説明

心拍テレメータシステム

【課題】複数の被験者の心拍データをリアルタイムで収集し表示する小型の心拍テレメータシステムを提供する。
【解決手段】心拍信号に同期した信号と親機のポーリング信号のタイミングを調停し心拍データを送信する子機(1)と無線回線の制御を行いかつ子機のデータを受信する親機(2)と受信したデータを蓄積し、表示するプロセッサ部(4)を備える。具体的には、周期的に発生する生体情報を検出する生体情報検出手段(1)と、前記生体情報検出手段で検出した生体情報を無線伝送送信する送信手段(2)と、前記送信手段で送信した前記生体情報を受信する手段(3)と、前記受信データを受け取りデータ処理を行う手段(4)と、複数の送信装置が同じ回線周波数を使用して親機の制御により順次データ伝送ができることを特徴とする心拍テレメータシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から発せられる心拍信号を検知し、その複数人数分の伝送表示を同時に行う心拍テレメータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
運動を行う場合や日常の生活行動の中で、一分間に心臓が拍動する回数を心拍数として検知表示し、それが上がり過ぎると健康上重大な障害が生ずる場合があるため、運動量や行動を自己管理するための装置は種々のものが開発されており例えば胸に装着したベルトの中に検知装置が組み込まれていてそのデータを腕時計に送信して表示するものを使用すればジョギングなどの軽い運動をしながら心拍数の表示を行う事が出来る(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、腕時計の中に検知表示装置が組み込まれているものは腕時計を装着している本人が見たい時だけ目視により確認するもので健康管理データとして記録に残したい場合やスポーツトレーナーが選手の状態を把握するときにはその都度記録を取るなどの付随的な行動によりデータを取得していた。加えてスポーツトレーニングや健康管理を目的とする場合は複数人数について同作業を行う必要があり多くの時間と煩雑な作業を必要としていた。
【0004】
一方、心拍データや生体からの各種情報を無線で伝送し複数の被験者のデータを一カ所に集めて集中的に監視を行う方法が旧来から行われており、医療用の心電テレメータなどは心電図の波形をアナログ波形の状態で伝送し複数人数分のデータを表示しそのデータから心拍数などを検出して表示を行っていた。
最近ではディジタル処理を行うと共にこのデータをパーソナルコンピュータに伝送し表示する装置が使用されている(特許文献2参照)。
【0005】
心拍データを無線で伝送する際に通信制御に伴うノイズが心拍信号を抑圧し計測が困難になる事を防止する為に心拍周期を測定しその間を見ながらデータ処理を行う装置が使用されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】国際公開番号W096/29005
【特許文献2】特表平9−503938号公報
【特許文献3】特開2005−318968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、人体からの心拍データやその他の生体情報を検出し伝送するには検知機能を有する小型の送信装置とそれを受信する受信表示装置を使用して行われていたがいずれも装置は複雑で高価なものとなっていた。
また、胸に取り付けるベルトに検出電極を設け、検出されたデータを一旦腕時計型の受信装置に電送して表示する場合、女性が使用するには抵抗感があり、又計測結果は腕時計型の表示装置でのみ表示されていたので外部からはデータを知る事は出来なかった。
【0007】
また、子機から検出した心電データや生体情報を親機にデータを伝送し複数人数の心拍データを取得する装置の場合、特許文献2の装置では無線回線の周波数でch(チャンネル)番号を分けて複数の子機を使用する為多くの子機を取り扱う場合は親機が比例的に大型化する問題がある。
【0008】
更に、周波数でch(チャンネル)を分割せずに、時間を区切ってデータを伝送する装置が組み込まれていないために一つのchで時分割として受信機を共用し装置を小型化するのは不可能となっている。
一つのchを時分割で使用する場合、子機それぞれが検知している心拍のタイミングと無線の送信、受信動作がタイミング的に同時になる、即ち衝突する可能性は避けられず無作為に時分割とする事はあり得ない為無線部分の回線周波数をフェーズド・ロック・ループ(PLL)やクリスタル切り替えなどで自動的に行う方式では心拍データを送受信する事は極めて困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、親機からの単一または上りと下りの周波数を分けただけの無線回線を使用してポーリング動作により複数の子機からのデータ受信を可能としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ポーリング動作により複数の子機からのデータ受信を可能とするために検知した心拍信号から同期成分を生成しタイミング生成回路でポーリング動作とのタイミング調停を行っている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、ポーリング動作を行う為の基本となるタイミングを生成し、これを各子機に送信して送信時間を指定し、指定された時間毎に送信機から送信されたデータを受信すると共に、受信データをプロセッサに転送する。