説明

感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物

【課題】感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物をプリント配線板上に成膜し、パターニングし、硬化させて得た薄い保護層から、不純物である環状ジメチルシロキサンオリゴマーがブリードアウトすることを十分に抑制できるようにする。
【解決手段】感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物は、テトラカルボン酸二無水物とシロキサンジアミンとジフェニルシリレン単位を有するシロキサン非含有ジアミンとをイミド化して得られるシロキサンポリイミド樹脂100質量部と、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤1〜20質量部と、光酸発生剤5〜30質量部とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物、それから形成された保護層を備えたプリント配線板、及びプリント配線板の保護層からの環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトを抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族テトラカルボン酸と、芳香族ジアミンとをイミド化してなる芳香族系ポリイミド樹脂は、その優れた耐熱性や絶縁性のために、電子部品の層間絶縁膜やカバーレイの材料として広く使用されているが、そのような芳香族系ポリイミド樹脂に対し、優れた可撓性と接着性とが求められるようになっている。このため、芳香族ジアミンの一部をシロキサンジアミンに代え、ポリイミド骨格にシロキサン骨格を導入したシロキサンポリイミド樹脂の使用が増大している。
【0003】
しかしながら、シロキサンポリイミド樹脂の原料であるシロキサンジアミンには、アミノ基を持たない油状の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが不純物として含まれているため、製造したシロキサンポリイミド樹脂を層間絶縁膜やカバーレイ等として電子部品に適用した場合、電子部品を半田リフロー工程等の熱処理工程に投入すると、層間−線間絶縁膜やカバーレイの表面にアウトガスとして発生した環状ジメチルシロキサンオリゴマーが再付着またはブリードアウトし、電子部品における接点障害や導電性の低下、接着強度の低下等が生ずるという問題があった。なお、本明細書中において、「ブリードアウト」とは、膜等の固層中から含まれている物質が固層表面に移動し、そこで液化または固化すること、あるいはそこで揮発し拡散する現象を意味する。
【0004】
この問題を解決するために、ジアミン成分として少なくともジアミノシロキサンを含むジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とをトルエンやエーテル系溶媒中でイミド化反応させる際に、例えば、数回に分けて、揮発する溶媒を系外に排出すると共に、溶媒を補充する方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、油状の環状ジメチルシロキサンオリゴマーは、溶媒に比べ比較的低沸点であるため、揮発する溶媒と共に、系外に排出され、環状ジメチルシロキサンオリゴマーの濃度が低減されたシロキサンポリイミドワニスが得られるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−263058公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、常圧で揮発した溶媒を系外に排出しているため、6量体までのジメチルシロキサンオリゴマーをかなり除去できるが、7量体以上のジメチルシロキサンオリゴマーを十分には除去できないという問題があった。このため、特許文献1の方法で得られたシロキサンポリイミドワニスに、感光剤を混合して感光性を付与するとともに、ポリイミドの架橋剤として広く用いられているシランカップリング剤、エポキシアミン、固形エポキシ樹脂等を配合した場合、得られた感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物をプリント配線板上に成膜し、パターニングし、硬化させて得た薄い保護層から、不純物である環状ジメチルシロキサンオリゴマーがブリードアウトすることを依然として抑制することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物をプリント配線板上に成膜し、パターニングし、硬化させて得た保護層から、不純物である環状ジメチルシロキサンオリゴマーがブリードアウトすることを十分に抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ジアミン成分としてジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンを使用してシロキサンポリイミド樹脂を調製し、更にそれに特定の種類と量の架橋剤を配合した感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を使用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本願発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、テトラカルボン酸二無水物とジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンとシロキサン非含有ジアミンとをイミド化して得られるシロキサンポリイミド樹脂100質量部と、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤1〜20質量部と、光酸発生剤5〜30質量部とを含有することを特徴とする感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、上述の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を熱硬化させて得た保護層を備えたプリント配線板を提供する。
