説明

感光性樹脂組成物、絶縁膜、保護膜および電子機器

【課題】i線に対する透過性、低温での硬化性、銅および銅合金の金属配線との密着性に優れる感光性樹脂組成物およびそれを用いた絶縁膜、保護膜、電子機器を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)と、感光剤(B)とを含む感光性樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(A)が、特定のビス(アミノフェノール)化合物を含み、さらに、前記ポリアミド樹脂(A)の側鎖および末端に、少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有することを特徴とする。また、絶縁膜6は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成され、保護膜3は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成され、電子機器は、上記に記載の保護膜3および絶縁膜6を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、絶縁膜、保護膜および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の小型化、高集積化による多層配線化、チップサイズパッケージ(CSP)、ウエハーレベルパッケージ(WLP)への移行等により、金属配線(汎用的には、銅及び銅合金など)の上に、表面保護膜および層間絶縁膜が直接形成される場合が多くなってきている。そのため、銅および銅合金などの配線との密着性が半導体素子への信頼性に大きな影響を与えるようになってきており、銅および銅合金等の配線とのより高度な密着性が望まれている。
【0003】
また、パッケージ特性および生産性の観点から、硬化膜の伸び率などの優れた機械特性を有しながら絶縁膜および保護膜の最終硬化温度が200〜300℃という低温で硬化処理できるものが望まれてきている。低温で硬化させることができると、高集積化した半導体素子等への熱によるダメージを与えることを防止することができ、かつ生産性も向上させることができるようになる。
【0004】
このような要求に対して、銅および銅合金との密着性を上げる為に、添加材成分を樹脂組成物に添加する方法があるが(例えば、特許文献1、2参照)、これでは十分な密着性を得ることはできていなかった。
また、従来の絶縁膜等を低温で硬化すると、半田ボール等を載せる際に使用されるフラックス等による処理の際に表面に皺やクラック等の外観の異常が発生してしまう場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−336125号公報
【特許文献2】特開2005−173528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、i線(365nm)に対する透過性、低温での硬化性、銅および銅合金の金属配線との密着性に優れる感光性樹脂組成物およびそれを用いた絶縁膜、保護膜、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(11)に記載の本発明により達成される。
(1)ポリアミド樹脂(A)と、感光剤(B)と、を含む感光性樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂(A)が下記一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有し、かつ、前記ポリアミド樹脂(A)の側鎖および末端に少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Aはアルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−
NHCO−、単結合、−C(CF32−から選ばれる有機基であり、Bは有機基である。R1はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり
、同一でも異なっても良い。R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ
基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。nは、2〜500である。)
(2)前記窒素含有環状化合物は、テトラゾール基を含むものである、(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3)前記テトラゾール基を有する窒素含有環状化合物は、式(2−1)および式(2−2)で示される化合物の少なくとも一方を含むものである、(2)に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

【化3】

(4)前記窒素含有化合物の含有量は、前記ポリアミド樹脂(A)全体の1.0〜10.0重量%である、(1)ないし(3)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(5)前記ポリアミド樹脂(A)の末端のいずれか一方が、三重結合を有する有機基である(1)ないし(4)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(6)前記ポリアミド樹脂(A)のR1が、アルキル基、又はアルコキシ基であり、かつ
、R2がアルキル基、又はアルコキシ基である、(1)ないし(5)のいずれかに記載の
感光性樹脂組成物。
(7)(1)ないし(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
(8)(1)ないし(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする保護膜。
(9)半導体素子または液晶表示素子の保護膜として用いられるものである(8)に記載
の保護膜。
(10)(8)または(9)に記載の保護膜を有することを特徴とする電子機器。
(11)(7)に記載の絶縁膜を有することを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、i線に対する透過性、低温での硬化性、銅および銅合金の金属配線との密着性に優れる感光性樹脂組成物およびそれを用いた絶縁膜、保護膜、電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、絶縁膜、保護膜および電子機器について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、感光剤(B)と、を含む感光性樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂(A)が一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有し、かつ、前記ポリアミド樹脂(A)の側鎖および末端に少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有することを特徴とする。
また、本発明の絶縁膜は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の保護膜は、上記に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の電子機器は、上記に記載の保護膜を有することを特徴とする。
また、本発明の電子機器は、上記に記載の絶縁膜を有することを特徴とする。
【0010】
【化4】

