説明

建設機械の油圧回路

【課題】一方の系統のアクチュエータのみが操作されたときに、操作されていない他方の系統の圧損(エネルギーロス)を従来よりも低減することができる建設機械の油圧回路を提供すること。
【解決手段】レギュレータ52付きのスプリットポンプ51に接続されたアンロード通路12,13と、当該アンロード通路12,13にそれぞれ接続された第1系統の第1方向切換弁4w〜4zおよび第2系統の第2方向切換弁5w〜5yとを備える油圧回路1である。油圧回路1は、第1ネガコン圧およびパイロットポンプ圧が入力され第1系統のすべての第1方向切換弁4w〜4zが操作されていないときに第1ネガコン圧に替わってパイロットポンプ圧を出力する第1補助アンロード弁7と、第1補助アンロード弁7の出力および第3ネガコン圧に応じてスプリットポンプ51からの油をタンク59へ排出する第1アンロード弁2とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型の1シリンダ2ポート吐出のスプリットポンプを用いる建設機械の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧回路としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1の例えば図8に記載された油圧回路においては、第1系統および第2系統の方向切換弁の全てが操作されていないときに、非操作信号生成弁(15)からのパイロットポンプ圧をネガコン圧に使用して、スプリットポンプ(51)からの圧油をアンロード弁(2,3)から全量タンク(54)に戻している。これにより、アクチュエータが使用されていないときの圧損(エネルギーロス)を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2009/123047(図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この油圧回路では、1つのアクチュエータのみが使用されたとき、使用されていない方の系統のアンロード通路にもネガコン圧が発生しており、エネルギーロスが生じていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、一方の系統のアクチュエータのみが操作されたときに、操作されていない他方の系統の圧損(エネルギーロス)を従来よりも低減することができる建設機械の油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、吐出流量を制御するレギュレータ付きのスプリットポンプの一方の吐出口に接続された第1系統の第1アンロード通路と、前記第1アンロード通路に接続され、アクチュエータに油を給排する第1系統の第1方向切換弁と、前記第1方向切換弁の下流側の前記第1アンロード通路に配置された第1系統の第1絞りと、前記スプリットポンプの他方の吐出口に接続された第2系統の第2アンロード通路と、前記第2アンロード通路に接続され、アクチュエータに油を給排する第2系統の第2方向切換弁と、前記第2方向切換弁の下流側の前記第2アンロード通路に配置された第2系統の第2絞りと、前記第1絞りの上流側の油圧である第1ネガコン圧および前記第2絞りの上流側の油圧である第2ネガコン圧のうちの低い方の油圧を第3ネガコン圧として前記レギュレータに出力する低圧選択弁と、を備えた建設機械の油圧回路において、前記第1絞りの上流側と前記低圧選択弁との間に配置され、前記第1ネガコン圧およびパイロットポンプ圧が入力され第1系統のすべての前記第1方向切換弁が操作されていないときに当該第1ネガコン圧に替わって当該パイロットポンプ圧を出力する第1補助アンロード弁と、前記第1絞りの上流側に配置され、前記第1補助アンロード弁の出力および前記第3ネガコン圧に応じて前記スプリットポンプからの油をタンクへ排出する第1アンロード弁と、を備えることを特徴とする、建設機械の油圧回路を提供する。
【0007】
この構成によると、第1系統のすべての第1方向切換弁が操作されていないときは、第2系統の第2方向切換弁が操作されていたとしても、第1補助アンロード弁から出力されるパイロットポンプ圧により、第1系統の第1アンロード通路を流れようとするスプリットポンプからの油は第1アンロード弁からタンクへ排出される。これにより、操作されていない第1系統の圧損(エネルギーロス)を従来よりも低減することができる。