【0011】
更に、本発明は、テトラカルボン酸二無水物とジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンとシロキサン非含有ジアミンとをイミド化して得られるシロキサンポリイミド樹脂と、架橋剤と、光酸発生剤とを含有する感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物をプリント基板に成膜し、露光、現像してパターニングし、ポストべークにより熱硬化させて保護層とし、更にメッキすることにより得られるプリント配線板の当該保護層から環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトを抑制する方法であって、
架橋剤として、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より少なくとも一種を、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し1〜20質量部使用し、感光剤として、光酸発生剤をシロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し5〜30質量部使用することを特徴とする方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ジアミン成分としてジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンを使用し、更に感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物からなる薄膜等の成型物に、特定の熱硬化性の架橋剤による三次元構造が形成されるので、その三次元構造中に不純物である環状ジメチルシロキサンオリゴマーが捕捉され、その結果、環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトを防止乃至抑制することができ、更に熱硬化により良好な耐メッキ性が得られる。また、感光剤として光酸発生剤を特定量含有しているので、シロキサンポリイミド樹脂組成物がポジ型感光性となり、露光、アルカリ現像によりパターニングが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物は、テトラカルボン酸二無水物とジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンとシロキサン非含有ジアミンとをイミド化して得られるシロキサンポリイミド樹脂100質量部と、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤1〜20質量部と、感光剤として光酸発生剤5〜30質量部とを含有する。
【0014】
まず、本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物の主成分であるシロキサンポリイミド樹脂について説明する。このシロキサンポリイミド樹脂は、ジアミン成分として、ジフェニルシリレン単位を有するジアミノシロキサンを使用するので、環状ジメチルシロキサンオリゴマーの発生量を低減することができる。
【0015】
本発明で使用するシロキサンポリイミド樹脂の構成単位となるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4′‐オキシジフタル酸二無水物、3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリート二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物等を挙げることができる。中でも、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を好ましく使用できる。
【0016】
また、本発明で使用するシロキサンポリイミド樹脂の構成単位となるシロキサンジアミンとしては、少なくとも分子内にジメチルシリレン骨格を有する化合物であり、従来より、ポリイミド樹脂のシロキサン変性に用いられているものを使用できる。中でも、難燃性、相溶性確保の点から以下の式(1)の構造を有するものを好ましく使用できる。
【0017】
【化1】

【0018】
式(1)中、nは1〜30の整数、好ましくは1〜20の整数であり、mは1〜20の整数、好ましくは1〜10の整数である。mが1以上であるから、式(1)のシロキサンジアミンはジフェニルシリレン骨格を有することになり、シロキサンポリイミド樹脂の難燃性が向上する。しかも、mが1以上であるので、不純物である環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトをある程度抑制することが可能となる。このようなシロキサンジアミンの具体例としては、信越化学工業株式会社製のX−22−9409(m>1)を挙げることができる。なお、シロキサンジアミンとして、アミノ基がtert−ブトキシカルボニル基などのカルバメート系、フタロイル基などのイミド系、p−トルエンスルホニル基などのスルホンアミド系により保護されているものも使用できる。
【0019】
