説明

弾性表面波装置

【課題】球状弾性表面波素子を速やかにセンサーホルダに装着し、薬液や気体中の成分の分析を速やかに行える弾性表面波装置を得る。
【解決手段】球状の圧電体基材の球面における周回領域で、前記圧電体基材の中心を通る結晶のZ軸に垂直な平面で前記圧電体基材の中心を通る平面との交線に添った前記周回領域の部分に一対の櫛型電極を有し、前記櫛型電極が前記周回領域に弾性表面波を発生させて周回させ、前記圧電体基材の球面に前記櫛型電極に接続する素子電極を有する球状弾性表面波素子を備え、前記素子電極に接した導体バンプを備え、前記圧電体基材の球面における前記結晶のZ軸から垂直に測った距離が前記圧電体基材の球の半径の3割から8割の範囲の1つの円環状の領域に接して前記導体バンプを設置し、前記導体バンプをセンサーホルダの基板電極に接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、球状弾性表面波素子及び球状弾性表面波素子用センサーホルダから成る弾性表面波装置に関係している。
【背景技術】
【0002】
球状弾性表面波素子は、例えば特許文献1により知られている。球状弾性表面波素子は、直径が1mmから10mm程度の球状の水晶やニオブ酸リチウム等の圧電体基材の表面に形成される。その球面に形成した櫛型電極による弾性表面波発生部が弾性表面波を発生させて周回させ、圧電体基材の球面の円環状の周回領域で、圧電体基材の結晶のZ軸に垂直な平面との交線に添った周回領域を周回させている。
【0003】
櫛型電極による弾性表面波発生部に高周波が供給されると、弾性表面波発生部は上記圧電体基材の表面に弾性表面波を発生させ、その表面の一部を成す周回領域を周回させる。この弾性表面波の周波数や上記圧電体基材の上記周回領域を構成している材料やその周回領域の曲率等がある条件を満たしていると、弾性表面波発生部が発生されせた弾性表面波は周回領域の範囲外に拡散することなく周回領域の範囲内を繰り返し周回して伝搬する。
【0004】
このことは、圧電体基材の表面の周回領域以外の部分に何かが接触しても周回領域を周回する弾性表面波の周回時間(即ち、周回速度)には何等影響がないことを意味しているので、圧電体基材の表面の周回領域以外の部分は任意の形状にすることが出来る。即ち、圧電体基材の表面に球面の周回領域が設けられている場合には、それ以外の表面は球面状である必要はない。
【0005】
特許文献1の技術では、球状弾性表面波素子は、センサーホルダの2つの電極の間に挟まれて押さえられて支持され、センサーホルダの電極に押さえられる球状弾性表面波素子の部分は、圧電体基材の結晶のZ軸の両極(北極と南極)部分の素子電極である。その北極と南極の素子電極に接触する電極をセンサーホルダに設置し、球状弾性表面波素子をそのセンサーホルダの電極で挟んで保持している。
【0006】
特許文献2の技術では、上記周回領域に所定の物質を付着させる感応膜を形成し、この感応膜に所定の物質が付着した場合、その感応膜に付着した所定の物質の量に応じて上記周回領域を周回する弾性表面波の周回時間(即ち、周回速度)が遅くなる。従って、上記周回領域を周回する弾性表面波を検出し周回時間(即ち、周回速度)を測定することにより、感応膜に付着した所定の物質を検出する物質のセンサーとして用いる。この周回領域を周回する弾性表面波を検出する弾性表面波検出部は、弾性表面波発生部に兼用させることが出来る。
【0007】
また、特許文献2では、球状弾性表面波素子の周回領域以外の部分を削って球形から変形させて転がりを少なくする対策をしている。その削った部分がセンサーホルダで支持され、また、周回領域以外の部分に素子電極を配置し、素子電極を櫛型電極の弾性表面波発生部や弾性表面波検出部に電気接続する。素子電極をボンディングワイヤでセンサーホルダに形成した導体パターンと電気接続していた。
【0008】
特許文献3の技術では、球状弾性表面波素子の球面の北極および南極を平面に削り、そこに素子電極を形成し、その素子電極に電極プローブを接触させていた。
【0009】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】国際公開番号WO01/045255号公報
【特許文献2】特開2003−294713号公報
【特許文献3】特開2005−147736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の技術で、球状弾性表面波素子を所定の物質の量の測定に使用した場合、感応膜の種類によっては、1回の測定が終了し次回の測定が行なわれるまでの間に1回の測定において感応膜に付着された所定の物質が速やかに上記感応膜から分離し、複数回の測定の間に同じ感応膜の同じ球状弾性表面波素子を繰り返し使用することが出来る。しかしながら、多くの種類の感応膜は1回の測定が終了し次回の測定が行なわれるまでの間に1回の測定において感応膜に付着された所定の物質が速やかに上記感応膜から分離せず、次回の測定が開始されるときに前回の測定のときに感応膜に付着してそのまま感応膜に残留された所定の物質が次回の測定結果に影響を与えるので、複数回の測定の間に同じ感応膜の同じ球状弾性表面波素子を繰り返し使用することが出来ない。従って多くの種類の感応膜を使用した多くの種類の球状弾性表面波素子を、上述した如く所定の物質の量の測定に使用した場合、測定の度に球状弾性表面波素子を交換する必要がある。この交換の際には、球状弾性表面波素子の弾性表面波発生部や弾性表面波検出部の素子電極に対するセンサーホルダの電極との接続解除と再接続とが必要になる。
【0011】
球状弾性表面波素子の上記周回領域の径は球状弾性表面波素子の開発の進行に伴い徐々に小さくされており、現在は1mm程度に径が小さくなっていること、それに加え、球状弾性表面波素子が球状であるため、取り扱いが難しい問題がある。特許文献1の技術では、センサーホルダの電極が、球状弾性表面波素子の北極の素子電極と南極の素子電極に電気接続させるようにセンサーホルダに直立に設置する必要があり、その位置を維持する機構のコストが高価になる問題があった。また、径が小さな球状弾性表面波素子の弾性表面波発生部や弾性表面波検出部の素子電極に対するセンサーホルダの電極の接続解除と再接続に要する作業が煩雑になる問題があり、更に、センサーホルダの電極の間に球状弾性表面波素子に力を加えて押し込むために加える力の加減の調整が難しい問題があった。すなわち、センサーホルダの電極の間に挟むように押し込む球状弾性表面波素子を、センサーホルダの電極の間の適正な位置に設置し、所定の向きに配向させるために加える力の加減の調整が難しく保持位置の調整のコストが高価になる問題があった。
【0012】
また、特許文献2および特許文献3の技術では、球状弾性表面波素子は、周回領域以外の部分を削った形状のものを用いるので、この球状弾性表面波素子の一部の研削による製造コストが高価になる問題があった。
【0013】
