説明

微粒子粉末、その製造方法および製造装置

【課題】噴霧乾燥法により、1種以上の無機物又は有機物を含有する溶液もしくは懸濁液(分散液を含む。)から一次粒子の平均粒子径が10μm以下の均質な微粒子粉末をほとんど凝集させることなく効率よく製造することができる微粒子粉末の製造方法、製造装置及びその製造方法により得られる均質な微粒子粉末、特に一次粒子の平均粒子径が10μm以下の均質な微粒子粉末を提供する。
【解決手段】1種以上の無機物又は有機物を含有する溶液もしくは懸濁液を噴霧して微細液滴を生成し、その微細液滴を乾燥および焼成のうち少なくとも一つをすることによって微粒子粉末を製造する方法であって、乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部の温度分布範囲が当該装置部の中心温度の1%以内であることを特徴とする微粒子粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬剤、化学、酪農、食品、電子材料、セラミック及び粉末金属学の工業分野のような広範囲の工業分野にて適用され得る噴霧乾燥(spray drying)法による微粒子粉末の製造方法、製造装置及びその製造方法により得られる均質な微粒子粉末、特に一次粒子の平均粒子径が10μm以下の均質な蛍光体微粒子粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
無機物・有機物を問わず、それらの微粒子は、薬剤、化学、酪農、食品、電子材料、セラミック及び粉末金属学等の工業分野のような広範囲の工業分野で利用されている。
【0003】
例えば、画像表示装置や2次電池、半導体等の材料の製造に際しては、その化学組成、微細構造、粒径等の制御が重要であり、その原料となる微粒子粉末の製造方法については、多くの実用化研究が成されている。
【0004】
この様な微粒子の製造方法には、固相反応法、ゾル−ゲル法、共沈法等様々な方法が有るが、これらの製造方法は一般に生産性は高いものの化学組成、微細構造、粒径等の制御が難しいという問題があった。
【0005】
上記の様な製造方法に対して、微粒子の分散液を噴霧乾燥機で噴霧乾燥することにより、微粒子粉末を製造する方法が知られている。この種の噴霧乾燥法は、濾過、乾燥、粉砕、分級等の工程を省くことができるという利点がある。
【0006】
噴霧乾燥機としては、アトマイザー(噴霧器)として、加圧ノズル(一流体ノズル)、二流体ノズル、回転円盤式(ディスク式)を備えた噴霧乾燥機が使用されている。このような噴霧乾燥機のなかで、二流体ノズルを備えた噴霧乾燥機は、微細な粒子径の微粒子粉末を得るのに適している。
【0007】
しかし、二流体ノズルを備えた噴霧乾燥機を使用し、噴霧液滴の微細化を目的として、噴霧液に対する噴霧用の気体流量の比を大きくしても、乾燥機内において乾燥用気体の逆流が発生し、噴霧液滴や噴霧液滴と乾燥済の粒子との衝突・合一が起こって、目的とする粒子径よりもはるかに大きい粗大粒子(凝集粒子)を生成する例が多く見られる。
【0008】
粗大粒子(凝集粒子)の生成を防ぐために、特開平9−71608号公報には、二流体ノズルを備えた噴霧乾燥機において、乾燥機の上部コーン部の開き角度及び上部コーン部の入り口径と乾燥機直胴部の径との比を調整して、噴霧液滴や乾燥粒子の衝突・合一を防止する方法が開示されている。
【0009】
しかし、この方法によっても、一次粒子(凝集していない単粒子)の平均粒子径が10μm以下の微粒子粉末をほとんど凝集させることなく効率よく製造することは困難である(特許文献1参照。)。
【0010】
また、乾燥筒の上端より高温気流中に試料の溶液または懸濁液を超音波によって霧状に落下させ、瞬間的に乾燥させることによって超微粒子を製造する、所謂、超音波噴霧乾燥法が提案されている(特許文献2参照。)。
【0011】
更に、球状アルミナ粒子の製造方法として、上記と同様に超音波を用いた超微粒子の製造方法が提案されている(特許文献3参照。)。
【0012】
しかし、これらの製造方法は、化学組成、微細構造、粒径等の制御が比較的しやすいものの、合成炉内での滞留時間を十分に長く取れないために、結晶化度が低くなってしまう。その為、噴霧熱分解で処理した後に、後工程として焼成工程を設けること等が行われているが、コストの大幅な上昇や、更には、焼成工程で粒子同士が融着してしまい、所望の品質が得られないという問題点があった。また、工業的な規模で製造しようとすると大きな口径の炉心管を用いなくてはならず、液滴を同伴した気流の炉心管の直径方向の温度分布が、スケールアップに伴って広くなり、均一の合成状況を実現できず安定した特性が得られない問題点を有していた。
【0013】
これまで開発されてきた微粒子の製造方法は、上記のような問題が有り、工業化に結び付けるにはまだ多くの技術的課題を抱えており、生産性と特性を両立した微粒子の製造方法に対する要求は極めて高いものと成っている。
【0014】
また一方、近年、可視光線の波長(380〜770nm)よりも小さいナノオーダ粒径の無機系微粒子材料研究開発やそれらを透明樹脂に配合する有機・無機ナノコンポジット材の研究開発が活発となり、微粒子及びその製造方法の重要性が認識されつつある。
【0015】