本発明で使用するシロキサンポリイミド樹脂の構成単位となるシロキサン非含有ジアミンとしては、分子内にジメチルシリレン骨格およびジフェニルシリレン骨格を持たないジアミンを使用することができ、その具体例としては、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)へキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3′−ジヒドロキシ‐4,4′−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のジアミノフェノール誘導体;p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、5,5′−メチレン‐ビス(アントラニック酸)、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシフェニル)]フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェノキシ)フルオレン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−トリジンスルホン等の芳香族ジアミン;trans−1,4−シクロヘキサンジアミン、cis−1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンを挙げることができるが、これらに限定されるものではないものの、好ましくはジアミノフェノール誘導体、特に、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンを挙げることができる。
【0020】
本発明で使用するシロキサンポリイミド樹脂は、溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンと必要に応じてシロキサン非含有ジアミンとを、還流条件下でイミド化反応させることにより製造できるが、以下の工程(a)及び(b)を有する製造方法により得ることもできる。
【0021】
工程(a)
まず、溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンとを還流条件下でイミド化反応させて酸無水物末端シロキサンイミドオリゴマーを含む反応混合物を得る。
【0022】
酸無水物末端シロキサンイミドオリゴマーを得るためには、シロキサンジアミンよりも第1のテトラカルボン酸二無水物のモル量を多くすればよい。ただし、シロキサンジアミンの使用量は、全テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、少なすぎると接着性、可撓性の維持が困難になる傾向があり、多すぎると耐熱性が低下する傾向があるので、好ましくは、0.1〜0.9モル、より好ましくは、0.3〜0.8モルである。
【0023】
工程(a)において、イミド化反応を還流条件下で行う理由は、ディーンスタ−ク分離管等を用いてイミド化水を除くためである。従って、溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物とシロキサンジアミンとの間のイミド化反応が生ずる温度で還流する溶媒であって、共沸により水を分離できる溶媒を使用する。このような溶媒としては、ジグライム、トリグライム等のグライム類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒や、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒、それらの混合物を使用することができる。また、発明の効果を損なわない限り、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒を併用してもよい。本工程(a)では、還流温度等の点から好ましくはグライム類と非極性溶媒との混合溶媒、中でもトリグライムと、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレンからなる群より選択される少なくとも一種との混合溶媒(w/w=1/(0.1〜10))を好ましく使用できる。
【0024】
工程(a)における溶媒の使用量は、溶媒や反応基質の種類により異なるが、少なすぎるとモノマー分散不良や還流効率の低下を引き起こし、多すぎると溶媒の気化熱が大きくなり反応槽内の温度が上がりにくくなるので、テトラカルボン酸二無水物とシロキサンジアミンとの合計の質量が5〜60質量%となる量で使用することが好ましい。
【0025】
イミド化反応の反応温度は、溶媒や反応基質の種類や使用量により異なるが、低すぎるとイミド化反応が完結せず、高すぎるとイミド化反応以外の副反応が生じる可能性があるので、好ましくは150〜220℃、より好ましくは160〜200℃である。反応時間は、理論量のイミド化水を除去するに要した時間であり、通常0.5〜12時間、好ましくは1〜8時間である。
【0026】
なお、工程(a)におけるイミド化の際に、必要に応じてトリエチルアミン等の3級アミン、芳香族系イソキノリン、ピリジン等の塩基性触媒や、安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸などの酸触媒を添加してもよい。
【0027】
工程(b)
