説明

建設機械の油圧駆動装置

【課題】圧力損失を低減できると共に、車体のジャッキアップ力などの大きな押し付け力を発生させることができる建設機械の油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】油圧ポンプと、該油圧ポンプから吐出される圧油が供給される複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の方向及び流量を制御する方向切換弁を備えたコントロールバルブグループとを有する建設機械の油圧駆動装置において、ブームシリンダのボトム側油室の圧油をロッド側油室へ導く再生流量制御弁手段と、ブーム下げ操作時に、油圧ポンプから前記ブームシリンダのロッド側油室への圧油流量を制御するメータイン回路を設けたブーム用方向切換弁と、ブームシリンダのボトム側油室の圧力を検出する圧力検出手段と、ブーム用方向切換弁と前記再生流量制御弁手段とを制御する制御装置とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧駆動装置に係り、更に詳しくは、建設機械に装設したブームの下げ動作時のエネルギー損失を改善するとともに、ブーム下げ動作による車体のジャッキアップも可能な建設機械の油圧駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械においては、土砂等の掘削、放土の作業時に、走行体上に装設した旋回体の旋回と旋回体に装設した多関節構造の作業機(フロント)を構成するブームの上げとを複合して動作させる複合操作、又は、旋回体の旋回とブームの下げとを複合して動作させる複合操作が、頻繁に行われている。
【0003】
上述した複合操作における良好な操作性を確保するとともに、エネルギーロスを十分に低減し、簡素化した油圧回路を備える建設機械の油圧駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−306470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の建設機械の油圧駆動装置を構成する油圧回路は、エネルギーロスを十分に低減すると共に、簡素化した構成となっていて、旋回とブーム上げ、又は旋回とブーム下げなどの複合操作において、良好な操作性を確保することができる。しかし、以下の事項については、更なる改善が望まれている。
(1)ブーム下げ操作時において、ブームの空中移動時には、フロントの自重が作用するが、上述した従来の油圧回路は、ブーム下げ操作時には、フロントの自重に抗して油圧ポンプからの圧油を常時ブームシリンダのピストンロッド側油室に供給することになるので、油圧ポンプからブームシリンダまでの管路内での圧力損失によるエネルギー損失が発生する。
(2)また、シリンダ圧力が低いブーム下げ動作と、アームやバケットの動作との複合動作の際には、油圧ポンプから吐出される圧油がブームシリンダのロッド側油室に供給されるので、アームやバケットを駆動するためのシリンダへの圧油の供給量が、相対的に減少してしまい、エネルギー効率が悪いという不都合もある。
(3)更には、建設機械の稼働時に、建設機械を沼地から脱出させる場合や、急勾配を下がりながら走行する場合等の対応が可能なように、ブームシリンダのピストンロッド側油室に圧油を供給し、ブームを下げて、バケット先端を地上に押し付けて、車体の一部を浮き上がらせる(ジャッキアップ)動作を実現させるジャッキアップ力が要求されている。
【0006】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、上述した従来の建設機械の油圧駆動装置における油圧回路の構成を踏襲しつつ、ブーム下げ動作、及びブーム下げ動作とアームやバケットの動作との複合動作時に生じる圧力損失を低減しエネルギー効率を向上できると共に、車体のジャッキアップ力などの大きな押し付け力を発生させることができる建設機械の油圧駆動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、下部走行体と、この下部走行体の上部に旋回可能に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体に回動可能に接続されたブームを含む複数の被駆動部材を備えた建設機械に設けられ、少なくとも2つの油圧ポンプと、該油圧ポンプから吐出される圧油が供給され対応する前記被駆動部材をそれぞれ駆動するブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の方向及び流量を制御する少なくとも1つの方向切換弁をそれぞれ備えた少なくとも2つのコントロールバルブグループとを有する建設機械の油圧駆動装置において、前記ブームシリンダのボトム側油室の圧油をロッド側油室へ導く再生流量制御弁手段と、ブーム下げ操作時に、前記油圧ポンプから前記ブームシリンダのロッド側油室への圧油流量を制御するメータイン回路を設けた少なくとも1つのコントロールバルブグループのブーム用方向切換弁と、前記ブームシリンダのボトム側油室の圧油の圧力を検出する圧力検出手段と、前記ブーム用方向切換弁と前記再生流量制御弁手段とを制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御装置は、ジャッキアップ動作時の前記ブームシリンダのボトム側油室の圧油の圧力を閾値として記憶した記憶部と、前記圧力検出手段からの圧力値を取込み、この圧力値と前記記憶部に記憶した閾値とを比較し、前記圧力値が前記閾値以上の場合には、前記再生流量制御弁手段のみを制御し、前記圧力値が前記閾値未満の場合には、さらに前記メータイン回路を有効にするために前記ブーム用方向切換弁を切換え制御する演算部とを備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ブーム用方向切換