説明

循環器疾患の処置に有用な組み合わせ組成物

消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている、n−3 PUFAのアルキルエステル中に1つまたは複数のスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物の、循環器疾患を処置するための使用が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物に関し、1つまたは複数のn−3 PUFAのアルキルエステル中にスタチンを含み、消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されており、急性冠症候群(ACS)および急性心筋梗塞(AMI)が原因の多くの死亡を減らし、処置患者の短期および長期予後の改善に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
上述の1つまたは複数のn−3 PUFAのアルキルエステル中にスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液は、国際特許WO2006/045865に記載されており、この特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
急性冠症候群(ACS)は、心臓に関連する一連の徴候と症状である。ACSは、急性心筋虚血の診断と同じであるが、それは疾病特徴的ではない。
【0004】
急性冠症候群のサブタイプには、不安定狭心症(UA、心筋損傷には関連付けられていない)、および2つの形の心筋梗塞(MI、心臓発作)が含まれ、心筋が損傷を受けている。これらのタイプは、心電図(ECG/EKG)の文書にある所見に従って、非ST部分上昇型心筋梗塞(NSTEMI)およびST部分上昇型心筋梗塞(STEMI)と命名されている。そのMIの形が急性冠症候群として分類されるいくつかの変形がありうる。
【0005】
ACSは、身体運動中に現れ、安静中に消える安定狭心症とは区別されるべきである。安定狭心症とは対照的に、不安定狭心症は突然に発生し、安静中や最小限の身体運動中に、またはその人の前回の狭心症より少ない身体運動中に(「クレッセント狭心症」)起こることも多い。冠状動脈中の新しい問題を示唆しているので、新発症狭心症もまた、不安定狭心症と考えられる。
【0006】
ACSは、通常、冠動脈血栓に関連付けられるが、コカインの使用とも関連付けることができる。心臓性胸痛は、貧血、徐脈(極端に遅い心拍数)または頻拍(極端に速い心拍数)に連動することもありうる。
【0007】
急性心筋梗塞(AMI)は、形態機能的変化を引き起こし、進行性左室拡張(「心室リモデリング」現象)を誘導することも多い。
【0008】
AMI後の心室拡張は、駆出率が減少する状況において適切な心拍出量の維持を目的とした全体的補償機序と見なすことができる。
【0009】
心室拡張の程度は、最も重要なAMI患者の予後指標である。
【0010】
相対的に大きな心室容量の患者は、別の心臓イベントに対するより大きなリスクがある(Circulation 1987;76:44−51)。
【0011】
従って、梗塞後の期間に心室リモデリング現象を制限することは、臨床予後の観点から最も重要である(Circulation 1994;89:68−75)。この現象の制限は、2つの機序:(a)早期心筋再灌流を使って梗塞した領域(これが将来の拡張の主要決定要因)の程度を制限することにより(Circulation 1989;79:441−444)および/または(b)ACE阻害剤の投与により壁側応力を低減し、その結果として梗塞プロセスに関与しない心筋領域の進行性拡張を減らすことにより、達成可能である。
【0012】
血栓性閉塞が完全で永続的な血管閉塞に向けて急速に進展する場合、生じた灌流の欠乏により、2、3時間の間に、心筋細胞壊死が起こり、従って、梗塞が起こる。直後の予後および長期予後は、壊死領域の大きさ、およびそれにより生じた早期および後期合併症を含む最も重要な一連の因子に依存する。従って、急性梗塞に対する現代の治療の主要目的は、梗塞領域の大きさを減らすことにあることは明らかである。この目的は、薬理学的(血栓溶解薬)、機械的な(PTCA)、例えば、血管形成、または外科手術(バイパス)による再灌流手法により達成される。一般的に、早ければ早いほど、再灌流はより有効になり、壊死の領域がより小さくなるであろう。後者は、程度は少ないが、他の因子にも影響を受け、さらに、上記の全てが心筋酸素の消費の影響を受け、心筋酸素は心拍数、心筋収縮性および壁側張力により調節を受ける。従って、薬理学的であれ、そうでないものであれ、適切な循環能力を同時に維持しながら心仕事量を減らす全ての処置は、基本的に重要である。
【0013】
急性心筋梗塞の処置用の有用な薬剤は、すでに既知である。
【0014】
β遮断薬は、抗不整脈特性を有する薬剤であり、梗塞発症の初期段階で使用すれば他に比べ極めて活性が高い。
【0015】
