説明

徐放性L−アルギニン調合物並びにその製造及び使用法

本発明は、脳血管及び心臓血管の疾患及び異常の治療及び防止のための方法及び調合物を提供する。本発明は、少なくとも部分的に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤などの内皮酸化窒素シンターゼ(eNOS)のアゴニストを含む調合物と、L-アルギニンなどのNOの前駆体を含む調合物の、対象への投与を、脳血管及び/又は心臓血管の疾患又は異常を治療又は防止するために用いることができるという発見に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年5月9日出願の標題「徐放性L−アルギニン調合物並びにその製造及び使用法」の米国出願11/125,308号;及び2005年4月15日出願の標題「徐放性L−アルギニン調合物並びにその製造及び使用法」の米国出願 11/108,054号に基づく優先権を主張するものである。この出願は、2005年1月24日出願の標題「徐放性L−アルギニン調合物並びにその製造及び使用法」の米国出願 11/042,599号に関し、この米国出願は、2003年10月24日出願の標題「徐放性L−アルギニン調合物並びにその製造及び使用法」のPCT/US2003/033931に関し、このPCT出願は、2002年10月24日出願の標題「脳血管及び心臓血管疾患及び異常の治療のための方法及び組成物」の米国仮特許出願 60/421,258号と、2003年9月29日出願の標題「脳血管及び心臓血管の疾患及び異常の治療用の方法及び組成物」の米国仮特許出願60/507,312号と、2003年10月17日出願の標題「徐放性L-アルギニン調合物並びに製造法及び使用法」の米国仮特許出願60/512,035号とに関する。前述の出願のそれぞれの内容全体を引用をもってここに援用することとする。
【0002】
発明の背景
酸化窒素シンターゼ(NOS)と呼ばれる一ファミリの酵素は、重要な生物学的第二メッセンジャである酸化窒素(NO)をL-アルギニンから合成する。構成性NOS(cNOS)及び誘導性NOS(iNOS)を含め、いくつか異なるアイソフォームのNOSがある。cNOSには、内皮NOS(eNOS)及び神経NOS(nNOS)という二つの異なる種類がある。eNOSは、平滑筋の弛緩、血圧低下、及び血小板凝集の阻害の調節に関与する。eNOSは内皮細胞に常在し、細胞内Ca2+の受容体媒介性増加に応答して短時間でNOを放出する。 Michel et al., “Nitric
oxide synthases: which, where, how, and why?,” J. Clin. Invest 100: 2146-2152
(1997)。nNOSは長期増強に重要であり、神経細胞からのCa2+依存的放出を担っている。iNOSはホスト側防御において働き、免疫応答中に活性化マクロファージにより生成され、(例えば多様なサイトカイン、微生物生成物、及び/又は細菌性エンドトキシンにより)血管平滑筋細胞で誘導され、いったん発現すると、NOを長期間合成する。
【0003】
内皮細胞におけるcNOSによる酸化窒素の形成は、正常な血圧調節、例えば高脂血症、動脈硬化症、血栓症、及び再狭窄などの内皮機能不全の防止において重要な役割を果たすと考えられている。機能的には、脳及び内皮に存在する主要なシンターゼであるcNOSは、基礎条件下で活性であり、受容体媒介性アゴニスト又はカルシウム・イオノフォアに応答して起きる細胞内のカルシウム増加によっても更に刺激を受ける。cNOSはこの酵素の「生理的」形であると思われ、多様な群の生物プロセスにおいて役割を果たす。in vitro研究は、NOSの活性が酸化窒素自体によって負のフィードバックを受ける態様で調節されている可能性を示唆している。心臓脳腎血管循環においては、構成的に生成されるNOの主なターゲットは、血管平滑筋、心筋(心筋細胞)及び冠状血管平滑筋に位置する可溶性のグアニル酸シクラーゼであると考えられる。
【0004】
cNOSとは対照的に、誘導性のカルシウム独立的アイソフォームであるiNOSは当初、マクロファージでのみ解説された。今では、酸化窒素シンターゼの誘導は、他の多くの細胞種でも適切な刺激に応答して起きる場合があることが公知である。この誘導は、血管平滑筋細胞など、構成的な形の酸化窒素シンターゼを通常は発現しない細胞や、相当なレベルの構成的アイソフォームを発現する、心筋のものなどの細胞の両方で起きる。
【0005】
iNOSは基礎条件下では取るに足らない程度の活性しか示さないが、リポ多糖及び特定のサイトカインなどの因子に応答した発現が数時間に渡って起きる。この誘導された形の酵素は、構成的な形よりも大量のNOを生じ、誘導されたNOSは、この酵素の「病態生理的」形であると思われる。なぜなら、高濃度のiNOSにより生成されるNOは細胞にとって毒性となり得るからである。iNOSの誘導は糖質コルチコイド及びいくつかのサイトカインで阻害することができる。iNOSの転写後調節についてはあまり知られていない。NOを原因とする細胞障害効果は、おそらくは、グアニル酸シクラーゼ及びサイクリックGMPの形成からはほぼ独立である。この分野での研究の大半では、L-アルギニンの多様な誘導体を用いたiNOS阻害物質の刺激に焦点が当てられてきた。
【0006】
NOは、酸素分子と、L-アルギニンのグアニジノ窒素とからNOSにより触媒される反応で合成される比較的に安定なフリーラジカルである。この酵素は、神経細胞、マクロファージ、肝細胞、平滑筋細胞、血管の内皮細胞、及び腎臓の上皮細胞を含め、数多くの組織及び細胞種で見られる。NOはその遊離点近くで作用し、標的細胞に進入して、第二メッセンジャであるサイクリックGMP(cGMP)の形成を触媒する細胞質ゾル酵素グアニル酸シクラーゼを活性化する。NO形成から数秒以内にそれは酸化して亜硝酸塩又は硝酸塩になる。David L. Nelson,
Michael M. Cox, Lehninger Principles of Biochemistry, p. 892, 3rd ed. Worth
Publishers, 2000。
【0007】
多様な血管作動性物質に、そして物理的刺激にすら応答して、内皮細胞は内皮由来弛緩因子(EDRF)(内皮細胞由来酸化窒素(EDNO)とも呼ばれる)と呼ばれる短命の血管拡張物質を放出する。例えばセロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、プリン、及びスロンビンなどの炎症及び血小板凝集の生成物は、それらの作用の全部又は一部を、NOの放出を刺激することにより発揮する。弛緩の内皮依存的機序は、冠状循環を含め、多様な血管床で重要である。Hobbs et al., Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 39:
191-220 (1999)。NOは、その下にある平滑筋に容易に拡散し、cGMP濃度を上昇させるグアニル酸シクラーゼを活性化することにより、血管平滑筋の弛緩を誘導する。
【0008】
NOは、内皮依存的弛緩、可溶性グアニル酸シクラーゼの活性化、中枢及び末梢神経系における神経伝達、並びに活性化マクロファージの細胞障害性を担っている。 脈管構造においては、EDNOはいくつかの作用を有し、その中には血小板凝集の阻害、炎症細胞の接着、及び平滑筋細胞の増殖がある。特に、EDNOは血管緊張の重要な調節物質である。更に、通常用いられている内皮機能の指標である流量依存的拡張は大まかに言ってNOにより媒介されている。
【0009】
NOによる血管緊張の調節機序は、脈管構造を内張りしている内皮細胞に対するアセチルコリン、ブラジキニン、ずれ応力等の刺激によって開始する。NOは、L-アルギニンから、これらの内皮細胞に含まれたeNOSの触媒活性を通じて生成される。生成されたこのNOは内皮細胞を後にして、隣り合う平滑筋細胞のグアニル酸シクラーゼ活性を刺激する。グアニル酸シクラーゼが活性化するとcGMPのレベルが上昇し、こうして平滑細胞が弛緩して血管を拡張させ、血流が増す。Moncada et al., New Eng. J. Med. 329: 2002-2012 (1993);
Vallance et al., J. Royl. Coll.
Physician London
28: 209-219 (1994)。
【0010】
発明の概要
本発明は、限定はしないが心臓血管、脳血管及び末梢血管の疾患及び異常を含む血管の疾患及びの治療及び防止のための方法を提供するものである。本発明は、少なくとも部分的に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤と、L-アルギニンの徐放性調合物とを同時投与すると、血管の疾患及び異常の治療及び防止に対して、特に、コレステロール及びトリグリセリドの低下に対して、相乗効果を有するという発見に基づく。更に本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物と、最適な放出プロファイルを持つ組成物を生む製造法を提供する。更に、前記の調合物及び製造法により、便利に圧縮可能ではあるが過度に脆いことのない組成物が提供される。
【0011】
ある局面では、本発明は、対象にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤と、L-アルギニンを含む徐放性調合物とを投与するステップを含む、対象のコレステロールを低下させる方法を提供するものである。多様な実施態様では、本方法は、総コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール及び/又はトリグリセリド・レベルを低下させるものである。更に本方法は高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールを上昇させる。更に、本方法は、L-アルギニンなしで単にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を投与するよりも高い程度まで、総コレステロール、LDLコレステロール及び/又はトリグリセリド・レベルを低下させる、及び/又は、HDLコレステロールを上昇させる。
【0012】
別の局面では、本発明は、対象にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤及びL-アルギニンを投与することにより、不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の上昇した対象の酸化窒素生成を増加させる方法を提供する。更に別の局面では、本発明は、対象にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤及びL-アルギニンを投与することにより、不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の上昇した対象の血管拡張を増加させる方法を提供する。本発明のこれらの局面の多様な実施態様では、L-アルギニンは、徐放性調合物として存在する。他の実施態様では、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤はシンバスタチンである。いくつかの実施態様では、当該の対象は内皮細胞不全を有していてもよい。本発明のこれらの局面の他の実施態様では、本方法は内皮細胞機能を増加させるものである。
【0013】
別の局面では、本発明は、対象にL-アルギニンを投与することにより、不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の上昇した対象の酸化窒素(NO)生成を増加させる方法であって、前記L-アルギニンはADMAの阻害効果を克服するものである、方法を提供する。更に別の局面では、本発明は、対象にL-アルギニンを投与することにより、不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の上昇した対象の血管拡張を増加させる方法であって、前記L-アルギニンはADMAの阻害効果を克服するものである、方法を提供する。本発明のこれらの局面の多様な実施態様では、HMG-CoA
レダクターゼ阻害剤(例えばシンバスタチン)は、L-アルギニンと一緒に同時投与される。いくつかの実施態様では、前記L-アルギニンは徐放性調合物として存在する。本発明のこれらの局面の他の実施態様では、本方法は内皮細胞機能を増加させるものである。
【0014】
別の局面では、本発明は、重量で約25%乃至約75%のL-アルギニン又はその薬学的に許容可能な塩;重量で約0.5%乃至約5%のポリビニルピロリドン;重量で約5%乃至約40%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;重量で約2%乃至約20%の微結晶セルロース;重量で約3%未満の二酸化珪素;及び重量で約3%未満のステアリン酸マグネシウム;を含む徐放性L-アルギニン組成物を提供する。ある具体的な実施態様では、本組成物は、当該L-アルギニンがL-アルギニンモノヒドロクロリドである、重量で約50%のL-アルギニンモノヒドロクロリド;重量で約3%乃至約4%のポリビニルピロリドン;重量で約35%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;重量で約10%の微結晶セルロース;当該二酸化珪素がコロイド状二酸化珪素である、重量で約1%未満のコロイド状二酸化珪素;及び重量で約1%未満のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0015】
別の局面では、本発明は、L-アルギニンを顆粒化剤で顆粒化して顆粒を形成するステップと;前記顆粒を湿式磨砕するステップと;前記顆粒を乾燥させるステップと;前記顆粒を乾式磨砕するステップと;前記顆粒を少なくとも一種の徐放性剤と混合するステップとを含む、L-アルギニンの徐放性組成物を作製する方法を提供する。多様な実施態様では、前記の混合するステップは、顆粒を予備混合、混合及び最終混合するステップを含んでもよい。別の実施態様では、本方法は、顆粒化するステップの前にL-アルギニンを結合剤と一緒に乾燥混合するステップを含んでもよい。前記結合剤はポリビニルピロリドンであってもよい。
【0016】
本発明のこの局面の特定の実施態様では、本方法は、重量で当該徐放性調合物の約50%であるL-アルギニンを、ポリビニルピロリドンを含む顆粒化剤で顆粒化するステップであって、ポリビニルピロリドンが重量で当該徐放性調合物の約3%乃至約4%の間である、ステップと;前記顆粒を湿式磨砕するステップと;前記顆粒を乾燥させるステップと;前記顆粒を乾式磨砕するステップと;前記顆粒をヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合するステップであって、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが重量で当該徐放性調合物の約35%である、ステップとを含む。更に本方法は、前記顆粒を微結晶セルロース、コロイド状二酸化珪素及びステアリン酸マグネシウムと混合するステップを含んでもよく、但しこの場合、前記微結晶セルロースは重量で当該徐放性調合物の約10%であり、コロイド状二酸化珪素は当該徐放性調合物の約1%未満であり、そして前記ステアリン酸マグネシウムは重量で当該徐放性調合物の約1%未満を含む。
【0017】
別の局面では、本発明は、血管疾患又は異常を治療又は防止する際に使用する、L-アルギニンの徐放性調合物(例えばL-アルギニンの徐放性顆粒など)を含む食用バーを提供するものである。前記食用バーは更に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えばシンバスタチン)も含んでよい。多様な実施態様では、前記食用バーは、コレステロールを低下させる、C反応性タンパク質を低下させる、アルツハイマー病を治療もしくは防止できる、及び/又は、間欠性跛行を治療もしくは防止することができるものである。
【0018】
別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物の食用バーを対象に投与するステップを含む、対象の血管疾患又は異常を防止又は治療する方法を提供するものである。更に別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物の食用バーを対象に投与するステップを含む、対象のコレステロールを低下させる方法を提供する。更に別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物の食用バーを対象に投与するステップを含む、対象の酸化窒素を増加させる方法を提供する。更なる局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物の食用バーを対象に投与するステップを含む、対象の血管拡張を増加させる方法を提供する。別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物の食用バーを対象に投与するステップを含む、対象のアルツハイマー病を治療又は防止する方法を提供する。更に別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物の食用バーを対象に投与するステップを含む、対象の間欠性跛行を治療又は防止する方法を提供する。更に別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物の食用バーを対象に投与するステップを含む、対象のC反応性タンパク質を低下させる方法を提供する。前述の局面のうちのいくつかの実施態様では、前記食用バーはHMG-CoA レダクターゼ阻害剤(例えばシンバスタチン)を更に含んでもよい。
【0019】
別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物を対象に投与するステップを含む、対象のコレステロールを低下させる方法を提供するものである。多様な実施態様では、本方法は、対象の総コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、及び/又はトリグリセリドを低下させる、及び/又は、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールを上昇させる、ものかも知れない。別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物を対象に投与するステップを含む、アルツハイマー病を治療又は防止する方法を提供するものである。更に別の局面では、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物を対象に投与するステップを含む、対象の間欠性跛行を治療又は防止する方法を提供する。更に別の局面では、本発明は、L-アルギニン(例えば徐放性L-アルギニン)を対象に投与するステップを含む、対象のC反応性タンパク質を低下させる方法を提供する。本発明の前述の局面のうちのいくつかの実施態様では、当該の徐放性調合物は、重量で約25%乃至約75%のL-アルギニン又はその薬学的に許容可能な塩;重量で約0.5% 乃至約5%のポリビニルピロリドン;重要で約5%乃至約40%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;重量で約2% 乃至約20% の微結晶セルロース;重量で約3%未満の二酸化珪素;及び重量で約3% 未満のステアリン酸マグネシウムを含む。ある具体的な実施態様では、当該の徐放性調合物は、L-アルギニンがL-アルギニンモノヒドロクロリドである、重量で約50%のL-アルギニンモノヒドロクロリド;重量で約3%乃至約4%のポリビニルピロリドン;重量で約35%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;重量で約10%の微結晶セルロース;二酸化珪素がコロイド状二酸化珪素である、重量で約1%未満のコロイド状二酸化珪素;及び重量で約1%未満のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0020】
