説明

微生物におけるメチオニン生産を改善するためのバチルス属metI遺伝子の使用

本発明は、枯草菌由来のmetI遺伝子、またはmetIに関連する遺伝子を用いる、メチオニンおよび他の硫黄含有精密化学物質の生産のための改善された微生物および方法に関する。本発明のいくつかの実施形態では、metI遺伝子または別の遺伝子は、水溶性化合物、例えばメチオニンまたは他のアミノ酸と、カロテノイド化合物との同時生産を可能にする様式で組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、いずれも「Use of a Bacillus MetI Gene to Improve Methionine Production in Microorganisms」と題する、2005年7月18日出願の米国仮特許出願第60/700,557号、および2005年9月1日出願の米国仮特許出願第60/713,905号の優先権の利益を主張するものであり、それらの各々の全開示内容は参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
さらに、本願は、いずれも「Use of Dimethyl Disulfide for Methionine Production in Microrganisms」と題する、2005年7月18日出願の米国仮特許出願第60/700,698号、および2005年9月1日出願の米国仮特許出願第60/713,907号に関するものであり、それらの各々の全開示内容は参照により本明細書に組み入れる。
【0003】
本願はまた、いずれも「Methionine Producing Recombinant Microorganism」と題する、2005年7月18日出願の米国仮特許出願第60/700,699号、および2005年9月1日出願の米国仮特許出願第60/714,042号にも関し、それらの各々の全開示内容は参照により本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
硫黄含有精密化学物質、例えば、メチオニン、ホモシステイン、S-アデノシルメチオニン、グルタチオン、補酵素A、補酵素M、マイコチオール(mycothiol)、システイン、ビオチン、チアミン、およびリポ酸の生合成は、自然代謝過程により細胞で起こる。これらの化合物は、まとめて「硫黄含有精密化学物質(sulfur-containing fine chemical)」と呼ばれ、それらは、有機酸、タンパク質構成アミノ酸および非タンパク質構成アミノ酸の両方、ビタミン、ならびに補因子を含み、食品、動物飼料、化粧品、および医薬品産業を含む多くの産業分野において用いられる。これらの化合物は、所望の物質を大量に生産および分泌するように開発された、微生物、例えば、細菌、特に、コリネ型細菌を培養することによって大量生産される可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幅広い産業にわたってのこれらの化学物質の大きな重要性から、硫黄含有精密化学物質、例えば、メチオニンの改善された生産方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、メチオニンおよび他の精密硫黄含有化学物質の生産のための改善された微生物および方法(例えば、微生物生合成、微生物発酵)に関する。特に、本発明者らは、例えば、バチルス属(Bacillus)における、メチオニン生合成経路に関与するある特定の有用な酵素はメチオニンフィードバック阻害を受けないということを発見した。さらに詳しくは、本明細書において、バチルス属metI遺伝子は、正常より高いレベルで発現されるか、もしくは構成的に発現されるか、または(例えば、形質転換により)異種微生物に導入されると、メチオニンの生産増加を可能にするということが示された。
【0007】
よって、本発明はさらに、メチオニンをより効果的に生産する能力を有する組換え微生物に関する。これらの微生物は、トランススルフレーション経路(transsulfuration pathway)または直接スルフヒドリル化経路(direct sulfhydrylation pathway)を使用することができ、それらの微生物は、バチルス属metI遺伝子などの遺伝子を導入することで、メチオニン生産レベルの増加を得る。典型的な微生物では、メチオニンフィードバック阻害を受ける内因性酵素を、補完(相補)し、追加し、またはメチオニンフィードバック耐性酵素の導入により回避することによって、メチオニン生産の増加をもたらす。本発明のある特定の実施形態では、トランススルフレーションに基づくメチオニン生合成経路が衰退または除去されている微生物が利用される。これらの生物は、直接スルフヒドリル化経路を通じてのみメチオニンを生産することができることから、外部から導入されるバチルス属metIを用いてメチオニン生産を増加させるのに特に適している。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、MetBまたはMetCを欠失しているまたは抑制した組換え微生物に関し、かかる微生物はMetIについて調節解除される。いくつかの実施形態では、MetIについて調節解除(deregulated)された組換え微生物は、MetBを欠失しているか、または抑制されたMetBを含む。
【0009】
本開示に包含されるいくつかの組換え微生物の場合、MetIはバチルス属metI、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)MetIなどである。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明の組換え微生物はコリネバクテリウム属(Corynebacterium)に属し、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)などである。
【0011】
MetIの調節解除は、本明細書に記載の1以上の方法および当技術分野で公知のものにより実現することができる。いくつかの実施形態では、MetIの調節解除は、そのmetI遺伝子の過剰発現により実現される。発現カセット、例えば、異種プロモーター、所望により、リボソーム結合部位に機能しうる形で連結されたMetI遺伝子を含むMetI発現カセットもまた、本発明に包含される。
【0012】
いくつかの実施形態では、MetIカセットにおいて用いられるプロモーターは、P15プロモーターである。
【0013】
metIの過剰発現用ベクターもまた、本発明に包含される。いくつかの実施形態では、ベクターは、本明細書に記載のとおり、MetI発現カセットを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え微生物はMetI発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、微生物は、MetI発現カセットを含むことの他、MetBおよびMetCについて抑制される。
【0015】
本発明はさらに、メチオニンが生産されるような条件下で、MetBおよびMetCが抑制されているか、または欠失している、MetIについて調節解除されている組換え微生物を培養することによってメチオニンを生産するための方法に関する。メチオニンを生産するための方法にメチオニンを単離するさらなる段階を含めてよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、メチオニン生産微生物におけるメチオニン生産能力を増加するための方法は、本明細書において記載され、かかる方法は、該微生物のメチオニン生産能力を増加させるように、該微生物においてMetIを調節解除することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、メチオニンフィードバック阻害を示す微生物におけるメチオニン生産能力を増加するための方法は記載され、かかる方法は、メチオニンフィードバック阻害を軽減するためにMetIを調節解除し、それにより、該微生物のメチオニン生産能力を増加させることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、メチオニン生産能力は、対照微生物と比べて少なくとも20%増加する。
【0019】
さらに他の実施形態では、メチオニン生産能力は、対照微生物と比べて少なくとも30%増加する。
【0020】
さらに、いくつかの実施形態では、メチオニン生産能力は、対照微生物と比べて少なくとも40%増加する。
【0021】
増加したメチオニン生産能力を有するが、調節解除されたMetIを含まない組換え微生物もまた包含される。
【0022】
もう1つの実施形態では、微生物への異種metI遺伝子の組込みは、結果として得られる操作された微生物が副産物として有用な第2化合物、例えば、カロテノイド化合物、例えば、リコピンまたはアスタキサンチンを生産するような方法で、2つの有用な化合物が同時生産され得るように行われる。もう1つの実施形態では、生物は、第1化合物(例えば、アミノ酸(例えば、限定されるものではないが、メチオニン、リジン、グルタミン酸、トレオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、システイン、ロイシン、ホモセリン、ホモシステインなどを含む)または商業的に興味深い他の非カロテノイド化合物(例えば、限定されるものではないが、メタン、水素、乳酸、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、ブタノール、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、イタコン酸、グルコサミン、グリセロール、糖、ビタミン、治療用、研究用、および工業用酵素、治療用、研究用、および工業用タンパク質、ならびに上記化合物のいずれもの様々な塩を含む))と、第2化合物(商業的に興味深いカロテノイド化合物(例えば、限定されるものではないが、リコピン、アスタキサンチン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、デカプレノキサンチン(decaprenoxanthin)、およびビキシンなどを含む)を含む)とを同時生産するように操作される。好ましい実施形態では、前記第1化合物は、ガスとして分離されるか、または培養培地に分泌され、一方、前記第2の、カロテノイド化合物は、その細胞塊に残留する。
【0023】
本発明はさらに、改良された遺伝子工学技術、すなわち、標的微生物への核酸配列の移入を容易にするベクター構築物に関する。本明細書における改善された方法および材料の1つの態様は、細胞を形質転換することができ、それによって、所望の核酸配列を発現させることができる新規組換え発現ベクターである。好ましくは、これらの核酸配列は、所望の物質の生産が実現、変更、または増加されるように、標的微生物の生合成経路を促進または改善する遺伝子を含む。かかる遺伝子は、例えば、メチオニンなどの硫黄含有精密化学物質の生合成に関与する酵素またはタンパク質をコードしうる。本発明の好ましい実施形態では、前記酵素は、メチオニンの生合成生産に関与するo-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ、o-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ、または類似酵素である。
【0024】
本発明のある特定の実施形態では、前記組換え発現ベクターは組込みカセットを含む。この組換え発現カセットは、標的生物の所望の特定ゲノム領域への核酸配列の組込みに有用である。本発明のある特定の実施形態では、組込みカセットを含む組換え発現ベクターは、特定の遺伝子配列が、挿入された組込みカセットおよび異種核酸配列によって破壊されるように、設計されている。これらの異種配列は、所望のタンパク質または酵素(例えば、メチオニン生合成酵素)をコードし得る。
【0025】
また、所望の形質を含む組換え生物の効率的なスクリーニングに有用な改善された方法および材料も本明細書において具体化される。ある特定の実施形態では、前記スクリーニングは比色スクリーニングである。好ましい実施形態では、前記比色スクリーニングは、標的細胞におけるカロテノイド化合物、例えば、リコピン、アスタキサンチン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、デカプレノキサンチン、およびビキシンなどの生産レベルを変更することによって実現される。よって、本発明は、カロテノイド生合成オペロンを組換え改変し、それによって、カロテノイド生産に関する表現型の変化(例えば、色変化)に基づいて選択し得る遺伝子操作された形質転換体を得るための材料および方法を提供する。
【0026】
本発明はさらに、所望により、遺伝子配列を含む核酸配列を微生物に導入するための新規発現ベクターの設計に関する。
【0027】
前記方法に利用される微生物と同様に、前記方法に従って生産される組成物も特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも一部は、メチオニンの生合成に関与するある特定のバチルス属遺伝子/酵素がメチオニンフィードバック阻害を受けないという知見に基づく。これらの遺伝子は、異種微生物において利用される場合、内因性メチオニン生合成経路を強化するため、メチオニン生産量を増加し得る組換え微生物を提供する。
【0029】
微生物におけるメチオニン合成における前駆体基質への硫黄原子の付加では2つの代替経路が存在する(図1参照)。大腸菌(E. coli)は、例えば、トランススルフレーション経路を利用するが、一方、他の微生物(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびCorynebacterium glutamicumなど)は、加えて、直接スルフヒドリル化経路を発達させた。多くの微生物は、トランススルフレーションまたは直接スルフヒドリル化のいずれかを用い、両方は用いないが、C. glutamicumはメチオニンの合成に両方の経路を使用する。
【0030】
トランススルフレーション経路および直接スルフヒドリル化経路はともに、O-アセチルホモセリンまたはO-スクシニルホモセリンのいずれかから始まり、中間体であるホモシステイン(メチオニンの前駆体)を生じる。トランススルフレーション経路では、システインは、酵素MetB(シスタチオニン-γ-シンターゼ)による触媒反応であるシスタチオニンの形成をもたらす硫黄供与体である。シスタチオニンは、その後、MetC(シスタチオン-β-リアーゼ(cystathione-beta-lyase))による触媒反応によりホモシステインとピルビン酸に切断される。O-アセチル-ホモセリンを利用する直接スルフヒドリル化経路では、MetY(O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ)は、スルフィドのO-アセチル-ホモセリンへの直接付加を触媒して、ホモシステインを生成する。O-スクシニル-ホモセリンから直接のホモシステインの生産は、MetZ(O-スクシニル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ)によっても同様に行われる。先行技術の一部において、用語MetYとMetZは、1つの理由として、MetYがその通常の基質であるO-アセチル-ホモセリンに加えて、O-スクシニル-ホモセリンに対しても活性があることが知られている(Hwangら, (2002) J. Bacteriol. 184:1277-1286)ことから、交換可能に用いられる。
【0031】
本発明者らによって実施された数多くの実験は、MetYの活性が、(抑制されたmetBを用いて)直接スルフヒドリル化経路に有利であるように操作されたコリネバクテリウム属の菌株、例えば、関連M2014およびOM99(McbR+)株背景におけるメチオニン生合成の律速段階であるということを示した。特に、MetYの基質の1つであるO-アセチル-ホモセリンは、metA(metXと呼ばれることがある)およびmetYを発現する、複製プラスミドH357を含む菌株において比較的高いレベルまで蓄積する。さらに、酵素アッセイから、MetYがメチオニンによるフィードバック阻害に対して感受性があるということは知られている。最近の刊行物(Augerら, 2002 Microbiology 148: 507-518)には、枯草菌遺伝子のmetIが特徴付けられており、このmetIはO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼをコードし、C. glutamicum MetYと同じ働きをする。興味深いことに、そのMetI酵素は実質的MetB様活性、シスタチオニン-γ-シンターゼも有する(表1参照)。さらに、枯草菌ゲノムはMetI以外にMetB相同体を含まない。これらのことから、MetIはその本来の宿主においてMetYとMetBの両方の機能を果たすと推測される。この仮説は、枯草菌metIが大腸菌metB-栄養要求株を補完すると事実により裏付けられる。これまでに研究されてきた、全てとはいえないにしてもほとんどの他の微生物において、MetY様活性はメチオニンによりフィードバック阻害されるが、一方、MetB活性はメチオニンによりフィードバック阻害されない。よって、バチルス属MetIは、MetB様経路において効果的に機能するためにメチオニン阻害に耐性を示すように進化したと推論することができる。
【表1】

【0032】
本発明は、異種メチオニン生合成酵素を発現するように遺伝子操作されている組換え微生物を提供する。
【0033】
加えて、本発明は、異種核酸配列を例えば、コリネバクテリウム属のカロテノイドオペロンに挿入するのに有用である組換え発現ベクターを提供する。これらの組換えベクターは、カロテノイドオペロンの特定の核酸配列、例えば、タンパク質コード配列または発現調節配列を標的にする組込みカセットをさらに含み得る。さらに、これらのベクターおよび組込みカセットは、標的生物におけるカロテノイド類の生産の結果として、表現型の変化、例えば、生物の色素形成の変化、および生産されるカロテノイド(類)の変更が生じるように、オペロンを変更するのに用いられ得る。これにより、所望のカロテノイドと、所望のアミノ酸、例えば、メチオニン、リジン、グルタミン酸、トレオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、ロイシン、システインなどとの同時生産が可能になる
