説明

強誘電セラミック材料

【課題】 キュリー温度を制御できる範囲が広く、室温付近の相転移が無く、優れた強誘電特性を示すチタン酸バリウムを主成分とした強誘電セラミック材料を提供する。
【解決手段】 (100−a−b)BaTiO・aBi・bM(式中、MはBi以外の3価の金属を示す。a、bは1≦a≦15、0≦b≦5、5≦a+3b≦15である。)で表される酸化物からなる強誘電セラミック材料。前記Mが第5周期の遷移金属、原子番号が59以上69以下の希土類金属から選ばれる3価の金属であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強誘電セラミック材料に関し、特に非鉛系で、キュリー温度を制御することが可能な高性能の強誘電セラミック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック材料として、ABO型のペロブスカイト型酸化物がセラミックコンデンサー材料やセラミック圧電材料として使用されている。特に、強誘電セラミック材料においては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の出現により、前記チタン酸ジルコン酸鉛がインクジェットヘッドや圧電超音波モーターなどの圧電アクチュエーターの圧電セラミック材料の主流になっている。また、残留分極を利用するFeRAMにも、PZT強誘電材料が利用されている。しかし、近年、鉛は汚染物質のひとつとして問題視され、鉛を含有しない非鉛系強誘電セラミック材料の開発が急務とされている。
【0003】
非鉛系強誘電セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO)が知られている。BaTiOはNb系材料より安価であるが、5℃付近に正方晶と斜方晶の相転移点(Transition at room temperature、以下はその転移温度をTrと記載する)が存在するため、その強誘電特性が温度Tr付近に変化し、多くの用途において使用しにくいという課題がある。BaTiOの相転移温度(Tr)を抑制する方法としては、BaをCaで置換する方法が知られている。また、BaTiOのキュリー温度が125℃付近であるが、BaTiOを多くのペロブスカイト型酸化物と固溶させると、キュリー温度(Tc)が急激に低下し、室温付近で強誘電性が喪失するという問題がある。
【0004】
また、チタン酸バリウム(BaTiO)に他の金属酸化物を加えると、特性がかなり変化することが知られている。例えば、特許文献1には、チタン酸バリウムにCuO、MgO、ZnOまたはBiを4から10重量%添加した、低温焼成が可能な誘電体セラミックが開示されている。特許文献1に、チタン酸バリウムに希土類酸化物等と遷移金属酸化物やBiなどを添加した、バリスタ性を示すチタン酸バリウムセラミックが開示されている。特許文献3には、チタン酸バリウムと、0.5〜8重量%のPb、Liのフッ化物と、0〜4重量%のBi、Zn、Pbの酸化物と、1〜8重量%の助剤からなる誘電組成物の層を焼成した高キャパシタンスコンデンサーが開示されている。しかし、上に例示した従来のセラミックスは、多くは常誘電性であり、また絶縁性が低い。強誘電性があったとしても、有効なBaTiOの相転移を抑制する方法については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−290940号公報
【特許文献2】特開平3−45559号公報
【特許文献3】特開平2−225371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように非鉛系強誘電セラミック材料として、相転移の抑制しつつキュリー温度の低下を防ぐことができるチタン酸バリウムを主成分とした強誘電セラミック材料は知られていない。
【0007】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、キュリー温度を大きく低下させることなくBaTiOの相転移温度(Tr)を抑制する、チタン酸バリウムを主成分とした強誘電セラミック材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する強誘電セラミック材料は、(100−a−b)BaTiO・aBi・bM(式中、MはBi以外の3価の金属を示す。a、bは1≦a≦15、0≦b≦5、5≦a+3b≦15である。)で表される酸化物からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、Bi及び金属M(MはBi以外の3価の金属)をBaTiOに適切に含有させることで、
キュリー温度を大きく低下させることなく、BaTiOの相転移温度(Tr)を抑制する、チタン酸バリウムを主成分とした強誘電セラミック材料を提供することができる。更に、本発明に係る強誘電セラミック材料は鉛を含まないため環境への負荷が低いので、圧電体材料、強誘電メモリなどへのクリーンな応用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の強誘電セラミック材料におけるBaTiO、BiおよびM成分の範囲を示す概略図である。
【図2】実施例8にかかる分極―電界(P−E)ヒステリシスカーブ(周波数1Hz、電圧1kV)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に係る強誘電セラミック材料は、(100−a−b)BaTiO・aBi・bM(式中、MはBi以外の3価の金属を示す。a、bは1≦a≦15、0≦b≦5、5≦a+3b≦15である。)で表される酸化物からなることを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明に係る強誘電セラミック材料は、bが0の場合は2成分系の(100−a)BaTiO・aBiで表される酸化物からなり、bが0でない場合は3成分系の(100−a−b)BaTiO・aBi・bMで表される酸化物からなる。
