説明

成形品取出方法及び装置

【課題】成形品取り出し時にチャック部を適切に配置することで、成形品の変形や傷を防止できる成形品取出方法及び装置を提供すること。
【解決手段】レンズ成形品MPを取り出す際にレンズ成形品MPを把持する位置を第1分割面PL1に垂直な型開閉方向と第1分割面PL1に平行な分割面方向とに関して調整するので、レンズ成形品MPに意図しない力が付与されることを抑制できる。これにより、取出時にレンズ成形品MPが第1金型41に押し付けられて変形したり傷ついたりする現象の発生を抑えることができ、高精度のレンズを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型開き後の成形金型からレンズ成形品を取り出すための成形品取出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の製品取出装置として、成形品取り出し時にチャック部による成形品の掴み損ねによって取り出し不良が生じることや成形品に物理的損傷が生じることを防止するため、可動型盤の移動方向位置検出装置を設けたものがある(特許文献1参照)。この製品取出装置では、チャック部の相対的な位置ずれを検出した場合に、チャック部を支持するアームの位置を、検出した位置ずれを考慮して可動型盤の移動方向に補正する。
【0003】
ところで、射出成形機の可動型盤の移動方向すなわち型開閉方向に関するチャック部の相対的な位置ずれを補正すれば、型開閉方向についてはチャック部を成形品に対して適切に配置することができるが、型開閉方向に垂直な上下方向についても、位置ずれが生じて成形品が傾いて取り出される場合があり、この場合、取出時に成形品が金型に押し付けられて変形したり成形品に傷がついたりする。特に、BD(Blu-ray Disc)用の対物レンズは、中央が肉厚な為、離型の抵抗が大きくなりやすいにも関わらず、傷や変形等を含めた精度に関する要求レベルが極めて高いものとなっている。このため、BD用の対物レンズでは、チャック部を型開閉方向に垂直な方向に関しても適切に配置することが重要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−198687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような背景に鑑みてなされたものであり、成形品取り出し時にチャック部を適切に配置することで、成形品の変形や傷を防止できる成形品取出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る成形品取出方法は、レンズ成形品を形成する第1転写面と型開閉方向に垂直な第1分割面とを有する第1金型と、レンズ成形品を形成するための第2転写面と型開閉方向に垂直な第2分割面とを有する第2金型と、第1金型及び第2金型を開閉動作させる開閉駆動装置とを備える成形装置から、成形品取出装置によってレンズ成形品を取り出すための成形品取出方法であって、レンズ成形品のレンズ光軸に平行な方向のレンズ軸上厚をt(mm)とし、500nm以下の波長の光束における対物レンズの焦点距離をf(mm)としたときに、0.9≦t/f≦2.0であり、成形品取出装置によってレンズ成形品を取り出す際にレンズ成形品を把持する位置を、第1分割面に垂直な型開閉方向と第1分割面に平行な分割面方向とに関して調整する。
【0007】
上記成形品取出方法では、レンズ成形品を取り出す際にレンズ成形品を把持する位置を第1分割面に垂直な型開閉方向と第1分割面に平行な分割面方向とに関して調整するので、レンズ成形品に意図しない力が付与されることを抑制できる。これにより、取出時にレンズ成形品が金型に押し付けられて変形したり傷ついたりする現象の発生を抑えることができ、高精度のレンズ成形品を提供することができる。なお、上記条件式0.9≦t/f≦2.0を満足するような、レンズ光軸に平行な方向のレンズ軸上厚tが比較的大きなレンズ(具体的には、例えばBD用対物レンズ)の場合、離型の抵抗が大きくなり、精度に関する要求レベルが極めて高いものとなるが、上記のようにレンズ成形品を把持する位置を分割面方向に関しても調整することによって、レンズ成形品を金型から適切に分離することができ、傷や変形等を低減した所望の精度のレンズを高い歩留まりで生産することができる。
