説明

感光性樹脂組成物、硬化体及び感光性エレメント

【課題】 十分に優れた貯蔵安定性を示すドライフィルムを形成でき、かつ、十分に高い耐溶剤性を示すソルダーレジストをを形成できる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、(A)下記一般式(1);
【化1】


〔式中、Rはジグリシジルエーテル型エポキシ化合物残基である二価の有機基を示し、Rは二塩基酸残基である二価の有機基を示し、Rは水素原子又は下記一般式(2);
【化2】


(式中、Rは酸無水物残基を示す。)
で表される基を示す。〕
で表される繰り返し単位を有する樹脂と、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)ブロックイソシアネート化合物とを含有する感光性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化体及び感光性エレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子機器の小型化及び/又は軽量化に伴い、プリント配線板及び半導体素子を内蔵するパッケージ基板には、回路パターンを形成する目的で感光性のソルダーレジストが用いられている。そのようなソルダーレジストの感光性材料には、微細なパターンを形成するための特性として、良好な現像性及び高い解像度といった優れた感光特性、並びに、良好な電気絶縁性、高耐溶剤性及び高耐アルカリ性等の絶縁材料としての優れた特性が要求される。また近年のはんだのPbフリー化に伴い、上記諸特性に加えて、特にパッケージ基板に用いるソルダーレジストは、260℃程度の高温環境下における優れたはんだ耐熱性、高耐熱衝撃性、及び高温高湿環境下においてもソルダーレジストとして安定に機能できる優れた耐湿熱性なども求められている。
【0003】
更に、特に微細な開口パターンを要するパッケージ基板用のソルダーレジストには、例えば−55℃〜125℃の温度サイクル試験(TCT)に対する更なる耐性が要求されている。また、かかるソルダーレジストは、プリント配線板やパッケージ基板の一部材としての物理特性、例えば、高い引張り強度、伸び率及び耐電食性等も求められている。
【0004】
ソルダーレジストをプリント配線板等に形成する方法としては、液状フォトレジストを用いる方法もあるが、生産効率及びレジスト膜厚の均一性の観点から、特許文献1に開示されている、いわゆるドライフィルムレジストを用いる方法が主流となりつつある。ドライフィルムレジストの材料として、例えば特許文献2には、耐熱性、耐湿熱性、密着性、機械特性に優れた硬化膜を得ることができ、プリント配線板、高密度多層板、半導体パッケージ等の製造に好適に用いられる感光性樹脂組成物を提供することを意図して、エポキシ化合物(a)と不飽和モノカルボン酸とのエステル化物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られたカルボキシル基を有する感光性樹脂(A)、カルボキシル基を有する感光性ポリアミド樹脂及びカルボキシル基を有する感光性ポリアミドイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種の感光性樹脂(B)、エラストマー(C)、エポキシ硬化剤(D)及び光重合開始剤(E)を含有する感光性樹脂組成物が提案されている。特許文献2によると、この感光性樹脂組成物から形成されるソルダーレジストは耐溶剤性に優れている旨、記載されている。
【特許文献1】特開昭54−1018号公報
【特許文献2】特開平11−288087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献2に記載の従来の感光性樹脂組成物について詳細に検討を行ったところ、このような従来の感光性樹脂組成物からドライフィルムを形成すると、十分な貯蔵安定性が得られなくなることを見出した。
【0006】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、十分に優れた貯蔵安定性を示すドライフィルムを形成でき、かつ、十分に高い耐溶剤性を示すソルダーレジストをを形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、その感光性樹脂組成物から得られる硬化体及び感光性エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、感光性樹脂組成物に特定の構造を有する樹脂を含有させると共に、通常の感光性樹脂組成物には必ずしも含まれていない特定の性質を示す化合物を含有させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、(A)下記一般式(1);
【化1】

で表される繰り返し単位を有する樹脂と、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)ブロックイソシアネート化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0009】
ここで、式(1)中、Rはジグリシジルエーテル型エポキシ化合物残基である二価の有機基を示し、Rは二塩基酸残基である二価の有機基を示し、Rは水素原子又は下記一般式(2);
【化2】

で表される基を示す。また、式(2)中、Rは酸無水物残基を示す。
【0010】
また、「ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物」とは、下記一般式(4);
【化3】

で表される化合物のことをいう。ここで、Rは二価の有機基を示す。
【0011】
さらには、「ブロックイソシアネート化合物」は、イソシアネート化合物とブロック剤との反応により生成し、ブロック剤由来の基により一時的に不活性化されている化合物であり、所定温度に加熱するとそのブロック剤由来の基が解離し、イソシアネート基を生成するものである。
【0012】
本発明は、(A)下記一般式(3);
【化4】

で表される樹脂と、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)ブロックイソシアネート化合物とを含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0013】
ここで、式(3)中、Rはジグリシジルエーテル型エポキシ化合物残基である二価の有機基を示し、Rは二塩基酸残基である二価の有機基を示し、Rは水素原子又は下記一般式(2);
【化5】

