説明

感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法

【課題】感度、解像性、LWR及び耐エッチング性に優れるレジストパターンを形成可能な感放射線性樹脂組成物並びにこの感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位及び酸解離性基を有する構造単位を含む重合体、並びに酸発生体を含有する感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びこの感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子等を製造する微細加工の分野において、より高い集積度を得るためにKrFエキシマレーザー(波長248nm)やArFエキシマレーザー(波長193nm)等に代表される短波長放射線の照射(露光)を使用したリソグラフィ技術の開発が行われている。これらの露光光源に適応するレジスト材料としては、高感度、高解像性等が求められ、通常、酸解離性基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する酸発生剤とを含有した化学増幅型の感放射線性樹脂組成物が用いられている(特開昭59−45439号公報参照)。
【0003】
一方、さらなるデバイスの微細化が進んでいる近年にあっては、エキシマレーザーよりさらに短波長であるX線、電子線(EB)、極紫外線(EUV)等を利用する技術についても検討されている。しかしながら、従来の感放射線性樹脂組成物を用いて、より微細なレジストパターンを形成した場合、レジスト膜中における酸の拡散距離(以下、「拡散長」とも称する)は、ある程度短いことが適切であるとされるところ、この拡散長が不適切であることに起因してか、Line Width Roughness(LWR)、耐エッチング性等のリソグラフィー特性を十分に満足することができないのが現状である。
【0004】
このような状況に鑑み、より微細なレジストパターンを形成するための感放射線性樹脂組成物には感度、解像性等の基本特性の向上のみならず、LWR、耐エッチング性の向上等が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感度、解像性、LWR及び耐エッチング性に優れるレジストパターンを形成可能な感放射線性樹脂組成物並びにこの感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)、式(2)で表される構造単位(II)及び酸解離性基を有する構造単位を含む重合体(以下、「[A]重合体」とも称する)、並びに
[B]感放射線性酸発生体(以下、「[B]酸発生体」とも称する)
を含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】

(式(1)中、
は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
は、単結合、炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基又はこれらのうち2以上を組み合わせた2価の連結基である。但し、上記鎖状炭化水素基又は連結基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
は、スルトン基である。)
【化2】

(式(2)中、
は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
は、単結合、炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、又はこれらのうちの2以上の基を組み合わせた2価の連結基である。
aは、0又は1である。bは、0〜3の整数である。cは、0〜3の整数である。但し、aが0の場合、b+c≦5の条件を満たす。
は、1価の有機基である。但し、Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【0008】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[B]酸発生体を含有し、露光により[B]酸発生体から酸が発生する。ここで当該感放射線性樹脂組成物のベース樹脂となる[A]重合体は、酸解離性基を有する構造単位と共に、特定構造を有する構造単位(I)を含むことから上記酸の拡散長を短くでき、酸の拡散を抑制できる。酸の拡散が抑制されることで、[A]重合体の未露光部における酸解離性基の解離が抑えられ、結果として当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性及びLWRに優れるレジストパターンの形成が可能となる。また、[A]重合体は、特定構造を有する構造単位(II)を含むことから、[A]重合体と[B]酸発生体との相互作用が強くなり、[A]化合物から発生する酸の拡散がより抑制される。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は耐エッチング性に優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0009】
上記スルトン基は、下記式(3)で表される基であることが好ましい。
【化3】

