説明

微孔質シリカゲルの合成および合成ガスからのC2酸素化物合成のための触媒の製造に対するその適用

微孔質シリカゲルの合成および合成ガスからのC酸素化物合成のための触媒の製造に対するその適用につき開示する。ゾルゲルプロセスにより生成されかつ塩基性溶液中で加熱され、次いで乾燥および/または焼成されるシリカゲルの小粒子は、かくして触媒支持体として微孔質シリカを形成する。塩基性溶液はアルカリ金属およびアンモニウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、蟻酸塩および酢酸塩の1種または混合溶液とすることができる。得られる微孔質シリカにはロジウム塩および他の遷移元素塩(プロモータ先駆体として)の溶液を含浸させ、次いで乾燥および/または焼成し、かくして微孔質シリカ支持されたロジウム系触媒を形成する。ロジウム塩はRhClもしくはRh(NOとすることができる。プロモータ先駆体は水可溶解の遷移金属塩、稀土類金属塩、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩とすることができる。得られる触媒は、緩和なプロセス条件下におけるCOの水素化によるC−酸素化物の合成にて高い活性および選択率を示す。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、触媒支持体として微孔質シリカを用いる触媒の製造方法に関するものである。より詳細には、微孔質シリカはゾル技術により作成される小粒子寸法を持った粒子シリカから生成され、COの水素化によるC−酸素化物の合成にて使用される。
【0002】
COの水素化によるC−酸素化物の合成は、近年全世界中で広範な研究の注目を集めている。シリカはC−酸素化物の合成に関するロジウム系触媒の良好な支持体であると判明している。これらシリカ粒子は一般にゾル技術により作成される。シリカのBET表面積は400〜900m/gの範囲であり、平均粒子寸法は20〜99Åである。触媒の触媒性能を改善すべく本発明者等は触媒性能に対するシリカ気孔構造の影響を検討すると共に、微孔質シリカにつき便利な合成プロセスを開発した。
【0003】
本発明は、触媒支持体としての微孔質シリカの合成方法を提供し、ここではC−酸素化物の合成のための触媒の触媒特性を改善すべく気孔寸法を拡大させる。
【0004】
本発明で用いる技術は水性塩基溶液もしくはたとえばメタノールのような有機溶剤にてゾル技術により作成された小気孔シリカを処理することであり、かくして気孔寸法が拡大される。得られるシリカは150〜350m/g、好ましくは150〜349m/gのBET表面積と100〜300Å、好ましくは101〜300Åの平均気孔寸法と0.9〜1.1ml/gの気孔容積とを有する。粒子寸法、気孔寸法、BET表面積および気孔容積はアルカリ化合物の種類およびその濃度、処理温度および持続時間を変化させて調整することができる。このようにして、得られるシリカはCOの水素化によるC−酸素化物の合成に関するロジウム系触媒の支持体として、或いは微孔質シリカを触媒支持体として必要とする他の接触プロセスにつき使用することができる。
【0005】
1. 本発明におけるシリカ粒子は、広く知られたゾル技術により得られる任意の範囲の粒子寸法とすることができ或いはたとえばキングダオ・マリーン・ケミカル・エンジニアリング・ファクトリーおよびインナーモゴリア・フヘハオテ・エアデュオシ・シリカ・ファクトリーから生産される0.1〜8mmの範囲の粒子寸法を有するような市販製品とすることもできる。適する範囲の粒子寸法は、触媒支持体の所要気孔寸法により選択すべきである。本発明は好ましくは0.1〜8mmの粒子寸法を有するシリカを選択する。
【0006】
2. 塩基性溶液は限定はしないがアルカリ金属の水酸化物および水酸化アンモニウム、たとえば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウム;アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、蟻酸塩および酢酸塩(たとえば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)の各溶液を包含する。これら塩基性溶液のための溶剤は好ましくは水であるが、水にのみ限定されない。含浸のための溶液の最少量は、シリカの容積の2〜10倍、好ましくは2〜5倍としうるシリカ支持体を浸漬する量である。シリカに対するアルカリ化合物のモル比は好ましくは1〜30%、より好ましくは2〜15%である。塩基性溶液のpH値は好ましくは8〜14である。
【0007】
3. 処理温度は50〜200℃、好ましくは80〜130℃の範囲である。処理温度は特定のアルカリ溶液およびシリカに依存する。処理持続時間については特に限定はなく、これは熱処理温度および塩基性溶液の濃度に関連する。処理温度および/または塩基性溶液の濃度が低い場合、処理は延長することができる。処理温度および/または塩基性溶液の濃度が高ければ、処理持続時間はそれに応じて短縮することができる。高い処理温度において、アルカリ溶液の高濃度およびアルカリ溶液における長時間の熱処理にて得られるシリカはより大きい気孔寸法およびより小さい表面積を有する。本発明における好適熱処理期間は1時間〜5日間である。正確な処理持続時間はアルカリ溶液の種類、処理温度および使用する先駆体シリカに依存する。
