説明

建設残土を利用した土レンガの製造方法

【課題】関東ロームなどの火山灰質粘性土の建設残土を固化材としてセメント以外の固化材を使用して破砕物が産業廃棄物とならないようにする。
【解決手段】関東ローム等の火山灰質粘性土の建設残土を粒径5mm以下に調整し、また、この建設残土100重量部に対して消石灰または炭酸カルシウムのカルシウム系固化材を15〜65重量部を混合すると共に、建設残土と固化材の混合物に対して5〜20重量%の顔料と予め十分混合した砂を混合、若しくは混練りし、成型固化するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は建設残土を産業廃棄物とならない固化材と混合し、焼成することなく成型、乾燥固化して土レンガとする製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の建設現場から発生する建設残土は処分を必要とし、遠方の処分場へ運搬すると運搬車輌が二酸化炭素を多量に発生するので環境にとっては好ましいものではない。
火山灰質粘性土の関東ロームは、関東地方の丘陵や台地上に広く分布する赤褐色の砂泥土であり、これを乱した状態とすると強度が著しく低下し、また、降雨などで水分を含んで軟弱化すると非常に扱いにくい土となる。
関東ロームは、関東地方の建設現場で大量に発生することから有効利用が望まれているが、粘性が高く、レンガなどの建築資材の原料としては取り扱いが面倒であった。
関東ロームの残土をレンガとして有効できるようにするため、本願出願人は、特許文献1(特開2011−6308号公報)で、水を加えて含水率を約49%〜51%に調整した関東ロームにセメント、水、及びアルミン酸ソーダを加えて真空土練機で混練りし、押出成型して乾燥固化することを提案した。
【0003】
また、特許文献2(特許第3059674号公報)には、焼却灰や石粉等の廃棄粉体に水分を加えて混練りし、混合物を真空吸引によって脱気しつつ連続的に押出成型して所要の大きさに切断し、天日乾燥してレンガとすることが開示されている。
特許文献3(特開平5−50053号公報)には、掘削残土に消石灰を混合して成型することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−6308号公報
【特許文献2】特許第3059674号公報
【特許文献3】特開平5−50053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
関東ロームは、取り扱いが難しく、セメントを固化材として混合して成型し、焼成することなく乾燥固化してブロックやレンガにしようとするとバラバラとなることがあるため、特許文献1では、アルミン酸ソーダを加えて真空土練機で混練することで解決している。
しかし、セメントを含む土レンガ等の破砕物は産業廃棄物に分類されるため、処分費用が余計にかかるという問題がある。
また、土色のレンガだけでなく、顔料を混合して所望の色に着色したレンガを作成しようとしても、希望するように綺麗に発色させることができないという問題があった。
本発明は、関東ロームなどの火山灰質粘性土の建設残土をセメントを使用することなく成型固化してレンガとすることができるようにすると共に、少量の顔料で所望の色にレンガを着色できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
粒径5mm以下に調整した火山灰質粘性土の建設残土100重量部、カルシウム系固化材30〜67重量部、建設残土とカルシウム系固化材の合計重量に対して砂20重量%及び顔料を混合して成型固化する土レンガの製造方法であって、砂と顔料を十分混合して砂を顔料で着色したものにカルシウム系固化材を混合し、続いて建設残土を混合し、この混合物を成型固化するものである。
【0007】
本発明が対象とする土質は、関東ローム等の火山灰質粘性土であるが、関東ローム以外の火山灰質粘性土に対しても適用可能である。
本発明では、建設現場で発生した火山灰質粘性土の残土から異物を取り除き、改質することなくそのまま使用する。なお、粒径5mmを超える土粒塊が多数ある場合は、5mm以下のものを篩等で選別する。
残土の含水率を40%以下に調整して使用するのが好ましい。含水率が高いものであると、混練りや成型が困難になるので好ましくない。
【0008】
消石灰(Ca(OH)2)や炭酸カルシウム(CaCO3)などのカルシウム系固化材を火山灰質粘性土と混合した場合、表1に示すように、ベーンせん断試験の結果がセメントを固化材としたものよりもせん断強さが大きく、また、カルシウム系固化材は、これらの成分が含まれていても産業廃棄物とならないことから、カルシウム系固化材を使用するものとした。
【0009】
【表1】

【0010】
消石灰は、工業用消石灰の他、有害物を含まず消石灰を90重量%以上含むものであればよい。
