説明

感放射線性樹脂組成物及びその調製方法、積層体及びその製造方法、並びにアクティブマトリックス基板及びそれを備えた平面表示装置

【課題】 脂環式オレフィンのメタセシス開環重合体を含有してなる感放射線性樹脂組成物を安全に且つ簡便に短時間で製造する方法、この方法によって得られる感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 溶媒中で開環メタセシス重合触媒と連鎖移動剤との存在下に脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体含有重合反応溶液に、感放射線化合物を配合することを特徴とする感放射線性樹脂組成物の調製方法。上記脂環式オレフィン開環メタセシス重合体含有重合反応溶液を水素添加反応に供して該重合反応溶液に含まれる重合体を水素添加して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体水素添加重合体含有反応溶液に感放射線化合物を配合する感放射線性樹脂組成物の調製方法。この感放射線性樹脂組成物の調製方法により得られた感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びその調製方法、積層体及びその製造方法、並びにアクティブマトリックス基板及びそれを備えた平面表示装置に関する。更に詳しくは、感放射線性樹脂組成物を、安全に且つ簡便に短時間で調製する方法及びこの方法によって得られる感放射線性樹脂組成物、積層体及びその製造方法、並びにアクティブマトリックス基板及びそれを備えた平面表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品や、液晶ディスプレイ用カラーフィルタ等には、その劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜等の機能性の電子部品用樹脂膜が設けられている。また、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や集積回路素子には、層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が機能性の電子部品用樹脂膜として設けられている。
これらの樹脂膜の形成に使用される感放射線性樹脂には種々の特性が求められるが、特に、最近では、比誘電率、耐熱寸法安定性、耐溶剤性、平坦性に優れるばかりでなく、良好な層間絶縁性、透明性及び耐熱変色性をもつものが求められている。
【0003】
このような要求に応える樹脂膜を提供するための感放射線性樹脂組成物として、特許文献1には、アルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂、酸発生剤、架橋剤及び溶剤を含有する感放射線性樹脂組成物が開示されている。このアルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂は、触媒存在下にテトラヒドロフラン溶液中で脂環式オレフィン単量体を開環重合した後、貧溶媒であるヘキサン中に反応溶液を注いでアルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂を分離し、これを再溶解した後、水素添加し、再度ヘキサンに注いで凝固し、乾燥したものである。実際に、感放射線性樹脂組成物として使用するためには、この単離した樹脂を他の配合剤と共にシクロヘキサノン等の感放射線性樹脂組成物用の溶媒に溶解することを必要とする。
また、特許文献2には、特定構造の脂肪族環状炭化水素を開環メタセシス重合して得られる重量平均分子量と数平均分子量との比が1.0〜2.0である開環メタセシス重合体水素添加物が開示されている。ここで用いられる開環メタセシス重合体も、また、テトラヒドロフラン中で重合して得られた重合体溶液を貧溶媒であるメタノール中に注いで重合体を析出させ、これをテトラヒドロフランに溶解して、水素化を行った後、再度メタノールに注いで重合体水素化物を沈殿させ、濾別、真空乾燥等を行って得られたものである。これを感放射線性樹脂組成物として使用するためには、この樹脂を他の配合剤と共にシクロヘキサノン等の感放射線性樹脂組成物用の溶媒に溶解することを必要とする。
【0004】
このような製造方法が採用されるのは、以下のような理由による。
即ち、単量体を重合することによって得られる重合体は、重合に用いた触媒の活性度の分布、重合途中の触媒の失活、活性末端の連鎖移動等の結果として、一般にその分子量に分布を持っている。しかしながら、重合体の分子量が異なる(即ち、重合体の分子量に分布がある)と、種々の特性に好ましからぬ影響を与えるため、感放射線性樹脂組成物に用いられる重合体には、この分子量分布が狭いことが要求されることが多い。
また、重合体には、未反応の単量体、重合触媒や水素添加触媒等の触媒残渣、オリゴマー(低重合体)等の低分子量成分が含まれていることがあり、これらが製品の特性上や環境安全上の観点から望ましくない問題の原因となることがある
上述の重合後の凝固による重合体の分離及び再溶解の操作によって、低分子量成分を除去して分子量分布を狭くすると共に、触媒残渣やオリゴマーを除去することができる。
【0005】
しかしながら、これらの操作を実施するには、各工程のための装置を設置しなければならず、大量の溶媒を必要とし、しかも乾燥のための大量の熱を必要とするため、設備的にも環境安全上もエネルギー的にも不利である。
更に、重合体について要求される分子量がそれほど高くない場合は、必然的に低分子量成分の比率が高くなるので、重合後に低分子量成分を除去する方法では、大幅に収率が低くなるという問題も生じてくる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−212450号公報
【特許文献2】特開2001−354756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、前記重合体は固体として得られるところ、重合体の単離操作の間に混入した不純物の微粒子を重合体内部に包含してしまったり、感放射線性樹脂組成物の調製時に重合体が溶け残ってしまったりして、ろ過では除けない微粒子が組成物に残留し得るが、当該微粒子の存在が、樹脂膜の層間絶縁性の低下に大きく影響することが新たに明らかとなった。
このように、感放射線性樹脂組成物の調製に際しては、安全性や生産性、樹脂膜の層間絶縁性を向上させる観点から更なる改良の余地が認められる。
従って、本発明の目的は、感放射線性樹脂組成物を安全に且つ簡便に短時間で調製する方法、この方法によって得られる感放射線性樹脂組成物、これを用いて得られる積層体及びその製造方法、並びにアクティブマトリックス基板及びこれを備えた平面表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、特定の化合物の存在下に特定の重合触媒を用いて脂環式オレフィンを重合させた場合に、重合反応溶液から重合体を分離することなく、この重合反応溶液に感放射線性樹脂組成物を構成する感放射線化合物等を配合することにより、溶媒除去工程の省略による環境安全性の向上と生産性の向上、及び重合体の溶媒への溶解工程の省略又は短縮による生産性の向上を図ることができ、これにより上記各目的が達成できることを見出し、この知見に基づいて更に研究を進めて本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の存在下に溶媒中で開環メタセシス重合触媒を用いて脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液に、感放射線化合物を配合することを特徴とする感放射線性樹脂組成物の調製方法が提供される(以下、「第一の調製方法」ということがある。)。
また、本発明によれば、末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の存在下に溶媒中で開環メタセシス重合触媒を用いて脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液に水素を導入して該重合反応溶液に含まれる脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を水素添加して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体水素化物を含有する水素添加反応溶液に、感放射線化合物を配合する感放射線性樹脂組成物の調製方法が提供される(以下、「第二の調製方法」ということがある。)。
上記2つの調製方法において、脂環式オレフィン開環メタセシス重合体の重量平均分子量が2,000〜10,000であり、数平均分子量1,000以下の成分の含有量が2重量%以下であることが好ましい。
また、上記本発明の感放射線性樹脂組成物の調製方法において、感放射線化合物に加えて更に架橋剤をも配合することができる。
更に、本発明の感放射線性樹脂組成物の調製方法において、溶媒が150〜250℃の沸点を有する極性溶媒を含有してなるものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物の調製方法において、開環メタセシス重合触媒がルテニウムを含有するものであることが好ましい。
更に、本発明の感放射線性樹脂組成物の調製方法において、末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物は、1,5−ヘキサジエン化合物であることが好ましい。
更に、本発明によれば、上記感放射線性樹脂組成物の調製方法より得られた感放射線性樹脂組成物、積層体及びその製造方法、並びにアクティブマトリックス基板及びそれを備えた平面表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によれば、重量平均分子量が低いにも拘らず、低分子量成分の含有比率が低く、且つ分子量分布の狭い脂環式オレフィン開環メタセシス重合体又はその水素化物を構成成分とする感放射線性樹脂組成物を、安全に且つ簡便に短時間で製造することができる。
この方法で得られる感放射線性樹脂組成物で形成した樹脂膜は、比誘電率、耐熱寸法安定性、耐溶剤性及び平坦性に優れるばかりでなく、良好な透明性及び耐熱変色性を有しており、さらに層間絶縁性に優れるので、電子部品用樹脂膜、特に平面表示装置用樹脂膜として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の、感放射線性樹脂組成物の第一の調製方法においては、連鎖移動剤の存在下に溶媒中で開環メタセシス重合触媒を用いて脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液を用いる。
本発明において、脂環式オレフィン開環メタセシス重合体(以下、単に「開環メタセシス重合体」ということがある。)は、脂環式オレフィンを開環メタセシス重合させて得られるものである。
脂環式オレフィンは、開環メタセシス反応が可能な炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有する環構造を分子内に少なくとも1つ有する化合物であればよく、上記環構造以外の部分の構造に特に制限はない。
また、脂環式オレフィンを構成する炭素の数にも特に制限はないが、通常、4〜25、好ましくは5〜20、より好ましくは7〜15である。
脂環式オレフィンは、単一の環からなるものでも複数の環からなるものでもよく、複数の環の結合様式にも限定はない。
【0012】
上記の脂環式オレフィンは、任意の位置に炭化水素置換基を有するものであってもよい。このような置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル
基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基等の置換基を有していてもよいアリール基;メチリデン基、エチリデン基等のアルキリデン基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;メチリデン基、エチリデン基等のアルキリデン基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基、ジシクロペンチル基、ジシクロペンテニル基等のシクロアルケニル基;等を挙げることができる。
【0013】
極性基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.02,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、テトラシクロ[8.4.0.111,14.03,7]ペンタデカ−3,5,7,12,11−ペンタエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[6.6.0.12,5.18,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。
【0014】
また、上記脂環式オレフィンは官能基を有していてもよい。
このような官能基としては、プロトン性極性基と、これ以外の極性基とを挙げることができる。
プロトン性極性基は、ヘテロ原子、好ましくは、周期律表第15族及び第16族の原子、更に好ましくは周期律表第15族及び第16族第1及び第2周期の原子、特に好ましくは酸素原子に水素原子が直接結合した原子団である。
プロトン性極性基の具体例としては、カルボキシル基(ヒドロキシカルボニル基)、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシル基等の酸素原子を有する極性基;第一級アミノ基、第二級アミノ基、第一級アミド基、第二級アミド基(イミド基)等の窒素原子を有する極性基;チオール基等のイオウ原子を有する極性基;等が挙げられる。これらの中でも、酸素原子を有するものが好ましく、より好ましくはカルボキシル基である。
また、ニトリル基、エステル基、アミド基、酸無水物基等の加水分解によってカルボキシル基を生成する基も好適に用いることができる。
本発明の脂環式オレフィン開環メタセシス重合体のうち、プロトン性極性基を有するものは、アルカリ可溶性であり、これらアルカリ可溶性のものは、感放射線性樹脂組成物に有用である。また、プロトン性極性基を有するものは、組成物に架橋剤を配合した場合、架橋性樹脂を与えることができる。
【0015】
プロトン性極性基を含有する脂環式オレフィン単量体の具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシカルボニルメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エキソ−9−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のカルボキシル基含有脂環式オレフィン;5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のヒドロキシ基含有脂環式オレフィン等が挙げられ、これらの中でもカルボキシル基含有脂環式オレフィンが好ましい。
【0016】
プロトン性極性基以外の極性基の具体例としては、エステル基(アルコキシカルボニル基及びアリーロキシカルボニル基を総称していう。)、N−置換イミド基、エポキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニルオキシカルボニル基(ジカルボン酸の酸無水物残基)、アルコキシ基、第三級アミノ基、アクリロイル基、エーテル基(−O−)等が示される。これらのうち、好ましくはエステル基、N−置換イミド基及びシアノ基であり、より好ましくはエステル基及びN−置換イミド基である。
【0017】
エステル基含有脂環式オレフィンとしては、例えば、5−アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−アセトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、2−メトキシ−1−メチルエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシレート、2−メトキシ−1−メチルエチル−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシレート等が挙げられる。
【0018】
N−置換イミド基含有脂環式オレフィンとしては、例えば、N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルペンチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−メチルブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルヘキシル)−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルペンチル)−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルブチル)−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、2−メチル−N−(2−メチルブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−ブチル−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−イソブチル−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルヘキシル)−N−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルペンチル)−N−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルブチル)−N−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−メチル−N−(2−メチルブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−ブチル−N−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−イソブチル−N−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルヘキシル)−N,2−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド
N−(2−エチルペンチル)−N,2−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−(2−エチルブチル)−N,2−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N,2−ジメチル−N−(2−メチルブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−ブチル−N,2−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、N−イソブチル−N,2−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアミド、4−[4−(2−エチルヘキシロキシ)フェニル]−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デセ−8−エン−3,5−ジオン、3−[4−(2−エチルヘキシロキシ)フェニル]−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デセ−8−エン−3,5−ジオン、2−[4−(2−エチルヘキシロキシ)フェニル]−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デセ−8−エン−3,5−ジオン、ジメチル5−(3,5−ジオキソ−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デセ−8−エン−4−イル)イソフタレート
ジメチル4−(3,5−ジオキソ−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デセ−8−エン−4−イル)フタレート、ジメチル3−(3,5−ジオキソ−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デセ−8−エン−4−イル)フタレート、ジメチル2−(3,5−ジオキソ−4−アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デセ−8−エン−4−イル)テレフタレート等が挙げられる。
シアノ基含有脂環式オレフィンとしては、例えば、8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
ハロゲン原子を含有する脂環式オレフィンとしては、例えば、8−クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。
エーテル基含有脂環式オレフィンとしては、例えば、5−{[(2−エチルヘキシル)オキシ]メチル}ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−{[(2−エチルペンチル)オキシ]メチル}ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(2−エチルブトキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(ブトキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(2−メチルブトキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(イソブトキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−エチルヘキシル(2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)メチルエーテル、2−エチルペンチル(2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)メチルエーテル、2−エチルブチル(2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)メチルエーテル、5−(ブトキシメチル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、(2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)メチル−2−メチルブチルエーテル、5−(イソブトキシメチル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0019】
これらの脂環式オレフィンは、一種類を単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。
これらの脂環式オレフィンの中でも、ノルボルネン骨格を有するものが好ましい。
【0020】
本発明の脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を得るに当たっては、非脂環式オレフィンを併用してもよい。
このような非脂環式オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィンを挙げることができる。
