説明

後輪駆動モジュールと車輪との切離し装置

後輪駆動モジュール(46)と、等速ジョイントハウジング(48)とを含む車輪の切離し装置が提供される。後輪駆動モジュール(46)はハウジング(50)と、少なくとも1つのアクチュエータ(52)と、少なくとも1つの噛合いクラッチ(66)とを含む。噛合いクラッチ(66)は、アクチュエータ(52)の作動時に作動する第1部分(68)と、第1部分に結合する第2部分(70)とを含む。等速ジョイントハウジングは、噛合いクラッチの第2部分と一体に形成されている。噛合いクラッチが作動し、車輪へとトルクが伝達されることが許容されない限り、車輪(18、20)が後輪駆動モジュールと切断される。1つの実施の形態では、噛合いクラッチの第1部分の動作に、液圧作動ピストン(54)が用いられる。別の実施の形態では、噛合いクラッチの第1部分の動作に、ボールランプが用いられる。車輪の切離し装置を含む車両の駆動系も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の切離し装置に関し、複合型等速ジョイントを含む後輪駆動モジュールと車輪との切離し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の従来のAWD(総輪駆動)の駆動系は、主たる前輪駆動アクスルが、従たる若しくは補助的な後輪駆動アクスルと連結されるものである。この駆動系においては、4×2運転モード(即ち、4輪のうちの2輪が駆動輪となる運転モード。)での運転時には、主たる前輪駆動アクスルに車両の走行動作を維持するだけでなく、従たる若しくは補助的な後輪駆動アクスルの、タイヤと路面との接触による抵抗損失を上回るだけの牽引力が供給される。駆動系の損失は、抵抗のみならず、オイルの攪拌損失、ビスカスカップリングの引きずり、慣性に起因するものである。
【0003】
4×2運転モードでの運転時における燃費を向上させるべく、損失を低減させ、さらに高燃費の駆動系を得るためには、従たる若しくは補助的な後輪駆動アクスル及び後輪を含む、後輪駆動アクスルを切離し可能なシステムであることが望ましい。ホイールハブの切離し装置は、一般に、リヤデファレンシャルハウジングと分離され、かつ、各車輪に覆われる位置に設けられ、又は、リヤデファレンシャルハウジングと一体化され、若しくは、車輪とリヤデファレンシャルハウジングとの間に設けられている。従って、後輪の切離し装置は、車輪の端部又は後輪駆動モジュール(RDM)の出力軸において行われるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車輪の端部において切離しを行う後輪切離し装置は、自動車においては、従来技術又は一般的な技術であるが、RDMの後輪切離し装置に比べて、より複雑なものである。RDMの後輪切離し装置における、RDMの内部のシステム損失は許容範囲内ではあるが、その一方で、このシステムは、パッケージサイズ及び車輪の切離し装置の構成要素の数を、不用意に増大させるものである。本発明は、パッケージサイズ及び車輪の切離し装置の構成要素の数の増大を抑制し、後輪駆動モジュールの出力軸に対して車輪を切離すことが可能な、車輪との切離し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車輪の切離し装置は、後輪駆動モジュール及び等速ジョイントハウジングとを含むものである。後輪駆動モジュールは、ハウジングと、少なくとも一部分がハウジング内に位置する少なくとも1つのアクチュエータと、該アクチュエータに駆動されるように構成された、少なくとも1つの噛合いクラッチとを含むものである。この噛合いクラッチは、前記アクチュエータの作動に伴って作動する第1部分と、該第1部分に結合する第2部分とを含むものである。前記等速ジョイントのハウジングは、前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成されている。そして、車輪に対するトルク伝達を許容するための、前記噛合いクラッチの第1部分と第2部分の結合をしない限り、車輪は後輪駆動モジュールと切離される。
【0006】
