心臓弁を形成する植え込み片(インプラント)及びその形成方法
【課題】心臓弁を補強及び/又は再形成する組織形成方法及びその装置を提供する。
【解決手段】複数の磁気組織形成装置(302)を、心臓弁尖(204、206)に隣接する体組織に植え込む。これら装置(302)は、心臓組織を形成して心臓弁機能を改善するように、相互に引き合う又は反発するように構成されている。他の実施形態では、1以上の組織形成装置を、心臓弁尖(204、206)に隣接した位置で患者の体に植え込む。この装置に含まれる形状記憶物質は、患者の体内で、より観血的でない方法によって活性化される。例えば、エネルギーを経皮的に又は患者の体外から与えることにより、活性化させることができる。形状記憶装置(502)は、第1構造において植え込まれ、その後活性化される。活性化されると第2構造に回復し体組織を移動させる。それによって心臓弁形状を再形成することができる。他の実施形態では、ブレス(1900)を心臓弁尖(204、206)に圧着させ、弁尖を支持させる。これによって弁閉鎖を改善することができる。
【解決手段】複数の磁気組織形成装置(302)を、心臓弁尖(204、206)に隣接する体組織に植え込む。これら装置(302)は、心臓組織を形成して心臓弁機能を改善するように、相互に引き合う又は反発するように構成されている。他の実施形態では、1以上の組織形成装置を、心臓弁尖(204、206)に隣接した位置で患者の体に植え込む。この装置に含まれる形状記憶物質は、患者の体内で、より観血的でない方法によって活性化される。例えば、エネルギーを経皮的に又は患者の体外から与えることにより、活性化させることができる。形状記憶装置(502)は、第1構造において植え込まれ、その後活性化される。活性化されると第2構造に回復し体組織を移動させる。それによって心臓弁形状を再形成することができる。他の実施形態では、ブレス(1900)を心臓弁尖(204、206)に圧着させ、弁尖を支持させる。これによって弁閉鎖を改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、組織を形成する植え込み片(インプラント)及びその形成方法に関し、特に、機能障害を有する心臓弁を再形成及びサイズ調整する植え込み片並びにその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の循環系には、心臓と、身体の全体にわたって相互接続している静脈と動脈とからなる血管と、が含まれる。人の心臓は、4つの部屋、すなわち左右の心房及び左右の心室からなっている。左心室と左心房との間には、血流に一方向性を与える僧帽弁が位置する。右心室と右心房との間には、三尖弁が位置する。左心室と大動脈との間には、大動脈弁が位置し、そして、右心室及び肺動脈の間には、肺動脈弁が位置する。これら心臓弁は、互いに協働することで循環系全体にわたって血液を移動させる働きをする。右心室は、 酸素の不足した血液を体内から汲み上げ、肺、左心房へと送り込む。次に、血液は左心房 から左心室へと送り込まれ、そして、大動脈弁から大動脈へと送り出される。その後、血液は、身体の組織及び器官の全体を循環し、再度、右心房へと戻ってくる。
【0003】
心臓弁が疾患や先天性異常により適切に機能しないと、血液循環障害が生じることがある。疾患を有する心臓弁(心臓弁膜症)には、血液の正常な順方向の流れを許容するほど弁が充分に開かない狭窄症、及び/又は、弁が完全に閉まらない閉鎖不全症がある。
心臓弁が機能不全になると、弁逆流や、閉じた弁を介して血液の過剰な逆方向流が引き起こされる。例えば、心臓弁の特定の疾患は、心臓肥大及び一つ以上の心臓弁の肥厚などを引き起こすことがある。また、心臓弁輪が拡張すると、弁尖形状が歪み、弁尖による閉鎖効果が小さくなってしまう。このように、弁による閉鎖効果が小さくなると、血液の逆流が生じるだけでなく、心臓に血液が蓄積し、ひいてはその他の諸問題を生じかねない。
【0004】
僧帽弁逆流は、一般的なタイプの心臓弁機能不全であり、心臓の劣化や不全の主だった要因の1つである。僧帽弁逆流は、循環の効率を減少させるような、深刻な、そして時として急速に悪化する、状態である。しばしば、僧帽弁逆流は、左心室、乳頭筋及び僧帽弁輪の幾何学的変化によって引き起こされる。また、逆流を許すまでに弱くなった僧帽弁は、左心房内部へ突出する。これは、僧帽弁逸脱として知られる状態である。
【0005】
疾患にかかった又は損傷を受けた心臓弁は、弁置換術によって治療することができる。この弁置換術では、損傷した弁尖を切除し、そして、置換弁を入れるために輪の形を整える施術を行う。その他、弁の機能不全を治療する効果的な修復技術として、弁形成術がある。この弁形成術は、人工弁形成修復セグメント又は人工弁形成リングを心臓内壁の弁輪周囲に取り付けることによって、弁輪を効果的なサイズまで縮小させるものである。弁形成リングは、心周期の間に起こる機能上の変化を補強することで、接合及び弁の完全性を改善させることができる。このように、弁形成リングは、血液の順方向の流れにおいては血行動態を改善し、一方で血液の逆方向の流れ又は弁逆流を減少させるための助けとなる。
【0006】
しかしながら、これらの処置はそれぞれ非常に観血的である。なぜなら、心臓へのアクセスは開胸処置によって得られ、この場合、その処置の間、人工心肺で心臓をバイパスすることとなる。しかし、僧帽弁逆流を患う患者の多くは大抵の場合、体が弱く、そのためこのような処置を行うにはより大きなリスクが伴ってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のことを考慮すると、弁閉鎖不全症を治療する従来のシステム及び方法では、患者への負担が少なくそしてより観血的でないアプローチを提供することができない。したがって、心臓弁又は他の身体構造を支持する装置及び方法であって、人間又は動物の心臓系の動的な環境に安全にそして確実に配置及び適合する装置並びに方法が必要とされる。また、僧帽弁閉鎖不全症などの弁閉鎖不全症を治療する植え込み片を非観血的に調整する装置及び方法の開発が望まれる。さらに、患者の体内に植え込んだ後に非観血的に調整することができる植え込み片も望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、患者の心臓弁を補強する植え込み片は、本体部材を含んで構成され、その本体部材は、近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間を伸長する本体とを含む。本体部材は、患者の心臓内で、心臓弁基部に直接又はその近傍に、植え込まれるように構成される。本体部材は、形状記憶物質を含んで構成され、第1構造から第2構造に変形可能である。本体部材が第2構造であるとき、本体部材は、心臓弁基部に力を及ぼして心臓組織を変形するように構成される。植え込み片は、その長さが最長で約15ミリメートル以下で細長い。他の態様では、植え込み片の長さは最長で約10ミリメートル以下である。また、他の態様では、植え込み片の長さは最長で約6ミリメートル以下である。
【0009】
一態様によれば、本体部材は、第1構造では実質的に直線状であり、第2構造では実質的に弓形である。植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに、患者の心臓に植え込まれる。一態様において、植え込み片は心臓組織内に完全に植え込まれるように構成される。他の態様では、植え込み片は、心臓組織の表面に隣接して配置されるように構成される。この植え込み片は、1以上のアンカー部材を含んでもよい。このアンカー部材は、本体部材を心臓組織にしっかりと取り付けるように構成される。
【0010】
心臓組織には、例えば、心筋層、心臓の心室中隔、線維三角、心房壁又は他の心臓組織が含まれる。一態様によれば、植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに、逆行性(retrograde)アプローチを利用した逆行性デリバリーシステムによって患者の心臓の左心室へ運ばれるように構成される。他の態様では、植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに、経中隔アプローチを利用した経中隔デリバリーシステムによって患者の心臓の左心房へ運ばれるように構成される。
【0011】
一態様によれば、形状記憶物質は、第1構造及び第2構造の少なくとも一方で超弾性を有するように構成される。形状記憶物質には、例えば、形状記憶合金、形状記憶ポリマー又は他の物質を含んでもよい。他の態様では、形状記憶物質は、強磁性物質であって、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa、及びCo−Ni−Alの少なくとも1つを含む。この態様では、本体部材は、その第1構造が第2構造に変形するときに、強磁性形状記憶物質の温度に実質的な変化がないように構成される。
【0012】
一態様によれば、本体部材は、形状記憶物質がエネルギー源によって活性化されると、第1構造から第2構造に変形するように構成される。このエネルギー源には、例えば、超音波エネルギー源が含まれる。更に、一態様によれば、植え込み片は、エネルギー吸収強化物質を含んで構成される。このエネルギー吸収強化物質は、エネルギーを吸収し、エネルギー源に応答して発熱するように構成される。更に、エネルギー吸収強化物質は、形状記憶物質と熱的に接続するように構成される。このエネルギー吸収強化物質には、例えば、ナノ粒子を含んでもよい。このナノ粒子は、ナノシェル及びナノスフェアの少なくとも一方を含んで構成される。一態様によれば、エネルギー吸収強化物質は、放射性不透過性を有する。一態様によれば、植え込み片は、更に、電気伝導性材料も含む。この電気伝導性物質は、エネルギー源に応答して電流を導き、形状記憶物質に熱エネルギーを伝えるように構成される。
【0013】
一態様によれば、患者の心臓弁を補強する植え込み片は、本体部材を含んで構成され、その本体部材は、近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間を伸長する本体とを含む。本体部材は、形状記憶物質を含んで構成され、第1構造から第2構造に変形可能である。本体部材が第2構造であるとき、本体部材は、心臓弁基部に力を及ぼして心臓組織を変形するように構成される。植え込み片は、細長く、及び、心臓組織内に完全に植え込まれるように構成される。この態様では、植え込み片は、本体部材が第1構造であるときは直線状であり、本体部材が第2構造であるときは弓形である。植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに患者の心臓に植え込まれる。この態様では、植え込み片の長さは最長で約15ミリメートル以下である。他の態様では、植え込み片の長さは最長で約10ミリメートル以下である。また、他の態様では、植え込み片の長さは最長で約6ミリメートル以下である。一態様において、形状記憶物質は、第1構造及び第2構造の少なくとも一方で超弾性を有するように構成される。
【0014】
一態様によれば、心臓弁膜症の治療方法には、植え込み片の提供が含まれる。この植え込み片は、本体部材を含んで構成され、この本体部材は、近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間を伸長する本体とを含んで構成される。また、本体部材は、形状記憶物質を含んで構成される。更に、前記治療方法には、植え込み片を、患者の心臓組織内で心臓弁基部に直接又はその近傍に完全に植え込むこと、及び、形状記憶物質にエネルギーを与えて植え込み片を第1形状を有する第1構造から第2形状を有する第2構造に変形すること、が含まれる。植え込み片は第2構造にあると、その植え込み片近傍の組織を変形し、弁輪の寸法(dimension)に変化を生じさせる。この態様では、この寸法変化によって、弁尖基部を心臓弁の中心に向かわせることができる。この態様では、エネルギーを与える工程には、患者の心臓外に位置し植え込み片に非接触であるエネルギー源によってエネルギーを与えること、が含まれる。一態様によれば、植え込み片を配置する工程には、植え込み片を逆行性アプローチを用い患者の大動脈を経由して患者の左心室に運ぶこと、が含まれる。他の態様では、植え込み片を配置する工程には、植え込み片を経中隔アプローチを用いて患者の心臓の左心房に運ぶこと、が含まれる。
【0015】
一態様によれば、体組織を再形成又は矯正する装置は、心臓弁輪の寸法を変化させる弾性手段を含んで構成される。この弾性手段は、患者の心臓弁の弁尖基部に直接又はその近傍に植え込まれるように構成される。更に、この弾性手段は、体内に植え込まれる間、この弾性手段に加えられる力に応答して第1形状から第2形状に変形するように構成される。更に、この弾性手段は、体内に植え込まれた後、該弾性手段に加えられていた力がなくなると、変形して第1形状に戻るように構成される。また、この態様では、弾性手段は心臓組織に完全に植え込まれるように構成される。
【0016】
一態様によれば、心臓弁輪の寸法を変化させる方法には、第1装置及び第2装置を患者の心臓に植え込むこと、が含まれる。第1装置は磁性を有し、第2装置はその第1装置によって生じる磁場に応答する。それによって心臓弁輪の寸法に変化を生じさせる。
この態様では、寸法の変化には、寸法の減少が含まれる。一態様によれば、第2装置は磁性を有し、それによる磁場は、第1装置が第2装置から生じた第2磁場に応答するような第1磁気である。それにより、心臓弁輪の寸法に更に変化が生じる。一態様によれば、第1装置は心臓弁の第1弁尖に隣接して植え込まれ、第2装置は心臓弁の第2弁尖に隣接して植え込まれる。これにより、磁場に対して第2装置が応答することで、第2弁尖基部を第1弁尖基部に向わせることができる。他の態様では、第1装置は、心臓弁輪の心房側で第1弁尖に隣接するように植え込まれ、第2装置は、心臓弁輪の心室側でその第1弁尖に隣接するように植え込まれる。これにより、磁場に対して第2装置が応答することで、第1弁尖基部を第2弁尖基部に向かわせることができる。
【0017】
一態様によれば、組織形成システムは、磁場を生じるように構成された第1装置を含んで構成される。この第1装置は、心臓弁輪に直接又はその近傍に植え込まれるように構成される。更に、組織形成システムは、第2装置を含んで構成される。この第2装置は、第1装置の磁場に応答することで第1装置と相互に作用するように構成されている。この第2装置は、心臓弁輪に直接又はその近傍に植え込まれるように構成される。第1装置は、第2装置と相互に作用するように構成され、これにより心臓弁輪の寸法を変化させることができる。この態様では、第2装置も磁性を有し、また、第1装置と第2装置の間の相互作用は引力である。一態様によれば、第1装置及び第2装置は、それらが互いに隣接して植え込まれたときに、心臓弁輪の寸法を減少させるのに十分な力を少なくとも1つ作用させるように構成される。一態様によれば、第1装置は、希土類元素を含んで構成される。一態様によれば、第1装置は、以下に挙げるもののうち少なくとも1つを含んで構成される:NdFeB(ネオジム‐鉄‐ホウ素)、SmCo(サマリウム‐コバルト)及びAlNiCo(アルミニウム‐ニッケル‐コバルト)。一態様において、少なくとも1つの固定部材が、第1装置及び第2装置のうちの少なくとも一方を心臓弁輪に固定するように構成される。
【0018】
一態様によれば、心臓弁輪を再形成及び矯正するシステムは、磁場を生じる発生手段と、この磁場に応答して発生手段と相互に作用する相互作用手段とを含んで構成される。発生手段及び相互作用手段は、心臓弁輪に直接又はその近傍に植え込まれる。相互作用手段が磁場に応答することで、心臓弁輪の寸法の少なくとも1つが変化する。
【0019】
一態様によれば、障害を有する心臓弁の治療装置は、心臓弁尖に取り付け可能なリング状部材を含んで構成される。この態様では、リング状部材は以下の物質を1つ以上含んで構成される:ステンレス鋼、NiTi、白金‐イリジウム、金、炭素及びポリウレタン。リンク状部材は、剛性機械的強度を提供し、弁尖を支持するように構成される。また、リング状部材は、弁尖の周りの所定位置に圧着(crimp)されてもよい。一態様によれば、更に、リング状部材は、圧着可能リングから軸方向に伸びる弾性軸方向延長部を1つ以上含んで構成される。この態様では、1以上の弾性軸方向延長部は、弁尖の内端を心臓弁の中央に向かわせ、それにより他の弁尖との接合を改善するように構成される。一態様によれば、1以上の弾性軸方向延長部は、カーボンファイバーを含んで構成される。
【0020】
一態様によれば、心臓弁尖の支持方法は、リング状部材を含んで構成される植え込み片を提供すること、植え込み片を心臓弁尖の周りで揺動させること、を含む。この態様では、支持方法は更に、リング状部材を心臓弁尖に固定するように圧着することを含む。一態様によれば、植え込み片は更に、1以上の弾性軸方向延長部を含んで構成され、また、植え込み片を心臓弁尖の周りで摺動させることは更に、植え込み片を1以上の弾性軸方向延長部がリング状部材から弁尖内端に向けて伸びるように摺動させること、を含む。一態様によれば、植え込み片を心臓弁尖の周りで摺動させることは、植え込み片を、逆行性アプローチを用いて患者の心臓の左心室に運ぶこと、を含んで構成される。他の態様では、植え込み片を心臓弁尖の周りで摺動させることは、植え込み片を、経中隔アプローチを用いて患者の心臓の左心房に運ぶこと、を含んで構成される。
【0021】
一態様によれば、心臓弁における弁尖接合を改善する装置は、弁尖の支持手段を含んで構成される。この態様では、支持手段は、圧着可能に構成される。一態様によれば、弁尖の支持手段は、弁尖の内端を他の弁尖に向かわせる手段を含んで構成される。
【0022】
本発明を要約するために、本明細書は、本発明の特定の態様、効果及び新規な特徴について記載している。また、本発明の一態様に従って、かかる効果のすべてを達成する必要がないことを理解できるであろう。従って、本発明は、必ずしも本明細書に教示又は示唆したその他の効果を達成することなく、本明細書に開示されている効果(単数又は複数)を達成又は最適化するように実施されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
概要
【0024】
本発明は、例えば、機能障害を有する心臓弁や他の体組織を動的に調整可能な植え込み片を用いて補強することで、組織を再形成(リシェイプ)する装置及び方法を含む。本願明細書に開示された実施形態は、ヒト心臓の僧帽弁を再形成及び/又はサイズ調整(リサイズ)することに関して記載されているが、本発明の実施形態を、再形成又は矯正(改善)を必要とするその他の様々な弁、血管及び/又は組織に広く用いてもよい。例えば、特定の実施形態を、三尖弁、肺動脈弁又は大動脈弁の少なくとも1つの寸法を変化させるために用いてもよい。また、他の実施形態では、組織形成装置を、左右の心室、胃系の組織、及び/又は器官(例えば、胃)などの再形成又は矯正に用いてもよい。
【0025】
一実施形態によれば、障害を有する心臓弁構造の支持の提供方法は、心臓弁の弁尖基部に隣接する心臓組織に第1領域提供部材を配置すること、及び、心臓組織に第2領域提供部材を配置すること、を含む。このとき、第2領域提供部材は、第1領域提供部材と相互にひきけられて、それにより心臓弁の寸法を減らすように構成される。この実施形態では、複数の磁性構造が、心臓弁輪に隣接して又はその中に植え込まれる。
【0026】
他の実施形態では、障害を有する心臓弁構造の支持の提供方法は、形状記憶部材を心臓弁の弁尖基部に隣接した心臓組織に配置すること、及び、この形状記憶部材を活性化すること、を含む。このとき形状記憶部材は、活性化されると、記憶構造又は記憶形状に回復してその形状記憶部材に直接隣接した組織を広げることで、弁尖基部を内側半径方向に押しやるように構成される。この実施形態では、1以上の形状記憶部材が、心臓弁輪に植え込まれる。他の実施形態では、心臓弁尖基部の支持方法は、圧着可能リングを弁尖基部に配置すること、及び、そのリングを弁尖の所定の位置に圧着すること、を含む。これによって、弁尖基部を支持し、また弁機能を改善することができる。
【0027】
一実施形態において、動的に調節可能な組織形成装置は、その装置が僧帽弁輪に隣接して又はその中に植え込まれて、僧帽弁輪の再形成及びサイズ調整に用いられる。特に、組織形成装置は、僧帽弁輪の寸法の少なくとも1つを動的に変化させて、弁尖接合を改善するために及び逆流を減少させるために用いられる。組織形成装置の形状は、体内に植え込んだ後でも、心臓のサイズ変化に対応するように、更なる調整が可能である。例えば、組織形成装置は、身体の成長につれて心臓も成長する子供に植え込んでもよい。つまり、心臓の成長が可能なように、組織形成装置の形状を修正する必要が生じてもよい。別の例として、1以上の組織形成装置を植え込んだ後に、肥大した心臓のサイズが通常のサイズに戻り始めてもよい。つまり、心臓のサイズが減少し始めた後に、僧帽弁輪が引き続き補強されるように、組織形成装置の形状を修正する必要が生じてもよい。
【0028】
一実施形態によれば、組織形成装置は、温度変化及び/又は磁場曝露で応答する形状記憶物質を含んで構成される。ここで、形状記憶とは、変形後に変形前の特定の形状に回復できるような物質の能力をいう。形状記憶物質には、例えば、ポリマー、金属、金属合金及び強磁性合金が含まれる。一実施形態によれば、組織形成装置は、形状記憶物質にエネルギー源を与えて活性化させ、記憶形状又は元の形状に変形させられることによって、生体内で調節されるように構成される。そのようなエネルギー源としては、例えば、無線周波数(RF)エネルギー、X線エネルギー、マイクロ波エネルギー、集束超音波又は高出力集束超音波(HIFU)エネルギーなどの音響又は超音波エネルギー、光エネルギー、電場エネルギー、磁場エネルギー、これらの組み合わせ、等を含んでもよい。例えば、電磁放射の一実施形態としては、約750ナノメートル〜約1600ナノメートルの範囲の波長を有する赤外線エネルギーが有用である。このタイプの赤外線照射は、固体ダイオードレーザによって発生させることができる。
【0029】
一実施形態によれば、組織形成装置は更に、加熱効率を上げると共に形状記憶物質の所定の領域に熱を局部集中させるエネルギー吸収物質を含んで構成される。これにより、周辺組織に与える損傷を軽減させる又は最小限に抑えることができる。特に、物質にエネルギーを与えるために赤外線レーザエネルギーを用いる場合、光又はレーザによる活性化エネルギーを吸収するエネルギー吸収物質には、ナノシェル、ナノスフェアなどを含んでもよい。このようなナノ粒子は、導体(例えば、金)の極超薄層で覆われた誘電体(例えば、シリカ)から製造されてもよく、又、電磁放射の特定の周波数を吸収するように選択的に調節されてもよい。この実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約5ナノメートル〜約20ナノメートルの範囲内であり、又、ナノ粒子は適切な物質又は溶液(例えば、食塩水)に懸濁される。なお、ナノチューブ又はナノ粒子を含んで構成されたコーティングを、例えば、HIFU、MRI、誘導熱等からのエネルギーを吸収するために用いてもよい。
【0030】
一実施形態によれば、組織形成装置の一部分又は全体を被覆するために、薄膜蒸着やその他のコーティング技術、例えば、スパッタリング、反応性スパッタリング、金属イオン注入法、物理気相成長法、化学気相成長法を用いることができる。このようなコーティングは、固体コーティング又は微孔性(microporous)コーティングとすることができる。例えば、HIFUエネルギーを用いる場合、微孔構造は、HIFUエネルギーを捕捉して、これを形状記憶物質の方向へ導く。これにより、コーティングによって熱伝導性及び熱除去を改善することができる。一実施形態によれば、コーティングによって組織形成装置のX線不透過像を高めることができる。コーティング物質は、生体適合性有機物又は非有機物質、金属又は非金属物質(例えば、窒化チタン(TiN)、イリジウム酸化物(Irox)、炭素、白金黒、炭化チタン(TiC)、及び、植え込み型ペースメーカのリードのペースメーカの電極に用いられるその他の物質など)の様々な群から選択される。さらに、本明細書において議論されるか又は従来技術において公知である他の物質を、エネルギー吸収に用いてもよい。
【0031】
加えて、又は他の実施形態では、形状記憶物質を、例えば、白金被覆銅、チタン、タンタル、ステンレス鋼、金等の微細導線で包み込むことで、周辺組織への不要な過熱を低減する一方、形状記憶物質の特定箇所を集中的及び急速に過熱することができる。
【0032】
一実施形態によれば、エネルギー源は、体内に植え込まれた時又はその後に、外科的に与えられる。例えば、形状記憶物質は、組織形成装置を体内へ植え込んでいる間、暖かい物体をその組織形成装置に接触させる又はその周囲の領域に置くことで加熱される。他の例として、組織形成装置の植え込み後に、例えばカテーテルを経皮的に患者の体に挿入することでカテーテルを通してエネルギーを与えるように、外科的にエネルギー源を与えることができる。例えば、RFエネルギー、光エネルギー又は熱エネルギー(例えば、抵抗加熱を用いた発熱体などからのエネルギー)は、形状記憶物質上に配置され又はその近傍に位置するカテーテルによって、形状記憶物質へ伝達される。
【0033】
また、熱エネルギーは、加熱した流体を組織形成装置付近に位置させたカテーテルに通したり又はカテーテルを通してバルーン内を循環させたりすることで、組織形成装置に与えられる。さらに、他の例として、形状記憶物質は、光吸収物質(photodynamic absorbing material)で被覆される。この光吸収物質は、レーザダイオード光に照射されるか又はカテーテルの光ファイバー要素を介して導かれた光で活性化されて、形状記憶物質を加熱する。この実施形態では、光吸収物質は、レーザ光が照射されると放出される1以上の医薬品を含んで構成される。
【0034】
一実施形態によれば、取り外し可能な皮下電極又はコイルが、専用の活性化ユニットからのエネルギーを連結する。この実施形態では、取り外し可能な皮下電極によって、システムと組織形成装置との間に、遠隔測定及び送電が提供される。この取り外し可能な皮下電極は、最小限の電力損又は少ない電力損で、植え込み片に対してエネルギーをより効率的に伝えることができる。一実施形態によれば、皮下エネルギーは、誘導結合を介して供給される。
【0035】
他の実施形態では、エネルギー源は、非観血的な方法又はより観血的でない方法で患者体外から与えられる。この実施形態では、周辺組織への損傷を軽減し又は最小限にするために、外部エネルギー源を集束させて形状記憶物質に対して指向性のある加熱を提供するようにしてもよい。例えば、一実施形態によれば、電気伝導コイルを含んで構成されたポータブル装置が、非観血的に患者の身体を透過する電磁場を発生して、組織形成装置内に誘導電流を発生させる。この誘導電流によって組織形成装置が加熱されることで、形状記憶物質は記憶形状に変形する。また、この実施形態では、組織形成装置は、形状記憶物質に包まれ又は包埋された電気伝導コイルを含んで構成される。このとき、外部で発生した電磁場が組織形成装置内のコイルに誘導電流を発生させ、コイルを発熱させて、形状記憶物質に熱エネルギーを伝達する。
【0036】
他の実施形態では、外部変換器が、植え込んだ組織形成装置に超音波エネルギーを集束させて、形状記憶物質を加熱する。用語「集束超音波」は、本明細書において広義に用いられ、それらの通常に用いられる意味、並びに、広範囲にわたる強度及び/又は周波数範囲内の音響エネルギーを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、集束超音波エネルギーは、医療処置の切除において現在用いられているものよりも極小の強度及び/又は周波数を有する高出力集束超音波(HIFU)エネルギー及び/又は音響エネルギーを含む。
【0037】
例えば、一実施形態によれば、集束超音波エネルギーは、周波数が約0.5MHz〜約30MHzの範囲内であり、出力密度が約1W/cm2〜約500W/cm2の範囲内である音響エネルギーを含む。更に、一実施形態において、集束超音波エネルギーは、加熱によって組織の損傷がほとんど若しくは全く起こらないように及び/又はキャビテーションが減少若しくは実質的に排除されるように、破壊を起こさせないような加熱を行う音響エネルギー強度を含む。
【0038】
例示する目的で、用語「HIFU」は、本明細書において本発明の一実施形態に関して用いられる。しかしながら、他の強度の集束超音波エネルギー、特に相対的に低強度の集束超音波エネルギー、を、HIFUエネルギーの代わりに又はHIFUエネルギーと組み合わせて有利に用いてもよい。
【0039】
一実施形態によれば、HIFUプローブは、心臓の運動及び呼吸の動きを補償するために、適合レンズ(adaptive lens)と共に用いられる。この適合レンズは、多焦点調節能(multiple focal point adjustments)を有する。一実施形態によれば、適合可能機能を有するHIFUプローブは、フェーズドアレイ又は線形の構造を含んで構成される。一実施形態によれば、外部HIFUプローブは、骨を通過することに関して、音響窓からの入射を改善及びその問題や課題を克服又は最小限に抑えるために、患者の肋骨間に配置されるように構成されたレンズを含んで構成される。一実施形態によれば、HIFUエネルギーは、超音波画像診断装置と同期して、HIFU活性化の間、組織形成装置を画像化することができる。加えて、または他の実施形態において、超音波画像は、サウンドシフト速度及び体組織の熱膨張変化の原理から、組織形成装置周辺の体組織温度を非観血的にモニタするためにも用いられる。
【0040】
一実施形態によれば、組織形成装置は、超音波に曝された際に集束する及び急速に発熱すると共に、熱エネルギーを形状記憶物質に伝達する超音波吸収物質又はヒドロゲル物質を含んで構成される。
【0041】
一実施形態によれば、非観血的エネルギーは、磁気共鳴画像診断(MRI)装置によって、植え込まれた組織形成装置に与えられる。この実施形態では、形状記憶物質は、MRI装置が発生する定磁場によって活性化される。加えて、または他の実施形態において、MRI装置は、組織形成装置内に誘導電流を発生させると共に形状記憶物質を加熱するRFパルスを発生する。組織形成装置は、加熱の効率及び指向性を向上させる1以上のコイル及び/又はMRIエネルギー吸収物質を含んで構成することができる。磁気活性化エネルギーを適切に吸収するエネルギー吸収物質には、強磁性物質の微粒子が含まれる。RFエネルギーに対する適切なエネルギー吸収物質には、RFエネルギーと共鳴する周波数においてこのRFエネルギーを吸収することができる他の物質に加え、フェライト物質も含まれる。
【0042】
一実施形態によれば、MRI装置は更に、形状記憶物質を活性化する前、活性化中及び活性化後に、植え込んだ組織形成装置のサイズ及び/又は形状を測定するために用いられる。この実施形態では、MRI装置は、形状記憶物質を加熱するための第1周波数を有するRFパルス、及び、植え込んだ組織形成装置を撮像するための第2周波数を有するRFパルスを発生する。従って、組織形成装置のサイズ及び/又は形状を、この組織形成装置を加熱せずに測定することができる。この実施形態によれば、MRIエネルギー吸収物質は、第1周波数に曝されると形状記憶物質を活性化するために充分な程度に発熱する一方、第2周波数に曝されても実質的には発熱しない。他の公知技術によるイメージング(画像診断)技術を、植え込んだ組織形成装置のサイズ測定に用いることができる。例えば、超音波画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線画像診断、放射断層撮影法(PET)などが含まれる。一実施形態では、このようなイメージング技術も、形状記憶物質の活性化に充分なエネルギーを提供する。
