説明

感活性光線または感放射線樹脂組成物および該組成物を用いたパターン形成方法

【課題】高感度、密集パターンおよび孤立ラインの高解像性、十分な露光余裕度、良好なラインウィズスラフネス、良好なブリッジマージン、孤立スペースの高解像性を同時に満足する感活性光線または感放射線樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)炭素数5から8の単環の酸解離性シクロアルキル(メタ)クリレート単位と置換スチレン単位を含有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、及び、(B)活性光線又は放射線の照射により、炭素数3以上の炭化水素基を置換基を芳香環に有する構造のスルホン酸を発生する化合物を含有することを特徴とする、感活性光線または感放射線樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる感活性光線または感放射線樹脂組成物、及び該組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、電子線、X線、EUV光(波長:13nm付近)を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができる感活性光線または感放射線樹脂組成物およびそれを用いたパターン形成方法に関する。
【0002】
なお、本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
【背景技術】
【0003】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、さらにKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。さらには、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0004】
これら電子線やX線、あるいはEUV光リソグラフィーは、次世代もしくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のレジストが望まれている。
【0005】
特にウェハー処理時間の短縮化のため、高感度化は非常に重要な課題であるが、高感度化を追求しようとすると、解像力の低下のみならず、ラインウィズスラフネスの悪化が起こり、これらの特性を同時に満足するレジストの開発が強く望まれている。
【0006】
ここで、ラインウィズスラフネスとは、レジストのパターンと基板界面のエッジがレジストの特性に起因して、ライン方向と垂直な方向に不規則に変動するために、パターンを真上から見たときにエッジが凹凸に見えることを言う。この凹凸がレジストをマスクとするエッチング工程により転写され、電気特性を劣化させるため、歩留りを低下させる。
【0007】
高感度と、高解像性、良好なパターン形状、良好なラインウィズスラフネスはトレードオフの関係にあり、これを如何にして同時に満足させるかが非常に重要である。
【0008】
かかる電子線、X線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適したレジストとしては、高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型ポジ型レジストが検討され、主成分としてアルカリ現像液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる性質を有するフェノール性樹脂(以下、フェノール性酸分解性樹脂と略す)、及び酸発生剤からなる化学増幅型ポジ型レジスト組成物が使用されている。
【0009】
これらのポジ型レジストに関して、これまで酸分解性アクリレートモノマーを共重合したフェノール性酸分解性樹脂を用いたレジスト組成物がいくつか知られている。それらについては、例えば、特許文献1〜4に開示されたポジ型レジスト組成物等を挙げることができる。
【0010】
しかしながら、実用化のためには、感度、種々の回路パターンにおける解像性、露光余裕度、ラインウィズスラフネス(LWR)などの更なる性能向上が求められている。また、ブリッジマージンと孤立スペース解像性について、これらの改善も求められている。
【0011】
ここで、露光余裕度とは、露光量が変化したときに、パターンサイズが安定に維持されることを意味する。この露光余裕度が十分であると、解像性能が安定し、歩留まりの低下を引き起こすことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5561194号明細書
【特許文献2】特開平8−101509号公報
【特許文献3】特開2000−347405号公報
【特許文献4】特開2004−210803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、高エネルギー線、X線、電子線あるいはEUV光を使用する半導体素子の微細加工における性能向上技術の課題を解決することであり、高感度、密集パターンおよび孤立ラインの高解像性、十分な露光余裕度、良好なラインウィズスラフネス、良好なブリッジマージン、孤立スペースの高解像性を同時に満足する感活性光線または感放射線樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することにある。
【0014】
ここで、孤立ラインの様に周りがすべて露光されているようなパターンを解像させるためには、露光により発生した酸の拡散を十分に抑制することが重要である。酸の拡散抑制が不十分な場合には、露光部からの酸の拡散によって孤立ラインが形成されなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有する単位を含有する重合体と特定の構造を有する酸を発生する酸発生剤を含む感活性光線または感放射線樹脂組成物を用いたパターン形成によって、上記目的が達成されることを見出した。
【0016】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1) (A)一般式(AI)で表される単位と一般式(AII)で表される単位を含有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、及び、(B)活性光線又は放射線の照射により、一般式(BI)で表される構造の酸を発生する化合物を含有することを特徴とする、感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
一般式(AI)に於いて、
Rxは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0019】

Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1は、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又は単環のシクロアルキル基を表す。
Zは、Cとともに炭素数5から8の単環のシクロアルキル基を形成している。
一般式(AII)において、
Rxは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0020】

