説明

感光性樹脂組成物用基剤

【課題】好適な硬度および弾性ならびに優れた耐久性および耐薬品性を付与し、硬化性および現像性に優れた感光性樹脂組成物用基剤およびそれが用いられた感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】式(I):
−OCOCH(R)CHSR (I)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を示す)
で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂および該エチレン性不飽和基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物用基剤、ならびに式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物用基剤、多官能性モノマー、および光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物用基剤に関する。さらに詳しくは、感光性樹脂組成物の樹脂成分として好適に使用しうる感光性樹脂組成物用基剤およびそれが用いられた感光性樹脂組成物に関する。本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、インキ、接着剤、絶縁材料、電子材料などに好適に使用しうるものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感光性樹脂組成物の基剤として用いられている樹脂成分は、光硬化性のためのエチレン性不飽和基および現像性を付与するためのカルボキシル基を有する。カルボキシル基を有する樹脂成分が用いられたネガ型感光性樹脂組成物は、露光および現像のプロセスを経て、所望のパターンを形成するために用いられている。
【0003】
近年、感光性樹脂には、様々な特性の向上が求められており、例えば、硬度、弾性、耐水性および耐薬品性を向上させるために、ガラス転移温度や架橋密度が高い樹脂が要求されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ガラス転移温度や架橋密度を高くした場合、現像性が低下する傾向があるため、カルボキシル基数を増やす必要があるが、その反面、耐水性および耐薬品性が低下するという欠点がある。
【特許文献1】特開平10-31308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、好適な硬度および弾性ならびに優れた耐久性および耐薬品性を付与し、硬化性および現像性に優れた感光性樹脂組成物用基剤およびそれが用いられた感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1) 式(I):
−OCOCH(R)CHSR (I)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を示す)
で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物用基剤、
(2) 式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物用基剤、多官能性モノマー、および光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、ならびに
(3)式(I):
−OCOCH(R)CHSR (I)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を示す)
で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、好適な硬度および弾性ならびに優れた耐水性および耐薬品性を付与し、硬化性および現像性に優れた感光性樹脂組成物用基剤、およびそれが用いられた感光性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物用基剤には、式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂が用いられている点に、1つの大きな特徴がある。本発明の感光性樹脂組成物用基剤は、式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂が用いられているので、好適な硬度および弾性を有する硬化物を形成し、しかも形成された硬化物は、耐水性および耐薬品性にも優れるという効果が奏される。さらに、本発明の感光性樹脂組成物用基剤は、硬化性および現像性にも優れているので、感光性樹脂組成物に好適に使用しうるものである。
【0009】
式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂において、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基である。Rに用いられる好適な炭素数1〜12の炭化水素基の代表例としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基などが挙げられる。これらのなかでは、炭素数1〜4のアルキル基および炭素数6〜10のアリール基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基および炭素数6〜10のアリール基がより好ましい。
【0010】
式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂の重量平均分子量は、現像性および感光性の観点から、2000〜100000、好ましくは2500〜60000、より好ましくは3000〜50000である。
【0011】
式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂の二重結合当量は、感光性および耐薬品性の観点から、170〜600、好ましくは180〜500、より好ましくは180〜400である。
【0012】
式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂の酸価は、現像性および耐薬品性の観点から、好ましくは5〜150mgKOH/g、より好ましくは10〜100mgKOH/gである。
【0013】