【0043】
一実施形態によれば、形状記憶物質の活性化は、イメージング処理の間、心拍動と同期するように行われる。例えば、画像診断技術を用いることで、心周期のある一部分の間において、患者体内の組織形成装置上に、HIFUエネルギーを集束させることができる。心拍動に伴って、組織形成装置が集束エネルギー領域の内外に移動するようにしてもよい。周辺組織の損傷を軽減するために、患者の身体は、心周期の特定部分の間だけHIFUエネルギーに曝される。一実施形態によれば、エネルギーは、心電図シグナルのような心拍周期を表すシグナルによってゲート制御される。この実施形態では、同期及びゲート制御は、心周期の特定期間においてエネルギーを形状記憶物質に送ることで、受攻期中に不整脈又は細動が引き起こされる可能性を避け又は低減できるように構成される。例えば、心電図シグナルのT波の間だけ患者の心臓をエネルギーに曝すように、このエネルギーをゲート制御をすることができる。
【0044】
前述のように、形状記憶物質は、例えば、ポリマー、金属、及び強磁性合金を含んで構成される金属合金、を含む。本発明に従う実施形態において、有用であり代表的な形状記憶ポリマーは、Langer等による米国特許第6,720,402号(2004年4月13日発行)、米国特許第6,388,043号(2002年5月14日発行)及び米国特許第6,160,084号(2000年12月12日発行)により開示されており、いずれも本明細書に完全に引用されるものとする。
【0045】
形状記憶ポリマーは、温度変化に応じて1以上の永久的形状又は記憶形状に変化する。一実施形態によれば、形状記憶ポリマーは、約38℃〜約60℃の温度範囲まで加熱される。他の実施形態では、形状記憶ポリマーは、約40℃〜約55℃の温度範囲まで加熱される。一実施形態において、形状記憶ポリマーは、加熱されると第1記憶形状に変形し、冷却されると第2記憶形状に変形する二方向性形状記憶効果を有する。形状記憶ポリマーは、例えば、カテーテルを通して冷却流体を入れるか又は循環させることで、冷却されることができる。
【0046】
患者体内に植え込んだ形状記憶ポリマーは、例えば、赤外線、近赤外線、紫外線、マイクロ波及び/又は可視光源などの外部光エネルギー源を用いて、非観血的に加熱されることができる。好ましくは、光エネルギーは、形状記憶ポリマーによる吸収は増加し、その一方で周辺組織による吸収は低減するように選択される。これによって、形状記憶ポリマーの形状を変化させるために加熱した場合にも、その形状記憶ポリマー周辺の組織の損傷を軽減することができる。他の実施形態では、形状記憶ポリマーは、気泡又はフルオロカーボン(過フッ化炭化水素)などの液体を含む泡を含んで構成され、HIFUエネルギーに曝されたときに、気体中/液体中においてキャビテーション効果が引き起こされて加熱される。他の実施形態では、形状記憶ポリマーは、電磁場によって加熱されてもよく、また、電磁場吸収物質で被覆されてもよい。
【0047】
特定の金属合金は、形状記憶の特質を有しており、温度変化及び/又は磁場曝露に対して反応する。温度変化に応答する代表的な形状記憶合金には、チタン−ニッケル合金、銅−亜鉛−アルミニウム合金、銅−アルミニウム−ニッケル合金、鉄−マンガン−ケイ素合金、鉄−ニッケル−アルミニウム合金、金−カドミウム合金、これらの組み合わせ、等が含まれる。
【0048】
形状記憶合金は、マルテンサイト及びオーステナイトと呼ばれる少なくとも2つの異なる固相で存在する。マルテンサイト相において、合金は比較的軟らかく容易に変形するのに対し、オーステナイト相において、合金は比較的堅固で容易には変形しない。例えば、一般に形状記憶合金は、マルテンサイト相に相変態するよりも相対的に高い温度で、オーステナイト相へ相変態する。形状記憶合金は、マルテンサイト開始温度(Ms)でマルテンサイト相への相変態を開始し、マルテンサイト終了温度(Mf)でマルテンサイト相への相変態を終了する。同様に、このような形状記憶合金は、オーステナイト開始温度(As)でオーステナイト相に相変態を開始し、オーステナイト終了温度(Af)でオーステナイト相への相変態を終了する。一般に、両変態は、ヒステリシスを有する。従って、温度Ms及び温度Afは、互いに一致せず、同様に、温度Mf及び温度Asも互いに一致しない。
【0049】
一実施形態によれば、形状記憶合金は、オーステナイト相において弓状の記憶形状を形成するように加工される。その後、形状記憶合金は、温度Mf未満に冷却されるとマルテンサイト相に相変態し、異なる構造(例えば実質的な直線又はカーブの大きい若しくは小さい第2弓状形状など)に変形する。この実施形態では、形状記憶合金のマルテンサイト相は、医師などの作業者がマルテンサイト相の装置の形状を手で調節して特定の患者に望ましく適合させることができる程度の充分な展性を有している。この装置を弁輪の周り又はその中に位置させた後、形状記憶合金は活性化温度(例えば、温度As〜温度Afの温度範囲)に加熱されて、それによって装置形状が非観血的に調節される。
【0050】
その後、形状記憶合金の温度上昇によってオーステナイト相に相変態すると、合金は変形形状から記憶形状へと変形する。形状記憶合金の活性化によって組織形成装置に形状変化がもたらされるときの活性化温度は、その活性化処理中に、組織形成装置に隣接する体組織に与えうる副次的な損傷を軽減又は排除できるように選択され、組織形成装置に組み込むことができる。一実施形態によれば、適切な形状記憶合金の例示的な温度Afは、約45℃〜約50℃の範囲内にあり、適切な形状記憶合金の例示的な温度Asは、約42℃〜約53℃の範囲内にある。さらに、例示的な温度Msは、約10℃〜約20℃の範囲内にあり、例示的な温度Mfは、約−1℃〜約15℃の範囲内にある。組織形状装置の形状は、所望の臨床結果を得るために必要な調節が達成できるように、実質的に即座に全てを変化させたり、小さなステップに分けて逐次変化させたりすることができる。
【0051】
さらに、特定の形状記憶合金は、菱面体晶相を含んで構成されてもよい。この菱面体晶相は、菱面体晶開始温度(Rs)及び菱面体晶終了温度(Rf)を有し、オーステナイト相とマルテンサイト相との間に存在する。このような形状記憶合金の例としては、Memry社(ベセル、コネティカット)から市販されているNiTi系合金がある。一実施形態によれば、例示的な温度Rsは、約30℃〜約50℃の範囲内にあり、例示的な温度Rfは、約20℃〜約35℃の範囲内にある。菱面体晶相を有する形状記憶物質を用いる利点の一つは、オーステナイト相の一般に堅固な構造や、マルテンサイト相の一般に変形し易い構造と比較して、その菱面体晶相において形状記憶物質が部分的に物理的変形する点にある。
【0052】
特定の形状記憶合金は、磁場に曝されて、マルテンサイト相からオーステナイト相まで相変態する場合に、強磁性形状記憶効果を示す。従って、強磁性形状記憶合金を含んで構成される組織形成装置を、第1形状を有する第1構造で植え込み、その後、温度Asを超えて形状記憶物質を加熱することなく、第2形状(例えば、記憶形状)を有する第2構造へと変形させてもよい。しかも、有利にも、弁形成リング周辺の正常組織は、損傷を受ける虞のある高温には曝さらされない。さらに、強磁性形状記憶合金を加熱する必要がないので、組織形成装置のサイズ及び/又は形状を、熱活性化を行うよりも急速且つ均一に調節することができるようになる。
【0053】
例示的な強磁性形状記憶合金には、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa、Co−Ni−Al、等がある。また、上記形状記憶物質のうちの幾つかは、温度変化に応答して形状変化するものであってもよい。このように、物質の形状は、物質を磁場に曝すことにより若しくは物質温度を変化させることにより、又はこの両方を行うことによって調節することができる。
【0054】
一実施形態によれば、異なる形状記憶物質の組み合わせが用いられる。例えば、一実施形態における組織形成装置は、形状記憶ポリマーと形状記憶合金(例えば、NiTi)との組み合わせを含んで構成される。この実施形態では、組織形成装置は、形状記憶ポリマー本体と、この本体内に配設された形状記憶合金(例えば、NiTi)と、を含んで構成される。また、この実施形態は、可撓性があり、及び、疲労特性に影響を与えずに形状記憶合金のサイズ及び形状をさらに小さくすることができる。さらに、又は他の実施形態において、例えば、拡張と収縮が可能な二方向性(双方向性)組織形成装置を作り出すために、形状記憶ポリマーが形状記憶合金と共に用いられる。二方向性組織形成装置は、異なる特性を有する多種多様な形状記憶物質の組み合わせによって製造される。
【0055】
一実施形態によれば、組織形成装置は、少なくとも1つの電磁物質を含む。この電磁物質は、組織形成装置の形状及び/又はサイズを動的に変化させるように活性化されるように構成される。例えば、電磁物質を、活性化時に、組織形成装置の他の部分、例えば永久磁石又は他の強磁性物質など、と相互作用させて、前記装置の形状が変化するように構成してもよい。一実施形態によれば、電磁物質は、患者の体外に位置した電磁伝達装置(electromagnetic transmitter)、例えば抵抗コイル、によって活性化される。
【0056】
本明細書に用いられる「強磁性体(材料)」の用語は、広義に用いられ、通常の意味にも用いられると共に、電子スピンの向きを外部磁場に合わせる原子を備えた物質等のように容易に磁化されるあらゆる物質が含まれ、又、これに限定されるものではない。強磁性材料には、種々の方法によって磁化される永久磁石、及び永久磁石に引きつけられる物質(例えば、金属)が含まれる。また、強磁性材料には、患者の心臓の外に配置した電磁伝達装置によって活性化される電磁物質も含まれる。
【0057】
さらに、強磁性材料には、磁性粒子が生体適合性ポリマー等のポリマーマトリックス内に結合した1以上のポリマー−ボンド磁石を含ませてもよい。磁性物質は、等方性物質及び/又は異方性物質、例えば、NdFeB(ネオジム‐鉄‐ホウ素)、SmCo(サマリウム‐コバルト)、フェライト及び/又はAlNiCo(アルミニウム‐ニッケル‐コバルト)粒子などを含んで構成することができる。生体適合性ポリマーは、例えば、ポリカーボネート、シリコーンゴム、ポリウレタン、シリコーンエラストマー、可撓性又は半剛性プラスチック、これらの組み合わせ等を含んで構成される。
【0058】
以下の説明において、本発明を実施し得る特定の形態又は過程及びその一部を、添付図面を参照して説明する。ここで、同一参照番号は、可能な限り、図面を通して同様又はそれに近い構成要素を参照するために用いる。幾つかの実施形態において説明する多くの具体的な詳細は、本開示をより理解し易いように記載したものである。従って、本開示は、後述する具体的な詳細以外によって実施されることができ、また、本明細書に記載された構成及び方法と均等なものによっても実施することができる。さらに、周知の構成要素及び方法は、本開示の特徴を不要に不明確にしないようにするため詳述しない。
【0059】
図1は、ヒトの心臓100の断面図である。尚、心臓の特徴のいくつかは、図を明確にするために示していない。図1は、左心房104と左心室106との間に位置する僧帽(左房室)弁102、及び右心房110と右心室112との間に位置する三尖弁108を一般的に図示したものである。右心室112は、酸素の不足した血液を、体内から肺に汲み上げる。矢印114で示すように、血液は肺から左心房104に戻される。そこでは、血液は、僧帽弁102を通って左心室106に送り出される。左心室106から、血液は大動脈に送り込まれて、体内の組織や器官を再循環し、再び右心房110に戻ってくる。
【0060】
図2は、図1に示された心臓100の左心室106の断面図である。ここでは、心収縮期の間における、左心房104への血液の逆流を矢印202で示す。僧帽弁102は、第1弁尖204、第2弁尖206及び弁輪208を含んで構成される。弁輪208はまた、線維輪としても知られている。健康時には、僧帽弁輪208は、弁尖204、206を囲み、それらの間隔を維持して、左心室収縮の間の弁を閉鎖する。左心室106から左心房104への血液の逆流は、僧帽弁102による弁尖204、206の閉鎖が不完全であることによる。
【0061】
磁気組織形成装置
【0062】
図3A及び図3Bは、図1に示された心臓100の左心室106の断面図であって、本発明の一実施形態による、僧帽弁尖204、206に隣接した心筋組織304に植え込まれた複数の磁気組織形成装置302を図示している。組織形成装置302の配置及び帯磁方向により、矢印306で示すような相互引力が、複数の組織形成装置302の少なくとも2つの間に生じる。相互引力は、弁尖204、206に隣接する心筋組織304の距離を縮めるように、そして順に、図3Bに示すように、弁尖204、206間の距離を縮めるように、構成されている。したがって、複数の組織形成装置302は、有利にも僧帽弁輪208の寸法の少なくとも1つを再形成することができ、それによって、心収縮期の間の弁尖204、206の接合を改善し、僧帽弁閉鎖不全症による逆流を減少させることができる。
【0063】
図4A及び図4Bは、図1に示された心臓100の左心室106の断面図であって、僧帽弁102を含む面を挟んで互いに対向するように植え込まれた相互に引き合う2つの磁気組織形成装置302を図示している。図4Aに図示したように、弁尖204は矢印402で示されるように逸脱した状態にある。このとき、弁尖204は左心房104側に飛び出して、他の弁尖206との十分な接合が得られない状態にある。2つの組織形成装置302は、初期の配置時には、破線及び矢印404で示される距離だけ離される。一旦、組織形成装置302が配置装置又はカテーテルから放たれると、相互引力によって、矢印406に示されるように、2つの組織形成装置302が互いに引き寄せられる。
【0064】
図4Bに図示されるように、複数の組織形成装置302同士の引力は、その組織形成装置302に隣接する組織を作り直し(remodel)、それによって組織形成装置302に隣接する弁尖204のアンカーポイントを移動する。破線で示された初期のアンカーポイントと比較されるように、弁尖204のアンカーポイントの下方移動は、2つの組織形成装置間の距離が短くなることに起因する。弁尖204のアンカーポイントの下方移動によって、弁尖204の逸脱は軽減し、弁閉鎖及びその機能は改善される。
【0065】
図3A〜図4Bを参照する。組織形成装置302は、そのサイズと比較して強い磁場を生じる任意の適当な構造、及び、人体に植え込むのに適当な生体適合性を有していてもよい。一実施形態によれば、複数の組織形成装置302のうちの1つ以上は、磁性物質を含んで構成される。本実施形態による組織形成装置302は、円盤型磁石(disc shaped magnet)である。この円盤型磁石は、所望の効果が得られるように、引力を得るように配置された極、及び反発力を得るために配置された対抗する極を有する。この実施形態では、複数の組織形成装置302の内の1つ以上は、その直径及び/又は厚みが約0.25mm〜約0.5mmの範囲内である。これにより、組織形成装置302の配置及び/又は心筋組織304からの除去が容易になる。他の実施形態では、複数の組織形成装置302の内の1つ以上は、ロッド状、球形、円柱、立方体などの形状を有していてもよい。この実施形態では、複数の組織形成装置302の内の1つ以上は、その長さが約3.0mm〜約8.0mmの範囲内であり、その横断寸法又は直径が約0.25mm〜約0.5mmの範囲内である磁性ロッドを含む。
【0066】
組織形成装置302について選択された形状(単数又は複数)は、生じさせる所望の場(フィールド)、複数の組織形成装置302間に生じる相互の力(単数及び複数)、これらの組み合わせ等のファクターに、少なくとも部分的に、依存してもよい。任意の適切な数の組織形成装置302を、特定の処置に用いてもよい。この植え込まれる組織形成装置302の数は、いくつかの処置について、約2〜約20の範囲としてもよい。他の実施形態では、20を越える組織形成装置302を用いてもよい。
【0067】
一実施形態において、組織形成装置302は、強磁性物質を有利に含んで構成される。特定の好ましい実施形態において、複数の組織形成装置302の内の少なくとも1つは、希土類元素又は希土類合金の1つ以上を含む。この希土類合金には、例えば、NdFeB(ネオジム‐鉄‐ホウ素)、SmCo(サマリウム‐コバルト)、AlNiCo(アルミニウム‐ニッケル‐コバルト)、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0068】
一実施形態によれば、複数の組織形成装置302の1つ以上は、約300ガウス(約0.03テスラ)〜約3000ガウス(約0.3テスラ)の範囲の磁場を伴う約0.2Ibf(約0.9N)〜約0.5Ibf(約2N)の範囲の力を生じることができる。一実施形態によれば、組織形成装置302の外表面は、生体適合性ポリマー材料の薄いコーティングで覆われる。この生体適合性ポリマーは、例えば、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))である。ステンレス鋼の外側の層として、3166ステンレス鋼や、又は他の生体適合性合金、を用いてもよい。
【0069】
ここでは特定の実施形態について開示を行っているが、組織形成装置302は、他の多種多様な形態及び/又は形状を有してもよい。例えば、一実施形態によれば、複数の組織形成装置302は、少なくとも1つの永久磁石(例えば希土類合金)、及び、前記永久磁石(単数又は複数)から放射される磁場に応答する少なくとも1つの一般に磁化されていない強磁性部分を含む。他の実施形態では、複数の組織形成装置302は、少なくとも1つの電磁石を含む。この実施形態では、電磁石(単数又は複数)を活性化するために、電磁伝達装置(例えば抵抗コイル)を用いてもよい。この電磁伝達装置は、心臓100の外側に有利に配置されてもよく、複数の組織形成装置302を心筋組織304内に位置させた後に、複数の組織形成装置302の1つ以上を非観血的に磁化するのに用いられてもよい。
【0070】
他の実施形態において、組織形成装置302は、少なくとも1つの磁性構造体を含んで構成されてもよい。この磁性構造体は、硬質強磁性(hard ferromagnetic)物質を含んで構成される磁石と、この磁石の少なくとも一部を覆う軟性強磁性(soft ferromagnetic)物質を含んで構成される磁束シールドとを含む。磁束シールドを、このシールドが覆っていない方向に(例えば、他の磁石の方向に)、磁石の磁束を集中及び強化するために用いてもよい。
【0071】
典型的に、複数の組織形成装置302は、互いの相互作用により、心筋組織304の形状を変化させる。これによって、前述のように、僧帽弁輪208の形状に変化をもたらすことができる。後述のように、一実施形態によれば、複数の組織形成装置302は、僧帽弁輪208に植え込まれ、互いの相互作用により僧帽弁輪208に直接的に変化を生じさせる。組織形成装置302の位置に関係なく、一実施形態によれば、相互作用は、組織形成装置302間で、引力(例えば、異なる極性間で起こる引力)及び/又は反発力(例えば、同じ極性間で起こる反発力)を生じさせる磁気相互作用である。
【0072】
形状記憶組織形成装置
【0073】
図5A〜図5Cは、図1に示された心臓100の左心室106の断面図であって、本発明の一実施形態による、僧帽弁102の弁尖204、206に隣接する心臓組織304に配置された形状記憶物質(例えば、上述の形状記憶物質)を含んで構成される2つの組織形成装置502を図示している。組織形成装置502を用いる心臓組織304には、例えば、心筋層、心臓100の心室中隔、左及び/若しくは右の線維三角、又は左心房104若しくは右心房110の壁が含まれる。図5Aにおいて、組織形成装置502は、形状記憶物質が非活性(例えば、マルテンサイト)状態にある第1構造を有する。この第1構造において、組織形成装置502は実質的に直線状である。一実施形態によれば、この実質的に直線状の構造は、組織形成装置502の縦軸が僧帽弁102を含む面に対して実質的に垂直となるように、組織形成装置502を心筋組織304に有利に容易に配置できるように選択される。他の実施形態では、第1構造における組織形成装置502は、僅かに弓状形状を有する。
【0074】
組織形成装置502を心筋組織304に植え込んだ後、適切なエネルギー源(例えば、前述したエネルギー源の1以上)を用いて、組織形成装置502を活性化する。図5B及び図5Cに示すように、活性状態(例えば、オーステナイト)において、組織形成装置502は、第1構造の実質的に直線状又は僅かに弓形な形状よりも屈曲の大きい弓状形状を有する第2構造に変化する。したがって、組織形成装置502は、活性化されると、僧帽弁204、206の基部に隣接する領域における心筋組織304を、破線及び矢印504、504間の距離で示されるように、再形成することができる。図示されるように、活性化後の図5B及び図5Cにおいて矢印504、504で示された距離は、活性化前の図5Aに示されたものよりも広い。したがって、組織形成装置504は、弁尖204、206の内側の先端を互いの方に有利に移動させ、それによって、より良好な閉鎖と弁機能を形作る。
【0075】
一実施形態によれば、組織形成装置502は、心筋組織304の移動によって、約2.22ニュートン(0.5重量ポンド)〜約13.34ニュートン(3.0重量ポンド)の範囲の圧力又は力を生じ、それによって僧帽弁102の寸法の少なくとも1つを変化させることができる。このような圧力が、弁尖204、206を約5.0mm〜約15.0mmの範囲の距離で互いに近づく移動を生じさせる。一実施形態によれば、組織形成装置502は、各弁尖を約2.0mm〜約30.0mmの範囲の距離で互いの方向へ押すように構成される。
【0076】
図5Bに示すように、一実施形態によれば、組織形成装置502は心筋組織304に植え込まれ、その活性化時には、組織形成装置502の端部が僧帽弁208を様々な方向に押すようになる。特に、組織形成装置502は、動的に調節され、それにより組織形成装置502の凹部又は凹状側面は、弁尖204、206を互いの方向へ押して、より改善された接合が容易に得られるようにする。他の実施形態では、図5Cに示すように、組織形成装置502は心筋組織304に植え込まれ、活性化時には、組織形成装置502の凸部又は凸状側面が僧帽弁208の方に曲がることで、弁尖204、206を互いの方向へ移動させて、より改善された接合が容易に得られるようにする。
【0077】
図6A〜図6Dは、本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置502の概略図である。組織形成装置502は、形状記憶物質、例えば、前述の形状記憶物質の1以上を含んで構成される。図6Aでは、組織形成装置502は、形状記憶物質が活性化されていない(例えば、形状記憶物質はマルテンサイト状態にある)第1構造で示されている。一実施形態によれば、組織形成装置502は、長さは最長で約3.0mm〜約8mmの範囲内である細長本体を有する。例示的な実施形態において、組織形成装置502の長さは最長で約6mmである。他の実施形態では、組織形成装置502の長さは最長で約8mm〜約15mmの範囲内である。
【0078】
図6Bに示すように、一実施形態によれば、組織形成装置502は円形横断面を有する。この実施形態では、組織形成装置502の直径又は横断寸法は、約0.005インチ(約0.1ミリメートル)〜0.020インチ(約0.51ミリメートル)の範囲内である。当業者であれば、本明細書の開示から、組織形成装置502が他の断面形状、例えば、楕円形、正方形、長方形、又は他の多角形、を含み得ることを認識するであろう。例えば、図6Cは、他の実施形態による、長方形の断面を有する形状記憶部材502の横断面図を示している。
【0079】
図6Dには、形状記憶物質の活性状態(例えば、オーステナイト状態)にある第2構造の組織形成装置502(実線)が示されている。第2構造において、組織形成装置502は、矢印602で示された曲率半径を有する弓形形状をとる。一実施形態によれば、活性状態の曲率半径は、約0.10インチ(約2.5ミリメートル)〜約0.30インチ(約7.6ミリメートル)の範囲内である。加えて、または他の実施形態において、組織形成装置502は、第3構造(図6D、破線)に調整可能である。第3構造において、組織形成装置502の両端部の距離は、第2構造時よりも縮まるように構成される。この実施形態では、第3構造は、心筋組織304により大きい圧力を作用させるように、またそれに対応する圧力を僧帽弁208に作用させるように、有利に用いることができる。したがって、組織形成装置502を更に調整することで、一層の補強及び弁尖接合を提供することができる。
【0080】
他の実施形態では、組織形成装置502の両端部は、組織形成装置502が第2構造から第3構造に変形するのに伴って、互いに更に離れるように移動する。この実施形態では、組織形成装置502は、第3構造において、第2構造時よりも小さな圧力を心筋組織304及び僧帽弁208に作用させる。有利なことに、これにより僧帽弁輪208のサイズを、肥大した心臓がその通常サイズに戻るのに伴って整えることができる。
【0081】
当業者であれば、本明細書の開示から、1つの組織形成装置502、2つの組織形成装置(図5A〜図5C)、又は2以上の組織形成装置502を、僧帽弁輪208について所望の再形成を達成するために用いることができることを認識するであろう。例えば、図7は心臓100の左心室106の断面図であり、形状記憶物質を含んで構成され、僧帽弁輪208(破線の第1セットで示す)内に植え込まれた複数の組織形成装置502を示している。図7に示すように、この実施形態では、組織形成装置502は弓形形状を有する第1構造で植え込まれる。活性化されると、組織形成装置502は、第1構造よりも屈曲の大きい弓形形状を有する第2構造に変形する。弁尖204、206間の距離は、組織形成装置502が第1構造にあるとき(例えば、実線で示された弁尖204、206)よりも、組織形成装置502が第2構造にあるとき(例えば、破線で示された弁尖204、206)に短くなる。組織形成装置502が活性化されると、破線702で示されるように、僧帽弁輪208も小さな周径を有するようになる。
【0082】
有利にも、一実施形態によれば、組織形成装置502を、その植え込み後に選択的に活性化することで、僧帽弁208を部分的に再形成することができる。例えば、この実施形態では、複数の組織形成装置502の内の1つ以上は第1温度で活性化されるように構成され、複数の組織形成装置502の内の他の1つ以上は第2温度で活性化されるように構成されている。加えて、又は他の実施形態において、複数の組織形成装置502の内の1つ以上は、第1周波数を有する第1電磁波に応答して活性化されるように構成され、複数の組織形成装置502の内の他の1つ以上は、第2周波数を有する第2電磁波に応答して活性化されるように構成されている。したがって、僧帽弁輪208を、1以上の寸法について一度に選択的に再形成することができる。1度に活性化する組織形成装置を複数の組織形成装置502から1つ以上選択することで、僧帽弁輪208のサイズを、弁尖204、206間に所望の接合が得られるまで、段階的に変更することができる。
【0083】
一実施形態によれば、複数の組織形成装置502は、僧帽弁輪208内又はその周りにおいて、この組織形成装置502夫々の位置において異なる圧力を及ぼすように構成されている。加えて、又は他の実施形態では、他の構造、形状、サイズ等を、複数の組織形成装置502の少なくとも1つについて用いてもよい。更に他の実施形態では、僧帽弁輪208について特定の治療結果を得るために、用いる組織形成装置502の数を増減させてもよい。更に、他の実施形態では、僧帽弁輪208に類似の変化をもたらすように、2以上の組織形成装置502を平行に並べる構成で隣合うように位置させてもよい。更に、他の実施形態では、複数の組織形成装置502は、夫々が異なる長さ、異なる形状を有してもよく、また、僧帽弁輪208及び弁尖204、206に様々な力を提供するように組織形成装置502に変更が加えられてもよい。
【0084】
図8A及び図8Bは、例示的な実施形態による、僧帽弁輪208に植え込まれた4つの組織形成装置502(1)〜502(4)の上面概略図である。第1組織形成装置502(1)及び第2組織形成装置502(2)は、僧帽弁輪208の前側及び後側に植え込まれる。第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)は僧帽弁輪208の上側と下側に、また第1組織形成装置502(1)と第2組織形成装置502(2)との略中間に、植え込まれる。一実施形態によれば、4つの組織形成装置502(1)〜502(4)は、所望の治療効果が得られるまで、1つずつ活性化される。図8Aは、活性化前の組織形成装置502(1)〜502(4)を示し、図8Bは、活性化後の組織形成装置502(1)〜502(4)を示している。
【0085】
例えば、第1組織形成装置502(1)は、本明細書に記載されたように、エネルギーが与えられることで活性化され、これによりその形状記憶物質の温度が第1活性化温度まで上昇する。一旦第1組織形成装置502(1)が活性化されると、この第1組織形成装置502(1)は弁尖204、206をともに前/後方向に押す。その後一実施形態によるイメージング技術を用いて、弁尖204、206間の間隙802を閉鎖する程に及び所望のレベルまで逆流を減少させる程に十分な接合が弁尖204、206間に得られているかどうかを測定確認する。
【0086】
十分な接合が得られていない場合、エネルギーを再び加えて、第2組織形成装置502(2)の温度を第2活性化温度以上に上昇させ、それによってその形状記憶物質を活性化させることができる。この実施形態では、第2活性化温度は第1活性化温度よりも高くなるように構成されている。一旦第2組織形成装置502(2)が活性化されると、この第2組織形成装置502(2)は弁尖204、206をともに前/後方向に押す。そして、十分な接合が得られているかどうかを確認するため再び逆流を測定する。したがって、第1組織形成装置502(1)及び第2組織形成装置502(2)を僧帽弁輪208の前/後方向の再形成に用いることができ、また、逆流を十分に減少させることができる。
【0087】
更に再形成する必要がある場合、第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)を、引き続き第3活性化温度及び第4活性化温度に夫々加熱することで、活性化させることができる。この実施形態では、第3活性化温度は第2活性化温度よりも高く、第4活性化温度は第3活性化温度よりも高くなるように構成される。他の実施形態では、組織形成装置502(1)〜502(4)のうちの2つ以上が同時に活性化されるように構成されている。例えば、第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)の両方が、第3活性化温度に達したときに活性化されてもよい。他の実施形態では、組織形成装置502(1)〜502(4)の1つ以上が、異なる形態のエネルギーで活性化されてもよく及び/又は実質的に加熱されることなく活性化されてもよい。例えば、第1組織形成装置502(1)及び第2組織形成装置502(2)の少なくとも1つが、集束超音波エネルギーで活性化されてもよいし、第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)の少なくとも1つが、磁場に曝されたときに実質的に加熱されることなく活性化されるように構成された強磁性形状記憶合金を含んで構成されてもよい。
【0088】
