説明

微小試料加熱プローブおよびその製造方法、ならびに微小試料加熱プローブを用いた分析装置および分析方法

【課題】デバイス等の不良原因となる数μmの微小異物を採取し、コンタミレスでS/Nの良好な質量分析を行うことを目的とする。
【解決手段】微小試料加熱プローブは、径の異なる2つの部材よりなる試料保持部と、支持部と、端子部と、からなる。試料保持部は、そのごく一部に加熱機構を有し、分析対象の微小試料の極近傍のみが局所的に加熱されることを特徴とする。よって、プローブにコンタミ成分が付着した場合でも、それらは加熱されないためにノイズが発生せず、非常にS/Nのよい分析が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小試料加熱プローブおよびその製造方法、ならびに微小試料加熱プローブを用いた分析装置および分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精密な電子デバイスの製造工程において発生する数μm程度の微小異物は、製品不良の原因となる大きな問題である。特に、有機材料を多用する液晶ディスプレイの製造工程では、高分子有機物の微小異物が歩留り低下の原因となることがある。
【0003】
未知の有機化合物の同定には、質量分析法が有効である。質量分析法では、試料を気化させてイオン化する必要があるため、高分子有機物のような難揮発性の試料では、急速加熱により熱分解させる。
【0004】
このような質量分析法では、分析対象の微小異物は、予め採取・単離しておくことが望ましい。異物採取の際に目的以外の周辺部分が混入してしまうと、周辺部分からの情報によって目的異物のS/N(信号/ノイズ比)は低下してしまうからである。
【0005】
また、微小異物の採取時、または、採取してから分析するまでの間に生じる外部からのハイドロカーボン等によるコンタミ(汚染)が、S/N低下の原因となる場合がある。
【0006】
従来の質量分析におけるサンプリング(質量分析装置への分析試料のセット)では、通常、針状のプローブ等を用いて固体微小異物を針先で一旦採取した後、分析用のサンプルホルダへ装着セットするものであった。
【0007】
例えば、市販のガスクロマトグラフ質量分析装置に通常オプションとして用意されている直接導入プローブを用いる場合、φ1mm×深さ数mm程度の石英ガラスの容器内に微小異物サンプルを挿入することになる。そして、微小異物サンプルの入った石英ガラス容器をヒータで加熱し、試料を熱分解・気化させて分析を行う。
【0008】
また、試料をPt容器にセットして、加熱されている炉内に落下させ急速加熱を行う機構の装置もある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−107061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術では、微小試料は、Ptカップ中にセットされて加熱室に導入される。しかしながら、このようなPtカップは、微小試料に対してその容積が大きいために、目的とするシグナルに対するコンタミによるノイズも大きくなってしまう。従って、このような技術では、数μmといった微小試料の分析に対して良好なS/Nのデータを得るのは難しかった。
【0010】
そこで、かかる課題を考慮してなされた本発明の目的は、以下の構成により、微小試料の分析を、精度よく行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の微小試料加熱プローブは、採取した微小試料をコンタミレスで質量分析装置に導入し、なおかつ試料部分のみを局所的に加熱して気化・熱分解させる技術を提供する。
【0012】
例えば、本発明の微小試料加熱プローブは、ワイヤと、ワイヤ支持部材と、前記ワイヤ支持部材に設けられて前記ワイヤに電力を供給する端子と、を備え、前記ワイヤは、試料を保持して加熱するための第1の径を有する第1のワイヤと、前記第1のワイヤを前記ワイヤ支持部材に接続するための第2の径を有する第2のワイヤと、からなり、第1の径は、前記第2の径よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
本発明の微小試料加熱プローブの製造方法は、試料を保持して加熱するためのワイヤと、ワイヤ支持部材と、を備える微小試料加熱プローブの製造方法であって、前記ワイヤの中心と、中心を被覆する外周と、が異なる金属材料で形成される第2のワイヤと、前記第2のワイヤの所望の部分について外周を被覆する金属を溶解させ、当該部分の径を他の部分よりも小さくした第1のワイヤと、を形成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の微小試料を分析するための分析装置は、前記微小試料を気化させて導入するための試料導入部と、前記微小試料をイオン化するイオン源と、前記微小試料を検出するための検出部と、加熱源と、を備え、前記試料導入部は、導入する前記微小試料を保持して加熱するための第1の径を有する第1の部材と、前記第1の径よりも大きな第2の径を有する第2の部材と、を備える微小試料加熱プローブを着脱可能に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、数μmの微小試料について、S/N比良く採取・分析を行うことが可能な技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、各実施例を説明する前に、高S/Nを得るための本発明の機構について説明する。
【0017】
図1に、一般的に定義されるS/Nを示した。図中、Nは装置起因やバックグラウンドのノイズであり、Sは検出器で検出されるシグナルである。このとき、分析系の感度の指標となるのがS/Nである。
【0018】
試料分析においては、加熱領域に目的試料以外のコンタミ等が付着している場合、それらについても加熱、気化され検出器へと導入されてしまう。
【0019】