Rxは水素原子または、有機基を表し、Rxは非酸分解性基を表す。
mは1〜4の整数、nは0〜4の整数であり、1≦n+m≦5である。mが2〜4のとき、複数のRxは、同じでも異なっていてもよく、nが2〜4のとき、複数のRxは、同じでも異なっていてもよい。
一般式(BI)において、
Arは、芳香族環を表し、A基以外に更に置換基を有してもよい。
pは、1以上の整数を表す。
Aは、炭素数3以上の炭化水素基を有する基を表す。
pが2以上のとき、複数のA基は同一でも異なっていてもよい。
【0021】
(2) 一般式(BI)において、Aが炭素原子数4以上の炭化水素基を有する基である、(1)に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【0022】
(3) 一般式(BI)において、Aが炭素原子数4以上の環状炭化水素基を有する基である、(1)に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【0023】
(4) 一般式(BI)において、Aがシクロヘキシル基を有する基である、(1)に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【0024】
(5) 一般式(BI)において、Arはベンゼン環を表し、pは2以上の整数を表し、2以上のA基のうち、2つのA基はそれぞれ−SOH基を基準としてオルト位に置換しており、A基のArに隣接する炭素原子が3級もしくは4級の炭素原子であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【0025】
(6) 一般式(BI)において、Arにより表される基が、A基以外の置換基として、炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基から選択される少なくとも1つの置換基を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【0026】
(7) 一般式(AI)で表される単位が式(AI−1)で表される構造であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【化3】

【0027】
一般式(AI−1)において、Rx及びTは一般式(AI)における各々と同じ意味を表す。
【0028】
(8) 更に、一般式(II)で表される構造を有する界面活性剤を含有することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【化4】

【0029】
一般式(II)において、
10は、水素原子またはアルキル基を表す。
Rfは、フルオロアルキル基又はフルオロアルキルカルボニル基を表す。
mは1〜50の整数を表す。
【0030】
(9) (1)〜(8)のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物を用いて膜を形成すること、該膜を露光すること、露光した膜を現像することを含むパターン形成方法。
【0031】
(10) 露光光源が電子線、X線又はEUV光である、(9)に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によって、高感度、密集パターンおよび孤立ラインの高解像性、十分な露光余裕度、良好なラインウィズスラフネス、良好なブリッジマージン及び孤立スペースの高解像性を同時に満足する感活性光線または感放射線樹脂組成物、およびそれを用いたパターン形成方法提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の感活性光線または感放射線樹脂組成物およびそれを用いたパターン形成方法について詳細に説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0034】
[感活性光線または感放射線樹脂組成物]
[1](A)酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂
(A)成分の樹脂は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂であり、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂である。
【0035】
前記アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基などが好ましく挙げられる。
【0036】
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
【0037】
(A)成分の樹脂は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を含有する。
【化5】

【0038】
一般式(AI)に於いて、
Rxは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0039】

Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1は、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又は単環のシクロアルキル基を表す。
Zは、Cとともに炭素数5から8の単環のシクロアルキル基を形成している。
【0040】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
【0041】
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH2−基、−(CH23−基がより好ましい。
【0042】
Rx1のアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のものが好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。該アルキル基は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、―OC(=O)Ra、―OC(=O)ORa、−C(=O)ORa、−C(=O)N(Rb)Ra、―N(Rb)C(=O)Ra、―N(Rb)C(=O)ORa、−N(Rb)SO2Ra、−SRa、―SO2Ra、―SO3Ra、又は、―SO2N(Rb)Ra等が挙げられる。ここで、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、単環又は多環のシクロアルキル基(炭素数5〜12が好ましい)のいずれかを表す。
【0043】
Rx1のシクロアルキル基としては、炭素数4〜8の単環のシクロアルキル基が好ましい。該シクロアルキル基は置換基を有してもよく、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、―OC(=O)Ra、―OC(=O)ORa、−C(=O)ORa、−C(=O)N(Rb)Ra、―N(Rb)C(=O)Ra、―N(Rb)C(=O)ORa、−N(Rb)SO2Ra、−SRa、―SO2Ra、―SO3Ra、又は、―SO2N(Rb)Ra等が挙げられる。ここで、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、単環又は多環のシクロアルキル基(炭素数5〜12が好ましい)のいずれかを表す。
CとZで形成される単環のシクロアルキル基としては、炭素数5又は6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
【0044】
一般式(AI)の好ましい一形態として、下記一般式(AI−1)が挙げられる。なお、式中、Rx及びTは、一般式(AI)中の各々と同義である。
【化6】

【0045】
酸分解性基を有する一般式(AI)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、10〜50mol%が好ましく、より好ましくは20〜45mol%である。
【0046】
好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、式中、RxはH、CH、CF、CHOHのいずれかを表す。Rxaは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数4から8のシクロアルキル基を表す。
【化7】

【0047】
本発明においては、酸分解性基として上記一般式(AI)で表される繰り返し単位を含有するが、さらに他の酸分解性の繰り返し単位を含有していてもよい。
【0048】
本発明の樹脂(A)は、さらに、式(AII)で表される繰り返し単位を含有する。
【化8】

