説明

成形パネル

【課題】 本発明は、反りの発生を抑え、高価な型を必要としない成形パネルを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、コア材の両側に強化繊維層を有し、この強化繊維層の外側となる一方に模様層を配し、他方に樹脂層を配した成形パネルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形パネル、特に浴室ユニットに用いられる壁パネル等の成形パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
成形パネルは、様々な部分に使用され、特に浴室ユニットにおいては壁パネルとして多用されている。また、成形パネルは、その表面となる部分に模様を施したり、凹凸形状を施したりして用いられることが多い。
【0003】
図1は、浴室ユニットの壁パネルに従来使用されていた成形パネルを示す概略断面図である。成形パネル1は、表面より化粧層2、ガラス繊維層3、コア材4の順番で積層構造をしている。
【0004】
成形パネル1の製造方法は、転写層付ガラス型(転写層が化粧層2となる)の上に、ガラス繊維マットを敷き、そのガラス繊維マットの上に、コア材4となる石膏ボードを配置し、そのコア材の上にガラス繊維マット敷く。材料を重ねた後は、その周囲に型枠を嵌め込み、コア材4の上に上型を配置し、樹脂を型内に流し込み、硬化させる。このような成形方法は、RTM(レジントランスファー)法と呼ばれ、型費を低く抑えることができる。
【0005】
また、成形パネルの製造方法としては、SMC法を用いたものもあり、コア補強層の両側にSMC層を設け、このSMC層の一方の外側にABS層及びアクリル層を配するようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−24497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図1に示す成形パネル1は、その表面(化粧層側)に、厚い樹脂層が形成され、この樹脂の硬化時収縮により反りが発生するという問題がある。また、特許文献1に記載されるものは、SMCを用いるものであり、高加熱・高圧力が必要なことから、RTM法に比較し型費が高額となる。
【0007】
本発明は、反りの発生を抑え、高価な型を必要としない成形パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、コア材の両側に強化繊維層を有し、この強化繊維層の外側となる一方に模様層を配し、他方に樹脂層を配した成形パネルである。
(2)項(1)において、樹脂層が、スペーサと、このスペーサ間の樹脂塊とを有した成形パネル。
(3)項(2)において、スペーサが、樹脂板、紙板、木板、無機板、又は、金属板である成形パネル。
(4)項(1)乃至(3)のいずれかにおいて、コア材が、石膏、紙ハニカム構造体、木片、発泡樹脂成形品、又は、金属ハニカム構造体である成形パネル。
(5)項(1)において、樹脂層が、厚肉部と、薄肉部とを有した成形パネル。
(6)項(1)乃至(5)のいずれかにおいて、樹脂層が、熱硬化性樹脂層である成形パネル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反りの発生を抑え、高価な型を必要としない成形パネルを提供することができる。
また、スペーサを用いた場合には、容易に樹脂塊の層を形成することができ、特にスペーサを木板、無機板、金属板とした際には、成形パネルに対しビス固定を行いやすくなる。
コア材をハニカム構造体、発泡樹脂成形品とした際は、成形パネル全体の重量を軽量化することができ、成形パネルの移動、設置等を1人で行え、組立施工性を向上させることができる。
樹脂層に厚肉部と薄肉部とを形成した場合には、スペーサを使用することなく型形状により形成することで、より簡易に反りを低減することができる。
樹脂として、熱硬化性樹脂を用いた場合には、樹脂粘度の調整がモノマ希釈などの手法により容易に行え、型内への樹脂注入を行いやすくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いるコア材は、芯材となるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ウレタン発泡体等の発泡樹脂成形品、石膏、紙基材、紙ハニカム構造体、金属板、金属ハニカム構造体、木板等を用いることができる。また、成形パネルを軽量化、断熱性能向上化を図る場合は、発泡樹脂成形品を用いることが好ましい。更に、成形パネルの固定の際に、より強固に行う場合は、ビスの固定を行いやすい木板を用いることが好ましい。
【0011】
本発明に用いる強化繊維は、ガラス繊維であれば特に制限されるものではなく、コンティニアスマット、ガラスクロス、ガラスマット、ガラスペーパ等を用いる事ができる。例えばコンティニアスマット、ガラスクロスを用いた場合は、樹脂の強化繊維への含浸性が良くなり成形性が向上する。ガラスマット、ガラスペーパを用いた場合は、成形品表面にガラス模様が表れず外観に優れた成形パネルを得ることができる。