【0008】
本発明において、より均質のシリカ粒子を得るためアルカリ溶液におけるシリカの処理に際し機械的攪拌またはガス流動攪拌を用いることができる。
【0009】
4. 触媒支持体のその後の処理は本発明にてアルカリ溶液の処理後に本発明のシリカに適用することができる。好適具体例によれば溶液はアルカリ溶液処理から得られる混合物から抽出され、次いでたとえば水のような媒介で洗浄する。洗浄されたシリカを乾燥し、或いは適する温度で焼成し、従ってより大きい気孔寸法を持ったシリカが適する触媒支持体として得られる。
【0010】
5. ロジウムおよび他の添加剤金属塩を得られるシリカに含浸させ、次いで乾燥および調整し、他の工程は従来の含浸技術にて実施される。このようにして、シリカ支持のロジウム系触媒はCOの水素化によるC−酸素化物の合成につき作成される。ロジウム塩はRhCl、Rh(NOおよび他の可溶解性塩類とすることができる。添加剤は遷移金属(たとえばIr、Ru、Co、Fe、Mn、Ti、ZrおよびV)の可溶解性塩類;稀土類金属(たとえばCe、SmおよびLa);アルカリ金属(たとえばLiおよびNa);アルカリ土類金属(たとえばMgおよびBa)の可溶解性塩類とすることができる。本発明の好適具体例によれば、シリカ支持のロジウム系触媒はAgおよび/またはZrのような添加剤を含まない。これら触媒は同時含浸または段階的含浸;室温〜150℃における1時間〜20日間の乾燥;150〜500℃にて1〜50時間にわたる焼成により作成することができる。
【0011】
合成ガスからのC−酸素化物の合成のための触媒はSV=100〜5000h−1、好ましくは500〜2000h−1;T=500〜750K、好ましくは573〜673K;P=1気圧〜1.0MPa、好ましくは1気圧〜0.5MPa(合成条件下での使用に先立ち)にてH流動下に活性化される。
【0012】
上記Rh系触媒を用いる合成ガスからのC−酸素化物合成のためのプロセスは次の条件下で行われる;T=473〜723K、好ましくは473〜623K;P=1.0〜12.0MPa、好ましくは2.0〜8.0MPa;H/COの容積比=1.0〜3.0、好ましくは2.0〜2.5;空時速度=1000〜50000h−1、好ましくは10000〜25000h−1
【実施例】
【0013】
以下に示す実施例は本発明を説明するものであって、決して限定を意味するものでない。
【0014】
実施例1
ゾル技術により作成されて380m/gのBET表面積と98Åの平均気孔寸法と0.86ml/gの気孔容積とを有する20gのシリカを選択する。ゲル粒子の寸法は20〜40メッシュの範囲である。シリカを90gの水と水酸化ナトリウムとの混合物に90℃にて12時間にわたり浸漬し、塩基性塩対シリカのモル%は13.6とする。残留水酸化ナトリウムを水洗除去し、120℃での乾燥を行って微孔質シリカを形成させる。得られるシリカを同時含浸するには所要量のRhCl、Mn(NO、LiNOおよびFe(NO)を使用し、次いで120℃にて6時間にわたり乾燥させる。得られる触媒は1%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.05%Fe/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0015】
実施例2
ゾル技術により作成されて380m2/gのBET表面積と98Åの平均気孔寸法と0.86ml/gの気孔容積とを有する20gのシリカを選択する。ゲル粒子の寸法は20〜40メッシュの範囲である。このシリカを90gの水と濃水酸化アンモニウムとの混合物に95℃にて19時間にわたり浸漬し、塩基性塩とシリカのモル%は10である。残留水酸化アンモニウムを水洗除去すると共に乾燥を120℃で6時間にわたり行って、微孔質シリカを形成させる。
【0016】
得られたシリカを同時含浸するには所要量のRhCl、Mn(NO、LiNOおよびFe(NO溶液を使用し、次いで120℃にて6時間にわたり乾燥する。得られる触媒は1%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.05%Fe/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0017】
実施例3
ゾル技術により作成されて380m2/gのBET表面積と98Åの平均気孔寸法と0.86ml/gの気孔容積とを有する20gのシリカを選択する。ゲル粒子の寸法は20〜40メッシュの範囲である。シリカを90gの水と2gの水酸化カリウムとの混合物に95℃にて21時間にわたり浸漬する。残留水酸化カリウムを水洗除去し、乾燥を120℃で行って微孔質シリカを形成させる。得られたシリカを同時含浸するには所要量のRhCl、Mn(NO、LiNOおよびFe(NO溶液を使用し、次いで120℃にて6時間にわたり乾燥させる。得られる触媒は1%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.05%Fe/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0018】