(式(3)中、Rは、酸素原子、硫黄原子、又は酸素原子若しくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基である。dは、0〜2の整数である。Rは、1価の有機基である。但し、Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。*は、上記Rと結合する部位を示す。)
【0010】
[A]重合体中のスルトン基を上記特定構造とすることで、発生する酸の拡散をさらに抑制できる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性及びLWRにより優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0011】
上記Rは、単結合、−CHCOO−**又は−CHCH−O−**(**は、Rと結合する部位を示す)、Rがメチレン基、かつdが0であることが好ましい。構造単位(I)をかかる特定構造とすることで、酸の拡散を特に抑制できる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性及びLWRに特に優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0012】
上記Rは、単結合、エステル基又は***−CONH−基(***は、Rが結合している炭素原子と結合する部位を示す)であることが好ましい。構造単位(II)をかかる特定構造とすることで、[A]重合体と[B]酸発生体との相互作用がより強くなる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は耐エッチング性により優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0013】
[A]重合体における構造単位(I)の含有割合は、5モル%以上50モル%以下であり、かつ構造単位(II)の含有割合は、5モル%以上50モル%以下であることが好ましい。構造単位(I)及び構造単位(II)の含有割合を上記特定範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性、LWR及び耐エッチング性をバランス良く兼ね備えたレジストパターンの形成が可能となる。
【0014】
本発明のレジストパターンの形成方法は、
(1)当該感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、及び
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程
を有する。
【0015】
当該形成方法によると、当該感放射線性樹脂組成物を用いて感度、解像性、LWR及び耐エッチング性に優れるレジストパターンを形成できる。従って、EB、EUV等の短波長放射線を使用した場合であっても、当該感放射線性樹脂組成物から微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【0016】
なお、本明細書における「感放射線性樹脂組成物」の「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等を含む概念である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、感度、解像性、LWR及び耐エッチング性に優れるレジストパターンを形成可能な感放射線性樹脂組成物並びにこの感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することができる。従って、EB、EUV等の短波長放射線を使用した場合であっても、当該感放射線性樹脂組成物から微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体を含有する。また、当該感放射線性樹脂組成物は好ましくは[C]酸拡散制御剤及び溶媒を含有する。さらに、当該感放射線性樹脂組成物は本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0019】
<[A]重合体>
[A]重合体は酸解離性基を有する後述の構造単位(III)を含むため、露光により[B]酸発生体から発生する酸を触媒として酸解離性基が解離し、現像液に対する溶解速度が変化し、レジストパターンを形成する。
【0020】
また、[A]重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)及び式(2)で表される構造単位(II)を含む。また、[A]重合体は、本発明の効果を妨げない限り後述する構造単位(IV)を有していてもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0021】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される。上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、単結合、炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基又はこれらのうち2以上を組み合わせた2価の連結基である。但し、上記鎖状炭化水素基又は連結基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、スルトン基である。[A]重合体は、特定構造を有する構造単位(I)を含むことから上記酸の拡散長を短くでき、酸の拡散を抑制できる。
【0022】
上記Rが示す炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0023】
上記Rが示す上記スルトン基としては、上記式(3)で表される基であることが好ましい。上記式(3)中、Rは、酸素原子、硫黄原子、又は酸素原子若しくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基である。dは、0〜2の整数である。Rは、1価の有機基である。但し、Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。*は、上記Rと結合する部位を示す。[A]重合体中のスルトン基を上記特定構造とすることで、発生する酸の拡散をさらに抑制できる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性及びLWRにより優れるレジストパターンの形成が可能となる。上記Rが示す炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基等が挙げられる。上記Rが示す1価の有機基としては、例えば1価の芳香族炭化水素基、1価の鎖状炭化水素基等が挙げられる。上記Rが示す1価の芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられ、詳細には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記Rが示す1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0024】
構造単位(I)の具体例としては、下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0025】
【化4】

【0026】
これらのうち、上記Rが単結合、−CHCOO−**又は−CHCH−O−**(**は、Rと結合する部位を示す)、Rがメチレン基、かつdが0である構造が構造単位(I)としては好ましい。構造単位(I)をかかる特定構造とすることで、酸の拡散を特に抑制できる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性及びLWRに特に優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0027】
[A]重合体における構造単位(I)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜50モル%が好ましく、10モル%〜40モル%がより好ましい。構造単位(I)の含有率を上記範囲とすることで、本願発明の効果がいかんなく奏される。なお、[A]重合体は、構造単位(I)を2種以上含んでいてもよい。
【0028】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、上記式(2)で表される。上記式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、単結合、炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基又はこれらのうちの2以上の基を組み合わせた2価の連結基である。aは、0又は1である。bは、0〜3の整数である。cは、0〜3の整数である。但し、aが0の場合、b+c≦5の条件を満たす。Rは、1価の有機基である。但し、Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。[A]重合体は、特定構造を有する構造単位(II)を含むことから、[A]重合体と[B]酸発生体との相互作用が強くなり、[A]化合物から発生する酸の拡散がより抑制される。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は耐エッチング性に優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0029】
上記Rが示す炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。Rが示す1価の有機基としては、例えば芳香族炭化水素基、鎖状炭化水素基、アルコキシル基、アシロキシ基等が挙げられる。上記Rが示す1価の芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられ、詳細には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記Rが示す1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。上記Rが示す1価のアルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。上記Rが示す1価のアシロキシ基としては、例えばアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0031】
【化5】