(式中、Aはアルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−
NHCO−、単結合、−C(CF32−から選ばれる有機基であり、Bは有機基である。R1はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり
、同一でも異なっても良い。R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ
基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。nは、2〜500である。)
【0011】
まず、感光性樹脂組成物、絶縁膜および保護膜について説明する。
図1に示すように、半導体装置10は、シリコンウエハー1と、シリコンウエハー1上(図1中の上側)の一部に設けられたアルミパッド2と、アルミパッド2を除くシリコンウエハー1の上部を覆うように設けられた保護膜3と、保護膜3の上側に形成された導体部4と、導体部4に接合されたバリアメタル5を残して導体部4を覆うように設けられた絶縁膜6と、バリアメタル5の上に設けられ外部電極との電気的接続を図るための半田バンプ7とを有している。
保護膜3は、パッシベーション膜31と、バッファーコート膜32とで構成されており、パッシベーション膜31がシリコンウエハー1に接合されている。パッシベーション膜31と、バッファーコート膜32とは、アルミパッド2が露出するように凹部33を有している。
導体部4は、バッファーコート膜32の上面および凹部33の内面に設けられる金属膜41と、凹部33を埋め込み、かつ半田バンプ7と電気的に接続するパッド部42とで構成されている。
バリアメタル5の下側は、パッド部42と接合されている。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述したような半導体装置10のバッファーコート膜32、絶縁膜6等に好適に用いられるものであるが、特に銅配線と直接に接する絶縁膜6に用いられることが好ましい。これにより、信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【0013】
このような感光性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、感光剤(B)とを含む樹脂組成物で構成され、ポリアミド樹脂(A)は、一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有し、かつ、前記ポリアミド樹脂(A)の側鎖および末端に少なくとも1つ以上窒素含有環状化合物を有することを特徴とすることにより、露光時のi線に対する透過性に優れる。さらに、感光性樹脂組成物を低温で硬化した場合でも、ポリアミド樹脂(A)の環化反応が進行しやすいため、耐熱性に優れた硬化膜を得ることができる。さらに、硬化膜の引っ張り伸び率等の機械特性を維持した状態で、銅および銅合金の金属配線との密着性を向上することができる。
【化5】

(式中、Aはアルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−
NHCO−、単結合、−C(CF32−から選ばれる有機基であり、Bは有機基である。R1はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり
、同一でも異なっても良い。R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ
基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。nは、2〜500である。)
【0014】
(ポリアミド樹脂)
次に、ベースとなるポリアミド樹脂(A)について説明する。
従来のポリベンゾオキサゾール誘導体構造を有するポリアミド樹脂では、i線に対する透過性と低温で硬化した際の環化率と、両方とも向上するものは無かった。これに対し本発明では、ポリアミド樹脂が、一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有するため、i線に対する透過性と低温で硬化した際の環化率と、両方とも向上することが可能となった。
i線に対する透過性が向上した理由は、芳香環上のアミノ基の隣接する部位(オルソ位)に置換基を有するため、置換基同士の立体障害によりR1を介した芳香環同士が折れ曲が
ることで平面構造が取り難くなり、電荷移動が起こり難くなったためと考えられる。また、低温で硬化した際に環化率が向上した理由は、アミノ基のオルソ位にある置換基(R1
)が立体的にポリアミド樹脂中のアミド結合を押しやり、アミド結合のカルボニル炭素とフェノール性水酸基の距離を接近させるためと考えられる。
【化6】

(式中、Aはアルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−
NHCO−、単結合、−C(CF32−から選ばれる有機基であり、Bは有機基である。R1はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり
、同一でも異なっても良い。R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ
基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。nは、2〜500である。)
【0015】
前記一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体は、一般式(4)で示されるビス(アミノフェノール)化合物とカルボン酸、又は、酸無水物、酸二無水物等のカルボン酸誘導体との反応により得ることができる。なお、カルボン酸としてジカルボン酸を使用する場合には、反応収率等を高めるため1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステルの型のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
【化7】