ここでは特定の実施形態について記載を行っているが、組織形成装置502は、僧帽弁輪208の再形成に適した他の形状又は構造をとってもよい。例えば、組織形成装置502のある実施形態では、2つの構造(例えば、オーステナイト相及びマルテンサイト相)のみの間で変形してもよいし、組織形成装置502は3つ以上の構造の間で変形を行ってもよい。更に、組織形成装置502の他の実施形態では、組織形成装置を屈曲させるのではなく、又は屈曲と組み合わせることにより、組織形成装置の両端部がその間の距離を縮めるように移動するように寸法を変化させてもよい。例えば、組織形成装置502のセグメント(例えば、本質的に形状記憶物質から成るセグメント)のみを選択して、形状を変化させてもよい。
【0089】
組織形成装置502の変形(少なくとも第1構造から第2構造への変形)は、いくつかの方法で行われてもよい。一実施形態によれば、組織形成装置502は、温度変化及び/又は磁場露出に応答する形状記憶物質を含んで構成される。図6A及び図6Dを参照すると、一実施形態によれば、組織形成装置502は、組織形成装置502を第1構造から第2構造に調節するために用いることのできる形状記憶部分を少なくとも1つ含む。例えば、第1構造を、形状記憶部分がマルテンサイト相であるときと対応させてもよく、第2構造を、形状記憶部分がオーステナイト相であるときと対応させてもよい。他の実施形態では、第2構造を、形状記憶物質が菱面体晶相であるときと対応させてもよく、第3構造を、形状記憶物質がオーステナイト相であるときと対応させてもよい。
【0090】
上記のように、形状記憶物質には、形状記憶ポリマー(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA))及び/又は、強磁性形状記憶合金(例えば、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa、Co−Ni−Al)を含む形状記憶合金(例えば、ニッケル‐チタン)を含んでもよい。この実施形態では、組織形成装置502は、エネルギー源を使用することで生体内で調節される。このエネルギー源は、例えば、無線周波数エネルギー、X線エネルギー、マイクロ波エネルギー、HIFUエネルギーなどの音響エネルギー、光エネルギー、電場エネルギー、磁場エネルギー、これらの組み合わせ、等を含み、又、これらに限定されるものではない。
【0091】
好ましくは、本明細書で詳述されるように、エネルギー源は非観血的な方法で患者の体外から与えられる。例えば、磁場及び/又はRFパルスを、患者の心臓内にある組織形成装置502に、患者の心臓の外部にある及び/又は組織形成装置502に接続されていない装置を用いて、与えることができる。このような磁場及び/又はRFパルスは、一般に磁気共鳴イメージング(MRI)に用いられている。なお、他の実施形態として、カテーテルを体内に挿入し、該カテーテルを介してエネルギーを与えるなど、エネルギー源を外科的に提供するようにしてもよい。
【0092】
一実施形態によれば、組織形成装置502は、1周期の間にオンとオフの期間を有するエネルギーの短パルスによって選択的に加熱される。エネルギーパルスは、部分的に加熱することができるため、植え込み片全体を調節することなく組織形成装置502を部分的に調整することができる。
【0093】
一実施形態によれば、組織形成装置502は、基準周囲温度(例えば、37℃の基準体温)とは異なる温度への変化に応答する形状記憶物質を含んで構成される。例えば、組織形成装置502は、該組織形成装置502の加熱時に、形状記憶物質の温度Asを超えると収縮を開始して応答するように構成されている。
【0094】
組織形成装置502が収縮(例えば、垂直寸法について増加)する活性化温度(例えば、温度As〜温度Af)は、その活性化処理中に、組織形成装置502に隣接する体組織に与えうる副次的な損傷を軽減又は排除できるように選択し、組織形成装置502に組み込むことができる。実質的に最大収縮を生じさせる温度Afであって、組織形成装置502の形状記憶物質における例示的な温度Afは、約38℃〜約75℃の温度範囲内にある。形状記憶ポリマーを含んで構成された組織形成装置502の幾つかの実施形態において、物質のガラス転移又は実質的に最大収縮を生じさせる活性化温度は、約38℃〜約60℃の温度範囲内にある。他の実施形態では、活性化温度は、約45℃〜約50℃の温度範囲内にある。
【0095】
一実施形態によれば、組織形成装置502の形状は、その製造時に、オーステナイト相において、弓形形状であり相対的に長い垂直寸法を有するような記憶構造に設定される。この組織形成装置502は、温度Mf未満に冷却後、より短い垂直寸法を有する形状に手動で変形される。この実施形態では、組織形成装置502は、マルテンサイト相において、医師などの作業者が手で形状を調節して、所望の移植時サイズが得られる程度に充分な展性を有している。一実施形態によれば、組織形成装置502の開始時形状は、弁尖接合を改善し、僧帽弁102における逆流を減少させるように選択されている。
【0096】
形状記憶合金(例えば、NiTi系合金)又は形状記憶ポリマーの連続性のある部分から形成される組織形成装置502の幾つかの実施形態では、前述した方法を用いて、外科的及び/又は非観血的に加熱エネルギーを与えることで、組織形成装置502を活性化させることができる。強磁性形状記憶合金の連続性ある部分から形成される組織形成装置502の幾つかの実施形態では、適切な磁場を与えると非観血的に組織形成装置502を活性化することができる。
【0097】
また、組織形成装置502は、異なる温度応答曲線を有する形状記憶物質のセクション又は領域を2以上含んで構成されてもよい。形状記憶応答領域は、全体又は部分の収縮時に、組織形成装置502が所望の構造となるように構成されてもよい。
【0098】
一実施形態によれば、組織形成装置502の形状記憶部分は、その組織形成装置502の長さの半分を超えるように構成される。複数の形状記憶部分を有する本発明の幾つかの実施形態では、この複数の形状記憶部分のうちの1つ以上が、組織形成装置502の長さの半分よりも短い長さを有してもよく、それと同時に、それぞれの形状記憶部分の長さの合計が組織形成装置502の長さの半分を超えるように構成されてもよい。
【0099】
非観血的又はカテーテルによる組織形成装置502の形状変更処理では、望ましい臨床結果が得られるように、一度で全てを変化させるか又は段階的に変化させることができる。組織形成装置502の温度が、実質的に最大変形収縮温度Afに達しない場合、部分的に形状記憶変形及び収縮が起こってもよい。
【0100】
体内に植え込んだ後、好ましくは、組織形成装置502は、この組織形成装置502を加熱するためのエネルギーが患者の身体に与えられることで、非観血的に活性化される。一実施形態によれば、前述したように、MRI装置が組織形成装置502の加熱に用いられる。このとき、組織形成装置502の形状記憶物質は、オーステナイト相に相変態して、その関連構造(収縮構成)に変形する。このように、組織形成装置502の形状を、外科的な行為を必要とすることなく生体内で縮めることができる。MRI装置が作り出す磁場を組織形成装置502に集束させるために、通常の技術を用いてもよい。例えば、導電コイルで患者体を組織形成装置502が対応する領域において包むことで、磁場を集束させることができる。他の実施形態では、形状記憶物質は、前述したように、他のエネルギー源に曝されることで活性化される。
【0101】
組織形成装置502の形状変化は、MRI画像診断、超音波画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)、X線等を用いて評価又はモニタすることができる。
磁性エネルギーを用いて組織形成装置502を活性化させ収縮させる場合には、例えば、組織形成装置502の活性化に必要とされるよりも弱い電界強度を発生するMRI画像診断技術を用いることができる。
【0102】
前述に加えて、本明細書に記載した組織形成装置の幾つかの実施形態は、組織形成装置を心筋組織304に固定する受動固定機構を少なくとも1つ含んでもよい。このような受動固定機構によって、組織形成装置は、一時的に又は永久に、心筋組織内よりはむしろ僧帽弁輪208の表面又はその近傍の表面に、図5A〜図5C及び図8A〜図8Bに図示されるように、取り付けられる。
【0103】
例えば、図9は、形状記憶本体部材902を含む組織形成装置900を示す概略図である。この形状記憶本体部材902はその表面上に1以上の固定アンカー904を規定(define)するように構成されている。一実施形態によれば、前記本体部材は、実質的に上記組織形成装置502と類似している。アンカー904は、組織形成装置900の外表面と結合していてもよいし、その外表面に組み込まれていてもよい。アンカー904は、僧帽弁輪208上に又はその近傍にしっかりと取り付けられるように、心筋組織304の表面を突き通るように構成される。一実施形態によれば、アンカー904は、心筋組織304の表面から外れることを予防し又はその可能性を低減するために、鉤状の突起を有する。一実施形態によれば、アンカー904は、可撓性物質(例えば、シリコーン又はポリウレタン等)を有利に含んで構成される。他の実施形態では、アンカー904は、編組物質(例えば、ステンレス鋼、ナイロン又は他の金属及び/若しくはポリマーの適当な組み合わせなど)で有利に構成される。
【0104】
他の実施形態では、他のタイプの受動固定機構を用いてもよい。例えば、組織形成装置900は、とげ様突起、アンカーパッド、スパイク、らせん状突起若しく円形突起又はこれらの組み合わせなどを含んでもよい。加えて、又は他の実施形態において、複数タイプの受動固定機構が、同様の組織形成装置900とともに用いられてもよい。本発明の実施形態に用いることができる他のタイプの固定機構としては、能動固定機構(例えば、ねじ込み式機構又は形状記憶物質を含んで構成されるアンカーなど)もまた含まれる。
【0105】
図10は、心臓100の左心室106の断面図であり、僧帽弁輪208(破線の第1セットで示す)の上又はその近傍に植え込まれた複数の組織形成装置900を示している。図示されるように、アンカー904は心筋組織304にしっかりと埋め込まれている。この実施形態では、組織形成装置900は、弓形形状を有する第1構造において植え込まれる。活性化されると、組織形成装置502は、第1構造よりも屈曲の大きい弓形形状を有する第2構造に変形する。したがって、組織形成装置は、本明細書に記載されているように、弁尖の接合を改善し、逆流を減らすよう、僧帽弁輪208を再形成するように構成されている。
【0106】
組織形成装置502、900は、一般的にロッド状装置として、例えば図6A及び図6Bに、描かれたものとは異なる形状又は形態を有してもよい。例えば、組織形成装置502は、らせん形状、弓状形状、S字形状、リボン状形状、曲線形状、編組ワイヤ、多重ワイヤ、これらの組み合わせ等を含んで構成されてもよい。
【0107】
図11は、動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪208の寸法の少なくとも1つについて変化を生じさせる、例示的な実施形態による組織形成装置1100の概略図である。組織形成装置1100は、第1構造において代表的には、破線で示すように均一なロッド形状を有する。第2構造において、組織形成装置1100は、突起部1102を組織形成装置1100の長さ方向の中心近くに形成する。一実施形態によれば、突起部1102は、心筋組織304を有利に押し、僧帽弁輪208を再形成する。それによって、弁尖204、206が互いに近づくように移動し、より改善された接合が容易に得られるようになる。
【0108】
ここでは特定の実施形態について開示を行っているが、組織形成装置1100は、多数構造間での動的調節の間、他の形態及び/又は形状を有してもよい。例えば、組織形成装置1100は、多数の突起部を有してもよく、及び/又は、第2構造において弓形形状をとってもよい。
【0109】
図12は、動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪208の形状に変化を生じさせる他の例示的な実施形態による組織形成装置1200の概略図である。特に、組織形成装置1200は、少なくとも第1構造(破線)と第2構造(実線)の間で調節可能に構成される。第1構造において、組織形成装置1200は、心筋組織304内の組織形成装置1200の配置を有利に容易にするような、より長い又は拡大された(extended)形状を含む。第2構造において、組織形成装置1200は、収縮して、より幅の広い(例えば、より垂直寸法が長い)及びより長くない形状になる。
【0110】
図示されるように、組織形成装置1200は、端部1202、1204、中心突起部1206、及び側突起部1208、1210を含む曲線形状を有する。この中心突起部1206は、組織形成装置1200が第1構造から第2構造に収縮するにしたがって、僧帽弁輪208近傍の心筋組織302を押すように構成される。特に、組織形成装置1200の変形によって、弁尖204、204の一方が、本明細書に記載されているように、他方に向かって有利に移動し、それによってより改善された接合が容易に得られるようになる。加えて、又は他の実施形態において、組織形成装置1200を、側突起部1208、1210が僧帽弁輪116の寸法の少なくとも1つについて変化を生じさせるように、位置させてもよい。
【0111】
図13Aは、一実施形態による組織形成装置1300の部分拡大斜視図である。図示された組織形成装置1300は、ワイヤ1302及び可撓性物質1304を含んで構成される。説明の便宜上、ワイヤ1302を示すために可撓性物質1304を部分的に省いた状態で示してある。
【0112】
ここで、本明細書において用いている用語「ワイヤ(wire)」は、通常及び慣例的に用いられる意味を有し、さらに、これに限定するものではないが、例えば、メッシュ、フラット、丸型、帯(バンド)状又はロッド型などの各種形状のワイヤを含むものとする。
一実施形態において、ワイヤ1302の直径は、約0.0254mm〜約0.254mmの範囲内である。
【0113】
一実施形態によれば、ワイヤ1302は、形状記憶物質を含んで構成される。適当な形状記憶物質として、形状記憶ポリマー又は形状記憶合金が含まれる。例えば、一実施形態によれば、ワイヤ1302は、前述のように、加熱時にオーステナイト相に変態して記憶形状に変形するように構成されたNiTi合金を含んで構成される。この実施形態では、ワイヤ1302はオーステナイト相に変態したときに、収縮して弓形形状となるように構成されている。この実施形態では、オーステナイト開始温度Asは約33℃〜約43℃の範囲内であり、オーステナイト終了温度Afは約45℃〜約55℃の範囲内であり、マルテンサイト開始温度Msは約30℃未満であり、マルテンサイト終了温度Mfは約20℃以上である。他の実施形態では、オーステナイト終了温度Afは、約48.75℃〜約51.25℃の範囲内である。
【0114】
一実施形態によれば、ワイヤ1302の形状記憶物質を冷却することでその形状を変化させてもよい。特定の形状記憶合金(例えばNiTiなど)は、基準周囲温度よりも低温度で反応する。ワイヤ1302の加熱後、ワイヤ1302が温度Msよりも低い温度まで冷却されると、組織形成装置1300は拡張し始める。ワイヤ1302はまた、温度Mfよりも低い温度に冷却されると、マルテンサイト相への変態が終了するので、それによって収縮サイクルを逆転させることもできる。
【0115】
前述したように、特定のポリマーは二方向性形状記憶効果を示すので、ワイヤ1302に用いることで加熱プロセス及び冷却プロセスを通して組織形成装置1300を拡張及び収縮することができる。例えば、冷却液をカテーテルを介して組織形成装置1300上に若しくは組織形成装置1300内に通すことで、又は、冷却液若しくは気体を組織形成装置1300近傍に配置させたカテーテル内において循環させることで、組織形成装置1300を冷却することができる。NiTiを用いた実施形態において、冷却する及び収縮周期を逆転させる例示的な温度は、約20℃〜約30℃の範囲内にある。
【0116】
一実施形態によれば、ワイヤ1302は、エネルギー吸収強化物質(図示せず)を含んで構成される。このエネルギー吸収強化物質は、所望の加熱エネルギーを選択的に吸収し、この非観血的加熱エネルギーを、その後の熱伝導によってワイヤ1302に伝達する熱へと変換する物質又は化合物を含んで構成される。エネルギー吸収強化物質は、非観血的に与えられた低レベルエネルギーによって組織形成装置1300を作動及び調節することを可能にし、さらに、不伝導性物質(例えば、形状記憶ポリマー)をワイヤ1302に用いることを可能にする。一実施形態によれば、活性化のために約2.5テスラ〜約3.0テスラの範囲の磁束を用いる。エネルギー吸収強化物質は、より低いレベルのエネルギーの使用を可能にすることで、熱によって周辺組織が受ける損傷を軽減することができる。加えて、また他の実施形態において、エネルギー吸収強化物質は放射線不透過性を有する。適当なエネルギー吸収強化物質は、前述の通りである。
【0117】
一実施形態によれば、エネルギー吸収強化物質は、ワイヤ1302内に位置するか、又は、エネルギー吸収を高めるようにワイヤ1302の外側を覆ってもよい。エネルギー吸収強化物質について、エネルギー吸収強化物質を取り囲むキャリア部材(図示せず)が、又はエネルギー吸収強化物質との両方が、熱伝導性を有することが望ましい。これにより、エネルギー吸収強化物質からの熱エネルギーが、ワイヤ1302に伝えられる。
【0118】
更に他の実施形態において、ワイヤ1302は、上記の強磁性形状記憶物質を含んで構成される。この実施形態では、ワイヤ1302の形状は、組織形成装置1300及びワイヤ1302を磁場に曝すことで変形される。磁場を組織形成装置1300の調節に用いる場合、近傍の健康な組織が、その組織に損傷を与えうる高温に曝されることを回避することができる。更に、形状記憶物質が加熱を必要としないので、組織形成装置900の形状及び/又はサイズを、熱活性化によるよりも急速且つ均一に調節することができるようになる。
【0119】
引き続き図13Aを参照する。図示されたワイヤ1302は、可撓性物質1304に実質的に取り囲まれている。一実施形態によれば、可撓性物質1304は、生体適合性材料(例えばシリコーンゴムなど)を有利に含んで構成される。他の実施形態では、可撓性物質1304は、織ポリエステル布、ダクロン(登録商標)、織ベロア、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘパリンコート繊維、これらの組み合わせ等を含んで構成される。また、他の実施形態では、可撓性物質1304は、例えば、ウシ心膜又はウマ心膜、同種移植片、患者移植片、又は細胞播種組織(cell-seeded tissue)などの生体物質を含んで構成される。一実施形態によれば、可撓性物質1304は、連続性を有し、及び、実質的にはワイヤ1304全体を被覆している。また、他の実施形態では、可撓性物質1304は、ワイヤ902の一部分(例えばワイヤ1302の円周について選択された部分など)を被覆している。
【0120】
一実施形態によれば、可撓性物質1304は、ワイヤ1302が第1構造から第2構造に変形できるような、有利な厚みを有する。例えば、可撓性物質1304は、約0.05mm〜約0.762mmの範囲の厚みを有してもよい。
【0121】
前述したように、一実施形態によれば、サイズ変化の過程は、従来のイメージング技術を用いてリアルタイムで測定及びモニタすることができる。また、従来のイメージング装置が発生させるエネルギーを、形状記憶物質を活性化し、組織形成装置1300の少なくとも1つの寸法を変化させるために用いることもできる。
【0122】
さらに、組織形成装置1300は、異なる温度応答曲線を有する形状記憶物質のセクション又は領域を2以上含んで構成されてもよい。例えば、ワイヤ1302は、少なくとも2つの異なる形状記憶物質を含んで構成されてもよい。
【0123】
図9Bは、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354を含む組織形成装置1350の部分拡大斜視図である。さらに、第1コーティング1356、第2コーティング1358及び可撓性物質1360も示されている。ここでは、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354を示すために、これらを部分的に取り除いた状態を示している。
【0124】
一実施形態によれば、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354は、異なる特性を有した複数の形状記憶物質を有利に含んで構成される。例えば、第1ワイヤ1352は、第2ワイヤ1354が応答するよりも低温で応答するように構成されてもよい。この実施形態では、組織形成装置1350を多数の構造に有利に調節することができる。例えば、ワイヤ1352、1354の夫々が、2つの形状記憶状態又は形状記憶構造を含む場合、組織形成装置1350は、4つの状態又は構造の間で調節を行うことができる。
【0125】
一実施形態によれば、組織形成装置1350は、収縮及び拡張可能に構成される。
そのため、例えば、前述したように、組織形成装置1350の収縮後、組織形成装置1350を拡張する必要が生じてもよい。例えば、組織形成装置1350を、肥大した心臓を持つ子供に植え込んでもよい。このとき、心臓のサイズが正常に戻り始めて僧帽弁が一般的な標準形状に再形成されたときに、組織形成装置1350を調節することができる。その後、子供が成長してそれに伴い心臓も成長すると、必要に応じて組織形成装置1350を調節したり、心臓から取り除いたりすることができる。この実施形態では、第1ワイヤ1352を、組織形成装置1350を収縮するように構成し、第2ワイヤ1354を、組織形成装置1350を拡張するように構成してもよい。
【0126】
引き続き図13Bを参照する。第1ワイヤ1352の外表面は、第1コーティング1356によって実質的に取り囲まれ、第2ワイヤ1354の外表面は、第2コーティング1358によって実質的に取り囲まれている。一実施形態によれば、第1コーティング1356及び第2コーティング1358は夫々シリコーンチューブを含んで構成される。
【0127】
他の実施形態では、第1コーティング1356及び第2コーティング1358は夫々、エネルギー吸収物質(例えば上述のエネルギー吸収物質など)を含んで構成される。一実施形態によれば、第1コーティング1356はエネルギーの第1形態に曝されると発熱し、第2コーティング1358はエネルギーの第2形態に曝されると発熱する。例えば、第1コーティング1356はMRIエネルギーに曝されたときに発熱し、第2コーティング1358はHIFUエネルギーに曝されたときに発熱する構成とすることができる。他の例として、第1コーティング1356は第1周波数を有するRFエネルギーに曝されたときに発熱し、第2コーティング1358は第2周波数を有するRFエネルギーに曝されたときに発熱する構成にしてもよい。従って、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354は、一方がオーステナイト相に相変態し、他方がマルテンサイト相のままとなるように、互いに独立に活性化させることができる。
【0128】
図示されるように、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354並びに夫々のコーティング1356、1358は、可撓性物質1360で被覆される。この可撓性物質1360は、図13Aに示される可撓性物質1304と同様のもので構成することができる。一実施形態によれば、可撓性物質1312は、一方の形状変化が他方の形状に機械的に作用するように、第1ワイヤ1352と第2形状記憶ワイヤ1354とを有効に連結する。前述のように、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354は夫々に、異なる形状記憶物質(例えば異なる温度で活性化される上述の形状記憶物質など)を含んで構成されてもよい。
【0129】
一実施形態では、組織形成装置1350が第1温度に加熱されると、第1ワイヤ1352がオーステナイト相に変態し、その記憶形状に収縮する。第1温度において、第2ワイヤ1354はマルテンサイト相にあり、収縮した第1ワイヤ1352と比較すると実質的に可撓性を有する。したがって、第1ワイヤ1352がオーステナイト相に変態すると、第2ワイヤ1354を変形させるのに十分な力が可撓性物質1360を介して第2ワイヤ1354に作用し、それによって組織形成装置1350の形状に変化が生じる。
【0130】
また、組織形成装置1350は、組織形成装置を第2温度に加熱することによって拡張することができる。この第2温度では、第2ワイヤ1354がオーステナイト相に変態し、その記憶形状に拡張する。一実施形態によれば、第2温度は第1温度よりも高温であるように構成される。したがって、第2温度において、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354の双方が、オーステナイト相にある。
【0131】
一実施形態によれば、第2ワイヤ1354の直径は第1ワイヤ1352の直径よりも十分に大きく構成される。そのため、第2ワイヤ1354は、第1ワイヤ1352よりも大きな力を発揮することができ、その記憶形状を維持することができる。したがって、第1ワイヤ1352は、第2ワイヤ1354及び組織形成装置1350による力によって機械的に変形される。
【0132】
一実施形態によれば、第1ワイヤ1352は、オーステナイト相に変態したときに収縮するように構成されている。この実施形態において、第1ワイヤ1352のオーステナイト開始温度Asは約33℃〜約43℃の範囲内であり、オーステナイト終了温度Afは約45℃〜約55℃の範囲内であり、マルテンサイト開始温度Msは約30℃未満であり、マルテンサイト終了温度Mfは約20℃以上である。他の実施形態では、第1ワイヤ1352のオーステナイト終了温度Afは、約48.75℃〜約51.25℃の範囲内である。
【0133】
一実施形態によれば、第2ワイヤ1354は、オーステナイト相に変態したときに拡張するように構成されている。この実施形態では、第2ワイヤ1354のオーステナイト開始温度Asは約60℃〜約70℃の範囲内であり、オーステナイト終了温度Afは約65℃〜約75℃の範囲内であり、マルテンサイト開始温度Msは約30℃未満であり、マルテンサイト終了温度Mfは約20℃以上である。他の実施形態では、第2ワイヤ1354のオーステナイト終了温度Afは、約68.75℃〜約71.25℃の範囲内である。
【0134】
図14Aは、本発明の一実施形態による、エネルギー吸収層1404で実質的に被覆された形状記憶ワイヤ1402を含む組織形成装置1400を示す。前述のように、エネルギー吸収層1404は、他の物質(例えばワイヤ1402)によるエネルギーの吸収を有利に強化するように構成されている。例えば、エネルギー吸収層1404は、例えば、HIFU、MRI、誘導熱、これらの組み合わせ等からのエネルギーを吸収する少なくとも1つの物質及び/又は構造を含んで構成される。一実施形態によれば、エネルギー吸収層1404は加熱効率を向上させると共に、形状記憶ワイヤ1402の所定の領域に熱を局部集中させ、周辺組織に与える損傷を軽減又は最小限に抑えることができる。
【0135】
図14Bは、組織形成装置1400の断面図である。特に、エネルギー吸収層1404が、形状記憶ワイヤ1402の外表面を取り囲むように図示されている。他の実施形態では、エネルギー吸収層1404は、エネルギーの吸収を向上させるために多数の層を含んで構成されてもよい。例えば、各々の異なる層が異なるタイプのエネルギーに応答するように構成されてもよい。他の実施形態では、エネルギー吸収層1404は、ワイヤ1402の外表面の一部分のみを被覆していても、又はエネルギー吸収物質はワイヤ1402内に位置されていてもよい。
【0136】
図15Aは、本発明の一実施形態による、電気伝導コイル1506を含む組織形成装置1500を示している。一実施形態によれば、組織形成装置1500は、図14A及び図14Bの組織形成装置1400と同様のものであり、上述のように温度変化に応答する形状記憶ワイヤ1502を含んで構成される。
【0137】
一実施形態において、電気伝導コイル1506は、銅、金、チタン、白金、白金イリジウム、ステンレス鋼、エルジロイ(ELGILOY)(登録商標)、合金、又はこれらの組み合わせ等を含んで構成される。
【0138】
図15Bは、組織形成装置1500の断面図である。特に、図示されたコイル1506は、エネルギー吸収層1504(図15Aには図示せず)を取り囲み、このエネルギー吸収層1504は、形状記憶ワイヤ1502を被覆する。これらエネルギー吸収層1504及び形状記憶ワイヤ1502は、上述のエネルギー吸収層1404及びワイヤ1402と同様のものである。
【0139】
図15Aを参照する。図示されたコイル1506はワイヤ1502の一部分に巻きついている。この一部分は、エネルギーを集中させて組織形成装置1500を加熱したい箇所として選択される。一実施形態によれば、コイル1506は、ワイヤ1502を約5%〜約15%まで被覆するように構成されている。他の実施形態では、コイル1506は、ワイヤ1502を約15%〜約70%まで被覆するように構成されている。他の実施形態では、コイル1506は、実質的にワイヤ1502の全体を被覆するように構成されている。一実施形態によれば、組織形成装置1500は、エネルギー吸収層1504を、コイル1506及びワイヤ1502の間にのみ含んでもよく、及び/又は、コイル1506が巻きついていないワイヤ1502の一部分に含んでもよい。また、他の実施形態では、組織形成装置1500は、エネルギー吸収層1504なしに機能するように構成されてもよい。
【0140】
一実施形態によれば、電磁エネルギーを用いることでコイル1506に非観血的に誘導電流を発生させることができる。例えば、一実施形態によれば、電気伝導コイルを含んで構成された携帯端末装置又はポータブル装置が(詳細は図25に記載)、非観血的に患者の身体を透過する電磁場を発生して、コイル1506に誘導電流を発生させる。つまり、この電流がコイル1506を発熱させる。コイル1506、ワイヤ1502及びコイル1504(必要であれば)は、有利に熱的な伝導性を有し、それにより熱又は熱エネルギーをコイル1506からワイヤ1502に伝えることができる。したがって、熱エネルギーをワイヤ1502又はその一部分に指向させることができ、周辺組織が受けうる損傷を軽減させることができる。
【0141】
図15Cは、さらに、外層1508を含む一実施形態による組織形成装置1500を示している。外層1508は、組織形成装置1500を用いた医療処置を容易にするための物質を少なくとも1つ含んで構成される。一実施形態によれば、外層1508は、実質的に組織形成装置1500全体を包むように構成される。他の実施形態では、外層1508は、組織形成装置1500の一部分のみを被覆するように構成される。
【0142】
一実施形態によれば、外層1508は、心筋組織304内への組織形成装置1500の配置を容易にする潤滑物質を含んで構成される。この実施形態において、潤滑物質は、ヒドロゲル又はテフロン(TEFLON)(登録商標)である。他の実施形態では、潤滑物質は、表面処理シリコーン又はポリウレタン物質、又はこれらの組み合わせ等を含んで構成されてもよい。
【0143】
加えて、又は他の実施形態において、外層1508は、患者の体による炎症反応を和らげる抗炎症性コーティングを含んで構成される。この実施形態では、抗炎症性コーティングは、デキサメタゾンリン酸ナトリウム又は、デキサメタゾンナトリウムアセテート(Dexamethasone sodium acetate)である。他の実施形態では、抗炎症性コーティングはヘパリン等を含んで構成されてもよい。
