説明

感光性平版印刷版材料、および平版印刷版の製版方法

【課題】本発明の目的は、コンピュータートゥプレートシステムに好適な、特に波長350〜410nmのレーザー光での露光に適した、感度が優れ、しかも、保存安定性、現像安定性、に優れた感光性平版印刷版材料を提供することにある。
【解決手段】親水性表面を有する支持体上にa)アルカリ可溶性高分子、b)エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体、c)光重合開始剤及びd)増感色素を有し、更に下記一般式(I)で表される化合物を含有する感光層を有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータートゥプレートシステム(以下CTPという)に用いられる感光性平版印刷版材料、および平版印刷版の製版方法に関し、特に波長350〜410nmのレーザー光での露光に適した感光性平版印刷版材料および平版印刷版の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷用の印刷版の作製技術において、画像のデジタルデータをレーザー光源で直接感光性平版印刷版材料に記録するCTPが開発され、実用化が進んでいる。
【0003】
これらのうち、比較的高い耐刷力を要求される印刷の分野においては、例えば、特開平1−105238号公報、特開平2−127404号公報に記載された印刷版材料のように重合可能な化合物を含む重合型の感光層を有するネガ型の感光性平版印刷版材料を用いることが知られている。
【0004】
さらに、印刷版の取り扱い性の面からセーフライト性を高めた、波長390nm〜430nmのレーザーで画像露光可能な印刷版材料が知られている。
【0005】
そして、高出力かつ小型の波長390〜430nmの青紫色レーザーが容易に入手できるようになり、このレーザー波長に適した感光性平版印刷版材料を開発することにより明室化がはかられてきている(例えば、特許文献1、2及び3参照。)。
【0006】
そして、これらセーフライト性を高めた重合可能な化合物を含むネガ型の感光性平版印刷版材料が開示されているが(例えば、特許文献4参照。)、保存安定性が不十分であった。
【特許文献1】特開2000−35673号公報
【特許文献2】特開2000−98605号公報
【特許文献3】特開2001−264978号公報
【特許文献4】特開2003−295426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、コンピュータートゥプレートシステムに好適な、特に波長350〜410nmのレーザー光での露光に適した、感度が優れ、しかも、保存安定性、現像安定性、に優れた感光性平版印刷版材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0009】
1.親水性表面を有する支持体上にa)アルカリ可溶性高分子、b)エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体、c)光重合開始剤及びd)増感色素を有し、更に下記一般式(I)で表される化合物を含有する感光層を有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は単結合又は置換基を有してもよい炭素数が1〜10の炭化水素基を表し、R3は水素原子又は置換基を有してもよい炭素数が1〜10の炭化水素基を表し、R4は、置換基を有してもよい炭素数が1〜18のアルコキシ基、または−N(R5)(R6)を表す(ここで、R5,R6はそれぞれ、水素原子、置換基を有してもよい炭素数が1〜18の炭化水素基でありR5とR6とが互いに結合して環を形成してもよい。なお、R5,R6がともに水素原子であることはなく、また、R5,R6の炭素数の合計は1〜18である。)。Xは−O−、−COO−、または−CONH−を表す。nは0〜2の整数を表し、mは3−nの整数を表す。〕
2.前記一般式(I)で表される化合物について、一般式(I)のR4が−O−CH(R7)(R8)(ここで、R7,R8はそれぞれ、水素原子、置換基を有してもよい炭素数が1〜17の炭化水素基でありR7とR8とが互いに結合して環を形成してもよい。なお、R7,R8がともに水素原子であることはなく、また、R7,R8の炭素数の合計は2〜17である。)であることを特徴とする1に記載の感光性平版印刷版材料。
【0012】
3.前記一般式(I)で表される化合物について、一般式(I)のR2が2価の飽和炭化水素基であることを特徴とする1または2に記載の感光性平版印刷版材料。
【0013】
4.前記一般式(I)で表される化合物について、一般式(I)のXが−COO−であることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0014】
5.前記c)光重合開始剤が水素引き抜き型光重合開始剤を含有することを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0015】
6.前記d)増感色素が、クマリン誘導体、アクリドン誘導体、スチリルベンゼン誘導体、またはオキサゾール誘導体であることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0016】
7.前記感光層に、水素供与性化合物、またはポリハロゲン化合物を含有することを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0017】
8.1〜7のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料に、350〜410nmのレーザー光で露光したのちに、少なくとも無機のアルカリ剤、アニオン性界面活性剤を含有し、有機溶剤を含まないpH9.0〜12.5のアルカリ水溶液で現像処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンピュータートゥプレートシステムに好適な、特に波長350〜410nmのレーザー光での露光に適した、感度が優れ、しかも、保存安定性、現像安定性、に優れた感光性平版印刷版材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
本発明の感光性平版印刷版材料は、親水性表面を有する支持体上にa)アルカリ可溶性高分子、b)エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体、c)光重合開始剤及びd)増感色素を有し、更に前記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0021】
(一般式(I)で表される化合物)
本発明に係る前記一般式(I)で表される化合物について説明する。
【0022】
前記一般式(I)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は単結合又は置換基を有してもよい炭素数が1〜10の炭化水素基を表し、R3は水素原子又は置換基を有してもよい炭素数が1〜10の炭化水素基を表し、R4は、置換基を有してもよい炭素数が1〜18のアルコキシ基、または−N(R5)(R6)を表す(ここで、R5,R6はそれぞれ、水素原子、置換基を有してもよい炭素数が1〜18の炭化水素基でありR5とR6とが互いに結合して環を形成してもよい。なお、R5,R6がともに水素原子であることはなく、また、R5,R6の炭素数の合計は1〜18である。)。Xは−O−、−COO−、または−CONH−を表す。nは0〜2の整数を表し、mは3−nの整数を表す。
【0023】
4は−CH(R7)(R8)(ここで、R7,R8はそれぞれ、水素原子、置換基を有してもよい炭素数が1〜17の炭化水素基であり、R7とR8とが互いに結合して環を形成してもよい。なお、R7,R8がともに水素原子であることはなく、また、R7,R8の炭素数の合計は2〜17である。)であることが好ましい。特に、R7,R8の炭素数の合計が2〜6であることが好ましい。
【0024】
2は、2価の飽和炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素数1の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0025】
Xは、−COO−であることが特に好ましい。
【0026】
以下に、本発明に係る前記一般式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
感光層中における本発明に係る前記一般式(I)で表される化合物の含有量は、1〜30質量%の範囲が好ましく、5〜30質量%の範囲が更に好ましく、5〜15質量%の範囲で使用することが本発明の効果(感度が優れ、しかも、保存安定性、現像安定性、に優れた感光性平版印刷版材料)を奏する面から特に好ましい。
【0030】
a)アルカリ可溶性高分子
本発明に係るアルカリ可溶性高分子としては、下記(D)高分子結合材を用いることができる。
【0031】
((D)高分子結合材)
本発明に係る高分子結合材は、感光層に含まれる成分を担持支持体上に担持し得るものであり、高分子結合材としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用出来る。また、これらを2種以上併用してもかまわない。
【0032】
好ましくはアクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0033】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0034】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステルも挙げられる。
【0035】
さらに、高分子結合材は、共重合モノマーとして、下記(1)〜(14)に記載のモノマー等を用いる事が出来る。
【0036】
1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0037】
2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0038】
3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0039】
4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0040】
5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0041】
6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0042】
7)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0043】
8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0044】
9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0045】
10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0046】
11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0047】
12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0048】
13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
【0049】
14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0050】
さらにこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
【0051】
さらに、高分子結合材は、側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体であることが好ましい。例えば、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。
【0052】
分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。また、上記ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。分子内に不飽和結合とイソシアネート基を共に有する化合物としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−またはp−イソプロペニル−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体は、全高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0054】
感光層中における高分子結合材の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。
【0055】
b)エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体
本発明においては、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体を含有することは、高感度を達成するために必須要件である。
【0056】
一般的なラジカル重合性のモノマー類、紫外線硬化樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や、多官能オリゴマー類を示す。
【0057】
これらの化合物に限定は無いが、好ましいものとして、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0058】
また、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等を挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述のモノマー及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0059】
また、プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0060】
本発明において感光層には、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを含有することができる。
【0061】
特に、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0062】
【化2】