本発明は、かかる従来の技術における問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、球状弾性表面波素子の径が小さくても球状弾性表面波素子の交換に伴う球状弾性表面波素子の弾性表面波発生部や弾性表面波検出部の素子電極に対するセンサーホルダの電極の接続解除と再接続作業を速やかに行うことが出来る弾性表面波装置を提供することにある。また、球状弾性表面波素子を所定の位置に容易に位置を合わせて確実に保持することが出来るとともに電極のコストを低減した簡易な構成のセンサーホルダを有する弾性表面波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、この課題を解決するために、球状の圧電体基材を有し、前記圧電体基材の球面における周回領域で、前記圧電体基材の中心を通る結晶のZ軸に垂直な平面で前記圧電体基材の中心を通る平面との交線に添った前記周回領域の部分に一対の櫛型電極を有し、前記櫛型電極が前記周回領域に弾性表面波を発生させて周回させ、前記圧電体基材の球面
に前記櫛型電極に接続する素子電極を有する球状弾性表面波素子を備え、前記素子電極に接した導体バンプを備え、前記圧電体基材の球面における前記結晶のZ軸から垂直に測った距離が前記圧電体基材の球の半径の3割から8割の範囲の1つの円環状の領域に接して前記導体バンプを設置し、前記導体バンプをセンサーホルダの基板電極に接させたことを特徴とする弾性表面波装置である。
【0015】
また、本発明は、上記導体バンプを上記基板電極に接合したことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0016】
また、本発明は、上記素子電極が、上記結晶のZ軸近くの位置から、上記結晶のZ軸から垂直方向に上記圧電体基材の球の半径の5割以上の位置までの大きさを有することを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0017】
また、本発明は、上記センサーホルダにダミーバンプを接合し、前記ダミーバンプを上記導体バンプ同士を結ぶ対角線に交差する線の端部に設置し、前記ダミーバンプを上記円環状の領域の上記球状弾性表面波素子に接させて設置したことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0018】
また、本発明は、上記ダミーバンプを導体で形成し、上記素子電極間の間隙を、上記ダミーバンプが上記球状弾性表面波素子に接する領域より広くしたことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0019】
また、本発明は、上記導体バンプを上記素子電極に接合したことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0020】
また、本発明は、上記基板電極が、上記結晶のZ軸近くの位置から、上記結晶のZ軸から垂直方向に上記圧電体基材の球の半径の5割以上の位置までの大きさを有することを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0021】
また、本発明は、上記球状弾性表面波素子にダミーバンプを接合し、前記ダミーバンプを上記導体バンプ同士を結ぶ対角線に交差する線の端部に設置し、前記ダミーバンプを上記円環状の領域の上記球状弾性表面波素子に接合させたことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0022】
また、本発明は、上記ダミーバンプを導体で形成し、上記基板電極間の間隙を、上記ダミーバンプが上記センサーホルダに接する領域より広くしたことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0023】
また、本発明は、上記導体バンプを半田ボールで形成したことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0024】
また、本発明は、上記導体バンプを上記素子電極および上記基板電極に半田付けしたことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0025】
また、本発明は、上記導体バンプおよび上記ダミーバンプを4箇所以上に設置したことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【0026】
また、本発明は、上記球状弾性表面波素子を、上記センサーホルダと上記センサーホルダに対向するガイド基板で挟んで保持したことを特徴とする上記の弾性表面波装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、球状弾性表面波素子の南極の部分に、上側櫛型電極に接続する電極と下側櫛型電極に接続する電極とを一緒に設置することで、球状弾性表面波素子を南極側で導体バンプの上に接させて設置し、導体バンプの下をセンサーホルダの基板電極に接触させて電気接続する表面実装を行うので、実装のコストを低減できる効果がある。そして、球状弾性表面波素子を上から置いて設置するので、それを保持するために左右から力を加えて保持する必要が無く、従来の、力の加減を調整して球状弾性表面波素子を設置する問題が解決され、球状弾性表面波素子を速やかにセンサーホルダへ表面実装することができる効果がある。また、球状弾性表面波素子とセンサーホルダの電極とそれに電気接続する導体バンプの位置を球状弾性表面波素子の側面から観察できるので、球状弾性表面波素子の電極とセンサーホルダの電極の位置のずれを容易に確認することができるので信頼性の高い実装を行える効果がある。従って、本発明の弾性表面波装置は、球状弾性表面波素子の上記周回領域の径が小さくなっても球状弾性表面波素子の交換に伴う球状弾性表面波素子の弾性表面波発生部や弾性表面波検出部の素子電極に対するセンサーホルダの電極の接続解除と再接続を速やかに行うことが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1と図2は、本実施形態の弾性表面波装置の構造を示し、図3から図6は、本実施形態の弾性表面波装置の組み立て工程を説明する図である。
(弾性表面波装置の構造)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る球状弾性表面波素子10とプリント配線板から成るセンサーホルダ20の斜視図である。図1(b)は、センサーホルダ20側からセンサーホルダ20を透視して観察した球状弾性表面波素子10の平面図である。直径が約1mmの球状の圧電体基材11を主要な部分とする球状弾性表面波素子10を、プリント配線板のセンサーホルダ20の基板電極21に設置した導体バンプ30に電気接続させて保持する。球状弾性表面波素子10は、その圧電体基材11の球の中心を通る結晶のZ軸11zを有する。この結晶のZ軸11zは、特開2003−115744号公報の図4および段落0054に示されている結晶のZ軸11zである。この結晶のZ軸11zと圧電体基材11の球面との2つの交点を北極11Nと南極11Sとする。この結晶のZ軸11zをセンサーホルダの面に垂直な方向に向けて球状弾性表面波素子10を配置する。
【0029】