工程(a)の反応終了後、工程(a)で得られた酸無水物末端シロキサンイミドオリゴマーの溶液に、シロキサン非含有ジアミンを添加し、シロキサン非含有ジアミンと酸無水物末端シロキサンイミドオリゴマーとをイミド化反応させ、それによりシロキサンポリイミド樹脂を得る。この場合、必要に応じてシロキサン非含有ジアミンと共に、先に使用したものと同じ又は異なるテトラカルボン酸二無水物を添加してもよい。また、必要に応じて溶媒を添加してもよい。これによりポリイミド固形分濃度を調整する事が可能となる。溶媒としては、工程(a)で用い得るものを使用できる。特に、シロキサンポリイミド樹脂をワニスとして使用する場合には、コーティング時の吸湿によるポリイミド析出を防ぐために、比較的吸湿性の低い溶媒であるエーテル系溶媒、ラクトン系溶媒、芳香族炭化水素溶媒などを単独、または混合して使用することができる。特に、本工程(b)では、トリグライム(別名:トリエチレングリコールジメチルエーテル)とγ−ブチロラクトンとの混合溶媒(w/w=1/(0.1〜10))を好ましく使用できる。
【0028】
シロキサン非含有ジアミンの使用量は、機械特性が十分な保護層を得るための分子量を確保するために、シロキサンジアミンと合算したモル数が、全テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、好ましくは0.1〜0.9モル、より好ましくは0.3〜0.8モルとなる量である。
【0029】
なお、工程(b)におけるイミド化の際に、工程(a)の場合と同様に、必要に応じてトリエチルアミン等の3級アミン、芳香族系イソキノリン、ピリジン等の塩基性触媒や、安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸などの酸触媒を添加してもよい。
【0030】
工程(b)におけるイミド化反応温度に関し、工程(b)においては極性基を有する酸二無水物やジアミン成分を使用した場合には、ワイゼルベルグ効果により生成したシロキサンポリイミド樹脂の粘度が増大し、撹拌棒の周囲に巻き付く現象が生ずることがある。生成したシロキサンポリイミド樹脂の粘度の増大を避けるためには、反応系中に水を存在させることが好ましい。この場合、水の量が少なすぎると増粘する危険性が高まり、多すぎるとポリイミドの分子量が低下する恐れがあるので、反応混合物中に0.01〜1.1質量%の割合で水を存在させることが好ましい。
【0031】
工程(b)におけるイミド化の際の反応温度は、溶媒や反応基質の種類や使用量により異なるが、低すぎるとイミド化反応が完結せず、高すぎるとイミド化反応以外の副反応が生じる可能性があるので、好ましくは、150〜220℃、より好ましくは、160〜200℃である。反応時間は、通常0.5〜12時間、好ましくは、1〜8時間である。これにより、環状ジメチルシロキサンオリゴマーの含有量が少ないシロキサンポリイミド樹脂がワニス状態で得られる。
【0032】
次に、本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物で使用する架橋剤について説明する。架橋剤は、文字通り、それ自身が加熱により重合硬化して三次元架橋構造を形成するものである。このため、三次元構造中に不純物の環状ジメチルシロキサンオリゴマーを閉じこめ、そのブリードアウトを抑制ないしは防止することができる。
【0033】
このような架橋剤としては、シロキサンポリイミド樹脂に対し相溶性を有する、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。特に、環状シロキサンの揮発・拡散を防ぐ点から液状エポキシ樹脂とベンゾオキサジン類とを同時に併用、または液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類とを同時に併用してもよい。ここで、液状エポキシ樹脂の重合は、シロキサンポリイミド樹脂に残存するアミノ基が加熱によりアニオン重合開始点となり進行する。ベンゾオキサジン類の重合は、加熱によりオキサジン環が開環してメチレニウムカチオンとフェノール性のオキソニウムアニオンが生成し、メチレニウムカチオンがベンゼン環に対し求核置換重合して進行する。レゾール類の場合は、フェノール性水酸基がベンゼン環に対し加熱により脱水縮合重合することで進行する。
【0034】
このような液状エポキシ樹脂及びレゾール類としては、シロキサンポリイミド樹脂に対し良好な相溶性を有するように、好ましくは1〜100000mPa・s、より好ましくは1〜50000mPa・sである。ここで、粘度は、25℃でB型粘度計により測定した値である。他方、ベンゾオキサジン類は、通常、常温では固体であるが、軟化点が高すぎるとシロキサンポリイミド樹脂に対する相溶性が低下するので約100℃以下のものが好ましい。
【0035】
架橋剤として使用する液状エポキシ樹脂の好ましい具体例としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、jER807、ジャパンエポキシレジン株式会社)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、jER828、ジャパンエポキシレジン株式会社)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、jER604、ジャパンエポキシレジン株式会社;GAN、日本化薬株式会社)、脂環式エポキシ樹脂(例えば、セロキサイド2021、ダイセル化学工業株式会社等)等が挙げられる。中でも、入手の容易さの点からビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく使用できる。
【0036】
架橋剤として使用するベンゾオキサジン類の好ましい具体例としては、以下の式(1)のビスフェノールS型ベンゾオキサジン、式(2)のビスフェノールF型ベンゾオキサジン、式(3)のビスフェノールA型ベンゾオキサジン(いずれも小西化学工業株式会社製)を挙げることができる。中でも、入手の容易さの点からビスフェノールF型ベンゾオキサジンを好ましく使用できる。














【0037】
【化2】

【0038】