【0008】
また本発明において、前記第1補助アンロード弁は、パイロットポンプ圧を前記第1アンロード弁に出力するときに、前記第1絞りの上流側をタンクに接続することが好ましい。
【0009】
この構成によると、第1絞りからと並列に第1補助アンロード弁からも圧油をタンクへ戻すことができ、第1系統の圧損(エネルギーロス)をより低減することができる。
【0010】
さらに本発明において、前記第1アンロード弁が、前記第1方向切換弁の上流側に配置されていることが好ましい。
【0011】
この構成によると、第1方向切換弁を通る圧油の量が減少し、第1系統の圧損(エネルギーロス)をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧回路を示す回路図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図1のB部拡大図である。
【図4】スプリットポンプの吐出流量特性、およびアンロード弁の開口特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、油圧ショベルの油圧回路としての実施形態を以下に示している。図1は、本発明の一実施形態に係る油圧回路1を示す回路図である。図2は、図1のA部拡大図であり、図3は、図1のB部拡大図である。なお、本実施形態に係る油圧回路1は、油圧ショベル以外の建設機械にも適用することができる。
【0014】
図1に示すように、この油圧回路1が適用される油圧ショベルは、圧油の吐出流量を制御するレギュレータ52付きのスプリットポンプ51、ポンプ53、パイロットポンプ54、タンク55・59、バケット用油圧シリンダ56、ブーム用油圧シリンダ57、油圧シリンダ58、ドーザ用油圧シリンダ60、走行用油圧モータ(不図示)などを備えている。そして、これら油圧シリンダ(56〜58、60)・走行用油圧モータなどのアクチュエータ、ポンプ(51、53、54)、およびレギュレータ52に対して油圧回路1が組まれている。
【0015】
スプリットポンプ51は、可変容量型の1シリンダ2ポート吐出のポンプであり、2つの吐出口51a、51bから同一流量の圧油を吐出する。
【0016】
(油圧回路の構成)
(アンロード通路)
図1〜3に示すように、油圧回路1は、スプリットポンプ51の一方の吐出口51aに接続された第1アンロード通路12と、スプリットポンプ51の他方の吐出口51bに接続された第2アンロード通路13とを備えている。第1アンロード通路12および第2アンロード通路13は、いずれもタンク55に連通している。第1アンロード通路12は第1系統のアンロード通路であり、第2アンロード通路13は第2系統のアンロード通路である。また、油圧回路1は、ポンプ53に接続された第3系統の第3アンロード通路29も備えている。この第3アンロード通路29もタンク55に連通している。
【0017】
(方向切換弁)
油圧回路1は、第1アンロード通路12に直列接続された第1系統の4つの第1方向切換弁4w〜4zと、第2アンロード通路13に直列接続された第2系統の3つの第2方向切換弁5w〜5yとを備えている。第1方向切換弁4w〜4zおよび第2方向切換弁5w〜5yは、すべて、センターバイパス型であってかつ油圧パイロット型の方向切換弁である。なお、油圧回路1は、第3アンロード通路29に直列接続された第3系統の3つの第3方向切換弁6w〜6yも備えている。
【0018】
例えば、第1方向切換弁4xは、ブーム用油圧シリンダ57に圧油を給排する弁であり、第2方向切換弁5yは、油圧シリンダ58に圧油を給排する弁であり、第3方向切換弁6xは、ドーザ用油圧シリンダ60に圧油を給排する弁である。
【0019】
ここで、第1方向切換弁4w〜4zのうち、最下流側の第1方向切換弁4zとタンク55との間の第1アンロード通路12には、第1系統の第1絞り10が設けられている。同様に、第2方向切換弁5w〜5yのうち、最下流側の第2方向切換弁5yとタンク55との間の第2アンロード通路13には、第2系統の第2絞り11が設けられている。
【0020】