【0049】
一般式(AII)において
Rxは上記式(AI)におけるRxと同様のものを表す。
Rxは水素原子または、有機基を表す。
Rxは非酸分解性基を表す。
mは1〜4の整数、nは0〜4の整数であり、1≦n+m≦5である。mが2〜4のとき、複数のRxは、同じでも異なっていてもよく、nが2〜4のとき、複数のRxは、同じでも異なっていてもよい。
【0050】
Rxは、水素原子であることが好ましい。また、m≧2の場合、複数のRxのうち少なくとも一つは水素原子であることが好ましい。
Rxが有機基の場合、酸分解性でも非酸分解性であってもよい。
Rxが酸分解性基である場合の例としては、−C(Rx21)(Rx22)(Rx23)、−CO−O−Rx24、−C(Rx25)(Rx26)−O−Rx27などが挙げられる。
ここで、RX21〜Rx23は、それぞれ独立に、アルキル基またはシクロアルキル基を表し、いずれか2つが結合して環構造を形成してもよい。
Rx24は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx25およびRx26は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基のいずれかを表す。
Rx27は有機基を表し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルキル基又はアリール基で置換されたアルキル基のいずれかが好ましい。
【0051】
Rxが非酸分解性基である場合の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基(但し、アルキル基およびシクロアルキル基として、酸素原子に隣接する炭素原子が3級炭素である場合を除く)、アリール基、アシル基、―C(=O)Ra、−C(=O)ORbを挙げることができる。
ここで、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、単環又は多環のシクロアルキル基(炭素数5〜12が好ましい)のいずれかを表す。
【0052】
Rxの非酸分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、―OC(=O)Ra、―OC(=O)ORa、−C(=O)ORa、−C(=O)N(Rb)Ra、―N(Rb)C(=O)Ra、―N(Rb)C(=O)ORa、−N(Rb)SO2Ra、−SRa、―SO2Ra、―SO3Ra、又は、―SO2N(Rb)Raを挙げることができる。
ここで、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、単環又は多環のシクロアルキル基(炭素数5〜12が好ましい)のいずれかを表す。
【0053】
(AII)で表される繰り返し単位の樹脂(A)における好ましい組成比は、樹脂(A)中のすべての繰り返し単位に対して、5〜75モル%、さらに好ましくは20〜70モル%である。
式(AII)で表される繰り返し単位を上記範囲で含有することは、基板との接着性と解像度を両立する観点から好ましい。
以下、式(AII)で表される繰り返し単位の具体的な構造を例示するが、この限りではない。なお、式中、RxはH、CH、CF、CHOHのいずれかを表す。
【化9】

【0054】
本発明で用いられる樹脂は、式(AI)、(AII)以外の単位として、さらに式(AIII)または(AIV)で表される、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有することも出来る。
【化10】

【0055】
一般式(AIII)において、
Rxは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は−CH2−O−Rx5基を表す。式中、Rxは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Rxは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
Rxは炭素数1から8のアルキル基、炭素数3から12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、アリール基を表す。
【0056】
Rxが表すシクロアルキル基及びシクロアルケニル基としては、単環式のシクロアルキル基及びシクロアルケニル基が好ましい。好ましい単環式シクロアルキル基及びシクロアルケニル基としては、炭素数3から7の単環式炭化水素基である。
【0057】
Rx4が表すアリール基は、更に置換基を有することができる。有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、―OC(=O)Ra、―OC(=O)ORa、−C(=O)ORa、−C(=O)N(Rb)Ra、―N(Rb)C(=O)Ra、―N(Rb)C(=O)ORa、−N(Rb)SO2Ra、−SRa、―SO2Ra、―SO3Ra、又は、―SO2N(Rb)Raを挙げることができる。
ここで、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、単環又は多環のシクロアルキル基(炭素数5〜12が好ましい)のいずれかを表す。
【0058】
また、Rxが表すアルキル基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、さらに置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、フェニル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基などが挙げられる。シクロアルキル基及びシクロアルケニル基については置換基として更にアルキル基を挙げることができ、アルキル基については置換基として更にシクロアルキル基を挙げることができる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基はさらに置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基を挙げることができる。
【0059】
保護基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
式(AIII)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。下記具体例において、Rxは上述したものと同様の置換基を表す。
【化11】

【0060】
一般式(AIV)に於いて、
Rxは一般式(AIII)と同様のものを表す。
Rxは、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基またはアルコキシカルボニル基、アリール基を表す。
pは0〜5の整数を表す。pが2以上のとき、複数のRxは同一でも異なっていてもよい。
【0061】
Rxとしては、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アシルオキシ基がより好ましい。また、アシルオキシ基(一般式−O−CO−Rxで表される。Rxはアルキル基)の中でも、Rxの炭素数が1〜6のものが好ましく、Rxの炭素数1〜3のものがより好ましく、Rxの炭素数が1のもの(即ち、アセトキシ基)が特に好ましい。
pは0〜2が好ましく、1〜2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0062】
上記Rx6基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。環状構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を挙げることができる。
一般式(AIV)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。下記具体例において、Rxは上述したものと同様の置換基を表す。
【化12】

【0063】
式(AIII)または(AIV)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0〜40モル%が好ましく、より好ましくは0〜20モル%である。
以下に本発明で使用される(A)成分の樹脂の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
樹脂(A)の本発明の組成物中の含有率は、全固形分に対し50〜99質量%が好ましく、より好ましくは70〜95質量%である。
【0068】
[2](B)酸発生剤
本発明の感活性光線または感放射線樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射により、一般式(BI)で表される酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。
【化17】