式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂は、例えば、エチレン性不飽和基含有樹脂と式(II):
HSR (II)
(式中、Rは前記と同じ)
で表されるメルカプト化合物を反応させることによって調製することができる。
【0014】
前記エチレン性不飽和基含有樹脂の重量平均分子量は、現像性および感光性の観点から、1000〜80000、好ましくは1500〜50000、より好ましくは2000〜40000である。
【0015】
また、前記エチレン性不飽和基含有樹脂の二重結合当量は、感光性および耐薬品性の観点から、170〜600、好ましくは180〜500、より好ましくは180〜400である。
【0016】
前記エチレン性不飽和基含有樹脂は、式(II)で表されるメルカプト化合物と反応するための官能基として、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などの官能基を有する。
【0017】
前記エチレン性不飽和基含有樹脂は、例えば、エポキシ基含有樹脂と、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を有する化合物とを反応させることによって調製することができる。
【0018】
エポキシ基含有樹脂は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などの一般に感光性樹脂組成物の原料として用いられているエポキシ樹脂であってもよく、以下の製造法によって製造されたものであってもよい。
【0019】
エポキシ基含有樹脂の製造法としては、例えば、エポキシ基含有単量体を含有する単量体組成物を重合させる方法などが挙げられる。
【0020】
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」および/または「メタクリ」を意味する。
【0022】
単量体組成物は、エポキシ基含有単量体のみで構成されていてもよく、あるいはエポキシ基含有単量体以外にも、必要によりエポキシ基含有単量体と共重合可能な単量体を含有するものであってもよい。
【0023】
エポキシ基含有単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのエステル部分の炭素数が1〜4の脂肪族(メタ)アクリレート、トリシクロデシルメタクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどのエステル部分の炭素数が6〜12の芳香族(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート、スチレンおよびスチレン誘導体、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミドなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
なお、感光性樹脂組成物用基剤の感光性を高める観点から、単量体組成物におけるエポキシ基含有単量体の含有量は、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%であり、エポキシ基含有単量体と共重合可能な単量体の含有量は、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜50重量%である。
【0025】
好適なエポキシ基含有樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート単独重合体、グリシジル(メタ)アクリレート-メチル(メタ)アクリレート共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート-シクロヘキシルマレイミド共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート-トリシクロデシル(メタ)アクリレート共重合体、ジシクロペンタニルノボラックエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、パラヒドロキシスチレンなどの不飽和フェノールなどが挙げられる。これらのなかでは、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0027】
エポキシ基含有樹脂と、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を有する化合物を有する化合物との割合は、通常、両者の反応性を高める観点および残存モノマー量を低減させる観点から、エポキシ基含有樹脂1モルあたり、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を有する化合物0.9〜1.2モル、好ましくは0.95〜1.1モルであることが望ましい。
【0028】
また、前記エチレン性不飽和基含有樹脂として、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸や、パラヒドロキシスチレンなどのフェノール性水酸基を有する単量体を重合させることによって得られた重合体に、該重合体100重量部あたり5〜50重量部の割合で、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有単量体を付加反応させることによって得られるエチレン性不飽和基含有樹脂、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体を重合させることによって得られた重合体に、該重合体100重量部あたり5〜100重量部の割合で、(メタ)アクリロイルオキシエイチル(メタ)アクリレートなどのイソシアネート含有単量体を付加させることによって得られるエチレン性不飽和基含有樹脂、および(メタ)アクリロイルオキシエイチル(メタ)アクリレートなどのイソシアネート含有単量体を重合させることによって得られた重合体に、該重合体100重量部あたり5〜80重量部の割合で、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシメタクリレートなどの水酸基を有する単量体を付加させることによって得られるエチレン性不飽和基含有樹脂は、該エチレン性不飽和基含有樹脂を調製する際の二重結合当量や分子量の制御が容易であるので、好ましい。