弁は、アームシリンダのボトム側油室に圧油を供給するように該ボトム側油室に接続可能なアームクラウド用切換位置をさらに備えたブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁であることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記再生流量制御弁手段は、ブームシリンダのボトム側油室とロッド側油室とを接続する再生管路の圧油の流量を制御可能とする再生流量制御弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の建設機械の油圧駆動装置によれば、従来の建設機械の油圧駆動装置における同様な弁グループと、方向切換え弁との構成を踏襲して、ブーム下げ動作、及びブーム下げ動作とアームやバケットの動作との複合動作時に生じる圧力損失を低減しエネルギー効率を向上できると共に、車体のジャッキアップ力などの大きな押し付け力を発生させることができる。この結果、建設機械の作業機の複合操作の良好性が更に向上し、建設機械の生産性を更に高めることができるとともに、建設機械を沼地から脱出させる場合や、急勾配を下がりながら走行する場合等の対応が可能となり、機能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態が適用される油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態の構成を示す油圧回路図である。
【図3】本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態を構成する制御装置の制御機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の建設機械の油圧駆動装置の第2の実施の形態の構成を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の建設機械の油圧駆動装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態を、図1乃至図3を用いて説明する。図1は本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態が適用される油圧ショベルを示す側面図、図2は本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態の構成を表す油圧回路図、図3は本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態を構成する制御装置の制御機能を示す機能ブロック図である。
【0015】
図1において、建設機械である油圧ショベルとして、いわゆるローダタイプの大型油圧ショベルを示している。この油圧ショベルは、下部走行体55と、この下部走行体55の上部に旋回台軸受け57を介して旋回可能に設けた上部旋回体56と、この上部旋回体56に俯仰動可能に連結された多関節型のフロント作業機58とを備えている。多関節型のフロント作業機58に備えられたバケット52が接地状態で開口部が前方側へ向くように配置され、バケット開閉シリンダ4がバケット52に図示するように装設されている。また、ブームシリンダ1、バケットシリンダ2、アームシリンダ3、及びバケット開閉シリンダ4がそれぞれ伸長(又は縮短)動作によりブーム上げ(又はブーム下げ)、アーム押し(又はアーム引き)、バケットクラウド(又はバケットダンプ)、バケット閉止(又はバケット開放)を行うようになっている。
【0016】
次に、上述した油圧ショベルに適用する本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態の構成を示す油圧回路図を説明する。
図2において、この油圧駆動装置は、図示しないエンジンによって駆動される3つの油圧ポンプ8,9,10と、これら油圧ポンプ8〜10から吐出される圧油が供給され、ブーム51、バケット52、及びアーム53をそれぞれ駆動するブームシリンダ1、バケットシリンダ2、アームシリンダ3を含む7個の油圧アクチュエータ1〜7と、油圧ポンプ8〜10からそれぞれ油圧アクチュエータ1〜7に供給される圧油の方向及び流量を制御する12個の方向切換弁11−1〜13−4とを有している。
【0017】
油圧アクチュエータ1〜7は、上記ブームシリンダ1、バケットシリンダ2、及びアームシリンダ3のほかに、油圧ショベルの下部走行体55を駆動する左右の走行モータ6,7と、下部走行体55に対して上部旋回体56を旋回させる旋回モータ5と、バケット52を開閉動作させる開閉シリンダ4とを含んでいる。
【0018】
方向切換弁11−1〜13−4は、いずれもセンタバイパス型の切換弁であり、第1弁グループ11、第2弁グループ12、及び第3弁グループ13の3つの弁グループに分かれている。第1弁グループ11は、油圧アクチュエータ1〜7のうち左走行モータ7にのみ接続される左走行用方向切換弁11−1、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aとバケットシリンダ2のボトム側油室2Aに接続されるブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2、開閉シリンダ4にのみ接続される開閉用方向切換弁11−3、及びアームシリンダ3にのみ接続される第1アーム用方向切換弁11−4から構成されている。第2弁グループ12は、油圧アクチュエータ1〜7のうち右走行モータ6にのみ接続される右走行用方向切換弁12−1、アームシリンダ3にのみ接続される第2アーム用方向切換弁12−2、ブームシリンダ1にのみ接続される第1ブーム用方向切換弁12−3、及びバケットシリンダ2にのみ接続される第2バケット用方向切換弁12−4から構成されている。第3弁グループ13は、油圧アクチュエータ1〜7のうち旋回モータ5にのみ接続される旋回用方向切換弁13−1、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aにのみ接続される第2ブーム用方向切換弁13−2、ブームシリンダ1のロッド側油室1Bとアームシリンダ3のボトム側油室3Aに接続されるブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3、及びバケットシリンダ2にのみ接続される第3バケット用方向切換弁13−4から構成されている。