【0008】
また、本発明の具体的な態様又は側面では、上記成形品取出方法において、第1及び第2金型のうちレンズ成形品を保持する金型の基準中心軸と成形品取出装置に設けたチャック部の基準中心軸とが一致するように調整した状態で、成形品取出装置に設けたチャック部にレンズ成形品を把持させる。
【0009】
本発明の別の側面では、レンズ成形品を保持する金型の基準中心軸と成形品取出装置に設けたチャック部の基準中心軸との位置ズレが0.5mm以下である。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、成形品取出装置に設けたチャック部によってレンズ成形品を把持する位置及び角度の少なくとも一方を調整する。この場合、チャック部によるレンズ成形品の把持が適切に調整され、レンズ成形品を金型から適切に分離することができる。
【0011】
本発明の別の側面では、レンズ成形品は、第1及び第2金型のうちレンズ成形品を保持する金型から±5°以内の傾斜角で取り出される。この場合、レンズ成形品を保持する金型から殆ど傾斜のない状態でレンズ成形品を分離することができ、レンズ成形品の損傷が確実に低減される。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、成形品取出装置に設けたチャック部がレンズ成形品を把持する部分に本体よりも摩擦抵抗の大きな材質で形成された当接部を有する。この場合、チャック部におけるレンズ成形品の把持位置がずれて、結果的にレンズ成形品が傾く等の位置ずれの弊害を防止できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、成形品取出装置に設けたチャック部がレンズ成形品を把持する把持力と、チャック部がレンズ成形品を把持するタイミングと、第1及び第2金型の一方からレンズ成形品を分離する際のチャック部の後退速度とのうち少なくとも1つを調整する。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る成形品取出装置は、レンズ成形品を形成する第1転写面と型開閉方向に垂直な第1分割面とを有する第1金型と、レンズ成形品を形成する第2転写面と型開閉方向に垂直な第2分割面とを有する第2金型と、第1金型及び第2金型を開閉動作させる開閉駆動装置とを備える成形装置に組み込まれ、レンズ成形品を取り出す成形品取出装置であって、レンズ成形品のレンズ光軸に平行な方向のレンズ軸上厚をt(mm)とし、500nm以下の波長の光束における対物レンズの焦点距離をf(mm)としたときに、0.9≦t/f≦2.0であり、レンズ成形品を取り出す際にレンズ成形品を把持する位置を、第1分割面に垂直な型開閉方向と第1分割面に平行な分割面方向とに関して調整可能である。
【0015】
上記の成形品取出装置では、レンズ成形品を取り出す際にレンズ成形品を把持する位置を第1分割面に垂直な型開閉方向と第1分割面に平行な分割面方向とに関して調整するので、取出時に成形品が金型に押し付けられて変形したり成形品に傷がついたりする現象を抑えることができ、高精度のレンズ成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は、実施形態の成形品取出装置の構造を説明する概念図であり、(B)は、成形品取出装置のチャック部周辺の部分拡大図である。
【図2】図1に示す成形品取出装置を組み込んだ成形装置を説明する図である。
【図3】成形装置によって形成されるレンズを説明する断面図である。
【図4】レンズの製造方法の概要を説明するフローチャートである。
【図5】(A)〜(D)は、成形品取出装置によるレンズ成形品の取り出しを説明する図である。