【0063】
〔式中、Q1
【0064】
【化3】

【0065】
または−S−を表し、R4はアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアリール基を表し、R1及びR2はそれぞれ水素原子、アルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、X1は2〜12個の炭素原子を有する2価の基を表し、X2は、2価の基〜4価の基、または、
【0066】
【化4】

【0067】
を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、複素環基を表し、pは1〜4の整数、qは1〜3の整数を表す。D1及びD2は、各々1〜5個の炭素原子を有する2価の基を表し、Eは、2〜12個の炭素原子を有する2価の基、5員環〜7員環であり、且つ、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1種または2種の原子を含む複素環を有する脂肪族基、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基、または、5員環または6員環を有する芳香族複素環基を表し、aは0または1〜4の整数を表し、bは0または1を表し、cは1〜3の整数を表し、mはQ1の原子価により2〜4の整数を表し、nは1〜mの整数を表し、同一定義の全ての基は相互に同一または異なることが可能である。〕
【0068】
【化5】

【0069】
〔式中、Q2
【0070】
【化6】

【0071】
を表し、R8はアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアリール基を表し、R5及びR6はそれぞれ水素原子、アルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R7は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、D3及びD4はそれぞれ1〜5個の炭素原子を有する飽和炭化水素基を表し、Fは2〜12個の炭素原子を有する飽和炭化水素基、5〜7個の環員を有しかつ2個までのN、OまたはS原子を環員として含有する環状脂肪族基、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基、または5〜6個の環員を有する複素環芳香族基を表し、d及びeは1〜4の整数を表し、gはQ2の原子価により2〜4の整数を表し、fは1〜gの整数を表し、同一定義の全ての基は相互に同一または異なることが可能である。〕
一般式(1)において、R4で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコサデシル基等が挙げられる。
【0072】
一般式(1)において、R4で表されるヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシペンチル基等が挙げられる。
【0073】
一般式(1)において、R4で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0074】
一般式(1)において、R1及びR2で表されるアルキル基は、前記R4で表されるアルキル基と同義である。
【0075】
一般式(1)において、R1及びR2で表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、プロポキシエチル基等が挙げられる。
【0076】
一般式(1)において、X1で表される2〜12個の炭素原子を有する2価の基としては、例えば、飽和炭化水素基、アリーレン基等が挙げられる。
【0077】
一般式(1)において、X1で表される2〜12個の炭素原子を有する飽和炭化水素基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロヘキシレン基(例えば、1,6−シクロヘキサンジイル基等)、シクロペンチレン基(例えば、1,5−シクロペンタンジイル基など)等が挙げられる。
【0078】
一般式(1)において、X1で表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0079】
一般式(1)において、X2で表される2価の基は、前記X1で表される2〜12個の炭素原子を有する2価の基として挙げられる、飽和炭化水素基、アリーレン基等を用いることができるが、更に、前記飽和炭化水素基の中の5個までのメチレン基が酸素原子によって置換されたものを用いることが出来る。
【0080】
一般式(1)において、X2で表される3価の基は、上記のX2で表される2価の基(飽和炭化水素基、アリーレン基等)に更にひとつ結合基がついたものであり、例えば、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ウンデカントリイル基、ドデカントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロペンタントリイル基、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。
【0081】
一般式(1)において、X2で表される4価の基は、上記のX2で表される3価の基に更にひとつ結合基がついたものであり、例えば、プロパンジイリデン基、1,3−プロパンジイル−2−イリデン基、ブタンジイリデン基、ペンタンジイリデン基、ヘキサンジイリデン基、ヘプタンジイリデン基、オクタンジイリデン基、ノナンジイリデン基、デカンジイリデン基、ウンデカンジイリデン基、ドデカンジイリデン基、シクロヘキサンジイリデン基、シクロペンタンジイリデン基、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基等が挙げられる。
【0082】
一般式(1)のX2において、Zで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0083】
一般式(1)のX2において、Zで表されるアルケニル基としては、例えば、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基等が挙げられる。
【0084】
一般式(1)のX2において、Zで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、m−クロロフェニル基、p−トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0085】
一般式(1)のX2において、Zで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられる。
【0086】
一般式(1)のX2において、Zで表されるアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0087】
一般式(1)のX2において、Zで表される複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピロリル基、2−メチルピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、フリル基、チアゾリル基、ピリミジニル基等が挙げられる。
【0088】
一般式(1)において、D1及びD2で表される、1〜5個の炭素原子を有する2価の基としては、メチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、シクロペンチレン基等が挙げられる。
【0089】
一般式(1)において、Eで表される、2〜12個の炭素原子を有する2価の基は、X1で表される2〜12個の炭素原子を有する2価の基と同義である。
【0090】
一般式(1)において、Eで表される、5員環〜7員環であり、且つ、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる2つまでの原子を含む複素環を置換基として有する脂肪族基を構成する複素環としては、例えば、ピリジン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラン環、チオフェン環、イソオキサゾール環、ピロリン環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環等が挙げられる。
【0091】
前記の脂肪族基としては、上記記載の複素環を有する炭素数2〜12の2価の基が挙げられ、前記2価の基は、X1で表される2〜12個の炭素原子を有する2価の基と同義である。
【0092】
一般式(1)において、Eで表される、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0093】
一般式(1)において、Eで表される5員環または6員環を有する芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、1,2,3−オキサジアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、s−トリアジン環、ベンゾフラン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、キノリン環及びイソキノリン環等が挙げられる。
【0094】
ここで、上記記載の一般式(1)で表される各々の置換基は、更に置換基を有していてもよい。
【0095】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物の含有量は、光重合性感光層中の不揮発成分の30質量%〜70質量%が好ましく、40質量%〜60質量%がより好ましい。また、一般式(1)で表される化合物は、当該業者周知の方法、例えば、特許第2509288号等に記載の方法を参照して合成できる。
【0096】
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0097】
【化7】

【0098】
【化8】

【0099】
【化9】

【0100】
次に、本発明に用いられる前記一般式(2)で表されるエチレン性二重結合含有単量体について説明する。
【0101】
前記一般式(2)において、R8は(g−f)が2以上の場合は、互いに異なってもよい。gとfが同じ値である化合物が好ましい。R8がアルキル基、ヒドロキシアルキル基の場合は、炭素数は2〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。R8がアリール基の場合は、単環または2環が好ましく、単環がより好ましく、かつ炭素数5個までのアルキル基、アルコキシアルキル基またはハロゲン原子で置換されてもよい。
【0102】
5及びR6がアルキル基またはアルコキシアルキル基の場合は、炭素数は1〜5が好ましい。
【0103】
7はメチル基が好ましい。
【0104】
3及びD4は同一または異なってもよく、かつ2個の窒素原子を含む6員の飽和複素環が好ましい。
【0105】
Fが飽和炭化水素基の場合は2〜6個の炭素原子を有することが好ましく、Fがアリーレン基の場合はフェニレン基が好ましく、環状脂肪族基の場合はシクロヘキシレン基が好ましく、複素環芳香族基の場合は窒素原子または硫黄原子を含む5〜6員環が好ましい。
【0106】
一般式(2)で表される化合物を得るには、Q2がNであり、nとmが同じ値の場合は、グリシジルアクリレートまたはアルキルアクリレートをヒドロキシアルキルアミンと反応させる。他の化合物も同様にして得ることができる。
【0107】
本発明の一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0108】
【化10】