炭酸カルシウムの場合、石材加工の過程で発生する大理石粉を使用することができる。大理石粉は、大理石の石材製品を製造する際に発生する切粉や研磨粉等であり、粒径が2mm以下のものを使用する。大理石粉は、スラリーや含水スラッジとして発生するものであり、静置して沈降した大理石粉を使用する。
大理石粉は、消石灰と同様に固化材とし土レンガの強度発現に寄与するが、大理石粉を用いた場合は、必ずしも骨材としての砂を添加する必要がなくなるので、大理石粉の粒度分布を考慮し、試し練りによって土レンガの配合を決定する。
また、大理石粉を使用する場合は、珪酸ナトリウムを2〜20重量%、好ましくは2〜10重量%の範囲で加えると強度が向上する。
残土とカルシウム系固化材の混合割合は、残土100重量部に対し、15〜65重量部とするのが好ましい。
カルシウム系固化材が15重量部未満の場合、十分な強度が得られず、65重量部を超えると強度は十分であるが、アルカリの溶出が多くなるので好ましくない。
【0011】
砂は、骨材として添加するものであり、種類は限定されない。山砂、陸砂、川砂、海砂、砕砂、再生骨材等、いずれの砂でもよい。砂の添加割合は、建設残土とカルシウム系固化材に対して5〜20重量%である。
5重量%未満では強度の向上に寄与せず、20重量%を超えると、建設残土との混合に時間を要し、処理効率が悪くなると共に、強度が低下する場合がある。
なお、カルシウム系固化材として大理石粉が、骨材として機能する粒径のものが含まれている場合は、砂は必ずしも添加しなくてもよいが、大理石粉の粒度分布を調整して骨材となる粒径分が含まれるようにする。
【0012】
顔料を他の材料と一緒に混合すると発色性が悪いが、顔料を砂と予めミキサー等によって撹拌混合しておくことによって土レンガを綺麗に発色させることができる。
また、顔料と十分混合された砂にカルシウム系固化材の消石灰を添加して撹拌混合し、最後に建設残土を加えて撹拌混合するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
固化材としてセメントを使用せず、消石灰などのカルシウム系固化材を建設残土に添加して成型することによって成型物が型崩れすることなく乾燥固化するので、関東ロームなどの火山灰質粘性土の建設残土を土レンガにすることができ、廃材を有効利用することができ、建設残土の廃棄処分費用を軽減することができるようになった。
また、固化材としてカルシウム系固化材を用いており、セメントを使用しないので、破砕物は産業廃棄物とならず、土として処理できることから、処分費用を大幅に軽減することができる。なお、顔料や珪酸ナトリウムは少量であるので、これらが含まれていても産業廃棄物とはならない。
製造した土レンガは、断熱材等として利用可能であり、更に、残土発生現場において外構に使用することもできる。
固化材として大理石粉を用いることができるので、大理石粉の処分費用をも軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の製造工程図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、建設現場から発生した火山灰質粘性土の建設残土を選別機で異物を除去し粒径5mm以下に粒度調整する。また、必要に応じて水分調整をおこなう。
骨材の砂と顔料を予めコンクリートミキサー等で混合撹拌して顔料が砂に均一に分散するようにする。この砂を撹拌機に投入し、所定の配合量のカルシウム系固化材(消石灰等)を撹拌機に投入して撹拌する。
次に、粒度調整及び含水率を調整した建設残土を撹拌機に投入し、均一に混合されるまで撹拌し、均一となった混合物を成型して乾燥固化して土レンガにするものである。
【0016】
撹拌混合において、混合物に粒径5mm以上の塊ができた場合、成型する前に解砕して塊を細かくする。塊が存在すると、成型時に圧力が均一に伝達されず、低強度の個所が生ずるので、塊を解砕して混合物を粒径5mm以下にしておく。
また、混合物の含水率が高い場合は、乾燥させてから成型する。
成型方法は、圧縮成型または押出成型でおこなう。例えば、含水率が25〜35%で、粒径5mm以下の混合物場合、圧縮成型の場合、加圧力18〜22MPa程度で圧縮成型するのが好ましい。
圧縮成型は、金型を変更することによって用途に応じた形状のレンガ、ブロックを成型することができる。また、穴あきのレンガも製造することができる。
【0017】
圧縮成型の圧力をゼロから所要の圧力に上げて一定時間維持し、ゼロに戻さず、約60%程度の圧力まで下げてその圧力を10秒以上維持してから圧力をゼロに戻すほうが、圧縮強度の高い土レンガ得られるのであり、最大加圧力19.5MPaで圧縮し、9MPaまで下げてこの圧力を10秒維持した場合、圧縮強度が3.7MPaから4.5Mpaに上昇した。
【0018】