【0032】
上記式(2−1)〜(2−4)で表される構造単位(II)を与える単量体としては、例えばヒドロキシスチレン誘導体等が挙げられる。また、加水分解することにより、ヒドロキシスチレン誘導体が得られる化合物を単量体として用いることにより得ることもできる。
【0033】
上記式(2−1)〜(2−4)で表される構造単位(II)を与える単量体としては、例えばp−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシ)スチレン、p−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。なお、p−アセトキシスチレンを用いた場合には、重合反応後、側鎖の加水分解反応を行うことにより、上記構造単位を与える。
【0034】
上記式(2−5)及び(2−6)で表される構造単位(II)を与える単量体としては、例えば4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記式(2−7)及び(2−8)で表される構造単位(II)を与える単量体としては、例えばN−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等が挙げられる。
【0036】
上記式(2−9)及び(2−10)で表される構造単位(II)を与える単量体としては、例えば5−ヒドロキシナフタレン−1−イルメタクリレート、5−ヒドロキシナフタレン−1−イルアクリレート等が挙げられる。
【0037】
これらのうち、上記Rが単結合、エステル基又は***−CONH−基(***は、Rが結合している炭素原子と結合する部位を示す)である構造が構造単位(II)としては好ましい。構造単位(II)をかかる特定構造とすることで、[A]重合体と[B]酸発生体との相互作用がより強くなる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は耐エッチング性により優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0038】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜50モル%が好ましく、10モル%〜30モル%がより好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、本願発明の効果がいかんなく奏される。なお、[A]重合体は、構造単位(II)を2種以上含んでいてもよい。
【0039】
[構造単位(III)]
[A]重合体は、酸解離性基を有する構造単位として、下記式で表される構造単位(以下、「構造単位(III)」とも称する)を含む。
【0040】
【化6】

【0041】
上記式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R10〜R12は、それぞれ独立して炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数6~14のアリール基である。但し、R10とR11とが互いに結合している炭素原子と共に、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成していてもよい。
【0042】
上記R10〜R12で表される炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、1−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、neo−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、i−ノニル基、n−デシル基、i−デシル基等が挙げられる。上記R10〜R12が示す炭素数6〜14のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。
【0043】
上記R10とR11とが互いに結合している炭素原子と共に、形成していてもよい炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジシクロペンタン、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン等の脂環式炭化水素から水素原子2つを除いた形の基が挙げられる。
【0044】
構造単位(III)の具体例としては、下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0045】
【化7】

【0046】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0047】
これらのうち、上記Rがメチル基であり、R10とR11とが互いに結合している炭素原子と共に、炭素数5〜10の2価の脂環式炭化水素基を形成し、R12が炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であるか、又はR10〜R12が、それぞれメチル基である構造が構造単位(III)としては好ましい。
【0048】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜70モル%が好ましく、10モル%〜60モル%がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジストパターンのリソグラフィー性能がより向上する。[A]重合体は、構造単位(III)を2種以上含んでいてもよい。
【0049】
[構造単位(IV)]
[A]重合体は、ラクトン構造及び環状カーボネート構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位(以下、「構造単位(IV)」とも称する)を含んでいてもよい。[A]重合体が構造単位(IV)を含むことで、当該感放射線性樹脂組成物から得られるレジスト塗膜の密着性が向上する。
【0050】
構造単位(IV)としては、例えば下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0051】
【化8】

【0052】
【化9】

【0053】
上記式中、R13は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0054】
[A]重合体における構造単位(IV)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜60モル%が好ましく、5モル%〜50モル%がより好ましい。構造単位(IV)の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジストパターンの密着性が向上し、耐パターン倒れ性等を向上できる。[A]重合体は、構造単位(IV)を2種以上含んでいてもよい。
【0055】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0056】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常30℃〜180℃であり、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜140℃がさらに好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜7時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
【0057】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0058】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば限定されない。重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0059】
重合反応により得られた樹脂は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、樹脂を回収することもできる。
【0060】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上400,000以下がより好ましい。なお、[A]重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、[A]重合体のMwが500,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0061】
また、[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、フォトレジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0062】
なお、本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0063】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、レジストパターン形成の一工程である露光工程において、マスクを通過した光によって酸を発生する化合物である。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の態様(以下、この態様を「[B]酸発生剤」とも称する)でも、重合体の一部として組み込まれた態様でも、これらの両方の態様でもよい。
【0064】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの[B]酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0065】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0066】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート及びトリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートが好ましい。
【0067】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0068】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0069】
スルホンイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。これらのスルホンイミド化合物のうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0070】
これらの[B]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[B]酸発生体が「剤」である場合の使用量としては、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト塗膜の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上35質量部以下が好ましく、1質量部以上30質量部以下がより好ましい。
【0071】
<[C]酸拡散制御剤>
当該感放射線性樹脂組成物は、好ましくは[C]酸拡散制御剤を含有する。[C]酸拡散制御剤は、露光により[B]酸発生体から生じる酸の、レジスト塗膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する作用を有するものである。従って、当該感放射線性樹脂組成物は、より酸の拡散長を短くでき酸の拡散を相乗的に抑制できる。結果として当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性及びLWRに優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0072】
[C]酸拡散制御剤としては、例えば含窒素有機化合物や、感光性塩基性化合物が挙げられる。含窒素有機化合物としては、例えば、下記式(4)で表される含窒素化合物(i)、同一分子内に窒素原子を2個有する含窒素化合物(ii)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物又は重合体(以下、「含窒素化合物(iii)」とも称する)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0073】
【化10】