(式中、R6はアルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−NHCO−、単結合、−C(CF32−又は式(5)の群から選ばれる有機基である。R7はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、
同一でも異なっても良い。R8は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基
、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。)
【化8】

(式中、*は一般式(4)のアミノフェノール構造に結合することを示す。)
【0016】
本発明の、一般式(4)で示されるビス(アミノフェノール)化合物は、具体的には下記式(6)〜式(11)で示されるものが挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
【化9】

【0018】
【化10】

【0019】
【化11】

【0020】
【化12】

【0021】
【化13】

【0022】
【化14】

【0023】
これらビス(アミノフェノール)化合物の中でも、式6−1、7−4で示されるビス(アミノフェノール)が、環化率や低温硬化性に優れるため特に好ましい。
【0024】
低温で硬化した際の環化率をさらに高くする場合には、一般式(4)で示されるビス(アミノフェノール)のフェノール性水酸基のオルソ位(R8)にも水素原子ではなく、置
換基を有するビス(アミノフェノール)を用いることが、アミド結合のカルボニル炭素と水酸基の距離をより接近させると考えられ、さらに好ましい。
【0025】
一般式(4)で示されるビス(アミノフェノール)のR7がアルキル基、又はアルコキ
シ基であり、かつ、R8がアルキル基、又はアルコキシ基であるビス(アミノフェノール
)を用いることが、特に好ましい。これにより、i線に対する透過性と低温で硬化した際の環化率向上を両立した状態で、さらに、アルカリ水溶液に対して十分な溶解性を持つ、よりバランスに優れるポリアミド樹脂を得ることが可能となる。
【0026】
上記ビス(アミノフェノール)化合物の中でも、式6−2、7−3で示されるビス(アミノフェノール)が、環化率や低温硬化性に更に優れるため特に好ましい。
【0027】
一般式(4)で示されるビス(アミノフェノール)のR6のアルキレン、置換アルキレ
ンの具体的な例としては、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH32−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH3)−、−C(CH2CH3)(CH2CH3
−、−CH(CH2CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH3)−、−CH(C
H(CH32)−、−C(CH3)(CH(CH32)−、−CH(CH2CH2CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH2CH3)−、−CH(CH2CH(CH32)−
、−C(CH3)(CH2CH(CH32)−、−CH(CH2CH2CH2CH2CH3)−
、−C(CH3)(CH2CH2CH2CH2CH3)−、−CH(CH2CH2CH2CH2CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH2CH2CH2CH3)−等が挙げられる。こ
れらの中でも−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH32−が、i線に対する透過性と低温で硬化した際の環化率を両立した状態で、さらに、アルカリ水溶液に対して十分な溶解性を持つ、よりバランスに優れるポリアミド樹脂を得ることが可能となる。
【0028】
前記ポリアミド樹脂(A)としては、例えば、一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体と他のポリアミド系化合物の両方の構造を有していても良い。具体的に前記ポリアミド系化合物としては、ポリベンゾオキサゾール化合物およびポリイミド化合物の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル結合またはエステル結合を有するポリアミド系化合物、一般式(1)式で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体構造とは異なるポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリイミド前駆体、ポリアミド酸エステル構造を有するポリアミド系化合物等が挙げられる。このようなポリアミド系化合物としては、下記一般式(3)で示されるポリアミド系化合物を挙げることができる。
【化15】

【0029】
一般式(3)のDは環状化合物基であり、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピリジン類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(12)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらはi線に対する高透明性と、低温で硬化した際の環化率に影響しない程度に、必要により1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【化16】

【0030】
式(12)の中で特に好ましいものとしては、下記式(13)で表されるものが挙げられる。
【化17】

【0031】
一般式(3)のEは環状化合物基であり、特に制限されるものではないが、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、酸無水物、酸ニ無水物、シロキサン化合物等が
挙げられ、具体的には下記式(14)および式(15)のカルボン酸が例示される。
【0032】
【化18】