【0144】
一実施形態によれば、外層1508は、コイル1506及び/又はワイヤ1502の少なくとも一部分を有利に封じ込めることができる。これによって、これらコイル1506及び/又はワイヤ1502が患者の組織又は体液に接しないようにすることができる。例えば、外層1508は、生体適合性の可撓性物質(例えば、ポリウレタンチューブ等)を有利に含んで構成することができる。他の実施形態では、外層1508は、ポリテトラフルオロエチレン(“TEFLON”(登録商標))又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。また、他の実施形態では、外層1508はダクロン(登録商標)、織ベロア、ヘパリンコート繊維、ウシ心膜又はウマ心膜、同種移植片、患者移植片、細胞播種組織、又はこれらの組み合わせ等を含んで構成されてもよい。
【0145】
他の実施形態において、外層1508は、組織形成装置1500を心筋組織304からの除去を容易にする生分解性の被覆物又はスリーブを含んで構成されてもよい。例えば、(例えば、ドップラー強化エコー(Doppler enhanced echocardiograms)で測定されるように)ひとたび身体再形成術を僧帽弁102について行った後、組織形成装置1500を、外層1508を心筋組織304に残したまま、取り除くことができる。一実施形態によれば、外層1508は、ポリ乳酸(PLA)を有利に含んで構成される。他の実施形態では、外層1508の被覆物はポリビニルアルコール(PVA)などを含んで構成される。また、他の実施形態では、外層1508は、多数の層(例えば、生体適合性内層及び生分解性外層)を含んで構成される。
【0146】
一実施形態によれば、本明細書に開示される組織形成装置は更に、組織形成装置の所望の位置にしるしをつけるために用いることができる複数の熱伝導体を含んで構成されてもよい。例えば、複数の熱伝導体は、組織形成装置において、弁尖204、206の少なくとも1つの交連に対応する位置に配置してもよい。他の例として、熱伝導体を、経皮的エネルギー源(例えば、カテーテルで挿入される加熱バルーンなど)を組織形成装置に位置合わせして配置するために用いることができる。一実施形態によれば、熱伝導体は、金、銅等のイメージング物質を含んで構成される。
【0147】
前述のように、一実施形態において、本明細書に開示される組織形成装置は、患者の心臓の外部に位置したエネルギー源によって非観血的な方法で有利に及び動的に調節される。図25は、心臓2506内に位置する組織形成装置2504を調節するために患者の体2502の外で用いることができる外部源2500の概略図である。外部源2500は、エネルギーを組織形成装置2504に伝達できる任意の変換器、伝達装置などを含み、組織形成装置2504の形状及び/又はサイズの変化を達成する。
【0148】
前述のように、外部源2500は、非観血的に患者の体2502を透過し、及び、組織形成装置2504に誘導電流を発生させるような電磁場を生じる電気伝導コイルを含んでもよい。他の実施形態では、外部源2500は、超音波エネルギーを組織形成装置2504に集中させる外部HIFU変換器を含んで構成される。また、他の実施形態では、外部源2500は、例えば、無線周波数(RF)エネルギー、X線エネルギー、マイクロ波エネルギー、音響エネルギー、光エネルギー、電場エネルギー、磁場エネルギー、又はこれらの組み合わせ等を、組織形成装置3504に伝えるように構成されている。
【0149】
例えば、一実施形態によれば、組織形成装置2504は、少なくとも1つの電磁石を含んで構成される。この実施形態では、外部源2500は、電磁伝達装置(例えば、抵抗コイル)を含んで構成される。この電磁伝達装置は、電磁石(単数又は複数)を活性化して、組織形成装置2504に形状変化を生じさせるように用いられる。このような形状変化は、僧帽弁輪の少なくとも1寸法を調節するために用いることができる。例えば、組織形成装置2504は、第1端部に電磁石を、第2端部に磁性体を、含むように構成されてもよい。外部源2500が電磁石を活性化する場を発生させると、電磁石は磁性体を引き付け又は反発し、したがって、組織形成装置2504に形状変化がもたらされる。
【0150】
組織形成装置の植え込み
【0151】
本明細書により開示される組織形成装置は、患者に外科的に、内視鏡的に、及び/又はカテーテルデリバリーシステムを介して経皮的に、植え込まれる。例えば、図16及び図17は、本発明の実施形態による、組織形成装置1602、1604を心筋組織304内に植え込むのに用いられる例示的な方法を示している。組織形成装置1602及び1604は、丸形又は円盤状の装置として示されている。しかしながら、当業者であれば、組織形成装置1602、1604は、他の構造を有してもよく、例えば、組織形成装置302、502、900、1100、1200、1300、1350、1400又は1500に関して上述されたような、形状、構造、並びに/又は磁気及び/若しくは形状記憶物質を有してもよいことが認識できるであろう。
【0152】
図16は、図1に示されたヒト心臓100の断面図であり、組織形成装置1602、1604を運ぶ経中隔アプローチを用いた経中隔デリバリーシステム1606の末端部分を示す。デリバリーシステム1606の遠端部1608は、一実施形態により近端制御機構(図示せず)により屈曲可能に構成されると共に、図示されるように、心筋組織304と、この心筋組織304に挿入された穿通部材又は可動針1610によって係合するように構成される。デリバリーシステム1606の屈曲可能な性質と回転運動とにより、デリバリーシステムの遠端部1608を、図16に破線で示されるように、左心房104内における様々な所望の位置に、配置させることができる。
【0153】
左心房104にアクセスするために、デリバリーシステム1606は、下大静脈1612を経由して、右心房110から卵円窩1614を通過するように挿入される。可動針1610は、心筋壁304に経皮的に経路を形成する。組織形成装置1602、1604は、その後、針1610から放出される、又は、針1610から針1610内のスタイレット(図示せず)によって押し出される。有利にも、このアプローチは、組織形成装置1602、1604を僧帽弁102の心房側に配置するのに有用である。一実施形態によれば、経中隔デリバリーシステム1606は、外部横断寸法又は外直径が約7フレンチ(French)〜約9フレンチの範囲内であるカテーテル本体1616を含んで構成される。
【0154】
右心房110から左心房104への一般的な経中隔アプローチは周知であり、特に、逆行性アプローチ(後述)が禁忌である場合に、電気生理学及び心臓学において用いられる。例示的な実施形態によれば、市販の経中隔アクセスシステムが用いられ、これには、ステンレス鋼ブロッケンブラッフ針(Brokenbrough needle)(メドトロニック(Medtronic(登録商標))社製)を有する“Mullins(商標登録申請中)イントロデューサーシース(Mullins Introducer Sheath)”が含まれる。同様の装置はSt. Jude Medical(登録商標)社によっても製造されている。ブロッケンブラッフ針は、経中隔穿刺を行うために用いられる。このとき、Mullinsイントロデューサーシース/拡張器のセットは、その中に針とカテーテルを通して導く管として用いられる。ブロッケンブラッフ曲線針(Brokenbrough curved needle)は、外側カニューレ及び内部スタイレットを含んで構成されている。外側カニューレは、ステンレス鋼などの素材で作られた薄壁チューブを含んで構成されている。内部スタイレットは、中空でなく中実で(solid)、より硬く(stiffer)、及び、カニューレの管腔内部に近接してはめ込まれる。一実施形態では、スタイレットの鋭い先端は、カニューレの遠端部から約2mm〜約3mm程突き出るように構成される。
【0155】
図17は、図1に示されたヒト心臓100の断面図であり、組織形成装置1602、1604をデリバリする逆行性アプローチを用いた逆行性デリバリーシステム1702の末端部分を示す。一実施形態によれば、デリバリーシステム1702は、近端制御機構(図示せず)により屈曲可能に構成される遠端部1706を有するカテーテル本体1704を含んで構成される。この屈曲可能な性質により、屈曲と回転とを組み合わせることで、逆行性システム1702の遠端部1706を左心室106又は心臓の他の部分において、前述の経中隔デリバリーシステム1606が行うように、操作することができる。デリバリーシステム1702の遠端部1706について、他の位置取りを図17に破線で示した。
【0156】
左心室106にアクセスするために、デリバリーシステム1702は、大動脈1708を進んで、大動脈弁1710を通る。システム1702の遠端部1706は、心筋組織304に、この心筋組織304に挿入された穿通部材又は可動針1712によって係合するように構成される。一旦針1712が心臓100内の組織304の所望の位置に挿入されると、組織形成装置1602、1604が、針1712から放出される、又はスタイレット(図示せず)によって針1712から押し出される。一実施形態によれば、カテーテル本体1704の外部横断寸法又は外直径は、約7フレンチ〜約9フレンチの範囲内である。
【0157】
弁尖ブレス
【0158】
他の実施形態では、弁閉鎖不全は、変形した弁尖を直接補強することで治療される。例えば、図18は、図1に示された心臓の左心室106の断面図である。ここでは、僧帽弁102の弁尖204、206が変形して、正常な閉鎖や弁機能が妨げられている。図19は、図18に示された僧帽弁102の弁尖204、206上に配置及び圧着された弁尖ブレス1900を示している。この弁尖ブレス1900は、弁尖204、206を機械的に支持し、弁尖204、206夫々の内端1902に作用して弁閉鎖及び弁機能を改善するように構成されている。
【0159】
図20A及び図20Bは、本発明の一実施形態による、図19に示された弁尖ブレス1900の概略図である。弁尖ブレス1900は、代表的には管状の構造を有しており、この管状構造は、例えば、ステンレス鋼、NiTi、白金イリジウム、金、炭素、ポリウレタンなどの適当なポリマー、等の圧着可能な高強度生体適合性物質で作られる。一実施形態によれば、ブレス1900の軸長は約0.15インチ(約3.8ミリメートル)〜約0.250インチ(約6.35ミリメートル)の範囲内であり、外部横断寸法又は外直径は約0.13インチ(約3.3ミリメートル)〜約0.14インチ(約3.6ミリメートル)の範囲内であるように構成されている。加えて、又は他の実施形態では、弁尖1900の内部横断寸法又は内直径は、約0.08インチ(約2ミリメートル)〜約0.12インチ(約3.0ミリメートル)の範囲内であるように構成されている。他の実施形態では、ブレス1900の内部横断寸法又は内直径は、約0.020インチ(約0.5ミリメートル)〜約0.10インチ(約2.5ミリメートル)の範囲内であるように構成されている。
【0160】
図21は、本発明の他の実施形態による、弁尖ブレス2100の横断面の概略図である。有利にも、弁尖2100は、楕円形又は長円形の断面を有しており、そのため、弁尖204、206の基部に又は基部の近傍に配置することができる。一実施形態によれば、弁尖2100は、その横断面の縦の長さに対して約5〜10倍の範囲の幅の横断面を有するように構成されている。一実施形態によれば、ブレス2100の材質及び寸法は、上記ブレス1900の材質及び寸法と同一又は類似である。
【0161】
図22は、図18に示された左心室106の断面図であり、本発明の一実施形態により、僧帽弁102の弁尖204、206上に配置及び圧着された弁尖2200を示している。弁尖ブレス2200は、基部2202及び、この基部2202から軸方向に伸びた1以上の弾性延長部2204を含んで構成される。基部2202は、剛性機械的強度及び支持を、僧帽弁102の弁輪2206に隣接した弁尖204、206の基部に提供する。
【0162】
弾性延長部2204は、弁尖204、206の中央部分に可撓性支持を提供する。ブレス2200が提供する剛性及び可撓性支持によって、弁尖204、206夫々の内端1902が促されて、弁閉鎖及び機能が改善される。したがって、ブレス2200は、図18の左心室106に示された障害を有する弁構造において起こる逆流を、有利に予防又は減少させる。一実施形態によれば、ブレス2200は、そのブレス2200を所望の弁尖204、206上で摺動させて、所定の位置で圧着させることで配置される。
【0163】
図23A及び図23Bは、本発明の一実施形態による、図22に示された弁尖2200の概略図である。概略的に示されるように、一実施形態による基部2202は、丸い横断面と、基部2202から軸方向に伸びる4つの弾性延長部とを有する。この実施形態では、基部2202の軸長は、約0.15インチ(約3.8ミリメートル)〜約0.25インチ(約6.4ミリメートル)の範囲内であり、内部横断寸法又は内直径は約0.005インチ(約0.1ミリメートル)〜約0.01インチ(約0.3ミリメートル)の範囲内であり、外部横断寸法又は外直径は約0.13インチ(約3.3ミリメートル)〜約0.14インチ(約3.6ミリメートル)の範囲内である。この実施形態では、弾性延長部2204の長さは約0.05インチ(約1ミリメートル)〜約0.1インチ(約3ミリメートル)の範囲内であり、外部横断寸法又は外直径は約0.005インチ(約0.1ミリメートル)〜約0.010インチ(約0.25ミリメートル)の範囲内である。
【0164】
一実施形態によれば、基部2202及び弾性延長部2204の材質は、上記ブレス1900の材質と同一又は類似である。一実施形態によれば、弾性延長部2204は、可撓性のポリマー物質、又は、カーボンファイバーのようなポリマー繊維を有利に含んで構成される。
【0165】
図24は、本発明の他の実施形態による、弁尖2400の横断面の概略図である。有利にも、弁尖ブレス2400は、実質的に長円形又は楕円形の横断面を有し、そのため、弁尖204、206の基部に又はその近傍に配置することができる。ブレスは、複数の可撓性延長部を含んで構成される。一実施形態によれば、ブレス2400は、その横断面の縦の長さに対して約5〜10倍の範囲の幅の横断面を有するように構成されている。一実施形態によれば、ブレス2400の材質及び寸法は、上記ブレス1900及び/又はブレス2200の材質及び寸法と同一又は類似である。
【0166】
弾性組織形成装置
【0167】
一実施形態によれば、弾性物質を含んで構成される1以上の組織形成装置は、心臓弁輪に又はその近傍に植え込まれ、それによって弁尖基部に隣接する領域において心臓組織を再形成し、弁尖接合を改善するように構成されている。弾性組織形成装置が植え込まれる心臓組織には、例えば、心筋層、心臓の心室中隔、左及び/若しくは右の線維三角、又は左若しくは右の心房壁が含まれる。
【0168】
有利にも、この弾性物質は、機械的に緊張状態にすることができる。それによって心臓組織への植え込みが容易になる。植え込み後、弾性物質の緊張状態を解いて、組織形成装置をその緊張前の形状に回復させ、それによって周囲の心臓組織を再形成することができる。この実施形態では、緊張前の形状への回復には、有利にも、弾性物質の加熱又は他の活性化を行うための外部エネルギー源の使用を必要としない。
【0169】
例えば、図26は、本発明の一実施形態による、弾性組織形成装置2602を運ぶように構成されたカテーテル2600の部分断面図である。カテーテル2600は、ハンドル2606に連結した近端部を有する細長いカテーテル本体2604を含んで構成される。ハンドル2606は、サイドアーム2608を含む。このサイドアーム2608を通って、管状針2609が挿入され、さらにカテーテル本体2604内を進入する。これにより、弾性組織形成装置2602が心臓組織に運ばれる。一実施形態によれば、ハンドル2606は、細長いカテーテル本体2604の遠端部2612を屈曲させるように構成された屈曲制御装置2610を含む。
【0170】
一実施形態によれば、弾性組織形成装置2602は、図中に組織形成装置2602’として破線で示されるように機械的に応力を加えられていないときには、弓形形状を有している。弾性組織形成装置2602は、サイドアーム2608を通してカテーテル2600内に挿入されているときは、よりなだらかな弓形又は実質的に直線形状に変形される。そのためカテーテル本体2604内に適合することができる。その後、弾性組織形成装置2602は押されて、細長いカテーテル本体2604を進入し、カテーテル本体の遠端部2612から抜け出る。弾性組織形成装置2602が遠端部2612から抜け出ると、カテーテルによって加えられていた応力が無くなるため、弾性組織形成装置2602は、組織形成装置2602’として破線で示されるように、応力が加わる前の弓形形状に回復する。
【0171】
一実施形態によれば、弾性組織形成装置2602は、変形後に変形前の形状に回復可能な、金属又は金属合金を含んで構成される。この実施形態において、弾性組織形成装置2602は、約0.3%〜約0.8%の範囲内で緊張させた後に以前の形状に回復するように構成されたステンレス鋼、を含んで構成される。
【0172】
他の実施形態では、弾性組織形成装置2602は、形状記憶物質(例えば、上記の形状記憶物質)を含んで構成される。このような形状記憶物質は、実質的な変形の後、負荷を除いたときに、本来の形状に回復することが可能である。このような性質は、超弾性又は擬弾性と呼ばれる。特定の形状記憶物質において、超弾性は、形状記憶物質の温度がオーステナイト終了温度(Af)を超える場合には、応力誘発マルテンサイト形成に基づくものである。外部応力を加えることで、マルテンサイト開始温度(Ms)よりも高い温度でマルテンサイトが形成する。この応力が取り除かれると、マルテンサイトは変形してオーステナイトに戻り、そのため形状記憶物質も応力が加わる前の形状に回復する。一実施形態によれば、オーステナイト終了温度(Af)及びマルテンサイト開始温度(Ms)は、夫々が上記の温度範囲となるように構成されている。例示的な実施形態において、形状記憶物質のオーステナイト終了温度(Af)は、患者の体温よりも幾分低くなるように又はその範囲内で選択される。一実施形態によれば、弾性組織形成装置2602は、実質的に約8.0%〜約10.0%の範囲内で緊張状態にされた後にそれ以前の形状に回復するように構成されたNiTi合金を含んで構成される。
【0173】
図27Aは、本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪208に植え込まれた複数の弾性組織形成装置2602の上部概略図である。図27Bは、図26に示されたカテーテル2600及び管状針2609の遠端部2612を経由して僧帽弁輪208に植え込まれた複数の弾性組織形成装置2602の1つを概略的に示した図である。前述のように、弾性組織形成装置2602は、針2609から放出されて、僧帽弁輪208に入ると、弓形形状に回復するように構成されている。複数の弾性組織形成装置2602が植え込み時にその弓形形状に回復すると、それらは弁尖204、206の双方を押して、弁尖接合を改善させ、また、逆流を軽減させる。
【0174】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、これら実施形態は例示のみを目的として記載されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際には、本明細書に記載された新規な方法及びシステムは、その他の様々な形態で実施されることができ、また、本発明の精神を逸脱することなく、様々な省略、置換、変更が可能である。添付の特許請求の範囲並びにその均等物は、このような形態又は修正を本発明の範囲及び思想に含むことを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】ヒトの心臓の断面図。尚、心臓の特徴のいくつかは、図を明確にするために示していない。
【図2】心収縮期の間における、僧帽弁尖の不完全閉鎖による左心房への血液の逆流を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図3A】本発明の一実施形態による、僧帽弁尖に隣接した心筋組織に植え込まれた複数の磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図3B】本発明の一実施形態による、僧帽弁尖に隣接した心筋組織に植え込まれた複数の磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図4A】本発明の一実施形態による、僧帽弁を含む面を挟んで互いに対向するように植え込まれた、相互に引き合う2つの磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図4B】本発明の一実施形態による、僧帽弁を含む面を挟んで互いに対向するように植え込まれた、相互に引き合う2つの磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図5A】僧帽弁尖に隣接した心筋組織に配置された形状記憶物質を含んで構成される2つの組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図5B】僧帽弁尖に隣接した心筋組織に配置された形状記憶物質を含んで構成される2つの組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図5C】僧帽弁尖に隣接した心筋組織に配置された形状記憶物質を含んで構成される2つの組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図6A】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図6B】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図6C】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図6D】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図7】僧帽弁輪内に植え込まれた、形状記憶物質を含んで構成される複数の組織形成装置を示す、心臓左心室の断面図。
【図8A】本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪に植え込まれた4つの組織形成装置の上面概略図。
【図8B】本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪に植え込まれた4つの組織形成装置の上面概略図。
【図9】本発明の一実施形態による、形状記憶本体部材を含み、1以上の固定アンカーをその表面に規定(define)する、組織形成装置の概略図。
【図10】本発明の一実施形態による、僧帽弁輪表面上に及び/又はその近傍に植え込まれた複数の組織形成装置を示す、心臓左心室の断面図。
【図11】動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪の寸法の少なくとも1つについて変化を生じさせる、例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図12】動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪の形状に変化を生じさせる、他の実施形態による組織形成装置の概略図。
【図13A】本発明の一実施形態による、形状記憶ワイヤを含んで構成される組織形成装置の部分斜視図。
【図13B】本発明の一実施形態による、第1ワイヤ及び第2ワイヤを含んで構成される組織形成装置の部分斜視図。
【図14A】本発明の一実施形態による、エネルギー吸収層で実質的に被覆された形状記憶ワイヤを含む組織形成装置の概略図。
【図14B】本発明の一実施形態による、エネルギー吸収層で実質的に被覆された形状記憶ワイヤを含む組織形成装置の概略図。
【図15A】本発明の一実施形態による、電気伝導コイルを含む組織形成装置の概略図。
【図15B】本発明の一実施形態による、電気伝導コイルを含む組織形成装置の概略図。
【図15C】本発明の一実施形態による、電気伝導コイルを含む組織形成装置の概略図。
【図16】本発明の一実施形態による、組織形成装置を運ぶ経中隔アプローチを用いた経中隔デリバリーシステムの末端部分を示す、図1に示されたヒトの心臓の断面図。
【図17】本発明の一実施形態による、組織形成装置を僧帽弁の心室側に運ぶ逆行性アプローチを用いた逆行性デリバリーシステムの末端部分を示す、図1に示されたヒトの心臓の断面図。
【図18】僧帽弁の弁尖が変形して正常な弁閉鎖や弁機能が妨げられた、図1に示されたヒトの心臓の断面図。
【図19】図18に示された僧帽弁の弁尖上に配置及び圧着された弁尖ブレスを示す図。
【図20A】本発明の一実施形態による、図19に示された弁尖ブレスの概略図。
【図20B】本発明の一実施形態による、図19に示された弁尖ブレスの概略図。
【図21】本発明の他の実施形態による、弁尖ブレスの横断面の概略図。
【図22】本発明の一実施形態による、僧帽弁の弁尖上に配置及び圧着された弁尖ブレスを示す、図18の左心室の断面図。
【図23A】本発明の一実施形態による、図22に示された弁尖ブレスの概略図。
【図23B】本発明の一実施形態による、図22に示された弁尖ブレスの概略図。
【図24】本発明の他の実施形態による、弁尖2400の横断面の概略図。
【図25】患者の心臓内に位置する組織形成装置を調節するために患者の体の外で用いることができる外部源の概略図。
【図26】本発明の一実施形態による、弾性組織形成装置を運ぶように構成されたカテーテルの部分断面図。
【図27A】本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪に植え込まれた複数の組織形成装置の上面外略図。
【図27B】図26に示されるカテーテルの遠端部を通って、図27Aに示される僧帽弁輪に植え込まれる弾性組織形成装置の概略図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、組織を形成する植え込み片(インプラント)及びその形成方法に関し、特に、機能障害を有する心臓弁を再形成及びサイズ調整する植え込み片並びにその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の循環系には、心臓と、身体の全体にわたって相互接続している静脈と動脈とからなる血管と、が含まれる。人の心臓は、4つの部屋、すなわち左右の心房及び左右の心室からなっている。左心室と左心房との間には、血流に一方向性を与える僧帽弁が位置する。右心室と右心房との間には、三尖弁が位置する。左心室と大動脈との間には、大動脈弁が位置し、そして、右心室及び肺動脈の間には、肺動脈弁が位置する。これら心臓弁は、互いに協働することで循環系全体にわたって血液を移動させる働きをする。右心室は、 酸素の不足した血液を体内から汲み上げ、肺、左心房へと送り込む。次に、血液は左心房 から左心室へと送り込まれ、そして、大動脈弁から大動脈へと送り出される。その後、血液は、身体の組織及び器官の全体を循環し、再度、右心房へと戻ってくる。
【0003】
心臓弁が疾患や先天性異常により適切に機能しないと、血液循環障害が生じることがある。疾患を有する心臓弁(心臓弁膜症)には、血液の正常な順方向の流れを許容するほど弁が充分に開かない狭窄症、及び/又は、弁が完全に閉まらない閉鎖不全症がある。
心臓弁が機能不全になると、弁逆流や、閉じた弁を介して血液の過剰な逆方向流が引き起こされる。例えば、心臓弁の特定の疾患は、心臓肥大及び一つ以上の心臓弁の肥厚などを引き起こすことがある。また、心臓弁輪が拡張すると、弁尖形状が歪み、弁尖による閉鎖効果が小さくなってしまう。このように、弁による閉鎖効果が小さくなると、血液の逆流が生じるだけでなく、心臓に血液が蓄積し、ひいてはその他の諸問題を生じかねない。
【0004】
僧帽弁逆流は、一般的なタイプの心臓弁機能不全であり、心臓の劣化や不全の主だった要因の1つである。僧帽弁逆流は、循環の効率を減少させるような、深刻な、そして時として急速に悪化する、状態である。しばしば、僧帽弁逆流は、左心室、乳頭筋及び僧帽弁輪の幾何学的変化によって引き起こされる。また、逆流を許すまでに弱くなった僧帽弁は、左心房内部へ突出する。これは、僧帽弁逸脱として知られる状態である。
【0005】
疾患にかかった又は損傷を受けた心臓弁は、弁置換術によって治療することができる。この弁置換術では、損傷した弁尖を切除し、そして、置換弁を入れるために輪の形を整える施術を行う。その他、弁の機能不全を治療する効果的な修復技術として、弁形成術がある。この弁形成術は、人工弁形成修復セグメント又は人工弁形成リングを心臓内壁の弁輪周囲に取り付けることによって、弁輪を効果的なサイズまで縮小させるものである。弁形成リングは、心周期の間に起こる機能上の変化を補強することで、接合及び弁の完全性を改善させることができる。このように、弁形成リングは、血液の順方向の流れにおいては血行動態を改善し、一方で血液の逆方向の流れ又は弁逆流を減少させるための助けとなる。
【0006】
しかしながら、これらの処置はそれぞれ非常に観血的である。なぜなら、心臓へのアクセスは開胸処置によって得られ、この場合、その処置の間、人工心肺で心臓をバイパスすることとなる。しかし、僧帽弁逆流を患う患者の多くは大抵の場合、体が弱く、そのためこのような処置を行うにはより大きなリスクが伴ってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のことを考慮すると、弁閉鎖不全症を治療する従来のシステム及び方法では、患者への負担が少なくそしてより観血的でないアプローチを提供することができない。したがって、心臓弁又は他の身体構造を支持する装置及び方法であって、人間又は動物の心臓系の動的な環境に安全にそして確実に配置及び適合する装置並びに方法が必要とされる。また、僧帽弁閉鎖不全症などの弁閉鎖不全症を治療する植え込み片を非観血的に調整する装置及び方法の開発が望まれる。さらに、患者の体内に植え込んだ後に非観血的に調整することができる植え込み片も望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、患者の心臓弁を補強する植え込み片は、本体部材を含んで構成され、その本体部材は、近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間を伸長する本体とを含む。本体部材は、患者の心臓内で、心臓弁基部に直接又はその近傍に、植え込まれるように構成される。本体部材は、形状記憶物質を含んで構成され、第1構造から第2構造に変形可能である。本体部材が第2構造であるとき、本体部材は、心臓弁基部に力を及ぼして心臓組織を変形するように構成される。植え込み片は、その長さが最長で約15ミリメートル以下で細長い。他の態様では、植え込み片の長さは最長で約10ミリメートル以下である。また、他の態様では、植え込み片の長さは最長で約6ミリメートル以下である。
【0009】
一態様によれば、本体部材は、第1構造では実質的に直線状であり、第2構造では実質的に弓形である。植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに、患者の心臓に植え込まれる。一態様において、植え込み片は心臓組織内に完全に植え込まれるように構成される。他の態様では、植え込み片は、心臓組織の表面に隣接して配置されるように構成される。この植え込み片は、1以上のアンカー部材を含んでもよい。このアンカー部材は、本体部材を心臓組織にしっかりと取り付けるように構成される。