で表される基を示し、nは1以上の整数を示す。また、式(2)中、Rは酸無水物残基を示す。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述の(A)、(B)、(C)及び(D)成分を同時に含有することにより、十分に優れた貯蔵安定性を示すドライフィルムを形成でき、かつ、十分に高い耐溶剤性を示すソルダーレジストを形成できる。その要因は、現在のところ詳細には明らかにされていないが、本発明者らは、その一部を以下のように考えている。ただし、要因はこれらに限定されない。
【0015】
特許文献1に開示される従来の感光性樹脂組成物は、エポキシ硬化剤(D)中のグリシジル基と、感光性樹脂(A)又は(B)中のカルボキシル基とが常温で反応してしまう。そのため、これを液状レジストの材料として用いる際には、感光性樹脂(A)及び(B)とエポキシ硬化剤(D)とをそれぞれ主剤と硬化剤とに分けた二液性のレジスト材料とすることにより、上述の反応を防止する。しかしながら、この感光性樹脂組成物をドライフィルムレジストの材料として用いる場合、感光性樹脂(A)及び(B)とエポキシ硬化剤(D)とを同じフィルム中に配合することとなるため、得られるドライフィルム中で上述の反応が進行し、十分な貯蔵安定性を示し難くなる。
【0016】
一方、本発明の感光性樹脂組成物は、引用文献1のエポキシ硬化剤(D)に対応するものとしてブロックイソシアネート化合物を採用している。このブロックイソシアネート化合物は、通常、常温でブロック剤由来の基により一時的に不活性化されているため、常温における(A)成分の樹脂との反応を十分に抑制されている。その結果、このブロックイソシアネート化合物と(A)成分の樹脂とを含有する本発明の感光性樹脂組成物を一液にして用いたり、本発明の感光性樹脂組成物からドライフィルムを形成したりすると、十分に優れた貯蔵安定性を示すことができると推測される。したがって、本発明の感光性樹脂組成物を一液性の状態で、又はドライフィルムの状態で長時間保存した後でも塗膜性、硬化膜の解像度及び耐熱衝撃性等の諸特性を十分良好に維持することができる。
【0017】
また、本発明の感光性樹脂組成物に光照射すると、主に(B)成分である光重合性化合物が重合する。更に感光性樹脂組成物を加熱することにより、(D)成分のブロックイソシアネート化合物中のブロック剤由来の基が解離し、イソシアネート基(−N=C=O)が生成し、(A)成分の樹脂中の水酸基残基及び/又はカルボキシル基と反応する。これらにより感光性樹脂組成物中で三次元架橋が起こり、硬化体を形成する。このことに起因して、十分に高い耐溶剤性を示すソルダーレジストを形成できると本発明者らは推察している。
【0018】
また、感光性のソルダーレジストを得るには、絶縁基板等の上に感光性材料の塗膜を形成する工程を経るが、良好な生産効率を確保する観点から、その塗膜の表面のべとつきが抑制されている、すなわち優れた塗膜性を有していることも求められている。本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布すると、その塗膜はべとつきが十分に抑制されており、作業性に非常に優れたものである。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述の(A)、(B)、(C)及び(D)成分を同時に含有することにより、感光性材料に要求される良好な現像性及び高い解像度を有すると共に、フレキシブル配線板を含むプリント配線板及びパッケージ基板などに備えられるソルダーレジストや層間絶縁膜、半導体の保護膜等に要求される特性や信頼性を満足することができる。また、本発明の感光性樹脂組成物から得られるソルダーレジストは、耐溶剤性に十分優れていることに加えて、それと同様の要因により、耐アルカリ性、はんだ耐熱性及び耐電解Ni/Auめっき性にも優れている。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は塗膜性、希アルカリ水溶液による現像性(以下、「アルカリ現像性」という。)、及び引張強度や伸び率の物理特性等を向上させる観点から、(A)成分の樹脂の重量平均分子量が10000〜80000であると好ましい。ここで、「重量平均分子量」はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され導出されるものである(標準ポリスチレンによる換算)。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物において、(A)成分の樹脂が、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により中間生成物を得る第一工程と、その中間生成物に酸無水物を付加する第二工程とを有する樹脂の製造方法により得られるものであってもよい。このような樹脂は、エステル型鎖状結合を有し、分子全体が鎖状構造を有する傾向にあるためゲル化し難い傾向にあると考えられる。したがって、このような樹脂を含有する感光性樹脂組成物により形成される感光層を備える感光性エレメントは、これを用いてレジスト膜を形成した場合、希アルカリ水溶液を用いた現像を一層良好に行うことができる。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物において、(D)成分のブロックイソシアネート化合物が、分子内に2個以上の下記式(5);
−NHCO− (5)
で表される2価の基を有するものであると好ましい。これにより本発明の目的効果を更に有効に達成することが可能となる。
【0023】
また、(D)成分のブロックイソシアネート化合物が分子内に下記式(6);
【化6】