【0012】
本発明に用いる模様層は、柄ばかりでなく、その表面形状に凹凸を付与するものを含むものであり、転写シートを用いた模様、エッチングSUS型、エンボスガラス型を転写した凹凸形状等を用いる事ができる。
【0013】
模様層と強化繊維層との間は、中間樹脂層であり、これは、模様層と強化繊維層の接着のためのプライマー層、且つ、強化繊維層の模様が表面の模様層に映らないための隠蔽層でもある。中間樹脂層の構成は、強化繊維と樹脂であることが好ましい。強化繊維は、特に制限される物ではないが、ガラスマット、ガラスペーパを用いることが好ましく、外観の優れたものとすることができる。樹脂は、模様層と強化繊維層が接着できれば特に制限される物ではないが、ビニルエステル系樹脂が特に好ましい。
【0014】
本発明に用いる樹脂層は、スペーサを用いる事で、強化繊維層と同時に成形することができる。成形パネルは、この樹脂層の収縮によって表面模様層の収縮を相殺し、成形パネル全体の反り防止を行っている。
【0015】
本発明に用いるスペーサは、スペーサ間に樹脂塊を形成させるのに用いるものであり、その形状、材質、大きさ等を規定するものではない。具体的には、樹脂板、紙板、木板、無機板、又は、金属板等を用いることができる。木板又は金属板を用いた場合は、この木板、金属板にビスを固定しやすく好ましい。スペーサの形状は、棒状、円形状、多角形状、塊状等、様々な形状を用いることができるが、複数設置の際に高さ(厚み方向の高さ)を揃える必要がある。これは、スペーサ間の樹脂塊厚みが、均一になることを目的として揃えている。
【0016】
本発明に用いる樹脂層は、スペーサを用いることなく、図2に示すように型形状により形成しても良く、型8の表面に複数の凸部5を設けることにより、この凸部5間に樹脂塊の層を形成することができる。この樹脂塊の層は、厚肉部6となり、凸部5に当接した部分が薄肉部7となる。
【0017】
本発明に用いる樹脂層は、特に制限されるものではないが、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂が特に好ましい。これらの樹脂はモノマで希釈することにより粘度調整が容易で、型内へ樹脂を注入する条件を制御しやすい。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれを限定するものでない。なお、反りの計測は下記の通り実施した。
【0019】
(反りの計測方法)
図3に示すように、成形パネル1を壁9に立て掛ける。この時床10に接している辺は壁面から23cm離した位置に静置する。壁9に立て掛けた成形パネル1にアルミバー11を当て、反りを計測しその結果を表1にまとめた。なお反り測定値の符号は+が化粧面側凸であり、−が化粧面側凹を意味する。
【0020】
(実施例1)
アクリルシラップ(DHマテリアル(株)製 商品名 PS−H3725)100重量部に対し、界面活性剤(花王(株)製 商品名 ペレックスOT−P)0.15重量部、硬化剤(日本油脂(株)製 商品名 パーキュアO)0.5重量部、硬化剤(日本油脂(株)製 商品名 パーロイルTCP)1.0重量部、硬化促進剤(日本油脂製(株)製 商品名 A−10)0.2重量部を混ぜ、転写樹脂液Aを得る。
【0021】
転写樹脂液Aを図4に示すガラス型12に撒く。転写フィルム(大日本印刷(株)製 商品名 カララビアンコ)を前述の転写樹脂液Aを撒いたガラス型12に乗せ、リングワッシャーにて延伸し、70℃の硬化炉に40分投入して半硬化させ、転写フィルムを剥し、注型板Bを得る。
【0022】
ビニルエステル樹脂(DHマテリアル(株)製 商品名 PS−5700P)77重量部に対し、スチレンモノマ(太陽化学(株)製 商品名 スチレンモノマ)8重量部、着色剤(東京インキ(株)製 商品名 PCN−CA−OF357−W)15重量部、炭酸カルシウム(日東紛化工業(株)製 商品名 NS100)50重量部、硬化剤(日本油脂(株)製 商品名 パーメックNR K02)1.5重量部を混ぜ、中間層樹脂液Cを得る。
【0023】
ガラス繊維不織布(30g/m)を前記注型板Bに被せ、その上に前記中間層樹脂液Cを撒き、含浸ローラーで前記ガラス繊維不織布(30g/m)に含浸させ、70℃の硬化炉に20分投入し半硬化させ、積層板Dを得る。
【0024】
積層板Dにシリコン発泡体パッキン13を有するアルミ枠14を載せる。このアルミ枠14内にガラス繊維チョップドストランド(270g/m)を敷く。その上にコア材4の厚さ9mm石膏ボード(吉野石膏製 商品名 タイガーボード)を嵌め込む。コア材4の周囲6ヵ所に、図5に示す厚み1mmのL字金属板スペーサ19(材質SS41)を嵌める(配置は、図6参照)。その上にガラス繊維チョップドストランド(270g/m)を敷く。またその上に約200mm間隔で、厚さ1mm、縦横15mmのポリプロピレン製スペーサ20を載せる。図6は壁パネルとスペーサの位置関係を示す図である。
【0025】