(センサーホルダの構造)
センサーホルダ20をプリント配線板で形成し、その上に配線パターンに接続するランドパターンの基板電極21を形成する。このプリント配線板に他の電子部品を実装させて動作させることができる。あるいは、この弾性表面波装置のセンサーホルダ20にはセンサーホルダ20内の基板電極21に電気接続する外部接続電極パターンをセンサーホルダ20の下面に形成し、部品ソケットにこのセンサーホルダ20を設置し、その外部接続電極パターンをその部品ソケットの電極に電気接続して使用するか、あるいは、そのセンサーホルダ20の外部接続電極パターンを第2のプリント配線板の配線パターンに直に半田付けして使用することもできる。センサーホルダ20のプリント配線板は、絶縁基材をガラスエポキシとし銅の配線パターンを形成したプリント配線板を用いることができる。また、フレキシブルなポリイミド基板に銅の配線パターンを形成したプリント配線板を用いることもできる。
【0030】
センサーホルダ20の基板電極21に導体バンプ30を接合する。導体バンプ30の上に設置する球状弾性表面波素子10の素子電極13に導体バンプ30を接する位置が、圧電体基材11の球面の一部で、結晶のZ軸11zから垂直に測った距離が圧電体基材11
の球の半径の3割から8割の範囲の南極11S側の球面の1つの円環状の領域に接するように、導体バンプ30をセンサーホルダ20に設置する。また、導体バンプ30の設置箇所は2箇所以上に設置する。結晶のZ軸11zから垂直に測った距離が圧電体基材11の球の半径の8割より遠い位置の球状弾性表面波素子10の球面の位置は、センサーホルダ20の平面から53度以上の急な傾斜角を持ち、その面に接して支える導体バンプ30に大きな回転モーメントを与えるので、その導体バンプ30がセンサーホルダ20から剥離し易くなる問題を生じる。導体バンプ30を結晶のZ軸11zから圧電体基材11の球の半径の3割より短い距離の球状弾性表面波素子10の球面の位置に設置する場合は、そのように狭い領域で導体バンプ30が球状弾性表面波素子10を支えるため、球状弾性表面波素子10がセンサーホルダ20から転げ易くなる不具合を生じる。
【0031】
導体バンプ30は、寸法が基板電極21の位置から球状弾性表面波素子10に接触する位置までの間隙より大きくし、例えば、直径が0.08mmから0.3mmの半田ボールや直径75μmの金のボール等を基板電極21に接合することで、直径が1mm程度の球状弾性表面波素子10を安定に支える。センサーホルダ20の導体バンプ30は、好適には、図1のように、直径0.1mmの導体バンプ30をセンサーホルダ20上に、球状弾性表面波素子10の直径の約5割の約0.5mm程度の直径の円周上に4箇所以上設置する。導体バンプ30を4箇所以上設置することで、球状弾性表面波素子10を安定に支えることができる効果がある。導体バンプ30の寸法はその設置位置毎で異ならせても良い。センサーホルダ20はその導体バンプ30で球状弾性表面波素子10の圧電体基材11を支え、圧電体基材11の底部を基板電極21から約26μm持ち上げる。他の例として、センサーホルダ20に導体バンプ30を2つのみ設置することもできる。この場合は、センサーホルダ20は、圧電体基材11の底部に接して支え、それに加えて2つの導体バンプ30で支え、合計3点で球状弾性表面波素子10に接して保持することで安定に支える。
【0032】
また、導体バンプ30を、センサーホルダ20の基板電極21に接合して、直径0.5mmの円周上に4箇所、正方形の4角の位置に配置することができる。直径が0.1mmの導体バンプ30は、直径1mmの球状弾性表面波素子10を、基板電極21の上面から約26μm持ち上げ、直径が0.3mmの導体バンプ30は約126μm持ち上げて支える。導体バンプ30の他の製造方法は、センサーホルダ20にソルダーレジストを印刷し、基板電極21上のソルダーレジストに円形の開口部を形成し、その開口部に半田ペーストをメタルスクリーンで印刷し、次に、その半田ペーストを再溶融させることでソルダーレジストの開口部にボール状の導体バンプ30を設置することができる。また、ソルダーレジストの開口部の形状を円弧状に形成することで、円弧状の壁状の導体バンプ30を形成することもできる。更に他の導体バンプ30の他の製造方法は、センサーホルダ20の基板電極21にワイヤーボンディング装置で金属ワイヤーをボンディングして形成することも可能である。例えば、直径25μmの金線の先端に直径75μm程度に形成した金のボールの導体バンプ30を、直径0.5mmの円周上に4箇所、基板電極21にボンディングする。この場合は、この金のボールの導体バンプ30で支えられる球状弾性表面波素子10は、その圧電体基材11の底部が約3μm上方に持ち上げられる。この導体バンプ30を直径0.3mmの円周上に設置する場合は、球状弾性表面波素子10の圧電体基材11の底部は約50μm上方に持ち上げられる。この複数の導体バンプ30は、その先端を同一平面にそろえる平面状に研磨することもできる。
【0033】
(球状弾性表面波素子の構造)
球状弾性表面波素子10は、図1(a)に示すように、直径1mm程度の球形の圧電体基材11を主要部分とする。この圧電体基材11は圧電性材料で形成され、圧電性材料として例えば水晶、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)やLiTaO3(タンタル酸リチウム)、BSO(ビスマスシリコンオキサイド)、ランガサイト等が用いられる。この球状弾性表面波素子10には、南極11S側に、北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bとの素子電極13を形成する。図1(b)のように、各素子電極13は、圧電体基材11の中心を通る結晶のZ軸11z近くの位置から始まり、そのZ軸11zから垂直方向に圧電体基材11の球の半径の5割以上の位置に素子電極の縁13cあるいは13dを有する大きさに形成する。すなわち、素子電極13の長さを球状弾性表面波素子10の圧電体基材11の球の半径以上の長さに形成する。そして、北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bの間の間隙から成る素子電極間間隙14のパターンを形成する。素子電極間間隙14は、図1(a)のように、球状弾性表面波素子10をセンサーホルダ20に設置した後に側面から観察して素子電極13の位置と導体バンプ30の位置のずれを確認できるように形成する。
【0034】
そして、球状弾性表面波素子10の圧電体基材11の球面には、結晶のZ軸11zに垂直な平面で圧電体基材11の中心を通る平面との交線に添った円環状の周回領域12を有する。この周回領域12に、素子配線パターンとその先の北極接続用素子電極13aに一体に接続する北極11N側の櫛型電極15Nと、素子配線パターンとその先の南極接続用素子電極13bに一体に接続する南極11S側の櫛型電極15Sを形成する。これらは金属めっきパターンにより一対形成し、櫛型電極15Nと15Sによる弾性表面波発生部15を形成する。この弾性表面波発生部15の櫛型電極15N、15Sに高周波信号を印加することで周回領域12に沿って周回する弾性表面波を発生させる。球状弾性表面波素子10の弾性表面波の振動伝達経路は、周回領域12に限定され、北極11Nと南極11Sには弾性表面波が伝わらない。そのため、北極11Nと南極11Sの球面に圧力が加えられても影響が無く問題を生じない。また、この球状弾性表面波素子10の北極11Nに数字や記号を印刷し、個々の球状弾性表面波素子10を区別できるようにすることもできる。