ここで、目的試料が加熱・気化され検出器に導入される量をs1、検出器へ導入される目的以外のコンタミ成分をs2とすると、検出器で検出されるシグナルSはs1+s2となり、分析系にとってのS/Nは(s1+s2)/Nとなる。
【0020】
ここで,目的試料を分析する上で重要となるのはs1/Nである。
【0021】
例えば、s1に対してs2が十分に小さければ、S/N=s1/Nとなり、目的試料の分析を十分に行える。
【0022】
ところが、s2が無視できないほど大きい場合、目的試料よりもコンタミ成分を分析していることになりかねない。
【0023】
また、本発明で対象とする目的試料は1〜数十μmである。ここで仮に、対象試料を一辺が3μmの立方体とし、これと同等量のコンタミが単分子層として吸着している場合を考える。
【0024】
このような単分子層厚さを0.5nm、被覆率を10%とすると、その面積は約5×10μmである。
【0025】
従って、これだけの面積が加熱されると、s1=s2となり、目的試料と同等のコンタミ成分のシグナルが発生し、S/N(s1/N)比が半分に低下することになる。
【0026】
また、コンタミ成分が目的成分の2倍以上(s1≦2×s2)になると、未知成分の試料の同定はほぼ不可能になる。
【0027】
よって、最低でも、加熱領域は1×10μm(1mm)以下としなければならないと考えられるため、より精度の高い分析を行うには加熱領域の面積を5×10μmとすることが好ましい。
【0028】
本発明は、プローブの加熱領域を局所的に抑え、良好なS/N比を達成するためになされたものである。
【0029】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
<実施例1>
第1の実施例では、金属線に通電する際に発生するジュール熱により、試料を加熱する方式のプローブについて、図2(A)および図2(B)を参照して説明する。
【0031】
図2(A)は、先端に鋭角な金属線を用いた微小試料加熱プローブ1aの概略説明図、図2(B)は、先端が円弧状の金属線を用いた微小試料加熱プローブ1bの概略説明図である。以下、これらを区別しない場合には、両者を微小試料加熱プローブ1と称する。
【0032】
また、両者は加熱部121aおよび121bの形状のみが相違しているため、まず、共通の性質について、加熱部121として説明する。なお、形状については、後述する。
【0033】
微小試料加熱プローブ1は、微小試料を保持するための試料保持部10と、試料保持部を支えるための支持部6と、これらを分析装置に装着するための端子部4と、金属配線5と、を備える。
【0034】
試料保持部10は、先端部を含む加熱部121と、それ以外の非加熱部122と、から構成されている。
【0035】
試料保持部10は、加熱部121の局所加熱性を高めるために、径の異なる2つの金属線で構成されている。ここでは、径の細い先端部の金属線を加熱部121、径の太い部分を非加熱部122としている。
【0036】
加熱部121は、非加熱部122よりも小さな径(φ1)の金属線である。例えば、加熱部121は、直径約5μm、長さ約200μmのPt線で構成される。
【0037】
非加熱部122は、加熱部121よりも太い径(φ2)を有する金属線であり、加熱部121とで試料保持部10を構成する。例えば、非加熱部122は、直径約80μm、長さ約2mmのAg線で構成される。
【0038】
なお、非加熱部122には、その中心部に加熱部121から延長する太さ5μmのPt線が通っており、2層構造となっている。さらに、非加熱部122は、支持部6内を通る金属配線5を介して、金属で形成される端子部4と電気的に接続されている。
【0039】
上記のような試料保持部10は、通電に際して発生するジュール熱により加熱される。この際、先端の加熱部121は抵抗値が高いために、局所的に非常に高温となる。一方、抵抗値の低い非加熱部122では、その温度はほとんど上昇しない。
【0040】
なお、このような加熱部121の加熱領域の面積は、5×10μm以下であることが望ましい。仮にφ100μmのワイヤを用いれば、長さは1.6mmとなる。このときのワイヤの体積は1.2×10μmとなる。したがって、加熱部121の体積は1×10μm(0.01mm)程度以下とする必要がある。
【0041】
支持部6は、例えば、絶縁性の材料で構成され、プローブ自体の剛性を高める。
【0042】
端子部4は、金属で形成されており、分析装置の適当な箇所にプローブを装着し、固定する。
【0043】
なお、支持部6ならびに端子部4には、必要に応じて電流導入機構を設け、プローブに電源を供給することが可能な構成としても良い。
【0044】
金属配線5は、非加熱部122と端子部4とを接続する。金属配線5は、例えば、直径1mmの銅線である。
【0045】
ここで、試料保持部10の到達温度を実測することは困難であるため、図3にプローブの温度シミュレーションの一例を示す。
【0046】
図3は、本実施例にかかる微小試料加熱プローブ1の端子部4の両端に、0.45V印加したときの各位置での到達温度を示すグラフである。
【0047】
図3に示すように、加熱部121の先端は約1000℃に到達し、先端から外れると急激に到達温度が下降する。そして、非加熱部122(先端から100μm以上先)では、ほとんど温度上昇が無いことが分かる。
【0048】
実際に電圧を印加しながら光学顕微鏡でプローブの試料保持部10を観察したところ、加熱部121のみが高温となり赤熱している様子が観察され、非加熱部122では低温のままであることが確認できた。
【0049】
次に、本実施例にかかる微小試料加熱プローブ1を実際に用いた、微小試料の採取について説明する。
【0050】
本実施例では、微小試料加熱プローブ1を用いて、直径約3μmのポリスチレンビーズの採取を試みた。
【0051】
採取には、市販のステッピングモータ駆動のマイクロマニピュレータを用いた。
【0052】
