説明

建設機械の制御装置

【課題】エンジンを加速する際に、電動・発電機による過渡的なアシスト出力を抑える省電力で低燃費なハイブリッド式建設機械の制御装置を提供すること。
【解決手段】エンジン1の実回転数を検出する回転数センサ16と、エンジンの目標回転数を定める目標回転数設定部17と、油圧ポンプ3の負荷を検する負荷検出手段21と、実回転数と目標回転数との差である回転数偏差ΔN、又は油圧ポンプ3の負荷に基づいて、電動・発電機2により発生させるアシスト出力を算出するアシスト出力演算部19と、油圧ポンプ3の吸収トルク上限値を算出する吸収トルク上限演算部23と、ポンプ容量調節装置45に出力する操作信号を生成する操作信号生成部24とを備え、吸収トルク上限演算部23は、回転数偏差ΔNがアシスト出力の大きさに応じて設定される設定値NC以上のとき、油圧ポンプ3の吸収トルク上限値を前記算出した値から低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルやホイールローダ等の油圧アクチュエータを備えるハイブリッド式建設機械に係り、特にその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧システムによって駆動される油圧ショベル等の建設機械では、軽負荷から重負荷までの全ての作業に対応できるように、最大負荷時の作業を見込んで選定した大型のエンジンを備えていることが多い。しかし、このように大型のエンジンを備えても、建設機械の作業全体において重負荷となる作業(例えば、油圧ショベルにおいて土砂の掘削・積み込みを頻繁に行う重掘削作業時)はあくまでも一部であり、軽負荷時や中負荷時(例えば、油圧ショベルにおいて地面を均すための水平引き作業を行う軽掘削作業時)にエンジンの能力が余ってしまうので、燃料消費量(以下、燃費と略すことがある)を低減する観点からは好ましくない傾向がある。この点を鑑みて、燃費低減のためにエンジンを小型化するとともに、エンジンの小型化に伴う出力不足を電動・発電機による出力で補助(アシスト)するハイブリッド式建設機械が知られている。
【0003】
ハイブリッド式建設機械に関する技術としては、例えば、特開2007−218111号公報に記載されているものがある。この技術は、アイドル状態から即座に作業に復帰する場合等、低速回転中のエンジンを急加速する場合におけるオペレータの操作フィーリングの向上を図ったものである。この技術に係るハイブリッド式建設機械の制御装置は、エンジン(電動・発電機)の目標回転数、電動・発電機の実回転数及び蓄電器の残量に基づいて、電動・発電機によるアシスト出力の発生が必要か否かを判断する判定手段を備えており、当該判定手段においてアシスト出力の発生が不要であると判断された場合には、油圧ポンプが吸収可能な最大吸収トルクを示す最大トルク線として、エンジン目標回転数の上昇とともに最大吸収トルクを増加させる第1最大トルク線を選択し、一方、当該判定手段においてアシスト出力の発生が必要であると判断された場合には、最大トルク線として、第1最大トルク線と比較してエンジン低回転領域で最大吸収トルクが大きくなる第2最大トルク線を選択している。これにより、電動・発電機によるアシスト出力を発生する場合には、エンジン回転数の上昇時における油圧ポンプの吸収トルクがアシスト出力を発生しない場合と比較して大きくなるため、操作レバーの動きに対して建設機械の動き出しが早くなり、オペレータに与える操作フィーリングの違和感が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−218111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイブリッド式建設機械において燃費低減を図るためには、エンジンだけでなく、電動・発電機の消費電力低減と小型化を図ることが好ましい。
【0006】
ここで、この観点から上記技術を検討する。上記技術では、エンジン回転数に応じて油圧ポンプの最大吸収トルクを一意に決定しており、さらに、電動・発電機でエンジンをアシストする場合には低回転数領域で最大吸収トルクを他の場合よりも大きな値としている。そのため、当該低回転数領域でエンジンを動作させている最中に作業装置に大きな負荷が加わった場合には、当然エンジンにも大きな負荷が加わることになる。したがって、電動・発電機によるエンジントルクアシストが不足したり遅れたりすると、エンジン回転数が落ち込むラグダウンが生じたり、場合によってはエンジンストールが生じる可能性がある。ラグダウンの発生は、エンジン回転数を目標回転数へ復帰させようとする急激な燃料噴射による黒煙の発生などの排ガス状況や燃費の悪化を招くことになる。また、エンジン回転数の減少に伴うエンジン音の変化がオペレータに不快感を与える。
【0007】
このような事態を回避するためには、電動・発電機によって過渡的に大きなアシスト出力を発生する必要がある。しかし、大きなアシスト出力を発生させると、電力消費量が大きくなり、小型化したエンジンを電動・発電機でアシストすることで燃費向上を図るという当初の設計趣旨に反して燃費が悪化する。また、大きなトルクアシストを行うためには、電動・発電機のサイズを大きくする必要があるが、これは電動・発電機に電力を供給するための蓄電装置の容量増加にもつながる。そのため、電動コンポーネントの小型化、ひいては建設機械そのものの小型化も困難になる。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたもので、エンジンを加速する際に、電動・発電機による過渡的なアシスト出力を抑える省電力で低燃費なハイブリッド式建設機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、エンジンと、このエンジンによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、前記エンジンとの間でトルクの伝達を行う電動・発電機と、この電動・発電機に電力を供給する蓄電手段と、操作信号に基づいて前記油圧ポンプの容量を調節するポンプ容量調節手段とを備える建設機械の制御装置において、前記エンジンの実回転数を検出する実回転数検出手段と、前記エンジンの目標回転数を定める目標回転数設定手段と、前記油圧ポンプの負荷を検出する負荷検出手段と、前記実回転数検出手段から入力される実回転数と前記目標回転数設定手段から入力される前記目標回転数との差である回転数偏差、又は前記負荷検出手段から入力される前記油圧ポンプの負荷に基づいて、前記電動・発電機により発生させるアシスト出力を算出するアシスト出力演算手段と、前記油圧ポンプの吸収トルク上限値を算出する吸収トルク上限演算手段と、この吸収トルク上限演算手段で算出された値に基づいて前記油圧ポンプの容量を調節するために前記容量調節手段に出力する操作信号を生成する操作信号生成手段とを備え、前記吸収トルク上限演算手段は、前記回転数偏差が、前記アシスト出力演算手段で算出されるアシスト出力の大きさに応じて設定される設定値以上のとき、前記油圧ポンプの吸収トルク上限値を前記算出した値から低減するものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業装置の負荷増加時におけるエンジン回転数の減少が防止できる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態である係るハイブリッド式油圧ショベルの油圧駆動制御装置の概略図。
【図2】本発明の実施の形態に係るレギュレータ14によるポンプ吸収トルクの制御特性図。
【図3】本発明の実施の形態におけるコントローラ8の概略構成図。