【図6】(A)及び(B)は、成形品取出装置によるレンズ成形品の取り出しの良くない例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態である成形品取出方法及び装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1(A)は、実施形態の成形品取出装置の構造を概念的に説明する正面図である。図示の成形品取出装置20は、図2を参照して後に説明する成形装置100において固定盤12上に取り付けられている。
【0019】
図1(A)に示すように、成形品取出装置20は、土台部21と、X軸走行部22と、Z軸走行レール23と、Z軸走行部24と、Y軸ガイド25と、Y軸移動部26と、チャック部27と、チャック駆動部28とを備える。
【0020】
土台部21は、図2に示す成形装置100の固定盤12の上面12u上に安定した状態で固定されている。土台部21は、X軸走行部22のX方向の移動を案内するガイドとして機能しており、X軸走行ベルト29aを介してX軸走行部22を±X方向に所望のタイミングで移動させる駆動装置21bを内蔵している。X軸走行部22は、土台部21上で±X方向に移動可能に設置されており、Z方向に延びるZ軸走行レール23を支持している。X軸走行部22は、Z軸走行ベルト29bを介してZ軸走行部24を±Z方向に所望のタイミングで移動させる駆動装置22bを内蔵している。Z軸走行部24は、Z軸走行レール23に対して±Z方向に移動可能に取り付けられており、Y方向に延びるY軸ガイド25を支持している。Z軸走行部24は、Y軸走行ベルト29cを介してY軸移動部26を±Y方向に所望のタイミングで移動させる駆動装置24bを内蔵している。チャック部27は、レンズ成形品MPを保持して搬送するため、一対の把持部材27a,27aを有している。両把持部材27a,27aは、互いに近接したチャック状態で両把持部材27a,27aの間にレンズ成形品MPから延びるスプル部MPaを所定以上の力で挟んで保持することができ、互いに離間したリリース状態で両把持部材27a,27aによるレンズ成形品MPの把持を解除することができる。チャック駆動部28は、チャック部27の把持部材27a,27aを開閉動作させることができる。チャック駆動部28には、チャック部27の基準中心軸AX1の傾斜状態を調整するための調整機構28bが付随的に設けられている。
【0021】
以上の成形品取出装置20において、チャック部27は、土台部21、X軸走行部22、及びZ軸走行部24に内蔵された駆動装置21b,22b,24bに駆動されて、固定盤12の周辺で3次元的に任意の位置に移動する。
【0022】
図1(B)に示すように、チャック部27を構成する一対の把持部材27a,27aの対向する内面側には、ゴム等の比較的摩擦抵抗の大きな材質で形成されたシート状の当接部27b,27bが設けられている。把持部材27a,27aの内面側に当接部27b,27bを設けることで、チャック部27によるレンズ成形品MPの把持が確実になり、チャック部27によるレンズ成形品MPの支持が安定する。なお、当接部27b,27bは、大きな摩擦抵抗を有するがあまり弾性変形しないものとなっており、チャック部27によるレンズ成形品MPの保持状態を再現性の高いものとしている。
【0023】
チャック駆動部28に付随的に設けた調整機構28bにより、チャック部27の基準中心軸AX1の傾斜状態を調整することができるので、この基準中心軸AX1を固定盤12に取り付けられた第1金型41の基準中心軸AX2に対して略平行に設定することができる。ここで、チャック部27は、X軸、Y軸、及びZ軸に沿った任意の方向に移動可能であり、チャック部27の基準中心軸AX1と、第1金型41の基準中心軸AX2とを略一致させることができる。具体的には、基準中心軸AX1と基準中心軸AX2とを0.5mm以内、好ましくは0.1mm以内の位置ズレとなるように位置合わせしている。チャック部27によってレンズ成形品MPを把持してレンズ成形品MPを第1金型41から離型して分離する際には、レンズ成形品MPの損傷を防止するため、基準中心軸AX1と基準中心軸AX2とをこれらの成す角が±5°以下となるような精度で調整することとする。このため、レンズ成形品MPを把持する前のチャック部27の姿勢は、その基準中心軸AX1がZ軸又は基準中心軸AX2に対して略平行になるように設定される。レンズ成形品MPを把持した後のチャック部27の基準中心軸AX1が基準中心軸AX2に対して±5°以上傾く場合、把持直前におけるチャック部27の基準中心軸AX1をX方向やY方向に微動させて、基準中心軸AX1の傾きが±5°以下となるように調整する。以上のような調整は、目視の判定を利用して行うことができるが、各種物理的原理等を応用した位置センサを利用して行うこともできる。