【0035】
この周回領域12には、例えば、特定の蛋白質と結合する抗体から成る感応膜を形成しておく。また、例えば、気体分子を検出する弾性表面波装置では、周回領域12に、真空環境中でパラジウム・ニッケル合金の薄膜を約30nmの厚さに蒸着して感応膜を形成する。周回領域12に感応膜としてパラジウム・ニッケル合金の薄膜を形成した球状弾性表面波素子10は、濃度10ppmから100%までの水素濃度を検出するガスセンサとして用いることができる。その他に、周回領域12にその他の特定の分子に結合する感応膜を形成することで、気体中の微少量の匂い分子を検出する匂いセンサを構成することもできる。
【0036】
(変形例1)
弾性表面波装置は、変形例1として、図2のように構成することができる。
(変形例1の弾性表面波装置の構造)
図2(a)は、変形例1の球状弾性表面波素子10とプリント配線板から成るセンサーホルダ20の斜視図である。図2(b)は、センサーホルダ20側からセンサーホルダ20を透視して観察した球状弾性表面波素子10の平面図である。直径が約1mmの圧電体基材11から成る球状弾性表面波素子10を、プリント配線板のセンサーホルダ20の基板電極21に接合させた導体バンプ30とダミーバンプ30aに接触させて保持する。変形例1は、センサーホルダ20に導体バンプ30とともにダミーバンプ30aを設置したことを特徴とする。
【0037】
(変形例1のセンサーホルダの構造)
図2(b)のように、センサーホルダ20に、左右の配線パターンと接続する基板電極21を二箇所形成し、更に孤立ランドパターンを2箇所形成する。それらを、センサーホルダ20の面上の正方形の各頂点の位置に、基板電極21同士を対角線の端部に設置し、その対角線に交差する線の端部に孤立ランドパターンを設置する。そして、基板電極21
に導体バンプ30を接合するとともに、孤立ランドパターンにダミーバンプ30aを接合する。こうして、ダミーバンプ30aを導体バンプ30同士を結ぶ対角線に交差する線の端部に設置する。ダミーバンプ30aは、球状弾性表面波素子10に接する位置が、圧電体基材11の南極11S側の球面の一部で、結晶のZ軸11zから垂直に測った距離が圧電体基材11の球の半径の3割から8割の範囲の南極11S側の球面の1つの円環状の領域に接するように、ダミーバンプ30aをセンサーホルダ20に設置し接合する。ダミーバンプ30aは導体バンプ30と同一材料で形成しても良いが、導体バンプ30とは異なる絶縁材料で形成しても良い。例えば、ダミーバンプ30aは、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂あるいはセラミックス等の絶縁材料のボールで形成することが可能である。ダミーバンプ30aを絶縁材料で形成する場合は、孤立ランドパターンを省略しても良い。また、2箇所に導体バンプ30を設置し、導体バンプ30同士を結ぶ対角線に60度の角度で交差する第1の線分の端部にダミーバンプ30aを2箇所設置し、更に、その対角線に120度の角度で交差する第2の線分の端部にダミーバンプ30aを2箇所設置し、ダミーバンプ30aを合計4箇所に設置することも可能である。導体バンプ30も2箇所より多く設置することもできる。導体バンプ30およびダミーバンプ30aを4箇所以上に設置することで、球状弾性表面波素子10を導体バンプ30およびダミーバンプ30aで安定して支えることができる。
【0038】
(変形例1の球状弾性表面波素子の構造)
図2(b)のように、球状弾性表面波素子10に、センサーホルダ20の導体バンプ30に接触させる北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bとの素子電極13を形成する。ダミーバンプ30aを導体で形成した場合、素子電極13間に、ダミーバンプ30aが接する幅以上の素子電極間間隙14を設ける。それにより、ダミーバンプ30aが素子電極13の間に位置した場合も、ダミーバンプ30aにより素子電極13同士が短絡させられることが無くなる効果がある。そして、図2(b)のように、各素子電極13は、圧電体基材11の中心を通る結晶のZ軸11z近くの位置から、そのZ軸11zから垂直方向に圧電体基材11の球の半径の5割以上の位置までの大きさに形成する。
(変形例1の効果)
これにより、球状弾性表面波素子10の素子電極13の位置がセンサーホルダ20の導体バンプ30の位置からずれて配置された場合も、素子電極13の面積が広いため、素子電極13が導体バンプ30から外れずに接触して電気接続できる効果がある。すなわち、素子電極が大きく、球状弾性表面波素子10のセンサーホルダ20への配置位置のずれを十分吸収するので、球状弾性表面波素子10が容易にセンサーホルダ20に配置できる効果がある。
【0039】
(弾性表面波装置の組み立て方法)
以下で、図3から図5により、第1の実施形態の弾性表面波装置の組み立て工程を説明する。
(工程1)
先ず、図3(a)に示すように、銅やニッケル等の金属箔をエッチングすることで形成したリング状の収納パターン41を配列状に形成したガイド基板40を形成する。このガイド基板40の収納パターン41は、例えば、内径が0.34mm、外径1mmで厚さが30μmの金属箔のリング状に形成し、その収納パターン41のリングの内縁に、直径1mmの球状弾性表面波素子10の北極11Nの部分を接触させて収納させられるようにする。ガイド基板40の材料は、球状弾性表面波素子10の圧電体基材11よりも硬度が低い合成樹脂、例えば、PVAなどで形成する。これにより、球状弾性表面波素子10の収納パターン41への挿脱の際に、球状弾性表面波素子10の周回領域12がガイド基板40に触れることがあっても周回領域12の感応膜が傷付けられる恐れが少ない効果がある。
【0040】
(工程2)
次に、図3(b)に示すように、球状弾性表面波素子10の南極11Sの部分をエアーピンセット等で掴んで摘んで、その北極11Nの部分をガイド基板40の収納パターン41の内縁に接触させて、図4の平面図と図5(a)の側面図に示すように球状弾性表面波素子10をガイド基板40上に配置する。すなわち、球状弾性表面波素子10の南極11S側を上に向けてガイド基板40上に配列する。なお、球状弾性表面波素子10の南極11Sの部分に形成する素子電極13である北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bを、ニッケルや鉄等の強磁性体金属で形成することで、磁力ピンセットで南極11Sの素子電極13を掴んで球状弾性表面波素子10を摘むようにすることもできる。図4のように、ガイド基板40の収納パターン41に球状弾性表面波素子10を配置することで、球状弾性表面波素子10を安定に保持させることができ、球状弾性表面波素子10の取り扱いが容易になる効果がある。次に、図4のように、ガイド基板40の上から球状弾性表面波素子10の素子電極13のパターン(図1(b))を観察することで、球状弾性表面波素子10の配置を確認しつつ球状弾性表面波素子10を回転させて適切な方向に揃えて配向する。なお、この球状弾性表面波素子10として、予め容器に満たした被分析溶液に浸漬することで被分析溶液を付着させた球状弾性表面波素子10を、被分析溶液の容器からピンセットで掴んでガイド基板40に配置することも可能である。