多様な他の局面では、本発明は、重量で約25%乃至約75%のL-アルギニン又はその薬学的に許容可能な塩;重量で約0.5%乃至約5%のポリビニルピロリドン;重量で約5%乃至約40%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;重量で約2%乃至約20%の微結晶セルロース;重量で約3%未満の二酸化珪素;及び重量で約3%未満のステアリン酸マグネシウムを含む徐放性L-アルギニン組成物を対象に投与するステップを含む、血管疾患又は異常を治療又は防止する方法、アテローム性硬化症を治療又は防止する方法、血管拡張を増加させる方法、及び/又は、酸化窒素の生成を増加させる方法を提供するものである。前述の局面のいくつかの実施態様では、当該の徐放性調合物は、L-アルギニンがL-アルギニンモノヒドロクロリドである、重量で約50%のL-アルギニンモノヒドロクロリド;重量で約3%乃至約4%のポリビニルピロリドン;重量で約35%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;重量で約10%の微結晶セルロース;二酸化珪素がコロイド状二酸化珪素である、重量で約1%未満のコロイド状二酸化珪素;及び重量で約1%未満のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0021】
別の局面では、本発明は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤及びL-アルギニンの徐放性調合物を対象に投与するステップを含む、対象のC反応性タンパク質を低下させる方法を提供するものである。本方法は、単にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を単独で、あるいはL-アルギニンを単独で投与するよりも高い程度まで、対象のC反応性タンパク質を低下させる。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明白であろう。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、限定はしないが心臓血管、脳血管及び末梢血管の疾患及び異常を含む血管の疾患及び異常を治療及び防止する方法を提供するものである。本発明は、少なくとも部分的に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤と、L-アルギニンの徐放性調合物とを同時投与すると、(脳血管、心臓血管及び末梢血管の疾患及び異常を含む)血管の疾患及び異常の治療及び防止に対して、特に、コレステロールの低下に対して、驚くべき相乗効果を有するという発見に基づく。更に、前記徐放性L-アルギニン、そして選択的にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を、血管拡張を増す、NO生成を増す、そしてC反応性たんぱく質を低下させる、ために用いてもよい。別の実施態様では、ここで解説された調合物及び方法を、例えば血管の疾患又は異常の発生、及び/又は事象の発生のリスクのある集団などで、疾患、異常及び/又は事象の開始を遅らせるために、用いてもよい。当該HMG-CoAレダクターゼ阻害剤と、L-アルギニンの徐放性調合物とは、対象に順次投与しても、又は同時に投与してもよい。当該レダクターゼ阻害剤及びL-アルギニンを単一の調合物内に含めてもよい。
【0024】
更に、本発明は、L-アルギニンの徐放性調合物と、ある組成物に最適な放出プロファイルを持たせる製造法を提供する。更に、前記の調合物及び製造法は、組成物を便利に圧縮可能であるが過度に脆くないようにするものである。
【0025】
ある実施態様では、本発明の方法で用いられる調合物は、少なくとも一つの徐放剤(本発明の目的のために、制御放出及び徐放が交換可能に用いられている場合がある)、例えば内皮酸化窒素シンターゼの徐放性アゴニスト(例えばHMG-CoAレダクターゼ阻害剤及び/又はL-アルギニンなどの酸化窒素の前駆体)を含む。別の実施態様では、当該のL-アルギニンは、対象の全身にゆっくりと放出される。このようなL-アルギニンのゆっくりとした放出により、血漿内のL-アルギニンの薬物動態プロファイルが、NOの生成に必要なL-アルギニンを実質的に一定にNOSに供給するものとなる。従って、該調合物は、in vivoでゆっくりと溶解し、対象にとって治療上有効となるように、実質的に均一な量のL-アルギニンを一定期間にわたって放出することができる。別の実施態様では、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、対象の全身にゆっくりと放出される。更なる実施態様では、NOの生成は、長期にわたって実質的に均一である。
【0026】
本発明の別の局面では、(限定はしないが心臓血管、脳血管、末梢血管の疾患及び異常を含む)血管の疾患、間欠性跛行、重大な四肢の虚血、及びアルツハイマー病の治療用の組成物を、食品の形で提供する。食品の形のこのような組成物を、血管拡張を増す、NO生成を増す、そしてコレステロールを低下させるためにも用いてよい。好ましくは、当該の食品は、処方健康バーなどのバーの形であるとよい。食品の使用により、単一の錠剤に取り入れられるよりも多量のL-アルギニンを提供することが可能になる。本発明は、1グラムを超えるL-アルギニンや所望の他の作用薬を提供することのできるバーを提供する。ある実施態様では、L-アルギニンを、即時放出調合物、例えばL-アルギニンの即時放出顆粒として食用バーに加える。別の実施態様では、当該のバーは、L-アルギニンの徐放性顆粒などを含む徐放性調合物を含む。別の実施態様では、当該のバーは、更に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤などの付加的な作用薬を含有する。好ましくは、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤はシンバスタチンなどのスタチンであるとよい。
【0027】
定義
本発明を更に説明する前に、本明細書、実施例及び請求項で用いられたいくつかの用語を便宜上、ここに集める。
【0028】
ここで用いられる場合、そうでないと明示しない限り、用語「対象」には哺乳動物が含まれる。用語「哺乳動物」には、限定はしないが、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、及びヒトが含まれる。
【0029】
ここで用いられる場合の用語「治療する」、「治療する」及び「治療」等は、治療薬又は調合物を、ある疾患又は異常、疾患又は異常の症状、あるいは、ある疾患又は異常に対する素因を有する患者に、又は、前記患者由来の摘出組織に、前記疾患又は異常及び/又は事象を治癒する、治す、軽減する、緩和させる、変える、加療する、防止する、改善する、発症を遅らせる、前記疾患又は異常の進行を遅らせる、前記疾患又は異常、前記疾患又は異常の症状、あるいは、ある疾患又は異常及び/又は事象に対する素因を向上させる又は影響を与える目的で、適用又は投与することを言う。
【0030】
ここで用いられる場合の用語「血管の疾患」又は「血管の異常」は、概して、血管の疾患又は異常を言い、限定はしないが心臓血管、脳血管、及び末梢血管の疾患又は異常を含む。心臓の血管の疾患とは、心臓の血管の疾患を言う。例えばKaplan, R. M., et al.,
"Cardiovascular diseases" in Health and Human Behavior, pp. 206-242
(McGraw-Hill, New York 1993)を参照されたい。心臓の血管の疾患は、一般に、例えば高血圧(ここでは高血圧とも言及される)、冠状動脈性心疾患、脳卒中、及びリウマチ性心疾患を含め、いくつかの形の一つである。末梢血管の疾患又は異常とは、心臓外の血管のいずれかの疾患を言う。例えば、末梢血管の疾患とは、血液を脚及び腕の筋肉に運ぶ血管の狭窄を言う場合がある。脳血管の疾患とは、血液を脳に運ぶ血管の能力に影響する疾患をいう。
【0031】
用語「アテローム性硬化症」は、血管の疾患及び異常や、関係する医療分野で開業している医師が認識及び理解する状態を包含するものである。アテローム性硬化症による心臓血管の疾患、冠状動脈性心疾患(冠状動脈心疾患又は虚血性心疾患としても知られる)、脳血管の疾患及び末梢血管の疾患は、すべてアテローム性硬化症の臨床発現であり、従って、用語「アテローム性硬化症」及び「アテローム性硬化症性疾患」に包含される。
【0032】
ここで、二つ以上の化合物の対象への投与を言う際に用いられる場合の用語「同時投与」又は「同時投与される」は、同じ又は異なる経路で投与される場合のある当該化合物が、それぞれの薬理効果が時間的に重なるように同時に(例えば混合物として)又は順次投与されることを意味する。少なくとも二つの化合物の投与に用いられる場合、他に明示しない限り、ここで用いられる場合の用語「順次」は、当該化合物が、それぞれの薬理効果が時間的に重なるように投与されることを意味する。いくつかの実施態様では、作用薬を実質的に同時に同時投与する。「実質的に同時に」とは、本発明の調合物が、対象に、少なくとも一つの付加的な作用薬と時間的に近い点で投与されることで、これらの作用薬が、例えば、しかし限定はしないが、NOS活性、NOS生成、又は血管拡張を増すなど、付加的な効果、又は更に相乗的な効果すら発揮し得ることを意味する。
【0033】
ここで用いられる場合の用語「NOの前駆体」には、L-アルギニンなど、天然NOのいずれかの基質前駆体が含まれる。
【0034】
ここで用いられる場合の用語「天然NO」とは、L-アルギニンの生体転化又はL-アルギニン依存経路を通じて生成される酸化窒素を言う。用語「内皮由来弛緩因子(EDRF)」又は「内皮由来酸化窒素(ENDO)」は「天然NO」と交換可能に用いられている場合がある。
【0035】
ここで用いられる場合の用語「L-アルギニン」とは、L-アルギニンや、例えばL-アルギニンヒドロクロリド、前駆体、及びその塩基性型など、NOSの基質として作用し、その結果NOの生成を増加させるようなその生化学的均等物の全てを言う。この用語にはL-アルギニンの薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0036】
用語「薬学的に許容可能な塩」とは、無機酸及び塩基並びに有機酸及び塩基を含め、薬学的に許容可能な非毒性の酸及び塩基から調製される塩を言う。適した非毒性の酸には、無機及び有機の酸、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸等がある。特に好適なのは塩酸、臭化水素酸、リン酸、及び硫酸であり、最も好適なのは塩酸塩である。
【0037】
本発明の方法で用いられるL-アルギニンは塩基性及び酸性の両方であるため、塩を無機及び有機酸又は無機及び有機塩基を含め、薬学的に許容可能な非毒性の酸又は塩基から調製してもよい。このような塩は以下の陰イオンのうちのいずれかを含んでよい:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、ムチン酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩等。特に好適なのはベンゼンスルホン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩及び硫酸塩である。このような塩はまた、以下の陽イオンも含んでよい:アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、及びプロカイン。
【0038】
ここで用いられる場合の用語「アゴニスト」又は「eNOSもしくはcNOSのアゴニスト」とは、例えばL-アルギニンのNOへなど、基質の生体転化を刺激する作用薬を言う。eNOS又はcNOSのアゴニストには、例えばHMG-CoAレダクターゼ阻害剤がある。「HMG-CoAレダクターゼ(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA)」は、コレステロール生合成において律速反応を触媒するミクロソーム酵素である。「HMG-CoA レダクターゼ阻害剤」はHMG-CoAレダクターゼを阻害する。HMG-CoA レダクターゼ阻害剤は「スタチン」とも呼ばれる。
【0039】
HMG-CoAレダクターゼを阻害し、「スタチン」と呼ばれると共に、本発明の実施に当たって有用な作用薬のカテゴリを形成する、天然又は合成で得られてきた数多くの化合物が、当業で解説されている。例には、限定はしないが、例えば市販のもの、例えばシンバスタチン(米国特許第4,444,784号)、ロバスタチン(米国特許第4,231,938号)、プラバスタチンナトリウム(米国特許第4,346,227号)、フルバスタチン(米国特許第4,739,073号)、アトルバスタチン(米国特許第5,273,995号)、セリバスタチン、ロスバスタチン、及び、コンパクチン、ダルバスタチン、メバスタチン、フルインドスタチン、ピタバスタチン、HR-780、GR-95030、CI 980、BMY 22089、BMY 22566、及び、それぞれの開示を引用をもってここに援用することとする米国特許第5,622,985号、米国特許第5,135,935号、米国特許第5,356,896号、米国特許第
4,920,109号、米国特許第5,286,895号、米国特許第5,262,435号、米国特許第5,260,332号、米国特許第5,317,031号、米国特許第5,283,256号、米国特許第5,256,689号、米国特許第5,182,298号、米国特許第5,369,125号、米国特許第5,302,604号、米国特許第5,166,171号、米国特許第5,202,327号、米国特許第5,276,021号、米国特許第5,196,440号、米国特許第5,091,386号、米国特許第5,091,378号、米国特許第4,904,646号、米国特許第5,385,932号、米国特許第5,250,435号、米国特許第5,132,312号、米国特許第5,130,306号、米国特許第5,116,870号、米国特許第5,112,857号、米国特許第5,102,911号、米国特許第5,098,931号、米国特許第5,081,136号、米国特許第5,025,000号、米国特許第5,021,453号、米国特許第5,017,716号、米国特許第5,001,144号、米国特許第5,001,128号、米国特許第 4,997,837号、米国特許第 4,996,234号、米国特許第 4,994,494号、米国特許第4,992,429号、米国特許第4,970,231号、米国特許第4,968,693号、米国特許第4,963,538号、米国特許第. 4,957,940号、米国特許第4,950,675号、米国特許第 4,946,864号、米国特許第 4,946,860号、米国特許第4,940,800号、米国特許第4,940,727号、米国特許第4,939,143号、米国特許第4,929,620号、米国特許第4,923,861号、米国特許第4,906,657号、米国特許第 4,906,624号及び米国特許第4,897,402号などに解説されたものなどの数多くの他のものがある。HMG-CoAレダクターゼを阻害するクラスの化合物のいずれの他のメンバーを、本発明の方法において用いてもよい。二つ以上のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤の組合せを本発明の方法で用いてもよい。
【0040】
ここで用いられる場合の用語「eNOS活性」は、基質L-アルギニンからNOを生成する上での細胞の能力を意味する。eNOS活性の増加は多様な態様で起き得る。例えば、eNOSたんぱく質量の増加、又は、(一定レベルのこのたんぱく質を維持しつつ)このたんぱく質の活性増加があると、「活性」の増加を起こすことができる。利用可能なたんぱく質量の増加は、例えば、限定はしないが、eNOS遺伝子の転写増加、eNOS
mRNAの翻訳増加、eNOS mRNAの安定性増加、eNOSの活性化、又は、eNOSたんぱく質分解の減少が原因である場合がある。
【0041】
細胞内又は組織内でのeNOS活性は、多様な異なる方法で測定することができる。直接的な方法は、存在するeNOS量を測定することである。もう一つの直接的な方法は、eNOSによる、L-アルギニンのL-シトルリンへの転化量、又は、例えば当該組織の生理条件などの特定の条件下におけるeNOSによる酸化窒素生成量、の測定である。eNOS 活性はまた、例えばmRNA半減期(上流の指標)を測定する、あるいは、NOの存在(下流の指標)に対する表現型応答により、間接的に測定することもできる。当業で用いられる表現型測定の一つは、eNOS活性の影響を受ける応答である、アセチルコリンに応答した内皮依存的弛緩の測定である。試料中に存在するNOのレベルはNO測定器を用いて測定することができる。前述の技術はすべて、当業者に公知である。
【0042】
本発明の方法は、NO生成を増加させることにより、正常な基線レベルのeNOS活性を再確立するだけでなく、このような活性を正常な基線レベルよりも上に引き上げることを可能にするものである。正常な基線レベルとは、年齢について制御された、内皮細胞NOS活性の変化を示すであろう症状(例えば低酸素条件、高脂血症等)を有さない正常なコントロール群での活性量である。こうして実際のレベルは、活性を評価するために選択された特定の年齢群及び用いられた特定の尺度に依存するであろう。異常な環境下では、内皮細胞NOS活性(そしてNO生成)は正常なレベル未満に抑えられる。従って、本発明の調合物は、このような異常な条件でNO生成の正常な基線レベルを回復するだけでなく、正常な基線レベルより遥かに上に、内皮細胞NOS活性(及びNO生成)を増加させることができる。
【0043】
用語「担体」とは、医薬組成物の混合物を調製する際に用いられる希釈剤、医薬品添加物等を言う。
【0044】
ここで用いられる場合の用語「剤型」は、例えば単一又は複数の用量のいずれかで患者になど、対象への投与にとって適量の活性成分を含有する医薬組成物を意味する。
【0045】
ここで用いられる場合の単位「mg/Kg」は、対象の体重1Kg当たりの作用薬のmgを意味する。
【0046】
ここで用いられる場合、他に明示しない限り、用語「半減期」は、投与時の薬物濃度の約半分に生物の血漿中の薬物濃度を減らすのにかかる時間を意味する。
