説明

弾性波デバイス及びその製造方法

【課題】気密性を高くすることが可能な弾性波デバイス及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、圧電基板2と、圧電基板2上に形成された弾性波素子4と、弾性波素子4と電気的に接続され、上面10aが圧電基板2の上面2aと平坦になるように、圧電基板2に埋め込まれた配線10と、弾性波素子4上に中空部20が形成され、かつ下面16aが圧電基板2の上面2a及び配線10の上面10aに接触するように、弾性波素子4を封止するキャップ16と、を具備する弾性波デバイス、及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波デバイスに関し、特に弾性波素子を封止した弾性波デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器等にフィルタやデュプレクサとして用いられる弾性波デバイスには、小型化が要求されている。弾性波デバイスに用いる弾性波素子としては、圧電基板上にIDT(Inter Digital Transducer)を形成した弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子や、圧電膜を電極で挟んだ圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)がある。
【0003】
特許文献1には、圧電基板と同じ材質からなる蓋体を備え、温度変化等に強い弾性表面波デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−246112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の弾性波デバイスでは、封止の気密性が不十分になることがあった。気密性が十分でない場合、弾性波デバイスに不具合を生じる可能性がある。本発明は上記課題に鑑み、気密性を高くすることが可能な弾性波デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された弾性波素子と、前記弾性波素子と電気的に接続され、上面が前記圧電基板の上面と平坦になるように、前記圧電基板に埋め込まれた配線と、前記弾性波素子上に中空部が形成され、かつ下面が前記圧電基板の上面及び前記配線の上面に接触するように、前記弾性波素子を封止するキャップと、を具備する弾性波デバイスである。本発明によれば、気密性の高い弾性波デバイスを実現することができる。
【0007】
上記構成において、前記キャップの下面は平坦である構成とすることができる。この構成によれば、キャップの下面と、圧電基板及び配線との間に隙間が生じることを抑制し、より気密性の高い弾性波デバイスを実現することができる。
【0008】
上記構成において、前記キャップは、前記弾性波素子を囲んでいる構成とすることができる。この構成によれば、気密性をより高めることができる。
【0009】
上記構成において、前記弾性波素子と前記配線により電気的に接続された電極パッドと、前記電極パッドと電気的に接続し、前記キャップを貫通する外部端子と、を具備し、前記キャップは、前記弾性波素子と前記電極パッドとを隔離する仕切部を有する構成とすることができる。この構成によれば、安定した特性を得て、かつ工程を簡略化することができる。
【0010】
上記構成において、前記圧電基板と、前記キャップとは、同一方向の線膨張係数は等しい構成とすることができる。この構成によれば、応力の発生を抑制し、気密性をより高めることができる。
【0011】
本発明は、圧電基板の上面と平坦な上面を有するように、前記圧電基板に埋め込まれる配線を形成する工程と、前記圧電基板の上面に、前記配線と電気的に接続する弾性波素子を形成する工程と、前記弾性波素子上に中空部が形成され、かつ下面が前記圧電基板の上面及び前記配線の上面に接触するように、前記弾性波素子をキャップ部により封止する工程と、を有する弾性波デバイスの製造方法である。本発明によれば、気密性の高い弾性波デバイスの製造方法を実現することができる。
【0012】
上記構成において、前記封止する工程は、前記圧電基板と前記キャップとを表面活性化法により接合する工程を含む構成とすることができる。この構成によれば、仕切部と圧電基板との間に隙間が生じることを抑制し、より気密性の高い弾性波デバイスの製造方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気密性を高くすることが可能な弾性波デバイス及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、弾性波デバイスを例示する平面図である。
