説明

情報設定システムおよび電子機器

【課題】 可視コードを介した情報伝達の機密性を高める。
【解決手段】 本発明は、情報処理装置と電子機器とを備えた情報設定システムである。この情報処理装置は、電子機器の固有情報の入力を受け付ける。情報処理装置は、この固有情報から作成される暗号化キーに基づいて、電子機器への伝達情報を暗号化して可視コードを作成する。一方、電子機器は、この可視コードを撮像部から取り込む。電子機器は、取り込んだ可視コードを、固有情報に対応する解除キーを用いて暗号解除し、伝達情報に復号化する。復号化された伝達情報は、電子機器の種々の設定に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置と電子機器とを備えた情報設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、無線LAN機能を備えた電子機器では、無線LANの開始準備に当たって、通信相手の情報処理装置との間で、通信設定情報をやり取りする作業が必要となる。このとき、開始前の無線LANは使用できないため、この準備段階に限っては、電子機器と情報伝達装置をケーブル接続するなどして、通信設定情報をやり取りする必要があった。
一方、下記の特許文献1では、まず、情報処理装置(ここではプリンタ)が通信設定情報を2次元バーコード化して印刷出力する。電子機器(ここではカメラ)は、この2次元バーコードを撮影して画像解析することによって、通信設定情報を取得する。このように、特許文献1の従来技術では、2次元バーコードを介することにより、無線LANの準備作業を手間無く行うことが可能になる。
【特許文献1】特開2005−210267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した無線LANの設定に必要な通信設定情報は、第三者による傍受を防ぐため、機密性の高い伝達情報となる。また、通信設定情報の他にも、電子機器と情報処理装置との間では、機密性の高い伝達情報(個人認証の情報、クレジット決済の情報、アドレス帳の情報、または電話帳の情報など)をやり取りする必要が生じる。
【0004】
一方、上述した2次元バーコードは、その汎用性が高く、かつ2次元バーコードの読み取り装置が広く普及している。そのため、特許文献1の技術では、2次元バーコードそのものから伝達情報が漏れてしまうおそれがあり、伝達情報の機密性を十分に保つことが難しい。
そこで、本発明では、可視コードを介した情報のやり取りにおいて、機密性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
《1》 本発明の情報設定システムは、情報処理装置と電子機器とを備えたシステムである。
この内、情報処理装置は、入力部、およびコード作成部を備える。入力部は、電子機器の固有情報の入力を受け付ける。コード作成部は、固有情報から作成される暗号化キーに基づいて、電子機器への伝達情報を暗号化して可視コードを作成する。コード作成部は、この可視コードを可視出力する。
一方、電子機器は、撮像部、暗号解除部、および設定部を備える。撮像部は、画像取り込みを行う。暗号解除部は、撮像部によって取り込まれた可視コードを、固有情報に対応する解除キーを用いて暗号解除し、伝達情報に復号化する。設定部は、復号化された伝達情報に基づいて電子機器の設定を行う。
《2》 なお好ましくは、固有情報は、電子機器の個体別情報を少なくとも含む情報である。電子機器は、この個体別情報に基づいて固有情報を作成し、固有情報を可視出力する情報出力部を備える。
《3》 また好ましくは、電子機器は、乱数発生部、および情報出力部を備える。乱数発生部は、乱数を発生させる。情報出力部は、この乱数に基づいて固有情報を作成し、固有情報を可視出力する。
《4》 なお好ましくは、固有情報は、電子機器の筐体に表示されるシリアル番号である。
《5》 本発明の電子機器は、撮像部、暗号解除部、および設定部を備える。
撮像部は、画像取り込みを行う。
暗号解除部は、電子機器の固有情報に基づいて暗号化された可視コードを、ユーザーの撮影行為によって撮像部から取り込む。暗号解除部は、電子機器の固有情報に対応する解除キーを用いて、可視コードを暗号解除して伝達情報を復号化する。