1つの実施形態では、車輪の切離し装置は、後輪駆動モジュールと、等速ジョイントハウジングとを含んでいる。前記後輪駆動モジュールは、圧力流体供給源と連通するキャビティを構成するハウジングを含み、少なくとも1つのピストンが前記キャビティ内に配置され、少なくとも1つの噛合いクラッチが前記ピストンによって作動されるように構成されている。前記ピストンは、液圧の増加時に作動するように構成されている。前記噛合いクラッチは、前記ピストンの作動時に作動する第1部分と、該第1部分に結合する第2部分とを含んでいる。前記等速ジョイントは、前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成されている。そして、車輪に対するトルク伝達を許容するべく、前記噛合いクラッチの第1部分と第2部分とを結合しない限り、車輪は後輪駆動モジュールと切離される。
【0007】
他の実施の形態では、車輪の切離し装置は、後輪駆動モジュールと等速ジョイントハウジングとを含んでいる。後輪駆動モジュールは、ハウジングと、少なくとも一部分が前記ハウジング内に位置する少なくとも1つの電磁アクチュエータと、該アクチュエータに駆動されるように構成された、少なくとも1つの噛合いクラッチとを含むものである。前記電磁アクチュエータは、少なくとも1つのボールと、ボールの直近に位置する少なくとも1つのアーマチャープレートと、その励起時に、前記アーマチャープレート及び少なくとも1つのボールを動かすためのコイルとを含んでいる。前記噛合いクラッチは、前記ボール及びアーマチャープレートの作動に伴って作動する第1部分と、該第1部分に結合する第2部分とを含むものである。前記等速ジョイントのハウジングは、前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成されている。そして、車輪に対するトルク伝達を許容するべく、前記噛合いクラッチの第1部分と第2部分とを結合しない限り、車輪は後輪駆動モジュールと切離される。
【0008】
自動車の駆動系には、車輪の切離し装置も設けられている。この駆動系には、少なくとも1つの車輪と、該1つの車輪にトルク分配をするための、少なくとも1つのリヤハーフシャフトと、車輪の切離し装置とを備える、後輪駆動アクスルが含まれている。車輪の切離し装置は、後輪駆動モジュールと、等速ジョイントハウジングとを含んでいる。前記後輪駆動モジュールは、ハウジングと、少なくとも一部分が前記ハウジング内に位置する少なくとも1つのアクチュエータと、該アクチュエータに駆動されるように構成された、少なくとも1つの噛合いクラッチとを含むものである。前記噛合いクラッチは、前記アクチュエータの作動に伴って作動する第1部分と、該第1部分に結合する第2部分とを含むものである。前記等速ジョイントのハウジングは、前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成されている。そして、車輪に対するトルク伝達を許容するべく、前記噛合いクラッチの第1部分と第2部分とを結合しない限り、車輪は後輪駆動モジュールと切離される。
【0009】
本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る、車輪の切離し装置を備えるAWD車両の駆動系を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る、車輪の切離し装置の断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る、車輪の切離し装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、詳しく説明する。ここでは、本発明を実施の形態に基づき説明するが、本発明がこれらの実施の形態に限定されるもではない点は、理解されるであろう。更に、本発明は、他の適切な置換、改良及び同等の構成をも包含する意図であり、同様の技術思想を含む発明は、本発明の特許請求の範囲に、全て含まれるものである。
【0012】
図1には、AWD自動車の駆動系が概略的に示されている。このAWD自動車の駆動系は、主たる駆動システムと、従たる若しくは補助的な駆動システムとを含むものである。主たる駆動システムは、主たる前輪駆動アクスル10と、1つ若しくは複数の主たる駆動輪12、14を含むものである。従たる若しくは補助的な駆動システムは、従たる若しくは補助的な後輪駆動アクスル16と、1つ若しくは複数の従たる駆動輪18、20を含むものである。図示の実施の形態では、主たる駆動システムは2つの主たる駆動輪を含み、従たる駆動システムには、2つの従たる駆動輪を含んでいる。
【0013】