ニトロ誘導体は、静脈注入により投与される薬剤であり、心外膜血管の血管拡張により心筋灌流を高めるのに有用である。
【0016】
ニトロプルシドナトリウムは、細動脈および静脈区域に二重作用を及ぼす薬剤である。この化合物は、冠血管および腎臓血管拡張を起こし、その結果、心筋の灌流および利尿を高める。
【0017】
あらゆる適切な、また適用可能な薬理学的および技術的手段を用いて処置しても、一定数の急性心筋梗塞患者が入院の最初の週およびその後に死亡するケースが続いている。従って、前記薬剤が単独で使用されるのであれ、単独では患者が梗塞の発症の最初の週およびその後に亡くなるという死亡比率から救うことができない通常の既知の薬剤と組み合わせて使用されるのであれ、急性心筋梗塞による死亡数を減らすのに役立つ新しいおよび既知の薬剤を入手可能にする必要性が強く認識されている。
【0018】
心臓病学的分野におけるPUFAとスタチンの使用は、すでに既知である。
【0019】
国際特許WO02/43659には、スタチン、ドコサヘキサン酸、ビタミンE、C、B6およびB12、葉酸ならびにカルシウムの組み合わせが、循環器疾患、例えば、高コレステロール血症および高血圧症のリスク因子の低減を目的として記載されている。
【0020】
Durrington et al.(Heart 2001;85:544−548、参照)は、シンバスタチン処置した冠動脈心疾患および持続性高トリグリセリド血症患者に投与したオメガ−3PUFA濃縮物について記載している。
【0021】
米国特許第20070191467号は、高トリグリセリド血症または高コレステロール血症または混合型脂質異常症、冠動脈心疾患(CHD)、血管疾患、動脈硬化性疾患および関連状態の患者の処置のために、さらには、心臓血管、心臓、および血管イベントの予防または減少のために、HMG−CoA阻害剤およびオメガ−3脂肪酸の組み合わせの使用方法を開示している。
【0022】
国際特許WO2006/013602は、少なくとも1つのオメガ−3脂肪酸、1つのスタチン、コエンザイムQ10、リスベラトロール、1つのポリコサノール、パンテチン、セレンおよび亜鉛を含む組み合わせについて記載している。その組み合わせは、インスリン耐性に起因する疾患型の処置、および循環器疾患に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の説明
驚くべきことに、これまでに、n−3 PUFAのアルキルエステル中に1つまたは複数のスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物であって、消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている組成物が、急性心筋梗塞および急性冠症候群が原因の死亡の数を減らし、処置患者の短期および長期予後を改善することに有用であることを見出した。
【0024】
従って、本発明の1つの目的は、急性心筋梗塞および急性冠症候群の予防および/または処置のための、n−3 PUFAのアルキルエステル中に1つまたは複数のスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物であって、消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている組成物である。
【0025】
言い換えれば、本発明は、内部に1つまたは複数のスタチンを含み、n−3 PUFAのアルキルエステル中に含まれた高分子膜で構成されるマイクロカプセルからなる急性心筋梗塞および急性冠症候群の予防および/または処置のための組み合わせ製剤に関し、ここで、消化管液中で容易に崩壊することができる前記高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている。
【0026】
本発明の別の目的は、急性心筋梗塞および急性冠症候群の予防および/または処置用に有用な薬物の調製のための;急性心筋梗塞および急性冠症候群が原因の死亡の数を減らすための;急性心筋梗塞および急性冠症候群関連心房細動の予防および/または処置のための;前記心房細動による入院日数を減らすための;いずれかの急性心筋梗塞および急性冠症候群関連既存または新規非心臓血管併存症による再入院日数を減らすための;さらには処置患者の短期および長期予後の改善のための、n−3 PUFAのアルキルエステル中に1つまたは複数のスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物の使用であって、消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている組成物の使用である。
【0027】
また、本発明による組み合わせは、実質的に活性を損なうことなく、他の有用な成分を含有することが可能である。
【0028】
本発明による医薬は、それぞれの疾患状態を処置もしくはそれらに対する予防または保護剤作用、または1つまたは複数の上記の処置面を含む複合病理学的状態の処置に使用可能である。
【0029】