実施例4
ゾル技術により作成されて380m2/gのBET表面積と98Åの平均気孔寸法と0.86ml/gの気孔容積とを有する20gのシリカを選択した。ゲル粒子の寸法は20〜40メッシュの範囲である。このシリカを90gの水と1.8gの炭酸ナトリウムとの混合物に95℃にて24時間にわたり浸漬する。残留炭酸ナトリウムを水洗除去し、乾燥を120℃で行って微孔質シリカを形成させる。得られたシリカを同時含浸するには所要量のRhCl、Mn(NO、LiNOおよびFe(NO溶液を使用し、次いで120℃にて6時間にわたり乾燥させる。得られる触媒は1%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.05%Fe/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0019】
実施例5
実施例4にて得られたシリカを同時含浸するには所要量のRhCl・xHO、Mn(NO、LiNO、Fe(NOおよびHIrCl溶液を使用し、次いで120℃にて6時間にわたり乾燥させる。得られた触媒は1%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.1%Fe−0.5%Ir/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0020】
実施例6
実施例4で得られたシリカを同時含浸すべく所要量のRhCl・xHO、Mn(NO、LiNO、Fe(NOおよびRuCl溶液を使用し、120℃にて6時間にわたり乾燥させる。得られた触媒は1%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.1%Fe−0.5%Ru/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0021】
BET表面積、平均気孔寸法および気孔容積はマイクロメリティックスASAP2010およびN吸着−脱着技術により得た。
【0022】
比較例:
C7
実施例1に使用した初期シリカを同時含浸すべく所要量のRhCl、Mn(NO、LiNO、Fe(NO溶液を使用し(380m/gのBET表面積、98Åの平均気孔寸法および0.86ml/gの気孔容積)、次いで120℃にて6時間にわたり乾燥させる。得られた触媒は1%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.05%Fe/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0023】
C8
実施例1に使用した初期シリカを同時含浸すべく所要量のRhCl、Mn(NO、LiNO、Fe(NO溶液を使用し(380m/gのBET表面積、98Åの平均気孔寸法および0.86ml/gの気孔容積)、次いで120℃にて6時間にわたり乾燥させる。得られた触媒は3%Rh−1%Mn−0.075%Li−0.05%Fe/SiO(重量による)の化学組成を有する。
【0024】
実施例の触媒(20〜40メッシュ)の0.4g(〜0.8ml)試料を用いて一連の比較性能試験を行った。試験装置は、316Lステンレス鋼で作成された長さ340mm、内径4.6mmを有する外部加熱システムを持った小型固定床チューブ状反応器で構成した。触媒を現場で試験に先立ちHの流動下に還元した。温度を2K/minにて室温から623Kまで上昇させ、次いで1時間にわたり一定に保持した。H流速は大気圧にて4リットル/hとした。次いで触媒を523Kまで冷却した後に合成ガス(H/CO=2)に移し、T=593K、P=3.0MPa、SV=13000h−1のプロセス条件下に4時間にわたり反応させた。流出液を150mlの冷脱イオン水が充填された凝縮器に通過させた。流出液からの酸素化された化合物を凝縮器にて水中への完全溶解により捕獲した。得られた酸素化物を含有する水溶液をオフラインにてバリアンCP−3800ガスクロマトグラフィー(FFAPカラムを有する)により分析し、これにはFID検出器および1%−ペンタノールを内部標準として使用した。テールガスをオンラインでバリアンCP−3800GC(ポラパックQSカラムおよびTCDディテクタを有する)により分析した。触媒の性質およびその性能(COの水素化によるC−酸素化物の合成)を表1に示す。
【0025】
本発明で得られる微孔質シリカに支持されたロジウム触媒は、COの水素化によるC−酸素化物の合成にて一層高い活性および選択率を示す。これは、シリカのための本発明による処理プロセスが触媒の触媒特性を改善するのに効果的であることを意味し、これはシリカ支持触媒を得るための新たな道を開く。
