説明

成形型用閉塞栓

【課題】最終製品に近い状態の成形体として成形型から取り出す。
【解決手段】閉塞栓50が、下型41および上型42の間に成形空間44が形成され、上型42内を略上下に延びて成形空間44に連通するゲート43を通して真空下において成形材料を成形空間44に注入して成形を行う成形型40に用いられ、成形材料よりも比重が小さい材質からなり、下方に移動することによりゲート43と成形空間44とを連通させて成形空間44に成形材料を注入させ、上方に移動することによりゲート43を閉塞させる。この閉塞栓50は、成形空間44内に配置され上方に移動して上型42に当接することによりゲート43を閉塞可能なフランジ部52と、フランジ部52から上方に延びてゲート43内に突出して上下移動可能に案内され、ゲート43内に注入された成形材料が成形空間44内に流出可能な隙間が形成された本体部51とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料を真空注型により成形するための成形型に用いられる成形型用閉塞栓に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の内装部品、あるいは電気コネクタ等、種々の工業製品には極めて多数の樹脂部品が使用されている。このような樹脂部品は、特許文献1にも記載があるように、しばしば真空注型法により成形される。真空注型法では、シリコンゴム製の成形型を真空容器内に設置し、成形型に形成された成形空間内に真空下において樹脂部品の材料である成形材料を注入することで、成形空間内に成形材料が充填されて成形がなされる。
【特許文献1】特開2003−89124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような成形法においては、成形型内を上下に延びて成形空間に連通するゲートを通して成形材料が外部から成形空間に注入される。このため、成形時には成形型に形成されたゲートにも材料である樹脂が注ぎ込まれ、成形後はこれが固まって余分な部分として成形体に付いており、従来においては、成形型から成形体を取り出した後にこの余分な部分を削って取り除く作業が必要であった。しかしながら、このような作業を、成形型から成形体を取り出す度に行う作業は煩わしいため、余計な加工を必要としない最終製品に近いいわゆるニア・ネット・シェイプ(near net shape)の状態の成形体として成形型から取り出されるようにするのが望ましい。
【0004】
以上のような課題に鑑みて、本発明では、成形体を最終製品に近い形状として成形型から取り出すことができるような成形型用閉塞栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る成形型用閉塞栓(例えば、実施形態における閉塞栓50)は、少なくとも一方の合わせ面に凹部が形成された下型および上型とから構成され、下型と上型とを組み合わせることにより下型および上型の間に成形空間が形成され、上型内を略上下に延びて成形空間に連通するゲートを通して真空下において成形材料を成形空間に注入して成形を行う成形型に用いられ、成形材料よりも比重が小さい材質からなり、成形空間とゲートとを上下移動自在に構成され、下方に移動することによりゲートと成形空間とを連通させて成形空間に成形材料を注入させ、上方に移動することによりゲートを閉塞させる。
【0006】
また、上記構成の成形型用閉塞栓において、成形空間内に配置され上方に移動して上型に当接することによりゲートを閉塞可能なフランジ部と、フランジ部から上方に延びてゲート内に突出して上下移動可能に案内され、ゲート内に注入された成形材料が成形空間内に流出可能な隙間が形成された本体部とからなるのが好ましい。
【0007】
さらに、上記構成の成形型用閉塞栓において、フランジ部の下面に下方に突出する突起部が形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に関する成形型用閉塞栓によれば、成形空間に成形材料が充填されるまでは、成形材料の注入圧力により成形型用閉塞栓が下方に押し付けられているため、ゲートと成形空間とが連通して成形空間内に成形材料が注入されるが、成形材料がゲートに堆積し始めると、成形材料と成形型用閉塞栓との比重差により成形型用閉塞栓が浮力を受けて浮上する。成形型用閉塞栓がある程度浮上すると、成形型用閉塞栓がゲートを閉塞する。このため、成形型内への成形材料の注入が終了した時点で、成形空間内の材料とゲート内に残った材料とが成形型用閉塞栓により分断され、成形型の成形空間から取り出される成形体は最終製品の形状で取り出される。このため、従来とは異なり、ゲート内に残った材料が成形体に余分な部分として付いておらず、この余分な部分を取り除く煩わしい作業を行わなくて済むことができる。
【0009】