【0010】
心臓組織には、例えば、心筋層、心臓の心室中隔、線維三角、心房壁又は他の心臓組織が含まれる。一態様によれば、植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに、逆行性(retrograde)アプローチを利用した逆行性デリバリーシステムによって患者の心臓の左心室へ運ばれるように構成される。他の態様では、植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに、経中隔アプローチを利用した経中隔デリバリーシステムによって患者の心臓の左心房へ運ばれるように構成される。
【0011】
一態様によれば、形状記憶物質は、第1構造及び第2構造の少なくとも一方で超弾性を有するように構成される。形状記憶物質には、例えば、形状記憶合金、形状記憶ポリマー又は他の物質を含んでもよい。他の態様では、形状記憶物質は、強磁性物質であって、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa、及びCo−Ni−Alの少なくとも1つを含む。この態様では、本体部材は、その第1構造が第2構造に変形するときに、強磁性形状記憶物質の温度に実質的な変化がないように構成される。
【0012】
一態様によれば、本体部材は、形状記憶物質がエネルギー源によって活性化されると、第1構造から第2構造に変形するように構成される。このエネルギー源には、例えば、超音波エネルギー源が含まれる。更に、一態様によれば、植え込み片は、エネルギー吸収強化物質を含んで構成される。このエネルギー吸収強化物質は、エネルギーを吸収し、エネルギー源に応答して発熱するように構成される。更に、エネルギー吸収強化物質は、形状記憶物質と熱的に接続するように構成される。このエネルギー吸収強化物質には、例えば、ナノ粒子を含んでもよい。このナノ粒子は、ナノシェル及びナノスフェアの少なくとも一方を含んで構成される。一態様によれば、エネルギー吸収強化物質は、放射性不透過性を有する。一態様によれば、植え込み片は、更に、電気伝導性材料も含む。この電気伝導性物質は、エネルギー源に応答して電流を導き、形状記憶物質に熱エネルギーを伝えるように構成される。
【0013】
一態様によれば、患者の心臓弁を補強する植え込み片は、本体部材を含んで構成され、その本体部材は、近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間を伸長する本体とを含む。本体部材は、形状記憶物質を含んで構成され、第1構造から第2構造に変形可能である。本体部材が第2構造であるとき、本体部材は、心臓弁基部に力を及ぼして心臓組織を変形するように構成される。植え込み片は、細長く、及び、心臓組織内に完全に植え込まれるように構成される。この態様では、植え込み片は、本体部材が第1構造であるときは直線状であり、本体部材が第2構造であるときは弓形である。植え込み片は、本体部材が第1構造であるときに患者の心臓に植え込まれる。この態様では、植え込み片の長さは最長で約15ミリメートル以下である。他の態様では、植え込み片の長さは最長で約10ミリメートル以下である。また、他の態様では、植え込み片の長さは最長で約6ミリメートル以下である。一態様において、形状記憶物質は、第1構造及び第2構造の少なくとも一方で超弾性を有するように構成される。
【0014】
一態様によれば、心臓弁膜症の治療方法には、植え込み片の提供が含まれる。この植え込み片は、本体部材を含んで構成され、この本体部材は、近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間を伸長する本体とを含んで構成される。また、本体部材は、形状記憶物質を含んで構成される。更に、前記治療方法には、植え込み片を、患者の心臓組織内で心臓弁基部に直接又はその近傍に完全に植え込むこと、及び、形状記憶物質にエネルギーを与えて植え込み片を第1形状を有する第1構造から第2形状を有する第2構造に変形すること、が含まれる。植え込み片は第2構造にあると、その植え込み片近傍の組織を変形し、弁輪の寸法(dimension)に変化を生じさせる。この態様では、この寸法変化によって、弁尖基部を心臓弁の中心に向かわせることができる。この態様では、エネルギーを与える工程には、患者の心臓外に位置し植え込み片に非接触であるエネルギー源によってエネルギーを与えること、が含まれる。一態様によれば、植え込み片を配置する工程には、植え込み片を逆行性アプローチを用い患者の大動脈を経由して患者の左心室に運ぶこと、が含まれる。他の態様では、植え込み片を配置する工程には、植え込み片を経中隔アプローチを用いて患者の心臓の左心房に運ぶこと、が含まれる。
【0015】
一態様によれば、体組織を再形成又は矯正する装置は、心臓弁輪の寸法を変化させる弾性手段を含んで構成される。この弾性手段は、患者の心臓弁の弁尖基部に直接又はその近傍に植え込まれるように構成される。更に、この弾性手段は、体内に植え込まれる間、この弾性手段に加えられる力に応答して第1形状から第2形状に変形するように構成される。更に、この弾性手段は、体内に植え込まれた後、該弾性手段に加えられていた力がなくなると、変形して第1形状に戻るように構成される。また、この態様では、弾性手段は心臓組織に完全に植え込まれるように構成される。
【0016】
一態様によれば、心臓弁輪の寸法を変化させる方法には、第1装置及び第2装置を患者の心臓に植え込むこと、が含まれる。第1装置は磁性を有し、第2装置はその第1装置によって生じる磁場に応答する。それによって心臓弁輪の寸法に変化を生じさせる。
この態様では、寸法の変化には、寸法の減少が含まれる。一態様によれば、第2装置は磁性を有し、それによる磁場は、第1装置が第2装置から生じた第2磁場に応答するような第1磁気である。それにより、心臓弁輪の寸法に更に変化が生じる。一態様によれば、第1装置は心臓弁の第1弁尖に隣接して植え込まれ、第2装置は心臓弁の第2弁尖に隣接して植え込まれる。これにより、磁場に対して第2装置が応答することで、第2弁尖基部を第1弁尖基部に向わせることができる。他の態様では、第1装置は、心臓弁輪の心房側で第1弁尖に隣接するように植え込まれ、第2装置は、心臓弁輪の心室側でその第1弁尖に隣接するように植え込まれる。これにより、磁場に対して第2装置が応答することで、第1弁尖基部を第2弁尖基部に向かわせることができる。
【0017】
一態様によれば、組織形成システムは、磁場を生じるように構成された第1装置を含んで構成される。この第1装置は、心臓弁輪に直接又はその近傍に植え込まれるように構成される。更に、組織形成システムは、第2装置を含んで構成される。この第2装置は、第1装置の磁場に応答することで第1装置と相互に作用するように構成されている。この第2装置は、心臓弁輪に直接又はその近傍に植え込まれるように構成される。第1装置は、第2装置と相互に作用するように構成され、これにより心臓弁輪の寸法を変化させることができる。この態様では、第2装置も磁性を有し、また、第1装置と第2装置の間の相互作用は引力である。一態様によれば、第1装置及び第2装置は、それらが互いに隣接して植え込まれたときに、心臓弁輪の寸法を減少させるのに十分な力を少なくとも1つ作用させるように構成される。一態様によれば、第1装置は、希土類元素を含んで構成される。一態様によれば、第1装置は、以下に挙げるもののうち少なくとも1つを含んで構成される:NdFeB(ネオジム‐鉄‐ホウ素)、SmCo(サマリウム‐コバルト)及びAlNiCo(アルミニウム‐ニッケル‐コバルト)。一態様において、少なくとも1つの固定部材が、第1装置及び第2装置のうちの少なくとも一方を心臓弁輪に固定するように構成される。
【0018】
一態様によれば、心臓弁輪を再形成及び矯正するシステムは、磁場を生じる発生手段と、この磁場に応答して発生手段と相互に作用する相互作用手段とを含んで構成される。発生手段及び相互作用手段は、心臓弁輪に直接又はその近傍に植え込まれる。相互作用手段が磁場に応答することで、心臓弁輪の寸法の少なくとも1つが変化する。
【0019】
一態様によれば、障害を有する心臓弁の治療装置は、心臓弁尖に取り付け可能なリング状部材を含んで構成される。この態様では、リング状部材は以下の物質を1つ以上含んで構成される:ステンレス鋼、NiTi、白金‐イリジウム、金、炭素及びポリウレタン。リンク状部材は、剛性機械的強度を提供し、弁尖を支持するように構成される。また、リング状部材は、弁尖の周りの所定位置に圧着(crimp)されてもよい。一態様によれば、更に、リング状部材は、圧着可能リングから軸方向に伸びる弾性軸方向延長部を1つ以上含んで構成される。この態様では、1以上の弾性軸方向延長部は、弁尖の内端を心臓弁の中央に向かわせ、それにより他の弁尖との接合を改善するように構成される。一態様によれば、1以上の弾性軸方向延長部は、カーボンファイバーを含んで構成される。
【0020】
一態様によれば、心臓弁尖の支持方法は、リング状部材を含んで構成される植え込み片を提供すること、植え込み片を心臓弁尖の周りで揺動させること、を含む。この態様では、支持方法は更に、リング状部材を心臓弁尖に固定するように圧着することを含む。一態様によれば、植え込み片は更に、1以上の弾性軸方向延長部を含んで構成され、また、植え込み片を心臓弁尖の周りで摺動させることは更に、植え込み片を1以上の弾性軸方向延長部がリング状部材から弁尖内端に向けて伸びるように摺動させること、を含む。一態様によれば、植え込み片を心臓弁尖の周りで摺動させることは、植え込み片を、逆行性アプローチを用いて患者の心臓の左心室に運ぶこと、を含んで構成される。他の態様では、植え込み片を心臓弁尖の周りで摺動させることは、植え込み片を、経中隔アプローチを用いて患者の心臓の左心房に運ぶこと、を含んで構成される。
【0021】
一態様によれば、心臓弁における弁尖接合を改善する装置は、弁尖の支持手段を含んで構成される。この態様では、支持手段は、圧着可能に構成される。一態様によれば、弁尖の支持手段は、弁尖の内端を他の弁尖に向かわせる手段を含んで構成される。
【0022】
本発明を要約するために、本明細書は、本発明の特定の態様、効果及び新規な特徴について記載している。また、本発明の一態様に従って、かかる効果のすべてを達成する必要がないことを理解できるであろう。従って、本発明は、必ずしも本明細書に教示又は示唆したその他の効果を達成することなく、本明細書に開示されている効果(単数又は複数)を達成又は最適化するように実施されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
概要
【0024】
本発明は、例えば、機能障害を有する心臓弁や他の体組織を動的に調整可能な植え込み片を用いて補強することで、組織を再形成(リシェイプ)する装置及び方法を含む。本願明細書に開示された実施形態は、ヒト心臓の僧帽弁を再形成及び/又はサイズ調整(リサイズ)することに関して記載されているが、本発明の実施形態を、再形成又は矯正(改善)を必要とするその他の様々な弁、血管及び/又は組織に広く用いてもよい。例えば、特定の実施形態を、三尖弁、肺動脈弁又は大動脈弁の少なくとも1つの寸法を変化させるために用いてもよい。また、他の実施形態では、組織形成装置を、左右の心室、胃系の組織、及び/又は器官(例えば、胃)などの再形成又は矯正に用いてもよい。
【0025】
一実施形態によれば、障害を有する心臓弁構造の支持の提供方法は、心臓弁の弁尖基部に隣接する心臓組織に第1領域提供部材を配置すること、及び、心臓組織に第2領域提供部材を配置すること、を含む。このとき、第2領域提供部材は、第1領域提供部材と相互にひきけられて、それにより心臓弁の寸法を減らすように構成される。この実施形態では、複数の磁性構造が、心臓弁輪に隣接して又はその中に植え込まれる。
【0026】
他の実施形態では、障害を有する心臓弁構造の支持の提供方法は、形状記憶部材を心臓弁の弁尖基部に隣接した心臓組織に配置すること、及び、この形状記憶部材を活性化すること、を含む。このとき形状記憶部材は、活性化されると、記憶構造又は記憶形状に回復してその形状記憶部材に直接隣接した組織を広げることで、弁尖基部を内側半径方向に押しやるように構成される。この実施形態では、1以上の形状記憶部材が、心臓弁輪に植え込まれる。他の実施形態では、心臓弁尖基部の支持方法は、圧着可能リングを弁尖基部に配置すること、及び、そのリングを弁尖の所定の位置に圧着すること、を含む。これによって、弁尖基部を支持し、また弁機能を改善することができる。
【0027】
一実施形態において、動的に調節可能な組織形成装置は、その装置が僧帽弁輪に隣接して又はその中に植え込まれて、僧帽弁輪の再形成及びサイズ調整に用いられる。特に、組織形成装置は、僧帽弁輪の寸法の少なくとも1つを動的に変化させて、弁尖接合を改善するために及び逆流を減少させるために用いられる。組織形成装置の形状は、体内に植え込んだ後でも、心臓のサイズ変化に対応するように、更なる調整が可能である。例えば、組織形成装置は、身体の成長につれて心臓も成長する子供に植え込んでもよい。つまり、心臓の成長が可能なように、組織形成装置の形状を修正する必要が生じてもよい。別の例として、1以上の組織形成装置を植え込んだ後に、肥大した心臓のサイズが通常のサイズに戻り始めてもよい。つまり、心臓のサイズが減少し始めた後に、僧帽弁輪が引き続き補強されるように、組織形成装置の形状を修正する必要が生じてもよい。
【0028】
一実施形態によれば、組織形成装置は、温度変化及び/又は磁場曝露で応答する形状記憶物質を含んで構成される。ここで、形状記憶とは、変形後に変形前の特定の形状に回復できるような物質の能力をいう。形状記憶物質には、例えば、ポリマー、金属、金属合金及び強磁性合金が含まれる。一実施形態によれば、組織形成装置は、形状記憶物質にエネルギー源を与えて活性化させ、記憶形状又は元の形状に変形させられることによって、生体内で調節されるように構成される。そのようなエネルギー源としては、例えば、無線周波数(RF)エネルギー、X線エネルギー、マイクロ波エネルギー、集束超音波又は高出力集束超音波(HIFU)エネルギーなどの音響又は超音波エネルギー、光エネルギー、電場エネルギー、磁場エネルギー、これらの組み合わせ、等を含んでもよい。例えば、電磁放射の一実施形態としては、約750ナノメートル〜約1600ナノメートルの範囲の波長を有する赤外線エネルギーが有用である。このタイプの赤外線照射は、固体ダイオードレーザによって発生させることができる。
【0029】
一実施形態によれば、組織形成装置は更に、加熱効率を上げると共に形状記憶物質の所定の領域に熱を局部集中させるエネルギー吸収物質を含んで構成される。これにより、周辺組織に与える損傷を軽減させる又は最小限に抑えることができる。特に、物質にエネルギーを与えるために赤外線レーザエネルギーを用いる場合、光又はレーザによる活性化エネルギーを吸収するエネルギー吸収物質には、ナノシェル、ナノスフェアなどを含んでもよい。このようなナノ粒子は、導体(例えば、金)の極超薄層で覆われた誘電体(例えば、シリカ)から製造されてもよく、又、電磁放射の特定の周波数を吸収するように選択的に調節されてもよい。この実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約5ナノメートル〜約20ナノメートルの範囲内であり、又、ナノ粒子は適切な物質又は溶液(例えば、食塩水)に懸濁される。なお、ナノチューブ又はナノ粒子を含んで構成されたコーティングを、例えば、HIFU、MRI、誘導熱等からのエネルギーを吸収するために用いてもよい。
【0030】
一実施形態によれば、組織形成装置の一部分又は全体を被覆するために、薄膜蒸着やその他のコーティング技術、例えば、スパッタリング、反応性スパッタリング、金属イオン注入法、物理気相成長法、化学気相成長法を用いることができる。このようなコーティングは、固体コーティング又は微孔性(microporous)コーティングとすることができる。例えば、HIFUエネルギーを用いる場合、微孔構造は、HIFUエネルギーを捕捉して、これを形状記憶物質の方向へ導く。これにより、コーティングによって熱伝導性及び熱除去を改善することができる。一実施形態によれば、コーティングによって組織形成装置のX線不透過像を高めることができる。コーティング物質は、生体適合性有機物又は非有機物質、金属又は非金属物質(例えば、窒化チタン(TiN)、イリジウム酸化物(Irox)、炭素、白金黒、炭化チタン(TiC)、及び、植え込み型ペースメーカのリードのペースメーカの電極に用いられるその他の物質など)の様々な群から選択される。さらに、本明細書において議論されるか又は従来技術において公知である他の物質を、エネルギー吸収に用いてもよい。
【0031】
加えて、又は他の実施形態では、形状記憶物質を、例えば、白金被覆銅、チタン、タンタル、ステンレス鋼、金等の微細導線で包み込むことで、周辺組織への不要な過熱を低減する一方、形状記憶物質の特定箇所を集中的及び急速に過熱することができる。
【0032】
一実施形態によれば、エネルギー源は、体内に植え込まれた時又はその後に、外科的に与えられる。例えば、形状記憶物質は、組織形成装置を体内へ植え込んでいる間、暖かい物体をその組織形成装置に接触させる又はその周囲の領域に置くことで加熱される。他の例として、組織形成装置の植え込み後に、例えばカテーテルを経皮的に患者の体に挿入することでカテーテルを通してエネルギーを与えるように、外科的にエネルギー源を与えることができる。例えば、RFエネルギー、光エネルギー又は熱エネルギー(例えば、抵抗加熱を用いた発熱体などからのエネルギー)は、形状記憶物質上に配置され又はその近傍に位置するカテーテルによって、形状記憶物質へ伝達される。
【0033】
また、熱エネルギーは、加熱した流体を組織形成装置付近に位置させたカテーテルに通したり又はカテーテルを通してバルーン内を循環させたりすることで、組織形成装置に与えられる。さらに、他の例として、形状記憶物質は、光吸収物質(photodynamic absorbing material)で被覆される。この光吸収物質は、レーザダイオード光に照射されるか又はカテーテルの光ファイバー要素を介して導かれた光で活性化されて、形状記憶物質を加熱する。この実施形態では、光吸収物質は、レーザ光が照射されると放出される1以上の医薬品を含んで構成される。
【0034】
一実施形態によれば、取り外し可能な皮下電極又はコイルが、専用の活性化ユニットからのエネルギーを連結する。この実施形態では、取り外し可能な皮下電極によって、システムと組織形成装置との間に、遠隔測定及び送電が提供される。この取り外し可能な皮下電極は、最小限の電力損又は少ない電力損で、植え込み片に対してエネルギーをより効率的に伝えることができる。一実施形態によれば、皮下エネルギーは、誘導結合を介して供給される。
【0035】
他の実施形態では、エネルギー源は、非観血的な方法又はより観血的でない方法で患者体外から与えられる。この実施形態では、周辺組織への損傷を軽減し又は最小限にするために、外部エネルギー源を集束させて形状記憶物質に対して指向性のある加熱を提供するようにしてもよい。例えば、一実施形態によれば、電気伝導コイルを含んで構成されたポータブル装置が、非観血的に患者の身体を透過する電磁場を発生して、組織形成装置内に誘導電流を発生させる。この誘導電流によって組織形成装置が加熱されることで、形状記憶物質は記憶形状に変形する。また、この実施形態では、組織形成装置は、形状記憶物質に包まれ又は包埋された電気伝導コイルを含んで構成される。このとき、外部で発生した電磁場が組織形成装置内のコイルに誘導電流を発生させ、コイルを発熱させて、形状記憶物質に熱エネルギーを伝達する。
【0036】
他の実施形態では、外部変換器が、植え込んだ組織形成装置に超音波エネルギーを集束させて、形状記憶物質を加熱する。用語「集束超音波」は、本明細書において広義に用いられ、それらの通常に用いられる意味、並びに、広範囲にわたる強度及び/又は周波数範囲内の音響エネルギーを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、集束超音波エネルギーは、医療処置の切除において現在用いられているものよりも極小の強度及び/又は周波数を有する高出力集束超音波(HIFU)エネルギー及び/又は音響エネルギーを含む。
【0037】
例えば、一実施形態によれば、集束超音波エネルギーは、周波数が約0.5MHz〜約30MHzの範囲内であり、出力密度が約1W/cm2〜約500W/cm2の範囲内である音響エネルギーを含む。更に、一実施形態において、集束超音波エネルギーは、加熱によって組織の損傷がほとんど若しくは全く起こらないように及び/又はキャビテーションが減少若しくは実質的に排除されるように、破壊を起こさせないような加熱を行う音響エネルギー強度を含む。
【0038】
例示する目的で、用語「HIFU」は、本明細書において本発明の一実施形態に関して用いられる。しかしながら、他の強度の集束超音波エネルギー、特に相対的に低強度の集束超音波エネルギー、を、HIFUエネルギーの代わりに又はHIFUエネルギーと組み合わせて有利に用いてもよい。
【0039】
一実施形態によれば、HIFUプローブは、心臓の運動及び呼吸の動きを補償するために、適合レンズ(adaptive lens)と共に用いられる。この適合レンズは、多焦点調節能(multiple focal point adjustments)を有する。一実施形態によれば、適合可能機能を有するHIFUプローブは、フェーズドアレイ又は線形の構造を含んで構成される。一実施形態によれば、外部HIFUプローブは、骨を通過することに関して、音響窓からの入射を改善及びその問題や課題を克服又は最小限に抑えるために、患者の肋骨間に配置されるように構成されたレンズを含んで構成される。一実施形態によれば、HIFUエネルギーは、超音波画像診断装置と同期して、HIFU活性化の間、組織形成装置を画像化することができる。加えて、または他の実施形態において、超音波画像は、サウンドシフト速度及び体組織の熱膨張変化の原理から、組織形成装置周辺の体組織温度を非観血的にモニタするためにも用いられる。
【0040】
一実施形態によれば、組織形成装置は、超音波に曝された際に集束する及び急速に発熱すると共に、熱エネルギーを形状記憶物質に伝達する超音波吸収物質又はヒドロゲル物質を含んで構成される。
【0041】
一実施形態によれば、非観血的エネルギーは、磁気共鳴画像診断(MRI)装置によって、植え込まれた組織形成装置に与えられる。この実施形態では、形状記憶物質は、MRI装置が発生する定磁場によって活性化される。加えて、または他の実施形態において、MRI装置は、組織形成装置内に誘導電流を発生させると共に形状記憶物質を加熱するRFパルスを発生する。組織形成装置は、加熱の効率及び指向性を向上させる1以上のコイル及び/又はMRIエネルギー吸収物質を含んで構成することができる。磁気活性化エネルギーを適切に吸収するエネルギー吸収物質には、強磁性物質の微粒子が含まれる。RFエネルギーに対する適切なエネルギー吸収物質には、RFエネルギーと共鳴する周波数においてこのRFエネルギーを吸収することができる他の物質に加え、フェライト物質も含まれる。
【0042】
一実施形態によれば、MRI装置は更に、形状記憶物質を活性化する前、活性化中及び活性化後に、植え込んだ組織形成装置のサイズ及び/又は形状を測定するために用いられる。この実施形態では、MRI装置は、形状記憶物質を加熱するための第1周波数を有するRFパルス、及び、植え込んだ組織形成装置を撮像するための第2周波数を有するRFパルスを発生する。従って、組織形成装置のサイズ及び/又は形状を、この組織形成装置を加熱せずに測定することができる。この実施形態によれば、MRIエネルギー吸収物質は、第1周波数に曝されると形状記憶物質を活性化するために充分な程度に発熱する一方、第2周波数に曝されても実質的には発熱しない。他の公知技術によるイメージング(画像診断)技術を、植え込んだ組織形成装置のサイズ測定に用いることができる。例えば、超音波画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線画像診断、放射断層撮影法(PET)などが含まれる。一実施形態では、このようなイメージング技術も、形状記憶物質の活性化に充分なエネルギーを提供する。
【0043】
一実施形態によれば、形状記憶物質の活性化は、イメージング処理の間、心拍動と同期するように行われる。例えば、画像診断技術を用いることで、心周期のある一部分の間において、患者体内の組織形成装置上に、HIFUエネルギーを集束させることができる。心拍動に伴って、組織形成装置が集束エネルギー領域の内外に移動するようにしてもよい。周辺組織の損傷を軽減するために、患者の身体は、心周期の特定部分の間だけHIFUエネルギーに曝される。一実施形態によれば、エネルギーは、心電図シグナルのような心拍周期を表すシグナルによってゲート制御される。この実施形態では、同期及びゲート制御は、心周期の特定期間においてエネルギーを形状記憶物質に送ることで、受攻期中に不整脈又は細動が引き起こされる可能性を避け又は低減できるように構成される。例えば、心電図シグナルのT波の間だけ患者の心臓をエネルギーに曝すように、このエネルギーをゲート制御をすることができる。
【0044】
前述のように、形状記憶物質は、例えば、ポリマー、金属、及び強磁性合金を含んで構成される金属合金、を含む。本発明に従う実施形態において、有用であり代表的な形状記憶ポリマーは、Langer等による米国特許第6,720,402号(2004年4月13日発行)、米国特許第6,388,043号(2002年5月14日発行)及び米国特許第6,160,084号(2000年12月12日発行)により開示されており、いずれも本明細書に完全に引用されるものとする。
【0045】
形状記憶ポリマーは、温度変化に応じて1以上の永久的形状又は記憶形状に変化する。一実施形態によれば、形状記憶ポリマーは、約38℃〜約60℃の温度範囲まで加熱される。他の実施形態では、形状記憶ポリマーは、約40℃〜約55℃の温度範囲まで加熱される。一実施形態において、形状記憶ポリマーは、加熱されると第1記憶形状に変形し、冷却されると第2記憶形状に変形する二方向性形状記憶効果を有する。形状記憶ポリマーは、例えば、カテーテルを通して冷却流体を入れるか又は循環させることで、冷却されることができる。
【0046】
患者体内に植え込んだ形状記憶ポリマーは、例えば、赤外線、近赤外線、紫外線、マイクロ波及び/又は可視光源などの外部光エネルギー源を用いて、非観血的に加熱されることができる。好ましくは、光エネルギーは、形状記憶ポリマーによる吸収は増加し、その一方で周辺組織による吸収は低減するように選択される。これによって、形状記憶ポリマーの形状を変化させるために加熱した場合にも、その形状記憶ポリマー周辺の組織の損傷を軽減することができる。他の実施形態では、形状記憶ポリマーは、気泡又はフルオロカーボン(過フッ化炭化水素)などの液体を含む泡を含んで構成され、HIFUエネルギーに曝されたときに、気体中/液体中においてキャビテーション効果が引き起こされて加熱される。他の実施形態では、形状記憶ポリマーは、電磁場によって加熱されてもよく、また、電磁場吸収物質で被覆されてもよい。
【0047】
特定の金属合金は、形状記憶の特質を有しており、温度変化及び/又は磁場曝露に対して反応する。温度変化に応答する代表的な形状記憶合金には、チタン−ニッケル合金、銅−亜鉛−アルミニウム合金、銅−アルミニウム−ニッケル合金、鉄−マンガン−ケイ素合金、鉄−ニッケル−アルミニウム合金、金−カドミウム合金、これらの組み合わせ、等が含まれる。
【0048】
形状記憶合金は、マルテンサイト及びオーステナイトと呼ばれる少なくとも2つの異なる固相で存在する。マルテンサイト相において、合金は比較的軟らかく容易に変形するのに対し、オーステナイト相において、合金は比較的堅固で容易には変形しない。例えば、一般に形状記憶合金は、マルテンサイト相に相変態するよりも相対的に高い温度で、オーステナイト相へ相変態する。形状記憶合金は、マルテンサイト開始温度(Ms)でマルテンサイト相への相変態を開始し、マルテンサイト終了温度(Mf)でマルテンサイト相への相変態を終了する。同様に、このような形状記憶合金は、オーステナイト開始温度(As)でオーステナイト相に相変態を開始し、オーステナイト終了温度(Af)でオーステナイト相への相変態を終了する。一般に、両変態は、ヒステリシスを有する。従って、温度Ms及び温度Afは、互いに一致せず、同様に、温度Mf及び温度Asも互いに一致しない。
【0049】
一実施形態によれば、形状記憶合金は、オーステナイト相において弓状の記憶形状を形成するように加工される。その後、形状記憶合金は、温度Mf未満に冷却されるとマルテンサイト相に相変態し、異なる構造(例えば実質的な直線又はカーブの大きい若しくは小さい第2弓状形状など)に変形する。この実施形態では、形状記憶合金のマルテンサイト相は、医師などの作業者がマルテンサイト相の装置の形状を手で調節して特定の患者に望ましく適合させることができる程度の充分な展性を有している。この装置を弁輪の周り又はその中に位置させた後、形状記憶合金は活性化温度(例えば、温度As〜温度Afの温度範囲)に加熱されて、それによって装置形状が非観血的に調節される。
【0050】
その後、形状記憶合金の温度上昇によってオーステナイト相に相変態すると、合金は変形形状から記憶形状へと変形する。形状記憶合金の活性化によって組織形成装置に形状変化がもたらされるときの活性化温度は、その活性化処理中に、組織形成装置に隣接する体組織に与えうる副次的な損傷を軽減又は排除できるように選択され、組織形成装置に組み込むことができる。一実施形態によれば、適切な形状記憶合金の例示的な温度Afは、約45℃〜約50℃の範囲内にあり、適切な形状記憶合金の例示的な温度Asは、約42℃〜約53℃の範囲内にある。さらに、例示的な温度Msは、約10℃〜約20℃の範囲内にあり、例示的な温度Mfは、約−1℃〜約15℃の範囲内にある。組織形状装置の形状は、所望の臨床結果を得るために必要な調節が達成できるように、実質的に即座に全てを変化させたり、小さなステップに分けて逐次変化させたりすることができる。
【0051】
さらに、特定の形状記憶合金は、菱面体晶相を含んで構成されてもよい。この菱面体晶相は、菱面体晶開始温度(Rs)及び菱面体晶終了温度(Rf)を有し、オーステナイト相とマルテンサイト相との間に存在する。このような形状記憶合金の例としては、Memry社(ベセル、コネティカット)から市販されているNiTi系合金がある。一実施形態によれば、例示的な温度Rsは、約30℃〜約50℃の範囲内にあり、例示的な温度Rfは、約20℃〜約35℃の範囲内にある。菱面体晶相を有する形状記憶物質を用いる利点の一つは、オーステナイト相の一般に堅固な構造や、マルテンサイト相の一般に変形し易い構造と比較して、その菱面体晶相において形状記憶物質が部分的に物理的変形する点にある。
【0052】
特定の形状記憶合金は、磁場に曝されて、マルテンサイト相からオーステナイト相まで相変態する場合に、強磁性形状記憶効果を示す。従って、強磁性形状記憶合金を含んで構成される組織形成装置を、第1形状を有する第1構造で植え込み、その後、温度Asを超えて形状記憶物質を加熱することなく、第2形状(例えば、記憶形状)を有する第2構造へと変形させてもよい。しかも、有利にも、弁形成リング周辺の正常組織は、損傷を受ける虞のある高温には曝さらされない。さらに、強磁性形状記憶合金を加熱する必要がないので、組織形成装置のサイズ及び/又は形状を、熱活性化を行うよりも急速且つ均一に調節することができるようになる。
【0053】