【0029】
エチレン性不飽和基含有樹脂と反応させる式(II)で表される化合物において、R2は、前記と同じである。
【0030】
式(II)で表される化合物としては、例えば、メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、o-メルカプト安息香酸、2-メルカプトニコチン酸、メルカプトコハク酸などのメルカプト化合物が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
式(II)で表されるメルカプト化合物の量は、得られる式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂の現像性および耐薬品性を高めるとともに、両者の反応性を安定化させる観点から、エチレン性不飽和基含有樹脂100重量部あたり、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0032】
エチレン性不飽和基含有樹脂と式(II)で表されるメルカプト化合物との反応は、溶媒を用いずに行なってもよいが、必要に応じて、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピレングリコール、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジイソプロピルエーテル、ジグライムなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などの有機溶媒の存在下で行なってもよい。
【0033】
また、反応の際には、例えば、トリフェニルホスフィンなどのリン化合物、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類およびその四級塩などの触媒を用いることができる。触媒の量は、通常、式(II)で表されるメルカプト化合物1モルあたり、0.001〜0.3モル程度であることが好ましい。
【0034】
反応雰囲気および反応温度には、特に限定がないが、通常、反応雰囲気は、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。また、反応温度は、通常、40〜100℃程度であることが好ましい。
【0035】
反応の終点は、例えば、ヨードメトリー滴定法にて、式(II)で表されるメルカプト化合物のメルカプト基の残存量が0.1重量%以下となったときとすることができる。
【0036】
かくして、エチレン性不飽和基含有樹脂と式(II)で表されるメルカプト化合物とを反応させることにより、式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂が得られる。
【0037】
式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂の好適な例としては、グリシジル(メタ)アクリレート単独重合体、グリシジル(メタ)アクリレート-メチル(メタ)アクリレート共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート-シクロヘキシルマレイミド共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート-トリシクロデシル(メタ)アクリレート共重合体、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタニルノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物にチオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸またはメルカプトコハク酸を付加した樹脂、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート単独重合体、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート-メチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート-トリシクロデシル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート-シクロヘキシルマレイミド共重合体のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート付加物のチオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸またはメルカプトコハク酸を付加した樹脂、(メタ)アクリル酸-シクロヘキシルマレイミド共重合体、(メタ)アクリル酸-トリシクロデシル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体のグリシジル(メタ)アクリレート付加物にチオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸またはメルカプトコハク酸を付加した樹脂などが挙げられる。
【0038】
式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂の酸価は、現像性および耐薬品性の観点から、好ましくは5〜140mgKOH/g、より好ましくは10〜80mgKOH/gである。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物用基剤は、式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂を含有するものである。本発明の感光性樹脂組成物用基剤は、式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂のみで構成されていてもよく、あるいは本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の樹脂が含有されていてもよい。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物は、式(I)で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物用基剤、多官能性モノマー、および光重合開始剤を含有するものである。