【0024】
図2は、図1に示す成形品取出装置20を組み込んだ成形装置を説明する正面図である。図示の成形装置100は、射出成形を行ってレンズ成形品MPを作製する本体部分である射出成形機10と、射出成形機10からレンズ成形品MPを取り出す付属部分である成形品取出装置20と、成形装置100を構成する各部の動作を統括的に制御する制御装置30とを備える。
【0025】
射出成形機10は、横型の成形機であり、成形金型40と、可動盤11と、固定盤12と、型締め盤13と、開閉駆動装置15と、射出装置16とを備える。射出成形機10は、可動盤11と固定盤12との間に成形金型40を構成する第1金型41と第2金型42とを挟持して両金型41,42を型締めすることにより成形を可能にする。
【0026】
成形金型40のうち第1金型41の内側には、図1(B)に示すように、レンズ成形品MPのレンズ部LPのうち一方の光学面に対応する複数の第1転写面TS1が形成されており、これら第1転写面TS1の周囲には、Z方向すなわち型開閉方向に対して垂直に延びる第1分割面PL1が形成されている。また、第2金型42の内側には、図1(B)に示すように、レンズ成形品MPのうちレンズ部LPの他方の光学面に対応する複数の第2転写面TS2が形成されており、これら第2転写面TS2の周囲には、Z方向すなわち型開閉方向に対して垂直に延びる第2分割面PL2が形成されている。第1分割面PL1と第2分割面PL2とは、上述した基準中心軸AX1,AX2に対して垂直になっている。これらの分割面PL1,PL2は、パーティングラインとも呼ばれ、第1金型41と第2金型42とによって成形空間であるキャビティを形成する型締めに際して、予め設定された高い型締め圧で互いに密着する。
【0027】
図3は、レンズ成形品MPのレンズ部LPを拡大した断面図である。レンズ部LPは、光学的機能を有する円形の光学機能部51と、光学機能部51の外縁から半径方向外側に設けられた環状のフランジ部52とを備える。このレンズ部LPは、NA0.75以上の光ピックアップ装置用の対物レンズである。具体的には、例えば波長405nmでNA0.85のBD(Blu-Ray Disc)の規格に対応した光情報の読み取り又は書き込みを可能とする。
【0028】
レンズ部LPのうち光学機能部51は、一方側に曲率の比較的大きな凸の第1光学面OS1を有し、他方側に第1光学面OS1よりも曲率の小さな凸の第2光学面OS2を有する。このうち、第1光学面OS1は、レンズ部LPを光ピックアップ装置に組み込んで動作させる際に、書き込み(記録)又は読み取り(再生)用のレーザ光源により近い側に配置される。また、第2光学面OS2は、レンズ部LPを光ピックアップ装置に組み込んで動作させる際に、光情報記録媒体(具体的には、BD)に対向して配置される。第1光学面OS1は、滑らかな鏡面となっているが、回折構造である微細構造又は微細形状を設けることもできる。一方、第2光学面OS2は、回折構造等を有しない滑らかな鏡面となっている。
【0029】
フランジ部52は、光学機能部51の半径方向外側に設けられた環状の部分である。フランジ部52は、第1光学面OS1側において第1フランジ面52aを有し、第2光学面OS2側において第2フランジ面52bを有し、第1及び第2フランジ面52a,52bの外側に隣接して外径面52cを有する。第1及び第2フランジ面52a,52bは、レンズ光軸OAに垂直に延びる平坦な面となっている。
【0030】
レンズ部LPのうち、第1光学面OS1、第1フランジ面52a等は、例えば第1金型41の第1転写面TS1(図1(B)参照)によって形成され、第2光学面OS2、第2フランジ面52b等は、例えば第2金型42の第2転写面TS2(図1(B)参照)によって形成される。あるいは、第1光学面OS1、第1フランジ面52a等は、第2金型42の第2転写面TS2によって形成され、第2光学面OS2、第2フランジ面52b等は、第1金型41の第1転写面TS1によって形成される。