例えば、II−VI族の半導体ナノ粒子は、バルク体の結晶構造に比べ、良好な光吸収特性および発光特性を得られることから、近年その研究報告が活発になされている。この半導体ナノ粒子の優れた光学特性は、結晶粒の粒径がナノメートルサイズと小さいため、バンドギャップが増大し、量子サイズ効果が発現すること等に起因すると考えられている。ここで、ナノ粒子とは、1nm〜100nm程度の粒径の結晶粒のことをいい、一般的にナノクリスタルとも呼ばれている。
【0016】
また、蛍光体の分野では、ナノ粒子蛍光体の一例として、沈殿技術を使用することにより製造されるZnSナノ粒子およびドープされたZnS:Mn2+ナノ粒子に関する多くの報告がなされている(例えば、特許文献4、5参照。)。また、共沈を利用した液相反応中にアクリル酸等の有機酸を添加し、ナノ粒子蛍光体を合成することで、発光強度が上昇することなどが報告されている(特許文献6,7参照。)。
【0017】
しかしながら、上記の方法では得られるナノ粒子の凝集を防ぐことが出来ず、ナノ粒子の平均サイズをそろえることが難しいため粗大粒子の形成を招くという問題点があった。
このような粗大粒子は、発光強度が低いことに加え溶液中の発光を散乱してしまうためナノ粒子溶液の発光強度を著しく減少させてしまう。
【特許文献1】特開2002−249512号公報
【特許文献2】特開昭58−34002号公報
【特許文献3】特開平3−33011号公報
【特許文献4】特開2002−322468号公報
【特許文献5】特開2005−239775号公報
【特許文献6】特開平10−310770号公報
【特許文献7】特開2000−104058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明は、上記の問題を解決するもので、その目的とするところは、噴霧乾燥法により、1種以上の無機物又は有機物を含有する溶液もしくは懸濁液(分散液を含む。)から一次粒子の平均粒子径が10μm以下の均質な微粒子粉末をほとんど凝集させることなく効率よく製造することができる微粒子粉末の製造方法、製造装置及びその製造方法により得られる均質な微粒子粉末、特に一次粒子の平均粒子径が10μm以下の均質な微粒子粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
【0020】
1.1種以上の無機物又は有機物を含有する溶液もしくは懸濁液を噴霧して微細液滴を生成し、その微細液滴を乾燥および焼成のうち少なくとも一つをすることによって微粒子粉末を製造する方法であって、乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部の温度分布範囲が当該装置部の中心温度の1%以内であることを特徴とする微粒子粉末の製造方法。
【0021】
2.前記1種以上の無機物又は有機物として1種以上の金属塩を含有する溶液もしくは懸濁液を噴霧して微細液滴を生成し、その微細液滴を乾燥および焼成のうち少なくとも一つをすることによって微粒子粉末を製造する方法であって、乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部の温度分布範囲が当該装置部の中心温度の1%以内であることを特徴とする前記1に記載の微粒子粉末の製造方法。
【0022】
3.前記温度分布範囲が当該装置部の中心温度の0.5%以内であることを特徴とする前記1または2に記載の微粒子粉末の製造方法。
【0023】
4.前記乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部が中空糸状であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法。
【0024】
5.前記乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部が筒状の炉心管を複数本束ねた形態であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法。
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法に用いることを特徴とする製造装置。
7.前記1〜5のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法により製造することを特徴とする蛍光体の微粒子粉末。
【発明の効果】
【0025】
本発明の上記構成により、微粒子の分散液から一次粒子の平均粒子径が10μm以下の均質な微粒子粉末をほとんど凝集させることなく効率よく製造することができる微粒子粉末の製造方法、製造装置及びその製造方法により得られる均質な微粒子粉末、特に一次粒子の平均粒子径が10μm以下の均質な微粒子粉末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の微粒子粉末の製造方法は、1種以上の無機物又は有機物を含有する溶液もしくは懸濁液を噴霧して微細液滴を生成し、その微細液滴を乾燥および焼成のうち少なくとも一つをすることによって微粒子粉末を製造する方法であって、乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部の温度分布範囲が当該装置部の中心温度の1%以内であることを特徴とする。