【0019】
ブームシリンダ1のボトム側油室1Aと、ブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2,第1ブーム用方向切換弁12−3,第2ブーム用方向切換弁13−2とは、主油管101で接続されており、ブームシリンダ1のロッド側油室1Bと、第1ブーム用方向切換弁12−3,ブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3とは、主油管102で接続されている。また、バケットシリンダ2のボトム側油室2Aと、ブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2,第2バケット用方向切換弁12−4,第3バケット用方向切換弁13−4とは、主油管201で接続されており、バケットシリンダ2のロッド側油室2Bと、第2バケット用方向切換弁12−4,第3バケット用方向切換弁13−4とは、主油管202で接続されている。さらに、アームシリンダ3のボトム側油室3Aと、第1アーム用方向切換弁11−4,第2アーム用方向切換弁12−2,ブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3とは、主油管301で接続されており、アームシリンダ3のロッド側油室3Bと、第1アーム用方向切換弁11−4,第2アーム用方向切換弁12−2とは、主油管302で接続されている。また、バケット開閉シリンダ4のボトム側油室4Aと、開閉用方向切換弁11−3とは、主油管401で接続されており、バケット開閉シリンダ4のロッド側油室4Bと、開閉用方向切換弁11−3とは、主油管402で接続されている。
【0020】
油圧ポンプ8〜10は、図示しないエンジンでそれぞれ駆動される可変容量型ポンプであり、第1弁グループ11への圧油を吐出する第1油圧ポンプ8と、第2弁グループ12への圧油を吐出する第2油圧ポンプ9と、第3弁グループ13への圧油を吐出する第3油圧ポンプ10とから構成されている。この第1弁グループ11においては、左走行用切換弁11−1が、他のブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2、開閉用方向切換弁11−3、及び第1アーム用方向切換弁11−4よりも優先的に第1油圧ポンプ8からの圧油を左走行用モータ7に供給するようにタンデムに接続されており、ブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2、開閉用方向切換弁11−3、及び第1アーム用方向切換弁11−4は互いにパラレルに接続されている。また、第2弁グループ12においては、右走行用切換弁12−1が、他の第2アーム用方向切換弁12−2、第1ブーム用方向切換弁12−3、及び第2バケット用方向切換弁12−4よりも優先的に第2油圧ポンプ9からの圧油を右走行用モータ6に供給するようにタンデムに接続されており、第2アーム用方向切換弁12−2、第1ブーム用方向切換弁12−3、及び第2バケット用方向切換弁12−4は互いにパラレルに接続されている。さらに、第3弁グループ13においては、旋回用方向切換弁13−1及び第2ブーム用方向切換弁13−2は、ブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3及び第3バケット用方向切換弁13−4よりも優先的に第3油圧ポンプ10の圧油を旋回モータ5及びブームシリンダ1のボトム側油室に供給できるようにタンデムに接続されている。また、旋回用方向切換弁13−1と第2ブーム用方向切換弁13−2とは、互いにパラレルに接続されており、ブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3と第3バケット用方向切換弁13−4も互いにパラレルに接続されている。
【0021】
ブームシリンダ1のボトム側油室1Aに接続された上記主管路101とロッド側油室1Bに接続された上記主管路102とが、再生管路110によって接続されており、この再生管路110に、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aからロッド側油室1Bへの圧油の流れを所望の絞り量に制御する可変絞り111を備えた、例えば電磁比例弁からなるブーム用再生流量制御弁18が設けられている。このブーム用再生流量制御弁18よりロッド側油室1B側には、ボトム側油室1Aからロッド側油室1Bへの圧油の流れを許容すると共にその逆の流れを遮断する逆止弁112が設けられている。これにより、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧油をロッド側油室1Bへ導くようになっている。また、このブーム用再生流量制御弁18よりボトム側油室1A側には、ボトム側油室1Aにおける圧油の圧力を検出する圧力センサ19が設けられている。この圧力センサ19は検出した圧油の圧力信号を、上記油圧駆動装置の制御装置としてのコントローラ15に出力する。
【0022】
また、図2に示す油圧駆動装置はさらに、被駆動部材であるブーム51、バケット52、アーム53、下部走行体55、及び上部走行体56の動作を指示するために油圧アクチュエータ1〜5のそれぞれに対応して設けられた操作手段として、ブーム用操作レバー装置14を含む複数の操作レバー装置を備えている(但しブーム用操作レバー装置14以外は図示省略)。ブーム用操作レバー装置14は、操作レバーの操作量と操作方向に応じた電圧信号を操作信号としてコントローラ15に出力する。