本発明による組み合わせは、基本的に、医療分野で既知の、および臨床現場ですでに使われている有効成分からなる。従って、製剤が一定時間市場に出ており、ヒトまたは動物投与に適したグレードである限り、それらは製造が非常に容易である。
【0030】
スタチンは、コレステロールレベルを低下させるために使われている既知の部類の薬剤である。スタチンは、市場で入手可能であり、あるいは、文献の記載の方法に従って調製可能である。
【0031】
あらゆるスタチンが本発明の目的のために適切である。スタチンの例には、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、パラバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチンおよびロスバスタチンがある。これらの中で、好ましいのは、シンバスタチンである。
【0032】
また、本発明により、それらの薬理学的特性およびこの分野の専門家の常識の知識に応じて2つ以上のスタチンを組み合わせることも可能である。
【0033】
用語の「n−3 PUFA」(ω−3脂肪酸またはオメガ−3脂肪酸とも呼ばれる)は、n−3位置、すなわち、脂肪酸のメチル末端から3番目の結合位置に炭素−炭素二重結合を共通して有し、一般的にはC16〜C24、特にC20〜C22鎖を有する、長鎖多価不飽和脂肪酸のファミリーに関する。最もよく見られる、天然に存在するn−3脂肪酸の例をそれぞれの名称と共に下表に示す。
【表1】

【0034】
本発明によるn−3 PUFAは、好ましくは、高含量のEPAおよびDHAを含む脂肪酸の混合物である。例えば、合計脂肪酸重量の25重量%超、好ましくは、約30重量%〜約100重量%、特に約75%〜95%、また、さらに好ましくは、少なくとも85重量%の含量のEPAおよびDHAを含む混合物である。好ましくは、本発明によるn−3 PUFAの合計含有物は、少なくとも合計脂肪酸重量の90重量%のn−3 PUFAを有する脂肪酸の混合物である。
【0035】
本明細書で使われる用語の「n−3 PUFA」は、その対応するC〜Cアルキルエステルおよび/または薬学的に許容可能な塩基、例えば、水酸化ナトリウム、リシン、アルギニンまたはアミノアルコール、例えば、コリンとのその塩を含むことが意図されている。エチルエステルは、最も広く使用され、本発明に好ましい。
【0036】
最も好ましいEPAとDHAの間の比率は、約0.6〜1.1/1.3〜1.8;特に0.9〜1.5である。
【0037】
好ましくは、EPAの含量(エチルエステルとしての)は、合計脂肪酸重量の40〜51重量%、およびDHAの含量(エチルエステルとして)は、34〜45重量%である。
【0038】
オメガ−3脂肪酸、またはそのエステルまたは塩は、単独またはそれらの混合物で、市場から調達可能であるか、または既知の方法により調製可能である。混合物は本発明による組み合わせ用に特異的に製剤化することができる。
【0039】
すでに述べたように、それぞれの成分は、ヒトの患者で長期にわたって使用されてきており、従って、その薬理毒性学的プロファイルは既知である。
【0040】
このことは、個々の成分の用量および比率は、通常の前臨床および臨床試験を行う、または食餌製品の処方に関して通常の配慮を有するその分野の専門家によって決定可能であることを意味する。
【0041】
ヒトの使用用組み合わせ医薬組成物の調製のために推奨される各化合物の量を次に示す。
オメガ−3脂肪酸:500mg〜2g/日、好ましくは1g/日;
シンバスタチン:5mg〜40mg/日、好ましくは20mg/日。
本発明による組み合わせ医薬組成物は単一型であり、その中に、有効成分が経口投与用の単一剤型として存在する。
【0042】
上述のように、本発明の組み合わせ組成物は、n−3 PUFAのアルキルエステル中のスタチンのマイクロカプセル懸濁液からなる製剤であり、消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている。
【0043】
言い換えれば、本発明は、内部に1つまたは複数のスタチンを含み、n−3 PUFAのアルキルエステル中に含まれた高分子膜で構成されるマイクロカプセルからなる組み合わせ製剤に関し、ここで、消化管液中で容易に崩壊する前記高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている。
【0044】
このコーティングは、たとえ下記のプロセスを40℃を超える温度で行った場合でも、スタチンに安定化を付与し、マイクロカプセル懸濁液の調製プロセスの間のスタチンの分解生成物発生を排除し、製剤(シフトゼラチンカプセル剤、ハードゼラチンカプセル剤、錠剤、粒剤等)の投与の最終システムにおけるスタチンの前記マイクロカプセル懸濁液のn−3 PUFAのアルキルエステル中のへの取り込みの安定性を与える。
【0045】
このコーティングは、オイルの存在中で、高含量のn−3 PUFAのアルキルエステルと一緒に処方される場合、スタチンに起こりうる分解の問題を避ける。
【0046】