本発明をより理解しやすくするために、最初に特定の用語を本明細書において定義する。
【0034】
表現「生合成経路」または「生合成法」とは、1つまたは複数の生化学反応の結果として目的の分子または化合物が生産されるin vivoまたはin vitro法を意味するのに、本明細書において用いられる。一般には、前駆体分子から始まり、典型生合成法は、目的の分子または化合物を生産するために段階的に働く1つまたは複数の酵素の作用を必要とする。最終産物は通常炭素含有分子である。目的の分子または化合物は、例えば、有機小分子、アミノ酸、ペプチド、細胞の補因子、ビタミン、ヌクレオチド、および類似化学物質を含む。目的の分子または化合物は、精密な硫黄含有化学物質、例えば、メチオニン、ホモシステイン、S-アデノシルメチオニン、グルタチオン、システイン、ビオチン、チアミン、マイコチオール、補酵素A、補酵素M、およびリポ酸をさらに含む。ある特定の状況では、生合成経路において働く1つの酵素または複数の酵素は、その過程で生成される化学生成物により調節されることがある。そのような場合、漸増する濃度の最終または中間生成物が経路内の酵素のレベル、機能、または活性を変更するというフィードバックループが存在するといわれている。例えば、生合成法の最終生成物は、生合成法の酵素の活性をダウンレギュレーションするよう作用し得、それにより、所望の最終産物が生産される割合を低下させ得る。このような状況は、例えば、目的の分子または化合物の生産産業で用いられる大規模発酵法においては、望ましくない場合が多い。本発明の方法および材料は、少なくとも一部において、目的の化合物の産業規模の発酵生産を改善することに向けられる。フィードバックループの典型的な例は、以下に記載されるメチオニンの生産におけるにおいて起こる。
【0035】
用語「メチオニン生合成経路」とは、メチオニンの形成または合成に利用される、メチオニン生合成酵素(例えば、生合成酵素コード遺伝子によりコードされるポリペプチド)、化合物(例えば、前駆体、基質、中間体、または産物)、補因子などが関与する生合成経路を含む。用語「メチオニン生合成経路」とは、微生物において(例えば、in vivoで)メチオニンの合成をもたらす生合成経路だけでなく、in vitroでメチオニンの合成をもたらす生合成経路も含む。図1は、メチオニン生合成経路の模式図である。図1に概要が記述されているように、オキサル酢酸(OAA)からのメチオニンの合成は、中間体、アスパラギン酸、アスパラギン酸(アスパルチル)リン酸、およびアスパラギン酸セミアルデヒドを経て進行する。アスパラギン酸セミアルデヒドは、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(hom遺伝子の産物、他の生物における他の名前の中ではthrA、metL、hdh、hsdの別名でも知られる)によりホモセリンに変換される。メチオニン合成におけるその後の段階は、トランススルフレーション経路および/または直接スルフヒドリル化経路を通って進行し得る。
【0036】
用語「メチオニン生合成酵素」とは、メチオニン生合成経路の化合物(例えば、中間体または産物)の形成に利用されるいずれもの酵素を含む。「メチオニン生合成酵素」とは、例えば、「トランススルフレーション経路」およびメチオニン合成の代替経路である「直接スルフヒドリル化経路」に関与する酵素を含む。例えば、大腸菌はトランススルフレーション経路を利用するが、一方、他の微生物(サッカロミセス・セレビシエなど)は、直接スルフヒドリル化経路を発達させた。
【0037】
「メチオニン生合成酵素」とは、メチオニンの生産に貢献する微生物において一般に見つけられる全ての酵素を包含する。それらの酵素には、例えば、システインとO-アセチルホモセリンまたはシステインとO-スクシニル-ホモセリンからホモシステインが生成されるトランススルフレーション経路に関与する酵素を含む。トランススルフレーション経路では、ホモセリンは、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ(metX遺伝子の産物)およびアセチルCoAの付加によりO-アセチル-ホモセリンに変換されるか、またはスクシニルCoAの付加およびmetA遺伝子の産物(ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ)によりO-スクシニル-ホモセリンに変換される。metB遺伝子の産物であるシスタチオニンγ-シンターゼによる、システインからO-アセチル-ホモセリンまたはO-スクシニル-ホモセリンのいずれかへの硫黄基の供与によりシスタチオニンが生じる。シスタチオニンは、その後、metC遺伝子(一部の生物ではaecD遺伝子とも呼ばれる)の産物であるシスタチオニンβ-リアーゼによりホモシステインに変換される。メチオニン生合成酵素には、O-アセチル-ホモセリンスルフヒドララーゼ(O-acetyl-homoserine sulfhydralase)(例えば、コリネバクテリウム属のmetY遺伝子-metZ遺伝子と呼ばれることもある)の活性を有する酵素が、硫黄原子の供給源としてスルフィドを利用して、単一段階工程でO-アセチル-ホモセリンをホモシステインへと変換する直接スルフヒドリル化経路における酵素も含む。ホモシステインは、直接スルフヒドリル化経路において、metZ遺伝子の産物であるO-スクシニル-ホモセリンスルフヒドリラーゼによるスルフィドのO-スクシニル-ホモセリンへの直接付加によっても生成され得る。
【0038】
トランススルフレーション経路または直接スルフヒドリル化経路のどちらの経路を用いるかには関係なく、メチオニンは、その後、ホモシステインから、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ(metH遺伝子の産物)またはビタミンB12非依存性メチオニンシンターゼ(metE遺伝子の産物)によるメチル基の付加により生成される。
【0039】
本発明は、一部において、バチルス属およびコリネバクテリウム属に包含されるグラム陽性細菌におけるメチオニンの生産に関与する酵素(メチオニン生合成酵素)に関する。微生物において存在する典型的なメチオニン生合成酵素は図1に記述されている。これらの酵素には、例えば、アスパラギン酸キナーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ(例えば、枯草菌およびC. glutamicumにおいて存在する)、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ(例えば、大腸菌(Escherichia coli)において存在する)、O-アセチル-ホモセリンスルフヒドララーゼ(O-acetyl-homoserine sulfhydralase)、O-スクシニル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ、ビタミンB12依存性メチオニンシンターゼ、およびコバラミン非依存性メチオニンシンターゼが含まれる。
【0040】
本明細書に記載のとおり、「MetI」酵素は、(1)O-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ活性(O-アセチル-ホモセリンスルフヒドロラーゼ;O-アセチル-ホモセリンチオリアーゼ(O-acetyl-homoserine thiolyase)の別名でも知られる)とシスタチオニン-γ-シンターゼ活性の両方を有し、所望により、O-スクシニル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-スクシニル-ホモセリンスルフヒドロラーゼ(O-succinyl-homoserine sulfhydrolase);O-スクシニル-ホモセリンチオリアーゼ(O-succinyl-homoserine thiolyase)の別名でも知られる)およびシスタチオニン-γ-シンターゼとしての活性も有し;(2)メチオニンによる阻害に対して実質的に耐性を示すO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼまたはO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼを含む、配列番号2として記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と少なくとも約65%配列同一性を有する。
【0041】
用語「操作された微生物」とは、微生物が、メチオニン生産が増加するように量または構造において変更された、メチオニン生合成経路の少なくとも1つの酵素を有するように操作されている(例えば、遺伝子操作されている)または変更されている微生物を含む。かかる微生物の変更または操作は、本明細書において記載されるいずれの方法によってもよく、限定されるものではないが、生合成経路の調節解除および/または少なくとも1つの生合成酵素の過剰発現が含まれる。「操作された」酵素(例えば、「操作された」生合成酵素)は、例えば、対応する野生型または天然に存在する酵素と比べて、酵素の少なくとも1つの上流もしくは下流前駆体、基質、または産物が改変または変更(例えば、前駆体、基質、および/または産物の改変または変更のレベル、割合など)されるように、発現、生産、もしくは活性が改変または変更されている酵素を含む。「操作された」酵素はまた、1以上の産物または中間体による阻害、例えば、フィードバック阻害に対する耐性が強化されているものも含む。例えば、(例えば、メチオニンの存在下で)効果的に、酵素的に機能する能力を有する酵素。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明に包含される遺伝子はバチルス属から誘導される。用語「バチルス属から誘導された」または「バチルス属由来の」とは、バチルス属の微生物において自然に見つけられる遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子は、枯草菌、Bacillus lentimorbus、Bacillus lentus、Bacillus firmus、Bacillus pantothenticus、Bacillus amyloliquefaciens、セレウス菌(Bacillus cereus)、Bacillus circulans、Bacillus coagulans、Bacillus licheniformis、巨大菌(Bacillus megaterium)、Bacillus pumilus、Bacillus thuringiensis、炭疽菌(Bacillus anthracis)、Bacillus halodurans、および例えば、16S rRNA型により特徴付けられる他の群1バチルス属種からなる群から選択される微生物に由来する。さらに他の実施形態では、遺伝子は、Bacillus brevisまたはBacillus stearothermophilusに由来する。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子は、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、枯草菌、およびBacillus pumilusからなる群から選択される微生物に由来する。いくつかの実施形態では、前記遺伝子は、枯草菌から誘導される(例えば、枯草菌由来である)。用語「枯草菌から誘導された」および「枯草菌由来の」は、本明細書において同義的に用いられ、微生物 枯草菌において自然に見つけられる遺伝子を含む。バチルス属由来の遺伝子(例えば、枯草菌由来の遺伝子)、例えば、バチルス属または枯草菌metI遺伝子は、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
本明細書において、用語「遺伝子」とは、生物において、遺伝子間DNA(すなわち、該遺伝子に天然でフランキングし、かつ/または生物の染色体DNAにおける遺伝子を分離する介在またはスペーサーDNA)によりもう1つの遺伝子または他の遺伝子から分離され得る核酸分子(例えば、DNA分子またはそのセグメント)を含む。また、遺伝子は、もう1つの遺伝子と少し重複してよく(例えば、第1の遺伝子の3’末端は第2の遺伝子の5’末端と重複している)、それらの重複遺伝子は、遺伝子間DNAにより他の遺伝子から分離される。遺伝子は、酵素もしくは他のタンパク質分子の合成を指令することがあるし(例えば、コード配列、例えば、タンパク質をコードする隣接するオープンリーディングフレーム(ORF)を含み得る)、またはそれ自体が生物において機能することもある。生物における遺伝子は、オペロンにおいてクラスター化され得、本明細書において定義されるとおり、該オペロンは、遺伝子間DNAにより他の遺伝子および/またはオペロンから分離されている。本明細書において、「単離された遺伝子」とは、該遺伝子が得られた生物の染色体DNAにおいて該遺伝子に天然でフランキングする配列を本質的に含まない(すなわち、第2のまたは別個のタンパク質をコードする隣接するコード配列、隣接する構造配列などを含まない)、所望により、5’および3’調節配列、例えば、プロモーター配列および/またはターミネーター配列を含む遺伝子を含む。1つの実施形態では、単離された遺伝子は、主に、タンパク質についてのコード配列(例えば、バチルス属タンパク質をコードする配列)を含む。もう1つの実施形態では、単離された遺伝子は、タンパク質について(例えば、バチルス属タンパク質について)のコード配列と、該遺伝子が得られた生物の染色体DNAの隣接する5’および/または3’調節配列(例えば、隣接する5’および/または3’バチルス属調節配列)とを含む。好ましくは、単離された遺伝子は、該遺伝子が得られた生物の染色体DNAにおいて該遺伝子に自然にフランキングする、約10kb、5kb、2kb、1kb、0.5kb、0.2kb、0.1kb、50bp、25bpまたは10bp未満のヌクレオチド配列を含む。
【0044】
用語「オペロン」とは、所望により、少なくとも1つの遺伝子またはORFの5’末端または3’末端のいずれかにおいて配列が重複している、少なくとも2つの隣接する遺伝子またはORFを含む。用語「オペロン」とは、1つ以上の隣接する遺伝子またはORF(例えば、酵素、例えば、生合成酵素をコードする構造遺伝子)に関連する、プロモーター、場合によっては、調節エレメントを含む遺伝子発現の協調ユニットを含む。遺伝子の発現は、例えば、調節エレメントへの調節タンパク質の結合により、または抗転写終結により、協調的に調節することができる。オペロンの遺伝子(例えば、構造遺伝子)は、タンパク質の全てをコードする単一mRNAを与えるように転写させることができる。
【0045】
本発明の様々な態様は、次のサブセクションでさらに詳細に記載される。
【0046】
I. 異種微生物におけるメチオニンの生産増加のための方法および微生物
C. glutamicumは、メチオニン合成のための2つの経路、直接スルフヒドリル化経路とトランススルフレーション経路(transulfuration pathway)を有する(図1参照)。これらの経路はO-アセチル-ホモセリンを利用し、メチオニンの前駆体であるホモシステインを生じる。トランススルフレーション経路(transulfuration pathway)では、O-アセチル-ホモセリンは、システインの存在下でMetBによりシスタチオンに変換される。シスタチオニンは、その後、MetCによる触媒反応によりホモシステインとピルビン酸に切断される。直接スルフヒドリル化経路では、MetYは、スルフィドのO-アセチル-ホモセリンへの直接付加を触媒して、ホモシステインを生成する。上記のとおり、MetYの活性は、直接スルフヒドリル化経路を利用する微生物における律速段階であると思われる。表IIはメチオニン生合成経路における様々な酵素を示す。
【表2】

【0047】
本発明は、例えば、変更された微生物がメチオニンの生産増加を達成し得るような遺伝子工学を利用した、微生物の変更を特徴とする。さらに詳しくは、いくつかの実施形態では、遺伝子工学法は、メチオニンの生産が変更または増加されるような、内因性生合成経路内で働く酵素をコードする1つの異種遺伝子または複数の異種遺伝子の導入を含む。好ましくは、前記酵素はメチオニンフィードバック阻害に耐性を示す。本明細書において、表現「メチオニンフィードバック阻害に耐性を示す」とは、メチオニンの存在下でかなりの活性で酵素的に機能する能力を有する酵素を指す。メチオニンフィードバック阻害に耐性を示す酵素は、例えば、1〜10μM、10〜100μM、または100μM〜1mMメチオニンの存在下で著しく機能し得る。本発明のいくつかの実施形態では、目的の酵素は、メチオニンが1〜10mM、10〜100mMの濃度、またはさらに高い濃度で機能する能力を有する。本発明は、特に、メチオニンの生産をもたらす生合成経路または過程に関与するメチオニンフィードバック耐性酵素を包含する。
【0048】
本発明は、微生物から増加したレベルのメチオニンを生産する方法を特徴とする。本明細書において、表現「増加したレベルのメチオニン生産」とは、非変更微生物または他の好適な対照微生物によって生産されるよりも高い(例えば、5%高い、10%高い、15%高い、20%高い、30%高い、40%高い、またはそれ以上の)メチオニンのレベルまたは量を指す。例示的な実施形態では、前記メチオニン生産レベルは、未変更微生物または他の好適な対照微生物によって生産されるよりも少なくとも50%、60%、または70%高い。さらに他の実施形態では、前記生産レベルは、未変更微生物または他の好適な対照微生物によって生産されるよりも少なくとも約100%高い(すなわち、2倍、3倍、4倍 5倍、あるいは10倍高い、またはそれ以上である)。本明細書に記載の値に含まれる値および範囲、ならびに/または本明細書に記載の値の中間の値および範囲もまた、本発明に包含されるものとする。典型的な実施形態では、増加したレベルのメチオニン生産は、異種メチオニン耐性生合成酵素を発現するように遺伝子操作していない微生物によって立証された基礎レベルを上回って生産された量も包含するものとする。
【0049】
従って、本発明は、メチオニンを生産する方法であって、「メチオニン生産微生物」を培養することを含む方法を提供する。「メチオニン生産微生物」とは、メチオニンを生産することができるいずれもの微生物、例えば、細菌、酵母、菌類、古細菌などである。1つの実施形態では、前記メチオニン生産微生物は、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属(Brevibacterium)に属する。もう1つの実施形態では、前記メチオニン生産微生物はCorynebacterium glutamicumである。さらにもう1つの実施形態では、前記メチオニン生産微生物は、大腸菌または関連腸内細菌、枯草菌または関連バチルス属、サッカロミセス・セレビシエまたは関連酵母株からなる群から選択される。