【0023】
コントローラ15は、このブーム用操作レバー装置14からの操作信号を入力し、ブーム上げ用電磁比例弁16,ブーム下げ用電磁比例弁17,ブーム用再生流量制御弁18,及びジャッキアップ用電磁比例弁20に対して、後述する演算部で算出した電流信号を出力する。この電流信号が印加された電磁比例弁16,17,20の一次ポート側は、詳細は図示しないが、油圧源、例えばパイロットポンプにそれぞれ接続されていて、2次ポート側に電流信号に比例したパイロット圧力を発生させることを可能にしている。このパイロット圧力が、パイロットライン160,170,200を介して後述するそれぞれの切換弁をストロークさせる。また、電磁比例弁18は、電流に比例してストロークし、可変絞り111の絞り量を調整する。
【0024】
ブーム上げ用電磁比例弁16の2次ポート側は、パイロットライン160を介して、対応するブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2,第1ブーム用方向切換弁12−3,第2ブーム用方向切換弁13−2の各駆動部11−2a,12−3b,13−2aに接続されており、ブーム下げ用電磁比例弁17の2次ポート側は、パイロットライン170を介して、対応する第1ブーム用方向切換弁12−3,第2ブーム用方向切換弁13−2の各駆動部12−3a,13−2bに接続されており、ジャッキアップ用電磁比例弁20の2次ポート側は、パイロットライン200を介して、対応するブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3の駆動部13−3bに接続されている。これにより、操作レバー装置14からの操作信号によって、対応する方向切換弁であるブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2,第1ブーム用方向切換弁12−3,第2ブーム用方向切換弁13−2,ブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3が切り換えられ、第1〜3油圧ポンプ8〜10からブームシリンダ1に供給される圧油の方向及び流量を制御するようになっている。
【0025】
図3は、このコントローラ15の制御機能を示す機能ブロック図であって、入力信号である操作レバー装置14の操作信号、及び圧力センサ19の圧力検出信号に対する、ブーム上げ用電磁比例弁16,ブーム下げ用電磁比例弁17,ブーム用再生流量制御弁18,及びジャッキアップ用電磁比例弁20への駆動信号の制御機能を示す。この図3において、コントローラ15は、ブーム下げ用電磁比例弁17とジャッキアップ用電磁比例弁20の駆動信号演算器15dと、ブーム用再生流量制御弁18の駆動信号演算器15eと、ブーム上げ用電磁比例弁16の駆動信号演算器15fと、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧油の圧力Pbと、ジャッキアップ動作時のブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧油の圧力である圧力閾値Pboとの大小比較判断を実施する比較判断部15gと、比較判断部15gの出力によって、駆動信号演算器15dの出力Pi17またはゼロ信号を出力する信号切換部15hと、出力圧が急変しないように例えば1次遅れ要素からなるフィルタ部15iとを備える演算部を有している。
【0026】
また、コントローラ15は、圧力センサ19の出力電圧をブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧油の圧力Pbに変換する入力部15aと、ブーム用操作レバー装置14の一方の出力電圧をブーム下げレバー操作量に変換する入力部15bと、ブーム用操作レバー装置14の他方の出力電圧をブーム上げレバー操作量に変換する入力部15cとを備える入力変換部を有している。
【0027】
更に、コントローラ15は、フィルタ部15iからの目標パイロット圧に応じてジャッキアップ用電磁比例弁20を駆動する駆動部15jと、駆動信号演算器15dの出力である目標パイロット圧Pi17に応じてブーム下げ用電磁比例弁17を駆動する駆動部15kと、駆動信号演算器15eの出力である目標電流i18に応じてブーム用再生流量制御弁18を駆動する駆動部15mと、駆動信号演算器15fの出力である目標パイロット圧Pi16に応じてブーム上げ用電磁比例弁16を駆動する駆動部15nとを備える出力部を有している。
【0028】
なお、各駆動信号演算器15d,15e,15fにおけるレバー操作量に対する動作パターン(レバー操作量に対する目標パイロット圧Pi17,Pi16,i18を決めたもの)や、比較判断部15gにおける圧力閾値Pboは、図3中に示すようなテーブルとしてそれぞれコントローラ15の記憶部に予め記憶されている。これらの動作テーブルは、対応するアクチュエータの特性に応じて操作量信号に対し操作者にとって最適なアクチュエータ動作特性となるように、操作量−駆動信号特性がそれぞれ設定されている。
【0029】
すなわち、ブーム下げ用駆動信号演算器15dは、ブーム用操作レバー装置14からのブーム下げレバー操作量を入力し、図示テーブルに基づいてブーム下げ用電磁比例弁17,ジャッキアップ用電磁比例弁20への制御信号である目標パイロット圧(各電磁比例弁への駆動信号)Pi17を算出し出力する。ブーム下げ用電磁比例弁17については、駆動部15kを介して駆動信号が出力される。
【0030】