本発明の医薬製剤は、高含量の多価不飽和脂肪酸(n−3 PUFA)のアルキルエステルを有するオイルおよび少なくとも1つのポリマーおよびスタチンを含むマイクロカプセルを含む懸濁液で構成されることを特徴とする。
【0047】
スタチンのマイクロカプセルをコーティングするポリマーは、好ましくは、ポリエステル、ポリアクリラート、ポリシアノアクリラート、多糖類、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物からなる群より選択される。さらに好ましくは、スタチンのマイクロカプセルをコーティングするポリマーは、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、カラギーナン、ペクチン、エチルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセトフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸塩、メチルアクリル酸共重合体(オイドラギットLおよびS)、ジメチルアミノエチルメタクリラート共重合体(オイドラギットE)、トリメチルアンモニウメチルメタクリラート共重合体(オイドラギットRLおよびRS)、乳酸とグリコール酸のポリマーおよび共重合体、またはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0048】
任意選択で、本発明による医薬製剤は、抗酸化剤、好ましくは、ビタミンEアセタートを含む。好ましい本発明の実施形態では、医薬製剤は、カルニチンを含む。
【0049】
好ましくは、マイクロカプセルは、本発明による医薬製剤の全体重量の1重量%〜60重量%であり、前記マイクロカプセル中に組み込まれるスタチンの量は、マイクロカプセルの全体重量の1重量%〜80重量%、好ましくは、1〜40重量%である。好ましくは、高含量のn−3 PUFAのアルキルエステルを含むオイルは、60重量%を超えるn−3 PUFAアルキルエステルの純度を有する。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマーは、可塑剤の添加物を含み、好ましくは、可塑剤は、トリエチルシトラート、ブチルフタラートまたはこれらの混合物からなる群より選択される。カプセル化プロセスを改善するか、または促進する他のポリマーの工業技術的添加物、例えば、流動化剤、好ましくは滑石を、任意選択で組み込んでもよい。
【0051】
エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の比率は、好ましくは、0.5〜2である。
【0052】
好ましい本発明の実施形態では、マイクロカプセル懸濁液は、経口投与用のソフトゼラチンカプセル剤でカプセル化される。前記ソフトゼラチンカプセル剤は、好ましくは、腸溶コーティングを有する。
【0053】
マイクロカプセルの調製は、文献に記載されているいずれの方法に従って行うことも可能である。説明のために、またこれに制限されることなく、マイクロカプセル作成用の種々プロセスを下記のカテゴリーにグループ分けできる:
A)単純コアセルベーション法:
可能なポリマー用添加物と一緒にポリマーの適切な溶媒中の溶液を調製する。カプセル化される薬剤を前記ポリマーの溶液中で懸濁させ、ポリマーの非溶媒を添加して薬剤結晶の上にポリマーを析出させる。これらのプロセスの例を特許文書、例えば、スペイン特許ES2009346、欧州特許EP0052510、または欧州特許EP0346879で見付けることができる。
B)複合コアセルベーション法:
この方法は、カプセル化される薬剤粒子上に析出し、薬剤を分離する膜を生成する不溶性の複合体を生成するように反対の電荷を有する2つのコロイドの相互作用に基づいている。これらのプロセスの例を、特許文書、例えば、英国特許GB1393805で見付けることができる。
C)二重エマルション法:
カプセル化される薬剤を水またはいくつかの他の共アジュバントの溶液に溶解し、ポリマーと添加物の適切な溶媒、例えば、ジクロロメタンの溶液中で乳化する。得られたエマルジョンを今度は水または乳化剤、例えば、ポリビニルアルコール、の水溶液中で乳化する。この第2のエマルジョンができるとすぐに、ポリマーおよび可塑剤が溶解している溶媒を、蒸発または抽出により除去する。マイクロカプセルは、濾過または蒸発により直接得られる。これらのプロセスの例も、特許文書、例えば、米国特許US4、652、441で見付けることができる。
D)単純エマルジョン法:
カプセル化される薬剤、ポリマーおよび添加物を一緒に適切な溶媒に溶解する。この溶液を水または乳化剤、例えば、ポリビニルアルコール、溶液中で乳化し、有機溶媒を蒸発または抽出により除去する。生成したマイクロカプセルを、濾過または乾燥により回収する。これらのプロセスの例も、特許文書、例えば、米国特許US5、445、832で見付けることができる。
E)溶媒蒸発法:
カプセル化される薬剤、ポリマーおよび添加物を一緒に適切な溶媒に溶解する。この溶液を留去して得られた残渣を適切なサイズに微粒子化する。これらのプロセスの例も、特許文書、例えば、英国特許GB2、209、937で見付けることができる。