で表される3価の基及び/又は芳香環を有するものであると、ソルダーレジスト等感光性樹脂組成物の硬化体がより優れた電気絶縁性を有することができるので好ましい。
【0024】
本発明は、上述の感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化体を提供する。この硬化体は十分に高い耐溶剤性を示すほか、引張強度や伸び率等の機械的特性、電気絶縁性、耐熱衝撃性、耐湿熱性、耐アルカリ性、はんだ耐熱性及び耐電解Ni/Auめっき性にも優れている。この硬化体は光照射及び加熱の両方の手段により得られるものであると、上述の効果を一層有効に発揮できるので好ましい。
【0025】
本発明は、支持体と、該支持体上に形成された上述の感光性樹脂組成物からなる感光層とを備える感光性エレメントを提供する。この感光性エレメントにおける感光層はいわゆるドライフィルムであり、上述から明らかなとおり、長時間保存した後でも塗膜性、硬化膜の解像度及び耐熱衝撃性等の諸特性を十分良好に維持することができる十分な貯蔵安定性を示すことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、十分に優れた貯蔵安定性を示すドライフィルムを形成でき、かつ、十分に高い耐溶剤性を示すソルダーレジストをを形成できる感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロキシ基」とは「アクリロキシ基」及びそれに対応する「メタクリロキシ基」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂と、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)ブロックイソシアネート化合物とを含有するものである。以下、本発明の感光性樹脂組成物の好適な実施形態について説明する。
【0029】
<(A)成分>
(A)成分である上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂としては、例えば上記一般式(3)で表されるものが挙げられる。なお、一般式(1)及び(3)から明らかなとおり、(A)成分の樹脂は主鎖にエステル結合(−COO−)を有するポリエステル樹脂である。
【0030】
上記ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(標準ポリスチレンによる換算)。GPCの条件は以下のとおりである。
【0031】
〔GPC条件〕
ポンプ:日立 L−6000型[(株)日立製作所製]
検出器:日立 L−4000型UV[(株)日立製作所製]
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5(計2本)(日立化成工業(株)製、商品名)
カラムサイズ:8mmφ×300mm
溶離液:DMF/THF=1/1 + リン酸0.06M + 臭化リチウム0.06M
試料濃度:5mg/1mL
注入量:5μL
圧力:343Pa(35kgf/cm
流量:1.0mL/分
【0032】
この測定法によれば、該ポリエステル樹脂のMwは、塗膜性(べとつき難さ)の観点、希アルカリ水溶液による現像性の観点並びに引張強度及び伸び率等の機械的特性の観点から、10000〜80000であることが好ましく、15000〜70000であるとより好ましく、20000〜60000であると更に好ましく、25000〜50000であると特に好ましい。
【0033】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、このように比較的高分子量のポリエステル樹脂を含有していても、希アルカリ現像液に十分溶解することができる。特に(A)成分が上記一般式(3)で表されるような直鎖状のポリエステル樹脂を多く含有するほど、その溶解性が向上する傾向にある。また、(A)成分が直鎖状のポリエステル樹脂を多く含有することにより、感光性樹脂組成物の溶媒に対する溶解性等、諸特性を向上できる傾向にある。
【0034】
なお、上述した一般式(3)で表されるポリエステル樹脂の構造式中、nの上限値は、R、R、R及びRの残基の種類によって適宜変化するが、この重量平均分子量が80000となるようなnの値を上限として定めることが好ましい。
【0035】
ポリエステル樹脂の酸価は、以下の方法により測定することができる。まずポリエステル樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、滴定結果から以下の式(7);
A=10×Vf×56.1/(Wp×I) (7)
を用いて酸価を算出する。なお、式中Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfはフェノールフタレインの滴定量(mL)を示し、Wpはポリエステル樹脂溶液質量(g)を示し、Iはポリエステル樹脂溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0036】
この測定方法によれば、該ポリエステル樹脂の酸価は、希アルカリ水溶液による現像性の観点、並びに、得られる硬化膜の電気絶縁性、耐薬品性及びめっき耐性等の観点から、50〜200mgKOH/gであることが好ましく、90〜150mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0037】
かかるポリエステル樹脂は、以下の方法により合成することができる。
【0038】
該ポリエステル樹脂の合成方法は、一分子中に二つのグリシジル基を有する、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により中間生成物を得る第一工程と、中間生成物に酸無水物を付加することにより上述したようなポリエステル樹脂を得る第二工程とを含むものである。
【0039】
(第一工程)
第一工程において原料として用いられるジグリシジルエーテル型エポキシ化合物は特に限定されないが、一分子中に一つ以上のフェノキシ基を更に有することが好ましく、一分子中に二つ以上のフェノキシ基をさらに有することがより好ましい。
【0040】
該エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中で、耐熱性、耐薬品性に優れ、硬化により比較的収縮しないことからビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0041】
なお、上述した一般式(1)中のRで示されたジグリシジルエーテル型エポキシ化合物残基は、これらのエポキシ化合物の構造中、グリシジル基を除いた部分となる。
【0042】
これらのエポキシ化合物としては市販のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしてはエピコート828、エピコート1001及びエピコート1002(以上、ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。ビスフェノールFジグリシジルエーテルとしてはエピコート807(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができ、ビスフェノールSジグリシジルエーテルとしてはEBPS−200(日本化薬社製、商品名)及びエピクロンEXA−1514(大日本インキ化学工業社製、商品名)等を挙げることができる。また、ビフェノールジグリシジルエーテルとしてはYL−6121(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができ、ビキシレノールジグリシジルエーテルとしてはYX−4000(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を挙げることができる。さらに、水添ビスフェノールAグリシジルエーテルとしてはST−2004及びST−2007(以上、東都化成社製、商品名)等を挙げることができ、上述した二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてはST−5100及びST−5080(以上、東都化成社製、商品名)等を挙げることができる。
【0043】
これらのジグリシジルエーテル型エポキシ化合物は、そのエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む化合物のグラム重量)をJIS K 7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」により測定することができる。この測定法によると、該エポキシ化合物のエポキシ当量は、希アルカリ水溶液による現像性の観点から、160〜3300であることが好ましく、180〜980であることが更に好ましい。
【0044】
第一工程において原料として用いられる二塩基酸としてはジカルボン酸が好ましい。具体的には、例えば、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸及びメチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの二塩基酸のなかで、テトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0045】
なお、上述した一般式(1)中のRで示された二塩基酸残基は、これらの化合物の構造中、二塩基酸官能基(ジカルボン酸の場合はカルボキシル基)を除いた部分となる。
【0046】
第一工程における重合反応は、常法により行われることができる。ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との配合比は、ポリエステル樹脂の分子量の観点、希アルカリ水溶液による現像性の観点、貯蔵安定性の観点、及び塗膜性の観点等から、官能基当量比(カルボキシル基/エポキシ基、モル比)で表すと、1.03〜1.30であると好ましい。ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との配合比をこのように調整することによりカルボキシル基がエポキシ基に対して過剰になるので、得られるポリエステル樹脂は末端にカルボキシル基を有する傾向にある。
【0047】
第一工程における重合反応に用いられる触媒としては、例えば、ホスフィン類、アルカリ金属化合物及びアミン類等が挙げられる。具体的には、例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムブロマイドなどのアミン類が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