また、架橋剤として使用するレゾール類の好ましい具体例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を触媒として用いて得たアルカリレゾール樹脂、アンモニアを触媒として用いて得たアンモニアレゾール樹脂、2価金属塩を触媒として用いて得たハイオルソレゾール樹脂等が挙げられる。中でも、入手の容易さの点からアルカリレゾール樹脂を好ましく使用することができる。
【0039】
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、架橋剤1〜20質量部、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部である。架橋剤の含有量がこの範囲を下回ると環状シロキサンの揮発・拡散の抑制効果が不充分となり、超えると可撓性に乏しくなり、膜が硬くなる傾向があるので好ましくない。
【0040】
なお、架橋剤として液状エポキシ樹脂とベンゾオキサジン類とを同時に併用した場合、液状エポキシ樹脂1質量部に対しベンゾオキサジン類を好ましくは0.5〜10質量部の割合で使用する。ベンゾオキサジン類が少なすぎると環状シロキサンの揮発・拡散の抑制効果が不充分となり、多すぎると可撓性に乏しくなり、膜が硬くなる傾向があるからである。また、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類とを同時に併用する場合、液状エポキシ樹脂1質量部に対しベンゾオキサジン類を好ましくは0.5〜10質量部、レゾール類を好ましくは0.5〜10質量部の割合で使用する。レゾール類が少なすぎると環状シロキサンの揮発・拡散の抑制効果が不充分となり、多すぎると可撓性に乏しくなり、膜が硬くなる傾向があるからである。
【0041】
次に、本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物で使用する光酸発生剤について説明する。光酸発生剤は、それを含有するシロキサンポリイミド樹脂組成物の薄膜が紫外線などに露光したときに、薄膜中で分解して酸を発生し、薄膜をアルカリ現像可能とする特性を組成物に付与するものであり、感光剤として使用されている。
【0042】
このような光酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、ジアゾキノンスルホン酸アミド、ジアゾキノンスルホン酸エステル、ジアゾキノンスルホン酸塩、ニトロベンジルエステル、オニウム塩、ハロゲン化物、ハロゲン化イソシアネート、ハロゲン化トリアジン、ビスアリールスルホニルジアゾメタン、ジスルホン等が挙げられる。中でも、未露光部の水溶性を抑制する効果を有するo−キノンジアジド化合物を好ましく使用できる。o−キノンジアジド化合物の具体例としては、1,2−ベンゾキノン−2−アジド−4−スルホン酸エステル又はスルホン酸アミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル又はスルホン酸アミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エステル又はスルホン酸アミド等が挙げられる。これらは、例えば、1,2−ベンゾキノン−2−アジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等のo−キノンジアジドスルホニルクロリド類とポリヒドロキシ化合物又はポリアミン化合物を脱塩酸触媒の存在下で縮合反応することによって得ることができる。
【0043】
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物中の酸発生剤の含有量は、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、5〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。酸発生剤の含有量がこの範囲を下回ると十分な感度が得られず、超えると樹脂組成物の耐熱性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0044】
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物には、必要に応じて金属不活性剤、消泡剤、防錆剤、有機溶媒等の公知の添加剤を配合することができる。特に、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物の塗工性を向上させるために、消泡剤を配合することが好ましい。このような消泡剤としては、フッ素変性シロキサン消泡剤を挙げることができる。
【0045】
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物は、シロキサンポリイミド樹脂、架橋剤、感光剤、その他の添加剤や溶媒とを常法により均一に混合することにより製造することができる。
【0046】
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物の熱硬化物は、従来のシロキサンポリイミド樹脂と異なり、環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトが大きく抑制されたものとなる。従って、様々な電子部品用の絶縁材料、例えばプリント配線板の保護層や層間絶縁膜として有用である。
【0047】
このようなプリント配線板は、本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を、プリント基板に常法により塗布、乾燥して成膜し、その膜を露光マスクを介して紫外線などの活性エネルギー線を照射して露光させ、水酸化ナトリウム水溶液等を用いるアルカリ現像により露光部を除去してパターニングし、その後ポストべークにより熱硬化させることにより保護層とし、更に無電解ニッケルメッキ等の無電解メッキを施し、必要に応じて、更に電解メッキを施すことにより製造することができる。