【0074】
上記式(4)中、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して水素原子、アラルキル基芳香族炭化水素基又は直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基である。上記アルキル基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0075】
含窒素化合物(i)としては、例えば
n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;
ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
トリエタノールアミン等の置換アルキルアミン;
アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6−トリ−tert−ブチル−N−メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0076】
含窒素化合物(ii)としては、例えばエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。
【0077】
含窒素化合物(iii)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等が挙げられる。
【0078】
アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0079】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0080】
含窒素複素環化合物としては、例えば
イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール等のイミダゾール類;
ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン、2,2’:6’,2’’−ターピリジン等のピリジン類;
ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類;
ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0081】
上記感光性塩基性化合物としては、上述の性質を有する限り特に限定されないが、例えば下記式(5−1)及び(5−2)で表される化合物等が挙げられる。
【0082】
【化11】

【0083】
上記式(5−1)中、R18〜R20は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、脂環式炭化水素基、−OSO−R21基、又は−SO−R22基である。但し、上記R18〜R20が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。R21及びR22は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。Aは、OH、R23、又はR24COOである。但し、R23及びR24は、1価の有機基である。
【0084】
上記式(5−2)中、R25及びR26は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は脂環式炭化水素基である。Aは、OH、R27、又はR28COOである。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。但し、R27及びR28は1価の有機基である。
【0085】
上記R18〜R20が示すハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、臭素原子等が挙げられる。上記R18〜R20が示す炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。上記R18〜R20が示す脂環式炭化水素基としては、例えば炭素数5〜25の脂環式炭化水素基等が挙げられ、詳細には例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。上記R21及びR22が示す芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられ、詳細には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記R23、R24、R27及びR28が示す1価の有機基としては、例えばアルキル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0086】
感光性塩基性化合物としては、上記式(5−1)で表されるトリフェニルスルホニウム化合物が好ましい。上記R18〜R20としては、それぞれ独立して水素原子、メチル基又はt−ブチル基が好ましい。上記Aとしては、OH、CHCOO、下記式(6−1)〜(6−5)で表されるアニオンが好ましい。
【0087】
【化12】

【0088】
なお、これらの[C]酸拡散制御剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。[C]酸拡散制御剤の含有量が20質量部を超えると、形成したレジスト塗膜の感度や露光部の現像性が低下するおそれがある。なお、0.1質量部未満である場合、プロセス条件によっては形成したレジスト塗膜のパターン形状や寸法忠実度が低下する不都合がある。
【0089】
<溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は通常、溶媒を含有する。溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0090】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0091】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0092】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0093】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0094】
その他の溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0095】
これらの溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、シクロヘキサノンが好ましい。
【0096】
<その他の任意成分>
当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂環式骨格化合物、界面活性剤、増感剤等のその他の任意成分を含有できる。以下、これらの任意成分について詳述する。かかるその他の任意成分は、それぞれを単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0097】
[脂環式骨格化合物]
脂環式骨格化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。脂環式骨格化合物としては、例えば1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。
【0098】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。
【0099】
[増感剤]
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを[B]酸発生体に伝達しそれにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を有する。増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0100】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば上記溶媒中で[A]重合体、[B]酸発生体、[C]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。溶媒としては、[A]重合体、[B]酸発生体、[C]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を溶解又は分散可能であれば特に限定されない。当該感放射線性樹脂組成物は通常、その使用に際して、全固形分濃度が1質量%〜30質量%、好ましくは1.5質量%〜25質量%となるように溶媒に溶解した後、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって、調製される。
【0101】
<レジストパターンの形成方法>
本発明のレジストパターンの形成方法は、
(1)当該感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程(以下、「工程(1)」とも称する)、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、「工程(2)」とも称する)、及び
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程(以下、「工程(3)」とも称する)
を有する。以下、各工程を詳述する。
【0102】
当該形成方法によると、当該感放射線性樹脂組成物を用いて感度、解像性、LWR及び耐エッチング性に優れるレジストパターンを形成できる。従って、EB、EUV等の短波長放射線を使用した場合であっても、当該感放射線性樹脂組成物から微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【0103】
[工程(1)]
本工程では、感放射線性樹脂組成物又はこれを溶媒に溶解させて得られた当該感放射線性樹脂組成物の溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるように塗布し、場合によっては通常70°〜160℃程度の温度でプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を揮発させレジスト膜を形成する。
【0104】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成されたレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し露光させる。なお、この際所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等から適宜選択して照射する。これらのうち、EB、EUV(極紫外線、波長13.5nm)等のより微細なパターンを形成可能な光源が好ましい。次いで、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[A]重合体の酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、通常50℃〜180℃程度である。
【0105】
[工程(3)]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することによりレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、13C−NMR分析は、JNM−EX270(日本電子製)を用いて測定した。
【0107】
[A]重合体及び[A]重合体に相当する比較例用の重合体の合成に使用した単量体の構造を下記に示す。
【0108】
【化13】