これらの中で、第一工程における重合反応に用いられる触媒としては、9.0以下のpKaを有する三級アミンが好ましく、7.3以下のpKaを有する三級アミンがより好ましい。このような触媒を用いることにより、最終的に上述した一般式(1)、さらには一般式(3)で表されるポリエステル樹脂をより選択的に合成することができ、そのポリエステル樹脂の分子量を大きくできる傾向にある。また、上述した具体的な触媒のうち、得られるポリエステル樹脂中の結合種(エーテル型網目結合及び/又はエステル型網目結合)によるゲル化を防止する観点から、ホスフィン類、アルカリ金属化合物以外のもの、又は三級アミンであって9.0以下のpKaを有するものを用いると好ましい。
【0049】
上述した第一工程における重合反応により生成する中間生成物は、その分子内に、カルボキシル基とグリシジル基との反応により生成したエステル結合による鎖状構造、水酸基とグリシジル基との反応により生成したエーテル結合による網目構造、及び水酸基とカルボキシル基との反応により生成したエステル結合による網目構造を形成し得る。得られる中間生成物が、これらの構造のうちエーテル結合による網目構造及びエステル結合による網目構造を分子内に多く有する場合、全体として三次元構造を形成する傾向にあると考えられる。したがって、該中間生成物及び後述する第二工程後に得られるポリエステル樹脂はゲル化する傾向にあるので、このような樹脂を用いることにより形成されるレジスト膜の未硬化部分は希アルカリ水溶液等を用いた現像によっても除去されない傾向にある。
【0050】
一方、上述した触媒を用いることにより合成された中間生成物は、さらにこれを用いた第二工程を経ることにより、一般式(1)で表されるものを始めとして、分子内にエステル結合による鎖状結合を多く有し、全体として鎖状構造を有するポリエステル樹脂を得ることができるので、ゲル化し難い傾向にあると考えられる。したがって、このようなポリエステル樹脂を用いることにより形成されるソルダーレジストの未硬化部分は、希アルカリ水溶液等を用いた現像によって容易に除去される。
【0051】
かかる触媒の使用量は、重合反応速度の観点、並びに感光性樹脂組成物より得られる硬化膜の耐熱性及び耐電食絶縁性等の観点から、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物及び二塩基酸の総量100質量部に対して、1〜10質量部であると好ましい。
【0052】
第一工程における反応温度は、重合反応速度の観点及び副反応の進行防止の観点から、100〜150℃であることが好ましい。
【0053】
(第二工程)
第二工程においては、第一工程により生成した中間生成物と酸無水物とを反応させることにより、ポリエステル樹脂を合成する。
【0054】
第二工程において用いられる酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物、その他これらに付随する例えば5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。
【0055】
これらの中で、二塩基性酸無水物を用いると好ましく、ジカルボン酸無水物を用いるとより好ましい。また、これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
なお、上述した一般式(1)中のRで示された酸無水物残基は、これらの化合物の構造中、酸無水物官能基を除いた部分となる。
【0057】
酸無水物の添加量は、希アルカリ水溶液による現像性の観点、並びに、最終的に得られる硬化膜の耐熱性及び耐電食絶縁性の観点等から、官能基当量比(添加する酸無水物中の酸無水物基/第一工程において生成する中間生成物の水酸基、モル比)で表すと、0.6〜1.3であると好ましい。
【0058】
第二工程における反応温度は、反応速度の観点及び副反応を防止する観点から、80〜130℃であることが好ましい。
【0059】
また、このポリエステル樹脂の合成方法において、通常、適当量の溶媒が用いられる。具体的には、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン若しくはメチルシクロヘキサノン等のケトン化合物、トルエン、キシレン若しくはテトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル若しくはトリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル化合物、上記グリコールエーテル化合物の酢酸エステル化合物等のエステル化合物、エチレングリコール若しくはプロピレングリコール等のアルコール化合物、又は、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ若しくはソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。
【0060】
<(B)成分>
(B)成分である分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0061】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0062】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0063】
これらのうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(製品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0065】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0067】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH−CH(CH)−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0068】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が拳げられる。
【0069】
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0070】
ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0072】
これら(B)成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0073】
<(C)成分>
(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン;N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
<(D)成分>
ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート化合物(R−(N=C=O))とブロック剤(R−R)との下記一般式(8);
−(N=C=O) + kR−R → R−(NRCO−R (8)
で表されるような反応により生成し、ブロック剤由来の基(R)により一時的に不活性化されている化合物(R−(NRCO−R)であり、所定温度(解離温度)に加熱するとそのブロック剤由来の基が解離し、イソシアネート基を生成する。ここで、式(8)中、Rはイソシアネート残基、Rはブロック剤分子のうちブロック剤由来の基以外の基を示し、kは1以上の整数を示す。
【0075】
ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられるが、硬化体とその下地層との密着性の観点から、上記式(6)で表される骨格を有するイソシアヌレート型が好ましい。イソシアネート化合物の具体例としては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマー並びにそれらの重合体等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネート並びにそれら重合体等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート及びその重合体等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。イソシアネート化合物は上述のもののうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0076】
ブロック剤としては、Rとして活性水素を有しているものが好ましく、活性メチレン化合物、ジケトン化合物、オキシム化合物、フェノール化合物、アルカノール化合物及びカプロラクタム化合物などが挙げられる。具体的には、メチルエチルケトンオキシム、ε−カプロラクタムなどを用いることができる。ブロック剤は上述のもののうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0077】
また、ブロックイソシアネート化合物は、その機能をより有効に発揮するために、kが2以上の整数であると好ましく、Rが活性水素である2個以上の上記式(5)で表される2価の基を有するとより好ましい。
【0078】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4165、BL−1100,BL−1265、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2078、TPLS−2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(以上、住友バイエルウレタン社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(以上、日本ポリウレタン工業社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(三井武田ケミカル社製、商品名)等が挙げられる。なお、スミジュールBL−3175、BL−4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。
【0079】
上記解離温度は感光性樹脂組成物を用いる電子部品の構成材料への影響、製造環境、工程条件、材料保管温度などの観点から、120〜200℃であると好ましく、その温度範囲でブロック剤由来の基が解離するイソシアネート化合物及びブロック剤の組合せが好ましい。
【0080】