【0050】
本発明は、少なくとも一部は、C. glutamicumのある特定の株は、内因性メチオニンフィードバック感受性酵素、例えば、metYおよび/またはmetZ遺伝子の産物を回避(bypass)するか、および/またはそれらに付加して、メチオニンフィードバック阻害に耐性を示す酵素を発現するように遺伝子操作することができるという知見に基づく。微生物に導入される異種遺伝子には、例えば、MetI、すなわち、in vitroでO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性とシスタチオン-γシンターゼ活性を有するか、またはO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性とシスタチオン-γシンターゼ活性を有する(ここで、該O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼまたはO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性はメチオニンフィードバック阻害に耐性を示す)酵素を含む。
【0051】
II 組換え微生物
本発明は、精密化学物質の生産に用いる微生物を特徴とする。1つの実施形態では、本発明の微生物は、グラム陽性生物(例えば、該微生物を取り囲むグラム陽性壁が存在するために、塩基性色素、例えば、クリスタルバイオレットを保持する微生物)である。いくつかの実施形態では、前記微生物は、バチルス属、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、コリネバクテリウム属(Cornyebacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococci)、およびストレプトミセス属(Streptomyces)からなる群から選択される属に属する微生物である。さらに他の実施形態では、前記微生物はコリネバクテリウム属のものである。加えて、いくつかの実施形態では、前記微生物は、Corynebacterium glutamicum、Corynebacterium efficiens、Corynebacterium lilium、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、Corynebacterium pseudotuberculosis、およびCorynebacterium pyogenesからなる群から選択される。
【0052】
本発明の例示的な態様は、組換え微生物、特に、本明細書に記載とおり、ベクターまたは遺伝子(例えば、野生型および/または突然変異遺伝子)を含む組換え微生物を特徴とする。本明細書において、用語「組換え微生物」とは、その由来となる天然に存在する微生物と比べて、改変された、変更された、または異なる遺伝子型および/または表現型を示すように、遺伝学的に改変、変更、または操作されている(例えば、遺伝子操作されている)微生物(例えば、細菌、酵母細胞、菌類細胞など)(例えば、遺伝子変更が微生物のコード核酸配列に影響を及ぼす場合)を含む。本明細書に記載の遺伝子改変は、例えば、DNA配列のin vitro操作により、または交配、形質導入、形質転換などの古典的な遺伝子法により行うことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記微生物はグラム陰性(塩基性色素を排除する)生物である。他の実施形態では、前記微生物は、サルモネラ属(Salmonella)、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラチア属(Serratia)、およびプロテウス属(Proteus)からなる群から選択される属に属する微生物である。さらに他の実施形態では、前記微生物はエシェリキア属に属する、例えば、大腸菌。いくつかの実施形態では、前記微生物はサッカロミセス属(Saccharomyces)に属する(例えば、S. セレビシエ)。
【0054】
ある特定の実施形態では、組換え微生物は、少なくとも1つの変性メチオニン生合成酵素が発現または過剰発現されるように変更または操作される。用語「過剰発現される」および「過剰発現」とは、構成的な、あるいは微生物の変更または操作前に、または操作されていない比較微生物で、発現されるよりも高いレベルでの、遺伝子産物(例えば、生合成酵素)の発現を含む。いくつかの実施形態では、前記微生物は、操作されていない比較微生物で発現されるよりも高い遺伝子産物レベルを過剰発現するように遺伝子的に設計または操作することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、微生物は、微生物の操作前に、または操作されていない比較微生物で発現されるよりも高い遺伝子産物レベルを過剰発現するように、物理的にまたは環境的に操作することができる。例えば、微生物は、転写および/または翻訳が増強または増加されるように、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を増加させるとして知られているまたは考えられている薬剤で処理することができるし、またはそのような薬剤の存在下で培養することができる。あるいは、微生物は、転写および/または翻訳が増強または増加されるように、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を増加させるように選択された温度で培養することができる。
【0056】
遺伝子工学としては、限定されるものではないが、特定の遺伝子の発現に関連する調節配列もしくは部位を(例えば、強力なプロモーター、構成的プロモーター、誘導プロモーター、もしくは多重プロモーターを付加することにより、または発現が構成的であるように、調節配列を除去することにより)改変もしくは変更すること、特定の遺伝子の染色体上の位置を変更すること、特定の遺伝子に隣接した核酸配列(リボソーム結合部位など)を改変すること、特定の遺伝子のコピー数を増加させること、特定の遺伝子の転写および/もしくは特定の遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子など)を変更すること、または当技術分野ではルーチンの、特定の遺伝子の発現を調節解除するいずれの他の従来の手段(限定されるものではないが、例えば、リプレッサーまたは生合成タンパク質の発現をブロックするための、アンチセンス核酸分子の使用、および/または遺伝的変異性を高め、例えば、適応変異を加速するミューテーター対立遺伝子、例えば、細菌対立遺伝子の使用など)も含まれ得る。遺伝子工学には、例えば、経路を遮断するため、またはリプレッサーを除去するための、遺伝子の欠失も含まれ得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、本発明の微生物は「キャンベルイン(Campbell in)」または「キャンベルアウト(Campbell out)」微生物(または細胞もしくは形質転換体)である。本明細書において、表現「キャンベルイン」形質転換体とは、完全環状二本鎖DNA分子(例えば、プラスミド)が単一相同組換え事象(クロスイン(cross in)事象)により細胞の染色体に組み込まれている、該環状DNA分子の第1DNA配列と相同である染色体の第1DNA配列への、該環状DNA分子の線形バージョンの挿入を効果的にもたらす、原形(original)宿主細胞の形質転換体を意味するものとする。表現「キャンベルインされた」とは、「キャンベルイン」形質転換体の染色体に組み込まれている線形DNA配列を指す。「キャンベルイン」形質転換体は、第1相同DNA配列の重複を含み、それは相同組換え交差点を含み、それを包囲している。
【0058】
「キャンベルアウト」とは、第2相同組換え事象(クロスアウト(cross out)事象)が、「キャンベルインされた」DNAの挿入された線形DNAに含まれる第2DNA配列と、該線形インサートの該第2DNA配列と相同である、染色体起源の第2DNA配列との間に起こった「キャンベルイン」形質転換体に由来する細胞を指し、該第2組換え事象は、組み込まれたDNA配列の一部の欠失(廃棄)をもたらすが、重要なことには、原形宿主細胞と比べて、「キャンベルアウト」細胞が染色体において1以上の意図的変化(例えば、一塩基置換、多塩基置換、異種遺伝子もしくはDNA配列の挿入、相同遺伝子もしくは改変相同遺伝子の1または複数のさらなるコピーの挿入、またはこれらの前記例の2以上を含むDNA配列の挿入)を含むように、染色体に、該組み込まれたDNA配列の一部(これはわずか単一の塩基であり得る)を残しもする。
【0059】
「キャンベルアウト」細胞または菌株は、必ずではないが、通常、「キャンベルインされた」DNA配列の一部(廃棄することが望まれる部分)に含まれる遺伝子(例えば、約5%〜10%スクロースの存在下で増殖させている細胞で発現させると死をもたらす枯草菌sacB遺伝子)に対する対抗選択により得られる。対抗選択を用いても用いなくとも、所望の「キャンベルアウト」細胞は、任意のスクリーニング可能な表現型、例えば、限定されるものではないが、コロニーの形態、コロニーの色、抗生物質耐性の有無、ポリメラーゼ連鎖反応による特定のDNA配列の有無、栄養要求性の有無、酵素の有無、コロニーの核酸ハイブリダイゼーションなどを用いる、所望の細胞についてのスクリーニングにより得ることができ、または同定することができる。
【0060】
「キャンベルイン」または「キャンベルアウト」をもたらす相同組換え事象は、相同DNA配列内のDNA塩基の範囲にわたって起こる可能性があり、該相同配列はこの範囲の少なくとも一部では互いに同一であると思われることから、通常、乗り換え(cross over)事象が起こった場所を厳密に特定することはできない。言い換えれば、どの配列がもともと、挿入されたDNAのものであって、どれがもともと、染色体DNAのものであったかは正確に特定することはできない。さらに、第1相同DNA配列と第2相同DNA配列は、通常、部分的非相同性の領域により分離され、この非相同性領域は「キャンベルアウト」細胞の染色体に付着したままである。
【0061】
実際的には、C. glutamicumにおいて、典型的な第1および第2相同DNA配列は少なくとも約200塩基対長であり、最大数千塩基対長であり得るが、より短いまたはより長い配列を用いて進めることもできる。第1および第2相同配列の好ましい長さは約500〜2000塩基であり、「キャンベルイン」からの「キャンベルアウト」の獲得は、第1および第2相同配列がほぼ同じ長さであるように、好ましくは、差が200塩基対未満であるように、最も好ましくは、塩基対において2つの配列のうちの短い方が長い方の長さの少なくとも70% であるように、計画することによって容易になる。
【0062】
III. MetI遺伝子およびその相同体
枯草菌では、metIおよびmetC遺伝子は、最近解明されたmetICオペロンに位置している(Augerら,(2002) Microbiology 148:507-518)。以前は、枯草菌metI遺伝子はyjcIと呼ばれ、metCはyjcJと呼ばれていた。枯草菌におけるmetICオペロンからの転写は、硫黄源により調節される。システインまたは硫酸塩が唯一の硫黄源であるときには転写は高度であり、一方、唯一の硫黄源がメチオニンであるときにはその転写は低度である。
【0063】
タンパク質配列の相同性比較より、MetIおよびMetC酵素は、シスタチオニンγ-シンターゼ、シスタチオニンβ-リアーゼ、シスタチオニンγ-リアーゼ、およびO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼを含むシスタチオニンγシンターゼタンパク質ファミリーに属する。このファミリーは、共通の補因子であるピリドキサールリン酸の結合に不可欠なリジン残基を含むアミノ酸モチーフ[DQ]-[LIVMF]-X3-[STAGC]-[STAGCI]-T-K-[FYWQ]-[LIVMF]-X-G-[HQ]-[SGNH](配列番号76)により識別される。MetC酵素はシスタチオニンβ-リアーゼ活性を有し、一方、MetIはO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性とシスタチオニンγシンターゼ活性の両方またはO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性とシスタチオニンγシンターゼ活性を有する。
【0064】
本発明は、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性および/またはO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性を有する酵素に関する。本発明はまた、シスタチオンγシンセターゼ活性を有する酵素にも関する。ある特定の実施形態では、本発明は、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性とシスタチオンγシンセターゼ活性の両方を有する酵素を含む。他の実施形態では、本発明は、O-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性を有する酵素を包含する。さらに他の実施形態では、本発明は、O-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性とシスタチオンγシンセターゼ活性の両方を含む。
【0065】
本発明は、枯草菌のMetI酵素との機能的および構造的相同性を有する酵素を包含する。「機能的相同性」とは、例えば、相同酵素が、MetI酵素と実質的に同じ酵素形式で、すなわち、ホモシステインを生産するためのO-アセチルホメセリン(O-acetylhomeserine)の生化学的スルフヒドリル化のメチオニン耐性メディエーターとして、またはホモシステインを生産するためのO-スクシニルホモセリンの生化学的スルフヒドリル化のメチオニン耐性メディエーターとして作用する能力を有するということを意味する。本明細書において用いられる意味において、用語「相同性」および「相同の」とは、理論上共通の遺伝的祖先を有するタンパク質を表すために限定されず、遺伝学的に無関係である可能性があるにもかかわらず、類似の機能を果たし、かつ/または類似の構造を有するように進化したタンパク質を含む。枯草菌のMetI酵素との機能的相同性はまた、システインとO-スクシニルホモセリンからシスタチオニンを生産するか、またはシステインとO-アセチルホモセリンからシスタチオニンを生産するシスタチオンγシンセターゼとして作用するという特徴を有する酵素も包含する。機能的相同性を有するタンパク質の場合、それらのタンパク質がそれらのアミノ酸配列において顕著な同一性を有することが必要なのではなく、むしろ、機能的相同性を有するタンパク質は、類似または同一の活性、例えば、酵素活性を有することによってそのように定義される。同様に、構造的相同性を有するタンパク質は、一次(配列)または類似の二次、三次(または四次)構造を有するものと定義され、核酸またはアミノ酸同一性は必ずしも必要ではない。ある特定の状況において、構造的相同体は、タンパク質の活性部位または基質結合部位においてのみ構造的相同性を維持するタンパク質を含むことができる。
【0066】
構造的および機能的相同性に加えて、本発明は、枯草菌のMetI酵素と少なくとも部分的な核酸またはアミノ酸同一性(amino acid identitiy)を有するタンパク質をさらに包含する。2つのアミノ酸配列または2つの核酸の部分的な同一性パーセントを決定するために、それらの配列を最適に比較できるようにアライメントする(例えば、一方のタンパク質または核酸の配列に、もう一方のタンパク質または核酸と最適にアライメントするために、ギャップを導入することができる)。その後、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。一方の配列におけるある位置に、もう一方の配列におけるその対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドが存在する場合には、それらの分子はその位置において同一である。その2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列が共有する同一位置数の関数である(すなわち、%同一性y=同一位置数/位置の総数×100)。同一性パーセントは、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST(商標))プログラムを用いて2つのヌクレオチド配列をアライメントすることによっても決定することができる。
【0067】
よって、本発明の1つの態様は、枯草菌のMetI酵素と同一であるタンパク質(またはその生物学的に活性な部分)をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子(例えば、cDNA、DNA、またはRNA)に関する。いくつかの実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1に記載される枯草菌metIのヌクレオチド配列、またはその一部と、ハイブリダイズするか、あるいは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、80%、または90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記単離された核酸分子は、タンパク質またはその一部をコードし、該タンパク質またはその一部は、該タンパク質またはその一部がO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼとシスタチオニンγシンターゼまたはO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼとシスタチオニンγシンターゼの活性を示すように、枯草菌MetIのアミノ酸配列と十分に類似したまたは同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記核酸分子によりコードされるタンパク質またはその一部はメチオニンフィードバック阻害に対して耐性であるか、または感受性が低下している。1つの実施形態では、前記核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号2に記載される枯草菌MetIのアミノ酸配列、またはその一部と、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、80%、または90%、最も好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%以上同一である。