【0069】
式(BI)中、
Arは、芳香族環を表し、A基以外に更に置換基を有してもよい。
pは、1以上の整数を表す。
Aは、炭素数3以上の炭化水素基を有する基を表す。
pが2以上のとき、複数のA基は同一でも異なっていてもよい。
一般式(BI)について更に詳細に説明する。
Arにより表される芳香族環としては、炭素数6〜30の芳香族環が好ましい。
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0070】
上記芳香族環がA基以外に有し得る置換基としては、炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メチルチオキシ基、エチルチオキシ基、tert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基、フェニルチオキシ基、p−トリルチオキシ基等のアリールチオオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、アセトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基、2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基及び分岐アルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、アセチレン基、プロピニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンゾイル基、アセチル基、トリル基等のアシル基等が挙げられる。また、2以上の置換基を有する場合、少なくとも二つの置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0071】
Aにより表される、炭素原子数が3以上の炭化水素基を有する基における炭化水素基としては、非環式炭化水素基、又は環状脂肪族基が挙げられる。
A基は、一態様において、炭素原子数が4以上の炭化水素基を有する基であり、他の態様において、炭素原子数が4以上の環状炭化水素基を有する基である。
A基としては、Arに隣接する炭素原子が3級もしくは4級の炭素原子であることが好ましい。
A基としての非環式炭化水素基としては、イソプロピル基、t―ブチル基、t―ペンチル基、ネオペンチル基、s−ブチル基、イソブチル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。非環式炭化水素基の有する炭素数の上限としては、好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
【0072】
A基としての環状脂肪族基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基、ピネニル基等が挙げられ、シクロヘキシル基が好ましい。これらの基は置換基を有していてもよい。環状脂肪族基の有する炭素数の上限としては、好ましくは15以下、更に好ましくは12以下である。
【0073】
上記非環式炭化水素基又は環状脂肪族基が置換基を有している場合、その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メチルチオキシ基、エチルチオキシ基、tert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基、フェニルチオキシ基、p−トリルチオキシ基等のアリールチオオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、アセトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基、2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基、及び分岐アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、アセチレン基、プロピニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、カルボニル基、シアノ基等が挙げられる。
Aとしての環状脂肪族基又は非環式炭化水素基の具体例としては以下のものが挙げられる。
【化18】

【0074】
【化19】

【0075】
【化20】

【0076】
酸拡散抑制の観点から、上記の中でも下記構造がより好ましい。
【化21】

【0077】
pは1以上の整数を表し、その上限は化学的に可能な数であれば特に限定されないが、酸の拡散抑制の観点から、好ましくは1〜3、さらに好ましくは2〜3である。
【0078】
A基は、酸拡散抑制の観点から、スルホン酸基の少なくとも1つのo位を置換していることが好ましく、2つのo位を置換している構造であることがより好ましい。
本発明の酸発生剤(B)は、一態様において、下記一般式(BII)で表される酸を発生する化合物である。
【化22】

【0079】
式中、Aは一般式(BI)におけるAと同様であり、二つのAは同一でも異なってもよい。R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基又はニトロ基を表す。炭素原子数が1以上の炭化水素基の具体例としては、上記に例示した基と同様の基が挙げられる。
【0080】
活性光線又は放射線の照射により一般式(BI)で表される酸を発生する化合物の内で好ましい化合物としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩といったイオン性構造を有する化合物、オキシムエステル、イミドエステル等の非イオン性化合物構造を有するものが好ましい。イオン性構造を有する化合物としては、下記一般式(ZI)、(ZII)、で表される化合物を挙げることができる。
【化23】

【0081】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基としては、例えば、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI−4)における対応する基を挙げることができる。
-は、一般式(BI)で表される酸のアニオン構造を示す。
【0082】
尚、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくとも一つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0083】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI―4)を挙げることができる。
【0084】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0085】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又はシクロアルキル基でもよい。
【0086】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0087】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0089】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
【0090】
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
【0091】
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐2−オキソアルキル基である。
【0092】
201〜R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくは2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、2−オキソシクロアルキル基を挙げることができる。
【0093】
2−オキソアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
2−オキソシクロアルキル基は、好ましくは、上記のシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0094】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0095】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【化24】