【0014】
本発明の強誘電セラミック材料は、BaTiO、BiおよびMの各成分からなる。BaTiO成分は、基本的に強誘電性を発現する成分であり、Biは結合の共有性を付与する成分であり、Mは、必要に応じ全体の格子定数をコントロールする成分である。
【0015】
本発明では、Bi+Mは、単独でペロブスカイト構造を形成しなくてもよく、BaTiOに固溶し、ペロブスカイト構造の中に組み込まれればよい。Bi3+とM3+は、BaTiO3ペロブスカイトのAサイト(Ba2+)、Bサイト(Ti4+)の何れかのサイトに入る。
【0016】
Biの含有量aは1≦a≦15、好ましくは1.1≦a≦14.5の範囲が望ましい。Biのaが1以上15以下であると、BaO結晶骨格へ共有結合性が高まり、またBaTiO由来の強誘電性が高く発現できる。Biのaが1未満であると、BaO結晶骨格へ共有結合性が効果的に働くことができない。一方、Biの含有量aが15より大きいと、BaTiO由来の強誘電性が高く発現することができず、強誘電体としての特性を損ねてしまう。また、より好ましくは、(100−a−b)BaTiO・aBi・bM中の、a、bは1.07≦a≦3.5、0.5≦b≦4、5≦a+3b≦15で表される酸化物からなることを特徴とする事で、さらに絶縁性の高い強誘電材料が得られる。1.07≦a≦3.5とすることで比抵抗をBaTiO3と比べ同等かそれ以上の値とすることでき、1≦b≦2.4とすることでキュリー温度TcをBaTiO3と比べ同等かそれ以上の値とすることができる。
【0017】
は、必要に応じて用いられ、Bi以外の3価の金属からなる。Bi成分と合わせて用いる場合、Mの含有量bは0≦b≦5、好ましくは0.5≦b≦4の範囲が望ましい。
【0018】
また、BiとMの含有量が5≦a+3b≦15の範囲内であると、Biの効果とMの効果も共に発現できる。
MはBi以外の3価の金属を示す。
M金属の具体例として、周期表第3族金属、3価の遷移金属、希土類3価金属を挙げることができる。好ましくは、第5周期の金属、希土類の3価金属を用い、具体例として、In、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybを挙げることができる。チタン酸バリウムの格子定数とよくマッチングできる3価金属を選び、そのなかでも第5周期の遷移金属、あるいは原子番号59以上69以下の希土類金属を用いると、Bi−Oの結合特性をより効果的に引き出すことができる。更に好ましくは、Y、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Erを用いる。金属MとBiとはイオン半径の違いから、Bi3+はペロブスカイトのAサイトに占める傾向が強く、M3+イオンは少なくとも一部がペロブスカイトのBサイトに占めると推測される。チタン酸バリウム構造中に適したMO6八面体を導入すれば、Bi−Oの共有結合性がBa−Oの配列に効果的に影響を及ばしていると考えられる。
【0019】
したがって、本発明の強誘電セラミック材料が以下の基本構造で表すことができる。
【0020】
【化1】

【0021】
ここで、p+q=m+n=(a+b)/100である。
【0022】
更に、必要に応じて、前記MのbとBiのaとの比をb/a<1に設定することができる。即ち、Bi3+がペロブスカイトのAサイトにもBサイトにも入る。この場合は、強誘電セラミック材料がより安定な強誘電性特性を示す。
【0023】
また、これらの焼結体の粒径は小さく、均一である方が好ましい。さらに好ましくは、電子顕微鏡または光学顕微鏡で観察した結果、90%以上の粒子の粒径が、0.5μmより長く、4μm以下であることで、粒子間が緻密になり、機械的強度が強く、粒界を通して流れるリーク電流が低減し、絶縁抵抗が大きくなる。
【0024】
図1は、本発明の強誘電セラミック材料におけるBaTiO、BiおよびM成分の範囲を示す概略三角相図である。図中、BTOはBaTiOを示す。斜線部の領域においては室温付近での相転移が抑制されることで、もしくは相転移温度が−100℃以下に低下することで室温付近の相転移点が除かれた、優れた強誘電体の組成領域である。
斜線部以外の領域は、室温で強誘電性が無い、もしくは相転移温度が−100℃から100℃に存在する領域である。
【0025】
本発明の強誘電セラミック材料は、用途に応じ、薄膜、バルクの形態を取ることができる。
薄膜の形態の場合は、シリコン基板、ジルコニア基板、ガラス基板等の基板に、ゾル−ゲル法、スパッター法、CVD法、エアロゾルデポジション法等により、成膜することで作製できる。成膜後、必要に応じて、前記強誘電セラミック材料を、好ましくは酸素濃度が18vol%以上の雰囲気下で焼成処理することで、強誘電セラミック材料の絶縁性が向上し、強誘電セラミック特性を効率的に引き出すことができる。
【0026】
バルクの形態の場合は、通常のセラミックの製法により、原料粉末を用いて、仮焼成、成型、焼成の工程により製造する。仮焼成は、目的の強誘電セラミック材料になる原料を混合し、500℃から1000℃で固相反応させることができる。必要に応じ、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の水溶液から、水酸化アルカリ、アンモニア水などを用い、強誘電セラミックになる酸化金属粉末の前駆体を得て、仮焼することより、仮焼粉末を得ることができる。次に、仮焼粉末を成型体に成型できるように、仮焼粉末を造粒する工程を行う。造粒は、仮焼粉末を、ポリビニルアルコール、ブチラール(ポリビニルアセタール)、エチルセルロース等のバインダーの分散液に分散し、粉末のスラリーを形成し、スプレードライなどの乾燥方法より、成型用の粒状粉末を作製することで行う。成型工程としては、プレス法、CIP法などの手法より、所望の形状の成型体を形成する。最終的に、得られた成型体を800℃以下の温度でバインダーを分解させ、本焼成を行う。
【0027】