【0041】
(工程3)
次に、図5(b)のように、基板電極21上に導体バンプ30を設置したプリント配線板から成る図1(a)のセンサーホルダ20を、ガイド基板40の上の球状弾性表面波素子10の上から重ねる。これにより、ガイド基板40の上の球状弾性表面波素子10の素子電極13である北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bに、センサーホルダ20の基板電極21上の導体バンプ30を押し当て接触させて保持する。こうすることで、北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bを導体バンプ30で支えることで、この球状弾性表面波素子10を転がらないように安定に保持することができる効果がある。感応膜が熱に弱い場合は、球状弾性表面波素子10に熱を加えずに、図5(b)の形で導体バンプ30を素子電極13に接するだけで電気接続させた弾性表面波装置を完成させる。ここで、図5(b)の構造にセンサーホルダ20と一体化された球状弾性表面波素子10群を被分析溶液に浸漬することで一括して球状弾性表面波素子10群に被分析溶液を付着させることもできる。
【0042】
(工程4)
ここで、感応膜が熱に強い場合は、センサーホルダ20の複数の導体バンプ30を再溶融させて、その導体バンプ30に複数の球状弾性表面波素子10の素子電極13を押し当て、複数の球状弾性表面波素子10を一括してセンサーホルダ20に半田付け接合して固定させる。次に、図5(c)のようにガイド基板40を外して、センサーホルダ20と球状弾性表面波素子10のみから成る弾性表面波装置を製造する。ここで、感応膜が繰り返し使用できない場合も、使用後に半田付け部分を再溶融して球状弾性表面波素子10をセンサーホルダ20から剥がし、感応膜を再生後に球状弾性表面波素子10を再使用することができる。
【0043】
以上の製造方法によれば、球状弾性表面波素子10の素子電極13をセンサーホルダ20の基板電極21に容易に位置合わせして接触させて電気接続できる効果がある。また、球状弾性表面波素子10の素子電極13の長さを、球状弾性表面波素子10の球面の直径の半分以上に形成する。この場合は、素子電極13の端部は、球状弾性表面波素子10の南極11sから、球状弾性表面波素子の半径の半分以上離れる。それにより、素子電極13の端部は球状弾性表面波素子10の南極11Sから球状弾性表面波素子10の直径の6.7%以上高い位置に来る。そのため、球状弾性表面波素子10をセンサーホルダ20に設置した後でも、球状弾性表面波素子10の側面から素子電極13の端部を観察でき、素子電極13と導体バンプ30の位置のずれを容易に確認できる効果がある。また、素子電極13をその他のパターンに形成して、その端部を球状弾性表面波素子10の南極11Sから球状弾性表面波素子10の直径の6.7%以上の高さの位置に配置させるようにすることで、同様な効果が得られる。
【0044】
図5(c)の構造で製造した弾性表面波装置では、球状弾性表面波素子10の北極11Nを上に向けて、被分析蛋白質が溶解している被分析溶液を上から、すなわち北極11N側から滴下し球状弾性表面波素子10の球面を周回領域12の感応膜まで流れ下らせて感応膜に塗布することができる。また、図5(c)の構造にセンサーホルダ20と一体化された球状弾性表面波素子10群を被分析溶液に浸漬することで一括して球状弾性表面波素子10群に被分析溶液を付着させることもできる。
【0045】
(変形例2)
弾性表面波装置の組み立て方法の変形例2として、工程3以降の工程を以下のように変えて、個々のセンサーホルダ20に個々の球状弾性表面波素子10を設置する作業を続けて行うことができる。
(工程3−1)
すなわち、先の実施形態の工程3(図5(b))において、センサーホルダ20の代わりに、球状弾性表面波素子10の南極11S部分を保持する窪みを有する第2のガイド基板を用い、ガイド基板40に設置した球状弾性表面波素子10の上部である南極11Sの部分に第2のガイド基板を押し当て、第2のガイド基板とガイド基板40で球状弾性表面波素子10を支える。
(工程3−2)
次に、その全体の上下を逆さにし、球状弾性表面波素子10の南極11Sの部分を第2のガイド基板の窪みで支える。
(工程3−3)
次に、球状弾性表面波素子10の上のガイド基板40を外して上に向けた北極11N部分を開放する。
【0046】
(工程3−4)
次に、第2のガイド基板で保持した球状弾性表面波素子10の北極11N部分をエアーピンセットで摘んで第2のガイド基板から持ち上げる。
(工程3−5)
次に、センサーホルダ20の基板電極21の上の導体バンプ30を赤外線で加熱し導体バンプ30を再溶融する。
(工程3−6)
次に、その導体バンプ30が冷却して固化する前に球状弾性表面波素子10の素子電極13をセンサーホルダ20の導体バンプ30に押し当てて半田付け接合することで、球状弾性表面波素子10を表面実装する。
(工程3−7)
次に球状弾性表面波素子10を設置するセンサーホルダ20を所定の位置に設置し、次の実装作業の準備をする。これにより、1個のプリント配線板のセンサーホルダ20に1個の球状弾性表面波素子10が設置される。
【0047】
(工程3−4から3−7の繰り返し)
この工程3−4から工程3−7を自動的に繰り返す。これにより、1個のプリント配線板のセンサーホルダ20に1個の球状弾性表面波素子10を自動的に速やかに設置できる効果がある。これにより、個々の球状弾性表面波素子10を個々のセンサーホルダ20に低コストで表面実装することができる効果がある。
【0048】
(変形例3)
ここで、変形例3として、図6の様なセンサーホルダ20を用いることもできる。
(工程1)
図6(a)の、ガイド基板40と蝶番42により連結したセンサーホルダ20を用い、先ず、ガイド基板40上に球状弾性表面波素子10を設置する。
(工程2)
次に、被分析蛋白質が溶解している被分析溶液を球状弾性表面波素子10の上から、すなわち南極11S側から滴下し球状弾性表面波素子10の球面を流れ下らせ周回領域12の感応膜まで流して塗布する。
(工程3)
次に、図6(b)のように、球状弾性表面波素子10をガイド基板40とセンサーホルダ20で挟んで保持する。すなわち、ガイド基板40の上の球状弾性表面波素子10の上から重ねて、ガイド基板40の上の球状弾性表面波素子10の素子電極13にセンサーホルダ20の基板電極21上の導体バンプ30を押し当て機械的に接触させることで電気接続させる。
【0049】
(変形例4)