【図4】本発明の実施の形態におけるアシスト出力演算部19の概略構成図。
【図5】本実施の形態における回転数偏差の設定値NCとアシスト出力の関係を示す図。
【図6】回転偏差ΔNが設定値NC以上のときにおけるレギュレータ14によるポンプ吸収トルクの制御特性図の変化の一例。
【図7】アシスト出力の大きさが変化した場合におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図の変化の一例。
【図8】回転数偏差ΔNの大きさに応じてポンプ吸収トルク上限値の許容率を設定するテーブル図の一例。
【図9】エンジン1がアシスト出力無しで目標回転数で動作している状況から、油圧ポンプ3の負荷が徐々に重負荷になってアシスト出力が増加する場合における建設機械の制御例。
【図10】エンジン出力及びアシスト出力が最大でエンジン1が目標回転数で動作している状況から、油圧ポンプ3の負荷が徐々に重負荷になって回転数偏差ΔNが増加する場合における建設機械の制御例。
【図11】エンジン1の実回転数が一定の目標回転数N*で動作している状況で、油圧ポンプ3の負荷が急激に増加する場合における建設機械の制御例。
【図12】図11における各時刻t1、t2、t3に対応するトルク線図。
【図13】油圧ポンプ3の負荷が急激に増加したことに対応するためにエンジン1の目標回転数を急激に増加させた場合における建設機械の制御例。
【図14】図13における各時刻t1、t2、t3に対応するトルク線図。
【図15】本実施の形態における回転数偏差の設定値NCと蓄電装置10の蓄電量の関係を示す図。
【図16】蓄電装置10の蓄電量が変化した場合におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図の変化の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態である係るハイブリッド式油圧ショベルの油圧駆動制御装置の概略図である。この図に示す油圧駆動制御装置は、エンジン1と、エンジン1の燃料噴射量を調整するガバナ7と、エンジン1の実回転数を検出する回転数センサ(実回転数検出手段)16と、エンジン1のトルクを検出するエンジントルクセンサ(エンジントルク検出手段)31と、エンジン1により駆動される可変容量型油圧ポンプ3(以下、単に「油圧ポンプ3」と称することがある)と、油圧ポンプ3から吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータ5と、エンジン1の駆動軸上に配置されエンジン1との間でトルクの伝達を行う電動・発電機2と、電動・発電機2に電力を供給する蓄電装置(蓄電手段)10と、油圧ポンプ3の容量を調節するポンプ容量調節装置(ポンプ容量調節手段)45と、電動・発電機2の回転数を制御して必要に応じて蓄電装置10と電力の授受を行うインバータ(電動・発電機制御手段)9と、ガバナ7を制御し燃料噴射量を調整してエンジン回転数を制御するとともに、インバータ9を制御し電動・発電機2のトルクを制御するコントローラ(制御装置)8を備えている。
【0013】
図1に示す油圧駆動制御装置は、油圧ポンプ3で吐出した圧油をまず複数のコントロールバルブを備えるバルブ装置4に供給し、当該バルブ装置4で圧油の流量・方向・圧力を適宜変更した後に各油圧アクチュエータ5に供給することで各油圧アクチュエータ5の駆動を制御している。本実施の形態に係る油圧ショベルに設置される油圧アクチュエータ5としては、上部旋回体の前方に取り付けられた多関節型のフロント作業装置を駆動するための油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダ等)や、上部旋回体を旋回させるための油圧モータ(旋回モータ)や、上部旋回体の下部に取り付けられた下部走行体を走行させるための油圧モータ(走行モータ)等があるが、図1ではこれらをまとめて油圧アクチュエータ5と表記している。
【0014】
エンジン1は、ガバナ7によって燃料噴射量を制御することで調速される。油圧ポンプ3には、油圧ポンプ3の負荷を演算するために必要な情報を検出する手段(ポンプ情報検出手段21)として、油圧ポンプ3から吐出される圧油の圧力を計測する吐出圧センサと、当該圧油の流量を計測する流量計と、油圧ポンプ3の傾転角を計測する傾転角センサとが設置されており、これら吐出圧センサ、流量計及び傾転角センサはコントローラ8に検出したセンサ値を出力している。コントローラ8におけるポンプ負荷演算部26(後述)は、このポンプ情報検出手段21から入力される各センサ値に基づいて油圧ポンプ3の負荷を演算する。
【0015】
ポンプ容量調節装置45は、コントローラ8から出力される操作信号に基づいて油圧ポンプ3の容量を調節するもので、レギュレータ14と電磁比例弁15を有している。レギュレータ14は油圧ポンプ3に備えられており、レギュレータ14によって油圧ポンプ3の斜板もしくは斜軸の傾転角を操作すると、油圧ポンプ3の容量(押しのけ容積)が変更されて油圧ポンプ3の吸収トルク(入力トルク)を制御することができる(ポンプ吸収トルク制御)。本実施の形態におけるレギュレータ14は、電磁比例弁15が発生する制御圧によって制御されている。電磁比例弁15は、コントローラ8における操作信号生成部24(後述)から出力される指令値に基づいて作動する。
【0016】
本実施の形態に係るレギュレータ14は、例えば、図2に示した制御特性図に従って油圧ポンプ3の容量を制御している。図2は本発明の実施の形態に係るレギュレータ14によるポンプ吸収トルクの制御特性図である。この図に示す折れ線2Aは、油圧ポンプ3の吐出圧に対して設定される油圧ポンプ3の容量の特性を示しており、エンジン1と電動・発電機2の合計出力の最大値(図2中の破線で示した双曲線(一定トルク線図))を超えない範囲で油圧ポンプ3のトルク(ポンプ容量とポンプ吐出圧力の積)がほぼ一定になるように設定されている。すなわち、その時々のポンプ吐出圧力に応じて折れ線2Aを利用して油圧ポンプ3の容量を設定すれば、エンジン1と電動・発電機2による最大出力を超えないように油圧ポンプ3のトルクを制御できる。ポンプ吐出圧力がP1以下である時にはポンプ吸収トルク制御は実施されず、ポンプ容量はバルブ装置4の各コントロールバルブを操作するための操作レバーの操作量によって決定される(例えば、いずれかの操作レバーの操作量が最大の時にq1になる)。一方、ポンプ吐出圧力がP1〜P2になると、レギュレータ14によるポンプ吸収トルク制御が実施され、ポンプ吐出圧の増加に伴って折れ線2Aに沿ってポンプ容量が減少するようにレギュレータ14によってポンプ傾転角が操作される。これにより、ポンプ吸収トルクは、折れ線2Aで規定したトルク以下になるように制御される。なお、P2はポンプ吐出圧力の最大値であり、バルブ装置2において油圧ポンプ3側の回路に接続されるリリーフ弁の設定圧力に等しく、ポンプ吐出圧力はこの値以上に上昇しない。なお、ここでは、油圧ポンプの吸収トルクの制御特性図として、2つの直線を組み合わせた折れ線2Aを使用したが、図2中の一定トルク線図(双曲線)を超えない範囲で設定すれば他の制御特性図を利用しても良い。 コントローラ8は、油圧ポンプ3の吸収トルクに基づいて生成した操作信号(電気信号)を電磁比例弁15に出力し、電磁比例弁15は当該操作信号に応じた制御圧力を生成することでレギュレータ14を駆動する。これによりレギュレータ14によって油圧ポンプ3の容量が変更され、油圧ポンプ3の吸収トルクはエンジンストールが発生しない範囲に調整される。
【0017】