【0048】
また、上述したプリント配線板の製造方法は、観点を変えれば、シロキサンポリイミド樹脂からなる保護層を設けたプリント配線板の当該保護層から環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトを抑制する方法という意義を有する。即ち、テトラカルボン酸二無水物とシロキサンジアミンとシロキサン非含有ジアミンとをイミド化して得られるシロキサンポリイミド樹脂と、架橋剤と、光酸発生剤とを含有する感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を成膜し、露光、現像してパターニングし、熱硬化させて得た保護層を設けたプリント配線板の当該保護層から環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトを抑制する方法であって、架橋剤として、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より少なくとも一種を、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し1〜20質量部使用し、感光剤として、光酸発生剤をシロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し5〜30質量部使用することを特徴とする方法である。この方法の発明の構成要素については、本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物において説明した通りである。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0050】
実施例1
(1)シロキサンポリイミド樹脂の製造
ディーンスタークトラップを備えたポリイミド樹脂用合成装置の反応容器に、862.65g(0.639mol)のジアミノシロキサン(ジアミノジフェニル/ジメチルシロキサン(アミン当量675g/mol)、商品名;X−22−9409、信越化学工業株式会社製)と、363.6g(1.01mol)の3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(リカシッドDSDA、新日本理化株式会社製;純度99.6%)と、547gのトリグライムと、200gのトルエンとを投入し、混合物を2時間十分に攪拌した。その後、185℃まで昇温させ、2時間その温度を保ち、ディーンスタークトラップで水を回収しながら、反応液を還流攪拌した。
【0051】
得られた反応混合物を、酸化皮膜が除去されたシリコンウェハー上に塗布し、100℃で10分間乾燥させFT−IR透過法によって末端官能基の同定を行った。1780cm−1付近にイミドカルボニルの吸収が出現し、1860cm−1付近に環状酸無水物カルボニル伸縮振動の吸収が確認できたことから酸無水物末端シロキサンオリゴマーの生成が確認できた。
【0052】
反応混合物を80℃まで放冷し、101.44g(0.361mol)の3,3′−ジアミノ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン(BSDA、小西化学工業株式会社製;純度99.7%)を投入し、室温で12時間攪拌した。攪拌後、185℃まで昇温し、その温度で2時間加熱攪拌した。その後、室温まで冷却し、ジフェニルシリレン単位含有シロキサンポリイミド樹脂のワニスを得た。
【0053】
(2)感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物の調製
シロキサンポリイミド樹脂のワニスに、感光剤(4NT−300、東洋合成工業株式会社)を10phrと、金属不活性剤(CDA−10、株式会社ADEKA)を0.3phrと、架橋剤として液状エポキシ樹脂(jER807、ジャパンエポキシレジン株式会社)を1phrと、ベンゾオキサジン(BF−BXZ、小西化学工業株式会社)を5phrとを加え、室温で均一に混合して感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を得た。ここで、phrの意味は、ポリイミド固形分を100質量部としたときの添加量(質量部)である。
【0054】
比較例1
架橋剤を使用しないこと以外、実施例1と同様に、シロキサンポリイミド樹脂を取得し、更に、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を得た。
【0055】
比較例2
(1)シロキサンポリイミド樹脂の製造
実施例1において、ジアミノシロキサン(ジアミノジフェニル/ジメチルシロキサン)(X−22−9409)に代えて、ジアミノシロキサン(ジメチルシロキサン)(KF−8010、信越化学工業株式会社)を549.5g(0.639mol、アミノ当量430)を使用したこと以外は、同様の操作を行い、ジフェニルシリレン単位を含まないシロキサンポリイミド樹脂のワニスを得た。
【0056】
(2)感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物の調製
ジフェニルシリレン単位を含まないシロキサンポリイミド樹脂のワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を得た。
【0057】
比較例3
架橋剤として、エポキシシランカップリング剤(KBM−403、信越化学工業株式会社)を5phr使用し、且つ消泡剤(FA−600、信越化学工業株式会社)を0.5phr使用すること以外、実施例1と同様に、シロキサンポリイミド樹脂を取得し、更に、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を得た。