強誘電セラミック材料が積層構造である場合は、強誘電セラミック材料の仮焼粉末のスラリーをドクターブレード等の方法より、グリーンシートを形成させ、熱圧着などの成型法より所望の層状構造に積層させ、最終的にバインダー成分を分解させる工程を経て、本焼成を行う。
【0028】
本発明の強誘電セラミック材料は、好ましく焼成温度が1000℃以上、1500℃以下で焼成処理を行う。1000℃以上の温度で焼成すると、Bi3+やM3+イオンがチタン酸バリウムのペロブスカイト骨格構造に速やかに拡散し、ペロブスカイトに固溶する。また、1500℃以上で焼成を行うと、ガラス化が起こり、形状が変形し、その表面からは、Bi成分が揮発してしまい、所望の焼結体が得られなくなる。より好ましくは、焼成温度が1200℃以上、1400℃以下で焼成処理する本焼成を行う。本発明の強誘電セラミック材料は、粒界で酸化ビスマスを主成分とするガラス状態の成分が極端に少なく、自発分極を容易に所望の方向に変えられ、強誘電体の本来の特性を引き出すことができる。特に焼成温度が1000℃より低い場合、Biがチタン酸バリウムの粒界に残存し、その強誘電特性を損なうことがある恐れがある。
【0029】
本発明の強誘電セラミック材料は、電極を設けることで、強誘電メモリ材料として使用することができる。電極材料としては、Pt、Au、Ag、Cu、Alなどを挙げることができる。その密着性を良くする場合、必要に応じ、Cr、Tiを介し、電極材料を設けても良い。積層構造の場合は、層間に電極を設けて作製する。
【0030】
本発明の強誘電セラミック材料を圧電材料として使用する場合は、上記のバルクを所望の形態に加工し、所定の部分に電極を設けて作製する。電極は、スパッター法や蒸着法によりPt、Au、Ag、Cu、Alを成膜する方法、もしくはAg、Niなどを焼き付けることで作製できる。圧電素子として使用する場合、超音波振動子、圧電センサー、アクチュエーター等の各種デバイスとして用いることが出来る。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【0032】
実施例1
(92BaTiO・8Biからなる強誘電セラミック材料)
15.26gのBaCO、6.18gのTiO、5.00gのBiをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。Bi成分は焼成により減少するので、減少分を見込んで多めにBiを用意した。
【0033】
メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて900℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で1時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉1とした。
【0034】
10gの仮焼粉1を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉1とした。
【0035】
1.3gの造粒粉1をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉1のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素vol21%の空気中で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1250℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長である格子定数aが0.3990nm、長軸長である格子定数cが0.4040nmであった。c軸が伸びた事より、Biがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。また、得られたサンプルをICP分析法(高周波誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)により組成分析した結果、Bi成分が焼成により少し減少しており、約92BaTiO・8Biの組成になっている事が分かった。電子顕微鏡で断面観察したとところ、95%ぐらいの粒子が1.2μmであった。
【0036】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に厚さ500nmの金電極をつけた。その後、切断し、10mm×2.5mm×0.9mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温(25℃)で1580の誘電率を示し、120℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が120℃であることがわかった。比抵抗は直流法より、室温で10Vで10分間保持した後、抵抗値を読み取り、算出した。比抵抗は1×10Ωcmであった。一方、室温付近で相転移が示すような誘電率のピークは見られなかった。また、−100℃から100℃でも相転移は見られなかった。その結果を表1に示す。
【0037】
実施例2
(96.53BaTiO・1.07Bi・2.4Yからなる強誘電セラミック材料)
20.00gのBaCO、8.10gのTiO、0.81gのBiと0.57gのYをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて950℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉2とした。 なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0038】
10gの仮焼粉2を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉2とした。
【0039】