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
【0028】
図1には、微粒子の製造方法を実施するための製造装置の一例が示されている。図示される様に、この製造装置は原料ホッパー1と原料供給器2と噴霧装置3とガス導入口4と筒状の炉心管5と加熱体6と回収部7とから主に構成されている。この様な製造装置における一連の流れを以下に示す。
【0029】
先ず、原料供給器2から引き出された原料液は、噴霧装置3によってミストとして発生される。噴霧装置3から発生したミストは、ガス導入口4から流された気流に同伴されながら筒状の炉心管内に送り込まれて、乾燥および/または焼成された微粒子が生成される。微粒子は回収部7で回収、補集される。
【0030】
ここで少なくとも炉心管5については複数本束ねた状態となっていることが必須である。好ましい形態としては、原料供給器2と噴霧装置3とガス導入口4と炉心管5と加熱体6がそれぞれ炉心管5の本数と同数あることが好ましい。図1には4対の原料供給器2と噴霧装置3とガス導入口4と炉心管5と加熱体6が表示された装置の一例を示した。
【0031】
本発明において炉心管の管径については特に限定はなく、炉心管の直径方向の温度分布が1%以下に小さくなるならどんな管径でもよいが、加熱体6の一般的な性能から好ましくは直径20cm以下、より好ましくは10cm以下である。
【0032】
本発明において原料液の噴霧に使用する噴霧装置に特に限定はないが、液滴の粒径を微粒化する為に超音波ネプライザーやインクジェット方式が好ましく適用される。
【0033】
本発明において原料の供給量に就いては、原料を多量に流すと乾燥不良や結晶化度低下を起こし易く、一方、原料を少量しか流さない場合には生産性が低下するので、原料の供給は厳密に制御することが必要である。
【0034】
本発明においてミストの乾燥および焼成に使用する加熱体に特に限定はないが、ミストの均一加熱の為には1本の炉心管5に対して1対の加熱体を具備することが好ましい。具体的には、装置の小型化の観点からカンタル線等の加熱体を炉心管に巻きつける方法等がある。
【0035】
本発明において乾燥および焼成温度に特に限定はなく、得たい組成や粒径等に応じて適宜変更することができる。更には、噴霧途中で温度を変更する態様を取ることも特に限定なく使用できる。
【0036】
本発明において微細な液滴の形成時の雰囲気ガスとしては、空気、酸素、窒素、水素、少量の水素を含む窒素や、少量の水素を含むアルゴンなどあらゆるものを使用することできる。
【0037】
本発明において生成させる微粒子として、中空体を得たい場合には、乾燥あるいは焼成は急速の高温加熱が適しており、逆に中実体を得たい場合には、炉心管5の長さを長くしてミストの滞留時間を延ばすのが良い。
【0038】
本発明において粉体の回収は特に限定はしないが、最も簡単な方法としては炉心管5出口をアスピレータ等で吸引しながら、石英管の出口近傍に濾紙等を置いて、この濾紙で超微粒子を回収する方法がある。また、サイクロンやバグフィルター等の集塵機で回収する方法等もある。
【0039】
本発明に係る1種以上の無機物又は有機物を含有する溶液もしくは懸濁液(分散液を含む。)は、微細液滴化して溶媒や分散媒を揮発させ、乾燥、粉粒化させることができるものであれば特に制限なく、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂からなる微粒子 の分散液;ポリフェノール、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなる微粒子の分散液が挙げられる。
【0040】
また、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機充填剤からなる微粒子の分散液;有機発泡剤、洗剤、顔料、殺虫剤、除草剤、殺菌剤などの微粒子の懸濁液(分散液)、インスタントコーヒー、ココア、麦芽抽出物、でんぷん、その他の食品類、天然及び合成香料、化粧品、抗生物質、血清、血漿、各種ビタミン、ペニシリン、ぶどう糖、各種アミノ酸等の医薬品類などの微粒子の懸濁液(分散液)が挙げられる。
【0041】
これらの中で、モノマーを重合して得られる重合体微粒子の分散液を噴霧し、微細で均一な微粒子粉末を回収するものに好適に使用される。モノマーの重合法としては、液体の媒体を必要とする重合方法で、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、シード重合法、溶液重合法などが挙げられる。重合体微粒子の粉末は、医学用薬物キャリヤー、液晶表示用スペーサー、トナー、粉末塗料等に好適に使用される。
【0042】