【図2】図2(a)は比較例に係る弾性波デバイスを例示する断面図であり、図2(b)は実施例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図3】図3(a)から図3(e)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図4】図4(a)から図4(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【図6】図6(a)から図6(d)は、実施例2に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
初めに、弾性波デバイスの構成について説明する。図1(a)及び図1(b)は弾性波デバイスを例示する平面図である。図1(b)では、キャップ16を透視して図示している。
【0017】
図1(a)及び図1(b)に示すように、弾性波デバイスは圧電基板2、弾性波素子4、配線10、電極パッド12、電極ポスト14、及びキャップ16を備える。
【0018】
圧電基板2は、例えばLiTaOやLiNbO等の圧電体からなる。弾性波素子4は、IDT6及び反射器8を備える。IDT6、反射器8、配線10、及び電極パッド12は、例えばAl等の金属からなる。配線10は、IDT6と電極パッド12とを電気的に接続する。電極ポスト14は、例えばCu等の金属からなり、電極パッド12と電気的に接続し、キャップ16を貫通するように形成されている。つまり電極ポスト14は、弾性波デバイスの外部端子として機能する。キャップ16は、例えばLiTaOやLiNbO等の圧電体からなり、弾性波素子4を封止する。図1(a)に点線で示すように、キャップ16は弾性波素子4上に中空部20を有する。中空部20が形成されているため、IDT6や反射器8の励振は妨げられない。またキャップ16は電極パッド12上に中空部22を有し、電極ポスト14は中空部22に設けられる。
【0019】
次に、弾性波デバイスの断面について説明する。図2(a)は比較例に係る弾性波デバイスを例示する断面図であり、図2(b)は実施例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。なお、図2(a)及び図2(b)では、図1(a)のA−Aに沿った断面を図示しており、簡単のために電極ポスト14を形成していない状態を図示している。初めに比較例について説明する。
【0020】
図2(a)に示すように、IDT6、配線10及び電極パッド12は、それぞれ圧電基板2の上面2a上に配置された金属層からなる。キャップ16は、下面16aが圧電基板2の上面2aと対向するように、圧電基板2上に設けられる。穴28は弾性波素子4と対向し、後述する中空部20を形成する。穴30は電極パッド12と対向し、後述する中空部22を形成する。キャップ16は、弾性波素子4に対応する中空部20と、電極パッド12に対応する中空部22とを隔離する仕切部18を有する。
【0021】
キャップ16を圧電基板2上に設けると、キャップ16の下面16aは配線10の上面10aに接触する。配線10の上面10aの高さは上面2aの高さよりも大きいため、キャップ16による封止の気密性が低下することがある。詳述すると、上面10aの高さが上面2aの高さよりも高いため、下面16aが上面2aに接触しない箇所ができる。この場合、下面16aと上面2aとの隙間から、中空部20に内に水分や異物が浸入することがある。つまり、気密性が低下すると、IDT6や反射器8への異物の付着や、水分による腐食が発生し、弾性波デバイスの特性が悪化する恐れがある。次に実施例1に係る弾性波デバイスの構成について説明する。
【0022】
図2(b)に示すように、圧電基板2の上面2aには穴24が形成されており、配線10は穴24に埋め込まれている。配線10の上面10aは、圧電基板2の上面2aと平坦になっている。このため、キャップ16の下面16aは、上面2a及び上面10aの両方に接触する。また、仕切部18は、弾性波素子4及び電極パッド12の各々を囲む。
【0023】
次に、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。図3(a)から図5(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【0024】
図3(a)に示すように、まず圧電基板2の上面2aに、例えばエッチングを行い、穴24を形成する。穴24の深さは例えば数百nm〜1μmである。エッチングの方法としては、例えばCHF(フルオロメタン)、C(六フッ化エタン)等を用いたドライエッチングがある。
【0025】
図3(b)に示すように、例えば蒸着法やスパッタリング法により、上面2a及び穴24の内部に、例えばAl等の金属からなる金属層26を形成する。
【0026】
図3(c)に示すように、金属層26及び上面2aを、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)法により研磨する。詳細には、金属層26を研磨して上面2aを露出させ、露出した上面2aと穴24内部の金属層26とをさらに研磨する。これにより、図3(d)に示すように、穴24内に埋め込まれた配線10が形成される。上面2aと配線10の上面10aとは平坦になる。研磨後の配線10の厚さは例えば100nm以下である。