【0109】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
上記化合物(M−6)12.06g(15モル%)、化合物(M−1)37.97g(50モル%)及び化合物(M−3)49.97g(35モル%)を、2−ブタノン200gに溶解し、さらに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)5.93gを投入した単量体溶液を準備した。100gの2−ブタノンを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、4,000gのn−ヘキサンへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を400gのイソプロパノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後にろ別する操作を2回行い、その後、50℃にて17時間真空乾燥し、白色粉末の共重合体(A−1)を得た。(A−1)のMwは、6,300、Mw/Mn=1.46であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−6)、化合物(M−1)及び化合物(M−3)に由来する構造単位の含有率は、14.5(構造単位(II)):50.5(構造単位(III)):35.0(構造単位(I))(モル%)であった。
【0110】
[合成例2]
上記化合物(M−6)14.20g(15モル%)、化合物(M−2)37.77g(50モル%)及び化合物(M−4)48.03g(35モル%)を、2−ブタノン200gに溶解し、さらに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)6.98gを投入した単量体溶液を準備した。100gの2−ブタノンを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、4,000gのn−ヘキサンへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を400gのイソプロパノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後にろ別する操作を2回行い、その後50℃にて17時間真空乾燥し、白色粉末の共重合体(A−2)を得た。(A−2)のMwは、6,800、Mw/Mn=1.36であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−6)、化合物(M−2)及び化合物(M−4)に由来する各構造単位の含有率は、14.1(構造単位(II)):50.0(構造単位(III)):34.9(構造単位(I))(モル%)であった。
【0111】
[合成例3]
上記化合物(M−7)15.27g(15モル%)、化合物(M−1)37.52g(50モル%)及び化合物(M−5)47.20g(35モル%)を、2−ブタノン200gに溶解し、さらに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)5.86gを投入した単量体溶液を準備した。100gの2−ブタノンを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、4,000gのn−ヘキサンへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を400gのイソプロパノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後にろ別する操作を2回行い、その後50℃にて17時間真空乾燥し、白色粉末の共重合体(A−3)を得た。(A−3)のMwは、5,300、Mw/Mn=1.33であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−7)、化合物(M−1)及び化合物(M−5)に由来する各構造単位の含有率は、15.0(構造単位(II)):34.0(構造単位(III)):36.0(構造単位(I))(モル%)であった。
【0112】
[合成例4]
上記化合物(M−1)44.37g(60モル%)及び化合物(M−3)55.63g(40モル%)を、2−ブタノン200gに溶解し、さらに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)5.78gを投入した単量体溶液を準備した。100gの2−ブタノンを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、4,000gのn−ヘキサンへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を400gのイソプロパノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後にろ別する操作を2回行い、その後、50℃にて17時間真空乾燥し、白色粉末の共重合体(CA−1)を得た。(CA−1)のMwは6,800、Mw/Mn=1.50であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)及び化合物(M−3)に由来する各構造単位の含有率は58.0(構造単位(III)):42.0(構造単位(I))(モル%)であった。
【0113】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
[実施例1]
[A]重合体としての共重合体(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての後述する(B−1)27質量部、[C]酸拡散制御剤としての後述する(C−1)2質量部、並びに溶媒としての酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(D−1)1,400質量部及びシクロヘキサノン(D−2)3,300質量部を混合し、各成分を混合して均一溶液とした。その後、孔径200nmのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、感放射線性樹脂組成物を調製した(固形分濃度約2.7%)。
【0114】
[実施例2〜4及び比較例1〜2]
表1に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例1と同様に操作して、感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0115】
各実施例及び比較例の調製に用いた[B]酸発生剤及び[C]酸拡散制御剤は以下の通りである。
【0116】
<[B]酸発生剤>
B−1:下記式で表される化合物
【0117】
【化14】