また、第1系統および第2系統のすべての方向切換弁4w〜5yに対して、それぞれサブバルブ17w〜18yが一体的に設けられている。サブバルブ17w〜18yはセンターバイパス型のバルブである。また、第1パイロット通路24、第2パイロット通路25、および第3パイロット通路26に下流側で分岐するパイロット通路20がパイロットポンプ54に接続されている。第1系統の4つのサブバルブ17w〜17zは、このうちの第1パイロット通路24に直列接続され、第2系統の3つのサブバルブ18w〜18yは、第2パイロット通路25に直列接続されている。サブバルブ17w〜18yは、対応する方向切換弁4w〜5yが中立位置のとき(操作されていないとき)に連通位置となり、方向切換弁4w〜5yが切換位置のとき(操作されているとき)に遮断位置となるように形成されている。
【0021】
なお、サブバルブ17zの上流側の第1パイロット通路24には第1パイロットライン絞り19が設けられ、サブバルブ18yの上流側の第2パイロット通路25には第2パイロットライン絞り30が設けられている。なお、第3パイロット通路26に関してもサブバルブに至る前に絞りが設けられており、第1パイロット通路24、第2パイロット通路25、および第3パイロット通路26は、いずれもタンク55に連通している。
【0022】
(低圧選択弁)
また、油圧回路1は、第1絞り10の上流側の油圧である第1ネガコン圧および第2絞り11の上流側の油圧である第2ネガコン圧のうちの低い方の油圧を第3ネガコン圧としてレギュレータ52に出力する低圧選択弁9を備えている。ここで、低圧選択弁9の一方の室91には、後述する第1補助アンロード弁の出力(第1ネガコン圧または第1パイロット通路24からのパイロットポンプ圧)が入力され、低圧選択弁9の他方の室92には、後述する第2補助アンロード弁の出力(第2ネガコン圧または第2パイロット通路25からのパイロットポンプ圧)が入力されている。
【0023】
また、低圧選択弁9とレギュレータ52とを接続するレギュレータ用パイロット通路15が設けられている。このレギュレータ用パイロット通路15により、低圧選択弁9から出力される第3ネガコン圧がレギュレータ52に入力される。
【0024】
(補助アンロード弁)
また、油圧回路1は、最下流側の第1方向切換弁4z(第1絞り10の上流側)と低圧選択弁9との間に配置された第1補助アンロード弁7と、最下流側の第2方向切換弁5y(第2絞り11の上流側)と低圧選択弁9との間に配置された第2補助アンロード弁8とを備えている。なお、第1系統の第1補助アンロード弁7の構成と第2系統の第2補助アンロード弁8の構成とは、相互に系統が異なることを除いて同じである。以下に記載する第1補助アンロード弁7の説明において、「第1」を「第2」に置き換えることにより、第2補助アンロード弁8の構成は説明される。
【0025】
第1補助アンロード弁7は、第1絞り10の上流側の油圧である第1ネガコン圧および第1パイロット通路24からのパイロットポンプ圧が入力され、第1系統のすべての第1方向切換弁4w〜4zが操作されていないときに当該第1ネガコン圧に替わって当該パイロットポンプ圧を出力するように構成された弁である。
【0026】
ここで、第1補助アンロード弁7は、パイロットポンプ圧出力位置7aと第1ネガコン圧出力位置7bとを備えている。パイロットポンプ圧出力位置7aは、第1パイロットライン絞り19の上流側の第1パイロット通路24と、低圧選択弁9および第1アンロード弁2に接続するパイロット通路14とが連通するとともに、第1絞り10の上流側の第1アンロード通路12とタンク55とが連通する位置である。また、第1ネガコン圧出力位置7bは、第1絞り10の上流側の第1アンロード通路12とパイロット通路14とが連通する位置である。
【0027】
第1補助アンロード弁7の一方の室73には、第1パイロットライン絞り19とサブバルブ17zとの間の圧力が入力され、第1補助アンロード弁7の他方の室71には、バネ72(付勢手段)が配置されるとともに、第1絞り10の下流側の圧力が入力されている。第1補助アンロード弁7は、他方の室71に配置されたバネ72により、パイロットポンプ圧出力位置7aになり、第1方向切換弁4w〜4zに連動してサブバルブ17w〜17zが遮断位置になってパイロットポンプ54からのパイロットポンプ圧が一方の室73に導入されたときに、バネ72の付勢力に抗して第1ネガコン圧出力位置7bに切り換わる。