一方、ジャッキアップ用電磁比例弁20については、まず、演算部の比較判断部15gにおいて、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧油の圧力値Pbと、記憶部に記憶した圧力閾値Pboとを比較し、圧力値Pbが圧力閾値Pbo未満の場合には、信号切換部15hの出力Pi20として上述した目標パイロット圧Pi17の値が選択され、フィルタ部15i及び駆動部15kを介して目標パイロット圧Pi17の駆動信号が出力される。圧力値Pbが圧力閾値Pbo以上の場合には、信号切換部15hの出力Pi20としてゼロ信号が選択出力され、ジャッキアップ用電磁比例弁20は駆動しないため、2次ポート側のパイロット圧力は発生しない。
【0031】
また、ブーム再生用駆動信号演算器15eは、ブーム用操作レバー装置14からのブーム下げレバー操作量を入力し、図示テーブルに基づいてブーム用再生流量制御弁18への制御信号である目標電流(電磁比例弁への駆動信号)i18を算出し、駆動部15mを介して駆動信号が出力される。
【0032】
さらに、ブーム上げ用駆動信号演算器15fは、ブーム用操作レバー装置14からのブーム上げレバー操作量を入力し、図示テーブルに基づいてブーム上げ用電磁比例弁16への制御信号である目標パイロット圧(電磁比例弁への駆動信号)Pi16を算出し、駆動部15nを介して駆動信号が出力される。
【0033】
つまり、本実施の形態の大きな特徴として、コントローラ15は、ジャッキアップ動作時の前記ブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧油の圧力を閾値Pboとして記憶し、圧力センサ19からの圧力値Pbとを比較し、前記圧力値Pbが前記閾値Pbo以上の場合には、再生流量制御弁18のみを制御し、前記圧力値Pbが前記閾値Pbo未満の場合には、さらにメータイン回路を有効にするためにジャッキアップ用電磁比例弁20を制御して、ブーム用方向切換弁13−3を切換え制御するように構成されている。
【0034】
なお、図2に示す本実施の形態において、コントローラ15の入出力については、説明の都合上ブームシリンダ1についてのみ表示し、他の油圧アクチュエータにおける操作レバー装置と電磁比例弁については記載を省略している。
【0035】
次に、上記構成による本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態の動作について、説明する。
【0036】
(1)ブーム上げ動作
まず、ブーム上げ操作の場合は、ブーム用操作レバー装置14の操作レバーをブーム上げ側に操作すると、レバー操作量に応じた電圧信号がコントローラ15に入力される。コントローラ15は電圧信号に応じた電流信号をブーム上げ用電磁比例弁16に出力する。ブーム上げ用電磁比例弁16は、電流に比例したパイロット圧力を発生させ、このパイロット圧力が、ブーム上げ側のパイロットライン160に接続されたブーム上げ・バケットクラウド用方向切換弁11−2の駆動部11−2a,第1ブーム用方向切換弁12−3の駆動部12−3b,及び第2ブーム用方向切換弁13−2の駆動部13−2aに導かれてこれら方向切換弁11−2,12−3,13−2をブーム上げ側の切換位置にそれぞれ切り換える。
【0037】
そして、第1〜第3油圧ポンプ8〜10の圧油がこれら3つの切換弁を介してブームシリンダ1のボトム側油室1Aに流入する。このときロッド側油室1Bからの戻り油は、この油室1Bに接続されている第1ブーム用方向切換弁12−3の切換位置を介してタンクへ排出される。これによってブーム51が上昇する。
【0038】
(2)空中動作でのブーム下げ動作
次に、ブーム下げ操作の場合は、ブーム用操作レバー装置14の操作レバーをブーム下げ側に操作すると、レバー操作量に応じた電圧信号がコントローラ15に入力される。コントローラ15は電圧信号に応じた電流信号をブーム下げ用電磁比例弁17とブーム用再生流量制御弁18に出力する。電磁比例弁17は、電流に比例したパイロット圧力を発生させ、このパイロット圧力が、ブーム下げ側のパイロットライン170に接続された第1ブーム用方向切換弁12−3の駆動部12−3a,及び第2ブーム用方向切換弁13−2の駆動部13−2bに導かれてこれら方向切換弁12−3,13−2をブーム下げ側の切換位置にそれぞれ切り換える。
【0039】
この結果、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aに封じ込められていた圧油は、第1ブーム用方向切換弁12−3及び第2ブーム用方向切換弁13−2を介してタンクに戻る。また、ブーム用再生流量制御弁18は、電流に比例してストロークし、可変絞り111の絞り量を開き側に駆動する。このとき、ブーム51の自重によってブームシリンダ1のボトム側油室1Aには保持圧力が発生していることから、上記ブーム用再生流量制御弁18の可変絞り111が開くことによって、ボトム側油室1Aからの圧油の流出流量の一部は、ブーム用再生流量制御弁18及び逆止弁112を通ってロッド側油室1Bへ導入される(環流される)。
【0040】
なお、上述したように、空中動作でのブーム下げ動作の場合、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aには、保持圧力が発生している。コントローラ15は、ボトム側油室1Aの圧力を圧力センサ19で検出し、検出圧力が所定の圧力Pbo以上の場合には、ジャッキアップ用電磁比例弁20に電流を出力しない。よって、ブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3は中立のままとなり、ブームシリンダ1のロッド側油室1Bには第3油圧ポンプ10からの圧油は供給されない。
【0041】
(3)ジャッキアップ動作