1.3gの造粒粉2をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素20vol%と窒素80vol%の雰囲気下で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1350℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長の格子定数aが0.4009nm、長軸長の格子定数cが0.4047nmであった。この事よりBi,Yがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。
【0040】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、切断し、10mm×2.5mm×0.9mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で1720の誘電率を示し、比抵抗が2×10Ωcmであった。138℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が138℃であることがわかった。一方、室温付近で相転移が示すような誘電率のピークは見られなかった。また、−100℃から100℃でも相転移と思われる誘電率のピークは観察されなかった。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
(96BaTiO・1.6Bi・1.6Yからなる強誘電セラミック材料)
19.84gのBaCO、8.09gのTiO、1.20gのBiと0.38gのYをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて950℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉3とした。 なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0042】
10gの仮焼粉3を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉3とした。
【0043】
1.3gの造粒粉3をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素20vol%と窒素80vol%の雰囲気下で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1350℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長の格子定数aが0.3999nm、長軸長の格子定数cが0.4046nmであった。この事よりBi,Yがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。
【0044】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.8mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で1800の誘電率を示し、比抵抗が1×10Ωcmであった。140℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が140℃であることがわかった。一方、室温付近で相転移が示すような誘電率のピークは見られなかった。また、−100℃から100℃でも相転移と思われる誘電率のピークは観察されなかった。その結果を表1に示す。
【0045】
実施例4
(96.8BaTiO・1.6Bi・1.6Euからなる強誘電セラミック材料)
19.67gのBaCO、7.96gのTiO、1.20gのBiと0.58gのEuをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて950℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉4とした。なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0046】
10gの仮焼粉4を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉4とした。
【0047】
1.3gの造粒粉4をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素21vol%の空気中で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1350℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長の格子定数aが0.4004nm、長軸長の格子定数cが0.4041nmであった。この事よりBi,Yがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。
【0048】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.8mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で1700の誘電率を示し、124℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が124℃であることがわかった。比抵抗は6×10Ωcmであった。−100℃から100℃領域での相転移は確認されなかった。その結果を表1に示す。
【0049】
実施例5
(96BaTiO・3.5Bi・0.5Yからなる強誘電セラミック材料)
19.04gのBaCO、7.71gのTiO、2.42gのBiと0.12gのYをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて850℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉5とした。なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0050】