なお、本発明に係る微粒子粉末の一例としての蛍光体粉末は、種々の目的・用途のために使用することができる。すなわち、蛍光体は、励起線(紫外線、可視光、赤外線、熱線、電子線、及びX線等)を照射することにより、当該励起線のエネルギーを光(紫外線、可視光及び赤外線等)に変換する材料として一般に使用されている。蛍光体を用いたデバイスとしては、蛍光ランプ、電子管、冷陰極ディスプレイ、蛍光表示管、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:以下において、「PDP」ともいう。)、エレクトロルミネッセンスパネル、シンチレーション検出器、X線イメージインテンシファイア、熱蛍光線量計およびイメージングプレート等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照。)。これらのデバイスは、いずれも、電気エネルギーを励起線のエネルギーに変換し、さらに、励起線のエネルギーを光に変換するデバイスである。このようなデバイスと、電子回路または機器部品(照明器具、コンピュータ、キーボード、蛍光体を用いていない電子機器等)とを組み合わせた電子機器は、照明装置や表示装置等として広く用いられている。
【0043】
また、蛍光体を用いた蛍光体使用物品としては、粉末状の蛍光体と、水もしくは有機溶媒等の液体、樹脂、プラスチック、金属またはセラミクス材料等の蛍光体以外の物質とを組み合わせた蛍光体含有物があり、これらは、例えば、蛍光体塗料等の液状物やペースト状物、灰皿などの固形物、案内板や誘導用物品等の表示物、シール、文房具、アウトドア用品、安全標識等として広く用いられている。
【0044】
更に、上記のような用途のみならず、例えばトレーサーとしての使用など、医学分野やバイオ分野における活用の進展も期待されている。
【0045】
特にナノサイズのナノ粒子蛍光体粉末は、例えば、100nm以下の微粒子乃至ナノ粒子蛍光体を塗布膜状にして使用する場合には、インクジェットノズルを用いた塗布方法を用いることができる。従来の数μm程度のサイズの蛍光体ではノズルが目詰まりを起こし易く、またノズル径を蛍光体サイズに見合った大きさにする必要があり、精細なパターンの塗布には不向きであった。ナノ粒子をノズル径の小さなインクジェットノズルを用いて塗布することにより精細なパターンの塗布を行うことが可能となる。
【0046】
このような、塗布の応用例としては、PDP・FPD等の蛍光パネルの作製や、ナノ粒子を用いた蛍光インクの印刷物(ポスター、看板、Tシャツ等)の作製等がある。
【0047】
以下、蛍光体微粒子粉末の製造方法等について詳細に説明する。
【0048】
先ず、本発明の液相法による蛍光体の典型的製造方法について説明する。
【0049】
蛍光体は、基本的には、(A)無機蛍光体の構成金属元素を含む溶液を混合して無機蛍光体の前駆体を形成する前駆体形成工程と、(B)蛍光体前駆体から副塩などの不純物を取り除く脱塩工程、(C)前駆体形成工程の後に当該前駆体形成工程により得られた前駆体を乾燥する乾燥工程と、(D)乾燥工程の後に乾燥済みの前駆体を焼成して蛍光体を形成する蛍光体形成工程と、を含む製造方法により得られる。
【0050】
なお、本発明では、前駆体形成工程により得られた前駆体を液滴状にして乾燥および加熱して蛍光体粒子を得る焼成工程を含むことを特徴とする。また、焼成工程において得られた蛍光体粒子の表面にエッチング処理を施して不純物等を除去するエッチング工程を含んでもよい。
【0051】
ここで、本発明に係る蛍光体の「前駆体」とは、前記製造方法において、混合溶液から析出された結晶であって、高温での焼成処理等を施されていない状態であって、所定の波長の発光性をほとんど示さない状態の結晶をいう。
【0052】
以下において、蛍光体の製造方法を構成する上記の各工程について説明する。
【0053】
(前駆体形成工程)
本発明に係る前駆体形成工程においては、液相法(「液相合成法」ともいう。)により前駆体を合成する。
【0054】
液相法とは、液体の存在下または液中で前駆体を作製(合成)する方法である。液相法では、蛍光体原料を液相中で反応させるので、蛍光体を構成する元素イオン間での反応が行われ、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすい。また、固相間反応と粉砕工程とを繰り返し行いながら蛍光体を製造する固相法と比して、粉砕工程を行わずとも微少な粒径の粒子を得ることができ、粉砕時にかかる応力による結晶中の格子欠陥を防ぎ、発光効率の低下を防止することができる。
【0055】
なお、本実施形態における液相法には、冷却晶析を代表とする一般的な晶析法や、ゾルゲル法が用いられるが、特に反応晶析法を好ましく用いることができる。
【0056】
ゾルゲル法による無機蛍光体の前駆体の製造方法とは、一般的には母体、賦活剤又は共賦活剤として、例えばSi(OCHや、Eu3+(CHCOCHCOCH等の金属アルコキシド、Al(OCの2−ブタノール溶液に金属マグネシウムを加えて作るMg[Al(OC等の金属錯体又はそれらの有機溶媒溶液に金属単体を加えて作るダブルアルコキシド、金属ハロゲン化物、有機酸の金属塩又は金属単体を用いて、これらを必要量混合し、熱的又は化学的に重縮合することによる製造方法を意味する。
【0057】
反応晶析法による無機蛍光体の前駆体の製造方法とは、晶析現象を利用して、蛍光体の原料となる元素を含む溶液若しくは原料ガスを、液相又は気相中で混合させることによって前駆体を作製する方法のことである。ここで、晶析現象とは、冷却、蒸発、pH調節、濃縮等による物理的若しくは化学的な環境の変化、または化学反応により混合系の状態に変化を生じる場合等に気相中から固相が析出してくる現象のことをいい、反応晶析法においては、このような晶析現象の発生に起因する物理的、化学的操作による製造方法を意味する。