バッテリ又はキャパシタ等で構成される蓄電装置10には、蓄電装置10の蓄電量を演算するために必要な情報を検出する手段(蓄電情報検出手段22)として、電流センサ11、電圧センサ12及び温度センサ13が取り付けられている。コントローラ8は、これらセンサ11,12,13によって検出された電流、電圧及び温度等の情報に基づいて蓄電量演算部25(後述)において蓄電装置10の蓄電量を演算し、蓄電装置10の蓄電量を管理している。
【0018】
図3は本発明の実施の形態におけるコントローラ8の概略構成図である。この図に示すコントローラ8は、エンジン1、電動・発電機2及び油圧ポンプ3に対するそれぞれの指令値の演算を行うもので、目標回転数設定部(目標回転数設定手段)17と、エンジン最大出力演算部(エンジン最大出力演算手段)18と、アシスト出力演算部(アシスト出力演算手段)19と、吸収トルク上限演算部(吸収トルク上限演算手段)22と、操作信号生成部(操作信号生成手段)24と、蓄電量演算部25と、ポンプ負荷演算部26と、エンジン出力演算部32を備えている。
【0019】
コントローラ8には、回転数センサ(実回転数検出手段)16によって検出されるエンジン実回転数と、エンジントルクセンサ(エンジントルク検出手段)31によって検出されるエンジントルクと、蓄電情報検出手段22によって検出された蓄電情報(蓄電装置10の電流、電圧及び温度)と、ポンプ情報検出手段21によって検出されたポンプ情報(圧油の圧力及び流量並びに油圧ポンプ3の傾転角)と、油圧ショベルの運転室(キャブ)内に設置されオペレータによって所望の目標エンジン回転数が入力される目標回転数入力装置29(例えば、エンジンコントロールダイヤル)から入力される目標エンジン回転数が入力されている。
【0020】
蓄電量演算部25は、電流センサ11、電圧センサ12及び温度センサ13(蓄電情報検出手段22)から入力される蓄電情報に基づいて蓄電装置10の蓄電量を演算する部分であり、蓄電情報検出手段22とともに蓄電量検出部27を構成している。蓄電量演算部25で演算された蓄電量は、アシスト出力演算部19及び吸収トルク上限演算部22に出力されている。
【0021】
ポンプ負荷演算部26は、吐出圧センサ、流量計及び傾転角センサ(ポンプ情報検出手段21)から入力されるポンプ情報に基づいて油圧ポンプ3の負荷を演算する部分であり、ポンプ情報検出手段21とともにポンプ負荷検出部28を構成している。ポンプ負荷演算部26で演算されたポンプ負荷は、アシスト出力演算部19に出力されている。
【0022】
エンジン出力演算部32は、エンジントルクセンサ31から入力されるエンジントルクに基づいてエンジン1の実際の出力を演算する部分であり、エンジントルクセンサ31とともにエンジン出力検出部(エンジン出力検出手段)20を構成している。エンジン出力演算部32で演算された出力はアシスト出力演算部19に出力されている。
【0023】
目標回転数設定部17は、ポンプ負荷演算部26で算出される油圧ポンプ3の負荷(油圧アクチュエータ5の負荷状態)に応じたエンジン出力が確保されるようにエンジン1の目標回転数を定める部分であり、当該目標回転数は目標回転数入力装置29から入力されるものよりも優先して決定される。なお、その際、エンジン1における燃料消費量を低減する観点から、エンジン1の必要出力に対する燃料消費量が最小となる動作点をエンジン1の目標回転数指令値として設定することが好ましい。目標回転数設定部17で定められた目標回転数は、吸収トルク上限演算部22と操作信号生成部23に出力されている。さらに、目標回転数は、回転数センサ16によって検出される実回転数との偏差としてアシスト出力演算部19に出力されている。なお、ここで定められる目標回転数は、発電・電動機2の制御にも利用されるが、エンジン1と電動・発電機2が減速機などを介して接続されている場合には、一旦定めた目標回転数に当該減速機の減速比を乗じた値を別途目標回転数として定義して利用すれば良い。
【0024】
エンジン最大出力演算部18は、回転数センサ16から入力されるエンジン1の実回転数と、エンジン特性に応じて設定されたテーブルであって記憶装置(ROM等)に記憶されたものとに基づいて、エンジン1が出力可能な最大出力を演算する部分である。エンジン最大出力演算部18で演算された最大出力はアシスト出力演算部19に出力されている。
【0025】
アシスト出力演算部19は、目標回転数設定部17で定められた目標回転数へとエンジン1を素早く加速するための加速アシストと、エンジン単体での出力の不足分を補うためのパワーアシストの両方を実現するために電動・発電機2が出力するべきモータトルク指令値(アシスト出力指令値)を演算する部分である。アシスト出力演算部19は、具体的には、回転数センサ16から入力される実回転数と目標回転数設定部17から入力される目標回転数との差である回転数偏差ΔN、又は、ポンプ負荷検出部28から入力される油圧ポンプ3の負荷に基づいて、電動・発電機2により発生させるアシスト出力(エンジンアシスト出力)を算出している。ここで図を用いてアシスト出力演算部19の詳細を説明する。
【0026】
図4は本発明の実施の形態におけるアシスト出力演算部19の概略構成図である。この図に示すアシスト出力演算部19は、加速アシスト演算部41と、パワーアシスト演算部42と、出力決定部43を備えている。
【0027】
加速アシスト演算部41は、エンジン1の実回転数を目標回転数まで速やかに加速するためにエンジン1の出力をアシストする場合(加速アシスト時)における電動・発電機2のアシスト出力(加速アシスト出力)を演算する部分であり、加速アシスト演算部41には、エンジン1の目標回転数と実回転数の差である回転数偏差ΔNが入力されている。加速アシスト演算部41では、アシスト出力は、エンジン1の目標回転数と実回転数の差である回転数偏差ΔNに基づいて演算され、回転数偏差ΔNがゼロに近づくほど小さくなる。加速アシスト演算部41では、回転数偏差ΔNが比較的大きいときにエンジン1の加速を素早く行う観点からは、主に微分制御と比例制御を利用してアシスト出力を演算することが好ましい。
【0028】
パワーアシスト演算部42は、エンジン1の出力のみでは出力不足となるために電動・発電機2によるアシストが必要となる場合(パワーアシスト時)における電動・発電機2のアシスト出力(パワーアシスト出力)を演算する部分であり、パワーアシスト演算部42には、回転数偏差ΔNと、最大エンジン出力と、エンジン出力と、ポンプ負荷が入力されている。パワーアシスト演算部42では、アシスト出力は、ポンプ負荷演算部26から入力される油圧ポンプ3の負荷と、エンジン出力演算部32(エンジン出力検出部20)から入力されるエンジン出力との差に基づいて演算される。なお、この演算において、エンジン最大出力演算部18から入力されるエンジン最大出力を参照すると、その時におけるエンジン1の実回転数において必要となり得るパワーアシスト出力の最小値を算出することができる。エンジン1のみでは出力不足となる場合には定常的なアシスト出力が必要となることが多いので、パワーアシスト演算部42では、フィードフォワード入力や積分制御を利用してアシスト出力を演算することが好ましい。本実施の形態では、さらに、過負荷によるエンジンストールの発生を回避する観点から、フィードフォワード入力の演算において、ポンプ負荷検出部28によって検出されるポンプ負荷とエンジン出力検出部20で検出されたエンジン出力の差を電動・発電機2で発生すべきアシスト出力として算出している。
【0029】