AWD自動車は、4×4運転モードでの運転時(即ち、4輪の全ての車輪を介して駆動力を路面に伝える運転モード。)には、駆動トルクは、エンジン22からトランスミッション24を経て、前輪駆動デファレンシャルケース26へと入力される。駆動トルクは、更に前輪駆動デファレンシャル28及び動力伝達ユニット30とに分割される。前輪駆動デファレンシャル28(例えば、前輪駆動デファレンシャルギヤセット)へと分割された駆動トルクは、更に、フロントハーフシャフト32、34を介して、車両の一対の主たる(例えば、フロントの)駆動輪へと分配される。動力伝達ユニット30に分割された駆動トルクは、前輪駆動デファレンシャルケース26と動力伝達ユニット30とを直接的に連結する中空シャフト36へと伝達される。動力伝達ユニット30を介する駆動トルクは、ドライブシャフト38、後輪駆動アクスル16の順に駆動する。
【0014】
後輪駆動アクスル16は、リヤハーフシャフト40、42を介して、車両の一対の補助的な(例えばリヤの)駆動輪18、20にトルクを分配する。車輪の切離し装置44は、補助駆動輪18、20に対するトルクの流れを選択的に遮断するものである。本発明の実施の形態では、車輪の切離し装置44は、後輪駆動モジュール46及び等速(CV)ジョイントハウジング48とを含んでいる。
【0015】
図2を参照すると、後輪駆動モジュール46は、ハウジング50を含んでいる。ハウジング50には、少なくとも1つの、ハウジング50内に配置されたアクチュエータ52を部分的に収容するものである。本発明の第1の実施の形態では、アクチュエータ52は、少なくとも1つの液圧作動ピストン54を含んでいる。本発明の第1の実施の形態によれば、ハウジング50には、圧力流体供給源(図示省略)と連通する少なくとも1つのキャビティ56が設けられている。圧力流体供給源は、キャビティ56に対する流体の供給圧力を変化させることが可能なのである。流体流入部及び/又は管接続部58は、圧力流体供給源からの圧力流体の、後輪駆動モジュール46のキャビティ56への流入を許容するものである。本発明の実施の形態では、後輪駆動モジュール46は、少なくとも2つのキャビティ56を含んでいる。本発明の実施の形態では、2つのキャビティ56の各々に、別々の流体流入部及び/又は管接続部58が設けられている。他の典型的な実施の形態では、各車輪の各キャビティに対し、1つの流体流入部及び/又は管接続部58が設けられている。又、圧力流体供給源は特定の圧力流体発生手段に限定されるものではなく、ポンプ、バルブ、アキュムレータ、及び、電子制御ユニット(ECU)又はその他の組み合わせに限定されるものでもないことは、理解されるであろう。例えば、ポンプ(図示省略)は流体圧力を発生させる。ECU(図示省略)からの切替え又は信号は、ポンプの動力源及び/又は制御となる。例えば、ECUによって、アキュムレータ(例えば、自動車の圧力流体システムの一部であって、供給流体の波動を吸収し、圧力流体を蓄え、圧力下での急速な圧力流体供給を可能とする。)に対し、圧力スイッチにより監視をしながら、設定され又は予め定められた圧力範囲の圧力流体の補給を維持する。他の実施の形態では、ECUは後輪駆動モジュール46に対し直接的に圧力を付与する。更に別の実施の形態では、オートマチックトランスミッションから圧力流体が、圧力流体供給源となる。
【0016】
本発明の第1の実施の形態では、少なくとも1つのピストン54が、キャビティ56に配置されている。ピストン54は、流体の圧力が増加すると作動するように構成されている。ピストン54はキャビティ56の内部を軸方向へと作動する。本発明の実施の形態では、後輪駆動モジュール46は、少なくとも2つのピストン54(例えば、各後輪に1つのピストン)を含んでいる。又、ピストン54には、少なくとも1つのポケット57が設けられている。各ポケット57にはOリングシール59が嵌め込まれている。本発明の実施の形態では、Oリングシール59は、ピストン54の内径部と外径部とに設けられている。
【0017】