まず、市販のマニピュレータに、本発明の微小試料加熱プローブ1が容易に取り付けられるよう、プローブ先端とは逆側の端子部4が、マニピュレータの先端にゆるみ無くはめ込むことができるようなコネクタを製作した。このコネクタは、プローブの金属製端子部4に電圧を印加できる構造とした。
【0053】
ここで、支持部6によってプローブ自体の剛性が高められているため、プローブの強度には何の問題も無く、加熱部121でポリスチレンビーズを採取することができた。
【0054】
次に、ポリスチレンビーズをプローブの加熱部121に付着させたまま、大気中で顕微鏡観察しながら、電極機能を持つ端子部4の端子間に電圧を印加した。
【0055】
その結果、電圧を約0.35V印加するとポリスチレンビーズは消失した。
【0056】
よって、本発明の微小試料加熱プローブ1は、数μmの有機微小試料を採取することが可能であるとともに、それを加熱して、気化・熱分解するのに好適であることが確認された。
【0057】
次に、加熱部121の形状について詳細に説明する。
【0058】
図2(A)に示す微小試料加熱プローブ1aと、図2(B)に示す微小試料加熱プローブ1bとでは、加熱部121の形状が異なっている。
【0059】
微小試料加熱プローブ1aの加熱部121aは、鋭角の金属線であり、微小試料加熱プローブ1bの加熱部121bは、円弧状の金属線で構成されている。
【0060】
本実施例においては、加熱部121の形状を、金属線の曲率半径によって規定している。
【0061】
具体的には、図2(A)に示すように、直径5μmの金属線を用いる場合、3〜5μm程度の試料に対しては、曲率半径が10〜20μm程度の形状が好適である。また、10μm程度の試料に対しても、曲率半径が30〜50μm程度の形状が好ましい。
【0062】
ここで例えば、試料がペースト状のように広範囲に存在している場合には、図2(B)の加熱部121bのように、曲率半径の大きな形状が適している。
【0063】
具体的に、20μm四方以上に存在しているペースト状の試料に対しては、曲率半径を50〜100μm程度とすることが望ましい。円弧状の加熱部121bの内側に試料を引っ掛けることで、試料採取が容易となるからである。
【0064】
なお、上記では金属線の直径を5μmとして説明したが、加熱部121として機能する金属線の直径についても、試料のサイズ、形態(硬い、軟らかい)等に応じて適宜選択することができる。
【0065】
例えば、加熱部121のワイヤの径が太すぎると、試料を採取する際の観察が困難になってしまう。また、プローブ先端のワイヤの径が細すぎると、ワイヤの剛性が低下し、試料を採取する際にプローブ先端が変形したり破損したりして採取性が著しく低下する。
【0066】
より具体的には、液晶パネル等の不良原因となり、分析が難しく、かつ、歩留りの低下をもたらすような試料のサイズは、3〜10μm程度である。従って、加熱部121の金属線の径は、1〜10μm程度が好ましい。
【0067】
また、分析対象とする試料のサイズが1〜20μm程度なら、金属線の太さは0.5〜20μm程度が好適である。
【0068】
ここで、表1に対象試料サイズと、用いる金属線径とに対する、適当な曲率半径のおおよその関係を示す。
【0069】
【表1】


【0070】
また、支持部6内部の配線5として、本実施例では直径1mmの銅線を用いたが、他の材質のものを用いても構わない。ただし、十分抵抗が低くなるような材質、形状であることが好ましい。
【0071】
また、支持部6は、剛性が確保できる材料であれば、どのようなものでも良い。ただし、本実施例のように支持部6内部に配線5を通す場合には、支持部6は絶縁性の材料である必要がある。また、質量分析の際に、真空槽に導入することになるので、材料からの発ガスが十分に小さな材料を選択することが好ましい。
【0072】
以上、実施例1の微小試料加熱プローブ1について説明した。
【0073】
本実施例によれば、微小試料加熱プローブ1を用いることによって、採取した試料のみを効率的に加熱することが可能である。さらに、局所的に高温となる加熱部121以外の部分では、その温度が低温に維持される。よって、高温に到達する領域の容積が少なく、コンタミを抑制できる。その結果、S/Nのよい分析が可能である。
【0074】
<実施例2>
次に、本発明の実施例1で説明した複数段の径からなる加熱部121を有する微小試料加熱プローブ1の製作方法について説明する。
【0075】
本実施例にかかる微小試料加熱プローブ1aの加熱部121aのワイヤには、Wollastonワイヤと呼ばれる、細いPtワイヤにAgが被覆されているワイヤを用いる。このワイヤは、φ80μmのAgワイヤの中心部にφ5μmのPtが埋め込まれて構成される。このワイヤで、加熱部121aを有する試料保持部10を整形加工する。
【0076】
まず、このようなワイヤを試料保持部10の形に成形し、プローブに接続する。そして、加熱部121aに該当する試料保持部10の先端部のみを、HNO溶液に浸漬させる。すると、AgはHNO溶液に溶解するがPtは溶解しないため、Ptを被覆しているAgのみが除去されてPtが露出する。
【0077】
そして、Ptの露出部分が所望の長さになったら、試料保持部10の先端部を純水で洗浄したのち、アセトンで超音波洗浄を行う。
【0078】
このようにして、図2(A)に示すように、先端部(加熱部121a)のみが非常に細いワイヤで構成される微小試料加熱プローブ1aが完成する。
【0079】
なお、質量分析のプローブとして用いる場合には、使用前に一度通電し、加熱部121aのコンタミを除去してから使用するのが良い。
【0080】
また、本実施例では、PtのWollastonワイヤを例に説明したが、Pt/RhのWollastonワイヤを用いても良い。
【0081】
また、実施例1において述べたように、加熱部121aの太さは、目的に応じて選択すればよい。
【0082】
もちろん、加熱部121の曲率半径は図2(A)に示すような鋭角に限定されず、例えば図2(B)に示すような、円弧状の加熱部121bを上記の方法で作製することも可能である。
<実施例3>
次に、加熱部121の他の作成方法について、図面を参照しながら説明する。