設定部は、復号化された伝達情報に基づいて電子機器の設定を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、電子機器の固有情報に基づいて可視コードが暗号化される。そのため、その他の機器では、固有情報を知ることができないために可視コードの暗号解除が困難になり、伝達情報の機密性を高く保つことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
《構成説明》
図1は、本実施形態の情報設定システム11の構成を示す図である。
図1において、情報設定システム11は、情報処理装置12および電子機器13を備えて構成される。この情報処理装置12は、例えば、パソコン、プリンタ、インターネット上のサーバー装置などである。また、電子機器13は、撮像部を備える機器一般であり、例えば、電子カメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話、スキャナー装置などである。
【0008】
この情報処理装置12は、下記の構成要件を備える。
(1)入力部20…キー入力、リモコン等からの赤外線入力、画像読み取り、または音声入力などを介して、固有情報の入力を受け付ける。
(2)コード作成部21…伝達情報の暗号化および可視コード化を行い、可視コードを可視出力する。
(3)無線LAN部22…無線通信を行う。
【0009】
一方、電子機器13は、下記の構成要件を備える。
(1)撮像部31…可視コードの撮影機能を備える。なお、カメラに限らず、コード読み取り装置の類でもよい。
(2)暗号解除部32…可視コードを暗号解除して伝達情報を復元する。
(3)設定部33…伝達情報に基づいて電子機器13の設定を実施する。
(4)無線LAN部34…無線通信を行う。
(5)情報出力部35…電子機器13の個体別情報、シリアル番号、乱数などから固有情報を作成し、固有情報を可視出力する。
(6)メモリ36…電子機器13の個体別情報やシリアル番号などを記憶する。
(7)乱数発生部37…乱数を発生する。なお、ここでの乱数は、数字に限らす、文字や記号などを不規則に並べたものも含む。
(8)シリアル番号プレート38…電子機器13の筐体にシリアル番号が表示される。
【0010】
《電子機器13による固有情報の作成》
図2は、電子機器13による固有情報の作成処理を示す図である。以下、図2に示すステップ番号に従って、この処理動作を説明する。
【0011】
ステップS1: まず、ユーザーは、電子機器13のモードダイヤル(不図示)を設定モードに切り換え、LAN通信の利用準備を電子機器13に指示する。すると、情報出力部35は、メモリ36から、電子機器13の個体別情報およびシリアル番号を読み出す。
【0012】
ステップS2: 情報出力部35は、乱数発生部37から乱数を得る。
【0013】
ステップS3: 情報出力部35は、個体別情報、シリアル番号、および乱数の少なくとも一つに基づいて、固有情報と解除キーを作成する。
この場合、固有情報は秘密鍵に相当し、解除キーはこの固有情報に対応する公開鍵に相当する。
【0014】
ステップS4: 情報出力部35は、作成した解除キーをメモリ36に保存する。
【0015】
ステップS5: 情報出力部35は、表示画面などに固有情報を表示する。
【0016】
《情報処理装置12による可視コードの作成》
次に、情報処理装置12による可視コードの作成処理について説明する。以下、図3のステップ番号に従って、この作成処理を説明する。
【0017】
ステップS11: ユーザーは、電子機器13の表示画面に表示された固有情報(文字や数字や記号の列など)を、入力部20を介して情報処理装置12に入力する。
【0018】
ステップS12: さらに、ユーザーは、電子機器13のシリアル番号プレート38に表示されるシリアル番号を、入力部20を介して情報処理装置12に入力する。
【0019】
ステップS13: コード作成部21は、入力部20から、電子機器13の固有情報およびシリアル番号を情報取得する。コード作成部21は、固有情報またはシリアル番号に基づいて、無線LANの通信設定情報(以下、伝達情報)を作成する。
【0020】
ステップS14: コード作成部21は、情報処理装置12側の通信設定を、無線LAN部22に対して行う。
【0021】
ステップS15: コード作成部21は、固有情報に基づいて暗号キーを作成する。例えば、固有情報をそのまま暗号キーとして使用してもよい。また例えば、電子機器13側の解除キーで暗号解除が予め可能な範囲で、固有情報を操作して暗号キーを作成してもよい。
【0022】