【0021】
本発明において、開環メタセシス重合体は、開環メタセシス重合触媒を用いて得られる。
開環メタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン又は化合物が結合してなる錯体である。上記イオン等の結合は、イオン結合であっても、共有結合であっても、配位結合であってもよい。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族の原子が使用される。これらの中でも8族のルテニウムやオスミウムが好ましく、特に、ルテニウムが好ましい。
ルテニウム開環メタセシス重合触媒の中でも、ルテニウムカルベン触媒が好ましい。ルテニウムカルベン触媒は、酸素や水分に対して安定で失活し難く、且つ、触媒活性に優れている。
【0022】
ルテニウムカルベン錯体は、下記の式(1)又は式(2)で表されるものである。
【0023】
【化1】

【0024】
式(1)及び(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X1及びX2は、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。L1及びL2は、中性電子供与性化合物を表し、その少なくとも一方がヘテロ原子含有カルベン化合物であることが好ましい。また、R1、R2、X1、X2、L1及びL2は、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0025】
ヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子等を挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子等が好ましく、N原子が特に好ましい。
【0026】
ヘテロ原子含有カルベン化合物は、カルベン炭素の両側にヘテロ原子が隣接して結合していることが好ましく、更にカルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構成されているものがより好ましい。また、カルベン炭素に隣接するヘテロ原子は、嵩高い置換基を有していることが好ましい。
【0027】
ヘテロ原子含有カルベン化合物の例としては、下記の式(3)又は式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R3〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。炭化水素基は、その炭素原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子で置換されていてもよく、ハロゲン原子その他の置換基を有していてもよい。また、R3〜R6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0030】
前記式(3)及び(4)で表される化合物の具体例としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、4,5−ジクロロ−1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン;1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)イミダゾリン−2−イリデン、4,5−ジクロロ−1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン、4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン;1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン;等が挙げられる。
【0031】
また、前記式(3)及び式(4)で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデン等のヘテロ原子含有カルベン化合物も用い得る。
【0032】
前記式(1)及び式(2)において、アニオン性配位子X1及びX2は、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子である。その具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等を挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0033】
また、中性の電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、カルベン化合物、カルボニル、アミン、エーテル、ニトリル、エステル、ホスフィン、チオエーテル、芳香族化合物、オレフィン、イソシアニド、チオシアネート等が挙げられる。これらの中でも、カルベン化合物、ホスフィンやピリジンが好ましく、カルベン化合物及びトリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0034】
前記式(1)で表される錯体化合物としては、例えば、(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(4,5−ジクロロ−1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンベンジリデンルテニウムジクロリド等のヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド等の2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;等が挙げられる。
【0035】
また、前記式(2)で表される錯体化合物としては、例えば、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド等が挙げられる。
【0036】
これらのルテニウム錯体触媒は、例えば、Org.Lett.,1999年,第1巻,953頁、Tetrahedron.Lett.,1999年,第40巻,2247頁等に記載された方法によって製造することができる。
【0037】
ルテニウム開環メタセシス重合触媒の使用量は、(触媒中の金属原子:脂環式オレフィン)のモル比で、通常、1:1,000〜1:1,000,000、好ましくは1:2,000〜1:500,000、より好ましくは1:3,000〜1:300,000の範囲である。
【0038】
本発明においては、脂環式オレフィンの開環メタセシス重合を、末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の存在下に行うことが必要である。
末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の具体例としては、下記一般式(5)で示される化合物を示すことができる[式中、R7及びR8は、それぞれ、置換基を有していてもよいビニル基;R9〜R12は、それぞれ、水素原子又はアルキル基;Xは、二価の有機基;m及びnは、それぞれ、0又は正の整数である。但し、XがC=Q(Qは、炭素原子と二重結合を形成し得る原子)で表わされる基を有するときは、m及びnは正の整数である。]。
【0039】
【化3】

【0040】
一般式(5)におけるXの具体例としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、エーテル基、ビニリデン基(上記Qが炭素原子)、カルボニル基(上記Qが酸素原子)、チオカルボニル基(上記Qが硫黄原子)、イミノ基(上記Qが窒素原子)、オキシカルボニル基[−C(=O)O−]、炭酸エステル基[−O−C(=O)−O−]等を示すことができ、これらの基は置換基を有していてもよい。
末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物としては、重合後の精製除去等を考慮すると、常圧における沸点が175℃以下のものが好ましい。
【0041】
上記末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の具体例としては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン化合物;1,3−ジアリルシクロヘキサン、1,3−ジアリルシクロペンタン等の脂環式ジアリル化合物;ジアリルケトン等のアリルケトン化合物;等を挙げることができる。
これらの中でも、非共役ジエン化合物が好ましく、脂肪族の非共役ジエン化合物がより好ましい。脂肪族の非共役ジエンのうち、1,5−ヘキサジエンが特に好ましい。
末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の使用量は、通常、脂環式オレフィンに対して、0.1〜20モル%、好ましくは、0.5〜15モル%、より好ましくは1〜10モル%である。
【0042】
本発明においては、脂環式オレフィンの開環メタセシス重合の後、重合反応溶液から重合体を分離することなく、感放射線性樹脂組成物の調製を行うので、この感放射線性樹脂組成物に用いるのと同じ溶媒を重合溶媒として用いるのが好ましい。これにより、溶媒除去に起因する環境汚染を抑止でき、また、重合体の単離、乾燥及び溶媒への再溶解の各工程を省略できるため、感放射線性樹脂組成物の生産性が向上する。
【0043】
そのような溶媒の具体例としては、モノアルキレングリコール溶媒;ポリアルキレングリコール溶媒;モノアルキレングリコールアルキルエステル溶媒;ポリアルキレングリコールアルキルエステル溶媒;モノアルキレングリコールジエステル溶媒;ポリアルキレングリコールジエステル溶媒を示すことができる。
【0044】
モノアルキレングリコール溶媒の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のモノアルキレングリコール;エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のモノアルキレングリコールモノエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のモノアルキレングリコールジアルキルエーテル;等を挙げることができる。
【0045】
ポリアルキレングリコール溶媒の例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル;等を挙げることができる。
【0046】
モノアルキレングリコールアルキルエステル溶媒の具体例としては、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノi−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノi−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノsec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
【0047】
ポリアルキレングリコールアルキルエステル溶媒の具体例としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
【0048】
モノアルキレングリコールジエステル溶媒の具体例としては、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等を挙げることができる。
ポリアルキレングリコールジエステル溶媒の具体例としては、ジエチレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート等を挙げることができる。
【0049】