以下の非制限的実施例によりさらに本発明を説明する。
【実施例】
【0054】
実施例
患者選定
試験集団は、12ヶ月間(2003−指標日)にわたり退院しているMI/ACSの1次診断を受けた全患者である。
【0055】
全患者に対し、指標日の前12ヶ月(2002年)の間について、入院または長期特異的薬理学的処置に記録されているいくつかの心臓血管性および非心臓血管性状態を特定するため分析を行い、これを根底にある疾患の識別名として使用する。簡単に述べれば、心臓血管併存症には、高血圧症、心不全(HF)、冠動脈心疾患(CHD)、心房細動(AF)、糖尿病、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、および末梢血管疾患(PVD)の以前から存在する疾患が含まれる。非心臓血管性状態には、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腎不全およびうつ病が含まれる。
【0056】
特異的処方パターン(例えば、AF、PVD)のない臨床的状態に対しては、退院した病院の診断のみを使用した。
【0057】
暴露患者には、一定期間にわたりいずれかのn−3 PUFA処方を受けた患者全員を含む。
【0058】
サブコホートの特定
また、試験コホートを以下に関し層別化および分類することにより解析する:
人口統計学的変数:性別、年齢(<45、45〜54、55〜64、65〜74、>75才);
臨床的変数:特異的併存症の存在(糖尿病、COPD…);
処置的変数:指標入院後のn−3 PUFA、スタチンまたはそれらの組み合わせへの暴露。
この分析は、特定のコホートで発生する重篤な、また予測される有害事象の評価を可能とする。
【0059】
追跡
各患者に対する追跡は、指標日から3年間、または3年以内に次のイベントが発生するまで、行われる:
−何らかの原因による死亡;
−AMI/ACSによる再入院(結果1);
−AFで入院(結果2);
−いずれかの以前から存在する、または新しい非心臓血管(CV)併存症による再入院(結果3)。
【0060】
AMIおよび何らかの理由で再入院した総数も考慮される。
【0061】
n−3 PUFAおよび/またはスタチンの服薬遵守期間中に特に焦点を置いて、追跡中の薬理学的処置の評価と変更をモニターし、MI/ACS後の患者用としてだけでなく、共存症のためにも、多くの推奨処置と一緒にこの薬剤の全体的許容性を評価した。
【0062】
標本数計算
異なる地域保健所(LHA)からの行政当局のデータベースをコーディネートセンター(Laboratory of Pharmacoepidemiology、Consorzio 「Mario NegriSud」:データの管理と品質管理の担当)にプールした。
【0063】
LHAに含まれる集団の予備評価から、10LHAの検体を考慮して、30000もの出来事によるMI/ACS入院を観察対象として含めることが可能であることが期待され、このうち、調査期間(2003〜2006)の各年毎に、5000人(各LHAで500人)の患者がMIによる入院である。
【0064】
このような集団により、以下のことが可能となるはずである:
a)AMIで退院した患者の包括的な短期および長期薬剤疫学的プロファイルの評価;
b)時間経過によるn−3 PUFAの処方傾向の評価(併存症および関連同時処置ならびに観察期間中のイベントの発生の観点から患者の複雑さを考慮に入れて);
c)心臓血管の結果に与える処置の効果の解析。
得られた結果を次の表1〜3に示す。
表1.スタチンおよびn−3 PUFAの組み合わせが結果に与える効果(スタチン単独と対比)(多変量解析および傾向スコア)
【表2】

表2.心筋梗塞および急性冠症候群で前に入院した患者サブグループにおける、スタチン、およびスタチンとn−3 PUFAの組み合わせが結果に与える効果(スタチンなしおよびn−3 PUFAなしとの対比)(n−3 PUFAのみに暴露した患者は除く)
【表3】

(結果1):急性心筋梗塞または急性冠症候群で再入院;
(結果2):心房細動で入院;
(結果3):いずれかの以前から存在する、または新しい非心臓血管併存症による再入院。
表3.スタチンおよびn−3 PUFAの組み合わせが結果に与える効果(スタチン単独との対比)(多変量解析および傾向スコア)
【表4】

(結果1):急性心筋梗塞または急性冠症候群で再入院;
(結果2):心房細動で入院;
(結果3):いずれかの以前から存在する、または新しい非心臓血管併存症による再入院。
【0065】
表1〜3の結果から:
(A)全原因による死亡率;(B)急性心筋梗塞または急性冠症候群;(C)心房細動で入院;および(D)いずれかの以前から存在する、または新しい非心臓血管併存症による再入院は、本発明の組み合わせを使って統計的に優位に減少したことが示されるのは明らかである。
【0066】
n−3 PUFA単独の使用では、スタチン単独の使用よりも、低い活性になる可能性があることも明らかである。この理由および倫理的理由により登録患者は、n−3 PUFA単独では処置されなかった(死亡数が増加する可能性がある)。