【0083】
まず、図4(A)に示すように、試料保持部10の先端が接続されていないワイヤを取り付けたプローブを作製する。
【0084】
なお、先端ワイヤの材質はCu、径は1mm、ワイヤの露出している部分の長さは約10mmとする。
【0085】
次に、図4(B)に示すように、φ1mmのワイヤ先端にAgペースト50を塗布する。
【0086】
そして、図4(C)に示すように、加熱部121aとして予めV字型に加工しておいた細いワイヤを、Agペースト50を介してプローブ先端に接続する。
【0087】
プローブ先端に接続した細いワイヤの材質はPt、径はφ10μmとする。なお、加熱部121aの長さは約2mmである。
【0088】
以上の作業は、倍率30倍程度の実体顕微鏡の下で行うことが可能である。
【0089】
また、今回は、Agペーストを用いて太さの異なるワイヤを接続したが、これらの接続方法は上記に限定されず、別の方法を用いても良い。例えば、溶接やワイヤボンディング等の方法を用いてもなんら差し支えない。
【0090】
もちろん、本実施例の作成方法によっても、図2(B)に示すような円弧状の加熱部121bを作製することが可能である。
<実施例4>
次に、先端をレーザ光照射により加熱する方式の微小試料加熱プローブについて、実施例1と異なる部分について主に説明する。
【0091】
図5(A)は、複数段からなる試料保持部20を有するロッド型の微小試料加熱プローブ2aの概略説明図、図4(B)は、針状の試料保持部20を有するニードル方の微小試料加熱プローブ2bの概略説明図である。以下、これらを区別しない場合には、単に微小試料加熱プローブ2と称する。
【0092】
図4(A)に示すように、微小試料加熱プローブ2aは、微小試料を保持するための試料保持部20と、試料保持部を支えるための支持部6と、これらを分析装置に装着させるための端子部4と、金属配線5と、を備える。
【0093】
先端部を含む加熱部221aは、非加熱部222よりも径の細い円柱形状、あるいは幅の狭い平板形状に形成されている。
【0094】
ここで、本実施例においては、加熱源としてレーザ光90が用いられる。レーザ光90は、集光レンズ7で加熱部221aの一部に照射される。
【0095】
ここで、最先端部に保持される試料8に直接レーザ光90を集光させ照射した場合、有機高分子化合物は結合がバラバラに切断されたフラグメントイオンとなってしまう。
【0096】
また、レーザ光による直接の脱離、イオン化のメカニズムは不明な点が多く、試料の状態に大きく依存するため、毎回安定した分析結果を得ることが非常に難しい。
【0097】
そこで、集光したレーザ光90は試料8には直接照射せず、試料近傍の加熱部221aの一部へ照射する構造となっている。
【0098】
これにより、集光されたレーザ光90が照射されている部分が加熱部221aの発熱源となる。
【0099】
このとき、非加熱部222の径は、加熱部221aの径よりも大きいため、非加熱部222の熱容量は、加熱部221aの熱容量より大きい。その結果、非加熱部222の温度上昇は加熱部221aに比べるとはるかに小さいものとなっている。
【0100】
従って、プローブ先端の加熱部221aの温度勾配は、発熱源であるレーザ集光部が最も高温であり、そこからの距離に応じて温度が下がっていく。
【0101】
また、加熱部221aの中でも、非加熱部222の近傍では、熱容量の増加により温度が急激に下がる。その結果、加熱部221aは、レーザ集光部と先端を含む、ごく限られた領域のみが高温となる。
【0102】
なお、図5(A)では、加熱部221aおよび非加熱部222の径が異なる場合を図示したが、図5(B)に示すように、加熱部221bから非加熱部222にかけて、連続的に径が変化している針状の試料保持部20を有する微小試料加熱プローブ2bを用いてもよい。
【0103】
この場合にも、試料保持部20は、熱容量の小さな先端の加熱部221bと、それより径の大きく熱容量の大きな非加熱部222とから構成される。
【0104】
この場合には実用上、有機高分子化合物のおおよその熱分解温度である500℃以上に加熱される領域を加熱部221b、500℃以下の温度領域を非加熱部222として差し支えない。
【0105】
次に、加熱部221aおよび加熱部221bを構成する素材について説明する。以下、これらを区別しない場合には、単に加熱部221と称する。
【0106】
加熱部221のみを局所的に加熱するためには、加熱部221には熱容量(または比熱)が小さく、熱伝導率が大きい材料を、非加熱部222には、熱容量(または比熱)が大きく、熱伝導率が小さい材料を用いることが好ましい。
【0107】
この場合、微小試料加熱プローブ2自体の熱容量を指標とする必要があるため、単位体積あたりの熱容量の大小で適当な材料が定まる。
【0108】
一定量のエネルギを与えた際の温度上昇の指標として、熱伝導率を単位体積あたりの熱容量で除した値を用いた場合、この値が大きいほうが加熱部221として好ましいと言える。
【0109】
具体的に、こうした材料として、Au、Ag、Cu、Al、Mg、W、Si等が利用可能である。
【0110】
また、この中でも融点が1000℃以上であるAu、Cu、W、Siなどが特に好適である。さらに、同様の観点から、非加熱部222の材料には、Cr、Ni、Pt、Ti、Ta、Zr、Pd、Nbなどが望ましい。
【0111】
従って、加熱部221と、非加熱部222とを、上記のような異種材料で形成した微小試料加熱プローブ2が、より好適であると言える。
【0112】
以上の材料の組み合わせは、実施例1、および実施例2に記載の微小試料加熱プローブに共通する。
【0113】
なお、異種材料の接合は、スポット溶接等によって可能である。しかしながら、異種材料で構成することが困難な場合には、同材料で構成してもかまわない。その場合には、加熱部221の径を非加熱部222の径よりも小さくするか、もしくは、加熱部221の幅を非加熱部222の幅よりも小さくし、両者の間に熱容量差ならびに熱コンダクタンスに差を設けることが好ましい。