ステップS16: コード作成部21は、暗号キーを用いて、伝達情報を暗号化する。なお、暗号キーの元となる固有情報が、電子機器13に表示されるなど一時的であっても公開されるため、ここでの暗号化には公開鍵暗号方式を使用することが好ましい。
【0023】
ステップS17: コード作成部21は、暗号化された伝達情報を、可視コードに変換する。可視コードとしては、例えば、バーコード、2次元バーコード、動画像からなるコードなどが好ましい。
【0024】
ステップS18: コード作成部21は、作成した可視コードを、情報処理装置12の表示画面に表示する。なお、コード作成部21は、印刷機構を介して、作成した可視コードを印刷出力してもよい。
【0025】
《電子機器13による可視コードの暗号解除》
次に、電子機器13による可視コードの暗号解除について説明する。以下、この処理を示す図4のステップ番号に沿って順番に説明する。
【0026】
ステップS21: まず、ユーザーは、情報処理装置12から表示出力または印刷出力された可視コードを、電子機器13の撮像部31で撮影する。
【0027】
ステップS22: 暗号解除部32は、撮像部31で画像読み取りされた可視コードを画像解析により復号化し、暗号化された伝達情報を得る。
【0028】
ステップS23: 暗号解除部32は、ステップS4で保存した解除キーを、メモリ36から読み出す。
【0029】
ステップS24: 暗号解除部32は、この解除キーを用いて、伝達情報の暗号を解除する。
【0030】
ステップS25: 設定部33は、暗号解除された伝達情報を暗号解除部32から取得する。設定部33は、この伝達情報に基づいて、電子機器13側の無線LAN部34に対して、情報処理装置12と無線通信を行うための通信設定を行う。
【0031】
ステップS26: 通信設定の完了後、電子機器13側の無線LAN部34は、情報処理装置12側の無線LAN部22との間で、無線LANの通信を開始する。
【0032】
《実施形態の効果など》
本実施形態では、電子機器13側が情報処理装置12に渡した固有情報に基づいて、可視コードが暗号化される。そのため、固有情報と対応する解除キーを持たない機器では、可視コードの暗号解除は困難となる。その結果、可視コードを介した伝達情報のやり取りにおいて、伝達情報の機密性が高くなる。
【0033】
また、本実施形態では、固有情報を、電子機器13の個体別情報またはシリアル番号を少なくとも含む情報とすることができる。この場合、固有情報は、電子機器13の個体ごとに一つしか存在しない秘密鍵情報となる。そのため、電子機器13以外には、その解除キーを知ることはできず、暗号化された伝達情報の機密性が更に高くなる。
【0034】
さらに、本実施形態では、固有情報を、乱数を少なくとも含む情報とすることができる。この場合、固有情報は、毎回変更される情報となるため、一回限り使用可能な秘密鍵情報となる。そのため、可視コードの暗号解除には、その暗号化時点における解除キーを使用する必要があり、暗号化された伝達情報の機密性が更に高くなる。
【0035】
また、本実施形態では、シリアル番号をそのまま固有情報とすることもできる。この場合、電子機器13が手元になければシリアル番号に対応する解除キーを知ることはできない。そのため、シリアル番号を固有情報としても、機密性を高めることが可能である。
【0036】
さらに、本実施形態では、公開鍵暗号方式を使用し、解除キーを公開鍵として公開しない。そのため、暗号化された伝達情報の機密性が更に高くなる。
【0037】
《実施形態の補足事項》
なお、上述した実施形態では、無線LANの通信設定情報を伝達情報としている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。情報処理装置12と電子機器13との間でやり取りする伝達情報であれば、本発明を適用することができる。
【0038】
例えば、ユーザー認証に必要な情報を、本発明を用いて情報処理装置12と電子機器13の間でやり取りしてもよい。この場合、電子機器13は、取得した情報を内部に保存設定し、ATM(Automatic Teller Machine)などのユーザー認証装置へ出力する。このような設定により、電子機器13は、ユーザー認証に対応した機器となる。
【0039】
また例えば、金銭の決済情報を、本発明を用いて情報処理装置12と電子機器13の間でやり取りしてもよい。この場合、電子機器13は、取得した決済情報に応じて、装置内部の残高情報などを変更設定する。このような設定により、電子機器13は、電子決済に対応した機器となる。