【0058】
比較例4
架橋剤として、アミノエポキシ樹脂(YH−434、東都化成株式会社)を5phr使用、且つ消泡剤(FA−600、信越化学工業株式会社)を0.5phr使用すること以外、実施例1と同様に、シロキサンポリイミド樹脂を取得し、更に、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を得た。
【0059】
比較例5
架橋剤として、固体エポキシ樹脂(jER1007FS、ジャパンエポキシレジン株式会社)を5phr使用し、且つ消泡剤(FA−600、信越化学工業株式会社)を0.5phr使用すること以外、実施例1と同様に、シロキサンポリイミド樹脂を取得し、更に、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を得た。
【0060】
<環状ジメチルシロキサンのブリードアウトの抑制効果評価>
実施例1又は比較例1〜2の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を、銅箔上にバーコーターを用いて乾燥後で10μmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥した。得られた積層体を40℃の水酸化ナトリウム3質量%水溶液に60秒間浸漬し、続いて30℃の水で60秒間洗浄し、室温の希硫酸10質量%水溶液で10秒間酸洗浄し、更に、室温の蒸留水で120秒水洗した。その後、窒素雰囲気下でポストべーク(200℃、60分間)を行い、樹脂組成物膜を熱硬化させて保護膜とした。このようにして得られた、保護膜が形成された積層体を、無電解ニッケルメッキ液、続いて無電解金メッキ液に浸漬し、評価用基板を作成した。
【0061】
得られたプリント配線板から幅4mmで長さ50mmの大きさのサンプルを切り出し、50ml/分の流速のヘリウムガス流通下で、260℃で15分間加熱することで、サンプルから揮発性成分をパージし、他方でその揮発成分を−20℃でTenax−TA捕集管にトラップした。続いて、トラップした成分を所定の条件下でヘリウムガス流中に気化させ、そのヘリウムガスをGC−MS装置(JAS100、JAI社)に導入し、環状ジメチルシロキサン量を定量した。得られた結果を表1に示す。
【0062】
実施例2〜9及び比較例6
架橋剤の添加量の影響を調べるために、実施例2〜9及び比較例6(架橋剤が使用されていない例)を行った。
【0063】
(1)シロキサンポリイミド樹脂の製造
実施例1と同様にして、シロキサンポリイミド樹脂を製造した。
【0064】
(2)感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物の調製
シロキサンポリイミド樹脂のワニスに、感光剤(4NT−300、日東電工株式会社)を10phrと、消泡剤(FA−600、信越化学工業株式会社)を0.5phrと、金属不活性剤(防錆剤)(CDA−10、株式会社ADEKA)を0.3phrと、架橋剤として、表1に示す配合量の液状エポキシ樹脂(jER807、ジャパンエポキシレジン株式会社)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン(BF−BXZ、小西化学工業株式会社)及び/又はレゾール樹脂(BRL−274、昭和高分子株式会社)とを加え、室温で均一に混合して感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を得た。
【0065】
(3)<環状ジメチルシロキサンのブリードアウトの抑制効果評価>
得られた感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物について、実施例1と同様に環状ジメチルシロキサンのブリードアウトの抑制効果評価を行った。得られた結果を表1に示す。



































【0066】
【表1】

【0067】
表1から明らかなように、シロキサンポリイミド樹脂として、ジフェニルシリレン単位を有するシロキサンポリイミド樹脂を使用し且つ架橋剤により三次元架橋構造を有する保護層を備えた実施例1の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を使用した評価用基板は、環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトが抑制されていることがわかる。
【0068】
他方、シロキサンポリイミド樹脂として、ジフェニルシリレン単位を有するシロキサンポリイミド樹脂を使用したが、三次元架橋構造を持たない保護層を備えている比較例1の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を使用した評価用基板は、ブリードアウトした環状ジメチルシロキサンオリゴマーの量が実施例1の場合に比べて大きく増加している。
【0069】
また、シロキサンポリイミド樹脂として、ジフェニルシリレン単位を持たないシロキサンポリイミド樹脂を使用した保護層を備えている比較例2の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を使用した評価用基板は、架橋構造を有していても、環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウト量が実施例1の場合に比べて大きく増大している。
【0070】
なお、本発明の特定の架橋剤以外の架橋剤を使用した比較例3の場合には現像時に未露光部に面荒れが生じ、比較例4の場合にはゲル化してしまい、比較例5の場合には溶解しなかった。そのため、環状ジメチルシロキサンオリゴマーの定量の測定は実施できなかった。