図3には、本発明の第2の実施の形態に係る、少なくとも1つの電磁ボールランプアクチュエータを含むアクチュエータ52が示されている。電磁ボールランプアクチュエータは、少なくとも1つのボール60と、アーマチャープレート62と、コイル64と、ばね65とを含むものである。この電磁ボールランプアクチュエータは、従来技術として一般的な動作をするものである。電磁ボールランプアクチュエータは、少なくとも一部分がハウジング50内に位置するものである。コイル64は、アーマチャープレート62の位置に作用する電磁界領域を生成するものである。特に、コイル64は、アーマチャープレート62が、プレート部68と等速で作動することを抑制するものである。プレート部68は、以下に、補足的に詳細を説明する噛合いクラッチ66の第1部分を含むものである。アーマチャープレート62及び噛合いクラッチ66のプレート部68の双方は、何れも、ボール60が移動するように構成された斜面(ランプ)を含んでいる。コイル64によって、アーマチャープレート62が、プレート部68と等速で作動することを抑制することで、ボール60は、アーマチャープレート62及び噛合いクラッチ66のプレート部68の斜面に沿った移動を促すものである。ボール60の動作は、噛合いクラッチ66のプレート部68をアーマチャープレート62から遠ざけ、それによって、噛合いクラッチ66が結合する(一例として、第1プレート部68及び第2プレート部70が、以下に、より詳細に説明されている)。ボール60が移動範囲の端部に位置するとき、アーマチャープレート62は、プレート部68と等速でスピン及び/又は回転する。コイル64が非励起状態となると、ばね65がアーマチャープレート62に作用するように構成されている。コイル64の励起時と比較して、電磁コイルランプアクチュエータの全体の厚みを減少させるように、ばね65の弾性力が作用する。本発明の実施の形態では、後輪駆動モジュール46は、少なくとも2つの電磁ボールランプアクチュエータを含むものである(例えば、1つの電磁ボールランプアクチュエータが、各後輪に配置されている。)。
【0018】
アクチュエータ52は、噛合いクラッチ66を作動させるように構成されている。本発明の実施の形態では、後輪駆動モジュール46は、少なくとも2つの噛合いクラッチ66を含んでいる(例えば、1つの噛合いクラッチが各後輪に設けられている。)。図2、図3に示されるように、噛合いクラッチ66は、第1部分68及び第2部分70により構成されている。噛合いクラッチ66の第1部分68は、軸方向に移動可能なカラーである。この軸方向に移動可能なカラーは、その直径方向内側面に噛合いクラッチとしての特徴を備えるものである。噛合いクラッチとしての特徴に係る形状及び機能は、従来技術として公知のものであれば良い。例えば、軸方向に移動可能なカラーは、噛合いクラッチ66の第2部分70の対応する細長いくぼみ(例えば、細長いくぼみ、溝、凹部、受け部)に係合可能な突起を含むものである。
【0019】
第1部分68の位置は、アクチュエータ52によって定められるように構成されている。本発明の第1の実施の形態では、噛合いクラッチ66の第1部分68は、ピストン54が作動するとき、起動及び/又は作動するように構成されている。第1の実施の形態では、噛合いクラッチ66の第1部分68がピストン54に対して回転可能となるように、ベアリング72が、ピストン54と噛合いクラッチ66の第1部分68との間に配置されている。第2の実施の形態では、噛合いクラッチ66の第1部分68の位置は、電磁ボールランプアクチュエータのコイル64が励磁され及び/又は非励磁状態となり、ボール60の動作が許容され及び/又は阻止されることによって、定められるように構成されている。従って、ボール60の動作は、噛合いクラッチ66の第1部分68を起動及び/又は動作させるものである。
【0020】
噛合いクラッチの第2部分70は、第1部分68と結合するように構成されている。少なくとも第1の実施の形態では、圧縮ばね等の付勢部材(例えば、弾力付勢部材)74によって、噛合いクラッチ66の第1部分68と、噛合いクラッチ66の第2部分70とが係合する方向の付勢力が、噛合いクラッチ66の第1部分68に対して与えられる。なお、圧縮ばねを例示して説明しているが、別の実施の形態では、その他の付勢部材を用いることも可能である。車輪の切離し装置44は、不作動及び/又は通常状態において、左右後輪18、20及び左右ハーフシャフト40、42を後輪駆動モジュール46から切離す態様で、設けられている。AWDの構成を有する自動車の、左右後輪18、20及び/又は左右ハーフシャフト40、42を後輪駆動モジュール46に接続するために、噛合いクラッチ66の第1及び第2部分68、70を結合し、各車輪へのトルク伝達を許容する。後輪18、20を後輪駆動モジュール46に接続するために、アクチュエータ52は、噛合いクラッチ66の第1及び第2部分68、70が結合するように、噛合いクラッチを作動させる。車輪の切離し装置44は、後輪駆動モジュール46から、リヤハーフシャフト40、42及び後輪18、20を、選択的に接続し切離すために、アクチュエータ52及び噛合いクラッチ66が用いられている。