【0109】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物と、b)エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体の感光層中の総含有量は、30質量%〜70質量%が好ましい。
【0110】
c)光重合開始剤
本発明の感光性平版印刷版材料においては、感光性層が、光重合開始剤を含有することを要する。
【0111】
本発明に係る光重合開始剤は、画像露光により、重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物の重合を開始し得る化合物であり、例えばヘキサアリールビイミダゾール化合物、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、鉄アレーン錯体化合物、チタノセン化合物、ポリハロゲン化合物、モノアルキルトリアリールボレート化合物などが好ましく用いられる。
【0112】
チタノセン化合物としては、チタノセン化合物としては、特開昭63−41483号、特開平2−291号公報に記載される化合物等が挙げられるが、更に好ましい具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ジ−クロライド、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−フェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル(IRUGACURE727L:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(2−5−ジメチルピリ−1−イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0113】
鉄アレーン錯体化合物としては、特開昭59−219307号に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−フルオレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ナフタレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−キシレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0114】
本発明においては、水素引き抜き型光重合開始剤のヘキサアリールビイミダゾール化合物(HABI、トリアリールイミダゾールの二量体)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類が好ましく用いられる。
【0115】
HABI類の製造工程はDE1,470,154に記載されておりそして光重合可能な組成物中でのそれらの使用はEP24,629、EP107,792、US4,410,621、EP215,453およびDE3,211,312に記述されている。
【0116】
好ましい誘導体は例えば、2,4,5,2′,4′,5′−ヘキサフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,5,2′,5′−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4′−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ジ−o−トリル−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールおよび2,2′−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールであり、これらの化合物は市販品として入手することができる。
【0117】
ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、クロルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾインエチルエーテルなどが挙げられる。
【0118】
チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0119】
光重合開始剤の含有量は、感光層に対して0.05質量%〜20.0質量%が好ましく、1.0質量%〜10.0質量%が特に好ましい。
【0120】
d)増感色素
本発明では、記録光源として、レーザーを使うことができる。好ましいレーザー光源については後述するが、光源のレーザー光として、350nmから430nmの範囲に発光波長を有する半導体レーザー、いわゆるバイオレットレーザーを用いた記録を行う場合は、350nmから430nmの間に吸収極大有する分光増感剤を含有せしめることが望ましい。350nmから430nmの間に吸収極大有する分光増感剤としては、構造上特に制約は無いが、上記で述べた各分光増感剤群において、吸収極大がその要件を充たす限り、いずれも使用可能である。具体的には、特開2002−296764号、特開2002−268239号、特開2002−268238号、特開2002−268204号、特開2002−221790号、特開2002−202598号、特開2001−042524号、特開2000−309724号、特開2000−258910号、特開2000−206690、特開2000−147763号、特開2000−098605号等に記載のある分光増感剤を用いることが出来るが、これに限定されない。
【0121】
特に好ましくは、クマリン誘導体、アクリドン誘導体、スチリルベンゼン誘導体、オキサゾール誘導体である。
【0122】
クマリン誘導体は下記一般式2、アクリドン誘導体は一般式3、スチリルベンゼン誘導体は一般式4、オキサゾール誘導体は一般式5で表される化合物が好ましい。
【0123】
【化11】

【0124】
上記一般式2において、R1は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、
【0125】
【化12】

【0126】
(ここで、R21、R22は水素原子あるいは炭素数1〜12のアルキル基を表す)、
【0127】
【化13】

【0128】
(ここで、R23は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表す。Xは1〜6の整数を表す)、または、
【0129】
【化14】

【0130】
(ここで、R24は炭素数1〜12のアルキル基)を表す。
【0131】
2は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、R3およびR6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表す。更に、R3とR4およびR5とR6は連結して環を形成してもよい。
【0132】
1がo−アルコキシフェニル基であり、R2、R3及びR6が水素原子であり、かつR4、R5が炭素数2〜4のアルキル基であることが、特に好ましい。
【0133】
下記に、上記一般式2で表される化合物の具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されない。
【0134】
【化15】

【0135】
【化16】

【0136】
上記一般式3において、R7,R8,R9,R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。
【0137】
11は炭素数1〜8の炭化水素基、または
【0138】
【化17】

【0139】
(ここで、Yは炭素数1〜4のメチレン基、R25は炭素数1〜10の炭化水素基を表す)を表す。
【0140】
7〜R10が水素原子であり、かつ、R11が炭素数4〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
【0141】
下記に、上記一般式3で表される化合物の具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されない。
【0142】
【化18】

【0143】
【化19】

【0144】
上記一般式4において、R12〜R17はそれぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基などのアルコシキ基、アルキルアミノ基、フェニルアミノ基、またはシアノ基を表す。R12〜R17がそれぞれ炭素数1〜4のアルコキシ基であることが特に好ましい。
【0145】
下記に、上記一般式4で表される化合物の具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されない。
【0146】
【化20】

【0147】
【化21】

【0148】
上記一般式5において、R18、R19,R20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、−NR2627または−OR28を表す。R26、R27はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。R28は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
【0149】
ハロゲン原子としては、塩素、臭素が好ましい。
【0150】
l,m,nは1〜5の整数を表す。
【0151】
18に電子吸引性基、R19は電子供与性基、R20は水素原子であることが好ましい。
【0152】
下記に、上記一般式5で表される化合物の具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されない。
【0153】
【化22】