【化19】

【0033】
具体的には下記式(16)〜式(17)で示されるものが挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
【化20】

【0035】
【化21】

【0036】
また、前記カルボン酸として、カルボキシル基を3個以上有する化合物、酸無水物基を1個およびカルボキシル基を1つ以上有する化合物、酸無水物基を2個有する化合物を用い、窒素含有環状化合物を導入した後に、一般式(4)で示されるビス(アミノフェノール)化合物、式(12)で示される化合物郡と反応しても良い。これにより、金属配線(特に銅配線)等との密着性を向上させることが可能となる。この前記窒素含有環状化合物としては、例えばピロール、3−ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、トリアゾール、テトラゾル、1,3,4−チアジアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、1,3,5−トリアジン、インドール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キノキサリン、カルバゾール、アクリジン、フェノチアジン等の構造を含む基が挙げられ、その中でもテトラゾル構造を有する基が好ましい。具体的には、(1H−テトラゾル−5−イル)アミノ基、1−(1H−テトラゾル−5−イル)メチルアミノ基、3−(1H−テトラゾル−5−イル)ベンズアミノ基等が挙げられる。この場合、一般式(1)で示されるポリアミド樹脂(A)の側鎖に窒素含有環状化合物を有することになる。
【0037】
前記ポリアミド樹脂(A)は、側鎖および末端に少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有することを特徴とする。これにより、金属配線(特に銅配線)等との密着性に優れる。
前記窒素含有環状化合物としては、例えばピロール、3−ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、2−ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、トリアゾール、テトラゾル、1,3,4−チアジアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、1,3,5−トリアジン、インドール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キノキサリン、カルバゾール、アクリジン、フェノチアジン等の構造を含む基が挙げられ、その中でもピラゾール、トリアゾール、テトラゾル構造を有する基が好ましい。具体的には1−(5−1H−トリアゾイル)メチルアミノ基、3−(1H−ピラゾイル)アミノ基、4−(1H−ピラゾイル)アミノ基、5−(1H−ピラゾイル)アミノ基、1−(3−1H−ピラゾイル)メチルアミノ基、1−(4−1H−ピラゾイル)メチルアミノ基、1−(5−1H−ピラゾイル)メチルアミノ基、(1H−テトラゾル−5−イル)アミノ基、1−(1H−テトラゾル−5−イル)メチルアミノ基、3−(1H−テトラゾル−5−イル)ベンズアミノ基等が挙げられる。これらの中でも式(2−1)および式(2−2)で示される化合物が好ましい。これにより、特に銅および銅合金の金属配線との密着性をより向上することができる。
【0038】
【化22】

【化23】

【0039】
このように本発明のポリアミド樹脂(A)は、側鎖および末端に少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有している。これにより硬化膜の金属配線との密着性に優れているものである。
その理由としては、ポリアミド樹脂(A)の側鎖および末端に少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有するため、その窒素含有環状化合物が銅および銅合金の金属配線と反応するためである。
これに対して、単純に窒素含有化合物を感光性樹脂組成物に添加する方法では、ポリアミド樹脂(A)自身が銅および銅合金の金属配線と反応しないので十分な密着性を得ることが困難となる。つまり、窒素含有化合物を添加した場合に銅および銅合金の金属配線と十分な密着性を得る為には、窒素含有化合物の銅および銅合金の金属配線との反応と、窒素含有化合物とポリアミド樹脂(A)との両方の反応が十分に行われなければならないが、通常、窒素含有化合物を単純に添加する方法では、窒素含有化合物とポリアミド樹脂(
A)との反応が不十分となるものである。
本発明のポリアミド樹脂(A)では、側鎖および末端に少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有する(すなわち、樹脂骨格に窒素含有化合物を有する)ので、窒素含有環状化合物と銅および銅合金の金属配線が反応し優れた密着性を得ることが可能となるものである。
【0040】
また、本発明のポリアミド樹脂(A)は、感光性樹脂組成物硬化膜の引っ張り伸び等の機械特性を向上させる目的で、ポリアミド樹脂(A)の一方の末端に不飽和基を導入してもよい。このような不飽和基としては、例えばアルケニル基、アルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基、環式化合物基を含む酸無水物が挙げられる。これにより、硬化膜の機械特性を向上することができる。このような、アミノ基と反応した後のアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基を含む酸無水物に起因する基としては、例えば式(18)で示されるアルケニル基を有する基、式(19)で示されるアルキニル基を有する基等を挙げることができる。
【0041】
【化24】