【0021】
後輪駆動モジュール46にトルクを分配するために、一対の出力軸(例えば、ハーフシャフト78)の間の差動回転を促進するためのデファレンシャルが設けられており、これは、従来技術として公知のものである。ハーフシャフト78はスプラインを備え、噛合いクラッチ66の第1部分68とスプライン係合する。
【0022】
車輪の切離し装置44は、等速(CV)ジョイント80のための等速ジョイントハウジング48を含んでいる。CVジョイントは、一般に、駆動ユニットの軸を連結するために、一般の自動車に用いられている。図1に示されるように、CVジョイントは、リヤハーフシャフト40、42の端部間に配置され、それによって、車輪18、20と後輪駆動モジュール46とが連結される。公知の標準的なCVジョイント80のいくつかは、ボールジョイントが含まれるが、6ボールジョイント、8ボールジョイント、10ボールジョイント、トリポードプランジングジョイント、クロスグルーブジョイント、固定ボールジョイント、固定トリポードジョイント、ダブルオフセットジョイント等に限定されるものではない。CVジョイント80は、ジョイントブーツ(図示省略)等の、様々な構成部品を含んでいる。CVジョイントハウジング48は、従来の一般的なCVジョイントハウジングと実質的に同一であるが、このCVジョイントハウジングは、噛合いクラッチ66の第2部分70と一体に形成されている。このCVジョイントハウジング及び噛合いクラッチ66の第2部分70とは、例えば、ワンピース及び/又はモノリシック構造となっている。
【0023】
車輪の切離し装置44は、更に、後輪駆動モジュール46のハウジング50と、CVジョイントハウジング48との間に配置された、ベアリング82を含むものである。ベアリング82は、CVジョイントハウジング48に回転可能に保持されている。後輪駆動モジュール46は、更に、ベアリング82を保持するための保持クリップ76を含んでいる。保持クリップ76は、少なくとも一部分が、後輪駆動モジュール46のハウジング50内に位置し、又は、後輪駆動モジュール46のハウジング50と一体化されている。シール84は、後輪駆動モジュール46のハウジング50と、CVジョイントハウジング48との間に配置されている。シール84は、後輪駆動モジュール46からの潤滑油の漏れを防止するように構成されている。車輪の切離し装置44は、ハーフシャフト78とCVジョイントハウジング48との間に配置されたブッシュを備えている。ブッシュ86は、ノイズ又は抵抗を減衰させるように構成されている。
【0024】
本発明の実施の形態に係る車輪の切離し装置は、リヤハーフシャフト及び車輪と後輪駆動モジュールとの切離し及び接続を選択的に行うものである。従って、本発明に係る車輪の切離し装置は、リヤハーフシャフトを、車輪の端部からではなく後輪駆動モジュールから切離すように構成されている。CVジョイントが、後輪駆動モジュールの噛合いクラッチの一部として一体化され、車輪の切離しシステムの、パッケージサイズ及び車輪の切離し装置の構成要素の数の、更なる簡素化が図られる。例えば、本発明の実施の形態に係る、車輪の切離しシステムは、ビスカスカップリングを必要とせず、その結果、重量を軽減することができる。本発明の実施の形態に係る車輪の切離し装置は、リングギヤとデファレンシャルビスカスとの、スピン損失と、機械回転損失とを排除することで、燃費を向上させることも可能である。更に、本発明の実施の形態に係る車輪の切離しシステムは、既存の車両に対して、既存のリヤハーフシャフトの改造を施すことなく、装着することが可能である。
【0025】
本発明に係る上記説明及び実施の形態は、あくまでも本発明を説明する目的で、図示及び説明されたものである。これらの詳細な開示は、本願発明からそれ以外のものを除外するものでも、これに限定するものでもなく、上述の思想の範囲内で様々な修正及びバリエーション化が可能である。これらは、発明の原理と実施の形態とを説明することを目的とするものであり、又、当業者が本発明及び適宜修正を加えた本発明の様々な応用形態を実施することが可能となることを意図している。本発明は、上述の説明に詳細に開示されており、本発明の様々な応用例又は修正例は、当業者が上記説明を読み、理解することによって発想することが出来るものである。これら全ての応用例又は修正例は、本発明に含まれるものであり、更には、請求項に包含されるものである。本発明は、請求項及びそれと同等の範囲に及ぶものである。
【符号の説明】
【0026】