【0028】
(アンロード弁)
また、油圧回路1は、第1補助アンロード弁7の出力および第3ネガコン圧に応じてスプリットポンプ51からの油をタンク59へ排出する第1アンロード弁2と、第2補助アンロード弁8の出力および第3ネガコン圧に応じてスプリットポンプ51からの油をタンク59へ排出する第2アンロード弁3とを備えている。なお、第1系統の第1アンロード弁2の構成と第2系統の第2アンロード弁3の構成とは、相互に系統が異なることを除いて同じである。以下に記載する第1アンロード弁2の説明において、「第1」を「第2」に置き換えることにより、第2アンロード弁3の構成は説明される。
【0029】
第1アンロード弁2の上流側通路27は、第1方向切換弁4wの上流側の第1アンロード通路12に接続され、第1アンロード弁2の下流側通路28はタンク59に連通している。
【0030】
ここで、第1アンロード弁2は、遮断位置2bと連通位置2aとを備え、当該第1アンロード弁2の一方の室21には第1補助アンロード弁7の出力(第1ネガコン圧またはパイロットポンプ54からのパイロットポンプ圧)が入力され、当該第1アンロード弁2の他方の室22には第3ネガコン圧が入力されるとともにバネ23(付勢手段)が配置されている。当該第3ネガコン圧とバネ23の押圧との和よりも第1補助アンロード弁7の出力圧が高いときに連通位置2aとなる。ここで、連通位置2aとなった状態とは、第1アンロード弁2の開口面積がゼロではない状態のことをいい、すなわち、弁の開口面積が最大となっている状態だけをいうものではない。なお、第1アンロード弁2の他方の室22には、レギュレータ用パイロット通路15から分岐するパイロット通路16を介して低圧選択弁9から第3ネガコン圧が入力されている。
【0031】
(アンロードフロコン弁)
また、油圧回路1は、第1アンロード弁2とタンク59との間の当該第1アンロード弁2の下流側通路28に設けられた第1アンロードフロコン弁31を備えている。第1アンロードフロコン弁31は、遮断位置と連通位置とを備え、一方の室33に第1アンロード弁2下流側の圧が入力されるとともにバネ35(付勢手段)が配置され、他方の室34に第1方向切換弁4wよりも上流側の第1アンロード通路12の圧(第1アンロード弁2上流側の圧)が入力されている。同様に、油圧回路1は、第2アンロード弁3とタンク59との間の当該第2アンロード弁3の下流側通路に設けられた第2アンロードフロコン弁32を備えている。
【0032】
(油圧ショベルの作動)
ここでは、まず、スプリットポンプ51およびアンロード弁2,3の特性について説明する。図4は、スプリットポンプ51の吐出流量特性、およびアンロード弁2,3の開口特性を示すグラフである。
【0033】
図4(a)にスプリットポンプ51の吐出流量特性を示すように、スプリットポンプ51の吐出流量は、レギュレータ52により調整され、ネガコン圧力が0〜Pfのとき最大流量Qmaxとなり、ネガコン圧力がPf〜Psのときネガコン圧力の増加に比例して下がり、ネガコン圧力がPs以上のとき最小流量Qminとなる。なお、Pf<Psである。また、Pfは、スプリットポンプ51の吐出流量が最大(Qmax)となるときの最大のネガコン圧であり、Psは、スプリットポンプ51の吐出流量が最小(Qmin)となるときの最小のネガコン圧である。また、スプリットポンプ51の吐出流量とは、2つの吐出口51a、51bのうちの一方から吐出される吐出流量のことをいうこととする。
【0034】
図4(b)にアンロード弁2,3の開口特性を実線で示すように、アンロード弁2,3の開口面積は、ネガコン差圧が0のとき0(遮断位置2b)となり、ネガコン差圧が0〜(Ps−Pf)のときネガコン差圧の増加に比例して大きくなり(アンロード弁ストローク中間位置(連通位置))、ネガコン差圧がPs−Pf以上のとき最大開口面積(アンロード弁ストローク最大位置(連通位置))となる。なお、アンロード弁2,3の開口面積が大きくなるほど、アンロード弁2,3を流れる油量は増加する。
【0035】