【0067】
上述のように、本発明は、1つまたは複数のn−3 PUFAのアルキルエステル中のスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物に関し、この組成物中で、消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている。
【0068】
実験データ(入手可能であるが本出願では報告していない)により、n−3 PUFAのアルキルエステル中に含まれる1つまたは複数のスタチンを内部に含む高分子膜で構成されるマイクロカプセルからなる組み合わせ製剤(上記で説明したように)の投与は、スタチンおよびn−3 PUFAの順次投与(2つの有効成分の逐次投与)と生物学的に同等であることが示されている。
【0069】
従って、本発明による前述の化合物の使用では、同時投与、すなわち、スタチンおよびn−3 PUFAの実質的同時補給、または別々に処方された2つの有効成分の逐次投与が区別なく意図されている。
【0070】
単一医薬品組成物中のスタチンおよびn−3 PUFAの実質的な同時補給が、2つの有効成分が2つの異なる医薬品組成物中に存在する2つの有効成分の協調的な投与よりも、遙かに好ましいことは、いずれの当業者にも明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性心筋梗塞および急性冠症候群の予防および/または処置に使用するための、n−3 PUFAのアルキルエステル中に1つまたは複数のスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物であって、消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている組成物。
【請求項2】
消化管液中で容易に崩壊することができる高分子膜の手段によってスタチンがn−3 PUFAのアルキルエステルとの接触から切り離されている、n−3 PUFAのアルキルエステル中に1つまたは複数のスタチンを含むマイクロカプセル懸濁液からなる組み合わせ組成物の使用であって、急性心筋梗塞および急性冠症候群の予防および/または処置用の薬物を調製するための使用。
【請求項3】
心房細動の予防および/または処置のための請求項2に記載の使用。
【請求項4】
心房細動による入院の期間を減らすための請求項2に記載の使用。
【請求項5】
心房細動が急性心筋梗塞および急性冠症候群に関連している請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
急性心筋梗塞および急性冠症候群に起因する死亡の数を減らすための請求項2に記載の使用。
【請求項7】
いずれかの以前から存在する、または新しい急性心筋梗塞および急性冠症候群に関連する非心臓血管併存症による再入院の日数を減らすための請求項2に記載の使用。
【請求項8】
スタチンが、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、パラバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチンおよびロスバスタチンからなる群より選択される請求項1または2に記載の使用。
【請求項9】
スタチンがシンバスタチンである請求項1または2に記載の使用。
【請求項10】
オメガ−3脂肪酸が長鎖脂肪酸である請求項1または2に記載の使用。
【請求項11】
オメガ−3脂肪酸が、シス5,8,11,14,17−エイコサペンタン酸(EPA)およびシス4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサン酸(DHA)、それらのエステルまたは薬学的に許容可能な塩の1つからなる群より選択される請求項10に記載の使用。
【請求項12】
任意選択で、活性を損なわない他の有用な成分を含んでもよい、請求項1または2に記載の使用。
【請求項13】
有用な成分がビタミンEアセタートである請求項12に記載の使用。
【請求項14】
下記の用量の投与に適した請求項1または2に記載の使用:
オメガ−3脂肪酸:500mg〜0.5g/日;
シンバスタチン:5mg〜40mg/日。

【公表番号】特表2013−515719(P2013−515719A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545893(P2012−545893)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/PT2010/000053
【国際公開番号】WO2011/078712
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(306020368)デフィアンテ・ファルマセウティカ・ソシエダデ・アノニマ (4)
【氏名又は名称原語表記】DEFIANTE Farmaceutica, S.A.
【Fターム(参考)】