【0069】
本発明はまた、改善または変更された特徴を有する酵素を作り出すための、本明細書に記載のタンパク質の遺伝子工学に有用な当技術分野で周知の技術も含む。例えば、タンパク質が増加または低下した基質結合親和性を有するように、タンパク質を改変するためには、当技術分野で利用可能な教示で十分対応できる。また、増加または低下した酵素速度を有するタンパク質を設計することもまた有利であり得、当技術分野における教示で対応できる。特に、多機能酵素の場合、タンパク質の様々な活性を、特定の状況下で最適に機能するように、個別に微調整することも有用であり得る。さらに、フィードバック阻害(例えば、メチオニンによる)に対する酵素の感受性をモジュレートする能力は、負または正のフィードバックに関与する可能性があるメチオニンまたは他の補因子の配位に関わるアミノ酸を選択的に変化させることによって果たし得る。さらに、遺伝子工学には、転写および翻訳の両方のレベルでの発現調節に関連する事象を包含する。例えば、完全または部分的なオペロンをクローニングおよび発現に用いる場合、遺伝子の調節配列、例えば、プロモーター配列またはエンハンサー配列が望ましいレベルの転写を得るように、それらを変更してよい。また、バチルス属がメチオニン生合成経路の下流産物(例えば、S-アデノシルメチオニン)に対して感受性を示す、転写調節配列、例えば、S-ボックスを含むことも証明されている。同様に、これらの核酸モチーフも、望ましい酵素レベル、例えば、MetI発現を実現するように変更してよい。
【0070】
IV. 組換え核酸分子およびベクター
本発明は、さらに、本明細書に記載の遺伝子(例えば、単離された遺伝子)、好ましくはバチルス属遺伝子、より好ましくは枯草菌遺伝子、さらに好ましくは枯草菌メチオニン生合成遺伝子を含む組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)を特徴とする。用語「組換え核酸分子」とは、該組換え核酸分子が(例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換により)誘導された本来のまたは天然の核酸分子とヌクレオチド配列が異なるように、改変、変更、または操作されている核酸分子(例えば、DNA分子)を含む。好ましくは、組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)は、調節配列に機能しうる形で連結された本発明の単離された遺伝子を含む。表現「調節配列に機能しうる形で連結された」とは、目的の遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも一部(通常、タンパク質コード部分±数塩基対、例えば、2塩基対、3塩基対、4塩基対、またはそれより多い)が、該遺伝子の発現(例えば、強化された発現、増加された発現、構成的発現、基本的発現、減弱された発現、低減された発現、または抑制された発現)、好ましくは該遺伝子によりコードされる遺伝子産物の発現(例えば、本明細書において定義されるとおりに、組換え核酸分子を組換えベクターに含め、それを微生物に導入する場合)を可能にする方法で調節配列に連結されるということを意味する。用語「異種核酸」とは、本明細書において、標的生物に一般には存在しない核酸配列を指すために用いられる。それらの核酸配列は、標的生物の野生型株には存在するが、目的の標的生物の特定の遺伝領域には通常見られない核酸配列も含み得る。同様に、用語「異種遺伝子」とは、標的生物の野生型株には存在しない遺伝子または遺伝子の配列を指す。異種核酸および異種遺伝子は、一般に、組換え核酸分子を含む。異種核酸または異種遺伝子は、(例えば、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換による)変更を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0071】
用語「調節配列」とは、他の核酸配列(すなわち、遺伝子)の発現に影響を及ぼす(例えば、モジュレートまたは調節する)核酸配列を含む。1つの実施形態では、調節配列は、該調節配列および目的遺伝子で観察されるように、自然界で、例えば、本来の位置および/または配向で見られるとおりに、特定の目的遺伝子に対して類似もしくは同一の位置および/または配向で組換え核酸分子に含まれる。例えば、目的遺伝子は、天然生物において該目的の遺伝子に付随または隣接する調節配列に機能しうる形で連結された(例えば、「本来の」調節配列(例えば、「本来の」プロモーター)に機能しうる形で連結された)組換え核酸分子に含めることができる。また、目的遺伝子を、天然生物の別の(例えば、異なる)遺伝子に付随または隣接する調節配列に機能しうる形で連結された組換え核酸分子に含めてもよい。あるいは、目的遺伝子を、異なる、遠縁である可能性しかない生物由来の調節配列に機能しうる形で連結された組換え核酸分子に含めてもよい。例えば、他の微生物由来の調節配列(例えば、他の種由来の細菌調節配列、バクテリオファージ調節配列など)は、特定の目的遺伝子に機能しうる形で連結することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、調節配列は、非本来のまたは非天然の配列(例えば、改変、突然変異、置換、誘導体化、または欠失されている配列(化学合成された配列を含む))である。典型的な調節配列は、プロモーター、エンハンサー、終結シグナル、抗終結シグナル、および他の発現制御エレメント(例えば、RNAポリメラーゼ、リプレッサー、もしくはインデューサーが結合する配列、ならびに/または、例えば、転写されたmRNAにおける配列を含む転写および/もしくは翻訳調節タンパク質の結合部位)を含む。そのような調節配列は、当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F., およびManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。調節配列には、微生物におけるヌクレオチド配列の構成的発現を命令するもの(例えば、構成的プロモーターおよび強力な構成的プロモーター)、微生物におけるヌクレオチド配列の誘導性発現を命令するもの(例えば、誘導プロモーター、例えば、キシロース誘導プロモーター)、および微生物におけるヌクレオチド配列の発現を減弱または抑制するもの(例えば、減弱シグナルまたはリプレッサー 配列)が含まれる。調節配列を除去または欠失させることにより目的遺伝子の発現を調節することも本発明の範囲に含まれる。例えば、目的遺伝子の発現が強化されるように、転写の負の調節に関与する配列を除去することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の組換え核酸分子は、プロモーターまたはプロモーター配列に機能しうる形で連結された少なくとも1つの細菌遺伝子産物(例えば、メチオニン生合成酵素)をコードする核酸配列または遺伝子を含む。本発明の典型的なプロモーターとしては、コリネバクテリウム属プロモーターおよび/またはバクテリオファージプロモーター(例えば、コリネバクテリウム属に感染するバクテリオファージ)が含まれる。1つの実施形態では、プロモーターは、コリネバクテリウム属プロモーター、好ましくは強力なコリネバクテリウム属プロモーター(例えば、コリネバクテリウム属における生化学的ハウスキーピング遺伝子、例えば、比較的高度に発現されるハウスキーピング遺伝子に関連するプロモーター)である。もう1つの実施形態では、プロモーターは、バクテリオファージプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、枯草菌バクテリオファージSP01または大腸菌バクテリオファージλ由来である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、例えば、次の配列:(配列番号3)、および(配列番号4)各々を有するP15またはP497プロモーターから選択される。さらなるプロモーターとしては、コリネバクテリウム属(例えば、Corynebacterium glutamicum)における高レベル発現を促進する、tef(翻訳伸長因子(TEF)プロモーター)、sod(スーパーオキシドジスムターゼ)プロモーター、およびpyc(ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)プロモーター)が含まれる。プロモーター(例えば、グラム陽性微生物に用いる場合)のさらなる例としては、限定されるものではないが、amyおよびSPOl プロモーターが含まれる。加えて、グラム陰性微生物とグラム陽性微生物の両方に用いる場合には、限定されるものではないが、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIQ、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PR、またはλ-PLを含むプロモーターを用いることができる。
【0074】
もう1つの実施形態では、本発明の組換え核酸分子は、1つのターミネーター配列または複数のターミネーター配列(例えば、転写ターミネーター配列)を含む。用語「ターミネーター配列」とは、mRNAの転写を終結させる働きをする調節配列を含む。ターミネーター配列(またはタンデム転写ターミネーター)は、さらに、mRNAを(例えば、mRNAに構造を加えることにより)、例えば、ヌクレアーゼから、安定させる働きをする。
【0075】
さらにもう1つの実施形態では、本発明の組換え核酸分子は、前記配列を含有するベクターの検出を可能にする配列(すなわち、検出および/または選択マーカー)、例えば、抗生物質耐性配列をコードする、または栄養要求性突然変異を克服する遺伝子、例えば、trpC、薬物マーカー、蛍光マーカー、および/または比色マーカー(例えば、lacZ/β-ガラクトシダーゼ)を含む。
【0076】
さらにもう1つの実施形態では、本発明の組換え核酸分子は、本来の(その野生型遺伝子に関して見られる)または人工もしくはハイブリッドもしくは合成リボソーム結合部位(RBS)、あるいは人工RBSに転写される配列を含む。用語「人工リボソーム結合部位(RBS)」とは、リボソームが(例えば、翻訳を開始するために)結合する、本来のRBS(例えば、天然に存在する遺伝子において見られるRBS)とは少なくとも1つのヌクレオチドが異なっている、mRNA分子内の(例えば、DNA内でコードされる)部位を含む。いくつかの実施形態では、人工RBSとしては、その本来のRBSと約1-2、3-4、5-6、7-8、9-10、11-12、13-15、またはそれ以上のヌクレオチドが異なっている約5-6、7-8、9-10、11-12、13-14、15-16、17-18、19-20、21-22、23-24、25-26、27-28、29-30、またはそれ以上のヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、RBS配列としては、記載され、本発明のベクターに用いられる、RBSI、(配列番号5:tctagaAGGAGGAGAAAACatg)およびRBS 1284(配列番号6:tctagaCCAGGAGGACATACAgtg)が含まれる(表III参照)。
【表3】

【0077】
本発明は、さらに、本明細書に記載の核酸分子(例えば、異種遺伝子、異種核酸配列、または該遺伝子を含む組換え核酸分子)を含むベクター(例えば、組換えベクター)を備えることを特徴とする。用語「組換えベクター」とは、該組換えベクターが、該組換えベクターが誘導された本来のまたは天然の核酸分子に含まれているものよりも、より多い、より少ない、または異なる核酸配列を含むように、改変、変更、または操作されているベクター(例えば、プラスミド、ファージ、ファージミド、ウイルス、コスミド、または他の精製核酸ベクター)を含む。いくつかの実施形態では、前記組換えベクターは、本明細書において定義されるとおり、調節配列、例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、および/または人工リボソーム結合部位(RBS)に機能しうる形で連結された、生合成酵素コード遺伝子、または該遺伝子を含む組換え核酸分子を含む。もう1つの実施形態では、本発明の組換えベクターは、細菌における複製を増強する配列(例えば、複製配列起点)を含む。1つの実施形態では、複製増強配列は大腸菌で機能する。もう1つの実施形態では、複製促進配列はpBR322由来である。
【0078】
さらにもう1つの実施形態では、本発明の組換えベクターは抗生物質耐性配列を含む。用語「抗生物質耐性配列」とは、宿主生物(例えば、コリネバクテリウム属)において抗生物質耐性を促進または付与する配列を含む。1つの実施形態では、前記抗生物質耐性配列は、cat(クロラムフェニコール耐性)配列、tet(テトラサイクリン耐性)配列、erm(エリスロマイシン耐性)配列、neo(ネオマイシン耐性)配列、kan(カナマイシン耐性)配列、amp(β-ラクタム系抗生物質耐性配列)、およびspec(スペクチノマイシン耐性)配列からなる群から選択される。本発明の組換えベクターは、相同組換え配列(例えば、目的の遺伝子の宿主生物染色体への組換えを可能にするように設計された配列)をさらに含み得る。例えば、bioAD、bioB、またはcrtEb配列を、宿主染色体への組換えの相同標的として用いることができる。当業者ならば、遺伝子操作する微生物の選択、所望の遺伝子産物の発現レベルなどの因子に応じて、ベクターの設計を仕立てることができることはさらに分かるであろう。
【0079】
V. カロテノイド生合成およびカロテノイドオペロン
カロテノイド類は、色素形成させるように働き得る修飾ポリイソプレン骨格からなる脂溶性の脂肪族炭化水素の群の一般名であり、1以上の酸素原子も含有している場合もある。カロテノイド類は、一般的なイソプレノイド生合成経路を経て生成し、植物、藻類、一部の菌類、および細菌により合成される。現在、600を超えるカロテノイド類が天然に存在することが分かっている。カロテノイド類は、特有の色を呈することの他に、多様な働きをする。カロテノイド類は、抗酸化性防御、例えば、一重項酸素およびラジカルの影響からの防御を提供することができる。カロテノイド類は、光合成の間、集光機能により吸収放射エネルギーをクロロフィル分子に伝達し、高等植物およびある特定の藻類では過剰のエネルギーをキサントフィルサイクルにより消散させ、励起状態クロロフィルを直接クエンチすることができる。カロテノイド類はまた、紫外光などの有害な放射能からの防御も提供し得る。最近、ある特定の光合成色素-タンパク質複合体の分子接着剤としてのカロテノイド類の構造的役割が明らかになった。β-カロテンおよび構造に関係がある化合物は、哺乳類におけるビタミンA、レチナ(retina)、およびレチノイン酸の前駆体として働き、そのため、栄養作用、視覚、および細胞分化それぞれに重要な役割を果たす。(Krubasik, P. ら, (2001) Eur. J. Biochem. 268:3702-3708; Armstrong G.A., (1994) J. Bacteriol. 176:4795-4802)
多くのカロテノイド類は、いくつかの、通常3〜15個の共役二重結合を有する線状C40炭化水素骨格を含む。しかしながら、ある特定の細菌では、C45およびC50カロテノイド類も生産される。C. glutamicumにおいて生産されるデカプレノキサンチンは、C50カロテノイドの一例である(Krubasik、前記)。一般に、400〜500nm間の光を吸収する所与のカロテノイドのスペクトル特性を主として決定するのは、存在する二重結合の数および配列である。イソプレノイド生合成のカロテノイド分岐に特有の第1段階は、フィトエンを生成するための、C20中間体ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)2分子の尾-尾(tail-to-tail)型縮合である(図6参照)。この非環式炭化水素は、生産される最初のC40カロテノイドであり、全てのC40カロテジェニック生物(carotegenic organisms)に共通している。生物に応じて、フィトエンは、その後、ニューロスポレンまたはリコピンに変換される。カロテジェニック生物における生合成経路は、この中間体のあと分岐し、自然界に存在する様々なカロテノイド類をもたらす。(Armstgrong, G. A. ら (1996) FASEB J. 10, 228-237)
カロテノイド合成は、中間体および最終分子を生成するように協調的に作用するいくつかの酵素の漸進的作用により行われる。例えば、C. glutamicumでは、5つの酵素はカロテノイドのデカプレノキサンチンを生産するように作用する(図6を参照)。カロテノイドオペロンは、いくつかの理由で遺伝子工学技術の魅力ある候補である。ルテイン、アスタキサンチン、リコピン、およびβカロテンなどのような分子の有用性は長い間知られており、栄養添加物または補給物としてのそれらの分子の可能性が高まっていることから、カロテノイド類の生産は産業上重要である。例えば、抗酸化薬および抗癌薬としてのリコピンの使用は近年の研究の対象である。カロテノイドオペロンは、生物のカロテノイド生合成経路における段階に関与する酵素の生産の提供および/または調節に基づいて様々な構造のカロテノイド類を生産するように、容易に操作し得る。さらに、カロテノイドオペロンまたは生物は、所望のカロテノイドの生産に有用な酵素の生産を増加するように操作し得る。
【0080】
加えて、カロテノイドオペロンは、組込みカセットを用いた外因性核酸配列の導入のための手段としても用い得る。かかる組込みカセットはオペロンの内因性配列と相同の核酸配列を含む。この組込みカセットは、組換え事象を通じて、外因性配列を標的生物のカロテノイドオペロンに挿入する。前記核酸配列は、目的のタンパク質をコードし得るか、またはカロテノイドオペロンの機能を例えば、改変、破壊、または増加するために用いられる非コード配列を含み得る。
