説明

情報出力装置

【課題】現状の製造コストをできる限り維持して容易に盗難防止機能を追加可能な情報出力装置を提供する。
【解決手段】本願の情報出力装置1は、デタッチグリル10に本体2側へ突出する折り取り可能な複数の突起11を設け、本体2側でその突起11の位置情報を登録しておくことで、デタッチグリル10が本体2に取付けられた場合に、当該突起11の位置情報を検出し、その検出結果と登録された突起11の位置情報とを比較してデタッチグリル10の認証を行い、その認証が否定された場合には本体2の動作処理を停止するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えば車両用の音響装置などの情報出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される音響装置やナビゲーション装置など情報出力装置の盗難が発生している。このような盗難防止を目的として、本体と、この本体の前面に着脱可能な操作部や表示画面を有するノーズピースと、を備えた盗難防止機能付きのカーオーディオ装置が存在する。すなわち、このカーオーディオ装置は、ノーズピース無しでは動作しない構成となっており、当該ノーズピースを取り外すことによってカーオーディオ装置の盗難を抑止するものである。
【0003】
しかしながら、この種のカーオーディオ装置は、同型のノーズピースを入手することによって、本体が動作するためこのような盗難防止対策では決して万全とは言えない。
【0004】
このような課題を解決すべく、本体及びノーズピースの双方にメモリを備え、最終使用状態を双方のメモリに記憶しておき、電源投入時に双方のメモリに記憶されている情報が一致するか否かで認証を行うカーオーディオ装置が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−229388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示されたカーオーディオ装置は、認証用のメモリが双方に必要であって、認証のための通信処理も必要となり、部品点数の増加、製造コストの増大を招く結果となってしまう。
【0007】
近年、同種企業間における競争の激化によりコストの低減は必須であるため、盗難防止機能を追加する上で、部品点数の増加などによる製造コストや製造工程の増加はできる限り避けたいとの要望がある。
【0008】
本願は、上記の事情を考慮してなされたもので、その課題の一例としては、現状の製造コストをできる限り維持して容易に盗難防止機能を追加可能な情報出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の情報出力装置は、情報を出力する本体と、前記本体に着脱可能に取付けられるデタッチグリルと、を備えた移動体に搭載される情報出力装置において、前記本体又は前記デタッチグリルのいずれか一方から他方に突出する突起部材と、前記突起部材の位置情報を記憶する記憶手段と、前記デタッチグリルが前記本体に取付けられた場合に、前記突起部材の位置情報を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記突起部材の位置情報と、前記記憶手段に記憶された前記突起部材の位置情報とが一致するか否かを判断する判断手段と、前記情報を出力制御する制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記判断の結果、前記突起部材の位置情報が一致しない場合に、前記情報の出力動作を停止制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願の一実施形態としての音響装置の外観例を示す斜視図である。
【図2】前面蓋部とデタッチグリルの背面外観例を示す斜視図である。
【図3】本願の一実施形態としての音響装置の内部構成図である。
【図4】認証モード時の音響装置の動作を示すフローチャート図である。
【図5】登録モード時の音響装置の動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の最良の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、一例として自動車(以下、「車両」と称する。)に搭載されるデタッチグリル付きの音響装置に本願の情報出力装置を適用した場合の実施形態である。
【0012】
本実施形態の音響装置1は、デタッチグリル10に本体2側へ突出する折り取り可能な複数の突起11(突起部材の一例)を設け、本体2側でその突起11の位置情報を予め記憶(登録)しておくことで、デタッチグリル10が前記本体2に取付けられた場合に、当該突起11の位置情報を検出し、その検出結果と前記登録された突起11の位置情報とを比較して当該デタッチグリル10の認証を行い、その認証が否定された場合には本体2の動作処理を停止するようになっている。すなわち、本実施形態の音響装置1は、デタッチグリル10を取り外すことによって認証用の突起11の位置情報が不明となることで、仮に第三者が本体2を持ち出して別のデタッチグリルを本体2に取り付けたとしても、その後音響装置1として使用できないことから、第三者による盗難が抑止されるものである。
【0013】
具体的な本実施形態の音響装置1について図1乃至図3を用いて以下に説明する。図1は本願の一実施形態としての音響装置の外観例を示す斜視図、図2は前面蓋部とデタッチグリルの背面外観例を示す斜視図、図3は本願の一実施形態としての音響装置の内部構成図である。
【0014】
音響装置1は、一般的には車両のダッシュボード付近に搭載されるものであって、デタッチグリル10を用いた盗難防止機能を備えている。また、この音響装置1は、ラジオやCD、DVD、MD、磁気テープなどの記録媒体を再生・出力可能である。
【0015】
図1に示すように、音響装置1は、前記ラジオや記録媒体を例えば図示しない外部スピーカに出力する本体2と、この本体2の前面に着脱可能に取付けられる一般的にノーズピースと称されるデタッチグリル10と、を備えている。