10:前輪駆動アクスル、 12、14:駆動輪、16:後輪駆動アクスル、 18、20:補助駆動輪、22:エンジン、24:トランスミッション、26:前輪駆動デファレンシャルケース、28:前輪駆動デファレンシャル、30:動力伝達ユニット、 32、34:フロントハーフシャフト、36:中空シャフト、38:ドライブシャフト、 40、42:リヤハーフシャフト、44:車輪の切離し装置、46:後輪駆動モジュール、48:等速ジョイントハウジング、50:ハウジング、52:アクチュエータ、54:ピストン(液圧作動ピストン)、56:キャビティ、57:ポケット、58:流体流入部及び/又は管接続部、59:Oリングシール、60:ボール、62:アーマチャープレート、64:コイル、65:ばね、66:噛合いクラッチ、68:プレート部(第1プレート部)、70:第2プレート部、72:ベアリング、74:付勢部材、76:保持クリップ、78:ハーフシャフト、80:等速ジョイント、82:ベアリング、86:ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジング内に少なくとも一部が位置する少なくとも1つのアクチュエータと、
該アクチュエータによって作動される少なくとも1つの噛合いクラッチと、
を含む後輪駆動モジュールを含み、
前記噛合いクラッチは、
前記アクチュエータの作動時に作動する第1部分と、
前記第1部分に結合する第2部分と、
前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成された、等速ジョイントハウジングとを含み、
前記噛合いクラッチが作動し、車輪へとトルクが伝達されることが許容されない限り、車輪が前記後輪駆動モジュールと切断されることを特徴とする車輪の切離し装置。
【請求項2】
前記噛合いクラッチの前記第1部分は、軸方向に移動可能なカラーを含むことを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項3】
前記軸方向に移動可能なカラーは、前記噛合いクラッチの前記第2部分の対応する細長いくぼみに係合可能な突起を含むことを特徴とする請求項2記載の車輪の切離し装置。
【請求項4】
前記噛合いクラッチの前記第1部分と、前記噛合いクラッチの前記第2部分とが係合する方向の付勢力を、前記噛合いクラッチの前記第1部分に対して付与する付勢部材を含むことを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項5】
前記付勢部材はばねを含むことを特徴とする請求項4記載の車輪の切離し装置。
【請求項6】
前記後輪駆動モジュールのハウジングと、前記等速ジョイントハウジングとの間に配置され、前記等速ジョイントハウジングに回転可能に保持されたベアリングを含むことを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項7】
前記後輪駆動モジュールのハウジングと、前記等速ジョイントハウジングとの間に配置され潤滑油の漏れを防止するように構成されたシールを含むことを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項8】
前記後輪駆動モジュールのハウジングにベアリングを保持するための保持クリップを含むことを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項9】
前記後輪駆動モジュールは、前記噛合いクラッチの前記第1部分に連結されるハーフシャフトを含むことを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項10】
前記ハーフシャフトと前記等速ジョイントハウジングとの間に配置されたブッシュを含むことを特徴とする請求項9記載の車輪の切離し装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは電磁アクチュエータを含み、該アクチュエータは、
少なくとも1つのボールと、
該ボールの直近に位置する少なくとも1つのアーマチャープレートと、
該アーマチャープレートの位置に作用する電磁界領域を生成するコイルと、
該コイルが非励起状態となると、前記アーマチャープレートに作用するように構成されたばねとを含み、
前記噛合いクラッチは、前記アーマチャープレートの位置に前記電磁界領域が作用する時、前記少なくとも1つのボールによって作動することを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項12】