また、変形例4として、図6(b)の構造に組み立てた後に被分析溶液を滴下することもできる。
(工程1)
図6(a)の構造を組み立てる。
(工程2)
次に、図6(b)の構造に組み立てる。
(工程3)
次に、この弾性表面波装置の上下を逆さにして、球状弾性表面波素子10の北極11Nを上に向ける。
(工程4)
南極11Sをセンサーホルダ20で保持した状態でガイド基板40を外して球状弾性表面波素子10の北極11N部分を開放する。
(工程5)
次に、被分析蛋白質が溶解している被分析溶液を球状弾性表面波素子10の北極11N側から滴下し周回領域12の感応膜まで流れ下らせて感応膜に塗布する。
(工程6)
次に、再度、ガイド基板40を球状弾性表面波素子10の北極11N部分に被せて保持させる図6(b)の構造に組み立てる。
(変形例4の効果)
変形例4によると、被分析溶液を滴下する以前に素子電極13に導体バンプ30を接触させて電気接続するので、素子電極13と導体バンプ30の接点が良好に電気接続できる効果がある。
【0050】
変形例3および変形例4では、球状弾性表面波素子10を容易に、着脱可能にしたセンサーホルダ20およびガイド基板40から外して、洗浄済みの球状弾性表面波素子10に速やかに交換できる効果がある。そして、球状弾性表面波素子10を、ガイド基板40とセンサーホルダ20で、着脱可能に保持することで、球状弾性表面波素子10を容易に洗浄し再利用できる効果がある。
【0051】
以上のように球状弾性表面波素子10をセンサーホルダ20に設置した後に、センサーホルダ20のプリント配線板の配線パターンから、40MHzから500MHzの矩形波の電気パルスを加え、例えば45MHzの近傍のRFバースト信号を印加する。このRFバースト信号は、基板電極21を伝達し、次に、導体バンプ30を介して球状弾性表面波
素子10の南極接続用素子電極13bおよび北極接続用素子電極13aに伝達する。このRFバースト信号が球状弾性表面波素子10の櫛型電極15Nと15Sから成る弾性表面波発生部15に印加されることで弾性表面波を発生させる。その弾性表面波を周回領域12を1回から500回ほど周回させ、周回して戻って来た弾性表面波を、弾性表面波検出部を兼ねる弾性表面波発生部15で検出する。弾性表面波が弾性表面波発生部15に戻る時間は球状弾性表面波素子10の周回領域12の感応膜に物質が結合することで変わることを利用して、球状弾性表面波素子10の周回領域12の感応膜への物質の結合の有無を検出する。
【0052】
この検出の正確さを図るために以下のように弾性表面波装置を構成することができる。すなわち、第1の球状弾性表面波素子10を用意し、その周回領域12の感応膜に被分析溶液を塗布して蛋白質を結合させ、更に、蛋白質を結合させない第2の球状弾性表面波素子10を用意する。そして、第1の球状弾性表面波素子10での測定結果と、第2の球状弾性表面波素子10での測定結果を比較し、両者の違いを検出することで蛋白質を検出する弾性表面波装置を構成することができる。
【0053】
<第2の実施形態>
(球状弾性表面波装置の構造)
図7(a)は、本発明の第2の実施形態に係る球状弾性表面波素子10とプリント配線板から成るセンサーホルダ20の斜視図である。図7(b)は、センサーホルダ20側からセンサーホルダ20を透視して観察した球状弾性表面波素子10の平面図である。第2の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、南極11S側に形成した北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bに導体バンプ30を接合させた球状弾性表面波素子10を製造し、この球状弾性表面波素子10の導体バンプ30を、プリント配線板のセンサーホルダ20の基板電極21に接触させて電気接続させて保持する点にある。
【0054】
(センサーホルダの構造)
センサーホルダ20をプリント配線板で形成し、その上に配線パターンに接続するランドパターンの基板電極21を形成する。基板電極21のパターンの長さは、図7(b)のように、圧電体基材11の中心を通る結晶のZ軸11z近くの位置から始まり、そのZ軸11zから垂直方向に圧電体基材11の球の半径の5割以上の位置に基板電極の縁21cあるいは21dを有する大きさに形成する。すなわち、基板電極21は球状弾性表面波素子10の圧電体基材11の球の半径以上の長さに形成する。北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bに接合させた導体バンプ30に接触させて電気接続させるそれぞれの基板電極21のパターンの間に、基板電極間間隙22を形成する。ここで、基板電極21のパターンの長さを球状弾性表面波素子10の圧電体基材11の球の半径以上の長さに形成したため、球状弾性表面波素子10をセンサーホルダ20に設置した後に、センサーホルダ20の面からの傾きが30度以下の方向の側面から観察すれば基板電極21のパターンの端部および基板電極間間隙22の端部を側面から観察できる。そのため、センサーホルダ20の面からの傾きが30度以下の方向の側面から観察することで、基板電極21と球状弾性表面波素子10の導体バンプ30の位置のずれを容易に確認することができる効果がある。
【0055】
(球状弾性表面波素子の構造)
本実施形態では、球状弾性表面波素子10の導体バンプ30は、半田ボールを、球状弾性表面波素子10の素子電極13、すなわち、北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bに接合して形成する。あるいは、導体バンプ30は、球状弾性表面波素子10の素子電極13にワイヤーボンディング装置で金属ワイヤーをボンディングして形成することも可能である。そして、球状弾性表面波素子10に形成した複数の導体バンプ30の先端を同一平面にそろえる平面状に研磨し、導体バンプ30の高さを揃えて、平面状のセンサーホルダ20の基板電極21に乗るように設置することもできる。4個以上の導体バンプ30を用いると、球状弾性表面波素子10を4個以上の支点で支えるため、球状弾性表面波素子10がセンサホルダ20上で転がらないように安定に支えることができる。また、球状弾性表面波素子10の素子電極13を円弧状に形成し、その素子電極13に半田ペーストをメタルスクリーンで印刷し、次に、その半田ペーストを再溶融させることで素子電極13上に円弧状の壁状の導体バンプ30を形成し、その壁状の導体バンプ30でセンサーホルダ20の基板電極21上に設置することで、球状弾性表面波素子10がセンサホルダ20上で転がらないように安定に支えることもできる。
【0056】
球状弾性表面波素子10の導体バンプ30は、圧電体基材11の南極11S側の球面の一部で、結晶のZ軸11zから垂直に測った距離が圧電体基材11の球の半径の3割から8割の範囲の南極11S側の球面の1つの円環状の領域に形成した素子電極13に接合する。また、導体バンプ30は2箇所以上設置する。結晶のZ軸11zから垂直に測った距離が圧電体基材11の球の半径の8割より遠い位置の球状弾性表面波素子10の面は、センサーホルダ20の平面から53度以上の急な傾斜角を持ち、その面に接合する導体バンプ30に大きな回転モーメントを与えるので、その導体バンプ30が球状弾性表面波素子10から剥離し易くなる問題を生じる。結晶のZ軸11zから垂直に測った距離が圧電体基材11の球の半径の3割より短い位置に導体バンプ30を設置する場合は、そのように狭い領域で導体バンプ30が球状弾性表面波素子10を支えるため、球状弾性表面波素子10がセンサーホルダ20から転げ易くなる不具合を生じる。
