説明

形状測定装置

【課題】 表面形状の計測を高精度化することができ、触針を簡易に支持することによって小型の形状測定装置を提供すること。
【解決手段】 XYステージ装置82に設けたX駆動装置50がエアスライドによって可動部52を非接触で支持しリニアモータ51a,51bによって可動部52を駆動するので、載置台82aのXY軸方向に関する運動が滑らかで高精度になる。よって、光学素子OEをXY面内で移動させる際にZ軸方向の微小変位が生じにくくなり、触針11の変位量計測を正確にすることができ、光学素子OEの表面形状の計測精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズその他の光学素子の表面形状等を測定するための形状測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物として50mm以下のサイズの光学素子、いわゆるマイクロレンズについて3次元形状(立体形状)を測定するための技術として、様々な技術が提案されてきた。例えば、被測定物の表面に対して触針を直接接触させて、その変位量を測定する接触式測定方法がある(特許文献1参照)。また、被測定物の表面にレーザ光線等を入射させて、その反射光を受光することにより表面の凹凸を測定する非接触式測定方法も提案されている(特許文献2参照)。前者の接触式測定方法は、触針を被測定物に直接接触させるので、被測定物の表面物性に依存しない。このため、接触式測定方法は、多様な被測定物に対して正確な計測が可能である。
【特許文献1】特開平5−209741号公報
【特許文献2】特許3046635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記接触式測定方法において、(1)被測定物を載置する載置台側をボールネジ、モータ等からなるXY駆動装置を利用して水平面内で移動させつつ触針の変位量を計測する方法と、(2)被測定物に接触する触針側をXY駆動装置を利用して水平面内で移動させつつ触針の変位量を計測する方法とが考えられる。
【0004】
載置台側をXY駆動装置で変位させた場合、XY駆動装置によって被測定物を変位させる際にXY駆動装置が微細な上下動(具体的には100nm程度の上下振動)を発生させ、このような上下動が触針の変位量計測に影響して、表面形状の計測精度や再現性を低下させる。
【0005】
一方、触針側をXY駆動装置で変位させた場合、XY駆動装置が触針の変位量計測自体に悪影響を及ぼすことはないが、XY駆動装置が触針側すなわち上側に位置することになるので、XY駆動装置を支持する構造体等を含めて形状測定装置の大型化を招くとともに精度確保が困難になる。
【0006】
そこで、本発明は、表面形状の計測を高精度化することができ、触針を簡易に支持することによって小型の形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る形状測定装置は、被測定物を載置可能であって、所定方向に移動可能な載置台と、所定方向に関して固定的に配置され、被測定物の表面に当接可能な所定方向とは異なる方向に移動可能な触針と、載置台に載置した被測定物を所定方向に移動させることにより、被測定物と当接する触針が異なる方向に移動する量を測定する移動量計測手段と、を有する形状測定装置であって、載置台を所定方向へ移動させる駆動手段が、非接触状態で所定方向への駆動力を付与するリニアモータを有することを特徴とする。
【0008】
上記形状測定装置では、駆動手段が、載置台に対して非接触状態で所定方向への駆動力を付与するリニアモータを有するので、載置台の所定方向に関する運動が滑らかで高精度になる。よって、被測定物を例えば水平面内である上記所定方向に移動させる際に、例えば上下方向である上記異なる方向の微小変位が生じにくいので、触針の移動量すなわち変位量の計測を正確にすることができ、表面形状の計測精度や再現性を向上させることができる。
【0009】
本発明の具体的な態様又は観点では、駆動手段が、載置台を非接触で支持しつつ所定方向に案内する案内部を有する。
【0010】
本発明の別の態様では、上記形状測定装置において、載置台が、被測定物として最大寸法が50mm以下の光学素子を載置可能である。この場合、触針を被測定物に対して所定方向に移動させると、異なる方向に関する微小変位が計測に影響を与える可能性が大きくなるが、上記のような案内部を用いて被測定物を移動させることにより、計測精度を効果的に向上させることができる。