【0154】
(水素供与性化合物)
本発明に係る水素供与性化合物としては、本発明に用いられる重合可能な化合物の重合反応を促進乃至制御をするために、EP107792号明細書に記載されているようなラジカル連鎖移動剤が好ましい。好ましいラジカル連鎖移動剤の具体例としては、メルカプト化合物が挙げられる。特に、下記一般式〔RCT〕で表される複素芳香族メルカプト化合物またはメルカプト誘導体化合物を感光層に含有させることが好ましい。
【0155】
一般式〔RCT〕
Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは窒素、硫黄、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子から選ばれる少なくとも1個の原子を有する複素芳香環または縮合複素芳香環である。複素芳香環は、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリン環であることが好ましい。また、前記の例示化合物とは異なる化学構造の複素芳香環を有する複素芳香族メルカプト化合物を、本発明に係る連鎖移動剤として、感光層に含有させることも良い。
【0156】
また、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンフェニルエステル、N−フェニルグリシンアルキルエステルなどのアミノ酸誘導体が挙げられる。
【0157】
水素供与性化合物は感光層中に0.05〜0.5質量%含有することが好ましい。
【0158】
(ポリハロゲン化合物)
本発明に係るポリハロゲン化合物としては、トリハロゲンメチル基、ジハロゲンメチル基又はジハロゲンメチレン基を有する化合物であり、特に下記一般式〔1〕で表されるハロゲン化合物及び上記基がオキサジアゾール環に置換した化合物が好ましく用いられる。この中でもさらに、下記一般式〔2〕で表されるハロゲン化合物が特に好ましく用いられる。
【0159】
一般式〔1〕 R1−CY2−(C=O)−R2
式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノスルホニル基またはシアノ基を表す。R2は一価の置換基を表す。R1とR2が結合して環を形成してもかまわない。Yはハロゲン原子を表す。
【0160】
一般式〔2〕 CY3−(C=O)−X−R3
式中、R3は、一価の置換基を表す。Xは、−O−、−NR4−を表す。R4は、水素原子、アルキル基を表す。R3とR4が結合して環を形成してもかまわない。Yはハロゲン原子を表す。これらの中でも特にポリハロゲンアセチルアミド基を有するものが好ましく用いられる。
【0161】
一般式〔1〕で表される構造の具体的として、下記BR1からBR70の化合物が挙げられる。又、ポリハロゲンメチル基がオキサジアゾール環に置換した化合物も好ましく用いられ、この例をH−1〜H−14に挙げる。さらに、特開平5−34904号公報、同5−45875号公報、同8−240909号公報に記載のオキサジアゾール化合物も好ましく用いられる。
【0162】
尚、これらの化合物はハロゲン原子を臭素から塩素に置き換えた化合物も本発明においては好適に用いることができる。本発明に好ましく用いられる、ポリハロゲン化合物の具体例を以下に挙げる。
【0163】
【化23】

【0164】
【化24】

【0165】
【化25】

【0166】
【化26】

【0167】
【化27】

【0168】
【化28】

【0169】
【化29】

【0170】
【化30】

【0171】
【化31】

【0172】
また、本発明に係るポリハロゲン化合物としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン誘導体であることが好ましい。本発明で用いることのできる2,4−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン誘導体の一例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0173】
【化32】