なお、図4(b)に示した例では、アンロード弁2,3の開口特性を線形としているが、アンロード弁2,3の製作上の都合やオペレータの好みにより、アンロード弁2,3の開口特性を非線形としてもよい。例えば、図4(b)に一点鎖線で示したように、開口特性を凹形状とすることで、複合操作時の供給流量が増し、追加複合操作時のみ圧力を高めることができ、その結果、操作の力強さが増す。また、図4(b)に二点鎖線で示したように、開口特性を凸形状とすることで操作のソフト感が増す。
【0036】
次に、油圧ショベルの作動(油圧回路1の作動)について図1〜3を参照しつつ説明する。まず、第1系統および第2系統のすべての方向切換弁4w〜5yが操作されていない状態を仮定する。このとき、サブバルブ17w〜18yは、すべて連通位置となっているので、第1パイロット通路24および第2パイロット通路25を流れるパイロットポンプ圧油はタンク55に排出される。そのため、補助アンロード弁7,8は、バネ(72)の付勢力により、いずれもパイロットポンプ圧出力位置(7a)となっている。これにより、補助アンロード弁7,8からの出力は、パイロットポンプ54からのパイロットポンプ圧となる。その結果、低圧選択弁9からレギュレータ52に圧力の高い(>Ps)パイロットポンプ圧が導入され、スプリットポンプ51の吐出口51aおよび吐出口51bからの吐出流量はいずれも最小(Qmin)となる(図4(a)参照)。
【0037】
この状態から例えば、第2方向切換弁5wのみを操作してアクチュエータを動作させたとする。このとき、サブバルブ18wが遮断位置となり、これにより第2パイロット通路25を流れるパイロットポンプ圧油が第2補助アンロード弁8の一方の室に導入されて第2補助アンロード弁8は第2ネガコン圧出力位置に切り換わる。その結果、第2アンロード弁3および低圧選択弁9へ第2ネガコン圧が出力されて、低圧選択弁9からレギュレータ52に第2ネガコン圧が導入される。これにより、スプリットポンプ51の吐出口51aおよび吐出口51bからの吐出流量は、いずれも第2系統の必要流量まで増加する。
【0038】
一方、第1系統の方向切換弁4w〜4zは操作されていないので、対応するサブバルブ17w〜17zは、すべて連通位置のままであり、第1補助アンロード弁7は、パイロットポンプ圧出力位置7aの状態を維持する。結果、第1アンロード弁2の一方の室21にはパイロットポンプ54からのパイロットポンプ圧が導入され、他方の室22には、第2補助アンロード弁8を介して第2ネガコン圧が導入される。パイロットポンプ54からのパイロットポンプ圧は高いので、このパイロットポンプ圧により、第1アンロード弁2の開口面積は、最大開口面積(アンロード弁ストローク最大位置)となり、第1系統の圧油は第1アンロード弁2からタンク59へ排出される。なお、一般的に、ネガコン圧は3MPaよりも低い圧に設定され、パイロットポンプ54からのパイロットポンプ圧は3MPa以上に設定される。バネ23の付勢力とネガコン圧との和よりも高い圧力にパイロットポンプ圧は設定される。
【0039】
このように、本実施形態の油圧回路1によると、第1系統のすべての第1方向切換弁4w〜4zが操作されていないときは、第2系統の第2方向切換弁が操作されていたとしても、第1補助アンロード弁7から出力されるパイロットポンプ圧により、第1アンロード通路12を流れようとするスプリットポンプ51からの油は第1アンロード弁2からタンク59へ排出される。その結果、操作されていない第1系統の圧損(エネルギーロス)を従来よりも低減することができる。
【0040】
また、第1補助アンロード弁7がパイロットポンプ圧出力位置7aにあるときは、パイロットポンプ圧を第1アンロード弁2に出力するとともに、第1絞り10の上流側をタンク55に接続しているので、第1絞り10からと並列に第1補助アンロード弁7からも第1アンロード通路12の圧油をタンク55へ戻すことができ、第1系統の圧損(エネルギーロス)をより低減することができる。
【0041】
さらには、最上流側に位置する第1方向切換弁4wよりも上流に第1アンロード弁2が配置されているので、第1方向切換弁4w〜4zを通る圧油の量が減少し、第1系統の圧損(エネルギーロス)をより低減することができている。
【0042】
なお、第1アンロード弁2の配置位置は、第1絞り10の上流側であればよく、必ずしも第1方向切換弁4wの上流側である必要はない(第2アンロード弁3についても同様)。
【0043】