【0011】
本発明の別の態様では、案内部をロックして載置台を固定するロック手段を有する。この場合、必要なタイミング、具体的には計測の非常停止時や被測定物の脱着時に、ロック手段によって載置台を固定して案内部、触針、被測定物等の損傷を防止できる。
【0012】
本発明の別の態様では、案内部に設けた相対的に変位する可動部分が、セラミック材料で形成されている。この場合、リニアモータ等の発熱に起因して温度変化が生じてもサイズが変化することを防止できるので、案内部を高精度で動作させることができ、表面形状の計測精度を高めることができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、載置台上に設けられたミラーと当該ミラーに対して測長用のレーザ光を射出するレーザ光源とを有するともに、ミラーからの戻り光に基づいて所定方向である水平方向に関する載置台の変位を検出する補助計測手段をさらに備え、レーザ光源及びミラーが、触針に対応する高さ位置に配置される。この場合、触針の高さ位置で載置台の水平変位を検出することができ、触針に対する被測定物の水平位置をより正確に検出することができる。なお、レーザ光源等は、触針の先端に対応する高さ位置に配置されることがより望ましい。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、レーザ光源からミラーにかけての光路をカバーするとともに軸方向の伸縮を可能にする2重の筒部を有する遮蔽手段をさらに備え、各筒部の長さが、駆動手段による載置台のストローク量以上である。この場合、遮蔽手段によって計測ノイズの発生を防止して安定した動作を確保でき、各筒部の長さ設定によって載置台の移動を確保することができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、リニアモータが、マグネット部を有し、当該マグネット部が、案内部の可動部側に固定される。この場合、案内部の固定部側にリニアモータのコイル部が設けられるので、可動部側の移動の自由度を高めることができ、コイル部への配線の取り回しが容易になる。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、案内部が、所定方向として水平方向に直交して延びる2軸方向に載置台を案内する2つの案内機構を上下2段に有し、当該2つの案内機構のうち上側の案内機構が、被測定物のサイズ以上のストローク量であって、下側の案内機構に比較して同等以下のストローク量を実現する。この場合、上側の案内機構が大型化して形状測定装置の安定した設置が妨げられることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る形状測定装置を図面を用いて説明する。図1(a)及び1(b)は、形状測定装置の構造を説明する正面図及び側面図である。
【0018】
この形状測定装置100は、定盤81上に、XYステージ装置82と、Z駆動装置84とを固定した構造を有する。ここで、XYステージ装置82やZ駆動装置84等の動作は、駆動制御部98及び制御装置99によって制御されている。
【0019】
XYステージ装置82は、制御装置99の制御下で駆動制御部98に駆動されて動作する。XYステージ装置82は、XYステージ装置82の上部に設けた載置台82a上に着脱可能に固定された測定用治具HDを、XY面内で2次元的に任意の位置に滑らかに移動させることができる。測定用治具HDには、被測定対象である光学素子OEが保持されている。なお、測定用治具HDに保持される光学素子OEは、最大寸法が50mm以下のいわゆるマイクロレンズと呼ばれるものである。ここで、最大寸法とは、光学素子OEが円形の輪郭を有する場合その直径を意味し、光学素子OEが矩形の輪郭を有する場合その長辺を意味する。
【0020】
XYステージ装置82は、下側の駆動手段であるX駆動装置50と、上側の駆動手段であるY駆動装置60とを上下2段に備えてなる。前者のX駆動装置50は、定盤81側に固定された固定側支持部51と、固定側支持部51の上方に配置されて固定側支持部51に対して所定方向に相当するX軸方向にスライド移動する可動部52とを備える。また、後者のY駆動装置60は、X駆動装置50の可動部52上に固定された固定側支持部61と、固定側支持部61の上方に配置されて固定側支持部61に対して所定方向に相当するY軸方向にスライド移動する可動部62とを備える。
【0021】