【0081】
本発明はさらに、コリネバクテリウム属のカロテノイドオペロンに組み込むことができる組換え発現ベクターに関する(図3参照)。カロテノイドオペロンは、カロテノイド類の生産に関与するいくつかの遺伝子および遺伝子調節エレメントを含む遺伝子単位である。特に、本発明者らは、異種核酸または異種遺伝子のカロテノイドオペロンへの導入に有用である組込みカセットを含む発現ベクターを開発した。本発明者らは、カロテノイドオペロンの特定の遺伝子または調節配列が破壊の標的とされ得るように、組込みカセットを設計した。カロテノイドオペロンの特定の遺伝子または調節配列の破壊は、カロテノイド経路のどの段階が破壊または改変されるかによって異なる表現型結果をもたらす。C. glutamicumは通常、デカプレノキサンチンが合成されることから黄色のコロニーを生じる。例えば、経路の初期で遮断すると白色のコロニーがもたらされ、リコピンエロンガーゼ(crtEb遺伝子座でコードされる)で遮断するとピンク色のコロニーがもたらされる。この場合のピンク色はデカプレノキサンチンの代わりにリコピンが蓄積した結果である。最後に、カロテノイドオペロンの推定負のレギュレーターをコードするmarRへ挿入すると、より高いレベルの総カロテノイド類がもたらされ、その結果、より暗いまたはより濃い色のコロニーが生じる。本発明者らは、本明細書においてさらに、リコピンエロンガーゼ(crtEb)遺伝子座とmarR遺伝子座の両方を破壊するとリコピンの大幅な生産増加がもたらされるということを示した。
【0082】
総合すれば、本明細書に記載の発見は、増加したレベルの、メチオニンとリコピンまたは別のカロテノイド化合物の両方を同時に生産する組換え微生物の創出を提供する。これは、2つの産業上重要である化合物の生産増加のために1つの生物を用いるという簡潔さから際立った優位性を与える。カロテノイドは、発酵から残っている細胞塊からさらに精製してまたはそれ以上精製しないで得られ得る。
【0083】
さらに、様々な操作段階に付随する色変化は所望の分子事象を確認する助けになることから、本発明のベクターは、微生物の遺伝子工学を容易にするのに有用である。
【0084】
IV. 組換え微生物の培養および発酵
本発明の微生物は、精密化学物質、例えば、硫黄含有精密化学物質の生産に特に適している。微生物、ならびにかかる微生物を特徴とする発酵プロセスは、好ましくは、精密化学物質、例えば、硫黄含有精密化学物質の生産の改善または強化のために設計される。
【0085】
プロセスの改善は、発酵の技術的側面(例えば、攪拌および酸素供給など)に関する方法、または培地組成(例えば、発酵中の糖濃度など)もしくは産物の(例えば、イオン交換クロマトグラフィーによる)精製に用いられる単離技術による方法に関連し得る。
【0086】
所望の物質、例えば、硫黄含有精密化学物質の生産を改善するための手段は、例えば、遺伝子工学により微生物の生産力価または収率を本質的に改善することを含む。所望の物質(例えば、硫黄含有精密化学物質)の生産量は、目的の物質の生合成に関与する1つの酵素(または複数の酵素)の発現レベルを変更することにより増加し得る。これは、例えば、生合成に重要な酵素の発現の駆動に関与するプロモーター配列またはエンハンサー配列を変更することにより実現し得る。加えて、外来プロモーター配列またはエンハンサー配列を組換えにより導入し、内因性酵素またはタンパク質の好ましいレベルの発現を与えてもよい。場合によっては、挿入された調節配列により標的タンパク質の構成的または誘導性発現が可能になる。増加したレベルの所望の物質の生産はまた、改善された特徴を有するタンパク質を発現する、組換えにより変更された遺伝子を導入することによっても実現し得る。場合によっては、本来のタンパク質をコードする遺伝子を、結果として得られるタンパク質が所望の特徴、例えば、より高い基質親和性またはより速い反応速度を有するように操作する。所望の物質の生産の増加または改善を実現するさらに別の方法は、異種遺伝子を組換えにより導入することによるものである。異種遺伝子の挿入では、非変性酵素を追加するか、または取り替えることにより、生化学的経路の特に望ましい産物の生産をもたらすという利益が得られる。ある特定の状況では、本来の遺伝子の発現をノックアウトし、異種遺伝子を導入し、そうすることで所望の物質の生産を改善させることも有利であり得る。標的微生物に新規な物質の生産がもたらされるように、異種遺伝子を導入してもよい。
【0087】
微生物における所望の物質の生産の改善において特に興味深いのは、標的生物の変更を容易にするための新規遺伝子工学技術の開発である。一般に、異種核酸配列は組換え核酸ベクターを用いて標的生物に挿入される。これらのベクターは、自己複製し、エピソームに存在し得るし、または異種配列が宿主細胞のゲノムに挿入されるように設計もし得る。さらに、ある特定の状況では、特異的に部位を組み込むベクターを設計することが可能であり、かつ有利である。これらのような組込みベクターは2倍の機能を果たし得る。所望の異種遺伝子を挿入し、同時に本来の標的遺伝子配列の機能を除去する。これらのようなベクターをさらに開発することで、硫黄含有精密化学物質のような所望の物質の生産に有用な組換え微生物の創出を容易にするための手段が提供される。
【0088】
用語「培養すること」とは、本発明の生存微生物を維持および/または増殖すること(例えば、培養物または菌株を維持および/または増殖すること)を含む。1つの実施形態では, 本発明の微生物は液体培地で培養される。もう1つの実施形態では、本発明の微生物は固体培地または半固体培地で培養される。いくつかの実施形態では、本発明の微生物は、該微生物の維持および/または増殖に不可欠または有益な栄養源(例えば、炭素源または炭素基質、例えば 炭水化物、炭化水素、油、脂肪、脂肪酸、有機酸、およびアルコール;窒素源、例えば、ペプトン、酵母抽出物、肉エキス、麦芽エキス、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、およびリン酸アンモニウム;リン源、例えば、リン酸、そのナトリウムおよびカリウム塩;微量元素、例えば、マグネシウム、鉄、マンガン、カルシウム、銅、亜鉛、ホウ素、モリブデン、および/またはコバルト塩;ならびに増殖因子(例えば、アミノ酸、ビタミン、増殖促進物質など))を含む培地(例えば、滅菌液体培地)で培養される。
【0089】
好ましくは、本発明の微生物は、制御されたpH下で培養される。用語「制御されたpH」とは、所望の産物(例えば、メチオニンおよび/またはリコピン)の生産をもたらす任意のpHを含む。1つの実施形態では、微生物はpH約7で培養される。もう1つの実施形態では、微生物はpH6.0〜8.5間で培養される。望ましいpHは、当業者に公知の様々な方法により維持し得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明の微生物は、制御された通気下で培養される。用語「制御された通気」とは、所望の産物(例えば、メチオニンおよび/またはリコピン)の生産をもたらすのに十分な通気(例えば、酸素供給)を含む。1つの実施形態では、通気は、培養物中の酸素レベルを調節することにより、例えば、培養培地に溶解する酸素の量を調節することにより、制御される。例えば、いくつかの実施形態では、培養物の通気は、培養物を攪拌することにより少なくとも部分的に制御される。攪拌は、プロペラまたは類似の機械攪拌装置によって、培養容器(例えば、試験管またはフラスコ)を回転または振盪することによりまたは様々なポンピング装置により与え得る。通気は、滅菌空気または酸素を培地に(例えば、発酵混合物に)通すことによってもさらに制御し得る。また、本発明の微生物は、好ましくは、(例えば、消泡剤を添加することにより)過剰に起泡することなく培養される。
【0091】
さらに、本発明の微生物は、制御された温度下で培養することができる。用語「制御された温度」とは、所望の産物(例えば、メチオニンおよび/またはカロテノイド)の生産をもたらす任意の温度を含む。1つの実施形態では、制御された温度は15℃〜95℃間の温度を含む。もう1つの実施形態では、制御された温度は15℃〜70℃間の温度を含む。いくつかの実施形態では、温度は20℃〜55℃間、より好ましくは28℃〜44℃間である。
【0092】
微生物は、液体培地で培養(例えば、維持および/または増殖)することができ、好ましくは、従来の培養方法、例えば、静置培養、試験管培養、振盪培養(例えば、回転振盪培養、振盪フラスコ培養など)、通気スピナー培養、または発酵により、連続的にまたは間欠的にいずれかで培養される。好ましい実施形態では、前記微生物は振盪フラスコで培養される。より好ましい実施形態では、前記微生物は発酵槽で培養される(例えば、発酵法)。本発明の発酵法としては、限定されるものではないが、発酵のバッチ、供給バッチ(fed-batch)、および連続処理または方法が含まれる。表現「バッチ処理」または「バッチ発酵」とは、培地の組成、栄養源、補足添加剤などが発酵開始時に設定され、発酵中には変更を行わない系を指すが、培地の過度の酸性化および/または微生物の死滅を防ぐためにpHおよび酸素濃度のような因子を制御しようと試みてもよい。表現「供給バッチ処理」または「供給バッチ」発酵とは、発酵の進行とともに1つ以上の基質または補給物を添加する(例えば、徐々にまたは連続的に添加する)というさらなる条件のついた、バッチ発酵を指す。表現「連続処理」または「連続発酵」とは、規定の発酵培地が発酵槽に連続的に添加され、好ましくは、所望の産物(例えば、メチオニンおよび/またはカロテノイド)を回収するために、同量の、使用済みまたは「馴化」培地が同時に除去される系を指す。このような処理は様々なものが開発されており、当技術分野で周知である。
【0093】
表現「所望の化合物が生産されるような条件下で培養すること」とは、所望の化合物の生産を得るのに、または生産されている特定の化合物の望ましい収率を得るのに適当または十分な条件(例えば、温度、圧力、pH、期間など)下で微生物を維持および/または増殖することを含む。例えば、培養は、化合物(例えば、メチオニンおよび/またはカロテノイド)の望ましい量を生産するのに十分な時間の間継続される。好ましくは、培養は、化合物の好適な生産量を実質的に達成するのに十分な時間(例えば、メチオニンおよび/またはカロテノイドの好適な濃度を達成するのに十分な時間)の間継続される。1つの実施形態では、培養は約12〜24時間継続される。もう1つの実施形態では、培養は、約24〜36時間、36〜48時間、48〜72時間、72〜96時間、96〜120時間、120〜144時間、または144時間より長い時間の間継続される。さらに他の実施形態では、微生物は、少なくとも約1〜5g/Lまたは5〜10g/Lの化合物が約48時間内に生産されるか、または少なくとも約10〜20g/Lの化合物が約72時間内に生産されるような条件下で培養される。さらにもう1つの実施形態では、微生物は、少なくとも約5〜20g/Lの化合物が約36時間内に生産されるか、少なくとも約20〜30g/Lの化合物が約48時間内に生産されるか、または少なくとも約30〜50または60g/Lの化合物が約72時間内に生産されるような条件下で培養される。
【0094】
本発明の方法は、所望の化合物(例えば、メチオニンおよび/またはカロテノイド)を回収する段階をさらに含み得る。用語、所望の化合物を「回収すること」とは、培養培地または細胞塊から化合物を抽出、採取、単離、または精製することを含む。化合物の回収は、当技術分野で公知の任意の従来の単離または精製方法に従って行うことができ、それらの方法としては、限定されるものではないが、従来の樹脂(例えば、陰イオンもしくは陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂など)を用いた処理、従来の吸着剤を用いた処理(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)、pHの変更、溶媒抽出(例えば、従来の溶媒、例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどを用いる)、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶、pH調整、凍結乾燥などが含まれる。
【0095】
場合によっては、本発明の所望の化合物は、結果として得られた調製物が他の培地成分を実質的に含まない(例えば、培地成分および/または発酵副産物を含まない)ように、「抽出される」、「単離される」、または「精製される」ことも好ましい。言語「他の培地成分を実質的に含まない」とは、所望の化合物の調製物であって、該化合物が、該化合物が生産される培養物の培地成分または発酵副産物から分離されている調製物を含む。1つの実施形態では、前記調製物は、所望の化合物が(乾燥重量で)約80%を上回っており(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約20%未満であり)、より好ましくは、所望の化合物が約90%を上回っており(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約10%未満であり)、さらに好ましくは、所望の化合物が約95%を上回っており(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約5%未満であり)、最も好ましくは、所望の化合物が約98〜99%を上回っている(例えば、他の培地成分または発酵副産物が約1〜2%未満である)。
【0096】
代替実施形態では、例えば、微生物が生物学的に無害(例えば、安全)であるときには、所望の化合物は培養培地または微生物から精製されない。例えば、全培養物(または培養上清)または細胞塊を産物(例えば、粗製産物)の供給源として用いることができる。1つの実施形態では、前記培養物(または培養上清)はそのまま用いられる。もう1つの実施形態では、前記培養物(または培養上清)は濃縮される。さらにもう1つの実施形態では、前記培養物(または培養上清)は乾燥または凍結乾燥される。さらにもう1つの実施形態では、前記細胞塊(前記培養上清からの分離後)は乾燥され、凍結乾燥され、または例えば、飼料添加物としてそのまま用いられる。本発明により得られる産物には、硫黄含有精密化学物質、例えば、メチオニンの他に、発酵培養液の他の成分と細胞塊、例えば、リン酸塩、炭酸塩、残留炭水化物、バイオマス、複合培地成分、カロテノイド類などが含まれ得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明の生産方法は、かなり高い収率での所望の化合物の生産をもたらす。表現「かなり高い収率」とは、比較生産方法で通常のものよりも十分に上昇したまたは優れた、例えば、所望の産物の商業生産(例えば、商業的に実現可能なコストでの産物の生産)に十分なレベルまで上昇した、生産または収率のレベルを含む。1つの実施形態では、本発明は、所望の産物(例えば、メチオニンおよび/またはカロテノイド)が、メチオニンなどの可溶性生成物が2g/Lより高いレベルで、または難溶性生成物(例えば、カロテノイド)が0.1mg/Lより高いレベルで生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む生産方法を備えることを特徴とする。もう1つの実施形態では、本発明は、所望の産物(例えば、メチオニン)が10g/Lより高いレベルで、存在する場合には、カロテノイド化合物が1mg/L以上のレベルで生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む生産方法を備えることを特徴とする。もう1つの実施形態では、本発明は、所望の産物(メチオニン)が20g/Lより高いレベルで生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む生産方法を備えることを特徴とする。さらにもう1つの実施形態では、本発明は、所望の産物(メチオニン)が30g/Lより高いレベルで生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む生産方法を備えることを特徴とする。さらにもう1つの実施形態では、本発明は、所望の産物(例えば、メチオニン)が40g/Lより高いレベルで生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む生産方法を備えることを特徴とする。さらにもう1つの実施形態では、本発明は、所望の産物(例えば、メチオニン)が50g/Lより高いレベルで生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む生産方法を備えることを特徴とする。さらにもう1つの実施形態では、本発明は、所望の産物(例えば、メチオニン)が60g/Lより高いレベルで生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む生産方法を備えることを特徴とする。本発明は、さらに、十分に上昇したレベルの化合物が商業的に望ましい期間内に生産されるような条件下で、組換え微生物を培養することを含む、所望の化合物を生産するための生産方法を備えることを特徴とする。
【0098】
生合成酵素または操作された生合成酵素の組合せに応じて、所望の化合物または複数の化合物が生産されるように、本発明の微生物に少なくとも1つの生合成前駆体を提供する(例えば、供給する)ことが望ましい場合があり、または必要である場合がある。用語「生合成前駆体」および「前駆体」とは、微生物の培養培地に供給する、微生物の培養培地と接触させる、または微生物の培養培地中に含めると、所望の産物の生合成を促進または増加する働きをする薬剤または化合物を含む。
【0099】
本発明のもう1つの態様は、本明細書に記載の組換え微生物を特徴とする生体内変換プロセスを含む。用語「生体内変換プロセス」とは、本明細書において「生物変換プロセス」とも呼ばれ、適当な基質および/または中間化合物の所望の産物(例えば、メチオニンおよび/またはカロテノイド)への生産(例えば、形質転換または変換)をもたらす生体内プロセスを含む。
【0100】