【0041】
感光性樹脂組成物における感光性樹脂組成物用基剤の含有量は、光硬化性、タック性、耐薬品性および現像性の観点から、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは2〜50重量%である。
【0042】
多官能性モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチルールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
感光性樹脂組成物における架橋性モノマーの含有量は、光硬化性、タック性、耐薬品性および現像性の観点から、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%である。
【0044】
光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル(4-ドデシル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノンなどのアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン系光重合開始剤、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤、2-(2,3-ジクロロフェニル)-4,5-ビス(3-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(2,3-ジクロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体などのイミダゾール系光重合開始剤、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
【0045】
感光性樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、光硬化性の観点から、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜25重量%である。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要により、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピレングリコール、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジイソプロピルエーテル、ジグライムなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0047】
有機溶媒の量は、特に限定がないが、通常、本発明の感光性樹脂組成物の粘度および塗布性の観点から、感光性樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは100〜800重量部、より好ましくは150〜500重量部である。
【0048】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤などの添加剤を適量で添加することができる。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬度、弾性、耐久性、・耐薬品性および現像性に優れているので、例えば、インキ、接着剤、絶縁材料、電子材料などに好適に用いることができる。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物を基材に塗布する場合、その塗布方法としては、例えば、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、浸漬法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物を適用しうる基材としては、例えば、鉄、銅、ステンレス鋼などの金属製基材、ガラス製基材、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステルなどの樹脂製基材などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0052】
また、本発明の感光性樹脂組成物の塗布後の塗膜の厚さは、その用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.1〜50μm程度であることが好ましい。
【実施例】
【0053】
次に本発明を実施例などに基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例などに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
(1)感光性樹脂Aの調製
内容量が2リットルの5つ口反応容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート544g、グリシジルメタクリレート284g、メチルメタクリレート71gおよびアゾビスイソブチロニトリル17gを加え、窒素ガスを吹き込みながら、80℃で6時間加熱し、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体のポリマー溶液を得た。
【0055】
次に、得られたポリマー溶液に、アクリル酸144g、メトキノン0.04gおよびトリフェニルフォスフィン0.4gを加え、空気を吹き込みながら100℃で24時間加熱し、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体のアクリル酸付加物を含む反応混合物を得た。
【0056】
次に、得られた反応混合物に、メルカプト酢酸45gおよびN,N-ジメチルベンジルアミン0.5gを加え、50℃で24時間加熱することにより、感光性樹脂Aの反応溶液(感光性樹脂Aの固形分含量:50重量%)を得た。
【0057】
この反応溶液5gをシクロヘキサン50g中に滴下し、感光性樹脂Aを析出させ、析出した感光性樹脂Aをシクロヘキサンにて洗浄し、乾燥させることにより、粉体の感光性樹脂Aを得た。得られた感光性樹脂Aの赤外吸収(IR)スペクトルおよび核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを以下の方法にしたがって測定した。その結果をそれぞれ図1および図2に示す。