X駆動装置50において、固定側支持部51の中央に設けた溝底部には、リニアモータの固定子であるコイル部51aが固設されている。一方、可動部52の底面の適所には、上記コイル部51aに対向して、リニアモータの可動子であるマグネット部51bが固設されている。固定側支持部51に設けたコイル部51aに駆動制御部98からの電力を供給することにより、マグネット部51bに推力を与えることができ、可動部52をX軸方向の任意の位置に自在かつ精密に移動させることができる。なお、可動部52の一端には、可動部52を固定側支持部51に対して必要なタイミングで固定するためのロック部材LM1がロック手段として設けられている。ロック部材LM1は、計測の非常停止時や被測定物である測定用治具HDの脱着時にオペレータが動作させる。具体的には、オペレータが不図示のロックボタンを押すと、制御装置99から駆動制御部98に制御信号が出力されてリニアモータのコイル部51aへの給電を停止させるとともに、制御装置99からロック部材LM1を駆動する信号が出力されてロック部材LM1が動作し、X駆動装置50のスライド移動を停止させる。ロック部材LM1を動作させることにより、可動部分51,52、触針11、被測定物である光学素子OE等に損傷が発生することを確実に防止できる。また、図示を省略しているが、X駆動装置50には、フィードバック用のリニアスケールを設けてあり、可動部52の精密な位置制御が可能になっている。
【0022】
固定側支持部51上面の適所には、エアスライド吐出口51gが設けられている。エアスライド吐出口51gには、駆動制御部98からの制御された圧縮空気が供給されており、固定側支持部51上面と、可動部52下面との間に制御された薄い空気層が形成される。これにより、固定側支持部51上に可動部52を非接触で支持することができ、リニアモータ51a,51bとの協働によって、可動部52ひいては載置台82aのX軸方向に関する運動が滑らかで高精度になる。なお、リニアモータ51a,51bに非接触で支持する機能を持たせることもでき、この場合、リニアモータ51a,51bが案内部の機能を一部兼ねることになる。
【0023】
Y駆動装置60において、固定側支持部61の中央に設けた溝底部には、リニアモータの固定子であるコイル部61aが固設されている。一方、可動部62の底面の適所には、上記コイル部61aに対向して、リニアモータの可動子であるマグネット部61bが固設されている。固定側支持部61に設けたコイル部61aに駆動制御部98からの電力を供給することにより、マグネット部61bに推力を与えることができ、可動部62をY軸方向の任意の位置に自在かつ精密に移動させることができる。なお、可動部62の一端には、可動部62を固定側支持部61に対して必要なタイミングで固定するためのロック部材LM2がロック手段として設けられている。ロック部材LM2は、上記ロック部材LM1と同様のものであり、計測の非常停止時や被測定物の脱着時にオペレータが動作させる。ロック部材LM2を動作させることにより、可動部分61,62、触針11、被測定物である光学素子OE等に損傷が発生することを確実に防止できる。また、図示を省略しているが、Y駆動装置60には、フィードバック用のリニアスケールを設けてあり、可動部62の精密な位置制御が可能になっている。
【0024】
固定側支持部61上面の適所には、エアスライド吐出口61gが設けられている。エアスライド吐出口61gには、駆動制御部98からの制御された圧縮空気が供給されており、固定側支持部61上面と、可動部62下面との間に制御された薄い空気層が形成される。これにより、固定側支持部61上に可動部62を非接触で支持することができ、リニアモータ61a,61bとの協働によって、可動部62ひいては載置台82aのY軸方向に関する運動が滑らかで高精度になる。なお、リニアモータ61a,61bに非接触で支持する機能を持たせることもでき、この場合、リニアモータ61a,61bが案内部の機能を一部兼ねることになる。
【0025】