【0016】
図2に示すように、このデタッチグリル10は、例えば背面の四隅に取付用のフック10aを備えており、このフック10aにより本体2に着脱可能に取付けることができる。また、デタッチグリル10は、背面に認証用に用いられる複数の突起11を備え、当該突起11はユーザによって折り取ることが可能となっている。ユーザは当該複数の突起11の中から任意の突起11を折り取ることで認証用に用いられる少なくとも1つの突起11を選択可能である。
【0017】
一方、本体2は、例えば、情報(例えば、記録媒体に記録された音楽データなど)を出力処理する箱型の筐体を有する本体部4と、その本体部4と着脱可能に連結される前面蓋部5と、を備えている。
【0018】
図1及び図2に示すように、前面蓋部5は、突起11が挿入される複数の孔部6aが形成された表示用パネル6と、その表示用パネル6の背面に設けられ当該突起11の配置位置を検出するための検出用基板7と、を備えている。
【0019】
表示用パネル6は、図示しないが、ユーザの操作を受け付けるための操作部や情報を表示するための表示部を備え、ユーザの操作に応じた情報を表示部に表示する。
【0020】
図2及び図3に示すように、検出用基板7は、表示用パネル6に設けられた前記孔部6aに対応して設けられた前記孔部6aを通過する突起11を検知するための複数の検知スイッチ7aと、情報を記憶する記憶部7cと、前記検知スイッチ7aの検知結果に基づいて前記突起11の配置位置を特定しその位置情報を前記記憶部7cに記憶するマイコン7bと、を備えている。
【0021】
また、各検知スイッチ7aは、図示しないが、例えば突起11の先端部が接触することにより当該突起11を検知可能となっている。
【0022】
図1及び図2に示すように、本体部4は、記録媒体などを挿入可能な挿入部(図示なし)が形成されており、その内部には当該記録媒体を再生、又はラジオを再生するためのチューナなどの再生回路、音量調整や音質調整を行う調整回路、外部スピーカへ出力するための増幅処理などを行うアンプなど情報を外部スピーカなどに出力するために必要な出力処理部14、及びそれらの動作を統括的に制御する制御部15を備えている。
【0023】
制御部15は、図示しないがCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、当該CPUが、例えばROMに記憶された各種プログラムを実行することにより、音響装置1全体を制御し、本願の判断手段、及び制御手段として機能する。具体的には、図3の実線矢印に示すように、制御部15は、ユーザによって正規のデタッチグリル10が表示用パネル6に取付けられた状態において、ユーザの操作部の操作による指示に基づき、マイコン7bを用いて前記突起11の位置情報を記憶部7cに記憶する。
【0024】
また、制御部15は、図3の破線矢印に示すように、例えば、デタッチグリル10が本体2に再装着された時に、デタッチグリル10が正規品であるか否かの認証を前記記憶部7cに記憶された突起11の位置情報に基づいて行う。すなわち、デタッチグリル10が本体2に再装着された状態において、突起11の位置情報を検出し、その検出した突起11の位置情報が記憶部7cに記憶されている突起11の位置情報と一致するか否かを判断し、一致しない場合に、本体2の出力処理部14によって処理される情報の出力動作処理を停止するように制御する。
【0025】
なお、上記判断において、突起11の位置情報が一致する場合には、ユーザの操作による指示に基づいて、本体2の出力処理部14に情報の出力動作処理を開始させるように制御する。
【0026】
以下、音響装置1の動作例について図4及び図5を用いて説明する。図4は認証モード時の音響装置の動作を示すフローチャート図、図5は登録モード時の音響装置の動作を示すフローチャート図である。
【0027】
ここで、認証モードとは、ユーザによる電源の投入によって行われる本体部の出力動作処理の前処理をいう。一方、登録モードは、音響装置の初期状態の電源投入後(認証モードにおけるステップS4)、又はユーザの操作(例えば、登録モードボタンの押下)によって行われるものである。
【0028】
まず、認証モード時の音響装置の動作について説明する。
【0029】
電源の投入により、制御部15は、少なくとも1つの検知スイッチ7aが突起11により押下されて検知結果が得られているか否かを判断する(ステップS1)。この判断が肯定されれば、ステップS3に進み、否定されれば、デタッチグリル10が取付けられていないと判断し、本体部4の出力動作処理を行わずに終了する(ステップS2)。
【0030】
次に、ステップS3では、制御部15は、記憶部7cに認証用の突起11の位置情報が記憶されているか否かを判断する。この判断が肯定されれば、ステップS5に進み、否定されれば登録モードに移行し(ステップS4)、認証用の突起11の位置情報を登録(記憶)する。
【0031】
次に、ステップS5では、制御部15は、検知スイッチ7aとマイコン7bによって特定される突起11の位置情報と、記憶部7cに記憶されている突起11の位置情報とが一致するか否かを判断し、この判断が肯定されれば、本体部4の出力動作処理(例えば、DVDの再生処理など)を開始制御し(ステップS6)、否定されれば、正規のデタッチグリル10ではないと判断して本体部4の出力動作処理を停止制御して終了する(ステップS7)。
【0032】
なお、本体部4の出力動作処理中に認証用の突起位置の変更処理を行うことができる。例えば、ユーザが操作部を操作して登録モードボタンを押下した場合、制御部15は、認証用の突起11の位置情報の変更であると判断する。このような場合には、デタッチグリル10に設けられている突起11の配置変更後、当該デタッチグリル10を装着し、後述する登録モードに移行して記憶部7cに記憶されている突起11の位置情報を変更することが可能である。
【0033】
次に、登録モードの音響装置の動作について説明する。
【0034】