【0058】
〔赤外吸収(IR)スペクトル〕
赤外吸収(IR)スペクトル測定装置〔(株)島津製作所製、品番:FTIR-4200〕を用い、液膜法(塩化ナトリウム板)にて測定した。
【0059】
〔核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル〕
核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル測定装置〔日本電子(株)製、品番:JNM-AL300〕を用い、300MHz、内部標準TMS、重クロロホルムにて測定した。
【0060】
また、得られた感光性樹脂Aの元素分析を行った。その結果を以下に示す。
〔元素分析〕
ジェイサイエンスラボ(株)製、商品名:マイクロコーダーJM10型を用いて測定した。
計算値:C54.0重量%、H6.6重量%、S2.9重量%
実測値:C54.7重量%、H6.8重量%、S2.3重量%
【0061】
次に、得られた感光性樹脂Aの酸価、二重結合当量および重量平均分子量を以下の方法に基づいて測定した。その結果を表1に示す。
【0062】
〔酸価〕
0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液にて、指示薬にフェノールフタレインを用いて測定した。
【0063】
〔二重結合当量〕
感光性樹脂の二重結合当量は、式:
〔二重結合当量〕
=〔感光性樹脂Aの樹脂固形分量÷(エチレン性不飽和基を有する樹脂を製造する際に付加させた単量体のモル数−エチレン性不飽和基を有する樹脂に付加させた、式(II)で表されるメルカプト化合物のメルカプト基のモル数)〕
に基づいて求めた。
【0064】
〔重量平均分子量〕
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8120、カラム:G-5000HXLおよびG-3000HXLの2連結、検出器:RI〕にて測定した。
【0065】
以上の結果より、得られた感光性樹脂Aは、3-アクリロイル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートの繰り返し単位74モル%およびメチルメタクリレートの繰り返し単位26モル%からなるランダム共重合体であり、メルカプト酢酸がアクリロイル基に付加しており、重量平均分子量30000を有することがわかる。
【0066】
(2)感光性樹脂組成物Aの調製
前記で得られた感光性樹脂Aの反応溶液を、その溶液から感光性樹脂Aを単離せずにそのままの状態で、感光性樹脂組成物用基剤として用いた。この感光性樹脂Aの反応溶液200重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン〔チバガイギー社製、商品名:イルガキュアー907〕15重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)400重量部を混合することにより、感光性樹脂組成物Aを得た。
【0067】
実施例2
(1)感光性樹脂Bの調製
内容量が1リットルの5つ口反応容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート419g、フェノールノボラックエポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名:EPPN-201(エポキシ当量:190)〕264g、アクリル酸100g、メトキノン0.07gおよびトリフェニルフォスフィン1.8gを加え、空気を吹き込みながら100℃で48時間加熱し、ノボラック樹脂のアクリル酸付加物の反応混合物を得た。
【0068】
次に、得られた反応混合物に、メルカプト安息香酸55gを加え、70℃で24時間加熱し、感光性樹脂Bの反応溶液を得た(感光性樹脂Bの固形分含量:50重量%)。
【0069】
得られた感光性樹脂Bの酸価、二重結合当量および重量平均分子量を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0070】
以上の結果より、得られた感光性樹脂Bは、3-アクリロイル-2-ヒドロキシプロピルオキシベンゼンの縮合体であり、メルカプト安息香酸がアクリロイル基に付加しており、重量平均分子量2000を有することがわかる。
【0071】
(2)感光性樹脂組成物Bの調製
前記で得られた感光性樹脂Bの反応溶液を、その溶液から感光性樹脂Bを単離せずにそのままの状態で、感光性樹脂組成物用基剤として用いた。この感光性樹脂Bの反応溶液200重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン〔チバガイギー社製、商品名:イルガキュアー907〕15重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)400重量部を混合することにより、感光性樹脂組成物Bを得た。
【0072】
実施例3
(1)感光性樹脂Cの調製
内容量が2リットルの5つ口反応容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート740g、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート310g、トリシクロデシルメタクリレート148gおよびアゾビスイソブチロニトリル19gを加え、窒素ガスを吹き込みながら80℃で6時間加熱し、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート−トリシクロデシルメタクリレート共重合体のポリマー溶液を得た。
【0073】
次に、得られたポリマー溶液に、2-ヒドロキシエチルアクリレート232gおよびメトキノン0.04gを加え、空気を吹き込みながら60℃で24時間加熱し、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート−トリシクロデシルメタクリレート共重合体の2-ヒドロキシエチルアクリレート付加物を含む反応混合物を得た。
【0074】
得られた反応混合物に、メルカプトコハク酸50gおよびN,N-ジメチルベンジルアミン0.5gを加え、50℃で24時間加熱し、感光性樹脂Cの反応溶液を得た(感光性樹脂Cの固形分含量:50重量%)。