【0042】
【化25】

【0043】
これらの中で特に好ましいものとしては、式(20)より選ばれるものであり、これらは 2種以上用いても良い。これにより、特に硬化膜の機械特性を向上することができる。
【化26】

【0044】
(感光剤)
次に、感光剤(B)について説明する。前記感光性樹脂組成物は、感光剤(B)を含む。これにより、紫外線等の照射により化学反応を生じアルカリ水溶液に溶解しやすくなり
、溶解度の差異を設けることができる。
前記感光剤(B)としては、例えばフェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、式(21)〜式(24)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは2種以上用いても良い。なお、式(21)〜(24)中のQは、水素原子または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル基または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニル基を示す。
【0045】
【化27】

【0046】
【化28】

【0047】
【化29】

【0048】
【化30】

【0049】
【化31】

【0050】
式中Qは、水素原子、式(25)、式(26)のいずれかから選ばれるものである。ここで各化合物のQのうち、少なくとも1つは式(25)、式(26)である。
前記感光剤(B)の含有量は、前記感光性樹脂組成物全体の1〜50重量%が好ましく、特に5〜30重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に感度に優れる。
【0051】
前記感光性樹脂組成物は、特に限定されないが、さらにフェノール性水酸基を有する化合物を併用することが好ましい。これにより、より高感度にすることができる。さらに、現像時に現像残り(スカム)無く高解像度でパターニングできる。
このような、フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、式(27)〜式(3 3)で示されるものを挙げることができる。
【0052】
【化32】

【0053】
【化33】

【0054】
【化34】

【0055】
【化35】

【0056】
【化36】

【0057】
【化37】

【0058】
【化38】

【0059】
これらのフェノール性水酸基を有する化合物の中でも、式(34)より選ばれるものが好ましい。これらは、2種以上用いても良い。これにより、特に感度を向上することができる。
【化39】