これらのほか、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の高沸点ケトン溶媒;3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール等の高沸点アルコール溶媒;乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル、酢酸3−メトキシブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチルラクトン等の高沸点エステル溶媒;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド;等を挙げることができる。
【0050】
これらのうち、好ましい溶媒は、ポリアルキレングリコール溶媒、モノアルキレングリコールアルキルエステル溶媒及びポリアルキレングリコールアルキルエステル溶媒であり、中でも、150℃以上の沸点を有するものが好ましく、150〜250℃の沸点を有するものがより好ましい。
【0051】
本発明において、脂環式オレフィンを開環メタセシス重合するに当たって、重合条件は、特に限定されない。
重合温度は、特に制限されないが、通常、−50〜+150℃、好ましくは0〜100℃である。
重合時間は、重合温度、触媒の使用量等に応じて適宜決定すればよいが、通常、1分から24時間である。
重合雰囲気は、特に限定されず、開環メタセシス重合触媒が安定である場合は空気中等で行っても構わないが、窒素、炭酸ガス、希ガス等の不活性気体雰囲気下で行うのが好ましい。
【0052】
このようにして得られる脂環式オレフィン開環メタセシス重合体は、パターニング性や現像性の観点から、好適には、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000〜10,000であり、数平均分子量が1,000以下のオリゴマー成分の含有量が2重量%以下である。また、開環メタセシス重合体は、好適には、重量平均分子量/数平均分子量の比率が1.80以下である。本発明においてオリゴマーの含有量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー−低角度レーザー光散乱光度(GPC−LALLS)法により測定されるピーク面積比から算出される値である。
【0053】
一般に、開環メタセシス重合によって得られた、低い重量平均分子量、特に10,000以下の重量平均分子量を有する開環メタセシス重合体は、相当量の低分子量のオリゴマーを含む。このため、重合後にこのオリゴマーを除去するため、凝固、分離、乾燥といった工程を必要とする。このような工程を経て得られた開環メタセシス重合体は、これを感放射線性樹脂組成物とするために、溶媒に溶解する必要があるが、溶解に要する時間が非常に長いという問題を有している。
これに対して、本発明においては、重合工程のみによって、換言すると、重合工程の後、重合体の分離、乾燥、再溶解等の操作を必要とせずに、感放射線性樹脂組成物として使用するに適した脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を重合反応溶液として、得ることができる。
本発明の感放射線性樹脂組成物の調製方法によれば、一旦、重合体を分離して、これを溶媒に再溶解する必要がなく、設備的にも環境安全上もエネルギー的にも有利である。
【0054】
本発明の、感放射線性樹脂組成物の第二の調製方法においては、第一の調製方法における開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液の代わりに、脂環式オレフィンの開環メタセシス重合で得られた脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液に水素を導入して該脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を水素添加して得られる開環メタセシス重合体の水素化物を含有する水素化反応溶液を用いる。
即ち、第二の調製方法においては、脂環式オレフィン開環メタセシス重合体の水素化反応を、開環重合で得られた重合反応溶液のまま行う。
【0055】
この水素添加によって得られる脂環式オレフィン開環メタセシス重合体水素化物は、好適には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,500〜15,000(更に好適には、3,000〜12,000)であり、数平均分子量が1,000以下のオリゴマー成分の含有量が2重量%以下である。また、開環メタセシス重合体水素化物は、好適には、重量平均分子量/数平均分子量の比率が1.80以下である。
【0056】
水素添加触媒としては、例えば、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを用いることができる。具体的には、チーグラータイプの均一系触媒、貴金属錯体触媒、及び担持型貴金属系触媒等が利用できる。これらの水素添加触媒のうち、プロトン性極性基等の官能基が変性する等の副反応が起こさない点から、炭素担持パラジウム触媒やロジウム、ルテニウム等の貴金属錯体触媒が好ましく、電子供与性の高い含窒素複素環式カルベン化合物又はホスフィン類が配位したルテニウム触媒が特に好ましい。
水素添加触媒は、水素添加反応後、活性炭等の、反応液に不溶の多孔質固形分を水素添加反応液に添加し、触媒をこれに吸着させた後、ろ過することにより除去できる。この多孔質固形分への触媒の吸着に際して、水素添加反応液に水素を溶存させると触媒の吸着が効率的に進行する。
【0057】
本発明においては、(1)末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の存在下に溶媒中で開環メタセシス重合触媒を用いて脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液に、感放射線化合物を配合することによって、感放射線性樹脂組成物を得ることができ、また、(2)前記重合反応溶液に水素を導入して該重合反応溶液に含まれる脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を水素添加して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体水素化物を含有する水素添加反応溶液に感放射線化合物を配合することによって、感放射線性樹脂組成物を得ることができる。
この時、重合反応溶液や水素添加反応溶液から過剰な溶媒を留去したり、溶媒を新たに追加することができる。
【0058】
感放射線性樹脂組成物の第一及び第二の調製方法において用いる感放射線化合物は、紫外線や電子線等の放射線を吸収し、化学反応を引き起こすことのできる化合物である。本発明においてプロトン性極性基を有する開環メタセシス重合体又はその水素化物を使用する場合には、そのアルカリ溶解性を制御できるものが好ましい。
【0059】
感放射線化合物としては、例えば、アセトフェノン化合物、トリアリールスルホニウム塩、キノンジアジド化合物等のアジド化合物等が挙げられるが、好ましくはアジド化合物、特に好ましくはキノンジアジド化合物である。
キノンジアジド化合物は、開環メタセシス重合体又はその水素化物のプロトン性極性基と結合して、そのアルカリ現像液に対する溶解性を制御すると共に、活性放射線の照射により酸を発生させる化合物である。キノンジアジド化合物としては、例えば、キノンジアジドスルホン酸ハライドとフェノール性水酸基を有する化合物とのエステル化合物を用いることができる。
キノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド、1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド等が挙げられる。
【0060】
フェノール性水酸基を有する化合物の代表例としては、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等が挙げられる。
これ以外のフェノール性水酸基を有する化合物としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマー等が挙げられる。
これらの感放射線化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0061】
感放射線化合物の使用量は、開環メタセシス重合体又はその水素化物100重量部に対して、通常、0.5〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部の範囲である。感放射線化合物の使用量がこの範囲にあるときに、基板上に形成した樹脂膜をパターン化する際に、放射線照射部分と放射線未照射部分との溶解度差が大きくなり、現像によるパターン化が容易で、且つ、放射線感度も高くなるので好適である。
【0062】
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、感放射線化合物に加えて架橋剤を配合することができる。
本発明で使用することができる架橋剤は、加熱により架橋剤分子間に架橋構造を形成したり、開環メタセシス重合体又はその水素化物と反応して開環メタセシス重合体間又はその水素化物間に架橋構造を形成したりするものである。
架橋剤としては、開環メタセシス重合体又はその水素化物のプロトン性極性基と反応し得る官能基を分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上有するものが用いられる。官能基は開環メタセシス重合体又はその水素化物中の官能基、不飽和結合等と反応しうるものであれば、特に限定されない。開環メタセシス重合体又はその水素化物がプロトン性極性基を含有する場合には、好ましい官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられ、更に好ましくはアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基であり、特に好ましくはエポキシ基である。
【0063】
このような架橋剤の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン類;2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフォン等のアジド類;ナイロン、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド等のポリアミド類;N,N,N’,N’,N”,N”−(ヘキサアルコキシメチル)メラミン等のメラミン類;N,N’,N”,N”’−(テトラアルコキシメチル)グリコールウリル等のグリコールウリル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアクリレート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)ノルボルナン;1,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサン;各種の多官能エポキシ化合物;等が挙げられる。
【0064】
多官能エポキシ化合物の更なる具体的な例としては、エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物であって、脂環骨格を有するもの、クレゾールノボラック骨格を有するもの、フェノールノボラック骨格を有するもの、ビスフェノールA骨格を有するもの、ナフタレン骨格を有するもの等が挙げられる。
これらの中でも、開環メタセシス重合体又はその水素化物との相溶性の良好さから、特に、脂環式構造を有し、エポキシ基を2つ以上、より好ましくは3つ以上有する多官能エポキシ化合物が好ましい。