また、成形時において、成形型用閉塞栓が浮力を受けた場合でも当該閉塞栓が成形型にくっ付いてしまい、閉塞栓が浮上しなくなるおそれも考えられるが、本発明に係る成形型用閉塞栓においては、フランジ部の下面に下方に突出する突起部が形成されているため、フランジ部と成形型との間に隙間が生じてフランジ部が成形型に密着することがなく、浮力を受けた場合に確実に成形型用閉塞栓が浮上するようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1乃至図6に基づいて説明する。図1に本発明に係る注型装置を構成する真空注型機1の全体を示している。この真空注型機1は、減圧チャンバー11を有する注型機本体10と、減圧チャンバー11内をほぼ真空状態まで減圧するための真空ポンプ(図示せず)を有した真空駆動装置5とから構成される。減圧チャンバー11は、前面が開口するとともにこの開口部を覆う第1および第2開閉扉12,16がヒンジ13,17により開閉自在となって取り付けられている。なお、両開閉扉12,16には、それぞれのぞき窓12a,16aが設けられている。また、注型機本体10の前面には各種操作スイッチ、ボタン類が配設された操作パネル2が設けられている。
【0011】
注型機本体10の内部を、第1および第2開閉扉12,16を開放した状態で図2に示している。図2に示すように、減圧チャンバー11内には、支軸26により回動自在に支持された注入容器25と、注入容器25にポリウレタン樹脂を形成する第1原料液Aを注入する第1注入装置21と、注入容器25にポリウレタン樹脂を形成する第2原料液Bを注入する第2注入装置22と、このように注入された第1および第2原料液A,Bを注入容器25内において撹拌する撹拌装置23とが配設されて、これらにより二液混合装置が構成されている。
【0012】
また、注入容器25の前方には漏斗31が配設され、この漏斗31の下部流出口に繋がって注入ホース32が取り付けられ、この注入ホース32は減圧チャンバー11内を下方に延びて配設されており、これらにより注入装置が構成されている。減圧チャンバー11内には、成形型40が配設されており、この成形型40内のゲート43(樹脂注入空間(図6参照))に上記注入ホース32の下端部が繋がっている。
【0013】
ここで、図3乃至図6を参照して、成形型40および当該成形型40に用いられる本発明に係る閉塞栓50について説明する。図6に示すように、成形型40は、シリコンゴムを材質とし、凹部41aが形成された下型41および上型42からなる2つの型から構成され、これらの型41,42の合わせ面が組み合わされることで、下型41と上型42との間に左右および両側が上下に延びる成形空間44が形成される。この成形空間44には、上記真空駆動装置5により真空状態まで減圧された状態で成形材料が注入され、所定の形状に成形される。
【0014】
上型42には、上下に延びるゲート43が形成されており、下型41および上型42が整合されて成形空間44が形成されると、上型42内を上下に延びる断面円形状のゲート43が成形空間44に連通する。上記のように、ゲート43には注入ホース32の下端部が繋がっているため、注入ホース32からゲート43内に送り込まれた成形材料は、ゲート43内を流れた後に成形空間44内に注入される。
【0015】
このように構成された成形型40の下型41の上に閉塞栓50が、成形空間44とゲート43とを上下移動自在に設置される。この閉塞栓50は、成形型40の材質であるシリコンゴムに着きにくく、成形材料よりも比重の小さいポリプロピレンを材質とし、図3乃至図5に示すように、全体としてロケット状の形状を呈しており、先端側が尖っており上下に延びる本体部51と、本体部51の基端側に取り付けられゲート43よりも径が大きい円板状のフランジ部52と、本体部51の側面に設けられた羽根部55を有して構成される。この羽根部55は、本体部51の基端側の4箇所に平面視十字状に(図5(a)参照)取り付けられている。
【0016】
本体部51は、基端側が開口する円筒殻からなり、基端側に開口を塞ぐようにフランジ部52を取り付けることで、空気が密封された空気密封空間54が形成される。本体部51とフランジ部52とは、高周波レーザビーム溶接や、電子ビーム溶接といった高エネルギービーム溶接により接合面53において強力に接合されている。このため、真空状態まで減圧された環境下であっても、空気密封空間54に密封された空気の圧力により本体部51とフランジ部52との接合面53の周辺において発生する応力で、フランジ部52が本体部51から外れることはなく、閉塞栓50の強度が充分に担保されている。
【0017】
また、フランジ部52の下面であって、その中央部には側面視半円状に下方に突出する突起部56が形成されている。これは、シリコンゴム製の成形型40には、油分を多く含むものがあり、その成形型40の下型41の上にフランジ部52を置くと、閉塞栓50が下型41に密着してしまうおそれがあるためである。そこで、突起部56を設ければ閉塞栓50を下型41の上に載置した場合、フランジ部52と下型41の底面との間に隙間が生じるため、閉塞栓50が下型41に密着するのを防止することができる。