【0060】
前記フェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、特に1〜20重量部が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に感度に優れる。
【0061】
前記感光性樹脂組成物には、必要によりレベリング剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤およびそれらの各反応物等の添加剤を添加することができる。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤に溶解し、ワニス状にして使用することが好ましい。溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0063】
次に、絶縁膜、保護膜および電子機器について説明する。
本発明の絶縁膜および保護膜は、例えば下記の工程を経て得ることができる。
上述した感光性樹脂組成物を支持体(例えばシリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等)に塗布する(塗布工程)。塗布量は、半導体素子上に塗布する場合、硬化後の膜の厚さが、例えば0.1〜30μmになるよう塗布する。膜の厚さが前記下限値を下回ると半導体素子の保護(表面)膜としての機能を十分に発揮することが困難となる場合があり、前記上限値を越えると微細な加工パターンを得ることが困難となる場合がある。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等を挙げることができる。
【0064】
次に、例えば60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する(照射工程)。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、例えば200〜500nmの波長のものが好ましい。
【0065】
次に、化学線を照射した部分を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る(現像工程)。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナト
リウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等といったアルカリ類の水溶液およびこれにメタノール、エタノール等のアルコール類の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、例えばスプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0066】
次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンス(洗浄)する(リンス工程)。リンス液としては、例えば蒸留水を使用する。
【0067】
次に、加熱処理を行い、閉環構造(例えばオキサゾール環、イミド環等)を形成し、耐熱性に富む最終パターンを得る(加熱工程)。この加熱工程により、上述の樹脂組成物の硬化物とすることができる。
加熱処理温度は、特に限定されないが、150〜400℃が好ましく、特に200〜300℃が好ましい。
【0068】
このようにして得られた上述の感光性樹脂組成物の硬化物は、硬化物を形成する支持体によって、半導体素子の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート膜、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜、表示装置における素子の層間絶縁膜等として用いることができる。
【0069】
前記保護膜の厚さは、特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましく、特に1〜30μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に加工性と保護膜の膜物性とのバランスに優れる。
【0070】
半導体装置用途として具体的に説明すると、半導体素子上に上述の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を形成して得られるパッシベーション膜、半導体素子上に形成されたパッシベーション膜上に上述の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を形成して得られるバッファーコート膜、半導体素子上に形成された回路上に上述の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を形成して得られる層間絶縁膜等を挙げることができる。
【0071】
また、表示装置用途として具体的に説明すると、TFT用層間絶縁膜、TFT素子平坦化膜、カラーフィルター平坦化膜、MVA型液晶表示装置用突起、有機EL素子用陰極隔壁等が挙げられる。その使用方法は、半導体用途に順じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板上にパターン化された感光性樹脂組成物の硬化物で構成される膜を、上記の方法で形成することによる。表示装置用途、特に層間絶縁膜や平坦化膜には、高い透明性が要求されるが、この感光性樹脂組成物の層を硬化する前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた膜が得られることもでき、実用上更に好ましい。
【0072】
本発明の電子機器は、上述した保護膜および/または絶縁膜を有するものであり、具体的には半導体装置、液晶表示装置、有機EL素子用装置、多層回路の層間絶縁膜等が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
1.ポリアミド樹脂(A−1)の合成
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸17.8g(77.8ミリモル)と、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール23.3g(155.6ミリモル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物38.3g(77.8ミリモル)と、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2、5−ジメチルフェニル)メタン18.0g(62.9ミリモル)と5−アミノ−1H−テトラゾール3.2g(37.5ミリモル)を温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)315.0gを加えて溶解させ、室温にて2時間攪拌を行った。その後、オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、ポリアミド樹脂(A−1)を得た(窒素含有環状化合物の含有量5.4重量%)。
【0074】
2.感光剤の合成