多官能エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテル、エポキシアクリレート重合体等を挙げることができる。
これらの架橋剤は、それぞれ単独で使用しても2種以上を組合せて使用してもよい。
【0065】
架橋剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、開環メタセシス重合体又はその水素化物100重量部に対し、通常、1〜1,000重量部、好ましくは5〜500重量部、より好ましくは10〜100重量部である。使用量がこの範囲にあるときに、形成される樹脂膜の耐熱性が高度に改善され好適である。
架橋剤の分子量は、特に限定されないが、通常、100〜100,000、好ましくは500〜50,000、より好ましくは1,000〜10,000である。この範囲の分子量であると、加熱時の安定性やゲル化の効率の点から好適である。
また、架橋剤は、脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液又はこの重合体を水素添加して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体水素化物を含有する水素添加反応溶液に配合すればよく、添加の時期は、感放射線化合物と同時であっても別々であってもよい。
【0066】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、ストリエーション(塗布筋あと)の防止、現像性の向上等の目的で、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンジラウレート等のノニオン系界面活性剤;新秋田化成社製エフトップシリーズ、大日本インキ化学工業社製メガファックシリーズ、住友スリーエム社製フロラードシリーズ、旭硝子社製アサヒガードシリーズ等のフッ素系界面活性剤;信越化学社製オルガノシロキサンポリマーKPシリーズ等のシラン系界面活性剤;共栄社油脂化学工業社製ポリフローシリーズ等のアクリル酸共重合体系界面活性剤;等の各種界面活性剤を含有させることができる。
界面活性剤は、感放射線性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、通常、2重量部以下、好ましくは1重量部以下の量で必要に応じて用いられる。
【0067】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、基板との接着性を向上させる目的で、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の官能性シランカップリング剤等を接着助剤として添加してもよい。接着助剤の量は、開環メタセシス重合体又はその水素化物100重量部に対して、通常、20重量部以下、好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。
更に、本発明の感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて帯電防止剤、保存安定剤、消泡剤、顔料、染料、老化防止剤、増感剤等を含んでいてもよい。
【0068】
本発明の感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、必要な樹脂膜の厚みや塗布方法を考慮して任意に設定すればよいが、操作性の観点から、通常、5〜40重量%である。
調製された感放射線性樹脂組成物は、0.1〜5μm程度のフィルター等を用いて異物等を除去した後、使用に供することが好ましい。
【0069】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、ディスプレイ表示素子、集積回路素子等の素子や、液晶ディスプレイ用カラーフィルタ等の保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための絶縁膜(薄型トランジスタ型液晶表示素子や集積回路素子の電気絶縁膜である層間絶縁膜やソルダーレジスト膜等を含む)のような各種の電子部品用樹脂パターン膜の材料として好適である。
【0070】
本発明の積層体は、基板とその上に本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜とからなる。
本発明において、基板は、例えば、プリント配線基板、シリコンウエハー基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。また、ディスプレイ分野において使用される、ガラス基板やプラスチック基板等に薄型トランジスタ型液晶表示素子、カラーフィルタ、ブラックマトリックス等が形成されたものも好適に用いられる。
樹脂膜の厚さは、通常、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.5〜30μmの範囲である。
【0071】
本発明の積層体は、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に樹脂膜を形成させた後、必要に応じて樹脂膜を架橋させて得ることができる。
樹脂膜を基板上に形成する方法は、特に限定されず、例えば、塗布法やフィルム積層法等の方法を用いることができる。塗布法は、例えば、感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布した後、加熱乾燥して溶媒を除去する方法である。感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて異なるが、通常、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で、通常、0.5〜90分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜30分間行えばよい。
【0072】
フィルム積層法は、例えば、感放射線性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散したものを、樹脂フィルムや金属フィルム等の基材上に塗布した後に加熱乾燥により溶媒を除去してBステージフィルムを得、次いで、このBステージフィルムを基板上に積層する方法である。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて異なるが、通常、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で、通常、0.5〜90分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜30分間行えばよい。フィルム積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行うことができる。
【0073】
基板と基板上に本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜とからなる積層体において、樹脂膜はパターン化されていてもよい。
基板上に形成された樹脂膜のパターン化は、例えば、樹脂膜に活性放射線を照射して潜像パターンを形成し、次いで潜像パターンを有する樹脂膜に現像液を接触させることによりパターンを顕在化させて行うことができる。基板上にパターン化樹脂膜を形成した積層体は、種々の電子部品として有用である。
【0074】
活性放射線としては、感放射線化合物を活性化させ、感放射線化合物を含む架橋性組成物のアルカリ可溶性を変化させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、紫外線、g線やi線等の単一波長の紫外線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線;電子線のような粒子線;等を用いることができる。
これらの活性放射線を選択的にパターン状に照射して潜像パターンを形成する方法としては、常法に従えばよく、例えば、縮小投影露光装置等により、紫外線、g線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線を所望のマスクパターンを介して照射する方法、又は電子線等の粒子線により描画する方法等を用いることができる。
活性放射線として光線を用いる場合は、単一波長光であっても、混合波長光であってもよい。照射条件は、使用する活性放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、波長200〜450nmの光線を使用する場合、照射量は、通常10〜1,000mJ/cm2、好ましくは50〜500mJ/cm2の範囲であり、照射時間と照度に応じて決まる。このようにして活性放射線を照射した後、必要に応じ、樹脂膜を60〜130℃程度の温度で1〜2分間程度加熱処理する。
【0075】
次に、樹脂膜に形成された潜像パターンを現像して顕在化させる。本発明では、このような工程を「パターン化」といい、パターン化された樹脂膜を「パターン化樹脂膜」という。
現像液としては、通常、アルカリ性化合物の水性溶液が用いられる。アルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アミン、アンモニウム塩を使用することができる。アルカリ性化合物は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。
これらの化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア水;エチルアミン、n−ロピルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミン類;等が挙げられる。これらアルカリ性化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0076】
アルカリ水性溶液の水性媒体としては、水;メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を使用することができる。アルカリ水性溶液は、界面活性剤等を適当量添加したものであってもよい。
潜像パターンを有する樹脂膜に現像液を接触させる方法としては、例えば、パドル法、スプレー法、ディッピング法等の方法が用いられる。現像は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜55℃、より好ましくは10〜30℃の範囲で、通常、30〜180秒間の範囲で適宜選択される。
【0077】
このようにして目的とするパターン化樹脂膜を基板上に形成した後、必要に応じて、基板上、基板裏面及び基板端部の現像残渣を除去するために、基板を超純水等の公知のリンス液でリンスすることができる。リンス処理の後、残存しているリンス液を圧縮空気や圧縮窒素により除去する。
更に、必要に応じて、感放射線化合物を失活させるために、パターン化樹脂膜を有する基板全面に活性放射線を照射することもできる。活性放射線の照射には、上記潜像パターンの形成に例示した方法を利用できる。照射と同時に又は照射後に樹脂膜を加熱してもよい。加熱方法としては、例えば、基板をホットプレートやオーブン内で加熱する方法が挙げられる。温度は、通常、100〜300℃、好ましくは120〜200℃の範囲である。
【0078】
本発明において、基板上にパターン化樹脂を形成した後に、樹脂の架橋反応を行うことができる。
基板上に形成された樹脂膜の架橋は、架橋剤の種類に応じて適宜方法を選択すればよいが、通常、加熱により行う。加熱方法は、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。加熱温度は、通常、180〜250℃であり、加熱時間は、樹脂膜の大きさや厚さ及び使用機器等により適宜選択され、例えばホットプレートを用いる場合は、通常、5〜60分間、オーブンを用いる場合は、通常、30〜90分間の範囲である。