【0058】
なお、反応晶析法を適用する際の溶媒は、反応原料が溶解すれば何れの溶液も適用可能であるが、過飽和度に対する制御の容易性の観点から、水が好ましい。また、複数の反応原料を用いる場合、原料を添加する順序は、同時であっても異なっていてもよく、活性に応じて適切な順序を適宜選択することが可能である。
【0059】
さらに、前駆体の形成においては、より微小で粒径範囲の狭い蛍光体を製造するために、反応晶析法を含め、2液以上の原料溶液を保護コロイドの存在下で貧溶媒中に液中添加することが好ましい。また、蛍光体の種類により、反応中の温度、添加速度、攪拌速度、pH等、諸物性を調整することがより好ましく、反応中に超音波を照射してもよい。粒径制御のために界面活性剤やポリマーなどを添加してもよい。原料を添加し終ったら必要に応じて液を濃縮及び/または熟成することも好ましい態様の1つである。
【0060】
保護コロイドは、微粒子化した前駆体粒子同士の凝集を防ぐために機能するもので、天然、人工を問わず各種高分子化合物を用いることができるが、中でもタンパク質を好ましく使用することができる。
【0061】
タンパク質としては、例えば、ゼラチン、水溶性タンパク質、水溶性糖タンパク質が挙げられる。具体的には、アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質、遺伝子工学的に合成されたタンパク質等を挙げることができる。
【0062】
また、ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを挙げることができ、これらを併用してもよい。さらに、これらのゼラチンの加水分解物、これらのゼラチンの酵素分解物を用いてもよい。
【0063】
保護コロイドは、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。具体的には、例えば、上記ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマーを用いることができる。
【0064】
なお、保護コロイドの平均分子量は10,000以上が好ましく、10,000〜300,000がより好ましく、10,000〜30,000が特に好ましい。また、保護コロイドは、原料溶液の一つ以上に添加することができ、原料溶液の全てに添加してもよく、保護コロイドを添加する量や、反応液の添加速度により、前駆体の粒径を制御することができる。
【0065】
また、焼成後の蛍光体粒子の粒径、粒径分布、発光特性等の蛍光体の諸特性は、前駆体の性状に大きく左右されるため、前駆体形成工程において、前駆体の粒径制御を行うことにより、前駆体を十分小さくすることが好ましい。また、前駆体を微粒子化すると、前駆体同士の凝集が起こりやすくなるため、保護コロイドを添加することにより前駆体同士の凝集を防いだ上で、前駆体を合成することは極めて有効であり、粒径制御が容易になる。なお、保護コロイドの存在下で反応を行う場合には、前駆体の粒径分布の制御や副塩等の不純物排除に十分配慮することが必要である。
【0066】
なお、本発明においては、液相法によって得られた前駆体を含有する懸濁液(分散液を含む。)の550nmの波長の可視光に対する透過率は0.1%以上90%以下であることが好ましい。更に、好ましくは0.1%以上80%以下、より好ましくは0.1%以上60%以下である。
【0067】
該前駆体の上記懸濁液1時間静置後の550nmの波長の可視光に対する透過率は静置当初に対して変化率が0.1%以上10%以下であることが好ましい。更に、好ましくは0.1%以上5%以下であり、より好ましくは0.1%以上3%以下である。
【0068】
本発明の前駆体はアモルファス構造を有することを要する。ここで、「アモルファス構造」とは、無定形で明確な結晶構造を有しない、即ち、非晶質であることをいう。
【0069】
アモルファス構造を有する前駆体を焼成することにより、内部組成が均一で、高い発光効率の蛍光体を得ることができる。
【0070】
なお、得られた前駆体の結晶構造については粉末X線回折測定で分析を行う。前駆体がアモルファス構造を有していれば、明確な回折ピークが得られない。
【0071】
(脱塩工程)
蛍光体前駆体形成工程にて蛍光体前駆体を合成した後、乾燥工程や焼成工程に先立って脱塩工程を経ることにより、蛍光体前駆体から副塩などの不純物を取り除くことが好ましい。前駆体形成開始時から終了までに脱塩を施してもよく、前駆体形成終了時に脱塩を施してもよい。また、原料の反応程度に応じて、前駆体形成途中の一定時間施してもよく、複数回施してもよい。
【0072】
脱塩方法に特に限定はなく、あらゆる方法が適用できる。例えば、沈殿脱塩法、電気透析法、各種膜分離法、遠心分離法が好ましく適用されるが、特に限外濾過処理を行うことが望ましい。
【0073】
脱塩工程としては、各種膜分離法、凝集沈降法、電気透析法、イオン交換樹脂を用いた方法、ヌーデル水洗法などを適用することができる。
【0074】