【0047】
ここで用いられる場合、他に明示しない限り、用語「即時放出」とは、何の外因的因子も、一つ以上の薬物のin vitro放出を遅らせないことを意味する。
【0048】
ここで用いられる場合、用語「医薬組成物」又は交換可能に用いられている「医薬調合物」は、薬学的に許容可能な構成成分を含む組成物を意味する。
【0049】
ここで用いられる場合の用語「薬学的に許容可能な」は、連邦又は国家政府の法制機関により検討され、そしておそらくは認可されるであろう、あるいは、動物、そしてより具体的にはヒトでの使用に関して米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に挙げられた、種類の調合物を意味する。
【0050】
ここで用いられる場合、他に明示しない限り、用語「薬学的に許容可能な担体」は、当該活性成分の生物学的に活性の有効性に干渉せず、また、それを投与する先の対象にとって毒性でもない担体媒質を意味する。薬学的に活性な調合物のためのこのような媒質及び作用薬の使用は、当業で公知である。従来の媒質又は作用薬が活性化合物にとって不適合である場合を除き、本発明の方法で用いられる調合物中へのその使用は考察されている。
【0051】
ここで用いられる場合の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、無機酸及び有機酸を含め、薬学的に許容可能な非毒性の酸から調製される塩を言う。
【0052】
ここで用いられる場合、他に明示しない限り、用語「薬学的に許容可能な担体」は、当該活性成分の生物学的に活性の有効性に干渉せず、また、それを投与する先の対象にとって毒性でもない担体媒質を意味する。薬学的に活性な調合物のためのこのような媒質及び作用薬の使用は、当業で公知である。従来の媒質又は作用薬が活性化合物にとって不適合である場合を除き、本発明の方法で用いられる調合物中へのその使用は考察されている。
【0053】
ここで用いられる場合の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、無機酸及び有機酸を含め、薬学的に許容可能な非毒性の酸から調製される塩を言う。
【0054】
ここで用いられる場合、他に明示しない限り、用語「徐放」とは、薬物が一定の期間にわたって放出されるような、一つ以上の薬物の長期にわたる放出パターンであると定義しておく。徐放性調合物とは、静脈注射後に得られる、あるいは、即時放出性の経口剤形を投与することにより得られるよりも長期にわたって血清中薬物レベルが測定可能になるような放出動態を持つ調合物である。徐放性調合物は、投与後の生物学的半減期が短いような薬物に継続的な効果を与え、Cmax依存的な副作用を示すであろう薬物の副作用を減らし、投与回数を減らすことでコンプライアンスを高めるものである。本発明の目的のために、徐放及び制御放出は交換可能に用いられている。本発明の目的のためには、徐放、ゆっくりとした放出、制御放出、長時間の放出、長期放出、制御放出及び遅らされた放出は交換可能に用いられている。
【0055】
ここで用いられる場合の用語「塩又は錯体」は、限定はしないがファン・デル・ワールス、イオン及び/又は水素結合を含む、少なくとも一種類の相互作用により結び付けられた二つ以上の化学的部分を含む化合物又は組成物を言うために用いられている。塩又は錯体は固体で存在しても、又は液体中にあってもよい。
【0056】
ここで用いられる場合、ある調合物中のある成分の量を言うために用いられる用語「重量パーセント」は、当該調合物中の全ての成分の重量に基づく特定の成分の重量を意味する。
【0057】
本発明の多様な局面を、以下の小項で詳細に説明する。
【0058】
I. 脳血管及び心臓血管の疾患及び異常の治療法又は防止法で用いられる調合物
本発明の方法には、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む調合物と、L-アルギニンを含む調合物を同時又は順次、対象に投与するステップを含む、ヒトなどの対象の脳血管及び/又は心臓血管の疾患又は異常を治療又は防止する方法が含まれる。代替的には、L-アルギニン及びHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む単一の調合物を対象に投与する。
【0059】
本発明の一実施態様は、ある一個の徐放性調合物に入ったL-アルギニン、ある一個の徐放性調合物に入ったHMG-CoAレダクターゼ阻害剤、又は、ある一個の徐放性調合物に入った両L-アルギニン及びHMG-CoAレダクターゼ阻害剤、を含む調合物を包含する。ある実施態様では、本発明は、少なくとも一つのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤と同時又は逐次、投与してもよいL-アルギニンを含む調合物を包含するものであり、この場合、当該調合物は、L-アルギニンを実質的に一定な濃度で長期にわたって放出し、当該のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤は即時放出調合物中に存在する。別の実施態様では、本発明は、L-アルギニンを高濃度で、かつ、一個の徐放性調合物に入れて含む調合物を包含するものであり、この場合、当該の薬物動態プロファイルは、ゼロ次放出動態(即ち、時間に対して線形の放出率)である。両クラスの薬物の放出特徴を、これらの組合せを一日に一回の単一剤型に適合できるようにする放出パターンを提供するように改良してもよい。
【0060】
ある実施態様では、本発明の方法で用いられる調合物は、治療上有効量のL-アルギニン、治療上有効量のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤、及び少なくとも一つの徐放剤を含む。更に本調合物には、投与、保存、美観等のために当該調合物を改良するために必要な付加的な成分を含めることもできる。ある実施態様では、本発明の調合物は、更に、結合剤、充填剤及び潤滑剤を含む。ある好適な実施態様では、本調合物は、L-アルギニン、結合剤、一つ以上の徐放剤、流動促進剤、及び放出剤又は潤滑剤を含む徐放性L-アルギニン処方を含む。更に本調合物は、充填剤及び/又は圧縮剤を含んでもよい。本発明の徐放性調合物は、それらの放出プロファイルにより、体内の同じ薬物レベルを維持するためにも、即時放出又は市販の徐放剤で必要とされるよりも少ない投薬量を投与することが可能であるため、特に有利である。更に、スタチンと一緒に本徐放性L-アルギニンを投与することで、シンバスタチンなどのスタチンの有効性を増すこともできるため、本発明の調合物の使用により、より少ない投薬量のスタチンを用いても均等な利点上の効果が得られよう。
【0061】
L-アルギニンは、熟練した医師であれば公知の数多くの供給源から市販されている。例えばUSP等級のL-アルギニンは、Sigma-Aldrich 社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)を含む多様な供給源から市販されている。適したアルギニン及びアルギニン誘導体化合物には、限定はしないが、塩酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、又はニコチン酸アルギニンなどのアルギニン塩がある。他のアルギニン化合物又は誘導体は、例えばアラニルアルギニン (ALA-ARG)、バリニルL-アルギニン (VAL-ARG)、イソロイシニルL-アルギニン (ISO-ARG)、及びロイシニルL-アルギニン (LEU-ARG)など、アルギニンを含むジペプチド、 及び、例えばアルギニル-リジニル-グルタミン酸 (ARG-LYS-GLU) 及びアルギニル-グリシルL-アルギニン
(ARG-GLY-ARG)など、アルギニンを含むトリペプチドから選択されよう。L-アルギニンは、好ましくはL-アルギニンモノヒドロクロリドである。
【0062】
ある実施態様では、当該のL-アルギニンは重量で当該調合物の約 10%乃至約 75%、存在する。別の実施態様では、当該のL-アルギニンは重量で当該調合物の約 25%乃至約 75%、存在する。ある好適な実施態様では、当該のL-アルギニンは重量で当該調合物の約50%、存在する。
【0063】
一つ以上の徐放剤を用いることにより、L-アルギニン及び/又はHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を長時間にわたってゆっくりと放出させることができる。例えば、徐放性の作用薬は、血流中のL-アルギニンが高濃度又は低濃度となった場合の副作用を悪化させかねない濃度ピーク又は濃度低下を起こさないであろう速度で、L-アルギニンを放出するものでもよい。本発明の方法で用いられる調合物に適した徐放剤には、例えばセルロースなど、水性の環境に接触したときに部分的に水和して、その水和剤を被覆している作用薬の溶解を遅らせるようなゼラチン様障壁を形成する水和剤がある。換言すれば、当該の徐放剤は、水がゆっくりと当該調合物に吸収されることで調合物を水和し、その後L-アルギニンなどの活性成分を、徐放剤のない調合物よりも実質的に遅い速度で放出するように、水に対して一時的な障壁を形成するのである。加えて、当該の徐放剤は、カプセルへの導入時、あるいは錠剤、丸剤、又はゲルキャップへの圧密又は圧縮時に、水が当該構造にゆっくりと浸透する粒子サイズで存在する。
【0064】
ある実施態様では、当該の一つ又は複数の徐放剤には、限定はしないが、セルロースエーテル生成物、ポリメチルメタクリレート、又はポリビニルアルコールがある。別の実施態様では、徐放剤には、限定はしないが、メチルセルロース, ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はこれらの組合せ、を含むセルロースがある。ある好適な実施態様では、徐放剤には、一つ以上のヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。適した徐放剤は、Dow Chemical 社から商標名METHOCEL(登録商標)及びETHOCEL(登録商標)で市販されている。ある好適な実施態様では、当該の徐放剤はMETHOCEL(登録商標)K100 M CR プレミアム及び/又は METHOCEL(登録商標) E 4M CR プレミアムである。
【0065】
当該の徐放剤は、典型的には、L-アルギニン又はHMG-CoAレダクターゼ阻害剤などの活性成分を所望の期間にわたって放出させるのに充分な量、存在する。ある実施態様では、当該の徐放剤は、重量で当該調合物の約5%乃至約40%、存在する。別の実施態様では、当該の徐放剤は、重量で約5%乃至約75%の量、存在する。更に別の実施態様では、当該の徐放剤は、当該調合物の重量で約15%乃至約50%の量、存在する。多様な実施態様では、当該の徐放剤は、約 35%、存在する。上記の範囲のそれぞれの間の範囲はすべて、本発明の範囲内である。
【0066】
いくつかの実施態様では、当該の調合物は、例えば約5 g、約 4 g、約 3 g、約 2 g、又は 約 1 g のL-アルギニンのアルギニンなど、約7g未満のL-アルギニンを含んでもよい。例えば、
当該の調合物は、約 1 g 乃至 約 7 g、約 2 g 乃至 約 6 g 又は 約 3 g 乃至 約 5 gの L-アルギニンを含んでもよい。例えば、上記の数値のいずれかの組合せを上限及び/又は下限として用いた数値範囲は包含されることが意図されている。好ましくは、当該の調合物はが約 4 g未満の L-アルギニンを含むとよい。理論に縛られることは望まないが、L-アルギニンの徐放性調合物により、用いる投薬量を少なくすることができ、即ち、 L-アルギニンの総量を少なくしても、治療効果を上げることができよう。
【0067】
ある実施態様では、当該の徐放剤は、図1に示すように、L-アルギニンを10時間にわたって放出する。ある実施態様では、当該の調合物は、L-アルギニンを実質的に均一に 約 4時間乃至約24時間にわたって放出する。別の実施態様では、本発明の調合物は、L-アルギニンを実質的に均一に約 8 時間乃至約 24時間にわたって放出する。更に別の実施態様では、当該の徐放性L-アルギニン調合物は、L-アルギニンを実質的に均一に約12時間乃至約48時間にわたって放出する。
【0068】
別の実施態様では、本発明の方法で用いられる調合物は、半減期(T1/2)及びTmaxがL-アルギニンを実質的に一定なレベルに維持するのに充分であるような薬物動態プロファイルを提供する態様で、L-アルギニンを放出するであろう。換言すれば、ある実施態様では、本発明の徐放性調合物は、循環中のL-アルギニンの定常状態が達成され、一定のままでいるように、L-アルギニンを放出する。ある実施態様では、当該の薬物動態プロファイルは、 T1/2 が約4 時間乃至約12時間であり、Tmax が約 4時間であるようなものである。更に別の実施態様では、T1/2は約 4 時間乃至約 8 時間であり、Tmax は約 4 時間である。
【0069】
本調合物で有用な結合剤には、当業者に公知のものがある。結合剤には、限定はしないが、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、デキストロース、及び糖蜜などの糖類;アカシアゴム、グアルガム、アルギン酸ナトリウム、アイルランドゴケの抽出物、パンワー(原語:panwar )ゴム、ガッチ(原語:ghatti )ゴムなどの天然及び合成のゴムがあり;他の結合剤には、酸化ポリエチレン及びポリエチレングリコールの混合物、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、エチルセルロース、微結晶セルロース、カルボマー、ゼイン、スターチ、デキストリン、マルトデキストリン、ゼラチン、α化でんぷん、ポリビニルピロリドン (PVP) 又はポビドン、及びこれらの混合物、がある。ある好適な実施態様では、当該の結合剤はポリビニルピロリドン共重合体である。
【0070】
ある実施態様では、当該の結合剤は、重量で当該調合物の約 20% 未満、存在する。別の実施態様では、当該の結合剤は、重量で当該調合物の約 0.5%乃至約5%、存在する。ある好適な実施態様では、当該の結合剤は重量で当該調合物の約3%乃至約4%、存在する。
【0071】
ある好適な実施態様では、徐放性L-アルギニンの調合物は更に流動促進剤を含む。前記流動促進剤は、二酸化珪素などを含む、いずれの公知のUSP等級の流動促進剤でもよい。ある好適な実施態様では、当該の流動促進剤はコロイド状二酸化珪素である。
【0072】
ある実施態様では、当該の流動促進剤は重量で当該の調合物の約3%未満、存在する。別の実施態様では、当該の流動促進剤は重量で当該の調合物の約2%未満、存在する。ある好適な実施態様では、当該の流動促進剤は重量で当該の調合物の約1%未満、存在する。
【0073】
本調合物において有用な充填剤には、当業者に公知のものがある。典型的な充填剤には、限定はしないが、乳糖、ショ糖、デキストロース、マンニトール及びソルビトールなどの糖類、ホエイ、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、及びこれらの混合物がある。他の充填剤には、限定はしないが、セルロース製剤、例えばとうもろこしでんぷん、小麦でんぷん、コメでんぷん、いもでんぷん、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びこれらの混合物がある。微結晶セルロースには、圧縮剤や重点剤としても機能させることができる。ある好適な実施態様では、充填剤/圧縮剤は微結晶セルロースである。より好適には、当該の微結晶セルロースは、AVICEL(登録商標) PH 102 の名称により Dow Chemical 社から販売されているものである。
【0074】
ある実施態様では、当該の充填剤は、重量で当該調合物の約50% 未満、存在する。別の実施態様では、当該の充填剤は、重量で当該調合物の約2%乃至約20%未満、存在する。ある好適な実施態様では、当該の充填剤は、重量で当該調合物の約10% 未満、存在する。
【0075】
本調合物中に存在する固体量を増すために医薬品添加物を加えることができる。この目的のために有用であることが見出された医薬品添加物の中には、しばしば組合せの形であるが、リン酸ナトリウム又はカリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、並びにデキストロース、ショ糖、乳糖、ソルビトール、イノシトール、マンニトール及びデキストランなどの糖質、でんぷん、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマ、がある。ここで言及したものに加え、他のものも当業者に公知である。
【0076】
本調合物で有用な放出剤及び潤沢剤には、当業者に広く公知のものがある。典型的な潤沢剤には、限定はしないが、ステアリン酸塩、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油(例えば硬化綿実油)、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセリルパルミトステアレート、パルミトステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、鉱物油、タルク、及びこれらの混合物がある。ある好適な実施態様では、当該の潤沢剤はステアリン酸マグネシウムである。他の実施態様では、潤沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。他の実施態様では、潤沢剤は、栄養物質の最適な吸収及び資化が確実に起きるように選択される。
【0077】
ある実施態様では、当該の潤沢剤は、重量で当該調合物の約20%未満、存在する。別の実施態様では、当該の潤沢剤は、重量で当該調合物の約2%乃至約20%、存在する。ある好適な実施態様では、当該の潤沢剤は、重量で当該調合物の約10%、存在する。
【0078】
崩壊剤には、限定はしないが、グリコール酸でんぷんナトリウム、クロスカルメロース(原語:croscarmellose )ナトリウム、クロスポビドン(原語:crospovidone)、架橋ポリビニルピロリドン、コーンスターチ、α化でんぷん、微結晶セルロース、アルギン酸、アンバーライトイオン交換樹脂、ポリビニルピロリドン、多糖、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、アルギン酸ナトリウムなどのこれらの塩、Primogel、及びこれらの混合物がある。
【0079】
圧縮剤により、当該調合物を、錠剤、トローチ、ゲルキャップ、又は、固体型での投与用の他の製剤に成型することができる。ある実施態様では、圧縮剤により、当該調合物を、錠剤、トローチ、又はゲルキャップに成型することができる。圧縮剤には、限定はしないが、Avicel、ステアリン酸マグネシウム、ろう、ゴム、セルーシックス(原語:celleusics)、ステアリン酸塩、又はこれらの組合せ、がある。ある好適な実施態様では、当該の圧縮剤は微結晶セルロースである。
【0080】
ある実施態様では、当該の圧縮剤は、重量で当該調合物の約0.01%乃至約5%の量、存在する。別の実施態様では、当該の圧縮剤は、約0.5%乃至約3%の量、存在する。更に別の実施態様では、当該の圧縮剤は、重量で当該調合物の約1%乃至約2%の量、存在する。