【0026】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
150〜350m/g、好ましくは150〜349m/g、好ましくは200〜300m/gのBET比表面積と100〜300Å、好ましくは101〜300Å、好ましくは150〜250Åの平均気孔寸法と0.5〜1.5ml/g、好ましくは0.9〜1.1ml/gの気孔容積とを有する微孔質シリカ。
【請求項2】
原料シリカを塩基性溶液中で加熱し、次いで乾燥および/または焼成する請求項1に記載の微孔質シリカの製造方法。
【請求項3】
原料シリカを小気孔寸法にてゾル技術により生成させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
塩基性溶液がアルカリ金属もしくはアンモニウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、蟻酸塩もしくは酢酸塩またはその混合物から選択される塩基性塩である請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ金属がリチウム、ナトリウムまたはカリウムである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
シリカに対する塩基性塩のモル%が1〜30%、好ましくは2〜15%である請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
塩基性溶液が8〜14のpHをもった水溶液である請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
塩基性溶液の加熱温度が50〜200℃、好ましくは80〜130℃である請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
塩基性溶液の加熱を1時間〜5日間にわたり継続する請求項2〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
原料シリカが0.1〜8mmの粒子寸法を有する請求項2〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の微孔質シリカ支持体とロジウムとからなる合成ガスのみでC酸素化物を合成するための触媒。
【請求項12】
得られる微孔質シリカにはロジウム塩および他の遷移金属塩(プロモータ先駆体として)の溶液を含浸させ、次いで乾燥および/または焼成する請求項11に記載の触媒の製造方法。
【請求項13】
ロジウム塩が可溶解性ロジウム塩、たとえば塩化ロジウムもしくは硝酸ロジウムまたはその混合物である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
触媒添加物が、たとえば遷移金属塩、稀土類金属塩、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のような可溶解性金属塩の1種もしくは数種である請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
触媒添加剤が、たとえばIr、Ru、Co、Fe、Mn、Ti、Zr、V、Ce、Sm、La、Li、Na、Mg、Baのような可溶解性金属塩の1種もしくは数種である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
同時含浸もしくは段階的含浸法を触媒の作成に使用する請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
触媒を室温〜150℃、好ましくは30〜130℃にて1時間〜20日間にわたり乾燥させると共に150〜500℃、好ましくは200〜450℃にて1〜50時間にわたり焼成する請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
微孔質シリカ支持体を請求項2〜10のいずれか一項に記載の方法により作成する請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法により得られる合成ガスからC酸素化物を合成するための触媒。
【請求項20】
合成ガスからC酸素化物を合成するための請求項11または19に記載の触媒の使用。

【公表番号】特表2008−503440(P2008−503440A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517387(P2007−517387)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002701
【国際公開番号】WO2006/000734
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(397035070)
【出願人】(506236897)ターリェン インスティチュート オブ ケミカル フィジクス (3)
【Fターム(参考)】