ソルダーレジスト等、感光性樹脂組成物の硬化体に一層優れた絶縁性が求められる場合、ブロックイソシアネート化合物が上記式(6)で表される基又はベンゼン環等の芳香環を有すると好ましい。そのような材料としては、例えば、スミジュールBL−3175、BL−4265、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
【0081】
感光性樹脂組成物の硬化体に可撓性を付与したい場合、ブロックイソシアネート化合物が、そのイソシアネート部位に柔軟なソフトセグメントを有するものであると好ましい。そのようなブロックイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールと共重合して得られるジイソシアネートのブロックイソシアネート化合物が挙げられる。イソシアネート部位に柔軟なソフトセグメントを有するブロックイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、B−830、B−815、B−846、B−870(以上、三井武田ケミカル社製、商品名)が挙げられる。
【0082】
感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有割合は、その感光性樹脂組成物からなる感光層を備える感光性エレメントの端面からのしみ出しを防止する観点、並びに、より優れたはんだ耐熱性及び光感度を得る観点から、(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることがより好ましい。
【0083】
(B)成分の含有割合は、(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して、10〜70質量部であることが好ましく、35〜55質量部であることがより好ましい。この含有割合が10質量部未満では、光感度が不十分となる傾向があり、70質量部を超えると、得られる硬化体が脆くなる傾向がある。
【0084】
(C)成分の含有割合は、より優れた光感度及びはんだ耐熱性を得る観点から、(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
【0085】
(D)成分の含有割合は、一層良好な耐溶剤性、耐アルカリ性及びはんだ耐熱性を得る観点、並びにより優れた光感度を得る観点から、(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して、10〜70質量部であることが好ましい。
【0086】
また、本実施形態の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、メラミン樹脂若しくはイソシアネートのブロック体等の熱硬化成分、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン若しくはロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤若しくはp−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニングリーン若しくはフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料若しくは二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム若しくは硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料あるいはイメージング剤などを(A)成分と(B)成分との総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、アクリル系共重合体、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂等の(A)成分以外のポリマー成分を併用してもよい。
【0087】
更に、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分(不揮発分)30〜70質量%程度の溶液として用いてもよい。
【0088】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、十分に優れた貯蔵安定性を示すドライフィルムを形成でき、かつ、十分に高い耐溶剤性を示すソルダーレジストを形成できる。さらには、良好な現像性及び高い解像度といった優れた感光特性を有するものであり、べとつきの抑制された良好な塗膜を形成できる。
【0089】
本発明の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成された本発明の感光性樹脂組成物からなる感光層とを備えるものである。以下、本発明の感光性エレメントの好適な実施形態について図1を参照しながら説明する。図1に示す感光性エレメント1は、支持体11と、該支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物を含有する感光層12と、感光層12上に積層された保護フィルム13とを備えるものである。
【0090】
感光層12は、上述の感光性樹脂組成物を上記溶剤又は混合溶剤に溶解して固形分30〜70質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体上に塗布して形成することが好ましい。感光層の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。この厚みが10μm未満では工業的に塗工(塗布)困難な傾向があり、100μmを超えると本発明により奏される上述の効果が小さくなりやすく、特に、機械的特性等の物理特性及び解像度が低下する傾向にある。
【0091】
保護フィルム13としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、テフロン(登録商標)フィルム、表面処理した紙等が挙げられる。保護フィルム13は、感光層12と支持体11との接着力よりも感光層12と保護フィルム13との接着力が小さいものであると好ましい。
【0092】
感光性エレメント1が備える支持体11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。
【0093】
支持体11の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では現像前に支持体11を感光性エレメント1から剥離する際に当該支持体が破れやすくなる傾向があり、また、100μmを超えると解像度及び可撓性が低下する傾向がある。本実施形態においては、上述したようなポリエステル樹脂を用いて感光層12を形成するので、支持体11の厚みが従来のものと比較してより厚い場合、例えば25μm超100μm以下の場合であっても、その可撓性及び解像度を維持することができる。
【0094】
上述したような支持体11と感光層12と保護フィルム13との3層からなる感光性エレメント1は、例えば、そのまま貯蔵してもよく、又は保護フィルム13を介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0095】
本実施形態の感光性エレメントは、長時間保存した後でも塗膜性、硬化膜の解像度及び耐熱衝撃性等の諸特性を十分良好に維持することができる十分な貯蔵安定性を示すことができる。また、感光層表面のべとつきが少ないことによって、高解像度かつ高密度のプリント配線板の効率的な生産を可能とする。
【0096】
本発明のレジストパターンの形成方法は、絶縁基板と該絶縁基板上に形成された回路パターンを有する導体層とを有する積層基板の絶縁基板上に、導体層を覆うように、上記感光性樹脂組成物を含有する感光層を形成し、該感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成し、次いで、該露光部以外の感光層の部分を除去するものである。以下、本発明のレジストパターンの形成方法に係る好適な実施形態について説明する。
【0097】
感光層の形成方法としては、本発明の感光性樹脂組成物を直接塗工するか、上記感光性エレメントにおける感光層を加熱しながら絶縁基板に圧着して積層する形成方法が例示できる。基板上に形成された感光層は、感光性樹脂組成物が溶剤等の揮発成分を含む場合は、溶剤の大部分が除去された後の成分が主成分となる。また、感光性エレメントが保護フィルムを備える場合は、感光層の形成前に保護フィルムを感光性エレメントから剥離除去する。
【0098】
感光層を積層する絶縁基板の表面は、通常導体層の面であるが、その導体層以外の面であってもよい。感光性エレメントにおける感光層を加熱しながら絶縁基板に圧着して積層する場合、感光層の加熱温度は70〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1〜1.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は4kPa以下とすることがより好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光層を上述のように70〜130℃に加熱すれば、予め絶縁基板及び導体層を予熱処理することは必要ではないが、積層性を更に向上させるために、それらの予熱処理を行うこともできる。
【0099】
このようにして感光層の積層が完了した後、露光工程において感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成せしめる。露光部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。この際、感光層上に存在する支持体が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができるが、不透明の場合には、支持体を除去した後に感光層に活性光線を照射する。
【0100】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。
【0101】
露光後、感光層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去する。その後、ウエット現像、ドライ現像等により感光層の露光部以外の部分を現像除去し、感光性樹脂組成物の硬化体からなるレジストパターンを形成する。ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。なお、レジストパターン形成後に、1〜5J/cmの露光又は/及び100〜200℃、30分〜12時間の加熱(後加熱工程)による後硬化を更に行ってもよい。
【0102】