【0174】
以下に、本発明において感光性組成物に添加することのできる各種添加剤、感光性平版印刷版材料としての支持体、保護層、感光性組成物の支持体への塗布、感光性平版印刷版材料の画像記録法等について順次説明する。
【0175】
(各種添加剤)
本発明の感光性組成物には、上記した成分の他に、感光性平版印刷版材料の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性二重結合単量体の不要な重合を阻止するために、重合防止剤を添加することが望ましい。適当な重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0176】
重合防止剤の添加量は、上記組成物の全固形分の質量に対して、約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥の過程で感光性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5%〜約10%が好ましい。
【0177】
また、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版「顔料便覧」,日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0178】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、ならびに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0179】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感剤の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。又、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0180】
上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後の可視画性の観点から、紫色顔料、青色顔料を用いるのが好ましい。このようなものとしては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーファーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジコ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBC等を挙げることができる。これらの中で、より好ましくはフタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0181】
また、上記組成物は、本発明の性能を損わない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することが出来る。その中でも好ましいのはフッ素系界面活性剤、Si系界面活性剤である。
【0182】
以上本発明に係わる感光性組成物について説明したが、本発明に係わる感光性平版印刷版材料は上記の各組成を前記の比率となるよう混合・調製し、これをアルミニウム支持体上に塗設することにより構成される。
【0183】
(保護層:酸素遮断層)
本発明に係る光重合性感光層の上側には、保護層を設けることが好ましい。該保護層(酸素遮断層)は、後述の現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンを挙げることができる。ポリビニルアルコールは酸素の透過を抑制する効果を有し、また、ポリビニルピロリドンは隣接する感光層との接着性を確保する効果を有する。
【0184】
上記2種のポリマーの他に、必要に応じ、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等の水溶性ポリマーを併用することもできる。
【0185】
本発明の感光性平版印刷版材料は、感光層と保護層間の剥離力が35mN/mm以上であることが好ましく、より好ましくは50mN/mm以上、更に好ましくは75mN/mm以上である。好ましい保護層の組成としては特開平10−10742号に記載されるものが挙げられる。
【0186】
本発明における剥離力は、保護層上に十分大きい粘着力を有する所定幅の粘着テープを貼り、それを感光性平版印刷版材料の平面に対して90度の角度で保護層と共に剥離する時の力を測定することにより求めることができる。
【0187】
保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。上記保護層組成物を適当な溶剤に溶解し感光層上に塗布・乾燥して保護層を形成する。塗布溶剤の主成分は水、あるいはメタノール、エタノール、i−プロパノール等のアルコール類であることが特に好ましい。
【0188】
保護層の厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0189】
(支持体)
本発明に係る支持体は、親水性表面を有する、アルミニウム支持体が使用され、この場合、純アルミニウム又はアルミニウム合金であってもかまわない。
【0190】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0191】
支持体は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。
【0192】
本発明に用いられる粗面化の方法としては、電解により粗面化を行うがその前に例えば、機械的方法による粗面化を行うことができる。
【0193】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。又、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0194】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0195】
本発明においては粗面化の方法としては、電解による粗面化を行う。酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法であり、酸性電解液は、0.4質量%以上2.8質量%以下の濃度の塩酸系又は硝酸溶液中で、実効値が30A/dm2以上100A/dm2以下の電流密度で10秒以上120秒以下、電解粗面化を行う。塩酸あるいは硝酸の濃度は、より好ましくは1質量%以上2.3質量%以下である。電流密度は、より好ましくは30A/dm2以上80A/dm2以下、更に好ましくは40A/dm2以上75A/dm2以下である。
【0196】
この電解粗面化法を行う温度は、特に制限されないが、5℃以上80℃以下の範囲を用いることが好ましく、10℃以上60℃以下の範囲から選ぶのが更に好ましい。印加電圧も特に制限されないが、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことが好ましく、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが更に好ましい。電気量も特に制限されないが、100〜5000c/dm2の範囲を用いることが好ましく、100〜2000c/dm2の範囲から選ぶのが更に好ましい。
【0197】
電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、しゅう酸等を加えることができる。
【0198】
上記の電解粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0199】
電解粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、同3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸漬し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0200】
本発明においては、支持体が陽極酸化処理後に温度が20℃以上50℃以下の珪酸ナトリウム溶液で処理されていることが好ましい。該温度は、20℃以上50℃以下が好ましく、20℃以上45℃以下がより好ましい。20℃未満では汚し回復が悪くなることがある。また、50℃より高いと耐刷性が悪くなることがある。珪酸ナトリウムの濃度は特に規定はないが、0.01%以上35%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がより好ましい。
【0201】
本発明においては、支持体が陽極酸化処理後に温度が20℃以上70℃以下のポリビニルホスホン酸溶液で処理されていることが好ましい。該温度は、20℃以上70℃以下が好ましく、30℃以上65℃以下がより好ましい。20℃未満では汚し回復が悪くなることがある。また、70℃より高いと耐刷性が悪くなるなることがある。ポリビニルホスホン酸溶液の濃度は特に規定はないが、0.01%以上35%以下が好ましく、0.1%以上5%以下がより好ましい。
【0202】
(塗布)
調製された感光性組成物(光重合性感光層塗布液)は、従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥し、感光性平版印刷版材料を作製することが出来る。塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることが出来る。
【0203】
感光層の乾燥温度は、低いと十分な耐刷性を得ることが出来ず、又高過ぎるとマランゴニーを生じてしまうばかりか、非画線部のカブリを生じてしまう。好ましい乾燥温度範囲としては、60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは、90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0204】
(画像記録方法)
本発明の感光性平版印刷版材料に画像記録する光源としては、発光波長が350〜450nmのレーザー光の使用が好ましい。
【0205】
本発明の感光性平版印刷版材料を露光する光源としては、例えば、He−Cdレーザー(441nm)、固体レーザーとしてCr:LiSAFとSHG結晶の組合わせ(430nm)、半導体レーザー系として、KNbO3、リング共振器(430nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)、AlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm)等を挙げることができる。
【0206】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。
【0207】
又、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0208】
レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0209】