加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、酸素を含まず且つ樹脂膜を酸化させないものであればよく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。特に、酸素含有量が0.1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下の不活性ガス、特に窒素が好適である。これらの不活性ガスは、それぞれ単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0079】
本発明の積層体は、基板と、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜との間に1又は2以上の公知の樹脂からなる樹脂層を有していてもよく、また、基板上の、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜の上に、更に1又は2以上の公知の樹脂からなる樹脂層を有していてもよい。本発明の積層体の具体例としては、後述のアクティブマトリックス基板の他、単純マトリックス基板等が挙げられる。
【0080】
本発明の感放射線性樹脂組成物を用い、公知の方法に準じてアクティブマトリックス基板を作製することができる。
即ち、本発明のアクティブマトリックス基板は、マトリックス状にスイッチング素子が設けられていると共に該スイッチング素子を駆動するゲート信号を供給するゲート信号線及び該スイッチング素子に表示信号を供給するソース信号線が互いに交差するよう設けられ、該スイッチング素子、該ゲート信号線及び該ソース信号線上に設けられた層間絶縁膜を間に介して各信号線と一部重なるように画素電極が設けられてなるアクティブマトリックス基板であって、前記層間絶縁膜が本発明の感放射線性樹脂組成物により形成されたものである。
【0081】
本発明のアクティブマトリックス基板の一例を図1と図2により説明する。図1は、後述の本発明の平面表示装置の構成の一例を示す平面図であり、図2はそのX−Y断面図である。
図1と図2において、アクティブマトリックス基板101には、絶縁性基板上、スイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)201を駆動するゲート信号を供給するゲート信号線203及びTFT201に表示信号(ソース信号)を供給するソース信号線204が互いに交差(ここでは直交)するように設けられ、両信号線の交差部近傍にTFT201が設けられており、その上に本発明の感放射線性樹脂組成物からなる層間絶縁膜104を間に介して両信号線と一部重なるように画素電極202が設けられている。アクティブマトリックス基板を構成する層間絶縁膜104は、本発明の感放射線性樹脂組成物を用い、上記の方法により形成されている。なお、層間絶縁膜104のコンタクトホール(図示せず)において画素電極202とTFT201のドレイン電極が接続されている。また、層間絶縁膜104の上には配向膜111が設けられている。
一方、前記両信号線は額縁領域を超えて延出形成されており、その外側の端子領域に設けられた入力端子108を介してゲート信号線203にTFT201駆動用の信号電圧が入力され、ソース信号線204に表示データの信号電圧が入力され得る。電極パターン105が層間絶縁膜104の外周領域上に形成され、更に端子領域まで延長形成されており、駆動回路からの信号が入力され得る。
【0082】
以上のようなアクティブマトリックス基板は、例えば以下のようにして製造される。すなわち、公知の方法に従って基板上にTFT201を形成した後、その上に、例えば、スピンコート法により本発明の感放射線性樹脂組成物からなる層間絶縁膜104を3μmの膜厚で形成し、この層間絶縁膜104にコンタクトホール(図示せず)を形成する。次に、その上に、例えば、スパッタリング法によりITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極202を形成してパターニングし、層間絶縁膜104のコンタクトホールを介してTFT202のドレイン電極と画素電極202を接続する。このとき、画素電極202を構成するITOにより電極パターン105を同時に形成する。その後、配向膜111を形成してラビング処理等の配向処理を施すことによりアクティブマトリックス基板101を得る。
【0083】
本発明のアクティブマトリックス基板は、リーク電流の発生を抑制して層間絶縁膜の特性低下を防止できるという点で優れており、後述の本発明の平面表示装置に有用である。
【0084】
本発明の平面表示装置は、光学制御部材を間に挟んで対向配設された一対の基板からなるものであって、一対の基板のうちの一方の基板が本発明のアクティブマトリックス基板で構成された平面表示装置である。アクティブマトリックス基板に対して対向配設される基板(以下、「対向基板」という。)としては、例えば、カラーフィルタ基板、マイクロレンズ基板等が挙げられる。本明細書において光学制御部材とは、例えば、液晶材料やフィルム状液晶等の、電圧若しくは電流により光学的な特性が変化する部材をいう。
【0085】
なお、アクティブマトリックス基板とカラーフィルタ基板とで構成される平面表示装置の変形例としては、アクティブマトリックス基板における画素電極上に、カラーフィルタ材料層を直接設け、対向基板にカラーフィルタを設けない態様の平面表示装置や、導電性を有するカラーフィルタ材料により、アクティブマトリックス基板の画素電極を形成し、対向基板にカラーフィルタを設けない態様の平面表示装置などが挙げられる。
【0086】
図1と図2に、本発明の平面表示装置の構成の一例を示すが、当該図の装置では、画素電極202を備えたアクティブマトリックス基板101と対向電極206を備えたカラーフィルタ基板102とが液晶層110を挟んで対向配設され、各画素電極202と対向電極206との対向部分が画素となっている。画素からなる表示領域の外周にはシール材103が設けられ、表示領域とシール材103の間の領域に電極パターン105が存在している。なお、カラーフィルタ基板102には、ブラックマトリックス208を有するカラーフィルタ層207上に対向電極206が設けられ、その上に配向膜111が設けられている。かかる平面表示装置は公知の方法に従って製造することができる。
【0087】
本発明の平面表示装置は、本発明のアクティブマトリックス基板を用いてなることからリーク電流の発生が抑制され、低消費電力であるという点で優れたものである。該装置の具体例としては、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどが挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は特に断りのない限り、質量基準である。
なお、各特性の定義及び評価方法は、以下のとおりである。
[重合転化率]
ガスクロマトグラフィーを用いて単量体残量により測定した。
[水素化率]
1H−NMRスペクトルにより、水素化された炭素−炭素二重結合モル数の水素添加前の炭素−炭素二重結合モル数に対する割合として求めた。
[分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(製品名「HLC−8020」、東ソー社製)を用い、ポリスチレン換算の分子量として算出した。なお、展開溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。
【0089】
[オリゴマー量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー−低角度レーザー光散乱光度(GPC−LALLS)法により分子量1,000以下成分の割合として算出した。測定条件は、以下のとおりである。
カラム:TSKgel GMHHR−H+G2500HHR+G1000HHR 各1本(内径7.8mm×長さ300mm×3本)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.8ml/分
検出器:RI+LALLS
カラム温度:40℃
試料濃度:1.0%(w/v)
注入量:200μl
[固形分濃度]
樹脂溶液0.5gを140℃で真空乾燥することにより得られた固形分の残留溶媒量を、ガスクロマトグラフィーにより測定して算出した。
【0090】
[アクティブマトリックス基板の製造]
以下の工程に従って、図1と図2に示されるようなアクティブマトリックス基板を製造した。
(工程1:塗膜形成工程)
公知の方法を利用して、透明ガラス基板上に、スイッチング素子としてTFT素子を備えたアクティブマトリックス回路を形成した後、スピンコート法を利用して、感放射線性樹脂組成物溶液をガラス基板上に塗布し、85℃で2分間、ホットプレート上でプリベークして膜厚約1.2μmの塗膜を形成した。
(工程2:露光工程)
形成された塗膜における表面領域にスリットマスクを用いて遮光した状態において紫外線を照射(露光量:190mJ/cm2)して、露光処理を行うことによりパターン形成を行った。
【0091】
(工程3:現像工程)
その後、液盛り法を用いて、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.4%水溶液により23℃で60秒間現像処理を行った後、純水で流水洗浄処理を30秒間行い、スピン乾燥法による乾燥処理を行った。
(工程4:ポストベーク工程)
次いで、オーブンを用いて、230℃で15分間加熱するポストベークを行うことにより、所望のパターンが形成された層間絶縁膜を得た。
(工程5;画素電極形成工程)
層間絶縁膜を形成したガラス基板を真空槽に移し、マスクを通して、DCスパッタリングにより、電子注入金属層上に、膜厚200nmのIn−Sn−O系の非晶質透明導電層(画素電極)を形成した。これによりアクティブマトリックス基板が得られた。
なお、DCスパッタリング条件は、スパッタガスとしてアルゴンと酸素の混合ガス(体積比1000:5)を用い、圧力0.3Pa、DC出力40Wとした。
【0092】
[層間絶縁性(リーク電流測定法)]
P型シリコンウェハ(抵抗値1Ω以下)に感放射線性樹脂組成物を塗布後、オーブン中230℃で15分間加熱し、樹脂膜を硬化させた。樹脂硬化膜の膜厚は150nmとした。
水銀プローバー(フォーディメンションインク社 CVmap92A)を用い、電流−電圧特性評価を行い、電圧量を1MV/cm印加したときの樹脂膜中に流れる電流値を測定した。
層間絶縁性につき、電流値が3.0×10-10A/cm2未満のときは良好、3.0×10-10A/cm2以上のときは不良とした。
【0093】
[液晶表示装置の製造]
対向電極を設けたカラーフィルタ基板と、外周にシール材を設けたアクティブマトリックス基板とを対向配設し、液晶を封入することにより液晶表示装置を得る。このようにして得られる液晶表示装置はゲートの駆動電圧60V、ソースの駆動電圧15Vで駆動する。
【0094】
[製造例1]
8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン60部、N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)40部、1,5−ヘキサジエン2.8部、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル400部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行って開環メタセシス重合体1Aを含有する重合反応溶液を得た。重合転化率は99.9%以上であった。この重合体1Aの重量平均分子量は、3,200、数平均分子量は1,900、分子量分布は1.68、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は1.35%であった。