L字金属板スペーサ19と、ポリプロピレン製スペーサ20は、ガラスに対して別々の位置に配しているが、これは以下の理由による。L字金属板スペーサ19は、ビス固定の台座を兼ねているので、注型板に強固に接着している必要がある。そのためコア材とガラス繊維の間に挟んだ。ポリプロピレン製スペーサ20は、スペーサ間に樹脂隗を形成する事を目的として配置させている。つまり、成形後に仮に脱離しても特に不具合はない。そのため、樹脂隗の厚肉部とスペーサとで押さえている薄肉部の肉厚差をできるだけ得られるようにガラス繊維の上に配置した。
【0026】
注入口15と排出口16を設けた厚さ15mmのアクリル板17を、前述のアルミ枠14に載せ、コア材4及びガラス繊維チョップドストランド(270g/m)を囲う。
アルミ枠14に設けた吸引口18から減圧し型を密閉する。
【0027】
不飽和ポリエステル樹脂(DHマテリアル(株)製 商品名 PS−7020)100重量部に対し、硬化剤(日本油脂(株)製 商品名 パーメックNR K02)1.5重量部を混ぜ注入樹脂Fとし加圧タンクに封入する。加圧タンクより型内へ前記注入樹脂Fを注入する。型内に樹脂を注入完了したら、注入口15と排出口16を閉め70℃の硬化炉に1時間30分投入し、アクリル板17及びアルミ枠14を外し縦2000×横797×厚み11.4mmの注型板1を得た。
【0028】
(実施例2)
図7にコア材である紙ハニカム21(ナゴヤ芯材工業(株)製 商品名 NBコアパネル)の構造を示す。紙ハニカムはその名の通り紙基材で六角柱を蜂の巣状に形成し、上部及び下部に紙基材を張り合わせたものである。この紙ハニカム21をコア材としてアルミ枠内に嵌め込んだ以外は、実施例1と同様にして注型板2を得た。
【0029】
(比較例1)
スペーサを用いない以外は実施例1と同様にして、注型板3を得た。
【0030】
上記実施例1、2及び比較例1により得られた注型板1乃至3は、先に述べた手法により反りを測定し、その結果を表1にまとめた。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示すとおり、スペーサを用いることなく、樹脂層を設けない成形パネルは、反りが大きく、施工性、美観を損ねるものとなった。逆に、スペーサを用いて樹脂槽を設けたものは、反りが小さく、施工性、美観を損ねることがなく、高価な型も必要とせずに成形パネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来例である成形パネルの概略断面図を示す。
【図2】本発明の1実施例を示す成形パネル製造に用いる型の、概略断面図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例にて得られた成形パネルの反り測定方法を示す概略側面図である。
【図4】本発明の実施例である成形パネル製造用型の概略断面図である。
【図5】本発明の実施例に用いるスペーサの概略正面図及び側面図である。
【図6】本発明の実施例である成形パネルの正面図である。
【図7】本発明の実施例である成形パネルに用いるコア材の一部透視斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1…成形パネル、2…化粧層、3…ガラス繊維層、4…コア材、5…凸部、6…厚肉部、7…薄肉部、8…型、9…壁、10…床、11…アルミバー、12…ガラス型、13…シリコン発泡体パッキン、14…アルミ枠、15…注入口、16…排出口、17…アクリル板、18…吸引口、19…L字金属板スペーサ、20…ポリプロピレン製スペーサ、21…紙ハニカム




【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア材の両側に強化繊維層を有し、この強化繊維層の外側となる一方に模様層を配し、他方に樹脂層を配した成形パネル。
【請求項2】
請求項1において、樹脂層が、スペーサと、このスペーサ間の樹脂塊とを有した成形パネル。
【請求項3】
請求項2において、スペーサが、樹脂板、紙板、木板、無機板、又は、金属板である成形パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、コア材が、石膏、紙ハニカム構造体、木片、発泡樹脂成形品、又は、金属ハニカム構造体である成形パネル。
【請求項5】
請求項1において、樹脂層が、厚肉部と、薄肉部とを有した成形パネル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、樹脂層が、熱硬化性樹脂層である成形パネル。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−83429(P2007−83429A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271913(P2005−271913)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】