脱塩工程を行うことにより、前駆体脱塩後の電気伝導度が0.01〜20mS/cmの範囲とすることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10mS/cmであり、特に好ましくは0.01〜5mS/cmである。
【0075】
0.01mS/cm未満の電気伝導度にすると生産性が低くなる。また、20mS/cmを超えると副塩や不純物が充分に除去できていない為に粒子の粗大化や粒子径分布が広くなり、発光強度が劣化する。上記の電気伝導度の測定方法はどのような方法を用いることも可能であるが、市販の電気伝導度測定器を使用すればよい。その後、ろ過、蒸発乾固、遠心分離等の方法で前駆体を回収する。
【0076】
(乾燥及び焼成工程)
本発明においては、上述したように、液相法により得られた前駆体の懸濁液(分散液を含む。)を微小な液滴としてガス雰囲気中に噴霧して乾燥および加熱することを特徴とする。このとき、前駆体を一旦乾燥させてから噴霧してもよい。また、本発明においては、前駆体懸濁液を湿式分散処理してから噴霧することがより好ましい。
【0077】
微小な液滴を形成する方法としては、例えば、加圧空気で液体を吸い上げながら噴霧して1〜50μmの液滴を形成する方法、圧電結晶からの2MHz程度の超音波を利用して4〜10μmの液滴を形成する方法、孔径が10〜20μmのオリフィスを振動子により、振動させて、そこへ一定速度で落下させて遠心力によって20〜100μmの液滴を形成する方法、液体表面に高い電圧を印加して0.5〜10μmの液滴を発生する方法などが挙げられる。
【0078】
上述のような方法で形成された液滴は、次に、キャリアガスと共に熱分解反応炉内に導入されて乾燥および加熱されることにより蛍光体となる。蛍光体の種類および所望の特性を得るために、必要に応じて溶媒の種類、キャリアガスの種類、キャリアガス流量、熱分解反応炉内の温度を選択することができる。例えば、液滴の加熱処理の工程は空気、窒素、ヘリウム、アルゴン又は水素などのキャリアガスを用い、熱分解反応炉内の流路中で最適な流速で加熱される。熱分解反応炉内は温度制御できるような仕様とすることにより本発明の目的とする微粒子のサイズ・分布、結晶性にコントロールできる。
【0079】
本発明において、溶媒は水および水以下の沸点を有する低沸点有機溶媒が好ましく適用される。例えばエタノール、メタノール等のアルコール類が好ましく用いられる。また、水と低沸点溶媒の混合溶媒を用いてもよい。
【0080】
本発明において、前駆体含有液滴を噴霧する際のガス雰囲気に特に限定はなく、酸化性雰囲気、還元性雰囲気、または不活性雰囲気のいずれでもよく、蛍光体主相の種類や発光に寄与する賦活剤イオンの種類に応じて適宜選択される。例えば、酸化物を主相とする蛍光体を合成する場合には、空気、酸素、窒素、水素、少量の水素を含む窒素やアルゴンが好ましい。
【0081】
一方、硫化物や酸硫化物を主相とする蛍光体を合成する場合には、窒素、水素、少量の水素を含む窒素やアルゴン、硫化水素や二酸化炭素を含む窒素や水素やアルゴンなどが好ましい。また、酸化雰囲気で原子価を保ちやすいEu3+等を賦活イオンとする場合には、空気や酸素などの酸化性ガスが好ましく、還元雰囲気で原子価を保ちやすいEu3+等を賦活イオンとする場合には、水素、少量の水素を含む窒素やアルゴンなどの還元性ガスが好ましい。
【0082】
本発明において、前駆体液滴を噴霧する際の熱分解反応炉内の温度は600℃から1900℃の範囲内の温度で行われる。温度が低すぎると結晶化が十分に進まず、温度が高すぎると不要なエネルギーを消費するため、コスト上好ましくない。炉内での滞留時間は1秒間以上24時間以下であることが好ましい。滞留時間が短すぎると結晶化が十分に進まず、滞留時間が長すぎると不要なエネルギーを消費するため、コスト上好ましくない。
【0083】
また、必要に応じて焼結防止剤を添加してもよい。添加する必要のない場合は勿論添加しなくてもよい。焼結防止剤を添加する場合は、前駆体形成時にスラリーとして添加してもよく、また、粉状の焼結防止剤を添加してもよい。
【0084】
焼結防止剤は特に限定されるものではなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO等の金属酸化物が、1000℃以下での焼成にはSiOが、1700℃以下での焼成にはAlが、それぞれ好ましく使用される。従って、本発明においては、Alを使用することが好ましい。
【0085】
(表面処理)
本発明で製造される蛍光体は、種々の目的で吸着・被覆等の表面処理を施すことができる。どの時点で表面処理を施すかはその目的によって異なり、適宜適切に選択するとその効果がより顕著になる。例えば、分散処理工程前の何れかの時点でSi、Ti、Al、Zr、Zn、In、Snから選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物で蛍光体の表面を被覆すると、分散処理時における蛍光体の結晶性の低下を抑制でき、さらに蛍光体の表面欠陥に励起エネルギーが捕獲されることを防ぐことにより、発光強度の低下を抑制できる。また、分散処理工程後の何れかの時点で有機高分子化合物等により蛍光体の表面を被覆すると、耐候性等の特性が向上し、耐久性に優れた蛍光体を得ることができる。これら表面処理を施す際の被覆層の厚さや被覆率等は、適宜任意に制御することができる。
【0086】