出力決定部43は、加速アシスト演算部41とパワーアシスト演算部42で算出されたアシスト出力を加算し、当該加算後のアシスト出力に相当するモータトルク指令値を生成する部分であり、出力決定部43には、加速アシスト演算部41及びパワーアシスト演算部42で演算されたアシスト出力の和と、蓄電装置10の蓄電量が入力されている。また、出力決定部43は、蓄電量演算部25から入力される蓄電装置10の蓄電量が少ないためにアシスト演算部41,42で演算されたアシスト出力を発生できない場合に、電動・発電機2によるアシスト出力量を制限し、当該制限後のアシスト出力に対応するモータトルク指令値を算出する機能を有する。さらに、蓄電装置10の蓄電量が少なく(例えば、設定値未満の場合)かつエンジンアシストが不要な場合には、電動・発電機2に発電を実行させるモータトルク指令値を算出する機能を有する。
【0030】
なお、アシスト出力演算部19では、エンジン最大出力演算部18から入力されるエンジン最大出力と、エンジン出力検出部20から入力されるエンジン出力とに基づいて、電動・発電機2によるアシスト出力を演算しても良い。このようにすれば、電動・発電機によるアシスト出力は、エンジン1の現在の出力とその回転数におけるエンジン1の最大出力を判断材料に定められるので、エンジン1の出力に余裕があるうちには電動・発電機2によるアシストを実施せずに蓄電装置10の蓄電量を無駄に消費すること避けることができる。また、エンジン出力が最大値に達している場合には、すぐにアシストが実施されるため、エンストの回避が実現できるのはもちろんのこと、エンジン回転数を目標回転数へ応答良く追従することもできる。
【0031】
図3に戻り、吸収トルク上限演算部23は、油圧ポンプ3の吸収トルク(入力トルク)の上限値(最大値)を演算する部分であり、ここで算出した吸収トルク上限値を操作信号生成部24に出力している。
【0032】
本実施の形態における吸収トルク上限演算部33は、通常、図2に示した制御特性図に従ってポンプ吸収トルク上限値を算出する。しかし、回転数偏差ΔNが、設定値(以下、「設定値NC」と称することがある)以上のときには、図2の制御特性図に基づいて算出した値から更に所定の吸収トルクを低減した値をポンプ吸収トルク上限値として算出する。
【0033】
図5は本実施の形態における回転数偏差の設定値NCとアシスト出力の関係を示す図である。この図に示すように、設定値NCは、アシスト出力演算部19で算出されるアシスト出力の大きさに応じて設定されている。さらに具体的には、この図に示す設定値NCは、アシスト出力PMがゼロのときに最大値NCmaxをとり、アシスト出力PMが最大のときに最小値NCminをとっており、電動・発電機2のアシスト出力が大きくなるほど小さくなるように設定されている。次に、回転数偏差ΔNが設定値NC以上の場合において吸収トルク上限演算部23で行われるポンプ吸収トルク制御ついて図を用いて説明する。
【0034】
図6は回転偏差ΔNが設定値NC以上のときにおけるレギュレータ14によるポンプ吸収トルクの制御特性図の変化の一例である。例えば、説明を簡単にするために、アシスト出力が一定で設定値NCが一定値である場合において、回転数偏差ΔNが設定値NC未満の値から設定値NCより大きい値まで変化したとし、この図における折れ線7Aが図2における折れ線2Aに相当したとする。この場合には、本実施の形態における吸収トルク上限演算部23は、回転数偏差ΔNが設定値NC以上に達すると、回転数偏差ΔNと設定値NCの偏差の大きさに応じて、折れ線が7Aから7Bへ、さらには7Bから7Cへと遷移するようにポンプ吸収トルク上限値を低減する。このようにポンプ吸収トルク上限値を低減すると、回転数偏差ΔNの大きさに合わせてポンプ吸収トルクを低減することができるので、回転数偏差ΔNの大きさに合わせてエンジン1又は電動・発電機2の負荷を小さくすることができる。
【0035】
なお、制御特性(折れ線)は、回転数偏差ΔNと設定値NCの偏差の大きさに応じて段階的(例えば、図7に示した7A,7B,7Cの3段階)に遷移させても良いし、回転数偏差ΔNと設定値NCの偏差の大きさに応じて折れ線7Aから折れ線7Cまで徐々に遷移させても良い。後者の制御特性を利用すると、ポンプ吸収トルク上限値が急激に変化することが抑制できるので、前者の場合よりもフロント作業装置の操作性の悪化を抑制できる。また、制御特性の折れ線を遷移させるパラメータを関数で定義できるので、前者のように事前に多くのデータテーブルを用意せずに済む。次に、回転数偏差ΔNと設定値NCの偏差の大きさに応じて折れ線7Aから折れ線7Cまで徐々に遷移させた場合について、図を用いて説明する。
【0036】
図7は、アシスト出力の大きさが変化した場合(すなわち、設定値NCが変化した場合)におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図の変化の一例を示す図である。ここでは、基準となる特性図をアシスト出力の大きさに合わせて水平方向(横軸方向)に平行移動したものを各アシスト出力値における特性図として説明する(なお、この場合、アシスト出力の増加に合わせて特性図は図中の矢印のように左方向に平行移動する)。
【0037】
この図において、図5におけるアシスト出力がPM1の状態(設定値NC=NC1)におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図が図7中の5Aの状態であったとする。この場合、回転数偏差ΔNが設定値NC1以下のときはポンプ吸収トルク上限値を低減することなく、つまり、油圧ポンプ3の吸収トルクに対して減トルク制御を実施することなく、エンジン1の目標回転数に応じたポンプ吸収トルク上限値5aを利用した制御が実施される(すなわち、図6の折れ線7A上で吸収トルク制御が行われる)。この場合には、ポンプ吸収トルク上限値を制限しないので済むので、フロント作業装置の良好な操作性を保持することができる。
【0038】
一方、回転数偏差ΔNが設定値NC1を超えたときには、回転数偏差ΔNの大きさに応じて減トルク量が増加する(すなわち、図6の折れ線が7Aから7Cに向かう)。これによりポンプ吸収トルク上限値は、回転数偏差ΔNの増加に合わせて、上限値5aから下限値5bに向かって徐々に下がる。このように回転数偏差ΔNの大きさに合わせてポンプ吸収トルク上限値の低減量を大きくすると、油圧ポンプ負荷に起因するエンジン1又は電動・発電機2の負荷を回転数偏差ΔNの大きさに合わせて小さくすることができる。
【0039】
また、回転数偏差ΔNがNC1を超えて一定以上に達するとポンプ吸収トルク上限値を下げ止める。図7の例では、5bがポンプ吸収トルク上限値の最小値となっており、この値で下げ止めている。なお、このポンプ吸収トルク上限値の最小値としては、オペレータによる操作レバーの操作に対してフロント作業装置が全く作動しなくなるという事態を回避する観点から、フロント作業装置の動作において最低限必要となるポンプ吸収トルク値を設定することが好ましい。また、当該最小値は、ポンプ吸収トルク上限値をできるだけ高めに設定してフロント作業装置の迅速な動作を確保する観点から、エンジン1及び電動・発電機2の出力や、蓄電装置10の蓄電量の大きさに合わせて逐次変更可能にすることが好ましい。すなわち、当該最小値は、エンジン1及び電動・発電機2の余剰出力の大きさに合わせて大きくすることが好ましく、また、蓄電装置10の蓄電量の大きさに合わせて大きくすることが好ましい。
【0040】
次に、図5におけるアシスト出力が最大(PMmax)の状態(設定値NC=NCmin)におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図が図7中の5Bの状態であったとする。この場合は、例えば、5Aのポンプ吸収トルク上限値の特性図が利用されている状態からフロント作業装置の負荷が増える等してエンジン1の負荷が増加し、エンジン1の出力を補うために電動・発電機2によるアシスト出力が最大に達したとき等に相当する。