【0057】
(変形例5)
第2の実施形態の弾性表面波装置は、変形例5として、図8のように構成することができる。
(変形例5の弾性表面波装置の構造)
図8(a)は、変形例5の球状弾性表面波素子10とプリント配線板から成るセンサーホルダ20の斜視図である。図8(b)は、センサーホルダ20側からセンサーホルダ20を透視して観察した球状弾性表面波素子10の平面図である。直径が約1mmの圧電体基材11の表面に素子電極13を設置し、それに導体バンプ30を接合させた球状弾性表面波素子10を、プリント配線板のセンサーホルダ20の基板電極21に接触させ電気接続させて保持する。変形例5は、球状弾性表面波素子10に導体バンプ30とともにダミーバンプ30aを設置したことを特徴とする。
【0058】
(変形例5の球状弾性表面波素子の構造)
図8(b)のように、球状弾性表面波素子10の南極11S側に、北極接続用素子電極13aと南極接続用素子電極13bとの素子電極13を形成し、更に孤立素子電極パターンを2箇所形成する。それらを、球状弾性表面波素子10の面上の正方形の各頂点の位置に、素子電極13同士を対角線の端部に設置し、その対角線に交差する線の端部に孤立素子電極パターンを設置する。そして、素子電極13に導体バンプ30を接合するとともに、孤立素子電極パターンにダミーバンプ30aを接合する。こうして、ダミーバンプ30aを、導体バンプ30同士を結ぶ対角線に交差する線の端部に設置する。孤立素子電極パターンの位置は、結晶のZ軸11zから垂直に測った距離が圧電体基材11の球の半径の3割から8割の範囲の南極11S側の球面の1つの円環状の領域に孤立素子電極パターンを設置し、そこにダミーバンプ30aを接合する。ダミーバンプ30aは導体バンプ30と同一材料で形成しても良いが、導体バンプ30とは異なる絶縁材料で形成しても良い。ダミーバンプ30aを絶縁材料で形成する場合は、孤立素子電極パターンを省略しても良い。
【0059】
(変形例5のセンサーホルダの構造)
図8(b)のように、センサーホルダ20に、球状弾性表面波素子10の導体バンプ3
0に接触させて電気接続する基板電極21を形成する。ダミーバンプ30aを導体で形成した場合、基板電極21間に、ダミーバンプ30aが接する幅以上の基板電極間間隙22を設ける。それにより、ダミーバンプ30aが基板電極21の間に位置した場合も、ダミーバンプ30aにより基板電極21同士が短絡させられることが無くなる効果がある。そして、図8(b)のように、各基板電極21のパターンの寸法を、球状弾性表面波素子10の圧電体基材11の球の半径以上の寸法に形成する。
(変形例5の効果)
これにより、球状弾性表面波素子10の導体バンプ30の位置がセンサーホルダ20の基板電極21の位置からずれて配置された場合も、基板電極21の面積が広いため、基板電極21が導体バンプ30から外れずに接触して電気接続できる効果がある。すなわち、球状弾性表面波素子10のセンサーホルダ20への配置位置のずれを十分吸収するので、球状弾性表面波素子10が容易にセンサーホルダ20に配置できる効果がある。
【0060】
(弾性表面波装置の組み立て方法)
図9に第2の実施形態の弾性表面波装置の組み立て工程を示す。
(工程1)
図9(a)の側面図に示すように、先ず、球状弾性表面波素子10の南極11S側を上に向けてガイド基板40上に配列する。
(工程2)
次に、ガイド基板40の上から図7(b)のような球状弾性表面波素子10の素子電極13のパターンを観察することで、球状弾性表面波素子10の配置を確認しつつ、球状弾性表面波素子10の配置を適切な方向に回転させて揃えて配向する。
(工程3)
次に、図9(b)のようにセンサーホルダ20の平面を、ガイド基板40の上の球状弾性表面波素子10の上(南極11S側)から球状弾性表面波素子10に押し当てる。ここで、センサーホルダ20の平面を押し当てることで、球状弾性表面波素子10の南極11S側に突出している導体バンプ30がセンサーホルダ20の平面で押されて球状弾性表面波素子10が適切な方向に回転され、導体バンプ30の高さが自動的に揃えられて適切な方向に配向させられる効果がある。こうして、センサーホルダ20に球状弾性表面波素子10を設置する。
【0061】
(変形例6)
ここで、球状弾性表面波素子10の導体バンプ30をセンサーホルダ20の基板電極21に半田付けし、ガイド基板40を外した弾性表面波装置を製造することができる。
(変形例7)
また、ガイド基板40は球状弾性表面波素子10から外さずに、球状弾性表面波素子10の導体バンプ30はセンサーホルダ20の基板電極21に接触させるのみで半田付けせず、球状弾性表面波素子10の北極11Nをガイド基板40で支えることで導体バンプ30をセンサーホルダ20の基板電極21に押し当てる構造の弾性表面波装置を製造することもできる。
【0062】
(変形例8)
第2の実施形態の変形例8として、工程3以降の工程を以下のように変えて、個々のセンサーホルダ20に個々の球状弾性表面波素子10を設置する作業を続けて行うことができる。
(工程3−1)
すなわち、先ず、図9(b)のセンサーホルダ20の代わりに素子置き基板を用い、ガイド基板40を設置した球状弾性表面波素子10の上(南極11S側)に平板状の素子置き基板を押し当て、素子置き基板とガイド基板40で球状弾性表面波素子10を支える。(工程3−2)
次に、その全体を半回転させて上下を逆さにし、球状弾性表面波素子10を導体バンプ30で支えて素子置き基板の上に設置する。
(工程3−3)
次に、球状弾性表面波素子10の上のガイド基板40を外して、素子置き基板で保持した球状弾性表面波素子10の上方の北極11N側を開放する。
【0063】
(工程3−4)
次に、素子置き基板で保持した球状弾性表面波素子10をエアーピンセットで摘んで素子置き基板から持ち上げる。
(工程3−5)
次に、エアーピンセットで保持されている球状弾性表面波素子10の下側の導体バンプ30を赤外線で加熱し導体バンプ30を再溶融する。
(工程3−6)
次に、その導体バンプ30が冷却して固化する前にプリント配線板から成るセンサーホルダ20の所定位置まで球状弾性表面波素子10を移動させ、その導体バンプ30をセンサーホルダ20の基板電極21上に押し当てて半田付け接合する表面実装を行う。
(工程3−7)
次に、次の球状弾性表面波素子10を設置するプリント配線板のセンサーホルダ20を所定の位置に設置し、次の実装作業の準備をする。
【0064】
(工程3−4から3−7の繰り返し作業)