なお、本発明においては、上記前駆体と蛍光体の各主要構成元素の組成比の変化率は0%以上5%以下であることを要する。好ましくは0%以上3%以下、より好ましくは0%以上1%以下である。
【0087】
本発明に係る蛍光体(一次粒子)の平均粒径は1nm以上10μm以下が好ましい。好ましくは1nm以上10μm以下であり、より好ましくは1nm以上100nm以下である。ここで示す粒径とは、粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶の場合には、粒子の綾の長さをいう。また、正常晶ではない場合、例えば、球状、棒状あるいは平板状の場合には、粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0088】
蛍光体の平均粒径をr、粒径分布における標準偏差をσとしたとき、σ/rが0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
【0089】
本発明の製造方法においては、種々の組成の蛍光体を製造することができる。以下に、本発明に係る無機蛍光体の具体的な化合物例を示すが、本発明の製造方法の適用は、これらに限定されるものではない。
【0090】
[青色発光蛍光体化合物]
(BL−1) :Sr:Sn4+
(BL−2) :SrAl1425:Eu2+
(BL−3) :BaMgAl1017:Eu2+
(BL−4) :SrGa:Ce3+
(BL−5) :CaGa:Ce3+
(BL−6) :(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017:Eu2+
(BL−7) :(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu2+
(BL−8) :ZnS:Ag
(BL−9) :CaWO
(BL−10):YSiO:Ce
(BL−11):ZnS:Ag,Ga,Cl
(BL−12):CaCl:Eu2+
(BL−13):BaMgAl1423:Eu2+
(BL−14):BaMgAl1017:Eu2+,Tb3+,Sm2+
(BL−15):BaMgAl1423:Sm2+
(BL−16):BaMgAl1222:Eu2+
(BL−17):BaMgAl18:Eu2+
(BL−18):BaMgAl1835:Eu2+
(BL−19):(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017:Eu2+
[緑色発光蛍光体化合物]
(GL−1) :(Ba,Mg)Al1627:Eu2+,Mn2+
(GL−2) :SrAl1425:Eu2+
(GL−3) :(Sr,Ba)AlSi:Eu2+
(GL−4) :(Ba,Mg)SiO:Eu2+
(GL−5) :YSiO:Ce3+,Tb3+
(GL−6) :Sr−Sr:Eu2+
(GL−7) :(Ba,Ca,Mg)(POCl:Eu2+
(GL−8) :SrSi−2SrCl:Eu2+
(GL−9) :ZrSiO,MgAl1119:Ce3+,Tb3+
(GL−10):BaSiO:Eu2+
(GL−11):ZnS:Cu,Al
(GL−12):(Zn,Cd)S:Cu,Al
(GL−13):ZnS:Cu,Au,Al
(GL−14):ZnSiO:Mn2+
(GL−15):ZnS:Ag,Cu
(GL−16):(Zn,Cd)S:Cu
(GL−17):ZnS:Cu
(GL−18):GdS:Tb
(GL−19):LaS:Tb
(GL−20):YSiO:Ce,Tb
(GL−21):ZnGeO:Mn
(GL−22):CeMgAl1119:Tb
(GL−23):SrGa:Eu2+
(GL−24):ZnS:Cu,Co
(GL−25):MgO・nB:Ce,Tb
(GL−26):LaOBr:Tb,Tm
(GL−27):LaS:Tb
(GL−28):SrGa:Eu2+,Tb3+,Sm2+
[赤色発光蛍光体化合物]
(RL−1) :YS:Eu3+
(RL−2) :(Ba,Mg)SiO:Eu3+
(RL−3) :Ca(SiO:Eu3+
(RL−4) :LiY(SiO:Eu3+
(RL−5) :(Ba,Mg)Al1627:Eu3+
(RL−6) :(Ba,Ca,Mg)(POCl:Eu3+
(RL−7) :YVO:Eu3+
(RL−8) :YVO:Eu3+,Bi3+
(RL−9) :CaS:Eu3+
(RL−10):Y:Eu3+
(RL−11):3.5MgO,0.5MgFGeO:Mn
(RL−12):YAlO:Eu3+
(RL−13):YBO:Eu3+
(RL−14):(Y,Gd)BO:Eu3+
【実施例】
【0091】
以下に、本発明の微粒子の製造方法を実施例によって更に説明するが、下記の実施例はこの発明を何等限定するものではない。
【0092】
《原料液の作製》
下記の組成を有する混合水溶液A及びBを調製した。
【0093】
(混合水溶液A)
硝酸亜鉛 (Zn(NO・6HO) 1270g
硝酸マンガン (Mn(NO・6HO) 194g
純水 8233g
(混合水溶液B)
シリカ(SiO) 693g
水酸化カリウム(KOH) 490g
純水 8150g