【0041】
特性図が5Bの場合には回転数偏差ΔNが設定値NCminに達した時点からポンプ吸収トルク上限値の低減が開始されるので、5Aの場合(NC1)よりもポンプ吸収トルク上限値が下がり始める値が小さくなる。これにより、エンジン出力が最大に近い状態で電動・発電機2によるアシストを行っているにもかかわらず、エンジン回転数が落ち込んでしまうような過負荷な状況になることを防ぐことができる。
【0042】
次に、図5におけるアシスト出力がゼロの状態(設定値NC=NCmax)におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図が図7中の5Cの状態であったとする。この場合は、例えば、5Aのポンプ吸収トルク上限値の特性図が利用されている状態からフロント作業装置の負荷が減る等してエンジン1の負荷が減少し、電動・発電機2によるアシスト出力が不要になったとき等に相当する。
【0043】
特性図が5Cの場合には回転数偏差ΔNが設定値NCmaxに達した時点からポンプ吸収トルク上限値の低減が開始されるので、5Aの場合(NC1)よりもポンプ吸収トルク上限値が下がり始める値が大きくなる。ここで、特性図が5Cの場合には、電動・発電機2によるアシスト出力は発生しないので、油圧ポンプ3の負荷は、エンジン1の最大出力以下となる。よって、この状態において生じた回転数偏差ΔNはエンジン単体の出力や電動・発電機2によるアシスト出力によって解消される傾向が強い。この場合には、ポンプ吸収トルク上限値を制限しないで済むので、フロント作業装置の良好な操作性を保持することができる。
【0044】
なお、特性図が5Cの状態においてポンプ吸収トルク上限値の制限が実施される場合は、5Aや5B等の状態と比較して回転数偏差ΔNが大きくなった場合(NCc以上の場合)になる。このような大きな回転数偏差ΔNの発生理由はポンプ負荷の急激な増加などが考えられるため、一般的な油圧ショベルではラグダウンの発生が懸念される。しかし、本実施の形態では、このような場合には、回転数偏差ΔNの増大に先立ってアシスト出力演算部19で算出されるアシスト出力が増加するので、特性図は5Cから5Aへと徐々に変更されていく。そのため、ラグダウンが大きく生じることは無い。
【0045】
ところで、上記の例では、吸収トルク上限値演算部23において、図2を利用して設定されたポンプ吸収トルク上限値(以下において、「基準となる吸収トルク上限値」と称することがある)から所定の吸収トルクを低減したものを実際のポンプ吸収トルク上限値とする制御について説明してきたが、図8に示すように、回転数偏差ΔNの値を入力値として基準となる吸収トルク上限値に対する許容率x(0< x ≦1)を返すテーブルを設定し、当該テーブルによって設定された許容率を当該基準となる吸収トルク上限値に乗じた値を実際のポンプ吸収トルク上限値として利用しても良い。図8は回転数偏差ΔNの大きさに応じてポンプ吸収トルク上限値の許容率を設定するテーブル図の一例である。図8に示した例では、アシスト出力が最大の場合には6Bに示した特性図に基づいて許容率が算出され、アシスト出力がゼロの場合には6Aに示した特性図に基づいて許容率が算出されるようになっている。
【0046】
また、図7,8では、回転数偏差ΔNに対してポンプ吸収トルク上限値が線形に変化する場合のみを図示したが、本実施の形態で利用可能な特性図はこれらに限られない。また、図7における5A、5B、5Cの切り換えも、アシスト出力によって線形的に切り換わるものに限られないことはもちろん、切り換えにヒステリシスを設けても良い。さらに、図7に示したポンプ吸収トルク上限値における最大値5a及び最小値5bは、前述のようにエンジン目標回転数に基づいて変化させる場合に限られず、例えば、エンジン1の実回転数など建設機械の運転状況によって変化させても良い。
【0047】
図3に戻り、操作信号生成部24は、吸収トルク上限演算部23で算出された値に基づいて油圧ポンプ3の容量(ポンプ吸収トルク上限値)を調節するために容量調節装置45(電磁比例弁15)に出力する操作信号(比例弁出力指令値)を生成する部分であり、ここで生成された操作信号は電磁比例弁15に出力される。操作信号生成部24で生成された操作信号の入力を受けた電磁比例弁15は当該送信号に対応する制御圧を発生し、当該制御圧の大きさに応じてレギュレータ14を作動させる。このように作動するレギュレータ14によって油圧ポンプ3の容量が変更され、油圧ポンプ3の吸収トルクの上限値は吸収トルク上限演算部23で算出された値に制御される。
【0048】
次に上記のように構成される本実施の形態の建設機械において、エンジン1の回転数偏差ΔNと、ポンプ吸収トルク上限値と、電動・発電機2によるアシスト出力の挙動を図を用いて説明する。
【0049】
図9は、エンジン1がアシスト出力無しで目標回転数(すなわち、回転数偏差ΔN=0)で動作している状況から、油圧ポンプ3の負荷が徐々に重負荷になってアシスト出力が増加する場合における建設機械の制御例を示している。図中では、アシスト出力の変化に基づく設定値NCの変化を、回転数偏差ΔNの変化とともに1点鎖線で示している。
【0050】
この図において、期間(a)1は、油圧ポンプ3の負荷(油圧ポンプ3の出力トルク=流量×圧力)が少なく、エンジン1の出力のみで目標回転数を維持できる場合であり、電動・発電機2によるアシスト出力はゼロである(すなわち、設定値NC=NCmax)。期間(a)2は、エンジン1だけでは回転数偏差ΔNを解消できなくなり、電動・発電機2によるアシスト出力の発生を開始する。期間(a)2の開始時以後、アシスト出力の増加とともに回転数偏差ΔNの設定値NCはNCmaxから徐々に低下していくが(すなわち、図7の特性図は5Cの状態から左方向へ平行移動するが)、それでも回転数偏差ΔNは設定値NCを超えないのでポンプ吸収トルク上限値の制限は行われない。しかし、期間(a)2の終了時(期間(a)3の開始時)には、アシスト出力の増加とともに減少した設定値NCに回転数偏差ΔNが達するため、ポンプ吸収トルク上限値の制限が行われ、減トルク量が発生する。期間(a)3では、回転数偏差ΔNは常に設定値NC以上であり、回転数偏差ΔNと設定値NCの偏差に応じてポンプ吸収トルク上限値の制限が行われる。これによりエンジン1の負荷を低減できるので、過渡的に大きなアシスト出力が発生することを抑制しながらエンジン1を目標回転数に近づけることができる。また、過負荷に伴うエンジンストールを回避することができる。
【0051】
図10は、エンジン出力及びアシスト出力が最大でエンジン1が目標回転数で動作している状況から、油圧ポンプ3の負荷が徐々に重負荷になって回転数偏差ΔNが増加する場合における建設機械の制御例を示している。この場合には、アシスト出力は最大PMmaxであるので、回転数偏差の設定値NCは、NCmin(すなわち、ゼロに近い値)に保持されている。
【0052】
この図において、期間(b)1では、エンジン及びアシスト出力が最大で油圧ポンプ3の負荷が釣り合っている状態である。回転数偏差の設定値NCはゼロに近い値(NCmin)に保持されているが、回転数偏差ΔNが発生しないためポンプ吸収トルク上限値の制限は行われない。期間(b)2が開始して油圧ポンプ3の負荷が増加し始めると、エンジン1及び電動・発電機2は既に最大出力に達しているため、実回転数が徐々に低下して回転数偏差ΔNが増加し始める。これにより、回転数偏差ΔNは設定値NCminを超えるので、ポンプ吸収トルク上限値の制限が行われ、減トルク量が発生する。このように、エンジン及びアシスト出力が最大の場合に回転数偏差が発生した場合には、即座にエンジン1の負荷を低減できるので、過渡的に大きなアシスト出力が発生することを抑制しながらエンジン1を目標回転数に近づけることができる。また、これにより過負荷に伴うエンジンストールを回避することができる。