次いで、水素添加触媒としてビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチレンルテニウムジクロリド0.1部を重合反応溶液に加え、水素を4MPaの圧力で、5時間溶存させて、水素添加反応を進行させた後、活性炭粉末1部を添加し、オートクレーブに入れて攪拌しつつ150℃で水素を4MPaの圧力で3時間溶存させた。次いで、溶液を取り出して孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターでろ過して活性炭を分離して開環メタセシス重合体1Aの水素化物1Bを含有する水素添加反応溶液476部を得た。ろ過は滞りなく行えた。ここで得られた水素化物1Bを含有する水素添加反応溶液の固形分濃度は20.6%であり、水素化物1Bの収量は98.1部であった。得られた水素化物1Bの重量平均分子量は4,430、数平均分子量は2,570、分子量分布は1.72、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は0.91%であった。水素化率は99.9%であった。
【0095】
こうして得られた水素化物1Bの水素添加反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して固形分濃度を35.0%に調整して、水素化物1Cの溶液を得た。濃縮の前後で収量、水素化物の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、及び分子量1,000以下のオリゴマー成分の比率に変化はなかった。
なお、上記において水素化物1Bと水素化物1Cとを区別して記載するが、かかる記載分けは便宜的なものであって、両水素化物は同一物である。以下、水素化物2Bと水素化物2C、及び水素化物3Bと水素化物3Cについても同様である。
これらの結果を表1に示す。
【0096】
[製造例2]
1,5−ヘキサジエンの量を2.3部とし、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドに代えて(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドを使用し、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルの量を200部とした以外は製造例1と同様にして、開環メタセシス重合体2Aを含有する重合反応溶液を得た。重合転化率は99.9%以上であった。この重合体2Aの重量平均分子量は3,970、数平均分子量は2,450、分子量分布は1.62、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は0.90%であった。
次いで水素添加触媒を追加しなかったこと以外は、製造例1と同様にして、開環メタセシス重合体2Aの水素化物2Bを含有する水素添加反応溶液286部を得た。ろ過は滞りなく行えた。水素化物2Cの溶液の固形分濃度は34.1%であり、水素化物2Bの収量は97.5部であった。得られた水素化物2Bの重量平均分子量は5,470、数平均分子量は3,310、分子量分布は1.65、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は0.62%であった。水素化率は99.9%であった。
これらの結果を表1に示す。
【0097】
[製造例3]
1,5−ヘキサジエン2.3部に代えて1,9−デカジエン4.8部を使用したほかは、製造例2と同様にして、開環メタセシス重合体3Aを含有する重合反応溶液を得た。重合転化率は99.9%以上であった。この重合体3Aの重量平均分子量は3,450、数平均分子量は2,000、分子量分布は1.73、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は1.15%であった。
この重合体3Aを製造例2と同様にして水素化して、開環メタセシス重合体3Aの水素化物3Bを含有する水素添加反応溶液279部を得た。ろ過は滞りなく行えた。水素化物3Cの溶液の固形分濃度は34.2%であり、水素化物3Bの収量は95.4部であった。この水素化物3Bの重量平均分子量は4,760、数平均分子量は2,700、分子量分布は1.76、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は0.78%、水素化率は99.9%であった。
これらの結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
[比較製造例1]
8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン60部、N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)40部、1−ヘキセン3.9部、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル400部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行って開環メタセシス重合体C1Aを含有する重合反応溶液を得た。重合転化率は99.9%以上であった。この重合体C1Aの重量平均分子量は3,080、数平均分子量は1,640、分子量分布は1.88、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は1.79%であった。
次いで、水素添加触媒としてビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチレンルテニウムジクロリド0.1部を用いて水素添加反応を行い、開環メタセシス重合体C1Aの水素化物C1Bの溶液を得た。得られた水素化物C1Bの重量平均分子量は4,400、数平均分子量は2,140、分子量分布は2.06、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は1.31%であった。水素化率は99.9%であった。
【0100】
得られた水素化物C1Bを含有する水素添加反応溶液に活性炭粉末1部を添加し、オートクレーブに入れて攪拌しつつ150℃にて水素を4MPaの圧力で3時間溶存させた。次いで、溶液を取り出して孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターでろ過して活性炭を分離した後、n−へキサン2,500部中に投入して、固形分を析出させた。固形分をろ過、乾燥し、水素化物C1Cの91.0部を得た。この水素化物C1Cの重量平均分子量は4,430、数平均分子量は2,320、分子量分布は1.91、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は1.15%であった。水素化物C1Cの収量は91.0部であった。
これらの結果を表1に示す。
【0101】
[比較製造例2]
n−へキサン2,500部に代えてシクロヘキサン1,000部を使用したほかは、比較製造例1と同様にして、79部の開環メタセシス重合体水素化物C2Cを得た。この水素化物C2Cの重量平均分子量は4,460、数平均分子量は2,620、分子量分布は1.70、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は0.90%であった。
これらの結果を表1に示す。
【0102】
[比較製造例3]
シクロヘキサンの量を500部としたほかは、比較製造例2と同様にして、57.1部の開環メタセシス重合体水素化物C3Cを得た。この水素化物C3Cの重量平均分子量は4,790、数平均分子量は3,280、分子量分布は1.46、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は0.61%であった。
これらの結果を表1に示す。
【0103】
[比較製造例4]
1−ヘキセンの量を2.6部としたほかは、比較製造例1と同様にして、開環メタセシス重合体C4Aを含有する重合反応溶液及び開環メタセシス重合体C4Aの水素化物C4Bを含有する水素添加反応溶液を得た。この重合体C4Aの重量平均分子量は3,920、数平均分子量は2,120、分子量分布は1.85、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は1.38%であった。また、水素化物C4Bの重量平均分子量は5,460、数平均分子量は2,700、分子量分布は2.02、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は1.08%であった。水素化率は99.9%であった。
得られた水素化物C4Bの溶液をシクロへキサン1,000部中に投入し、固形分を析出させた。固形分をろ過、乾燥し,89.8部の開環メタセシス重合体水素化物C4Cを得た。この水素化物C4Cの重量平均分子量は5,490、数平均分子量は3,190、分子量分布は1.72、分子量が1,000以下のオリゴマー成分の比率は0.60%であった。
これらの結果を表1に示す。
【0104】
[実施例1]
製造例1で得た水素化物1Cを含有する水素添加反応溶液(固形分35.0%)100部、架橋剤として脂環式構造含有多官能エポキシ化合物(分子量約2,700、エポキシ基数15、製品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)25部、感放射線化合物として1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.5モル)との縮合物25重量部、老化防止剤として(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート5部、接着助剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部及びシリコーン系界面活性剤(製品名「KP341」、信越化学工業社製)0.05部を混合し、更にジエチレングリコールエチルメチルエーテル92部及びN−メチル−2−ピロリドン8部を添加して混合攪拌した。混合物は5分以内に均一溶液になった。この溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(1D)を調製した。
得られた感放射線性樹脂組成物(1D)を、ガラス基板(製品名「コーニング1737ガラス」、コーニング社製)に、スピンコートした後、ホットプレートを用いて85℃で2分間プリベークして、膜厚1.2μmの樹脂膜を形成した。
この樹脂膜に、5μmのラインアンドスペースパターンのマスクを介して、365nmにおける光強度が5mW/cm2である紫外線を40秒間、空気中で照射した。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.4%水溶液を用いて25℃で90秒間現像処理を行った後、超純水で30秒間リンスしてラインアンドスペースのパターンを形成したところ、残膜率90%以上の良好なパターンが得られた。
また、感放射線性樹脂組成物(1D)により形成した樹脂膜の層間絶縁性を評価すると共に、該組成物を層間絶縁膜の材料として用いてアクティブマトリックス基板を製造した。また、該基板を用いる液晶表示装置を製造する。
これらの結果を表2に示す。
【0105】
[実施例2]
製造例2で得た水素化物2Cを含有する水素添加反応溶液(固形分34.1%)293部を用い、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルの添加量を6.9部に変更したこと以外は実施例1と同様にして各成分を混合したところ、混合物は5分以内に均一溶液となった。これを実施例1と同様にしてろ過し、感放射線性樹脂組成物(2D)を得た。
この感放射線性樹脂組成物(2D)についてパターンを形成したところ、残膜率90%以上の良好なパターンが得られた。