【0040】
また例えば、アドレス情報(電話番号、URLアドレス、またはIPアドレスなど)を、本発明を用いて情報処理装置12と電子機器13の間でやり取りしてもよい。この場合、電子機器13は、取得したアドレス情報をアドレスデータベースなどに登録設定することが可能になる。また、取得したアドレス情報を用いて、電話やインターネットに自動アクセスすることも可能になる。
【0041】
なお、上述した実施形態では、暗号キーと解除キーとを別にしているが、これに限定されるものではない。暗号キーと解除キーを同じものとしてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、図2に示すように固有情報を生成して表示する。しかしながら、電子機器13のシリアル番号をそのまま固有情報とする場合は、シリアル番号プレート38のシリアル番号をユーザーが読めば済むため、図2に示す処理を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、情報設定システムなどに利用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態の情報設定システム11の構成を示す図である。
【図2】電子機器13による固有情報の作成処理を説明する流れ図である。
【図3】情報処理装置12による可視コードの作成処理を説明する流れ図である。
【図4】電子機器13による可視コードの解析処理を説明する流れ図である。
【符号の説明】
【0045】
11…情報設定システム,12…情報処理装置,13…電子機器,20…入力部,21…コード作成部,22…無線LAN部,31…撮像部,32…暗号解除部,33…設定部,34…無線LAN部,35…情報出力部,36…メモリ,37…乱数発生部,38…シリアル番号プレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と電子機器とを備えた情報設定システムであって、
前記情報処理装置は、
前記電子機器の固有情報の入力を受け付ける入力部と、
前記固有情報から作成される暗号化キーに基づいて、前記電子機器への伝達情報を暗号化して可視コードを作成し、前記可視コードを可視出力するコード作成部とを備え、
前記電子機器は、
画像取り込みを行う撮像部と、
前記撮像部によって取り込まれた前記可視コードを、前記固有情報に対応する解除キーを用いて暗号解除し、前記伝達情報に復号化する暗号解除部と、
復号化された前記伝達情報に基づいて前記電子機器の設定を行う設定部とを備えた
ことを特徴とする情報設定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報設定システムにおいて、
前記固有情報は、前記電子機器の個体別情報を少なくとも含む情報であり、
前記電子機器は、
前記個体別情報に基づいて前記固有情報を作成し、前記固有情報を可視出力する情報出力部を備える
ことを特徴とする情報設定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報設定システムにおいて、
前記電子機器は、
乱数を発生させる乱数発生部と、
前記乱数に基づいて前記固有情報を作成し、前記固有情報を可視出力する情報出力部を備える
ことを特徴とする情報設定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の情報設定システムにおいて、
前記固有情報は、前記電子機器の筐体に表示されるシリアル番号である
ことを特徴とする情報設定システム。
【請求項5】
画像取り込みを行う撮像部と、
前記電子機器の固有情報に基づいて暗号化された可視コードを、ユーザーの撮影行為によって前記撮像部から取り込み、前記固有情報に対応する解除キーを用いて前記可視コードを暗号解除して、伝達情報を復号化する暗号解除部と、
復号化された前記伝達情報に基づいて前記電子機器の設定を行う設定部と
を備えたことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−251718(P2007−251718A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73937(P2006−73937)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】