【0053】
図11は、エンジン1の実回転数が一定の目標回転数N*で動作している状況で、油圧ポンプ3の負荷が急激に増加する場合における建設機械の制御例の1つを示している。
【0054】
ここでは、フロント作業装置が急激な重負荷作業を実施したことにより、図11における(a)のように油圧ポンプ3の負荷が変化したものとする。このとき、アシスト出力演算部19は、ポンプ負荷の急激な増加に対応するためにフィードフォワード入力を利用したパワーアシスト演算部42の演算に従って、回転数偏差ΔNが小さい動作点からもモータトルク指令値として最大のアシスト出力PMmaxを算出し、電動・発電機2は図11中の(c)に示すように最大のアシスト出力PMmaxを発生する。このように最大のアシスト出力が発生されると、回転数偏差の設定値は最小値NCminに設定されるが、発生する回転数偏差ΔNが小さい。そのため、油圧ポンプ3に負荷が印加された時刻t1周辺におけるポンプ吸収トルクは、図11中の(d)に示すように目標とするポンプ吸収トルク(目標ポンプ負荷)に対してあまり制限されることはない。
【0055】
しかし、この状況においては、エンジン1が過渡的な過負荷状態になるため、図11中の(b)における時刻t1〜t2の区間に示したように、エンジン1の実回転数は徐々に低下する。これにより回転数偏差ΔNが徐々に増加し、吸収トルク上限演算部23において演算される減トルク量が増加するので、油圧ポンプ3の負荷は、図11中の(d)における時刻t1〜t2の区間に示すように目標ポンプ負荷に対して制限が大きくなり、時刻t2においてエンジン1の実回転数の落ち込みが停止する。時刻t2以降においては、エンジン1と電動・発電機2の出力の和がポンプ負荷を上回るので、エンジン回転数が目標回転数N*に復帰する。
【0056】
上記のように、エンジン1が一定の目標回転数N*で動作しかつ電動・発電機2が十分なアシスト出力を発生している場合にポンプ負荷が大きくなり回転数偏差ΔNが生じたときには、ポンプ吸収トルク上限値の制限を実施することでアシスト出力をそれ以上大きくさせることなくエンジン1を目標回転数N*に復帰させることができる。また、これによりラグダウンを軽減することができる。さらに、ポンプ負荷の増加分を電動・発電機2によるアシスト出力でまかなえる場合には、エンジン回転数が落ち込むこともないのでポンプ吸収トルク上限値の制限が実施されず、フロント作業装置の操作性を損なうこともない。
【0057】
図12は図11における各時刻t1、t2、t3に対応するトルク線図である。次にこの図を用いて各時刻t1〜t3におけるエンジン1、電動・発電機2、油圧ポンプ3のトルクの挙動について説明する。
【0058】
図12中の(a)は図11の時刻t1に対応するトルク線図である。(a)における符号10aが示す線は図2を利用して設定された基準となる吸収トルク上限値であり、符号10bが示す線は各回転数におけるエンジン1の最大トルクの特性を示している。時刻t1では、エンジン1の実回転数N1と目標回転数N*が一致しており回転数偏差ΔNは存在しないが、油圧ポンプ3の負荷の増大に伴ってパワーアシスト演算部42がフィードフォワード出力として最大トルクを算出し、当該最大トルクで電動・発電機2はエンジンアシスト10eを実施する。これにより、アシスト出力は最大値PMmaxとなり、回転数偏差の設定値は最小値NCminに設定されるので、ポンプ吸収トルク上限値の制限特性は図7における5Bに相当することになる。しかし、その後に発生する回転数偏差ΔNは小さいため、油圧ポンプ3の減トルク量はわずかになる。そのため、油圧ポンプ3の吸収トルクは規定されていた最大吸収トルク線10aとほぼ同等の上限10cになるように制御される。このとき、エンジン1と電動・発電機2のトルク和(合計トルク)の不足分10dによって僅かながらラグダウンが発生する。
【0059】
図12中の(b)は図11の時刻t2に対応するトルク線図である。時刻t1の直後よりも回転数偏差ΔN(実回転数N2と目標回転数N*の偏差)が増加している。エンジン1のトルクは時刻t1よりも増加しているが、最大トルクまでは達していない。また、電動・発電機2は時刻t1に引き続きパワーアシストを実施しているため、アシストトルク10fは(a)のときと変わらない。すると、回転数偏差ΔNの増加によりポンプ吸収トルク上限値がさらに制限される。これにより、油圧ポンプ3の吸収トルクは、規定された最大吸収トルク線11aに対して制限のかかった吸収トルク線10gとなり、時刻t1の時と異なり、エンジン1と電動・発電機2のトルク和がポンプ負荷に対して余剰分10hを生じる。この余剰トルク10hによってエンジン1を目標回転数N*まで加速することができるので、過渡的に大きなアシスト出力を発生させることなくエンジン1の実回転数を上昇させることができる。
【0060】
図12中の(c)は図11の時刻t3に対応するトルク線図である。このときは、余剰トルク10hによって回転数偏差ΔNは解消されており、実回転数N3と目標回転数N*は一致している。そのため、油圧ポンプ3の吸収トルク上限値の制限は実施されず、油圧ポンプ3の最大吸収トルク線10aがそのまま利用されることになる。ただし、本実施の形態では燃費向上の観点から、10aのポンプトルクはエンジン1の最大トルクを上回っている。そのため、不足するトルクは、アシスト出力演算部19によってパワーアシスト量10iとして演算された値を電動・発電機2によって出力する。なお、時刻t3においてはエンジン1のトルクが最大トルクとなっているため、パワーアシスト量10iは時刻t1のパワーアシスト量10eよりも小さくなっている。また、時刻t3においては、油圧ポンプ3の負荷制限が実施されていないため、この領域においては操作性も十分に確保できる。
【0061】
上記のように、本実施の形態によれば、発電・電動機2によって過渡的に大きなアシスト出力が発生されることを抑制できるので、電動・発電機2での電力消費を抑えることができ、ひいては電動・発電機2そのものを低出力の小型のものを利用することもできる。さらに、電動・発電機2による電力消費が少ないということは、蓄電装置10としてキャパシタを利用している場合には充放電を減らすことによる効率向上が実現される。また、蓄電装置10にバッテリを用いた場合にも、放電量を少なく抑えることができるので、蓄電装置10の小型化が実現できる。すなわち、本実施の形態によれば、過渡的に大きなアシスト出力が発生されることが防止でき消費電力を抑制できるので、電動・発電機2及び蓄電装置10の大型化を抑制することができ、ハイブリッド式建設機械において省電力化と低燃費化を実現することができる。
【0062】
また、油圧ポンプ3の負荷が増加した場合には、それに応じて電動・発電機2によるアシスト出力が増加してポンプ吸収トルク上限値に制限がかかるため、油圧ポンプ3の負荷がエンジン1と電動・発電機2の合計出力の最大値以上になることが防止でき、過負荷によるエンジンストールの発生を回避できる。
【0063】
一方、掘削作業開始時など、油圧ポンプ3の負荷が低負荷から重負荷へと急激に増加することで回転数偏差ΔNが大きくなり、通常、ラグダウン発生のおそれがある状況においては、アシスト出力の大小に関わらずポンプ吸収トルク上限値の制限が実施される。これによりエンジン回転数を目標回転数に素早く復帰できるので、エンジン1に高負荷がかかる状態が低減でき、ラグダウンの発生が抑制できる。さらに、エンジン回転数を目標回転数へと復帰する時にはポンプ吸収トルク上限値が制限され、エンジン1が過負荷になる状況を防ぐことができるので、排ガス状況の改善や燃費の低減も実現できる。