例示的な強磁性形状記憶合金には、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa、Co−Ni−Al、等がある。また、上記形状記憶物質のうちの幾つかは、温度変化に応答して形状変化するものであってもよい。このように、物質の形状は、物質を磁場に曝すことにより若しくは物質温度を変化させることにより、又はこの両方を行うことによって調節することができる。
【0054】
一実施形態によれば、異なる形状記憶物質の組み合わせが用いられる。例えば、一実施形態における組織形成装置は、形状記憶ポリマーと形状記憶合金(例えば、NiTi)との組み合わせを含んで構成される。この実施形態では、組織形成装置は、形状記憶ポリマー本体と、この本体内に配設された形状記憶合金(例えば、NiTi)と、を含んで構成される。また、この実施形態は、可撓性があり、及び、疲労特性に影響を与えずに形状記憶合金のサイズ及び形状をさらに小さくすることができる。さらに、又は他の実施形態において、例えば、拡張と収縮が可能な二方向性(双方向性)組織形成装置を作り出すために、形状記憶ポリマーが形状記憶合金と共に用いられる。二方向性組織形成装置は、異なる特性を有する多種多様な形状記憶物質の組み合わせによって製造される。
【0055】
一実施形態によれば、組織形成装置は、少なくとも1つの電磁物質を含む。この電磁物質は、組織形成装置の形状及び/又はサイズを動的に変化させるように活性化されるように構成される。例えば、電磁物質を、活性化時に、組織形成装置の他の部分、例えば永久磁石又は他の強磁性物質など、と相互作用させて、前記装置の形状が変化するように構成してもよい。一実施形態によれば、電磁物質は、患者の体外に位置した電磁伝達装置(electromagnetic transmitter)、例えば抵抗コイル、によって活性化される。
【0056】
本明細書に用いられる「強磁性体(材料)」の用語は、広義に用いられ、通常の意味にも用いられると共に、電子スピンの向きを外部磁場に合わせる原子を備えた物質等のように容易に磁化されるあらゆる物質が含まれ、又、これに限定されるものではない。強磁性材料には、種々の方法によって磁化される永久磁石、及び永久磁石に引きつけられる物質(例えば、金属)が含まれる。また、強磁性材料には、患者の心臓の外に配置した電磁伝達装置によって活性化される電磁物質も含まれる。
【0057】
さらに、強磁性材料には、磁性粒子が生体適合性ポリマー等のポリマーマトリックス内に結合した1以上のポリマー−ボンド磁石を含ませてもよい。磁性物質は、等方性物質及び/又は異方性物質、例えば、NdFeB(ネオジム‐鉄‐ホウ素)、SmCo(サマリウム‐コバルト)、フェライト及び/又はAlNiCo(アルミニウム‐ニッケル‐コバルト)粒子などを含んで構成することができる。生体適合性ポリマーは、例えば、ポリカーボネート、シリコーンゴム、ポリウレタン、シリコーンエラストマー、可撓性又は半剛性プラスチック、これらの組み合わせ等を含んで構成される。
【0058】
以下の説明において、本発明を実施し得る特定の形態又は過程及びその一部を、添付図面を参照して説明する。ここで、同一参照番号は、可能な限り、図面を通して同様又はそれに近い構成要素を参照するために用いる。幾つかの実施形態において説明する多くの具体的な詳細は、本開示をより理解し易いように記載したものである。従って、本開示は、後述する具体的な詳細以外によって実施されることができ、また、本明細書に記載された構成及び方法と均等なものによっても実施することができる。さらに、周知の構成要素及び方法は、本開示の特徴を不要に不明確にしないようにするため詳述しない。
【0059】
図1は、ヒトの心臓100の断面図である。尚、心臓の特徴のいくつかは、図を明確にするために示していない。図1は、左心房104と左心室106との間に位置する僧帽(左房室)弁102、及び右心房110と右心室112との間に位置する三尖弁108を一般的に図示したものである。右心室112は、酸素の不足した血液を、体内から肺に汲み上げる。矢印114で示すように、血液は肺から左心房104に戻される。そこでは、血液は、僧帽弁102を通って左心室106に送り出される。左心室106から、血液は大動脈に送り込まれて、体内の組織や器官を再循環し、再び右心房110に戻ってくる。
【0060】
図2は、図1に示された心臓100の左心室106の断面図である。ここでは、心収縮期の間における、左心房104への血液の逆流を矢印202で示す。僧帽弁102は、第1弁尖204、第2弁尖206及び弁輪208を含んで構成される。弁輪208はまた、線維輪としても知られている。健康時には、僧帽弁輪208は、弁尖204、206を囲み、それらの間隔を維持して、左心室収縮の間の弁を閉鎖する。左心室106から左心房104への血液の逆流は、僧帽弁102による弁尖204、206の閉鎖が不完全であることによる。
【0061】
磁気組織形成装置
【0062】
図3A及び図3Bは、図1に示された心臓100の左心室106の断面図であって、本発明の一実施形態による、僧帽弁尖204、206に隣接した心筋組織304に植え込まれた複数の磁気組織形成装置302を図示している。組織形成装置302の配置及び帯磁方向により、矢印306で示すような相互引力が、複数の組織形成装置302の少なくとも2つの間に生じる。相互引力は、弁尖204、206に隣接する心筋組織304の距離を縮めるように、そして順に、図3Bに示すように、弁尖204、206間の距離を縮めるように、構成されている。したがって、複数の組織形成装置302は、有利にも僧帽弁輪208の寸法の少なくとも1つを再形成することができ、それによって、心収縮期の間の弁尖204、206の接合を改善し、僧帽弁閉鎖不全症による逆流を減少させることができる。
【0063】
図4A及び図4Bは、図1に示された心臓100の左心室106の断面図であって、僧帽弁102を含む面を挟んで互いに対向するように植え込まれた相互に引き合う2つの磁気組織形成装置302を図示している。図4Aに図示したように、弁尖204は矢印402で示されるように逸脱した状態にある。このとき、弁尖204は左心房104側に飛び出して、他の弁尖206との十分な接合が得られない状態にある。2つの組織形成装置302は、初期の配置時には、破線及び矢印404で示される距離だけ離される。一旦、組織形成装置302が配置装置又はカテーテルから放たれると、相互引力によって、矢印406に示されるように、2つの組織形成装置302が互いに引き寄せられる。
【0064】
図4Bに図示されるように、複数の組織形成装置302同士の引力は、その組織形成装置302に隣接する組織を作り直し(remodel)、それによって組織形成装置302に隣接する弁尖204のアンカーポイントを移動する。破線で示された初期のアンカーポイントと比較されるように、弁尖204のアンカーポイントの下方移動は、2つの組織形成装置間の距離が短くなることに起因する。弁尖204のアンカーポイントの下方移動によって、弁尖204の逸脱は軽減し、弁閉鎖及びその機能は改善される。
【0065】
図3A〜図4Bを参照する。組織形成装置302は、そのサイズと比較して強い磁場を生じる任意の適当な構造、及び、人体に植え込むのに適当な生体適合性を有していてもよい。一実施形態によれば、複数の組織形成装置302のうちの1つ以上は、磁性物質を含んで構成される。本実施形態による組織形成装置302は、円盤型磁石(disc shaped magnet)である。この円盤型磁石は、所望の効果が得られるように、引力を得るように配置された極、及び反発力を得るために配置された対抗する極を有する。この実施形態では、複数の組織形成装置302の内の1つ以上は、その直径及び/又は厚みが約0.25mm〜約0.5mmの範囲内である。これにより、組織形成装置302の配置及び/又は心筋組織304からの除去が容易になる。他の実施形態では、複数の組織形成装置302の内の1つ以上は、ロッド状、球形、円柱、立方体などの形状を有していてもよい。この実施形態では、複数の組織形成装置302の内の1つ以上は、その長さが約3.0mm〜約8.0mmの範囲内であり、その横断寸法又は直径が約0.25mm〜約0.5mmの範囲内である磁性ロッドを含む。
【0066】
組織形成装置302について選択された形状(単数又は複数)は、生じさせる所望の場(フィールド)、複数の組織形成装置302間に生じる相互の力(単数及び複数)、これらの組み合わせ等のファクターに、少なくとも部分的に、依存してもよい。任意の適切な数の組織形成装置302を、特定の処置に用いてもよい。この植え込まれる組織形成装置302の数は、いくつかの処置について、約2〜約20の範囲としてもよい。他の実施形態では、20を越える組織形成装置302を用いてもよい。
【0067】
一実施形態において、組織形成装置302は、強磁性物質を有利に含んで構成される。特定の好ましい実施形態において、複数の組織形成装置302の内の少なくとも1つは、希土類元素又は希土類合金の1つ以上を含む。この希土類合金には、例えば、NdFeB(ネオジム‐鉄‐ホウ素)、SmCo(サマリウム‐コバルト)、AlNiCo(アルミニウム‐ニッケル‐コバルト)、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0068】
一実施形態によれば、複数の組織形成装置302の1つ以上は、約300ガウス(約0.03テスラ)〜約3000ガウス(約0.3テスラ)の範囲の磁場を伴う約0.2Ibf(約0.9N)〜約0.5Ibf(約2N)の範囲の力を生じることができる。一実施形態によれば、組織形成装置302の外表面は、生体適合性ポリマー材料の薄いコーティングで覆われる。この生体適合性ポリマーは、例えば、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))である。ステンレス鋼の外側の層として、3166ステンレス鋼や、又は他の生体適合性合金、を用いてもよい。
【0069】
ここでは特定の実施形態について開示を行っているが、組織形成装置302は、他の多種多様な形態及び/又は形状を有してもよい。例えば、一実施形態によれば、複数の組織形成装置302は、少なくとも1つの永久磁石(例えば希土類合金)、及び、前記永久磁石(単数又は複数)から放射される磁場に応答する少なくとも1つの一般に磁化されていない強磁性部分を含む。他の実施形態では、複数の組織形成装置302は、少なくとも1つの電磁石を含む。この実施形態では、電磁石(単数又は複数)を活性化するために、電磁伝達装置(例えば抵抗コイル)を用いてもよい。この電磁伝達装置は、心臓100の外側に有利に配置されてもよく、複数の組織形成装置302を心筋組織304内に位置させた後に、複数の組織形成装置302の1つ以上を非観血的に磁化するのに用いられてもよい。
【0070】
他の実施形態において、組織形成装置302は、少なくとも1つの磁性構造体を含んで構成されてもよい。この磁性構造体は、硬質強磁性(hard ferromagnetic)物質を含んで構成される磁石と、この磁石の少なくとも一部を覆う軟性強磁性(soft ferromagnetic)物質を含んで構成される磁束シールドとを含む。磁束シールドを、このシールドが覆っていない方向に(例えば、他の磁石の方向に)、磁石の磁束を集中及び強化するために用いてもよい。
【0071】
典型的に、複数の組織形成装置302は、互いの相互作用により、心筋組織304の形状を変化させる。これによって、前述のように、僧帽弁輪208の形状に変化をもたらすことができる。後述のように、一実施形態によれば、複数の組織形成装置302は、僧帽弁輪208に植え込まれ、互いの相互作用により僧帽弁輪208に直接的に変化を生じさせる。組織形成装置302の位置に関係なく、一実施形態によれば、相互作用は、組織形成装置302間で、引力(例えば、異なる極性間で起こる引力)及び/又は反発力(例えば、同じ極性間で起こる反発力)を生じさせる磁気相互作用である。
【0072】
形状記憶組織形成装置
【0073】
図5A〜図5Cは、図1に示された心臓100の左心室106の断面図であって、本発明の一実施形態による、僧帽弁102の弁尖204、206に隣接する心臓組織304に配置された形状記憶物質(例えば、上述の形状記憶物質)を含んで構成される2つの組織形成装置502を図示している。組織形成装置502を用いる心臓組織304には、例えば、心筋層、心臓100の心室中隔、左及び/若しくは右の線維三角、又は左心房104若しくは右心房110の壁が含まれる。図5Aにおいて、組織形成装置502は、形状記憶物質が非活性(例えば、マルテンサイト)状態にある第1構造を有する。この第1構造において、組織形成装置502は実質的に直線状である。一実施形態によれば、この実質的に直線状の構造は、組織形成装置502の縦軸が僧帽弁102を含む面に対して実質的に垂直となるように、組織形成装置502を心筋組織304に有利に容易に配置できるように選択される。他の実施形態では、第1構造における組織形成装置502は、僅かに弓状形状を有する。
【0074】
組織形成装置502を心筋組織304に植え込んだ後、適切なエネルギー源(例えば、前述したエネルギー源の1以上)を用いて、組織形成装置502を活性化する。図5B及び図5Cに示すように、活性状態(例えば、オーステナイト)において、組織形成装置502は、第1構造の実質的に直線状又は僅かに弓形な形状よりも屈曲の大きい弓状形状を有する第2構造に変化する。したがって、組織形成装置502は、活性化されると、僧帽弁204、206の基部に隣接する領域における心筋組織304を、破線及び矢印504、504間の距離で示されるように、再形成することができる。図示されるように、活性化後の図5B及び図5Cにおいて矢印504、504で示された距離は、活性化前の図5Aに示されたものよりも広い。したがって、組織形成装置504は、弁尖204、206の内側の先端を互いの方に有利に移動させ、それによって、より良好な閉鎖と弁機能を形作る。
【0075】
一実施形態によれば、組織形成装置502は、心筋組織304の移動によって、約2.22ニュートン(0.5重量ポンド)〜約13.34ニュートン(3.0重量ポンド)の範囲の圧力又は力を生じ、それによって僧帽弁102の寸法の少なくとも1つを変化させることができる。このような圧力が、弁尖204、206を約5.0mm〜約15.0mmの範囲の距離で互いに近づく移動を生じさせる。一実施形態によれば、組織形成装置502は、各弁尖を約2.0mm〜約30.0mmの範囲の距離で互いの方向へ押すように構成される。
【0076】
図5Bに示すように、一実施形態によれば、組織形成装置502は心筋組織304に植え込まれ、その活性化時には、組織形成装置502の端部が僧帽弁208を様々な方向に押すようになる。特に、組織形成装置502は、動的に調節され、それにより組織形成装置502の凹部又は凹状側面は、弁尖204、206を互いの方向へ押して、より改善された接合が容易に得られるようにする。他の実施形態では、図5Cに示すように、組織形成装置502は心筋組織304に植え込まれ、活性化時には、組織形成装置502の凸部又は凸状側面が僧帽弁208の方に曲がることで、弁尖204、206を互いの方向へ移動させて、より改善された接合が容易に得られるようにする。
【0077】
図6A〜図6Dは、本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置502の概略図である。組織形成装置502は、形状記憶物質、例えば、前述の形状記憶物質の1以上を含んで構成される。図6Aでは、組織形成装置502は、形状記憶物質が活性化されていない(例えば、形状記憶物質はマルテンサイト状態にある)第1構造で示されている。一実施形態によれば、組織形成装置502は、長さは最長で約3.0mm〜約8mmの範囲内である細長本体を有する。例示的な実施形態において、組織形成装置502の長さは最長で約6mmである。他の実施形態では、組織形成装置502の長さは最長で約8mm〜約15mmの範囲内である。
【0078】
図6Bに示すように、一実施形態によれば、組織形成装置502は円形横断面を有する。この実施形態では、組織形成装置502の直径又は横断寸法は、約0.005インチ(約0.1ミリメートル)〜0.020インチ(約0.51ミリメートル)の範囲内である。当業者であれば、本明細書の開示から、組織形成装置502が他の断面形状、例えば、楕円形、正方形、長方形、又は他の多角形、を含み得ることを認識するであろう。例えば、図6Cは、他の実施形態による、長方形の断面を有する形状記憶部材502の横断面図を示している。
【0079】
図6Dには、形状記憶物質の活性状態(例えば、オーステナイト状態)にある第2構造の組織形成装置502(実線)が示されている。第2構造において、組織形成装置502は、矢印602で示された曲率半径を有する弓形形状をとる。一実施形態によれば、活性状態の曲率半径は、約0.10インチ(約2.5ミリメートル)〜約0.30インチ(約7.6ミリメートル)の範囲内である。加えて、または他の実施形態において、組織形成装置502は、第3構造(図6D、破線)に調整可能である。第3構造において、組織形成装置502の両端部の距離は、第2構造時よりも縮まるように構成される。この実施形態では、第3構造は、心筋組織304により大きい圧力を作用させるように、またそれに対応する圧力を僧帽弁208に作用させるように、有利に用いることができる。したがって、組織形成装置502を更に調整することで、一層の補強及び弁尖接合を提供することができる。
【0080】
他の実施形態では、組織形成装置502の両端部は、組織形成装置502が第2構造から第3構造に変形するのに伴って、互いに更に離れるように移動する。この実施形態では、組織形成装置502は、第3構造において、第2構造時よりも小さな圧力を心筋組織304及び僧帽弁208に作用させる。有利なことに、これにより僧帽弁輪208のサイズを、肥大した心臓がその通常サイズに戻るのに伴って整えることができる。
【0081】
当業者であれば、本明細書の開示から、1つの組織形成装置502、2つの組織形成装置(図5A〜図5C)、又は2以上の組織形成装置502を、僧帽弁輪208について所望の再形成を達成するために用いることができることを認識するであろう。例えば、図7は心臓100の左心室106の断面図であり、形状記憶物質を含んで構成され、僧帽弁輪208(破線の第1セットで示す)内に植え込まれた複数の組織形成装置502を示している。図7に示すように、この実施形態では、組織形成装置502は弓形形状を有する第1構造で植え込まれる。活性化されると、組織形成装置502は、第1構造よりも屈曲の大きい弓形形状を有する第2構造に変形する。弁尖204、206間の距離は、組織形成装置502が第1構造にあるとき(例えば、実線で示された弁尖204、206)よりも、組織形成装置502が第2構造にあるとき(例えば、破線で示された弁尖204、206)に短くなる。組織形成装置502が活性化されると、破線702で示されるように、僧帽弁輪208も小さな周径を有するようになる。
【0082】
有利にも、一実施形態によれば、組織形成装置502を、その植え込み後に選択的に活性化することで、僧帽弁208を部分的に再形成することができる。例えば、この実施形態では、複数の組織形成装置502の内の1つ以上は第1温度で活性化されるように構成され、複数の組織形成装置502の内の他の1つ以上は第2温度で活性化されるように構成されている。加えて、又は他の実施形態において、複数の組織形成装置502の内の1つ以上は、第1周波数を有する第1電磁波に応答して活性化されるように構成され、複数の組織形成装置502の内の他の1つ以上は、第2周波数を有する第2電磁波に応答して活性化されるように構成されている。したがって、僧帽弁輪208を、1以上の寸法について一度に選択的に再形成することができる。1度に活性化する組織形成装置を複数の組織形成装置502から1つ以上選択することで、僧帽弁輪208のサイズを、弁尖204、206間に所望の接合が得られるまで、段階的に変更することができる。
【0083】
一実施形態によれば、複数の組織形成装置502は、僧帽弁輪208内又はその周りにおいて、この組織形成装置502夫々の位置において異なる圧力を及ぼすように構成されている。加えて、又は他の実施形態では、他の構造、形状、サイズ等を、複数の組織形成装置502の少なくとも1つについて用いてもよい。更に他の実施形態では、僧帽弁輪208について特定の治療結果を得るために、用いる組織形成装置502の数を増減させてもよい。更に、他の実施形態では、僧帽弁輪208に類似の変化をもたらすように、2以上の組織形成装置502を平行に並べる構成で隣合うように位置させてもよい。更に、他の実施形態では、複数の組織形成装置502は、夫々が異なる長さ、異なる形状を有してもよく、また、僧帽弁輪208及び弁尖204、206に様々な力を提供するように組織形成装置502に変更が加えられてもよい。
【0084】
図8A及び図8Bは、例示的な実施形態による、僧帽弁輪208に植え込まれた4つの組織形成装置502(1)〜502(4)の上面概略図である。第1組織形成装置502(1)及び第2組織形成装置502(2)は、僧帽弁輪208の前側及び後側に植え込まれる。第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)は僧帽弁輪208の上側と下側に、また第1組織形成装置502(1)と第2組織形成装置502(2)との略中間に、植え込まれる。一実施形態によれば、4つの組織形成装置502(1)〜502(4)は、所望の治療効果が得られるまで、1つずつ活性化される。図8Aは、活性化前の組織形成装置502(1)〜502(4)を示し、図8Bは、活性化後の組織形成装置502(1)〜502(4)を示している。
【0085】
例えば、第1組織形成装置502(1)は、本明細書に記載されたように、エネルギーが与えられることで活性化され、これによりその形状記憶物質の温度が第1活性化温度まで上昇する。一旦第1組織形成装置502(1)が活性化されると、この第1組織形成装置502(1)は弁尖204、206をともに前/後方向に押す。その後一実施形態によるイメージング技術を用いて、弁尖204、206間の間隙802を閉鎖する程に及び所望のレベルまで逆流を減少させる程に十分な接合が弁尖204、206間に得られているかどうかを測定確認する。
【0086】
十分な接合が得られていない場合、エネルギーを再び加えて、第2組織形成装置502(2)の温度を第2活性化温度以上に上昇させ、それによってその形状記憶物質を活性化させることができる。この実施形態では、第2活性化温度は第1活性化温度よりも高くなるように構成されている。一旦第2組織形成装置502(2)が活性化されると、この第2組織形成装置502(2)は弁尖204、206をともに前/後方向に押す。そして、十分な接合が得られているかどうかを確認するため再び逆流を測定する。したがって、第1組織形成装置502(1)及び第2組織形成装置502(2)を僧帽弁輪208の前/後方向の再形成に用いることができ、また、逆流を十分に減少させることができる。
【0087】
更に再形成する必要がある場合、第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)を、引き続き第3活性化温度及び第4活性化温度に夫々加熱することで、活性化させることができる。この実施形態では、第3活性化温度は第2活性化温度よりも高く、第4活性化温度は第3活性化温度よりも高くなるように構成される。他の実施形態では、組織形成装置502(1)〜502(4)のうちの2つ以上が同時に活性化されるように構成されている。例えば、第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)の両方が、第3活性化温度に達したときに活性化されてもよい。他の実施形態では、組織形成装置502(1)〜502(4)の1つ以上が、異なる形態のエネルギーで活性化されてもよく及び/又は実質的に加熱されることなく活性化されてもよい。例えば、第1組織形成装置502(1)及び第2組織形成装置502(2)の少なくとも1つが、集束超音波エネルギーで活性化されてもよいし、第3組織形成装置502(3)及び第4組織形成装置502(4)の少なくとも1つが、磁場に曝されたときに実質的に加熱されることなく活性化されるように構成された強磁性形状記憶合金を含んで構成されてもよい。
【0088】
ここでは特定の実施形態について記載を行っているが、組織形成装置502は、僧帽弁輪208の再形成に適した他の形状又は構造をとってもよい。例えば、組織形成装置502のある実施形態では、2つの構造(例えば、オーステナイト相及びマルテンサイト相)のみの間で変形してもよいし、組織形成装置502は3つ以上の構造の間で変形を行ってもよい。更に、組織形成装置502の他の実施形態では、組織形成装置を屈曲させるのではなく、又は屈曲と組み合わせることにより、組織形成装置の両端部がその間の距離を縮めるように移動するように寸法を変化させてもよい。例えば、組織形成装置502のセグメント(例えば、本質的に形状記憶物質から成るセグメント)のみを選択して、形状を変化させてもよい。
【0089】
組織形成装置502の変形(少なくとも第1構造から第2構造への変形)は、いくつかの方法で行われてもよい。一実施形態によれば、組織形成装置502は、温度変化及び/又は磁場露出に応答する形状記憶物質を含んで構成される。図6A及び図6Dを参照すると、一実施形態によれば、組織形成装置502は、組織形成装置502を第1構造から第2構造に調節するために用いることのできる形状記憶部分を少なくとも1つ含む。例えば、第1構造を、形状記憶部分がマルテンサイト相であるときと対応させてもよく、第2構造を、形状記憶部分がオーステナイト相であるときと対応させてもよい。他の実施形態では、第2構造を、形状記憶物質が菱面体晶相であるときと対応させてもよく、第3構造を、形状記憶物質がオーステナイト相であるときと対応させてもよい。
【0090】
上記のように、形状記憶物質には、形状記憶ポリマー(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA))及び/又は、強磁性形状記憶合金(例えば、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa、Co−Ni−Al)を含む形状記憶合金(例えば、ニッケル‐チタン)を含んでもよい。この実施形態では、組織形成装置502は、エネルギー源を使用することで生体内で調節される。このエネルギー源は、例えば、無線周波数エネルギー、X線エネルギー、マイクロ波エネルギー、HIFUエネルギーなどの音響エネルギー、光エネルギー、電場エネルギー、磁場エネルギー、これらの組み合わせ、等を含み、又、これらに限定されるものではない。
【0091】
好ましくは、本明細書で詳述されるように、エネルギー源は非観血的な方法で患者の体外から与えられる。例えば、磁場及び/又はRFパルスを、患者の心臓内にある組織形成装置502に、患者の心臓の外部にある及び/又は組織形成装置502に接続されていない装置を用いて、与えることができる。このような磁場及び/又はRFパルスは、一般に磁気共鳴イメージング(MRI)に用いられている。なお、他の実施形態として、カテーテルを体内に挿入し、該カテーテルを介してエネルギーを与えるなど、エネルギー源を外科的に提供するようにしてもよい。
【0092】
一実施形態によれば、組織形成装置502は、1周期の間にオンとオフの期間を有するエネルギーの短パルスによって選択的に加熱される。エネルギーパルスは、部分的に加熱することができるため、植え込み片全体を調節することなく組織形成装置502を部分的に調整することができる。
【0093】
一実施形態によれば、組織形成装置502は、基準周囲温度(例えば、37℃の基準体温)とは異なる温度への変化に応答する形状記憶物質を含んで構成される。例えば、組織形成装置502は、該組織形成装置502の加熱時に、形状記憶物質の温度Asを超えると収縮を開始して応答するように構成されている。
【0094】
組織形成装置502が収縮(例えば、垂直寸法について増加)する活性化温度(例えば、温度As〜温度Af)は、その活性化処理中に、組織形成装置502に隣接する体組織に与えうる副次的な損傷を軽減又は排除できるように選択し、組織形成装置502に組み込むことができる。実質的に最大収縮を生じさせる温度Afであって、組織形成装置502の形状記憶物質における例示的な温度Afは、約38℃〜約75℃の温度範囲内にある。形状記憶ポリマーを含んで構成された組織形成装置502の幾つかの実施形態において、物質のガラス転移又は実質的に最大収縮を生じさせる活性化温度は、約38℃〜約60℃の温度範囲内にある。他の実施形態では、活性化温度は、約45℃〜約50℃の温度範囲内にある。
【0095】
一実施形態によれば、組織形成装置502の形状は、その製造時に、オーステナイト相において、弓形形状であり相対的に長い垂直寸法を有するような記憶構造に設定される。この組織形成装置502は、温度Mf未満に冷却後、より短い垂直寸法を有する形状に手動で変形される。この実施形態では、組織形成装置502は、マルテンサイト相において、医師などの作業者が手で形状を調節して、所望の移植時サイズが得られる程度に充分な展性を有している。一実施形態によれば、組織形成装置502の開始時形状は、弁尖接合を改善し、僧帽弁102における逆流を減少させるように選択されている。
【0096】
形状記憶合金(例えば、NiTi系合金)又は形状記憶ポリマーの連続性のある部分から形成される組織形成装置502の幾つかの実施形態では、前述した方法を用いて、外科的及び/又は非観血的に加熱エネルギーを与えることで、組織形成装置502を活性化させることができる。強磁性形状記憶合金の連続性ある部分から形成される組織形成装置502の幾つかの実施形態では、適切な磁場を与えると非観血的に組織形成装置502を活性化することができる。
【0097】
また、組織形成装置502は、異なる温度応答曲線を有する形状記憶物質のセクション又は領域を2以上含んで構成されてもよい。形状記憶応答領域は、全体又は部分の収縮時に、組織形成装置502が所望の構造となるように構成されてもよい。
【0098】
一実施形態によれば、組織形成装置502の形状記憶部分は、その組織形成装置502の長さの半分を超えるように構成される。複数の形状記憶部分を有する本発明の幾つかの実施形態では、この複数の形状記憶部分のうちの1つ以上が、組織形成装置502の長さの半分よりも短い長さを有してもよく、それと同時に、それぞれの形状記憶部分の長さの合計が組織形成装置502の長さの半分を超えるように構成されてもよい。
【0099】
非観血的又はカテーテルによる組織形成装置502の形状変更処理では、望ましい臨床結果が得られるように、一度で全てを変化させるか又は段階的に変化させることができる。組織形成装置502の温度が、実質的に最大変形収縮温度Afに達しない場合、部分的に形状記憶変形及び収縮が起こってもよい。
【0100】
体内に植え込んだ後、好ましくは、組織形成装置502は、この組織形成装置502を加熱するためのエネルギーが患者の身体に与えられることで、非観血的に活性化される。一実施形態によれば、前述したように、MRI装置が組織形成装置502の加熱に用いられる。このとき、組織形成装置502の形状記憶物質は、オーステナイト相に相変態して、その関連構造(収縮構成)に変形する。このように、組織形成装置502の形状を、外科的な行為を必要とすることなく生体内で縮めることができる。MRI装置が作り出す磁場を組織形成装置502に集束させるために、通常の技術を用いてもよい。例えば、導電コイルで患者体を組織形成装置502が対応する領域において包むことで、磁場を集束させることができる。他の実施形態では、形状記憶物質は、前述したように、他のエネルギー源に曝されることで活性化される。
【0101】
組織形成装置502の形状変化は、MRI画像診断、超音波画像診断、コンピュータ断層撮影(CT)、X線等を用いて評価又はモニタすることができる。