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン51g(120ミリモル)と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド72.5g(270ミリモル)をテトラヒドロフラン450mlに溶解し、トリエチルアミン28.3g(280ミリモル)を滴下する。室温で20時間反応させた後、析出したトリエチルアミンの塩酸塩を濾別除去し、イオン交換水10Lに投入し、沈殿物を得た。この沈殿物を凝集し、室温で48時間真空乾燥させた。これを感光剤(B−1)とする。
【0075】
3.感光性樹脂組成物の製造
合成したポリアミド樹脂(A−1)100gと、感光性ジアゾキノン(B−1)17gとを、γ−ブチロラクトン300gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0076】
(実施例2)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(A−2)の合成
実施例1において、5−アミノ−1H−テトラゾール3.2g(37.5ミリモル)の代わりに3−(1H−テトラゾル−5−イル)アニリン6.0g(37.5ミリモル)とした以外は全て実施例1と同様の処理を行いポリアミド樹脂(A−2)を得た(窒素含有環状化合物の含有量9.6重量%)。
【0077】
(実施例3)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(A−3)の合成
実施例1において5−アミノ−1H−テトラゾールを1.6g(18.7ミリモル)とした以外は同様にして、75℃で12時間反応させた後次に、NMP11.5gに溶解させた5−エチニル−イソベンゾフラン−1,3−ジオン3.2g(18.7ミリモル)を加え2時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、ポリアミド樹脂(A−3)を得た(窒素含有環状化合物の含有量2.6重量%)。
【0078】
(実施例4)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(A−4)の合成
実施例3のポリアミド樹脂の合成において、5−アミノ−1H−テトラゾールを0.6g(7.5ミリモル)、5−エチニル−イソベンゾフラン−1,3−ジオンを5.2g(
30.0ミリモル)とした以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂(A−4)を得た(窒素含有環状化合物の含有量1.0重量%)。
【0079】
(実施例5)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(A−5)の合成
実施例3のポリアミド樹脂の合成において、5−アミノ−1H−テトラゾールを4.0g(30.0ミリモル)、5−エチニル−イソベンゾフラン−1,3−ジオンを0.5g(7.5ミリモル)とした以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂(A−5)を得た(窒素含有環状化合物の含有量6.6重量%)。
【0080】
(実施例6)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(A−6)の合成
実施例1のポリアミドの合成において、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2、5−ジメチルフェニル)メタン18.0g(62.9ミリモル)を11.8g(41.3ミリモル)とし、更にビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル5.0g(21.5ミリモル)とした以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂(A−6)を得た(窒素含有環状化合物の含有量1.5重量%)。
【0081】
(実施例7)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(A−7)の合成
実施例6のポリアミドの合成において、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル5.0g(21.5ミリモル)をビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン5.0g(21.5ミリモル)とした以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂(A−7)を得た(窒素含有環状化合物の含有量3.1重量%)。
【0082】
(比較例1)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(a−1)の合成
実施例1において、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2、5−ジメチルフェニル)メタン18.0g(62.9ミリモル)をヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン16.2g(62.9ミリモル)、5−アミノ−1H−テトラゾールを1.2g(37.5ミリモル)をとした以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂(a−1)を得た(窒素含有環状化合物の含有量2.2重量%)。
【0083】
(比較例2)
ポリアミド樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ポリアミド樹脂(a−2)の合成
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸14.7g(64.4ミリモル)と、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール19.2g(128.8ミリモル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物31.7g(64.4ミリモル)と、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2、5−ジメチルフェニル)メタン22.4g(78.2ミリモル)を温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)185.5gを加えて溶解させ、室温にて2時間攪拌を行った。その後、オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。次に、NMP11.5gに溶解させた5−エチニル−イソベンゾフラン−1,3−ジオン5.9g(34.6ミリモル)を加え2時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投
入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、ポリアミド樹脂(a−2)を
得た(窒素含有環状化合物の含有量0.0重量%)。
【0084】
各実施例および各比較例で得られた感光性樹脂組成物について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
【表1】