【0081】
ある実施態様では、本L-アルギニン処方は、L-アルギニンを、約5 mg/Kg乃至約40 mg/ 対象の体重1Kgとなるに充分であろう単位投薬量、含む。別の実施態様では、本L-アルギニン処方は、L-アルギニンを、約20 mg/Kg 乃至約25 mg/Kgにとって充分であろう単位投薬量、含む。
【0082】
別の実施態様では、L-アルギニン及びHMG-CoAレダクターゼ阻害剤の両者ともが一個の徐放性調合物中にある。HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の量は、いくつかの阻害剤は他のものよりも効果があるため、当該調合物中に存在する特定の阻害剤に基づいて様々であろう。例えば、BAYCOL(登録商標)は、1錠剤当たり約
0.1 mg 乃至約0.8 mgの量、存在してよく、 そしてZOCOR(登録商標)は、1錠剤当たり約10 mg 乃至約80 mgの量、存在してよい。当業者であれば、用いる特定の阻害剤に基づいて治療的な量を決定することができよう。ある実施態様では、当該のHMG-CoA レダクターゼ阻害剤はシンバスタチンであり、約 0.5 mg/Kg 乃至約3 mg/対象の体重1Kgにとって充分であろう単位投薬量、存在する。
別の実施態様では、当該のHMG-CoA レダクターゼ阻害剤はシンバスタチンであり、約1.2 mg/Kg 乃至約1.4 mg/対象の体重1Kgにとって充分であろう単位投薬量、存在する。
【0083】
更に別の実施態様では、当該のL-アルギニン及びHMG-CoA レダクターゼ阻害剤は両者とも、別々の徐放性調合物、例えば別々の錠剤など、の中に提供される。徐放性のHMG-CoA レダクターゼ阻害剤は、例えば Merck & Company社(ニュージャージー州ラーウェイ)などから市販されている。
【0084】
本発明の方法で用いられる調合物は、従来の薬剤配合技術に従った薬剤用担体を含んでよい。当該の担体は、経口投与に好ましい製剤の形に応じて、多様な形であってよい。経口剤型用の調合物の調製時には、通常の薬剤用媒質のいずれを用いてもよい。最も好適な経口用固体製剤は錠剤及びゲルキャップである。代替的には、本発明の調合物をカプセルに取り入れてもよい。この実施態様では、当該の徐放性L-アルギニン顆粒と、選択的にはHMG-CoA レダクターゼ阻害剤とをカプセル内に取り入れてもよい。
【0085】
それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口用剤型であり、この場合固体の薬剤用担体が用いられる。錠剤又はカプセルは、L-アルギニン調合物及びHMG-CoA レダクターゼ阻害剤調合物を、同じ錠剤に入れて、又は、異なる形状のカプセルに入れて、含有してもよい。形状には、二部構成の半分ずつの錠剤又はカプセル、一方の調合物が二番目のものを取り囲むもの、一方の調合物を別のものに分散させたもの、両調合物の顆粒を混合したもの、等がある。必要であれば、錠剤又はカプセルを標準的な水性又は非水性の技術により被覆してもよい。
【0086】
本発明の方法で用いられる調合物は、例えば当業で通常用いられているものなど、他の薬学的に許容可能な成分も含んでよい。Remington: the Science
& Practice of Pharmacy, by Alfonso R. Gennaro, 20th ed., Williams &
Wilkins, 2000を参照されたい。本発明の方法で用いられる調合物で用いられる付加的な成分には、限定はしないが、水、グリコール、油類、アルコール、でんぷん、糖類、希釈剤、崩壊剤、保存剤、医薬品添加物、潤沢剤、崩壊剤、希釈剤、担体、安定化剤、着色剤、着香料、及びこれらの組合せ、がある。適した希釈剤の例には、水、エタノール、ポリオール、植物油、注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル、及びこれらの組合せ、がある。調合物には、更に、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを含めることができる。微生物の活動の防止は、限定はしないがパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の多様な抗菌剤及び抗カビ剤により、確実にすることができる。更に、限定はしないが糖類、塩化ナトリウム等を含む等張剤を含めることも好ましいであろう。
【0087】
本発明の別の実施態様では、本調合物を、更に少なくとも一種の他の薬物と一緒に同時投与してもよい。薬物のカテゴリの例には:アドレナリン作動性薬物;副腎皮質ステロイド;副腎皮質抑制剤、アルドステロン・アンタゴニスト;アミノ酸;アンモニア解毒剤;たんぱく質同化剤;興奮薬;鎮痛薬;アンドロゲン;麻酔薬;食欲抑制薬;アンタゴニスト;下垂体前葉抑制剤;駆虫剤;抗にきび薬;抗アドレナリン作動薬;抗アレルギー薬;抗アメーバ薬;抗アンドロゲン;抗貧血薬;抗狭心症薬;抗不安薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗アテローム性硬化症薬;抗菌剤;抗胆石薬;抗胆石形成薬;抗コリン作動薬;抗凝固剤;抗コクシジウム薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗利尿薬;鎮吐薬;抗てんかん薬;抗エストロゲン;抗線維素溶解薬;抗カビ剤;抗緑内障薬;抗血友病薬;抗出血薬;抗ヒスタミン;抗高脂血症薬;抗高リポたんぱく質血薬;抗高血圧症薬;抗感染剤;抗炎症剤;抗角質化剤;抗マラリア剤;抗菌剤;抗偏頭痛薬;抗有糸分裂剤;抗真菌剤;制吐薬;抗新生物薬;抗好中球減少症薬;アンチオベッショナル(原語:antiobessional)薬;抗寄生生物薬;抗パーキンソン症薬;抗蠕動薬;抗ニューモシスティス薬;抗増殖薬;抗前立腺肥大症薬;抗原虫薬;鎮痒薬; 抗精神病薬;抗リウマチ薬;抗住血吸虫薬;抗脂漏症薬;抗分泌薬;抗痙攣薬;抗血栓薬;鎮咳薬;抗潰瘍薬;抗尿結石薬;抗ウィルス薬;食欲抑制剤;良性前立腺肥大症療法薬;血糖調節剤;骨再吸収阻害剤;気管支拡張剤;炭酸脱水酵素阻害剤;心筋抑制薬;心保護薬;強心剤;心臓血管薬;利胆薬;コリン作動薬;コリンエステラーゼ奪活剤;コクシジウム抑制薬;認識アジュバント;抑制薬;利尿剤;ドーパミン作動薬;外部寄生生物撲滅薬;催吐薬;酵素阻害剤;エストロゲン;線維溶解剤;蛍光薬;活性酸素除去剤;胃腸運動作動因子;糖質コルチコイド;性腺刺激成分;毛髪成長刺激因子;止血薬;ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト;ホルモン;低コレステロール血症;血糖降下薬;抗脂血薬;降圧剤;撮像剤;免疫化剤;免疫調節薬;免疫調節剤;免疫賦活薬;免疫抑制剤;インポテンス治療補助剤;角質溶解薬;LNRIIアゴニスト;肝臓異常治療;ルテオリジン;精神力亢進剤;気分調節剤;粘液溶解薬;粘膜保護剤;散瞳薬;抗鼻閉薬;神経筋遮断薬;神経保護剤;NMDAアンタゴニスト;非ホルモン性ステロール誘導体;子宮収縮薬;プラスミノーゲン活性化剤;血小板活性化因子アンタゴニスト;血小板凝集阻害剤;増強剤;プロゲスチン;プロスタグランジン;前立腺成長阻害剤;プロシロトロピン(原語:prothyrotropin);向精神薬;放射性薬剤;調節剤;弛緩薬;再配分薬;殺疥癬虫薬;硬化剤;鎮静薬;選択的アデノシンA1アンタゴニスト;セロトニンアンタゴニスト;セロトニン阻害剤;セロトニン受容体アンタゴニスト;ステロイド;刺激薬;抑制薬;症候性多発性硬化症;協力剤;甲状腺ホルモン;甲状腺阻害剤;甲状腺ミメティック;トランキライザー;脳虚血の治療;パジェット病の治療;不安定狭心症の治療;尿酸排泄薬;血管収縮薬;血管拡張剤;傷薬;創傷治癒薬;又はキサンチンオキシダーゼ阻害剤、がある。
【0088】
薬剤の別の例には、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)がある。ACEは、アンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの転化を触媒する酵素である。ACE阻害剤には、アミノ酸及びその誘導体、ジペプチド及びトリペプチドを含むペプチド、並びにACEの活性を阻害して昇圧物質アンジオテンシンIIの形成を減らす又は消失させることでレジン−アンジオテンシン系に干渉する抗ACE抗体、がある。ACE阻害剤は、高血圧、うっ血性心不全、心筋梗塞及び腎疾患の治療に医療上用いられてきた。ACE阻害剤として有用であることが公知のクラスの化合物には、アシルメルカプト及びメルカプトアルカノイルプロリン、例えばカプトプリル(米国特許第4,105,776号)及びゾフェノプリル(米国特許第4,316,906号)、カルボキシアルキルジペプチド、例えばエナラプリル(米国特許第4,374,829号)、リシノプリル(米国特許第4,374,829号)、キナプリル(米国特許第4,344,949号)、ラミプリル(米国特許第4,587,258号)、及びペリンドプリル(米国特許第4,508,729号)、カルボキシアルキルジペプチドミミック、例えばシラザプリル(米国特許第4,512,924号)及びベナザプリル(米国特許第4,410,520号)、ホスフィニルアルカノイルプロリン、例えばフォシノプリル(米国特許第4,337,201号)及びトランドロプリルがある。エストロゲンはNOS発現を上方調節するが、ACE阻害剤は発現には影響せず、代わりにNOSのL-アルギニンに対する作用の効率に影響する。このように、活性は態様な方法で増加し得る。概略的には、細胞中に存在する活性酵素の量を、本発明に従ったレダクターゼ阻害剤による処理のない細胞に存在する量に比して増加させることにより、本発明のレダクターゼ阻害剤により、活性は増加する。
【0089】
II. 予防及び治療の方法
ある局面では、本発明は、脳血管及び/又は心臓血管の疾患又は異常のリスクのある対象に、L-アルギニンを含む調合物をHMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えばシンバスタチン)を含む調合物と、順次又は同時に、あるいはL-アルギニンをHMG-CoAレダクターゼ阻害剤と一緒に含む単一の調合物を、投与することにより、対象における脳血管及び/又は心臓血管の疾患又は異常などの血管の疾患又は異常を防止する方法を提供するものである。脳血管及び/又は心臓血管の疾患及び異常(事象を含む)のリスクのある対象は、例えば、アテローム性硬化症の素因、アテローム性硬化症の症状、又は、喫煙、高血圧、糖尿病、家族歴、遺伝的因子、高コレステロール値、加齢及びアルコールの使用などのリスク因子の存在により、特定することができる。
【0090】
本発明の方法で用いられる調合物の、予防薬としての投与は、脳血管及び/又は心臓血管の疾患又は異常が防止される、その進行が遅らされる、又はその発症が遅らされるように、脳血管及び/又は心臓血管の疾患又は異常の開始に特徴的な症状の発現前に行われてもよい。
【0091】
その全文をこの言及により援用することとする標題「Upregulation of Type III Endothelial Cell Nitric Oxide Synthase By
HMG-CoA Reductase Inhibitors," の国際特許公報WO 00/56403に解説されているように、NOS 活性の上方調節は、コレステロール合成の減少に左右されず、また特に、ox-LDLの形成の減少に左右されない。従って本発明は、罹患細胞又は組織においてeNOS活性を回復させる、あるいはこのような活性を上昇させることが好ましい場合なら必ず、有用である。当該組織は、当該組織に栄養物質を供給する脈管構造内の細胞や、eNOSを発現する組織の細胞の両方を包含するものと、定義しておく。
【0092】
酸化窒素シンターゼ活性は、インポテンス、心不全、胃及び食道の運動異常、腎性高血圧及び進行性腎疾患、インシュリン欠乏症等を含む数多くの状態に関与している。このような状態のある個体にとって、NO生成の増加は有利であろう。例えば、肺高血圧のある個体では、しばしば肺血管における酸化窒素シンターゼ発現レベルが低いため、酸化窒素の吸入により、臨床上の利益がある。従って本発明は、肺高血圧を治療するために特に有用である。また更に、低酸素症でeNOS活性の阻害が起きることが実証されている。従って本発明は、低酸素症で誘導される状態のある対象を治療するために有用である。また、驚くべきことに、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤は、脳卒中後に起きるID脳内損傷を減らす上でも有用であることが発見されている。
【0093】
対象は、低酸素症で誘導された、eNOS活性の異常な低レベルを特徴とする状態を有するものでもよい。他の実施態様では、対象は、化学的に誘導された、eNOS活性の異常な低レベルを含む状態を有するものとすることができる。更に他の実施態様では、対象は、サイトカインで誘導された、eNOS活性の異常な低レベルを含む状態を有するものとすることができる。いくつかの重要な実施態様では、対象は、肺高血圧、又は、肺高血圧の異常に高いリスクを有する。他の重要な実施態様では、対象は虚血性脳卒中を経験したか、あるいは、虚血性脳卒中の異常に高いリスクを有するものである。更に他の重要な実施態様では、対象は心不全又は進行性腎疾患を有する。更に他の重要な実施態様では、対象は慢性的に低酸素状態に晒されている。
【0094】
更なる重要な実施態様では、対象は血栓の事象を経験したか、あるいは、血栓症の異常に高いリスクを有するものである。更に他の実施態様では、対象は、動脈硬化の異常に高いリスクを有するか、あるいは、動脈硬化を有する。他の重要な実施態様では、対象は、心筋梗塞を発症する異常に高いリスクを有するか、あるいは、心筋梗塞を経験したことがある。更に別の実施態様では、対象は再潅流損傷の異常に高いリスクを有する。好適な実施態様では、再潅流損傷の高いリスクがある前記対象は、臓器移植レシピエント(例えば心臓、腎臓、肝臓等)である。他の重要な実施態様では、対象はホモシスチン尿症を有する。いくつかの他の重要な実施態様では、対象は、皮質下梗塞及び白質脳症随伴性脳常染色体優性動脈症(CADASIL)症候群を有する。更なる重要な実施態様では、対象は、神経系の変性性異常を有する。好適な実施態様では、神経系の変性性異常を持つ前記対象はアルツハイマー病を有する。
【0095】
いくつかの他の実施態様では、本発明による治療の必要のある対象が虚血性脳卒中の異常に高いリスクを有する場合、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、このような対象の治療としては除外される。
【0096】
他の実施態様では、本発明の方法及び組成物(例えばL-アルギニン徐放性調合物、L-アルギニン食用バー等)を、アルツハイマー病を治療又は防止するために用いてよい。更に別の実施態様では、本発明の方法及び組成物を、間欠性跛行を治療又は防止するために用いてよい。更に別の実施態様では、本発明の調合物及び組成物を、血管拡張を増すために用いてもよい。
【0097】
ある好適な実施態様では、本発明の方法を、対象のコレステロール・レベルを低下させるために用いてよい。HMG-CoA レダクターゼ阻害剤及び L-アルギニン の対象への投与は、総コレステロールを低下させるために役立つ。ある実施態様では、本方法は、総コレステロールを約 50 乃至約 150 mg/dL低下させるものである。別の実施態様では、本方法は、総コレステロールを約 80 乃至 約 100 mg/dL、減少させるものである。加えて、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤及びL-アルギニンの対象への投与は、低密度リポたんぱく質(LDL)コレステロールを低下させるために役立つ。ある実施態様では、本方法は、LDL コレステロールを約 40 乃至 約 110 mg/dL、低下させる。別の実施態様では、 本方法は、LDLコレステロールを約 60 乃至約 100 mg/dL、低下させる。更に、本発明の方法は、対象の高密度リポたんぱく質(HDL)を増すためにも役立つであろう。更に、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤 及びL-アルギニンの投与により、対象のトリグリセリドを低下させることができる。ある実施態様では、本発明の方法は、対象のトリグリセリドを約 30 乃至約 100 mg/dL、低下させる。別の実施態様では、本発明の方法は、トリグリセリドを約 45 乃至 約 75 mg/dL、低下させる。
【0098】
HMG-CoA レダクターゼ阻害剤及びL-アルギニンの同時投与は、対象のコレステロール・レベルを下げる上で相乗効果を有する。本発明の方法及び組成物は、他の公知の方法及び組成物に比べ、驚くべき、かつ相当な量、コレステロール・レベルを下げることが示されている。具体的には、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤及び徐放性L-アルギニンを本発明に従って同時投与すると、既存の方法に比べて著しい態様でトリグリセリド及びLDLレベルが低下する。更に、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤及び徐放性L-アルギニンの同時投与により、HDLが、既存の方法に比べて著しい態様で増加する。ある実施態様では、HMG-CoA レダクターゼ及びL-アルギニンの同時投与により、総コレステロールが、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤単独の投与に比べて約 5%乃至約 15%多く、低下する。別の実施態様では、HMG-CoA レダクターゼ及びL-アルギニンの同時投与により、総コレステロールが、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤単独の投与よりも約 5 乃至約 20 mg/dL 多く、低下する。更に別の実施態様では、HMG-CoA レダクターゼ及びL-アルギニンの同時投与により、LDL コレステロールが、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤単独の投与よりも約 2 乃至 約 20 mg/dL 多く、低下する。更に別の実施態様では、HMG-CoA レダクターゼ及びL-アルギニンの同時投与により、トリグリセリドが、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤単独の投与よりも約 5 乃至約 50 mg/dL多く、又は代替的には約 20 乃至約 35 mg/dL多く、低下する。
【0099】
別の実施態様では、本発明の方法を、対象のC反応性たんぱく質を低下させるために用いてもよい。C反応性たんぱく質は、急性の損傷、感染、又は他の炎症性刺激に応答して身体が放出する急性期反応体である。研究では、C反応性たんぱく質と冠状動脈疾患との間に正の相関関係があることが実証されている。Ridker, Circulation
108(12): e81-85 (2003); Blake et al.,
Am. J. Physiol.