【0031】
図からも明らかなように、レンズ部LPは、第1光学面OS1等の曲率が非常に大きく、レンズ光軸OAを含む中央部で肉厚が極端に厚いレンズとなっている。具体的には、レンズ光軸OAに沿ったレンズ軸上厚t(mm)とし、500nm以下の波長の光束における対物レンズの焦点距離をf(mm)としたときに、0.9≦t/f≦2.0の関係が満たされる。結果的に、レンズ部LPは、第1金型41や第2金型42からの離型の抵抗が大きくなりやすい。一方で、レンズ部LPは、BD用ということで傷や変形等を含めた精度に関する要求レベルが極めて高いものとなっている。このため、レンズ部LPを成形金型40から取り出す際には、第1金型41や第2金型42から過度の応力を受けたり意図しない接触が発生したりしないように、細心の注意が必要となっている。
【0032】
図2に戻って、可動盤11は、スライドガイド15aによって固定盤12に対して進退移動可能に支持されている。可動盤11は、第1金型41を着脱可能に支持している。なお、可動盤11には、エジェクタ45が組み込まれている。このエジェクタ45は、第2金型42内のレンズ成形品MPを第1金型41側に押し出すように移動させて離型させるものであり、成形品取出装置20によって第2金型42からレンズ成形品MPを比較的簡単に取り外して外部に移送することを可能にする。
【0033】
固定盤12は、可動盤11に対向して支持フレーム14の中央に固定されており、成形品取出装置20をその上部に支持する。固定盤12は、第2金型42を着脱可能に支持している。なお、固定盤12は、タイバー14a,14aを介して型締め盤13に固定されており、成形時の型締めの圧力に耐え得るようになっている。
【0034】
型締め盤13は、支持フレーム14の端部に固定されている。型締め盤13は、型締めに際して、開閉駆動装置15の動力伝達部15dを介して可動盤11をその背後から支持する。
【0035】
開閉駆動装置15は、スライドガイド15aと、動力伝達部15dと、アクチュエータ15eとを備える。スライドガイド15aは、可動盤11を支持して固定盤12に対する進退方向すなわち型開閉方向に関する滑らかな往復移動を可能にしている。動力伝達部15dは、制御装置30の制御下で動作するアクチュエータ15eからの駆動力を受けて伸縮する。これにより、型締め盤13に対して可動盤11が近接したり離間したり自在に進退移動し、結果的に、可動盤11と固定盤12とを互いに近接・離間して第1金型41と第2金型42との型締め及び型開きを行う。
【0036】
射出装置16は、シリンダ16a、原料貯留部16b、スクリュ駆動部16c等を備える。射出装置16は、制御装置30の制御下で適当なタイミングで動作するものであり、樹脂射出ノズル16dから温度制御された状態で溶融樹脂を射出することができる。射出装置16は、樹脂射出ノズル16dを第1金型41に設けたスプルブッシュ(不図示)に接触させることにより、樹脂射出ノズル16dからの溶融樹脂を、型締め状態の両金型41,42間に形成された成形空間であるキャビティ中に所望のタイミング及び圧力で供給することができる。
【0037】
制御装置30は、開閉制御部31と、射出装置制御部32と、エジェクタ制御部33と、取出装置制御部34とを備える。開閉制御部31は、アクチュエータ15eを動作させることによって両金型41,42の型締めや型開きを可能にする。射出装置制御部32は、スクリュ駆動部16c等を動作させることによって両金型41,42間に形成された型空間中に所望の圧力で樹脂を注入させる。エジェクタ制御部33は、エジェクタ45を動作させることによって型開き時に第1金型41に残るレンズ成形品MPを突き出しレンズ成形品MPを第1金型41から離型させる。取出装置制御部34は、成形品取出装置20を動作させることによって型開き及び離型後に第1金型41に残るレンズ成形品MPを把持して射出成形機10外に搬出させる。
【0038】