【0018】
成形材料の注入前は、閉塞栓50は、図6の鎖線で示すように、ゲート43に本体部51の先端が入り、フランジ部52が下型41の底面に載置されるようにして成形型40に設置されている。このような状態では、成形空間44内に注入される成形材料により閉塞栓50は下方に押し付けられゲート43と成形空間44とが連通している。このため、注入ホース32の下端から閉塞栓50に向けてゲート43内に流入すると、成形材料は閉塞栓50の本体部51の側方を流れ、ゲート43の下端から成形空間44内へと注入される。注入された成形材料は成形空間44の奥へと詰め込まれ、成形空間44内全体に成形材料が充填されると、成形材料はゲート43内に堆積を始める。
【0019】
成形材料がゲート43内に堆積し始めると、閉塞栓50内部に形成された気体密封空間54内に充填されている空気と成形材料との比重差により、閉塞栓50が浮上する。このとき、閉塞栓50に設けられた羽根部55がゲート43の壁面を摺動しながら羽根部55がゲート43の壁面に案内されるようにして閉塞栓50が上昇することにより、閉塞栓50の本体部51がゲート43の長手方向に沿うように上下に真っ直ぐに向いた状態で、閉塞栓50が上昇する。このとき、本体部51外周とゲート43の内壁面との間に形成された隙間を通して、ゲート43から成形空間44に向けて成形材料を流出させることが可能である。
【0020】
閉塞栓50は、フランジ部52が成形空間44の壁面に当接することで、上方への移動が停止する。このようにして、閉塞栓50のフランジ部52が成形空間44の壁面に当接する前までは連通していたゲート43と成形空間44とが、閉塞栓50により分断される。このため、ゲート43から成形空間44への成形材料の流入が停止する。この状態で上型42と下型41とを分離させると、成形空間44からは成形体が取り出され、ゲート43からは成形体とは分離した余分な材料片が取り出される。
【0021】
以上のように、本発明に係る閉塞栓50を成形型40に設置して成形を行えば、成形が終わった段階で既に成形体から余分な部分が除かれているため、従来とは異なり余計な仕上げ加工を必要とせず、最終製品に近い状態の成形体として成形型から取り出すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る成型型用閉塞栓が用いられる成形型を備えた真空注型機の全体を示す斜視図である。
【図2】上記真空注型機の内部を示す正面図である。
【図3】上記閉塞栓の正面図である。
【図4】上記閉塞栓の断面図である。
【図5】(a)は、上記閉塞栓の平面図で、(b)は上記閉塞栓の底面図である。
【図6】上記閉塞栓がセットされた上記成形型の正断面図を示す
【符号の説明】
【0023】
1 真空注型機
5 真空駆動装置
10 注型機本体
32 注入ホース
40 成形型
41 下型
41a 凹部
42 上型
43 ゲート
44 成形空間
50 閉塞栓(成形型用閉塞栓)
51 本体部
52 フランジ部
53 接合面
54 空気密封空間
55 羽根部
56 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の合わせ面に凹部が形成された下型および上型とから構成され、前記下型と前記上型とを組み合わせることにより前記下型および前記上型の間に成形空間が形成され、前記上型内を略上下に延びて前記成形空間に連通するゲートを通して真空下において成形材料を前記成形空間に注入して成形を行う成形型に用いられる成形型用閉塞栓であって、
前記成形材料よりも比重が小さい材質からなり、
前記成形空間と前記ゲートとを上下移動自在に構成され、
下方に移動することにより前記ゲートと前記成形空間とを連通させて前記成形空間に成形材料を注入させ、上方に移動することにより前記ゲートを閉塞させることを特徴とする成形型用閉塞栓。
【請求項2】
前記成形空間内に配置され上方に移動して前記上型に当接することにより前記ゲートを閉塞可能なフランジ部と、
前記フランジ部から上方に延びて前記ゲート内に突出して上下移動可能に案内され、前記ゲート内に注入された成形材料が前記成形空間内に流出可能な隙間が形成された本体部とからなることを特徴とする請求項1に記載の成形型用閉塞栓。
【請求項3】
前記フランジ部の下面に下方に突出する突起部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の成形型用閉塞栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−301863(P2007−301863A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133235(P2006−133235)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(391062388)株式会社三愛 (1)
【Fターム(参考)】