尚、本発明においては、10mJ/cm2以上の版面エネルギー(版材上でのエネルギー)で画像露光されることが好ましく、その上限は500mJ/cm2である。より好ましくは10〜300mJ/cm2である。このエネルギー測定には例えばOphirOptronics社製のレーザーパワーメーターPDGDO−3Wを用いることができる。
【0210】
(プレヒート)
本発明においては、感光性平版印刷版材料に画像を露光した後、現像処理する前又は現像処理しながら感光性平版印刷版材料を加熱処理することが好ましい。この様に加熱処理することで、感光層と支持体の接着性が向上し、本発明に係る発明の効果を向上させることができる。
【0211】
本発明においてプレヒートは、例えば、感光性平版印刷版材料を現像処理する自動現像装置において、現像処理時に搬走される感光性平版印刷版材料を現像前に所定の温度範囲に加熱するプレヒートローラによる加熱する方法を挙げることができる。例えば、プレヒートローラは、内部に加熱手段を有する少なくとも1つのローラを含む1対のローラからなり、加熱手段を有するローラとしては、熱伝導率の高い金属(例えば、アルミニウム、鉄等)からなる中空パイプの内部に発熱体としてニクロム線等を埋設し、該金属パイプの外側面をポリエチレン、ポリスチレン、テフロン(登録商標)等のプラスチックシートで被覆したものを使用することができる。また、こうしたプレヒートローラの詳細については、特開昭64−80962号公報を参照することができる。
【0212】
本発明における当該プレヒートは、70〜180℃で、3〜120秒程度行うことが好ましい。
【0213】
(現像液)
画像露光した感光層は露光部が硬化する。これをアルカリ現像液で現像処理することにより、未露光部が除去され画像形成が可能となる。この様な現像液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えばケイ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;第二燐酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;重炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;ホウ酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム;水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム及び同リチウム等の無機アルカリ剤を使用するアルカリ現像液が挙げられる。
【0214】
(界面活性剤)
現像液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
【0215】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル、エステルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体付加物、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアリールエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、ポリオキシエチレンアリールルエーテル硫酸エステル塩、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0216】
好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。
【0217】
上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0218】
(自動現像機)
感光性平版印刷版材料の現像には自動現像機を用いるのが有利である。自動現像機として好ましくは現像浴に自動的に現像補充液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える現像液は、排出する機構が付与されており、好ましくは現像浴に自動的に水を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは、通版を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知を基に版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは通版の検知及び/又は処理面積の推定を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは現像液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されている。又、現像液濃縮物を一旦、水で希釈・撹拌する機能を有することが好ましい。現像工程後に水洗工程がある場合、使用後の水洗水を現像濃縮物の濃縮液の希釈水として用いることができる。
【0219】
自動現像機は、現像工程の前に前処理液に版を浸漬させる前処理部を有してもよい。この前処理部は、好ましくは版面に前処理液をスプレーする機構が付与されており、好ましくは前処理液の温度を25〜55℃の任意の温度に制御する機構が付与されており、好ましくは版面をローラー状のブラシにより擦る機構が付与されている。この前処理液としては、水などが用いられる。
【0220】
(後処理)
かかる組成の現像液で現像処理されて平版印刷版となった感光性平版印刷版材料は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。これらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば現像−水洗−界面活性剤を含有するリンス液処理や現像−水洗−フィニッシャー液による処理が、リンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も好ましい態様である。
【0221】
これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とから成る自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を浸漬搬送する方法が用いられる。又、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。又、実質的に未使用の後処理液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0222】
(ガム液)
ガム液は、現像液のアルカリ成分除去のため酸や緩衝剤を添加することが好ましく、その他に親水性高分子化合物、キレート剤、潤滑剤、防腐剤及び可溶化剤等を添加することができる。ガム液に親水性高分子化合物を含む場合は、現像後の版の傷や汚れを防ぐ保護剤としての機能も付加される。
【0223】
(現像前水洗水)
現像前の洗浄工程等の前処理部で用いる洗浄液(前処理液)は、通常、水であるが、必要に応じてキレート剤、界面活性剤、防腐剤などの添加剤を加えることができる。
【0224】
洗浄方法において、現像前洗浄に用いる洗浄液は温度を調節して用いることが好ましく、該温度は10〜60℃の範囲が好ましい。洗浄の方法は、スプレー、ディップ、塗布等公知の処理液供給技術を用いることができ、適宜ブラシや絞りロール、ディップ処理における液中シャワーなどの処理促進手段を用いることができる。
【0225】
現像前洗浄工程終了後直ちに現像処理を行ってもよく、又、現像前洗浄工程の後に乾燥させてから現像処理を行ってもよい。現像工程の後は、水洗、リンス、ガム引き等、公知の後処理を行うことができる。一度以上使用した現像前水洗水は、現像後の水洗水やリンス液、ガム液に再使用することができる。
【実施例】
【0226】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を示す。
【0227】
実施例1
(バインダーの合成)
(アクリル系共重合体1の合成)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタクリル酸30部、メタクリル酸メチル50部、メタクリル酸エチル20部、イソプロピルアルコール500部及びα、α′−アゾビスイソブチロニトリル3部を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、イソプロピルアルコールの沸点で1時間還流を行った後、トリエチルアンモニウムクロライド3部及びグリシジルメタクリレート25部を加えて3時間反応させ、アクリル系共重合体1を得た。GPCを用いて測定した重量平均分子量は約35,000、DSC(示差熱分析法)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)は約85℃であった。(固形分20%イソプロピルアルコール/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、更に3質量%ポリビニルホスホン酸を用い75℃で親水化処理を行って支持体を作製した。
【0228】
この時、表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.55μmであった。
【0229】
(感光性平版印刷版材料1〜38、39〜60の作製)
上記支持体上に、下記光重合感光層塗工液を乾燥時1.6g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、90℃で2分間乾燥し、次いで、感光層上に下記組成の酸素遮断層塗工液1を乾燥時1.8g/m2になるようになるようアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥して、感光層上に酸素遮断層を有する感光性平版印刷版材料試料1〜38、39〜60を作製した。
【0230】
(光重合性感光層塗工液)
a)アルカリ可溶性高分子:前記アクリル共重合体1(20%溶液)
166.5質量部
b)エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体:一般式(1)で表される化合物(表3、4、5に記載の種類) (表3、4、5に記載の量(質量部))
本発明に係る一般式(I)で表される化合物I−1〜I−35、等(表3、4、5に記載の種類) (表3、4、5に記載の量(質量部))
c)光重合開始剤:下記Ini−1〜Ini−3(表3、4、5に記載の種類)
3.5質量部
d)増感色素:一般式(2)〜(4)で表される化合物(増感色素)(表3、4、5に記載の種類) 5質量部
水素供与性化合物またはポリハロゲン化合物:下記CoI−1〜CoI−3(表3、4、5に記載の種類) 0.3質量部
熱重合禁止剤:下記ST−1(表3、4、5に記載の種類) 1質量部
顔料分散物:MHI#454(三国色素(株)製:35質量%MEK分散物)
12.9質量部
界面活性剤:EDAPLAN LA−411(MUNZING CHEMIE GMBH社製) 0.1質量部
溶剤1:メチルエチルケトン 350.0質量部
溶剤2:プロビレングリコールモノメチルエーテル 408.4質量部
【0231】
【化33】