取出装置制御部34についてより詳細に説明すると、取出装置制御部34は、図1の成形品取出装置20に設けた駆動装置21b,22b,24bを適宜動作させることにより、チャック部27を所望の移動経路で射出成形機10の外部から第1金型41に対向する正面位置に移動させることができるとともに、第1金型41の正面位置から射出成形機10の外部に移動させることができる。また、取出装置制御部34は、チャック駆動部28を適宜動作させることにより、チャック部27を所望のタイミングで開閉させることができ、チャック部27をチャック状態やリリース状態とすることができる。
【0039】
オペレータは、取出装置制御部34を操作することで、取出装置制御部34にプログラムされたチャック部27の移動経路や移動速度を任意に変更することができる。例えば、チャック部27によってレンズ成形品MPを把持してレンズ成形品MPを第1金型41から分離する際のチャック部27の後退速度等を自在に調整することができる。また、チャック部27によってレンズ成形品MPを把持する際にチャック部27の基準中心軸AX1が第1金型41の基準中心軸AX2からずれているときには、チャック部27の位置をXY面内で移動させて基準中心軸AX1を基準中心軸AX2に一致させる調整も可能になっている。
【0040】
さらに、オペレータは、取出装置制御部34を操作することで、取出装置制御部34にプログラムされたチャック部27の開閉動作を任意に変更することができる。例えば、チャック部27によってレンズ成形品MPを把持する把持力を、自在に増減調整することができる。また、チャック部27によってレンズ成形品MPを把持するタイミングを、第1金型41と第2金型42との型開き時を基準として前後自在に調整することができる。
【0041】
図4は、図2に示す成形装置100の動作を概念的に説明するフローチャートである。予め、両金型41,42の表面を成形に適する温度まで加熱した状態としてある。この状態で、開閉駆動装置15を動作させ、可動盤11を前進させて型閉じを開始させる(ステップS11)。開閉駆動装置15の閉動作を継続することにより、第1金型41と第2金型42とが接触する型当たり位置まで可動盤11が固定盤12側に移動して型閉じが完了し、開閉駆動装置15の閉動作を更に継続することにより、第1金型41と第2金型42とを必要な圧力で締め付ける型締めが行われる(ステップS12)。次に、射出成形機10において、射出装置16を動作させて、型締めされた第1金型41と第2金型42との間の型空間に、必要な圧力で溶融樹脂を注入する射出を行わせる(ステップS13)。その後は、第1金型41と第2金型42との間の型空間中の溶融樹脂が徐々に冷却されるので、かかる冷却にともなって溶融樹脂が固化し成形が完了するのを待つ(ステップS14)。次に、射出成形機10において、開閉駆動装置15を動作させて、可動盤11を後退させる型開きが行われる(ステップS15)。これに伴って、第1金型41が後退し、第1金型41と第2金型42とが離間する。この結果、図1(B)に示すように、レンズ成形品MPは、第1金型41に保持された状態で第2金型42から離型される。次に、射出成形機10において、エジェクタ45を動作させて、レンズ成形品MPの突き出しを行わせ、第1金型41からレンズ成形品MPのレンズ部LP等を離型させる。ただし、レンズ成形品MPの一部は、第1金型41の凹部に保持されたままとなっており、レンズ成形品MPは、比較的弱い引っ張り力で分離可能な状態で第1金型41に支持されている。最後に、成形品取出装置20を動作させて、第1金型41に支持されたレンズ成形品MPをチャック部27で把持し、チャック部27を後退させることによって、第1金型41からレンズ成形品MPが完全に離型又は分離され、さらにチャック部27を適宜移動させることにより、レンズ成形品MPが外部に搬出される(ステップS18)。
【0042】