【0071】
また、消泡剤を配合した比較例6と実施例2〜9とを対比させると、表1から、架橋剤を使用していない比較例6の場合に比べ、架橋剤を使用した比較例2〜9の場合、いずれも環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウト量が抑制されていることがわかる。最も架橋剤の配合量が多い実施例9の場合、総シロキサンのブリードアウト量が最も少ないことがわかる。
【0072】
なお、架橋剤を使用した場合(実施例1,8,9)も、架橋剤を一種類のみ使用した場合(実施例2〜7)と同程度以上の環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトの抑制効果を確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物は、それをプリント配線板上に成膜し、パターニングし、硬化させて得た薄い保護層から、不純物である環状ジメチルシロキサンオリゴマーがブリードアウトすることを十分に抑制できる。従って、プリント配線板の保護層として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンとシロキサン非含有ジアミンとをイミド化して得られるシロキサンポリイミド樹脂100質量部と、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤1〜20質量部と、光酸発生剤5〜30質量部とを含有することを特徴とする感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
架橋剤が、液状エポキシ樹脂および/またはベンゾオキサジン類、または液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類およびレゾール類である請求項1記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項3】
液状エポキシ樹脂の粘度が、1〜100000mPa・sである請求項1または2記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
テトラカルボン酸二無水物が、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物である請求項1〜3のいずれかに記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項5】
ジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンが、式(1)
【化1】

(式中、nは1〜30の整数であり、mは1〜20の整数である。)
の構造を有する請求項1〜4のいずれかに記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項6】
シロキサン非含有ジアミンが、ジアミノフェノール誘導体である請求項1〜5のいずれかに記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項7】
ジアミノフェノール誘導体が、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンである請求項6記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項8】
シロキサンポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物とシロキサンジアミンとシロキサン非含有ジアミンとの反応混合物を、0.01〜1.1質量%の水の存在下でイミド化することにより得られたものである請求項1〜7のいずれかに記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項9】
光酸発生剤が、o−キノンジアジド化合物である請求項1〜8のいずれかに記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を熱硬化させて得た保護層を備えたプリント配線板。
【請求項11】
テトラカルボン酸二無水物とジフェニルシリレン単位を有するシロキサンジアミンとシロキサン非含有ジアミンとをイミド化して得られるシロキサンポリイミド樹脂と、架橋剤と、光酸発生剤とを含有する感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物をプリント基板に成膜し、露光、現像してパターニングし、ポストべークにより熱硬化させて保護層とし、更にメッキすることにより得られるプリント配線板の当該保護層から環状ジメチルシロキサンオリゴマーのブリードアウトを抑制する方法であって、
架橋剤として、液状エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン類及びレゾール類からなる群より少なくとも一種を、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し1〜20質量部使用し、感光剤として、光酸発生剤をシロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し5〜30質量部使用することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−83951(P2010−83951A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252953(P2008−252953)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】