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3発明において得られたデータを解析し、目的用途に合致した形で表示を行うと共に、表示中に使用者からマーキング指示の入力がなされた時にデータにもその旨なんらかのマークを付加してメモリーに保存する。
【0013】
請求項5の発明は、請求項2の発明において、検知された心拍信号をそのレベルとレベルの経過時間から特徴を抽出して波形を判定し、波形が判定された時点から次の判定までの間の時間を計測してこれを周期データとし、このデータを使用して心拍周期を再現し、ゲート信号として使用する事で心拍信号の発生が予想される時刻に対してプラスマイナス20%程度の間だけアナログ信号を通過させる事が可能となり、結果として心拍信号だけに限定して信号を得る事が出来るためノイズの影響を防ぐとともに、ゲートが閉じている期間は回路の電源を切断して省電力化を行うかもしくは無線回路の制御などの大きなノイズ発生を伴う処理を行う事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の心拍テレメータシステムは複数の子機(2)を1台の親機(3)で制御を行い、子機からのデータを収集してプロセッサ部(4)で解析し、表示を行う。
【0015】
子機(2)は検知信号の増幅器の後に心拍信号のR波と呼称される最もレベルの大きい部分の持つ周波数成分20Hz〜30Hz付近の周波数成分を選択的に通過させるフィルタにより筋電やノイズによるレベル変動の影響を取り除いた心拍信号を生成する。
【0016】
フィルタを通過した心拍信号はゲート回路を通し後述する制御方法により通過若しくは遮断を行う。ゲート回路は心拍周期再生回路(24c)から得られるゲート信号で開閉され、必要な信号成分以外を遮断する。この様にして選択的に通過させられた心拍信号はR波同期回路でR波の波形から時間あたりのレベルを測定しR波であるか否かの判断を行い、R波であれば周期のカウントを開始する。図5はこの動作を実現する構成を示すもので信号ゲート(24a)を通過した心拍信号は心拍波形測定部(24b)で合致するかどうかを測定し合致するものであれば心拍周期計測部(24d)をスタートさせてその測定結果を出力するとともに心拍周期再生部に送り周期の時間的幅を再現して信号ゲート(24a)を開閉する。この時あらかじめプラスマイナス20%ほどの幅を持たせてゲートを開く事により心拍にゆらぎがあっても補足する事が可能となる。
【0017】
スイッチ信号検出(25a)、加速度信号検出(25b)、温度センサ検出(25c)は心拍信号の同期とは別に検出され伝送を行う為のデータに変換される。これらの信号に限らず子機(2)は生体信号及び周辺の各種情報を検知してデータ化を行い親機へ伝達する場合もある。
【0018】
心拍周期計測部で得られた周期データとスイッチ信号などの各種信号はタイミング回路からの指示を得てFIFOメモリに伝送され蓄積されると共に、同様に得られたタイミング信号をタイミング回路(27)に送り、無線送受信回路から得られる親機ポーリング信号とのタイミングを調停する事でFIFOのデータを送信するか否かを決定する。
【0019】
図6に示すR波とポーリングのタイミングに於いて、R波の同期が確立されて周期を計測している中で、タイミング制御部は親機からの呼び出しの時間をカウンタにより計測を行いその時間が近くなるとサーチ受信を開始する。この時R波の発生が予測される時間帯であればサーチを中断し、R波の処理が終わった時に再びサーチを開始する。サーチにより親機からの呼び出しを検出した場合子機はすぐに応答処理を開始し、この時仮にR波が発生してもR波の処理を中断し無線の処理を継続する。図7にこの様にその時の状況に応じて処理の優先度合いが変わる状況を示す。
【0020】
図1に示す構成の中で呼び出し1、応答1、の様に順次子機からのデータが親機に伝送され、この順次呼び出しのなかで電波の伝達条件並びに子機側の各種条件により伝達する時としない時があり、これは図2に示す様な状態となる。
【0021】
図2に示す制御のタイミングは親機(3)のタイミング回路において生成し、その都度得られたデータをデータ復調回路で復調し、パーソナルコンピュータ等のプロセッサーに伝送し表示や蓄積を行うと共に、子機からのデータが画面に表示されている中で、もしくは子機を搭載した被験者の状況を見ながら計測のポイントを蓄積データに併せて逐次メモとして並行記憶を行う事により例えばスポーツ計測などで一斉にスタートを開始した瞬間や何かアクシデントがあった瞬間をデータとともに明確に記録する事が可能となる。
【0022】