Regul. Integr. Comp. Physiol. 285(5): R1250-1252 (2003)。ある実施態様では、本方法は、C反応性たんぱく質を約 10%乃至約 50%、又は 約 25%乃至約 35%、低下させる。
【0100】
HMG-CoA レダクターゼ阻害剤及びL-アルギニンの同時投与は、C反応性たんぱく質を低下させる上で相乗効果を有する。ある実施態様では、本方法は、C反応性たんぱく質を、L-アルギニンの徐放性調合物なしでHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を投与した場合に比べて約 50%乃至約 90%、又は約 65%乃至約 75%多く、低下させる。 別の実施態様では、本方法は、C反応性たんぱく質を、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤なしでL-アルギニンの徐放性調合物を投与した場合に比べて約 80%乃至約 120%、又は約 95%乃至約 105%多く、低下させる。
【0101】
更に、本発明の方法を、非対称ジメチルアルギニン(ADMA)のある対象の酸化窒素生成を増す、及び/又は、血管拡張を増す、ために用いてもよい。非対称ジメチルアルギニン(ADMA)は、eNOSの内因性の競合的阻害剤である。血漿中ADMAレベルの上昇の存在が、内皮機能不全に関係付けられている。スタチンはin vitroで内皮のNOシンターゼ(eNOS)の発現を刺激し、内皮依存的なNO媒介性血管拡張をin vivoで亢進する。従って、スタチン(例えばシンバスタチン)は、ADMAの上昇した患者において内皮機能を促進することができる。理論に縛られることを望むわけではないが、ADMAの阻害効果は、L-アルギニンにより克服されると考えられる。
【0102】
L-アルギニン、そして選択的にはHMG-CoA レダクターゼ阻害剤 (例えばシンバスタチン)を、ADMAの上昇した対象に投与することにより、本発明の方法は、酸化窒素の生成を増す、及び/又は、血管拡張を増す、ことができる。このような同時投与により、内皮機能を約5%乃至約15% 又は代替的には約7%乃至約12%、増すことができる。ある実施態様では、本発明によれば、対象は内皮機能不全を有する。
【0103】
いずれの投与形態の場合でも、送達される実際の化合物量や、ここで解説された有利な薬物動態プロファイルを達成するために必要な投薬スケジュールは、部分的には、当該化合物(及び/又はその活性代謝産物)の生物学的利用能、治療しようとする異常、望ましい治療的用量、及び、当業者に明白な他の因子などの因子に依存するであろう。送達される実際の量や、投薬スケジュールは、投与された化合物及び/又はその活性代謝産物の血漿中レベルを観察し、所望の薬物動態プロファイルを達成するために必要であれば投薬量又は投薬スケジュールを調節することにより、当業者であれば、不要な実験を行わずとも、容易に決定することができる。
【0104】
ここで解説された通りの、本発明の方法で用いられる調合物、又は、その薬学的に許容可能な添加塩又は水和物は、本発明に従って多様な投与経路又は形態を用いつつ、望ましくない副作用を避ける又は減らすように、対象に送達することができる。ある実施態様では、当該の対象は動物である。別の実施態様では、当該の対象は哺乳動物である。更に別の実施態様では、当該の対象はヒトである。いずれかの場合で最も好ましい経路は、治療しようとする状態の性質及び重篤度に依存するであおる。本発明の好適な投与経路は経口経路である。本組成物を適宜、単位剤型で提供してもよく、また、製薬業で公知の方法のいずれで調製してもよい。本組成物を投与するために技術及び処方は、Remington: the Science & Practice of Pharmacy, by Alfonso R.
Gennaro, 20th ed., Williams & Wilkins, 2000に見られよう。
【0105】
本発明の調合物は、一般的には、例えば脳血管及び/又は心臓血管の疾患又は異常を治療及び/又は防止するためなど、意図して目的を達成するために有効量な量にして、用いられよう。治療上有効量とは、疾患、異常、疾患もしくは異常に関係する症状、又は疾患もしくは異常の素因、を治療するために有効な量を意味する。前に解説したように、用語「治療する」とは、治療薬又は調合物を、ある疾患又は異常、疾患又は異常の症状、あるいは、ある疾患又は異常に対する素因を有する患者に、又は、前記患者由来の摘出組織に、前記疾患又は異常及び/又は事象を治癒する、治す、軽減する、緩和させる、変える、加療する、改善する、発症を遅らせる、前記疾患又は異常の進行を遅らせる、前記疾患又は異常、前記疾患又は異常の症状、あるいは、ある疾患又は異常及び/又は事象に対する素因を向上させる又は影響を与える目的で、適用又は投与することを言う。治療上有効量の決定は、充分に、当業者の、特にここに提供された詳細な開示を鑑みれば、能力の及ぶ範囲である。
【0106】
本発明での使用に適した医薬調合物には、L-アルギニン及び/又はHMG-CoAレダクターゼ阻害剤が治療上有効量、即ち意図した目的を達成するために有効な量、含有されているような調合物がある。概略的には、有効量とは、単独で、又は更なる用量と併せて、所望の応答を生じるような医薬製剤の量である。これには、単に疾患の進行を一時的に遅らせることも含まれよう。別の実施態様では、それは、当該疾患の進行を永久的に止める、あるいは、当該疾患又は状態の発症を遅らせるか、又は起きないようにすることも含む。いずれか特定の疾患に対する当該投薬量の効果は、慣例的な方法により観察することができる。このような量は、もちろんではあるが、治療しようとする特定の状態、この状態の重篤度、年齢、身体の状態、体格及び体重を含む患者個体のパラメータ、治療の期間、併用治療(あれば)の性質、特定の投与経路、及び保健医の知見の範囲内である同様の因子に依るであろう。
【0107】
一般的には、活性化合物の用量は、一日当たり約 0.01 mg/kg 乃至一日当たり約 1000 mg/kg であろう。ある実施態様では、約 50 乃至約 500 mg/kg の範囲の用量が適切であろうと予測される。別の実施態様では、投与は経口で、かつ、一日当たり一回又は複数回の投与にして行われる。
【0108】
別の実施態様では、当該の対象は、例えば一日当り約 9 g、約 8 g、約 7 g、約 6 g、約 5 g、約 4 g、約 3 g、約 2 g、又は約 1 g の徐放性L-アルギニンなど、1日当り約10g未満の徐放性L-アルギニンを投与されるであろう。例えば当該の対象は、約 1 g 乃至 約 7 g、約 2 g 乃至 約 6 g 又は 約 3 g 乃至 約 5 g の徐放性 L-アルギニンの一日当りの投薬量を投与されてもよい。上記の数値のいずれかの組合せを上限及び/又は下限として用いた数値範囲も含まれるものと、意図されている。好ましくは、当該の対象は、一日当り約 4 g 未満の徐放性L-アルギニンを投与されるとよい。理論に縛られることを望むわけではないが、L-アルギニンの徐放性調合物により用いる投薬量を少なくすることができ、即ち、L-アルギニンの総量を少なくしても、治療効果を達成できよう。
【0109】
もちろんではあるが、L-アルギニン及び/又はHMG-CoA レダクターゼ阻害剤の実際の量は、とりわけ、対象の状態、並びに対象の体重及び代謝に依るであろう。例えば、IC又はADに罹患した対象に投与する場合、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、ゲルキャップ、トローチ、又はカプセルは、なかんずく、正常な組織への血流不足の有害な効果を改善し、即ち、治療しようとする対象の既存の症状の発展を妨げ、あるいはその症状を軽減し、生存期間を延長するために有効な、L-アルギニン及び/又はHMG-CoAレダクターゼ阻害剤の量を含有するであろう。有効量の決定は、特にここに挙げた詳細な開示を鑑みれば、当業者の能力の充分に及ぶところである。
【0110】
ヒトで用いる際の治療上有効量は、動物モデルからも推測することができる。例えば、ヒトでの用量は、動物で有効であることが見出された濃度を達成するように処方することができる。
【0111】
治療上の有効な用量は、ヒト薬物動態データからも推測することができる。いずれの特定の理論にも縛られるつもりはないが、効験は、血液濃度時間曲線(AUC)で面積を測定することで判定した場合の、投与された薬物及び/又はその活性代謝産物の適用量に暴露した対象の総暴露量に関係すると考えられる。このように、投与された化合物(及び/又はその活性代謝産物)のAUCが、治療しようとする指標にとって有効であることが公知の用量のAUCの50%以内に来るような、本発明の方法に従って投与される用量が有効であると予測される。投与される化合物(及び/又はその活性代謝産物)のAUCが、公知の有効な用量のAUCの約70%以内、約80%以内、更には約90%又はそれ以上内に来るような用量が好ましい。このような薬剤の毒性及び治療効験は、LD50(集団の50%にとって致命的な用量)及びED50(集団の50%で治療上有効な用量)を決定するためなど、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手法で決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。高い治療指数を示す調合物が好ましい。毒性の副作用を示す調合物を用いてもよいが、非罹患細胞への潜在的損傷を抑え、ひいては副作用を減らすために、罹患組織の部位にこのような調合物をターゲティングする送達系をデザインするように注意が必要である。
【0112】
細胞培養検定及び動物研究で得られたデータを、ヒトでの使用に向けた投薬量範囲を処方する際に用いることができる。ある実施態様では、本発明のこのような調合物の投薬量は、毒性が少ないか、又は全くないED50を含む循環中濃度範囲内である。投薬量は、用いる剤型及び用いる投与経路に応じて、この範囲内で様々であろう。本発明の治療又は予防法で用いるいずれの調合物の場合でも、治療上有効量を、まず細胞培養検定から推定することができる。細胞培養で判定したときにIC50(即ち、症状の阻害の最大時の半分を達成する検査化合物濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するように、動物モデルで用量を処方してよい。このような情報を用いて、ヒトで有用な用量をより精確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィにより測定できよう。
【0113】
上述した方法に基づいて、特に、投与される化合物及び/又はその活性代謝産物の血中濃度及び持続期間に基づいて、対象で最大の効験を達成するための用量の調節は、当業者の能力の及ぶところである。
【0114】
III. 製造方法
L-アルギニン顆粒をマトリックス内へ効率的かつ実質的に取り込み又は被覆させると、本発明の組成物の徐放性が向上することが発見されている。セルロース性マトリックスの場合、水に接触させると、このマトリックスは部分的に水和し、L-アルギニンの放出速度を制御するゲル層を形成する。L-アルギニン顆粒の効率的な被覆又は取り込みにより、溶解に対する一時的な障壁ができて、当該L-アルギニンの送達が長引くことになる。マトリックスに実質的な間隙があることで、L-アルギニンは素早く溶解することができる。本発明の方法により、直接的な圧密で形成される製品に比べ、優れた特性を持つ製品が形成される。更に、本方法は、時間がかかると共に高価な流動化分散を含む方法に比べて有利である。
【0115】
効果的かつ効率的な被覆の鍵は、本発明の顆粒化、磨砕、及び混合ステップの実施にある。図5を参照すると、ある好適な実施態様では、錠剤は、L-アルギニンを顆粒化するステップ(ステップ110)と、前記L-アルギニンを磨砕するステップ(ステップ125、140)と、前記L-アルギニンを残りの成分と混合するステップ(ステップ145、150、155)と、前記成分を圧縮して錠剤を形成するステップ(ステップ160)とを含む本発明の方法に従って製造される。好ましくは、前記の方法が、更に、該成分をふるいにかけるステップ(ステップ105)、及び/又は、前記磨砕ステップ中に前記L-アルギニンを乾燥させるステップ(ステップ135)のいずれか又は両方を含むとよい。
【0116】
使用前に成分をふるいにかける場合(ステップ105)、20番及び/又は30番メッシュのふるいを、当該成分のいくつか又は全部に用いることができる。ある好適な実施態様では、顆粒化前に顆粒をふるいにかけ(ステップ105)、磨砕前にも再度ふるいにかける(図示せず)。ふるいにかけることにより、顆粒に、被覆及び/又は圧密に有利な範囲の、より細かな粒子サイズ分布が提供される。
【0117】
顆粒化ステップは、粒子をより均一にするという点で有利である。当業で公知のいずれかの適した方法を用いて、活性な薬剤を造粒するか、又は、顆粒化することができる。造粒又は顆粒化は、通常、小さな粒子を集めて、より大きな、しかしそれでも尚最初の粒子を判別できるような永久的な凝集体にし、それらを自由に流れる状態にするサイズ拡大プロセスであると定義されている。顆粒化前に、結合剤を活性薬剤に加えて、顆粒化プロセスを向上させることができる。他の添加剤を顆粒化中に加えることもできる。これらには、例えば甘味料、着香料、着色剤、抗酸化剤等がある。
【0118】
選択的には、水又は他の溶媒を加えて顆粒化プロセスを助けることができる。加える水又は溶媒の量は、例えば顆粒化プロセスの選択などに依存し、当業者であれば容易に決定することができる。水又は他の溶媒は、顆粒化プロセス中のいずれの適した時点で加えてもよい。例えば、結合剤を溶媒(例えば水)に混合して顆粒化剤を形成してもよく、次にこの顆粒化剤を活性薬剤上に噴霧することができる。代替的には、ある顆粒化剤の粘性が高すぎて活性薬剤上に均一に噴霧できない場合、まず結合剤を活性薬剤に混合してから、水又は他の溶媒を噴霧して、活性薬剤顆粒又はペレット剤の均一なパターンを生じさせることが好ましいであろう。
【0119】
いずれの適した顆粒化法を用いても、活性薬剤を含む粒子を作製することができる。湿式顆粒化及び/又は乾式顆粒化法を用いることができる。
【0120】
乾式顆粒化とは、熱及び溶媒を使用せずに、調合物を顆粒化することを言う。乾式顆粒化技術は、一般に、スラッギング及びロール圧密成形を含む。スラッギングは、調合物を乾式混合し、その調合物を圧縮器で圧縮して大型の状態又はスラグにすることから成る。その結果できる錠剤又はスラグが磨砕されて顆粒ができる。ロール圧密成形はスラッギングと同様であるが、ローラ圧密成形では、ローラ圧密器を錠剤形成器の代わりに用いる。例えば Handbook of Pharmaceutical Granulation Technology, D. M. Parikh,
eds., Marcel-Dekker, Inc. pages 102-103 (1997) を参照されたい。乾式顆粒化技術は、例えば活性薬剤が熱又は溶媒に対して感受性であるなど、特定の場合に有用である。
【0121】
代替的には、湿式顆粒化を用いることができる。湿式顆粒化では、典型的に溶媒及び結合剤を調合物に加えて、顆粒のより大きな凝集体を提供する。顆粒化中の温度は、いずれの適した点にも設定することができるが、一般的には、当該調合物のいずれかの成分の融点を越えない。典型的には、当該混合物を、約35℃乃至約65℃の温度で約20 乃至 約90 分間、顆粒化する。ある好適な実施態様では、当該混合物を、約20分間未満、より好適には 約1 乃至 約10 分間、室温で顆粒化する(実施例8を参照されたい)。 次に、典型的にはこの顆粒を適した時間(例えば1時間以上)空気乾燥させる。