10gの仮焼粉5を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉5とした。
【0051】
1.3gの造粒粉5をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素20vol%と窒素80vol%の雰囲気下で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1340℃で3時間焼成した。一つのペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長の格子定数aが0.3999nm、長軸長の格子定数cが0.4034nmであった。この事よりBi,Yがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。
【0052】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.8mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で1950の誘電率を示し、比抵抗が5×10Ωcmであった。130℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が130℃であることがわかった。一方、室温付近で相転移が示すような誘電率のピークは見られなかった。また、−100℃から100℃でも相転移と思われる誘電率のピークは観察されなかった。その結果を表1に示す。
【0053】
実施例6
(95.5BaTiO・3.5Bi・1Inからなる強誘電セラミック材料)
18.91gのBaCO、7.65gのTiO、2.42gのBiと0.28gのInをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて850℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉6とした。なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0054】
10gの仮焼粉6を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉6とした。
【0055】
1.3gの造粒粉6をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素20vol%と窒素80vol%の雰囲気下で、600℃で焼成して脱バインダー処理を行った後、1320℃で3時間焼成した。一つのペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長の格子定数aが0.3991nm、長軸長の格子定数cが0.4045nmであった。この事よりBi,Yがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。
【0056】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.6mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で1850の誘電率を示し、比抵抗が2×10Ωcmであった。142℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が142℃であることがわかった。−100℃から100℃領域での相転移は確認されなかった。その結果を表1に示す。
【0057】
実施例7
(94.7BaTiO・1.3Bi・4Yからなる強誘電セラミック材料)
15.61gのBaCO、6.32gのTiO、0.81gのBiと0.76gYをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて900℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で1時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉7とした。なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0058】
10gの仮焼粉7を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉7とした。
【0059】
1.3gの造粒粉7をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉1のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素vol21%の空気中で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1350℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長の格子定数aが0.4000nm、長軸長の格子定数cが0.4030nmであった。この事よりBi,Yがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。
【0060】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.9mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で900の誘電率を示し、120℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が120℃であることがわかった。比抵抗は4×10Ωcmであった。一方、室温付近で相転移が示すような誘電率のピークは見られなかった。また、−100℃から100℃でも相転移と思われる誘電率のピークは観察されなかった。その結果を表1に示す。
【0061】
実施例8
(97.075BaTiO・1.3Bi・1.625Yからなる強誘電セラミック材料)