現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく用いられ、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5重量%水溶液)等が用いられる。現像処理に用いられる現像液は、露光部にダメージを与えず、未露光部を選択的に溶出するものであれば、その種類については特に制限はなく、樹脂組成物の現像タイプによって決定され、準水系現像液、溶剤現像液等一般的なものを用いることができる。例えば、特開平7−234524号公報に記載されるような水と有機溶剤とを含むエマルジョン現像液を使用することができる。特に有用なエマルジョン現像液としては、例えば、有機溶剤成分としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、2,2−ブトキシエトキシエタノール、乳酸ブチル、乳酸シクロヘキシル、安息香酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の有機溶剤を10〜40質量%含有するエマルジョン現像液を挙げることができる。また、アルカリ現像液を用いる場合には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、4―ホウ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液と上記有機溶剤とのエマルジョン現像液を用いることもできる。
【0103】
こうして形成されたレジストパターンは、回路配線を基板にはんだ付けした後のその回路配線の保護膜としても機能する。また、このレジストパターンは十分に高い耐溶剤性を示すほか、引張強度や伸び率等の機械的特性、電気絶縁性、耐熱衝撃性、耐湿熱性、耐アルカリ性、はんだ耐熱性及び耐電解Ni/Auめっき性にも優れている。よって、半導体パッケージ用の永久マスク(ソルダーレジスト)として有用である。
【0104】
本発明のプリント配線板は、絶縁基板と、その絶縁基板上に形成された上述の感光性樹脂組成物の硬化膜とを備えるものである。以下、本発明のプリント配線板の好適な実施形態について図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態のプリント配線板を示す模式断面図である。
【0105】
図2に示すプリント配線板2は、絶縁基板22と、絶縁基板22の一方面上に形成された回路パターンを有する導体層23と、絶縁基板22の他方面上に形成された回路パターンを有しない導体層21と、回路パターンを有する導体層23を覆うように絶縁基板22上に形成されたソルダーレジスト241とを備えている。また、ソルダーレジスト241は、上記感光性樹脂組成物の硬化膜からなり、ソルダーレジスト241は、回路パターンを有する導体層23の少なくとも一部が露出するように開口部26を有している。
【0106】
プリント配線板2は、開口部26を有しているため、CSPやBGA等の実装部品を、回路パターンを有する導体層23にはんだ等により接合することができ、いわゆる表面実装が可能となる。ソルダーレジスト241は、接合のためのはんだ付けの際に、導体層の不必要な部分にはんだが付着することを防ぐためのソルダーレジストとしての役割を有しており、また、実装部品接合後においては、導体層23を保護するための永久マスクとして機能する。
【0107】
次に、プリント配線板2の製造方法の一例について、概略的に説明する。図3は、図2に示したプリント配線板2の製造方法について模式的に示す工程図である。なお、図3(a)は一方面に回路パターンを有する導体層23と他方面に回路パターンを有しない導体層21とを備えるプリント配線板用基材3であり、図3(b)、図3(c)及び(d)は、それぞれ絶縁基板22上へ感光層24を積層した後のプリント配線板用基材4、感光層24へ活性光線を照射している様子及び現像後のプリント配線板2を示す。
【0108】
まず、両面金属張積層板(例えば、両面銅張積層板等)の片面をエッチングする公知の方法等により、図3(a)に示すように絶縁基板22上に導体層23のパターンを形成させ、導体層23が形成されたプリント配線板用基材3を得る。次に、図3(b)に示すように導体層23が形成されたプリント配線板用基材3上に、導体層23を覆うようにして本発明に係る感光性樹脂組成物からなる感光層24を形成し、感光層24が積層されたプリント配線板用基材4を得る。次に、図3(c)に示すように積層された感光層24に所定のパターンを有するフォトマスク5を介して活性光線を照射することにより感光層24の所定部分を硬化させる。最後に、未露光部を除去(例えばアルカリ現像等)することによって、図3(d)に示すように開口部26を有するソルダーレジスト241を形成させることでプリント配線板2を得る。なお、ソルダーレジスト241は、感光性樹脂組成物が有機溶剤等の揮発成分を含有している場合は、かかる揮発成分の大部分が除去された後の感光性樹脂組成物の硬化膜である。
【0109】
なお、絶縁基板22上への感光層24の積層、活性光線の照射及び未露光部の除去は、上述のレジストパターンの形成方法における場合と同様の方法により行うことができる。
【0110】
このようにして得られたプリント配線板2におけるソルダーレジスト241は、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜(硬化体)からなるものであり、十分に高い耐溶剤性を示すほか、引張強度や伸び率等の機械的特性、電気絶縁性、耐熱衝撃性、耐湿熱性、耐アルカリ性、はんだ耐熱性及び耐電解Ni/Auめっき性にも優れている。このソルダーレジスト241は光照射及び加熱の両方の処理により得られるものであると、上述の効果を一層有効に発揮できる。
【0111】
本発明の感光性樹脂組成物は、絶縁基板と、その絶縁基板上に形成された絶縁膜とを備えるパッケージ基板に用いることもできる。この場合、感光性樹脂組成物の硬化膜を絶縁膜として用いればよい。
【0112】
感光性樹脂組成物の硬化膜を、例えばプリント配線板、フレキシブル配線板又は半導体パッケージ基板用のソルダーレジストとして用いる場合は、上述のレジストパターンの形成方法における現像終了後、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.2〜10J/cm程度の照射量で照射を行うこともできる。また、レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。さらに紫外線照射と加熱とを同時に行うこともでき、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
【0113】
このようにしてレジストパターンを備えた基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤーボンディング、はんだ接続)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0115】
例えば、本発明の感光性エレメントの別の実施形態において、保護フィルムを備えずに、図1における感光層12及び支持体11のみを備えるものであってもよい。
【0116】
また、本発明のプリント配線板は絶縁基板上又は絶縁基板の両側に導電層及び絶縁層を交互に複数層積層した多層プリント配線板であってもよく、その場合、本発明の感光性樹脂組成物の硬化膜は、導電層間を確実に絶縁するための層間絶縁膜として機能する。
【実施例】
【0117】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0118】
本発明のポリエステル樹脂((A)成分)を以下の方法により調製した。まず、攪拌機、還流冷却機、温度計及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量479g/eq、商品名)182.7質量部、シクロヘキサノン64.0質量部及びトルエン30.0質量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、130℃に加熱した状態で攪拌することにより、エポキシ樹脂に含まれる水分の還流脱水を行った。次いで、これにテトラヒドロフタル酸(新日本理化社製)34.9質量部とジメチルパラトルイジン(三星化学社製)3.6質量部を添加し、140℃で4時間保温した。そして、テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製)108.0質量部を添加し、120℃で3時間保温させることにより、(A)成分であるポリエステル樹脂を得た。その後、該ポリエステル樹脂をメチルエチルケトン127.0質量部で希釈した。得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量は49000であり、固形分は57.0%であり、酸価は133mgKOH/gであった。
【0119】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
まず、表1に示す各成分をそこに示す固形分の配合比(質量基準)で混合することにより、感光性樹脂組成物溶液を得た。なお、表中、樹脂(1)は、酸変性ビスフェノールA型エポキシアクリレートの65質量%カルビトールアセテート/ソルベントナフサ溶液(ZAR−1035、日本化薬社製、商品名)である。また、樹脂(2)は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(カヤラッドDPHA、日本化薬社製、商品名)であり、樹脂(3)は、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(BPE−10、新中村化学工業社製、商品名)であり、(C)成分は2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(I−369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)である。
【0120】
また、BL3175はヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体の75質量%メチルエチルケトン溶液(BL3175、住化バイエルウレタン社製、商品名)であり、BL4265はイソホロンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体の75質量%メチルエチルケトン溶液(BL4265、住化バイエルウレタン社製、商品名)であり、BL−MDIは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体である。ESLV−80XYはビスフェノールF型の2官能エポキシ樹脂(ESLV−80XY、新日鐵化学社製、商品名)である。
【0121】
【表1】