磁性エネルギーを用いて組織形成装置502を活性化させ収縮させる場合には、例えば、組織形成装置502の活性化に必要とされるよりも弱い電界強度を発生するMRI画像診断技術を用いることができる。
【0102】
前述に加えて、本明細書に記載した組織形成装置の幾つかの実施形態は、組織形成装置を心筋組織304に固定する受動固定機構を少なくとも1つ含んでもよい。このような受動固定機構によって、組織形成装置は、一時的に又は永久に、心筋組織内よりはむしろ僧帽弁輪208の表面又はその近傍の表面に、図5A〜図5C及び図8A〜図8Bに図示されるように、取り付けられる。
【0103】
例えば、図9は、形状記憶本体部材902を含む組織形成装置900を示す概略図である。この形状記憶本体部材902はその表面上に1以上の固定アンカー904を規定(define)するように構成されている。一実施形態によれば、前記本体部材は、実質的に上記組織形成装置502と類似している。アンカー904は、組織形成装置900の外表面と結合していてもよいし、その外表面に組み込まれていてもよい。アンカー904は、僧帽弁輪208上に又はその近傍にしっかりと取り付けられるように、心筋組織304の表面を突き通るように構成される。一実施形態によれば、アンカー904は、心筋組織304の表面から外れることを予防し又はその可能性を低減するために、鉤状の突起を有する。一実施形態によれば、アンカー904は、可撓性物質(例えば、シリコーン又はポリウレタン等)を有利に含んで構成される。他の実施形態では、アンカー904は、編組物質(例えば、ステンレス鋼、ナイロン又は他の金属及び/若しくはポリマーの適当な組み合わせなど)で有利に構成される。
【0104】
他の実施形態では、他のタイプの受動固定機構を用いてもよい。例えば、組織形成装置900は、とげ様突起、アンカーパッド、スパイク、らせん状突起若しく円形突起又はこれらの組み合わせなどを含んでもよい。加えて、又は他の実施形態において、複数タイプの受動固定機構が、同様の組織形成装置900とともに用いられてもよい。本発明の実施形態に用いることができる他のタイプの固定機構としては、能動固定機構(例えば、ねじ込み式機構又は形状記憶物質を含んで構成されるアンカーなど)もまた含まれる。
【0105】
図10は、心臓100の左心室106の断面図であり、僧帽弁輪208(破線の第1セットで示す)の上又はその近傍に植え込まれた複数の組織形成装置900を示している。図示されるように、アンカー904は心筋組織304にしっかりと埋め込まれている。この実施形態では、組織形成装置900は、弓形形状を有する第1構造において植え込まれる。活性化されると、組織形成装置502は、第1構造よりも屈曲の大きい弓形形状を有する第2構造に変形する。したがって、組織形成装置は、本明細書に記載されているように、弁尖の接合を改善し、逆流を減らすよう、僧帽弁輪208を再形成するように構成されている。
【0106】
組織形成装置502、900は、一般的にロッド状装置として、例えば図6A及び図6Bに、描かれたものとは異なる形状又は形態を有してもよい。例えば、組織形成装置502は、らせん形状、弓状形状、S字形状、リボン状形状、曲線形状、編組ワイヤ、多重ワイヤ、これらの組み合わせ等を含んで構成されてもよい。
【0107】
図11は、動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪208の寸法の少なくとも1つについて変化を生じさせる、例示的な実施形態による組織形成装置1100の概略図である。組織形成装置1100は、第1構造において代表的には、破線で示すように均一なロッド形状を有する。第2構造において、組織形成装置1100は、突起部1102を組織形成装置1100の長さ方向の中心近くに形成する。一実施形態によれば、突起部1102は、心筋組織304を有利に押し、僧帽弁輪208を再形成する。それによって、弁尖204、206が互いに近づくように移動し、より改善された接合が容易に得られるようになる。
【0108】
ここでは特定の実施形態について開示を行っているが、組織形成装置1100は、多数構造間での動的調節の間、他の形態及び/又は形状を有してもよい。例えば、組織形成装置1100は、多数の突起部を有してもよく、及び/又は、第2構造において弓形形状をとってもよい。
【0109】
図12は、動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪208の形状に変化を生じさせる他の例示的な実施形態による組織形成装置1200の概略図である。特に、組織形成装置1200は、少なくとも第1構造(破線)と第2構造(実線)の間で調節可能に構成される。第1構造において、組織形成装置1200は、心筋組織304内の組織形成装置1200の配置を有利に容易にするような、より長い又は拡大された(extended)形状を含む。第2構造において、組織形成装置1200は、収縮して、より幅の広い(例えば、より垂直寸法が長い)及びより長くない形状になる。
【0110】
図示されるように、組織形成装置1200は、端部1202、1204、中心突起部1206、及び側突起部1208、1210を含む曲線形状を有する。この中心突起部1206は、組織形成装置1200が第1構造から第2構造に収縮するにしたがって、僧帽弁輪208近傍の心筋組織302を押すように構成される。特に、組織形成装置1200の変形によって、弁尖204、204の一方が、本明細書に記載されているように、他方に向かって有利に移動し、それによってより改善された接合が容易に得られるようになる。加えて、又は他の実施形態において、組織形成装置1200を、側突起部1208、1210が僧帽弁輪116の寸法の少なくとも1つについて変化を生じさせるように、位置させてもよい。
【0111】
図13Aは、一実施形態による組織形成装置1300の部分拡大斜視図である。図示された組織形成装置1300は、ワイヤ1302及び可撓性物質1304を含んで構成される。説明の便宜上、ワイヤ1302を示すために可撓性物質1304を部分的に省いた状態で示してある。
【0112】
ここで、本明細書において用いている用語「ワイヤ(wire)」は、通常及び慣例的に用いられる意味を有し、さらに、これに限定するものではないが、例えば、メッシュ、フラット、丸型、帯(バンド)状又はロッド型などの各種形状のワイヤを含むものとする。
一実施形態において、ワイヤ1302の直径は、約0.0254mm〜約0.254mmの範囲内である。
【0113】
一実施形態によれば、ワイヤ1302は、形状記憶物質を含んで構成される。適当な形状記憶物質として、形状記憶ポリマー又は形状記憶合金が含まれる。例えば、一実施形態によれば、ワイヤ1302は、前述のように、加熱時にオーステナイト相に変態して記憶形状に変形するように構成されたNiTi合金を含んで構成される。この実施形態では、ワイヤ1302はオーステナイト相に変態したときに、収縮して弓形形状となるように構成されている。この実施形態では、オーステナイト開始温度Asは約33℃〜約43℃の範囲内であり、オーステナイト終了温度Afは約45℃〜約55℃の範囲内であり、マルテンサイト開始温度Msは約30℃未満であり、マルテンサイト終了温度Mfは約20℃以上である。他の実施形態では、オーステナイト終了温度Afは、約48.75℃〜約51.25℃の範囲内である。
【0114】
一実施形態によれば、ワイヤ1302の形状記憶物質を冷却することでその形状を変化させてもよい。特定の形状記憶合金(例えばNiTiなど)は、基準周囲温度よりも低温度で反応する。ワイヤ1302の加熱後、ワイヤ1302が温度Msよりも低い温度まで冷却されると、組織形成装置1300は拡張し始める。ワイヤ1302はまた、温度Mfよりも低い温度に冷却されると、マルテンサイト相への変態が終了するので、それによって収縮サイクルを逆転させることもできる。
【0115】
前述したように、特定のポリマーは二方向性形状記憶効果を示すので、ワイヤ1302に用いることで加熱プロセス及び冷却プロセスを通して組織形成装置1300を拡張及び収縮することができる。例えば、冷却液をカテーテルを介して組織形成装置1300上に若しくは組織形成装置1300内に通すことで、又は、冷却液若しくは気体を組織形成装置1300近傍に配置させたカテーテル内において循環させることで、組織形成装置1300を冷却することができる。NiTiを用いた実施形態において、冷却する及び収縮周期を逆転させる例示的な温度は、約20℃〜約30℃の範囲内にある。
【0116】
一実施形態によれば、ワイヤ1302は、エネルギー吸収強化物質(図示せず)を含んで構成される。このエネルギー吸収強化物質は、所望の加熱エネルギーを選択的に吸収し、この非観血的加熱エネルギーを、その後の熱伝導によってワイヤ1302に伝達する熱へと変換する物質又は化合物を含んで構成される。エネルギー吸収強化物質は、非観血的に与えられた低レベルエネルギーによって組織形成装置1300を作動及び調節することを可能にし、さらに、不伝導性物質(例えば、形状記憶ポリマー)をワイヤ1302に用いることを可能にする。一実施形態によれば、活性化のために約2.5テスラ〜約3.0テスラの範囲の磁束を用いる。エネルギー吸収強化物質は、より低いレベルのエネルギーの使用を可能にすることで、熱によって周辺組織が受ける損傷を軽減することができる。加えて、また他の実施形態において、エネルギー吸収強化物質は放射線不透過性を有する。適当なエネルギー吸収強化物質は、前述の通りである。
【0117】
一実施形態によれば、エネルギー吸収強化物質は、ワイヤ1302内に位置するか、又は、エネルギー吸収を高めるようにワイヤ1302の外側を覆ってもよい。エネルギー吸収強化物質について、エネルギー吸収強化物質を取り囲むキャリア部材(図示せず)が、又はエネルギー吸収強化物質との両方が、熱伝導性を有することが望ましい。これにより、エネルギー吸収強化物質からの熱エネルギーが、ワイヤ1302に伝えられる。
【0118】
更に他の実施形態において、ワイヤ1302は、上記の強磁性形状記憶物質を含んで構成される。この実施形態では、ワイヤ1302の形状は、組織形成装置1300及びワイヤ1302を磁場に曝すことで変形される。磁場を組織形成装置1300の調節に用いる場合、近傍の健康な組織が、その組織に損傷を与えうる高温に曝されることを回避することができる。更に、形状記憶物質が加熱を必要としないので、組織形成装置900の形状及び/又はサイズを、熱活性化によるよりも急速且つ均一に調節することができるようになる。
【0119】
引き続き図13Aを参照する。図示されたワイヤ1302は、可撓性物質1304に実質的に取り囲まれている。一実施形態によれば、可撓性物質1304は、生体適合性材料(例えばシリコーンゴムなど)を有利に含んで構成される。他の実施形態では、可撓性物質1304は、織ポリエステル布、ダクロン(登録商標)、織ベロア、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘパリンコート繊維、これらの組み合わせ等を含んで構成される。また、他の実施形態では、可撓性物質1304は、例えば、ウシ心膜又はウマ心膜、同種移植片、患者移植片、又は細胞播種組織(cell-seeded tissue)などの生体物質を含んで構成される。一実施形態によれば、可撓性物質1304は、連続性を有し、及び、実質的にはワイヤ1304全体を被覆している。また、他の実施形態では、可撓性物質1304は、ワイヤ902の一部分(例えばワイヤ1302の円周について選択された部分など)を被覆している。
【0120】
一実施形態によれば、可撓性物質1304は、ワイヤ1302が第1構造から第2構造に変形できるような、有利な厚みを有する。例えば、可撓性物質1304は、約0.05mm〜約0.762mmの範囲の厚みを有してもよい。
【0121】
前述したように、一実施形態によれば、サイズ変化の過程は、従来のイメージング技術を用いてリアルタイムで測定及びモニタすることができる。また、従来のイメージング装置が発生させるエネルギーを、形状記憶物質を活性化し、組織形成装置1300の少なくとも1つの寸法を変化させるために用いることもできる。
【0122】
さらに、組織形成装置1300は、異なる温度応答曲線を有する形状記憶物質のセクション又は領域を2以上含んで構成されてもよい。例えば、ワイヤ1302は、少なくとも2つの異なる形状記憶物質を含んで構成されてもよい。
【0123】
図9Bは、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354を含む組織形成装置1350の部分拡大斜視図である。さらに、第1コーティング1356、第2コーティング1358及び可撓性物質1360も示されている。ここでは、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354を示すために、これらを部分的に取り除いた状態を示している。
【0124】
一実施形態によれば、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354は、異なる特性を有した複数の形状記憶物質を有利に含んで構成される。例えば、第1ワイヤ1352は、第2ワイヤ1354が応答するよりも低温で応答するように構成されてもよい。この実施形態では、組織形成装置1350を多数の構造に有利に調節することができる。例えば、ワイヤ1352、1354の夫々が、2つの形状記憶状態又は形状記憶構造を含む場合、組織形成装置1350は、4つの状態又は構造の間で調節を行うことができる。
【0125】
一実施形態によれば、組織形成装置1350は、収縮及び拡張可能に構成される。
そのため、例えば、前述したように、組織形成装置1350の収縮後、組織形成装置1350を拡張する必要が生じてもよい。例えば、組織形成装置1350を、肥大した心臓を持つ子供に植え込んでもよい。このとき、心臓のサイズが正常に戻り始めて僧帽弁が一般的な標準形状に再形成されたときに、組織形成装置1350を調節することができる。その後、子供が成長してそれに伴い心臓も成長すると、必要に応じて組織形成装置1350を調節したり、心臓から取り除いたりすることができる。この実施形態では、第1ワイヤ1352を、組織形成装置1350を収縮するように構成し、第2ワイヤ1354を、組織形成装置1350を拡張するように構成してもよい。
【0126】
引き続き図13Bを参照する。第1ワイヤ1352の外表面は、第1コーティング1356によって実質的に取り囲まれ、第2ワイヤ1354の外表面は、第2コーティング1358によって実質的に取り囲まれている。一実施形態によれば、第1コーティング1356及び第2コーティング1358は夫々シリコーンチューブを含んで構成される。
【0127】
他の実施形態では、第1コーティング1356及び第2コーティング1358は夫々、エネルギー吸収物質(例えば上述のエネルギー吸収物質など)を含んで構成される。一実施形態によれば、第1コーティング1356はエネルギーの第1形態に曝されると発熱し、第2コーティング1358はエネルギーの第2形態に曝されると発熱する。例えば、第1コーティング1356はMRIエネルギーに曝されたときに発熱し、第2コーティング1358はHIFUエネルギーに曝されたときに発熱する構成とすることができる。他の例として、第1コーティング1356は第1周波数を有するRFエネルギーに曝されたときに発熱し、第2コーティング1358は第2周波数を有するRFエネルギーに曝されたときに発熱する構成にしてもよい。従って、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354は、一方がオーステナイト相に相変態し、他方がマルテンサイト相のままとなるように、互いに独立に活性化させることができる。
【0128】
図示されるように、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354並びに夫々のコーティング1356、1358は、可撓性物質1360で被覆される。この可撓性物質1360は、図13Aに示される可撓性物質1304と同様のもので構成することができる。一実施形態によれば、可撓性物質1312は、一方の形状変化が他方の形状に機械的に作用するように、第1ワイヤ1352と第2形状記憶ワイヤ1354とを有効に連結する。前述のように、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354は夫々に、異なる形状記憶物質(例えば異なる温度で活性化される上述の形状記憶物質など)を含んで構成されてもよい。
【0129】
一実施形態では、組織形成装置1350が第1温度に加熱されると、第1ワイヤ1352がオーステナイト相に変態し、その記憶形状に収縮する。第1温度において、第2ワイヤ1354はマルテンサイト相にあり、収縮した第1ワイヤ1352と比較すると実質的に可撓性を有する。したがって、第1ワイヤ1352がオーステナイト相に変態すると、第2ワイヤ1354を変形させるのに十分な力が可撓性物質1360を介して第2ワイヤ1354に作用し、それによって組織形成装置1350の形状に変化が生じる。
【0130】
また、組織形成装置1350は、組織形成装置を第2温度に加熱することによって拡張することができる。この第2温度では、第2ワイヤ1354がオーステナイト相に変態し、その記憶形状に拡張する。一実施形態によれば、第2温度は第1温度よりも高温であるように構成される。したがって、第2温度において、第1ワイヤ1352及び第2ワイヤ1354の双方が、オーステナイト相にある。
【0131】
一実施形態によれば、第2ワイヤ1354の直径は第1ワイヤ1352の直径よりも十分に大きく構成される。そのため、第2ワイヤ1354は、第1ワイヤ1352よりも大きな力を発揮することができ、その記憶形状を維持することができる。したがって、第1ワイヤ1352は、第2ワイヤ1354及び組織形成装置1350による力によって機械的に変形される。
【0132】
一実施形態によれば、第1ワイヤ1352は、オーステナイト相に変態したときに収縮するように構成されている。この実施形態において、第1ワイヤ1352のオーステナイト開始温度Asは約33℃〜約43℃の範囲内であり、オーステナイト終了温度Afは約45℃〜約55℃の範囲内であり、マルテンサイト開始温度Msは約30℃未満であり、マルテンサイト終了温度Mfは約20℃以上である。他の実施形態では、第1ワイヤ1352のオーステナイト終了温度Afは、約48.75℃〜約51.25℃の範囲内である。
【0133】
一実施形態によれば、第2ワイヤ1354は、オーステナイト相に変態したときに拡張するように構成されている。この実施形態では、第2ワイヤ1354のオーステナイト開始温度Asは約60℃〜約70℃の範囲内であり、オーステナイト終了温度Afは約65℃〜約75℃の範囲内であり、マルテンサイト開始温度Msは約30℃未満であり、マルテンサイト終了温度Mfは約20℃以上である。他の実施形態では、第2ワイヤ1354のオーステナイト終了温度Afは、約68.75℃〜約71.25℃の範囲内である。
【0134】
図14Aは、本発明の一実施形態による、エネルギー吸収層1404で実質的に被覆された形状記憶ワイヤ1402を含む組織形成装置1400を示す。前述のように、エネルギー吸収層1404は、他の物質(例えばワイヤ1402)によるエネルギーの吸収を有利に強化するように構成されている。例えば、エネルギー吸収層1404は、例えば、HIFU、MRI、誘導熱、これらの組み合わせ等からのエネルギーを吸収する少なくとも1つの物質及び/又は構造を含んで構成される。一実施形態によれば、エネルギー吸収層1404は加熱効率を向上させると共に、形状記憶ワイヤ1402の所定の領域に熱を局部集中させ、周辺組織に与える損傷を軽減又は最小限に抑えることができる。
【0135】
図14Bは、組織形成装置1400の断面図である。特に、エネルギー吸収層1404が、形状記憶ワイヤ1402の外表面を取り囲むように図示されている。他の実施形態では、エネルギー吸収層1404は、エネルギーの吸収を向上させるために多数の層を含んで構成されてもよい。例えば、各々の異なる層が異なるタイプのエネルギーに応答するように構成されてもよい。他の実施形態では、エネルギー吸収層1404は、ワイヤ1402の外表面の一部分のみを被覆していても、又はエネルギー吸収物質はワイヤ1402内に位置されていてもよい。
【0136】
図15Aは、本発明の一実施形態による、電気伝導コイル1506を含む組織形成装置1500を示している。一実施形態によれば、組織形成装置1500は、図14A及び図14Bの組織形成装置1400と同様のものであり、上述のように温度変化に応答する形状記憶ワイヤ1502を含んで構成される。
【0137】
一実施形態において、電気伝導コイル1506は、銅、金、チタン、白金、白金イリジウム、ステンレス鋼、エルジロイ(ELGILOY)(登録商標)、合金、又はこれらの組み合わせ等を含んで構成される。
【0138】
図15Bは、組織形成装置1500の断面図である。特に、図示されたコイル1506は、エネルギー吸収層1504(図15Aには図示せず)を取り囲み、このエネルギー吸収層1504は、形状記憶ワイヤ1502を被覆する。これらエネルギー吸収層1504及び形状記憶ワイヤ1502は、上述のエネルギー吸収層1404及びワイヤ1402と同様のものである。
【0139】
図15Aを参照する。図示されたコイル1506はワイヤ1502の一部分に巻きついている。この一部分は、エネルギーを集中させて組織形成装置1500を加熱したい箇所として選択される。一実施形態によれば、コイル1506は、ワイヤ1502を約5%〜約15%まで被覆するように構成されている。他の実施形態では、コイル1506は、ワイヤ1502を約15%〜約70%まで被覆するように構成されている。他の実施形態では、コイル1506は、実質的にワイヤ1502の全体を被覆するように構成されている。一実施形態によれば、組織形成装置1500は、エネルギー吸収層1504を、コイル1506及びワイヤ1502の間にのみ含んでもよく、及び/又は、コイル1506が巻きついていないワイヤ1502の一部分に含んでもよい。また、他の実施形態では、組織形成装置1500は、エネルギー吸収層1504なしに機能するように構成されてもよい。
【0140】
一実施形態によれば、電磁エネルギーを用いることでコイル1506に非観血的に誘導電流を発生させることができる。例えば、一実施形態によれば、電気伝導コイルを含んで構成された携帯端末装置又はポータブル装置が(詳細は図25に記載)、非観血的に患者の身体を透過する電磁場を発生して、コイル1506に誘導電流を発生させる。つまり、この電流がコイル1506を発熱させる。コイル1506、ワイヤ1502及びコイル1504(必要であれば)は、有利に熱的な伝導性を有し、それにより熱又は熱エネルギーをコイル1506からワイヤ1502に伝えることができる。したがって、熱エネルギーをワイヤ1502又はその一部分に指向させることができ、周辺組織が受けうる損傷を軽減させることができる。
【0141】
図15Cは、さらに、外層1508を含む一実施形態による組織形成装置1500を示している。外層1508は、組織形成装置1500を用いた医療処置を容易にするための物質を少なくとも1つ含んで構成される。一実施形態によれば、外層1508は、実質的に組織形成装置1500全体を包むように構成される。他の実施形態では、外層1508は、組織形成装置1500の一部分のみを被覆するように構成される。
【0142】
一実施形態によれば、外層1508は、心筋組織304内への組織形成装置1500の配置を容易にする潤滑物質を含んで構成される。この実施形態において、潤滑物質は、ヒドロゲル又はテフロン(TEFLON)(登録商標)である。他の実施形態では、潤滑物質は、表面処理シリコーン又はポリウレタン物質、又はこれらの組み合わせ等を含んで構成されてもよい。
【0143】
加えて、又は他の実施形態において、外層1508は、患者の体による炎症反応を和らげる抗炎症性コーティングを含んで構成される。この実施形態では、抗炎症性コーティングは、デキサメタゾンリン酸ナトリウム又は、デキサメタゾンナトリウムアセテート(Dexamethasone sodium acetate)である。他の実施形態では、抗炎症性コーティングはヘパリン等を含んで構成されてもよい。
【0144】
一実施形態によれば、外層1508は、コイル1506及び/又はワイヤ1502の少なくとも一部分を有利に封じ込めることができる。これによって、これらコイル1506及び/又はワイヤ1502が患者の組織又は体液に接しないようにすることができる。例えば、外層1508は、生体適合性の可撓性物質(例えば、ポリウレタンチューブ等)を有利に含んで構成することができる。他の実施形態では、外層1508は、ポリテトラフルオロエチレン(“TEFLON”(登録商標))又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。また、他の実施形態では、外層1508はダクロン(登録商標)、織ベロア、ヘパリンコート繊維、ウシ心膜又はウマ心膜、同種移植片、患者移植片、細胞播種組織、又はこれらの組み合わせ等を含んで構成されてもよい。
【0145】
他の実施形態において、外層1508は、組織形成装置1500を心筋組織304からの除去を容易にする生分解性の被覆物又はスリーブを含んで構成されてもよい。例えば、(例えば、ドップラー強化エコー(Doppler enhanced echocardiograms)で測定されるように)ひとたび身体再形成術を僧帽弁102について行った後、組織形成装置1500を、外層1508を心筋組織304に残したまま、取り除くことができる。一実施形態によれば、外層1508は、ポリ乳酸(PLA)を有利に含んで構成される。他の実施形態では、外層1508の被覆物はポリビニルアルコール(PVA)などを含んで構成される。また、他の実施形態では、外層1508は、多数の層(例えば、生体適合性内層及び生分解性外層)を含んで構成される。
【0146】
一実施形態によれば、本明細書に開示される組織形成装置は更に、組織形成装置の所望の位置にしるしをつけるために用いることができる複数の熱伝導体を含んで構成されてもよい。例えば、複数の熱伝導体は、組織形成装置において、弁尖204、206の少なくとも1つの交連に対応する位置に配置してもよい。他の例として、熱伝導体を、経皮的エネルギー源(例えば、カテーテルで挿入される加熱バルーンなど)を組織形成装置に位置合わせして配置するために用いることができる。一実施形態によれば、熱伝導体は、金、銅等のイメージング物質を含んで構成される。
【0147】
前述のように、一実施形態において、本明細書に開示される組織形成装置は、患者の心臓の外部に位置したエネルギー源によって非観血的な方法で有利に及び動的に調節される。図25は、心臓2506内に位置する組織形成装置2504を調節するために患者の体2502の外で用いることができる外部源2500の概略図である。外部源2500は、エネルギーを組織形成装置2504に伝達できる任意の変換器、伝達装置などを含み、組織形成装置2504の形状及び/又はサイズの変化を達成する。
【0148】
前述のように、外部源2500は、非観血的に患者の体2502を透過し、及び、組織形成装置2504に誘導電流を発生させるような電磁場を生じる電気伝導コイルを含んでもよい。他の実施形態では、外部源2500は、超音波エネルギーを組織形成装置2504に集中させる外部HIFU変換器を含んで構成される。また、他の実施形態では、外部源2500は、例えば、無線周波数(RF)エネルギー、X線エネルギー、マイクロ波エネルギー、音響エネルギー、光エネルギー、電場エネルギー、磁場エネルギー、又はこれらの組み合わせ等を、組織形成装置3504に伝えるように構成されている。
【0149】
例えば、一実施形態によれば、組織形成装置2504は、少なくとも1つの電磁石を含んで構成される。この実施形態では、外部源2500は、電磁伝達装置(例えば、抵抗コイル)を含んで構成される。この電磁伝達装置は、電磁石(単数又は複数)を活性化して、組織形成装置2504に形状変化を生じさせるように用いられる。このような形状変化は、僧帽弁輪の少なくとも1寸法を調節するために用いることができる。例えば、組織形成装置2504は、第1端部に電磁石を、第2端部に磁性体を、含むように構成されてもよい。外部源2500が電磁石を活性化する場を発生させると、電磁石は磁性体を引き付け又は反発し、したがって、組織形成装置2504に形状変化がもたらされる。
【0150】
組織形成装置の植え込み
【0151】
本明細書により開示される組織形成装置は、患者に外科的に、内視鏡的に、及び/又はカテーテルデリバリーシステムを介して経皮的に、植え込まれる。例えば、図16及び図17は、本発明の実施形態による、組織形成装置1602、1604を心筋組織304内に植え込むのに用いられる例示的な方法を示している。組織形成装置1602及び1604は、丸形又は円盤状の装置として示されている。しかしながら、当業者であれば、組織形成装置1602、1604は、他の構造を有してもよく、例えば、組織形成装置302、502、900、1100、1200、1300、1350、1400又は1500に関して上述されたような、形状、構造、並びに/又は磁気及び/若しくは形状記憶物質を有してもよいことが認識できるであろう。
【0152】
図16は、図1に示されたヒト心臓100の断面図であり、組織形成装置1602、1604を運ぶ経中隔アプローチを用いた経中隔デリバリーシステム1606の末端部分を示す。デリバリーシステム1606の遠端部1608は、一実施形態により近端制御機構(図示せず)により屈曲可能に構成されると共に、図示されるように、心筋組織304と、この心筋組織304に挿入された穿通部材又は可動針1610によって係合するように構成される。デリバリーシステム1606の屈曲可能な性質と回転運動とにより、デリバリーシステムの遠端部1608を、図16に破線で示されるように、左心房104内における様々な所望の位置に、配置させることができる。
【0153】
左心房104にアクセスするために、デリバリーシステム1606は、下大静脈1612を経由して、右心房110から卵円窩1614を通過するように挿入される。可動針1610は、心筋壁304に経皮的に経路を形成する。組織形成装置1602、1604は、その後、針1610から放出される、又は、針1610から針1610内のスタイレット(図示せず)によって押し出される。有利にも、このアプローチは、組織形成装置1602、1604を僧帽弁102の心房側に配置するのに有用である。一実施形態によれば、経中隔デリバリーシステム1606は、外部横断寸法又は外直径が約7フレンチ(French)〜約9フレンチの範囲内であるカテーテル本体1616を含んで構成される。
【0154】
右心房110から左心房104への一般的な経中隔アプローチは周知であり、特に、逆行性アプローチ(後述)が禁忌である場合に、電気生理学及び心臓学において用いられる。例示的な実施形態によれば、市販の経中隔アクセスシステムが用いられ、これには、ステンレス鋼ブロッケンブラッフ針(Brokenbrough needle)(メドトロニック(Medtronic(登録商標))社製)を有する“Mullins(商標登録申請中)イントロデューサーシース(Mullins Introducer Sheath)”が含まれる。同様の装置はSt. Jude Medical(登録商標)社によっても製造されている。ブロッケンブラッフ針は、経中隔穿刺を行うために用いられる。このとき、Mullinsイントロデューサーシース/拡張器のセットは、その中に針とカテーテルを通して導く管として用いられる。ブロッケンブラッフ曲線針(Brokenbrough curved needle)は、外側カニューレ及び内部スタイレットを含んで構成されている。外側カニューレは、ステンレス鋼などの素材で作られた薄壁チューブを含んで構成されている。内部スタイレットは、中空でなく中実で(solid)、より硬く(stiffer)、及び、カニューレの管腔内部に近接してはめ込まれる。一実施形態では、スタイレットの鋭い先端は、カニューレの遠端部から約2mm〜約3mm程突き出るように構成される。
