の防止などにも適用することができ、この場合は、予め、旋回の中心の3次元位置情報を取得しておくことによりGPS装置25を省略することができる。
【0038】
また、第1実施形態と同様に、ジブを起伏させる機能を備えていないクレーン同士の衝突の防止にも適用することができ、この場合には、傾斜計22を省略することができる。また、第1実施形態と同様に、ジブの長さを測定する装置を設けることで、伸縮可能なジブを有するクレーンに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態の動作監視システムの構成を示す図である。
【図2】タワークレーンにおける傾斜計及びGPSアンテナの取り付け位置を示す図であり、同図(A)は平面図、同図(B)は立面図である。
【図3】ジブ先端及び各部の座標を計算する方法を説明するための平面図及び立面図である。
【図4】タワークレーンの衝突警告エリアが侵入禁止エリア内に侵入した場合の表示部の表示画面の一例を示す図である。
【図5】第2実施形態の動作監視システムの構成を示す図である。
【図6】(A)は、表示部に描画された移動式クレーン同士が衝突の危険があると判定された場合の表示画面の一例を示す図であり、同図(B)は別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 動作監視システム
2 タワークレーンの旋回部 3 ジブ
10、40 監視装置 11、41 位置情報受信部
12、42 ジブ座標計算部 13、43 危険判定部
14、44 判定結果送信部 15、45 モデル記憶部
16、46 表示部 20 方位計算部
21 GPSアンテナ 22 傾斜計
23 GPSコンパス 24 無線通信装置
25 GPS装置 30 動作監視システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンなど水平方向に旋回可能なジブを有する建設機械のジブ動作監視装置であって、
前記ジブ又はこのジブと共に旋回する旋回部に取り付けられ、前記ジブの方位を検出する方位検出手段と、
前記方位検出手段により検出された方位と、前記ジブの長さとに基づき、前記ジブの少なくとも先端部を含むジブ各部の座標を表すジブ座標情報を計算するジブ座標計算部と、を備えることを特徴とする建設機械のジブ動作監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械のジブ動作監視装置であって、
前記ジブは伸縮可能であり、
前記ジブの長さを測定するジブ長さ測定手段を備え、
前記ジブ座標計算部は、前記ジブ長さ測定手段により測定された前記ジブの長さと、前記方位とに基づき、前記ジブ座標情報を計算することを特徴とする建設機械のジブ動作監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械のジブ動作監視装置であって、
前記ジブは鉛直方向に起伏可能であり、
前記ジブの起伏角度を検出する起伏角度検出手段を備え、
前記ジブ座標計算部は、前記起伏角度検出手段により検出されたジブの起伏角度と、前記方位と、前記ジブの長さとに基づき、前記ジブ座標情報を計算することを特徴とする建設機械のジブ動作監視装置。
【請求項4】
請求項1から3何れかに記載の建設機械のジブ動作装置であって、
前記建設機械は移動可能であり、
前記建設機械の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記ジブ座標計算部は、前記位置検出手段により検出された位置情報と、前記方位と、前記ジブの長さとに基づき、前記ジブ座標情報を計算することを特徴とする建設機械のジブ動作監視装置。
【請求項5】
前記方位検出手段はGPSコンパスであることを特徴とする請求項1から4何れかに記載の建設機械のジブ動作監視装置。
【請求項6】
請求項1から5何れかに記載の建設機械のジブ動作監視装置と、
前記ジブ動作監視装置により計算されたジブ座標情報に基づき、建設機械の侵入禁止エリアへの侵入の危険の有無を判定する危険判定部とを備えることを特徴とする建設機械の動作監視システム。
【請求項7】
クレーンなど水平方向に旋回可能なジブを有する複数の建設機械同士の接触又は衝突の危険の有無を判定するための動作監視システムであって、
各建設機械の前記ジブ又はこのジブと共に旋回する旋回部に取り付けられ、前記ジブの方位を検出する方位検出手段と、
各建設機械の前記方位検出手段により検出された方位と、前記ジブの長さとに基づき、各建設機械の前記ジブの少なくとも先端部を含むジブ各部の座標を表すジブ座標情報を計算するジブ座標計算部と、
前記ジブ座標計算部により計算された各建設機械のジブ座標情報に基づき、前記建設機械同士の接触又は衝突の危険の有無を判定する危険判定部を備えることを特徴とする建設機械の動作監視システム。
【請求項8】
請求項7記載の建設機械の動作監視システムであって、
各建設機械は移動可能であり、
各建設機械の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記ジブ座標計算部は、前記位置検出手段により検出された各建設機械の位置情報と、前記方位と、前記ジブの長さとに基づき、各建設機械の前記ジブ座標情報を計算することを特徴とする建設機械のジブ動作監視システム。
【請求項9】
請求項7又は8記載の動作監視システムであって、
前記危険判定部は、建設機械同士の接触又は衝突の危険の有無を判定するとともに、前記ジブ座標計算部により計算されたジブ座標情報に基づき、建設機械の侵入禁止エリアへの侵入の危険の有無を判定することを特徴とする動作監視システム。
【請求項10】
クレーンなど水平方向に旋回可能なジブを有する建設機械のジブ動作監視方法であって、
前記ジブ又はこのジブと共に旋回する旋回部に方位検出手段を取り付け
前記方位検出手段によりジブの方位を検出し、
前記方位検出手段により検出された方位と、前記ジブの長さとに基づき、前記ジブの少なくとも先端部を含むジブ各部の座標を表すジブ座標情報を計算することを特徴とする建設機械のジブ動作監視方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−276996(P2007−276996A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109533(P2006−109533)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(391029347)西尾レントオール株式会社 (16)
【Fターム(参考)】