また、感放射線性樹脂組成物(2D)により形成した樹脂膜の層間絶縁性を評価すると共に、該組成物を層間絶縁膜の材料として用いてアクティブマトリックス基板を製造した。また、該基板を用いる液晶表示装置を製造する。
これらの結果を表2に示す。
【0106】
[実施例3]
製造例3で得た水素化物3Cを含有する水素添加反応溶液(固形分34.2%)292部を用い、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルの量を7.9部としたこと以外は実施例1と同様にして各成分を混合したところ、混合物は5分以内に均一溶液となった。これを実施例1と同様にしてろ過し、感放射線性樹脂組成物(3D)を得た。
この感放射線性樹脂組成物(3D)についてパターンを形成したところ、残膜率90%以上の良好なパターンが得られた。
また、感放射線性樹脂組成物(3D)により形成した樹脂膜の層間絶縁性を評価すると共に、該組成物を層間絶縁膜の材料として用いてアクティブマトリックス基板を製造した。また、該基板を用いる液晶表示装置を製造する。
これらの結果を表2に示す。
【0107】
[比較例1〜4]
比較製造例1〜4で得た各水素化物C1C〜C4C100部に、架橋剤として脂環式構造含有多官能エポキシ化合物(製品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)25部、感放射線化合物として1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.5モル)との縮合物25重量部、老化防止剤として(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート5部、接着助剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部及びシリコーン系界面活性剤(製品名「KP341」、信越化学工業社製)0.05部を混合し、更にプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート100部、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部及びN−メチル−1−ピロリドン100部からなる溶媒を添加して混合攪拌し、溶液を得た。混合物が均一溶液になるまでの時間を表2に示す。
この溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(C1D)〜(C4D)を調製した。これらの感放射線性樹脂組成物(C1D)〜(C4D)についてパターンを形成したところ、いずれも残膜率90%以上の良好なパターンが得られた。
また、感放射線性樹脂組成物(C1D)〜(C4D)のいずれかにより形成した樹脂膜の層間絶縁性を評価すると共に、該組成物を層間絶縁膜の材料として用いてアクティブマトリックス基板を製造した。また、該基板を用いる液晶表示装置を製造する。
これらの結果を表2に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
表1及び表2の結果より、以下のことが分かる。
即ち、製造例1〜3においては、重合工程において、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000〜10,000であり、数平均分子量が1,000以下の重合体成分の比率が2.0%以下であり、且つ重量平均分子量/数平均分子量の値が1.80以下である脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液が得られている。また、開環メタセシス重合体の収率は、95%を超えている。この重合体は、上述の特性を有しているので、オリゴマー成分除去等の目的で重合体を分離する操作の必要がない。この重合反応溶液に水素を導入して該重合反応溶液に含まれる脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を水素添加して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体水素化物を含有する水素添加反応溶液に感放射線化合物を配合することにより、配合から短時間で均一な感放射線性樹脂組成物を得ることができる(実施例1〜3)。
【0110】
一方、比較製造例1及び比較製造例4では、重合工程のみによっては、所望のポリマー特性を有するポリマーを得ることができず、重合体を凝固することによって低分子量成分を除去して初めて、所望の特性を有するポリマーが得られるが、大量の溶媒(比較製造例1では、製造例1の7倍以上、比較製造例4では、製造例1の3.5倍)を必要とする。この溶媒量を減少しようとすると、ポリマー収率が大幅に低下する(比較製造例2及び3)。また、このように重合後に、凝固、再溶解工程を経て得られた脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を使用した場合においては、開環メタセシス重合体が溶解し均一化するまでに非常に長時間を要し、生産性に劣ることが分かる(比較例1〜4)。
【0111】
また、実施例1〜3の結果と比較例1〜4の結果とを比較すると、層間絶縁性の評価結果から、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いたときは、層間絶縁性が良好(リーク電流が少ない)であるのに対して、重合後、凝固工程を経て低分子量成分を除去する方法によって得られた重合体から得られた感放射線性樹脂組成物を用いたときは、層間絶縁性が不良(リーク電流が多い)であることが分かる。
この理由は、明らかではないが、従来法では感放射線性樹脂組成物の調製時のろ過により除けない微粒子が組成物中に残留し、それが層間絶縁膜の絶縁性の低下に大きく影響するものと考えられる。すなわち、層間絶縁膜に不純物が存在すると、リーク電流が発生し層間絶縁膜の性能が低下して消費電力が増えたり、トランジスタが動作できなくなったりして信頼性が低下するものと考えられるところ、本発明の感放射線性樹脂組成物によれば層間絶縁膜中の不純物を顕著に低減でき、リーク電流の発生を抑制して層間絶縁膜の特性低下を防止できたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の平面表示装置の構成の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す平面表示装置の平面図におけるX−Y断面図である。
【符号の説明】
【0113】
101 アクティブマトリックス基板
102 カラーフィルタ基板
103 シール材
104 層間絶縁膜
105 電極パターン
108 入力端子
110 液晶層
111 配向膜
201 TFT
202 画素電極
203 ゲート信号線
204 ソース信号線
206 対向電極
207 カラーフィルタ層
208 ブラックマトリックス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開環メタセシス重合触媒を用いて末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の存在下に溶媒中で脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液に、感放射線化合物を配合することを特徴とする感放射線性樹脂組成物の調製方法。
【請求項2】
開環メタセシス重合触媒を用いて末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物の存在下に溶媒中で脂環式オレフィンを重合して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を含有する重合反応溶液に水素を導入して該重合反応溶液に含まれる脂環式オレフィン開環メタセシス重合体を水素添加して得た脂環式オレフィン開環メタセシス重合体水素化物を含有する水素添加反応溶液に、感放射線化合物を配合する感放射線性樹脂組成物の調製方法。
【請求項3】
脂環式オレフィン開環メタセシス重合体の重量平均分子量が2,000〜10,000であり、数平均分子量1,000以下の成分の含有量が2重量%以下である請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物の調製方法。
【請求項4】
感放射線化合物と共に架橋剤をも配合する請求項1〜3のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の調製方法。
【請求項5】
溶媒が150〜250℃の沸点を有する極性溶媒を含有してなるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の調製方法。
【請求項6】
開環メタセシス重合触媒がルテニウムを含有するものである、請求項1〜5のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の調製方法。
【請求項7】
末端ビニル基を2以上有する非共役ポリエン化合物が1,5−ヘキサジエンである、請求項1〜6のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の調製方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の調製方法により得られた感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の感放射線性樹脂組成物からなる樹脂膜を基板上に積層してなる積層体。
【請求項10】
樹脂膜がパターン化樹脂膜である請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
請求項8に記載の感放射線性樹脂組成物を用いて樹脂膜を基板上に形成することを特徴とする、基板とその上に形成された樹脂膜とからなる積層体の製造方法。
【請求項12】
樹脂膜を基板上に形成した後、樹脂を架橋する請求項11記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項8に記載の感放射線性樹脂組成物を用いて樹脂膜を基板上に積層し、この樹脂膜に活性放射線を照射して樹脂膜中に潜像パターンを形成し、次いで樹脂膜に現像液を接触させることにより潜像パターンを顕在化させて、基板上にパターン化樹脂膜を形成する請求項10記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
基板上にパターン化樹脂膜を形成した後に、樹脂を架橋する請求項13記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
マトリックス状にスイッチング素子が設けられていると共に該スイッチング素子を駆動するゲート信号を供給するゲート信号線及び該スイッチング素子に表示信号を供給するソース信号線が互いに交差するよう設けられ、該スイッチング素子、該ゲート信号線及び該ソース信号線上に設けられた層間絶縁膜を間に介して各信号線と一部重なるように画素電極が設けられてなるアクティブマトリックス基板であって、前記層間絶縁膜が請求項8に記載の感放射線性樹脂組成物により形成されたものであることを特徴とするアクティブマトリックス基板。
【請求項16】
光学制御部材を間に挟んで対向配設された一対の基板からなる平面表示装置であって、一対の基板のうちの一方の基板が請求項15に記載のアクティブマトリックス基板であることを特徴とする平面表示装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−307155(P2006−307155A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20148(P2006−20148)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】