【0075】
得られた感光性樹脂Cの酸価、二重結合当量および重量平均分子量を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
以上の結果より、得られた感光性樹脂Cは、2-メタクリロイルオキシエチルカルバミン酸2-アクリロイルオキシエチルの繰り返し単位75モル%、およびトリシクロデシルメタクリレートの繰り返し単位25モル%からなるランダム共重合体であり、メルカプトコハク酸がアクリロイル基に付加しており、重量平均分子量25000を有することがわかる。
【0077】
(2)感光性樹脂組成物の調製
前記で得られた感光性樹脂Cの反応溶液を、その溶液から感光性樹脂Cを単離せずにそのままの状態で、感光性樹脂組成物用基剤として用いた。この感光性樹脂Cの反応溶液200重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン〔チバガイギー社製、商品名:イルガキュアー907〕15重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)400重量部を混合することにより、感光性樹脂組成物Cを得た。
【0078】
実施例4
(1)感光性樹脂Dの調製
内容量が2リットルの5つ口反応容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル567g、メタクリル酸172g、シクロヘキシルマレイミド74gおよびアゾビスイソブチロニトリル19gを加え、窒素ガスを吹き込みながら80℃で6時間加熱し、メタクリル酸-シクロヘキシルマレイミド共重合体のポリマー溶液を得た。
【0079】
次に、得られたポリマー溶液に、グリシジルメタクリレート284gおよびメトキノン0.04gを加え、空気を吹き込みながら60℃で24時間加熱し、メタクリ酸−シクロヘキシルマレイミド共重合体のグリシジルメタクリレート付加物を含む反応混合物を得た。
【0080】
得られた反応混合物に、メルカプトコハク酸37gおよびN,N-ジメチルベンジルアミン0.5gを加え、50℃で24時間加熱し、感光性樹脂Cの反応溶液を得た(感光性樹脂Dの固形分含量:50重量%)。
【0081】
得られた感光性樹脂Dの酸価、二重結合当量および重量平均分子量を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
以上の結果より、得られた感光性樹脂Dは、3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートの繰り返し単位81モル%およびシクロヘキシルマレイミドの繰り返し単位19モル%からなるランダム共重合体であり、メルカプトコハク酸がメタクリロイル基に付加しており、重量平均分子量25000を有することがわかる。
【0083】
(2)感光性樹脂組成物の調製
前記で得られた感光性樹脂Dの反応溶液を、その溶液から感光性樹脂Dを単離せずにそのままの状態で、感光性樹脂組成物用基剤として用いた。この感光性樹脂Dの反応溶液200重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン〔チバガイギー社製、商品名:イルガキュアー907〕15重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)400重量部を混合することにより、感光性樹脂組成物Dを得た。
【0084】
比較例1
(1)感光性樹脂Eの調製
内容量が2リットルの5つ口反応容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート689g、グリシジルメタクリレート284g、メチルメタクリレート71gおよびアゾビスイソブチロニトリル17gを加え、窒素ガスを吹き込みながら80℃で6時間加熱し、ポリグリシジルメタクリレートの反応溶液を得た。
【0085】
次に、得られた反応溶液に、アクリル酸144g、メトキノン0.04gおよびトリフェニルフォスフィン0.4gを加え、空気を吹き込みながら100℃で24時間加熱し、ポリグリシジルメタクリレートのアクリル酸付加物溶液を含む反応混合物を得た。
【0086】
得られた反応混合物に、テトラヒドロフタル酸無水物190gを加え、70℃で10時間加熱することにより、感光性樹脂Eの反応溶液を得た(感光性樹脂Eの固形分含量:50重量%)。
【0087】
得られた感光性樹脂Eの酸価、二重結合当量および重量平均分子量を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0088】
(2)感光性樹脂組成物Eの調製
前記で得られた感光性樹脂Eの反応溶液から感光性樹脂Eを単離せずにそのままの状態で、感光性樹脂組成物用基剤として用いた。この感光性樹脂Eの反応溶液200重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン〔チバガイギー社製、商品名:イルガキュアー907〕15重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)400重量部を混合し、感光性樹脂組成物Eを得た。
【0089】
比較例2
(1)感光性樹脂Fの調製
内容量が2リットルの5つ口反応容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル507g、メタクリル酸172g、シクロヘキシルマレイミド115gおよびアゾビスイソブチロニトリル17gを加え、窒素ガスを吹き込みながら80℃で6時間加熱し、反応溶液を得た。
【0090】
次に、得られた反応溶液に、グリシジルメタクリレート220g、メトキノン0.04gおよびトリフェニルフォスフィン0.4gを加え、空気を吹き込みながら100℃で24時間加熱し、メタクリル酸−シクロヘキシルマレイミド共重合体のグリシジルメタクリレート付加物溶液を含む感光性樹脂Fの反応溶液を得た(感光性樹脂Eの固形分含量:50重量%)。
【0091】
得られた感光性樹脂Fの酸価、二重結合当量および重量平均分子量を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
(2)感光性樹脂組成物Eの調製