【0027】
図3(e)に示すように、例えば蒸着法やスパッタリング法により、上面2aに、例えばAl等の金属からなるIDT6、反射器8、及び電極パッド12を形成する。これにより、IDT6及び反射器8を備える弾性波素子4が形成される。IDT6と電極パッド12とは、配線10により電気的に接続される。
【0028】
図4(a)に示すように、キャップ16の下面16aに、例えばエッチングにより穴28及び30を形成する。キャップ16と圧電基板2とが対向した場合に、穴28は弾性波素子4上に配置され、穴30は電極パッド12上に配置される。また穴28と穴30との間には仕切部18が形成される。キャップ16の下面16aは平坦である。キャップ16は圧電基板2と同じ材質からなる。なお、図4(a)では、キャップ16を圧電基板2上に設けた場合とは、キャップ16の上下を反転して図示しており、下面16aが上に位置している。
【0029】
図4(b)に示すように、圧電基板2とキャップ16とを接合し、弾性波素子4を封止する。接合は、例えばArを照射することによる表面活性化常温接合法により行われる。つまり、圧電基板2の上面2a及び配線10の上面10aと、キャップ16の下面16aとは接触する。また仕切部18は配線10上に配置され、弾性波素子4と電極パッド12とを隔離する。このとき、上述のように、穴28は弾性波素子4上に配置され、中空部20を形成する。穴30は電極パッド12上に配置され、中空部22を形成する。
【0030】
図4(c)に示すように、キャップ16の中空部22と重なる領域に、例えばエッチングを行い、電極パッド12が露出するような開口部32を形成する。
【0031】
図4(d)に示すように、キャップ16上及び電極パッド12上に接触するように、例えばCu等からなるシードメタル34を形成する。さらにシードメタル34上にレジスト36を形成する。ただし、電極パッド12上のシードメタル34上には、レジスト36は形成されない。つまり、電極パッド12上のシードメタル34は開口部32から露出する。
【0032】
図5(a)に示すように、例えば電解メッキ法により、例えばCu等の金属からなる電極ポスト14を形成する。電極ポスト14は、キャップ16を貫通し、シードメタル34を介して電極パッド12と電気的に接続する。図5(b)に示すように、キャップ16上のシードメタル34、及びレジスト36を除去する。以上の工程により、実施例1に係る弾性波デバイスが完成する。
【0033】
キャップ16が有する仕切部18は、弾性波素子4と、電極パッド12とを隔離する。配線10が穴24に埋め込まれ、圧電基板2の上面2aと配線10の上面10aとは平坦になる。このため、キャップ16の下面16aと、上面2a及び上面10aとは接触し、下面16aと上面2aとの間に隙間が生じることが抑制される。従って、異物や水分が中空部20に浸入することを抑制でき、気密性の高い弾性波デバイスを実現することができる。
【0034】
上面2a及び下面16aの少なくとも一方に凹凸があると、下面16aと上面2aとの間に隙間が生じることがある。下面16aと上面2aとの間の隙間をなくし、気密性を高めるためには、上面2a及び下面16aは各々平坦であることが好ましい。また、圧電基板2とキャップ16との間に物体が介在すると、介在した物体により接合面に凹凸が生じ、気密性が低下する恐れがある。このため、圧電基板2とキャップ16とを接触させて、例えば表面活性化法等を用いて接合することが好ましい。
【0035】
気密性をより高めるためには、仕切部18は、弾性波素子4及び電極パッド12を囲んでいることが好ましい。仕切部18が弾性波素子4及び電極パッド12を囲み、弾性波素子4上に中空部20が形成されることで、励振が妨げられず、かつ中空部20に異物が浸入することが抑制される。特に、全ての方向において弾性波素子4を保護するためには、仕切部18が弾性波素子4及び電極パッド12を完全に囲んでいることが好ましい。
【0036】
圧電基板2とキャップ16とは同じ材質からなるとしたが、発明の適用例はこれに限定されない。圧電基板2とキャップ16とは、異なる材質で形成しても良い。ただし、圧電基板2とキャップ16とで線膨張係数が異なると、弾性波デバイスが加熱された際に応力が発生し、接合箇所が破損して気密性が保たれない可能性がある。応力の発生を抑制し、気密性を高めるためには、圧電基板2とキャップ16とは同じ材質からなることが好ましい。また、圧電基板2とキャップ16とが、同一方向の線膨張係数が等しくてもよい。
【0037】
電極ポスト14は、キャップ16を貫通するとしたが、例えば圧電基板2を貫通するように設けられてもよい。しかし、圧電基板2に開口部を設ける工程等において、弾性波素子4の特性に変化が発生する恐れがある。また、この場合、圧電基板2とキャップ16との両方に穴や開口部を形成するため、工程が複雑になる。安定した特性を得て、かつ工程を簡略化するためには、電極ポスト14はキャップ16を貫通するように設けることが好ましい。