以上において、固定側支持部51,61及び可動部52,62は、相対的に変位する案内部の可動部分であり、その本体部分は、窒化珪素等のセラミック材料で形成されている。このように可動部分を窒化珪素等で形成することにより、可動部分を軽量化しつつその剛性を高めることができる。結果的に、リニアモータ51a,51b,61a,61b等の発熱に起因して温度変化が生じても可動部分51,52,61,62のサイズが変化することを防止できるので、X駆動装置50やY駆動装置60を高精度で動作させることができ、測定用治具HDに保持された光学素子OEの表面形状の計測精度を高めることができる。なお、固定側支持部51,61や可動部52,62は、窒化珪素等に限らず、様々な材料で形成することができる。ただし、これらの可動部分51,52,61,62の剛性は、上下振動防止の観点から、180N/μm以上であることが望ましい。また、リニアモータ51a,51b,61a,61bへの配線や、エアスライド吐出口51g,61gへの配管は、X駆動装置50やY駆動装置60の動作を妨げないようになされており、載置台82aの移動に際して負荷を無くすようにしている。
【0026】
なお、X駆動装置50のX方向のストローク量と、Y駆動装置60のY方向のストローク量とを比較すると、両者のストローク量は、ともに150mm以内に設定したが、X駆動装置50のストローク量の方がY駆動装置60のストローク量よりも大きくなっている。つまり、下側の案内機構51,52の方が上側の案内機構61,62よりも大きくなっており、XYステージ装置82の構造を安定したものとできる。つまり、上側の案内機構61,62案内機構が大型化して形状測定装置100の安定した設置が妨げられることを防止できる。
【0027】
XYステージ装置82上の測定用治具HD、すなわち光学素子OEの位置は、載置台82aに設けたXミラー部材83aと、Yミラー部材83bとを利用して検出される。すなわち、Xミラー部材83aに対向して定盤81上に取り付けたレーザ干渉計83dを利用して載置台82aのX軸方向の位置が分かる。また、Yミラー部材83bに対向して定盤81側に取り付けたレーザ干渉計83eを利用して載置台82aのY軸方向の位置が分かる。
【0028】
X軸用のレーザ干渉計83dは、レーザ光LLを発生するレーザ光源83fと、図示を省略する干渉用光学系及びセンサを備え、Xミラー部材83aのミラー面で反射されたレーザ光LLの位相変化に基づいてXミラー部材83aのX軸方向の変位量を算出することができるようなっている。つまり、レーザ干渉計83dとXミラー部材83aとは、測定用治具HDのX変位を検出するための補助計測手段となっている。レーザ干渉計83dは、制御装置99の制御下で動作しており、レーザ干渉計83dの計測信号は、リアルタイムで制御装置99に出力され、X駆動装置50の動作が監視される。ここで、レーザ干渉計83d側には、第1の筒部S11が固定されており、Xミラー部材83a側には、第2の筒部S12が固定されている。両筒部S11,S12は、同軸で2重に配置されており、互いに干渉することなくX軸方向すなわち軸方向に伸縮可能となっている。つまり、両筒部S11,S12は、レーザ干渉計83dからXミラー部材83aにかけての光路をカバーする遮蔽手段となっている。このような筒部S11,S12を設けることで、レーザ光LLの検出に際して計測ノイズの発生を防止することができ、レーザ干渉計83dによる検出精度を高めることができる。なお、両筒部S11,S12の長さは、互いに略等しく、X駆動装置50のストローク量、すなわち可動部52や載置台82aの最大移動量以上となっている。これにより、載置台82aのX方向の移動を確保しつつ両筒部S11,S12によって常時レーザ光LLの光路をカバーすることができる。
【0029】
Y軸用のレーザ干渉計83eは、レーザ光LLを発生するレーザ光源83gと、図示を省略する干渉用光学系及びセンサを備え、Yミラー部材83bのミラー面で反射されたレーザ光LLの位相変化に基づいてXミラー部材83bのY軸方向の変位量を算出することができるようなっている。つまり、レーザ干渉計83eとYミラー部材83bとは、測定用治具HDのY変位を検出するための補助計測手段となっている。レーザ干渉計83eは、制御装置99の制御下で動作しており、レーザ干渉計83eの計測信号は、リアルタイムで制御装置99に出力され、Y駆動装置60の動作が監視される。ここで、レーザ干渉計83e側には、第1の筒部S21が固定されており、Yミラー部材83b側には、第2の筒部S22が固定されている。両筒部S21,S22は、遮蔽手段として、同軸で2重に配置されており、互いに干渉することなくX軸方向すなわち軸方向に伸縮可能となっている。このような筒部S21,S22を設けることで、レーザ光LLの検出に際して計測ノイズの発生を防止することができ、レーザ干渉計83eによる検出精度を高めることができる。なお、両筒部S21,S22の長さは、互いに略等しく、Y駆動装置60のストローク量、すなわち可動部62や載置台82aの最大移動量以上となっている。これにより、載置台82aのY方向の移動を確保しつつ、両筒部S21,S22によって常時レーザ光LLの光路をカバーすることができる。