156.28gのBaCO、63.25gのTiO、7.48gのBiと3.01gのYをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて900℃で5時間仮焼成した。得られた塊を5mmφのジルコニアボールにより10時間ボールミルで解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉8とした。なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0062】
200gの仮焼粉8を132gの4.5%ポリビニルアルコール溶液に入れ、スラリーを作製し、サイクロン式のスプレードライにより乾燥、造粒を行った。得られた粉末を造粒粉8とした。
【0063】
1.3gの造粒粉8をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉1のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素vol21%の空気中で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1350℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、短軸長の格子定数aが0.4000nm、長軸長の格子定数cが0.4030nmであった。この事よりBi,Yがペロブスカイト構造の格子中に入っている事がわかる。また、バルクの断面を用い、粒径を電子顕微鏡で観察したところ、2μm以上3μm以下で均一であった。
【0064】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.427mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で967の誘電率を示し、134℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が134℃であることがわかった。比抵抗は3×10Ωcmと絶縁性は高かった。粒径が2μm以上3μm以下と小さく、さらに均一に作製出来た事から、粒子間が緻密になり、粒界を流れるリーク電流が抑制できた結果と思われる。一方、室温付近で相転移温度(Tr)を示すピークは見られなかった。また、−100℃から100℃でも相転移と思われる誘電率のピークは観察されなかった。その結果を表1に示す。また、分極―電界(P−E)ヒステリシスを周波数1Hz、電圧1kVで測定した結果、残留分極Prは12μC/cmであった。(図2)。また、同サンプルを100℃の環境下で、1kVの直流電圧を30分間印加することで、分極処理を行った後、圧電性能を共振反共振法で測定したところ、圧電常数d31が34.9 pm/Vで、分極方向の弾性率が131GPaであった。一方、分極しない前では、機械振動による電気信号が観察されなかった。この事から、本材料は自発分極の異方性が分極後保持されており、圧電性材料としての性能を備えている。
【0065】
比較例1
(BaTiO(a=0,b=0)からなる強誘電セラミック材料)
21.15gのBaCOと8.56gのTiOをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで850℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて850℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉C1とした。
【0066】
10gの仮焼粉C1を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉C1とした。
【0067】
1.3gの造粒粉C1をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素20vol%と窒素80vol%の雰囲気下で、600℃で焼成して脱バインダー処理を行った後、1280℃で3時間焼成した。一つのペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、格子定数aが0.3997nm、cが0.4030nmであった。
【0068】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.8mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で3000の誘電率を示し、比抵抗が2×10Ωcmであった。122℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が122℃であることがわかった。また、6℃付近でも誘電率が増大しており、室温付近の転移の存在が確認された。その結果を表1に示す。
【0069】
比較例2
(87.5BaTiO・5Bi・7.5Y(a=5,b=7.5、a+3b=27.5)からなる強誘電セラミック材料)
16.77gのBaCO、6.79gのTiO、3.49gのBiと1.69gのYをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて800℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉C2とした。なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0070】
10gの仮焼粉C2を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉C2とした。
【0071】
1.3gの造粒粉C2をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素20vol%と窒素80vol%の雰囲気下で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1250℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、立方晶で、格子定数aが0.4052nmであった。