【実施例2】
【0038】
実施例2に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。図6(a)から図6(d)は、実施例2に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。図3(a)から図3(e)に示した工程は、実施例2にも共通する。
【0039】
図6(a)に示すように、キャップ16の下面16aに穴28及び30を形成する。実施例2では、穴30を穴28よりも深くする。この工程は、例えばエッチングにより穴28及び30を形成した後、穴30が形成されている領域に対して、再度のエッチングを実行することで行われる。
【0040】
図6(b)に示すように、圧電基板2とキャップ16とを接合し、IDT6及び反射器8を封止する。このときのキャップ16の厚さは例えば150μmである。図6(c)に示すように、キャップ16を、厚さが例えば100μmになるまで研磨する。研磨により、電極パッド12上のキャップ16は除去され、中空部22から開口部32が形成される。
【0041】
図6(c)から後の工程は、図4(d)及び図5(a)に示した工程と同じである。以上の工程により、図6(d)に示すように、実施例2に係る弾性波デバイスが完成する。
【0042】
実施例2によれば、圧電基板2とキャップ16とを接合した後に、開口部32が形成されるまでキャップ16を研磨するため、弾性波デバイスの低背化が可能となる。また実施例1と同様に、気密性の高い弾性波デバイスを実現することができる。
【0043】
本発明は、例えば弾性表面波デバイス、弾性境界波デバイス及びFBAR等の弾性波デバイスに適用可能である。FBARを用いる場合、配線10は圧電膜を挟む電極と電気的に接続される。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
圧電基板 2
弾性波素子 4
IDT 6
反射器 8
配線 10
電極パッド 12
電極ポスト 14
キャップ 16
仕切部 18
中空部 20,22
穴 24,28,30
金属層 26
開口部 32
シードメタル 34
レジスト 36

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された弾性波素子と、
前記弾性波素子と電気的に接続され、上面が前記圧電基板の上面と平坦になるように、前記圧電基板に埋め込まれた配線と、
前記弾性波素子上に中空部が形成され、かつ下面が前記圧電基板の上面及び前記配線の上面に接触するように、前記弾性波素子を封止するキャップと、を具備することを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記キャップの下面は平坦であることを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記キャップは、前記弾性波素子を囲んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記弾性波素子と前記配線により電気的に接続された電極パッドと、
前記電極パッドと電気的に接続し、前記キャップを貫通する外部端子と、を具備し、
前記キャップは、前記弾性波素子と前記電極パッドとを隔離する仕切部を有することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記圧電基板と、前記キャップとは、同一方向の線膨張係数は等しいことを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
圧電基板の上面と平坦な上面を有するように、前記圧電基板に埋め込まれる配線を形成する工程と、
前記圧電基板の上面に、前記配線と電気的に接続する弾性波素子を形成する工程と、
前記弾性波素子上に中空部が形成され、かつ下面が前記圧電基板の上面及び前記配線の上面に接触するように、前記弾性波素子をキャップ部により封止する工程と、を有することを特徴とする弾性波デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記封止する工程は、前記圧電基板と前記キャップとを表面活性化法により接合する工程を含むことを特徴とする請求項6記載の弾性波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−223420(P2011−223420A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91765(P2010−91765)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】