【0030】
Z駆動装置84は、フレーム85上に昇降機構86を固定したものであり、昇降機構86は、フレーム85上部に固定されZ方向に伸びる支持軸86aと、支持軸86aに支持されてZ軸方向に移動する昇降部材86bと、昇降部材86bを昇降させる昇降駆動装置86cと、昇降部材86bに支持されたプローブ装置10とを備える。ここで、支持軸86aと昇降部材86bとは、プローブ装置10をZ軸方向に変位可能に支持する支持装置として機能する。
【0031】
昇降機構86において、昇降駆動装置86cは、支持軸86a側に固定されたコイル固定子CSと、昇降部材86b側に固定されたマグネット可動子MMとを備えるリニアモータである。これにより、昇降部材86bが支持軸86aに支持されて滑らかに昇降運動する。プローブ装置10は、支持装置であり、触針11を重力と略バランスした状態に保持しつつ所定の力で昇降運動を許容する軸受部89aを備える。軸受部89aは、空気を利用した静圧軸受けになっており、触針11は、昇降部材86bに非接触で支持されて滑らかに昇降運動する。また、昇降駆動装置86cは、プローブ装置10に内蔵した差動センサ(不図示)の検出結果に基づいてフィードバックをかけつつ昇降部材86bとともにプローブ装置10を昇降させる。これにより、触針11の先端に一定の低負荷を掛けた状態で触針11を広範囲に亘って昇降させることができる。
【0032】
プローブ装置10に設けた触針11の上下位置は、触針11の上端に設けられて触針11とともに昇降するZミラー部材91aと、フレーム85側に固定されたレーザ干渉計91bとを利用して検出される。ここで、Zミラー部材91aとレーザ干渉計91bとは、触針11のZ軸方向の変位量を測定するための変位計測手段すなわち移動量計測手段として機能する。
【0033】
Z軸用のレーザ干渉計91bは、詳細を省略するが、レーザ光LL’を発生するレーザ光源のほか、干渉用光学系やセンサを備え、Zミラー部材91aのミラー面で反射されたレーザ光LL’の位相変化に基づいてZミラー部材91aのZ軸方向の変位量すなわち触針11の下端の変位を算出することができるようなっている。レーザ干渉計91bは、制御装置99の制御下で動作しており、レーザ干渉計91bの計測信号は、リアルタイムで制御装置99に出力され、昇降機構86の動作が監視される。
【0034】
以上説明した形状測定装置100では、触針11下部の尖端が光学素子OEの表面に対して一定の負荷がかかるようにした状態で触針11を昇降させつつ、XYステージ装置82を適宜動作させて測定用治具HDを載置した光学素子OEをXY面内で2次元的に走査するように移動させる。これにより、触針11の尖端を測定用治具HDに載置した光学素子OEの光学面に沿って2次元的に移動させることができる。つまり、レーザ干渉計83d,83eを利用して得た載置台82aのXY座標と、レーザ干渉計91bを利用して得た触針11のZ座標とを、制御装置99で対応付けつつ必要な演算処理を行うことにより、光学素子OEの光学面の3次元的な表面形状を測定することができる。
【0035】
この際、上記形状測定装置100では、XYステージ装置82に設けたX駆動装置50がエアスライドによって可動部52を非接触で支持しリニアモータ51a,51bによって可動部52を駆動するので、載置台82aのXY軸方向に関する運動が滑らかで高精度になる。よって、光学素子OEをXY面内で移動させる際にZ軸方向の微小変位が生じにくくなり、触針11の変位量計測を正確にすることができ、光学素子OEの表面形状の計測精度を向上させることができる。具体的には、ボールネジやLMガイドを用いた従来型のXYステージで計測を行った場合のZ方向振動成分が100nmであったのに対し、本実施形態のXYステージ装置82で同様の計測を行った場合のZ方向振動成分は、50nmに向上するという結果を得た。
【0036】
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、形状測定装置100によって光学素子OEの光学面を計測したが、光学素子OEに限らず多様な被測定物について表面形状を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)、(b)は、本発明に係る形状測定装置の構造を説明する正面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0038】