【0096】
一般式(ZI−3)に於いて、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基(炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3〜8が好ましい)、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基(直鎖の場合炭素数1〜12が好ましく、分岐の場合炭素数3〜8が好ましい)、又はハロゲン原子を表す。
【0097】
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、直鎖もしくは分岐のアルキル基(炭素数1〜12が好ましい)又はシクロアルキル基(炭素数3〜8が好ましい)を表す。
x及びRyは、各々独立に、直鎖もしくは分岐のアルキル基(炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3〜8が好ましい)、アリル基又はビニル基を表す。
【0098】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
Zc-は、Z-と同様の一般式(BI)で表される酸のアニオン構造を示す。
【0099】
化合物(ZI−3)の好適な具体例としては、特開2004−233661号公報の段落0047,0048、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、US2003/0224288A1号明細書に式(I-1)〜(I-70)として例示されている化合物、US2003/0077540A1号明細書に式(IA-1)〜(IA-54)、式(IB-1)〜(IB-24)として例示されている化合物等を挙げることができる。
Zc-は、Z-と同様の一般式(BI)で表される酸のアニオン構造を示す。
化合物(ZI−4)とは、以下の一般式(ZI−4)で表される化合物である。
【化25】

【0100】
一般式(ZI−4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、またはアルコキシカルボニル基を表す。
14は複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキルを表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、一般式(BI)で表される酸のアニオン構造を示す。
【0101】
一般式(ZI−4)において、R13、R14及びR15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
【0102】
13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8の単環のものが好ましい。特にシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルが好ましい。
【0103】
13及びR14のアルコキシ基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。特に、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が好ましい。
【0104】
13のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数2〜11のものが好ましい。特に、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等が好ましい。
【0105】
14のアルキルスルホニル基およびシクロアルキルスルホニル基としては、直鎖状、分岐状、環状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。これらのアルキルスルホニル基のうちメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等が好ましい。
rとしては、0〜2が好ましい。
【0106】
2個のR15が互いに結合して形成してもよい環構造としては、一般式(ZI−4)中の硫黄原子と共に5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)であり、2個のR15は互いに結合してこれら環構造を形成する2価の基が望ましい。
【0107】
一般式(ZI−4)におけるR15としては、メチル基、エチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基等が好ましい。また、前記2価の基に対する置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
次に、一般式(ZII)について説明する。
一般式(ZII)中、R204、R205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204、R205のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI−1)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明した各基と同様である。
【0108】
204〜R205のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI−1)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
-は、一般式(BI)で表される酸のアニオン構造を示す。
一般式(BI)で表される酸を発生する化合物の具体例を以下に例示する。
【化26】

【0109】
なお、本願においては、一般式(BI)で表される酸を発生する化合物を複数種類用いてもよい。
一般式(BI)で表される酸を発生する化合物の含有率は、本発明の組成物中の全固形分に対し0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜18質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。
【0110】
また、本願では、一般式(BI)で表される酸を発生する酸発生剤以外の酸発生剤も併用して用いることができる。この例としては、例えば前記式(ZI)(ZII)において、Zが一般式(BI)のアニオン構造には当てはまらないアルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンであるものなどが挙げられる。これらアニオンにおけるアルキル基やアリール基は、フッ素原子などにより置換基されていてもよい。具体例としては、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0150]に記載の酸発生剤が挙げられる。
【0111】
[3](C)有機塩基性化合物
本願発明の組成物は、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物は、含窒素有機塩基性化合物であることが好ましい。
使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば以下の(1)〜(4)に分類される化合物が好ましく用いられる。
(1)下記一般式(BS−1)で表される化合物
【化27】

【0112】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基(直鎖又は分岐)、シクロアルキル基(単環又は多環)、アリール基、アラルキル基の何れかを表す。但し、三つのRの全てが水素原子とはならない。
Rとしてのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常3〜20、好ましくは5〜15である。
Rとしてのアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6〜20、好ましくは6〜10である。具体的にはフェニル基やナフチル基などが挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7〜20、好ましくは7〜11である。具体的にはベンジル基等が挙げられる。
【0113】
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
一般式(BS−1)で表される化合物は、3つのRの1つのみが水素原子、あるいは全てのRが水素原子でないことが好ましい。
【0114】
一般式(BS−1)の化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリンなどが挙げられる。
また、一般式(BS−1)において、少なくとも1つのRが、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基である化合物が、好ましい態様の1つとして挙げられる。具体的化合物としては、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0115】
また、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては−CH2CH2O−が好ましい。具体
的例としては、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、US6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物などが挙げられる。
【0116】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
複素環構造としては、芳香族性を有していてもいなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよく、さらに、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物(N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど)、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、アンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン、ヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンなどが挙げられる。
【0117】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、例えば、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有する化合物である。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH2CH2O−が好まし
い。
【0118】
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、US2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1-1)〜(C3-3)などが挙げられる。
【0119】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの化合物から誘導されるアンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いられる。好ましくはヒドロキシドまたはカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
その他、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物なども使用可能である。
【0120】
塩基性化合物は、単独であるいは2種以上併用して用いられる。
塩基性化合物の使用量は、組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
酸発生剤/塩基性化合物のモル比は、2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。このモル比としてより好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0121】
[4]溶剤
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、アルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、US2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0122】
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートおよびアルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステルが好ましい。
【0123】
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。
【0124】
水酸基を有する溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステルが好ましく、水酸基を有しない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。
【0125】
溶剤の使用量は、使用時の膜厚等に応じて適宜調整可能であるが、一般的には、組成物中の全固形分濃度が0.5〜30質量%、好ましくは1.0〜25質量%、より好ましくは1.5〜20質量%となるように使用されることが好ましい。
【0126】
[5]界面活性剤
本発明の組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
これらに該当する界面活性剤としては、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF176、メガファックR08、OMNOVA社製のPF656、PF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341などが挙げられる。
【0127】
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類などが挙げられる。
【0128】
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、US 2008/0248425A1号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
本発明に用いられる界面活性剤としては、式(II)で表される構造を有する界面活性剤が特に好ましい。
【化28】