【0122】
好ましくは、当該の活性薬剤を、高せん断混合器顆粒化(「HSG」)又は流体床顆粒化(「FBG」)により顆粒化するとよい。これらの顆粒化プロセスの両者とも、大きな顆粒又はペレット剤を提供するが、用いる装置や、プロセスの作動機序で異なる。これらの顆粒化技術は、市販の装置を用いて行うことができる。
【0123】
HSGでは、混合及び湿式集合は、インペラ及び細断機による高力学的攪拌で達成される。湿潤させた材料の混合、高密度化、及び凝塊形成は、インペラが加えるせん断力及び圧密力により達成される。裁断機の主な機能は、塊を切断してより小さな断片にし、液体の結合剤の分散を助けることである。液体の結合剤はボールに注がれるか、あるいは、液体の分布をより均一にするために粉末上に噴霧される。
【0124】
他方、流動化は、微細な固体を、気体との接触を通じて流体様の状態に変換する操作である。特定の気体速度で、当該流体は粒子を助けて、それらに飛沫同伴を起こさせずに運動自由度を与える。このような流動床は、固体粒子が非常な乱流の運動を起こして期待速度を高めているような強烈に沸騰中の流体に似ている。このように、流動床顆粒化は、結合剤溶液を流動床に噴霧してより大きな顆粒を形成させることによる、顆粒が流動床で生じるプロセスである。結合剤溶液は、例えば、いずれかの適した態様で(例えば一番上又は下)位置したスプレーガンから噴霧することができる。スプレーの位置及びスプレー速度は、用いる当該の活性薬剤及び結合剤の性質に依存するであろうが、当業者であれば容易に判断される。
【0125】
本発明に従ったある好適な方法では、L-アルギニンの顆粒化(ステップ110)は、L-アルギニンをポビドンなどの結合剤と予備混合して混合物を形成させるステップ(ステップ115)と、該混合物を造粒機内で顆粒化剤(顆粒化賦形剤)で顆粒化するステップ(ステップ120)とを含む。顆粒化剤は、例えば精製水に溶解させたポビドンなどであってよい。好ましくは、Niro PMA 65 High Shear Granulatorなどの高せん断力造粒機を用いるとよい。該造粒機は、L-アルギニン及び結合剤を混合するためと、顆粒化賦形剤を該混合物に対して噴霧しつつ、該混合物を顆粒化するための両方に用いることができる。
【0126】
当該調合物の一つ以上の成分の顆粒化後、選択的には、顆粒化後の調合物を磨砕することができる。磨砕は、いずれの適した市販の装置(例えば0.039インチのふるいを備えたCoMilなど)を用いても行うことができる。ふるい用のメッシュのサイズは、所望の顆粒のサイズに応じて選択することができる。顆粒化後の活性薬剤を磨砕後、更にこれらを必要に応じて(例えば空気中で)乾燥させてもよい。
【0127】
ある好適な実施態様では、L-アルギニンの磨砕は、当業で公知の技術に従って(概略的には、引用をもって両者の内容をここに援用することとする)米国特許第5,145,684号及びヨーロッパ特許出願第
498,482号を参照されたい)湿潤した顆粒を磨砕する、又は、湿式磨砕するステップ(ステップ125)と、該顆粒を乾燥させるステップ(ステップ130)と、乾燥した顆粒を磨砕する、又は、乾式磨砕する(ステップ140)ステップとを含む。CoMil などの磨砕器を用いれば、当該顆粒を湿式磨砕及び乾式磨砕することができる。ある実施態様では、該磨砕器には、湿式磨砕用の ‘375Q ふるい、そして乾式磨砕用には'062R
ふるいが備えられている。乾燥ステップは、顆粒を
Aeromatic S-2 Fluid Bed Dryerなどの床乾燥器で所望の乾燥減量 (LOD) レベル、例えば3% 以下のLODまで乾燥させることにより、行うことができる。乾燥ステップは、所望のLODに達するまで数段階(ステップ135)、行うことができる。
【0128】
L-アルギニンの残りの成分との混合には、予備混合ステップ(ステップ145)、混合ステップ(ステップ150)、及び最終混合ステップ(ステップ155)を含めることができる。予備混合ステップには、L-アルギニン/ポビドン顆粒を、充填剤及び流動促進剤、例えば微結晶セルロース及びコロイド状二酸化珪素など、と混合するステップを含めることができる。予備混合ステップは、例えば8クォーツVブレンダなどで約5分間25rpmで混合することにより、行うことができる。混合ステップには、この混合物に、例えば一つ以上のヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの一つ以上の徐放剤と、微結晶セルロースなどの充填剤を加えるステップを含めることができる。混合ステップは、例えば2立方フィートのV−ブレンダなどで約20分間、25rpmで混合することにより、行うことができる。最終混合ステップには、ステアリン酸マグネシウムなどの放出剤/潤沢剤を該混合物に2立方フィートのV−ブレンダで加えるステップと、約5分間25rpmで混合するステップを含めることができる。
【0129】
上述したように本調合物を調製後、この調合物を圧縮して(ステップ160)錠剤型にする。この錠剤成形は、圧縮力を加えて、又は加えずに、いずれかの適した手段により行うことができる。例えば、顆粒化ステップ後の調合物の圧縮は、いずれかの錠剤プレス(例えば0.748” x 0.380”の楕円形、凹面形、平面の金型を備えたManesty Beta Pressなど)を用いて、好ましくは当該調合物の組成物が潤沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)で充分に潤沢している場合に行うことができる。このステップを行うには数多くの代替的手段が利用可能であり、本発明は、いずれか特定の装置の使用に限定されない。圧縮ステップは回転型の錠剤プレスを用いて行うことができる。前記の回転型錠剤成形器は、錠剤を形成するために、複数の貫通孔を持つ回転盤又はダイを有する。本調合物はこのダイに挿入された後、圧力成形される。
【0130】
代替的には、錠剤を鋳型成形により作製することができる。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適した機械で成形することにより作製できよう。
【0131】
錠剤の直径及び形状は、本顆粒化組成物の成形又は圧縮のために選択された鋳型、ダイ及びパンチに依る。錠剤は円盤状にも、楕円形にも、長楕円形にも、円形にも、筒状にも、三角形等にもすることができる。折れ易いように錠剤に切り込みを入れてもよい。上面又は下面に記号又は文字を浮き彫りにする又は彫り込んでもよい。
【0132】
圧縮力は、プレスの種類/モデル、どのような物理的特性が当該錠剤製品に望まれるか(所望の硬度、脆砕性等)、所望の錠剤外観及び大きさ等に基づいて選択することができる。典型的には、印加される圧縮力は、圧縮後の錠剤が少なくとも約2kpの硬度を有するようなものである。これらの錠剤は、一般に、使用者が梱包、船積み又は操作するための充分な硬度及び強度を提供するものである。必要であれば、より高い圧縮力を錠剤に印加して、錠剤の硬度を高めることができる。しかしながら、圧縮力は、錠剤内の活性成分含有粒子を変形(例えば割れ又は破壊)しないように選択されることが好ましい。好ましくは、印加される圧縮力は、圧縮後の錠剤が約10kp未満の硬度を有するようなものであるとよい。いくつかの実施態様では、錠剤を、約3kp乃至約7kpの間、選択的には約3kp乃至約5kpの間、又は約3kpの硬度を有するように圧縮することが好ましいであろう。
【0133】
典型的には、最終的な錠剤は、 約50 mg 乃至約2000 mg、より典型的には約200 mg 乃至約1000 mg、又は 約400 mg 乃至約700 mgの重量を有するであろう。
【0134】
本発明の特定の調合物及び該調合物の製造法は、徐放性L-アルギニン組成物に特有な長所をもたらす。具体的には、本発明の調合物及び方法により、望ましい徐放溶解プロファイルを達成する組成物が提供される。最適には、徐放性L-アルギニン調合物は、好ましくは約1時間で約10%乃至約40%、約4時間で約30%乃至約70%、約6時間で約55%乃至約75%、約8時間で約65%乃至約85%、約12時間で約75%乃至約95%、そして約14時間で約80%乃至約100%というように、少なくとも最長14時間、in vitro薬物放出を持続するであろう。図7に示すように、本発明の調合物はこのような最適な溶解を達成するものである。更に、実施例8及び実施例14に示すように、溶解及び安定性の研究では、本発明の調合物が、製造から1及び2ヶ月後で最適な溶解プロファイルを示すことが実証される。
【0135】
更に、本発明の調合物及び方法により、過度な脆砕性のない徐放性L-アルギニン組成物が提供される。更に、本発明の調合物及び方法は、本組成物の便利な製造が可能であるように充分圧縮可能な徐放性L-アルギニン組成物を提供するものである。
【0136】
必要に応じ、他の改良を、本錠剤の実施態様に取り入れることができる。例えば、本発明の錠剤マトリックスを通じた活性薬剤放出の改良は、Amberlite IRP-69などとのイオン交換錯体など、多様なコーティングの応用など、いずれかの公知の技術により達成することもできる。本発明の錠剤には、更に、GI運動低化薬を含めることも、あるいはGI 運動低下薬と同時投与することもできる。更に、本活性薬剤を改良して、酵素又は加水分解による切断等により活性化合物をin vivoで放出することとなるプロドラッグを、生物学的活性化合物の化学修飾により作製することもできる。付加的な層又はコーティングは、薬物放出の速度及びタイミングを提供する付加的な手段となる対拡散バリアとして作用することができる。
【0137】
HMG CoA-レダクターゼ阻害剤(例えばシンバスタチン)及び/又は付加的な薬剤が含まれる場合、これらの薬剤は、好ましくは混合ステップ(ステップ145、150、155)で添加されるとよい。当該錠剤が徐放性L-アルギニン調合物及びHMG-CoA
レダクターゼ阻害剤調合物を含む場合、当該錠剤は、徐放性L-アルギニン調合物のコアと、少なくとも一つのHMG-CoA レダクターゼ阻害剤を含む調合物による第二の外側の被覆又はコーティングとを有していてもよい。代替的には、当該の錠剤は、徐放性L-アルギニン調合物などのL-アルギニン調合物と、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤調合物とを、一方の面を共有させて有していてもよい。
【0138】
L-アルギニンをHMG-CoA レダクターゼ阻害剤と順次又は同時のいずれかで投与する場合、各錠剤、カシェ剤、トローチ、又はカプセルは、約 0.01 mg 乃至約 200 mg のHMG-CoA レダクターゼ阻害剤を含む。HMG-CoA レダクターゼ阻害剤の量は、用いる特定のHMG-CoA レダクターゼ阻害剤に応じて様々であろう。
【0139】
本発明の別の局面では、心臓血管及び/又は脳血管の疾患の治療用の組成物を食品の形で提供する。好ましくは、当該の食品は、処方健康バーなどのバーの形であるとよい。食品の使用により、単一の錠剤に取り入れられるよりも多量のL-アルギニンを提供することが可能になり、例えば、1グラムを超えるL-アルギニンを一個の錠剤に取り入れることは困難である。従って、1グラムを超える量のL-アルギニンを送達するには、複数の錠剤が必要である。本発明は、1グラムを超えるL-アルギニンや所望の他の作用薬を提供することのできるバーを提供する。ある実施態様では、L-アルギニンを、即時放出調合物、例えばL-アルギニンの即時放出顆粒として食品バーに加える。好ましくは、前記のバーが、L-アルギニンの徐放性顆粒などを含む徐放性調合物を含むとよい。ある好適な実施態様では、前記の顆粒は食味を与えるコーティングなど、食味を隠す成分を含む。別の実施態様では、当該のバーは、更に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤などの付加的な作用薬を含有する。好ましくは、HMG-CoA レダクターゼ阻害剤はシンバスタチンなどのスタチンであるとよい。L-アルギニンをスタチンに食品賦形剤型にして配合すると、本調合物を投与する際の節制が提供され、またその投与が容易となるであろう。更に、食品の利用により、より多量の用量が必要な場合にも、L-アルギニンの複数の錠剤を摂取する必要を減らすことができる。
【0140】
ある実施態様では、当該のバーは、約 1乃至約80 g のシンバスタチンと、約1乃至約10グラムのL-アルギニンを有する。ある好適な実施態様では、バー一本当たりで合計少なくとも約10 mg のシンバスタチン及び約4 g のL-アルギニン又はその塩を、糖類、果実成分、たんぱく質、及びビタミン及びミネラルと併せて有するバーが提供される。該バーの重量は約25乃至約100 gの範囲である。ある特定のプロセスにおいては、該バーは、糖類及び果実ペーストを高温で配合した後、シロップを低温で少量成分と一緒に配合することにより作製される。該シロップ中の少量成分を混合後、L-アルギニン及びシンバスタチンを、具体的にはたんぱく質増量剤と併せて加えた後、充填剤及び食品、具体的には、所望の口当たり及び風味を提供する果実片又は他の微粒子状食用成分と、大豆たんぱく質を加える。その結果できる製品は保存安定性があり、美味という点で望ましい感覚受容性を有し、またシンバスタチン及びL-アルギンと相まって健康な成分の組合せを提供するものである。L-アルギニン及びL-リジンと一緒に健康バーを製造する方法及び処方は、例えばこの引用をもってその全文を援用することとする米国特許 6,063,432号に解説されている。
【0141】
本発明の別の局面は、上述のバーを製造する方法である。本方法は、図5、ステップ110に関連して上述したようにL-アルギニンを顆粒化するステップを含むであろう。好ましくは、この顆粒化ステップは、予備混合ステップ(ステップ115)及び顆粒化ステップ(ステップ120)を含むであろう。好ましくは、本方法が、更に、上述した湿式磨砕ステップ(ステップ125)を含むとよい。このようなバーは、例えば上に詳述したように、L-アルギニンの適した医薬品添加物による湿式顆粒化により得られよう。その結果得られる顆粒は、そのままで用いられるか、あるいは、食味被覆性のセルローシックス(原語:cellulosics)で被覆されよう。
【0142】
更に本発明の以下の実施例により描出するが、以下の実施例を限定的なものと捉えられてはならない。本出願全体を通じて引用された全参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容を、引用をもってここに援用することとする。
【0143】
実施例
実施例1: 錠剤の処方1
約250グラムのL-アルギニンを混合器内に配置し、それを100 RPMでゆっくり混合中に、100 g
EUDRAGIT RS 30D 低透過性メタクリル水性ポリマ分散液(ニュージャージー州ピスカタウェイ、Roehm America社)を加えて湿潤した塊を形成させた。その湿潤した塊を18-20 番のふるいにかけ、50℃で24時間、乾燥させた。その結果得られた乾燥L-アルギニン顆粒 (250 g) を84 g METHOCEL K100 M CR メチルセルロース (コネチカット州ダンベリー、Dow Chemical Company社)及び3 g のステアリン酸マグネシウムと乾式混合して混合物を形成させた。その結果得られた混合物を7/16凹面パンチを用いて圧縮して錠剤にした。
【0144】
実施例2: 錠剤の処方2
250 gのL-アルギニンを混合器内に配置し、それをゆっくり混合中に、84 g のMETHOCEL K100 M CR メチルセルロース及び3 g のステアリン酸マグネシウムを加えた。その結果得られた混合物を7/16凹面パンチを用いて圧縮して錠剤にした。