【0114】
また、上記の径もしくは幅の異なる2つの部材間の接合も、スポット溶接により可能である。
【0115】
このような構成によれば、レーザを集光することによって容易に局所的な加熱が実現可能である。その結果、試料以外の他の有機物の脱離による分析への影響を最小限に留めることができる。また、熱容量の異なる材料を組み合わせることにより、昇温速度を大きくすることができるため、高分子有機物の熱分解にも有利となる。
<実施例5>
次に図6を用いて、ピンセットの要領で微小試料を挟んで採取するタイプの微小試料加熱プローブ3について説明する。
【0116】
本実施例の微小試料加熱プローブ3は、図6に示すように、第1の径(または第1の断面積)を持つ加熱部321と、それより大きな第2の径(または第2の断面積)を持つ非加熱部322と、からなるピンセット型の試料保持部30(アーム9)を備えている。
【0117】
試料保持部30は、対になったアーム9から構成されており、アーム9間で試料8を保持する。そして、対になったアーム9に電圧を印加することにより、試料8の加熱を行う。
【0118】
なお、試料8が導電性である場合には、直流・交流いずれを印加しても、試料中を流れる電流により、加熱部321において試料8は加熱される。
【0119】
また試料8が絶縁物である場合でも、高周波を印加することにより、これを加熱することができる。この場合には、周波数を高くするほど誘電損失が大きくなり、その発熱量もまた大きくなる。
【0120】
なお、微小試料加熱プローブ3は、図6に示すように、高周波電源11と配線43によってアーム9に高周波を印加している。なお、アーム9を駆動するための機構については、省略した。
【0121】
このような構成により、有機高分子材料のような絶縁物微小試料を加熱する際には、微小試料が誘電体、アーム9がキャパシタの電極として働き、高周波誘電加熱を行うことになる。このとき単位体積あたりの電力量Pは、次式で表される。

=(E/d)×tanδ×2πf×ε×ε
ここで、
E:印加電圧(V)
d:電極間距離(m)(ピンセットのアーム間距離に相当)
tanδ:誘電損失角
f:周波数(Hz)
ε:真空の誘電率(8.85×10−12F/m)
ε:誘電体の比誘電率
【0122】
したがって、電力量Pは電界強度(E/d)の2乗、周波数fに比例するので、目的の微小試料の大きさ等に応じて高周波印加条件を設定すればよい。また、1μm程度の試料(ε=5程度)であれば、周波数を数十MHz、印加電圧数十Vとすればよい。
【0123】
なお、試料保持部30には、市販のSi製のMEMSピンセットを用いることにより、数μm程度の試料の採取が可能である。
【0124】
このような構成の微小試料加熱プローブ3によれば、ピンセット型のアーム9のうち、その先端部分である加熱部321が局所的に昇温されるため、利用者は、S/N比の良い分析が可能である。
<実施例6>
【0125】
次に、微小試料加熱プローブを備えた分析装置について説明する。
【0126】
図7は、本発明の微小試料加熱プローブを適用した質量分析装置60の概略図である。なお、ここでは一例として、実施例1にかかる微小試料加熱プローブ1を質量分析装置に接続する場合について説明するが、もちろん、他の実施例にかかる微小試料加熱プローブを接続しても良い。
【0127】
質量分析装置60は、結合部12および加熱源15を含む試料導入部22と、イオン源13と、TOF型質量分析部14と、を備えている。
【0128】
図7に示すように、結合部12に微小試料加熱プローブ1の端子部4(図示しない)を結合させることにより、微小試料加熱プローブ1を質量分析装置60へ装着することができる。
【0129】
結合部12は、ビューポート16を介して、試料保持部10の加熱部121をイオン源13近傍に配置できるような調整が可能に構成されている。
【0130】
微小試料加熱プローブ1の加熱部121は、加熱源15から供給されるエネルギにより加熱され、保持される試料8が気化してイオン源13でイオン化され、検出系であるTOF型質量分析部14へと導かれる。
【0131】
なお、本実施例の質量分析装置60は、TOF型質量分析装置を利用するものであるが、これに限定されず、例えば汎用の四重極型質量分析装置を用いることが可能である。
【0132】
また、検出系についても、質量分析装置に限定されず、例えば分光分析装置を用いても良い。
【0133】
なお、実施例1の微小試料加熱プローブ1を用いる場合、加熱源15は直流電源であるが、実施例5の微小試料加熱プローブ3を用いる場合、加熱源15は直流電源または高周波電源とすることができる。ただし、実施例4で説明した微小試料加熱プローブ2を用いる場合には、加熱源としてレーザ照射が必要になる。これについては、下記実施例にて詳しく説明する。
【0134】
次に、本発明の微小試料加熱プローブを用いた質量分析の結果を、図8に示す。
【0135】
図8は、φ3μmのポリスチレンビーズ一個(約15pg)のトータルイオンクロマトグラムチャート(a)と、当該ピークのマススペクトルチャート(b)である。
【0136】
質量分析の結果、図8に示すように、十分に高いS/N比で非常に鋭いピークが得られた。マススペクトルチャート(b)から、ピークのほとんどがポリスチレンの熱分解物(スチレンモノマー)に起因するものであり、また、それ以外のコンタミ成分はほとんど含まれていないことがわかる。
【0137】
よって、本発明の微小試料加熱プローブは、分析対象となる試料であるポリスチレンビーズのみを加熱し、S/Nの高い分析に非常に有効であることが確認できた。
【0138】
以上、本実施例では、実施例1にかかる微小試料加熱プローブ1を質量分析装置に利用する場合について説明した。
【0139】
このような構成によれば、微小試料加熱プローブによって試料を採取した後、これをプローブごと分析装置へとセットすることが可能である。従って、よりコンタミの機会を低減することとなり、高いS/N比で分析結果を得ることが可能である。
<実施例7>