前記で得られた感光性樹脂Eの反応溶液から感光性樹脂Eを単離せずにそのままの状態で、感光性樹脂組成物用基剤として用いた。この感光性樹脂Eの反応溶液200重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン〔チバガイギー社製、商品名:イルガキュアー907〕15重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)400重量部を混合し、感光性樹脂組成物Fを得た。
【0093】
【表1】

【0094】
次に、各実施例および各比較例で得られた樹脂組成物の物性として、硬度、弾性率、耐水性、耐薬品性、硬化性および現像性を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
【0095】
(1)硬度
ガラス基板に感光性樹脂塑性物を塗布・硬化させて10μmの膜厚にした硬化膜のダイナミック硬度をダイナミック微小硬度計〔(株)島津製作所製、三角錐圧子、荷重20mN〕にて測定した。
【0096】
(2)弾性率
ガラス基板に感光性樹脂塑性物を塗布し、硬化させて10μmの膜厚にした硬化膜をダイナミック微小硬度計〔(株)島津製作所製、三角錐圧子、荷重20mN〕にて塑性変形量および総変形量を測定し、式:
〔弾性率(%)〕=〔(総変形量−塑性変形量)÷(総変形量)〕×100
に基づいて、弾性率を求めた。
【0097】
(3)耐水性
ガラス基板に感光性樹脂塑性物を塗布し、硬化させて10μmの膜厚にした硬化膜を沸騰水に浸漬し、4時間経過後に沸騰水から取り出した後、JIS G 0202の規定に準じて、「碁盤目試験」を行なった。その評価基準を以下に示す。
(評価基準)
○:碁盤目の剥離がまったくなし
△:碁盤目の剥離が部分的にあり
×:碁盤目の剥離が全面的にあり
【0098】
(4)耐薬品性
ガラス基板に感光性樹脂塑性物を塗布・硬化させて10μmの膜厚にした硬化膜に10%水酸化ナトリウム水溶液1滴を塗膜に垂らし、10分間経過後に拭き取ったときの塗膜の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:異状なし
△:わずかに傷があり
×:塗膜に膨潤があり
【0099】
(5)硬化性
ガラス基板に感光性樹脂塑性物を塗布し、減圧下で乾燥させて試料を作製した。次に、試料に紫外線を照射し(光源:2kW高圧水銀灯、80W/cm、光源からの距離30cm)を100mJ照射した。紫外線照射後にアセトン1滴を塗膜に垂らし、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:異状なし
×:塗膜に溶解があり
【0100】
(6)現像性
ガラス基板に感光性樹脂塑性物を塗布し、減圧下で乾燥させ10μmの塗膜とし、検体とした。検体に0.2%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、そのときの塗膜の状態を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○: 30秒間未満で塗膜が溶解
△: 30秒間以上100秒間未満で塗膜が溶解
×: 100秒間が経過する時点で溶解残りがあり
【0101】
【表2】

【0102】
表1および2に示された結果から、各実施例で得られた感光性樹脂組成物は、いずれも、酸価が低いにもかかわらず、現像性および耐薬品性のいずれにも優れていることがわかる。
【0103】
一方、比較例1で得られた感光性樹脂組成物は、現像性に優れているが、酸価が高いため、耐薬品性に劣ることがわかる。また、比較例2で得られた感光性樹脂組成物は、各実施例で得られた感光性樹脂組成物と同様の酸価を有するが、現像性に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の感光性樹脂組成物用基剤およびそれが用いられた感光性樹脂組成物は、例えば、インキ、接着剤、絶縁材料、電子材料などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例1で得られた感光性樹脂の赤外吸収(IR)スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1で得られた感光性樹脂の核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
−OCOCH (R)CHSR (I)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を示す)
で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物用基剤。
【請求項2】
式(I) で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂が、エチレン性不飽和基含有樹脂と式(II):
HSR (II)
(式中、Rは1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を示す)
で表されるメルカプト化合物との反応生成物である請求項1記載の感光性樹脂組成物用基剤。
【請求項3】
式(I):
−OCOCH (R)CHSR (I)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を示す)
で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物用基剤、多官能性モノマー、および光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項4】
式(I):
−OCOCH (R)CHSR (I)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは1個または2個のカルボキシル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基を示す)
で表される基を有するエチレン性不飽和基含有樹脂。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−290999(P2006−290999A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112140(P2005−112140)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】