前記ハウジングには、圧力流体供給源と連通するキャビティが設けられ、前記アクチュエータは、前記キャビティ内に少なくとも1つのピストンを含み、該ピストンは、液圧の増加時に作動するように構成され、前記噛合いクラッチは、前記ピストンの作動時に作動することを特徴とする請求項1記載の車輪の切離し装置。
【請求項13】
圧力流体を発生するポンプを含むことを特徴とする請求項12記載の車輪の切離し装置。
【請求項14】
前記ポンプを制御するための電子制御ユニットを含むことを特徴とする請求項13記載の車輪の切離し装置。
【請求項15】
前記後輪駆動モジュールは、圧力流体を蓄えるためのアキュムレータを含むことを特徴とする請求項12記載の車輪の切離し装置。
【請求項16】
前記ピストンと前記噛合いクラッチの前記第1部分との間に配置され、前記ピストンに対する前記噛合いクラッチの前記第1部分の回転を許容するためのベアリングを含むことを特徴とする請求項12記載の車輪の切離し装置。
【請求項17】
圧力流体供給源と連通するキャビティが設けられたハウジングと、
前記キャビティ内に設けられ、流体の圧力が増加すると作動するように構成されている、少なくとも1つのピストンと、
該ピストンによって作動される少なくとも1つの噛合いクラッチとを含む、後輪駆動モジュールを含み、
前記噛合いクラッチは、
前記ピストンの作動時に作動する第1部分と、
前記第1部分に結合する第2部分と、
前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成された、等速ジョイントハウジングとを含み、
前記噛合いクラッチの前記第1部分と前記第2部分とが結合し、車輪へとトルクが伝達されることが許容されない限り、車輪が前記後輪駆動モジュールと切断されることを特徴とする車輪の切離し装置。
【請求項18】
ハウジングと、
少なくとも一部分が前記ハウジング内に位置する少なくとも1つの電磁アクチュエータとを含み、
該電磁アクチュエータは、
少なくとも1つのボールと、
該少なくとも1つのボールの直近に位置するアーマチャープレートと、
該アーマチャープレートの位置に作用する電磁界領域を生成するコイルと、
該コイルが非励起状態となると、前記アーマチャープレートに作用するように構成されたばねと、
前記アーマチャープレートの位置に前記電磁界領域が作用する時、前記少なくとも1つのボールによって作動する、少なくとも1つの噛合いクラッチを含み、
該噛合いクラッチは、前記ボール及びアーマチャープレートの作動に伴って作動する第1部分と、
該第1部分に結合する第2部分と、
前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成された等速ジョイントのハウジングとを含み、
前記噛合いクラッチの前記第1部分と前記第2部分とが結合し、車輪へとトルクが伝達されることが許容されない限り、車輪が前記後輪駆動モジュールと切断されることを特徴とする車輪の切離し装置。
【請求項19】
後輪駆動アクスルと、
少なくとも1つの車輪と、
前記少なくとも1つの車輪にトルクを供給する少なくとも1つのリヤハーフシャフトと、
車輪の切離し装置とを含み、
前記後輪駆動アクスルは、
ハウジングと、
該ハウジング内に少なくとも一部が位置する少なくとも1つのアクチュエータと、
該アクチュエータによって作動される少なくとも1つの噛合いクラッチとを含み、
前記噛合いクラッチは、
前記アクチュエータの作動時に作動する第1部分と、
前記第1部分に結合する第2部分と、
前記噛合いクラッチの第2部分と一体に形成された、等速ジョイントハウジングとを含み、
前記噛合いクラッチが作動し、車輪へとトルクが伝達されることが許容されない限り、車輪が前記後輪駆動モジュールと切断されることを特徴とする車両の駆動系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−504736(P2012−504736A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529649(P2011−529649)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007029
【国際公開番号】WO2010/038148
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】