次に、加熱源としてレーザ照射機構を備え、実施例4で説明した微小試料加熱プローブ2を用いた質量分析装置70について説明する。
【0140】
図9は、本発明の微小試料加熱プローブ2を適用した質量分析装置70の概略図である。
【0141】
質量分析装置70は、試料導入部22の加熱源として、図9に示すようなレーザ発射機構を有する。レーザ発射機構は、レーザ発振器31と、レーザ集光及びプローブの観測用対物レンズ33と、照明用ランプ34と、プローブの像を観察するためのCCDカメラ35と、ビームスプリッタ36と、結像用レンズ37と、からなる。なお、集光されたレーザ光90は、微小試料加熱プローブ2に照射される。
【0142】
質量分析装置70による分析の手順を説明する。
【0143】
まず、微小試料加熱プローブ2を用いて試料8を採取し、先端に試料8が付着した状態で微小試料加熱プローブ2を試料導入部22の結合部12にセットする。
【0144】
そしてCCDカメラ35によりプローブ先端の像を確認しながら、試料8への直接照射を避けつつ、図5(A)および図5(B)に示すような位置、すなわち、極力試料に近い加熱部221の一部に、レーザ光90を照射する。
【0145】
その結果、加熱部221は高温状態となり、熱伝導により試料8が加熱される。その結果、試料8は気化又は分解してイオン源13中へ放出される。そして、検出系である質量分析部14で質量分析がなされる。
【0146】
以上のような分析手順で1μmポリスチレンビーズを測定した結果、図8に示したマススペクトルチャート(b)とほぼ同等のスペクトルが得られ、本方法で微小有機試料の同定が可能あることが立証された。
【0147】
なお、本実施例の微小試料加熱プローブ2は、エッチング加工により作製し、先端の曲率半径は数nm程度である。なお、微小試料加熱プローブ2で1μmの試料の採取を試みたところ、問題なく採取できた。
【0148】
さらに、本実施例では、レーザとしてYAGレーザの第2高調波を用い、レーザのパルス幅は100nsとした。また、レーザ集光部位と採取された試料8との距離は1μmとし、集光部位のレーザ集光径も約1μmとした。
【0149】
また、本実施例では、微小試料加熱プローブ2にはシリコン製のものを用いたが、実施例4で述べたような他の材料のプローブを使用することも可能である。
<実施例8>
次に、実施例1にかかる微小試料加熱プローブ1を用いるガスクロマトグラフ質量分析装置80について説明する。
【0150】
図10は、本発明の微小試料加熱プローブ1を適用したガスクロマトグラフ質量分析装置80の概略図である。
【0151】
ガスクロマトグラフ質量分析装置80は、試料導入部22と、ガスクロマトグラフ部21と、イオン源13と、質量分析部14と、からなる。
【0152】
試料導入部22は、セプタム23に突き刺したニードル24を介して、スプリッタ25およびキャピラリカラム26と接続されている。
【0153】
ガスクロマトグラフ部21は、キャピラリカラム26を備える。
【0154】
まず、ガスクロクロマトグラフ質量分析装置80による分析の手順を説明する。
【0155】
試料を採取後の微小試料加熱プローブ1を、試料導入部22の結合部12に装着する。
【0156】
そして、図示しない加熱源からエネルギを供給し、加熱部121を加熱する。これに伴って、加熱部121の保持する試料8は気化し、キャリアガス28とともにキャピラリカラム入口26aへと導入される。
【0157】
その後、キャピラリカラム26を移動した試料ガスは、ここで質量ごとに分離され、キャピラリカラム出口26bから排出される。その後、試料ガスはイオン源13でイオン化され、質量分析部14へと導かれる。
【0158】
本実施例では、プローブとして実施例1に記載の金属線方式の微小試料加熱プローブ1を用いて、実際に上記の分析を行った。
【0159】
試料として、先端にφ3μmのポリスチレンビーズ数個を分析試料として採取し、キャリアガス28としてHeを用いて分析を行った結果、スチレンモノマーのマススペクトルを得た。
【0160】
なお、ガスクロマトグラフの測定条件は、以下の通りである。

・ 使用カラム:微極性、内径0.25mm、長さ30m
・ カラム入口圧力:100kPa
・ スプリット比:20
・ カラムの昇温条件:10℃/分(Max270℃)
【0161】
なお、本実施例では、金属線に電流を流す方式の微小試料加熱プローブ1を用いたが、図5(A)および図5(B)に示すレーザ照射により加熱される微小試料加熱プローブ2、または、図6に示すピンセットタイプの微小試料加熱プローブ3を用いてもよい。レーザ照射により加熱される微小試料加熱プローブ2を用いる場合には、図9のごとく、プローブ先端にレーザ光が照射できる構成とすればよい。
【0162】
以上のような構成により、試料が混合物からなる場合でも、試料ガスをガスクロマトグラフ(GC)にて分離してから質量分析装置に導入することで、S/N比の良い分析結果を得ることが可能である。
<実施例9>
次に、図11(A)および図11(B)を用いて、微小試料加熱プローブを分析装置に装着するための結合部12について説明する。
【0163】
図11(A)は、微小試料加熱プローブ1および結合部12を接続していない状態を示す概略説明図、図11(A)は、微小試料加熱プローブ1および結合部12を接続した状態を示す概略説明図である。
【0164】
なお、本実施例では、電流導入を必要とする実施例1で説明した微小試料加熱プローブ1を用いて説明する。
【0165】
結合部12は、内部配線40と、電極42と、をその内部に収容している。
【0166】
また、結合部12へ電流を供給するための電源兼温度コントローラ44および配線43は、分析装置の筐体41外部に配置されている。
【0167】
結合部12内に形成された内部配線40は、電極42を介して端子部4と電気的に接続する。
【0168】
電極42は、金属製の板バネで形成されており、装置筐体41の内部で微小試料加熱プローブ1が容易に着脱されるように、端子部4を挟み込んでこれを保持する。
【0169】