以下、図5(A)〜5(D)を参照して、チャック部27の動作について説明する。まず、レンズ成形品MPを取り出す前に、図5(A)に示すように、チャック部27を第1金型41の内面に正対する取出基準位置に配置する。この際、チャック部27の基準中心軸AX1を、第1金型41の基準中心軸AX2に一致させる。つまり、チャック部27の位置を第1分割面PL1に平行な分割面方向(具体的にはX方向又はY方向)に関して調整する。さらに、チャック部27と第1金型41との間隔も規定値の範囲からはずれないように調整する。つまり、チャック部27の位置を第1分割面PL1に垂直な型開閉方向(具体的にはZ方向)に関しても調整する。なお、以上において、チャック部27の基準中心軸AX1は、チャック状態の把持部材27a,27aの中間点を通るものとなっている。また、第1金型41の基準中心軸AX2は、レンズ成形品MPを第1金型41から取り出す際の基準となるものであり、レンズ成形品MPのスプル部MPaの中心軸を通る。次に、図5(B)に示すように、チャック部27を基準中心軸AX2に平行な+Z方向に前進させて規定の把持位置に達した段階で、把持部材27a,27aによってレンズ成形品MPのスプル部MPaをチャックする。この前段階で、レンズ成形品MPは、図2のエジェクタ45によって第1金型41から押し出された状態となっている。その後、図5(C)に示すように、チャック部27を基準中心軸AX2に平行な−Z方向に徐々に後退させることで、レンズ成形品MPが第1金型41から完全に分離する。この際、基準中心軸AX1と基準中心軸AX2とを一致させて例えば±5°以下の傾きとしているので、レンズ成形品MPが第1金型41に対して傾いて取り出されることを防止できる。さらに、図5(D)に示すように、チャック部27を分離が確実に完了する搬送可能位置まで後退させることで、レンズ成形品MPが第1金型41から十分に離間し、レンズ成形品MPを上方に移動させることが可能になる。その後は、成形品取出装置20を適宜動作させて、チャック部27とともにレンズ成形品MPを成形装置100の外部まで搬出する。
【0043】
図6(A)に示すように、チャック部27の基準中心軸AX1が第1金型41の基準中心軸AX2に一致していないときは、チャック部27をXY面内で移動させて、図5(A)に示すように、チャック部27の基準中心軸AX1を第1金型41の基準中心軸AX2に一致させる。図6(A)に示すように基準中心軸AX1と基準中心軸AX2とがずれた状態で無理にチャック部27を動作させると、レンズ成形品MPを第1金型41から分離する際に、レンズ成形品MPが傾いてしまい、レンズ成形品MPのレンズ部LPが第1金型41に接触して傷や変形が生じる可能性が高まる。
【0044】
以上説明した第1実施形態の成形品取出方法及び装置によれば、レンズ成形品MPを取り出す際にレンズ成形品MPを把持する位置を第1分割面PL1に垂直な型開閉方向と第1分割面PL1に平行な分割面方向とに関して調整するので、レンズ成形品MPに意図しない力が付与されることを抑制できる。これにより、取出時にレンズ成形品MPが第1金型41に押し付けられて変形したり傷ついたりする現象の発生を抑えることができ、高精度のレンズを提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…射出成形機、 11…可動盤、 12…固定盤、 14a,14a…タイバー、 15…開閉駆動装置、 15a…スライドガイド、 15d…動力伝達部、 15e…アクチュエータ、 16…射出装置、 20…成形品取出装置、 21…土台部、 21b,22b,24b…駆動装置、 22…X軸走行部、 23…Z軸走行レール、 24…Z軸走行部、 25…Y軸ガイド、 26…Y軸移動部、 27…チャック部、 27a,27a…把持部材、 27b,27b…当接部、 28…チャック駆動部、 28b…調整機構、 30…制御装置、 31…開閉制御部、 32…射出装置制御部、 33…エジェクタ制御部、 34…取出装置制御部、 40…成形金型、 41第1金型、 42第2金型、 45…エジェクタ、 51…光学機能部、 52…フランジ部、 52a,52b…フランジ面、 52c…外径面、 100…成形装置、 AX1…第1基準中心軸、 AX2…第2基準中心軸、 LP…レンズ部、 MP…レンズ成形品、 MPa…スプル部、 OA…レンズ光軸、 OS1…第1光学面、 OS2…第2光学面、 PL1…第1分割面、 PL2…第2分割面、 TS1…第1転写面、 TS2…第2転写面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ成形品を形成する第1転写面と型開閉方向に垂直な第1分割面とを有する第1金型と、前記レンズ成形品を形成する第2転写面と型開閉方向に垂直な第2分割面とを有する第2金型と、前記第1金型及び前記第2金型を開閉動作させる開閉駆動装置とを備える成形装置から、成形品取出装置によって前記レンズ成形品を取り出すための成形品取出方法であって、