【0064】
図13は、油圧ポンプ3の負荷が急激に増加したことに対応するためにエンジン1の目標回転数を急激に増加させた場合における建設機械の制御例の1つを示している。
【0065】
ここでは、フロント作業装置が急激な重負荷作業を実施したことにより、図13における(a)のように油圧ポンプ3の負荷が変化したものとする。このとき、目標回転数設定部17は、ポンプ負荷の急激な増加に対応するために目標回転数を図13中の(c)のように素早く立ち上げてエンジン出力を上げる。すなわち、一時的に回転数偏差ΔNが大きく生じる。ここで、アシスト出力演算部19は、生じた回転数偏差ΔNを解消するためにモータトルク指令値として最大のアシスト出力PMmaxを算出し、電動・発電機2は図13中の(c)に示すように最大のアシスト出力PMmaxを発生する。このように最大のアシスト出力が発生されると、回転数偏差の設定値は最小値NCminに設定される。このとき、当該設定値と回転数偏差ΔNの差は非常に大きな値となるため、吸収トルク上限演算部23では減トルク量が大きくとられる。これによりポンプ吸収トルク上限値は大きく減少して、ポンプ負荷は図13中の(d)のように目標に対して大きく制限されることになる。
【0066】
このように、目標となるポンプ負荷が大きくなる時には、ポンプ吸収トルク上限値の制限によってエンジン1に対する負荷が小さくなるため、電動・発電機2によって過渡的に大きなアシスト出力を発生させることなくエンジン1を目標回転数に素早く追従させることが可能になる。
【0067】
また、エンジン1の実回転数が目標回転数に近づくにつれて回転数偏差ΔNが小さくなるため、電動・発電機2によるアシスト出力は徐々に小さくなる。これに従い、ポンプ吸収トルクの特性図は図7の5Bの状態から5A、さらに5Cへと徐々に遷移するので、回転数偏差ΔNの減少とともにポンプ吸収トルク上限値の制限も解除される。これにより、定常的にはフロント作業装置の操作性を維持することができるようになる。
【0068】
図14は図13における各時刻t1、t2、t3に対応するトルク線図である。次にこの図を用いて各時刻t1〜t3におけるエンジン1、電動・発電機2、油圧ポンプ3のトルクの挙動について説明する。
【0069】
図14中の(a)は図13の時刻t1に対応するトルク線図である。(a)における符号12aが示す線は図2を利用して設定された基準となる吸収トルク上限値であり、符号12bが示す線は各回転数におけるエンジン1の最大トルクの特性を示している。時刻t1では、エンジン1の実回転数N1と目標回転数N*との回転数偏差ΔNが非常に大きいため、電動・発電機2の最大トルクによってエンジンアシストを実施する。これにより、アシスト出力は最大値PMmaxとなり、回転数偏差の設定値は最小値NCminに設定されるので、ポンプ吸収トルク上限値の制限特性は図7における5Bに相当することになる。そして、回転数偏差ΔNが大きいため、これに応じた大きな減トルク量が算出される。そのため、油圧ポンプ3の吸収トルクは、規定されていた最大吸収トルク線12aから大きく制限がかかり、その結果、符号12cが付された線が示すポンプ吸収トルク上限値で制御される。このため、エンジン1と電動・発電機2のトルク和の余剰分12dがエンジン回転数上昇のための加速分として利用されるため、エンジン回転数を素早く立ち上げることができる。また、過剰な負荷がエンジン1にかかるのを防止できるため、ラグダウンが発生するのを回避できる。
【0070】
図14中の(b)は図13の時刻t2に対応するトルク線図である。時刻t1に比べて回転数偏差ΔN(実回転数N2と目標回転数N*の偏差)が小さくなっているため、電動・発電機2によるエンジンアシストは(a)に比べて少なくなる。そのため、ポンプ吸収トルク上限値の制限特性は図7の5Bの状態から5Aの状態に向かうことになり、このときの回転数偏差ΔNに応じたポンプ吸収トルクの制限を実施する。これにより、油圧ポンプ3の吸収トルクは、(a)のときよりも制限の緩くなった符号12eが付された線が示すポンプ吸収トルク上限値で制御される。これにより、時刻t1の時と同様に、エンジン1と電動・発電機2のトルク和の余剰分12fによってエンジン回転数を加速させることができる。
【0071】
図14中の(c)は図13の時刻t3に対応するトルク線図である。このとき、実回転数N3と目標回転数N*が一致するため、回転数偏差ΔNは解消されている。そのため、油圧ポンプ3の吸収トルク上限値の制限は実施されず、油圧ポンプ3の最大吸収トルク線12aがそのまま利用されることになる。ただし、本実施の形態では燃費向上の観点から、12aのポンプトルクはエンジン1の最大トルクを上回っている。そのため、不足するトルクは、アシスト出力演算部19によってパワーアシスト量12gとして演算された値を電動・発電機2によって出力する。なお、時刻t3においては、油圧ポンプ3の負荷制限が実施されていないため、この領域においては操作性も十分に確保できる。
【0072】
上記のように、本実施の形態によれば、加速時にポンプ吸収トルク上限値を低減することで、電動・発電機2による加速アシストを小さく抑えることができるので、消費電力が抑制でき電動・発電機2及び蓄電装置10の大型化を抑制することができる。また、これにより、素早くエンジン1の実回転数を素早く目標回転数まで上昇させることができるので、エンジン1が過負荷状態になることが回避でき、高濃度燃焼の抑制や排ガス改善の効果が得られる。さらに、蓄電装置10としてキャパシタを利用している場合には充放電を減らすことによる効率向上を図れるので省電力化が実現できる。
【0073】
なお、本実施の形態では、負荷急増時には一時的にポンプ負荷を意図的に下げることになるので、その際にフロント作業装置の操作に対する応答性が失われる懸念がある。しかし、一般に、建設機械において負荷が急増するのは掘削動作の掘り始めなど元々フロント作業装置が素早く動くことがない動作なので、操作性が悪化する実際の場面は少ない。したがって、本実施の形態によれば、フロント作業装置の操作性を確保することができる。
【0074】
ところで、上記では、回転数偏差の設定値NCをアシスト出力の大小に対応付けて設定する場合について説明してきたが、設定値NCは蓄電装置10の蓄電量の大小に対応付けて設定しても良く、蓄電量及びアシスト出力の双方の大小を対応付けて設定しても良い。以下では、前者の場合について詳細に説明する。
【0075】
図15は本実施の形態における回転数偏差の設定値NCと蓄電装置10の蓄電量の関係を示す図である。この図に示す設定値NCは、蓄電量AHがゼロのときに最小値ゼロをとり、蓄電量AHが最大AMmaxのときに最大値NCmaxをとっており、蓄電装置10の蓄電量が小さくなるほど小さくなるように設定されている。
【0076】
図16は、蓄電装置10の蓄電量が変化した場合(すなわち、設定値NCが変化した場合)におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図の変化の一例を示す図である。ここでは、基準となる特性図を蓄電量に合わせて水平方向(横軸方向)に平行移動したものを各蓄電量における特性図として説明する(なお、この場合、蓄電量の増加に合わせて特性図は図中の矢印のように右方向に平行移動する)。
【0077】