さらに、ブーム51を下げ続け、例えば地面にバケット52が接触するようになると、フロントアタッチメントに押し付け力が作用するようになる。このとき、ブームシリンダ1には引張力が作用するため、ボトム側油室1Aの圧油の圧力は、低下する。つまり、上述したブーム下げ操作に加えて、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧力を検出し、ジャッキアップであると判断した場合には、上述した(2)と異なる動作が行われる。具体的には、ボトム側油室1Aの圧力を圧力センサ19で検出し、検出圧力が所定の圧力Pbo未満の場合であって、ブーム用操作レバー装置14の操作レバーのブーム下げ電圧信号がコントローラ15に入力された場合には、コントローラ15は、電圧信号に応じた電流信号をブーム下げ用電磁比例弁17とブーム用再生流量制御弁18と共に、ジャッキアップ用電磁比例弁20に出力する。ブーム下げ用電磁比例弁17とブーム用再生流量制御弁18とは、上述した(2)と同じ動作が行われる。
【0042】
一方、ジャッキアップ用電磁比例弁20は、電流に比例したパイロット圧力を発生させ、このパイロット圧力が、ジャッキアップ側のパイロットライン200に接続されたブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3の駆動部13−3bに導かれて、この方向切換弁13−3をブーム(ジャッキアップ)側の切換位置に切り換える。そして、第3油圧ポンプ10の圧油がこの切換弁を介してブームシリンダ1のロッド側油室1Bに流入する。この結果、ロッド側油室1Bの圧油の圧力が上昇し強い押し付け力が発生し、ジャッキアップ力が確保できる。
【0043】
以上のように、押し付け力を必要としないブーム下げ動作においては、油圧ポンプからの圧油をブームシリンダ1のロッド側油室1Bに供給せず、ボトム側油室1Aからの戻り油の再生のみで流量をまかない、ジャッキアップ時には、油圧ポンプからの圧油をブームシリンダ1のロッド側油室1Bに供給することによって強い押し付け力を確保することができる。
【0044】
上述した本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態によれば、押し付け力を必要としないブーム下げ動作においては、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aからの戻り油の再生のみでブームシリンダ1のロッド側油室1Bへの圧油の流量をまかない、ジャッキアップ時においては、油圧ポンプからの圧油をロッド側油室1Bに供給するようにしたので、管路内での圧力損失を減少でき、ジャッキアップ時には押し付け力を発生させることができる。この結果、油圧回路のエネルギー効率の向上が図れ、建設機械の生産性と作業性を向上することができる。
【0045】
また、シリンダ圧力が低いブーム下げ動作と、このブーム下げ動作よりシリンダ圧力が高いアームやバケットの動作との複合動作の際には、従来の回路では、シリンダ圧力が高い動作側に流量を分配するには、シリンダ圧力が低いブーム下げの切換弁のメータインを絞らなければならず、ここでもエネルギー損失が発生していた。本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態によれば、ブーム下げのメータインがあるのはブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁13−3だけであり、この方向切換弁13−3も、押し付け力を必要としない空中動作でのブーム下げ動作においては中立の位置にあって、切り換えを発生させていない。したがって、従来の回路のように、シリンダ圧力が高い動作側に流量を分配するためにブーム下げの方向切換弁のメータインを絞る必要が無くなり、メータイン絞りによるエネルギー損失は発生しない。この結果、油圧回路のエネルギー効率の向上が図れる。
【0046】
さらに、上述したような、ブーム下げ動作とアームやバケットの動作との複合動作の際、従来の回路では、ブーム下げ動作にも油圧ポンプからの流量が取られアームやバケットの他の動作の動作速度を低下させていた。本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態によれば、押し付け力を必要としないブーム下げ動作の場合には、油圧ポンプからの圧油をブームシリンダ1のロッド側油室1Bに供給しないので、他の動作の動作速度を、従来の回路の場合よりも速くすることができる。この結果、油圧回路のエネルギー効率の向上が図れ、建設機械の生産性と作業性を向上することができる。
【0047】
また、本発明の建設機械の油圧駆動装置の第1の実施の形態によれば、単純な回路構成のコントロールバルブを多数用いて油圧回路を構成している大型の建設機械において、従来回路と同様のコントロールバルブと切換弁による簡便な回路構成で、圧力損失を低減しエネルギー効率を向上できると共に、車体のジャッキアップ力などの大きな押し付け力を発生させることができる。
【0048】
なお、上述の実施の形態においては、ブームシリンダ1のピストンロッドの先端を上部旋回体56に、ブームシリンダ1の基端部をブーム51に連結した場合について説明したが、ブームシリンダ1のピストンロッドの先端をブーム51に、ブームシリンダ1の基端部を上部旋回体56に連結した場合にも、本発明を適用することができる。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の建設機械の油圧駆動装置の第2の実施の形態を図4を用いて説明する。図4は本発明の建設機械の油圧駆動装置の第2の実施の形態の構成を示す油圧回路図である。なお、図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0050】
本実施形態は、図2に示した構造をバックホウタイプの油圧ショベルに設けられた2ポンプ方式の油圧駆動装置に応用した場合の実施形態であり、図4はその油圧駆動装置の構成を表す油圧回路図である。図4において、本実施形態の油圧駆動装置は、大ざっぱに言うと、図2の構造から第3油圧ポンプ10とその周辺機器を取り去り、さらに2ポンプ方式であることに対応して方向切換弁の数を低減し第1及び第2弁グループ21,22に集約した構造となっている。