生体内変換反応に用いられる微生物および/または酵素は、それらが、それらの対象とする機能(例えば、所望の化合物の生産)を果たすことを可能にする形態で存在する。前記微生物は、全細胞であってよく、または望ましい最終結果を得るのに必要な細胞の一部のみであってもよい。前記微生物は、懸濁(例えば、緩衝液または培地などの適当な溶液中へ)、洗い流し(例えば、微生物を培養する培地の洗い流し)、アセトン乾燥、固定化(例えば、ポリアクリルアミドゲルまたはκ-カラギーナンを用いる、または合成支持体、例えば、ビーズ、マトリックスなどの上へ)、定着、架橋、または易透化(permeablized)(例えば、膜および/または壁を易透化した結果として、化合物、例えば、基質、中間体、または産物が該膜または壁をより容易に通過できるようになる)することができる。
【0101】
本発明を次の実施例によりさらに説明するが、その実施例を限定と解釈してはならない。本願を通じて引用された全ての参照文献、特許、および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に組み入れる。
【実施例】
【0102】
実施例1. 枯草菌metI遺伝子のC. glutamicum株への組込み
ポリメラーゼ連鎖反応により枯草菌metI遺伝子のクローンを得、様々なC. glutamicumメチオニン生産株で発現させた。PCRによりmetIを増幅した後、4つの異なるプラスミドを、crtEb遺伝子座への組込み後にmetIを構成的に発現するように構築した(実施例3参照)。2つのプロモーター、P497およびP15を2つのリボソーム結合部位、RBS1およびRBS 1284と組み合せて、表2に記載される4つの組合せを得た。このセットの1つの代表的なプラスミド、pOM284を図3に示す。プラスミドは全て、大腸菌metB突然変異体を補完(相補)した。
【0103】
4つ全てのプラスミドをOM99に形質転換した(2005年7月18日出願の同時係属特許出願第60/700,699号「Methionine Producing Recombinant Microorganisms」に記載されている)。それぞれのキャンベルイン株の4つの分離株を、糖蜜ベースの培地を用いた振盪フラスコでのメチオニン生産についてアッセイした(表IV)。4つ全てのプラスミドでメチオニン生産の増加がもたらされる。最大の改善は、P15およびRBS1から発現されるmetIを含有するpOM284によって生じた。この場合、メチオニン生産は約1.6g/lから約2.2g/lまで、すなわち、約37%増加した。この増加は、MetY様活性、MetB様活性の比活性の増加、またはフィードバック耐性、あるいはこれらのいくつかの組合せのいずれかに起因すると解釈された。大腸菌metB-含有pOM284の粗抽出物でのO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ酵素アッセイでは、MetIは、実際には、10mMまでの濃度で、メチオニンによる阻害に耐性を示すということが示された(実施例2参照)。
【表4】

【0104】
pOM284で形質転換したOM99派生株をキャンベルアウトして、新規株を得、この新規株をOM134Cと名付けた。振盪フラスコにおいて、OM134Cのメチオニン生産は、OM99と比べて40%増加を得、この増加はキャンベルイン中間体、OM99/pOM284のものと同様であった(表V)。OM134CのO-アセチル-ホモセリン力価は約1.2g/lから約0.3g/lまで低下し、この低下は、より活性なO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼおよび/またはより活性なシスタチオニンシンターゼが存在することと一致する。
【表5】

【0105】
本発明の菌株の構築に有用な様々なプロモーターの配列を、配列番号16(プロモーター P1284);配列番号17(プロモーター P3119);配列番号18(プロモーター ファージλ PR);および配列番号19(プロモーター ファージλ PL)に記載している。加えて、枯草菌metIタンパク質のアミノ酸配列を、最も近い既知配列の検索に用いた。図7A〜Cは、枯草菌MetIタンパク質(配列番号2)と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる、配列同一性により最も近い50の配列(配列番号26〜75)との多重配列アライメントを示す。
【0106】
実施例2. Corynebacterium glutamicum由来のMetYおよび枯草菌由来のMetIのO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ酵素活性のメチオニン濃度の関数としての測定
大腸菌-C.glutamicumプラスミドシャトルベクター pOM284(配列番号12)でコードされるmetI遺伝子、および大腸菌-C.glutamicumプラスミドシャトルベクター pH357(配列番号15)でコードされるmetY遺伝子を、標準的な形質転換技術により、the Coli Genetic Stock Center (Yale University、USA)のmetB欠損大腸菌株 CGSC4896に形質転換し、それらを25mg/lカナマイシンを加えたLBで増殖させることにより選択した。The pOM284を含む形質転換大腸菌株はメチオニンを含まない最少グルコース培地で増殖し、それによりMetIが基質としてO-スクシニルホモセリンを利用することができるということが示された。
【0107】
metIまたはmetY遺伝子を保有する大腸菌株を、25mg/lカナマイシンを含有する液体LB培地で増殖させた。細胞を採取し、Ribolyzerプロトコールおよび機械(Hybaid, UK)を用いてペレットから細胞溶解物を得た。細胞抽出物を遠心分離して、サイトゾルタンパク質の可溶性上清画分を得た。細胞抽出物のO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ活性を決定する方法は、本質的には、Yamagata, Methods in Enzymology, 1987, 第143巻 pp 479-480に記載のとおり行った。細胞抽出物を、5mM O-アセチル-ホモセリンおよび200μMピリドキサールリン酸を含有する100mM KH2PO4のバッファー(pH7.2)に添加した。酵素活性に対するメチオニンの影響の解析のために、L-メチオニンを指示された最終mM濃度まで添加した。亜硫酸Na溶液を終濃度4mMまで添加することにより反応を開始した。30℃で15分のインキュベーションの後、反応を終わらせ、1/10容量の30%トリクロロ酢酸を添加することにより酸性化した。沈殿したタンパク質を除去するために遠心分離した(13,000rpmで5分)後、Speed-Vacエバポレーターにより減少気圧下でのインキュベーションを行って、残留H2Sを枯渇させた。Yamagata 前掲に記載のとおり、スルフィド枯渇溶液をシアン化物およびニトロプルシドと反応させた。520nmでの吸収を測定し、バックグラウンドを補正した。
【0108】
メチオニンの存在下での酵素活性は、添加されるメチオニンの不在下での活性(1に設定)と比べた相対値として表される(図2参照)。プラスミドDNAを添加しない大腸菌株 CGSC4896は、測定可能な酵素的O-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ活性を示さなかった。
【0109】
枯草菌MetI酵素のO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ活性は、少なくとも10mMまでの濃度のメチオニンでは、メチオニンによる阻害に耐性を示し、一方、C. glutamicum MetY酵素のO-アセチル-ホモセリンスルフヒドリラーゼ活性は、2.5〜10mMの範囲で、メチオニンにより阻害され、約5mMでは50%阻害されるということは、図2に示される結果から明らかである。5mMは、メチオニンを過剰生産するように操作された細胞の細胞質に存在する可能性が高いメチオニンの濃度である。
【0110】
実施例3. MetI酵素のin vivoでのO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼおよびO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性の改善
枯草菌由来のMetIは、上記の実施例1および2に示したように、in vitro酵素アッセイではO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性を有するが、MetIのin vivo活性は、トランススルフレーション経路のない大腸菌またはC. glutamicum株の増殖を支援するのには不十分であった。
【0111】
プラスミド pOM150(配列番号20)は、pH357(配列番号15)のP497metYカセットをpOM284(配列番号12)のP15metIカセットで置き換えることにより構築した。
【0112】
大腸菌株 MW001(metB, metC162::Tn10)は、大腸菌株 CGSC 7435由来のmetC162::Tn10対立遺伝子をCGSC 4896(metB)にP1 vir形質導入し、テトラサイクリン耐性について選択することにより構築した。MW001は、メチオニン合成のためのトランススルフレーション経路も直接スルフヒドリル化経路ももたない。
【0113】
C. glutamicum株 OM175は、OM99由来のmetB、metC、およびmetYの部分を欠失させ、プラスミド pH216 (配列番号21)、pOM115(配列番号22)、およびpH215(配列番号23)それぞれの連続したキャンベルインおよびキャンベルアウトを用いることにより構築した。OM175は、メチオニン合成のためのトランススルフレーション経路も直接スルフヒドリル化経路ももたない。
【0114】
MW001およびOM175をそれぞれ、pOM150で形質転換し、25mg/lでのカナマイシン耐性について選択した。参照により本明細書に組み入れる2005年7月18日出願の米国仮特許出願第60/700,557号に記載されているように、これらの形質転換体をメチオニン不含有培地を入れたペトリプレートにストリークした。MetIのin vitroスルフイドリル化活性(sulfydrylation activity)によりこれらの形質転換体にMetIによる直接スルフヒドリル化経路が付与されているということが示唆されたにもかかわらず、どちらの形質転換体もメチオニン不含有培地では増殖しなかった。
【0115】
MetIのin vivo 直接スルフヒドリル化活性を高めるため、MW001/pOM150株に対して、紫外線突然変異誘発とメチオニン不含有プレートでの増殖についての選択を行った。十分に増殖した突然変異株を単離した。いくつかの独立した突然変異体からプラスミドDNAを単離し、その精製プラスミドDNAを純粋な(naieve)MW001およびOM175に再形質転換した。いくつかの異なる突然変異体から単離されたプラスミドは、メチオニン不含有培地で増殖させた両方の種(MW001およびOM175)において形質転換体を与え、それらのプラスミドのMW001形質転換体は原形(original)突然変異分離株と同じ速度で増殖し、増殖を与えた突然変異はプラスミドにより媒介されたということが示された。
【0116】
2つの新規突然変異プラスミドはそれぞれ、pOM150*-2およびpOM150*-14と名付けられた。両方のプラスミドのmetI領域のDNA配列を決定し、いずれも、MetIのアミノ酸位置308(ATG開始コドンをアミノ酸番号1とみなす)のセリンコドン(AGC)がアスパラギンコドン(AAC)に変わる、同じ単一塩基突然変異を有していた。注目すべきは、直接スルフヒドリル化活性を有するMetYが対応アミノ酸位置にアスパラギンを含み、結果として、pOM150*プラスミドで同定された突然変異がMetI配列をよりMetYに近づけたことである。
【0117】
pOM148*-1と名付けられたプラスミド(配列番号24)は、pOM150*-14の類縁であり、pOM150*-14と同じP15metI(S308N)カセットを含むがmetX遺伝子は含まない。MW001で単離されたpOM150*-2とは異なり、pOM148*-1は、紫外線突然変異誘発し、メチオニン不含有プレートで選択し、プラスミドを単離し、純粋なOM175およびMW001に形質転換した後に、OM175で最初に単離された。大腸菌株 MW001/pOM148*-1は、恐らくO-スクシニルホモセリンを生産するが、O-アセチルホモセリンを生産しないと思われるが、それでもメチオニン不含有培地で十分に増殖する。
【0118】
全てを総合すれば、これらの結果より、新規突然変異型MetI(S308N)は、C. glutamicumと大腸菌の両方においてin vivoで増加したO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼおよびO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ活性を有し、メチオニン生合成を増強するのに有用であるという結論に至った。
【0119】
実施例4. C. glutamicumのカロテノイド生合成オペロンに遺伝子発現カセットを組み込むためのベクターの開発
C. glutamicumコロニーは、一般に、最少または富栄養プレートで48時間後に黄色に変わる。この黄色は、C50カロテノイドであるデカプレノキサンチンの蓄積によるものであると報告されている(Krubasik ら, 2001, Eur. J. Biochem. 268:3702-8)。イソプレノイド前駆体からのデカプレノキサンチンの生合成を触媒する酵素は単一オペロンによりコードされ、その単一オペロンはトランスポゾン突然変異誘発、クローニング、および配列決定により特徴付けられた(Krubasik ら、前記)。我々は、このオペロン(図4)はC. glutamicumでは必要ないことから、遺伝子発現カセットの挿入に便宜で潜在的に有用な遺伝子座であろうと予測した。特に、オペロンの特定の場所への挿入はカロテノイド経路を変更し、それにより次にはコロニーの色変化を起こすと思われる。例えば、経路の初期で遮断すると白色のコロニーがもたらされ、リコピンエロンガーゼで遮断するとデカプレノキサンチンの代わりにリコピンの蓄積が起こり、それによりコロニーは黄色ではなくピンク色となるであろう。最後に、カロテノイドオペロンの負の推定レギュレーターをコードするmarRへ挿入すると、より高いレベルのカロテノイド類がもたらされ、それによりコロニーはより暗いまたはより濃い色となるであろう。
【0120】
crtEb(リコピンエロンガーゼ)またはmarR(負のレギュレーター)のいずれかにカセットを組み込むために、2セットの組込みベクターを設計した。各セットの一方のメンバーはP497-lacZ発現モジュールを含み、もう一方のメンバーはP15-lacZ発現モジュールを含んだ。これらのベクターの1代表物、pOM246(crtEbにP15-lacZ)を図5に示している(配列番号14)。4ベクターのセットを表VIに要約している。CrtEbにカセットを組み込むとピンク色のコロニーが生じ、それにより所望のインサートを保持する「キャンベルアウト体」のピックがより効率的になる。
【0121】
marRのインサートは、親よりも濃い黄色を呈するコロニーをもたらした。marRへの挿入とcrtEbへの挿入を組み合わせるとリコピン生産の増加がもたらされる。
【0122】
実施例5. 非カロテノイド化合物とカロテノイド化合物の同時生産
本明細書において記述したとおり、本明細書に記載のプラスミドおよび菌株は、菌株の構築に有用であることに加えて、アミノ酸または商業的に興味深い他の非カロテノイド化合物と、カロテノイド化合物とを同時生産することにより発酵プロセスの商業的価値を高めるための方法に用いることができる。そのため、例えば、株OM134C(実施例1参照)はメチオニンとリコピンの両方を生産する。メチオニンは液体培養の培地に分泌されるが、一方、リコピンは細胞塊と結合して残る。遠心分離すると、細胞はピンク色のペレットとなり、その中に含まれるリコピンは、例えば、細胞をメタノール:クロロホルム(容量で1:1)の混合物中に懸濁することにより抽出することができる。一部の用途では、例えば、サケ飼料用のアスタキサンチンの場合、細胞塊を固体または粉末に簡単に乾燥させ、それを飼料と混合して、カロテノイド、タンパク質、およびビタミンの供給源を提供することができる。
【0123】
よって、カロテノイド類(例えば、限定されるものではないが、リコピン、アスタキサンチン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、デカプレノキサンチン、およびビキシンなど)は、第1産物がアミノ酸もしくは他の非カロテノイド化合物であるというC. glutamicumまたは他の発酵の使用済み細胞塊から得ることができ、そうすることで、カロテノイド生産だけに費やされる発酵のコストが節減される。本明細書に記載の挿入はカロテノイドレベルの増加をもたらし、それによりカロテノイドは、副産物として採取するのに経済的に魅力のあるものとなる。リコピンおよびデカプレノキサンチン以外のカロテノイド類もまた、当技術分野で周知の技術を用いた、当技術分野で周知の起源の適当な生合成遺伝子の導入により生産することができ、例えば、アスタキサンチンおよびβ-カロテン生合成のための遺伝子は、Phaffia rhodozymaまたはXanthophyllomyces dendrorhous(Verdoesら (2003) Appl. Env. Microbiol. 69:3728-3738から、あるいはErwinia uredovoraおよびAgrobacterium aurantiacum(Miuraら (1998) Appl. Env. Microbiol. 64:1226-1229)からPCRにより得ることができる。リコピンをβ-カロテン、アスタキサンチンなどへ変換するのに必要な遺伝子は、上記起源または他の適当な起源から得ることができ、metIについて本明細書に記載したとおりC. glutamicumにおいて単独に、またはオペロンとして、もしくはオペロンの一部として発現される。
【0124】