【0129】
一般式(II)において、
10は、水素原子またはアルキル基を表す。
Rfは、フルオロアルキル基又はフルオロアルキルカルボニル基を表す。
mは1〜50の整数を表す。
【0130】
一般式(II)に於ける、Rfのフルオロアルキル基としては、アルキル鎖中に酸素原子を有してもよく、二重結合を有してもよい。例えば、−CF3、− C25、−C49、−CH2CF3、−CH225、−CH237、−CH249、−CH2613、−C24CF3、−C2425、−C2449、−C24613、−C24817、−CH2CH(CH3)CF3、−CH2CH(CF32、−CH2CF (CF32、−CH2
H(CF32、−CF2CF(CF3)OCF3 、−CF2CF(CF3)OC37、− C24OCF2CF(CF3)OCF3、−C24OCF2CF(CF3)OC37、−C(CF3)=C(CF(CF322等を挙げることができる。
【0131】
Rfのフルオロアルキルカルボニル基としては、例えば、−COCF3、−COC25、−COC37、−COC49、−COC613、−COC817等を挙げることができる。
【0132】
10としてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5である。
以下、上記一般式(II)で表される界面活性剤の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【化29】

【0133】
界面活性剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、組成物の全固形分に対し、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
式(II)で表される界面活性剤と、他の界面活性剤との使用割合は、質量比(一般式(II)で表される界面活性剤/他の界面活性剤)で、60/40〜99/1が好ましく、70/30〜99/1がより好ましい。
【0134】
[6]その他
本発明の組成物は、上記に説明した成分以外にも、カルボン酸オニウム塩、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)等に記載の分子量3000以下の溶解阻止化合物、染料、可
塑剤、光増感剤、光吸収剤、酸化防止剤などを適宜含有することができる。
【0135】
[パターン形成方法]
本発明の感活性光線または感放射線樹脂組成物の使用形態を説明する。
本発明のパターン形成方法は、感活性光線または感放射線樹脂組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を露光する工程(2)、露光後にアルカリ現像液を用いて現像する工程(4)を含み、更に、露光工程(2)と現像工程(4)の間に、ベーク(加熱)工程(3)を含んでもよい。
【0136】
(1)製膜
本発明の感活性光線または感放射線樹脂組成物膜を得るには、各成分を溶剤に溶解し、必要に応じてフィルター濾過した後、支持体(基板)に塗布して用いる。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上にスピナー等の適当な塗布方法により塗布される。その後乾燥し、感光性の膜を形成する。
必要により、市販の無機あるいは有機反射防止膜を使用することができる。更にレジスト下層に反射防止膜を塗布して用いることもできる。
【0137】
(2)露光
上記製膜工程で得られた膜に、所定のマスクを通して電子線またはEUV光を照射する。
【0138】
なお、電子線の照射では、マスクを介さない描画(直描)が一般的である。
【0139】
(3)ベーク
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うことが好ましい。
加熱温度は80〜150℃で行うことが好ましく、90〜150℃で行うことがより好ましく、100〜140℃で行うことが更に好ましい。
加熱時間は30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
【0140】
(4)アルカリ現像
使用するアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノーアミン等のアルコ−ルアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液(通常0.1〜20質量%)を使用することができる。更に、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0141】
これらの現像液の中で好ましくは第四級アンモニウム塩、更に好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロオキシド、コリンである。
アルカリ現像液のpHは通常10〜15である。
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
また、現像を行う工程の後に、純水に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂、架橋剤などが十分に溶解する時間が好ましく、通常は10秒〜300秒が好ましい。さらに好ましくは、20秒〜120秒である。
現像液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃がさらに好ましい。
【実施例】
【0142】
(1)合成例1(P−1)の合成
2Lフラスコにエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gをいれ、100mL/minの流量で一時間窒素置換した。また、4−アセトキシスチレン105.4g(0.65mol)、1−エチルシクロペンチルメタクリレート63.8g(0.35mol)、重合開始剤剤V−601(和光純薬工業(株)製)4.60g(0.02mol)をエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート200gに溶解し、得られた溶液を上記と同様に窒素置換した。
【0143】
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの入った2Lフラスコを、内温が80℃になるまで昇温した後、さらに重合開始剤剤V−601 2.30g(0.01mol)を添加し、5分間攪拌した。その後、上記モノマー混合溶液を攪拌しながら6時間かけて滴下した。滴下後、2時間さらに加熱攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却し、ヘキサン3L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン500mlに溶解し、再度ヘキサン3L中に滴下、ろ過した固体を減圧乾燥して、4−アセトキシスチレン/1−エチルシクロペンチルメタクリレート共重合体145gを得た。
【0144】
反応容器中に上記で得られた重合体40.00g、メタノール40ml、1−メトキシ−2−プロパノール200ml、濃塩酸1.5mlを加え、80℃に加熱して5時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷し、蒸留水3L中に滴下した。ろ過した固体をアセトン200mlに溶解し、再度蒸留水3L中に滴下、ろ過した固体を減圧乾燥してポリマー(A−6)35.5gを得た。GPCによる重量平均分子量は10800、分子量分散度(Mw/Mn)は1.65であった。
【0145】
用いるモノマーを変更する以外は、上記合成例1と同様の方法で、下記に示す構造を有する樹脂(P−2)〜(P−8)を合成した。樹脂の組成比、重量平均分子量(Mw)、分子量分散度(Mw/Mn)を表1に示す。組成比(モル比)は、下記に示す樹脂の構造における左からの繰り返し単位の順である。
【表1】