【0072】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.75mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で1620の誘電率を示したが、室温以上の温度領域でキュリー温度(Tc)の存在が確認できなかった。その結果を表1に示す。
【0073】
比較例3
(84BaTiO・16Biからなる強誘電セラミック材料)
13.1gのBaCO、5.3gのTiOと11.6gのBiをメノ乳鉢で30分間混合し、アルミナルツボで750℃、5時間仮焼成を行った。メノ乳鉢で1時間解砕し、得られた粉末をアルミナルツボに入れて800℃で5時間仮焼成した。得られた塊をメノ乳鉢で2時間解砕した。得られた粉末をX線回折で確認したところ、ほぼペロブスカイトになっていることがわかった。この粉末を仮焼粉C3とした。なお焼成時のBiの減少分を見込んで実施例1同様に原料のBiは若干多く準備している。
【0074】
10gの仮焼粉C3を6.6gの4.5%ブチラールのエタノール溶液に入れ、遊星ボールで5分間攪拌した後、70℃でアルコールを蒸発させた。得られた塊をメノ乳鉢で解砕した後、250μmの篩を通して粉末を得た。得られた粉末を造粒粉C3とした。
【0075】
1.3gの造粒粉C3をΦ17mmの型に入れ、5トンのプレス機で、仮焼粉2のペレット2枚を作った。得られたペレットを酸素20vol%と窒素80vol%の雰囲気下で、600℃で焼成して脱バインダー処理した後、1250℃で3時間焼成した。ペレットをメノ乳鉢で粉砕し、その焼成粉末を用い、X線回折で構造解析した。得られた強誘電セラミック材料は、正方晶で、格子定数aが0.3990nmで、cが0.4030nmであった。
【0076】
得られたもう1枚の強誘電セラミックを研磨機で研磨した後、スパッターで両面に500nmの金電極をつけた。その後、更に切断し、10mm×2.5mm×0.427mmの計測サンプルを得た。得られたサンプルに対して、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した。室温で1700の誘電率を示し、110℃で誘電率が最大になったため、キュリー温度(Tc)が110℃であることがわかった。比抵抗は3×10Ωcmと絶縁性は低かった。粒径は2μm以上20μm以下であった。一方、誘電率を−100℃から250℃の温度範囲を2℃間隔、周波数1kHzの条件で測定した結果、室温付近で相転移を示すピークは見られなかった。また、−100℃から100℃でも相転移と思われる誘電率のピークは観察されなかった。その結果を表1に示す。
【0077】
また、その他の組成として98.8BaTiO・0.2Bi・1Yや97.5BaTiO・0.5Bi・2.0Y、97.5BaTiO・0.5Bi・2.0Yを作製し、誘電率を測定した結果、何れのサンプルも−100℃から50℃の温度範囲で従来の室温付近の転移由来の誘電率の増大が確認された。
【0078】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の強誘電セラミック材料は、鉛を含有しないで、キュリー温度を制御できる範囲が広く、室温付近の相転移が無く、優れた強誘電特性を示すので、環境への負荷が低い圧電体材料、強誘電メモリなどへ利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(100−a−b)BaTiO・aBi・bM(式中、MはBi以外の3価の金属を示す。a、bは1≦a≦15、0≦b≦5、5≦a+3b≦15である。)で表される酸化物からなることを特徴とする強誘電セラミック材料。
【請求項2】
前記bがb=0である請求項1記載の前記強誘電セラミック材料。
【請求項3】
前記aが1.07≦a≦3.5である請求項1記載の前記強誘電セラミック材料。
【請求項4】
前記bが1≦b≦2.4である請求項1記載の前記強誘電セラミック材料。
【請求項5】
前記Mが第5周期の遷移金属、原子番号が59以上69以下の希土類金属から選ばれる3価の金属であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の強誘電セラミック材料。
【請求項6】
前記MがY、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Erから選ばれた3価の金属であることを特徴とする請求項1記載の強誘電セラミック材料。
【請求項7】
前記bとaの比がb/a<1であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の強誘電セラミック材料。
【請求項8】
酸素濃度が18vol%以上の雰囲気下で焼成処理することで、
(100−a−b)BaTiO・aBi・bM(式中、MはBi以外の3価の金属を示す。a、bは1≦a≦15、0≦b≦5、5≦a+3b≦15である。)で表される酸化物からなる強誘電セラミック材料を製造することを特徴とする強誘電セラミック材料の焼成方法。
【請求項9】
前記焼成処理の焼成温度が1000℃以上であることを特徴とする請求項8記載の強誘電セラミック材料の焼成方法。
【請求項10】
前記焼成処理の焼成温度が1200℃以上であることを特徴とする請求項8または9記載の強誘電セラミック材料の焼成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−105905(P2010−105905A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209542(P2009−209542)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】