まず、制御部15は、ユーザの操作部の操作に基づいて突起11の位置情報を記憶(登録)、又は突起11の位置情報を変更して記憶(登録)をするか否かが判断される(ステップS11)。なお、この判断は、認証モードのステップS4によって登録モードに移行された場合、又はユーザが所定の操作ボタン(登録モードボタン)を操作した場合には肯定されたものと判断する。そして、この判断が肯定されれば、ステップS12に進み、否定されれば、ステップS13に進む。ここで、否定された場合には、音響装置1の出荷状態のままで突起11の位置情報が登録されることとなる。
【0035】
次に、ステップS12では、ユーザは、デタッチグリル10を本体2から取り外し、任意の突起を折った後、そのデタッチグリル10を本体2に再装着する。
【0036】
次に、ステップS13では、制御部15は、検知スイッチ7aにより突起11の接触を検知するとともに、マイコン7bを用いてその検知結果に基づいて突起11の配置位置を特定してその位置情報を記憶部7cに記憶し(ステップS14)、登録モード処理を終了する。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態の音響装置1は、デタッチグリル10に本体2側へ突出する折り取り可能な複数の突起11を固定して取り付け、本体2側でその突起11の位置情報を予め記憶しておき、デタッチグリル10が本体2に取付けられ、音響装置1の電源が投入された場合に、当該突起11の位置情報を検出し、その検出結果と記憶部7cに記憶されている突起11の位置情報とを比較し、その位置情報が一致しなければ、デタッチグリル10が非正規品であると判断し、本体部4の出力動作処理を停止制御するようになっている。よって、認証用の突起11の位置情報がわからない限り、音響装置1を動作させることができない。すなわち、仮に第三者が本体2を持ち出して別のデタッチグリルを本体2に取り付けたとしても音響装置1を動作させることができないことから、第三者による盗難が抑止されるものである。また、本実施形態の音響装置1は、盗難防止機構を簡易な構成で実現可能であるため容易且つコストをさほどかけずに音響装置1を製造することが可能である。
【0038】
また、ユーザは複数の突起11の中から任意の突起11を折り取ることで、容易に認証用の突起11の位置情報を変更することが可能である。
【0039】
また、この突起11は、着脱可能にデタッチグリル10に取付けられるようにしても構わない。このようにすれば、容易に認証用の突起11の位置情報を変更することが可能である。
【0040】
なお、本願は、上記実施形態に限定することなく、種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、突起11をデタッチグリル10に取付けるように構成されているが、突起11を本体2側(表示用パネル6)に取付けるように構成しても構わない。この場合には、突起11の位置情報をデタッチグリル10側で検出する構成が必要となる。
【0041】
また、本実施形態では、接触式の検知スイッチを用いることで突起11の位置情報を検知するようになっているが、その他一般の検出スイッチを用いても構わない。
【0042】
また、認証の際に、突起11の位置情報の他、認証キーの挿入、暗証番号の入力、特定のボタン操作などを併用して行うように構成しても構わない。
【0043】
また、本実施形態では、デタッチグリル10は表示用パネル6の全面に装着されるようになっているが、一部に装着するような形態でも構わない。このようにすれば、デタッチグリル10を持ち運び易くなり便利であるとともに、製造コストを抑止できる。
【0044】
また、本実施形態では、便宜上、自動車に用いられる音響装置に対して適用したが、ナビゲーション装置などにも適用可能であり、また、自動車に限られず自動二輪車は勿論、船や飛行機などの移動体用の音響装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 音響装置
4 本体部
6 表示用パネル
7 検出用基板
7a 検知スイッチ
7b マイコン
7c 記憶部
10 デタッチグリル
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を出力する本体と、前記本体に着脱可能に取付けられるデタッチグリルと、を備えた移動体に搭載される情報出力装置において、
前記本体又は前記デタッチグリルのいずれか一方から他方に突出する突起部材と、
前記突起部材の位置情報を記憶する記憶手段と、
前記デタッチグリルが前記本体に取付けられた場合に、前記突起部材の位置情報を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記突起部材の位置情報と、前記記憶手段に記憶された前記突起部材の位置情報とが一致するか否かを判断する判断手段と、
前記情報を出力制御する制御手段と、を具備し、
前記制御手段は
前記判断の結果、前記突起部材の位置情報が一致しない場合に、前記情報の出力動作を停止制御することを特徴とする情報出力装置。
【請求項2】
前記突起部材は、
前記デタッチグリルに折り取ることが可能に固定して取付けられ、前記本体側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項3】
前記突起部材は、前記本体又は前記デタッチグリルのいずれか一方に着脱可能に取付けられ、前記本体又は前記デタッチグリルのいずれか他方側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項4】
前記突起部材は、前記位置情報をユーザが任意に変更可能に複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−163137(P2010−163137A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9038(P2009−9038)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】