この図において、図15における蓄電量がAH1の状態(設定値NC=NC1’)におけるポンプ吸収トルク上限値の特性図が図16中の15Aの状態であったとし、蓄電量がゼロの状態(設定値NC=NCmin≒0)の特性図が15Bの状態であったとし、蓄電量が最大の状態(設定値NC=NCmax)の特性図が15Cの状態であったとする。この場合において、例えば、15Aのポンプ吸収トルク上限値の特性図が利用されている状態において、蓄電量検出手段22によって検出された蓄電装置10の蓄電量が低下したときには、特性図は15Bの状態に向かって移動する。このように特性図を変更することで設定値をNC1’より小さい値に変更すると、電動・発電機2によるアシスト出力を蓄電量不足により充分に発生できない場合には、15Aの場合(NC1’)よりもポンプ吸収トルク上限値が下がり始める値が小さくなる。これにより、蓄電量が不足しているために電動・発電機2によるアシストが実施できない場合には、優先的に油圧ポンプ3の負荷を下げることで、回転数偏差ΔNが小さいうちから油圧ポンプ3の吸収トルク上限値を制限することになるので、エンジンストールの回避はもちろん、ラグダウンも防止できる。
【0078】
また、上記に関連して、電動・発電機2によって発電を行っている場合は、当然、蓄電装置10の蓄電量が小さい場合であると判断される。そのため、電動・発電機2が発電している場合には、その発電量が大きくなるほど設定値NCが小さくなるように設定しても良い。すなわち、発電量が大きくなるほど15Bの特性図に近づくことになる。例えば、電動・発電機2によって発電を行う場合に15Bの特性図が利用されるものとし、このときのエンジン1の目標回転数を電動・発電機2による高効率な発電が可能な高回転領域に合わせるとすると、当該目標回転数に到達するまでに一時的に回転数偏差ΔNが生じることになる。しかし、15Bの特性図を利用している場合に回転数偏差ΔNが生じると即座にポンプ吸収トルク上限値が低減されるため、油圧ポンプ3の負荷を減らすことができる。そのため、電動・発電機2によるアシスト出力が無くてもエンジン単体で素早く回転数を立ち上げて発電を実施することができる。
【0079】
なお、電動・発電機2による発電を行う場合には、エンジン回転数が十分に立ち上がるまでは、アシスト出力演算部19の出力決定部43にて、モータトルク指令を回生側にせずに多少の加速アシストを行うか、もしくは、電動・発電機2がエンジン1に対する負荷にならないように0トルクの状態で保つように設定することが好ましい。このように設定すると、電動・発電機2による発電がエンジン3の負荷となる程度が小さくなり、エンジン1の実回転数を目標回転数まで上昇させるまでの時間を短縮できるとともに、効率の高い高回転数領域での発電が可能になり、燃費を向上できるからである。
【符号の説明】
【0080】
1 エンジン
2 電動・発電機
3 ポンプ
4 バルブ装置
5 アクチュエータ
7 ガバナ
8 コントローラ
9 インバータ
10 蓄電装置
11 電流センサ
12 電圧センサ
13 温度センサ
14 レギュレータ
15 電磁比例弁
16 回転数センサ
17 目標回転数設定部
18 エンジン最大出力演算部
19 アシスト出力演算部
21 ポンプ情報検出手段
22 蓄電情報検出手段
23 吸収トルク上限演算部
24 操作信号生成部
25 蓄電量演算部
26 ポンプ負荷演算部
27 蓄電量検出部
28 ポンプ負荷検出部
29 目標回転数入力装置
41 加速アシスト演算部
42 パワーアシスト演算部
43 出力決定部
45 ポンプ容量調節装置
NC 回転数偏差ΔNの設定値
ΔN 回転数偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンによって駆動される可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、前記エンジンとの間でトルクの伝達を行う電動・発電機と、この電動・発電機に電力を供給する蓄電手段と、操作信号に基づいて前記油圧ポンプの容量を調節するポンプ容量調節手段とを備える建設機械の制御装置において、
前記エンジンの実回転数を検出する実回転数検出手段と、
前記エンジンの目標回転数を定める目標回転数設定手段と、
前記エンジンによる出力をアシストするために前記電動・発電機により発生させるアシスト出力を算出するアシスト出力演算手段と、
前記油圧ポンプの吸収トルク上限値を算出する吸収トルク上限演算手段と、
この吸収トルク上限演算手段で算出された値に基づいて前記油圧ポンプの容量を調節するために前記容量調節手段に出力する操作信号を生成する操作信号生成手段とを備え、
前記吸収トルク上限演算手段は、前記実回転数検出手段から入力される実回転数と前記目標回転数設定手段から入力される前記目標回転数との差である回転数偏差が、前記アシスト出力演算手段で算出されるアシスト出力の大きさに応じて設定される設定値以上のとき、前記油圧ポンプの吸収トルク上限値を前記算出した値から低減することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の制御装置において、
前記回転数偏差の設定値は、前記電動・発電機のアシスト出力が大きくなるほど小さく設定されることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の制御装置において、
前記蓄電手段における蓄電量を検出する蓄電量検出手段をさらに備え、
前記回転数偏差の設定値は、前記蓄電量検出手段から入力される前記蓄電手段の蓄電量が少なくなるほど小さく設定されることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の建設機械の制御装置において、
前記油圧ポンプの負荷を検出する負荷検出手段と、
前記エンジンの実際の出力を検出するエンジン出力検出手段とをさらに備え、
前記アシスト出力演算手段は、前記回転数偏差に基づいて加速アシスト出力を算出し、さらに、前記負荷検出手段から入力される前記油圧ポンプの負荷と前記エンジン出力検出手段から入力されるエンジン出力との差に基づいてパワーアシスト出力を算出することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械の制御装置において、
前記実回転数検出手段から入力される実回転数に基づいて前記エンジンの最大出力を演算するエンジン最大出力演算手段をさらに備え、
前記アシスト出力演算手段は、前記エンジン最大出力設定手段から入力されるエンジン最大出力をさらに参照することで前記パワーアシスト出力の最小値を算出することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の建設機械の制御装置において、
前記回転数偏差の設定値は、前記電動・発電機のアシスト出力の変化に合わせて連続して変化することがあることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の建設機械の制御装置において、
前記目標回転数設定手段は、前記エンジンの必要出力に対する燃料消費量が最小となる動作点を目標回転数とすることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項8】
前記吸収トルク上限演算手段は、前記回転数偏差が前記設定値以上のときに前記ポンプの吸収トルク上限値を低減する量を、前記回転数偏差と前記設定値の差の大きさに応じて大きくすることを特徴とする建設機械の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−180683(P2012−180683A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44257(P2011−44257)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】