【0232】
(酸素遮断層塗工液1)
ポリビニルアルコール(AL−06:日本合成化学社製) 89.5質量部
ポリビニルピロリドン(ルビテック K−30:BASF社製) 10.0質量部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学工業社製) 0.5質量部
水 900質量部
《評価方法》
(画像形成)
作製した感光性平版印刷版材料は、405±5nm、60mWのレーザーを備えた光源を備えたプレートセッター(MAKO4:ECRM社製)を用いて、画像部、非画像部の面積比率が、1:9になるように露光エネルギー:50μJ/cm2、1200dpiの解像度で画像露光(露光パターンは、100%画像部と、100LPIの網点(98、96、94、92、90、85、80、75、70、60、50、40、30、20、15、10、8、6、5、4、3、2、1%のスクエアードット))を行った。
【0233】
次いで、版面温度が95〜130℃になるように加熱するプレヒート部、現像前に酸素遮断層を除去するプレ水洗部、下記組成の現像液1を充填した現像部、版面に付着した現像液を取り除く水洗部、画線部保護のためのガム液(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの)を備えたCTP自動現像機(Raptor 85 polymer:GLUNZ & JENSEN社製)で50ml/m2となるように補充液1の補充を行い、現像処理液1Lあたり30m2現像処理を行い、平版印刷版を得た。実際の製版時の版面温度は100〜105℃であった。感光性平版印刷版材料が現像液に接触している時間を現像時間とし、上記自動現像機を用いた現像時間は25秒。
【0234】
(現像液1の調製)
下記組成の現像液1を調製した。
【0235】
現像液1(1000ml水溶液処方)
化合物P−1 5.0質量%
キレート剤(Dissolvin Na2−S、アクゾノベル社製) 0.5質量%
水酸化カリウム 下記pHとなる添加量
残余の成分は水
pH:11.9
【0236】
【化34】