理論にとらわれるものではないが、本明細書に記載の方法は、メチオニン以外のアミノ酸、またはアミノ酸以外の化合物、またはデカプレノキサンチンおよびリコピン以外の非カロテノイド化合物およびカロテノイド類の生産、およびC. glutamicumに加えての他の生物の使用にまで拡大することができるということが企図とされる。加えて、本発明に包含される方法は、単一発酵反応でのアミノ酸または他の非カロテノイド化合物とカロテノイド化合物との同時生産に用いることができる。他のアミノ酸の例としては、限定されるものではないが、リジン、グルタミン酸、トレオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、ホモセリン、ホモシステイン、ならびにそれらの塩が含まれる。他のカロテノイド類の例としては、限定されるものではないが、β-カロテン、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、およびビキシンが含まれる。アミノ酸を過剰生産するように操作することができるいずれの生物も、カロテノイドを同時生産するように操作することができる。一般に、アミノ酸の力価はカロテノイドの力価よりも高く、カロテノイドへの炭素フラックスの量はアミノ酸力価に大きな影響を与えないように十分に少ないであろう。また、場合によっては、カロテノイドが生産生物を酸化的損傷からある程度防御することから、カロテノイドの生産または過剰生産は生産されているアミノ酸の力価を実際に高めるであろう。非カロテノイド化合物とカロテノイド化合物とを同時生産するように操作することができるC. glutamicum以外の生物の例としては、他の属および種の細菌、酵母、糸状菌、古細菌、および植物が含まれる。2つの化合物を商業的に魅力のあるレベルで生産するように生物を操作することができるということが唯一の必要条件である。
【0125】
加えて、カロテノイド(第2化合物)を同時生産することによって発酵の価値を高めることを、目的の第1化合物がアミノ酸以外の化合物であるという生物および発酵にまで拡大することができる。かかる化合物としては、例えば、限定されるものではないが、メタン、水素、乳酸、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、ブタノール、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、イタコン酸、グルコサミン、グリセロール、糖、ビタミン、治療用酵素、研究用および工業用酵素、治療用タンパク質、研究用および工業用タンパク質、ならびに上記化合物のいずれもの様々な塩が含まれる。かかる化合物は発酵により生産することができるということ、およびかかる化合物を商業的に魅力のあるレベルで過剰生産するように、生物を操作、選択、またはスクリーニングすることができるということは当技術分野で周知である。細胞塊と、または細胞破壊後に可溶性材料から分離することができる材料と結合するカロテノイドを同時生産することにより発酵プロセスにさらなる価値を追加することができる。全てではないが多くの場合では、目的の第1化合物は少なくとも0.5g/lまでの水溶性であり、培養上清に分泌され、目的の第2化合物、例えば、カロテノイドは、水に難溶性であり、細胞塊と結合して、あるいは培養物からまたは遠心分離もしくは他の手段(例えば、蒸発、濾過、限外濾過など)により破壊された細胞から濃縮可能な材料と結合して、残るであろう。場合によっては、前記第1化合物は、カロテノイドから容易に分離することができるメタンまたは水素のようなガスであろう。
【0126】
実施例6. カロテノイド類生産のさらなる増加
上記の実施例4で論じたように、カロテノイド生産は、カロテノイド生合成(carotenoid biosythesis)の負のレギュレーターをコードする遺伝子、例えば、C. glutamicumのmarR遺伝子において非機能的対立遺伝子(例えば、挿入、欠失、または点突然変異)を作出することにより増加させることができる。このアプローチはカロテノイド生合成遺伝子またはオペロンの構成的転写をもたらすが、本来のプロモーター(その活性化された状態でも)よりも強力なプロモーターをそのカロテノイド遺伝子またはオペロンの上流に組み込むことによって、カロテノイド合成レベルのさらなる増加を得ることができる。プラスミド pOM163(配列番号25)は、強力な構成的P15プロモーター(配列番号3)を、該プロモーターをC. glutamicumのカロテノイド生合成オペロンと機能的に連結するように、組み込むのに用いることができるプラスミドの一例である。キャンベルインし、キャンベルアウトすることによるpOM163の機能的部分のC. glutamicum株への組込みは、同時に、本来のMarR抑制性crtオペロンプロモーターとmarR遺伝子の一部を除去し、C. glutamicum形質転換体にスペクチノマイシン耐性を与えるP497 specRカセットを組み込む。
【0127】
プラスミド pOM163を株OM469に組み込んで(関連米国特許出願 BGI 180参照)、株OM609Kを得た。糖蜜培地を用いた振盪フラスコでは、参照により本明細書に組み入れる米国仮特許出願第60/714,042号および同第60/700,699号に記載のとおり、OM469およびOM609Kは、それぞれ、1L当たり約2.1gおよび約2.0gのメチオニンと、細胞ペレットをメタノール:クロロホルム(容量で1:1)で抽出した後、それぞれ、細胞の乾燥重量1g当たりおよそ0.6mgおよびおよそ4.3mgのデカプレノキサンチンとを生産した。
【0128】
プラスミド pOM163を株OM182に組み込んだ。この株OM182は、crtEb遺伝子が破壊されているためにデカプレノキサンチンの代わりにリコピンを生産するM2014の派生株である(関連米国仮特許出願第60/714,042号および同第60/700,699号参照)という点において上記OM134Cと類似した株である。結果として得られた株をOM610Kと呼ぶ。糖蜜培地を用いた振盪フラスコでは(米国仮特許出願第60/714,042号および同第60/700,699号に記載のとおり)、OM182およびOM61OKは、それぞれ、1L当たり約1.1gおよび約0.9gのメチオニンと、細胞ペレットをメタノール:クロロホルム(容量で1:1)で抽出した後、それぞれ、細胞の乾燥重量1g当たりおよそ0.3mgおよびおよそ5.7mgのリコピンとを生産した。
【表6】

【0129】
本明細書は、本明細書によって参照により組み入れる、本明細書内に引用された参照文献の教示に照らすことで最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本開示における実施形態を例示するものであり、その範囲を限定するものと解釈してはならない。当業者ならば、多くの他の実施形態が本開示に包含されるということは容易に分かる。引用された全ての刊行物および特許、ならびに本開示中の受託番号またはデータベース参照番号により確認される配列は、参照によりそのまま組み入れる。参照により組み入れる材料が本明細書と矛盾または相反する場合に限り、本明細書はかかる材料よりも優先される。本明細書におけるいかなる参照文献の引用も、かかる参照文献が本開示の先行技術であるということの承認ではない。特に断りのない限り、特許請求の範囲も含め、本明細書において用いられる成分、細胞培養、処理条件などの量を表す全ての数は、あらゆる場合において、「約」という語で修飾されると理解されるべきである。従って、そうではないとの指示がない限り、数値パラメーターは近似値であり、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変えることができる。特に断りのない限り、一連の要素の前に置いている用語「少なくとも」とは、その一連のものに含まれるすべての要素を指すと理解されるべきである。
【0130】
当業者ならば、日常的実験を用いる程度で、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解し、または確認することができるであろう。かかる均等物は特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の微生物において利用されるメチオニン生合成経路の説明図を示す。
【図2】実施例2から得られた実験データをグラフで示したものであり、C. glutamicum MetYと枯草菌MetIのメチオニン阻害に対する相対的感受性を示す。
【図3】metI遺伝子を含むカセットの組込みのためのpOM284プラスミドの模式図である。
【図4】Corynebacterium glutamicumに存在するカロテノイド生合成オペロンの模式図である。
【図5】metI遺伝子を含むカセットの組込みのためのpOM246プラスミドの模式図である。
【図6】C. glutamicumのカロテノイド生合成経路の模式図である。
【図7A−1】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。配列番号26〜37は、枯草菌仮定タンパク質(GENBANK(登録商標)受託番号NP_389069.1)(配列番号26)、Bacillus licheniformis Cys/Met代謝ピリドキサール-リン酸依存性酵素(GENBANK(登録商標)受託番号AAU22849.1)(配列番号27)、Bacillus licheniformisクローン ATCC 14580(GENBANK(登録商標)受託番号YP_090888.1)(配列番号28)、 Geobacillus kaustophilus シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_146719.1)(配列番号29)、Bacillus halodurans シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号BAB05346.1)(配列番号30)、Bacillus cereus(バチルス・セレウス)シスタチオニンβ-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_085587.1)(配列番号31)、バチルス・セレウスシスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00238525.1)(配列番号32)、Bacillus thuringiensis シスタチオニンβ-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_038316.1)(配列番号33)、炭疽菌(Bacillus anthracis)シスタチオニンβ-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_021123.1)(配列番号34)、バチルス・セレウスシスタチオニンβ-リアーゼ ATCC 10987(GENBANK(登録商標)受託番号NP_980629.1)(配列番号35)、セレウス菌シスタチオニンγ-シンターゼ ATCC 14579(GENBANK(登録商標)受託番号NP_833967.1)(配列番号36)、Pasteurella mitocida亜種(GENBANK(登録商標)受託番号NP_245932.1)(配列番号37)のアミノ酸配列に対応する。アライメントは、京都大学化学研究所(the Institute for Chemical Research、Kyoto University)のゲノムネット(the GenomeNet)のCLUSTALWサーバーでClustalW MSAソフトウェアを使用してを作成した。次のパラメーターを用いた。ペアワイズアライメント、K-タプル(ワード)サイズ=1、ウィンドウサイズ=5、ギャップペナルティー=3、トップダイアゴナル数(Number of Top Diagonals)=5、スコアリング法=百分率、マルチプルアライメント、ギャップ開始ペナルティー=10、ギャップ伸長ペナルティー=0.0、重量変化=No、親水性残基=Gly、Pro、Ser、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、およびLys、疎水性ギャップ=Yes;、ならびにスコアリング行列=BLOSUM。
【図7A−2】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。(図7A−1の続き)
【図7A−3】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近いの配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。(図7A−2の続き)
【図7B−1】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。配列番号38〜58は、Hemophilus somnus COGO626 シスタチオインβ-リアーゼ(cystathioine beta-lyase)/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00132603.1)(配列番号38)、Manheimia succiniciproducens MetCタンパク質(GENBANK(登録商標)受託番号YP_088819.1)(配列番号39)、Hemophilus somnus OGO626 シスタチオインβ-リアーゼ(cystathioine beta-lyase)/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00122714.1)(配列番号40)、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号NP_438259.1)(配列番号41)、シスタチオニンγシンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号P44502)(配列番号42)、インフルエンザ菌COGO626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00322320.1)(配列番号43)、インフルエンザ菌COGO626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00157594.2)(配列番号44)、インフルエンザ菌COGO626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00154815.2)(配列番号45)、Bacillus clausii シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_175363.1)(配列番号46)、Actinobacillus pleuropneumoniae COGO626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00134030.2)(配列番号47)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)シスタチオニンβ/γ-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_014300.1)(配列番号48)、リステリア菌シスタチオニンβ/γ-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00234337.1)(配列番号49)、リステリア菌仮説タンパク質lmo1680(GENBANK(登録商標)受託番号NP_465205.1)(配列番号50)、Listeria innocua 仮説タンパク質(hypothetica protein)lin1788(GENBANK(登録商標)受託番号NP_471124.1)(配列番号51)、Clostridium acetobutylicum シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号NP_347010.1)(配列番号52)、Symbiobacterium thermophilium シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_076192.1)(配列番号53)、Lactobacillus plantarum O-スクシニルホモセリン(チオール)-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号NP_786043.1)(配列番号54)、Staphylococcus epidermis トランススルフレーション酵素ファミリータンパク質(GENBANK(登録商標)受託番号YP_187637.1)(配列番号55)、Staphylococcus epidermis ATCC 12228(GENBANK(登録商標)受託番号NP_765934.1)(配列番号56)、Clostridium thermocellum COGO0626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00313823.1)(配列番号57)、Moorella thermoacetica COGO0626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_0030849.1)(配列番号58)のアミノ酸配列に対応する。アライメントは、京都大学化学研究所(the Institute for Chemical Research、Kyoto University)のゲノムネット(the GenomeNet)のCLUSTALWサーバーでClustalW MSAソフトウェアを使用してを作成した。次のパラメーターを用いた:ペアワイズアライメント、K-タプル(ワード)サイズ=1、ウィンドウサイズ=5、ギャップペナルティー=3、トップダイアゴナル数(Number of Top Diagonals)=5、スコアリング法=百分率、マルチプルアライメント、ギャップ開始ペナルティー=10、ギャップ伸長ペナルティー=0.0、重量変化=No、親水性残基=Gly、Pro、Ser、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、およびLys、疎水性ギャップ=Yes;、ならびにスコアリング行列=BLOSUM。
【図7B−2】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。(図7B−1の続き)
【図7B−3】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。(図7B−2の続き)
【図7B−4】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。(図7B−3の続き)