【0146】
【化30】

【0147】
(2)EB露光評価
(2−1)レジストの塗液調製及び塗設
表2に示した組成を有する塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト溶液を得た。
このレジスト溶液をHMDS処理を施した6インチSiウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、表3に示す温度のホットプレート上で加熱乾燥させ、膜厚0.12μmのレジスト膜を得た。
【0148】
(2−2)EB露光
上記(2−1)で得られたレジスト膜に、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。照射後に、表3に示す温度のホットプレート上で加熱した。
続いて、テトラメチルアンモニウム ハイドロオキサイドの2.38質量%水溶液を用いてアルカリ現像を行った。
得られたパターンを下記の方法で、感度、解像力、露光余裕度、ラインウィズスラフネスについて評価した。評価結果を下記表3に示した。
【0149】
(2−3−1)感度(E
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察した。0.10μm(ライン:スペース=1:1)を解像するときの電子線照射量を感度(E)とした。
【0150】
(2−3−2)解像力(密集)
上記の感度を示す露光量における1:1ラインスペースの限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力(密集)とした。
【0151】
(2−3−3)解像力(孤立)
走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察し、孤立ライン(1:10ラインスペース)の0.1μmパターンが解像するときの電子線照射量における、孤立ラインが形成される最小線幅を解像力(孤立)とした。
【0152】
(2−3−4)露光余裕度
パターンサイズが0.09μmとなる感度をE、パターンサイズが0.11μmとなる感度をEとしたときに、以下に示す式より得られた数値を露光余裕度とした。
【0153】
露光余裕度=(E−E)/E x 100 (%)
(2−3−5)ラインウィズスラフネス(LWR)
上記の感度を示す照射量における0.10μmラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について線幅を測定し、そのバラツキを3σで評価した。
【0154】
(2−3−6)ブリッジマージン
得られた0.10μmのラインアンドスペースレジストパターンを解像する露光量E(最適露光量)を走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて算出し、前記露光量Eから露光量を少なくした時にブリッジが発生する露光量Eを求め、下記式1で得られる値を算出し、それをブリッジマージンの指標とした。
【0155】
ブリッジマージン(%)= [(E−E /E]×100 (1)
上記で算出した値が大きいほど性能が良好である事を示す。
【0156】
(2−3−7)孤立スペース解像性
75nm孤立スペースパターンを走査型顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察し、解像できる最小のスペース幅を孤立スペース解像性とした。
【表2】

【0157】
以下、表中略号は、上記具体例のもの、または下記のものを表す。
【0158】
<酸発生剤>
【化31】

【0159】
<有機塩基性化合物>
D−1:テトラ−(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド
D−2:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
D−3:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
D−4:トリドデシルアミン
<界面活性剤>
W−1:PF636(OMNOVA社製)
W−2:PF6320(OMNOVA社製)
W−3:PF656(OMNOVA社製)
W−4:PF6520(OMNOVA社製)
W−5:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)
W−6:フロラードFC430(住友スリーエム(株)製)
<塗布溶剤>
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S−3:シクロヘキサノン
S−4:乳酸エチル
【表3】