【0155】
図17は、図1に示されたヒト心臓100の断面図であり、組織形成装置1602、1604をデリバリする逆行性アプローチを用いた逆行性デリバリーシステム1702の末端部分を示す。一実施形態によれば、デリバリーシステム1702は、近端制御機構(図示せず)により屈曲可能に構成される遠端部1706を有するカテーテル本体1704を含んで構成される。この屈曲可能な性質により、屈曲と回転とを組み合わせることで、逆行性システム1702の遠端部1706を左心室106又は心臓の他の部分において、前述の経中隔デリバリーシステム1606が行うように、操作することができる。デリバリーシステム1702の遠端部1706について、他の位置取りを図17に破線で示した。
【0156】
左心室106にアクセスするために、デリバリーシステム1702は、大動脈1708を進んで、大動脈弁1710を通る。システム1702の遠端部1706は、心筋組織304に、この心筋組織304に挿入された穿通部材又は可動針1712によって係合するように構成される。一旦針1712が心臓100内の組織304の所望の位置に挿入されると、組織形成装置1602、1604が、針1712から放出される、又はスタイレット(図示せず)によって針1712から押し出される。一実施形態によれば、カテーテル本体1704の外部横断寸法又は外直径は、約7フレンチ〜約9フレンチの範囲内である。
【0157】
弁尖ブレス
【0158】
他の実施形態では、弁閉鎖不全は、変形した弁尖を直接補強することで治療される。例えば、図18は、図1に示された心臓の左心室106の断面図である。ここでは、僧帽弁102の弁尖204、206が変形して、正常な閉鎖や弁機能が妨げられている。図19は、図18に示された僧帽弁102の弁尖204、206上に配置及び圧着された弁尖ブレス1900を示している。この弁尖ブレス1900は、弁尖204、206を機械的に支持し、弁尖204、206夫々の内端1902に作用して弁閉鎖及び弁機能を改善するように構成されている。
【0159】
図20A及び図20Bは、本発明の一実施形態による、図19に示された弁尖ブレス1900の概略図である。弁尖ブレス1900は、代表的には管状の構造を有しており、この管状構造は、例えば、ステンレス鋼、NiTi、白金イリジウム、金、炭素、ポリウレタンなどの適当なポリマー、等の圧着可能な高強度生体適合性物質で作られる。一実施形態によれば、ブレス1900の軸長は約0.15インチ(約3.8ミリメートル)〜約0.250インチ(約6.35ミリメートル)の範囲内であり、外部横断寸法又は外直径は約0.13インチ(約3.3ミリメートル)〜約0.14インチ(約3.6ミリメートル)の範囲内であるように構成されている。加えて、又は他の実施形態では、弁尖1900の内部横断寸法又は内直径は、約0.08インチ(約2ミリメートル)〜約0.12インチ(約3.0ミリメートル)の範囲内であるように構成されている。他の実施形態では、ブレス1900の内部横断寸法又は内直径は、約0.020インチ(約0.5ミリメートル)〜約0.10インチ(約2.5ミリメートル)の範囲内であるように構成されている。
【0160】
図21は、本発明の他の実施形態による、弁尖ブレス2100の横断面の概略図である。有利にも、弁尖2100は、楕円形又は長円形の断面を有しており、そのため、弁尖204、206の基部に又は基部の近傍に配置することができる。一実施形態によれば、弁尖2100は、その横断面の縦の長さに対して約5〜10倍の範囲の幅の横断面を有するように構成されている。一実施形態によれば、ブレス2100の材質及び寸法は、上記ブレス1900の材質及び寸法と同一又は類似である。
【0161】
図22は、図18に示された左心室106の断面図であり、本発明の一実施形態により、僧帽弁102の弁尖204、206上に配置及び圧着された弁尖2200を示している。弁尖ブレス2200は、基部2202及び、この基部2202から軸方向に伸びた1以上の弾性延長部2204を含んで構成される。基部2202は、剛性機械的強度及び支持を、僧帽弁102の弁輪2206に隣接した弁尖204、206の基部に提供する。
【0162】
弾性延長部2204は、弁尖204、206の中央部分に可撓性支持を提供する。ブレス2200が提供する剛性及び可撓性支持によって、弁尖204、206夫々の内端1902が促されて、弁閉鎖及び機能が改善される。したがって、ブレス2200は、図18の左心室106に示された障害を有する弁構造において起こる逆流を、有利に予防又は減少させる。一実施形態によれば、ブレス2200は、そのブレス2200を所望の弁尖204、206上で摺動させて、所定の位置で圧着させることで配置される。
【0163】
図23A及び図23Bは、本発明の一実施形態による、図22に示された弁尖2200の概略図である。概略的に示されるように、一実施形態による基部2202は、丸い横断面と、基部2202から軸方向に伸びる4つの弾性延長部とを有する。この実施形態では、基部2202の軸長は、約0.15インチ(約3.8ミリメートル)〜約0.25インチ(約6.4ミリメートル)の範囲内であり、内部横断寸法又は内直径は約0.005インチ(約0.1ミリメートル)〜約0.01インチ(約0.3ミリメートル)の範囲内であり、外部横断寸法又は外直径は約0.13インチ(約3.3ミリメートル)〜約0.14インチ(約3.6ミリメートル)の範囲内である。この実施形態では、弾性延長部2204の長さは約0.05インチ(約1ミリメートル)〜約0.1インチ(約3ミリメートル)の範囲内であり、外部横断寸法又は外直径は約0.005インチ(約0.1ミリメートル)〜約0.010インチ(約0.25ミリメートル)の範囲内である。
【0164】
一実施形態によれば、基部2202及び弾性延長部2204の材質は、上記ブレス1900の材質と同一又は類似である。一実施形態によれば、弾性延長部2204は、可撓性のポリマー物質、又は、カーボンファイバーのようなポリマー繊維を有利に含んで構成される。
【0165】
図24は、本発明の他の実施形態による、弁尖2400の横断面の概略図である。有利にも、弁尖ブレス2400は、実質的に長円形又は楕円形の横断面を有し、そのため、弁尖204、206の基部に又はその近傍に配置することができる。ブレスは、複数の可撓性延長部を含んで構成される。一実施形態によれば、ブレス2400は、その横断面の縦の長さに対して約5〜10倍の範囲の幅の横断面を有するように構成されている。一実施形態によれば、ブレス2400の材質及び寸法は、上記ブレス1900及び/又はブレス2200の材質及び寸法と同一又は類似である。
【0166】
弾性組織形成装置
【0167】
一実施形態によれば、弾性物質を含んで構成される1以上の組織形成装置は、心臓弁輪に又はその近傍に植え込まれ、それによって弁尖基部に隣接する領域において心臓組織を再形成し、弁尖接合を改善するように構成されている。弾性組織形成装置が植え込まれる心臓組織には、例えば、心筋層、心臓の心室中隔、左及び/若しくは右の線維三角、又は左若しくは右の心房壁が含まれる。
【0168】
有利にも、この弾性物質は、機械的に緊張状態にすることができる。それによって心臓組織への植え込みが容易になる。植え込み後、弾性物質の緊張状態を解いて、組織形成装置をその緊張前の形状に回復させ、それによって周囲の心臓組織を再形成することができる。この実施形態では、緊張前の形状への回復には、有利にも、弾性物質の加熱又は他の活性化を行うための外部エネルギー源の使用を必要としない。
【0169】
例えば、図26は、本発明の一実施形態による、弾性組織形成装置2602を運ぶように構成されたカテーテル2600の部分断面図である。カテーテル2600は、ハンドル2606に連結した近端部を有する細長いカテーテル本体2604を含んで構成される。ハンドル2606は、サイドアーム2608を含む。このサイドアーム2608を通って、管状針2609が挿入され、さらにカテーテル本体2604内を進入する。これにより、弾性組織形成装置2602が心臓組織に運ばれる。一実施形態によれば、ハンドル2606は、細長いカテーテル本体2604の遠端部2612を屈曲させるように構成された屈曲制御装置2610を含む。
【0170】
一実施形態によれば、弾性組織形成装置2602は、図中に組織形成装置2602’として破線で示されるように機械的に応力を加えられていないときには、弓形形状を有している。弾性組織形成装置2602は、サイドアーム2608を通してカテーテル2600内に挿入されているときは、よりなだらかな弓形又は実質的に直線形状に変形される。そのためカテーテル本体2604内に適合することができる。その後、弾性組織形成装置2602は押されて、細長いカテーテル本体2604を進入し、カテーテル本体の遠端部2612から抜け出る。弾性組織形成装置2602が遠端部2612から抜け出ると、カテーテルによって加えられていた応力が無くなるため、弾性組織形成装置2602は、組織形成装置2602’として破線で示されるように、応力が加わる前の弓形形状に回復する。
【0171】
一実施形態によれば、弾性組織形成装置2602は、変形後に変形前の形状に回復可能な、金属又は金属合金を含んで構成される。この実施形態において、弾性組織形成装置2602は、約0.3%〜約0.8%の範囲内で緊張させた後に以前の形状に回復するように構成されたステンレス鋼、を含んで構成される。
【0172】
他の実施形態では、弾性組織形成装置2602は、形状記憶物質(例えば、上記の形状記憶物質)を含んで構成される。このような形状記憶物質は、実質的な変形の後、負荷を除いたときに、本来の形状に回復することが可能である。このような性質は、超弾性又は擬弾性と呼ばれる。特定の形状記憶物質において、超弾性は、形状記憶物質の温度がオーステナイト終了温度(Af)を超える場合には、応力誘発マルテンサイト形成に基づくものである。外部応力を加えることで、マルテンサイト開始温度(Ms)よりも高い温度でマルテンサイトが形成する。この応力が取り除かれると、マルテンサイトは変形してオーステナイトに戻り、そのため形状記憶物質も応力が加わる前の形状に回復する。一実施形態によれば、オーステナイト終了温度(Af)及びマルテンサイト開始温度(Ms)は、夫々が上記の温度範囲となるように構成されている。例示的な実施形態において、形状記憶物質のオーステナイト終了温度(Af)は、患者の体温よりも幾分低くなるように又はその範囲内で選択される。一実施形態によれば、弾性組織形成装置2602は、実質的に約8.0%〜約10.0%の範囲内で緊張状態にされた後にそれ以前の形状に回復するように構成されたNiTi合金を含んで構成される。
【0173】
図27Aは、本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪208に植え込まれた複数の弾性組織形成装置2602の上部概略図である。図27Bは、図26に示されたカテーテル2600及び管状針2609の遠端部2612を経由して僧帽弁輪208に植え込まれた複数の弾性組織形成装置2602の1つを概略的に示した図である。前述のように、弾性組織形成装置2602は、針2609から放出されて、僧帽弁輪208に入ると、弓形形状に回復するように構成されている。複数の弾性組織形成装置2602が植え込み時にその弓形形状に回復すると、それらは弁尖204、206の双方を押して、弁尖接合を改善させ、また、逆流を軽減させる。
【0174】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、これら実施形態は例示のみを目的として記載されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際には、本明細書に記載された新規な方法及びシステムは、その他の様々な形態で実施されることができ、また、本発明の精神を逸脱することなく、様々な省略、置換、変更が可能である。添付の特許請求の範囲並びにその均等物は、このような形態又は修正を本発明の範囲及び思想に含むことを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】ヒトの心臓の断面図。尚、心臓の特徴のいくつかは、図を明確にするために示していない。
【図2】心収縮期の間における、僧帽弁尖の不完全閉鎖による左心房への血液の逆流を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図3A】本発明の一実施形態による、僧帽弁尖に隣接した心筋組織に植え込まれた複数の磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図3B】本発明の一実施形態による、僧帽弁尖に隣接した心筋組織に植え込まれた複数の磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図4A】本発明の一実施形態による、僧帽弁を含む面を挟んで互いに対向するように植え込まれた、相互に引き合う2つの磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図4B】本発明の一実施形態による、僧帽弁を含む面を挟んで互いに対向するように植え込まれた、相互に引き合う2つの磁気組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図5A】僧帽弁尖に隣接した心筋組織に配置された形状記憶物質を含んで構成される2つの組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図5B】僧帽弁尖に隣接した心筋組織に配置された形状記憶物質を含んで構成される2つの組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図5C】僧帽弁尖に隣接した心筋組織に配置された形状記憶物質を含んで構成される2つの組織形成装置を示す、図1に示された心臓左心室の断面図。
【図6A】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図6B】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図6C】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図6D】本発明の一実施形態による、第1構造から第2構造に変形可能な例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図7】僧帽弁輪内に植え込まれた、形状記憶物質を含んで構成される複数の組織形成装置を示す、心臓左心室の断面図。
【図8A】本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪に植え込まれた4つの組織形成装置の上面概略図。
【図8B】本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪に植え込まれた4つの組織形成装置の上面概略図。
【図9】本発明の一実施形態による、形状記憶本体部材を含み、1以上の固定アンカーをその表面に規定(define)する、組織形成装置の概略図。
【図10】本発明の一実施形態による、僧帽弁輪表面上に及び/又はその近傍に植え込まれた複数の組織形成装置を示す、心臓左心室の断面図。
【図11】動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪の寸法の少なくとも1つについて変化を生じさせる、例示的な実施形態による組織形成装置の概略図。
【図12】動的に調節可能で、それによって僧帽弁輪の形状に変化を生じさせる、他の実施形態による組織形成装置の概略図。
【図13A】本発明の一実施形態による、形状記憶ワイヤを含んで構成される組織形成装置の部分斜視図。
【図13B】本発明の一実施形態による、第1ワイヤ及び第2ワイヤを含んで構成される組織形成装置の部分斜視図。
【図14A】本発明の一実施形態による、エネルギー吸収層で実質的に被覆された形状記憶ワイヤを含む組織形成装置の概略図。
【図14B】本発明の一実施形態による、エネルギー吸収層で実質的に被覆された形状記憶ワイヤを含む組織形成装置の概略図。
【図15A】本発明の一実施形態による、電気伝導コイルを含む組織形成装置の概略図。
【図15B】本発明の一実施形態による、電気伝導コイルを含む組織形成装置の概略図。
【図15C】本発明の一実施形態による、電気伝導コイルを含む組織形成装置の概略図。
【図16】本発明の一実施形態による、組織形成装置を運ぶ経中隔アプローチを用いた経中隔デリバリーシステムの末端部分を示す、図1に示されたヒトの心臓の断面図。
【図17】本発明の一実施形態による、組織形成装置を僧帽弁の心室側に運ぶ逆行性アプローチを用いた逆行性デリバリーシステムの末端部分を示す、図1に示されたヒトの心臓の断面図。
【図18】僧帽弁の弁尖が変形して正常な弁閉鎖や弁機能が妨げられた、図1に示されたヒトの心臓の断面図。
【図19】図18に示された僧帽弁の弁尖上に配置及び圧着された弁尖ブレスを示す図。
【図20A】本発明の一実施形態による、図19に示された弁尖ブレスの概略図。
【図20B】本発明の一実施形態による、図19に示された弁尖ブレスの概略図。
【図21】本発明の他の実施形態による、弁尖ブレスの横断面の概略図。
【図22】本発明の一実施形態による、僧帽弁の弁尖上に配置及び圧着された弁尖ブレスを示す、図18の左心室の断面図。
【図23A】本発明の一実施形態による、図22に示された弁尖ブレスの概略図。
【図23B】本発明の一実施形態による、図22に示された弁尖ブレスの概略図。
【図24】本発明の他の実施形態による、弁尖2400の横断面の概略図。
【図25】患者の心臓内に位置する組織形成装置を調節するために患者の体の外で用いることができる外部源の概略図。
【図26】本発明の一実施形態による、弾性組織形成装置を運ぶように構成されたカテーテルの部分断面図。
【図27A】本発明の例示的な実施形態による、僧帽弁輪に植え込まれた複数の組織形成装置の上面外略図。
【図27B】図26に示されるカテーテルの遠端部を通って、図27Aに示される僧帽弁輪に植え込まれる弾性組織形成装置の概略図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓弁を補強する植え込み片であって、該植え込み片は、
近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間に伸びる長手部材と、を含んで構成され、患者の心臓の心臓弁尖基部に直接又はその近傍に植え込まれるように構成された本体部材を含んで構成され、
前記本体部材は、第1構造から第2構造に変形可能な形状記憶物質を含んで構成され、
前記本体部材は、該本体部材が第2構造にあるとき、弁尖基部に力を及ぼして心臓組織を再形成するように構成され、
及び、前記植え込み片は、その長さが最長で約15ミリメートル以下で細長い、
ことを特徴とする植え込み片。
【請求項2】
前記本体部材は、前記第1構造にあるときに実質的に直線状であることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項3】
前記植え込み片は、前記本体部材が前記第1構造であるときに前記患者の体内に植え込まれることを特徴とする請求項2に記載の植え込み片。
【請求項4】
前記本体部材は、前記第2構造にあるときに実質的に弓形な形状を含んで構成されることを特徴とする請求項2に記載の植え込み片。
【請求項5】
前記植え込み片は、前記心臓組織内に完全に植え込まれるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項6】
前記植え込み片は、前記心臓組織の表面に隣接して配置されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項7】
前記本体部材は、更に、前記心臓組織の表面に前記本体部材をしっかりと取り付けるように構成された1以上のアンカー部材を含んで構成されることを特徴とする請求項6に記載の植え込み片。
【請求項8】
前記植え込み片の長さは、最長で約10ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項9】
前記植え込み片の長さは、最長で約6ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項10】
前記形状記憶物質は、前記第1構造及び前記第2構造の少なくとも一方で超弾性を有するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項11】
前記心臓組織は、心筋層を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項12】
前記心臓組織は、心臓の心室中隔を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項13】
前記心臓組織は、線維三角を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項14】
前記心臓組織は、心房壁を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項15】
前記植え込み片は、前記本体部材が前記第1構造であるときに、逆行性アプローチを用いた逆行性デリバリーシステムによって患者の心臓の左心室へ運ばれることができるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項16】
前記植え込み片は、前記本体部材が前記第1構造であるときに、経中隔アプローチを用いた経中隔デリバリーシステムによって患者の心臓の左心房へ運ばれることができるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項17】
前記形状記憶物質は、形状記憶合金を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項18】
前記形状記憶物質は、形状記憶ポリマーを含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項19】
前記形状記憶物質は、強磁性を有することを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項20】
前記形状記憶物質は、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa及びCo−Ni−Alの少なくとも1つを含んで構成されることを特徴とする請求項19に記載の植え込み片。
【請求項21】
前記本体部材は、強磁性形状記憶物質の温度を実質的に変化させずに、前記第1構造から前記第2構造に変形するように構成されることを特徴とする請求項20に記載の植え込み片。
【請求項22】
前記本体部材は、前記形状記憶物質がエネルギー源によって活性化されると、前記第1構造から前記第2構造に変化するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項23】
前記エネルギー源は、超音波エネルギー源を含んで構成されることを特徴とする請求項22に記載の植え込み片。
【請求項24】
前記植え込み片が、更に、エネルギー源に応答して、エネルギーを吸収するように構成され、前記形状記憶物質と熱的に接続するエネルギー吸収強化物質を含んで構成されることを特徴とする請求項22に記載の植え込み片。
【請求項25】
前記エネルギー吸収強化物質は、ナノ粒子を含んで構成されることを特徴とする請求項24に記載の植え込み片。
【請求項26】
前記ナノ粒子は、ナノシェル及びナノスフェアの少なくとも一方を含んで構成されることを特徴とする請求項25に記載の植え込み片。
【請求項27】
前記エネルギー吸収強化物質は、放射性不透過性を有することを特徴とする請求項24に記載の植え込み片。
【請求項28】
前記エネルギー吸収強化物質は、前記エネルギー源に応答して発熱するようにさらに構成されることを特徴とする請求項24に記載の植え込み片。
【請求項29】
前記植え込み片は、エネルギー源に応答して電流を導き、形状記憶物質に熱エネルギーを伝えるように構成された電気伝導性物質を含んでさらに構成されることを特徴とする請求項22に記載の植え込み片。
【請求項1】
患者の心臓弁を補強する植え込み片であって、該植え込み片は、
近端部と、遠端部と、該近端部と該遠端部との間に伸びる長手部材と、を含んで構成され、患者の心臓の心臓弁尖基部に直接又はその近傍に植え込まれるように構成された本体部材を含んで構成され、
前記本体部材は、第1構造から第2構造に変形可能な形状記憶物質を含んで構成され、
前記本体部材は、該本体部材が第2構造にあるとき、弁尖基部に力を及ぼして心臓組織を再形成するように構成され、
及び、前記植え込み片は、その長さが最長で約15ミリメートル以下で細長い、
ことを特徴とする植え込み片。
【請求項2】
前記本体部材は、前記第1構造にあるときに実質的に直線状であることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項3】
前記植え込み片は、前記本体部材が前記第1構造であるときに前記患者の体内に植え込まれることを特徴とする請求項2に記載の植え込み片。
【請求項4】
前記本体部材は、前記第2構造にあるときに実質的に弓形な形状を含んで構成されることを特徴とする請求項2に記載の植え込み片。
【請求項5】
前記植え込み片は、前記心臓組織内に完全に植え込まれるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項6】
前記植え込み片は、前記心臓組織の表面に隣接して配置されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項7】
前記本体部材は、更に、前記心臓組織の表面に前記本体部材をしっかりと取り付けるように構成された1以上のアンカー部材を含んで構成されることを特徴とする請求項6に記載の植え込み片。
【請求項8】
前記植え込み片の長さは、最長で約10ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項9】
前記植え込み片の長さは、最長で約6ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項10】
前記形状記憶物質は、前記第1構造及び前記第2構造の少なくとも一方で超弾性を有するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項11】
前記心臓組織は、心筋層を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項12】
前記心臓組織は、心臓の心室中隔を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項13】
前記心臓組織は、線維三角を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項14】
前記心臓組織は、心房壁を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項15】
前記植え込み片は、前記本体部材が前記第1構造であるときに、逆行性アプローチを用いた逆行性デリバリーシステムによって患者の心臓の左心室へ運ばれることができるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項16】
前記植え込み片は、前記本体部材が前記第1構造であるときに、経中隔アプローチを用いた経中隔デリバリーシステムによって患者の心臓の左心房へ運ばれることができるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項17】
前記形状記憶物質は、形状記憶合金を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項18】
前記形状記憶物質は、形状記憶ポリマーを含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項19】
前記形状記憶物質は、強磁性を有することを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項20】
前記形状記憶物質は、Fe−C、Fe−Pd、Fe−Mn−Si、Co−Mn、Fe−Co−Ni−Ti、Ni−Mn−Ga、Ni2MnGa及びCo−Ni−Alの少なくとも1つを含んで構成されることを特徴とする請求項19に記載の植え込み片。
【請求項21】
前記本体部材は、強磁性形状記憶物質の温度を実質的に変化させずに、前記第1構造から前記第2構造に変形するように構成されることを特徴とする請求項20に記載の植え込み片。
【請求項22】
前記本体部材は、前記形状記憶物質がエネルギー源によって活性化されると、前記第1構造から前記第2構造に変化するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の植え込み片。
【請求項23】
前記エネルギー源は、超音波エネルギー源を含んで構成されることを特徴とする請求項22に記載の植え込み片。
【請求項24】
前記植え込み片が、更に、エネルギー源に応答して、エネルギーを吸収するように構成され、前記形状記憶物質と熱的に接続するエネルギー吸収強化物質を含んで構成されることを特徴とする請求項22に記載の植え込み片。
【請求項25】
前記エネルギー吸収強化物質は、ナノ粒子を含んで構成されることを特徴とする請求項24に記載の植え込み片。
【請求項26】
前記ナノ粒子は、ナノシェル及びナノスフェアの少なくとも一方を含んで構成されることを特徴とする請求項25に記載の植え込み片。
【請求項27】
前記エネルギー吸収強化物質は、放射性不透過性を有することを特徴とする請求項24に記載の植え込み片。
【請求項28】
前記エネルギー吸収強化物質は、前記エネルギー源に応答して発熱するようにさらに構成されることを特徴とする請求項24に記載の植え込み片。
【請求項29】
前記植え込み片は、エネルギー源に応答して電流を導き、形状記憶物質に熱エネルギーを伝えるように構成された電気伝導性物質を含んでさらに構成されることを特徴とする請求項22に記載の植え込み片。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【公表番号】特表2008−506470(P2008−506470A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521646(P2007−521646)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/025044
【国際公開番号】WO2006/019943
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(506384051)ミカーディア コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/025044
【国際公開番号】WO2006/019943
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(506384051)ミカーディア コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】
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