子機(2)に於いて心拍データを取得する場合、一般的には検出電極(1)を医学目的で多く用いられている胸部誘導のポイントV1〜V6に接続して行われるが、心電波形即ち心拍信号は心臓の周辺つまりV2付近をピークとして体全体でプラス、マイナスのパルス成分として検出する事が出来る。
【0023】
一方で検出電極(1)は胸部に粘着テープなどで貼り付けて使用する事が多く、頻繁に計測を行う場合は煩わしいものとなるのを防止する為に図9に示す首輪型として背中の側から首にワンタッチではめ込み計測を行う事で煩わしさもなく、又男女を問わず気軽に複数の被験者が同時に計測を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の装置全体の系統図と動作の関係を示す図。
【図2】同呼び出し応答関係のタイミング図。
【図3】同子機構成図。
【図4】同親機構成図。
【図5】同子機R波同期回路の動作関係を示す図。
【図6】同子機に於けるR波と無線タイミングの関係を示す図。
【図7】同子機に於ける処理優先を表す図。
【図8】同子機の電極を接続する様子を示す図。
【図9】同子機の電極を一体化して首の周辺に置く場合の図。
【符号の説明】
【0025】
1 検出部
2 子機
21 生体信号増幅部
22 周波数フィルタ
23 A/D変換回路
24 R波同期回路
24a 信号ゲート
24b 心拍波形測定部
24c 心拍周期再生部
24d 心拍周期計測部
25a スイッチ信号検出
25b 加速度信号検出
25c 温度センサ検出
26 FIFO
27 タイミング回路
28 無線送受信回路
28a 子機アンテナ
29 バッテリ制御回路
3 親機
31 親機アンテナ
32 親機無線送受信回路
33 データ復調回路
34 データ転送回路
35 タイミング回路
4 プロセッサ部
41 プロセッサ
42 表示部
43 データ蓄積部
44 マーキング操作部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に発生する生体情報を検出する生体情報検出手段(1)と、前記生体情報検出手段で検出した生体情報を無線伝送送信する送信手段(2)と、前記送信手段で送信した前記生体情報を受信する手段(3)と、前記受信データを受け取りデータ処理を行う手段(4)と、複数の送信装置が同じ回線周波数を使用して親機の制御により順次データ伝送ができることを特徴とする心拍テレメータシステム。
【請求項2】
前記生体情報検出手段(1)及び送信手段(2)に於いて、生態情報検出手段(1)からの信号を増幅する増幅回路(21)と、前記増幅された信号から必要な周波数成分だけを抽出する周波数フィルタ(22)と、前記周波数フィルタで抽出された信号をアナログ値からディジタル値に変換するA/D変改回路(23)と、前記A/D変換された信号から心電波形の中のR波部分を検出してその周期に同期をかけるR波同期回路(24)と、前記R波同期回路で得られたデータを順次送り出す為のFIFO型メモリ(26)と、前記FIFO型メモリのデータを無線回線で送信する無線送受信回路(28)を有し、前記無線送受信回路は前記R波同期回路で得られたタイミングを参照して無線部を制御するタイミング回路と、前記タイミング回路の指示に応じてバッテリからの回路への電源供給を制御するバッテリ制御回路を有することを特徴とする請求項1に記載の心拍テレメータシステム。
【請求項3】
前記生体情報を受信する手段(3)に於いて、アンテナ31で受信した無線信号を受信する手段(32)と、前記受信手段により得られた受信信号からデータを復調するデータ復調回路(33)と、前記データ復調回路のデータをプロセッサに転送するデータ転送回路(34)と、これら受信装置(3)を制御するタイミング回路を有する事を特徴とする請求項1に記載の心拍テレメータシステム。
【請求項4】
前記データ処理を行う手段(4)において、受け取ったデータを解析処理する手段(41)と、前記解析処理データを蓄積する手段(43)と、前記解析データを表示する手段(42)と、前記表示データに時刻表示や何かしらの意味を持つマークを付けるマーキングの手段(44)を有する事を特徴とする請求項1に記載の心拍テレメータシステム。
【請求項5】
前記R波同期回路(24)は、心拍信号を通過させる信号ゲート(24a)と、前記信号ゲートを通過した信号の波形を計測し判定する心拍波形測定部(24b)と、前記心拍は計測定部で得られた信号を使用して周期計測を行う心拍周期計測部(24d)と、前記心拍周期計測部で得られた周期情報を使用して心拍周期と同等の信号を再生してゲート信号として与える心拍周期再生部(24c)を有する事を特徴とする請求項2に記載の心拍テレメータシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−142577(P2009−142577A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325344(P2007−325344)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(304002405)イオム株式会社 (5)
【Fターム(参考)】