【0160】
(3)KrF露光評価
(3−1)レジストの塗液調製及び塗設
表4に示した組成を有する塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト溶液を得た。
このレジスト溶液をDUV42(60nm)の下地を施した8インチSiウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、表5に示した温度のホットプレート上で加熱乾燥させ、膜厚0.25μmのレジスト膜を得た。
【0161】
(3−2)KrF露光
上記(3−1)で得られたレジスト膜に、KrFスキャナー(ASML製PAS5500/850)を用いて、NA=0.80、輪帯照明、σ=0.89/0.59の露光条件で、パターン照射を行った。
照射後に、表5に示す温度のホットプレート上で加熱した。
続いて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。
【0162】
得られたパターンを下記の方法で評価した。評価結果を下記表5に示す。
【0163】
(3−3−1)感度(E
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察した。0.12μm(ライン:スペース=1:1)を解像するときの照射量を感度(E)とした。
【0164】
(3−3−2)露光余裕度
パターンサイズが0.108μmとなる感度をE、パターンサイズが0.132μmとなる感度をEとしたときに、以下に示す式より得られた数値を露光余裕度とした。
【0165】
露光余裕度=(E−E)/E x 100 (%)
(3−3−3)ラインウィズスラフネス(LWR)
上記の感度を示す照射量における0.12μmラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について線幅を測定し、そのバラツキを3σで評価した。
【0166】
(3−3−4)
ブリッジマージン
得られた0.12μmのラインアンドスペースレジストパターンを解像する露光量E(最適露光量)を走査型電子顕微鏡(日立社製S−9260)を用いて算出し、前記露光量Eから露光量を少なくした時にブリッジが発生する露光量Eを求め、下記式1で得られる値を算出し、それをブリッジマージンの指標とした。
【0167】
ブリッジマージン(%)= [(E −E /E ]×100 (1)
上記で算出した値が大きいほど性能が良好である事を示す。結果を表5に示す。
【0168】
(3−3−5)孤立スペース解像性
150nm孤立スペースパターンを走査型顕微鏡(日立社製S−9260)を用いて観察し、解像できる最小のスペース幅を孤立スペース解像性とした。
【表4】

【0169】
表4中の略号は、上記具体例のものを表す。
【表5】

【0170】
(4)EUV露光評価
(4−1)レジストの塗液調製及び塗設
表6に示した塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト溶液を得た。
【0171】
このレジスト溶液をHMDS処理を施した6インチSiウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、表7に示した温度のホットプレート上で加熱乾燥させ、膜厚0.05μmのレジスト膜を得た。
【0172】
(4−2)EUV露光
このレジスト膜にEUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜10.0mJの範囲で0.5mJずつ変えながら面露光を行った。
照射後に、表7に示す温度のホットプレート上で加熱した。
続いて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。
【0173】
得られたパターンを下記の方法で評価した。評価結果を下記表7に示す。
【0174】
(4−3−1)感度(Eth)
現像後のレジスト膜厚が露光前の膜厚の50%となる露光量を感度(Eth)とした。
【0175】
(4−3−2)残膜率
以下に示す式より得られる数値を残膜率(%)とした。
(未露光部現像後膜厚/露光前膜厚)×100 (%)
(4−3−3)表面粗さ(Ra)
前記Eth感度における、現像後レジスト膜の表面粗さRa(JIS B0601にて定義)を原子間力顕微鏡AFM(日本ビーコ社製Dimension3100)を用いて観察した。
【表6】

【0176】
表6中の略号は、上記具体例のものを表す。
【表7】

【0177】
表3、表5および表7の結果から、本発明の組成物を用いたパターン形成方法により得られるパターンは良好な性能を有していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(AI)で表される単位と一般式(AII)で表される単位を含有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、及び、(B)活性光線又は放射線の照射により、一般式(BI)で表される構造の酸を発生する化合物を含有することを特徴とする、感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【化1】

【化2】

一般式(AI)に於いて、
Rxは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1は、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又は単環のシクロアルキル基を表す。
Zは、Cとともに炭素数5から8の単環のシクロアルキル基を形成している。
一般式(AII)において、
Rxは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Rxは水素原子または、有機基を表し、Rxは非酸分解性基を表す。
mは1〜4の整数、nは0〜4の整数であり、1≦n+m≦5である。mが2〜4のとき、複数のRxは、同じでも異なっていてもよく、nが2〜4のとき、複数のRxは、同じでも異なっていてもよい。
一般式(BI)において、
Arは、芳香族環を表し、A基以外に更に置換基を有してもよい。
pは、1以上の整数を表す。
Aは、炭素数3以上の炭化水素基を有する基を表す。pが2以上のとき、複数のA基は同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
一般式(BI)において、Aが炭素原子数4以上の炭化水素基を有する基である、請求項1に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
一般式(BI)において、Aが炭素原子数4以上の環状炭化水素基を有する基である、請求項1に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(BI)において、Aがシクロヘキシル基を有する基である、請求項1に記載の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
一般式(BI)において、Arはベンゼン環を表し、pは2以上の整数を表し、2以上のA基のうち、2つのA基はそれぞれ−SOH基を基準としてオルト位に置換しており、A基のArに隣接する炭素原子が3級もしくは4級の炭素原子であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【請求項6】
一般式(BI)において、Arにより表される基が、A基以外の置換基として、炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基から選択される少なくとも1つの置換基を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【請求項7】
一般式(AI)で表される単位が式(AI−1)で表される構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物。
【化3】

一般式(AI−1)において、Rx及びTは一般式(AI)における各々と同じ意味を表す。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の感活性光線または感放射線樹脂組成物を用いて膜を形成すること、該膜を露光すること、露光した膜を現像することを含むパターン形成方法。
【請求項9】
露光光源が電子線、X線又はEUV光である、請求項8に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−13671(P2011−13671A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126995(P2010−126995)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】