【0118】
<酸拡散制御剤>
C−1:下記式で表されるトリフェニルスルホニウム2−ヒドロキシサリチレート
【0119】
【化15】

【0120】
(C−2):N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール
【0121】
<レジストパターンの形成>
東京エレクトロン製「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウェハ上に実施例1〜4並びに比較例1及び2の感放射線性樹脂組成物組成物溶液をそれぞれスピンコートにより塗布して、110℃で60秒間PBを行い、膜厚50nmの塗膜を形成した。次に、簡易型の電子線描画装置(日立製作所製、HL800D、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm)を用い、マスクパターンを介して露光した。EBの照射後、110℃で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した後、純水で水洗し、乾燥して、レジストパターンを形成した。
【0122】
<評価>
上記のように形成したレジストパターンについて、以下のように各種物性を評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0123】
[感度(μC/cm)]
線幅130nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が130nmのスペース部とからなるラインアンドスペース(1L1S)が1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とした。この最適露光量を感度(μC/cm)とした。感度が45.5μC/cm以下の場合に、感度を良好と判断した。
【0124】
[解像性(nm)]
1L1Sについて、最適露光量により解像されるラインパターンの最小線幅を解像性(nm)とした。解像性が80nm以下の場合に、解像性を良好と判断した。
【0125】
[LWR]
ターゲットサイズが130nmの1L1Sのラインパターンを、半導体用走査電子顕微鏡(高分解能FEB測長装置、S−9220、日立製作所製)にて観察した。S−9220にてパターン上部から、線幅を任意のポイントで10点観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した値をLWRとした。LWRが12nm以下の場合に、LWRを良好と判断した。
【0126】
【表1】

【0127】
表1に示される結果から明らかなように、当該感放射線性樹脂組成物は感度、解像性、LWR及び耐エッチング性に優れるレジストパターンを形成できることがわかった。なお、本実施例においては、露光光源としてEBを使用しているが、EUV等の短波長放射線を使用した場合であっても、得られる微細パターンはレジスト特性が類似しており、同等の評価結果が得られるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、感度、解像性、LWR及び耐エッチング性に優れるレジストパターンを形成可能な感放射線性樹脂組成物並びにこの感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することができる。従って、EB、EUV等の短波長放射線を使用した場合であっても、当該感放射線性樹脂組成物から微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)、式(2)で表される構造単位(II)及び酸解離性基を有する構造単位を含む重合体、並びに
[B]感放射線性酸発生体
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、
は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
は、単結合、炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基又はこれらのうち2以上を組み合わせた2価の連結基である。但し、上記鎖状炭化水素基又は連結基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
は、スルトン基である。)
【化2】

(式(2)中、
は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
は、単結合、炭素数1〜4の2価の鎖状炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、又はこれらのうちの2以上の基を組み合わせた2価の連結基である。
aは、0又は1である。bは、0〜3の整数である。cは、0〜3の整数である。但し、aが0の場合、b+c≦5の条件を満たす。
は、1価の有機基である。但し、Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記スルトン基が、下記式(3)で表される基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】

(式(3)中、Rは、酸素原子、硫黄原子、又は酸素原子若しくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基である。dは、0〜2の整数である。Rは、1価の有機基である。但し、Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。*は、上記Rと結合する部位を示す。)
【請求項3】
上記Rが、単結合、−CHCOO−**又は−CHCH−O−**(**は、Rと結合する部位を示す)、Rがメチレン基、かつdが0である請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
上記Rが、単結合、エステル基又は***−CONH−基(***は、Rが結合している炭素原子と結合する部位を示す)である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
[A]重合体における構造単位(I)の含有割合が、5モル%以上50モル%以下であり、かつ構造単位(II)の含有割合が、5モル%以上50モル%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
(1)請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、及び
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程
を有するレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2012−177801(P2012−177801A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40777(P2011−40777)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】