【0122】
次いで、この感光性樹脂組成物溶液を支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(G2−16、帝人社製、商品名)上に均一に塗布することにより感光層を形成し、それを熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥した。感光層の乾燥後の膜厚は、25μmであった。
【0123】
続いて、感光層の支持体と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(NF−13、タマポリ社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性エレメントを得た。
【0124】
そして、12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基材(E−679、日立化成工業社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板の研磨した銅箔上に連続式真空ラミネータ(HLM−V570、日立化成工業社製、商品名)を用いて、ヒートシュー温度100℃、ラミネート速度0.5m/分、気圧4kPa以下、圧着圧力0.3MPaの条件の下、上記感光性エレメントを、その感光層と銅箔とが密着するようにポリエチレンフィルムを剥離しつつ積層し、評価用積層体を得た。
【0125】
[塗膜性の評価]
評価用積層体に対し、露光を行わずに該積層体のPETフィルムを剥離し、露出した感光層表面に指を軽く押し付け、指に対する張り付き程度を以下の基準で評価した。すなわち、指に対する張り付きが認められない、または、ほとんど認められないものは「A」とし、指に対する張り付きが認められるものは「B」とした。結果を表2に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
[はんだ耐熱性の評価]
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、ネガとして2mm角の矩形パターンを有するフォトツールとを評価用積層体のPETフィルム上に密着させ、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、該積層体のPETフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間スプレーして現像を行い、更に80℃で10分間加熱(乾燥)した。続いて、オーク製作所社製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で感光層に対する紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、2mm角の矩形開口部を有するソルダーレジストを形成した評価用基板を得た。
【0128】
次いで、該評価用基板にロジン系フラックス(MH−820V、タムラ化研社製、商品名)を塗布した後、260℃のはんだ浴中に30秒間浸漬してはんだ処理を行った。
【0129】
このようにしてはんだめっきを施された基板上のソルダーレジストのクラック発生状況並びに基板からのソルダーレジストの浮き程度及び剥離程度を目視により観察し、次の基準で評価した。すなわち、ソルダーレジストのクラックの発生が認められず、ソルダーレジストの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「B」とした。結果を表2に示す。
【0130】
[耐溶剤性の評価]
[はんだ耐熱性の評価]におけるものと同様にして得られた評価用基板に形成したソルダーレジストを、アセトン、メチルエチルケトン及びイソプロビルアルコール中で超音波洗浄を行った。洗浄後、ソルダーレジスト表面に変色が認められず、しかもソルダーレジストの溶解が認められなかったものを「A」、それらのいずれかが認められたものを「B」とした。結果を表2に示す。
【0131】
[耐アルカリ性の評価]
[はんだ耐熱性の評価]におけるものと同様にして得られた評価用基板に形成したソルダーレジストを、5%水酸化ナトリウム水溶液中に30分浸漬した。浸漬後、ソルダーレジスト表面に変色が認められず、しかもソルダーレジストの溶解が認められなかったものを「A」、それらのいずれかが認められたものを「B」とした。結果を表2に示す。
【0132】
[貯蔵安定性の評価]
上述のようにして得られた感光性エレメントを大気中、25℃で1ヶ月静置した。次いで、静置後の感光性エレメントを用いて上述と同様にして評価用積層体を得た。そして、[はんだ耐熱性の評価]におけるものと同様にして、2mm角の矩形開口部を有するソルダーレジストを形成した評価用基板を得た。評価用基板に形成されたソルダーレジストのパターンを実体顕微鏡で観察し、未露光部に樹脂の残存が認められないものを「A」、樹脂の残存が認められるものを「B」とした。結果を表2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明のプリント配線板の一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明ののプリント配線板の製造方法の一実施形態を示す模式工程図である。
【符号の説明】
【0134】
1…感光性エレメント、2…プリント配線板、3、4…プリント配線板用基材、5…フォトマスク、11…支持体、12、24…感光層、13…保護フィルム、21…回路パターンを有しない導体層、22…絶縁基板、23…回路パターンを有する導体層、26…開口部、241…ソルダーレジスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1);
【化1】