【図7C−1】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。配列番号59〜75は、Streptococcus thermophilus シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号YP_140770.1)(配列番号59)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号NP_358970.1)(配列番号60)、Geobacter sulfurreducens シスタチオニンβ-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号NP_951998.1)(配列番号61)、Geobacter metallireducens COGO0626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00298719.1)(配列番号62)、肺炎連鎖球菌トランススルフレーション酵素ファミリータンパク質(GENBANK(登録商標)受託番号NP_345975.1)(配列番号63)、Streptococcus anginosus シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号BAC41490.1)(配列番号64)、Streptacoccus mutans推定シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号AAN59314.1)(配列番号65)、Bacillus lichenformis シスタチオニンγ-リアーゼ(GENBANK(登録商標)受託番号AAU24359.1)(配列番号66)、Lactococcus lactis シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号NP_268074.1)(配列番号67)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cys/Met代謝PLP依存性酵素(GENBANK(登録商標)受託番号CAG42106.1)(配列番号68)、黄色ブドウ球菌トランススルフレーション酵素ファミリータンパク質(GENBANK(登録商標)受託番号YP_185322.1)(配列番号69)、黄色ブドウ球菌Cys/met代謝PLP依存性酵素(GENBANK(登録商標)受託番号CAG39379.1)(配列番号70)、Helicobacter hepaticus シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号AAP76659.1)(配列番号71)、Enterococcus faecium COGO0626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00285445.1)(配列番号72)、Anabaena variabilis COGO0626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00351535.1)(配列番号73)、Streptococcus suis COGO0626 シスタチオニンβ-リアーゼ/シスタチオニンγ-シンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号ZP_00332320.1)(配列番号74)、およびLactococcus lactis シスタチオニンγシンターゼ(GENBANK(登録商標)受託番号NP_266937.1)(配列番号75)のアミノ酸配列に対応する。アライメントは、京都大学化学研究所(the Institute for Chemical Research、Kyoto University)のゲノムネット(the GenomeNet)のCLUSTALWサーバーでClustalW MSAソフトウェアを使用してを作成した。次のパラメーターを用いた。ペアワイズアライメント、K-タプル(ワード)サイズ=1、ウィンドウサイズ=5、ギャップペナルティー=3、トップダイアゴナル数(Number of Top Diagonals)=5、スコアリング法=百分率、マルチプルアライメント、ギャップ開始ペナルティー=10、ギャップ伸長ペナルティー=0.0、重量変化=No、親水性残基=Gly、Pro、Ser、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、およびLys、疎水性ギャップ=Yes;、ならびにスコアリング行列=BLOSUM。
【図7C−2】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。(図7C−1の続き)
【図7C−3】配列番号2に記載される枯草菌MetIアミノ酸配列と、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースで見つけられる最も近い配列との多重配列アライメント(MSA)を示す。(図7C−2の続き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種metI遺伝子を発現する、組換えメチオニン生産微生物。
【請求項2】
前記metI遺伝子がバチルス属由来である、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記metI遺伝子が枯草菌(Bacillus subtilis)metIである、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
コリネバクテリウム属(Corynebacterium)に属する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項5】
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項6】
MetIの調節解除を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項7】
MetIの調節解除が、天然において前記metI遺伝子と結合していないプロモーターおよび/またはリボソーム結合部位からのmetI遺伝子の構成的発現により実現される、請求項6に記載の微生物。
【請求項8】
異種プロモーター及び、所望により、リボソーム結合部位に機能しうる形で連結されたmetI遺伝子を含む、MetI発現カセット
【請求項9】
前記プロモーターがP15、P497、P1284、P3119、λPR、またはλPLである、請求項8に記載のMetI発現カセット。
【請求項10】
請求項8〜9のいずれか一項に記載のカセットを含むベクター。
【請求項11】
請求項8〜9のいずれか一項に記載のカセットを含む微生物。
【請求項12】
請求項10に記載のベクターを含む微生物。
【請求項13】
メチオニンを生産するための方法であって、メチオニンが生産されるような条件下で、請求項1または7のいずれか一項に記載の微生物を培養することを含む、前記方法。
【請求項14】
前記メチオニンを少なくとも部分的に精製することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
メチオニン生産微生物におけるメチオニン生産能力を増加するための方法であって、 メチオニン生産能力が増加されるように、該微生物において異種MetIを発現させることを含む、前記方法。
【請求項16】
1以上のメチオニン生合成段階がメチオニンフィードバック阻害を受ける微生物におけるメチオニン生産能力を増加するための方法であって、メチオニンフィードバック阻害を軽減するために該微生物において異種MetIを発現させ、それにより、メチオニン生産能力を増加させることを含む、前記方法。
【請求項17】
メチオニン生産能力が、対照微生物と比べて少なくとも20%増加する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
メチオニン生産能力が、対照微生物と比べて少なくとも30%増加する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
メチオニン生産能力が、対照微生物と比べて少なくとも40%増加する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記対照微生物がMetI酵素を含まない、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
Corynebacterium glutamicumのcrtEb遺伝子座(crtEb組込みカセット)に組み込むことができるDNA配列であって、
(a)第1DNA配列、
(b)第2DNA配列、および
(c)該第1DNA配列と該第2DNA配列の間に位置する第3異種DNA配列
を含み、
該第1DNA配列と該第2DNA配列が、各々、C. glutamicumのカロテノイド生合成オペロンの異なる部分と相同であり、かつ該第3DNA配列が、C. glutamicum株のcrtEb遺伝子を、該株の派生株をキャンベルインおよびキャンベルアウトすることによって破壊する能力を有する、前記DNA配列。
【請求項22】
前記異種DNA配列がmetI遺伝子を含む発現カセットを含む、請求項21に記載のDNA配列。
【請求項23】
請求項21〜22のいずれか一項に記載のDNA配列を含むベクター。
【請求項24】
請求項23に記載のベクターまたは前記ベクターの一部を含む微生物。
【請求項25】
リコピンを生産するための方法であって、リコピンが生産されるような条件下で、請求項21に記載の組込みカセットで形質転換された微生物を培養することを含む、前記方法。
【請求項26】
カロテノイド生合成遺伝子座のCorynebacterium glutamicum marR遺伝子に組み込むことができるDNA配列であって、
(a)第1DNA配列、
(b)第2DNA配列、および
(c)該第1DNA配列と該第2DNA配列の間に位置する第3異種DNA配列、ここで、該第1DNA配列と該第2DNA配列は、各々、C. glutamicumのカロテノイド生合成オペロンの異なる部分と相同であり、かつ該DNA配列は、C. glutamicum株のmarR遺伝子を、該株の派生株をキャンベルインおよびキャンベルアウトすることによって破壊する能力を有し、
さらに、所望により、
(d)該第3DNA配列の一部として、該C. glutamicum株のゲノムへの組込み後に、該カロテノイド生合成オペロンが該構成的プロモーターから転写されるように、該カロテノイド生合成オペロンの第1遺伝子に機能的に連結された構成的プロモーター:
を含む、前記DNA配列。
【請求項27】
前記異種DNA配列がmetI遺伝子を含む、請求項26に記載のDNA配列。
【請求項28】
請求項26〜27のいずれか一項に記載のDNA配列を含むベクター。
【請求項29】
請求項28に記載のベクターまたは前記ベクターの一部を含む微生物。
【請求項30】
増加したレベルの所望のカロテノイドを生産するための方法であって、増加したレベルの所望のカロテノイドが生産されるような条件下で、請求項26に記載のDNA配列で形質転換された微生物を培養することを含む、前記方法。
【請求項31】
前記所望のカロテノイドがリコピンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記微生物がCorynebacteriumである、請求項25または30に記載の方法。
【請求項33】
marR組込みカセットおよびcrtEb組込みカセットから選択される組込みカセットを含むベクター。
【請求項34】
請求項33に記載のベクターを含む微生物。
【請求項35】
発酵プロセスにおいて少なくとも2つの化合物を生産するための方法であって、生産される第1化合物がカロテノイドではなく、生産される第2化合物がカロテノイドを含む、前記方法
【請求項36】
前記第1化合物がアミノ酸である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記アミノ酸がメチオニン、リジン、グルタミン酸、トレオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、システイン、ホモセリン、ホモシステイン、およびロイシンからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1化合物が水溶性化合物である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記第1化合物が乳酸、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、ブタノール、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、イタコン酸、グルコサミン、グリセロール、糖、ビタミン、治療用タンパク質、研究用タンパク質、および工業用タンパク質、酵素、治療用酵素、研究用酵素、および工業用タンパク質酵素、ならびにそれらの塩からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1化合物がガスである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記ガスがメタンまたは水素である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
アミノ酸生産発酵プロセスの副産物であるカロテノイド化合物を生産するための方法であって、
増加したレベルの、該アミノ酸と該カロテノイド化合物の両方を生産するように操作された微生物を培養することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記微生物の培養が、前記培養物を少なくとも2つの成分に分離することを含み、その1つは前記アミノ酸が富化され、またその1つは前記カロテノイドが富化される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アミノ酸がメチオニン、リジン、グルタミン酸、トレオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、システイン、ホモセリン、ホモシステイン、およびロイシンから選択される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記カロテノイドが、デカプレノキサンチン、リコピン、β-カロテン、ルテイン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、およびゼアキサンチンから選択される、請求項42記載のいずれかの方法。
【請求項46】
カロテノイドではない第1化合物と、カロテノイド化合物を含む第2化合物とを過剰生産するように操作された、微生物。
【請求項47】
前記第1化合物がアミノ酸である、請求項46に記載の微生物。
【請求項48】
前記第1化合物が、メチオニン、リジン、グルタミン酸、トレオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、システイン、およびロイシンから選択され、かつ前記第2化合物が、デカプレノキサンチン、リコピン、β-カロテン、ルテイン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、およびゼアキサンチンから選択される、請求項46に記載の微生物。
【請求項49】
前記第1化合物が、メタン、水素、乳酸、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、ブタノール、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、イタコン酸、グルコサミン、グリセロール、糖、ビタミン、治療用酵素およびタンパク質、研究用酵素およびタンパク質、工業用酵素およびタンパク質、それらの塩から選択され、かつ前記第2化合物が、デカプレノキサンチン、リコピン、β-カロテン、ルテイン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、およびゼアキサンチンから選択される、請求項46に記載の微生物。
【請求項50】
異種metI遺伝子を含む硫黄含有精密化学物質を生産することができる、組換え微生物。
【請求項51】
硫黄含有精密化学物質を生産するための方法であって、該硫黄含有精密化学物質が生産されるような条件下で、請求項1または請求項7に記載の微生物を培養することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A−1】
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【図7A−2】
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【図7A−3】
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【図7B−1】
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【図7B−2】
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【図7B−3】
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【図7B−4】
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【図7C−1】
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【図7C−2】
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【図7C−3】
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【公表番号】特表2009−501547(P2009−501547A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522855(P2008−522855)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/027617
【国際公開番号】WO2007/011845
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】