【0145】
実施例3: カプセルの処方1
250 g のL-アルギニンを混合器内に配置し、それをゆっくり混合中に、100 g のEUDRAGIT RS 30D 低透過性メタクリル水性ポリマ分散液を加えて湿潤した塊を形成した。この湿潤した塊を18-20 番のふるいにかけ、50℃で24時間、ゆっくりと乾燥させた。その結果得られた乾燥したL-アルギニン顆粒(250 g)を84 g のMETHOCEL K100 M CR メチルセルロース 及び3 g のステアリン酸マグネシウムと一緒に乾式混合して混合物を形成させた。その結果得られた混合物を00 ゲル・カプセル内に入れた。
【0146】
実施例4: カプセルの処方2
250 gのL-アルギニンを混合器内に配置し、それをゆっくり混合中に、84 gのMETHOCEL K100 M CR メチルセルロース 及び3 g のステアリン酸マグネシウムを加えた。その結果得られた混合物を00 ゲル・カプセル内に入れた。
【0147】
実施例5: 錠剤の処方3
250 gのL-アルギニン及び50 gのMETHOCEL K100 M CR メチルセルロースを混合し、Kitchen Aid(登録商標) 混合器を低速で10分間、用いて均質化させて、乾燥した混合物を形成させた。この乾燥した混合物に、塊が均質に湿潤するまで115 gのEUDRAGIT RS 30D 低透過性メタクリル水性ポリマ分散液を5gずつ加えた。その湿潤した塊を12番メッシュのふるいにかけた後、20番メッシュのふるいにかけ、その後、含水率が重量で1%になるまで、30℃で24時間、乾燥させた。その結果得られた乾燥したL-アルギニン顆粒を7gのステアリン酸マグネシウムと一緒に乾式混合した後、Beta Manesyプレスを用い、7/16 凹面パンチを用いて圧縮して錠剤にした。
【0148】
実施例6: 徐放性錠剤の製造
約1000 gのL-アルギニン及び約200 gのMETHOCEL K100 M CR メチルセルロース をGP-1 高せん断力混合器(造粒器)で約5分間、100 RPMで混合した。次に、約138 g のEUDRAGIT RS 30D 低透過性メタクリル水性ポリマ分散液を、インペラを200 RPM で回転させ、圧力を1.5 バールにして加えた。この混合物を1分間、200 RPMで顆粒化した。その後この顆粒をMP-1
Fluid Bed Granulatorで45℃の投入温度で気流速度を100 CMHにして、ほぼ2%の含水率になるまで乾燥させた。次に、乾燥後の顆粒を、Comil 197S サイズ55Rのふるいを用い、円形インペラを90% の速度にして磨砕した。8 Qt. V-Blenderで、約27 gのステアリン酸マグネシウムを、磨砕後の顆粒に加え、2分間、混合した。次にその物質を、7/16” の標準凹面成形型を取り付けたBeta
Manesty プレスを用いて可能な限り最も高い硬度まで圧縮して、目的重量の682.5mgの錠剤に圧縮した。その錠剤を75
cc入りHDPE ビン1本当たり60錠になるように手で梱包した。
【0149】
本錠剤、対、BioEnergy社(ニュージャージー州ウォレン)から購入した市販の徐放性L-アルギニン錠剤の放出プロファイルを、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて作製した。図7は、両者の調合物の放出プロファイルを示すチャートである。
【0150】
実施例7: L-アルギニンの薬物動態の評価
L-アルギニン徐放性錠剤、対、即時放出カプセルの薬物動態を評価するための無作為4方向交差研究を、14人の健康な成人ボランティアに絶食条件下で行った。ここで言う「健康」とは、心臓血管リスク因子のない非高コレステロール症の対象を意味する。この研究では、実施例6の徐放性L-アルギニン錠剤(L-アルギニンCR)と、Montiff社(カリフォルニア州ロサンジェルス)から購入した市販の即時放出L-アルギニンカプセル(L-アルギニンIR)とを比較した。
【0151】
この研究の目的は徐放性L-アルギニンの薬物動態パラメータを判定することだった。下の表Iに示すように、各薬物動態パラメータに対して行われた両側対応t-検定のp値に基づくと、Cmax 及びTmaxに治療間に統計上有意な違いがあった。予想通り、徐放性L-アルギニン錠剤は、即時放出カプセルに比べて低いCmax (14.9 ug/mL 対 24.1 ug/mL) 及び長いTmax (4.4 時間対1.4 時間) を有していた。
【0152】
【表1】



【0153】
実施例8. 改良された徐放性L-アルギニン錠剤の製造
表IIは、改良された徐放性錠剤を製造するために集成される成分や、各成分の使用量を挙げたものである。
【0154】
【表2】

【0155】
*水を顆粒化で用いた後、混合物を乾燥させた。
【0156】
ステアリン酸マグネシウムを除く全ての成分は、20番メッシュのふるいでふるいにかけられた。ステアリン酸マグネシウムは30番メッシュのふるいでふるいにかけられた。ポビドン(ポリビニルピロリドン)のほぼ半分を精製水に溶解し、顆粒化剤として横に取り置いた。L-アルギニンと、ポビドンの残りを4分間、Niro PMA 65高せん断力造粒器で乾式混合した後、顆粒化剤をそれに噴霧することにより、約6.5 分間、顆粒化した。次に、湿潤した顆粒を、’375Qのふるいを取り付けたCoMilミルで磨砕した。次に、磨最後の顆粒をAeromatic S-2 フルイド・ベッド乾燥機で3%以下のLODまで乾燥させた。次に、乾燥後の顆粒を'062Rのふるいを取り付けたCoMilで磨砕した。次に、微結晶セルロース及びコロイド状二酸化珪素のほぼ半分を8 quart
V-Blender で5分間、25rpmで混合し、 2立方フィートのV-Blenderに移した。次に、微結晶セルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの残りの部分も、この2立方フィートのV-Blenderに加え、20分間、25rpmで混合した。次に、ステアリン酸マグネシウムをこの2立方フィートのV-Blenderに加え、5分間、25rpmで混合した。最後に、当該混合物を、0.748" x 0.380" の楕円形凸面の平面成形型を取り付けたManesty Bet プレスを用いて圧縮して、1000mgの目的重量の錠剤にした。図6は、この方法の概略的フロー図である。
【0157】
標準的な工程中制御検査及び詳細を、該製造工程中に用いることができ、この実施例で用いられたものを下の表IIIに挙げる。
【0158】
【表3】



【0159】
標準的な放出法及び詳細を用いることができ、この実施例で用いられたものを下の表IVに挙げる。
【0160】
【表4】


【0161】
更に、本研究では、本発明の徐放性L-アルギニン調合物に関する脆砕性及び含有量均一性を含め、望ましい物理的特長が実証された。
【0162】
【表5】

【0163】
実施例9: シンバスタチン有り及び無し時のL-アルギニンSR、そしてL-アルギニンSR有り及び無し時のシンバスタチンの薬物動態の評価
シンバスタチン有り及び無し時のL-アルギニンSR、そしてL-アルギニンSR有り及び無し時のシンバスタチンの薬物動態を研究した。実施例6のL-アルギニンSR錠剤や、BioEnergy社(ニュージャージー州ウォレン)から購入した市販のシンバスタチン錠剤が用いられた。
【0164】
表VIに見られるように、各薬物動態パラメータに対して行われた両側対応t検定のp値に基づくと、Cmax、AUC0-10
及び Tmaxについて、治療間で統計上有意な違いはなかった。表VIIに示すように、L-アルギニン SRは、シンバスタチンの単一用量薬物動態に対して、統計上有意な効果はない。
【0165】
【表6】



【0166】
【表7】

【0167】
実施例10: マウスの梗塞サイズに対するシンバスタチンのL-アルギニンとの投与による効果
梗塞サイズに対するシンバスタチン及びL-アルギニンの両方の効果をマウスで研究した。マウスに、シンバスタチンと、シンバスタチン及びL-アルギニンとを図3に示す量、 生理食塩水に溶解させて含む腹腔内注射液を投与した。これらのマウス、対、コントロール群に対する梗塞サイズの結果を、図2及び図3に示す。
【0168】
実施例11: シンバスタチン及びL-アルギニンの組合せの用量最適化
シンバスタチン及びL-アルギニンの併用投与の用量最適化をマウスで研究した。マウスに、多様なレベルのシンバスタチン及びL-アルギニンを図4に示すように注射した。この研究の結果も図4に示す。統計学的解析では、最適な組合せ範囲は、1.2-1.4 mg/Kg のシンバスタチンを、約20-25
mg/Kg のL-アルギニンと組み合わせたものと予測された。
【0169】
実施例12: ADMAレベルの上昇した患者において、シンバスタチンによる内皮依存的血管拡張の亢進は、L-アルギニン徐放との組合せにより増強される
スタチンはin vitroで内皮細胞NOシンターゼ(eNOS)の発現を刺激し、内皮依存的なNO媒介性血管拡張をin vivoで亢進する。非対称ジメチルアルギニン (ADMA) は、eNOSの内因性の競合的阻害剤である。血漿中ADMAレベルの上昇があることが、内皮細胞の機能不全に関連付けられている。シンバスタチンが、ADMAの上昇した患者において内皮細胞機能を亢進するのは、ADMAの阻害効果が補助的なL-アルギニン徐放により克服される場合のみであることが発見された。
【0170】
ADMAレベルの上昇のある15人の無症状の老齢の対象に、無作為化した順番で、シンバスタチン(40
mg/日)、実施例8で解説した通りに調製されたL-アルギニン徐放(3 g/日) 、あるいは両者の組合せをそれぞれ3週間、三つの交差デザインで、治療間に少なくとも3週間のウォッシュアウトを設定して投与した。内皮依存的血管拡張は、コンピュータ支援画像解析を用いた上腕動脈超音波により、評価された。ADMA及びL-アルギニンの血漿中濃度は、バリデート済みのHPLC法で判定された。
【0171】
該研究を終えた15人の患者を分析したところ、徐放性L-アルギニン単独と、シンバスタチンと組み合わせた場合の両方で、治療前測定値からの内皮依存的血管拡張率が増加したことが明らかになった。前記の組合せでは、シンバスタチン単独で観察されたものに比べ3.87%という、治療前内皮依存的血管拡張率からの変化が著しく増加した(p<0.025)。該組合せと、徐放性L-アルギニンとの間の内皮依存的血管拡張率の変化の違いは小さかった。グリセリルトリニトレートによる内皮細胞非依存的血管拡張は、いずれの処理の影響も受けなかった。単独又はシンバスタチンと組み合わせた場合のL-アルギニン徐放により、血漿中L-アルギニン/ADMA 比が著しく増加した(基線、それぞれ82.3±4.0 対 102.8±9.2 及び102.6±10.8、それぞれ p<0.05)。これらの結果を図8に要約する。
【0172】
シンバスタチンは、eNOSがADMAレベルの上昇により遮断されている対象においては内皮細胞機能を亢進しない。シンバスタチンを経口L-アルギニン徐放と組み合わせると、内皮細胞機能に対する相乗効果がある。NO媒介性効果がスタチンによる治療効果で主要な役割を果たしていると考えられるため、L-アルギニン徐放との組合せが、ADMA濃度の上昇のある患者で考察されなければならない。
【0173】
実施例13: シンバスタチンをL-アルギニン徐放と組み合わせた治療によるコレステロール・レベルの向上
実施例12で解説した研究では、総コレステロール (TC)、LDLコレステロール、HDL コレステロール、及びトリグリセリドの変化を、治療前及び治療後に分析した。この分析の結果を図9に示す。その結果が実証するように、本発明の徐放性L-アルギニンをシンバスタチンと同時投与すると、シンバスタチン単独の投与に比べてより大きな程度、総コレステロール、LDL コレステロール、及びトリグリセリドが低下し、HDL コレステロールが増加する。
【0174】
実施例14: 徐放性塩酸アルギニン500mg錠剤中の塩酸アルギニンの溶解放出のHPLCによる判定
移動相を以下の通りに調製した。最初に、約0.9
g の1-ペンタスルホン酸ナトリウム塩一水化物及び3.5 gの第一リン酸ナトリウム一水化物を適した容器に計り入れることにより、1リットルのpH 3.3 緩衝溶液を調製した。約100 mLの脱イオン水を加えて溶解させた。リン酸を加えて pHを3.3に調節した。次に、850 mL のpH 3.3緩衝液を150 mLのメタノールと配合して適した溶液に入れ、混合した。この混合液0.45μmのナイロン・メンブレンフィルタでろ過した。最後にこの混合液を使用前に脱気した。
【0175】
以下の通りに溶解媒質(pH6.8の50 mM リン酸緩衝液)を調製した。まず20.0
mL の10 M NaOH を1000 mL容積のフラスコにピペットで入れ、脱イオン水で希釈して0.2 M NaOHを調製した。次に54.44 g の2水素リン酸カリウム無水物を適した容器に計り入れ、溶解させ、2000 mLの脱イオン水で希釈した。896 mL の0.2 M NaOH をこの容器に加え、脱イオン水で8000 mL まで希釈した。最後にこの混合液を使用前に脱気した。
【0176】
以下の通りに溶解試料を調製した。実施例8の通りに調製した6つの塩酸アルギニン 500 mg 錠剤を量った。各錠剤を900
mL のリン酸緩衝液(pH 6.8)と一緒にステンレス製シンカに配置した。次にこのシンカを、約37℃±0.5℃で75 rpmで即時に回転させられるように、USP
装置2 (パドル) の容器に滴下した。該容器内の10
mLの溶液を、 1、2、4、6、8、10、12及び14時間目の時点で、各時点での各溶解分析に向けて取り出した。これらの試料溶液のそれぞれを0.45μmのPVDF シリンジ・フィルタでろ過した。ろ過物を分析用にHPLCバイアルに採集し、このとき最初の1-2
mL は廃棄した。10μmのFull Flow Filterを用い、37℃±0.5℃に予め暖められた10 mL の溶解媒質を、各試料採取点の後に溶解容器に戻した。担当者は、試料溶液が室温で最高1日間、安定であり、そして4℃では最高3日間、安定であることに注目されたい。
【0177】
塩酸アルギニン標準溶液を以下の通りに調製した。28
± 2 mg の塩酸アルギニン参照標準を50 mL容積のフラスコに精確に計り入れる。該標準を溶解媒質に溶解させ、体積希釈した。
【0178】
HPLCを、210nmの紫外線を用いて検出するBDS Hypersil C18 カラム(5μm、250 mm x 4.6 mm)を用いて行った。カラム温度は周囲に設定した。概略的には、移動時間は9分であり、注射量は10μLであり、流速は0.8 mL/分であり、そして移動相は、上述したように調製した pH 3.3. 緩衝液/メタノール
(85/15, v/v)だった。
【0179】
各試験は以下の通りに進行した。溶解媒質の一回の注射の後、塩酸アルギニン標準溶液の5回の連続注射、そして最後に各資料溶液の一回の注射を行った。塩酸アルギニン標準溶液を、各6回の試料注射の後と、一続きの作業の終わりに再度注射した。検査を通じた当該の系の変動(即ち、塩酸アルギニン標準溶液の5回の連続注射の平均に比較したときの、標準溶液の回復率)は約97%乃至約103%でなければならない。
【0180】
放出されるアルギニンのパーセントを判定するためには、担当者は、作業中の標準溶液の注射における塩酸アルギニン・ピークのUSP追跡因数(T)が2未満であるように注意せねばならない。Tは以下の通りに計算される:
T= W.05/2f
但し式中、W.05 は、基線からのピーク高の5%時塩酸アルギニン・ピーク幅であり、そしてfは、ピーク最大からピークの立ち上がりまでの距離である(この距離は、基線からピーク高の5%の時点で測定される)。