なお、このような結合部12を有する分析装置を用いて、実施例1と同様の方法でφ3μmのポリスチレンビーズ数個を微小試料加熱プローブ1にて採取したところ、スチレンモノマーのマススペクトルが確認できた。
【0170】
本実施例では、結合部12が装置筐体41に固定されているかのごとく説明したが、必ずしも結合部12が装置筐体41に固定されている必要はない。装置筐体41から結合部12が分離され、微小試料加熱プローブを結合部12に装着してから、装置筐体41に取り付けてもかまわない。
【0171】
また、本実施例では、微小試料加熱プローブ1の加熱部121にφ5μmという非常に細いPt線を用いた。このため加熱部121の熱容量に比べ、通常の温度測定用熱電対の熱容量のほうが大きいため、熱電対を用いての正確な温度測定は不可能である。
【0172】
よって、予め非接触の顕微放射温度計を用いて投入電力と到達温度との校正曲線を作成し、これを元に温度制御を行った。本実施例よりも熱容量が大きいプローブを用い、熱電対での正確な温度計測が可能な場合は、リアルタイムでのフィードバックによる電力制御を行っても良い。
【0173】
なお、本実施例では、金属線を用いた微小試料加熱プローブ1を用いた場合を例に結合部12について説明をしたが、ピンセット状の微小試料加熱プローブ3や針状の微小試料加熱プローブ2を用いる場合も同様の構成として良い。
【0174】
微小試料加熱プローブ3を適用する場合には、直流電源の代わりに高周波電源を接続すればよい。また針状の微小試料加熱プローブ2を適用する場合には、結合部12に外部からの電気的な接続は不要である。
【0175】
もちろん、上記いずれの場合でも、プローブを質量分析装置に装着した際に、その先端がイオン化室の適当な位置に配置される構成となっていることは当然である。
【0176】
以上、本発明にかかる実施例についてそれぞれ説明した。
【0177】
各実施例にかかる微小試料加熱プローブによれば、加熱領域が極力小さくなるよう工夫がなされているため、局所的な昇温が可能となり、例え加熱領域以外にハイドロカーボン等のコンタミ成分が付着したとしても、それらは気化せず、S/Nのよい分析が可能である。
【0178】
また、本発明の微小試料加熱プローブは、微小試料の採取機構を併せ持つため、採取した試料を直接分析装置へ導入できるため、さらにコンタミの可能性を抑制することができる。
【0179】
なお、各加熱部は、分析の用途に応じて瞬時に、あるいは、所望の昇温速度で、目的温度まで昇温できる構成とすることが望ましい。この点、本発明の微小試料加熱プローブは、加熱部の熱容量を小さく、非加熱部の熱容量を大きくすることで、局所的な加熱が可能であるとともに、昇温速度を非常に大きくすることが可能な構成となっている。
【0180】
また、本発明の微小試料加熱プローブは、質量分析以外の分析、例えば、気体の分析を行う分光分析等にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】図1は、検出感度を説明するための概念図である。
【図2】図2(A)は、先端に鋭角な金属線を用いた微小試料加熱プローブ1aの概略説明図、図2(B)は、先端が円弧状の金属線を用いた微小試料加熱プローブ1bの概略説明図である。
【図3】図3は、微小試料加熱プローブ1の端子部4の両端に、0.45V印加したときの各位置での到達温度を示す表である。
【図4】図4(A)は、加熱部121を接着前の微小試料加熱プローブ1の概略図、図4(B)は、Agペーストを塗布した微小試料加熱プローブ1の概略図、図4(C)は、加熱部121を接着後の微小試料加熱プローブ1の概略図である。
【図5】図5(A)は、複数段からなる試料保持部20を有するロッド型の微小試料加熱プローブ2aの概略説明図、図4(B)は、針状の試料保持部20を有するニードル方の微小試料加熱プローブ2bの概略説明図である。
【図6】ピンセット型の微小試料加熱プローブ3の概略説明図である。
【図7】本発明の微小試料加熱プローブを適用した質量分析装置60の概略図である。
【図8】図8は、ポリスチレンビーズのトータルイオンクロマトグラムチャートと、マススペクトルチャートである。
【図9】図9は、微小試料加熱プローブ2を適用した質量分析装置70の概略図である。
【図10】図10は、微小試料加熱プローブ1を適用したガスクロマトグラフ質量分析装置の概略図である。
【図11】図11(A)は、微小試料加熱プローブ1および結合部12を接続していない状態を示す概略説明図、図11(A)は、微小試料加熱プローブ1および結合部12を接続した状態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0182】
1・2・3:微小試料加熱プローブ、10・20・30:試料保持部、121・221・321:加熱部、122・222・323:非加熱部、4:端子部、5:内部配線、6:支持部、7:集光レンズ、8:試料、9:アーム、11:高周波電源、12:結合部、13:イオン源、14:質量分析部、15:加熱源、16:ビューポート、21:ガスクロマトグラフ部、22:試料導入部、23:セプタム、24:ニードル、25:スプリッタ、26:キャピラリカラム、31:レーザ発振器、33:対物レンズ、34:照明用ランプ、35:CCDカメラ、36:ビームスプリッタ、37:結像用レンズ、41:装置筐体、42:電極、43:配線、44:電源兼温度コントローラ、50:Agペースト、90:レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤと、ワイヤ支持部材と、前記ワイヤ支持部材に設けられて前記ワイヤに電力を供給する端子と、を備え、
前記ワイヤは、試料を保持して加熱するための第1の径を有する第1のワイヤと、前記第1のワイヤを前記ワイヤ支持部材に接続するための第2の径を有する第2のワイヤと、からなり、
第1の径は、前記第2の径よりも小さいこと
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の微小試料加熱プローブであって、