混合物を押出成型して土レンガを成型する場合は、脱気できるスクリュー式土練機(真空土練機)を使用するのが好ましい。関東ロームの場合、スクリューに混合物が強力に付着してしまうので、混合物の真空混練機に投入するのに先立って、関東ロームの建設残土のみを通し、混練り機のスクリュー面や内面を残土で被覆すると円滑に混合物の混練りがおこなわれるので好ましい。なお、真空土練機での真空度は0.01atm以下とするのが好ましい。
混合物の水分が不足して混練りがスムースにいかない場合は、適宜、混練りのための水を追加する。
【0019】
関東ロームの建設残土の粒度分布の一例を表2に示す。火山灰質粘性土(関東ローム)を使用して本発明の方法によって加圧力20MPaで圧縮成型または押出成型して土レンガを製造した。圧縮強度と吸水率はJIS Rに準じて測定した。
【0020】
【表2】

【0021】
表3にカルシウム系固化材として消石灰を使用した土レンガ、表4にカルシウム系固化材として炭酸カルシウム(大理石切削粉由来)を使用した土レンガの配合と強度、及び吸水率を示す。
【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
表3及び表4に示されるように、本発明の方法に基づいて製造した土レンガは外構や断熱等に用いるレンガやブロックとして必要な強度を有し、実用に供することができるものである。大理石粉(炭酸カルシウム)を固化材として用いた場合も十分な強度が得られた。
古くから知られているアドベ(日干し煉瓦)の技術である10〜20mm程度のワラなどの短繊維を混入すると強度が向上する。ワラは、価格が低廉な材料であるので使用しても製造コストにそれほど跳ね返ることがなく、土レンガの強度を高めることができる。
また、予め砂と顔料を撹拌混合して砂を顔料で被覆して着色してあるため、土レンガが少量の添加によって綺麗に発色していることが認められた。
【0025】
大理石切削粉は、粒度が一様でなく固化材として使用できる粉体から砂粒状のものまで広範囲な粒度のものであり、砂に分類されるものは固化材として機能せず、砂のように骨材として機能するものであり、砂の一部、または、全てを大理石粉で置換することが可能であり、表4に示されるように、消石灰の場合と変わらない強度の土レンガを得ることができた。固結助剤として珪酸ナトリウムを添加すると土レンガの強度は増大する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径5mm以下に調整した火山灰質粘性土の建設残土30〜65重量%、カルシウム系固化材12〜25重量%、砂10〜35重量%の範囲及び顔料を合計100%になるように混合して成型固化する土レンガの製造方法であって、砂と顔料を十分混合して砂を顔料で着色したものにカルシウム系固化材を混合し、続いて建設残土を混合し、この混合物を成型固化する土レンガの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、建設残土の含水率を40%以下に調整する土レンガの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、成型方法が押出成型または圧縮成型のいずれかである土レンガの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2において、建設残土とカルシウム系固化材のみを予め撹拌混合したものを顔料と撹拌混合してある砂に加えて撹拌混合し、混練りをおこなわない土レンガの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかにおいて、混合物の混練りをスクリュー式土練機でおこなうものであり、混練に先立って、スクリュー式土練機に火山灰質粘性土の建設残土のみを通し、スクリュー式土練機の内面とスクリュー羽根の表面を建設残土で被覆するする土レンガの製造方法。
【請求項6】
請求項3の圧縮成型において、圧縮圧力が最大20Mpa以下であり、最大圧力からその約60%の圧力まで低下させ、その圧力を10秒以上維持してから圧力ゼロとする土レンガの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、カルシウム系固化材が消石灰である土レンガの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかにおいて、カルシウム系固化材が炭酸カルシウムである土レンガの製造方法。
【請求項9】
請求項8において、炭酸カルシウムが大理石の石材加工で生ずる切削粉由来のものである土レンガの製造方法。
【請求項10】
請求項9において、砂の一部、または、全てを大理石粉で置換してある土レンガの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−162428(P2012−162428A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25430(P2011−25430)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】