図2の構成において、原料溶液釜11にA液を、原料溶液釜11’にB液を添加した後、それぞれ4000ml/minの一定流量で流路12と12’の角度が30°で口径が3mmの混合器13に送液して反応物を得た後、限外ろ過膜15を用いて20μS/cmまで脱塩し、原料溶液を作製した。
【0094】
(実施例)
図1の構成において、原料液を定量ポンプを用いて、インクジェットノズルに送入した。この時のノズルの印加電圧は10〜20Vとし、印加電流を0.2A、周波数を50KHzに設定した。インクジェットノズルから発生した液滴は、2l/minの流量の窒素ガスと共に同伴して管径10mmで管長2mのアルミナ製炉心管に送り込んだ。このとき、炉心管の中の温度分布は1200℃±1.5℃であった。炉心管を通過して焼成された粉末はバグフィルターにより回収した。尚、生成した粉末はZnSiO:Mnであった。
【0095】
(比較例)
管長2mを維持した状態で炉心管内壁の表面積が同じになるような管径の1本の炉心管を用いること以外は同様の条件で粉末を作製した。このとき、炉心管の中の温度分布は1200℃±18℃であった。尚、生成した粉末はZnSiO:Mnであった。
【0096】
《粉体の評価》
上記で得られた粉末について、平均粒径および単分散度、真空紫外線を照射した時の発光強度について測定を行った。
【0097】
(平均粒径)
得られた粉末を走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、1個の粒子の長径と短径を測定して、その平均値を粒径とした。この操作を無作為抽出した100個の粒子について行い、平均粒径とした。
【0098】
(単分散度)
単分散度については以下の計算式により算出した。
【0099】
単分散度=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
(発光強度)
得られた粉末を0.1Pa〜1.5Paの真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて紫外線を照射し、検出器としてMCPD−3000(大塚電子株式会社製)を用いて発光強度を測定し、発光強度は本願を100として相対値で示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1より、本発明に係る微粒子の単分散度および発光強度は、比較例に比べて優れていることが分かる。即ち、本発明の製造方法によって生産性と特性を両立した微粒子を提供することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】微粒子の製造方法を実施するための製造装置の一例
【図2】原料溶液製造装置の一例
【符号の説明】
【0103】
1 ホッパー
2 原料供給器
3 噴霧装置
4 ガス導入口
5 筒状の炉心管
6 加熱体
7 回収部
11 原料溶液釜
11’ 原料溶液釜
12 流路
12’ 流路
13 混合器
14 反応物受け釜
15 限外ろ過膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の無機物又は有機物を含有する溶液もしくは懸濁液を噴霧して微細液滴を生成し、その微細液滴を乾燥および焼成のうち少なくとも一つをすることによって微粒子粉末を製造する方法であって、乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部の温度分布範囲が当該装置部の中心温度の1%以内であることを特徴とする微粒子粉末の製造方法。
【請求項2】
前記1種以上の無機物又は有機物として1種以上の金属塩を含有する溶液もしくは懸濁液を噴霧して微細液滴を生成し、その微細液滴を乾燥および焼成のうち少なくとも一つをすることによって微粒子粉末を製造する方法であって、乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部の温度分布範囲が当該装置部の中心温度の1%以内であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子粉末の製造方法。
【請求項3】
前記温度分布範囲が当該装置部の中心温度の0.5%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部が中空糸状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥および焼成のうち少なくとも一つをする装置部が筒状の炉心管を複数本束ねた形態であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法に用いることを特徴とする製造装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子粉末の製造方法により製造することを特徴とする蛍光体の微粒子粉末。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−117936(P2007−117936A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315979(P2005−315979)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】