第1系統の方向切換弁4w〜4z、および第2系統の方向切換弁5w〜5yが、いずれも操作され、第2系統の必要流量が第1系統の必要流量よりも多い場合、第1アンロード弁2は、ネガコン差圧(第1ネガコン圧と第2ネガコン圧との差の絶対値)に応じたストローク量だけ、遮断位置2bから連通位置2aへ切り換わり(移動し)、ネガコン差圧に応じたアンロード弁開口面積となって(図4(b)参照)、第1系統の余剰の油(ネガコン差圧に応じた量の油)はタンク59へ排出される。
【0044】
第1アンロード弁2の下流側通路および第2アンロード弁3の下流側通路に、それぞれ、第1アンロードフロコン弁31および第2アンロードフロコン弁32を付加することで、アクチュエータの負荷圧力に関係なく、常にアンロード弁2,3の開口(方向切換弁の操作量)に見合った余剰流量の油をタンク59に逃がすことができ、操作性悪化を抑制できている。なお、アンロードフロコン弁31,32は必須の弁ではなく、省略してもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、油圧パイロット型の方向切換弁を採用した例を示したが、手動型の方向切換弁を採用してもよい。さらには、手動型の方向切換弁と油圧パイロット型の方向切換弁とを混在させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:油圧回路
2:第1アンロード弁
3:第2アンロード弁
4w、4x、4y、4z:第1方向切換弁
5w、5x、5y:第2方向切換弁
7:第1補助アンロード弁
8:第2補助アンロード弁
9:低圧選択弁
10:第1絞り
11:第2絞り
12:第1アンロード通路
13:第2アンロード通路
51:スプリットポンプ
52:レギュレータ
54:パイロットポンプ
55、59:タンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出流量を制御するレギュレータ付きのスプリットポンプの一方の吐出口に接続された第1系統の第1アンロード通路と、
前記第1アンロード通路に接続され、アクチュエータに油を給排する第1系統の第1方向切換弁と、
前記第1方向切換弁の下流側の前記第1アンロード通路に配置された第1系統の第1絞りと、
前記スプリットポンプの他方の吐出口に接続された第2系統の第2アンロード通路と、
前記第2アンロード通路に接続され、アクチュエータに油を給排する第2系統の第2方向切換弁と、
前記第2方向切換弁の下流側の前記第2アンロード通路に配置された第2系統の第2絞りと、
前記第1絞りの上流側の油圧である第1ネガコン圧および前記第2絞りの上流側の油圧である第2ネガコン圧のうちの低い方の油圧を第3ネガコン圧として前記レギュレータに出力する低圧選択弁と、
を備えた建設機械の油圧回路において、
前記第1絞りの上流側と前記低圧選択弁との間に配置され、前記第1ネガコン圧およびパイロットポンプ圧が入力され第1系統のすべての前記第1方向切換弁が操作されていないときに当該第1ネガコン圧に替わって当該パイロットポンプ圧を出力する第1補助アンロード弁と、
前記第1絞りの上流側に配置され、前記第1補助アンロード弁の出力および前記第3ネガコン圧に応じて前記スプリットポンプからの油をタンクへ排出する第1アンロード弁と、
を備えることを特徴とする、建設機械の油圧回路。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の油圧回路において、
前記第1補助アンロード弁は、パイロットポンプ圧を前記第1アンロード弁に出力するときに、前記第1絞りの上流側をタンクに接続することを特徴とする、建設機械の油圧回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の油圧回路において、
前記第1アンロード弁が、前記第1方向切換弁の上流側に配置されていることを特徴とする、建設機械の油圧回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−233551(P2012−233551A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104325(P2011−104325)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】