【0051】
すなわち、第1弁グループ21には4つの方向切換弁21−1,21−2,21−3,21−4が設けられている。これらのうち、左走行用方向切換弁21−1及び第1アーム用方向切換弁21−4については図2そのままの位置に残したものであり、第1バケット用方向切換弁21−3及び第1ブーム用方向切換弁21−2は図2の第2弁グループ12にあったものを移設したものである。そして、左走行用方向切換弁21−1は、他の方向切換弁21−2,21−3,21−4よりも優先的に第1油圧ポンプ8の圧油を左走行モータ7に供給できるようにタンデムに接続されており、第1ブーム油方向切換弁21−2,第1バケット用方向切換弁21−3,第1アーム用方向切換弁21−4は、互いにパラレルに接続されている。
【0052】
また、一方、第2弁グループ22には、5つの方向切換弁22−1,22−2,22−3,22−4,22−5が設けられている。これらのうち旋回用方向切換弁22−1及び第2ブーム用方向切換弁22−2については図2の第3弁グループ13にあったものを移設したものであり、ブーム下げ・バケットクラウド方向切換弁22−3は新たに配置され、第2アーム用方向切換弁22−4及び右走行用方向切換弁22−5は図2の第2弁グループ12の位置を変えたものである。
【0053】
そして、旋回用方向切換弁22−1及び第2ブーム用方向切換弁22−2と、ブーム下げ・バケットクラウド方向切換弁22−3及び第2アーム用方向切換弁22−4と、右走行用方向切換弁22−5は、この順序で優先的に第1油圧ポンプ8の圧油を対応するアクチュエータに供給できるようにタンデムに接続されている。また、旋回用方向切換弁22−1と第2ブーム用方向切換弁22−2とは互いにパラレルに接続されており、同様にブーム下げ・バケットクラウド方向切換弁22−3と第2アーム用方向切換弁22−4とは互いにパラレルに接続されている。
【0054】
また、ブーム上げ用電磁比例弁16の2次ポート側は、パイロットライン160を介して、対応する第1ブーム用方向切換弁21−2,第2ブーム用方向切換弁22−2の各駆動部21−2b,22−2aに接続されており、ブーム下げ用電磁比例弁17の2次ポート側は、パイロットライン170を介して、対応する第1ブーム用方向切換弁21−2,第2ブーム用方向切換弁22−2の各駆動部21−2a,22−2bに接続されており、ジャッキアップ用電磁比例弁20の2次ポート側は、パイロットライン200を介して、対応するブーム下げ・バケットクラウド用方向切換弁22−3の駆動部22−3bに接続されている。
【0055】
これにより、操作レバー装置14からの操作信号によって、対応する方向切換弁である第1ブーム用方向切換弁21−2,第2ブーム用方向切換弁22−2,ブーム下げ・バケットクラウド用方向切換弁22−3が切り換えられ、第1及び第2油圧ポンプ8,9からブームシリンダ1に供給される圧油の方向及び流量を制御するようになっている。その他の構造は、図2に示した油圧駆動装置とほぼ同様である。
【0056】
次に、上記構成による本発明の建設機械の油圧駆動装置の第2の実施の形態の動作について、説明する。
【0057】
(1)ブーム上げ動作
まず、ブーム上げ操作の場合は、ブーム用操作レバー装置14の操作レバーをブーム上げ側に操作すると、レバー操作量に応じた電圧信号がコントローラ15に入力される。コントローラ15は電圧信号に応じた電流信号をブーム上げ用電磁比例弁16に出力する。ブーム上げ用電磁比例弁16は、電流に比例したパイロット圧力を発生させ、このパイロット圧力が、ブーム上げ側のパイロットライン160に接続された第1ブーム用方向切換弁21−2の駆動部21−2b,及び第2ブーム用方向切換弁22−2の駆動部22−2aに導かれてこれら方向切換弁21−2,22−2をブーム上げ側の切換位置にそれぞれ切り換える。
【0058】
そして、第1及び第2油圧ポンプ8,9の圧油がこれら2つの切換弁を介してブームシリンダ1のボトム側油室1Aに流入する。このときロッド側油室1Bからの戻り油は、この油室1Bに接続されている第1ブーム用方向切換弁21−2の切換位置を介してタンクへ排出される。これによってブーム51が上昇する。
【0059】
(2)空中動作でのブーム下げ動作
次に、ブーム下げ操作の場合は、ブーム用操作レバー装置14の操作レバーをブーム下げ側に操作すると、レバー操作量に応じた電圧信号がコントローラ15に入力される。コントローラ15は電圧信号に応じた電流信号をブーム下げ用電磁比例弁17とブーム用再生流量制御弁18に出力する。電磁比例弁17は、電流に比例したパイロット圧力を発生させ、このパイロット圧力が、ブーム下げ側のパイロットライン170に接続された第1ブーム用方向切換弁21−2の駆動部21−2a,及び第2ブーム用方向切換弁22−2の駆動部22−2bに導かれてこれら方向切換弁21−2,22−2をブーム下げ側の切換位置にそれぞれ切り換える。
【0060】
この結果、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aに封じ込められていた圧油は、第1ブーム用方向切換弁21−2及び第2ブーム用方向切換弁22−2を介してタンクに戻る。また、ブーム用再生流量制御弁18は、電流に比例してストロークし、可変絞り111の絞り量を開き側に駆動する。このとき、ブーム51の自重によってブームシリンダ1のボトム側油室1Aには保持圧力が発生していることから、上記ブーム用再生流量制御弁18の可変絞り111が開くことによって、ボトム側油室1Aからの圧油の流出流量の一部は、ブーム用再生流量制御弁18及び逆止弁112を通ってロッド側油室1Bへ導入される(環流される)。
【0061】