前記端子は、電力源を備えていること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微小試料加熱プローブであって、
前記第1のワイヤは、前記第2のワイヤよりも比熱が小さく、かつ、熱電動率の大きな材料からなること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の微小試料加熱プローブであって、
前記第1のワイヤは、少なくともPtを含み、前記第2のワイヤは、少なくともAgを含んでいること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の微小試料加熱プローブであって、
前記第1のワイヤの表面積が、1mm以下であること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の微小試料加熱プローブであって、
前記第1のワイヤの加熱領域の体積が、0.01mm以下であること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の微小試料加熱プローブであって、
前記第1のワイヤの直径が、1〜20μmであること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項8】
試料を保持して加熱するためのワイヤと、ワイヤ支持部材と、を備える微小試料加熱プローブの製造方法であって、
前記ワイヤの中心と、中心を被覆する外周と、が異なる金属材料で形成される第2のワイヤと、
前記第2のワイヤの所望の部分について外周を被覆する金属を溶解させ、当該部分の径を他の部分よりも小さくした第1のワイヤと、
を形成すること
を特徴とする微小試料加熱プローブの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の微小試料加熱プローブの製造方法であって、
前記第2のワイヤは、
前記中心を構成する金属材料が、少なくともPtを含み、
前記外周を構成する金属材料が、少なくともAgを含んでいること
を特徴とする微小試料加熱プローブの製造方法。
【請求項10】
ロッドと、ロッド支持部材と、前記ロッド支持部材に設けられている端子と、を備え、
前記ロッドは、試料を保持して加熱するための第1の径を有する第1のロッドと、前記第1のロッドを前記ロッド支持部材に接続するための第2の径を有する第2のロッドと、からなり、
第1の径は、前記第2の径よりも小さく
前記第1のロッドは、所定の位置にレーザを照射されて、試料を加熱すること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項11】
請求項10に記載の微小試料加熱プローブであって、
前記第1のロッドは、前記第2のロッドよりも比熱が小さく、かつ、熱電動率の大きな材料からなること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項12】
試料を保持して加熱するためのロッドと、ロッド支持部材と、を備える微小試料加熱プローブの製造方法であって、
前記ロッドを、
前記第1の径を有する第1のロッドと、第1の径よりも大きな第2の径を有し、前記第1のロッドとロッド支持部材を接続するための第2のロッドと、を溶接することで形成すること
を特徴とする微小試料加熱プローブの製造方法。
【請求項13】
試料を挟持して加熱するための対となる2本のアームと、アーム支持部材と、前記アーム支持部材に設けられ、前記アームに電力を供給するための端子と、を備え、
前記アームは、試料を挟持する第1の径を有する部分と、前記第1の径よりも大きな第2の径を有する部分と、からなること
を特徴とする微小試料加熱プローブ。
【請求項14】
微小試料を分析するための分析装置であって、
前記微小試料を気化させて導入するための試料導入部と、前記微小試料をイオン化するイオン源と、前記微小試料を検出するための検出部と、加熱源と、を備え、
前記試料導入部は、導入する前記微小試料を保持して加熱するための第1の径を有する第1の部材と、前記第1の径よりも大きな第2の径を有する第2の部材と、を備える微小試料加熱プローブを着脱可能に接続すること
を特徴とする分析装置。
【請求項15】
請求項14に記載の分析装置であって、
前記微小試料加熱プローブの保持する前記微小試料を分離するための、ガスクロマトグラフ部をさらに備えること
を特徴とする分析装置。
【請求項16】
請求項15または16に記載の分析装置であって、
前記検出部は、イオンの質量/電荷比を分離する機能を有する質量分析計であること
を特徴とする分析装置。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか一項に記載の分析装置であって、
前記微小試料加熱プローブは、前記第1の部材および前記第2の部材に電力を供給するための端子を備え、
前記分析装置の前記加熱源は、直流または交流電源を備え、
前記試料導入部は、前記端子を接続がされると、前記加熱源から前記端子へと電力を供給すること
を特徴とする分析装置。
【請求項18】
請求項14から16のいずれか一項に記載の分析装置であって、
前記加熱源は、レーザ発振器であり、
前記レーザは、前記微小試料加熱プローブの第1の部材に照射されること
を特徴とする分析装置。
【請求項19】
請求項17に記載の分析装置であって、
前記第1の部材および前記第2の部材は、二本のアームからなるピンセット構造であり、
前記試料導入部は、前記端子が接続されると、前記加熱源から前記二本のアームに高周波を印加すること
を特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−92649(P2009−92649A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176750(P2008−176750)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】