10…プローブ装置、 11…触針、 50…駆動装置、 51…固定側支持部、 51a,51b…リニアモータ、 51b…マグネット部、 51g…エアスライド吐出口、 51g,61g…エアスライド吐出口、 52…可動部、 52,62…可動部、 60…駆動装置、 61…固定側支持部、 61a…コイル部、 61b…マグネット部、 81…定盤、 82…ステージ装置、 82a…載置台、 83a,83b…ミラー部材、 83d,83e…レーザ干渉計、 84…駆動装置、 86…昇降機構、 86b…昇降部材、 86c…昇降駆動装置、 91a…ミラー部材、 91b…レーザ干渉計、 98…駆動制御部、 99…制御装置、 100…形状測定装置、 HD…測定用治具、 LL…レーザ光、 LM1,LM2…ロック部材、 OE…光学素子、 S11,S12…筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を載置可能であって、所定方向に移動可能な載置台と、
前記所定方向に関して固定的に配置され、被測定物の表面に当接可能な前記所定方向とは異なる方向に移動可能な触針と、
前記載置台に載置した被測定物を前記所定方向に移動させることにより、前記被測定物と当接する前記触針が前記異なる方向に移動する量を測定する移動量計測手段と、
を有する形状測定装置において、
前記載置台を前記所定方向へ移動させる駆動手段は、非接触状態で前記所定方向への駆動力を付与するリニアモータを有することを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記載置台を非接触で支持しつつ前記所定方向に案内する案内部を有することを特徴とする請求項1記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記載置台は、前記被測定物として最大寸法が50mm以下の光学素子を載置可能である請求項1及び請求項2のいずれか一項記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記案内部をロックして前記載置台を固定するロック手段を有する請求項1から請求項3のいずれか一項記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記ロック手段は、計測の非常停止時及び被測定物の脱着時に動作する請求項4記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記案内部に設けた相対的に変位する可動部分は、セラミック材料で形成されている請求項1から請求項5のいずれか一項記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記載置台に設けられたミラーと当該ミラーに対して測長用のレーザ光を射出するレーザ光源とを有するとともに、前記ミラーからの戻り光に基づいて前記所定方向である水平方向に関する前記載置台の変位を検出する補助計測手段をさらに備え、前記レーザ光源及び前記ミラーは、前記触針に対応する高さ位置に配置される請求項1から請求項6のいずれか一項記載の形状測定装置。
【請求項8】
前記レーザ光源から前記ミラーにかけての光路をカバーするとともに軸方向の伸縮を可能にする2重の筒部を有する遮蔽手段をさらに備え、各筒部の長さは、前記駆動手段による前記載置台のストローク量以上である請求項7記載の形状測定装置。
【請求項9】
前記リニアモータは、マグネット部を有し、当該マグネット部は、前記案内部の可動部側に固定される請求項1から請求項8のいずれか一項記載の形状測定装置。
【請求項10】
前記案内部は、前記所定方向として水平方向に直交して延びる2軸方向に前記載置台を案内する2つの案内機構を上下2段に有し、当該2つの案内機構のうち上側の案内機構は、前記被測定物のサイズ以上のストローク量であって、下側の案内機構に比較して同等以下のストローク量を実現する請求項1から請求項9のいずれか一項記載の形状測定装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−183189(P2007−183189A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1888(P2006−1888)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】