なお、上述したように、空中動作でのブーム下げ動作の場合、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aには、保持圧力が発生している。コントローラ15は、ボトム側油室1Aの圧力を圧力センサ19で検出し、検出圧力が所定の圧力Pbo以上の場合には、ジャッキアップ用電磁比例弁20に電流を出力しない。よって、ブーム下げ・バケットクラウド用方向切換弁22−3は中立のままとなり、ブームシリンダ1のロッド側油室1Bには第2油圧ポンプ9からの圧油は供給されない。
【0062】
(3)ジャッキアップ動作
さらに、ブーム51を下げ続け、例えば地面にバケット52が接触するようになると、フロントアタッチメントに押し付け力が作用するようになる。このとき、ブームシリンダ1には引張力が作用するため、ボトム側油室1Aの圧油の圧力は、低下する。つまり、上述したブーム下げ操作に加えて、ブームシリンダ1のボトム側油室1Aの圧力を検出し、ジャッキアップであると判断した場合には、上述した(2)と異なる動作が行われる。具体的には、ボトム側油室1Aの圧力を圧力センサ19で検出し、検出圧力が所定の圧力Pbo未満の場合であって、ブーム用操作レバー装置14の操作レバーのブーム下げ電圧信号がコントローラ15に入力された場合には、コントローラ15は、電圧信号に応じた電流信号をブーム下げ用電磁比例弁17とブーム用再生流量制御弁18と共に、ジャッキアップ用電磁比例弁20に出力する。ブーム下げ用電磁比例弁17とブーム用再生流量制御弁18とは、上述した(2)と同じ動作が行われる。
【0063】
一方、ジャッキアップ用電磁比例弁20は、電流に比例したパイロット圧力を発生させ、このパイロット圧力が、ジャッキアップ側のパイロットライン200に接続されたブーム下げ・バケットクラウド用方向切換弁22−3の駆動部22−3bに導かれて、この方向切換弁22−3をブーム(ジャッキアップ)側の切換位置に切り換える。そして、第2油圧ポンプ9の圧油がこの切換弁を介してブームシリンダ1のロッド側油室1Bに流入する。この結果、ロッド側油室1Bの圧油の圧力が上昇し強い押し付け力が発生し、ジャッキアップ力が確保できる。
【0064】
上述した本発明の建設機械の油圧駆動装置の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ブームシリンダ
2 バケットシリンダ
3 アームシリンダ
4 開閉シリンダ
5 旋回モータ
6 右走行モータ
7 左走行モータ
8 第1油圧ポンプ
9 第2油圧ポンプ
10 第3油圧ポンプ
11 第1弁グループ
12 第2弁グループ
13 第3弁グループ
14 ブーム用操作レバー装置
15 コントローラ
16 ブーム上げ用電磁比例弁
17 ブーム下げ用電磁比例弁
18 ブーム用再生流量制御弁
19 圧力センサ
20 ジャッキアップ用電磁比例弁
51 ブーム
52 バスケット
53 アーム
55 下部走行体
56 上部旋回体
57 旋回台軸受け
58 フロント作業機
101 主管路
102 主管路
110 再生管路
111 可変絞り
112 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、この下部走行体の上部に旋回可能に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体に回動可能に接続されたブームを含む複数の被駆動部材を備えた建設機械に設けられ、少なくとも2つの油圧ポンプと、該油圧ポンプから吐出される圧油が供給され対応する前記被駆動部材をそれぞれ駆動するブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の方向及び流量を制御する少なくとも1つの方向切換弁をそれぞれ備えた少なくとも2つのコントロールバルブグループとを有する建設機械の油圧駆動装置において、
前記ブームシリンダのボトム側油室の圧油をロッド側油室へ導く再生流量制御弁手段と、
ブーム下げ操作時に、前記油圧ポンプから前記ブームシリンダのロッド側油室への圧油流量を制御するメータイン回路を設けた少なくとも1つのコントロールバルブグループのブーム用方向切換弁と、
前記ブームシリンダのボトム側油室の圧油の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記ブーム用方向切換弁と前記再生流量制御弁手段とを制御する制御装置とを備える
ことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記制御装置は、ジャッキアップ動作時の前記ブームシリンダのボトム側油室の圧油の圧力を閾値として記憶した記憶部と、前記圧力検出手段からの圧力値を取込み、この圧力値と前記記憶部に記憶した閾値とを比較し、前記圧力値が前記閾値以上の場合には、前記再生流量制御弁手段のみを制御し、前記圧力値が前記閾値未満の場合には、さらに前記メータイン回路を有効にするために前記ブーム用方向切換弁を切換え制御する演算部とを備える
ことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記ブーム用方向切換弁は、アームシリンダのボトム側油室に圧油を供給するように該ボトム側油室に接続可能なアームクラウド用切換位置をさらに備えたブーム下げ・アームクラウド用方向切換弁である
ことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建設機械の油圧駆動装置において、
前記再生流量制御弁手段は、ブームシリンダのボトム側油室とロッド側油室とを接続する再生管路の圧油の流量を制御可能とする再生流量制御弁である
ことを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−275818(P2010−275818A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131324(P2009−131324)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】