前記レンズ成形品のレンズ光軸に平行な方向のレンズ軸上厚をt(mm)とし、500nm以下の波長の光束における前記対物レンズの焦点距離をf(mm)としたときに、0.9≦t/f≦2.0であり、
成形品取出装置によって前記レンズ成形品を取り出す際に前記レンズ成形品を把持する位置を、前記第1分割面に垂直な型開閉方向と前記第1分割面に平行な分割面方向とに関して調整することを特徴とする成形品取出方法。
【請求項2】
前記第1及び第2金型のうち前記レンズ成形品を保持する金型の基準中心軸と前記成形品取出装置に設けたチャック部の基準中心軸とが一致するように調整した状態で、前記成形品取出装置に設けたチャック部に前記レンズ成形品を把持させることを特徴とする請求項1に記載の成形品取出方法。
【請求項3】
前記レンズ成形品を保持する金型の基準中心軸と前記成形品取出装置に設けたチャック部の基準中心軸との位置ズレは0.5mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の成形品取出方法。
【請求項4】
前記成形品取出装置に設けたチャック部によって前記レンズ成形品を把持する位置及び角度の少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の成形品取出方法。
【請求項5】
前記レンズ成形品は、前記第1及び第2金型のうち前記レンズ成形品を保持する金型から±5°以内の傾斜角で取り出されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の成形品取出方法。
【請求項6】
前記成形品取出装置に設けたチャック部が前記レンズ成形品を把持する部分に本体よりも摩擦抵抗の大きな材質で形成された当接部を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の成形品取出方法。
【請求項7】
前記成形品取出装置に設けたチャック部が前記レンズ成形品を把持する把持力と、前記チャック部が前記レンズ成形品を把持するタイミングと、前記第1及び第2金型の一方から前記レンズ成形品を分離する際の前記チャック部の後退速度とのうち少なくとも1つを調整することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の成形品取出方法。
【請求項8】
レンズ成形品を形成する第1転写面と型開閉方向に垂直な第1分割面とを有する第1金型と、前記レンズ成形品を形成する第2転写面と型開閉方向に垂直な第2分割面とを有する第2金型と、前記第1金型及び前記第2金型を開閉動作させる開閉駆動装置とを備える成形装置に組み込まれ、前記レンズ成形品を取り出す成形品取出装置であって、
前記レンズ成形品のレンズ光軸に平行な方向のレンズ軸上厚をt(mm)とし、500nm以下の波長の光束における前記対物レンズの焦点距離をf(mm)としたときに、0.9≦t/f≦2.0であり、
前記レンズ成形品を取り出す際に前記レンズ成形品を把持する位置を、前記第1分割面に垂直な型開閉方向と前記第1分割面に平行な分割面方向とに関して調整可能であることを特徴とする成形品取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−179764(P2012−179764A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43308(P2011−43308)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】