〔式中、Rはジグリシジルエーテル型エポキシ化合物残基である二価の有機基を示し、Rは二塩基酸残基である二価の有機基を示し、Rは水素原子又は下記一般式(2);
【化2】

(式中、Rは酸無水物残基を示す。)
で表される基を示す。〕
で表される繰り返し単位を有する樹脂と、
(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)ブロックイソシアネート化合物と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)下記一般式(3);
【化3】

〔式中、Rはジグリシジルエーテル型エポキシ化合物残基である二価の有機基を示し、Rは二塩基酸残基である二価の有機基を示し、Rは水素原子又は下記一般式(2);
【化4】

(式中、Rは酸無水物残基を示す。)
で表される基を示し、nは1以上の整数を示す。〕
で表される樹脂と、
(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)ブロックイソシアネート化合物と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂の重量平均分子量が10000〜80000である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により中間生成物を得る第一工程と、前記中間生成物に酸無水物を付加する第二工程と、を含む樹脂の製造方法により得られるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ブロックイソシアネート化合物が分子内に2個以上の下記式(5);
−NHCO− (5)
で表される2価の基を有するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ブロックイソシアネート化合物が分子内に下記式(6);
【化5】

で表される3価の基及び/又は芳香環を有するものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化体。
【請求項8】
前記感光性樹脂組成物を光照射及び加熱の両方の手段により硬化させて得られる、請求項7記載の硬化体。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える感光性エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−208824(P2006−208824A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21911(P2005−21911)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】