【0181】
放出された塩酸アルギニンのパーセントは以下の通りに計算される:



但し式中、nは測定の総数であり、Vr は各測定の溶解媒質の体積(10mL)であり、Vは溶解媒質の最初の体積 (900 mL)であり、Cs
は、作業中の標準溶液中の、mg/mLによる塩酸アルギニン濃度であり、Ci は、各試料溶液中の、mg/mLによる塩酸アルギニン濃度であり(但し式中、 i=1 to i=n-1)、 Ru は、試料溶液から得られる塩酸アルギニン・ピークのピーク面積応答であり、Rs は、作業中の標準溶液の連続注射で得られる塩酸アルギニン・ピークの平均ピーク面積応答であり、そしてLC は塩酸アルギニンの標識である(500mg)。
【0182】
放出されたパーセントは1、2、4、6、8、10、12及び14時間目に計算された。表VI及びVIIIは、多様な溶解研究の結果を要約したものである。
【0183】
【表8】

【0184】
実施例15: eNOS発現のシンバスタチン依存的調節
以下のプロトコルを用いて、eNOS機能の上方調節におけるde novoたんぱく質合成と、たんぱく質移動又はたんぱく質活性化を区別するために、培養ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)を用いてeNOS機能のシンバスタチン依存的増加の機序を調べた。
【0185】
ヒト大動脈内皮細胞(HAEC-c)(メリーランド州ウォーカーズビル、BioWhittaker社)を以下の手法に従って培養した。EBM-2/EGM-2 培地(BioWhittaker社)に入れた内皮細胞を約80%乃至約90%コンフルエントになるまで成長させた。各細胞フラスコを5 ml の培地で洗浄した後、15 ml の培地を各細胞に加えた。細胞を細胞剥離器で剥がし、50ml入り円錐形試験管に移した。800
RMP で8分間遠心分離することで細胞をペレットにした。上清を廃棄し、ペレットを冷1x PBSで洗浄した。
【0186】
細胞を以下の通りに均質化した。ペレットを剥がし、400μlの10x 均質化緩衝液 (pH 7.4の250 mM Tris、10 mM EDTA 及び10 mM EGTA)を加えた。その試料を27G 針を 約10回、用いて均質化した。そのホモジネートを1.5
ml エッペンドルフ試験管に移した。次にペレットを30
乃至45μlの1x 均質化緩衝液に再懸濁させた。
【0187】
該ペレットを以下の通りに検定した。Resin AG 50W-X8 (カリフォルニア州ハーキュリース、BioRad Laboratories社)を、5 ベッド容の0.5 N
NaOHを入れた、適したサイズのカラム内で洗浄することで樹脂のスラリを調製した。このカラムを20容の水で洗浄した。当該樹脂を停止/平衡緩衝液(pH5.5の50 mM 酢酸ナトリウム)で、溶出物が停止/平衡緩衝液の0.05pH単位内になるまで平衡させた。その結果の溶液を4℃で停止/平衡緩衝液に入った50%スラリとして保存した。加えて、602μlの tris を 5 mg バイアルの予め重量を量ったNADPHに加えることで、新鮮な10mM NADPH の25 mM tris (pH 7.4) 溶液を調製した。0.069
mg のカルモジュリンを4.1 mL の水に加えることで1μMのカルモジュリン溶液を調製した。8μMのCaCl の水溶液も調製した。2x の反応緩衝液は、50 mM Tris (pH 7.4)、6μMのBH4、2μMのフラビンアデニンジヌクレオチド、及び2μMのフラビンアデニンモノヌクレオチドを配合することにより、調製された。次に、25μlの2x 反応緩衝液、5μlの10 mM NADP、5μlの8 mM CaCl2、4μlのカルモジュリン溶液及び1μlの14C アルギニンを配合して各試料のための反応混合液を調製した。40μlの反応混合液及び5μlの試料又はコントロールを1.5 ml 入りの遠心管内で配合した。この試験管を1時間、37℃でインキュベートした。
【0188】
まず1mlのピペット先端からチップの先端を切断してチップの最小直径を増大させることで、カラムを準備した。上述の通りの調製された250μlの樹脂スラリを各カラム(イリノイ州グレンレーク、Fisher Scientific社)にピペットで入れた。そのカラムを2回、400μlの停止/平衡緩衝液(pH 5.5の50 mM 酢酸ナトリウム)で洗浄した。
【0189】
インキュベート後、約400μlの停止平衡緩衝液 (pH 5.5の50 mM 酢酸ナトリウム)を各試料及びコントロールに加えた。この混合液のうちの400μlを平衡カラムに加える。各カラムを400μlの停止/平衡緩衝液で洗浄した。400μlのカラム溶出物を、4mlのシンチレーション流体を入れたシンチレーション・バイアルに移した。その結果できた溶液を、渦流器でよく混合する。シンチレーション・カウンタ(カリフォルニア州フラートン、Beta counter、Beckman Coulter社) を用いて、所望の計数を得る。結果は、部分的には、各試料からバックグラウンド(緩衝液コントロール)を減算することで計算される。試料の数値を、1分当たりの計数として、又は、未処理細胞のパーセントとして、表す。
【0190】
標識済みのL-アルギニンのL-シトルリンへの転化と、非処理細胞の産生したシトルリンのパーセントでの表現とにより、相対的なeNOS機能を測定した。図10は、HAECを1.0又は0.3μMのシンバスタチンと一緒に24時間インキュベートした後でeNOS機能が決定された実験のデータを示す。未処理細胞も同時に培養され、相対的eNOS機能を計算するために用いられた。図10は、培養内皮細胞においてシンバスタチンがeNOS機能のレベルを増すことを明白に示している。
【0191】
集積されたデータは、シンバスタチンが内皮細胞においてeNOS発現及び機能に効果を有することを実証するものである。eNOS機能の上方調節におけるたんぱく質合成の要件、そしてeNOS特異的mRNA及び機能の両方におけるシンバスタチン依存的増加は、eNOS遺伝子転写の薬物誘導性調節のモデルと合致する。
【0192】
均等物
当業者であれば、ごく慣例的な実験を用いるのみで、ここに解説した本発明の具体的な実施例の均等物を数多く認識され、又は確認できることであろう。このような均等物は以下の請求の範囲の包含するところと意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】図1は、L-アルギニン及びシンバスタチンを含む調合物の放出パターンを示すグラフである。
【図2】図2は、L-アルギニン及びシンバスタチンで治療されたマウス脳、対、未処理のマウス脳における梗塞サイズのNMR画像の写真である。
【図3】図3は、L-アルギニン、シンバスタチン、及びL-アルギニンとシンバスタチンの両方、で治療されたマウスの梗塞体積を示す棒グラフである。
【図4】図4は、L-アルギニン及び多様なレベルのシンバスタチンで治療されたマウスの総梗塞体積を示す棒グラフである。
【図5】図5は、徐放性L-アルギニン錠剤の製造法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、徐放性L-アルギニン錠剤の製造法を示すフローチャートである。
【図7】図7は、徐放性L-アルギニン調合物の性能を比較した棒グラフである。
【図8】図8は、ヒトでの本発明の内皮依存的血管拡張に対する、徐放性L-アルギニン組成物有り及び無しのときのシンバスタチン投与の影響を比較したチャートである。
【図9】図9は、ヒトでのコレステロール・レベルに対する、シンバスタチン及び本発明の徐放性L-アルギニン組成物の投与の相乗作用を要約したチャートである。
【図10】図10は、培養ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)、対、未処理培養HAECに対する、シンバスタチンの効果を実証する棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重量で約25%乃至約75%のL-アルギニン又は薬学的に許容可能なその塩;
(b)重量で約0.5%乃至約5% のポリビニルピロリドン;
(c)重量で約5%乃至約40% のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
(d)重量で約2%乃至20%の微結晶セルロース;
(e)重量で約3%未満の二酸化珪素;及び
(f)重量で約3%未満のステアリン酸マグネシウム、
を含む、徐放性L-アルギニン組成物。
【請求項2】
(a)L-アルギニンがL-アルギニンモノヒドロクロリドを含む、重量で約50%のL-アルギニンモノヒドロクロリド;
(b)重量で約3%乃至約4% のポリビニルピロリドン;
(c)重量で約35%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
(d)重量で約10%の微結晶セルロース;
(e)二酸化珪素がコロイド状二酸化珪素を含む、重量で約1%未満の二酸化珪素;及び
(f)重量で約1%未満のステアリン酸マグネシウム、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)L-アルギニンを顆粒化剤で顆粒化して顆粒を形成するステップと;
(b)前記顆粒を湿式磨砕するステップと;
(c)前記顆粒を乾燥させるステップと;
(d)前記顆粒を乾式磨砕するステップと;
(e)前記顆粒を少なくとも一種の徐放性剤と混合するステップと
を含む、L-アルギニンの徐放性組成物を作製する方法。
【請求項4】
前記のステップ(e)が、顆粒を予備混合、混合及び最終混合するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
顆粒化するステップの前にL-アルギニンを結合剤と一緒に乾燥混合するステップを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤がポリビニルピロリドンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)L-アルギニンが重量で当該徐放性調合物の約50%を含むL-アルギニンを、ポリビニルピロリドンを含む顆粒化剤で顆粒化するステップであって、ポリビニルピロリドンが重量で当該徐放性調合物の約3%乃至約4%を含む、ステップと;
(b)前記顆粒を湿式磨砕するステップと;
(c)前記顆粒を乾燥させるステップと;
(d)前記顆粒を乾式磨砕するステップと;
(e)前記顆粒をヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合するステップであって、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが重量で当該徐放性調合物の約35%を含む、ステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記顆粒を微結晶セルロース、コロイド状二酸化珪素及びステアリン酸マグネシウムと混合するステップを更に含み、但しこの場合、前記微結晶セルロースは重量で当該徐放性調合物の約10%であり、コロイド状二酸化珪素は当該徐放性調合物の約1%未満を含み、そして前記ステアリン酸マグネシウムは重量で当該徐放性調合物の約1%未満を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項9】
L-アルギニンを含む徐放性調合物を含む、血管疾患又は異常を治療又は防止する際に使用する食用バー。
【請求項10】
前記徐放性調合物が徐放性のL-アルギニン顆粒を含む、請求項9に記載の食用バー。
【請求項11】
HMG-CoAレダクターゼ阻害剤を更に含む、請求項9に記載の食用バー。
【請求項12】
対象により消費されたときにコレステロールを低下させる、請求項9に記載の食用バー。
【請求項13】
トリグリセリド・レベルを低下させる際に用いられる、請求項9に記載の食用バー。
【請求項14】
徐放性調合物L-アルギニンを対象に投与するステップを含む、対象の血管拡張を増加させる方法。
【請求項15】
前記対象に徐放性L-アルギニンが経口投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
徐放性L-アルギニンを対象に投与するステップを含む、対象のトリグリセリド・レベルを低下させる方法。
【請求項17】
トリグリセリドを約30 乃至約 100 mg/dL、低下させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
トリグリセリドを約45 乃至約 75 mg/dL、低下させる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に徐放性L-アルギニンが経口投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
L-アルギニンを対象に投与するステップを含む、不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の上昇した対象において酸化窒素生成を増加させる方法。
【請求項21】
L-アルギニンを対象に投与するステップを含む、不斉ジメチルアルギニン(ADMA)の上昇した対象において血管拡張を増加させる方法。
【請求項22】
前記L-アルギニンが徐放性調合物を含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
内皮機能を少なくとも約 5 乃至 約 15%増加させる、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
内皮機能を少なくとも約 7乃至約12%増加させる、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項25】
対象が内皮機能不全を有する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項26】
患者にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を投与するステップを更に含む、請求項14、16、20又は21のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記HMG-CoAレダクターゼ阻害剤がシンバスタチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記徐放性L-アルギニンが請求項1に記載の組成物である、請求項14、16、20又は21のいずれかに記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−536858(P2008−536858A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506678(P2008−506678)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013805
【国際公開番号】WO2006/124161
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507339858)パルメット ファーマシューティカルズ, エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】PALMETTO PHARMACEUTICALS, LLC
【住所又は居所原語表記】217 MedinahSaint Simons Island, Georgia 31522 (US).
【Fターム(参考)】