1.銅配線との密着性
シリコンウエハー上にTiを500Åの厚みでスパッタ膜を形成し、続いてCuを3,000Åの厚さでスパッタ膜を形成した。各実施例および各比較例で得られたポジ型感光性樹脂組成物を上記のCu上に硬化後5μmになるようにスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分間乾燥し、次にクリーンオーブンを用いて酸素濃度1,000ppm以下で、250℃/90分で硬化を行い、硬化膜(保護膜)を得た。この硬化膜にカッターナイフにて1×1(mm)サイズの正方形が縦横10列ずつ計100個の碁盤目になるように作成した。このサンプルをPCT(プレッシャークッカー)試験;125℃100%0.2MPaの条件下500時間連続処理した後、先の碁盤目を粘着テープで密着させ、一気に引き上げその剥がれた数を数えた。
【0085】
2.機械特性
各実施例および各比較例で得られたポジ型感光性樹脂組成物を硬化後10μmになるように6インチシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分間乾燥し、次にクリーンオーブンを用いて酸素濃度1,000ppm以下で、250℃/90分で硬化を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜をウェハーごとにダイシングソーで10mmの短冊状にカットした後、2%のフッ化水素水に浸漬することによって、ウェハーから剥離した短冊状のフィルムを得た。次に引っ張り試験器にて短冊状のフィルムを、引張り測定機にて5mm/分の速度にて引張り測定を行い、引っ張り伸び率を評価した。
【0086】
3.現像性
各実施例および各比較例で得られたポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分間乾燥し、膜の厚さ約5μmの保護膜を得た。この保護膜に凸版印刷(株)製マスク(テストチャートNo.1:幅0.88〜50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して高圧水銀灯を用いて紫外光線を、露光量を変化させて照射した。
次に、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に80秒間浸漬することによって露光部を溶解除去した後、純水で30秒間リンスした後、50μm幅の抜きパターンを観察した(評価は、n=10で行った)。各符号は、以下の通りである。
◎:全てのサンプルが、スカム無くパターン加工されていた。
○:7〜9個のサンプルが、スカム無くパターン加工されていた。
△:開口部周辺に若干スカムが見られるが、パターン加工はされていた。
×:スカムが非常に多い、またはパターン加工されていなかった。
【0087】
4.フラックス耐性
上記パターン加工したシリコンウエハーをクリーンオーブンにて酸素濃度1,000ppm以下で、250℃/90分で硬化を行った。次に、このウエハーにタムラ化研(株)製フラックス、BF−30をスピンナーで500rpm/5秒+1,000rpm/30秒間の条件で塗布した。リフロー炉で140〜160℃/100秒(プレヒート)、250℃/10秒の条件で立て続けに連続2回通した。次に、40℃に加熱したキシレンで10分洗浄した後、イソプロピルアルコールでリンスして乾燥させた。フラックスを除去した膜表面を金属顕微鏡で観察した(評価は、n=10で行った)。各符号は、以下の通りである。
◎:全てのサンプルが、全面にシワが無かった。
○:7〜9個のサンプルにおいて、全面にシワが無かった。
△:シワが一部に有った。
×:シワが全面に有った。
【0088】
表1から明らかなように、実施例1〜7では、保護膜の剥離が0であり、銅との密着性に優れていることが示された。
また、実施例1〜7は、引っ張り伸び率にも優れており、膜物性にも優れていた。
また、実施例1〜7は、現像性にも特に優れていた。
また、実施例1〜7は、フラックス耐性にも優れており、低温250℃の低温で硬化させても保護膜にシワ等の発生が無く、低温硬化性に優れていることが示された。
【0089】
また、各実施例で得られた感光性樹脂組成物を半導体素子上に塗布した。この塗布した感光性樹脂組成物を、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に紫外線を照射した。次に、紫外線照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得た後、加熱処理を行い、保護膜(絶縁膜としても機能する)を得た。保護膜を形成後、半田ボールを形成しチップのダイシング工程、チップの基板への搭載工程、半導体の封止成形工程を経て半導体装置を得た。
このようにして得られた半導体装置を搭載した電子機器は、正常に動作した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体分野または液晶等に代表される表示素子分野において保護膜、絶縁膜等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、半導体装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 シリコンウエハー
2 アルミパッド
3 保護膜
31 パッシベーション膜
32 バッファーコート膜
33 凹部
4 導体部
41 金属膜
42 パッド部
5 バリアメタル
6 絶縁膜
7 半田バンプ
10 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)と、感光剤(B)と、を含む感光性樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂(A)が下記一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有し、かつ、前記ポリアミド樹脂(A)の側鎖および末端に少なくとも1つ窒素含有環状化合物を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Aはアルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−
NHCO−、単結合、−C(CF32−から選ばれる有機基であり、Bは有機基である。R1はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり
、同一でも異なっても良い。R2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ
基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。nは、2〜500である。)
【請求項2】
前記窒素含有環状化合物は、テトラゾール基を含むものである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記テトラゾール基を有する窒素含有環状化合物は、式(2−1)および式(2−2)で示される化合物の少なくとも一方を含むものである、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

【化3】

【請求項4】
前記窒素含有化合物の含有量は、前記ポリアミド樹脂(A)全体の1.0〜10.0重量%である、請求項1ないし3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂(A)の末端のいずれか一方が、三重結合を有する有機基である請求項1ないし4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂(A)のR1がアルキル基、又はアルコキシ基であり、かつ、R2がアルキル基、又はアルコキシ基である、請求項1ないし5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする保護膜。
【請求項9】
半導体素子または液晶表示素子の保護膜として用いられるものである請求項8に記載の保護膜。
【請求項10】
請求項8または9に記載の保護膜を有することを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項7に記載の絶縁膜を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−75546(P2009−75546A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114982(P2008−114982)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】