この工程3−4から工程3−7までの工程を自動的に繰り返して、1個の球状弾性表面波素子10を1個のプリント配線板のセンサーホルダ20に設置する実装作業を自動的に高速に行い、低コストで個々の球状弾性表面波素子10を個々のセンサーホルダ20に表面実装することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(a)本発明の第1の実施形態の球状弾性表面波素子とセンサーホルダの斜視図である。(b)本発明の第1の実施形態の球状弾性表面波素子をセンサーホルダ側からセンサーホルダを透視して観察した平面図である。
【図2】(a)本発明の第1の実施形態の変形例1の球状弾性表面波素子とセンサーホルダの斜視図である。(b)本発明の第1の実施形態の変形例1の球状弾性表面波素子をセンサーホルダ側からセンサーホルダを透視して観察した平面図である。
【図3】(a)本発明の実施形態のガイド基板の平面図である。(b)本発明の第1の実施形態の球状弾性表面波素子とガイド基板の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における球状弾性表面波素子をガイド基板に設置した平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の球状弾性表面波素子をセンサーホルダに設置する工程を説明する側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例の球状弾性表面波素子とセンサーホルダの側面図である。
【図7】(a)本発明の第2の実施形態の球状弾性表面波素子とセンサーホルダの斜視図である。(b)本発明の第2の実施形態の球状弾性表面波素子をセンサーホルダ側からセンサーホルダを透視して観察した平面図である。
【図8】(a)本発明の第2の実施形態の変形例1の球状弾性表面波素子とセンサーホルダの斜視図である。(b)本発明の第2の実施形態の変形例1の球状弾性表面波素子をセンサーホルダ側からセンサーホルダを透視して観察した平面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の球状弾性表面波素子をセンサーホルダに設置する工程を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0066】
10・・・球状弾性表面波素子
11・・・圧電体基材
11N・・・北極
11S・・・南極
11z・・・結晶のZ軸
12・・・周回領域
13・・・素子電極
13a・・・北極接続用素子電極
13b・・・南極接続用素子電極
13c、13d・・・素子電極の縁
14・・・素子電極間間隙
15・・・弾性表面波発生部
15N、15S・・・櫛型電極
20・・・センサーホルダ
21・・・基板電極
21c、21d・・・基板電極の縁
22・・・基板電極間間隙
30・・・導体バンプ
30a・・・ダミーバンプ
40・・・ガイド基板
41・・・収納パターン
42・・・蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状の圧電体基材を有し、前記圧電体基材の球面における周回領域で、前記圧電体基材の中心を通る結晶のZ軸に垂直な平面で前記圧電体基材の中心を通る平面との交線に添った前記周回領域の部分に一対の櫛型電極を有し、前記櫛型電極が前記周回領域に弾性表面波を発生させて周回させ、前記圧電体基材の球面に前記櫛型電極に接続する素子電極を有する球状弾性表面波素子を備え、前記素子電極に接した導体バンプを備え、前記圧電体基材の球面における前記結晶のZ軸から垂直に測った距離が前記圧電体基材の球の半径の3割から8割の範囲の1つの円環状の領域に接して前記導体バンプを設置し、前記導体バンプをセンサーホルダの基板電極に接させたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
前記導体バンプを前記基板電極に接合したことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記素子電極が、前記結晶のZ軸近くの位置から、前記結晶のZ軸から垂直方向に前記圧電体基材の球の半径の5割以上の位置までの大きさを有することを特徴とする請求項2記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記センサーホルダにダミーバンプを接合し、前記ダミーバンプを前記導体バンプ同士を結ぶ対角線に交差する線の端部に設置し、前記ダミーバンプを前記円環状の領域の前記球状弾性表面波素子に接させて設置したことを特徴とする請求項2又は3に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
前記ダミーバンプを導体で形成し、前記素子電極間の間隙を、前記ダミーバンプが前記球状弾性表面波素子に接する領域より広くしたことを特徴とする請求項4記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
前記導体バンプを前記素子電極に接合したことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
【請求項7】
前記基板電極が、前記結晶のZ軸近くの位置から、前記結晶のZ軸から垂直方向に前記圧電体基材の球の半径の5割以上の位置までの大きさを有することを特徴とする請求項6記載の弾性表面波装置。
【請求項8】
前記球状弾性表面波素子にダミーバンプを接合し、前記ダミーバンプを前記導体バンプ同士を結ぶ対角線に交差する線の端部に設置し、前記ダミーバンプを前記円環状の領域の前記球状弾性表面波素子に接合させたことを特徴とする請求項6又は7に記載の弾性表面波装置。
【請求項9】
前記ダミーバンプを導体で形成し、前記基板電極間の間隙を、前記ダミーバンプが前記センサーホルダに接する領域より広くしたことを特徴とする請求項8記載の弾性表面波装置。
【請求項10】
前記導体バンプを半田ボールで形成したことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項記載の弾性表面波装置。
【請求項11】
前記導体バンプを前記素子電極および前記基板電極に半田付けしたことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項記載の弾性表面波装置。
【請求項12】
前記導体バンプおよび前記ダミーバンプを4箇所以上に設置したことを特徴とする請求
項1乃至11の何れか一項記載の弾性表面波装置。
【請求項13】
前記球状弾性表面波素子を、前記センサーホルダと前記センサーホルダに対向するガイド基板で挟んで保持したことを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項記載の弾性表面波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−278149(P2008−278149A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118615(P2007−118615)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】