【0237】
(現像補充液1の調製)
現像液1と同様の組成で、但し水酸化カリウムを増量して、pH:13.2の現像補充液1を調製した。
【0238】
(画像形成感度の評価)
前記プレートセッターでベタ画像を露光し、前記自動現像機で現像したのちの感光層を反射濃度計で、非画像部の砂目表面を基準とした反射濃度が、現像前の感光層の反射濃度に比べて97%以上の場合の露光エネルギーを画像形成感度とした。反射濃度計はグレタグマクベス社製D−196を使用した。
【0239】
《評価》
(現像安定性の評価)
前記自動現像機を用いて処理補充を50ml/1m2で行い、1Lあたり0m2処理時、30m2処理時および、処理補充を行わずに1Lあたり10m2処理した場合の画像形成感度を評価した。
【0240】
画像形成感度の差が小さいものほど、現像安定性が優れていることを示している。
【0241】
(保存安定性の評価)
長期保存性の代用評価として、40℃3日、55℃3日の強制劣化保存を実施した。
【0242】
前記自動現像機を用いて処理補充を50ml/1m2で行い、30m2処理時の前記40%網点の面積率を測定し、Dot%と表記した。測定器はX−rite社製のiCPlate−IIを使用した。
【0243】
Dot%の変動が小さいものほど、保存安定性が優れていることを示している。
【0244】
結果を表6、表7に示す。
【0245】
【表3】

【0246】
【表4】

【0247】
【化35】

【0248】
【表5】

【0249】
【表6】

【0250】
【表7】

【0251】
上記表3、表4および、表6の結果、から明らかのように、本発明の場合には、現像安定性、保存安定性が向上することがわかる。本発明に係る一般式(I)で表される化合物が、Xが−CO−O−かつR2が>CH2の化合物の場合は感度向上効果があり、かつR4が−CH(R)2の化合物の場合は感度向上の面で更に効果が大きいことがわかる。
【0252】
上記表5、および、表7の結果、から明らかのように、本発明に係る化合物を含むことで、感度の向上、保存安定性が向上することがわかる。特に、重合開始剤として水素引き抜き型重合開始剤を用いた場合に該効果が大きいことがわかる。
【0253】
本発明の場合には、コンピュータートゥプレートシステムに好適な、特に波長350〜410nmのレーザー光での露光に適した、感度が優れ、しかも、保存安定性、現像安定性、に優れた感光性平版印刷版材料を提供することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性表面を有する支持体上にa)アルカリ可溶性高分子、b)エチレン性不飽和結合を2つ以上有する単量体、c)光重合開始剤及びd)増感色素を有し、更に下記一般式(I)で表される化合物を含有する感光層を有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【化1】

〔式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は単結合又は置換基を有してもよい炭素数が1〜10の炭化水素基を表し、R3は水素原子又は置換基を有してもよい炭素数が1〜10の炭化水素基を表し、R4は、置換基を有してもよい炭素数が1〜18のアルコキシ基、または−N(R5)(R6)を表す(ここで、R5,R6はそれぞれ、水素原子、置換基を有してもよい炭素数が1〜18の炭化水素基でありR5とR6とが互いに結合して環を形成してもよい。なお、R5,R6がともに水素原子であることはなく、また、R5,R6の炭素数の合計は1〜18である。)。Xは−O−、−COO−、または−CONH−を表す。nは0〜2の整数を表し、mは3−nの整数を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物について、一般式(I)のR4が−O−CH(R7)(R8)(ここで、R7,R8はそれぞれ、水素原子、置換基を有してもよい炭素数が1〜17の炭化水素基でありR7とR8とが互いに結合して環を形成してもよい。なお、R7,R8がともに水素原子であることはなく、また、R7,R8の炭素数の合計は2〜17である。)であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物について、一般式(I)のR2が2価の飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物について、一般式(I)のXが−COO−であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項5】
前記c)光重合開始剤が水素引き抜き型光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項6】
前記d)増感色素が、クマリン誘導体、アクリドン誘導体、スチリルベンゼン誘導体、またはオキサゾール誘導体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項7】
前記感光層に、水素供与性化合物、またはポリハロゲン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性平版印刷版材料に、350〜410nmのレーザー光で露光したのちに、少なくとも無機のアルカリ剤、アニオン性界面活性剤を含有し、有機溶剤を含まないpH9.0〜12.5のアルカリ水溶液で現像処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。

【公開番号】特開2009−63610(P2009−63610A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228710(P2007−228710)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】